説明

光学系、光学装置、光ピックアップおよび光ディスク装置

【課題】レーザ素子の温度変化によりレーザ光の波長が変動した場合にも、回折素子とレーザ素子との距離にかかわらず、レーザ光の回折角度が変動するのを抑制することが可能な光学系、光学装置、光ピックアップおよび光ディスク装置を提供する。
【解決手段】この光学系(光ピックアップ装置100)は、半導体レーザ素子1と、透過型ホログラム素子3と、透過型ホログラム素子3を加熱するヒータ30とを備え、半導体レーザ素子1に流れる電流に基づいてヒータ30の温度を制御するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学系、光学装置、光ピックアップおよび光ディスク装置に関し、特に、レーザ素子と回折素子とを備えた光学系、光学装置、光ピックアップおよび光ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ素子と回折素子とを備えた、光ディスク装置などに用いる光学系において、温度変化によりレーザ光の発振波長が変動し、その結果、回折格子(回折素子)によるレーザ光の回折角度が変動してしまうという不都合が知られている。このような不都合を解消するために、レーザ光の発振波長の変動に応じた適当な線膨張係数(熱膨張係数)を有する回折格子を備えた光学系が知られている(たとえば、特許文献1および2参照)。
【0003】
上記特許文献1に記載の光ピックアップ(光学系)では、半導体レーザの温度が変動する場合に、レーザ光の波長の変化率と同程度の値の変化率で、回折格子が膨張・収縮するように構成されている。これにより、レーザ光の波長および回折格子は、実質的に相似形状で変化されるので、回折角度が実質的に変動されずにレーザ光を回折することが可能となる。なお、この回折格子は、半導体レーザの温度により変動する雰囲気温度によって膨張・収縮されるように構成されている。
【0004】
また、上記特許文献2に記載の半導体レーザ光源(光学系)では、レンズ(回折格子)が半導体レーザの近傍に設けられるとともに、半導体レーザおよびレンズがキャップで覆われることによって、半導体レーザの温度とレンズの温度とが半導体レーザの熱により実質的に同じになるように構成されている。これにより、レーザ光の波長の変化率と実質的に同じ線膨張係数のレンズを用いれば、半導体レーザの熱によりレーザ光の波長が変動した場合に、レンズも半導体レーザの熱により同じ変化率で膨張・収縮されるので、レーザ光の波長およびレンズは実質的に相似形状で変化される。その結果、回折角度が実質的に変動されずにレーザ光を回折することが可能となる。
【0005】
【特許文献1】特開2002−116314号公報
【特許文献2】特開平1−786号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の光ピックアップ、および、上記特許文献2に記載の半導体レーザ光源では、回折格子(レンズ)を半導体レーザの温度変化によって膨張・収縮させる構成であるので、半導体レーザの熱が回折格子に伝わらないほど回折格子(レンズ)と半導体レーザとの距離が大きい場合には、半導体レーザの温度変化によっては回折格子(回折素子)を膨張・収縮させることができない。この場合には、半導体レーザの温度変化によりレーザ光の波長が変動した場合に、レーザ光の回折角度が変動してしまうという問題点がある。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、レーザ素子の温度変化によりレーザ光の波長が変動した場合にも、回折素子とレーザ素子との距離にかかわらず、レーザ光の回折角度が変動するのを抑制することが可能な光学系、光学装置、光ピックアップおよび光ディスク装置を提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面による光学系は、レーザ素子と、回折素子と、回折素子を加熱するヒータとを備え、レーザ素子に流れる電流に基づいてヒータの温度を制御するように構成されている。
【0009】
この発明の第1の局面による光学系では、上記のように、回折素子を加熱するヒータを設け、レーザ素子に流れる電流に基づいてヒータの温度を制御するように構成することによって、電流の変動に起因して変動するレーザ素子の温度に応じてヒータの温度を調整することができるので、回折素子とレーザ素子との距離にかかわらず、レーザ素子の温度に応じて回折素子の温度を変動させることができる。これにより、レーザ素子の温度に応じて回折素子が膨張・収縮されるので、容易に、レーザ光の波長および回折素子を実質的に相似形状で変化させることができる。その結果、レーザ素子の温度変化によりレーザ光の波長が変動した場合に、回折素子とレーザ素子との距離にかかわらず、レーザ光の回折角度が変動するのを抑制することができる。
【0010】
上記第1の局面による光学系において、好ましくは、レーザ素子とヒータとは、電気的に直列接続されている。このように構成すれば、ヒータに流れる電流値が、レーザ素子に流れる電流値と同じになるので、より正確にヒータの温度をレーザ素子の温度に応じた温度に制御することができる。
【0011】
上記第1の局面による光学系において、好ましくは、回折素子は、シリコーンゴムのようなシリコーン樹脂からなる。このように構成すれば、回折素子の線膨張係数を約1.5×10−4/℃から約4.0×10−4/℃の範囲で設定することができるので、レーザ光の線膨張係数(たとえば、赤色レーザの場合には約2.3×10−4/℃であり、赤外レーザの場合には約3.2×10−4/℃である)に近似させることができる。これにより、回折素子の温度がレーザ素子の温度と実質的に同じになるようにヒータの温度を調整すれば、レーザ光の波長および回折素子が実質的に相似形状で変化されるので、容易に、レーザ光の回折角度が変動するのを抑制することができる。
【0012】
上記第1の局面による光学系において、好ましくは、ヒータは、回折素子の光透過領域の周囲に設けられている。このように構成すれば、回折素子の光透過領域を縮小することなくヒータを設けることができるので、レーザ光の透過量を低下させることなくヒータにより回折素子を加熱することができる。また、ヒータを周囲に設けることにより、回折格子の温度分布を均一化することができる。
【0013】
上記第1の局面による光学系において、好ましくは、ヒータは、導電性ゴムからなる。このように構成すれば、ヒータは弾性変形可能となるので、回折素子の膨張・収縮に起因してヒータが膨張・収縮を繰り返した場合にも、ヒータ自体のクラックや回折格子に対する剥離が生じるのを抑制することができる。
【0014】
上記第1の局面による光学系において、好ましくは、材質および寸法が略等しく、回折素子を支持する弾性変形可能な複数の支持部材をさらに備え、複数の支持部材は、回折素子の中心に対して略均等に配置されている。このように構成すれば、回折素子の膨張・収縮による影響が複数の支持部材に均等に分配されるとともに、複数の支持部材は同様に膨張・収縮される。これにより、回折素子が膨張・収縮する場合に、回折素子の中心位置がずれるのが抑制されるので、回折素子を透過するレーザ光の光軸ずれが生じるのを抑制することができる。
【0015】
上記第1の局面による光学系において、好ましくは、グレーティング素子からなる集光レンズと、集光レンズを加熱するレンズヒータとをさらに備え、レーザ素子に流れる電流に基づいて、レンズヒータの温度を制御するように構成されている。このように構成すれば、電流の変動に起因して変動するレーザ素子の温度に応じてレンズヒータの温度を調整することができるので、レーザ素子の温度に応じて集光レンズの温度を変動させることができる。これにより、レーザ素子の温度に応じて集光レンズが膨張・収縮されるので、容易に、レーザ光の波長および集光レンズを実質的に相似形状で変化させることができる。その結果、レーザ素子の温度変化によりレーザ光の波長が変動した場合に、集光レンズを透過するレーザ光の光軸がずれるのを抑制することができる。また、グレーティング素子からなる集光レンズを設けることによって、集光レンズの厚みを、たとえば凸レンズなどに比べて小さくすることができるので、光学系全体を小型化することができる。
【0016】
この発明の第2の局面による光学装置は、レーザ素子と、回折素子と、回折素子を加熱するヒータとを備え、レーザ素子に流れる電流に基づいてヒータの温度を制御するように構成されている。
【0017】
この発明の第2の局面による光学装置では、上記のように、回折素子を加熱するヒータを設け、レーザ素子に流れる電流に基づいてヒータの温度を制御するように構成することによって、電流の変動に起因して変動するレーザ素子の温度に応じてヒータの温度を調整することができるので、回折素子とレーザ素子との距離にかかわらず、レーザ素子の温度に応じて回折素子の温度を変動させることができる。これにより、レーザ素子の温度に応じて回折素子が膨張・収縮されるので、容易に、レーザ光の波長および回折素子を実質的に相似形状で変化させることができる。その結果、レーザ素子の温度変化によりレーザ光の波長が変動した場合に、回折素子とレーザ素子との距離にかかわらず、レーザ光の回折角度が変動するのを抑制することができる。
【0018】
この発明の第3の局面による光ピックアップは、レーザ素子と、回折素子と、回折素子を加熱するヒータとを備え、レーザ素子に流れる電流に基づいてヒータの温度を制御するように構成されている。
【0019】
この発明の第3の局面による光ピックアップでは、上記のように、回折素子を加熱するヒータを設け、レーザ素子に流れる電流に基づいてヒータの温度を制御するように構成することによって、電流の変動に起因して変動するレーザ素子の温度に応じてヒータの温度を調整することができるので、回折素子とレーザ素子との距離にかかわらず、レーザ素子の温度に応じて回折素子の温度を変動させることができる。これにより、レーザ素子の温度に応じて回折素子が膨張・収縮されるので、容易に、レーザ光の波長および回折素子を実質的に相似形状で変化させることができる。その結果、レーザ素子の温度変化によりレーザ光の波長が変動した場合に、回折素子とレーザ素子との距離にかかわらず、レーザ光の回折角度が変動するのを抑制することができる。
【0020】
この発明の第4の局面による光ディスク装置は、レーザ素子と、回折素子と、回折素子を加熱するヒータとを備え、レーザ素子に流れる電流に基づいてヒータの温度を制御するように構成されている。
【0021】
この発明の第4の局面による光ディスク装置では、上記のように、回折素子を加熱するヒータを設け、レーザ素子に流れる電流に基づいてヒータの温度を制御するように構成することによって、電流の変動に起因して変動するレーザ素子の温度に応じてヒータの温度を調整することができるので、回折素子とレーザ素子との距離にかかわらず、レーザ素子の温度に応じて回折素子の温度を変動させることができる。これにより、レーザ素子の温度に応じて回折素子が膨張・収縮されるので、容易に、レーザ光の波長および回折素子を実質的に相似形状で変化させることができる。その結果、レーザ素子の温度変化によりレーザ光の波長が変動した場合に、回折素子とレーザ素子との距離にかかわらず、レーザ光の回折角度が変動するのを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態による光ピックアップ装置の構造を説明するための概略図である。図2は、図1に示した第1実施形態による光ピックアップ装置に用いられる透過型ホログラム素子のホログラム面の平面図である。図3および図4は、図1に示した第1実施形態による光ピックアップ装置に用いられる透過型ホログラム素子近傍の図である。図5〜図11は、図1に示した第1実施形態による光ピックアップ装置の詳細な構造を説明するための図である。図1〜図11を参照して、本発明の第1実施形態による光ピックアップ装置100の構造について説明する。
【0024】
第1実施形態による光ピックアップ装置100は、CD(コンパクトディスク)、DVDなどの記録媒体に用いられる反射型の光ディスク200にレーザ光を集光させるように構成されている。また、光ピックアップ装置100は、非点収差法によるフォーカスサーボおよび3ビーム法によるトラッキングサーボを行うように構成されている。また、光ピックアップ装置100は、図1に示すように、投受光部10と集光レンズ20とを備えている。
【0025】
投受光部10は、半導体レーザ素子1と、透過型の3分割回折格子2と、透過型ホログラム素子3と、光検出部4とを含んでいる。また、投受光部10は、基台5と、取付部6と、ヒートシンク7と、ホルダ8とをさらに含んでいる。なお、半導体レーザ素子1は、本発明の「レーザ素子」の一例であり、透過型ホログラム素子3は、本発明の「回折素子」の一例である。
【0026】
半導体レーザ素子1は、矢印Z方向側にたとえば赤色レーザ光(発振波長が約660nm)を出射するように構成されている。また、半導体レーザ素子1は、ヒートシンク7を介して取付部6に取り付けられている。そして、取付部6は、基台5の矢印Z方向側の表面に取り付けられている。また、半導体レーザ素子1、光検出部4、取付部6およびヒートシンク7は、基台5に取り付けられたホルダ8の内側に収容されるように配置されている。また、ホルダ8の半導体レーザ素子1に対向する位置には、開口部8aが設けられている。
【0027】
3分割回折格子2は、ホルダ8に形成された開口部8aを塞ぐようにホルダ8の内部側に取り付けられている。また、3分割回折格子2は、半導体レーザ素子1から出射されたレーザ光を、実質的に矢印Y方向および矢印Z方向を含む面内で0次回折光束(主光束)、+1次回折光束(副光束)および−1次回折光束(副光束)の3本の光束に分割し、分割した3本の光束を矢印Z方向に設けられた透過型ホログラム素子3に到達させるように構成されている。
【0028】
透過型ホログラム素子3は、3分割回折格子2と集光レンズ20との間に設けられている。また、透過型ホログラム素子3は、図2および図3に示すように、円形状に形成され、非対称なパターンのホログラム面3aを有している。また、図1および図3に示すように、透過型ホログラム素子3の光透過領域の周囲を取り囲むように、ヒータ30が設けられている。そして、透過型ホログラム素子3は、図3に示すように、2つの支持部材40により、筐体300の所定位置に取り付けられている。
【0029】
また、透過型ホログラム素子3は、3分割回折格子2により分割された主光束および2本の副光束をそれぞれ透過するように構成されている。また、透過型ホログラム素子3は、光ディスク200で反射された主光束および2本の副光束の計3本の帰還光束を、実質的に矢印X方向および矢印Z方向を含む面内で回折し、光検出部4に集光させるように構成されている。
【0030】
また、透過型ホログラム素子3は、たとえばシリコーンゴムのようなシリコーン樹脂により構成されている。これにより、赤色レーザ光(発振波長が約660nm)の熱による伸縮係数と、透過型ホログラム素子3の線膨張係数とを実質的に同じ値にすることが可能となる。具体的には、半導体レーザ素子1から出射されるレーザ光は赤色レーザであるので、発振波長が約660(nm)であり、発振波長の変化率が約0.15(nm/℃)である。したがって、伸縮係数は0.15(nm/℃)/660(nm)=2.3×10−4(/℃)であるので、透過型ホログラム素子3の線膨張係数を、レーザ光の伸縮係数と実質的に同じにすることが可能となる。なお、シリコーン樹脂の線膨張係数は、約1.5×10−4/℃から約4.0×10−4/℃である。
【0031】
ここで、第1実施形態では、ヒータ30は、図5に示すように、配線30a(図3および図4参照)により半導体レーザ素子1と電気的に直列接続されている。また、ヒータ30は、シリコーン樹脂に導電性粒子が混入された導電性のゴム材により構成されている。ここで、ヒータに用いられるシリコーン樹脂は、線膨張係数が透過型ホログラム素子に使用したシリコーン樹脂の線膨張係数と同程度かそれ以上のゴム状のものを使用することが好ましい。これにより、透過型ホログラム素子3の膨張・収縮に起因してヒータ30が膨張・収縮を繰り返した場合にも、ヒータ30自体のクラックや透過型ホログラム素子3に対する剥離が生じるのを抑制することが可能である。また、ヒータ30の電気抵抗値(Ω)は、ヒータ30の上昇温度が半導体レーザ素子1の上昇温度と実質的に同じになるように設定されている。また、透過型ホログラム素子3は、周囲に設けられたヒータ30により熱提供を受けるので、ヒータ30の上昇温度と実質的に同じ上昇温度になる。
【0032】
また、半導体レーザ素子1およびヒータ30それぞれの発熱量(W)と温度(℃)との関係を説明する。まず、半導体レーザ素子1の発熱量(W)と温度(℃)との関係については、図6に示すように、半導体レーザ素子1の発熱量(W)が増加するのに伴って、半導体レーザ素子1の温度(℃)が上昇する。そして、発熱量(W)が所定の発振閾値を超えた場合には、半導体レーザ素子1からレーザ光が出射されるので、発振閾値以上の発熱量(W)においては、全体の熱量(W)からレーザ光の出力分が差し引かれた熱量(W)が、半導体レーザ素子1の温度(℃)に寄与する。したがって、発熱量が発振閾値よりも小さい領域においては、グラフの傾きは[レーザ温度(℃)の変化量]/[(IOP×VLD)の変化量]であり、発熱量が発振閾値以上の領域においては、グラフの傾きは[レーザ温度(℃)の変化量]/[(IOP×VLD−光出力)の変化量]である。なお、IOPは、半導体レーザ素子1およびヒータ30を流れる電流値(A)であり、VLDは、半導体レーザ素子1での電圧(V)である。
【0033】
ヒータ30の発熱量(W)と温度(℃)との関係については、図7に示すように、ヒータ30の発熱量(W)が増加するのに伴って、ヒータ30の温度(℃)が上昇する。また、グラフの傾きは[ヒータ温度(℃)の変化量]/[(IOP×V)の変化量]である。なお、Vは、ヒータ30での電圧(V)である。また、第1実施形態においては、半導体レーザ素子1の温度とヒータ30の温度とを実質的に同じになるように構成するので、図6に示す半導体レーザ素子1の再生時の温度と、図7に示すヒータ30の再生時の温度とは実質的に同じであり、記録時の温度についても実質的に同じである。
【0034】
ここで、透過型ホログラム素子3の上昇温度と半導体レーザ素子1の上昇温度とを実質的に同じにするための調整方法の一例について説明する。まず、半導体レーザ素子1の特性を以下の表1に示す。具体的には、表1には、レーザ光発振開始時、光ディスク200の再生時および光ディスク200の記録時の各状態における、光出力(W)、動作電流IOP(mA)、動作電圧VLD(V)、発熱(W)、熱抵抗(℃/W)および上昇温度(℃)を示している。また、上記のように、半導体レーザ素子1から出射される赤色レーザのレーザ光の伸縮係数は0.15(nm/℃)/660(nm)=2.3×10−4(/℃)である。
【0035】
【表1】

次に、シリコーン樹脂に混入する導電性粒子の量を調整し、ヒータ30の抵抗値を1(Ω)に設定する。そして、透過型ホログラム素子3の支持部材40の断面積および接着部40aのエポキシ系接着剤、または、アクリル系接着剤の塗布量を調整することによって、以下の表2に示すように、ヒータ30から加熱される透過型ホログラム素子3の上昇温度(℃)を半導体レーザ素子1の上昇温度(℃)と実質的に同じになるように調整する。具体的には、支持部材40および接着部40aの熱抵抗を250(℃/W)に調整すれば、再生時および記録時の透過型ホログラム素子3の上昇温度をそれぞれ0.5(℃)および27.7(℃)にすることが可能である。これにより、図8に示すように、半導体レーザ素子1の上昇温度と、透過型ホログラム素子3の上昇温度とは実質的に同じになる。なお、ここでは、ヒータ30により透過型ホログラム素子3に供給される熱のうち、ほとんどすべての熱が支持部材40および接着部40aを経て筐体300へ放熱されると仮定している。
【0036】
【表2】

ここで、透過型ホログラム素子3によるレーザ光の回折について説明する。半導体レーザ素子1から出射されるレーザ光の波長は、半導体レーザ素子1の温度の変動によって変動される。具体的には、半導体レーザ素子1の温度が上昇すれば、レーザ光の波長は長波長化される。このため、図9に示すように、レーザ光が長波長化された場合には、透過型ホログラム素子3による回折角度が、長波長化される前の回折角度に対して所定角度αだけ変動してしまう。
【0037】
ここで、第1実施形態では、半導体レーザ素子1の上昇温度と透過型ホログラム素子3の上昇温度とを実質的に同じにするとともに、レーザ光の熱による伸縮係数と実質的に同じ値の線膨張係数を有するシリコーン樹脂からなる透過型ホログラム素子3を用いるので、レーザ光が長波長化した場合には、透過型ホログラム素子3もヒータ30からの熱の供給により同程度だけ膨張される。すなわち、図10に示すように、レーザ光の波長および透過型ホログラム素子3が実質的に相似形状で変化されるので、透過型ホログラム素子3によるレーザ光の回折角度は実質的に変動されない。
【0038】
光検出部4は、図11に示すように、光検出部4の中央部に設けられた4分割光検出部4aと、4分割光検出部4aの両側に設けられた2つの光検出部4bとを含んでいる。4分割光検出部4aは、非点収差法を用いたフォーカスサーボを行うために設けられている。また、4分割光検出部4aは、2本の互いに直交する分割線により均等な面積に4分割されている。一方の分割線は、光ディスク200の半径方向(矢印X方向)に実質的に平行に配置され、他方の分割線は、光ディスク200のトラック方向(矢印Y方向)に実質的に平行に配置されている。また、4分割光検出部4aは、透過型ホログラム素子3により回折された主光束の帰還光束が集光される位置に配置されている。2つの光検出部4bは、透過型ホログラム素子3により回折された2つの副光束の帰還光束がそれぞれ集光される位置に配置されている。
【0039】
集光レンズ20は、凸レンズである。また、集光レンズ20は、トラッキングサーボのために光ディスク200の半径方向(矢印X方向)に移動可能に構成されている。また、集光レンズ20は、フォーカスサーボのために矢印Z方向にも移動可能に構成されている。また、集光レンズ20は、透過型ホログラム素子3を透過した主光束を光ディスク200上に主スポットとして集光するとともに、2本の副光束を光ディスク200上に副スポットとして集光するように構成されている。
【0040】
支持部材40は、弾性変形可能なポリマー(重合体)、たとえばシリコーン樹脂により構成されている。また、図3に示すように、支持部材40は、長方形状に形成されており、支持部材40の断面積、長さおよび体積は、それぞれ、所望する支持部材40の熱抵抗値により調整される。たとえば、熱抵抗値を小さくする場合には、支持部材40の断面積が大きく、または長さが短くされる。なお、第1実施形態では、半導体レーザ素子1の上昇温度とヒータ30の上昇温度とが実質的に同じになるように、半導体レーザ素子1の熱抵抗値および電気抵抗値と、ヒータ30の電気抵抗値との関係において、支持部材40の熱抵抗は、適当な値に調整される。また、2つの支持部材40は、材質および寸法(断面積、長さおよび体積を含む)が実質的に同じになるように構成されている。また、2つの支持部材40は、円形状の透過型ホログラム素子3の中心に対して対称に配置されている。これにより、透過型ホログラム素子3が膨張・収縮する場合に、その変動による影響が2つの支持部材40に均等に分配されるとともに、各支持部材40の体積は同様に変動される。これにより、透過型ホログラム素子3の中心がずれるのが抑制されるので、透過型ホログラム素子3を透過するレーザ光の光軸ずれが生じるのを抑制することが可能である。また、透過型ホログラム素子3の温度分布を均一化することが可能である。また、支持部材40は、長方形状の四隅の接着部40aで、透過型ホログラム素子3および筐体300にエポキシ系接着剤、または、アクリル系接着剤により取り付けられている。
【0041】
第1実施形態では、上記のように、透過型ホログラム素子3を加熱するヒータ30を設け、ヒータ30を半導体レーザ素子1と電気的に直列接続することによって、電流の変動に起因して変動する半導体レーザ素子1の温度に応じてヒータ30の温度が変動されるので、半導体レーザ素子1の温度に応じて透過型ホログラム素子3の温度も変動される。これにより、半導体レーザ素子1の温度に応じて透過型ホログラム素子3が膨張・収縮されるので、容易に、レーザ光の波長および透過型ホログラム素子3を実質的に相似形状で変化させることができる。その結果、半導体レーザ素子1の温度変化によりレーザ光の波長が変動した場合に、透過型ホログラム素子3と半導体レーザ素子1との距離にかかわらず、レーザ光の回折角度が変動するのを抑制することができる。
【0042】
また、第1実施形態では、ヒータ30を、透過型ホログラム素子3の光透過領域の周囲に設けることによって、透過型ホログラム素子3の光透過領域が小さくなるのを防止することができる。その結果、レーザ光の透過量を低下させることなくヒータ30により透過型ホログラム素子3を加熱することができる。また、ヒータ30を周囲に設けることによって、透過型ホログラム素子3の温度分布を均一化することができる。
【0043】
(第2実施形態)
図12は、本発明の第2実施形態による反射型レーザセンサ装置の構造を説明するための概略図である。図13は、図12に示した第2実施形態による反射型レーザセンサ装置に用いられるグレーティング素子を示した平面図である。図12および図13を参照して、この第2実施形態では、上記第1実施形態と異なり、グレーティング素子403を備えた反射型レーザセンサ装置400について説明する。
【0044】
第2実施形態による反射型レーザセンサ装置400は、半導体レーザ素子401と、コリメータレンズ402と、グレーティング素子403と、3つのセンサ404とを備えている。なお、グレーティング素子403は、本発明の「回折素子」の一例である。
【0045】
半導体レーザ素子401は、3つのセンサ404側に赤色レーザ光(発振波長が約660nm)を出射するように構成されている。コリメータレンズ402は、半導体レーザ素子401とグレーティング素子403との間に設けられている。また、コリメータレンズ402は、半導体レーザ素子401から出射されたレーザ光を平行光にするように構成されている。
【0046】
グレーティング素子403は、コリメータレンズ402と3つのセンサ404との間に設けられている。また、グレーティング素子403は、所定の幅(約12.5μm)で形成された複数の溝部403aを含んでいる。この溝部403aにより、グレーティング素子403は、コリメータレンズ402により集光されたレーザ光を、0次回折光束(主光束)、+1次回折光束(副光束)および−1次回折光束(副光束)の3本の光束に分割することが可能である。また、グレーティング素子403は、分割した3本の光束をそれぞれ3つのセンサ404に到達させるように構成されている。
【0047】
ここで、第2実施形態では、グレーティング素子403は、シリコーン樹脂により構成されている。これにより、赤色レーザ光(発振波長が約660nm)の熱による伸縮係数と、グレーティング素子403の線膨張係数とを実質的に同じ値にすることが可能である。また、グレーティング素子403の光透過領域の周囲には、ヒータ30が設けられている。また、図13に示すように、グレーティング素子403は、ヒータ30と筐体300とが2つの支持部材40により接続されることによって支持されている。
【0048】
ヒータ30は、銅線などの配線30a(図13参照)により半導体レーザ素子401と電気的に直列接続されている。また、ヒータ30は、半導体レーザ素子401の上昇温度とヒータ30の上昇温度とが実質的に同じになるように構成されている。
【0049】
なお、第2実施形態のその他の構造は、上記第1実施形態と同様である。
【0050】
第2実施形態では、上記のように、グレーティング素子403を加熱するヒータ30を設け、ヒータ30を半導体レーザ素子401と電気的に直列接続することによって、電流の変動に起因して変動する半導体レーザ素子401の温度に応じてヒータ30の温度が変動されるので、半導体レーザ素子401の温度に応じてグレーティング素子403の温度も変動される。これにより、半導体レーザ素子401の温度に応じてグレーティング素子403が膨張・収縮されるので、レーザ光の波長およびグレーティング素子403を実質的に相似形状で変化させることができる。その結果、半導体レーザ素子401の温度変化によりレーザ光の波長が変動した場合に、グレーティング素子403と半導体レーザ素子401との距離にかかわらず、レーザ光の回折角度が変動するのを抑制することができる。
【0051】
なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0052】
(第3実施形態)
図14は、本発明の第3実施形態による光ピックアップ装置の構造を説明するための概略図である。図15は、図14に示した第3実施形態による光ピックアップ装置に用いられる集光レンズを示した平面図である。図16は、図15の700−700線に沿った断面図である。図14〜図16を参照して、この第3実施形態では、上記第1実施形態と異なり、集光レンズとしてのグレーティングレンズ501を備えた光ピックアップ装置500について説明する。なお、グレーティングレンズ501は、本発明の「集光レンズ」の一例である。
【0053】
第3実施形態による光ピックアップ装置500は、CD(コンパクトディスク)、DVDなどの記録媒体に用いられる反射型の光ディスク200にレーザ光を集光させるように構成されている。また、光ピックアップ装置500は、非点収差法によるフォーカスサーボおよび3ビーム法によるトラッキングサーボを行うように構成されている。また、光ピックアップ装置500は、図14に示すように、投受光部10と集光レンズとしてのグレーティングレンズ501とを備えている。
【0054】
グレーティングレンズ501は、シリコーン樹脂により構成されている。また、グレーティングレンズ501は、トラッキングサーボのために光ディスク200の半径方向(矢印X方向)に移動可能に構成されている。また、グレーティングレンズ501は、フォーカスサーボのために矢印Z方向にも移動可能に構成されている。また、グレーティングレンズ501は、透過型ホログラム素子3を透過した主光束を光ディスク200上に主スポットとして集光するとともに、2本の副光束を光ディスク200上に副スポットとして集光するように構成されている。
【0055】
ここで、第3実施形態では、図15に示すように、グレーティングレンズ501の周囲にレンズ支持を兼ねたレンズヒータ502が設けられている。そして、レンズヒータ502の両側には、フォーカスサーボ、トラッキングサーボを行うアクチュエータの一部としてコイル部503が取り付けられている。そして、グレーティングレンズ501、レンズヒータ502およびコイル部503によりレンズ可動部504が形成されている。レンズ可動部504は、2個の磁石505の間にワイヤー506で張られて浮いた状態になり、フォーカス、トラッキングを制御するアクチュエータを構成している。ここで、レンズヒータ502は、配線502aにより半導体レーザ素子1およびヒータ30と電気的に直列接続されている。また、レンズヒータ502は、ヒータ30と同様に、シリコーン樹脂に導電性粒子が混入された導電性のゴム材により構成されている。これにより、グレーティングレンズ501の膨張・収縮に起因してレンズヒータ502が膨張・収縮を繰り返した場合にも、レンズヒータ502自体のクラックやグレーティングレンズ501に対する剥離が生じるのを抑制することが可能である。また、レンズヒータ502に用いられるシリコーン樹脂は、線膨張係数がグレーティングレンズ501に使用したシリコーン樹脂の線膨張係数と同じかまたはそれ以上の、よりゴム状に近いものを使用することが好ましい。また、レンズヒータ502の電気抵抗値(Ω)は、グレーティングレンズ501の上昇温度が半導体レーザ素子1の上昇温度および透過型ホログラム素子3の上昇温度と実質的に同じになるように設定されている。
【0056】
レンズ可動部504から発生した熱の放熱は、放熱用金属箔507により行う。放熱用金属箔507は、レンズヒータ502と筐体300とを接続し、熱は放熱用金属箔507を経て筐体300へ放熱される。また、放熱用金属箔507を用いているので、レンズ可動部504を動かしながら放熱することが可能である。このような放熱用金属箔507は、熱伝導が良好な材料から構成することが好ましく、熱伝導および価格の点からアルミニウム箔が好ましい。また、グレーティング501を挟んで対称な位置に同じ形状の放熱用金属箔507を設けることが好ましい。このように構成すれば、グレーティングレンズ501の放熱に偏りが生じることを抑制することが可能であるので、レンズ501の温度分布を均一化することが可能となる。
【0057】
なお、第3実施形態のその他の構造は、上記第1実施形態と同様である。
【0058】
第3実施形態では、上記のように、グレーティングレンズ501と、グレーティングレンズ501を加熱するレンズヒータ502とを設け、レンズヒータ502を、半導体レーザ素子1およびヒータ30と電気的に直列接続することによって、電流の変動に起因して変動する半導体レーザ素子1の温度に応じてレンズヒータ502の温度が変動されるので、半導体レーザ素子1の温度に応じてグレーティングレンズ501の温度も変動される。これにより、半導体レーザ素子1の温度に応じてグレーティングレンズ501が膨張・収縮されるので、容易に、レーザ光の波長およびグレーティングレンズ501を実質的に相似形状で変化させることができる。その結果、半導体レーザ素子1の温度変化によりレーザ光の波長が変動した場合に、グレーティングレンズ501を透過するレーザ光の光軸がずれるのを抑制することができる。また、集光レンズとしてグレーティングレンズ501を設けることによって、集光レンズの厚みを、たとえば凸レンズなどに比べて小さくすることができるので、光学系全体を小型化することができる。
【0059】
なお、第3実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0060】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0061】
たとえば、上記第1〜第3実施形態では、赤色レーザを出射する半導体レーザ素子を設ける例を示したが、本発明はこれに限らず、赤外レーザや青色レーザなど他のレーザ光を出射する半導体レーザ素子を設けてもよい。
【0062】
また、上記第1〜第3実施形態では、長方形状の支持部材を設ける例を示したが、本発明はこれに限らず、図17に示すように、V型形状に切り欠きを有する支持部材800を設けてもよい。具体的には、支持部材800は、切り欠き側が透過型ホログラム素子3に当接されるように設けられている。これにより、透過型ホログラム素子3が膨張・収縮した場合にも、V型形状の切り欠きにより、透過型ホログラム素子3が位置ずれするのを抑制することが可能である。また、支持部材800は、四隅の接着部800aで、透過型ホログラム素子3および筐体300にエポキシ系接着剤、または、アクリル系接着剤により取り付けられている。
【0063】
また、上記第1〜第3実施形態では、ヒータを半導体レーザ素子に電気的に直列接続する構成の例を示したが、本発明はこれに限らず、ヒータが半導体レーザ素子に電気的に接続されていなくても、半導体レーザ素子に流れる電流に応じてヒータの温度が制御される構成であれば、他の構成であってもよい。たとえば、半導体レーザ素子に流れる電流を検知するセンサを設け、センサの検知結果に基づいて、ヒータに流れる電流を制御してもよい。
【0064】
また、上記第1〜第3実施形態では、半導体レーザ素子の上昇温度とヒータの上昇温度とが実質的に同じになるように構成する例を示したが、本発明はこれに限らず、半導体レーザ素子の上昇温度とヒータの上昇温度とが異なるように構成してもよい。この場合には、レーザ光の伸縮係数と透過型ホログラム素子またはグレーティング素子の線膨張係数とを異なる値とし、レーザ光における波長の変化率と、透過型ホログラム素子またはグレーティング素子における回折格子周期の変化率とを実質的に同じにする。すなわち、レーザ光における波長の変化率と、透過型ホログラム素子またはグレーティング素子における回折格子周期の変化率とが実質的に同じであれば、半導体レーザ素子の上昇温度とヒータの上昇温度とが異なるように構成してもよい。
【0065】
ここで、半導体レーザ素子が赤外レーザを出射するように構成するとともに、半導体レーザ素子のレーザ光の伸縮係数と透過型ホログラム素子の線膨張係数とが異なるように構成した場合の、透過型ホログラム素子の上昇温度と半導体レーザ素子の上昇温度とを調整する方法の一例について説明する。まず、半導体レーザ素子の特性を以下の表3に示す。具体的には、表3には、発振閾値、光ディスク200の再生時および光ディスクの記録時の各状態における、光出力(W)、動作電流IOP(mA)、動作電圧VLD(V)、発熱(W)、熱抵抗(℃/W)および上昇温度(℃)を示している。また、半導体レーザ素子から出射される赤外レーザのレーザ光の伸縮係数は3.2×10−4(/℃)である。
【0066】
【表3】

次に、シリコーン樹脂に混入する導電性粒子の量を調整し、ヒータ30の抵抗値を1(Ω)に設定する。また、線膨張係数が3.9×10−4(/℃)の透過型ホログラム素子を用いる。この場合、レーザ光の伸縮係数は、透過型ホログラム素子の線膨張係数の0.82(=3.2×10−4/3.9×10−4)倍である。したがって、透過型ホログラム素子の上昇温度を、再生時および記録時における半導体レーザ素子の上昇温度の0.82倍に調整すれば、レーザ光における波長の変化率と、透過型ホログラム素子またはグレーティング素子における回折格子周期の変化率とを実質的に同じにすることが可能である。そこで、透過型ホログラム素子の支持部材の断面積および接着部のエポキシ系接着剤、または、アクリル系接着剤の塗布量を調整することによって、以下の表4に示すように、ヒータから加熱される透過型ホログラム素子の上昇温度(℃)が半導体レーザ素子の上昇温度の0.82倍になるように調整する。具体的には、支持部材および接着部の熱抵抗を250(℃/W)に調整すれば、再生時および記録時の透過型ホログラム素子の上昇温度をそれぞれ半導体レーザ素子の上昇温度の0.82倍である0.4(℃)および15.6(℃)にすることが可能である。これにより、図18に示すように、半導体レーザ素子の上昇温度と、透過型ホログラム素子の上昇温度とは異なるが、レーザ光の変化率と透過型ホログラム素子の変化率とを実質的に同じにすることが可能となる。なお、ここでは、ヒータにより透過型ホログラム素子に供給される熱のうち、ほとんどすべての熱が支持部材および接着部を経て筐体300へ放熱されると仮定することができる。
【0067】
【表4】

また、上記第1〜第3実施形態では、2つの支持部材を設ける例を示したが、本発明はこれに限らず、透過型ホログラム素子またはグレーティング素子の中心に対して実質的に均等に配置すれば、3つ以上の支持部材を設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の第1実施形態による光ピックアップ装置の構造を説明するための概略図である。
【図2】図1に示した第1実施形態による光ピックアップ装置に用いられる透過型ホログラム素子のホログラム面の平面図である。
【図3】図1に示した第1実施形態による光ピックアップ装置に用いられる透過型ホログラム素子近傍の図である。
【図4】図3の600−600線に沿った断面図である。
【図5】図1に示した第1実施形態による光ピックアップ装置に用いられるヒータの電気的な接続を説明するための図である。
【図6】図1に示した第1実施形態による光ピックアップ装置に用いられる半導体レーザ素子の発熱量と温度との関係を示した図である。
【図7】図1に示した第1実施形態による光ピックアップ装置に用いられるヒータの発熱量と温度との関係を示した図である。
【図8】図1に示した第1実施形態による光ピックアップ装置に用いられる透過型ホログラム素子の上昇温度の調整方法を説明するための図である。
【図9】図1に示した第1実施形態による光ピックアップ装置において、レーザ光の波長の変化率と透過型ホログラム素子の変化率とが異なる場合のレーザ光の回折を示した図である。
【図10】図1に示した第1実施形態による光ピックアップ装置において、レーザ光の波長の変化率と透過型ホログラム素子の変化率とが同じ場合のレーザ光の回折を示した図である。
【図11】図1に示した第1実施形態による光ピックアップ装置に用いられる光検出部を示した図である。
【図12】本発明の第2実施形態による反射型レーザセンサ装置の構造を説明するための概略図である。
【図13】図12に示した第2実施形態による反射型レーザセンサ装置に用いられるグレーティング素子を示した平面図である。
【図14】本発明の第3実施形態による光ピックアップ装置の構造を説明するための概略図である。
【図15】図14に示した第3実施形態による光ピックアップ装置に用いられる集光レンズを示した平面図である。
【図16】図15の700−700線に沿った断面図である。
【図17】図1に示した第1実施形態による光ピックアップ装置の変形例を示した図である。
【図18】図1に示した第1実施形態による光ピックアップ装置の変形例を示した図である。
【符号の説明】
【0069】
1、401 半導体レーザ素子(レーザ素子)
3 透過型ホログラム素子(回折素子)
30 ヒータ
40、800 支持部材
100、500 光ピックアップ装置(光学系、光学装置、光ディスク装置)
400 反射型レーザセンサ装置(光学系、光学装置)
403 グレーティング素子(回折素子)
501 グレーティングレンズ(集光レンズ)
502 レンズヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ素子と、
回折素子と、
前記回折素子を加熱するヒータとを備え、
前記レーザ素子に流れる電流に基づいて前記ヒータの温度を制御するように構成されている、光学系。
【請求項2】
前記レーザ素子と前記ヒータとは、電気的に直列接続されている、請求項1に記載の光学系。
【請求項3】
前記回折素子は、シリコーン樹脂からなる、請求項1または2に記載の光学系。
【請求項4】
前記ヒータは、前記回折素子の光透過領域の周囲に設けられている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学系。
【請求項5】
前記ヒータは、導電性ゴムからなる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学系。
【請求項6】
材質および寸法が略等しく、前記回折素子を支持する弾性変形可能な複数の支持部材をさらに備え、
前記複数の支持部材は、前記回折素子の中心に対して略均等に配置されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学系。
【請求項7】
グレーティング素子からなる集光レンズと、
前記集光レンズを加熱するレンズヒータとをさらに備え、
前記レーザ素子に流れる電流に基づいて、前記レンズヒータの温度を制御するように構成されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の光学系。
【請求項8】
レーザ素子と、
回折素子と、
前記回折素子を加熱するヒータとを備え、
前記レーザ素子に流れる電流に基づいて前記ヒータの温度を制御するように構成されている、光学装置。
【請求項9】
レーザ素子と、
回折素子と、
前記回折素子を加熱するヒータとを備え、
前記レーザ素子に流れる電流に基づいて前記ヒータの温度を制御するように構成されている、光ピックアップ。
【請求項10】
レーザ素子と、
回折素子と、
前記回折素子を加熱するヒータとを備え、
前記レーザ素子に流れる電流に基づいて前記ヒータの温度を制御するように構成されている、光ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−157993(P2009−157993A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−333835(P2007−333835)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】