説明

光学式歪測定素子、装置、システムおよび方法

【課題】歪みゲージの配線を不要とし、且つ従来の光学的手法により、従来技術より遙かに高精度に歪みを測定でき、また特定の方向の歪みにのみ感度を有するようにしたことで歪みの方向が特定できることを可能にする光学的歪測定素子および光学的歪測定装置などを提供すること。
【解決手段】入射光の波長以下の大きさの金属微小体を複数用いて前記金属微小体の大きさよりも小さい間隔で並べた金属微小構造体が配列された光学式歪測定素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の応力・歪みなどの測定が可能な光学式歪測定素子、光学式歪測定装置、光学式歪測定システムおよび光学式歪測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な構造体の応力を測定するために、通常、応力により発生する物体の歪みを測定している。このような歪みを測定する装置あるいは方法として様々なものが知られている。
【0003】
代表的な歪測定方法としては、モアレ法が知られている。
図1は、従来の歪測定法であるモアレ法の原理図であり、観察点においてカメラなどで観察して得られる縞図形とその縞次数によって測定物表面の3次元凹凸形状に対応した縞図形から歪を算出するというものである。より具体的には、光源S及び観測点Oと物体との間の同一平面に1枚の連続した格子(実体格子型)を配置し、光源Sと観察点Oの距離をd、光源Sから格子(ピッチsを有する)までの距離をlとすると、形成されるモアレ縞(等高線)は、格子面を基準として、格子面から離れるに従い、順に1次、2次とカウントされる次数Nを持つ。図1では、N=2の場合の例であり、第1次(n=1)のモアレ等高線は基準面からhだけ離れた位置に形成され、第1次(n=2)のモアレ等高線は基準面からhだけ離れた位置に形成されることを示している。なお、等高線の間隔ΔhN=hN+1−hNは一定ではなく、次数Nによって異なる。
しかしながら、このモアレ法は、光の干渉により生じるモアレを用いた光学的方法であるが、縞の一つの間隔が示す高低差が小さくとも数mmであるので、数μm以下などの小さな歪みを測定することは感度が低いためにできないと言える。
【0004】
また、干渉法も歪測定方法としてよく知られており、その代表例としてトワイマン・グリーン干渉法がある。
この干渉法は、図2に示すとおり、スペイシャルフィルターで拡大された光束をコリメートレンズLで平行光とし、ハーフミラーHMで分割された2光束は基準反射鏡と試料(反射物体)とそれぞれ進む。試料からの戻り光束と反射鏡で往復した光束をハーフミラーHMで重ね合わせる。反射鏡による光束を基準として、試料の反対側のレンズを透過した光束の波面を干渉縞として観察すると、レンズ面の状態を示す等高線のような模様を得ることができ、この縞を解析して試料の検査測定を行う。
このトワイマン・グリーン干渉法によれば、用いる光の波長程度の高低差を測定できるので、1μm以下の測定精度を有する。
この他に、高精度な手法としてヘテロ干渉法もあるが、被測定物体の表面が光学的にフラット(たいら)でなければならず、被測定物が限定される。
【0005】
また、たとえば特許文献1には、図3(a)〜(b)に示すように、金属箔歪みゲージを用いた歪み測定装置が示されている。この装置においては、(b)に示す起歪部に金属箔あるいは半導体歪ゲージを貼り付け、ロードセルの加重受座部に印加された力による起歪部に生じる歪を電気抵抗値の変化として捉えてロードセルに印加される力を測定する。
具体的には図3(a)において、試料S1は圧力によって抵抗値が変わる材料であり、力を加えながら抵抗値変化を測定する。試料S1からのリード線8はロードセル1の受座端子部5に接続し、計測装置13へは台座端子部6から接続する。負荷部11によって力を試料S1に加えた場合に、試料S1の位置はロードセル1の変形の分だけ下方に移動する。図中、9は絶縁板、10はフレーム、12はケーブル、13は計測装置である。
図3(b)はロードセル1を示しており、ロードセル1は力を受けるための荷重受座部2とロードセル1を装置フレーム等に固定するための固定台座部3との間に起歪部4を介在させた構成となっている。起歪部4は、荷重受座部2と固定台座部3との間に力がかかることによって変形し、その変形量が歪ゲージによって測定され力に換算される。ここで、歪ゲージは金属箔歪みゲージ等であり、また図中、7は歪ゲージである。
金属箔歪みゲージは、一般に、ポリイミド、アクリル、シリコーン、フェノール、エポキシ等のベース支持基板上にCu-Ni、Ni-Crなどの金属箔を蛇行させた形状にパターニングにより形成させている(図4参照)。図中、黒い部分は金属箔製の抵抗体を示している。このパターニングにより形成した抵抗体は、抵抗体の長手方向(図4のグリッド長・ゲージ長方向)の歪みに対してのみに感度を有しているので前記長手方向の歪み成分だけが測定できる。このような歪みゲージを、その方向にゲージ長方向を一致させて被測定物体に貼り付けて測定する。物体が歪むと歪みゲージの支持体も歪み、それに伴って、金属箔が伸び、その抵抗値が増す。このように歪みゲージの抵抗値を測定することにより応力・歪みを測定することができる。歪みゲージとして半導体を用いたものもあるが、この場合には、半導体材料が持つピエゾ抵抗効果により抵抗値の変化を測定するので、これへの配線と抵抗値変化を測定するアンプが必要となる。被測定物体が大きい場合には、配線構造が煩雑となりかつ測定中に断線して測定ができなくなるなどの欠点があった。
【0006】
また非特許文献1には、直径100nmの銀粒子を埋め込んだPDMS(ポリジメチルシロキサン)フィルムに光を当ててプラズモン共鳴の励起スペクトルを得ており、またPDMSフィルムを引っ張ると、励起スペクトルが変化することが記載されている。この文献には、PDMSフィルムに光を当てたときの反射光の分光スペクトルが変化し、これからPDMSフィルムの歪みを測定することができることが開示されている。図5は、銀ナノ粒子を埋め込んだPDMSフィルムに光を照射したときのプラズモン共鳴励起スペクトルとそのフィルムを引き伸ばしたときの励起スペクトルの変化状態を示す吸光分光スペクトルを示す図であり、これからフィルムの歪を測定できることが示されている。
しかしながら、この非特許文献1には、フィルム内の金属微粒子の配列に規則性がなく、ランダムであるため、フィルム平面内のx、yのどちらの方向に歪んでも同様の現象が起き、どの方向の歪みを測定したのか不明である。このため、測定装置としてはこの文献に示されたそのままでは使用できないという問題点がある。
また特許文献2は、本発明者らにより提案されたものである。この文献には高効率、高耐熱性、高耐光性を有する偏光制御素子および偏光制御素子の偏光制御方法に関する発明が開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開2006−3295号公報
【特許文献2】特開2006−330105号公報
【非特許文献1】”Light-Induced Coherent Integration between Silver Nanoparticles inTwo-Dimension Arrays”, Journal of the American Chemical Society 2003,125,pp2896-2898
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来技術の欠点に鑑みてなされたものであって、歪みゲージの配線を不要とし、且つ従来の光学的手法よりも遙かに高精度に歪みを測定可能であり、また特定の方向の歪みにのみ感度を有するようにして歪みの方向が特定できることを可能にした歪測定素子および歪み測定装置などを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち、請求項1に記載の光学式歪測定素子の発明は、入射光の波長以下の大きさの金属微小体を複数用いて前記金属微小体の大きさよりも小さい間隔で並べた金属微小構造体が配列されたことを特徴とする。
また、請求項2の光学式歪測定素子の発明は、入射光の波長以下の大きさの金属微小体を複数用いて前記金属微小体の大きさよりも小さい間隔で並べた金属微小構造体が配列された基板を1面に有するコーナーキューブを用いることを特徴とする。
また、請求項3の光学式歪測定素子の発明は、請求項1または2において、前記金属微小構造体を構成する前記金属微小体が規則的に配列していることを特徴とする。
また、請求項4の光学式歪測定素子の発明は、請求項3において、前記金属微小構造体を構成する前記金属微小体の配列方向が略同一方向であることを特徴とする。
また、請求項5の光学式歪測定素子の発明は、請求項1〜4のいずれか1項において、前記金属微小構造体を構成する前記金属微小体は、略同一の大きさを有し、前記大きさよりも小さい間隔に略等しく配列していることを特徴とする。
また、請求項6の光学式歪測定素子の発明は、請求項1〜5のいずれか1項において、前記金属微小構造体は、前記金属微小体が2種以上の異なる金属で構成されることを特徴とする。
また、請求項7の光学式歪測定素子の発明は、請求項1〜6のいずれか1項において、前記金属微小体は、10〜100nmの大きさであることを特徴とする。
また、請求項8の光学式歪測定素子の発明は、請求項1〜7のいずれか1項において、前記金属微小構造体は偏光した入射光と出射光との偏光の変化を感知する偏光制御素子であることを特徴とする。
また、請求項9の光学式歪測定素子の発明は、請求項8において、前記偏光制御素子は、前記金属微小構造体を構成する前記金属微小体の間隔の変化を、前記偏光した入射光と出射光との偏光の変化により感知することを特徴とする。
また、請求項10の光学式歪測定装置の発明は、請求項1〜9のいずれかに記載の光学式歪測定素子と、直線偏光照射手段と、偏光状態または偏光状態と波長スペクトルを計測する手段と、を有することを特徴とする。
また、請求項11に記載の光学式歪測定装置の発明は、請求項10において、さらに光走査手段を有することを特徴とする。
また、請求項12の光学式歪測定システムの発明は、請求項1〜9のいずれかに記載の光学式歪測定素子と、直線偏光照射手段と、偏光状態または偏光状態と波長スペクトルとを計測する手段と、を有することを特徴とする。
また、請求項13に記載の光学式歪測定システムの発明は、請求項12において、さらに光走査手段を有することを特徴とする。
また、請求項14の歪測定方法の発明は、請求項1〜9のいずれかに記載の光学式歪測定素子を用いた歪測定方法であって、
前記光学式歪測定素子に、偏光を照射し、出射光の偏光状態または偏光状態と波長スペクトルを前記照射した光と比較してその変化成分を抽出して歪を計測することを特徴とする。
また、請求項15の歪測定方法の発明は、請求項1〜9のいずれかに記載の光学式歪測定素子を用いた歪測定方法であって、
前記光学式歪測定素子に、第1の偏光を照射し、得られた光を前記第1の偏光とクロスニコルの関係にある光学素子に通過させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の光学式歪測定素子は、入射光の波長以下の大きさの複数の金属微小体を前記金属微小体の寸法より小さい間隔で略等間隔に配列させた金属複合構造体であり、たとえば、支持基板上に設けられたコーナーキューブの反射領域面上に前記金属複合体を設けるとともに、前記金属微小体の配列される方向が複数の金属複合体間で一致するように配置しているので、歪みゲージからの配線を不要とした光学的手法により、従来技術より遙かに高精度に歪みを測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の光学式歪測定素子および装置などを、実施の形態により、詳細に説明する。
本発明の光学式歪測定素子は、入射光の波長以下の大きさの金属微小体を複数用いて前記金属微小体の大きさよりも小さい間隔で並べた金属微小構造体が規則的に配列されたことを特徴とする。たとえば、金属微小構造体は規則的に配列される。また、金属微小構造体が規則的に配列された基板を1面に有するコーナーキューブを用いる。以下に、まず、偏光制御素子について、説明する。なお金属微小構造体が規則的に配列されるというのは、たとえば、略同一の大きさの金属微小体の2以上からなる集合体であって、その金属微小体同士の間隔が金属微小体の大きさよりも小さく、かつ同程度の間隔でたとえば1次元状に配列されているものを金属微小構造体といい、これらの金属微小構造体を構成する金属微小体の配列方向が略同一方向に配列される意味で使用している。
【0012】
〔偏光制御素子の第1態様〕
本発明の光学式歪測定素子に用いられる偏光制御素子に関し、図6〜17を参照しながら説明する。偏光制御素子は本発明の光学式歪測定素子の一部を成すものであり、そのため、偏光制御素子の構成動作をまず説明する。
図6は、本発明の光学式歪測定素子に用いられる偏光制御素子の第1の態様を説明するための図である。図6に示すように、偏光制御素子10は、入射直線偏光4を入射させてこの入射光の偏光状態を、偏光制御素子の素子内部に含む金属複合構造体と光とを相互作用させて入射光を変調し、偏光変調された出射光5として利用する。図6に示すように、偏光制御素子10により入射直線偏光4が円偏光に変換される例を示し、この例では偏光制御素子は、従来の1/4波長板(λ/4板)と同等の機能を有している。また、偏光制御素子は、入射光のほぼ1/2を反射し、この反射光の偏光も、図6に示す透過光と同じ偏光特性を有する。すなわち、透過光も反射光も円偏光となり右旋光・左旋光も同一のものとなる。
【0013】
図7は、図6に示す偏光制御素子10の構成例を示す断面図である。この偏光制御素子10は、基板1上に、入射光の波長以下のサイズdの金属微小体2(この例では底辺が直径dの円柱体)が、金属微小体の大きさd以下の間隔g(間隙g:間隙g<d)を有して隣接して配列され、このように金属微小体2個がその間隔gで配列された金属複合構造体(金属微小構造体)6が、周期的に配列した例を示す。図7において、入射光は図の上方から金属微小構造体6の存在する基板面側から入射し、反射型の偏光制御素子10として利用する場合にはその基板面からの反射光5bを使用し、透過型の偏光制御素子として利用する場合には透過光5aを使用し、また成分分離型の偏光制御素子として利用する場合には透過光5aと反射光5bの両方の成分を使用する。
【0014】
図8(A)〜図8(D)は、図7における金属複合構造体(金属微小構造体)6の周期配列した例を示す図である。図8に示す金属複合構造体6は、いずれも横方向(x方向)に配列しているため、横方向の成分を持つ偏光に対して感度を有している。図8(A)は正方格子の格子点として、金属複合構造体6を配列した場合を示し、図8(B)は六方格子の格子点として、金属複合構造体6を配列した場合を示し、図8(C)はストライプ状に金属複合構造体6を配列した場合(金属複合構造体が直線上に並んだ場合)の配列した例を示す平面図である。周期構造は、偏光制御素子10の角度依存性や波長依存性を与え、偏光制御素子10の使用目的に応じて、対称性や周期、ピッチなどを調整するようにする。また、図8(A)から図8(C)においては、二個の金属微小体2を一組として金属微小構造体6を構成して配列した例を示す。これに対し、図8(D)のように、三個以上の金属微小体2を連続して略等間隔(等間隔も含む)に一列に配列して金属微小構造体(金属複合構造体)6を構成してもよい。
【0015】
金属微粒子(金属微小体)を配列する条件としては、複数の金属微小体をx方向に一方向に揃えて並べ、さらに、金属微小構造体における金属微小体間の間隔を金属微小体の大きさdよりも小さくした間隔g(d>g)で配列するようにして、金属複合構造体(金属微小構造体)を構成することである。さらに、金属複合構造体のy方向の間隔は、金属微小体の大きさdよりも充分に大きくしなければならない(ここでxとyとは光の進行方向と直交する平面を構成する直交座標系を採用する)。すなわち、金属複合構造体のy方向の間隔は、金属微小体の大きさdの少なくとも2倍大きい間隔を取ることとする。
この偏光制御素子10に使用する基板1としては、面状のものであって、透過型の素子を構成する場合には、高効率化のために可視領域の波長(測定に使用する波長)において吸収の低い材料が好ましく、石英ガラス、BK7、パイレックス(登録商標)などの硼珪酸ガラス、CaF2、Si、ZnSe、Al23などの光学結晶材料などを用いることができる。また、反射型の素子を構成する場合には、反射率の高い材料を用いた基板が好ましく、上記の光学ガラス、光学結晶材料に、AlやAuなどの金属膜コーティングを施すことによって形成することができる。この際の膜厚は、金属中に光がしみ込む表皮深さよりも厚くする必要がある。本例では、30nmから100nm程度の膜厚を採用している。しかしこの膜厚に限定されなくともよい。また、誘電体多層膜によって全反射コーティングを施したものであってもよく、また、透過光と反射光の両方を利用するビームスプリッタなどとして利用する場合には、部分反射膜としてCrコーティングなどを施したものを用いることもできる。
【0016】
次に、この偏光制御素子10における偏光状態を変調する機能を有する金属微小体2および金属微小体2の集団(集合体)による金属複合構造体(金属微小構造体)6について説明する。
金属微小体2を構成する材料としては、表面プラズモンまたは局在表面プラズモンを励起できる材料であることが必要である。ここで、表面プラズモンとは、金属と誘電体の界面領域の金属側に励起された電子の集団であり、局在表面プラズモンとは、微細な金属構造の場合に、金属材料全体に渡って励起される電子の集団である。以下では表面プラズモン、局在表面プラズモンを、ともにプラズモンと記述する。プラズモンは、金属微小体2の近傍の電磁界と結合し、伝搬光成分に変換されて遠方場へ放出される。伝搬光への変換効率は、金属微小体2により決まる共鳴波長近傍で最大となる。プラズモンを励起できる金属材料としては、Au、Ag、Pt、Al、Cuなどを挙げることができる。このような金属微小体2が2ないし、3以上の複数個であり、近接して配置された構造体を金属複合構造体6と記載する。ここで、プラズモンとは金属中における局在電子密度波である。
【0017】
図7に示す偏光制御素子10は、二つの円筒形状の金属ドット(金属微小体2)が間隔gだけ離れて配列する金属複合構造体6により構成されている。金属微小体2の形状はこの図に示すような円筒形状に限定されず、加工の容易さから、半球形状などであってもよい。ここで、金属複合構造体6は、入射する光の回折限界(≒λ(λ:入射光波長))に対して十分に小さな領域内に存在している必要があるため、金属微小体2のサイズdは、10〜100nm程度のサイズが好ましい。遠方から照射される光、または遠方で観測される光では、光の回折限界による制限から、金属複合構造体6の配列や形状は観測されない。しかしながら、金属複合構造体6に生じるプラズモンおよび近接場光を介したプラズモンの相互作用により、出射される光強度や振動の向きに対する位相差が金属微小体2の大きさdおよび配列に依存して変化する。
このような金属微小体2ならびに金属複合構造体6の作製は、様々な加工方法を採用することができる。たとえば電子ビームリソグラフィ技術を用いた直接描画による方法や、DUV(遠紫外線:Deep Ultra Violet)・EUV(深紫外線:Extreme Ultra Violet)リソグラフィ技術による一括露光を行う方法、モールドと呼ばれる型を用い、熱をかけて押し付けるナノインプリント法などが利用できる。また、相変化材料や遷移金属酸化物材料にレーザー光を照射して材料特性を変化させた後に、エッチングレートの違いを利用してエッチングする方法なども利用することができる。
【0018】
次に、このような方法で作製された金属複合構造体6に入射した光の偏光状態が構造に依存して変化する原理を、数値計算に基づいて説明する。数値計算には、電磁界の運動を記述するマクスウェル方程式を時空間の差分方程式に近似して解く、有限時間領域差分法(FDTD法:Finite Difference Time Domain)を利用した。図9(A)〜(B)は、数値計算に使用したモデルを表しており、空気中に存在するサイズ(直径)40nmの二つのAu球の間隔gを、0〜80nmまで変化させた場合の反射遠方場における偏光状態の変化を算出して求めた。Auの光学定数は、屈折率としてn=0.072とし、消衰係数としてk=1.496を用いた。この値は、金属球が50nm以下に小さくなった場合に、金属球のサイズに依存した光学定数の変化を考慮した値である。
【0019】
FDTD法により得られた金属複合構造体6(本例では前記したように、金属としてAu球として説明する)近傍の電界分布から遠方場光の特性を得るために、電界分布のフーリエ変換により角度θ=0°の成分を抽出し、図9(A)、図9(B)に示すx方向とy方向の振幅比との位相差を算出した。40nmのAu微小球のプラズモン共鳴波長近傍の波長544nmを用い、図9(A)〜(B)に示すxy面内においてx軸から45°の方向に電界の振動方向をもつ平面波を照射する計算を行った。
図10(A)は金属微小体間距離と振幅比Ay/Axとの関係を示すグラフであり、gが大きな領域(40nmを越す領域、特に60nmを越す領域)では振幅比が1に近づき、偏光面(電界の振動方向)が入射光の偏光方向と一致していることがわかる。これに対し、g=0に近づくにつれて、振幅比Ay/Axが増加し、偏光面がy方向へ傾くことがわかる。
一方、図10(B)は金属微小体間距離gと位相差との関係を示すグラフであり、位相差は電界のx成分の位相δxとy成分の位相δyとの差(|δx−δy|)を表している。gがゼロに近づくほど、位相差が大きくなり、g=0の場合には位相差が45°程度となる。
【0020】
以上のFDTD法によるシミュレーションの結果から、Au微小球の間隔を制御すると、偏光面を回転させることができ、また、偏光状態を、たとえば直線偏光から円偏光を含む楕円偏光に変換することができる。
金属材料として、Ag微小球を使用した場合にも、同様の計算結果が得られる。この場合、偏光状態に変化の生じる波長領域はAg微小球のプラズモン共鳴波長近傍である波長400nm近傍である。
上記した金属微小構造体6は空気中に剥き出し(空気中に開放された状態)になっていてもよいが、金属微小体2ならびに金属複合構造体6の劣化を防ぐために、たとえば誘電体などの保護膜を有しているほうが好ましい。この場合、金属微小体2を被覆する材料の光学定数(屈折率、消衰係数)に依存して金属微小体2の内部に励起されるプラズモンの共鳴波長がシフトする。したがって、保護層はプラズモンの共鳴波長を調整する機能も有している。
【0021】
図11は、誘電体薄膜7によって被覆された金属微小体2ならびに金属複合構造体6を有する偏光制御素子の配列構成の一例を示した図である。誘電体材料7は吸収の少ない材料により形成されることが好ましく、たとえば、ZnS−SiO2などの光記録媒体の保護層として利用される遷移金属酸化物などを用いることができる。
プラズモンの共鳴波長は、被覆する誘電体材料7に依存する他、金属微小体2の大きさd、および金属微小構造体を構成する金属微小体の間隔gに依存して変化する。
図12は、金の円板状の金属微小体二個で一組の金属微小構造体6を構成している場合の、金属微小体(金円板)間の間隔gが、そのプラズモン共鳴波長に与える影響を調べるためのFDTDによる計算条件を示す図である。図12に示すように、直径100nmで、厚さ(h)が40nmの円板がガラス基板上に設けられているときに、間隔gが0nmと40nmの時の反射光プラズモン共鳴波長スペクトルを算出した。結果のグラフを図13に示す。このグラフ結果により、金属微小体(ここでは円板状)間の距離が変わると、共鳴波長スペクトルが変化することがわかる。
以上の結果から、二つの金属微小構造体2間の距離gを制御すると、偏光制御素子10の偏光状態、すなわち旋光角と直交する二方向の位相差を制御できることがわかる。
【0022】
また、金属微小体の間隔gを変化させることにより、金属複合構造体の共鳴波長が変化することがわかる。
ここで、金属微小体が、歪みを測定したい被測定物体上に貼付などにより固定されて、その歪みに伴って金属微小体間の距離が変化する場合について考える。
上記したように、この金属微小体が配列されている方向をx方向とし、この方向と45度を成す直線偏光Aを照射することにする。この直線偏光Aと直交する偏光を直線偏光Bとし、金属微小体からの反射光のうち、直線偏光B成分の光量から、金属微小体間の距離の変化を測定できる。すなわち被測定物の歪みを測定することができる。また、金属微小構造体からの反射光の直線偏光B成分の波長スペクトルから、金属微小体間の距離の変化を測定することができる。このようにして被測定物の歪みを測定することができる。
【0023】
〔偏光制御素子の第2態様〕
本発明の光学式歪測定素子および光学式歪測定装置に用いられる偏光制御素子の第2の態様について、図14を参照しながら説明する。
図14は、本発明の光学的歪測定素子に使用される偏光制御素子の他の構成例を示す断面図である。本態様では、使用される偏光制御素子10は、入射光の回折限界(入射波長程度)以下のサイズを有する金属微小構造体6として、基板1上に、金属材料2aと、誘電体材料8と、金属材料2bとが、この順に積層された金属微小体2が2個で金属微小構造体6を構成している。このような金属微小体2が回折限界以下の領域に隣接して配列した金属複合構造体が、周期的に配列した構造を有している。ここで、金属複合構造体6は、異種の二種類以上の金属材料により構成されている。この偏光制御素子に使用する支持基板1は、前記の第1態様の場合と同様に、透過型素子として用いる場合には、石英ガラスなどの透明な材料を用い、反射型素子として用いる場合には、金属や、誘電体多層膜などを用い、また成分分離型の偏光制御素子として利用する場合には透過光5aと反射光5bの両方の成分を用いる。金属微小構造体および金属複合構造体は誘電体材料で被覆されていてもよい。
【0024】
本態様に使用される偏光制御素子10は、図14に示す本態様で説明する二種以上の金属材料を用いた偏光制御素子を、積層構造により実現することを特徴としている。同一面内に異種の金属材料を用いて偏光制御素子を作製することは、これら異種の金属同士の加工精度に関し問題がある。すなわち異種金属でできている金属微小体を同一平面内に作成しようとする場合、まず第1番目の金属膜を基板上に製膜し(形成し)、これをフォトリソエッチング(フォトリソグラフィーとエッチング)によりパターニングして第1番目の金属の金属微小体を作成する。次にその上に第2番目の金属膜を成膜する。さらに既に作成した第1番目の金属微小体に対し、第2番目の金属微小体の膜をフォトリソエッチングでパターニングして金属微小体を作成する。この際のアライメントを、光の波長よりも十分に小さい、数十nmで、正確に一致するように行うのは非常に難しい。これに対し一枚のマスクに数十nmのパターンを形成することは容易であり、数十nmでアライメント(位置合せ)して形成するのに比べて、数十nmにパターンが形成されたマスクを用いて積層構造を形成することにより、偏光制御素子の金属複合構造体を実現することは比較的容易である。
このように、前記した積層構造により実現するのは、異種金属材料を用いた構成を有する本発明の光学的歪測定素子に使用される偏光制御素子の場合、同種金属材料が対(2個あるいはそれ以上で対を成す場合)で構成されていればよく、必ずしも金属微小構造体が支持基板1上で同一面内に存在していなくともよい。したがって、図14に示す積層構造を有する金属複合構造体の構成を採用するほうが、作製が容易となるので好ましい。
【0025】
このような金属微小構造体は、前記の第1態様で説明したように、Au、Ag、Pt、Al、Cuなどのプラズモンを励起できる金属材料の中から2種選んで組み合わせて実現することができる。
たとえばこのような偏光制御素子の製造方法としては、金属材料2a、誘電体材料8、金属材料2bの順に、スパッタリング法により積層し、その後、電子ビームリソグラフィ、DUV(遠紫外線)・EUV(深紫外線)リソグラフィなどの手法により金属微小構造体の周辺部をエッチングにより除去することによって製造することができる。また、金属材料2a、誘電体材料8、金属材料2bの順に積層した後、さらに光を照射して材料物性を変質させエッチングレートが変化する相変化材料や遷移金属酸化物材料を成膜して、光によるパターニングの後にエッチングにより周辺部を除去する方法を用いることもできる。この製造方法の場合、最上層として、相変化材料や遷移金属酸化物材料層が残るが、これはプラズモンの共鳴波長を変化させる効果があるため、使用する光の波長に適合した材料を選択する必要がある。
この光偏光制御素子の動作原理は、前記の第1態様と同様であり、金属材料の種類に依存した近接場光による相互作用の結果、プラズモン振動のx方向とy方向の異方性を多様に得ることができ、入射光の偏光状態を制御することが可能となる。また、この偏光制御素子の動作波長の範囲も設定することができる。
【0026】
本発明の光学的歪測定素子に使用される光偏光制御素子の第2態様では、誘電体基板上に、2種類以上の金属あるいは合金からなる金属粒子のパターンを連続的に形成させて、金属の種類による光のプラズモン共鳴波長の違いを利用して透過光あるいは反射光に位相差を生じさせるとともに、波長板としての機能を実現可能にするもの(測定結果として得ることのできるもの)である。また、金属粒子で構成すると一般に化学的に安定でしかも耐熱性も高いため、有機多層膜のものに対して耐熱性に優れた偏光制御素子を提供することができる。
【0027】
〔偏光制御素子の第3態様〕
図15は、本発明の光学的歪測定素子に使用される偏光制御素子の他の構成例(第3態様)を示す説明図である。この図において、符号1はガラスなどの透明材料を用いた誘電体による基板であり、符号2は第1の金属粒子であり、符号3は第1の金属粒子と異なる第2の金属粒子である。図示するように、偏光制御素子10は、ガラスなどの誘電体基板1上に、第1の金属粒子2の組(たとえば図15に示すように、2個の金属微粒子で構成される金属微粒子構造体)と第2の金属粒子3の組(2個の金属微粒子で構成される金属微粒子構造体)とを、所定の規則性を持たせて配置している。この第1の金属粒子2と第2の金属粒子3は、たとえばEB(電子ビームリソグラフィ)やフォトリソグラフィとスパッタ・エッチングなどのプロセスを複合させて形成する。
【0028】
次にこのような偏光制御素子10の製造工程を、図16を参照しながら説明する。
まず、ガラスなどの透明材料を用いた誘電体基板1を用い(工程1)、この誘電体基板1上に、レジスト6をスピンコートなどの方法によって塗布する(工程2)。続いて、EB(電子ビームリソグラフィ)などにより、レジスト6を露光した後にリンスしてその一部を残す(工程3)。その後、基板の一部が凸形状1aとなるように、たとえばRIE(Reactive Ion Etching:反応性ドライエッチング)などによりエッチングを行う(工程4)。この凸形状1aが基準マークとなる。この基準マーク1aを有する基板に、再びレジスト6を塗布し(工程5)、第1の金属粒子2を形成したい部分のレジスト6を除去するように基準マーク1aを位置基準にして、露光しリンスする(工程6)。次いで、この基板に対して第1の金属粒子2をスパッタあるいは蒸着などのプロセスにより成膜した後(工程7)、レジスト6の除去に伴うリフトオフによって所望の金属粒子以外の金属を除去する(工程8)。続いて、凸形状1aが隠れない程度の厚さになるように再度レジスト6を塗布する(工程9)。次いで、再び基準マークを基準として、第2の金属粒子3を形成したい部分のレジスト6を除去するようにEB(電子ビーム)露光しリンスする(工程10)。その後、上記工程7と同様に第2の金属粒子3を成膜し(工程11)、リフトオフによって余分な金属を除去することにより所望のパターンを有した偏光制御素子10が完成する(工程12)。
【0029】
なお、上記のプロセスでは2種類の金属粒子を形成する例について説明したが、3種類以上の金属粒子でパターンを形成したい場合は、他の金属粒子を用いて上記した工程9〜工程12のプロセスを繰り返し実行する。
上記した金属粒子の材料は、使用する光源波長と所望の位相補償機能に応じて選択する。たとえば、Au,Ag,Al,Pt,Ni,Cr,Cu,Feなどの金属材料が挙げられる。また、これら金属の合金であってもよい。
以上のようにして第1の金属粒子2の組と第2の金属粒子3の組とで形成された誘電体基板1に対して光を照射すると、各金属微粒子の局在表面プラズモン共鳴周波数に依存して、電界に振幅比や位相差が生じる。そのため、各金属粒子からの光が重畳された反射光あるいは透過光の偏光成分に位相差が生じ、偏光状態が変換されることになる。
【0030】
エバネッセント光(evanescent light)により局在表面プラズモンを増強し、より強い光放射及び光吸収を発生させることにより、高いコントラストの偏光制御信号光を得ることができ、先の「埋もれて」しまう問題を回避することができる。
【0031】
〔偏光制御素子の第4態様〕
次に、本発明の光学的歪測定素子に使用される第4の偏光制御素子の構成例(第4態様)について図17(A)〜(B)を参照しながら説明する。先に述べた金属微小構造体6としては、高さが入射光の波長より小さい周期で変調されている周期(格子定数を有する)構造を表面に有しているガラス基板1上に配置したものである。この構成により、光を入射した際に高次の回折光が発生せず、ガラス基板1の表層にエバネッセント光が発生する。発生したエバネッセント光(evanescent
light)は、ガラス基板1の格子ベクトルの方向に基板表面上を伝播し、各金属微小体2近傍の局在表面プラズモンと強くカップリングして、各金属微小体2で発生する光放射および光吸収をより強く生じさせること(いわゆる増強効果enhancement)ができる。なお、エバネッセント光は、境界面近傍で限定された領域における励起のために用いられる特殊な光として知られている。
【0032】
本態様では、ガラス基板1からの反射光あるいは透過光に対して、金属微小体2からの近接場光放射の成分の光強度が比較的高くなり、前者の光成分に後者の光成分が「埋もれて」しまうことを防止している。金属微小体2による偏光制御効果を抽出するために、たとえば反射率の低いガラス基板1に配置した金属微小体2からの反射光を取り出す場合などに限られていたのを、本態様では、エバネッセント光によって局在表面プラズモンを増強し、より強い光放射及び光吸収を発生させて、高いコントラストの偏光制御信号光を得ることができる。これにより、前記した「埋もれて」しまう問題を回避することができる。
なお、図17(A)は、格子ベクトルの方向(図の横方向)に直交する方向(図の縦方向)に金属微小構造体を配列した場合を示し、また図17(B)は、格子ベクトルに平行な方向(複数の金属微小体2が略一直線に配列している縦方向)に金属微小構造体を配列した場合を示す。図17(A)では2個の金属微小体2で金属微小構造体6が構成される例であり、図17(B)では複数の金属微小体2がその大きさdよりも小さい間隔gで1直線状に配列して金属微小構造体6が構成される例である。
【0033】
以上までが基本的な原理の説明であるが、実際の測定では、この偏光制御素子に光を照射して、その反射光の偏光特性や波長スペクトルから歪みを測定する。
このために、本発明の光学式歪測定装置では、照射光源と反射光の偏光特性や波長スペクトルを測定する装置を有していることが望ましい。これら装置は、その配置上、同じ装置内にある様に構成するため、前記したような偏光制御素子に照射した光が光源の近傍にある測定装置に回帰してくる構成とすることが望ましいので、本発明の歪測定装置は、光学式再帰光学系を採用することが望ましい。
【0034】
この要件は、前記偏光制御素子の金属複合構造体6をコーナーキューブの反射領域面上に設けることにより、達成される。
このコーナーキューブは、光や電波を反射する性質を持った平面の板をそれぞれ90度の角度で組み合わせた、立方体の持つ面(6面体)の半分(立方体の、他の2つの面と直交する位置にある3つの内接面)に相当する。本発明では光を用いるので、平面としては、鏡あるいはガラス内面(たとえばプリズム)であるが、電波を用いるのであれば金属板を用いる。その内側に入射した光や電波は、このような平面で3回の反射を繰り返すことにより、結局、元来た方向と平行した方向に帰る性質を持つ(図18、図19)(コーナーキューブの第1の面11は反射膜1を用いて形成され、第2の面12は反射膜2で形成され、第3の面13は反射膜3で形成される。)。
【0035】
本発明の光学式歪測定装置では、このようなコーナーキューブの一つの反射領域面に前記金属複合構造体からなる偏光制御素子を設けた構造体を採用することが好ましく、このような偏光制御素子を設けた構造体を図20に示す。この図に示すように、反射膜1と反射膜2は普通の鏡面(平板面)を担っている。ここで前記したコーナーキューブの光学的な性質について述べたように、コーナーキューブに入射した光21〜23はコーナーキューブの平面でそれぞれ3回の反射を繰り返し、元来た方向へ帰る性質(再帰効果)を持つので、必ず一回は金属複合構造体を有する面で反射されてから、光が照射された方向に帰ることになる。
【0036】
このような構造のコーナーキューブを、図21に示すように、配置する。この図では、底辺が正三角形で頂角が90度の三角錐(すなわち、立方体を構成する面の1つは正方形であり、この正方形の対角線を3辺とする三角形を底辺とし、立方体の8つある角の1つを頂角とする三角錐)とする窪みを、誘電体基板を用いて作製し、この三角錐の斜面3つあるうちの二つを反射膜による鏡面とし、残りの斜面を前記したいずれかの金属微小構造体を設ける。この時に、図7、図8(A)〜(D)、図11、図14、図15、図17(A)〜(B)の例で示したように、金属微小体を入射光の波長以下の大きさとし、前記金属複合構造体の中での金属微小体の間隔を、その金属微小体の寸法より小さい間隔で等間隔に(ただし前記金属複合構造体が三つ以上の金属微小体で構成される場合)、一方向(1直線状に)に配列する。これを金属複合構造体とし、基板上に設けられたコーナーキューブの反射領域面上に金属複合構造体を設ける。ただし、金属微小体が配列されて構成される複数の金属微小体からなる金属複合構造体の前記した複数の金属微小体の配列方向が全て一致するように配列する。そしてこの方向は測定したい歪みの方向に一致させるように設置する。図21に示すように、この図ではこの方向をx方向に採るようにしている。入射光は金属微小体で構成される金属複合構造体の各金属微小体の配列方向(図21のx方向)に対して、0度より大き90度より小さい角度の直線偏光、好ましくは45度方向の直線偏光とする。このような、コーナーキューブを1以上有する誘電体基板から、本発明の光学式歪測定素子がなっている。
【0037】
この光学式歪測定素子による検出可能な歪み方向を、図21で示してあるx方向のみに配列させている。すなわち、y方向の歪みが生じても(紙面の縦方向)、金属微小構造体間のx方向(紙面の横方向)の間隔だけが変化可能であるので、y方向の歪に対しては金属複合構造体を構成する金属微小体同士の間隔の変化はないからである。したがって、x方向の歪み方向に図21に示す光学式歪測定素子の金属微小体が配列しているので、その方向のみに感応するようにしている。このように、本発明の光学的歪測定素子は、方向性を規定して測定できる点だけでなく、歪みの強度(歪む距離)に対する感度も、数nm程度の歪みでも偏光やスペクトルが変化するので、非常に感度が高い歪測定素子として用いることができる。
図22に、図21に示すコーナーキューブを用いた光学式歪測定素子を複数、誘電体材料基板上に設けた例を示す。このような構成にすると、歪み検出のための照射光はいずれかのコーナーキューブに照射されて、歪みを捉えることができ、被測定物などに設置してその歪みを確実に測定することができる。(なお、図22の下方に付された横方向の矢印は、検出する歪みの方向(金属微小体が、その寸法より小さい間隔にかつ等間隔に配置されている方向と一致)を表している。
【0038】
本発明の光学式歪測定素子が、正しく被測定物の歪みを測定するには、被測定物の歪みに倣って光学式歪素子が変形する必要がある。このために、本発明の光学式歪み測定素子は、被測定物の剛性よりも低い剛性、換言すればより変形しやすいことであることが好ましい。このため、光学式歪測定素子の支持基板材料として、前記した電気抵抗の変化により歪みを測定する歪みゲージと同様な材料を用いることが好ましい。このような材料として、例えばポリイミド、アクリル、シリコーン、フェノールエポキシ等の材料を挙げることができる。しかし歪み測定が達成できる支持基板であればよく、これらに限定されるものではない。
【0039】
次に本発明の光学式歪測定素子を用いた歪測定装置および測定システムについて、説明する。本発明の歪測定装置および測定システムは、前記した光学式歪測定素子を用い、この素子と、直線偏光を照射する直線偏光照射手段と、偏光状態または偏光状態と波長スペクトルを計測する手段とから構成される。
図23の(A)および(B)に示すように、光源としてレーザーなどの単色光源30Lを用いることができる。このようなレーザーなどの単色光源30Lから出た光は第1偏光板31(偏光板1)を通過することにより直線偏光にする。前記したように、この直線偏光を、金属微小体が、その寸法より小さい間隔で等間隔に配置されている方向に対して0度より大きくかつ90度より小さい角度に、好ましくは45度にする。さらに、金属微小体が配列されている方向を、検出したい歪みの方向と一致させる。また、単色光源30Lの発光波長は、光学式歪測定素子10がプラズモン共鳴を生じる波長かその波長の近傍、あるいはプラズモン共鳴を生じる波長を含むことが好ましい。
【0040】
光学式歪測定素子10に照射された光によって、光学式歪測定素子10の微小金属構造体にプラズモン共鳴を生じさせ、その反射光の偏光が変化する。この変化量は光学式歪測定素子に生じた歪みによって変化するので、反射光は第2の偏光板32(偏光板2)を通って、光検出器(シリコンフォトダイオード)33Dに入射される。偏光板2は、透過光が偏光板1に対して直交する方向、すなわち偏光板1と偏光板2とは、クロスニコルの関係に設定している。したがって、光学式歪み測定素子10からの反射光の偏光が偏光板1からの光の偏光に変化がなければ偏光板2を通って、光検出器33Dに到達する光はないことになる。すなわち光検出器33Dに到達する光は光学式歪測定素子10により変化した成分のみが到達することになる。前記したように、この成分の光が光学式歪測定素子10で生じる歪みで変化するので、結局、その光量を光検出器33Dで測定することにより歪みを測定することができる。
【0041】
図23(B)は、もう一つの測定方式を説明するための図である。光源として、偏光と発光スペクトルについてインコヒーレントな光(例えば白色光源30Wなどのカオス光)を用いる例を示す。特に発光スペクトルがブロード(広い発光波長範囲)な白熱電球、キセノンランプ、ハロゲンランプなどを用いることが好ましい。この白色光源30Wからの発光は、偏光板1を通過させて、直線偏光にする。この角度は図23(A)と同様であるので説明を省略する。また、金属微小体が配列されて構成される金属複合構造体(金属微小構造体)の前記した金属構造体の配列方向を、検出したい歪みの方向と一致させ、また、光学式歪み測定素子10のプラズモン共鳴波長が、白色光源の発光波長スペクトル内に存在するようにする。
【0042】
光学式歪測定素子10に照射された光は、前記同様に、光学式歪測定素子の金属微小構造体にプラズモン共鳴を生じさせ、その反射光の偏光が変化するとともに、プラズモン共鳴波長をピークとするスペクトルを持つ。この偏光の変化量とプラズモン共鳴波長とは、光学式歪測定素子に生じる歪によって変化する。得られたこのような変化した反射光は偏光板2を通過して、分光特性測定装置(モノクロメータ)33Mに入射することになる。以下前記同様な原理により、光学式歪測定素子により偏光が変化した成分のみを測定すると、歪みを測定することができる。
なお、図23(A)では偏光成分により、図23(B)では、波長スペクトルを測定したが、両者を同時に測定するようにしてもよい。
【実施例】
【0043】
図24から図30により、本発明の光学式歪測定装置の、実施する例を挙げて詳しく述べる。
【0044】
〔実施例1〕
図24は、光学式歪測定素子10が、被測定物40である自動車の外装の一部に、複数枚貼り付けられて搭載されている例を示す。光源30として、レーザー光源を用いている例を示している。
前記したように、レーザー光は偏光板1を通過することにより、直線偏光となって、自動車の光学式歪測定素子10が設置された部分に照射される。この場合に、レンズ41により、レーザー光が自動車の歪み測定をする側面全体に照射するようにして、全ての光学式歪み測定素子10に同時にレーザー光が照射されるようにすることができる。レーザー光からの直線偏光の偏光方向は、前記したように、光学式歪測定素子10の金属微小体の並ぶ方向に対して0度より大きく90度より小さい角度の方向、好ましくは45度方向になっている。特にレーザー光源が直線偏光光を出射する場合には、光学式歪測定素子の金属微小体の並ぶ方向に対して0度より大きく90度より小さい角度の方向、好ましくは45度方向になっている関係が成立しているのであれば、偏光板を省略することもできる。
【0045】
レーザー光はレンズ41等で構成される光学系を通して、被測定物40の測定領域に、同時に照射される。光学式歪測定素子10から反射される光の偏光は、照射されたレーザー光の偏光に対して、光学式歪測定素子10の歪みに応じて変化する。偏光板2は偏光板1が選択する直線偏光の方向と直交する方向の直線偏光を選択するように、いわゆる偏光板1と偏光板2とは、クロスニコルの関係に配置されている。したがって、光学式歪測定素子10で変化した偏光成分のみを偏光板2は透過し、その成分のみがカメラに入射する。先に述べたように、偏光板2を通る光量は光学式歪み測定素子の歪み量により変化するので、カメラ33Cが映し出す画像の光学式歪測定素子10がある場所の光量から各光学式歪測定素子10の歪み量が測定できる。各光学式歪測定素子の歪み量から、被測定物40の光学式歪測定素子10が貼り付けられている場所の歪みを測定できる。
本実施例では、レーザー光の照射も被測定物40の測定領域全面に略同時に行え、カメラ33Cも前記全面を一度に捉えることができるので、全体の歪みの傾向を瞬時に捉えることができる。
【0046】
〔実施例2〕
図25は、光源として白色光源30Wを用いた以外は前記した実施例1と同じである。ただし、瞬時に歪み傾向を捉えるために、カメラ33Cはカラーカメラで色再現性に優れたカメラを使用するのが好ましい。また、白色光源30Wは白色LEDのように発光波長スペクトルは不均一なものよりも、好ましくは白熱電球、キセノンランプ、ハロゲンランプなどのように発光スペクトルの成分が広い波長範囲であるいわゆるブロードであり、その強度も略均一であるような光源を使用するのがよい。
本実施例では、光学式歪測定素子10は、実施例1と同様に被測定物40である自動車などの外装に複数枚貼り付けられている。前記したように、白色光は偏光板1により、直線偏光となって、自動車へ照射される。この場合、レンズ41により、白色光が自動車の歪み測定をする側面全体に照射されるようにして、全ての光学式歪測定素子10に同時に白色光が照射されるようにする。この白色光の直線偏光の偏光方向は、実施例1と同様になっている。特に白色光源30Wが直線偏光で光を出射する場合には、実施例1と同様に偏光板1を省略することもできる。白色光は図示しないレンズ等で構成される光学系を通して、被測定物40の測定領域に、ほぼ同時に照射される。光学式歪測定素子10から反射される光の偏光は、照射された白色光の偏光に対して、光学式歪測定素子10の歪みに応じて変化する。
【0047】
同時に、光学式歪測定素子10の歪みに応じてプラズモン共鳴波長が変化するので、光学式歪測定素子からの反射光の波長スペクトルが変化する。偏光板2は偏光板1が選択する直線偏光の方向と直交する方向の直線偏光を選択するように、いわゆる偏光板1と偏光板2とをクロスニコルの関係に配置している。したがって、光学式歪測定素子10で変化した偏光成分のみを偏光板2は透過し、その変化した偏光成分のみがカメラ33Cに入射する。先に述べたように、偏光板2を通る光量は光学式歪測定素子10の歪み量により変化する。同時にその波長スペクトルも変化する。したがって、カメラ33Cが映し出す画像の、光学式歪測定素子10がある場所の光量と波長スペクトルから各光学式歪測定素子10の歪み量が測定できる。波長スペクトルの変化は、カメラ33Cが捉える画像の中の光学式歪測定素子10の色が変化することにより知ることができる。ディジタル画像解析装置により、光学式歪測定素子の波長スペクトルを解析して歪みを知ることができる。各光学式歪測定素子10の歪み量は、それらが貼付けられた被測定物40の場所の歪み量と略同じであり、したがって被測定物40の光学式歪測定素子10が貼付けられた場所の歪みを測定できる。本実施例では、白色光の照射も被測定物40の測定領域全面に同時に照射し、カメラ33Cも前記全面を一度に捉えることができるので、全体の歪みを瞬時に捉えることができる。
【0048】
〔実施例3〕
図26は図24に示すような実施例1とほぼ同じ構成である。変えた部分は、レーザー光を被測定物40の測定面の全面に照射するのを、ポリゴンミラー34pなどの光走査手段を用いることによって、時系列順に各光学式歪測定素子10に照射するように構成した点である。
レーザビームが各光学式歪測定素子10に照射されるタイミングに合わせてカメラ33Cの画像から各光学式歪測定素子10の部分の輝度を測定する。これから被測定物40の歪みを測定する。他の動作は図24に示す実施例1と同様であるので、説明を省略する。
【0049】
〔実施例4〕
図27は図25に示す実施例2とほぼ同様の構成である。本実施例では、白色光を被測定物40の測定面の全面に照射するのを、ポリゴンミラー34pなどの光走査手段により、時系列順に照射光を走査しながら、各光学式歪測定素子10に照射するようにしている。白色光のビームが各光学式歪測定素子10に照射されるタイミングに合わせてカメラ33Cの画像から各光学式歪測定素子10の部分の輝度および波長スペクトルを測定し、これに基づいて、被測定物40の歪みを測定する。他の動作は図25に示す実施例2と同様であるので説明を省略する。
【0050】
〔実施例5〕
図28は、図26〜図27に示す実施例3〜4と同様な光走査手段である、光スキャナ34を用いている。実施例3〜4と異なる点は、反射光の測定をカメラ33Cで行うのを、光源と光検出器が一つのユニットとして構成される光源・光検出ユニット35で行っていることである。光源・光検出ユニット35から出射されたビーム光は、ポリゴンミラー34pなどの光走査手段により、時系列に各光学式歪測定素子10に照射するようになっている。照射されたビーム光は、先に述べた光学式歪測定素子の原理により、光スキャナ34の方向に反射される。反射されて戻ってきた光は、さらに光スキャナ34に反射され、光源・検出ユニット35に戻る。ビーム光が各光学式歪測定素子10に照射されるタイミングに合わせて光源・検出ユニット35にある光検出器あるいは分光装置により、各位置に貼付けられた光学式歪測定素子10の輝度および波長スペクトルを測定する。これによって、被測定物40の歪みを測定する。その測定の基本的原理・動作については図24〜27に示す実施例と同様である。
【0051】
前記した光源・検出ユニット35の構成およびその動作例について、図29と図30で述べる。
図29では、光源としてレーザー光源を用いた場合の光学式歪測定装置および光学式歪測定システムの構成例を示す図である。レーザー光源から出射した光は、偏光ビームスプリッタ36(紙面に垂直な偏光は透過、平行な光は反射)により、図29の紙面に垂直な直線偏光となり、出射・入射開口部から出射された偏光は、光スキャナを経て、光学式歪測定素子に照射される。光学式歪測定素子に照射された光は前記したようなコーナーキューブ構造の光学式歪測定素子に反射され、そこから戻ってきた楕円偏光(あるいは円偏光)は、出射・入射開口部から入射して光源・検出ユニットを構成する偏光ビームスプリッタ36に入り、紙面に平行な偏光成分だけが反射されて、光検出器33Dに入射し、その後、光電変換等により電気信号に変換される。レーザー光が各光学式歪測定素子に照射されている時間に同期して光検出器33Dの出力を測定して、被測定物の歪みを測定することができる。なお、偏光ビームスプリッタの代わりに、ワイヤグリッド偏光板を用いることもできる。
【0052】
図30は光源・検出ユニットの他の構成例を示す図である。この例では、光源として白色光源を用いた場合を示す。白色光源として、一般の白熱電球、キセノンランプ、ハロゲンランプなどを挙げることができる。これら白色光源からの出射光は、反射レンズの効果を持つリフレクター39と図示しない光学系により平行光となって、第1のワイヤグリッド偏光板37(ワイヤグリッド偏光板1)に入射される。これにより図30の紙面に垂直な直線偏光となり、光源・検出ユニット35の出射・入射開口から出射され、光スキャナを経て、光学式歪み測定素子に照射される。
【0053】
光学式歪測定素子に照射され戻ってきた楕円偏光(円偏光も含む)は、光学式歪測定素子の金属微小構造体によるプラズモン共鳴により、特定の波長成分が多い光となって、出射・入射開口に再び戻る。さらに、この戻り光は第2のワイヤグリッド偏光板38(ワイヤグリッド偏光板2)に入射し、紙面に平行な偏光成分だけが反射され、分光装置に入射される。白色光が各光学式歪測定素子10に照射されている時間に同期した分光装置への戻り光を測定することにより、被測定物の歪みを測定することができる。なお、前記した光源・検出ユニット35と同様に、ワイヤグリッド偏光板の代わりに、偏光ビームスプリッタ36を用いてもよい。
【0054】
また、上記実施例中、光走査手段である光スキャナとして、ポリゴンミラーを用いて説明したが、本発明の光学式歪測定装置あるいは光学式歪測定システムにおいて使用される場合、光走査手段としては、これに限るものではなく、ガルバノミラーなどの光走査手段を用いることもできる。その場合、特にMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を使った小型ガルバノミラーを使ってもよい。実施例中、被測定物(ここでは自動車)の左右方向のスキャンを行う光スキャナのみに関してポリゴンミラーを用いた例により説明したが、上下方向にスキャンを行う光スキャナを使ってもいいし、上下方向のスキャンを行う光スキャナと左右スキャンを行う光スキャナを両方用いて二次元スキャンを実行するようにしてもよい。
また、光スキャナとして、たとえば米国Texas Instruments社製のDigital Micro Mirror Deviceデジタル・マイクロ・ミラーデバイス(DMD)や米国Silicon
Light Machines社製のGrating Light Valve等を用いることもできる。
【0055】
また本発明の歪測定方法では、前記した光学式歪測定素子に、偏光を照射し、出射光の偏光状態または偏光状態と波長スペクトルを前記照射した光と比較してその変化成分を抽出して歪を計測することを特徴としている。このような本発明の歪測定方法では、偏光としては偏光照射手段を用いることにより行われ、これら偏光照射手段としては実施例において使用されるレーザー光源、白色光源を用い、出射光が偏光光である場合には偏光手段として偏光板を省略することもできる。このような出射光または偏光光を照射するか、またはポリゴンミラーを含む光走査手段を用いて前記した偏光制御素子に第1の偏光を照射し、その反射光又は透過光と前記した出射光または偏光光とをクロスニコル関係にある。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】従来の歪測定法であるモアレ法の原理図である。
【図2】従来の歪測定装置の一例であるトワイマン・グリーン干渉計を用いた歪測定装置を示す。
【図3】従来の歪測定装置を示す図であり、(a)は圧力によって電気抵抗値が変わる材料を用いて構成されている歪測定装置の構成例であり、(b)はその装置のロードセルの部分の詳細な例を示す図である。
【図4】図3に示す従来の歪測定装置の歪ゲージのパターン例を示す図であり、黒い部分は金属箔製の抵抗体を示す。
【図5】非特許文献1に開示されている歪測定のためのPDMSフィルムに光を照射したときのプラズモン共鳴励起スペクトルとそのフィルムを変形したときの励起スペクトルの変化を示した図である。
【図6】本発明の歪測定素子に用いられる偏光制御素子の測定原理を説明するための図である。
【図7】図6に示す偏光制御素子の第1の態様の例を示す部分断面図である。
【図8】図7に示す金属微小構造体の配列例を示す図であり、(A)は金属複合構造体各1組が格子点となりその格子点が基板上に正方格子状に配列されている例であり、(B)は金属複合構造体各1組が格子点となりその格子点が基板上に6方格子状に配列した例であり、(C)は金属複合構造体各1組が格子点となりその格子点が基板上にストライプ状に配列した例であり、(D)は金属複合構造体を構成する略同一径の金属微小体がその径dよりも小さい間隔gで横一直線方向に配列して金属複合構造体を構成した例を示す図である。
【図9】FDTD法による数値計算に用いたモデルの具体的な例を説明するための図である。
【図10】FDTD法による数値計算により得られた結果を示すグラフであり、(A)は金属微粒子間距離gと、xy面における振幅比Ay/Axとの関係を示したグラフであり、(B)は金属微粒子間距離gと、x成分とy成分との位相差(|δy−δx|)との関係を示すグラフである。
【図11】誘電体薄膜7によって被覆された金属微小体2ならびに金属複合微細構造体6を有する偏光制御素子の配列構成の一例を示した図である。
【図12】金の円板状の金属微小体二個で一組の金属微小構造体6を構成している場合の、金属微小体間の間隔が、そのプラズモン共鳴波長に与える影響を調べるためのFDTD法による計算条件を示す図であり、(A)は上面図であり、(B)は(A)のA−A断面図である。
【図13】図13に示す金属微小構造体をモデルとして用いてFDTD法による計算結果を示すグラフである。
【図14】本発明の光学式歪測定素子および光学式歪測定装置に用いられる偏光制御素子の第2の態様の例を示す図である。
【図15】本発明の光学的歪測定素子に使用される偏光制御素子の構成を示す説明図である。
【図16】偏光制御素子の製造工程を説明するための図である。
【図17】本発明の光学的歪測定素子に使用される偏光制御素子の第4の態様の構成例を説明するための図であり、(A)は格子ベクトルの方向(図の横方向)に直交する方向(図の縦方向)に金属微小構造体を配列した場合を示し、(B)は、格子ベクトルに平行な方向(複数の金属微小体が略一直線に配列している縦方向)に金属微小構造体を配列した場合を示す。
【図18】金属複合構造体をコーナーキューブの反射領域面上に設けた場合の照射光と信号光(反射光:戻り光)との関係の原理を説明するための図である。
【図19】同じく、金属複合構造体をコーナーキューブの反射領域面上に設けた場合の照射光と信号光(反射光:戻り光)との関係の原理を説明するための図である。
【図20】直交する3辺によって構成されたコーナーキューブの一つの反射領域面に金属複合体からなる偏光制御素子を設けた例を示す図である。
【図21】コーナーキューブを基板上に形成した例を示す図である。
【図22】コーナーキューブを基板上に複数配置して形成した例を示す図であり、この例では各コーナーキューブの歪測定方向がx方向に並んでいる例を示す。
【図23】本発明の光学式歪測定素子を用いた歪測定装置および測定システムの構成例とその光学的な原理を説明するための図であり、(A)は光源としてレーザ光などの単色光源を用いた例であり、(B)は光源として白熱ランプなどの白色光源を用いた例である。
【図24】本発明の光学式歪測定素子を用いた歪測定装置および測定システムの実施例を示す図であり、光源としてレーザ光などの単色光源を用いた実施例を示す図である。
【図25】本発明の光学式歪測定素子を用いた歪測定装置および測定システムの実施例を示す図であり、光源として白熱ランプなどの白色光源を用いた実施例を示す図である。
【図26】本発明の光学式歪測定素子を用いた歪測定装置および測定システムの実施例を示す図であり、光源としてレーザ光などの単色光源を用い、走査手段により光走査する実施例を示す図である。
【図27】本発明の光学式歪測定素子を用いた歪測定装置および測定システムの実施例を示す図であり、光源として白熱ランプなどの白色光源を用い、走査手段により光走査する実施例を示す図である。
【図28】本発明の光学式歪測定素子を用いた歪測定装置および測定システムの実施例を示す図であり、光源・光検出ユニットを用い、走査手段により光走査する実施例を示す図である。
【図29】本発明の光学式歪測定素子を用いた歪測定装置および測定システムの実施例を示す図であり、光源・光検出ユニットを用い、光源・検出ユニットの構成およびその動作例について、その光源としてレーザ光などの単色光源を用い光源と光検出器とを偏光ビームスプリッタを用いて戻り光を光源に戻さずに光検出器に入射するように構成した実施例の構成と動作例を説明するための図である。
【図30】本発明の光学式歪測定素子を用いた歪測定装置および測定システムの実施例を示す図であり、光源・光検出ユニットを用い、光源・検出ユニットの構成およびその動作例について、その光源として白熱ランプなどの白色光源を用い光源と光検出器とをワイヤグリッド偏光板(ワイヤグリッド偏光子)を用いて戻り光を光源に戻さないようにして光検出器に入射するように構成した実施例の構成と動作例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0057】
1 基板
2 金属微小体
2a、2b 金属材料
3 第2の金属(第2の金属材料)
5a 透過光
5b 反射光
6 金属複合構造体(金属微小構造体)
7 誘電体薄膜
8 誘電体
9 サブ波長格子基板
10 偏光制御素子(光学式歪測定素子)
11 コーナーキューブの第1の面
12 コーナーキューブの第2の面
13 コーナーキューブの第3の面
21a 第1の光
22a 第2の光
23a 第3の光
30 光源
30L 単色光源
30W 白色光源
31 第1偏光板
32 第2偏光板
33 分光装置
33C カメラ
33D 光検出器(シリコンフォトダイオード)
33M 分光特性測定装置(モノクロメータ)
34 光走査部(光スキャナ)
34p ポリゴンミラー
35 光源・光検出ユニット
36 偏光ビームスプリッタ
37 第1ワイヤグリッド偏光板
38 第2ワイヤグリッド偏光板
39 リフレクタ
40 被測定物
41 レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光の波長以下の大きさの金属微小体を複数用いて前記金属微小体の大きさよりも小さい間隔で並べた金属微小構造体が配列されたことを特徴とする光学式歪測定素子。
【請求項2】
入射光の波長以下の大きさの金属微小体を複数用いて前記金属微小体の大きさよりも小さい間隔で並べた金属微小構造体が配列された基板を1面に有するコーナーキューブを用いることを特徴とする光学式歪測定素子。
【請求項3】
前記金属微小構造体を構成する前記金属微小体が規則的に配列していることを特徴とする請求項1または2に記載の光学式歪測定素子。
【請求項4】
前記金属微小構造体を構成する前記金属微小体の配列方向が略同一方向であることを特徴とする請求項3に記載の光学式歪測定素子。
【請求項5】
前記金属微小構造体を構成する前記金属微小体は、略同一の大きさを有し、前記金属微小体の大きさよりも小さい間隔に略等しく配列していることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光学式歪測定素子。
【請求項6】
前記金属微小構造体は、前記金属微小体が2種以上の異なる金属で構成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の光学式歪測定素子。
【請求項7】
前記金属微小体は、10〜100nmの大きさであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の光学式歪測定素子。
【請求項8】
前記金属微小構造体は偏光した入射光と出射光との偏光の変化を感知する偏光制御素子であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の光学式歪測定素子。
【請求項9】
前記偏光制御素子は、前記金属微小構造体を構成する前記金属微小体の間隔の変化を、前記偏光した入射光と出射光との偏光の変化により感知することを特徴とする請求項8に記載の光学式歪測定素子。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の光学式歪測定素子と、直線偏光照射手段と、偏光状態または偏光状態と波長スペクトルを計測する手段と、を有することを特徴とする光学式歪測定装置。
【請求項11】
さらに、光走査手段を有することを特徴とする請求項10に記載の光学式歪測定装置。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれかに記載の光学式歪測定素子と、直線偏光照射手段と、偏光状態または偏光状態と波長スペクトルとを計測する手段と、を有することを特徴とする光学式歪測定システム。
【請求項13】
さらに、光走査手段を有することを特徴とする請求項12に記載の光学式歪測定システム。
【請求項14】
請求項1〜9のいずれかに記載の光学式歪測定素子を用いた歪測定方法であって、
前記光学式歪測定素子に、偏光を照射し、出射光の偏光状態または偏光状態と波長スペクトルを前記照射した光と比較してその変化成分を抽出して歪を計測することを特徴とする歪測定方法。
【請求項15】
請求項1〜9のいずれかに記載の光学式歪測定素子を用いた歪測定方法であって、
前記光学式歪測定素子に、第1の偏光を照射し、得られた光を前記第1の偏光とクロスニコルの関係にある光学素子に通過させることを特徴とする歪測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図9】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−47501(P2009−47501A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−212627(P2007−212627)
【出願日】平成19年8月17日(2007.8.17)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】