説明

光学シート、光学シートの製造方法、成形体ならびに成形体の製造方法

【課題】薄肉・大画面化が図られた導光板等の成形体への加工が容易で、光線透過率の高い光学シートおよびその製造方法、光学シートの表面に凹凸パターンを形成させてなる成形体および成形体の製造方法を提供すること。
【解決手段】(A)粘度平均分子量22000以下の芳香族ポリカーボネイト100質量部および(B)酸化防止剤0.01〜1質量部を含有し、青色系色素または顔料を含まない芳香族ポリカーボネイト樹脂組成物が押出機から押し出された後、ガラス転移温度以下で冷却された光学シートであって、該光学シートの厚み0.1〜1mmにおける全光線透過率が91%以上であることを特徴とする光学シートおよび前記芳香族ポリカーボネイト樹脂組成物をシート状に溶融押し出しする成形工程、溶融押し出しされたシート状成形体をガラス転移温度以下に急冷する冷却工程、および冷却されたシート状成形体を、50℃以上、前記芳香族ポリカーボネイト樹脂組成物のガラス転移温度以下で熱処理する熱処理工程からなることを特徴とする光学シートの製造方法、光学シートの表面に凹凸パターンを形成させてなる成形体、ならびに光学シートの表面に凹凸パターンを形成させることを特徴とする成形体の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導光板等に用いられる光学シート及び光学シートの製造方法、ならびに光学シートの表面に凹凸を形成した成形体及び同成形体の製造方法に関する。さらに、詳しくは、特定の熱可塑性樹脂を特定の条件下で押出成形し、シートの固体構造における高次構造を制御することにより得られる透明性、導光性に優れた光学シート、同光学シートの製造方法、成形体ならびに成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、携帯音楽プレイヤー、ノートパソコンなどモバイル電子機器の普及に伴い、これら製品機器の薄型化・画面拡大化が図られてきている。LED光源の薄型化技術の発展と共にこれに搭載される液晶ディスプレイ用バックライトもまた薄型化・画面拡大化の検討が活発に行われている。バックライトを構成する部材の中でも導光板が製品サイズを支配することから、導光板の薄型化と画面拡大化の検討が重視されてきている。
具体的には、既に厚さ0.8mmであったものが0.6〜0.4mmに薄肉化され、最近では0.3mm以下である0.2mmへとさらなる薄肉化が進められている。これら薄肉化はLED光源の薄肉化に伴うものである。一方、画面サイズは1.8〜2.8インチ程度であったものが、近々3〜3.5インチへと拡大しつつある。さらには、ノートパソコンにおいてもCCFL光源からのLED光源化が進み、12インチクラスの画面サイズについても厚さ0.4〜0.6mmの導光板採用への検討が試みられている。
モバイル機器用のバックライトに用いられ導光板はポリカーボネイト樹脂製のものが主流である。これらは主として射出成形法によりポリカーボネイト樹脂を板状に成形すると同時にその表面にバックライトを均一発光させる目的で光学設計された微細な凹凸が形成される。
ここで用いられるポリカーボネイト樹脂の中でも、とりわけ、射出成形用導光板用途向けに導光性の改良がなされた樹脂組成物が多用されている(特許文献1、2)。しかしながら、これらの樹脂組成物は射出成形法においては導光板の肉厚、画面サイズによって限定される上に、射出成形時の剪断配向により複屈折(リタデーション)が生じ、発光時に色ズレが生じやすいという問題がある。
また、該樹脂組成物については、例え射出成形法を押出成形法に換えて、シート成形を行ったとしても、押出成形時にシートが白濁し、取り分け、肉厚が2mmを越えると白濁が顕著となり、輝度特性が低下するという問題点があった。押出成形法による該樹脂組成物での導光板用の原反シートを得ることは困難であった。
【0003】
翻って、該樹脂組成物の射出成形時の流動性を改善したとしても(特許文献3)、射出成形法では2.6インチクラス以上、厚さ0.25mm以下の導光板は成形不可能な限界領域であり、導光板としての輝度性能を発現する製品を得ることは極めて困難であった。
また、ノートパソコン用のような大画面のものについては、従来ポリメチルメタクリレート(PMMA)製の導光板が使われてきたが、薄肉化に伴い、衝撃強度が不足する上に、反り(寸法安定性の不足)によりモアレ縞の発生や光源からの位置ずれによる輝度低下などの問題があった。
こうした背景から、これらの薄肉導光板にポリエチレンテレフタレート(PET)製シートを適用する試みもなされているが、PETシートは複屈折(リタデーション)が極端に大きく、導光板にしたときに色ずれが生じやすいという欠点がある。
また、ポリカーボネイト樹脂100重量部に対し、リン系および/またはフェノール系酸化防止剤0.02〜2重量部を配合してなる導光板用ポリカーボネイト樹脂組成物が開示(特許文献4)されているが、青色系染料等を用いていることと、成形温度が高いため全光線透過率が90%台止まりであり、さらなる改良が望まれている。
【0004】
【特許文献1】特開平10-73725号(特許3330498号)公報
【特許文献2】特開2002−60609号(特許3516908号)公報
【特許文献3】特開2005−247947号公報
【特許文献4】特開2008−24911号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、薄肉・大画面化が図られた導光板等の成形体への加工が容易で、光線透過率の高い光学シートおよびそれらの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、特定の分子量の芳香族ポリカーボネイトと酸化防止剤を用い、かつ、特定の温度で成形することにより、上記課題を達成し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
(1)(A)粘度平均分子量22000以下の芳香族ポリカーボネイト100質量部および(B)酸化防止剤0.01〜1質量部を含有し、青色系色素または顔料を含まない芳香族ポリカーボネイト樹脂組成物が押出機から押し出された後、ガラス転移温度以下で冷却された光学シートであって、該光学シートの厚み0.1〜1mmにおける全光線透過率が91%以上であることを特徴とする光学シート、
(2)複屈折(位相差;波長550nmにおけるリタデーション値)が150nm以下で、且つシート面内の任意箇所でのリタデーション値の標準偏差値が10以下である上記(1)に記載の光学シート、
(3)前記光学シートに用いられる芳香族ポリカーボネイト樹脂組成物から調製された試料板厚みが0.4mmで測定した可視−UV分光スペクトルにおいて、波長300nmにおける分光光線透過率70%以上または芳香族ポリカーボネイトを良溶媒に溶解して測定した分光光線透過率(溶液法による測定:溶液セルの導光長が5cm、試料溶液濃度12g/dl、溶媒ジクロロメタン、波長450nm)が94%以上である上記(1)または(2)に記載の光学シート、
(4)前記(A)成分100質量部に対して(C)熱可塑性ポリアクリル系樹脂0.01〜1質量部を含む上記(1)〜(3)のいずれかに記載の光学シート、
(5)前記(B)成分の酸化防止剤がリン系酸化防止剤及び/又はフェノール系酸化防止剤である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の光学シート、
(6)前記芳香族ポリカーボネイト樹脂組成物をシート状に溶融押し出しする成形工程、溶融押し出しされたシート状成形体をガラス転移温度以下に急冷する冷却工程、および冷却されたシート状成形体を、50℃以上、前記芳香族ポリカーボネイト樹脂組成物のガラス転移温度以下で熱処理する熱処理工程からなることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の光学シートの製造方法、
(7)上記(1)〜(5)のいずれかに記載の光学シートの表面に凹凸パターンを形成させてなる成形体、
(8)導光板、拡散シート、再帰性反射板、プリズムシートおよびフレネルレンズシートのいずれかである上記(7)に記載の成形体、
(9)上記(1)〜(5)のいずれかに記載の光学シートの表面に凹凸パターンを形成させることを特徴とする成形体の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、射出成形法では不可能な厚みと面積の導光板等の成形体の製造に適した、転写性および高い透明性、低い複屈折性など光学特性(導光性、色調)に優れる光学シートおよび導光板等が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の光学シートは、(A)粘度平均分子量22000以下の芳香族ポリカーボネイトに(B)酸化防止剤を含有し、青色系色素または顔料を含まない芳香族ポリカーボネイト樹脂組成物が押出機から押し出された後、ガラス転移温度以下で冷却された光学シートであって、該光学シートの厚み0.1〜1mmにおける全光線透過率は91%以上である。
複屈折(位相差;波長550nmにおけるリタデーション値)は150nm以下で、且つシート面内の任意箇所で測定したリタデーション値の標準偏差値は10以下であることが好ましい。
本発明の光学シートは、青色系色素または顔料を含んでいないので、導光板等に加工した場合、輝度特性の低下がない。ちなみに、青色系色素または顔料を含有させた場合、その配合量にもよるが、輝度数が10%のオーダーで低下する。
また、(A)芳香族ポリカーボネイトをベース樹脂に、(B)酸化防止剤を含有する芳香族ポリカーボネイト系樹脂組成物からなる光学シートとしたので、シートに成形加工する際の黄変の低減が図られ、このシートを導光板等に加工した際の輝度の低下が図られる。
【0009】
(A)成分である芳香族ポリカーボネイトとしては、光学透明性、機械強度、耐熱性の観点から、ビスフェノールAタイプのポリカーボネイトが好ましい。
芳香族ポリカーボネイトは、通常、二価フェノールとホスゲンまたは炭酸エステル化合物等のポリカーボネイト前駆体とを反応させることにより、製造することが出来る。例えば、塩化メチレンなどの溶媒中において、公知の酸受容体や分子量調節剤の存在下、更に、必要により分岐剤を添加し、二価フェノールとホスゲンのようなカーボネイト前駆体との反応により、あるいは二価フェノールとジフェニールカーボネイトのようなカーボネイト前駆体とのエステル交換反応などによって製造される。
二価フェノールとしては、様々なものがあるが、特に、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン〔通称:ビスフェノールA〕が好適である。ビスフェノールA以外のビスフェノールとしては、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン;2,2−ビス(4−ヒドロキシ−1−メチルフェニル)プロパン;ビス(4−ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン;1,1−ビス(4−ヒドロキシ−t−ブチルフェニル)プロパン;2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン;2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−テトラメチルフェニル)プロパン;2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)プロパン;2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−テトラクロロフェニル)プロパン;2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−テトラブロモフェニル)プロパン等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、4,4'−ジヒドロキシフェニルエーテル;4,4'−ジヒドロキシ−3,3'−ジメチルフェニルエーテル等のジヒドロキシアリールエーテル類、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルフィド;4,4'−ジヒドロキシ−3,3'−ジメチルジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド;4,4'−ジヒドロキシ−3,3'−ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン;4,4'−ジヒドロキシ−3,3'−ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類、4,4'−ジヒロキシジフェニルなどのジヒドロキシジフェニル類などが挙げられる。これらの二価フェノールは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0010】
また、炭酸エステル化合物としては、ジフェニールカーボネイト等のジアリールカーボネイトやジメチルカーボネイト、ジエチルカーボ等のジアルキルカーボネイト等が挙げられる。そして分子量調整剤としては通常、ポリカーボネイトの重合に用いられるものでよく、各種のものを用いることができる。具体的には、一価フェノールとして、例えば、フェノール,o−n−ブチルフェノール,m−n−ブチルフェノール,p−n−ブチルフェノール,o−イソブチルフェノール,m−イソブチルフェノール,p−イソブチルフェノール,o−t−ブチルフェノール,m−t−ブチルフェノール,p−t−ブチルフェノール,o−n−ペンチルフェノール,m−n−ペンチルフェノール,p−n−ペンチルフェノール,o−n−ヘキシルフェノール,m−n−ヘキシルフェノール,p−n−ヘキシルフェノール,p−t−オクチルフェノール,o−シクロヘキシルフェノール,m−シクロヘキシルフェノール,p−シクロヘキシルフェノール,o−フェニルフェノール,m−フェニルフェノール,p−フェニルフェノール,o−n−ノニルフェノール,m−ノニルフェノール,p−n−ノニルフェノール,o−クミルフェノール,m−クミルフェノール,p−クミルフェノール,o−ナフチルフェノール,m−ナフチルフェノール,p−ナフチルフェノール;2,5−ジ−t−ブチルフェノール;2,4−ジ−t−ブチルフェノール;3,5−ジ−t−ブチルフェノール;2,5−ジクミルフェノール;3,5−ジクミルフェノール;p−クレゾール,ブロモフェノール,トリブロモフェノールなどが挙げられる。これらの一価フェノールのなかでは、p−t−ブチルフェノール,p−クミルフェノール,p−t−オクチルフェノール、フェノールなどが好ましく用いられる。
【0011】
その他、分岐剤として、例えば、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン;α,α',α"−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン;1−〔α−メチル−α−(4'−ヒドロキシフェニル)エチル〕−4−〔α',α'−ビス(4"−ヒドロキシフェニル)エチル〕ベンゼン;フロログリシン,トリメリト酸,イサチンビス(o−クレゾール)等の官能基を3つ以上有する化合物を用いることもできる。
【0012】
本発明において用いられる(A)成分である芳香族ポリカーボネイトは、粘度平均分子量が22000以下であることが必要であり、好ましくは12,000〜20,000である。12,000未満であると、機械的強度に劣り、22,000を超えると全光線透過率が91%未満となり光学シートとして好ましくない。複屈折(位相差;波長550nmにおけるリタデーション値)は150nm以下であり、好ましくは、130nm以下であり、且つシート面内の任意箇所でサンプリングして測定したリタデーション値の標準偏差値が10以下であることが好ましい。また、(A)成分である芳香族ポリカーボネイトのガラス転移温度は141〜149℃程度である。芳香族ポリカーボネイトが押出機から押し出された後、このようなガラス転移温度以下で冷却されることにより、複屈折が150nm以下となり、その標準偏差値を10以下とすることができる。
標準偏差値の下限は低ければ低いほど好ましいが、光学シートに要求される光学的等方性および経済性等の観点から、実用的には15程度で十分である。
本発明において、任意箇所というのは、100cm×100cmの光学シートのサンプルより、各測定箇所が60cm以上離れた2箇所の4cm×4cmの部分の1cmピッチの3cm×3cmの格子上9箇所について合計18点を測定するものとする。
【0013】
(B)成分である酸化防止剤としては、リン系、フェノール系、ペンタエリスリトール系のものが挙げられる。
中でも、リン系、より具体的には亜リン酸エステル、リン酸エステルなどのリン系酸化防止安定剤が好ましく用いられる。亜リン酸エステルとしては、たとえば、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリノリルホスアァイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリシクロヘキシルホスファイト、モノブチルジフエニルホスファイト、モノオクチルジフエニルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、ビス(2.6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4−ジフエニレンホスフォナイトなどの亜リン酸のトリエステル、ジエステル、モノエステルなどが挙げられる。
【0014】
リン酸エステルとしては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリス(ノニルフェニル)ホスフェート、2−エチルフェニルジフェニルホスフェートなどが挙げられる。これらリン系酸化防止剤は単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
これらのリン系酸化防止剤の中でも、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、ビス(2.6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトが好ましく、ペンタエリスリトール系、中でもビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイトが特に好ましい。上記リン系酸化防止剤は、単独でまたは2種以上を組合せて使用することができる。
【0016】
リン系酸化防止剤は、市販品をそのまま使用することができ、例えば、旭電化工業(株)製品〔商品名:アデカスタブ2112〕、クラリアントジャパン社の製品〔サンドスタブP−EPQ〕、住友化学社の製品〔スミライザーP−168〕、チバガイギー社製品〔トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、商品名:イルガホス168)、旭電化(株)の製品〔商品名:アデガスタブPEP36等が挙げられる。
【0017】
フェノール系の酸化防止剤としては、α−トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン、シナピルアルコール、ビタミンE、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネイト、2−tert−ブチル−6−(3'−tert−ブチル−5'−メチル−2'−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(N,N−ジメチルアミノメチル)フェノール、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネイトジエチルエステル、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4'−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,2'−ジメチレン−ビス(6−α−メチル−ベンジル−p−クレゾール)2,2'−エチリデン−ビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2'−ブチリデン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4'−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−N−ビス−3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネイト、1,6−へキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネイト]、ビス[2−tert−ブチル−4−メチル6−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシベンジル)フェニル]テレフタレート、3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1,−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、4,4'−チオビス(6−tert−ブチル−m−クレゾール)、4,4'−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2'−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、4,4'−ジ−チオビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4'−トリ−チオビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2−チオジエチレンビス−[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネイト]、2,4−ビス(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、N,N'−ヘキサメチレンビス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナミド)、N,N'−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス2[3(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチルイソシアヌレート、およびテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシメチル]メタンなどが例示される。これらはいずれも入手容易である。中でもn−オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネイト、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシメチル]メタンが好適であり、特にn−オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネイトが好適である。上記ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、単独でまたは2種以上を組合せて使用することができる。
フェノール系の酸化防止剤は市販品をそのまま使用することができ、例えば、旭電化工業社製品〔商品名:アデカスタブAO−80〕、同社製品〔商品名:アデカスタブAO−30〕、チバスペシャリティーケミカルズ(株)製品〔商品名:イルガノックス1010、同1076〕等が挙げられる。
【0018】
(B)成分である酸化防止剤は、前記リン系酸化防止剤を1種以上用いても良いし、フェノール系酸化防止剤を1種以上用いても良く、リン系酸化防止剤を1種以上とフェノール系酸化防止剤を1種以上とを組み合わせて用いても良い。
その添加量は(A)成分である芳香族ポリカーボネイト100質量部に対して、0.01〜1質量部の範囲、好ましくは、0.05〜0.3質量部の範囲である。このような範囲とすることにより、光学シートとしての好ましい特性が得られる。
【0019】
本発明の光学シートは、その厚みが0.1〜1mmにおける全光線透過率が91%以上である。押出機から押し出された後、前記のガラス転移温度以下で冷却することにより、全光線透過率を91%以上とすることができる。好ましくは、91.5〜92%である。
91%以上とすることにより、輝度が低下するのを防止する。92%を超えるものは、芳香族ポリカーボネートの分子骨格由来の吸収のため、工業的な製造は現時点では困難である。
【0020】
一般に、射出成形品は射出成形時の剪断による分子配向したまま金型内で冷却され、その分子配向が凍結されるため残留応力歪が大きくなる傾向があり、金型のゲート付近と反ゲート末端では、残留応力歪の度合いが不均一となる。通常、ゲート周辺部の残留応力歪が大きくなるため、レターデーション値はより大きな計測値を示す傾向にある。
一方、押出成形によるシートは、押出成形時の条件、材料の粘度(粘度平均分子量に依存する)にもよるが、レターデーション値を低くすることが可能であり、レターデーションのシート製品内の分布も均一化が容易である。このため、射出成形による導光板よりもより表示品位の高い導光板を得ることができる。レターデーション値を150nm以下とし、且つシート面内の任意箇所でサンプリングして測定したリタデーション値の標準偏差値を10以下とすることにより、光学シートを加工した導光板を用いたバックライトを液晶パネルに搭載して表示装置とした場合の表示品位が低下するのが防止される。レターデーション値は好ましくは、100nm以下、さらに好ましくは50nm以下である。
【0021】
本発明の光学シートは、厚み0.4mmで測定した可視−UV分光スペクトルにおいて、波長300nmにおける分光光線透過率70%以上または芳香族ポリカーボネイトを良溶媒に溶解して測定した分光光線透過率(溶液法による測定:溶液セルの導光長が5cm、試料溶液濃度12g/dl、溶媒ジクロロメタン、波長450nm)は94%以上となる芳香族ポリカーボネイト樹脂をポリカーボネイト樹脂組成物の(A)成分として用いることが好ましい。
通常、光学シートを用いて成形した導光板においては、端面から可視光領域の波長400〜700nmの光線が入光し、端面方向に導波、伝播させ、厚み方向(面方向)に光の方向性を制御することで面発光させる。この端面方向に入射させた光を反対側の端面から出射させ、光の分光特性を測定することにより、導光板の光の伝播に適合した評価をすることができる。
しかしながら、このような測定において、1mm以下の薄い成形片での測定は特別な測定装置を用意する必要があり、現実的には困難である。そこで、本発明では測定評価が容易な厚み方向(面方向)の分光特性によりシートの特性評価を行った。一般にシートの厚みが1mm以下と薄くなると、厚み方向に可視光を透過させた分光光線透過率の計測では、シート基材固有の分光特性差の検出が困難となる。しかしながら、厚み方向の分光特性計測であっても、紫外領域の380nm以下の波長に着目すれば、この分光特性差の評価が可能となる。即ち、厚み方向の計測による300〜380nmの分光透過率の評価結果は直接的には可視光域の分光透過率を反映しないが、相対的に300〜380nmの分光透過率と連動して端面方向の可視光波長領域の分光特性を反映する傾向があり、その代用が可能である。
具体的には、厚み方向で計測した300〜380nmの分光透過率が高い特性の光学樹脂基材は、端面方向で計測した場合の可視光波長領域における分光特性が高くなるという傾向がある。分光光線透過率70%未満では、導光性能が不足するために、輝度が低下する。より好ましくは、73%以上である。
【0022】
本発明の光学シートにおける上記(A)芳香族ポリカーボネイトの粘度平均分子量は22000以下であり、好ましくは14000〜20000である。より好ましくは15000〜19000である。14000未満であると、製品強度が不足する他、製品の外形加工時の切粉付着による歩留まりの低下をもたす。特に、光学シートの肉厚を0.3mm以下の薄肉にした場合に、強度の不足を招き、破損しやすいものとなる傾向がある。
粘度平均分子量が2万2000を超えると、押出成形条件にもよるが、樹脂基材の黄変やレターデーション値が大きくなりやすく、全光線透過率が91%への到達が困難となる。
また、導光板等は樹脂シートをロールエンボス成形またはプレス成形によりシート表面に数〜数百ミクロンの微細な凹凸パターン(プリズムやドット、ドーム状の凸レンズ)を転写して凹凸パターンを形成させることで製造されるが、粘度平均分子量2万2000を超えるとこの際の転写性も低下する。
【0023】
本発明の光学シートは芳香族ポリカーボネイト樹脂組成物を押出成形して作製されるが、(A)成分である芳香族ポリカーボネイトおよび(B)成分である酸化防止剤以外に(C)成分として熱可塑性ポリアクリル酸アルキルエステル系樹脂を微量添加してもよい。(C)成分を微量添加することで、分光特性がさらに向上する。
(C)成分は(A)成分/(C)成分の比率が99.99/0.01〜99.00/1.00(質量比)になるように添加するのが好ましい。さらに好ましくは99.95/0.05〜99.50/0.50、特に好ましくは99.90/0.10〜99.70/0.30である。(C)成分の添加比率を0.01以上とすることにより、成形体の透明性が向上し、1.00以下とすることにより、他の所望物性を損なうことなく透明性を保持することができる。
【0024】
(C)成分である熱可塑性ポリアクリル酸アルキルエステル系樹脂としてはアクリル酸、アクリル酸エステル、アクリロニトリル及びその誘導体のモノマー単位から選ばれる少なくとも一種を繰り返し単位とする重合体であり、単独重合体又はスチレン、ブタジエン等との共重合体でもよい。具体的にはポリアクリル酸、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリアクリロニトリル、アクリル酸エチル−アクリル酸−2−クロロエチル共重合体、アクリル酸−n−ブチル−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体などが挙げられる。これらの中でも、特に、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)を好適に用いることができる。ポリメタクリル酸メチル(PMMA)としては公知のものを使用することができるが、通常、過酸化物、アゾ系の重合開始剤の存在下、メタクリル酸メチルモノマ−を塊状重合して製造されたものが好ましい。
(C)成分である熱可塑性ポリアクリル酸アルキルエステル系樹脂は、分子量が200〜10万であることが好ましく、さらに好ましくは2万〜6万である。分子量が200〜10万であることにより、成形時に、(A)成分と(C)成分間の相分離が速くなりすぎることがないので、光学シートにおいて十分な透明性を得ることができる。
【0025】
本発明の光学シートを製造する方法は特に制限されないが、下記の、本発明の光学シートの製造方法によれば所望の光学シートを製造することができる
本発明の光学シートの製造方法は、前記芳香族ポリカーボネイト樹脂組成物をシート状に溶融押し出しする成形工程、溶融押し出しされたシート状成形体をガラス転移温度以下に急冷する冷却工程、および冷却されたシート状成形体を50℃以上、前記ポリカーボネイト樹脂のガラス転移温度以下で熱処理する熱処理工程を含む。
前記冷却工程は、冷却水が流下するスリットに前記シート状成形体を通過させることにより、前記シート状成形体を冷却することができる。また、前記熱処理工程は、鏡面を有する金属製エンドレスベルトおよび/または金属ロールで、前記シート状成形体の表裏面を挟持して加熱することより、実施されることができる。
押出成形法としては、通常一般に用いられる3本ロールを備えたシート成形機でも成形条件を選定することにより、導光板として利用可能な光学シートの製造が可能である。押出機のシリンダー温度およびダイスの温度は樹脂の組成の違い、ガラス転移温度等にも依存するが220〜340℃、好ましくは240〜320℃程度である。
(A)成分/(C)成分の比率が99.99/0.01〜99.00/1.00(質量比)で、かつ、(B)酸化防止剤を前記のような比率で含む樹脂組成物を原料として押出成形を行う場合には、上記の溶融押し出しで得られたシート状成形体をガラス転移温度以下に急冷する冷却工程が重要であり、このような冷却工程を具備する押出成形装置を適用した方が、より光学的に透明度が高く光学シートを得ることができる。
冷却温度はガラス転移温度以下とする必要があり、好ましくは140℃以下、さらに好ましくは120℃以下である。冷却温度をガラス転移温度以下とすることにより、光学シートの厚み0.1〜1mmにおける全光線透過率を91%以上とすることができる。冷却温度の下限は樹脂の組成の違い、ガラス転移温度等にも依存するが50℃程度である。50℃以上とすることにより、成形された光学シートにおける残留ひずみを少なくして光学的等方性を確保することができる。冷却は、通常、複数のロールを用いて行なわれる。
押出機のシリンダー温度は220〜340℃、好ましくは240〜320℃程度である。
また、冷却されたシート状成形体は、50℃以上で前記芳香族ポリカーボネイトのガラス転移温度以下で熱処理する熱処理工程により、前述の急冷過程による残留歪を一旦開放し、賦形することで、皺のない均一な肉厚で、レターデーション値が低い光学シートを得ることができる。
これらの製造工程を具備した押出成形機を適用することで、(A)成分/(C)成分の比率が99.99/0.01〜99.00/1.00(質量比)の樹脂組成物の溶融状態から冷却過程で起こる相分離を抑制することが可能となり、光線透過率の低下が抑制できる。
これらの工程を具備する製造法としては、弾性ロール法またはスチールベルト法などが挙げられ、これらを具備した押出成形機の適用がより好ましい。
スチールベルト法としては、例えば、特許公開公報2004−230598号公報にて開示されている製造法が挙げられる。
この製造法においては、複数のロールに巻装され、加熱ロール部により加熱された無端ベルトに、成形されたシートを密着して走行させ、次いで同シートを前記無端ベルト及びロール間で面状又は線状圧接した後、同シートを前記無端ベルトから剥離させるシートの製造方法であって、同シートの無端ベルトとは反対側から、加熱された同シートを走行中に保温及び/又は加熱する(図1参照)。保温及び/又は加熱は、保温板、熱風吹き出し、赤外線により行なわれる。
図1において、1はテンションロール、2は加熱ロール、3は冷却ロール、4は挾圧ロール、5は無端ベルト、6はシート供給ロール、7はテンションロール、8は加熱装置である。Sは凹凸形状を転写する前のシートを、dは挾圧ロール4と無端ベルト5との間で挟圧されるシートの長さを示す。
弾性ロール法としては、例えば、特許公開公報2004−155101号に開示されている方法が挙げられる。
この製造法においては、押出機にT型ダイを取り付けてシートを形成させ、このシートを第一挟圧ロール、第二挟圧ロール、第三挟圧ロールに通し、複数の移送ロールを直線状に並べてシートを製造し、引取りロールを通して製造する方法である(図2参照)。
図2において、21は押出機、22、23、25は挟圧ロール、24は引取りロール、26a、26b、26cは移送ロールである。
【0026】
次に、前記の光学シートの表面に凹凸パターンを形成させた導光板等の本発明の成形体について説明する。
以上の特性、組成、製造方法により得られた光学シートは、その表面に微細な凹凸パターンを形成することにより成形体とし、配光制御が可能となり、導光板、拡散シート、再帰性反射板、プリズムシートおよびフレネルレンズシート等として用いることができる。凹凸パターンとしてはドット形状、凸レンズ形状、凹レンズ形状、V溝プリズム形状、三角錘や四角錘などの多角錘プリズム形状などが挙げられる。
導光板においては、凹凸パターンにグラデーション(濃淡)を付与するのが好ましい。
通常の拡散シート、再帰性反射板およびプリズムシートならば均一なパターンを形成するのが好ましい。
また、直下型バックライトで用いられる拡散シートの場合には光源上の光源影から光源間までの距離の間に凹凸パターンの濃淡を形成することで、輝度の均一化を図ることができる。
このような凹凸パターンの形成法としては、ロールエンボス法、真空プレス成形法、ベルト転写法などが挙げられる。中でもベルト状の薄板ステンレスの表面にニッケルめっき箔に微細な凹凸パターンを形成した金型を製作し、上下で回転する金型ベルトの間で樹脂フィルムを同期搬送しながら加熱、加圧転写、剥離の各工程を連続して行う手段を備えた装置を用いたベルト転写法(例えば、特開2005−321681号公報)を適用することが好ましい。この方法では真空引き、昇温、降温のための時間が不要で、高い生産性で大面積への転写を行うことができる(図3参照)。
図3において、31は加熱ロール、32は凹凸を形成させるための転写ロール、33は予備加熱ロール、34は冷却ロール、35は搬送ロール、36はエンドレスベルトである。左側の矢印は凹凸形状を転写する前の光学シート、右側の矢印は転写後の光学シート、すなわち、導光板等の成形体を示す。
【0027】
この他、微細な凹凸パターンが形成された金型を用いてアクリル系紫外線硬化樹脂を本発明の光学シートに押し当てながら紫外線で硬化させるリソグラフィー法や、白色インキを用いたスクリーン印刷法になどが適用できる。
前記の光学シート成形と表面に凹凸パターンを形成させる工程を同時に行うことにより、導光板等の成形体を製造することもできる。このような同時工程を備える製造装置としては、例えば、東芝機械株式会社製連続押出エンボス成形機SPU−03026Wが好適に利用できる(図4参照)。
図4に示す装置では、特殊タッチロール(special touch roll)の柔軟性により押付長さが長くなり、転写率が向上する。また、ロール隙間調整方式(Pressure sensorおよびPositioning sensor)により、隙間、押し付け力の測定および制御が可能となる。
【実施例】
【0028】
次に、実施例および比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0029】
実施例および比較例で使用された配合材料等は以下の通りである。
<配合材料>
(1)芳香族ポリカーボネートPC1
タフロンFN1700A〔出光興産株式会社製のビスフェノールAポリカーボネート樹脂、ガラス転移温度:142℃、粘度平均分子量:17,300、屈折率:1.585〕
(2)芳香族ポリカーボネートPC2
タフロンFN1900A〔出光興産株式会社製のビスフェノールAポリカーボネート樹脂、ガラス転移温度:145℃、粘度平均分子量:19,500、屈折率:1.585〕
(3)芳香族ポリカーボネートPC3
タフロンFN2500A〔出光興産株式会社製のビスフェノールAポリカーボネート樹脂、ガラス転移温度:148℃、粘度平均分子量:23,500、屈折率:1.585〕
(4)リン系酸化防止剤
アデガスタブPEP36〔旭電化(株)製のビス(2,6−ジーt−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト〕
(5)フェノール系酸化防止剤
イルガノックス1076〔チバスペシャリティーケミカルズ(株)製のフェノール系酸化防止剤、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕表1では、「IRG1076」と記載する。
(6)熱可塑性ポリアクリル系樹脂
ダイアナールBR83〔三菱レイヨン(株)製、分子量:25,000、屈折率1.490、分子量は、オストワルド型粘度管を用いて25℃におけるクロロホルム溶液の極限粘度[η]を測定し、次の関係式により平均重合度PAを求めて計算した。logPA=1.613log([η]×104/8.29)〕
表1では、「アクリル酸エステル樹脂」と記載する。
(7)青色染料
HOSTALUX KSN〔クラリアントジャパン(株)製、4-(ベンゾオキサゾール−2−イル)-4′-(5-メチルベンゾオキサゾール−2−イル)スチルベンと青色顔料の混合物〕
【0030】
<混練押出>
タンブラーを用いて表1に示す各実施例および比較例における配合比率で各材料を混合しスクリュウ径65mmφの単軸押出機を用いて280℃で溶融混練押出を行い各例で使用したペレットを作製した。
【0031】
<光学シート押出成形>
条件1(実施例1〜4および比較例1、2で適用)
図2に示す押出機21を設けた「3本ロール装置」により光学シート(厚み0.4mm)を製造した。押出機21のスクリュウ直径65mm、T型ダイの幅が650mm、直径300mmの第一挟圧ロール22を使用した。第二挟圧ロール23及び第三挟圧ロール25は、いずれも直径300mmの金属ロールを使用した。移送ロール26は、直径70mmの金属ロール3個が直線状に並んだものを使用した。なお、最初の移送ロール26aから最終の移送ロール26c間の合計距離は3mとした。
条件2(実施例5で適用)
Hitz産機テクノ株式会社製のUFロール挟圧押出成形機(弾性ロール法―図2参照)を用いて行なった。押出機のスクリュウ直径は90mmである。
条件3(実施例6で適用)
東芝機械株式会社製連続押出エンボス成形機SPU−03026W(図4参照)を用いてシート成形で得られたシートに三角錘プリズムアレイ(高さ50μm)をニッケルメッキにて形成したスタンパーを押し当てて同時にパターン転写を行なうことによりプリズムシートを作製した(パターン形成2)。押出機のスクリュウ直径26mmφ、その他各部の温度は表1に記載したとおりである。
条件4(比較例3で適用)
各所の温度を表1に示す温度に変更した以外は条件1と同様に行なった。
条件5(比較例4で適用)
型締力100トンの射出成形機〔住友重機械工業(株)製、品番SG100M-HP〕を用いて成形温度360℃(金型温度120℃)で射出成形を行なった。
【0032】
<プレス成形によるパターン転写>
実施例6以外の各実施例および各比較例において作製した各光学シートを名機製作所製微細パターン転写用真空プレスで真空吸引後、三角錘プリズムアレイ(高さ50μm)をニッケルメッキにて形成したスタンパーに押し当て、160℃にてプレス成形を行ない、導光板を作製した(パターン形成1)。
【0033】
<評価方法>
(1)全光線透過率
スガ試験機株式会社製のヘイズメーター(HGM−2DP)を用いてJIS−K−7105に準拠して測定した。
(2)シートの分光光線透過率
厚み0.4mmの光学シートサンプルを島津製作所製のUV可視分光光度計(UV−2450)により波長300nmでの分光光線透過率(%)を測定した。
(3)複屈折率(レターデーション)およびその標準偏差値
大塚電子株式会社製のリタデーション測定装置(RETS-100)により、550nmに対する複屈折(レターデーション値)を測定した。
本発明において、任意箇所というのは、100cm×100cmの光学シートのサンプルより、各測定箇所が60cm以上離れた2箇所の4cm×4cmの部分の1cmピッチの3cm×3cmの格子上9箇所について合計18点の測定を行った。
計算式:
標準偏差(σ)=
√[{(Re1−Reav2+(Re2−Reav2+・・・・・+(Ren−Reav2}/n]
nは測定した全サンプリング数
Renはn番目のサンプリング箇所のRe値
ReavはReの平均値を表わす。
(4)溶液法による光学特性(分光光線透過率)
a)サンプル調製
切断したサンプル(6g)をメスフラスコ(50ミリリットル)に入れジクロロメタンを加え溶解させ、溶解の際、超音波照射を3時間行った。
b)測定装置:島津製作所 UV−2450
c)測定条件
セル長さ:5cm
測定波長:900〜200μm
スキャンスピード:低速モードに設定
スリット幅:2.0nm
切り替え波長:360nm
d)測定手順
測定の2時間前に装置を立ち上げて安定化させた後、ベースラインを測定し、次いで、500nmにてオートゼロを測定し、ゼロ点が取れたか測定することにより確認する。
ジクロロメタン及びアセトンを用いてセルをよく洗浄、セル温度が室温になるまで待ち、セル温度が戻った時点で、測定溶液を加え、セルを測定室に入れてふたをし、1分ほど放置した後、測定開始する。測定終了後、測定溶液を出して洗浄し、サンプルを変えてこれを繰り返す。
(5)凹凸パターンの転写性
実施例1〜6および比較例1〜4で得られた各導光板について、輝度特性を反映するパターンの転写率を輝度評価に代えて実施した。
転写率(%)=[転写した導光板の三角錘の高さ(μm)/スタンパーにおける三角錘の高さ(50μm)]×100
【0034】
[実施例1〜6]
表1に示す配合材料を用いて溶融混練押出を行なって作製した各ペレットを用い、「条件1」、「条件2」または「条件3」の成形条件を適用して光学シートを作製し、各光学シートに前記パターン形成1(実施例1〜5)またはパターン形成2(実施例6)を適用して導光板を作製した。各条件における各所の温度は表1に記載されている通りである。
【0035】
[比較例1〜4]
表1に示す配合材料を用いて溶融混練押出を行なって作製した各ペレットを用い、「条件1」、「条件4」または「条件5」の成形条件を適用して光学シートを作製し、各光学シートにパ前記ターン形成1を適用して導光板を作製した。各条件における各所の温度は表1に記載されている通りである。
【0036】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の光学シートは特定の芳香族ポリカーボネートを含む樹脂組成物を特定の条件下で押出成形することにより固体構造における高次構造を制御し、用途に応じて表面に形成させる凹凸パターンを最適化することにより導光板、拡散シート、再帰性反射板、または輝度向上プリズムシート等に加工される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】スチールベルト法による転写工程を示す模式図である。
【図2】挟圧ロール法による転写工程を示す図である。
【図3】ベルト転写法による転写工程を示す模式図である
【図4】シート成形と凹凸パターンを形成させる工程を同時に行う製造装置の模式図である。
【符号の説明】
【0039】
1:テンションロール
2:加熱ロール
3:冷却ロール
4:挾圧ロール
5:無端ベルト
6:シート供給ロール
7:テンションロール
8:加熱装置
S:凹凸形状を転写する前のシート
d:挾圧ロールと無端ベルトにより挟圧されるシートの長さ
21:押出機
22:挟圧ロール
23:挟圧ロール
24:引取りロール
25:挟圧ロール
26a:移送ロール
26b:移送ロール
26c:移送ロール
31:加熱ロール
32:凹凸を形成させるための転写ロール
33:予備加熱ロール
34:冷却ロール
35:搬送ロール
36:エンドレスベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)粘度平均分子量22000以下の芳香族ポリカーボネイト100質量部および(B)酸化防止剤0.01〜1質量部を含有し、青色系色素または顔料を含まない芳香族ポリカーボネイト樹脂組成物が押出機から押し出された後、ガラス転移温度以下で冷却された光学シートであって、該光学シートの厚み0.1〜1mmにおける全光線透過率が91%以上であることを特徴とする光学シート。
【請求項2】
複屈折(位相差;波長550nmにおけるリタデーション値)が150nm以下で、且つシート面内の任意箇所でのリタデーション値の標準偏差値が10以下である請求項1に記載の光学シート。
【請求項3】
前記光学シートに用いられる芳香族ポリカーボネイト樹脂組成物から調製された試料板厚みが0.4mmで測定した可視−UV分光スペクトルにおいて、波長300nmにおける分光光線透過率70%以上または芳香族ポリカーボネイトを良溶媒に溶解して測定した分光光線透過率(溶液法による測定:溶液セルの導光長が5cm、試料溶液濃度12g/dl、溶媒ジクロロメタン、波長450nm)が94%以上である請求項1または2に記載の光学シート。
【請求項4】
前記(A)成分100質量部に対して(C)熱可塑性ポリアクリル系樹脂0.01〜1質量部を含む請求項1〜3のいずれかに記載の光学シート。
【請求項5】
前記(B)成分の酸化防止剤がリン系酸化防止剤及び/又はフェノール系酸化防止剤である請求項1〜4のいずれかに記載の光学シート。
【請求項6】
前記芳香族ポリカーボネイト樹脂組成物をシート状に溶融押し出しする成形工程、溶融押し出しされたシート状成形体をガラス転移温度以下に急冷する冷却工程、および冷却されたシート状成形体を、50℃以上、前記芳香族ポリカーボネイト樹脂組成物のガラス転移温度以下で熱処理する熱処理工程からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の光学シートの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の光学シートの表面に凹凸パターンを形成させてなる成形体。
【請求項8】
導光板、拡散シート、再帰性反射板、プリズムシートおよびフレネルレンズシートのいずれかである請求項7に記載の成形体。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれかに記載の光学シートの表面に凹凸パターンを形成させることを特徴とする成形体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−242752(P2009−242752A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−94212(P2008−94212)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】