説明

光学フィルム検査方法および検査装置

【課題】 連続搬送される長尺光学フィルムを連続的に精度よく検査することができるフィルム検査方法および検査装置を提供する。
【解決手段】 光学フィルム検査装置は、光学的入力手段2を移動させる駆動手段10と、フィルム被検査箇所Tの検査用基準位置からの変位量を計測する変位量計測手段4と、変位量計測手段4の出力に応じて光学的入力手段2の駆動量を決定する駆動量決定手段11とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、連続搬送されている長尺光学フィルムの検査方法および検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(LCD)などの表示装置に用いられる防眩フィルム、反射防止フィルム、位相差フィルム、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、ハードコートフィルム、偏光板保護フィルムなどの光学フィルムは、表示装置の要求品質が高まるにつれて、厳しい要求が課せられており、そのため、製造工程で光学フィルムの特性を検査することがますます重要となっている。光学フィルムの検査装置としては、光学的入力手段(例えばCCDカメラ)を使用して、光学フィルムの被検査箇所のデータを取り込み、このデータが設定されている正常データと一致しているかどうかを判定することにより検査を行うものが知られている。
【0003】
この検査において、光学フィルムが常に一定の面に沿って移動する場合には、光学的入力手段の焦点が常にフィルムまでの距離に一致するので、連続して正常な検査が可能であるが、長尺光学フィルムの場合、これを搬送するロールの偏芯や搬送張力の変動、風や振動による変形などにより、正常な検査が可能な検査用基準位置からフィルム被検査箇所がずれる性質があり、このずれ(ばたつき)によって、正確に検査ができないという問題があった。
【0004】
そこで、この問題を解決するために、特許文献1には、走行するシート状物の、上下動範囲よりも大きな範囲で上下動させる光学的入力手段と、前記シート状物と光学的入力手段間の距離が、合焦点位置±焦点深度のとき、画像処理装置に対して検査開始信号を出力する変位量計測手段と、前記検査開始信号の出力時にストロボ発光を行うストロボ照明装置と、光学的入力手段と前記シート状物の間に設置して反射照明を行うリング状光ファイバライトガイドと、画像処理装置からなるシート状物の欠陥検査装置が開示されている。
【特許文献1】特開平6−242024号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の検査装置によると、焦点が一致したときにのみデータを取り込むものであるため、高速で連続搬送される長尺光学フィルムに対しては、断続的な検査にしかならず、精度的に十分ではないという問題があった。
【0006】
この発明の目的は、連続搬送される長尺光学フィルムを連続的に精度よく検査することができる光学フィルムの検査方法および検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明による光学フィルム検査方法は、連続搬送される長尺光学フィルムのフィルム特性を光学的入力手段を使用して検査する光学フィルム検査方法において、光学的入力手段を移動可能とするとともに、フィルム被検査箇所の検査用基準位置からの変位量を変位量計測手段で計測し、この変位量に応じて光学的入力手段を駆動しながら、連続搬送される長尺光学フィルムを検査することを特徴とするものである。
【0008】
この発明による光学フィルム検査装置は、連続搬送される長尺光学フィルムのフィルム特性を光学的入力手段を使用して検査する光学フィルム検査装置において、光学的入力手段を移動させる駆動手段と、フィルム被検査箇所の検査用基準位置からの変位量を計測する変位量計測手段と、変位量計測手段の出力に応じて光学的入力手段の駆動量を決定する駆動量決定手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0009】
この発明による光学フィルム検査方法および検査装置は、セルロースエステル、ポリエステル、ポリカーボネート、シクロオレフィン樹脂等の各種樹脂フィルムよりなる長尺光学フィルムに適用することができ、特に、セルロースエステル系樹脂フィルムよりなる長尺光学フィルムの製造方法において、長尺光学フィルムの製膜後、そのフィルム特性が適正かどうかを検査するために好適に使用される。
【0010】
この発明において、「光学フィルム」とは、液晶表示装置(LCD)などの表示装置に用いられる防眩フィルム、反射防止フィルム、位相差フィルム、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、ハードコートフィルム、偏光板保護フィルムなどの光学的機能を有するフィルムを総称したものであり、「長尺光学フィルム」とは、ロール状に巻き取られた光学フィルムあるいは巻き取られることを前提とした光学フィルムであり、その長さが100m以上のもの、好ましくは100〜5000mであるものをいうものとする。
【0011】
光学的入力手段としては、CCDカメラ、膜厚センサーなどが使用される。CCDカメラは、透過方式で使用されることがあり、また、反射方式で使用されることもある。
【0012】
検査用基準位置は、例えば、最短搬送位置(フィルムのたるみが全くない場合の搬送位置)とされる。
【0013】
変位量計測手段としては、レーザー変位計、赤外線変位センサ、渦電流式変位センサ、超音波式変位センサなどの「変位計」または「変位センサ」と称されている計測手段が使用できる。
【0014】
フィルム被検査箇所の変位には、周期的なものと非周期的なものとがあるが、周期的な変化(例えばサインカーブ)が基本となっている。そこで、光学的入力手段の駆動は、好ましくは、周期的に変化するサインカーブにしたがって行われ、その振幅、周期などが適宜調整される。これにより、フィルムがばたついたとしても、フィルムの被検査箇所と光学的入力手段との距離は、所定範囲内に保たれ、連続的かつ精度のよい検査を行うことができる。
【0015】
光学的入力手段とフィルム被検査箇所との距離が予め決められた範囲内に入るように、光学的入力手段の駆動量を調整することが好ましい。
【0016】
この範囲は、光学的入力手段の特性(CCDカメラの焦点距離、焦点深度など)に基づいて決められる。
【0017】
また、フィルム被検査箇所の変位量の変化を予測するための変位量変化特性を求めておき、この変位量変化特性に応じて光学的入力手段の駆動量を調整することが好ましい。この変位量変化特性は、連続搬送される長尺光学フィルムの被検査箇所の変位量を計測した結果に基づいて決められていることが好ましい。
【0018】
このようにすると、フィルムの被検査箇所が通常の変位範囲にある場合には、検査初期から適正な検査が可能であり、また、フィルムの被検査箇所の変位方向を予測して光学的入力手段を駆動することができるので、検査継続中においても、適正な検査を安定的に行うことができる。
【0019】
変位量計測手段は、連続搬送される長尺光学フィルムの被検査箇所またはその上流側の変位量を計測するものであることが好ましい。
【0020】
このようにすると、フィルムの被検査箇所の変位に応じて、早めに光学的入力手段を駆動することができ、フィルムの被検査箇所の非周期的な変位に対しても適切に対応することができる。
【0021】
光学的入力手段および変位量計測手段は、それぞれ長尺光学フィルムの幅手方向に複数配置されていることが好ましい。
【0022】
このようにすると、光学フィルムの幅手方向にわたっても精度のよい検査を行うことができる。
【0023】
光学フィルム検査装置は、光学的入力手段とフィルム被検査箇所との距離を計測する相対距離計測手段をさらに備えていることが好ましく、このために、光学フィルム検査装置の変位量計測手段は、光学的入力手段とフィルム被検査箇所との距離を計測する相対距離計測手段を兼ねていることがある。また、変位量計測手段は、光学的入力手段と同時に駆動可能なように配置されていることがある。
【0024】
変位量計測手段は、フィルムの被検査箇所の変位を計測するものであるが、これとは別に、光学的入力手段とフィルムの被検査箇所との相対距離を計測できることが好ましく、この相対距離の計測結果によって、光学的入力手段が適正に使用される範囲内にあることを確認することができる。そのためには、2台の変位センサを使用し、一方をフィルムの被検査箇所の変位量計測用とし、他方を光学的入力手段とフィルムの被検査箇所との相対距離計測用としてももちろんよいが、使用される変位センサを1台とすることもできる。そして、1台で対応する場合には、光学的入力手段と連動して駆動するようにこの変位センサを配置し、検査開始前に、変位センサの位置を固定した状態でフィルム被検査箇所の変位量変化特性データを取得し、検査開始後は、光学的入力手段と連動して変位センサを駆動し、光学的入力手段とフィルム被検査箇所との距離を測定して、補正が正常に行われているか否かを確認できるようにすることが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
この発明の光学フィルム検査方法および検査装置によると、フィルム被検査箇所の変位量に応じて、光学的入力手段が適正位置に移動するので、連続搬送される長尺光学フィルムを連続的に精度よく検査することができる。また、フィルム被検査箇所の変位量を抑えるための設置場所の制約をなくすこともできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
この発明の実施の形態を、以下図面を参照して説明する。
【0027】
図1から図4までは、この発明の光学フィルム検査方法を行うための検査装置の概略構成を示している。
【0028】
図1に示すように、光学フィルム検査装置は、搬送ロール(1a)(1b)を有する搬送手段(1)と、搬送手段(1)によって連続的に搬送される長尺光学フィルム(F)のフィルム特性を取り込むCCDカメラなどの光学的入力手段(2)と、光学的入力手段(2)と同じ側または反対側に設けられて光学的入力手段(2)に所定の光量を提供する光源(3)と、光学的入力手段(2)が臨まされている長尺光学フィルム(F)の被検査箇所(T)が基準位置からの変位量を計測する変位量計測手段としての変位センサ(4)とを備えている。
【0029】
光学的入力手段(2)、光源(3)および変位量計測手段(4)は、それぞれ長尺光学フィルム(F)の幅手方向に複数(図示は4つ)配置されている。
【0030】
長尺光学フィルム(F)を検査する場合に、搬送ロール(1a)(1b)は、図2に示すように、その搬送方向が水平面に対して45°をなすように配置されることがあり、図3に示すように、その搬送方向が水平をなすように配置されることがあり、図4に示すように、その搬送方向が鉛直をなすように配置されることがある。また、光学的入力手段(2)がCCDカメラの場合、CCDカメラ(2)と光源(3)との位置関係については、光源(3)が長尺光学フィルム(F)を介してCCDカメラ(2)の反対側に配置された透過方式(図2)と、光源(3)がCCDカメラ(2)と同じ側に配置された反射方式(図3)とがある。また、光学的入力手段としては、CCDカメラ(2)のほかに、膜厚センサー(5)と称されているものが使用されることがある(図4)。
【0031】
異物検査や故障検査では、図2および図3に示されているように、光学的入力手段(2)であるCCDカメラなどの配置場所は、長尺光学フィルムに対し、法線方向、斜め方向いずれでもでもよいが、より小さな故障を検出させるためには、斜め方向に配置することが好ましい。
【0032】
光学的入力手段(2)は、長尺光学フィルム(F)との間の距離が所定範囲(例えば合焦点位置±焦点深度)を外れた場合に、正しい検査が行われない可能性がある。一方、長尺光学フィルム(F)には、これを搬送するロール(1a)(1b)の偏芯や搬送張力の変動、風や振動によるフィルムの変形などにより、図5の(a)から(d)までに例示するように、実線で示す最短搬送位置から破線で示す位置にフィルムがずれる性質がある。
【0033】
本発明の光学フィルム検査方法および光学フィルム検査方法は、長尺光学フィルム(F)のずれ(ばたつき)に着目してなされたもので、上記図2から図4までのいずれの方式に対しても適用でき、図5に破線で示す位置への変位があっても、この変位に伴う検査精度の低下を抑えることができる。
【0034】
図6は、この発明の光学フィルム検査装置の詳細構成(特徴部分)を示すもので、同図に示すように、光学フィルム検査装置は、CCDカメラなどの光学的入力手段(2)によって取り込まれたデータの処理を行う画像処理手段(6)と、処理された情報を表示するディスプレイ(7)と、光学的入力手段(2)が臨まされている長尺光学フィルム(F)の被検査箇所(T)の検査用基準位置からの変位量を計測する変位量計測手段(4)と、この変位量計測手段(4)とは別に設けられるとともに光学的入力手段(2)と長尺光学フィルム(F)の被検査箇所(T)との距離を計測する相対距離計測手段(8)と、光学的入力手段(2)および相対距離計測手段(8)を両者が一体的に移動可能なように支持する支持手段(9)と、支持手段(9)を移動させる駆動手段(10)と、変位量計測手段(4)および相対距離計測手段(8)からの出力に応じて支持手段(9)の適正駆動量を決定する駆動量決定手段(11)とを備えている。
【0035】
この光学フィルム検査装置によると、搬送されている長尺光学フィルム(F)のフィルム特性情報が光学的入力手段(2)によって取り込まれ、このフィルム特性が画像処理手段(6)に送られて、データ処理される。画像処理手段(6)は、搬送されている光学フィルム(F)の特性の解析を行い、例えば異物や故障については、その種類、大きさを特定し、出現頻度などの統計処理、データ保存なども実施する。これらの処理された情報は必要に応じてディスプレイ(7)上に表示されたり、生産条件の変更や調整などにフィードバックされる。
【0036】
図7は、搬送張力が低下することなどによって、破線で示す基準位置(検査用基準位置)からフィルム(F)がたるんで実線で示す下側に変位している様子を示している。この変位によって、検査用基準位置上の位置Gは、実際の被検査箇所Tに変位している。光学的入力手段(2)が図7の鎖線で示す位置に固定されている検査装置では、光学的入力手段(2)が位置Gに臨まされているので、位置Gの方向にある実際の位置である位置Iでフィルム特性の測定が行われることになる。光学的入力手段(2)とフィルム(F)の被検査箇所(T)間の間隔は、あらかじめ決められており、正確な測定が可能な許容変動幅をもっている。したがって、連続的に搬送されている長尺光学フィルム(F)の変位量が、その許容幅を超えて変動した場合、正確な測定を行うことが出来ないことになる。また、本来測定したい位置は、基準位置Sを連続搬送されている長尺光学フィルム(F)のGの位置に対して、基準位置Sから変位した被検査箇所Tの位置と考えられる。しかしながら、光学的入力手段(2)が鎖線の位置に固定されている検査装置では、搬送されているフィルム(F)の上流側(装置構成機器の配置やフィルムの変位の方向によっては下流側となることもある)であるIの位置の測定を行うことになり、フィルム(F)の変位によってフィルム(F)上の測定位置が動いてしまう。測定は連続的に行っているため、TとIの間の測定データが欠落したり、正確な測定ができないという問題が生じる。
【0037】
これに対し、本発明の光学フィルム検査装置によると、該搬送ロール(1a)(1b)間で連続的に搬送されている長尺光学フィルム(F)の被検査箇所(T)の変位量を計測する変位量計測手段(4)を有しており、長尺光学フィルム(F)の被検査箇所(T)がどのように変位しているかの情報を得ることができる。そして、検査用基準位置からのズレである変位量が連続的に計測され、この変位量にあわせて、光学的入力手段(2)を図7に実線で示す位置に移動させることによって、位置Gに対応する被検査箇所(T)を検査することができ、フィルム(F)の変位による測定誤差が生じないようにしながら連続的に測定することができる。
【0038】
駆動量決定手段(11)では、フィルムの変位量に応じて光学的入力手段(2)の駆動量が決定され、これが駆動手段(10)に送られることにより、光学的入力手段(2)は、フィルム(F)の被検査箇所(T)の検査用基準位置からの変位量に追随して駆動される。
【0039】
また、光学的入力手段(2)と長尺光学フィルム(F)の被検査箇所(T)との相対距離を計測する相対距離計測手段(8)によると、光学的入力手段(2)と被検査箇所(T)との相対距離が連続的に計測され、この変位量データから、光学的入力手段(2)の駆動が適切に行われているかが確認され、光学的入力手段(2)とフィルムとの相対距離が所定範囲内からはずれる恐れがある場合は、駆動手段(10)を介して駆動の補正が行われる。
【0040】
光学的入力手段(2)の駆動に際しては、特に、変位量や変位量の変化率、変位量変化率の動きから、その次の時点での変位量を予測して制御することが好ましい。そのために、駆動量決定手段(11)では、直前までに計測していた搬送中の光学フィルムの変位量の変動パターン(変位量、変位量変化率、変位の周期、変位量の振幅、など)あるいは、あらかじめ保存されている変位量の変動パターンを参照し、現在の変位量、変位量変化、変位量の変動パターンなどから、次の変位位置の予測を行なうことが好ましい。そして予測された光学フィルムの変位パターンに合わせて、光学的入力手段(2)の位置を動かすのである。搬送されている長尺光学フィルム(F)は、主に周期的に変動する。例えば、搬送速度が速くなると周期が短くなるなどの傾向がある。また、変位の振幅は一定していることが多い。このような周期的な変位量の変動パターンで変動している場合、ある時点の変位量の絶対値とその時点の変位量の変化率が得られれば、それが周期的な変位量の変動パターン上のどこにあるかを参照することによって、それ以降の変動パターンの予測を行うことができ、予測精度が向上する。周期的な変位量の変動パターンは、生産条件によって変化することが予想されるが、それらに対応した変動パターンを有していれば、条件に応じた変位量予測も容易になる。また、実際の検査を始める直前もしくは開始してからも常に変位量変動データを計測、蓄積していくことが好ましく、このデータを変位量予測に用いることができる。
【0041】
また、連続搬送される光学フィルム(F)の被検査箇所(T)は、変位量が周期的に変化するケースのほかに、非周期的に変化するケースも考えられる。例えば、一定の周期、振幅で変位量が変化しているときに、突発的により大きな振幅となるように変位し、次第に振幅の幅が小さくなっていくというケースである。本発明の変位量計測手段(4)は、連続的に変位量を計測しており、周期的なパターンや非周期的であるが一定のパターンで変動するという変位量変動の情報を保存することができる。周期的な変位量の変化パターンからはずれたことが確認された場合、あらかじめ得られていた非周期的な変動パターンのいずれに該当するかを判断して、最も近いと考えられる変動パターンに合わせて駆動させることで、変位量を予測していくこともできる。
【0042】
次に、この発明の光学フィルム検査装置を使用して検査を行うときのステップについて、図8のフローチャートを参照して説明する。
【0043】
検査が開始されると(S1)、駆動量決定手段(11)において、予め保存されていた変位量変化特性データが呼び出されるとともに(S2)、変位量計測手段(4)により、搬送されているフィルム(F)から新たな変位量変化特性データが取得される(S3)。これらのデータを基にして、駆動量決定手段(11)において、光学的入力手段(2)の駆動量もしくは駆動パターンが決定される(S4)。これにより、光学的入力手段(2)の駆動が開始される(S5)。さらに、相対距離計測手段(8)により、フィルム(F)と光学的入力手段(2)との相対距離が求められ、駆動量決定手段(11)に送られる(S6)。駆動量決定手段(11)では、このデータからフィルム(F)と光学的入力手段(2)との相対距離の変化量が計算される(S7)。これと同時または適当な時間間隔を置いて、光学的入力手段(2)よるデータ取り込みが開始される(S8)。駆動量決定手段(11)では、フィルム(F)と光学的入力手段(2)との相対距離およびその変化量から、フィルム(F)と光学的入力手段(2)の相対距離が所定範囲内かが検証される(S9)。この検証結果が所定範囲外の場合にはステップS4に戻り、光学的入力手段(2)の駆動量が再計算されて、駆動量の補正量が求められる。そして、この駆動量の補正量に基づいて、ステップS5において、光学的入力手段(2)が適正な方向に駆動される。なお、ステップS9での検証結果が所定範囲外の場合、ステップS4に戻るのではなく、ステップS3に戻るようにし、データを取得(S3)してから、駆動量を再計算(S4)するようにしてもよい。検証結果が所定範囲内となった場合には、光学的入力手段(2)によって取り込まれたデータが処理に利用できると判断し(S10)、画像処理手段(6)によって、光学的入力手段(2)によって取り込まれたデータが処理されて保存される(S11)。この処理と並行して、フィルムと光学的入力手段(2)の距離が所定範囲内から外れる可能性の検証が行われ(S12)、外れそうにない場合には、距離を計算するステップ(S6)に戻り、データの処理・保存を行うステップ(S11)までが繰り返される。検証ステップ(S12)において、外れそうな場合には、新たに光学的入力手段(2)の駆動量もしくは駆動パターンを補正して(S13)、光学的入力手段(2)を駆動させる(S14)。その後、距離を計算するステップ(S6)に戻り、データの処理・保存を行うステップ(S11)までが繰り返される。こうして、連続搬送される長尺光学フィルム(F)が連続的に精度よく検査される。
【0044】
上記のステップで、搬送されているフィルムから新たな変位量変化特性データを取得する際の一例を次に示す。
【0045】
変位量変化特性データは、図9(a)に示すように、搬送ロール(1a)(1b)間に搬送されている長尺光学フィルム(F)の被検査箇所が周期的に変動しており、フィルムの被検査箇所は、G→H1→H2→H3→H4→H5→H6→H7→H8→G→といった具合に変位量が変動しているものとする。フィルム変位量と時間との関係は、図9(b)に示されている。
【0046】
まず、フィルムの変位量を1周期以上(好ましくは2〜100周期分)連続的に測定し、測定しながら、最大値および最小値を求める。例えば、フィルムの変位量を一定時間測定し、その変位量データから単位時間ごとの変位量変化を算出して、変位量変化がゼロとなる点をHmaxとし、好ましくは複数周期分のデータから複数のHmax値を求め、平均値を求める。Hminについても同様に平均値を求める。また、各々のHmax間の時間差もしくは各々のHmin間の時間差を求め、好ましくはその平均値をフィルム被検査箇所の変動周期TFとする。例えば、搬送されているフィルムの変位関数は、次のように表される。
【0047】
Y1=a×cos(2π×T/TF)+b
a=(Hmax−Hmin)/2
b=(Hmax+Hmin)/2
上記において、Y1は変位量であり、Tは時間(変位量Hmaxにある点をゼロとし、そこからの経過時間)である。bについては、bが0となる位置に基準位置(フィルムと光学的入力手段(2)との基準位置)を設定することが好ましい。
【0048】
光学的入力手段(2)の駆動は、求められたフィルムの変位関数と同じ変位関数で行われる。数式で表現困難な場合で、周期性が認められる場合は、1周期分のフィルム被検査箇所(T)の変位量変化にあわせて光学的入力手段(2)の駆動を行って、フィルム(F)と光学的入力手段(2)の距離が所定範囲内となるように制御してもよい。また、基本的には周期性が認められるものの、イレギュラーな変動が頻発する場合は、Hmax,Hmin,TF、最大駆動量変化率、最小駆動量変化率を求め、これを参考にしながら駆動量を決定することができる。すなわち、HmaxやHmin付近では駆動量が少なくなり、ゼロをはさんで駆動方向が逆になる。Hmaxを通過後はHminまでは変位量が小さくなるように駆動させる。Hmin通過後はHmaxまでは変位量が大きくなるように駆動させる。Hmax通過後(TF/2)時間までは駆動量変化率は増加し、(TF/2)時間後は駆動量変化率は減少する。
【0049】
上記フローチャートにしたがって、光学的入力手段(2)を駆動して、その位置の時間変化を図9(c)のように図9(b)の変位量−時間との関係に一致させることにより、フィルムの被検査箇所と光学的入力手段(2)の駆動位置との差は、図9(d)となり、許容される変動幅内に収めることができる。
【0050】
フィルム変位量に対して、光学的入力手段(2)の駆動位置の追従が遅れた場合、フィルムの被検査箇所と光学的入力手段(2)の駆動位置との差を許容される変動幅内に収めらないことがある。そこで、連続搬送される長尺光学フィルムの被検査箇所またはその上流側の変位量を計測することにより、追従遅れが生じにくくなり、確実に許容される変動幅内に収めることができる。
【0051】
図10は、補正方法の一例を示す(シミュレーションによる)もので、例えば、搬送されているフィルムの変位量が上記の式Y1=a×cos(2π×T/TF)+bで表現できる場合に、フィルム被検査箇所の実測データから計算でa,TF,bを算出してそれによって、光学的入力手段(2)を駆動した例を示している。
【0052】
駆動後、光学的入力手段(2)と搬送されているフィルムとの変位量をモニタすることで、変動の中心値がずれていることがわかる。図示した例では、(I)で示す初期状態において、中心値のズレからbの補正量がわかるとともに、変動量が増加傾向にあり、TFがずれていることがわかる。そこで、まず、bの値を補正する。補正量は変位量の平均値などを参考にして決定することができる。また、(I)の状態では、変動幅が増加傾向にあることがわかる。これは周期TFに関し、実際のフィルムの変動周期と駆動の周期とがずれていることを意味しているため、TFを増やすもしくは減らして変動幅が小さくなりさらに一定となる値を見つける。以上の補正1により、(II)で示す状態となり、変動幅が小さくなる。そこで、補正2では、TFをさらに下げる。これにより、(III)で示す状態となり、変動幅が増加したため、TFを下げすぎたことが分かり、補正1と補正2の間に最適値があることが分かる。そこで、補正3では、TFを補正1と補正2の間にする。この結果、(IV)で示す状態となり、変動幅が小さくなったため最適値に近くなっている。したがって、補正3と補正1の間に最適値があることが分かる。そこで、補正4では、TFを補正1と補正3の間にする。この結果、(V)で示す状態となり、変動幅がほぼ一定となったことでTFが最適値にそろったことがわかる。しかしながら、まだ、一定変動が残っている。そこで、補正5では、変動幅よりaを補正する。この結果、(VI)で示す状態となり、a,TF,bが実際のフィルムの変動に合致し、補正が良好に行われて光学的入力手段(2)の駆動が適切に行われていることがわかる。aの補正については、補正2から4までで初期値がゼロからずれていることからもaの補正量がわかるため、そこで補正をすることもできる。なお、駆動方法を変更する際には、実際のフィルムの位置を考慮して補正後の駆動を開始することが好ましい。例えば、上記変位関数(cosの式)では、フィルムがHmaxの位置にきたときにあわせてT=0として駆動を開始することが好ましい。変位関数としてsinを用いてもよく、その場合は、フィルムの被検査箇所が変位の中央値(HmaxとHminの中間)にあるときにあわせて駆動を開始することが好ましい。
【0053】
なお、上記において、図6に示した実施形態では、光学的入力手段(2)とフィルムとの相対距離を連続的に計測できる相対距離計測手段(8)とフィルムの変位を計測する変位量計測手段(4)とは別に設けられているが、これらは相対距離計測手段(8)に兼ねさせることもできる。この場合には、光学的入力手段(2)と連動して動きながら変位量を計測する変位量計測手段(8)がその位置を固定した状態で変位量を計測できるようになされることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】図1は、この発明による光学フィルム検査方法を行うための検査装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】図2は、搬送方向の1例(水平面に対して45°をなす方向)を示す図である。
【図3】図3は、搬送方向の他の例(水平方向)を示す図である。
【図4】図4は、搬送方向のさらに他の例(鉛直方向)を示す図である。
【図5】図5は、各搬送方向におけるフィルム被検査箇所の変位のばたつき例を示す図である。
【図6】図6は、この発明による光学フィルム検査装置の概略構成を示すブロック図である。
【図7】図7は、この発明による光学フィルム検査方法および検査装置による検査状態を示す図である。
【図8】図8は、この発明による光学フィルム検査方法および検査装置における検査ステップを示すフローチャートである。
【図9】図9は、この発明による光学フィルム検査方法および検査装置で得られる効果を示す図である。
【図10】図10は、この発明による光学フィルム検査方法および検査装置における検査のシミュレーション結果の1例を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
(2) 光学的入力手段
(4) 変位量計測手段
(10) 駆動手段
(11) 駆動量決定手段
(F) 長尺光学フィルム
(T) フィルム被検査箇所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続搬送される長尺光学フィルムのフィルム特性を光学的入力手段を使用して検査する光学フィルム検査方法において、光学的入力手段を移動可能とするとともに、フィルム被検査箇所の検査用基準位置からの変位量を変位量計測手段で計測し、この変位量に応じて光学的入力手段を駆動しながら、連続搬送される長尺光学フィルムを検査することを特徴とする光学フィルム検査方法。
【請求項2】
光学的入力手段とフィルム被検査箇所との距離が予め決められた範囲内に入るように、光学的入力手段の駆動量を調整することを特徴とする請求項1の光学フィルム検査方法。
【請求項3】
フィルム被検査箇所の変位量の変化を予測するための変位量変化特性を求めておき、この変位量変化特性に応じて光学的入力手段の駆動量を調整することを特徴とする請求項1または2の光学フィルム検査方法。
【請求項4】
変位量変化特性は、連続搬送される長尺光学フィルムの被検査箇所の変位量を計測した結果に基づいて決められていることを特徴とする請求項3の光学フィルム検査方法。
【請求項5】
変位量計測手段は、連続搬送される長尺光学フィルムの被検査箇所またはその上流側の変位量を計測するものであることを特徴とする請求項1から4までのいずれかの光学フィルム検査方法。
【請求項6】
光学的入力手段および変位量計測手段は、それぞれ長尺光学フィルムの幅手方向に複数配置されていることを特徴とする請求項1から5までのいずれかの光学フィルム検査方法。
【請求項7】
連続搬送される長尺光学フィルムのフィルム特性を光学的入力手段を使用して検査する光学フィルム検査装置において、光学的入力手段を移動させる駆動手段と、フィルム被検査箇所の検査用基準位置からの変位量を計測する変位量計測手段と、変位量計測手段の出力に応じて光学的入力手段の駆動量を決定する駆動量決定手段とを備えていることを特徴とする光学フィルム検査装置。
【請求項8】
変位量計測手段は、光学的入力手段とフィルム被検査箇所との距離を計測する相対距離計測手段を兼ねていることを特徴とする請求項7の光学フィルム検査装置。
【請求項9】
変位量計測手段は、光学的入力手段と同時に駆動可能なように配置されていることを特徴とする請求項7または8の光学フィルム検査装置。
【請求項10】
変位量計測手段は、連続搬送される長尺光学フィルムの被検査箇所またはその上流側の変位量を計測するものであることを特徴とする請求項7から9までのいずれかの光学フィルム検査装置。
【請求項11】
光学的入力手段および変位量計測手段は、それぞれ長尺光学フィルムの幅手方向に複数配置されていることを特徴とする請求項7から10までのいずれかの光学フィルム検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−292670(P2006−292670A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−116941(P2005−116941)
【出願日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】