説明

光学式測定装置

【課題】測定対象に設けられた穴の傾斜角等を高精度で測定すること。
【解決手段】光源部106は、断面が線状で所定間隔に配置された複数の平行な光ビームから成る測定用光150を出力する。光検出部111、114は、測定対象130の穴132周辺領域で反射した測定用光150を検出する。制御部126は、光検出部111、114が検出した複数の光ビームと穴132周縁部との交点の位置座標を用いて各光ビームの垂直2等分線を求め、穴132と交差しない複数の光ビームと前記垂直2等分線との交点の位置座標と前記光ビームの既知の間隔とを用いて穴132の傾斜角を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
測定対象の穴の傾斜角等を光学的に測定する光学式測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体レーザ等の光源から発生した測定用光を測定対象に照射し、前記測定対象で反射した前記測定用光を検出することによって、三角測量法を用いて、所定位置から測定対象までの距離や前記測定対象の3次元形状等、測定対象についての長さに関する情報を光学的に測定する光学式測定装置が開発されている。光学的に測定する方式として、光源及び光検出部を各々1つ用いて光学的に測定する光学式測定装置(例えば、特許文献1参照)と、1つの光源と2つの光検出部を用いて光学的に測定する光学式装置が開発されている(例えば特許文献2参照)。
【0003】
光学的に測定する用途は多岐にわたっており、その一つの例として、測定対象に設けられた穴の傾斜角、中心位置、穴径等を測定する方法が開発されている(例えば、特許文献3参照)。
特許文献3記載の発明では、レーザスポットを用いて測定対象の穴を相互に交差する方向に走査することにより、前記穴縁部の4点の座標を取得し、前記座標に基づいて、前記穴の傾斜角、穴の中心位置、穴径等を算出するように構成している。
【0004】
しかしながら、特許文献3記載の発明では、レーザスポットを用いて走査することによって前記穴縁部の座標を取得するようにしているため、走査に時間がかかり、測定に長時間要するという問題がある。また、レーザスポットが交差する交点位置が前記穴の中心に近い場合は、穴縁部の4点で反射した光に基づいて穴の傾斜角等を高精度に測定することが可能であるが、前記交点位置が前記穴縁部に近い場合は高精度な測定が困難になるという問題がある。
【0005】
また、特許文献4記載の発明のように、断面が線状の複数の光ビームを発生する光源が知られているが、特許文献4記載には単に光源としての発明が開示されているにすぎず、光学的な測定に応用することは何ら記載されていない。
仮に、特許文献4記載に記載された発明を用いて断面が十字状の光ビームを出力する光源を構成し、前記光源を光学式測定装置の光源として用いた場合でも、十字状光ビームの中心位置(2つの線状ビームの交点位置)が穴縁部に近い場合は前述したように高精度な測定が困難になるという問題がある。
【0006】
【特許文献1】特開2004−340856号公報
【特許文献2】特開2007−198841号公報
【特許文献3】特開2000−18914号公報
【特許文献4】特開平8−43610号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、測定対象に設けられた穴の傾斜角等を高精度で測定できるようにすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、断面が線状で所定間隔に配置された複数の平行な光ビームから成る測定用光を出力する光源部と、測定対象の穴周辺領域で反射した前記測定用光を検出する検出手段と、前記検出手段が検出した複数の光ビームと穴周縁部との交点の位置座標を用いて前記光ビームの垂直2等分線を求め、前記穴と交差しない複数の光ビームと前記垂直2等分線との交点の位置座標と、前記光ビームの間隔とを用いて前記穴の傾斜角を算出する算出手段とを備えて成ることを特徴とする光学式測定装置が提供される。
【0009】
光源部は、断面が線状で所定間隔に配置された複数の平行な光ビームから成る測定用光を出力する。検出手段は、測定対象の穴周辺領域で反射した前記測定用光を検出する。算出手段は、前記検出手段が検出した複数の光ビームと穴周縁部との交点の位置座標を用いて前記光ビームの垂直2等分線を求め、前記穴と交差しない複数の光ビームと前記垂直2等分線との交点の位置座標と前記光ビームの間隔とを用いて前記穴の傾斜角を算出する。
【0010】
ここで、前記穴は円形であり、前記算出手段は、下記式に基づいて前記穴の傾斜角を算出するように構成してもよい。
θX=tan−1((Z6O−Z1O)/(Y6O−Y1O))
θY=tan−1((Z4R−Z4L)/(X4R−X4L))
但し、θXはX軸周りの傾斜角、θYはY軸周りの傾斜角であり、又、Y10、Y60、Z10、Z60は前記穴の両側に位置し前記穴と交差しない2つの光ビームと前記穴の中心を通り前記2つの光ビームに直交する線との交点のY座標及びZ座標であり、又、X4R、Z4R、X4L、Z4Lは前記光ビームと前記穴周縁部との間の2つの交点のX座標、Z座標である。
【0011】
また、前記算出手段は、前記検出手段が検出した複数の光ビームと穴周縁部との交点の位置座標を用いて前記穴の中心の位置座標を算出するように構成してもよい。
また、前記算出手段は、前記検出手段が検出した複数の光ビームと穴周縁部との交点の位置座標を用いて前記穴の径を算出するように構成してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る光学式測定装置によれば、測定対象に設けられた穴の傾斜角等を高精度で測定することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態に係る光学式測定装置について説明する。尚、各図において同一部分には同一符号を付している。
図1は、本発明の実施の形態に係る光学式測定装置の平面図で、ケース本体の一部を省略して内部を示した図である。
また、図2は図1の光学式測定装置の正面図、図3は図1の光学式測定装置の左側面図であり、各々、ケース本体の一部を省略して内部を示した図である。
【0014】
本実施の形態に係る光学式測定装置100は、ケース本体101、ケース本体101の前面に配設された非透光性の前面板102、前面板102の貫通穴を覆うように取り付けられケース本体101内とケース本体101外間の光通過を可能にする円板状の第1〜第3窓部103〜105を備えている。第1〜第3窓部103〜105は長方形状等の他の形状にしてもよい。
【0015】
第1〜第3窓部103〜105は、透光性部材によって構成され、防塵機能を有すると共に赤外線を遮断して熱を遮蔽する機能を備えている。ケース本体101と前面板102及び第1〜第3窓部103〜105により、防塵機能を有する密閉ケースが構成されている。
第1窓部103は第1光軸119と直交するように前面板102に取り付けられると共に第1窓部103の中心を光軸119が通る位置に取り付けられている。
【0016】
第2光軸120と第3光軸121は、光軸に対して所定角度傾斜すると共に、光軸119を軸として対称に配置されている。第2、第3窓部104、105は、各々、第2、第3光軸120、121と直交するように前面板102に取り付けられると共に、相互に光軸119を軸として対称になる位置に取り付けられている。第2、第3窓部104、105は、光軸119に対して、逆方向に所定角度傾斜するよう取り付けられている。また、第2窓部104の中心を光軸120が通り、第3窓部105の中心を光軸121が通るように配置されている。
【0017】
ケース本体101内には、断面が線状で、既知の所定間隔に配置された複数(本実施の形態では6本)の平行な光ビームから成る測定用光を出力する光源部106が所定位置に取り付けられている。前記複数の光ビームの中心が光軸119に一致するように配置されている。このように、光源部106及び第1窓部103が光軸119に沿って並設されている。
尚、測定対象130については後述するが、図1に測定対象130の断面図を示し、図2及び図3では測定対象130は省略して描いている。
【0018】
光源部106は、断面が点状の光ビームを発生する発光素子107と前記断面点状の光ビームを測定用光(断面が線状で、既知の所定間隔に配置された複数の平行な光ビーム)に変換して出力する公知のプロジェクタ108を備えている。発光素子107は、レーザや発光ダイオード(LED)によって構成することができる。本実施の形態では、発光素子107はレーザによって構成している。光源部106から出力される前記複数の光ビーム(測定用光)の中心が光軸119に一致するように構成されている。前記測定用光は指向性を有する光であり、収束した光(光ビーム)によって構成された光である。
【0019】
光源部106から出力される測定用光は、光軸119に沿って、第1窓部103を通ってケース本体101の外部に出力される。
また、ケース本体101内には、複数(本実施の形態では2つ)の光検出部111、114が所定位置に取り付けられている。
第1光検出部111は、測定用光を受光する受光レンズ112及び受光レンズ112が受光した測定用光を検出する光検出素子113を備えている。
【0020】
受光レンズ112の中心及び光検出素子113の中心を結ぶ第2光軸120上に、光検出素子113、受光レンズ112、第2窓部104の順で、ケース本体101の内側から外側に向かって並設されている。光検出素子113としては、例えば平面状のCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型光センサやCCD(Charge Coupled Device)センサが使用できる。
【0021】
第2光検出部114は、測定用光を受光する受光レンズ115及び受光レンズ115が受光した測定用光を検出する光検出素子116を備えている。受光レンズ115の中心及び光検出素子116の中心を結ぶ第3光軸121上に、光検出素子116、受光レンズ115、第3窓部105の順で、ケース本体101の内側から外側に向かって並設されている。光検出素子116として、光検出素子113と同様に、CMOS型光センサやCCDセンサが使用できる。
【0022】
位置合わせ部材118は光検出部111、114の取り付け位置を決めるための補助具である。位置合わせ部材118の両斜辺に光検出部111、114を当接させた状態で光検出部111、114をケース本体101に取り付けることにより、光検出部111及び光検出部114の相対的な位置関係を予め既知の値に設定した状態で容易に固定できるようにしている。光検出部111、114を構成する受光レンズ112、115及び光検出素子113、116の相対的な位置関係が既知の値に設定される。
【0023】
光検出部111、114の相対的な位置関係は所定の既知の関係になるが、その一方、光源部125は、光検出部111、114との位置関係は規定せずに、制約のない自由な位置に取り付けられる。
光軸120、121は光軸119に対して対称となるように位置している。また、光軸120、121は光軸119に対して所定角度傾斜するように配置しており、これによって、光検出部111、114から所定距離範囲内を、高精度に測定可能な焦点領域に設定している。
【0024】
また、ケース本体101内には、光源部106の発光動作の制御処理、第1光検出部111及び第2光検出部114の光検出動作の制御処理、第1光検出部111及び第2光検出部114が検出した測定用光に基づいて測定対象130についての長さに関する情報等の算出処理、第1光検出部111及び第2光検出部114が検出した測定用光データの記憶部127に対する書き込み及び読み出し制御処理等を行う制御部126が設けられている。
【0025】
また、ケース本体101内には、第1光検出部111及び第2光検出部114が検出した測定用光のデータや制御部126が算出した測定対象130についての長さに関する情報等の各種データ、制御部126を中央処理装置(CPU)によって構成した場合に実行されるプログラム等を記憶する記憶部127が設けられている。
尚、第1光検出部111及び第2光検出部114は検出手段を構成し、制御部126は算出手段を構成し、記憶部127は記憶手段を構成している。
【0026】
検出手段は、測定対象130の穴周辺領域で反射した前記測定用光を検出することができる。
また、算出手段は、前記検出手段が検出した複数の光ビームと穴周縁部との交点の位置座標を用いて前記光ビームの垂直2等分線を求め、前記穴と交差しない複数の光ビームと前記垂直2等分線との交点の位置座標と、前記光ビームの間隔とを用いて前記穴の傾斜角等を算出することができる。
【0027】
図4は、本実施の形態で測定する測定対象130の斜視図である。図1及び図4において、測定対象130は、平面である測定対象表面131、穴132、穴132の縁部133を備えている。
図4の例では、穴132は貫通穴であり又、円形である。縁部133は、貫通穴132の円形端部であり、又、測定対象表面131の円形端部でもある。
【0028】
図5は、本発明の実施の形態に係る光学式測定装置を用いて、測定対象130の穴132の中心や半径等の測定対象130についての長さに関する情報を測定する場合の説明図である。
光源部106から出力される測定用光150は、断面が線状で所定間隔に配置された複数の平行な線状光(マルチライン光)を備えている。図5の例では、測定用光150は、相互に平行な6本の線状光L1〜L6を備えている。
【0029】
各線状光L1〜L6の間隔は各々予め所定間隔dに設定されており又、各線状光L1〜L6はX軸と平行になるように構成されている。測定用光150中の複数の線状光L2〜L5は穴132と交差するが、複数の線状光L1、L6は穴132と交差しないように配置される。図5の例では、測定用光150の中心位置が光軸119に一致するように構成されている。
尚、図5には、測定用光150が、基軸(受光レンズ112と受光レンズ115を結ぶ線分)に平行な線状光を有する例を挙げているが、前記基軸に直交する線状光や所定角度で交差する線状光でもよい。また、線状光L1〜L6は6本でなくてもよい。
【0030】
測定対象130についての長さに関する情報としては、例えば、所定位置を基準とする測定対象130の穴132の傾斜角、所定位置を基準とする穴132の中心座標、穴132の径(半径あるいは直径)、所定位置を基準とする測定対象130上の点の座標、所定位置から測定対象130上の所定点までの距離、測定対象130の2次元又は3次元形状、所定位置を基準とする測定対象130の傾きがある。
【0031】
以下、図1〜図5を用いて、測定対象130の穴132の傾斜角等の測定対象130についての長さに関する情報の測定処理を説明する。
先ず、光軸119が穴132内に位置するように、光学式測定装置100と測定対象130の相対的な位置関係を設定する。
この状態で、光源部106の発光素子107が断面スポット状の光ビームを発生すると、プロジェクタ108は、発光素子107からの前記光ビームを、断面が線状で所定間隔に配置されたマルチライン光から成る測定用光150に変換して出力する。
【0032】
測定用光150は、貫通穴117、第1窓部103を介して、測定対象130に照射される。このとき、測定用光150の中心が光軸119に一致しているため、図5に示すように、測定用光150の中心は穴132内に位置することになる。尚、測定用光150は測定対象130の測定対象表面131に対して垂直に照射される。
測定対象130に照射された測定用光150のうち、穴132に照射された測定用光150は穴132を通過し、測定対象130における穴132の周辺領域に照射された測定用光150は測定対象130で反射する。
【0033】
測定対象130で反射した測定用光150は、第2窓部104、第3窓部105を介して、各々、第1光検出部111、第2光検出部114に入射する。
第1光検出部111に入射した測定用光150は、受光レンズ112を介して、光検出素子113によって検出される。第2光検出部114に入射した測定用光150は、受光レンズ115を介して、光検出素子116によって検出される。
制御部126は、光検出素子113、116によって検出された測定用光150に基づいて、公知の手法(例えば特許文献2記載の手法)により、穴132の中心座標等を算出する。
【0034】
図5に示すように、測定対象130が有する穴132の中心P0のXYZ座標を(X0,Y0,Z0)とする。
線状光L2が測定対象130の穴132の縁部133と交差する2点の中の左側の点、右側の点を各々、P2L、P2Rとする。同様に、線状光L3が測定対象130の穴132の縁部133と交差する2点の中の左側の点、右側の点を各々P3L、P3R、線状光L4が測定対象130の穴132の縁部133と交差する2点の中の左側の点、右側の点を各々P4L、P4R、線状光L5が測定対象130の穴132の縁部133と交差する2点の中の左側の点、右側の点を各々P5L、P5Rとする。
【0035】
点P2L、P2RのXYZ軸座標は各々、(X2L,Y2L,Z2L)、(X2R,Y2R,Z2R)で表される。同様に、点P3L、P3R、P4L、P4R、P5L、P5RのXYZ軸座標は各々、(X3L,Y3L,Z3L)、(X3R,Y3R,Z3R)、(X4L,Y4L,Z4L)、(X4R,Y4R,Z4R)、(X5L,Y5L,Z5L)、(X5R,Y5R,Z5R)で表される。
点P2Lと点P2R間、点P3Lと点P3R間、点P4Lと点P4R間、点P5Lと点P5R間の距離(差し渡し)を各々、d2、d3、d4、d5とする。
【0036】
また、点P2LとP2Rの中点、点P3LとP3Rの中点、点P4LとP4Rの中点、点P5LとP5Rの中点を各々、P2O、P3O、P4O、P5Oとして、それらを結ぶ直線をQとする。点P2O、P3O、P4O、P5OのXYZ軸座標を各々、(X20,Y20,Z20)、(X30,Y30,Z30)、(X40,Y40,Z40)、(X50,Y50,Z50)とする。直線Qと線状光L1の交点P10のXYZ軸座標を(X10,Y10,Z10)、直線Qと線状光L6の交点P60のXYZ軸座標を(X60,Y60,Z60)とする。
【0037】
点PL2、PR2、PL3、PR3、PL4、PR4、PL5、PR5の各XYZ座標は、測定によって得られる値であり、光検出部111、116が検出した測定用光150に基づいて三角測量法によって算出される値である。この意味で、点PL2、PR2、PL3、PR3、PL4、PR4、PL5、PR5を検出点と称する。
また、点P10〜P60の座標、穴132の中心P0の座標、差し渡しd2、d3、d4、d5は、測定した座標値を用いて、計算によって得られる値である。この意味で、点P10〜P60、中心点P0を算出点と称する。
【0038】
X軸回りの傾斜角θXは、縁部133と交差しない線状光L1、L6上の点P10(X10,Y10,Z10)、点P60(X60,Y60,Z60)の座標を用いて下記式(1)のように表すことができる。
θX=tan−1((Z6O−Z1O)/(Y6O−Y1O)) ・・・(1)
Y軸回りの傾斜角θYは、差し渡しが最長d4の線状光L4の点PL4(X4L,Y4L,Z4L)、PR4(X4R,Y4R,Z4R)の座標を用いて表すと、下記式(2)のように表すことができる。
θY=tan−1((Z4R−Z4L)/(X4R−X4L)) ・・・(2)
【0039】
但し、Y10、Y60、Z10、Z60は穴132の両側に位置し穴132と交差しない2つの光ビームL1、L6と穴132の中心P0を通り前記2つの光ビームL1、L6に直交する線との交点のY座標及びZ座標であり、又、X4R、Z4R、X4L、Z4Lは穴132と交差する光ビーム(本実施の形態では差し渡しが最大の光ビームL4)と穴132周縁部133との間の2つの交点のX座標、Z座標である。
【0040】
点P10、点P60、点PL4、点PR4の座標は後述するようにして得ることができる。このように、縁部133(換言すれば穴132)と交差しない線状光L1、L6上の点P10、点P60の座標を用いて傾斜角θを得るようにしているため、穴132が小さい場合でも点P10とP60間の長い距離を用いて傾斜角θを算出することが可能になり、傾斜角θを高精度に測定することが可能になる。即ち、相互間の間隔が既知である線状光L1とL6との間の直線距離と、測定によって得られる線状光L1、L6上の点の直線距離とを用いて、前記両直線間の傾斜角θを測定するため、傾斜角θを高精に測定することが可能になる。また、差し渡しが最大の光ビームと穴周縁部132との交点の座標を用いて算出するため、高精度な測定が可能になる。
前記検出手段が検出した複数の光ビームと穴周縁部との交点の位置座標を用いて前記光ビームの垂直2等分線を求め、前記穴と交差しない複数の光ビームと前記垂直2等分線との交点の位置座標と、前記光ビームの間隔とを用いて前記穴の傾斜角を算出する算出手段とを備えて成ることを特徴とする光学式測定装置。
【0041】
穴132の中心座標 P0(X0,Y0,Z0)は、直線Qの線上にある。図5の例では、右側の4点(P2R、P3R、P4R、P5R)または左側の4点(P2L、P3L、P4L、P5L)、あるいは、前記計8点から、前記選択した各点を通るような楕円の方程式を算出(楕円フィティング)することで、楕円中心すなわち傾斜した穴132の中心P0の座標を求めることができる。以下、その解析法を詳細に説明する。
【0042】
中心点P0を中心とする点P2R、P2L、P3R、P3L、P4R、P4L、P5L、P5Rについての半径R2R、R2L、R3R、R3L、R4R、R4L、R5R、R5Lは、以下の式(3)の通りであり、穴132が理想的な円形状の場合には各半径は等しい。
R2R=(X2R−X0)+(Y2R−Y0)+(Z2R−Z0)
R2L=(X2L−X0)+(Y2L−Y0)+(Z2L−Z0)
R3R=(X3R−X0)+(Y3R−Y0)+(Z3R−Z0)
R3L=(X3L−X0)+(Y3L−Y0)+(Z3L−Z0)
R4R=(X4R−X0)+(Y4R−Y0)+(Z4R−Z0)
R4L=(X4L−X0)+(Y4L−Y0)+(Z4L−Z0)
R5R=(X5R−X0)+(Y5R−Y0)+(Z5R−Z0)
R5L=(X5L−X0)+(Y5L−Y0)+(Z5L−Z0) ・・・(3)
【0043】
ここで、X2R、X2L、X3R、X3L、X4R、X4L、X5R、X5L、Y2R、Y2L、Y3R、Y3L、Y4R、Y4L、Y5R、Y5L、Z2R、Z2L、Z3R、Z3L、Z4R、Z4L、Z5R、Z5Lは測定によって得られる値であり、既知となる数値である。X0、Y0、Z0は未知数である。
例えば、穴132の右側の4点(P2R、P3R、P4R、P5R)を用いて中心P0の座標を求める場合、上記8つの式(3)から穴132の右側の4点(P2R、P3R、P4R、P5R)の式を抽出すると下記4つの式(4)のようになる。
【0044】
R2R=(X2R−X0)+(Y2R−Y0)+(Z2R−Z0)
R3R=(X3R−X0)+(Y3R−Y0)+(Z3R−Z0)
R4R=(X4R−X0)+(Y4R−Y0)+(Z4R−Z0)
R5R=(X5R−X0)+(Y5R−Y0)+(Z5R−Z0) ・・・(4)
尚、式(4)において、X0が既知の場合には、4番目の式は不要である。
【0045】
各点の半径は等しいため、式(4)を用いて、R2R=R3R、R3R=R4R、R4R=R5R、R5R=R2Rとすると、下記4つの式(5)が成立する。
(X2R−X0)+(Y2R−Y0)+(Z2R−Z0)=(X3R−X0)+(Y3R−Y0)+(Z3R−Z0)
(X3R−X0)+(Y3R−Y0)+(Z3R−Z0)=(X4R−X0)+(Y4R−Y0)+(Z4R−Z0)
(X4R−X0)+(Y4R−Y0)+(Z4R−Z0)=(X5R−X0)+(Y5R−Y0)+(Z5R−Z0)
(X5R−X0)+(Y5R−Y0)+(Z5R−Z0)=(X2R−X0)+(Y2R−Y0)+(Z2R−Z0)
・・・(5)
【0046】
ここで、既知の係数をつぎのように置く。
A23=2(X2R−X3R)
B23=2(Y2R−Y3R)
C23=2(Z2R−Z3R)
D23=(X2R−X3R)+(Y2R−Y3R)+(Z2R−Z3R
【0047】
同様に A34、B34、C34、D34 および A45、B45、C45、D45 を置き、X0、Y0、Z0で記述すると、下記4つの式(6)が得られる。
A23・X0+B23・Y0+C23・Z0=D23
A34・X0+B34・Y0+C34・Z0=D34
A45・X0+B45・Y0+C45・Z0=D45 ・・・(6)
穴132の中心P0の座標(X0、Y0、Z0)は、下記3つの式(7)で表される。
【0048】
【数1】

・・・(7)
穴132の半径Rは式(6)のX0、Y0、Z0を式(4)に代入することで求められる。穴132の直径は、それぞれの半径(R2R〜R5R)を2倍して、またはそれらの平均値を2倍して求めることができる。
【0049】
以上述べたように、本実施の形態に係る光学式測定装置においては、光源部106は、断面が線状で所定間隔に配置された複数の平行な光ビームL1〜L6から成る測定用光150を出力する。光検出部111、114は、測定対象130の穴132周辺領域で反射した測定用光150を検出する。制御部126は、光検出部111、114が検出した複数の光ビームL2〜L5と穴132周縁部133との交点の位置座標を用いて各光ビームの垂直2等分線を求め、穴132と交差しない複数の光ビームL1、L6と前記垂直2等分線との交点P10、P60の位置座標と前記光ビームL1〜L6の既知の間隔とを用いて穴132の傾斜角を算出する。
【0050】
このように、相互に間隔が既知の複数の線状光L1〜L6より成る測定用光150を用いて、測定対象130の穴132の傾斜角θ等、測定対象130についての長さに関する情報を正確に測定することが可能になる。
特に、穴132と交差しない線状光L1、L6を用いて傾斜角θを正確に測定することが可能になる。
【0051】
また、穴132が円形状の場合、前記式(1)、(2)に基づいて穴132の傾斜角θを算出することができる。
また、複数の光ビームと穴周縁部133との交点の位置座標を用いて穴132の中心P0の位置座標を算出することができる。
また、複数の光ビームと穴周縁部133との交点の位置座標を用いて穴132の径を算出することができる。
【0052】
また、工業製品の穴周縁部の形状は、面取り形状(一般には45度)やアール形状が多いため、穴周縁部を正確に検出することが困難な場合があり、その一方、穴周縁部が理想的なエッジの場合には穴側とフランジ面(測定対象表面)側に照射点がふらつくことがあり、安定したデータが取得できないことが多い。本実施の形態では、直接穴縁上の照射点を使わなくてもよく、安定したデータが取得できる。
【0053】
また、穿孔が機械加工の場合はエッジ部には“バリ”が構成され、鍛造やプレスによる穿孔の穴ではアール部分表面は延ばされて梨地状(ポーラス状)となり、不適切な反射光を呈することがあり取得データが不安定な場合があるが、本実施の形態では、直接穴縁上の照射点を使わなくてもよいため、安定したデータが取得できる。
また、鍛造工程のように赤色化した高温穿孔の場合でも、物性的、形状的にも安定したフランジ面上のラインレーザを用いることが可能になる。
また、本発明の実施の形態に係る光学式測定装置は前記効果を奏するため、加工後の検査や計測ではなく、製造工程の中で全数検査することが可能、すなわちインライン計測が可能になる。
【0054】
尚、前記実施の形態では、2つの光検出部111、114を用いた光学式測定装置100を用いて三角測量法によって測定するように構成しているため、光源部106を、光検出部111、114とは位置関係が自由な位置に設置できるという効果を奏するが、1つの光源部及び1つの光検出部を用いて三角測量法によって測定するように構成してもよい。この場合も、前記同様にして測定対象130の穴132の傾斜角θを正確に測定することが可能になり又、各種の測定対象130についての長さに関する情報を測定することができる。
【0055】
また、前記実施の形態では、穴の例として貫通穴132の例で説明したが、有底穴にも適用可能である。
また、穴の形状は必ずしも円形に限られない。
【産業上の利用可能性】
【0056】
少なくとも測定対象に形成された穴の傾斜角測定を測定する光学式測定装置に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施の形態に係る光学式測定装置の平面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る光学式測定装置の正面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る光学式測定装置の左側面図である。
【図4】本発明の実施の形態における測定対象の斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態における測定動作の説明図である。
【符号の説明】
【0058】
100・・・光学式測定装置
101・・・ケース本体
102・・・前面板
103〜105・・・窓部
106・・・光源部
107・・・発光素子
108・・・プロジェクタ
119〜121・・・光軸
111、114・・・光検出部
112、115・・・受光レンズ
113、116・・・光検出素子
118・・・位置合わせ部材
119・・・光軸
126・・・制御部
127・・・記憶部
130・・・測定対象
131・・・測定対象表面
132・・・穴
133・・・縁部
150・・・測定用光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面が線状で所定間隔に配置された複数の平行な光ビームから成る測定用光を出力する光源部と、
測定対象の穴周辺領域で反射した前記測定用光を検出する検出手段と、
前記検出手段が検出した複数の光ビームと穴周縁部との交点の位置座標を用いて前記光ビームの垂直2等分線を求め、前記穴と交差しない複数の光ビームと前記垂直2等分線との交点の位置座標と、前記光ビームの間隔とを用いて前記穴の傾斜角を算出する算出手段とを備えて成ることを特徴とする光学式測定装置。
【請求項2】
前記穴は円形であり、前記算出手段は、下記式に基づいて前記穴の傾斜角を算出することを特徴とする請求項1記載の光学式測定装置。
θX=tan−1((Z6O−Z1O)/(Y6O−Y1O))
θY=tan−1((Z4R−Z4L)/(X4R−X4L))
但し、θXはX軸周りの傾斜角、θYはY軸周りの傾斜角であり、又、Y10、Y60、Z10、Z60は前記穴の両側に位置し前記穴と交差しない2つの光ビームと前記穴の中心を通り前記2つの光ビームに直交する線との交点のY座標及びZ座標であり、又、X4R、Z4R、X4L、Z4Lは前記光ビームと前記穴周縁部との間の2つの交点のX座標、Z座標である。
【請求項3】
前記算出手段は、前記検出手段が検出した複数の光ビームと穴周縁部との交点の位置座標を用いて前記穴の中心の位置座標を算出することを特徴とする請求項1又は2記載の光学式測定装置。
【請求項4】
前記算出手段は、前記検出手段が検出した複数の光ビームと穴周縁部との交点の位置座標を用いて前記穴の径を算出することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一に記載の光学式測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−145101(P2010−145101A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−319336(P2008−319336)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【出願人】(391030077)株式会社ソアテック (30)
【Fターム(参考)】