説明

光学フィルムの検査方法

【課題】ハイブリッドネマチック配向液晶フィルムを含む光学フィルムの欠陥の検査を的確に行うことができる光学フィルムの検査方法を提供する。
【解決手段】液晶をハイブリッドネマチック配向させた第1液晶フィルムを含む光学フィルムの検査方法であって、前記光学フィルムに対し、光源から第1偏光板を通して光を照射し、前記光学フィルムに対して前記光源と反対側に、液晶をハイブリッドネマチック配向させた第2液晶フィルムと第2偏光板とからなる欠陥検査用素子を、前記第2液晶フィルム側が前記光学フィルム側に隣接するように配置し、且つ前記欠陥検査用素子を、前記光学フィルムに対し傾斜させて、前記光学フィルムを検査する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶をハイブリッドネマチック配向させた液晶フィルムを含む光学フィルムの検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
TFT(Thin Film Transistor)液晶ディスプレイにおいては、その表示特性改善のために、棒状液晶あるいは円盤状液晶をハイブリッドネマチック配向させた液晶フィルムを用いることにより、広視野角な液晶ディスプレイが実現されている(例えば、特許文献1および2参照。)。このようなハイブリッド配向液晶フィルムを含む光学フィルムは、フィルム面内に欠陥が存在すると、TFT液晶ディスプレイの表示特性に悪影響を与える。このため、光学フィルムについて欠陥の検査を行い、欠陥が多い光学フィルムについては事前に排除しておくことが必要である。
特許文献3によれば、ハイブリッドネマチック配向液晶フィルムの検査方法として、ハイブリッド配向液晶フィルムの配向軸を略直交に配置した欠陥検査用素子を用いる方法が提案されている。しかしながら、欠陥の種類によっては、正面あるいは斜め方向から見た場合の欠陥部分の見え方が、輝点から黒点に変化したりするなど検出しづらいという課題があった。
【特許文献1】特開平10−186356号公報
【特許文献2】特開2005−62673号公報
【特許文献3】特開2006−3174号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ハイブリッドネマチック配向液晶フィルムを含む光学フィルムの欠陥の検査を的確に行うことができる光学フィルムの検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0005】
即ち、本発明の第1は、液晶をハイブリッドネマチック配向させた第1液晶フィルムを含む光学フィルムの検査方法であって、前記光学フィルムに対し、光源から第1偏光板を通して光を照射し、前記光学フィルムに対して前記光源と反対側に、液晶をハイブリッドネマチック配向させた第2液晶フィルムと第2偏光板とからなる欠陥検査用素子を、前記第2液晶フィルム側が前記光学フィルム側に隣接するように配置し、且つ前記欠陥検査用素子を、前記光学フィルムに対し傾斜させて、前記光学フィルムを検査することを特徴とする光学フィルムの検査方法、である。
【0006】
本発明の第2は、前記第1液晶フィルムの配向軸と前記第2液晶フィルムの配向軸とが略直交するように前記欠陥検査用素子を配置することを特徴とする本発明の第1に記載の光学フィルムの検査方法、である。
【0007】
本発明の第3は、液晶をハイブリッドネマチック配向させた第1液晶フィルムを含む光学フィルムの検査方法であって、前記光学フィルムに対し、光源から第1偏光板を通して光を照射し、前記光学フィルムに対して前記光源と反対側に、液晶をハイブリッドネマチック配向させた第2液晶フィルム、1軸延伸フィルムからなる第1位相差フィルム、第2偏光板とを順次積層してなる欠陥検査用素子を、前記第2液晶フィルム側が前記光学フィルム側に隣接するように配置し、第1位相差フィルムの遅相軸と第2偏光板の吸収軸が略直交となるように配置し、且つ前記欠陥検査用素子を、前記光学フィルムに対し傾斜させて、前記光学フィルムを検査することを特徴とする光学フィルムの検査方法、である。
【0008】
本発明の第4は、前記第1液晶フィルムの配向軸と前記第2液晶フィルムの配向軸とが略直交するように前記欠陥検査用素子を配置することを特徴とする本発明の第3に記載の光学フィルムの検査方法、である。
【0009】
本発明の第5は、液晶をハイブリッドネマチック配向させた第1液晶フィルムを含む光学フィルムの検査方法であって、前記光学フィルムに対し、光源から第1偏光板を通して光を照射し、前記光学フィルムに対して前記光源と反対側に、液晶をハイブリッドネマチック配向させた第2液晶フィルム、液晶をホメオトロピック配向させた第3液晶フィルム、1軸延伸フィルムからなる第1位相差フィルム、第2偏光板とを順次積層してなる欠陥検査用素子を、前記第2液晶フィルム側が前記光学フィルム側に隣接するように配置し、第1位相差フィルムの遅相軸と第2偏光板の吸収軸が略直交となるように配置し、且つ前記欠陥検査用素子を、前記光学フィルムに対し傾斜させて、前記光学フィルムを検査することを特徴とする光学フィルムの検査方法、である。
【0010】
本発明の第6は、前記第1液晶フィルムの配向軸と前記第2液晶フィルムの配向軸とが略直交するように前記欠陥検査用素子を配置することを特徴とする本発明の第5に記載の光学フィルムの検査方法、である。
【0011】
本発明の第7は、液晶が棒状液晶分子からなることを特徴とする本発明の第1〜6のいずれかに記載の検査方法、である。
【0012】
本発明の第8は、液晶が円盤状液晶分子からなることを特徴とする本発明の第1〜6のいずれかに記載の検査方法、である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の光学フィルムの検査方法によれば、ハイブリッドネマチック配向液晶フィルムを含む光学フィルムの欠陥の検査を的確に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面とともに、本発明の光学フィルムの検査方法の実施形態について詳細に説明する。
【0015】
(第1実施形態)
まず本発明に係る光学フィルムの検査方法の第1実施形態について説明する。
はじめに、本発明の光学フィルムの検査方法において検査対象となる光学フィルムについて図1を参照して説明する。
【0016】
図1は、本発明の光学フィルムの検査方法に用いられる光学フィルムの一例を示す図である。図1に示すように、光学フィルム1は、第1液晶フィルムとして、液晶の傾きを膜厚方向(矢印A方向)に変化させて液晶をハイブリッドネマチック配向させたハイブリッド配向液晶層2を含む。ここで、ハイブリッドネマチック配向とは、ネマチック液晶の水平配向と垂直配向とが複合した配向を言い、例えばネマチック液晶分子3の配向が、ハイブリッドネマチック配向液晶層2の一面2a側では水平配向となっており、面2aと反対の面2b側では垂直配向となっており、その間では、面2aから面2bに向かう方向に沿って、水平配向から垂直配向に徐々にその配向を変化させるような配向を言う。ハイブリッドネマチック配向液晶層2の2a面(水平配向)から液晶層を通して2b面(垂直配向)を見た場合、液晶分子ダイレクターとダイレクターの2b面への投影成分がなす角度が鋭角となる方向で、かつ投影成分と平行な方向をハイブリッドネマチック液晶層のチルト方向と定義する。図1では、ハイブリッドネマチック配向液晶層2のチルト方向11とする。
なお図1に示す面2a側が垂直配向、面2b側が水平配向とし、ハイブリッドネマチック配向が図1と逆となるような構造でもよいが、この場合は、チルト方向の定義では同じ方向になるが、液晶分子の傾く方向が逆になるため、後述する欠陥検査用素子の傾ける方向も考慮が必要となる。
【0017】
光学フィルム1は、ハイブリッドネマチック配向液晶層2を含むものであればよく、従って、ハイブリッドネマチック配向液晶層2のほかに、他のフィルムを含んでいてもよい。他のフィルムには通常、図1に示すように、ハイブリッドネマチック配向液晶層2を支持する支持基板4などがある。かかる支持基板4はハイブリッドネマチック配向液晶層2を支持し得るものであり、且つ厚さ方向に直交する面内において等方性を示すものであれば特に限定されないが、かかる支持基板4としては光学的に等方な基板が好ましく、例えばフジタック(富士フィルム社製品)やコニカタック(コニカミノルタオプト社製品)などのトリアセチルセルロース(TAC)フィルム、アートンフィルム(JSR社製品)やゼオノアフィルム、ゼオネックスフィルム(日本ゼオン社製品)などのシクロオレフィン系ポリマー、TPXフィルム(三井化学社製品)、アクリプレンフィルム(三菱レーヨン社製品)が挙げられるが、楕円偏光板とした場合の平面性、耐熱性や耐湿性などからトリアセチルセルロース、シクロオレフィン系ポリマーが好ましい。支持基板4の厚さは、一般には、1〜100μmが好ましく、特に5〜50μmとするのが好ましい。支持基板4の面内方向の屈折率をnx、ny、厚さ方向の屈折率をnz、支持基板4の厚さをdとした場合、面内方向の位相差値をRe=(nx−ny)×d、厚さ方向の位相差値をRth={(nx+ny)/2−nz}×dと定義するとき、Re値は20nm以下が好ましく、より好ましくは10nm以下、特に5nm以下とするのが好ましい。Rth値は0〜200nmの範囲が好ましく、より好ましくは0〜100nm、特に好ましくは0〜50nmの範囲である。
【0018】
このような光学フィルム1の欠陥は以下のように検査される。なお、光学フィルム1の欠陥とは、具体的には、光学フィルム1に含まれるハイブリッドネマチック配向液晶層2における液晶層の配向欠陥を意味する。
【0019】
図2は、長尺の光学フィルムの検査光学系の一例を示す図である。(a)は長尺の光学フィルムの検査光学系を側面から見た場合を示す図であり、(b)〜(d)はそれを上面から見た場合を示す図である。すなわち、(b)は長尺の光学フィルムに対し、欠陥検査用素子9を反時計回りに傾けた場合を示す図であり、(c)は、時計回りに傾けた場合を示す図であり、(d)は傾けないまま平行に対向配置した場合の図である。
図3は、光学フィルム1に含まれるハイブリッドネマチック配向液晶層2の配向軸11、偏光板5の吸収軸51、ハイブリッドネマチック配向液晶フィルム7の配向軸71及び偏光板8の吸収軸81の配置関係の一例を示す図である。
【0020】
光学フィルム1の欠陥検査にあたっては、まず光学フィルム1にバックライト6を対向配置し、バックライト6と光学フィルム1との間に、偏光板(第1偏光板)5を配置する。図3に示すように、本実施形態では、偏光板5の吸収軸51は、光学フィルム1に含まれるハイブリッドネマチック液晶層2の配向軸11に対して45°の角度となるように調整する。
そして、バックライト6を点灯し、光学フィルム1に対してバックライト6と反対側で、欠陥検査用素子9を用いて光学フィルム1を覗き込み、光学フィルム1に含まれるハイブリッドネマチック配向液晶層2における欠陥を検査する。
【0021】
ここで、欠陥検査用素子9について詳細に説明する。
図2に示すように、欠陥検査用素子9は、偏光板8と、ハイブリッドネマチック配向液晶フィルム(第2液晶フィルム)7とを積層したものである。ハイブリッドネマチック配向液晶フィルム7は、光学フィルム1と同様、液晶の傾きを膜厚方向(図1の矢印A方向)に変化させて液晶をハイブリッドネマチックネマチック配向させた液晶フィルムである。
【0022】
本実施形態の欠陥検査用素子9では、ハイブリッドネマチック配向液晶フィルム7として、ハイブリッドネマチック配向液晶層2と支持基板4からなる光学フィルム1と材料及び厚さが同一のものを用いることができる。また、図3に示すように、ハイブリッドネマチック配向液晶フィルム7の配向軸71が、偏光板8の吸収軸81に対して45°となるように偏光板8に積層されている。
【0023】
欠陥検査の際は、まず上記のように構成される欠陥検査用素子9を光学フィルム1に対向配置する。このとき、ハイブリッドネマチック配向液晶フィルム7を光学フィルム1側に向け、偏光板8を光学フィルム1と反対側に向けると共に、偏光板5と偏光板8がクロスニコル配置となるようにする。これにより、ハイブリッドネマチック配向液晶フィルム7の配向軸71を、図3に示すように、光学フィルム1に含まれるハイブリッドネマチック配向液晶層2の配向軸11と直交させることが可能となり、かつ欠点を見やすくさせることが出来る。
更に、欠陥検査用素子9を光学フィルム1のロール長尺方向に対し、斜めに傾けるようにして観察する。
【0024】
表1は、図2(b)〜(d)の条件で、観察した場合の欠陥部分の見え方と視認性をまとめる。表1に示すとおり、図2(b)のように長尺の光学フィルムに対し、欠陥検査用素子9を反時計回りに傾けた場合は、欠陥部分が輝点/無欠陥部分が黒くなるため、欠陥が見やすいのに対し、図2(c)の時計回りに傾けた場合や、(d)のように平行に対向配置した場合は、欠陥部分が黒点と反転してしまうため、見えにくくなることがわかる。
これは、欠陥検査用素子に用いるハイブリッドネマチック配向液晶フィルムの構造と光学フィルム1内のハイブリッドネマチック配向液晶層2の欠陥部分/無欠陥部分の位相差に起因する。
【0025】
【表1】

【0026】
以下に見え方の違いの原因を詳細に説明する。
図2(b)のように反時計回りに傾けた場合、棒状液晶分子の先端方向から見るため欠陥検査用素子を通過するときの位相差は小さくなるのに対し、図2(c)のように時計回りに傾けた場合は、棒状液晶分子の棒方向(腹側)から見ることになるため、欠陥検査用素子を通過するときの位相差がより大きくなる。
一方、ハイブリッド配向液晶層2に厚さムラがある場合、即ち図4に示すように、厚さd2の無欠陥部分2Xと、厚さd1の欠陥部分2Yとがある場合、バックライト6から発せられる光が偏光板5及び光学フィルム1を透過すると、無欠陥部分2Xと欠陥部分2Yのそれぞれにおいて、位相差に差がおきる。なお、図4において、欠陥部分2Yに埋設され符号10で示されているのは、ハイブリッドネマチック配向液晶層2の製造時に混入したごみ等である。
【0027】
より詳しく説明すると、無欠陥部分2Xでは、位相差δ2はδ2=Δn・d2となるのに対し、欠陥部分2Yでは、位相差δ1はδ1=Δn・d1となる。ここで、d1>d2であるから、δ2<δ1となる。
このため、無欠陥部分2Xと欠陥部分2Yとの間にコントラストを生じさせることが可能となる。ここで、ハイブリッドネマチック配向液晶層2の配向軸11とハイブリッドネマチック配向液晶フィルム7の配向軸71とは、上述したように略直交して配置させる。このため、ハイブリッドネマチック配向液晶層2とハイブリッドネマチック配向液晶フィルム7の厚さが等しい場合には、ハイブリッドネマチック配向液晶層2の複屈折とハイブリッドネマチック配向液晶フィルム7の複屈折が相殺し合うため、位相差は打ち消される、即ちゼロとなる。無欠陥部分2Xは、欠陥検査素子を平行に配置した場合が最も暗くなり、図2(b)のように傾けると黒のままであるが、図2(c)のように傾けると、欠陥検査素子内のハイブリッドネマチック配向液晶フィルム7の位相差が大きくなる分、光漏れが生じ白くなる。なお、本発明においていう略直交とは、通常90°±15°を意味し、好ましくは90°±10°、より好ましくは90°±5°を意味する。
【0028】
一方、欠陥部分2Yは、無欠陥部分2Xよりも位相差が大きいため、図2(c)のように傾けた場合、欠陥検査素子内のハイブリッドネマチック配向液晶フィルム7の位相差と打ち消されるため、逆に黒くなるのに対し、図2(b)のように傾けた場合は、ハイブリッドネマチック配向液晶フィルム7の位相差が小さくなるため、欠陥部分2Yとの位相差のずれが無欠陥部分2Yとの位相差のずれよりも更に大きくなり、無欠陥部分2Xが黒いままであるのに対し、欠陥部分2Yは輝点として現れることとなる。よって、欠陥部分2Yの視認性を向上させることが可能となり、厚さムラに起因する欠陥の検査を的確に行うことができる。
【0029】
上記の結果より、欠陥検査用補償素子のハイブリッドネマチック配向液晶フィルム7の棒状液晶分子の先端側から見るように傾けることにより、より欠陥部分の視認性を高めることが可能となる。
【0030】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る光学フィルムの検査方法の第2実施形態について図5〜図6を用いて説明する。図5〜図6において、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
本実施形態の検査方法は、欠陥検査用素子13が以下のように構成されている点で第1実施形態と異なる。欠陥検査用素子13について詳細に説明する。
【0031】
図5(a)は、長尺の光学フィルムの検査光学系を側面から見た場合を示す図であり、図5(b)は、それを上面から見た場合を示す図であり、長尺の光学フィルムに対し、欠陥検査用素子13を反時計回りに傾けた場合を示す図である。
【0032】
図6は、光学フィルム1に含まれるハイブリッドネマチック配向液晶層2の配向軸11、偏光板5の吸収軸51、欠陥検査用素子13のハイブリッドネマチック配向させた第2液晶フィルム7の配向軸71、1軸延伸フィルムである第1位相差フィルム12の遅相軸121及び偏光板8の吸収軸81の配置関係の一例を示す図である。第1位相差フィルム12としては、プラスチックフィルムを1軸延伸して得られるフィルムから適宜選定することができるが、例えばポリカーボネートフィルム、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム、ノルボルネン系からなるアートン(JSR社製)、ゼオノア(日本ゼオン社製)などが用いられる。1軸延伸フィルムは、上記フィルムを、厚さ方向に直交する面内の一方向に延伸することにより得られる。1軸延伸フィルムの位相差としては270nmを用いた。
【0033】
図5に示すように、欠陥検査用素子13は、偏光板8、1軸延伸フィルム12、ハイブリッド配向液晶フィルム(第2液晶フィルム)7とを積層したものである。
本実施形態の欠陥検査用素子13では、第1実施形態と同様、ハイブリッドネマチック配向液晶フィルム7として、光学フィルム1と同一のものを用い、図6に示すように、ハイブリッドネマチック配向液晶フィルム(第2液晶フィルム)7の配向軸71が、偏光板8の吸収軸81に対して45°となるように偏光板8に積層されている。また、1軸延伸フィルム12の遅相軸121と偏光板8の吸収軸81は略直交となるように積層されている。
【0034】
更に、欠陥検査用素子13を、図5(b)のように光学フィルム1のロール長尺方向に対し、斜めに傾けるようにして観察する。
表2は、図2(b)、図5(b)の条件で、観察した場合の欠陥部分の見え方と視認性の比較を示す。第1実施形態の図2(b)の場合と比較し、欠陥部分の輝点は同様の見え方であったが、無欠陥部分の黒がより暗くなっており、より欠陥の視認性が向上していることが確認できた。
【0035】
【表2】

【0036】
すなわち、第1実施形態に更に1軸延伸フィルムを追加することにより更に欠陥の視認性を向上することが可能となる。一般に、偏光板は、斜めに傾けた場合に直交から外れるため光漏れが生じることが知られているが、ここでは、1軸延伸フィルムを追加することにより偏光板自体の視野角特性を向上することにより視認性を向上できたためである。
上記のような1軸フィルムに限られず、直交する2方向に2軸延伸した2軸延伸フィルムでも同様の視認性向上は可能である。
【0037】
(第3実施形態)
次に、本発明に係る光学フィルムの検査方法の第3実施形態について図7〜図8を用いて説明する。図7〜図8において、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については同一符号を付し、重複する説明を省略する。
本実施形態の検査方法は、欠陥検査用素子15が以下のように構成されている点で第1実施形態と異なる。欠陥検査用素子15について詳細に説明する。
図7(a)は、長尺の光学フィルムの検査光学系を側面から見た場合を示す図であり、図7(b)は、それを上面から見た場合を示す図であり、長尺の光学フィルムに対し、欠陥検査用素子15を反時計回りに傾けた場合を示す図である。
図8は、光学フィルム1に含まれるハイブリッドネマチック配向液晶層2の配向軸11、偏光板5の吸収軸51、ハイブリッドネマチック配向液晶フィルム7の配向軸(第2液晶フィルム)71、1軸延伸フィルム12の遅相軸121、ホメオトロピック配向液晶フィルム(第3液晶フィルム)14及び偏光板8の吸収軸81の配置関係の一例を示す図である。ここで、1軸延伸フィルム12の位相差値は110nmとした。ホメオトロピック配向液晶フィルムとは、ネマチック液晶分子の配向が、垂直配向したフィルムを言い、例えば、特開2006−220770号公報に記載の方法で作製できる。ホメオトロピック配向液晶フィルムの位相差としては、面内方向の屈折率をnx、ny、厚さ方向の屈折率をnz、フィルムの厚さをdとした場合、厚さ方向の位相差値Rth={(nx+ny)/2−nz}×d=−200nm、面内方向の位相差値Re=(nx−ny)×d=0nmのものを用いた。
【0038】
図7に示すように、欠陥検査用素子15は、偏光板8、1軸延伸フィルム12、ホメオトロピック配向液晶フィルム(第3液晶フィルム)14、ハイブリッドネマチック配向液晶フィルム(第2液晶フィルム)7を積層したものである。
本実施形態の欠陥検査用素子15では、第1実施形態と同様、ハイブリッドネマチック配向液晶フィルム7として、光学フィルム1と同一のものを用い、図8に示すように、ハイブリッドネマチック配向液晶フィルム7の配向軸71が、偏光板8の吸収軸81に対して45°となるように偏光板8に積層されている。また、1軸延伸フィルム12の遅相軸121と偏光板8の吸収軸81は略直交となるように積層されている。
更に、欠陥検査用素子15を、図7(b)のように光学フィルム1のロール長尺方向に対し、斜めに傾けるようにして観察する。
表3は、図2(b)、図7(b)の条件で、観察した場合の欠陥部分の見え方と視認性の比較を示す。第1実施形態の図2(b)の場合と比較し、欠陥部分の輝点は同様の見え方であったが、無欠陥部分の黒がより暗くなっており、より欠陥の視認性が向上していることが確認できた。
【0039】
【表3】

【0040】
すなわち、第1実施形態に更に1軸延伸フィルムとホメオトロピック配向液晶フィルムを追加することにより更に欠陥の視認性を向上することが可能となる。一般に、偏光板は、斜めに傾けた場合に直交から外れるため光漏れが生じることが知られているが、ここでは、1軸フィルムとホメオトロピック配向液晶フィルムを追加することにより偏光板自体の視野角特性を向上することにより視認性を向上できたためである。
【0041】
また、上記第1〜第3実施形態においては、ハイブリッドネマチック液晶層2及びハイブリッドネマチック液晶フィルム7を光が透過するときに得られる位相差をゼロにするために、1軸延伸フィルムの遅相軸が偏光板8の吸収軸に対してなす角度、1軸延伸フィルムの遅相軸が偏光板8の透過軸に対してなす角度が上記各実施形態で示す値とされているが、位相差を低減するという目的のためであれば、これらの角度は、上記各実施形態に示す値に対して±15°の範囲でずれていても構わない。1軸延伸フィルムの位相差値は、50〜500nmの範囲であり、より好ましくは70〜400nm、更に好ましくは90〜300nmの範囲である。この範囲を外れた場合、欠陥検査の視認性が著しく悪化する恐れがある。
【0042】
ホメオトロピック配向液晶フィルムのRth値は、−50nm〜−300nmの範囲であり、より好ましくは−250〜−100nm、更に好ましくは−220〜−150nmの範囲であり、ホメオトロピック配向液晶フィルムのRe値は、0〜20nm、より好ましくは0〜10nm、特にほぼ0nmであるのが好ましい。
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではない。例えば上記第1実施形態に対し、第1および第2偏光板を略直交を保ったまま、90度回転した場合も同様に、欠陥部分の視認性を向上させることが可能となり、厚さムラに起因する欠陥の検査を的確に行うことができる。
【0043】
欠陥検査用素子の傾ける方向は、前述した通り、欠陥部分が無欠陥部分よりも膜厚が大きくなる(位相差が大きくなる)場合には、欠陥検査用素子のハイブリッドネマチック液晶フィルムの位相差が小さくなる方向に傾けたほうがよく、欠陥部分が無欠陥部分よりも膜厚が小さくなる(位相差が小さくなる)場合には、欠陥検査用素子のハイブリッドネマチック液晶フィルムの位相差が大きくなる方向に傾けたが方がよい。
欠陥検査用素子を傾けないまま平行に配置し、検査員が斜め方向からみる方法でも同様の視認性向上が可能となるが、欠陥部分のマーキング等の作業性を考慮した場合、検査員が斜め方向から見て観察するよりも、欠陥検査用素子を傾けたまま正面方向から観察したほうが好ましい。
また、本発明による方法で欠陥検査用素子から透過される透過光を光センサで捕捉し、対応する画像を形成してこの画像を分析することにより欠陥を見出してもよい。この方法によれば、電子的処理が可能で、欠陥部位に自動的にマーキングすることもできる。
【0044】
ハイブリッドネマチック液晶フィルムに用いられる液晶分子は、棒状液晶分子に限らず、円盤状液晶分子であっても良い。円盤状液晶分子からなるハイブリッドネマチック液晶フィルムを欠陥検査する場合は、同一の円盤状ハイブリッドネマチック液晶フィルムを含む欠陥検査用素子を用いて同様に傾斜させることで視認性効果を得ることができる。
【0045】
なお、本発明の各実施形態において、欠陥検査用素子を光学フィルムに対し傾斜させて検査する傾斜角度としては、5〜70°が好ましく、より好ましくは10〜50°である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の光学フィルムの検査方法に用いる光学フィルムの構成の一例を示す図である。
【図2】本発明の光学フィルムの検査方法の第1実施形態における光学フィルムの検査光学系の一例を示す図であり、(a)は側面図、(b)〜(d)は上側から見た場合を示す図である。
【図3】第1実施形態の欠陥検査用素子、光学フィルム1、第1偏光板の吸収軸の関係の一例を示す図である。
【図4】第1液晶フィルムに厚さムラのある光学フィルムを示す断面図である。
【図5】本発明の光学フィルムの検査方法の第2実施形態における光学フィルムの検査光学系の一例を示す図であり、(a)は側面図、(b)は上側から見た場合を示す図である。
【図6】第2実施形態の欠陥検査用素子、光学フィルム1、第1偏光板の吸収軸の関係の一例を示す図である。
【図7】本発明の光学フィルムの検査方法の第3実施形態における光学フィルムの検査光学系の一例を示す図であり、(a)は側面図、(b)は上側から見た場合を示す図である。
【図8】第3実施形態の欠陥検査用素子、光学フィルム1、第1偏光板の吸収軸の関係の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0047】
1 光学フィルム(第1液晶フィルム)
2 ハイブリッドネマチック配向液晶層
3 液晶分子
4 支持基板
5 偏光板(第1偏光板)
6 バックライト
7 ハイブリッドネマチック配向液晶フィルム(第2液晶フィルム)
8 偏光板(第2偏光板)
9、13、15 欠陥検査用素子
10 異物
11 ハイブリッドネマチック配向液晶層2の配向軸
12 1軸延伸フィルム(第1位相差フィルム)
14 ホメオトロピック配向液晶フィルム(第3液晶フィルム)
51 第1偏光板5の吸収軸
71 ハイブリッドネマチック配向液晶フィルム7の配向軸
81 第2偏光板8の吸収軸
121 1軸延伸フィルム12の遅相軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶をハイブリッドネマチック配向させた第1液晶フィルムを含む光学フィルムの検査方法であって、前記光学フィルムに対し、光源から第1偏光板を通して光を照射し、前記光学フィルムに対して前記光源と反対側に、液晶をハイブリッドネマチック配向させた第2液晶フィルムと第2偏光板とからなる欠陥検査用素子を、前記第2液晶フィルム側が前記光学フィルム側に隣接するように配置し、且つ前記欠陥検査用素子を、前記光学フィルムに対し傾斜させて、前記光学フィルムを検査することを特徴とする光学フィルムの検査方法。
【請求項2】
前記第1液晶フィルムの配向軸と前記第2液晶フィルムの配向軸とが略直交するように前記欠陥検査用素子を配置することを特徴とする請求項1に記載の光学フィルムの検査方法。
【請求項3】
液晶をハイブリッドネマチック配向させた第1液晶フィルムを含む光学フィルムの検査方法であって、前記光学フィルムに対し、光源から第1偏光板を通して光を照射し、前記光学フィルムに対して前記光源と反対側に、液晶をハイブリッドネマチック配向させた第2液晶フィルム、1軸延伸フィルムからなる第1位相差フィルム、第2偏光板とを順次積層してなる欠陥検査用素子を、前記第2液晶フィルム側が前記光学フィルム側に隣接するように配置し、第1位相差フィルムの遅相軸と第2偏光板の吸収軸が略直交となるように配置し、且つ前記欠陥検査用素子を、前記光学フィルムに対し傾斜させて、前記光学フィルムを検査することを特徴とする光学フィルムの検査方法。
【請求項4】
前記第1液晶フィルムの配向軸と前記第2液晶フィルムの配向軸とが略直交するように前記欠陥検査用素子を配置することを特徴とする請求項3に記載の光学フィルムの検査方法。
【請求項5】
液晶をハイブリッドネマチック配向させた第1液晶フィルムを含む光学フィルムの検査方法であって、前記光学フィルムに対し、光源から第1偏光板を通して光を照射し、前記光学フィルムに対して前記光源と反対側に、液晶をハイブリッドネマチック配向させた第2液晶フィルム、液晶をホメオトロピック配向させた第3液晶フィルム、1軸延伸フィルムからなる第1位相差フィルム、第2偏光板とを順次積層してなる欠陥検査用素子を、前記第2液晶フィルム側が前記光学フィルム側に隣接するように配置し、第1位相差フィルムの遅相軸と第2偏光板の吸収軸が略直交となるように配置し、且つ前記欠陥検査用素子を、前記光学フィルムに対し傾斜させて、前記光学フィルムを検査することを特徴とする光学フィルムの検査方法。
【請求項6】
前記第1液晶フィルムの配向軸と前記第2液晶フィルムの配向軸とが略直交するように前記欠陥検査用素子を配置することを特徴とする請求項5に記載の光学フィルムの検査方法。
【請求項7】
液晶が棒状液晶分子からなることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の検査方法。
【請求項8】
液晶が円盤状液晶分子からなることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−47476(P2009−47476A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−212032(P2007−212032)
【出願日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】