光学式変位計
【課題】対象物の表面において多重反射した光が受光されることによって受光波形に複数の山部が現れた場合に、合理的かつ適正に計測結果を出力する光学式変位計を提供する。
【解決手段】対象物に光を照射するための発光素子と、複数の画素構成部のそれぞれが対象物からの光を受光して受光量に応じた電気信号を出力するイメージセンサーと、イメージセンサーからの電気信号を処理して受光量の分布に相当する受光波形の山部を検出し、山部のピーク位置又は重心位置を求めることによって対象物までの距離又は対象物の変位を計測する計測処理を一定の周期で連続して実行し、その計測結果を記憶すると共に出力する計測処理部とを備え、計測処理部は、受光波形に複数の山部が検出されたときに、前回の計測結果を今回の計測結果として出力する(ステップ#108)。
【解決手段】対象物に光を照射するための発光素子と、複数の画素構成部のそれぞれが対象物からの光を受光して受光量に応じた電気信号を出力するイメージセンサーと、イメージセンサーからの電気信号を処理して受光量の分布に相当する受光波形の山部を検出し、山部のピーク位置又は重心位置を求めることによって対象物までの距離又は対象物の変位を計測する計測処理を一定の周期で連続して実行し、その計測結果を記憶すると共に出力する計測処理部とを備え、計測処理部は、受光波形に複数の山部が検出されたときに、前回の計測結果を今回の計測結果として出力する(ステップ#108)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物に光を照射し、対象物からの光をイメージセンサーで受光して得られる電気信号から対象物までの距離又は対象物の変位を計測する光学式変位計に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の光学式変位計として、三角測量の原理を用いて対象物までの距離又は変位を計測するものがある。この光学式変位計は、対象物に光を照射するための発光素子としてのレーザダイオードと、複数の画素構成部のそれぞれが対象物からの光を受光して受光量に応じた電気信号を出力するイメージセンサーと、イメージセンサーからの電気信号に基づいて対象物までの距離又は対象物の変位を計測する計測処理部とを備えている。イメージセンサーからの電気信号は、ADコンバータでディジタル値に変換されて計測処理部に入力される。
【0003】
計測処理部は受光量の分布に相当する受光波形の山部を検出し、山部のピーク位置又は重心位置を求めることによって三角測量の原理を用いて対象物までの距離を算出する。受光波形における山部は、受光量に相当する電気信号(例えば電圧)が一旦増加したのち減少する部分であり、厳密には高さ及び幅があらかじめ定めた値を超えているものが山部として検出される。
【0004】
また、光学式変位計では、対象物の色、表面の粗さ、角度等の条件に応じて光の反射率、ひいては受光量が大きく変動する。そこで、受光量(山部のピーク値)が目標値になるように、発光素子の発光量やイメージセンサーからの電気信号を増幅する増幅器の増幅率を調整するフィードバック制御を行うことが一般的である。これにより、イメージセンサーの各画素構成部における蓄積電荷の飽和を回避しながらダイナミックレンジを有効活用することができる。
【0005】
上記のような光学式変位計は、例えば表面実装部品が実装されたプリント配線板の表面の凹凸形状の検査に使用される。つまり、表面実装部品が正しく実装されているか、あるいは半田付け部分に浮きが発生していないかといった検査を、プリント配線板の上方に配置された光学式変位計を用いて自動的に検査することができる。このような用途において、光学式変位計からプリント配線板に向けて照射された光が実装部品のエッジ部で反射し、更に他の部分で反射した後に光学式変位計に戻って来る光路をたどる場合がある。つまり、プリント配線板又は実装部品の表面で反射した光が光学式変位計に直接戻って来る一次反射光以外に、プリント配線板上の実装部品の表面で2回反射した二次反射光が光学式変位計に戻ってくる。3回以上反射した光(三次以上の反射光)が光学式変位計に戻ってくることもある。
【0006】
このような二次反射光又は三次以上の反射光(多重反射光)が光学式変位計に戻ってきてイメージセンサーに受光されると、それから得られる受光波形に複数の山部が現れることになる。この場合に、いずれの山部を有効な山部としてそのピーク位置又は重心位置を求め、対象物までの距離を算出するかを決める必要がある。例えば、ピークが高い方の山部を有効な山部とする方法、あるいは、最初に現れる山部を有効な山部とする方法がある。
【0007】
しかし、これらの方法はいずれも便宜的なものであって、常に正しい計測結果が得られるわけではない。一次反射光の受光量が多重反射光の受光量より常に多ければピークが高い方の山部を有効な山部とすればよいが、多重反射光の受光量が一次反射光の受光量より多くなる場合もある。また、一次反射光による受光波形の山部が常に最初に現れる場合は最初に現れる山部を有効な山部とすればよいが、すべての用途でそうなるように設定することは難しい。
【0008】
上記のような光学式変位計の用途では、光学式変位計から照射される光(光線)を横切る方向に対象物が移動する間に、光学式変位計による計測が一定のサンプリング周期で実行される。例えば、一定速度で動いているベルトコンベアに載置された対象物に対して上方に配置された光学式変位計から光が照射され、一定のサンプリング周期で対象物までの距離(対象物の表面の凹凸形状)が計測される。あるいは、光学式変位計に光を変更させて対象物の表面を走査する光走査手段が備えられる場合もある。この場合は、停止している対象物の表面の凹凸形状を計測することができる。いずれにせよ、光線を横切る方向に相対移動する対象物までの距離が一定の周期で連続的に計測される。
【0009】
そこで、受光波形に複数の山部が現れた場合に有効な1つの山部を決定する方法として、前回の受光波形の情報を参照して決定することが可能である。例えば特許文献1には、受光波形に複数の山部が現れた場合に、前回の受光波形の山部の位置(ビームスポット位置)に最も近い山部を有効な山部として決定する方法が記載されている。
【特許文献1】特公平7−117387号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前述の例において多重反射光が光学式変位計に戻って来てイメージセンサーに受光されるのは、プリント配線板の実装部品のエッジ部に光が当たったときであり、その前後の計測タイミングでは実装部品の表面(平坦部)に光が当たり受光波形に山部が1つだけ現れると考えられる。また、実装部品のエッジ部に光が当たったときの計測結果が仮に欠落したとしても、その前後の計測タイミングにおいて正しい計測結果が得られれば、実装部品を含むプリント配線板の表面の凹凸形状を検査する上で特に支障がない場合がほとんどである。
【0011】
そこで、本発明は、対象物の表面において多重反射した光が受光されることによって受光波形に複数の山部が現れた場合に、合理的かつ適正に計測結果を出力する光学式変位計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による光学式変位計の第1の構成は、対象物に光を照射するための発光素子と、複数の画素構成部のそれぞれが対象物からの光を受光して受光量に応じた電気信号を出力するイメージセンサーと、イメージセンサーからの電気信号を処理して受光量の分布に相当する受光波形の山部を検出し、山部のピーク位置又は重心位置を求めることによって対象物までの距離又は対象物の変位を計測する計測処理を一定の周期で連続して実行し、その計測結果を記憶すると共に出力する計測処理部とを備え、計測処理部は、受光波形に複数の山部が検出されたときに、前回の計測結果を今回の計測結果として出力することを特徴とする。
【0013】
このような構成によれば、本発明の光学式変位計では受光波形に複数の山部が現れたときは前回の計測結果がホールド(保持)される。したがって、多重反射光による山部に基づく誤った計測結果を出力する可能性がなくなる。前述のように、今回のサンプリングタイミングでの正しい計測結果が欠落したとしても、次回のサンプリングタイミングで正しい計測結果が得られれば、時系列の計測結果から特定される対象物の表面の凹凸形状はほぼ正確なものとなる。
【0014】
本発明による光学式変位計の第2の構成は、上記第1の構成において、山部のピーク値が目標値になるように発光素子の発光量又はイメージセンサーからの電気信号を増幅する増幅器の増幅率のフィードバック制御を実行する第1モードと、フィードバック制御の結果得られる発光量又は増幅率の適正値を所定の倍数分だけ増加する第2モードとを切り替えて実行することが可能な制御部を更に備え、計測処理部は、第2モードで得られた受光波形に基づいて計測処理を実行することを特徴とする。
【0015】
このような構成によれば、多重反射光による山部のピーク値が低くて、フィードバック制御のかかった第1モードではしきい値以下のために検出されない場合であっても、発光量又は増幅率が所定の倍数分だけ増加される第2モードでは多重反射光による山部が検出される場合がある。この場合は、複数の山部が検出されるので、第1の構成に示したように前回の計測結果がホールドされることになる。なお、所定の倍数は整数倍に限らず、例えば5.5倍のように小数部を含む倍数でもよい。
【0016】
本発明による光学式変位計の第3の構成は、対象物に光を照射するための発光素子と、複数の画素構成部のそれぞれが対象物からの光を受光して受光量に応じた電気信号を出力するイメージセンサーと、イメージセンサーからの電気信号を処理して受光量の分布に相当する受光波形の山部を検出し、山部のピーク位置又は重心位置を求めることによって対象物までの距離又は対象物の変位を計測する計測処理を一定の周期で連続して実行し、その計測結果を出力する計測処理部と、山部のピーク値が目標値になるように発光素子の発光量又はイメージセンサーからの電気信号を増幅する増幅器の増幅率のフィードバック制御を実行する第1モードと、フィードバック制御の結果得られる発光量又は増幅率の適正値を所定の倍数分だけ増加する第2モードとを切り替えて実行することが可能な制御部とを備え、計測処理部は、第2モードで得られた受光波形に複数の山部が検出されたときに、最初又は最後に現れた山部を有効な山部として計測処理を実行し、その計測結果を出力することを特徴とする。
【0017】
このような構成によれば、多重反射光による山部のピーク値が低くて、フィードバック制御のかかった第1モードではしきい値以下のために検出されない場合であっても、発光量又は増幅率が所定の倍数分だけ増加される第2モードでは多重反射光による山部が検出される場合がある。この場合に、計測処理部が最初又は最後に現れた山部を有効な山部として計測処理を実行し、適切な計測結果を出力することができる。
【0018】
本発明による光学式変位計の第4の構成は、対象物に光を照射するための発光素子と、複数の画素構成部のそれぞれが対象物からの光を受光して受光量に応じた電気信号を出力するイメージセンサーと、イメージセンサーからの電気信号を処理して受光量の分布に相当する受光波形の山部を検出し、山部のピーク位置又は重心位置を求めることによって対象物までの距離又は対象物の変位を計測する計測処理を一定の周期で連続して実行し、その計測結果を記憶すると共に出力する計測処理部とを備え、計測処理部は、受光波形に複数の山部が検出されたときに、最初又は最後に現れる山部を有効な山部として計測処理を実行し、今回の計測結果と前回の計測結果との差があらかじめ定めた変化許容値より小さい場合は今回の計測結果を有効な計測結果として出力し、かつ、今回の計測結果と前回の計測結果との差があらかじめ定めた変化許容値以上である場合は前回の計測結果を今回の計測結果として出力することを特徴とする。
【0019】
このような構成によれば、多重反射光による山部に基づいて求められた誤った計測結果を合理的に排除することができる。つまり、複数の山部が検出されたときに、計測処理部は正しい山部である可能性の高い最初又は最後に現れる山部を有効な山部としてひとまず計測処理を実行するが、その計測結果と前回の計測結果との差が変化許容値より大きい場合は、誤った計測結果であると判断して前回の計測結果が出力(ホールド)される。変化許容値以下である場合は、有効な計測結果として出力される。
【0020】
本発明による光学式変位計の第5の構成は、上記第4の構成において、山部のピーク値が目標値になるように発光素子の発光量又はイメージセンサーからの電気信号を増幅する増幅器の増幅率のフィードバック制御を実行する第1モードと、フィードバック制御の結果得られる発光量又は増幅率の適正値を所定の倍数分だけ増加する第2モードとを切り替えて実行することが可能な制御部を更に備え、計測処理部は、第2モードで得られた受光波形に基づいて計測処理を実行することを特徴とする。
【0021】
このような構成によれば、多重反射光による山部のピーク値が低くて、フィードバック制御のかかった第1モードではしきい値以下のために検出されない場合であっても、発光量又は増幅率が所定の倍数分だけ増加される第2モードでは多重反射光による山部が検出される場合がある。この場合は、複数の山部が検出されるので、第4の構成に示したように前回の計測結果との差に応じて前回又は今回の計測結果が出力される。
【0022】
本発明による光学式変位計の第6の構成は、対象物に光を照射するための発光素子と、複数の画素構成部のそれぞれが対象物からの光を受光して受光量に応じた電気信号を出力するイメージセンサーと、イメージセンサーからの電気信号を処理して受光量の分布に相当する受光波形の山部を検出し、山部のピーク位置又は重心位置を求めることによって対象物までの距離又は対象物の変位を計測する計測処理を一定の周期で連続して実行し、その計測結果を記憶すると共に出力する計測処理部とを備え、計測処理部は、受光波形に複数の山部が検出されたときに、最初又は最後に現れた山部を有効な山部として計測処理を実行し、今回の計測結果と前回の計測結果との差があらかじめ定めた変化許容値以下である場合は今回の計測結果を有効な計測結果として出力し、かつ、今回の計測結果と前回の計測結果との差があらかじめ定めた変化許容値より大きい場合は最初又は最後に現れた山部に隣接する山部を有効な山部として計測処理を実行し、その計測結果を出力することを特徴とする。
【0023】
このような構成によれば、多重反射光による山部に基づいて求められた誤った計測結果を合理的に排除することができる。つまり、複数の山部が検出されたときに、計測処理部は正しい山部である可能性の高い最初又は最後に現れる山部を有効な山部としてひとまず計測処理を実行するが、その計測結果と前回の計測結果との差が変化許容値より大きい場合は、隣接する山部(2個の山部が現れた場合は他方の山部)を有効な山部として計測処理を実行する。変化許容値以下である場合は、有効な計測結果として出力される。
【0024】
本発明による光学式変位計の第7の構成は、上記第6の構成において、山部のピーク値が目標値になるように発光素子の発光量又はイメージセンサーからの電気信号を増幅する増幅器の増幅率のフィードバック制御を実行する第1モードと、フィードバック制御の結果得られる発光量又は増幅率の適正値を所定の倍数分だけ増加する第2モードとを切り替えて実行することが可能な制御部を更に備え、計測処理部は、第2モードで得られた受光波形に基づいて計測処理を実行することを特徴とする。
【0025】
このような構成によれば、多重反射光による山部のピーク値が低くて、フィードバック制御のかかった第1モードではしきい値以下のために検出されない場合であっても、発光量又は増幅率が所定の倍数分だけ増加される第2モードでは多重反射光による山部が検出される場合がある。この場合は、複数の山部が検出されるので、第6の構成に示したように前回の計測結果との差に応じて今回の計測結果が出力され、又は隣接する別の山部に基づいて計測処理及び計測結果の出力が行われる。
【0026】
本発明による光学式変位計の第8の構成は、対象物に光を照射するための発光素子と、複数の画素構成部のそれぞれが対象物からの光を受光して受光量に応じた電気信号を出力するイメージセンサーと、イメージセンサーからの電気信号を処理して受光量の分布に相当する受光波形の山部を検出し、山部のピーク位置又は重心位置を求めることによって対象物までの距離又は対象物の変位を計測する計測処理を一定の周期で連続して実行し、その計測結果を記憶すると共に出力する計測処理部とを備え、計測処理部は、受光波形に複数の山部が検出されたときに、最初又は最後に現れた山部を有効な山部として計測処理を実行し、今回の計測結果が、前々回の計測結果に対する前回の計測結果の増加又は減少傾向から推定した予測範囲内にある場合は今回の計測結果を有効な計測結果として出力し、かつ、今回の計測結果が予測範囲内に無い場合は前回の計測結果を今回の計測結果として出力することを特徴とする。
【0027】
このような構成によれば、多重反射光による山部に基づいて求められた誤った計測結果を合理的に排除することができる。つまり、複数の山部が検出されたときに、計測処理部は正しい山部である可能性の高い最初又は最後に現れる山部を有効な山部としてひとまず計測処理を実行するが、前々回及び前回の計測結果の変化傾向から推定した予測範囲内に計測結果があるか否かの判断によって、その計測結果の妥当性が判断され、その判断結果に応じて前回又は今回の計測結果が出力される。
【0028】
本発明による光学式変位計の第9の構成は、上記第8の構成において、山部のピーク値が目標値になるように発光素子の発光量又はイメージセンサーからの電気信号を増幅する増幅器の増幅率のフィードバック制御を実行する第1モードと、フィードバック制御の結果得られる発光量又は増幅率の適正値を所定の倍数分だけ増加する第2モードとを切り替えて実行することが可能な制御部を更に備え、計測処理部は、第2モードで得られた受光波形に基づいて計測処理を実行することを特徴とする。
【0029】
このような構成によれば、多重反射光による山部のピーク値が低くて、フィードバック制御のかかった第1モードではしきい値以下のために検出されない場合であっても、発光量又は増幅率が所定の倍数分だけ増加される第2モードでは多重反射光による山部が検出される場合がある。この場合は、複数の山部が検出されるので、第8の構成に示したように前々回及び前回の計測結果の変化傾向から判断した今回の計測結果の妥当性のいかんに応じて前回又は今回の計測結果が出力される。
【0030】
本発明による光学式変位計の第10の構成は、対象物に光を照射するための発光素子と、複数の画素構成部のそれぞれが対象物からの光を受光して受光量に応じた電気信号を出力するイメージセンサーと、イメージセンサーからの電気信号を処理して受光量の分布に相当する受光波形の山部を検出し、山部のピーク位置又は重心位置を求めることによって対象物までの距離又は対象物の変位を計測する計測処理を一定の周期で連続して実行し、その計測結果を記憶すると共に出力する計測処理部とを備え、計測処理部は、受光波形に複数の山部が検出されたときに、最初又は最後に現れた山部を有効な山部として計測処理を実行し、今回の計測結果が、前々回の計測結果に対する前回の計測結果の増加又は減少傾向から推定される予測範囲内にある場合は今回の計測結果を有効な計測結果として出力し、かつ、今回の計測結果が予測範囲内に無い場合は最初又は最後に現れた山部に隣接する山部を有効な山部として計測処理を実行し、その計測結果を出力することを特徴とする。
【0031】
このような構成によれば、多重反射光による山部に基づいて求められた誤った計測結果を合理的に排除することができる。つまり、複数の山部が検出されたときに、計測処理部は正しい山部である可能性の高い最初又は最後に現れる山部を有効な山部としてひとまず計測処理を実行するが、前々回及び前回の計測結果の変化傾向から推定した予測範囲内に計測結果があるか否かの判断によって、その計測結果の妥当性が判断される。妥当と判断された場合は、その計測結果が出力されるが、妥当でないと判断された場合は隣接する山部(2個の山部が現れた場合は他方の山部)を有効な山部として計測処理を実行する。
【0032】
本発明による光学式変位計の第11の構成は、上記第10の構成において、山部のピーク値が目標値になるように発光素子の発光量又はイメージセンサーからの電気信号を増幅する増幅器の増幅率のフィードバック制御を実行する第1モードと、フィードバック制御の結果得られる発光量又は増幅率の適正値を所定の倍数分だけ増加する第2モードとを切り替えて実行することが可能な制御部を更に備え、計測処理部は、第2モードで得られた受光波形に基づいて計測処理を実行することを特徴とする。
【0033】
このような構成によれば、多重反射光による山部のピーク値が低くて、フィードバック制御のかかった第1モードではしきい値以下のために検出されない場合であっても、発光量又は増幅率が所定の倍数分だけ増加される第2モードでは多重反射光による山部が検出される場合がある。この場合は、複数の山部が検出されるので、第10の構成に示したように前々回及び前回の計測結果の変化傾向から判断した今回の計測結果の妥当性のいかんに応じて今回の計測結果が出力され、又は隣接する別の山部に基づいて計測処理及び計測結果の出力が行われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例について説明する。
【0035】
図1は、本発明の実施例に係る光学式変位計の計測原理を示す図である。この光学式変位計はレーザ変位計ともいわれ、三角測量の原理を用いて対象物の変位を非接触で計測するのに用いられる。LDドライバ11の制御によってレーザダイオード12から発せられたレーザ光は、投光レンズ13を通り対象物WKを照射する。対象物WKで反射したレーザ光の一部は、受光レンズ14を通ってリニアイメージセンサー15により受光される。リニアイメージセンサー15は、複数の画素構成部が一列に配列されたCCD又はCMOSイメージセンサーであり、受光量に相当する電荷が画素構成部ごとに蓄積され、取り出される。
【0036】
対象物WKが図1に破線で示すように変位すると、対象物WKで反射してリニアイメージセンサー15に達するレーザ光の光路が破線のように変化する。その結果、リニアイメージセンサー15の受光面における受光スポットの位置が移動し、上記の受光波形、すなわち受光量のピーク位置又は重心位置が変化する。リニアイメージセンサー15の各画素構成部における受光量に応じた蓄積電荷が読み出し回路16によって読み出され、信号処理によって一次元の受光量分布である受光波形が得られる。この受光波形のピーク位置又は重心位置から対象物WKの変位が求まる。
【0037】
図2は、光学式変位計の外観を示し、図2(a)は平面図、(b)は側面図である。この光学式変位計は、センサーヘッド部21とコントローラ部22からなる。センサーヘッド部21は、上記のLDドライバ11、レーザダイオード12、投光レンズ13、受光レンズ14、リニアイメージセンサー15及び読み出し回路16を内蔵している。
【0038】
コントローラ部22には、センサーヘッド部21のLDドライバ11を介してレーザダイオード12の出力(発光量)を制御すると共に、リニアイメージセンサー15から読み出された信号から対象物WKの変位を求める処理を実行する電子回路が内蔵されている。また、コントローラ部22の上面には、7セグメントLEDを用いた表示器221と、目標値の設定等に使用されるシーソータイプの押ボタンスイッチである増減キー222等が設けられている。表示器221は、計測結果の数値表示や各種設定値の表示に使用され、2つの計測結果又は設定値を上下2段に同時に表示することができる。
【0039】
センサーヘッド部21とコントローラ部22は電気ケーブル23で接続され、相互に電気信号がやりとりされると共に、電源電圧がコントローラ部22からセンサーヘッド部21に供給される。また、センサーヘッド部21は、2本のボルト24を用いて所定の取付け台25に固定される。ボルト24が挿通される2箇所の取付け孔はセンサーヘッド部21の基準面26に沿って設けられている。この基準面26は、計測用のレーザ光が出射すると共に対象物WKからの反射光が入射する面である。
【0040】
図3は、光学式変位計の主な回路構成を示すブロック図である。センサーヘッド部21は、レーザダイオード12とそのドライブ回路(LDドライバ)11、リニアイメージセンサー15とその読み出し回路16、投光レンズ13及び受光レンズ14を含む。コントローラ部22はローパスフィルタ(LPF)41、ADコンバータ(A/D)47、処理部(計測処理部及び制御部)44、DAコンバータ(D/A)45、増幅器46及びリセット・制御回路48を含む。処理部44は、計測結果等を一時記憶するためのメモリ44aを有する。
【0041】
レーザダイオード12から発せられたレーザ光は、投光レンズ13を通り対象物WKを照射する。対象物WKで反射したレーザ光の一部は、受光レンズ14を通ってリニアイメージセンサー15に入射する。リニアイメージセンサー15の各画素構成部に蓄積された電荷は、読み出し回路16によって読み出される。読み出し回路16は、読み出し用パルス信号である画素選択信号をリニアイメージセンサー15に与えて各画素構成部を順次走査することによって、一次元の受光量分布に相当する時系列の電圧信号を得る。
【0042】
例えば、リニアイメージセンサー15が256画素からなり、画素ごとの転送レートが1マイクロ秒の場合は、256マイクロ秒かかって全画素構成部の蓄積電荷が読み出され、読み出し回路16から時系列の電圧信号として出力される。この全画素の蓄積電荷を読み出すのに要する時間がサンプリング周期である。読み出し回路16の出力信号は、コントローラ部22に渡され、まずローパスフィルタ41によって高周波成分を除かれる。この高周波成分には、リニアイメージセンサー15に与えられる画素選択信号の周波数成分が含まれる。
【0043】
読み出し回路16の出力信号がローパスフィルタ41を通過すると、画素選択信号の周波数に相当する高周波成分が除かれ、その包絡線に相当する低周波成分のみの電圧信号となる。この電圧信号は、リニアイメージセンサー15における画素位置に関する受光量の分布の情報を含んでいる。電圧値が高いほど、その画素位置における受光量が多いことを意味する。この電圧信号の波形が前述の受光波形であり、受光波形には一旦増加したのち減少するように変化する山部が含まれている。この山部のピーク位置は、ワークWKまでの距離に対応する受光量の最も多い画素位置に相当する。
【0044】
図3に示すように、ローパスフィルタ41から出力される電圧信号は増幅器46で増幅された後にADコンバータ47でディジタル値に変換され、そのディジタル値が処理部44に逐次与えられる。処理部44は、ADコンバータ47を経て入力される逐次データから受光波形の山部を検出し、そのピーク位置又は重心位置を求める。山部のピーク位置又は重心位置が算出されると、前述の三角測量の原理からワークWKまでの距離又は変位が計測される。計測結果は、表示器221に表示されると共に、処理部44からDAコンバータ45に与えられ、アナログ電圧に変換されて外部機器に出力される。
【0045】
図3において、レーザダイオード12から発せられるレーザ光の強さ(発光量)はLDドライバ11を介して処理部(制御部に相当する)44によって制御される。レーザ光の強さが変われば、対象物WKで反射され、リニアイメージセンサー15に入射する光量(受光量)も変化する。そこで、対象物WKの光反射率(明るさ)に応じてレーザダイオード12から発せられるレーザ光の強さを調節することにより、リニアイメージセンサー15の各画素構成部における蓄積電荷の飽和を回避しながら、そのダイナミックレンジを十分に活用できるようにしている。具体的には、レーザダイオード12を駆動するパルスのパルス幅又はデューティ比を変えることによってレーザ光の強さを調節する。もちろん、パルス電圧(ピーク値)を変えることによって、レーザ光の強さを調節してもよい。
【0046】
上記のような処理部44による発光量(レーザ光の強さ)の制御は、一種のフィードバック制御として行われる。つまり、受光量に相当する値(例えばピーク値)が所定の目標値になるように、発光量(レーザ光の強さ)のフィードバック制御が行われる。発光量のフィードバック制御に代えて、図3に破線で示すように、増幅器46のゲイン(増幅率)のフィードバック制御を行ってもよい。あるいは、発光量のフィードバック制御と増幅器46の増幅率のフィードバック制御とを併用するようにしてもよい。例えば目標値に対するフィードバック量の誤差が所定の範囲内に収まっている間は増幅器46の増幅率のフィードバック制御を行い、フィードバック量の誤差が所定の範囲を超えたときは発光量のフィードバック制御を行うように構成することが可能である。
【0047】
図4は、処理部44によるフィードバック制御の構成を示すブロック図である。処理部44によって、比較部441、操作量算出部442及び出力部443が構成されている。また、図3におけるLDドライバ11及びレーザダイオード12が制御対象51に相当し、リニアイメージセンサー15、読出し回路16、ADコンバータ47等がフィードバック回路(FB回路)52に相当する。この例では、受光量に相当する電圧信号のピーク値(のディジタル変換値)がフィードバック量(FB量)として処理部44の比較部441に入力される。
【0048】
比較部441は、あらかじめ定められた目標値とフィードバック量とを比較し、その誤差を出力する。この誤差に基づいて操作量算出部442が操作量を算出し、出力部443に与える。この操作量は、上述の発光量又は(及び)増幅率に相当する。操作量は、処理部44の出力部443から制御信号として制御対象51に与えられる。すなわち、LDドライバ11又は(及び)増幅器46に制御信号が与えられ、レーザダイオード12の発光量又は(及び)増幅器46の増幅率が制御される。そして、フィードバック回路52(リニアイメージセンサー15、読出し回路16、ADコンバータ47等)によって得られる受光量のピーク値が再び処理部44の比較部441にフィードバックされることにより、フィードバックループが形成されている。
【0049】
本実施例の光学式変位計では、処理部(制御部)44は、上記のようなフィードバック制御を実行する第1モードと、フィードバック制御の結果得られる発光量又は増幅率(両方でもよい)の適正値を所定の倍数分だけ増加する第2モードとを切り替えて実行することができる。これにより、フィードバック制御のかかった第1モードではしきい値以下となり検出されない多重反射光による山部が、発光量又は増幅率が所定の倍数分だけ増加される第2モードでは多重反射光による山部が検出される場合がある。この場合は、受光波形に複数の山部が検出されることになる。
【0050】
図5は、対象物の表面で生じた多重反射光が光学式変位計に戻って来てリニアイメージセンサーに受光されることにより、受光波形に複数の山部が現れる様子を模式的に示す図である。図示の例では、回路部品61及び62が実装されたプリント配線板60の上方に配置された光学式変位計からレーザ光L0が下方に向けて照射される。回路部品61のエッジ部で反射したレーザ光の一部は実線で示す一次反射光L1として光学式変位計へ直接戻って行き、リニアイメージセンサー15に受光される。その結果、受光波形63に第1の山部64が形成される。また、回路部品61のエッジ部で反射したレーザ光の他の一部は破線で示すように、隣接する別の回路部品62のエッジ部で更に反射した後、二次反射光(多重反射光)L2として光学式変位計へ戻って行き、リニアイメージセンサー15に受光される。その結果、受光波形63に第2の山部65が形成される。
【0051】
なお、プリント配線板60の表面で多重反射光L2を生じさせる物体61及び62が2個の回路部品ではなく、1個の回路部品の異なる部位であることも多い。例えば、複数のピンが出ている集積回路の隣接するピン又はそれらの半田付け部の間で多重反射光L2が発生することが多い。また、図5では分かりやすさのために、回路部品61及び62が実装されたプリント配線板60に向けて斜め上方からレーザ光L0が照射され、その反射光L1,L2が斜め上方に向かうように描かれているが、実際には上方から略真下に向けてレーザ光L0が照射され、その反射光L1,L2も略真上に向かうことになる。
【0052】
また、図5に示す受光波形63では、二次反射光L2によって生じた第2の山部65は一次反射光L1によって生じた第1の山部64より小さい(ピーク値が低い)。しかし、常にそうなるとは限らない。回路部品61及び62の表面形状や材質、その他の条件によっては一次反射光L1によって生じた第1の山部64より二次反射光L2によって生じた第2の山部65のほうが大きくなる場合もあり得る。逆に、二次反射光L2が生じているにもかかわらず、その受光量がしきい値より小さいために第2の山部65が検出されない場合もある。
【0053】
図6は、発光量又は増幅率が所定の倍数分だけ増加される第2モードにおいて多重反射光による山部が検出される様子を示す図である。実線で示す受光波形63は第1モードにおける受光波形を示しており、第1の山部64のピーク値が目標値になるように発光量又は(及び)増幅率が制御されている。このとき、多重反射光による山部である第2の山部65は、そのピーク値がしきい値より低いために山部として検出されない。
【0054】
他方、破線で示す受光波形63’は第2モードにおける受光波形を示しており、これは第1モードにおける適正な発光量又は(及び)増幅率を所定の倍数分だけ増加したときの受光波形となる。したがって、第2モードにおける受光波形63’は第1モードにおける受光波形63を所定の倍数分だけ縦軸方向に引き延ばしたものとなる。この結果、第2の山部65’のピーク値がしきい値より高くなり、処理部44によって山部として検出される。その代わりに、第1の山部64’のピーク値は飽和レベルにクランプされるので、第1の山部64’の重心位置の算出結果の精度は若干低下する。
【0055】
なお、第2モードにおいて発光量又は(及び)増幅率を増加する率(所定の倍数)は、しきい値と信号処理回路のS/N比を考慮して適切な値に決定される。整数倍(例えば5倍)に限らず、小数を含む倍数(例えば5.5倍)であってもよい。このような第2モードと第1モードとを併用して行う計測処理のいくつかの実施例を以下に説明する。
【実施例1】
【0056】
図7は、本発明の実施例1に係る計測処理の流れを示すフローチャートである。処理部44は、ステップ#101において、第1モードにおけるフィードバック制御を実行し、発光量又は(及び)増幅率が適正値となるように調整する。続くステップ#102において、リニアイメージセンサー15の出力信号から得られた受光波形の山部を検出する。受光量に相当する電気信号(電圧)が一旦増加したのち減少する部分のうち、ピーク値がしきい値以上であり、幅があらかじめ定めた値を超えているものが山部として検出される。
【0057】
次のステップ#103において、受光波形に複数の山部が存在するか否かをチェックする。複数の山部が存在する場合はステップ#108に移行する。山部が1つだけの場合は、続くステップ#104において第2モードにおける発光量又は(及び)増幅率の増加を実行し、ステップ#105で再度複数の山部が存在するか否かをチェックする。複数の山部が存在する場合は、前回の計測結果(メモリ44aに記憶されている)を出力する。すなわち、前回の計測結果をホールドする。
【0058】
ステップ#105で山部が1つだけの場合は、続くステップ#106で山部の重心を求めて対象物までの距離を算出する計測処理を実行し、ステップ#107で計測結果のメモリ44aへの記憶と外部への出力を実行する。このように、本実施例では、第2モードにおいて発光量又は(及び)増幅率を増加した後も受光波形に山部が1つだけ存在する場合は、その山部に基づいて計測処理を実行し計測結果を出力するが、複数の山部が検出されたときは前回の計測結果を今回の計測結果として出力する(前回の計測結果をホールドする)。
【0059】
なお、ステップ#106の計測処理とステップ#107のうちの計測結果の記憶をステップ#104の直前に行うようにしてもよい。すなわち第2モードにおける発光量又は(及び)増幅率の増加を実行する前のフィードバックが掛かった状態の受光波形で計測処理を実行して計測結果を記憶しておき、第2モードにおける発光量又は(及び)増幅率の増加を実行しても受光波形に山部が1つだけ存在する場合は、その計測結果を読み出して出力するようにすればよい。このほうが、前述のように山部の重心位置の算出精度(対象物までの距離の算出精度)が良くなる。
【0060】
また、本実施例の変形例として、発光量又は(及び)増幅率を増加する第2モードを実行しないで、フィードバック制御によって発光量及び増幅率が適正値に調整された状態のみで、受光波形に複数の山部が存在するか否かの判断結果に応じて計測処理を実行し、又は前回の計測結果をホールドするようにしてもよい。
【実施例2】
【0061】
図8は、本発明の実施例2に係る計測処理の流れを示すフローチャートである。実施例1と同様に、ステップ#201では第1モードにおけるフィードバック制御が実行され、ステップ#202で受光波形の山部が検出される。次のステップ#203において、受光波形に複数の山部が存在するか否かがチェックされ、複数の山部が存在する場合はステップ#206に移行する。山部が1つだけの場合は、続くステップ#204において第2モードにおける発光量又は(及び)増幅率の増加を実行し、ステップ#205で再度複数の山部が存在するか否かをチェックする。複数の山部が存在する場合は続くステップ#206に移行し、山部が1つだけの場合はステップ#206をスキップしてステップ#207に移行する。
【0062】
ステップ#206では、受光波形の最初に現れた山部が有効な山部として採用される。最初に現れた山部とは、例えば図6に示した受光波形63における時間軸(横軸)の左端に最も近い山部64を意味する。続くステップ#207において、山部の重心を求めて対象物までの距離を算出する計測処理を実行し、ステップ#208で計測結果のメモリ44aへの記憶と外部への出力を実行する。
【0063】
このように、本実施例では、フィードバックの掛かった第1モードだけでなく、発光量又は(及び)増幅率を増加する第2モードでも受光波形に複数の山部が存在するか否かをチェックし、複数の山部が存在する場合は最初に現れた山部を有効な山部として採用する。なお、変形例として、最後に現れた山部、すなわち受光波形における時間軸(横軸)の右端に最も近い山部を有効な山部として採用するようにしてもよい。
【実施例3】
【0064】
図9は、本発明の実施例3に係る計測処理の流れを示すフローチャートである。実施例1と同様に、第1モードにおけるフィードバック制御を実行し、受光波形の山部を検出する。これらのステップについては図9では省略している。次のステップ#303において、受光波形に複数の山部が存在するか否かがチェックされ、複数の山部が存在する場合はステップ#307に移行する。山部が1つだけの場合は、続くステップ#304において第2モードにおける発光量又は(及び)増幅率の増加を実行し、ステップ#305で再度複数の山部が存在するか否かをチェックする。それでも山部が1つだけの場合は、その山部の重心を求めて対象物までの距離を算出する計測処理を実行し(ステップ#306)、計測結果の記憶と出力を実行する(ステップ#311)。複数の山部が存在する場合はステップ#307に移行する。
【0065】
ステップ#307では、受光波形の最初に現れた山部が有効な山部として採用される。最初に現れた山部の意味は実施例2で説明したとおりである。また、最初に現れた山部の代わりに最後に現れた山部を採用する変形例が可能な点も実施例2と同様である。続くステップ#308で山部の重心を求めて対象物までの距離を算出する計測処理を実行し、ステップ#309で前回の計測結果(メモリ44aに記憶されている)と今回の計測結果の比較を行う。両者の差があらかじめ定めた変化許容値以下である場合(ステップ#310のYes)は、その計測結果を有効な計測結果として記憶すると共に出力する(ステップ#311)。しかし、両者の差が変化許容値より大きい場合(ステップ#310のNo)は前回の計測結果を出力(ホールド)する(ステップ#312)。
【0066】
このように、本実施例では、第2モードにおいて発光量又は(及び)増幅率を増加した後も受光波形に山部が1つだけ存在する場合は、その山部に基づいて計測処理を実行し計測結果を出力するが、複数の山部が検出されたときは最初又は最後に現れる山部を有効な山部として計測処理を実行する。そして、その計測結果を前回の計測結果と比較し、両者の差があらかじめ定めた変化許容値以下であれば計測結果が有効として出力されるが、両者の差が変化許容値より大きい場合は前回の計測結果が今回の計測結果として出力される(前回の計測結果がホールドされる)。
【0067】
本実施例の変形例として、ステップ#312において前回の計測結果を出力する代わりに、最初(又は最後)に現れる山部に隣接する山部(山部が2個の場合は他方の山部)を有効な山部として計測処理を実行し、計測結果を出力するようにしてもよい。
【0068】
また、更に別の変形例として、発光量又は(及び)増幅率を増加する第2モードを実行しないで、フィードバック制御によって発光量及び増幅率が適正値に調整された状態のみで、上記実施例又は変形例の処理を行ってもよい。すなわち、受光波形に複数の山部が存在する場合は最初(又は最後)に現れる山部に基づいて計測処理を実行し、計測結果を前回の計測結果と比較し、両者の差が変化許容値以下である場合は有効な測定結果として出力し、変化許容値より大きい場合は前回の計測結果をホールドし、あるいは隣接する他の山部を有効な山部として計測処理を実行し、計測結果を出力する。
【実施例4】
【0069】
図10は、本発明の実施例4に係る計測処理の流れを示すフローチャートである。この実施例の計測処理は、図9に示した実施例3の計測処理とほぼ同じであるが、ステップ#409以降の処理が異なっている。つまり、複数の山部が検出されたときに、最初又は最後に現れる山部を有効な山部として計測処理を実行した後、その計測結果を前回の計測結果と比較する代わりに、次のような処理を実行する。この実施例では、前回の計測結果だけでなく、前々回の計測結果も処理部44のメモリ44aに記憶されている。処理部44は、前々回の計測結果に対する前回の計測結果の増加又は減少傾向(変化傾向)に基づいて、今回の計測結果が存在するであろう範囲(予測範囲)を推定する。そして、この予測範囲内に今回の計測結果がある場合(ステップ#410のYes)は、その計測結果を有効な計測結果として記憶すると共に出力する(ステップ#411)。しかし、今回の計測結果が予測範囲内に無い場合(ステップ#410のNo)は前回の計測結果を出力(ホールド)する(ステップ#412)。
【0070】
この実施例の場合も実施例3と同様に、変形例として、ステップ#412において前回の計測結果を出力する代わりに、最初(又は最後)に現れる山部に隣接する山部(山部が2個の場合は他方の山部)を有効な山部として計測処理を実行し、計測結果を出力するようにしてもよい。
【0071】
また、更に別の変形例として、発光量又は(及び)増幅率を増加する第2モードを実行しないで、フィードバック制御によって発光量及び増幅率が適正値に調整された状態のみで、上記実施例又は変形例の処理を行ってもよい。すなわち、受光波形に複数の山部が存在する場合は最初(又は最後)に現れる山部に基づいて計測処理を実行し、前々回及び前回の計測結果の変化傾向から推定した予測範囲内に計測結果がある場合は有効な測定結果として出力し、予測範囲内に計測結果が無い場合は前回の計測結果をホールドし、あるいは隣接する他の山部を有効な山部として計測処理を実行し、計測結果を出力する。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の実施例に係る光学式変位計の計測原理を示す図である。
【図2】光学式変位計の外観を示す平面図及び側面図である。
【図3】光学式変位計の主な回路構成を示すブロック図である。
【図4】処理部によるフィードバック制御の構成を示すブロック図である。
【図5】対象物の表面で生じた多重反射光によって受光波形に複数の山部が現れる様子を模式的に示す図である。
【図6】発光量又は増幅率が所定の倍数分だけ増加される第2モードにおいて多重反射光による山部が検出される様子を示す図である。
【図7】本発明の実施例1に係る計測処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施例2に係る計測処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】本発明の実施例3に係る計測処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】本発明の実施例4に係る計測処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0073】
12 レーザダイオード(発光素子)
15 リニアイメージセンサー
44 処理部(計測処理部及び制御部)
63 受光波形
64,65 山部
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物に光を照射し、対象物からの光をイメージセンサーで受光して得られる電気信号から対象物までの距離又は対象物の変位を計測する光学式変位計に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の光学式変位計として、三角測量の原理を用いて対象物までの距離又は変位を計測するものがある。この光学式変位計は、対象物に光を照射するための発光素子としてのレーザダイオードと、複数の画素構成部のそれぞれが対象物からの光を受光して受光量に応じた電気信号を出力するイメージセンサーと、イメージセンサーからの電気信号に基づいて対象物までの距離又は対象物の変位を計測する計測処理部とを備えている。イメージセンサーからの電気信号は、ADコンバータでディジタル値に変換されて計測処理部に入力される。
【0003】
計測処理部は受光量の分布に相当する受光波形の山部を検出し、山部のピーク位置又は重心位置を求めることによって三角測量の原理を用いて対象物までの距離を算出する。受光波形における山部は、受光量に相当する電気信号(例えば電圧)が一旦増加したのち減少する部分であり、厳密には高さ及び幅があらかじめ定めた値を超えているものが山部として検出される。
【0004】
また、光学式変位計では、対象物の色、表面の粗さ、角度等の条件に応じて光の反射率、ひいては受光量が大きく変動する。そこで、受光量(山部のピーク値)が目標値になるように、発光素子の発光量やイメージセンサーからの電気信号を増幅する増幅器の増幅率を調整するフィードバック制御を行うことが一般的である。これにより、イメージセンサーの各画素構成部における蓄積電荷の飽和を回避しながらダイナミックレンジを有効活用することができる。
【0005】
上記のような光学式変位計は、例えば表面実装部品が実装されたプリント配線板の表面の凹凸形状の検査に使用される。つまり、表面実装部品が正しく実装されているか、あるいは半田付け部分に浮きが発生していないかといった検査を、プリント配線板の上方に配置された光学式変位計を用いて自動的に検査することができる。このような用途において、光学式変位計からプリント配線板に向けて照射された光が実装部品のエッジ部で反射し、更に他の部分で反射した後に光学式変位計に戻って来る光路をたどる場合がある。つまり、プリント配線板又は実装部品の表面で反射した光が光学式変位計に直接戻って来る一次反射光以外に、プリント配線板上の実装部品の表面で2回反射した二次反射光が光学式変位計に戻ってくる。3回以上反射した光(三次以上の反射光)が光学式変位計に戻ってくることもある。
【0006】
このような二次反射光又は三次以上の反射光(多重反射光)が光学式変位計に戻ってきてイメージセンサーに受光されると、それから得られる受光波形に複数の山部が現れることになる。この場合に、いずれの山部を有効な山部としてそのピーク位置又は重心位置を求め、対象物までの距離を算出するかを決める必要がある。例えば、ピークが高い方の山部を有効な山部とする方法、あるいは、最初に現れる山部を有効な山部とする方法がある。
【0007】
しかし、これらの方法はいずれも便宜的なものであって、常に正しい計測結果が得られるわけではない。一次反射光の受光量が多重反射光の受光量より常に多ければピークが高い方の山部を有効な山部とすればよいが、多重反射光の受光量が一次反射光の受光量より多くなる場合もある。また、一次反射光による受光波形の山部が常に最初に現れる場合は最初に現れる山部を有効な山部とすればよいが、すべての用途でそうなるように設定することは難しい。
【0008】
上記のような光学式変位計の用途では、光学式変位計から照射される光(光線)を横切る方向に対象物が移動する間に、光学式変位計による計測が一定のサンプリング周期で実行される。例えば、一定速度で動いているベルトコンベアに載置された対象物に対して上方に配置された光学式変位計から光が照射され、一定のサンプリング周期で対象物までの距離(対象物の表面の凹凸形状)が計測される。あるいは、光学式変位計に光を変更させて対象物の表面を走査する光走査手段が備えられる場合もある。この場合は、停止している対象物の表面の凹凸形状を計測することができる。いずれにせよ、光線を横切る方向に相対移動する対象物までの距離が一定の周期で連続的に計測される。
【0009】
そこで、受光波形に複数の山部が現れた場合に有効な1つの山部を決定する方法として、前回の受光波形の情報を参照して決定することが可能である。例えば特許文献1には、受光波形に複数の山部が現れた場合に、前回の受光波形の山部の位置(ビームスポット位置)に最も近い山部を有効な山部として決定する方法が記載されている。
【特許文献1】特公平7−117387号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前述の例において多重反射光が光学式変位計に戻って来てイメージセンサーに受光されるのは、プリント配線板の実装部品のエッジ部に光が当たったときであり、その前後の計測タイミングでは実装部品の表面(平坦部)に光が当たり受光波形に山部が1つだけ現れると考えられる。また、実装部品のエッジ部に光が当たったときの計測結果が仮に欠落したとしても、その前後の計測タイミングにおいて正しい計測結果が得られれば、実装部品を含むプリント配線板の表面の凹凸形状を検査する上で特に支障がない場合がほとんどである。
【0011】
そこで、本発明は、対象物の表面において多重反射した光が受光されることによって受光波形に複数の山部が現れた場合に、合理的かつ適正に計測結果を出力する光学式変位計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による光学式変位計の第1の構成は、対象物に光を照射するための発光素子と、複数の画素構成部のそれぞれが対象物からの光を受光して受光量に応じた電気信号を出力するイメージセンサーと、イメージセンサーからの電気信号を処理して受光量の分布に相当する受光波形の山部を検出し、山部のピーク位置又は重心位置を求めることによって対象物までの距離又は対象物の変位を計測する計測処理を一定の周期で連続して実行し、その計測結果を記憶すると共に出力する計測処理部とを備え、計測処理部は、受光波形に複数の山部が検出されたときに、前回の計測結果を今回の計測結果として出力することを特徴とする。
【0013】
このような構成によれば、本発明の光学式変位計では受光波形に複数の山部が現れたときは前回の計測結果がホールド(保持)される。したがって、多重反射光による山部に基づく誤った計測結果を出力する可能性がなくなる。前述のように、今回のサンプリングタイミングでの正しい計測結果が欠落したとしても、次回のサンプリングタイミングで正しい計測結果が得られれば、時系列の計測結果から特定される対象物の表面の凹凸形状はほぼ正確なものとなる。
【0014】
本発明による光学式変位計の第2の構成は、上記第1の構成において、山部のピーク値が目標値になるように発光素子の発光量又はイメージセンサーからの電気信号を増幅する増幅器の増幅率のフィードバック制御を実行する第1モードと、フィードバック制御の結果得られる発光量又は増幅率の適正値を所定の倍数分だけ増加する第2モードとを切り替えて実行することが可能な制御部を更に備え、計測処理部は、第2モードで得られた受光波形に基づいて計測処理を実行することを特徴とする。
【0015】
このような構成によれば、多重反射光による山部のピーク値が低くて、フィードバック制御のかかった第1モードではしきい値以下のために検出されない場合であっても、発光量又は増幅率が所定の倍数分だけ増加される第2モードでは多重反射光による山部が検出される場合がある。この場合は、複数の山部が検出されるので、第1の構成に示したように前回の計測結果がホールドされることになる。なお、所定の倍数は整数倍に限らず、例えば5.5倍のように小数部を含む倍数でもよい。
【0016】
本発明による光学式変位計の第3の構成は、対象物に光を照射するための発光素子と、複数の画素構成部のそれぞれが対象物からの光を受光して受光量に応じた電気信号を出力するイメージセンサーと、イメージセンサーからの電気信号を処理して受光量の分布に相当する受光波形の山部を検出し、山部のピーク位置又は重心位置を求めることによって対象物までの距離又は対象物の変位を計測する計測処理を一定の周期で連続して実行し、その計測結果を出力する計測処理部と、山部のピーク値が目標値になるように発光素子の発光量又はイメージセンサーからの電気信号を増幅する増幅器の増幅率のフィードバック制御を実行する第1モードと、フィードバック制御の結果得られる発光量又は増幅率の適正値を所定の倍数分だけ増加する第2モードとを切り替えて実行することが可能な制御部とを備え、計測処理部は、第2モードで得られた受光波形に複数の山部が検出されたときに、最初又は最後に現れた山部を有効な山部として計測処理を実行し、その計測結果を出力することを特徴とする。
【0017】
このような構成によれば、多重反射光による山部のピーク値が低くて、フィードバック制御のかかった第1モードではしきい値以下のために検出されない場合であっても、発光量又は増幅率が所定の倍数分だけ増加される第2モードでは多重反射光による山部が検出される場合がある。この場合に、計測処理部が最初又は最後に現れた山部を有効な山部として計測処理を実行し、適切な計測結果を出力することができる。
【0018】
本発明による光学式変位計の第4の構成は、対象物に光を照射するための発光素子と、複数の画素構成部のそれぞれが対象物からの光を受光して受光量に応じた電気信号を出力するイメージセンサーと、イメージセンサーからの電気信号を処理して受光量の分布に相当する受光波形の山部を検出し、山部のピーク位置又は重心位置を求めることによって対象物までの距離又は対象物の変位を計測する計測処理を一定の周期で連続して実行し、その計測結果を記憶すると共に出力する計測処理部とを備え、計測処理部は、受光波形に複数の山部が検出されたときに、最初又は最後に現れる山部を有効な山部として計測処理を実行し、今回の計測結果と前回の計測結果との差があらかじめ定めた変化許容値より小さい場合は今回の計測結果を有効な計測結果として出力し、かつ、今回の計測結果と前回の計測結果との差があらかじめ定めた変化許容値以上である場合は前回の計測結果を今回の計測結果として出力することを特徴とする。
【0019】
このような構成によれば、多重反射光による山部に基づいて求められた誤った計測結果を合理的に排除することができる。つまり、複数の山部が検出されたときに、計測処理部は正しい山部である可能性の高い最初又は最後に現れる山部を有効な山部としてひとまず計測処理を実行するが、その計測結果と前回の計測結果との差が変化許容値より大きい場合は、誤った計測結果であると判断して前回の計測結果が出力(ホールド)される。変化許容値以下である場合は、有効な計測結果として出力される。
【0020】
本発明による光学式変位計の第5の構成は、上記第4の構成において、山部のピーク値が目標値になるように発光素子の発光量又はイメージセンサーからの電気信号を増幅する増幅器の増幅率のフィードバック制御を実行する第1モードと、フィードバック制御の結果得られる発光量又は増幅率の適正値を所定の倍数分だけ増加する第2モードとを切り替えて実行することが可能な制御部を更に備え、計測処理部は、第2モードで得られた受光波形に基づいて計測処理を実行することを特徴とする。
【0021】
このような構成によれば、多重反射光による山部のピーク値が低くて、フィードバック制御のかかった第1モードではしきい値以下のために検出されない場合であっても、発光量又は増幅率が所定の倍数分だけ増加される第2モードでは多重反射光による山部が検出される場合がある。この場合は、複数の山部が検出されるので、第4の構成に示したように前回の計測結果との差に応じて前回又は今回の計測結果が出力される。
【0022】
本発明による光学式変位計の第6の構成は、対象物に光を照射するための発光素子と、複数の画素構成部のそれぞれが対象物からの光を受光して受光量に応じた電気信号を出力するイメージセンサーと、イメージセンサーからの電気信号を処理して受光量の分布に相当する受光波形の山部を検出し、山部のピーク位置又は重心位置を求めることによって対象物までの距離又は対象物の変位を計測する計測処理を一定の周期で連続して実行し、その計測結果を記憶すると共に出力する計測処理部とを備え、計測処理部は、受光波形に複数の山部が検出されたときに、最初又は最後に現れた山部を有効な山部として計測処理を実行し、今回の計測結果と前回の計測結果との差があらかじめ定めた変化許容値以下である場合は今回の計測結果を有効な計測結果として出力し、かつ、今回の計測結果と前回の計測結果との差があらかじめ定めた変化許容値より大きい場合は最初又は最後に現れた山部に隣接する山部を有効な山部として計測処理を実行し、その計測結果を出力することを特徴とする。
【0023】
このような構成によれば、多重反射光による山部に基づいて求められた誤った計測結果を合理的に排除することができる。つまり、複数の山部が検出されたときに、計測処理部は正しい山部である可能性の高い最初又は最後に現れる山部を有効な山部としてひとまず計測処理を実行するが、その計測結果と前回の計測結果との差が変化許容値より大きい場合は、隣接する山部(2個の山部が現れた場合は他方の山部)を有効な山部として計測処理を実行する。変化許容値以下である場合は、有効な計測結果として出力される。
【0024】
本発明による光学式変位計の第7の構成は、上記第6の構成において、山部のピーク値が目標値になるように発光素子の発光量又はイメージセンサーからの電気信号を増幅する増幅器の増幅率のフィードバック制御を実行する第1モードと、フィードバック制御の結果得られる発光量又は増幅率の適正値を所定の倍数分だけ増加する第2モードとを切り替えて実行することが可能な制御部を更に備え、計測処理部は、第2モードで得られた受光波形に基づいて計測処理を実行することを特徴とする。
【0025】
このような構成によれば、多重反射光による山部のピーク値が低くて、フィードバック制御のかかった第1モードではしきい値以下のために検出されない場合であっても、発光量又は増幅率が所定の倍数分だけ増加される第2モードでは多重反射光による山部が検出される場合がある。この場合は、複数の山部が検出されるので、第6の構成に示したように前回の計測結果との差に応じて今回の計測結果が出力され、又は隣接する別の山部に基づいて計測処理及び計測結果の出力が行われる。
【0026】
本発明による光学式変位計の第8の構成は、対象物に光を照射するための発光素子と、複数の画素構成部のそれぞれが対象物からの光を受光して受光量に応じた電気信号を出力するイメージセンサーと、イメージセンサーからの電気信号を処理して受光量の分布に相当する受光波形の山部を検出し、山部のピーク位置又は重心位置を求めることによって対象物までの距離又は対象物の変位を計測する計測処理を一定の周期で連続して実行し、その計測結果を記憶すると共に出力する計測処理部とを備え、計測処理部は、受光波形に複数の山部が検出されたときに、最初又は最後に現れた山部を有効な山部として計測処理を実行し、今回の計測結果が、前々回の計測結果に対する前回の計測結果の増加又は減少傾向から推定した予測範囲内にある場合は今回の計測結果を有効な計測結果として出力し、かつ、今回の計測結果が予測範囲内に無い場合は前回の計測結果を今回の計測結果として出力することを特徴とする。
【0027】
このような構成によれば、多重反射光による山部に基づいて求められた誤った計測結果を合理的に排除することができる。つまり、複数の山部が検出されたときに、計測処理部は正しい山部である可能性の高い最初又は最後に現れる山部を有効な山部としてひとまず計測処理を実行するが、前々回及び前回の計測結果の変化傾向から推定した予測範囲内に計測結果があるか否かの判断によって、その計測結果の妥当性が判断され、その判断結果に応じて前回又は今回の計測結果が出力される。
【0028】
本発明による光学式変位計の第9の構成は、上記第8の構成において、山部のピーク値が目標値になるように発光素子の発光量又はイメージセンサーからの電気信号を増幅する増幅器の増幅率のフィードバック制御を実行する第1モードと、フィードバック制御の結果得られる発光量又は増幅率の適正値を所定の倍数分だけ増加する第2モードとを切り替えて実行することが可能な制御部を更に備え、計測処理部は、第2モードで得られた受光波形に基づいて計測処理を実行することを特徴とする。
【0029】
このような構成によれば、多重反射光による山部のピーク値が低くて、フィードバック制御のかかった第1モードではしきい値以下のために検出されない場合であっても、発光量又は増幅率が所定の倍数分だけ増加される第2モードでは多重反射光による山部が検出される場合がある。この場合は、複数の山部が検出されるので、第8の構成に示したように前々回及び前回の計測結果の変化傾向から判断した今回の計測結果の妥当性のいかんに応じて前回又は今回の計測結果が出力される。
【0030】
本発明による光学式変位計の第10の構成は、対象物に光を照射するための発光素子と、複数の画素構成部のそれぞれが対象物からの光を受光して受光量に応じた電気信号を出力するイメージセンサーと、イメージセンサーからの電気信号を処理して受光量の分布に相当する受光波形の山部を検出し、山部のピーク位置又は重心位置を求めることによって対象物までの距離又は対象物の変位を計測する計測処理を一定の周期で連続して実行し、その計測結果を記憶すると共に出力する計測処理部とを備え、計測処理部は、受光波形に複数の山部が検出されたときに、最初又は最後に現れた山部を有効な山部として計測処理を実行し、今回の計測結果が、前々回の計測結果に対する前回の計測結果の増加又は減少傾向から推定される予測範囲内にある場合は今回の計測結果を有効な計測結果として出力し、かつ、今回の計測結果が予測範囲内に無い場合は最初又は最後に現れた山部に隣接する山部を有効な山部として計測処理を実行し、その計測結果を出力することを特徴とする。
【0031】
このような構成によれば、多重反射光による山部に基づいて求められた誤った計測結果を合理的に排除することができる。つまり、複数の山部が検出されたときに、計測処理部は正しい山部である可能性の高い最初又は最後に現れる山部を有効な山部としてひとまず計測処理を実行するが、前々回及び前回の計測結果の変化傾向から推定した予測範囲内に計測結果があるか否かの判断によって、その計測結果の妥当性が判断される。妥当と判断された場合は、その計測結果が出力されるが、妥当でないと判断された場合は隣接する山部(2個の山部が現れた場合は他方の山部)を有効な山部として計測処理を実行する。
【0032】
本発明による光学式変位計の第11の構成は、上記第10の構成において、山部のピーク値が目標値になるように発光素子の発光量又はイメージセンサーからの電気信号を増幅する増幅器の増幅率のフィードバック制御を実行する第1モードと、フィードバック制御の結果得られる発光量又は増幅率の適正値を所定の倍数分だけ増加する第2モードとを切り替えて実行することが可能な制御部を更に備え、計測処理部は、第2モードで得られた受光波形に基づいて計測処理を実行することを特徴とする。
【0033】
このような構成によれば、多重反射光による山部のピーク値が低くて、フィードバック制御のかかった第1モードではしきい値以下のために検出されない場合であっても、発光量又は増幅率が所定の倍数分だけ増加される第2モードでは多重反射光による山部が検出される場合がある。この場合は、複数の山部が検出されるので、第10の構成に示したように前々回及び前回の計測結果の変化傾向から判断した今回の計測結果の妥当性のいかんに応じて今回の計測結果が出力され、又は隣接する別の山部に基づいて計測処理及び計測結果の出力が行われる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例について説明する。
【0035】
図1は、本発明の実施例に係る光学式変位計の計測原理を示す図である。この光学式変位計はレーザ変位計ともいわれ、三角測量の原理を用いて対象物の変位を非接触で計測するのに用いられる。LDドライバ11の制御によってレーザダイオード12から発せられたレーザ光は、投光レンズ13を通り対象物WKを照射する。対象物WKで反射したレーザ光の一部は、受光レンズ14を通ってリニアイメージセンサー15により受光される。リニアイメージセンサー15は、複数の画素構成部が一列に配列されたCCD又はCMOSイメージセンサーであり、受光量に相当する電荷が画素構成部ごとに蓄積され、取り出される。
【0036】
対象物WKが図1に破線で示すように変位すると、対象物WKで反射してリニアイメージセンサー15に達するレーザ光の光路が破線のように変化する。その結果、リニアイメージセンサー15の受光面における受光スポットの位置が移動し、上記の受光波形、すなわち受光量のピーク位置又は重心位置が変化する。リニアイメージセンサー15の各画素構成部における受光量に応じた蓄積電荷が読み出し回路16によって読み出され、信号処理によって一次元の受光量分布である受光波形が得られる。この受光波形のピーク位置又は重心位置から対象物WKの変位が求まる。
【0037】
図2は、光学式変位計の外観を示し、図2(a)は平面図、(b)は側面図である。この光学式変位計は、センサーヘッド部21とコントローラ部22からなる。センサーヘッド部21は、上記のLDドライバ11、レーザダイオード12、投光レンズ13、受光レンズ14、リニアイメージセンサー15及び読み出し回路16を内蔵している。
【0038】
コントローラ部22には、センサーヘッド部21のLDドライバ11を介してレーザダイオード12の出力(発光量)を制御すると共に、リニアイメージセンサー15から読み出された信号から対象物WKの変位を求める処理を実行する電子回路が内蔵されている。また、コントローラ部22の上面には、7セグメントLEDを用いた表示器221と、目標値の設定等に使用されるシーソータイプの押ボタンスイッチである増減キー222等が設けられている。表示器221は、計測結果の数値表示や各種設定値の表示に使用され、2つの計測結果又は設定値を上下2段に同時に表示することができる。
【0039】
センサーヘッド部21とコントローラ部22は電気ケーブル23で接続され、相互に電気信号がやりとりされると共に、電源電圧がコントローラ部22からセンサーヘッド部21に供給される。また、センサーヘッド部21は、2本のボルト24を用いて所定の取付け台25に固定される。ボルト24が挿通される2箇所の取付け孔はセンサーヘッド部21の基準面26に沿って設けられている。この基準面26は、計測用のレーザ光が出射すると共に対象物WKからの反射光が入射する面である。
【0040】
図3は、光学式変位計の主な回路構成を示すブロック図である。センサーヘッド部21は、レーザダイオード12とそのドライブ回路(LDドライバ)11、リニアイメージセンサー15とその読み出し回路16、投光レンズ13及び受光レンズ14を含む。コントローラ部22はローパスフィルタ(LPF)41、ADコンバータ(A/D)47、処理部(計測処理部及び制御部)44、DAコンバータ(D/A)45、増幅器46及びリセット・制御回路48を含む。処理部44は、計測結果等を一時記憶するためのメモリ44aを有する。
【0041】
レーザダイオード12から発せられたレーザ光は、投光レンズ13を通り対象物WKを照射する。対象物WKで反射したレーザ光の一部は、受光レンズ14を通ってリニアイメージセンサー15に入射する。リニアイメージセンサー15の各画素構成部に蓄積された電荷は、読み出し回路16によって読み出される。読み出し回路16は、読み出し用パルス信号である画素選択信号をリニアイメージセンサー15に与えて各画素構成部を順次走査することによって、一次元の受光量分布に相当する時系列の電圧信号を得る。
【0042】
例えば、リニアイメージセンサー15が256画素からなり、画素ごとの転送レートが1マイクロ秒の場合は、256マイクロ秒かかって全画素構成部の蓄積電荷が読み出され、読み出し回路16から時系列の電圧信号として出力される。この全画素の蓄積電荷を読み出すのに要する時間がサンプリング周期である。読み出し回路16の出力信号は、コントローラ部22に渡され、まずローパスフィルタ41によって高周波成分を除かれる。この高周波成分には、リニアイメージセンサー15に与えられる画素選択信号の周波数成分が含まれる。
【0043】
読み出し回路16の出力信号がローパスフィルタ41を通過すると、画素選択信号の周波数に相当する高周波成分が除かれ、その包絡線に相当する低周波成分のみの電圧信号となる。この電圧信号は、リニアイメージセンサー15における画素位置に関する受光量の分布の情報を含んでいる。電圧値が高いほど、その画素位置における受光量が多いことを意味する。この電圧信号の波形が前述の受光波形であり、受光波形には一旦増加したのち減少するように変化する山部が含まれている。この山部のピーク位置は、ワークWKまでの距離に対応する受光量の最も多い画素位置に相当する。
【0044】
図3に示すように、ローパスフィルタ41から出力される電圧信号は増幅器46で増幅された後にADコンバータ47でディジタル値に変換され、そのディジタル値が処理部44に逐次与えられる。処理部44は、ADコンバータ47を経て入力される逐次データから受光波形の山部を検出し、そのピーク位置又は重心位置を求める。山部のピーク位置又は重心位置が算出されると、前述の三角測量の原理からワークWKまでの距離又は変位が計測される。計測結果は、表示器221に表示されると共に、処理部44からDAコンバータ45に与えられ、アナログ電圧に変換されて外部機器に出力される。
【0045】
図3において、レーザダイオード12から発せられるレーザ光の強さ(発光量)はLDドライバ11を介して処理部(制御部に相当する)44によって制御される。レーザ光の強さが変われば、対象物WKで反射され、リニアイメージセンサー15に入射する光量(受光量)も変化する。そこで、対象物WKの光反射率(明るさ)に応じてレーザダイオード12から発せられるレーザ光の強さを調節することにより、リニアイメージセンサー15の各画素構成部における蓄積電荷の飽和を回避しながら、そのダイナミックレンジを十分に活用できるようにしている。具体的には、レーザダイオード12を駆動するパルスのパルス幅又はデューティ比を変えることによってレーザ光の強さを調節する。もちろん、パルス電圧(ピーク値)を変えることによって、レーザ光の強さを調節してもよい。
【0046】
上記のような処理部44による発光量(レーザ光の強さ)の制御は、一種のフィードバック制御として行われる。つまり、受光量に相当する値(例えばピーク値)が所定の目標値になるように、発光量(レーザ光の強さ)のフィードバック制御が行われる。発光量のフィードバック制御に代えて、図3に破線で示すように、増幅器46のゲイン(増幅率)のフィードバック制御を行ってもよい。あるいは、発光量のフィードバック制御と増幅器46の増幅率のフィードバック制御とを併用するようにしてもよい。例えば目標値に対するフィードバック量の誤差が所定の範囲内に収まっている間は増幅器46の増幅率のフィードバック制御を行い、フィードバック量の誤差が所定の範囲を超えたときは発光量のフィードバック制御を行うように構成することが可能である。
【0047】
図4は、処理部44によるフィードバック制御の構成を示すブロック図である。処理部44によって、比較部441、操作量算出部442及び出力部443が構成されている。また、図3におけるLDドライバ11及びレーザダイオード12が制御対象51に相当し、リニアイメージセンサー15、読出し回路16、ADコンバータ47等がフィードバック回路(FB回路)52に相当する。この例では、受光量に相当する電圧信号のピーク値(のディジタル変換値)がフィードバック量(FB量)として処理部44の比較部441に入力される。
【0048】
比較部441は、あらかじめ定められた目標値とフィードバック量とを比較し、その誤差を出力する。この誤差に基づいて操作量算出部442が操作量を算出し、出力部443に与える。この操作量は、上述の発光量又は(及び)増幅率に相当する。操作量は、処理部44の出力部443から制御信号として制御対象51に与えられる。すなわち、LDドライバ11又は(及び)増幅器46に制御信号が与えられ、レーザダイオード12の発光量又は(及び)増幅器46の増幅率が制御される。そして、フィードバック回路52(リニアイメージセンサー15、読出し回路16、ADコンバータ47等)によって得られる受光量のピーク値が再び処理部44の比較部441にフィードバックされることにより、フィードバックループが形成されている。
【0049】
本実施例の光学式変位計では、処理部(制御部)44は、上記のようなフィードバック制御を実行する第1モードと、フィードバック制御の結果得られる発光量又は増幅率(両方でもよい)の適正値を所定の倍数分だけ増加する第2モードとを切り替えて実行することができる。これにより、フィードバック制御のかかった第1モードではしきい値以下となり検出されない多重反射光による山部が、発光量又は増幅率が所定の倍数分だけ増加される第2モードでは多重反射光による山部が検出される場合がある。この場合は、受光波形に複数の山部が検出されることになる。
【0050】
図5は、対象物の表面で生じた多重反射光が光学式変位計に戻って来てリニアイメージセンサーに受光されることにより、受光波形に複数の山部が現れる様子を模式的に示す図である。図示の例では、回路部品61及び62が実装されたプリント配線板60の上方に配置された光学式変位計からレーザ光L0が下方に向けて照射される。回路部品61のエッジ部で反射したレーザ光の一部は実線で示す一次反射光L1として光学式変位計へ直接戻って行き、リニアイメージセンサー15に受光される。その結果、受光波形63に第1の山部64が形成される。また、回路部品61のエッジ部で反射したレーザ光の他の一部は破線で示すように、隣接する別の回路部品62のエッジ部で更に反射した後、二次反射光(多重反射光)L2として光学式変位計へ戻って行き、リニアイメージセンサー15に受光される。その結果、受光波形63に第2の山部65が形成される。
【0051】
なお、プリント配線板60の表面で多重反射光L2を生じさせる物体61及び62が2個の回路部品ではなく、1個の回路部品の異なる部位であることも多い。例えば、複数のピンが出ている集積回路の隣接するピン又はそれらの半田付け部の間で多重反射光L2が発生することが多い。また、図5では分かりやすさのために、回路部品61及び62が実装されたプリント配線板60に向けて斜め上方からレーザ光L0が照射され、その反射光L1,L2が斜め上方に向かうように描かれているが、実際には上方から略真下に向けてレーザ光L0が照射され、その反射光L1,L2も略真上に向かうことになる。
【0052】
また、図5に示す受光波形63では、二次反射光L2によって生じた第2の山部65は一次反射光L1によって生じた第1の山部64より小さい(ピーク値が低い)。しかし、常にそうなるとは限らない。回路部品61及び62の表面形状や材質、その他の条件によっては一次反射光L1によって生じた第1の山部64より二次反射光L2によって生じた第2の山部65のほうが大きくなる場合もあり得る。逆に、二次反射光L2が生じているにもかかわらず、その受光量がしきい値より小さいために第2の山部65が検出されない場合もある。
【0053】
図6は、発光量又は増幅率が所定の倍数分だけ増加される第2モードにおいて多重反射光による山部が検出される様子を示す図である。実線で示す受光波形63は第1モードにおける受光波形を示しており、第1の山部64のピーク値が目標値になるように発光量又は(及び)増幅率が制御されている。このとき、多重反射光による山部である第2の山部65は、そのピーク値がしきい値より低いために山部として検出されない。
【0054】
他方、破線で示す受光波形63’は第2モードにおける受光波形を示しており、これは第1モードにおける適正な発光量又は(及び)増幅率を所定の倍数分だけ増加したときの受光波形となる。したがって、第2モードにおける受光波形63’は第1モードにおける受光波形63を所定の倍数分だけ縦軸方向に引き延ばしたものとなる。この結果、第2の山部65’のピーク値がしきい値より高くなり、処理部44によって山部として検出される。その代わりに、第1の山部64’のピーク値は飽和レベルにクランプされるので、第1の山部64’の重心位置の算出結果の精度は若干低下する。
【0055】
なお、第2モードにおいて発光量又は(及び)増幅率を増加する率(所定の倍数)は、しきい値と信号処理回路のS/N比を考慮して適切な値に決定される。整数倍(例えば5倍)に限らず、小数を含む倍数(例えば5.5倍)であってもよい。このような第2モードと第1モードとを併用して行う計測処理のいくつかの実施例を以下に説明する。
【実施例1】
【0056】
図7は、本発明の実施例1に係る計測処理の流れを示すフローチャートである。処理部44は、ステップ#101において、第1モードにおけるフィードバック制御を実行し、発光量又は(及び)増幅率が適正値となるように調整する。続くステップ#102において、リニアイメージセンサー15の出力信号から得られた受光波形の山部を検出する。受光量に相当する電気信号(電圧)が一旦増加したのち減少する部分のうち、ピーク値がしきい値以上であり、幅があらかじめ定めた値を超えているものが山部として検出される。
【0057】
次のステップ#103において、受光波形に複数の山部が存在するか否かをチェックする。複数の山部が存在する場合はステップ#108に移行する。山部が1つだけの場合は、続くステップ#104において第2モードにおける発光量又は(及び)増幅率の増加を実行し、ステップ#105で再度複数の山部が存在するか否かをチェックする。複数の山部が存在する場合は、前回の計測結果(メモリ44aに記憶されている)を出力する。すなわち、前回の計測結果をホールドする。
【0058】
ステップ#105で山部が1つだけの場合は、続くステップ#106で山部の重心を求めて対象物までの距離を算出する計測処理を実行し、ステップ#107で計測結果のメモリ44aへの記憶と外部への出力を実行する。このように、本実施例では、第2モードにおいて発光量又は(及び)増幅率を増加した後も受光波形に山部が1つだけ存在する場合は、その山部に基づいて計測処理を実行し計測結果を出力するが、複数の山部が検出されたときは前回の計測結果を今回の計測結果として出力する(前回の計測結果をホールドする)。
【0059】
なお、ステップ#106の計測処理とステップ#107のうちの計測結果の記憶をステップ#104の直前に行うようにしてもよい。すなわち第2モードにおける発光量又は(及び)増幅率の増加を実行する前のフィードバックが掛かった状態の受光波形で計測処理を実行して計測結果を記憶しておき、第2モードにおける発光量又は(及び)増幅率の増加を実行しても受光波形に山部が1つだけ存在する場合は、その計測結果を読み出して出力するようにすればよい。このほうが、前述のように山部の重心位置の算出精度(対象物までの距離の算出精度)が良くなる。
【0060】
また、本実施例の変形例として、発光量又は(及び)増幅率を増加する第2モードを実行しないで、フィードバック制御によって発光量及び増幅率が適正値に調整された状態のみで、受光波形に複数の山部が存在するか否かの判断結果に応じて計測処理を実行し、又は前回の計測結果をホールドするようにしてもよい。
【実施例2】
【0061】
図8は、本発明の実施例2に係る計測処理の流れを示すフローチャートである。実施例1と同様に、ステップ#201では第1モードにおけるフィードバック制御が実行され、ステップ#202で受光波形の山部が検出される。次のステップ#203において、受光波形に複数の山部が存在するか否かがチェックされ、複数の山部が存在する場合はステップ#206に移行する。山部が1つだけの場合は、続くステップ#204において第2モードにおける発光量又は(及び)増幅率の増加を実行し、ステップ#205で再度複数の山部が存在するか否かをチェックする。複数の山部が存在する場合は続くステップ#206に移行し、山部が1つだけの場合はステップ#206をスキップしてステップ#207に移行する。
【0062】
ステップ#206では、受光波形の最初に現れた山部が有効な山部として採用される。最初に現れた山部とは、例えば図6に示した受光波形63における時間軸(横軸)の左端に最も近い山部64を意味する。続くステップ#207において、山部の重心を求めて対象物までの距離を算出する計測処理を実行し、ステップ#208で計測結果のメモリ44aへの記憶と外部への出力を実行する。
【0063】
このように、本実施例では、フィードバックの掛かった第1モードだけでなく、発光量又は(及び)増幅率を増加する第2モードでも受光波形に複数の山部が存在するか否かをチェックし、複数の山部が存在する場合は最初に現れた山部を有効な山部として採用する。なお、変形例として、最後に現れた山部、すなわち受光波形における時間軸(横軸)の右端に最も近い山部を有効な山部として採用するようにしてもよい。
【実施例3】
【0064】
図9は、本発明の実施例3に係る計測処理の流れを示すフローチャートである。実施例1と同様に、第1モードにおけるフィードバック制御を実行し、受光波形の山部を検出する。これらのステップについては図9では省略している。次のステップ#303において、受光波形に複数の山部が存在するか否かがチェックされ、複数の山部が存在する場合はステップ#307に移行する。山部が1つだけの場合は、続くステップ#304において第2モードにおける発光量又は(及び)増幅率の増加を実行し、ステップ#305で再度複数の山部が存在するか否かをチェックする。それでも山部が1つだけの場合は、その山部の重心を求めて対象物までの距離を算出する計測処理を実行し(ステップ#306)、計測結果の記憶と出力を実行する(ステップ#311)。複数の山部が存在する場合はステップ#307に移行する。
【0065】
ステップ#307では、受光波形の最初に現れた山部が有効な山部として採用される。最初に現れた山部の意味は実施例2で説明したとおりである。また、最初に現れた山部の代わりに最後に現れた山部を採用する変形例が可能な点も実施例2と同様である。続くステップ#308で山部の重心を求めて対象物までの距離を算出する計測処理を実行し、ステップ#309で前回の計測結果(メモリ44aに記憶されている)と今回の計測結果の比較を行う。両者の差があらかじめ定めた変化許容値以下である場合(ステップ#310のYes)は、その計測結果を有効な計測結果として記憶すると共に出力する(ステップ#311)。しかし、両者の差が変化許容値より大きい場合(ステップ#310のNo)は前回の計測結果を出力(ホールド)する(ステップ#312)。
【0066】
このように、本実施例では、第2モードにおいて発光量又は(及び)増幅率を増加した後も受光波形に山部が1つだけ存在する場合は、その山部に基づいて計測処理を実行し計測結果を出力するが、複数の山部が検出されたときは最初又は最後に現れる山部を有効な山部として計測処理を実行する。そして、その計測結果を前回の計測結果と比較し、両者の差があらかじめ定めた変化許容値以下であれば計測結果が有効として出力されるが、両者の差が変化許容値より大きい場合は前回の計測結果が今回の計測結果として出力される(前回の計測結果がホールドされる)。
【0067】
本実施例の変形例として、ステップ#312において前回の計測結果を出力する代わりに、最初(又は最後)に現れる山部に隣接する山部(山部が2個の場合は他方の山部)を有効な山部として計測処理を実行し、計測結果を出力するようにしてもよい。
【0068】
また、更に別の変形例として、発光量又は(及び)増幅率を増加する第2モードを実行しないで、フィードバック制御によって発光量及び増幅率が適正値に調整された状態のみで、上記実施例又は変形例の処理を行ってもよい。すなわち、受光波形に複数の山部が存在する場合は最初(又は最後)に現れる山部に基づいて計測処理を実行し、計測結果を前回の計測結果と比較し、両者の差が変化許容値以下である場合は有効な測定結果として出力し、変化許容値より大きい場合は前回の計測結果をホールドし、あるいは隣接する他の山部を有効な山部として計測処理を実行し、計測結果を出力する。
【実施例4】
【0069】
図10は、本発明の実施例4に係る計測処理の流れを示すフローチャートである。この実施例の計測処理は、図9に示した実施例3の計測処理とほぼ同じであるが、ステップ#409以降の処理が異なっている。つまり、複数の山部が検出されたときに、最初又は最後に現れる山部を有効な山部として計測処理を実行した後、その計測結果を前回の計測結果と比較する代わりに、次のような処理を実行する。この実施例では、前回の計測結果だけでなく、前々回の計測結果も処理部44のメモリ44aに記憶されている。処理部44は、前々回の計測結果に対する前回の計測結果の増加又は減少傾向(変化傾向)に基づいて、今回の計測結果が存在するであろう範囲(予測範囲)を推定する。そして、この予測範囲内に今回の計測結果がある場合(ステップ#410のYes)は、その計測結果を有効な計測結果として記憶すると共に出力する(ステップ#411)。しかし、今回の計測結果が予測範囲内に無い場合(ステップ#410のNo)は前回の計測結果を出力(ホールド)する(ステップ#412)。
【0070】
この実施例の場合も実施例3と同様に、変形例として、ステップ#412において前回の計測結果を出力する代わりに、最初(又は最後)に現れる山部に隣接する山部(山部が2個の場合は他方の山部)を有効な山部として計測処理を実行し、計測結果を出力するようにしてもよい。
【0071】
また、更に別の変形例として、発光量又は(及び)増幅率を増加する第2モードを実行しないで、フィードバック制御によって発光量及び増幅率が適正値に調整された状態のみで、上記実施例又は変形例の処理を行ってもよい。すなわち、受光波形に複数の山部が存在する場合は最初(又は最後)に現れる山部に基づいて計測処理を実行し、前々回及び前回の計測結果の変化傾向から推定した予測範囲内に計測結果がある場合は有効な測定結果として出力し、予測範囲内に計測結果が無い場合は前回の計測結果をホールドし、あるいは隣接する他の山部を有効な山部として計測処理を実行し、計測結果を出力する。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の実施例に係る光学式変位計の計測原理を示す図である。
【図2】光学式変位計の外観を示す平面図及び側面図である。
【図3】光学式変位計の主な回路構成を示すブロック図である。
【図4】処理部によるフィードバック制御の構成を示すブロック図である。
【図5】対象物の表面で生じた多重反射光によって受光波形に複数の山部が現れる様子を模式的に示す図である。
【図6】発光量又は増幅率が所定の倍数分だけ増加される第2モードにおいて多重反射光による山部が検出される様子を示す図である。
【図7】本発明の実施例1に係る計測処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施例2に係る計測処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】本発明の実施例3に係る計測処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】本発明の実施例4に係る計測処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0073】
12 レーザダイオード(発光素子)
15 リニアイメージセンサー
44 処理部(計測処理部及び制御部)
63 受光波形
64,65 山部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に光を照射するための発光素子と、
複数の画素構成部のそれぞれが前記対象物からの光を受光して受光量に応じた電気信号を出力するイメージセンサーと、
前記イメージセンサーからの電気信号を処理して受光量の分布に相当する受光波形の山部を検出し、前記山部のピーク位置又は重心位置を求めることによって前記対象物までの距離又は前記対象物の変位を計測する計測処理を一定の周期で連続して実行し、その計測結果を記憶すると共に出力する計測処理部とを備え、
前記計測処理部は、前記受光波形に複数の山部が検出されたときに、前回の計測結果を今回の計測結果として出力することを特徴とする光学式変位計。
【請求項2】
前記山部のピーク値が目標値になるように前記発光素子の発光量又は前記イメージセンサーからの電気信号を増幅する増幅器の増幅率のフィードバック制御を実行する第1モードと、前記フィードバック制御の結果得られる発光量又は増幅率の適正値を所定の倍数分だけ増加する第2モードとを切り替えて実行することが可能な制御部を更に備え、
前記計測処理部は、前記第2モードで得られた前記受光波形に基づいて前記計測処理を実行することを特徴とする
請求項1記載の光学式変位計。
【請求項3】
対象物に光を照射するための発光素子と、
複数の画素構成部のそれぞれが前記対象物からの光を受光して受光量に応じた電気信号を出力するイメージセンサーと、
前記イメージセンサーからの電気信号を処理して受光量の分布に相当する受光波形の山部を検出し、前記山部のピーク位置又は重心位置を求めることによって前記対象物までの距離又は前記対象物の変位を計測する計測処理を一定の周期で連続して実行し、その計測結果を出力する計測処理部と、
前記山部のピーク値が目標値になるように前記発光素子の発光量又は前記イメージセンサーからの電気信号を増幅する増幅器の増幅率のフィードバック制御を実行する第1モードと、前記フィードバック制御の結果得られる発光量又は増幅率の適正値を所定の倍数分だけ増加する第2モードとを切り替えて実行することが可能な制御部とを備え、
前記計測処理部は、前記第2モードで得られた前記受光波形に複数の山部が検出されたときに、最初又は最後に現れた山部を有効な山部として前記計測処理を実行し、その計測結果を出力することを特徴とする光学式変位計。
【請求項4】
対象物に光を照射するための発光素子と、
複数の画素構成部のそれぞれが前記対象物からの光を受光して受光量に応じた電気信号を出力するイメージセンサーと、
前記イメージセンサーからの電気信号を処理して受光量の分布に相当する受光波形の山部を検出し、前記山部のピーク位置又は重心位置を求めることによって前記対象物までの距離又は前記対象物の変位を計測する計測処理を一定の周期で連続して実行し、その計測結果を記憶すると共に出力する計測処理部とを備え、
前記計測処理部は、前記受光波形に複数の山部が検出されたときに、最初又は最後に現れる山部を有効な山部として前記計測処理を実行し、今回の計測結果と前回の計測結果との差があらかじめ定めた変化許容値以下である場合は今回の計測結果を有効な計測結果として出力し、かつ、今回の計測結果と前回の計測結果との差があらかじめ定めた変化許容値より大きい場合は前回の計測結果を今回の計測結果として出力することを特徴とする光学式変位計。
【請求項5】
前記山部のピーク値が目標値になるように前記発光素子の発光量又は前記イメージセンサーからの電気信号を増幅する増幅器の増幅率のフィードバック制御を実行する第1モードと、前記フィードバック制御の結果得られる発光量又は増幅率の適正値を所定の倍数分だけ増加する第2モードとを切り替えて実行することが可能な制御部を更に備え、
前記計測処理部は、前記第2モードで得られた前記受光波形に基づいて前記計測処理を実行することを特徴とする
請求項4記載の光学式変位計。
【請求項6】
対象物に光を照射するための発光素子と、
複数の画素構成部のそれぞれが前記対象物からの光を受光して受光量に応じた電気信号を出力するイメージセンサーと、
前記イメージセンサーからの電気信号を処理して受光量の分布に相当する受光波形の山部を検出し、前記山部のピーク位置又は重心位置を求めることによって前記対象物までの距離又は前記対象物の変位を計測する計測処理を一定の周期で連続して実行し、その計測結果を記憶すると共に出力する計測処理部とを備え、
前記計測処理部は、前記受光波形に複数の山部が検出されたときに、最初又は最後に現れた山部を有効な山部として前記計測処理を実行し、今回の計測結果と前回の計測結果との差があらかじめ定めた変化許容値以下である場合は今回の計測結果を有効な計測結果として出力し、かつ、今回の計測結果と前回の計測結果との差があらかじめ定めた変化許容値より大きい場合は最初又は最後に現れた山部に隣接する山部を有効な山部として前記計測処理を実行し、その計測結果を出力することを特徴とする光学式変位計。
【請求項7】
前記山部のピーク値が目標値になるように前記発光素子の発光量又は前記イメージセンサーからの電気信号を増幅する増幅器の増幅率のフィードバック制御を実行する第1モードと、前記フィードバック制御の結果得られる発光量又は増幅率の適正値を所定の倍数分だけ増加する第2モードとを切り替えて実行することが可能な制御部を更に備え、
前記計測処理部は、前記第2モードで得られた前記受光波形に基づいて前記計測処理を実行することを特徴とする
請求項6記載の光学式変位計。
【請求項8】
対象物に光を照射するための発光素子と、
複数の画素構成部のそれぞれが前記対象物からの光を受光して受光量に応じた電気信号を出力するイメージセンサーと、
前記イメージセンサーからの電気信号を処理して受光量の分布に相当する受光波形の山部を検出し、前記山部のピーク位置又は重心位置を求めることによって前記対象物までの距離又は前記対象物の変位を計測する計測処理を一定の周期で連続して実行し、その計測結果を記憶すると共に出力する計測処理部とを備え、
前記計測処理部は、前記受光波形に複数の山部が検出されたときに、最初又は最後に現れた山部を有効な山部として前記計測処理を実行し、今回の計測結果が、前々回の計測結果に対する前回の計測結果の増加又は減少傾向から推定した予測範囲内にある場合は今回の計測結果を有効な計測結果として出力し、かつ、今回の計測結果が前記予測範囲内に無い場合は前回の計測結果を今回の計測結果として出力することを特徴とする光学式変位計。
【請求項9】
前記山部のピーク値が目標値になるように前記発光素子の発光量又は前記イメージセンサーからの電気信号を増幅する増幅器の増幅率のフィードバック制御を実行する第1モードと、前記フィードバック制御の結果得られる発光量又は増幅率の適正値を所定の倍数分だけ増加する第2モードとを切り替えて実行することが可能な制御部を更に備え、
前記計測処理部は、前記第2モードで得られた前記受光波形に基づいて前記計測処理を実行することを特徴とする
請求項8記載の光学式変位計。
【請求項10】
対象物に光を照射するための発光素子と、
複数の画素構成部のそれぞれが前記対象物からの光を受光して受光量に応じた電気信号を出力するイメージセンサーと、
前記イメージセンサーからの電気信号を処理して受光量の分布に相当する受光波形の山部を検出し、前記山部のピーク位置又は重心位置を求めることによって前記対象物までの距離又は前記対象物の変位を計測する計測処理を一定の周期で連続して実行し、その計測結果を記憶すると共に出力する計測処理部とを備え、
前記計測処理部は、前記受光波形に複数の山部が検出されたときに、最初又は最後に現れた山部を有効な山部として前記計測処理を実行し、今回の計測結果が、前々回の計測結果に対する前回の計測結果の増加又は減少傾向から推定される予測範囲内にある場合は今回の計測結果を有効な計測結果として出力し、かつ、今回の計測結果が前記予測範囲内に無い場合は最初又は最後に現れた山部に隣接する山部を有効な山部として前記計測処理を実行し、その計測結果を出力することを特徴とする光学式変位計。
【請求項11】
前記山部のピーク値が目標値になるように前記発光素子の発光量又は前記イメージセンサーからの電気信号を増幅する増幅器の増幅率のフィードバック制御を実行する第1モードと、前記フィードバック制御の結果得られる発光量又は増幅率の適正値を所定の倍数分だけ増加する第2モードとを切り替えて実行することが可能な制御部を更に備え、
前記計測処理部は、前記第2モードで得られた前記受光波形に基づいて前記計測処理を実行することを特徴とする
請求項9記載の光学式変位計。
【請求項1】
対象物に光を照射するための発光素子と、
複数の画素構成部のそれぞれが前記対象物からの光を受光して受光量に応じた電気信号を出力するイメージセンサーと、
前記イメージセンサーからの電気信号を処理して受光量の分布に相当する受光波形の山部を検出し、前記山部のピーク位置又は重心位置を求めることによって前記対象物までの距離又は前記対象物の変位を計測する計測処理を一定の周期で連続して実行し、その計測結果を記憶すると共に出力する計測処理部とを備え、
前記計測処理部は、前記受光波形に複数の山部が検出されたときに、前回の計測結果を今回の計測結果として出力することを特徴とする光学式変位計。
【請求項2】
前記山部のピーク値が目標値になるように前記発光素子の発光量又は前記イメージセンサーからの電気信号を増幅する増幅器の増幅率のフィードバック制御を実行する第1モードと、前記フィードバック制御の結果得られる発光量又は増幅率の適正値を所定の倍数分だけ増加する第2モードとを切り替えて実行することが可能な制御部を更に備え、
前記計測処理部は、前記第2モードで得られた前記受光波形に基づいて前記計測処理を実行することを特徴とする
請求項1記載の光学式変位計。
【請求項3】
対象物に光を照射するための発光素子と、
複数の画素構成部のそれぞれが前記対象物からの光を受光して受光量に応じた電気信号を出力するイメージセンサーと、
前記イメージセンサーからの電気信号を処理して受光量の分布に相当する受光波形の山部を検出し、前記山部のピーク位置又は重心位置を求めることによって前記対象物までの距離又は前記対象物の変位を計測する計測処理を一定の周期で連続して実行し、その計測結果を出力する計測処理部と、
前記山部のピーク値が目標値になるように前記発光素子の発光量又は前記イメージセンサーからの電気信号を増幅する増幅器の増幅率のフィードバック制御を実行する第1モードと、前記フィードバック制御の結果得られる発光量又は増幅率の適正値を所定の倍数分だけ増加する第2モードとを切り替えて実行することが可能な制御部とを備え、
前記計測処理部は、前記第2モードで得られた前記受光波形に複数の山部が検出されたときに、最初又は最後に現れた山部を有効な山部として前記計測処理を実行し、その計測結果を出力することを特徴とする光学式変位計。
【請求項4】
対象物に光を照射するための発光素子と、
複数の画素構成部のそれぞれが前記対象物からの光を受光して受光量に応じた電気信号を出力するイメージセンサーと、
前記イメージセンサーからの電気信号を処理して受光量の分布に相当する受光波形の山部を検出し、前記山部のピーク位置又は重心位置を求めることによって前記対象物までの距離又は前記対象物の変位を計測する計測処理を一定の周期で連続して実行し、その計測結果を記憶すると共に出力する計測処理部とを備え、
前記計測処理部は、前記受光波形に複数の山部が検出されたときに、最初又は最後に現れる山部を有効な山部として前記計測処理を実行し、今回の計測結果と前回の計測結果との差があらかじめ定めた変化許容値以下である場合は今回の計測結果を有効な計測結果として出力し、かつ、今回の計測結果と前回の計測結果との差があらかじめ定めた変化許容値より大きい場合は前回の計測結果を今回の計測結果として出力することを特徴とする光学式変位計。
【請求項5】
前記山部のピーク値が目標値になるように前記発光素子の発光量又は前記イメージセンサーからの電気信号を増幅する増幅器の増幅率のフィードバック制御を実行する第1モードと、前記フィードバック制御の結果得られる発光量又は増幅率の適正値を所定の倍数分だけ増加する第2モードとを切り替えて実行することが可能な制御部を更に備え、
前記計測処理部は、前記第2モードで得られた前記受光波形に基づいて前記計測処理を実行することを特徴とする
請求項4記載の光学式変位計。
【請求項6】
対象物に光を照射するための発光素子と、
複数の画素構成部のそれぞれが前記対象物からの光を受光して受光量に応じた電気信号を出力するイメージセンサーと、
前記イメージセンサーからの電気信号を処理して受光量の分布に相当する受光波形の山部を検出し、前記山部のピーク位置又は重心位置を求めることによって前記対象物までの距離又は前記対象物の変位を計測する計測処理を一定の周期で連続して実行し、その計測結果を記憶すると共に出力する計測処理部とを備え、
前記計測処理部は、前記受光波形に複数の山部が検出されたときに、最初又は最後に現れた山部を有効な山部として前記計測処理を実行し、今回の計測結果と前回の計測結果との差があらかじめ定めた変化許容値以下である場合は今回の計測結果を有効な計測結果として出力し、かつ、今回の計測結果と前回の計測結果との差があらかじめ定めた変化許容値より大きい場合は最初又は最後に現れた山部に隣接する山部を有効な山部として前記計測処理を実行し、その計測結果を出力することを特徴とする光学式変位計。
【請求項7】
前記山部のピーク値が目標値になるように前記発光素子の発光量又は前記イメージセンサーからの電気信号を増幅する増幅器の増幅率のフィードバック制御を実行する第1モードと、前記フィードバック制御の結果得られる発光量又は増幅率の適正値を所定の倍数分だけ増加する第2モードとを切り替えて実行することが可能な制御部を更に備え、
前記計測処理部は、前記第2モードで得られた前記受光波形に基づいて前記計測処理を実行することを特徴とする
請求項6記載の光学式変位計。
【請求項8】
対象物に光を照射するための発光素子と、
複数の画素構成部のそれぞれが前記対象物からの光を受光して受光量に応じた電気信号を出力するイメージセンサーと、
前記イメージセンサーからの電気信号を処理して受光量の分布に相当する受光波形の山部を検出し、前記山部のピーク位置又は重心位置を求めることによって前記対象物までの距離又は前記対象物の変位を計測する計測処理を一定の周期で連続して実行し、その計測結果を記憶すると共に出力する計測処理部とを備え、
前記計測処理部は、前記受光波形に複数の山部が検出されたときに、最初又は最後に現れた山部を有効な山部として前記計測処理を実行し、今回の計測結果が、前々回の計測結果に対する前回の計測結果の増加又は減少傾向から推定した予測範囲内にある場合は今回の計測結果を有効な計測結果として出力し、かつ、今回の計測結果が前記予測範囲内に無い場合は前回の計測結果を今回の計測結果として出力することを特徴とする光学式変位計。
【請求項9】
前記山部のピーク値が目標値になるように前記発光素子の発光量又は前記イメージセンサーからの電気信号を増幅する増幅器の増幅率のフィードバック制御を実行する第1モードと、前記フィードバック制御の結果得られる発光量又は増幅率の適正値を所定の倍数分だけ増加する第2モードとを切り替えて実行することが可能な制御部を更に備え、
前記計測処理部は、前記第2モードで得られた前記受光波形に基づいて前記計測処理を実行することを特徴とする
請求項8記載の光学式変位計。
【請求項10】
対象物に光を照射するための発光素子と、
複数の画素構成部のそれぞれが前記対象物からの光を受光して受光量に応じた電気信号を出力するイメージセンサーと、
前記イメージセンサーからの電気信号を処理して受光量の分布に相当する受光波形の山部を検出し、前記山部のピーク位置又は重心位置を求めることによって前記対象物までの距離又は前記対象物の変位を計測する計測処理を一定の周期で連続して実行し、その計測結果を記憶すると共に出力する計測処理部とを備え、
前記計測処理部は、前記受光波形に複数の山部が検出されたときに、最初又は最後に現れた山部を有効な山部として前記計測処理を実行し、今回の計測結果が、前々回の計測結果に対する前回の計測結果の増加又は減少傾向から推定される予測範囲内にある場合は今回の計測結果を有効な計測結果として出力し、かつ、今回の計測結果が前記予測範囲内に無い場合は最初又は最後に現れた山部に隣接する山部を有効な山部として前記計測処理を実行し、その計測結果を出力することを特徴とする光学式変位計。
【請求項11】
前記山部のピーク値が目標値になるように前記発光素子の発光量又は前記イメージセンサーからの電気信号を増幅する増幅器の増幅率のフィードバック制御を実行する第1モードと、前記フィードバック制御の結果得られる発光量又は増幅率の適正値を所定の倍数分だけ増加する第2モードとを切り替えて実行することが可能な制御部を更に備え、
前記計測処理部は、前記第2モードで得られた前記受光波形に基づいて前記計測処理を実行することを特徴とする
請求項9記載の光学式変位計。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2006−30094(P2006−30094A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−212343(P2004−212343)
【出願日】平成16年7月20日(2004.7.20)
【出願人】(000129253)株式会社キーエンス (681)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月20日(2004.7.20)
【出願人】(000129253)株式会社キーエンス (681)
【Fターム(参考)】
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