説明

光学素子及びそれを有する光学系

【課題】 広い波長領域でかつ広い入射角範囲において、良い反射防止機能を有し、光学系に用いたときフレアやゴーストの発生が少ない光学素子及びそれを有する光学系を得ること。
【解決手段】 可視域を含む使用波長領域で反射防止機能を有する光学素子であって、該使用波長領域は、最長波長λHが最短波長λLに比べて2倍以上となる範囲であり、該光学素子は基板の光入出射面の少なくとも一方の面に、平均ピッチが最短波長λL以下の微細凹凸構造体が最外層となるように構成された反射防止構造体を備え、微細凹凸構造体の平均ピッチP、微細凹凸構造体を形成している材料の屈折率n1、微細凹凸構造体の平均高さh、空気側から微細凹凸構造体へ入射する光束の入射角θ等を適切に設定したこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学素子及びそれを有する光学系に関する。例えばレンズ面(光学部材)の表面(光入出射面)に反射防止機能を有する微細凹凸構造体を有する反射防止構造体(反射防止層)を設け、反射防止を効果的に行った光学素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス、プラスチックなどの透光性媒質(透光性部材)を用いたレンズ(光学分材)においては、表面反射による透過光の損失を低減するために光入出射面に反射防止構造体が設けられている。
【0003】
例えば可視光に対する反射防止構造体として、誘電体多層膜が知られている。この多層膜は、透光性の基板表面に例えば真空蒸着により金属酸化物等の薄膜を成膜して形成されている。
【0004】
光学部材に形成される一般的な反射防止膜は、光線入射角が0度で、使用する波長域が比較的狭い波長領域で優れた反射防止効果を有する設計がされている。これに対して、近年、広い波長領域で使用する光学系や光学素子への光線入射角が大きくなる光学系が多く使用されるようになってきた。
【0005】
例えば、デジタルカメラやビデオカメラなどの光学系においては、口径の大きなレンズや曲率半径の小さな面を有するレンズが多く使用されるようになってきている。
【0006】
このようなレンズを光学系に用いるとレンズ周辺部では光線が大きな角度で入射する場合がある。
【0007】
一般に光束のレンズ面への入射角が広範囲となると反射を広い波長領域において十分抑制することが難しくなり、ゴーストやフレアなどの有害光が発生する原因となってくる。
【0008】
このため、広い波長領域に対して優れた反射防止機能を有し、且つ光束の入射角度特性の良い、反射防止構造体が望まれている。
【0009】
広い波長領域で、かつ入射角度特性の良い反射防止構造体としては、可視光の波長よりも短いピッチの微細凹凸構造体が知られている(特許文献1、2)。
【特許文献1】特開2005−157119号公報
【特許文献2】特開2006−10831号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
微細凹凸構造体をレンズ面に形成すると、比較的広い波長範囲で、入射角度特性の良い反射防止特性を得ることが容易となる。
【0011】
しかしながら、広い波長域で良好なる反射防止機能(波長帯域特性)を得るとともに、広い入射角範囲で良好なる反射防止機能(入射角度特性)を得るためには、微細凹凸構造体の構成を適切に設定することが重要となってくる。
【0012】
例えば光束の入射条件等を考慮して凹凸構造のピッチや形状(高さ)、材質の屈折率等を適切に設定することが重要になってくる。
【0013】
微細凹凸構造体の構成が不適切であると、広い波長領域で、かつ広い入射角範囲において、良好なる反射防止機能が得られず、光学系に用いたときフレアやゴーストが多く発生し、高画質の像を得るのが難しくなってくる。
【0014】
本発明は広い波長領域でかつ広い入射角範囲において、良好な反射防止機能を有し、光学系に用いたときフレアやゴーストの発生が少ない光学素子及びそれを有する光学系を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の光学素子は、可視域を含む使用波長領域で反射防止機能を有する光学素子であって、
該使用波長領域は、該使用波長領域内の最長波長λHが該使用波長領域内の最短波長λLに比べて2倍以上となる範囲であり、
該光学素子は基板の光入出射面の少なくとも一方の面に、平均ピッチが最短波長λL以下の微細凹凸構造体が最外層となるように構成された反射防止構造体を備え、
Pを微細凹凸構造体の平均ピッチ、n1を微細凹凸構造体を形成している材料の屈折率、hを微細凹凸構造体の平均高さ、θを空気側から微細凹凸構造体へ入射する光束の入射角とするとき、
P<λL/(n1+Sinθ)
0.2λL≦h≦0.8λH
なる条件を満足することを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、広い波長領域でかつ広い入射角範囲において、良好な反射防止機能を有し、光学系に用いたときフレアやゴーストの発生が少ない光学素子及びそれを有する光学系が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図を用いて本発明の光学素子及びそれを有する光学系について説明する。
【0018】
本発明の光学素子(レンズ、プリズム、平行平板、フィルター等)は、可視域(波長40nm〜波長700nm)を含む使用波長領域で反射防止機能を有する。
【0019】
使用波長領域は、使用波長領域内の最長波長λHが使用波長領域内の最短波長λLに比べて2倍以上となる範囲である。
【0020】
光学素子は基板の光入出射面の少なくとも一方の面(レンズ面)に、反射防止構造体(反射防止膜)が形成されている。反射防止構造体は、平均ピッチが最短波長λL以下の微細凹凸構造体が最外層となるように構成されている。
【0021】
光学素子の光入出射面の双方に前述した反射防止構造体を設けても良い。
【0022】
図1は、本発明の反射防止構造体を有する光学素子の実施例1の概略構成図である。図1に示す光学素子1は透明部材(光学部材)より成る基板11上に反射防止構造体(反射防止膜)201が形成されている。14は微細凹凸構造体であり、凹凸形状(円錐形状、多角錘形状等を含む)の平均ピッチが使用波長以下である。
【0023】
ここで使用波長とは例えば可視領域(波長400nm〜波長700nm)を含む波長400nm〜波長1100nmの範囲をいう。
【0024】
12、13は薄膜より成る均質層(均質膜)である。301は空気(空気層)である。daは光学素子1の膜厚方向(厚さ方向)を示す。
【0025】
微細凹凸構造体14は最も光入射媒質(空気)側の膜となるように基板11上に設けられている。
【0026】
図2は図1の光学素子1を構成する各部材の膜厚方向daにおける材料の屈折率nを示す屈折率構造の説明図(模式図)である。
【0027】
図2においてn21は基板11の屈折率、n22は均質層12の屈折率、n23は均質層13の屈折率、n24は構造体14の屈折率にそれぞれ対応している。この場合の、微細凹凸構造体14の見かけの屈折率(等価屈折率)は図2の屈折率n24に示す様に膜厚方向daに連続的に変化している。
【0028】
微細凹凸構造体14は均質層13側から空気側へと先細りの構造となっている。このため、屈折率構造的には均質層側(基板側)13から空気301側に向けて徐々に(連続的に)屈折率が低くなる(減少する)ような構成となる。
【0029】
図1の光学素子1では基材11と構造層14の間に微細凹凸構造体14とは異なる材料より成る2つの均質層12,13が挟まれているが、均質層は一層以上形成されていれば良く、例えば3層以上であっても良い。又、均質層は無くても良い。
【0030】
光学素子を構成する反射防止構造体は、入射光に対し、回折・散乱が発生しないことが望ましい。微細凹凸構造体14で回折・散乱が発生しないためには、凹凸構造のピッチを次の如く構成するのが良い。
【0031】
微細凹凸構造体14の平均ピッチ(凸部同士または凹部同士の間隔の平均)をPとする。材料の屈折率をn1、光が空気301から構造体14へ入射するときの入射角をθ、使用領域波長の最短波長をλLとする。
【0032】
このとき、
P<λL/(n1+Sinθ) ・・・(1)
を満足するように構成する。
【0033】
このとき、微細凹凸構造体14は、屈折率が連続的に変化する膜(層)として扱うことができる。
【0034】
ここで、θの値は
0°≦θ<90
の範囲である。
【0035】
微細凹凸構造体14の屈折率構造は膜厚方向daに変化している。このため、微細凹凸構造体14の高さ(平均高さ)hが使用波長領域の最短波長λLと使用波長領域の最長波長λHとする。
【0036】
このとき
0.2λL≦h≦0.8λH ・・・(2)
の範囲に設定するのが望ましい。
【0037】
特に、最長波長λHは赤外の範囲で使用し、波長800nm以上で使用するのが効果的である。
【0038】
さらに微細凹凸構造体14の高さhは
0.4λL≦h≦0.6λH ・・・(2a)
の範囲であると広い波長領域で、かつ広い入射角度に対する反射防止が特に効果的である。
【0039】
この様な良好な範囲内に設定する事により、微細凹凸構造体14内では振幅の小さな反射光が無数に発生し、干渉して打ち消しあう事により、広い波長範囲において良好な反射防止性能(反射防止効果)を得る事が出来る。
【0040】
条件式(2)の下限を越えて微細凹凸構造体14の高さhが使用波長領域の最短波長λLの0.2以下になった場合、反射防止帯域が狭くなってしまう。
【0041】
又、上限を越えて微細凹凸構造体14の高さhが使用波長領域の最長波長λHの0.8以上になった場合、反射防止帯域にリップルが発生してしまう。さらに、散乱の要因ともなってしまい良好な反射防止性能を得るのが困難になる。
【0042】
本実施例に係る反射防止構造体は、入射角が60度において反射率が3%以下となる波長領域が、使用波長領域内に1/2以上存在するような構成より成っている。
【0043】
光学素子1の一部を構成する均質層12、13の作製方法はどのような方法でも良い。例えば、スパッタリング法、蒸着法といったドライ法(真空成膜法)や、ゾル−ゲルコート液を使ったディッピング法、スピンコート法といったウエット法(湿式成膜法)等が適用できる。
【0044】
これらの手法により、予め均質層を形成した後、微細凹凸構造体14を作製する。微細凹凸構造体14の作製方法は、どのような方法でも良い。例えば波長以下の粒径の微粒子を分散した膜を塗布する方法、ゾル−ゲル法を用いた花弁状アルミナの微細凹凸構造体を形成する方法などが適用できる。
【0045】
本実施例の光学素子における均質層の少なくとも1つはジルコニア、シリカ、チタニア、酸化亜鉛のうち少なくとも一種を含むことが好ましい。また、微細凹凸構造体14は、アルミニウム又は酸化アルミニウム等、アルミナを主成分とすることが好ましい。
【0046】
以下、各実施例では、スピンコート法で、均質層および微細凹凸構造体を作製する方法で説明するが、本発明はこの方法により製造した物に限定されない。
【0047】
次に実施例1の光学素子の具体的な構成について説明する。
【実施例1】
【0048】
実施例1において、透明部材11上の反射防止構造体201は透明基板11と微細凹凸構造体14との間に2つの均質層12、13を設け、全体として3層からなる。
【0049】
実施例1において反射防止効果のある波長域、即ち使用波長領域は400nmから1000nmの広い波長領域とした。透明部材11にはd線の屈折率n21が1.805のガラス基板を使用した。
【0050】
透明部材(基板)11側から構成した2層の均質層12、13の屈折率n22、n23は図2から明らかなように屈折率範囲を微細凹凸構造体14の基板11側の屈折率n24aと基板11の屈折率n21の範囲内に構成した。
【0051】
均質層12、13はSiO−TiO塗工液の混合割合を変えることにより、屈折率を調整し、スピンコート法により塗布後、加熱、乾燥を行い、薄膜より成る均質層12、13を形成した。
【0052】
均質層12、13は、基板11側から一層目12に、屈折率n22が1.696で物理的膜厚79nmを形成し、2層目13に屈折率n23が1.504で物理的膜厚74nmの均一層を形成した。
【0053】
最も空気側に配置された微細凹凸構造体14はアルミナを含むゾル−ゲルコート液をスピンコート法で塗布し、ゲル膜を形成した。それを温水に浸漬処理することにより、アルミナを主成分とする板状結晶を析出させ、最表面(空気側)の微細凹凸構造を形成した。
【0054】
この様に形成された微細凹凸構造体14は図2に示すようにガラス基板11側から空気301に向かってなだらかな傾斜を持って連続的に屈折率が変化している。
【0055】
この時、微細凹凸構造体14の基板11側の屈折率はほぼ1.4で空気の屈折率1.0まで連続的に変化している。微細凹凸構造体14の平均的な高さhは266nmである。
【0056】
図3は実施例1の光学素子1の反射率の分光特性の説明図である。図3の分光特性に示すように、波長400nmから波長1000nmの広い波長領域において、光線の入射角度が0度の場合、0.2%以下と高性能な反射防止効果が得られる。さらに光線入射角が60度においても、3%以下の良好な性能を持つ反射防止効果が得られる。
【実施例2】
【0057】
図4は、本発明の反射防止構造体を有する光学素子の実施例2の概略構成図である。
【0058】
図4に示す光学素子2は透明部材より成る基板31上に反射防止構造体202が形成されている。
【0059】
反射防止構造体(反射防止膜)202は、基板31と微細凹凸構造体33との間に均質層32を1層設け、全体として2層からなる。
【0060】
図5は図4の光学素子2を構成する各部材の膜厚方向daにおける材料の屈折率nを示す屈折率構造の説明図(模式図)である。
【0061】
図5において、n41は基板31の屈折率、n42は均質層32の屈折率、n43は微細凹凸構造体33の屈折率にそれぞれ対応している。
【0062】
微細凹凸構造体33は平均ピッチが使用波長領域以下の凹凸構造を有する。微細凹凸構造体33の見かけの屈折率(等価屈折率)は図5に示す様に膜厚方向daに変化している。
【0063】
微細凹凸構造体33の凹凸構造は均質層32側から先細りの形状となっているため、屈折率構造的には均質層32側から空気302側に向けて徐々に屈折率が低くなるような構成となる。
【0064】
本実施例としては、使用波長は波長400nmから波長1000nmの広い波長領域とした。透明部材の基板31にはd線の屈折率が1.516のガラス基板を使用した。基板31上の反射防止膜202は2層構成とした。基板31側から1層は均質層32として屈折率n42の範囲を構造体33の基板11側の屈折率n43aと基材11の屈折率n41の範囲内に構成した。
【0065】
均質層32はSiO−TiO塗工液をスピンコート法により塗布後、加熱、乾燥を行い、薄膜層を形成した。均質層32は、屈折率1.465で物理的膜厚79nmを形成した。
【0066】
微細凹凸構造体33は均質層32の上にアルミナを含むゾル−ゲルコート液をスピンコート法で塗布し、ゲル膜を形成した。それを温水に浸漬処理することにより、アルミナを主成分とする板状結晶を析出させ、最表面(最外層)の微細凹凸構造を形成した。
【0067】
この様に形成された微細凹凸構造体33はガラス基板31側から空気302に向かってなだらかな傾斜を持って連続的に屈折率が変化している。
【0068】
この時、微細凹凸構造体33の基板31側の屈折率はほぼ1.4で空気の屈折率1.0まで連続的に変化しており、構造体33の微細部33aの高さdは362nmである。
【0069】
図6は実施例2の光学素子2の反射率の分光特性の説明図である。
【0070】
図6に示す分光特性より、波長400nmから波長1000nmの広い波長領域において、光線入射角度が0度の場合、0.2%以下と高性能な反射防止効果が得られる。さらに光線入射角が60度においても、2.3%以下の良好な性能を持つ反射防止効果が得られる。
【実施例3】
【0071】
図7は、本発明の反射防止構造体を有する光学素子の実施例3の概略構成図である。
【0072】
図7に示すように、光学素子3は、透明部材より成る基板51上に、反射防止膜として微細凹凸構造体52が直接形成されている。微細凹凸構造体52は平均ピッチが使用波長以下の微細凹凸構造を有する。微細凹凸構造体52は屈折率が膜厚方向daになだらかな傾斜を持って連続的に変化している。
【0073】
図8は図7の光学素子3を構成する各部材の膜厚方向daにおける材料の屈折率nを示す屈折率構造の説明図(模式図)である。
【0074】
図8においてn61は基板51の屈折率である。n62は微細凹凸構造体52の屈折率に対応している。
【0075】
図8に示すように微細凹凸構造体52の見かけの屈折率n62は膜厚方向daに変化している。
【0076】
微細凹凸構造体52の凹凸構造は透明部材より成る基板51側から先細りの形状となっているため、屈折率構造的には基板51側から空気402側に向けて徐々に屈折率が低くなるような構成となる。
【0077】
本実施例は、使用波長は400nmから1000nmの広い波長領域とした。透明部材より成る基板51はd線の屈折率が1.439のガラス基板を使用した。微細凹凸構造体52は基板51上にアルミナを含むゾル−ゲルコート液をスピンコート法で塗布し、ゲル膜を形成した。
【0078】
それを温水に浸漬処理することにより、アルミナを主成分とする板状結晶を析出させ、最表面の微細凹凸構造を形成した。この様に形成された微細凹凸構造体52はガラス基板51側から空気402に向かってなだらかな傾斜を持って連続的に屈折率が変化している。
【0079】
この時、微細凹凸構造体52の基板51側の屈折率はほぼ1.4で空気の屈折率1.0まで連続的に変化している。微細凹凸構造体52の高さdは493nmである。
【0080】
図9は実施例3の光学素子3の反射率の分光特性の説明図である。
【0081】
図9に示すように、波長400nmから波長1000nmの広い波長領域において、光線入射角度が0度の場合、0.2%以下と高性能な反射防止効果が得られる。さらに光線入射角が60度においても、1%以下の良好な性能を持つ反射防止効果が得られる。
【実施例4】
【0082】
実施例4の光学素子は、互いに波長領域が異なる第1、第2波長領域の2つの波長領域において反射防止機能を有する。
【0083】
光学素子は基板の光入出射側の少なくとも一方に、反射防止機能が形成されている。
【0084】
反射防止構造体は、平均ピッチが該2つの波長領域内における最短波長以下の微細凹凸構造体が最外層となるように構成されている。
【0085】
第1の波長領域内の長波長側の波長をλaとする。
【0086】
第1の波長領域より長波長側の第2の波長領域内の短波長側の波長をλbとする。そして波長λcを
λc=(λa+λb)/2
とおく。微細凹凸構造体の平均高さをhとする。このとき
λa<λb ・・・(3)
0.44<h/λc<0.56 ・・・(4)
なる条件を満足している。
【0087】
図10は本発明の実施例4の光学素子に係る反射防止構造体の分光特性図である。実施例4に係る反射防止構造体は、屈折率1.52のガラス基板の上に実施例1乃至3のいずれかの微細凹凸構造体を形成した構成より成っている。微細凹凸構造体の高さは400nmである。
【0088】
本実施例では、可視域(波長400nmから波長700nm)の第1の波長領域と近赤外域(波長900nmから波長1100nm)の第2の波長領域の2つの異なる使用波長領域で使用される場合に好適な反射防止機能を有している。
【0089】
第1の波長領域の長波長側の波長λaは700nmであり、第1の波長領域より長波長である第2の波長領域の短波長側の波長λbは900nmとなる。
【0090】
この時、条件式(4)に関する波長λcは800nmとなり、図10に示すように反射リップルが波長800nm付近に位置する。
【0091】
条件式(4)の下限値を越えて微細凹凸構造体の高さhが350nm以下と低くなると反射特性の高いリップル位置が第1の使用波長帯領域内に位置してくる。また条件式(4)の上限値を越えて微細凹凸構造体の高さhが450nm以上になると反射特性の高いリップル位置が第2の使用波長帯領域に位置し、良好な特性が得られなくなってしまう。
【0092】
本実施例では微細凹凸構造体の高さを400nmにしている。そして反射特性の高いリップル位置が、波長800nmと、使用する第1の波長領域(400nm〜700nm)と長波長と使用する第2の波長領域(800nm〜1100nm)の短波長の間の使用しない波長域内になる様に配置している。これにより使用波長内で良好な反射防止特性を得る事が出来る。
【0093】
次に実施例1乃至4のいずれか1つの光学素子を有する光学系の実施例について説明する。
【0094】
本発明の光学系は、ビデオカメラやデジタルカメラ、そしてTVカメラ等の光学機器に用いられる。本発明の光学系は前述した各実施例の光学素子を有している。
【0095】
そして最も物体側の光学素子の光入射側の有効径をDaとする。光学系の焦点距離(光学系がズームレンズのときは広角端における焦点距離)をfとする。
【0096】
このとき
3≦Da/f ・・・(5)
なる条件を満足している。
【0097】
そして光学系がズーム部を有するズームレンズのとき、ズーム比をZとする。このとき、
15≦Z ・・・(6)
なる条件を満足している。
【0098】
次に本発明の光学系の各実施例について説明する。
【実施例5】
【0099】
図11は、本発明の実施例4に係る光学系の光学断面図である。図11において、光学系702はTVカメラシステム等に用いる、大口径で高変倍比(高ズーム比)の、いわゆる4群ズームレンズである。この4群ズームレンズ702は、物体側から像側へ順に、次のとおりである。
【0100】
合焦用の正の屈折力である第1群(前玉レンズ群)71、変倍用の負の屈折力である第2群(バリエータ群)72、変倍に伴って変動する像面を補正するための正の屈折力である第3群(コンペンセータ群)73を有している。
【0101】
更に、開口絞り78、そして結像用の正の屈折力である第4群(リレーレンズ群)74を有し、全体として4つのレンズ群より成っている。79は色分解光学系と等価なガラスブロックである。
【0102】
次に実施例4のズームレンズの数値実施例4を示す。数値実施例4において、iは物体側からの面の順番を示し、riは各面の曲率半径(単位はmm)、diは第i面と第i+1面との間の部材肉厚又は空気間隔、niとνiはそれぞれd線を基準とした屈折率、アッベ数を示す。BFはバックフォーカスである。
【0103】
数値実施例の間隔d12、d21、d33は焦点距離とそれに掛かる、変倍に際する間隔の変化を示している。
【0104】
本実施例においては、光学系702のワイド端の焦点距離は10mmであり、前玉77のレンズ第1面の有効径は200mmとなり、ズーミングを行うための間隔703は245.65mmとなっている。
【0105】
4群ズームレンズ702においてバリエータ群72とコンペンセータ群73の間はズーミングを行うための移動量分だけの間隔703を有している。間隔d12、d21、d33を各々数値実施例4の数値に変化させることによりズーム比66を得ている。
【0106】
本実施例のような大口型の光学系、或いは高変倍比のズームレンズでは、特に軸外光線の入射高とその焦点距離の変化が比較的大きくなる傾向がある。条件式(5)を満足する光学系、即ち所謂前玉有効径がレンズ全系の広角端における焦点距離の3倍を超えるような大口径の光学系では、画面中心に到達する光線と画面周辺の到達する光線のレンズ系に入射する角度が大きく変化する
条件式(6)のZ≧15 即ちズーム比が15倍を超えるような高変倍比(高ズーム比)を有する光学系では、広角端において軸外光線と望遠端において軸外光線では光線入射角が大きく変化する。
【0107】
干渉膜を用いた反射防止膜は、入射角度の変化、即ち角度特性に起因して反射特性が変化する。
【0108】
干渉膜は前述のように、光線入射角が0度においては、良好な特性が得られても、入射光線角度が大きい角度の場合は反射率が高くなってしまう。つまり、画面の中心付近に到達する光線の分光透過率は理論値に近いが、画面周辺に到達する光線の分光透過率は理論値から大きくずれてしまう。また、そのずれ量も焦点距離によって大きく変化してしまい、所望の分光感度を得ることが困難となる。
【0109】
そこで、本実施例では光学系702を構成するレンズ基材のすべての表面に、波長以下の微細凹凸構造体を有する反射防止構造体を形成している。
【0110】
図12はこのときの反射防止構造体の分光透過率の理論値である。図12では波長400〜波長700nmの可視域だけでなく、波長1000nm付近でも分光透過率が著しく劣化しないことを示している。
【0111】
このため、実施例4のような高変倍比の光学系を監視用システムの撮影系として使用しても良い。これによれば可視域のみでなく、赤外領域の波長においても良好な映像感度を得ることができる。
【0112】
ここで、実施例5では全てのレンズ基材に対し、波長以下の微細凹凸構造体を有する反射防止膜を形成しているが、これに限定するものではなく、一定のレンズ基材のみに形成しても良い。特に必要な分光感度に応じて干渉膜を形成しても良い。
【0113】
[数値実施例4]
単位 mm

面データ
面番号 r d nd νd 有効径
物面 ∞ ∞
1 582.07650 19.311540 1.496999 81.5 200.000
2 -699.74045 1.000000 199.595
3 -699.74045 5.000000 1.799516 42.2 199.263
4 353.86996 2.008270 198.029
5 396.57864 24.119760 1.433870 95.1 198.213
6 -616.99056 18.747970 198.607
7 280.42746 22.678280 1.433870 95.1 199.530
8 -3987.32808 0.250000 198.871
9 245.22782 20.610710 1.433870 95.1 191.906
10 2602.16223 0.250000 190.552
11 179.56192 11.346810 1.496999 81.5 175.977
12 279.31416 可 変 174.152
13 268.94376 2.000000 1.816000 46.6 50.835
14 58.66295 6.777960 45.433
15 -167.96170 1.900000 1.754998 52.3 44.613
16 124.30386 5.427620 43.528
17 -87.28290 1.900000 1.816000 46.6 43.623
18 73.00824 10.047180 1.922864 21.3 46.162
19 -79.58126 1.088500 46.834
20 -75.79780 2.200000 1.882997 40.8 46.739
21 295.86708 可 変 48.444
22 300.54608 10.258750 1.592400 68.3 69.574
23 -129.39003 0.200000 70.568
24 213.99531 10.658420 1.487490 70.2 71.719
25 -157.02634 3.036230 71.659
26 -99.89310 2.500000 1.720467 34.7 71.512
27 -126.73511 0.200000 72.185
28 118.08827 2.500000 1.846658 23.9 70.770
29 62.49306 0.124430 68.207
30 61.01371 14.102380 1.496999 81.5 68.444
31 -6767.69006 0.200000 67.870
32 127.09849 6.949960 1.487490 70.2 66.681
33 -9031.17452 可 変 65.838
34 (絞り) 0.00000 4.500000 30.823
35 76.20626 1.800000 1.816000 46.6 29.191
36 57.32932 0.200000 28.697
37 37.53246 5.701980 1.808095 22.8 29.021
38 143.61187 4.970950 28.188
39 -56.40817 2.000000 1.882997 40.8 27.482
40 91.61848 30.039530 1.805181 25.4 27.933
41 -451.77947 5.501890 31.132
42 -778.12061 6.392490 1.620411 60.3 31.951
43 -82.19234 0.200000 32.482
44 -385.98744 2.100000 1.834000 37.2 32.619
45 52.98048 8.308930 1.620411 60.3 33.072
46 -48.78398 0.200000 33.586
47 228.66065 8.777300 1.487490 70.2 33.041
48 -38.13259 2.100000 1.834000 37.2 32.381
49 -104.87405 0.200000 32.662
50 82.71105 6.216970 1.620411 60.3 32.206
51 -1012.77697 2.000000 31.107
52 0.00000 55.500000 1.516330 64.2 60.000
53 0.00000 9.599750 60.000
像面 0.00000

【0114】
各種データ
ズーム比 66.0

広角 中間 望遠
焦点距離 10.0000 66.6827 660.0000
Fナンバー 1.8 1.8 3.3
画角 57.6216 9.4302 0.9549
像高 5.5 5.5 5.5
レンズ全長 547.86 547.86 547.86
BF 48.15 48.15 48.15
射出瞳位置 964.4156 964.4156 964.4156
d12 2.1022 117.1022 159.6507
d21 245.6526 107.5670 3.2865
d33 3.5000 26.5856 88.3176

【実施例6】
【0115】
図13は、本発明の実施例5に係る光学系の光学断面図である。図13において、光学系802はTVカメラシステム等に用いる、大口径で高変倍比(高ズーム比)の、いわゆる4群ズームレンズである。
【0116】
この4群ズームレンズ802は、物体側から像側へ順に次のとおりである。
【0117】
合焦用の正の屈折力である第1群(前玉レンズ群)81、変倍用の負の屈折力である第2群(バリエータ群)82、変倍に伴って変動する像面を補正するための負の屈折力である第3群(コンペンセータ群)83を有している。更に開口絞り88、そして結像用の正の屈折力である第4群(リレーレンズ群)74を有し、全体として4つのレンズ群より成っている。89は色分解光学系と等価なガラスブロックである。
【0118】
実施例5の数値実施例5を実施例4の数値実施例4と同様に示す。数値実施例5の間隔d16、d26、d29は焦点距離とそれに掛かる、変倍に際する間隔の変化を示している。
【0119】
本実施例においては、光学系802のワイド端の焦点距離は30mmであり、前玉87のレンズ第1面の有効径は90mmとなり、ズーミングを行うための803の間隔は61.41mmとなっている。
【0120】
4群ズームレンズ802においてバリエータ群82とコンペンセータ群83の間はズーミングを行うための移動量分だけの間隔703を有している。間隔d16、d26、d29を各々数値実施例5の数値に変化させることによりズーム比15を得ている。
【0121】
本実施例のような大口型の光学系、或いは高変倍比のズームレンズでは、特に軸外光線の入射高とその焦点距離の変化が比較的大きくなる傾向がある。
【0122】
条件式(5)を満足する光学系、即ち所謂前玉有効径がレンズ全系の広角端における焦点距離の3倍を超えるような大口径の光学系では、画面中心に到達する光線と画面周辺の到達する光線のレンズ系に入射する角度が大きく変化する。
【0123】
また、条件式(6)のZ≧15 即ちズーム比が15倍を超えるような高変倍比(高ズーム比)を有する光学系では、広角端において軸外光線と望遠端において軸外光線では光線入射角が大きく変化する。
【0124】
干渉膜を用いた反射防止膜は、入射角度の変化、即ち角度特性に起因して反射特性が変化する。
【0125】
干渉膜は前述のように、光線入射角が0度においては、良好な特性が得られても、入射光線角度が大きい角度の場合は反射率が高くなってしまう。
【0126】
つまり、画面の中心付近に到達する光線の分光透過率は理論値に近いが、画面周辺に到達する光線の分光透過率は理論値から大きくずれてしまう。また、そのずれ量も焦点距離によって大きく変化してしまい、所望の分光感度を得ることが困難となる。
【0127】
そこで、本実施例では光学系802を構成するレンズ基材のすべての表面に、波長以下の平均ピッチを有する微細凹凸構造体を備える反射防止構造体を形成している。
【0128】
図14はこのときの反射防止構造体の分光透過率の理論値である。図14では波長400〜波長700nmの可視域だけでなく、波長1000nm付近でも分光透過率が著しく劣化しないことを示している。
【0129】
このため、実施例5のような高変倍比の光学系を監視用システムの撮影系として使用しても良い。これによれば可視域のみでなく、赤外領域の波長においても良好な映像感度を得ることが可能となる。
【0130】
ここで、実施例6では全てのレンズ基材に対し、波長以下の微細凹凸形状の微細部を有する反射防止膜を形成しているが、これに限定するものではなく、一定のレンズ基板のみに形成しても良い。特に必要な分光感度に応じて干渉膜を形成しても良い。
【0131】
[数値実施例5]

単位 mm

面データ
面番号 r d nd νd 有効径
物面 ∞ ∞
1 124.08843 8.07277 1.48749 70.23 90
2 429.75611 0.15 89.506
3 120.49748 4 1.720467 34.7 87.845
4 85.11712 0 84.506
5 85.11712 12.88861 1.43875 94.99 84.506
6 -7623.63418 9.99782 83.951
7 114.60868 6.92112 1.43387 95.1 75.19
8 483.19677 0.42209 74.029
9 128.41882 7.8054 1.496999 81.54 70.892
10 -935.21739 0 69.34
11 -935.21739 2.5 1.720467 34.7 69.34
12 284.64103 7.7722 66.298
13 -7557.21355 4.81999 1.808095 22.76 61.137
14 -232.091 0 59.789
15 -232.091 2.2 1.720467 34.7 59.789
16 185.4863 可 変 56.646
17 24.28535 1 1.882997 40.76 21.482
18 16.73433 3.18699 19.822
19 198.22097 3.64678 1.808095 22.76 19.721
20 -26.57301 0 19.167
21 -26.57301 0.9 1.882997 40.76 19.167
22 40.79971 0.16833 18.068
23 21.11233 6.12039 1.808095 22.76 17.946
24 25.63884 5.7005 15.599
25 -25.62263 0.9 1.882997 40.76 14.632
26 -64.46006 可 変 14.838
27 -43.5266 0.9 1.717004 47.92 21.886
28 78.00486 2.35438 1.84666 23.78 23.021
29 -9430.13591 可 変 23.484
30 (絞り) 0 0.73867 28.839
31 79.10065 6.22448 1.603112 60.64 30.129
32 -48.91201 0.15 30.591
33 88.16009 3.4451 1.620411 60.29 30.295
34 -1822.03777 0.15 29.922
35 65.66024 6.20192 1.48749 70.23 29.351
36 -51.88183 1 1.800999 34.97 28.445
37 -150.4514 9.17259 28.016
38 -41.21179 1 1.755199 27.51 23.989
39 -290.75654 38 23.983
40 180.86498 3.81221 1.48749 70.23 21.641
41 -35.73546 3.00612 21.699
42 47.35527 6.01246 1.496999 81.54 20.126
43 -27.94143 0.8 1.882997 40.76 19.065
44 -859.13139 2.50345 18.825
45 -76.54563 0.8 1.834807 42.72 18.41
46 34.01174 2.04025 1.48749 70.23 18.407
47 57.73819 1.5 18.61
48 42.00885 4.52013 1.698947 30.13 19.296
49 -28.28528 1 1.806098 40.92 19.316
50 -54.44837 5 19.415
51 0.00000 33 1.60859 46.44 40
52 0.00000 13.2 1.5168 64.17 40
53 0.00000 7.5093 40
像面 0.00000

【0132】
各種データ
ズーム比 15.0

広角 中間 望遠
焦点距離 30.000 119.400 450.000
Fナンバー 2.8 2.8 5
画角 20.7777 5.2748 1.4005
像高 5.5 5.5 5.5
レンズ全長 256.13 256.13 256.13
BF 41.68 41.68 41.68
射出瞳位置 -523.739 -523.739 -523.739
d16 1.1452 41.8900 59.4426
d26 61.4124 10.8569 10.7124
d29 9.0675 18.8781 1.4700

【0133】
本発明の光学系は、ビデオカメラやデジタルカメラ、プロジェクター、望遠鏡等の光学機器の光学系として用いることができる。
【0134】
次に本発明の反射防止構造体に対する比較例及びその分光特性について示す。
【0135】
[比較例1]
比較例1は、実施例1の反射防止特性との比較を行うため、透明部材の基板である、d線の屈折率が1.805のガラス基板上に無機系の被膜の薄膜を多層せき層した多層反射防止膜である。この多層反射防止膜を蒸着法により形成した。多層反射防止膜は広い波長領域において良好な反射防止性能を有する構成となっている。得られた多層反射防止膜の構成を表1に示す。
【0136】
表1において層Noはガラス基板から数えた番号である。図15は比較例1の分光特性の説明図である。表1の構成により、図15に示すように波長400nmから波長1000nmの広い波長領域において、光線入射角度が0度の場合でも3.0%以下と高い反射率となっている。
【0137】
さらに光線入射角が60度においては、9.0%程度となる。これに比べて本発明の実施例1とは反射率が全体に低く、反射防止性能が良い。
【0138】
【表1】

【0139】
[比較例2]
比較例2は、実施例2の反射防止特性との比較を行うため、透明部材の基板である、d線の屈折率が1.52のガラス基板上に無機系の被膜を多層積層した多層反射防止膜である。この反射防止膜を蒸着法により形成した。多層反射防止膜は広い波長領域において良好な反射防止性能を有する構成となっている。得られた多層反射防止膜の構成を表2に示す。
【0140】
図16は比較例2の分光特性の説明図である。
【0141】
表2の構成により、図16に示すように波長400nmから波長1000nmの広い波長領域において、光線入射角度が0度の場合でも5.0%以下と高い反射率となっている。さらに光線入射角が60度においては、10%程度となる。これに比べて本発明の実施例2は反射防止性能が良好である。
【0142】
【表2】




【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】本発明の光学素子の実施例1に係る反射防止膜の概略構成
【図2】本発明の光学素子の実施例1に係る反射防止膜概略構成の屈折率構造
【図3】本発明の光学素子の実施例1に係る反射防止膜の一例を示す特性図
【図4】本発明の光学素子の実施例2に係る反射防止膜の概略構成
【図5】本発明の光学素子の実施例2に係る反射防止膜概略構成の屈折率構造
【図6】本発明の光学素子の実施例2に係る反射防止膜の一例を示す特性図
【図7】本発明の光学素子の実施例3に係る反射防止膜の概略構成
【図8】本発明の光学素子の実施例3に係る反射防止膜概略構成の屈折率構造
【図9】本発明の光学素子の実施例3に係る反射防止膜の一例を示す特性図
【図10】本発明の実施例4に係る光学系の特性図
【図11】本発明の実施例4に係る光学系の光学断面図
【図12】本発明の実施例4に係る光学系の特性図
【図13】本発明の実施例5に係る光学系の光学断面図
【図14】本発明の実施例5に係る光学系の特性図
【図15】本発明の光学素子の実施例1に係る反射防止膜の比較例を示す特性図
【図16】本発明の光学素子の実施例2に係る反射防止膜の比較例を示す特性図
【符号の説明】
【0144】
11 透明部材
12 均質層
13 均質層
14 微細凹凸構造体
21 透明部材
31 透明部材
32 均質層
33 微細凹凸構造体
51 透明部材
52 反射防止構造体
71 レンズ群
72 レンズ群
73 レンズ群
74 レンズ群
77 レンズ
78 絞り
79 ダミーガラス
81 レンズ群
82 レンズ群
83 レンズ群
84 レンズ群
87 レンズ
88 絞り
89 ガラスブロック
201 反射防止構造体
301 入射媒質(空気)
202 反射防止構造体
302 入射媒質(空気)
402 入射媒質(空気)
702 光学系
703 レンズ間隔
802 光学系
803 レンズ間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視域を含む使用波長領域で反射防止機能を有する光学素子であって、
該使用波長領域は、該使用波長領域内の最長波長λHが該使用波長領域内の最短波長λLに比べて2倍以上となる範囲であり、
該光学素子は基板の光入出射面の少なくとも一方の面に、平均ピッチが最短波長λL以下の微細凹凸構造体が最外層となるように構成された反射防止構造体を備え、
Pを微細凹凸構造体の平均ピッチ、n1を微細凹凸構造体を形成している材料の屈折率、hを微細凹凸構造体の平均高さ、θを空気側から微細凹凸構造体へ入射する光束の入射角とするとき、
P<λL/(n1+Sinθ)
0.2λL≦h≦0.8λH
なる条件を満足することを特徴とする光学素子。
【請求項2】
前記反射防止構造体は、入射角が60度において反射率が3%以下となる波長領域が、前記使用波長領域内に1/2以上存在するような構成より成ることを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
前記微細凹凸構造体は、等価屈折率が前記基板側から連続的に減少するような形状より成ることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学素子。
【請求項4】
前記微細凹凸構造体は、アルミニウム又は酸化アルミニウムを含むことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の光学素子。
【請求項5】
前記微細凹凸構造体は前記基板の一方の面に直接に形成されているか、又は前記微細凹凸構造体と前記基板との間には、該微細凹凸構造体とは材質の異なる均質層が一層以上形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光学素子。
【請求項6】
前記均質層のうち、少なくとも一層はジルコニア、シリカ、チタニア、酸化亜鉛のうち一種を含むことを特徴とする請求項5に記載の光学系。
【請求項7】
互いに波長領域が異なる第1、第2波長領域の2つの波長領域において反射防止機能を有する光学素子であって、
該光学素子は基板の光入出射側の少なくとも一方の面に、平均ピッチが該2つの波長領域内における最短波長以下の微細凹凸構造体が最外層となるように構成した反射防止構造体を備え、
第1の波長領域内の長波長側の波長をλa、
第1の波長領域より長波長側の第2の波長領域内の短波長側の波長をλb、
λc=(λa+λb)/2
とし、該微細部の高さをhとするとき
λa<λb
0.44<h/λc<0.56
なる条件を満足することを特徴とする光学素子。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項の光学素子が配置されている光学系であって、該最も物体側の光学素子の光入射側の有効径をDa、該光学系の焦点距離(光学系がズームレンズのときは広角端における焦点距離)をfとするとき
3≦Da/f
なる条件を満足することを特徴とする光学系。
【請求項9】
前記光学系はズーム部を有し、該光学系のズーム比をZとするとき、
15≦Z
なる条件を満足することを特徴とする請求項8の光学系。
【請求項10】
請求項8又は9の光学系を有することを特徴とする光学機器。

【図11】
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【図13】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−78803(P2010−78803A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−245894(P2008−245894)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】