説明

光学分析装置

【課題】 液体試料の移送の不具合を容易に確実に検出できる光学分析装置を提供する。
【解決手段】 第1のチャンバー116aに液体試料を導入した分析用ディスク100を、軸心周りに回転させることにより、第2のチャンバー116bへ液体試料を移送させ、第1または第2のチャンバーを光学的に走査して液体試料中の成分を分析するようにした分析装置において、第1のチャンバー116aに液体試料が導入されてから、分析用ディスク100を回転させて液体試料を第1のチャンバー116aから第2のチャンバー116bに移送させる動作を行った後に、分析用ディスクを回転させた状態において、第2のチャンバー116bの所定の位置902における透過光の光量を検出し、予め定めた閾値と比較することにより、第2のチャンバー116bに分析に必要な量の液体試料が導入されたか否かを検出する。これにより、初期の目的を達成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク装置の光学スキャン技術を用いて、生物学的、化学的、または生化学的な液体試料の光学検査を行う光学分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液体試料として血液をその内部に収集した分析用ディスクを用い、この分析用ディスクを軸心周りに回転させながら、光ディスク装置の光学スキャン技術を用いて、血液の特性を分析する光学分析装置がある。(例えば特許文献1参照)。
【0003】
図10の分解斜視図に示すように、この分析用ディスク100は、同心円状または螺旋状のトラック101が存在するベース基板102と、血液が収集され移送の行われる溝を形成したスペーサ基板103と、これらの上部に、血液の注入口や空気口を形成した上カバー104を貼り合わせて構成されている。
【0004】
図11の平面図は、上記分析用ディスク100の要部を拡大して示したものである。なお血液を収集するチャンバーや、移送の行われる移送用流路は模式的に示している。分析用ディスク100は、一定量の血液を収集し、血液を血球成分と血漿成分に分離する第1のチャンバー200と、第1のチャンバー200に対して軸心より外側に配置され、第1のチャンバー200にて分離された血漿成分が移送される第2のチャンバー201と、第1のチャンバー200と第2のチャンバー201とを連結する移送用流路202とを有している。
【0005】
このような分析用ディスクを用いた分析動作としては、ピペットなどで血液を第1のチャンバー200に形成した注入口204より充填し、第1のチャンバー200内に血液を収集した状態で、分析用ディスク100を回転させる。すると血液は、移送用流路202の頂点202aを越えることのない状態、すなわち第1のチャンバー200に保持された状態で遠心分離が行われる。
【0006】
遠心分離後、分析用ディスク100の回転を停止させると、遠心分離された血漿成分111が毛細管作用によって移送用流路の頂点202aを越え、第2のチャンバー201の入り口まで移送される(図示の状態)。
【0007】
そして再度、分析用ディスク100を回転させると、遠心力および毛細管作用力により、分離された血漿成分が第1のチャンバー200から第2のチャンバー201へ移送される。第2のチャンバー201には、血漿中の分析したい特定の物質と反応して呈色する試薬205を保持させることができる。
【0008】
第2のチャンバー201に移送が完了して呈色反応が生じた後、分析用ディスク100を回転させながら、分析用ディスク100の下面に配置した光ピックアップから、トラック101に沿ってレーザー光を照射することで、第2のチャンバー201を走査する。そして分析用ディスク100の上面に配置したフォトディテクタによって、第2のチャンバー201から得られる透過光を検出することで、上記の試薬と反応した血漿成分中の特定の物質の量を検出することができる。
【0009】
なお、第2のチャンバーに保持させる試薬の種類を変えることで、血漿成分中の他の物質の分析も可能である。さらに上記分析用ディスクは、第1から第2のチャンバーのみで構成された例を挙げたが、これに限らず、さらには、もっと多くのチャンバーを第2のチャンバー以降に連結して設けるように構成されることもある。
【特許文献1】特表平10―504397号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、上記のような光学分析装置においては、第1のチャンバー200にて遠心分離された血漿成分が、第2のチャンバー201での分析に必要な所定量だけ移送用流路202を通じて移送されなければならない。
【0011】
しかしながら上記の分析用ディスクにおいては、血液中の血球成分が極端に多かったり、第1のチャンバー200内で血球成分112が偏った状態で遠心分離されたりした場合には、移送用流路202に血球成分が流れ込んでしまい、移送用流路が目詰まりして、必要な量の血漿成分が第2のチャンバー201まで移送されないことがあった。
【0012】
従来の光学分析装置では、このような不具合が生じたにもかかわらず、これを検知することなく分析を続行していたため、正確な分析結果が得られないという問題があった。すなわち、血漿成分の量が必要量よりも少なくなると、第2のチャンバー201に乾燥状態で保持されている分析用の試薬205が溶解すると濃い濃度の反応液となり、本来得られる分析値よりも高い結果が得られてしまう。また、血漿成分の量が少ないと、試薬205が十分に溶解しないことがあり、フォトディテクタでの透過光の光量の読み取りに誤差を与えてしまうこともある。
【0013】
また、上記従来の光学分析装置においては、必要量の血漿成分が第2のチャンバーに移送されたとしても、試薬の溶解が十分でなく、溶解されずに残っているような場合には、薄い濃度の反応液となるため、本来得られるべき分析値より低い値になったり、試薬が光学的な検出の邪魔をしたりし、精度の高い分析ができないという問題があった。
【0014】
そこで本発明は、上記課題を解決するものであり、必要量の液体試料が第2のチャンバーに移送されたかどうかや、第2のチャンバーに保持した試薬がきちんと溶解したかどうかを検出できる光学分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明の光学分析装置は、軸心の周りに液体試料が導入される第1のチャンバーと、前記第1のチャンバーに対して前記軸心よりも外側に配置され、前記第1のチャンバーと移送用流路により連結された第2のチャンバーとを備えた分析用ディスクが装着され、前記分析用ディスクに対してレーザー光を照射するレーザー光源と、前記レーザー光源により照射された分析用ディスクからの透過光を検出するフォトディテクタと、前記分析用ディスクを前記軸心周りに回転させる回転駆動手段と、を備え、
前記第1のチャンバーに液体試料を導入した前記分析用ディスクを、前記軸心周りに回転させることにより、前記第2のチャンバーへ液体試料を移送させ、前記第1または第2のチャンバーを光学的に走査して前記液体試料中の成分を分析するようにした分析装置において、前記第1のチャンバーに液体試料が導入されてから、前記分析用ディスクを回転させて前記液体試料を第1のチャンバーから第2のチャンバーに移送させる動作を行った後に、前記分析用ディスクを回転させた状態において、前記第2のチャンバーの所定の位置における透過光の光量を検出し、予め定めた閾値と比較することにより、前記第2のチャンバーに分析に必要な量の液体試料が導入されたか否かを検出するようにしたことを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明の光学分析装置は、軸心の周りに液体試料が導入される第1のチャンバーと、前記第1のチャンバーに対して前記軸心よりも外側に配置されるとともに、前記第1のチャンバーと移送用流路により連結され、さらに内部に前記液体試料に溶解する試薬が保持された第2のチャンバーとを備えた分析用ディスクが装着され、前記分析用ディスクに対してレーザー光を照射するレーザー光源と、前記レーザー光源により照射された分析用ディスクからの透過光を検出するフォトディテクタと、前記分析用ディスクを前記軸心周りに回転させる回転駆動手段と、を備え、前記第1のチャンバーに液体試料を導入した前記分析用ディスクを、前記軸心周りに回転させることにより、前記第2のチャンバーへ液体試料を移送させ、前記第1または第2のチャンバーを光学的に走査して前記液体試料中の成分を分析するようにした分析装置において、前記第1のチャンバーに導入された液体試料を、前記分析用ディスクを回転させることにより、前記第2のチャンバーに移送させる動作を行った後に、前記第2のチャンバーにおいて、前記試薬を保持させた領域を走査して得られる透過光の光量が、予め定めた閾値より大きくなったことにより、前記第2のチャンバーにおける前記試薬の液体試料への溶解を検出するようにしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の光学分析装置によれば、必要量の流体試料が確実に第2のチャンバーに移送されていないことや、第2のチャンバーに保持した試薬が確実に溶解されていないことを検出することができるので、このような場合には、分析を中止したり、さらに試薬が溶解するような処理を施したりして、分析精度を向上させることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明の光学分析装置の実施の形態を図面とともに詳細に説明する。以下の実施の形態においては、分析に必要な量の液体試料がチャンバーにきちんと移送されたかどうかを検出する例を実施の形態1において説明し、チャンバーに保持させた分析に必要な試薬がきちんと溶解されたかどうかを検出する例を実施の形態2において説明する。
【0019】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1における光学分析装置の構成を図1に基づいて説明する。本光学分析装置は、分析用ディスク100をディスクモータ106により矢印C方向に回転駆動しながら、光ピックアップ107よりレーザー光を、分析用ディスク100に向けて照射する。ピックアップ107は、トラバースモータ108で駆動される送りねじ109に螺合しており、サーボコントロール回路110が、ピックアップ107の出力に基づいてトラックを追随してトレースするように、トラバースモータ108を駆動してピックアップ107を径方向に移動させる。
【0020】
なおレーザー光の分析用ディスクへの照射は、トラバースモータ108の駆動だけでなく、ピックアップ107の内部に設けられたトラッキングアクチェータ(図示せず)によってレーザー光の光路を分析用ディスク100の面方向に必要に応じて併せて駆動して位置制御しながら正確にトラック101をトレースするように構成されている。
【0021】
また、サーボコントロール回路110は、トラックに記録されているアドレス情報を検出し、線速度が一定になるようにディスクモータ106を駆動(CLV制御)する。以上のトラッキングの動作はCPU123により制御される。
【0022】
分析用ディスク100の上部には、光ピックアップ107から照射したレーザー光のうち、分析用ディスク100を透過した透過光の光量を検出するフォトディテクタ113、フォトディテクタ113の出力のゲインを調整する調整回路130、調整回路130の出力をA/D変換するA/D変換器131、A/D変換されたデータを処理する透過光量信号処理回路132、透過光量信号処理回路132で得られたデータを保存するメモリー135、これらを制御するCPU133、そして分析された結果を表示する表示部134を有している。
【0023】
本実施の形態において使用する分析用ディスクの流路構造について説明する。本実施の形態においては、人体から採取した血液中のトリグリセリド(TG)を分析する分析用ディスクを用いた光学分析装置の例を説明する。
【0024】
図2は、分析用ディスクの要部平面図を示すものである。分析用ディスクはその軸心側から、ピペットやシリンジなどの採取具を使って血液を注入するための注入口117と、注入口117と移送用流路118dで連結され、注入口117より外周側に配置された第1のチャンバー116aと、第1のチャンバー116aと移送用流路118aで連結され、第1のチャンバー116aより外周側に配置された第2のチャンバー116bと、この第2のチャンバー116bと移送用流路118bで連結され、第2のチャンバー116bより外周側に配置された第3のチャンバー116cと、第3のチャンバー116cと移送用流路118cで連結され、第3のチャンバー116cのさらに外周側に配置された第4のチャンバー120とからなる。
【0025】
このうち、第2のチャンバー116bには、分析に必要な試薬が乾燥状態で保持されている。トリグリセリドの分析には、WST−9、NAD+、グリセロールデヒドロゲナーゼ、リポプロテインリパーゼ、ジアホラーゼを用いることができる。また、注入口117、第1から第3のチャンバーは、それぞれ、0.5〜5μリットルの容量を有しており、第4のチャンバーは0.5〜1μリットルの容積を有するよう構成することができる。
【0026】
以上のように構成された光学分析装置において、TGを分析する一連の動作を説明する。まず分析のための血液を適量、例えば5μリットルを注入口117より注入する。そして分析用ディスク100を図1で示すように光学分析装置に装着し、従来の光ディスク装置で行われるスピンアップ処理を行う。この処理により、注入口117に収集された血液は、第1のチャンバー116aに移送される。
【0027】
この後、血液の血漿成分と血球成分を分離する分離処理を第1のチャンバーにおいて行う。遠心分離処理は約6000rpmで約2分間回転させて行う。遠心分離後、分析用ディスク100の回転を停止すると、移送用流路118aの毛細管作用により、第1のチャンバー116aの内周側に位置する血漿成分だけが、図3のように移送用流路118aの出口まで移送される。
【0028】
約90秒間、回転を停止した後、再び、分析用ディスク100を約3000rpmで回転させると、第2のチャンバー116bの入り口まで移送されていた血漿成分が、図4のように、一気に第2のチャンバー116bへ流入する。図4は、分析用ディスク100が回転している状態を示しており、この状態で予め第2のチャンバー116bに保持させた上記の試薬119が血漿成分中に溶解する。
【0029】
約5秒間、分析用ディスク100を回転させて血漿成分中に試薬119を溶解させた後、その回転を停止する。すると試薬119の溶解した血漿成分が、毛細管作用により第2のチャンバー116bから移送用流路118bの出口、すなわち第3のチャンバー116cの入り口まで移送される。
【0030】
約90秒間、回転を停止させた後、再び、分析用ディスク100を約3000rpmで回転させると、血漿成分が図5に示すように、第3のチャンバー116cへ移送される。第2のチャンバー116bから第3のチャンバー116cに移送されるまでの間、血漿成分に溶解した試薬119と、TGの分析に不要な血漿成分中の物質とが凝集反応を生じている。そこで第3のチャンバー116cに移送された状態で約5秒間、分析用ディスクを回転させることにより、この凝集物質を遠心分離する。凝集物は、第3のチャンバー116cの外周に蓄積される。
【0031】
分析用ディスク101の回転を停止すると毛細管作用により、血漿成分が、第3のチャンバー116cから移送用流路118cの出口まで移送される。約45秒間、回転を停止させた後、再び、分析用ディスク101を約3000rpmで回転させると、血漿成分が図6に示すように、第4のチャンバー120へ移送される。この分析用の第4のチャンバー120の血漿成分に対してレーザー光を照射し、透過して得られる透過光の光量から、TGの濃度を算出する。
【0032】
ここで、上記の一連のTG濃度測定において、本実施の形態の特徴的な構成について具体的に説明する。本実施の形態では、第1のチャンバー116aで遠心分離された後の血漿成分が、TGの分析に必要な量だけ正確に、次の第2のチャンバー116bへと移送されているかどうかをモニタすることを特徴とする。
【0033】
すなわち、図4に示すように、血漿成分を第1のチャンバー116aから第2のチャンバー116bに移送させるための分析用ディスク100の回転動作を行った後に、血漿成分が第1のチャンバー116aから第2のチャンバー116bへ十分量移送されたかどうかを調べることを特徴としている。
【0034】
具体的には、分析用ディスク100を上記のように5秒間だけ回転させる間に、第2のチャンバー116bのうち、軸心からの径方向の距離が所定の位置に、光ピックアップ107よりレーザー光を照射する。この所定の位置とは、血漿成分が最低ここまで満たされたら正確な分析が可能であるという位置であり、周方向の複数の位置902における透過光量を測定する。
【0035】
判定の方法は、血漿成分が導入されていないときの透過光量(通例、AD値0〜700の範囲)を予め測定し、これを閾値としておき、血漿成分が満たされたときの透過光量の値(通例、AD値901〜1023の範囲)とを比較することによって、第2のチャンバー116b内に血漿成分が満たされているかどうかを検知することができる。
【0036】
なお、上記AD値とは、フォトディテクタで検出された透過光量を電圧で表したアナログ値からデジタル値に変換した値を意味しており、本実施例では、2進数10ビットにデジタル換算しているので、最低電圧値を0、最大電圧値を1023になるような範囲のデジタル値で、透過光量を表している。
【0037】
血漿成分が必要量だけ移送されたと判断されたときには、上述した以降のステップを実施するが、透過光量が予め定めた閾値を上回らない場合は、血球成分が目詰まりを起こすことなどによって、血漿成分が第2のチャンバーに十分導入されていないと判断することができる。この場合にはエラー処理を行い、例えば、表示部134に分析異常が生じた旨を表示させ、さらには、分析装置の以降の動作を停止させて、測定を終了することができる。
【0038】
また、血漿成分が第1のチャンバー116aから第2のチャンバー116bへ十分量移送されたかどうかを調べるためには、第1のチャンバー116aに残存する血液量を検出することによっても行うことができる。
【0039】
すなわち、第1のチャンバーにおいて遠心分離動作を行い、そして血漿成分を第2のチャンバー116bに移送する動作を行った後のタイミング、具体的には、図4に示すように、血漿成分を第2のチャンバー116bに移動させるための回転動作を行っている状態において、第1のチャンバー116aの軸心から所定の径方向の複数の位置903をレーザー光で照射し透過光量を測定する。径方向903の位置は、血液サンプルが、この位置にまで残存している状態であれば、正確な分析ができないという位置である。
【0040】
判別の仕方は、血液が導入されていない状態での位置903における透過光量を予め測定しておき、この値と、第1のチャンバーから第2のチャンバーへ血漿成分の移送動作を行う前後の透過光量の値とを比較することによって、検知することができる。具体的には、チャンバー116bへ移送する前の透過光量の値と比較して、血漿成分のチャンバー106bへの移送後に、予め測定した値まで変化がみられた場合には、血漿成分は正確にチャンバー106bへ移送されたと判断され次のステップに移る。しかしながら透過光量の値が予め測定した値にまで変化がみられなかった場合は、血漿成分がチャンバー116aに存在しており、チャンバー106bは十分満たされていないと判断する。そして表示部134にエラーの旨を表示し、分析装置の動作を停止させることができる。
【0041】
以上のように本実施の形態1によれば、チャンバーからチャンバーへ液体試料の移送を行う場合に、分析に必要な量がきちんと移送されたか否かを検出することができ、分析精度の信頼性を向上させることができる。
【0042】
なお、上記の位置902、903を示す情報は、分析用ディスクに書き込んでおいてもよいし、別途メモリー135に情報を与えるようにしてもよい。
【0043】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2として、チャンバーに保持させた分析に必要な試薬がきちんと溶解されたかどうかを検出する例について説明する。本実施の形態において用いる光学分析装置及び分析用ディスクの構成は、上記の実施の形態1で説明した構成と同様であり、以下、異なる動作を中心に説明をする。
【0044】
本実施の形態においては、図7に示すように第2のチャンバー116bに保持させた試薬119が、移送された血漿成分によってきちんと溶解したか否かを検出する。そこでまず、血漿成分が第2のチャンバー116bに移送される前に、試薬119を保持する領域のうち、複数の位置802(この場合、20スポット)における透過光量(通例、AD値0〜700の範囲)を測定しておく。
【0045】
そして、血液を第1のチャンバーに保持させた後、分析用ディスク100を回転させて遠心分離動作を行った後、分析用ディスクの回転の停止、回転を繰り返して、第1のチャンバー116aから第2のチャンバー116bに血漿成分を移送させる(図8の状態)。この第2のチャンバー116bに血漿成分を移送させた状態で分析用ディスク100の回転を維持し、試薬119の溶解を促進する。
【0046】
所定の時間、分析用ディスク100を回転させた後、再び上記複数の位置802(20スポット)において、透過光量を検出する。通常、血漿成分が第2チャンバー内で、試薬と反応し確実に溶解できれば、透過光量は、AD値901〜1023の範囲になる。そこで、複数の位置802(20スポット)のうち、前記透過光量(AD値901〜1023の範囲)を検出したスポット数が、予め定めたスポット数以上(例えば、18スポット以上)になっていれば、正確な分析ができる試薬量に相当すると判断でき、試薬119は正確な分析ができる量だけ血漿成分に溶解したと判定することができる。そして試薬119の溶解を確認した後に、分析用ディスク100の回転を停止し、そして再び回転を繰り返すことで、第3のチャンバーへと血漿成分を移送させ、次の分析のステップを行う。
【0047】
しかしここで、複数の位置802(20スポット)のうち、前記透過光量(AD値901〜1023の範囲)を検出したスポット数が、予め定めた所定のスポット数以上(例えば、18スポット)になっていなければ、正確な分析ができる試薬量に相当していないと判断でき、試薬が未だ正確な分析ができる量だけ溶解されていないと判定され、さらに分析用ディスク100の回転動作を延長する。この延長動作を行っても、透過光の光量が予め定めた閾値を越えない場合には、分析エラーの旨を表示し、以降の分析を中止することができる。
【0048】
なお、試薬がきちんと溶解したか否かを検出するには、第2のチャンバー116bから第3のチャンバー116cに血漿成分を移送させた後、第2のチャンバー116bに溶解していない試薬119が残存していないか否かで検出することができる。
【0049】
すなわち、図9に示すように第3のチャンバー116cに血漿成分を移送させた後、試薬119の保持されていた複数の位置802(20スポット)の透過光量を検出する。通常、血漿成分が第2チャンバー内で、試薬と反応し確実に溶解できれば、透過光量は、AD値701〜900の範囲になる。ここでの複数の位置802(20スポット)のうち、前記透過光量(AD値701〜900の範囲)を検出したスポット数が、予め定めた所定のスポット数以上(例えば、18スポット)になっていれば、正確な分析ができる試薬量に相当するとの判断が可能となり、試薬がきちんと溶解できたと判定できる。
【0050】
また、試薬119が血漿成分に溶解することによって、呈色反応を起こすものである場合には、第2のチャンバー116bあるいは第3のチャンバーにおいて、その呈色度合いが所定の値よりも大きくなったときに、試薬が溶解したと判別することができる。
【0051】
また、試薬119が溶解したか否かを検出する代わりに、透過光より、前記試薬の形状を検出し、試薬が溶解したか否かを判断するような構成にすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施の形態1における光学分析装置の構成図
【図2】同実施の形態で使用する分析ディスクの要部平面図
【図3】同実施の形態で使用する分析ディスクの要部平面図
【図4】同実施の形態で使用する分析ディスクの要部平面図
【図5】同実施の形態で使用する分析ディスクの要部平面図
【図6】同実施の形態で使用する分析ディスクの要部平面図
【図7】本発明の実施の形態2で使用する分析ディスクの要部平面図
【図8】同実施の形態で使用する分析ディスクの要部平面図
【図9】同実施の形態で使用する分析ディスクの要部平面図
【図10】分析用ディスクの分解斜視図
【図11】従来の分析用ディスクを示す要部平面図
【符号の説明】
【0053】
100 分析用ディスク
101 トラック
102 ベース基板
103 スペーサ基板
104 カバーディスク
106 ディスクモータ
107 ピックアップ
108 トラバースモータ
109 送りねじ
110 サーボコントロール回路
111 血漿成分
112 血球成分
113 フォトディテクタ(PD)
114 不要な凝集物
116a 第1のチャンバー
116b 第2のチャンバー
116c 第3のチャンバー
117 注入口
118a、118b、118c、118d 移送用流路
119 分析用試薬
120 第4のチャンバー



【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸心の周りに液体試料が導入される第1のチャンバーと、前記第1のチャンバーに対して前記軸心よりも外側に配置され、前記第1のチャンバーと移送用流路により連結された第2のチャンバーとを備えた分析用ディスクが装着され、
前記分析用ディスクに対してレーザー光を照射するレーザー光源と、前記レーザー光源により照射された分析用ディスクからの透過光を検出するフォトディテクタと、前記分析用ディスクを前記軸心周りに回転させる回転駆動手段と、を備え、
前記第1のチャンバーに液体試料を導入した前記分析用ディスクを、前記軸心周りに回転させることにより、前記第2のチャンバーへ液体試料を移送させ、前記第1または第2のチャンバーを光学的に走査して前記液体試料中の成分を分析するようにした分析装置において、
前記第1のチャンバーに液体試料が導入されてから、前記分析用ディスクを回転させて前記液体試料を第1のチャンバーから第2のチャンバーに移送させる動作を行った後に、前記分析用ディスクを回転させた状態において、前記第2のチャンバーの所定の位置における透過光の光量を検出し、予め定めた閾値と比較することにより、前記第2のチャンバーに分析に必要な量の液体試料が導入されたか否かを検出するようにしたことを特徴とする光学分析装置。
【請求項2】
軸心の周りに液体試料が導入される第1のチャンバーと、前記第1のチャンバーに対して前記軸心よりも外側に配置され、前記第1のチャンバーと移送用流路により連結された第2のチャンバーとを備えた分析用ディスクが装着され、
前記分析用ディスクに対してレーザー光を照射するレーザー光源と、前記レーザー光源により照射された分析用ディスクからの透過光を検出するフォトディテクタと、前記分析用ディスクを前記軸心周りに回転させる回転駆動手段と、を備え、
前記第1のチャンバーに液体試料を導入した前記分析用ディスクを、前記軸心周りに回転させることにより、前記第2のチャンバーへ液体試料を移送させ、前記第1または第2のチャンバーを光学的に走査して前記液体試料中の成分を分析するようにした分析装置において、
前記第1のチャンバーに液体試料が導入されてから、前記分析用ディスクを回転させて前記液体試料を第1のチャンバーから第2のチャンバーに移送させる動作を行った後に、前記分析用ディスクを回転させた状態において、前記第1のチャンバーの所定の位置における透過光の光量を検出し、予め定めた閾値と比較することにより、前記第2のチャンバーへ分析に必要な量の液体試料が移送されたか否かを検出するようにしたことを特徴とする光学分析装置。
【請求項3】
第2のチャンバーに前記液体試料により溶解される試薬を保持させたことを特徴とする請求項1または2に記載の光学分析装置。
【請求項4】
液体試料が血液であり、前記第1のチャンバーにおいて血球成分と血漿成分とに遠心分離を行った後に、血漿成分を第2のチャンバーへと移送させるようにしたことを特徴とする請求項1または2に記載の光学分析装置。
【請求項5】
前記第1のチャンバーまたは第2のチャンバーにおいて、予め定めた閾値と比較して、前記第2のチャンバーに分析に必要な量の液体試料が導入されていないことを検出した場合には、分析エラーの旨を表示するようにしたことを特徴とする請求項1または2に記載の光学分析装置。
【請求項6】
前記第1のチャンバーまたは第2のチャンバーにおいて、予め定めた閾値と比較して、前記第2のチャンバーに分析に必要な量の液体試料が導入されていないことを検出した場合には、以降の分析を中止するようにしたことを特徴とする請求項1または2に記載の光学分析装置。
【請求項7】
軸心の周りに液体試料が導入される第1のチャンバーと、前記第1のチャンバーに対して前記軸心よりも外側に配置されるとともに、前記第1のチャンバーと移送用流路により連結され、さらに内部に前記液体試料に溶解する試薬が保持された第2のチャンバーとを備えた分析用ディスクが装着され、
前記分析用ディスクに対してレーザー光を照射するレーザー光源と、前記レーザー光源により照射された分析用ディスクからの透過光を検出するフォトディテクタと、前記分析用ディスクを前記軸心周りに回転させる回転駆動手段と、を備え、
前記第1のチャンバーに液体試料を導入した前記分析用ディスクを、前記軸心周りに回転させることにより、前記第2のチャンバーへ液体試料を移送させ、前記第1または第2のチャンバーを光学的に走査して前記液体試料中の成分を分析するようにした分析装置において、
前記第1のチャンバーに導入された液体試料を、前記分析用ディスクを回転させることにより、前記第2のチャンバーに移送させる動作を行った後に、前記第2のチャンバーにおいて、前記試薬を保持させた領域を走査して得られる透過光の光量が、予め定めた閾値より大きくなったことにより、前記第2のチャンバーにおける前記試薬の液体試料への溶解を検出するようにしたことを特徴とする光学分析装置。
【請求項8】
第2のチャンバーにおいて前記試薬を保持させた領域のうち、複数の位置において、前記透過光の光量を検出するようにしたことを特徴とする請求項7に記載の光学分析装置。
【請求項9】
前記試薬を保持させた領域を走査した際に、透過光の光量が予め定めた閾値を越えない場合には、前記第2のチャンバーに液体試料を保持させた状態で、分析用ディスクをさらに回転させるようにしたことを特徴とする請求項7に記載の光学分析装置。
【請求項10】
前記試薬を保持させた領域を走査した際に、透過光の光量が予め定めた閾値を越えない場合には、分析エラーの旨を表示するようにしたことを特徴とする請求項7に記載の光学分析装置。
【請求項11】
前記試薬を保持させた領域を走査した際に、透過光の光量が予め定めた閾値を越えない場合には、以降の分析を中止するようにしたことを特徴とする請求項7に記載の分析装置。
【請求項12】
前記試薬を保持させた領域の透過光の光量を検出する代わりに、前記透過光より得られる液体試料の呈色を検出し、呈色度合いが予め定めた閾値よりも大きくなったか否かにより試薬の溶解を判断するようにしたことを特徴とする請求項7に記載の光学分析装置。
【請求項13】
前記試薬を保持させた領域の透過光の光量を検出する代わりに、前記透過光より、前記試薬の形状を検出し、試薬が溶解したか否かを判断するようにしたことを特徴とする請求項7に記載の光学分析装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−64923(P2007−64923A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−254786(P2005−254786)
【出願日】平成17年9月2日(2005.9.2)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】