説明

光学フィルム構造

【課題】第一、第二屈折整合層の厚み及び屈折率整合(refractive index matching)により、反転位相の効果を生じさせ、エッチング工程による痕跡が視覚に与える影響を干渉可能とすること。
【解決手段】光学フィルム構造は、基板と、前記基板上に形成された多層膜構造とを含み、前記多層膜構造は、前記基板に最も近い位置から順に第一屈折整合層と第二屈折整合層と第三層とを積層してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電フィルム構造に関し、特に、画像品質を向上させる光学フィルム構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子製品のニーズの向上に伴い、電子製品が提供できる機能に対しても多様化が要求される。例えば、ユーザに、より便利にまた直感的に電子用品を制御させるために、現在の電子情報製品には、従来の押しボタン型の制御ボタンに代わって、タッチコントロール式の表示パネルが広く搭載されつつある。
【0003】
現在、タッチパネルは、大きく、抵抗式、容量式、赤外式及び超音波式等のタイプに分けられ、中でも抵抗式タッチパネル及び容量式タッチパネルは、最も汎用な製品である。応用的側面において、容量式タッチパネルは、複数点の接触で制御できる特徴を持ち、より人間的な操作モードを提供できるので、市場やユーザから好意を持って迎えられた。しかし、容量式タッチパネルは、例えば指のような導体材質でタッチパネルに接触しないと、電子製品を操作することができないという欠点がある。一方、抵抗式タッチパネルは、ユーザがあらゆる材質でタッチパネルと接触しても電子製品の操作及び制御を行うことができるので、タッチパネルの使用の便利性が向上している。また、抵抗式タッチパネルはコストが低く、技術も成熟しているので、現在の中級レベルの製品ラインは、主に、抵抗式タッチパネルを用いる。
【0004】
従来のタッチパネルは、ガラス基板の表面に透明導電フィルムが直接に積層され、該透明導電フィルムを接触することによって、信号入力またはタッチ位置感知等の機能を達成する。
【0005】
しかしながら、透明導電フィルムは、黄光現像やエッチングの工程を経て回路パターンを形成することにより、関連の駆動回路を構成しなければならない。実際の製造プロセスでは、エッチング工程によりエッチングの痕跡がパネルに残され、光学的分析において、ガラス基板と透明導電フィルムとの間の屈折率の違いが原因となり、スペクトルに著しい落差が生じるので、ユーザの視覚に暗い画像またはブロックとなり、電子製品の品質を低下させることになる。
【0006】
そのため、本発明者は、上記欠点の改良を目的とし、長年この分野で積み立てた経験とともに、専念して観察かつ研究をし、さらに学術理論の運用を合わせ、合理的な設計かつ前記欠点を有効に改善できる本発明を提案した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の主な目的は、基板と最外層との間に第一、第二屈折整合層を形成し、両屈折整合層の屈折率及び厚みの関係に基づいて光学マッチング(整合)を行い、光学干渉の現象を形成させ、エッチング工程による痕跡が目で視認されないようにし、光学上の表示効果を向上させる光学フィルム構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明による光学フィルム構造は、基板と、前記基板に形成された多層膜構造とを含み、前記多層膜構造は、前記基板に最も近い位置から順に第一屈折整合層と第二屈折整合層と第三層とからなり、前記第一屈折整合層が前記基板上に配置され、前記第一屈折整合層は、前記基板よりも屈折率が低い酸化物であり、前記第二屈折整合層が前記第一屈折整合層上に配置され、前記第二屈折整合層は、前記第一屈折整合層よりも屈折率が高い化合物であり、前記第二屈折整合層の膜厚の厚みは、前記第一屈折整合層の膜厚の厚みよりも大きく、前記第三層が前記第二屈折整合層上に配置され、前記第三層は、前記第二屈折整合層よりも屈折率が高い酸化物である。
【0009】
本発明は、さらに、前記光学フィルム構造を用いる表示装置を提供し、前記光学フィルム構造の第一、第二屈折整合層の役割によって、該表示装置が最適な現像効果を得られる。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、以下の有益な効果を有する。本発明は、第一、第二屈折整合層の屈折率整合関係により、入射光及び反射光の反転位相を変えて、光学干渉の現象を形成し、光学上の位相関係により、エッチング工程において残された痕跡を視認し難くし、最適な画像品質を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明による光学フィルム構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の特徴及び技術内容をさらに理解するために、以下本発明に関わる詳細な説明及び添付図面を参照することにより、深く且つ具体的な理解を得ることとするが、それらの添付図面は、参考及び説明のみに使用され、本発明の範囲を狭義的に制限するものではないことは言うまでもないことである。
【0013】
図1を参照すると、本発明は、光学フィルム構造1を提供する。光学フィルム構造1は、屈折率整合の原理で光学干渉の効果を生じさせ、入射光及び反射光の反転位相を変えることで、エッチング工程後の痕跡が光学的に目で視認されなくなり、最適な画像品質が得られる。光学フィルム構造1は、基板10と、基板10に形成された多層膜構造20を含む。多層膜構造20は、第一屈折整合層21と、第二屈折整合層22と、第三層23とを含み、第一屈折整合層21、第二屈折整合層22及び第三層23は基板10上に順次形成される。言い換えれば、基板10に最も近い位置から順に第一屈折整合層21と、第二屈折整合層22と、第三層23とが、基板10上に形成される。
【0014】
また、第一屈折整合層21、第二屈折整合層22及び第三層23は、各膜の屈折率を変化させて上記入射光及び反射光の反転位相の効果を達成するための特別な配列態様を持っており、エッチング工程後の痕跡を目で視認されないようにする。以下、各膜の屈折率関係及び厚み等の関連パラメータを詳しく説明する。第一屈折整合層21が基板10上に配置され、第一屈折整合層21は、基板10よりも屈折率が低い酸化物からなるものである。第二屈折整合層22が第一屈折整合層21上に配置され、第二屈折整合層22は、第一屈折整合層21よりも屈折率が高い化合物からなるものである。また、第二屈折整合層22の膜厚の厚みは、第一屈折整合層21の膜厚の厚みより大きい。第三層23が第二屈折整合層22上に配置され、第三層23は、第二屈折整合層22よりも屈折率が高い酸化物からなるものである。
【0015】
表1は、本発明の具体的な実施例であり、本発明は四つの実施例を例示しているが、以下の実施態様に限られるものではない。
【0016】
【表1】

【0017】
以下、本発明の第一実施例を説明する。第一の具体的な実施例では、基板10の材質はガラスであるがこれに限られず、例えば、基板10はPC、PMMA、PET、ARTON等のようなプラスチック板であっても良い。この具体的な実施例のガラスからなる基板10の屈折率は、1.52である。
【0018】
また、この具体的な実施例の第一屈折整合層21の屈折率は、1.49であり、言い換えれば、第一屈折整合層21の屈折率は、基板10の屈折率より低い。また、第一屈折整合層21の材質は、Nbであり、このNbからなる第一屈折整合層21の膜厚の厚みは、100Åである。
【0019】
この具体的な実施例の第二屈折整合層22の屈折率は、1.58であり、言い換えれば、第二屈折整合層22の屈折率は、第一屈折整合層21の屈折率より高い。また、第二屈折整合層22の材質はMgFであり、このMgFからなる第二屈折整合層22の膜厚の厚みは、700Åであり、言い換えれば、第二屈折整合層22の膜厚の厚みは、第一屈折整合層21の膜厚の厚みより大きい。また、上記屈折率の大小関係から分かるように、本発明では、基板10の屈折率は、第一屈折整合層21の屈折率と第二屈折整合層22の屈折率との間に存在する。
【0020】
この具体的な実施例の第三層23の屈折率は、2.0であり、言い換えれば、第三層23の屈折率は、第二屈折整合層22の屈折率より高い。また、第三層23の材質は、ITOであり、このITOからなる第三層23の膜厚の厚みは、180Åである。第三層23は表面層で、あらゆる透明導電フィルムであっても良く、また、1.9〜2.1の高い屈折率を有する。そのため、最外層の第三層23の材料は、SnO,ZnO,InまたはITOであってもよい。また、上記第三層23は、導電性を有するので、該フィルム構造は、応用する際にグランド過程を簡易化するとともに製造プロセスの歩留まりを向上させることができる。また、第三層23は導電層で、電極が第三層23に形成し易い。よって、本発明は、特に、タッチ型表示手段に適用されるが、これに限られない。
【0021】
このように、上記第一屈折整合層21及び第二屈折整合層22により、入射光及び反射光が反転位相の効果を生じさせ、光学上の干渉作用を達成し、エッチング工程による痕跡が目で視認されなくなる。言い換えれば、本発明は、基板10より屈折率が低い第一屈折整合層21、及び第一屈折整合層21より屈折率が高いとともに第一屈折整合層21より膜厚の厚みが大きい第二屈折整合層22の光学整合性により、エッチング痕跡を消去する機能を果たし、画像の表示効果を向上させる。
【0022】
表1に示す実施例から明らかなように、本発明にかかる光学フィルム構造1は、下記のように構成されている。即ち、基板10はガラス材質で、その屈折率が1.52である。そして、第一屈折整合層21の屈折率は1.49で基板10の屈折率より低く、且つ第一屈折整合層21はNbからなるもので、その膜厚の厚みは70Å〜100Åであるとしてもよく、或いは、第一屈折整合層21はTiOからなるもので、その膜厚の厚みは70Å〜80Åであるとしてもよい。そして、第二屈折整合層22の屈折率は1.58で第一屈折整合層21の屈折率よりも高く、且つ第二屈折整合層22の膜厚の厚みは、第一屈折整合層21の膜厚の厚みよりも大きい。第二屈折整合層22は、MgFからなるもので、その膜厚の厚みは、660Å〜700Åであるとしてもよく、或いは、第二屈折整合層22はSiOからなるもので、その膜厚の厚みは、660Å〜700Åであるとしてもよい。そして、第三層23の屈折率は2.0で第二屈折整合層22の屈折率よりも高く、第三層23は、ITOからなる。
【0023】
本発明は、さらに、光学フィルム構造1を用いる表示装置、例えば、LCD、CRT及びタッチパネル等のディスプレイその他の表示装置、或いは、上記表示装置を有する電子製品を提供する。
【0024】
以上のように、本発明は、以下の利点を有する。
本発明は、第一、第二屈折整合層の屈折率整合により、入射光及び反射光の反転位相を生じさせ、光学干渉の現象を形成させ、エッチング工程による痕跡を目で視認されないようにするので、本発明のフィルム構造の表示効果を向上することができる。
【0025】
以上の説明は、単に本発明の好ましい具体的な実施例の詳細説明及び図面を例示するもので、本発明の特許請求の範囲を制限するものではなく、当該分野における通常の知識を有するいずれの専門家も本発明の分野の中で、適当に変更や修飾などを実施できるが、それらの実施内容が本発明の範囲内に含まれるべきことは言うまでもないことである。
【符号の説明】
【0026】
1 光学フィルム構造
10 基板
20 多層膜構造
21 第一屈折整合層
22 第二屈折整合層
23 第三層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板上に形成された多層膜構造とを含む光学フィルム構造であって
前記多層膜構造は、前記基板に最も近い位置から順に第一屈折整合層と、第二屈折整合層と、第三層とからなり、
前記第一屈折整合層は前記基板上に配置され、前記第一屈折整合層は、前記基板よりも屈折率が低い酸化物からなるものであり、
前記第二屈折整合層は前記第一屈折整合層上に配置され、前記第二屈折整合層は、前記第一屈折整合層よりも屈折率が高い化合物からなるものであり、前記第二屈折整合層の膜厚の厚みは、前記第一屈折整合層の膜厚の厚みよりも大きく、
前記基板の屈折率は、前記第一屈折整合層の屈折率と前記第二屈折整合層の屈折率との間に存在し、
前記第三層は前記第二屈折整合層上に配置され、前記第三層は、前記第二屈折整合層よりも屈折率が高い酸化物からなるものであることを特徴とする光学フィルム構造。
【請求項2】
前記基板の材質はガラスであり、基板の屈折率は、1.52であることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルム構造。
【請求項3】
前記第一屈折整合層の屈折率は1.49であり、
前記第一屈折整合層の材質はNbであり、且つNbからなる第一屈折整合層の膜厚の厚みは70Å〜100Åである、或いは、前記第一屈折整合層の材質はTiOであり、且つTiOからなる第一屈折整合層の膜厚の厚みは70Å〜80Åであることを特徴とする請求項2に記載の光学フィルム構造。
【請求項4】
前記第二屈折整合層の屈折率は、1.58であり、
前記第二屈折整合層の材質は、MgFであり、且つMgFからなる第二屈折整合層の膜厚の厚みは、600Å〜700Åである、或いは、前記第二屈折整合層の材質は、SiOであり、且つSiOからなる第二屈折整合層の膜厚の厚みは、660Å〜700Åであることを特徴とする請求項3に記載の光学フィルム構造。
【請求項5】
前記第三層の屈折率は、2.0であり、前記第三層の材質は、ITOであり、ITOからなる第三層の膜厚の厚みは、180Åであることを特徴とする請求項4に記載の光学フィルム構造。

【図1】
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【公開番号】特開2011−17795(P2011−17795A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−161165(P2009−161165)
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【出願人】(507103606)智盛全球股▲分▼有限公司 (16)
【Fターム(参考)】