説明

光学装置及び光学装置の製造方法

【課題】筐体のサイズを小型にできるとともに気密封止をすることができ、尚且つ気密封止工程による光学特性の劣化を引き起こさない光学装置及び光学装置の製造方法を提供する。
【解決手段】第1の光学部品101と該第1の光学部品101より狭い幅を有する第2の光学部品102とを筐体内に収容して該筐体を気密封止した光学装置において、前記筐体は、前記第1の光学部品101を収容する第1筐体201、及び、前記第1筐体201よりも狭い幅を有し、前記第2の光学部品102の少なくとも一部を収容する第2筐体202から構成され、前記第1筐体201と前記第2筐体202の境界は、高周波誘導加熱によって半田300を溶融して接合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体内に光学部品を収容した光学装置及び光学装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば光通信用の光学装置(光変調器、光送信器、光受信器、光合分波器、光増幅器など)は、動作特性の長期信頼性を確保するために、シーム溶接等により筐体を気密封止している(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−129185号公報
【特許文献2】特開2006−339307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シーム溶接をする場合、溶接箇所は1000℃近くまで加熱される。また、溶接箇所から離れた部分でも、250〜300℃程度に筐体が加熱されることがある。
一方、光学装置の小型化を図るために、筐体のサイズを内部に収容される光学部品のサイズに近付けた筐体の設計が必要となることもある。例えば、後述する図4の光変調器1002のように、変調器本体1010に比べて偏波合成部1021が細長い形状をしている場合、偏波合成部1021を収容する筐体部分を偏波合成部1021に合わせて細くすることで、光学装置を小型化することが可能である。
【0005】
しかしながら、筐体のサイズを光学部品のサイズに近付けると、筐体の内壁が光学部品のごく近傍に位置することになるため、シーム溶接をした際に、光学部品が筐体から受ける熱の影響が増大し、光学部品の特性が大きく劣化してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、筐体のサイズを小型にできるとともに気密封止をすることができ、尚且つ気密封止工程による光学特性の劣化を引き起こさない光学装置及び光学装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、第1の光学部品と第2の光学部品とを筐体内に収容して該筐体を気密封止した光学装置において、前記筐体は、前記第1の光学部品を収容する第1筐体、及び、前記第1筐体よりも狭い幅を有し、前記第2の光学部品の少なくとも一部を収容する第2筐体から構成され、前記第1筐体と前記第2筐体の境界は、高周波誘導加熱によって半田を溶融して接合されていることを特徴とする。
また、本発明は上記光学装置において、前記第1の光学部品は、光導波路及び該光導波路に電界を印加するための電極を有する光導波路素子と、前記光導波路の伝搬光を変調するための変調電圧を前記電極に供給する回路基板と、を備え、前記光導波路素子と前記回路基板は、前記第1筐体の幅方向に隣接して配置され、前記第2の光学部品は、空間光学系を副筐体内に収容して構成されることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、第1の光学部品と光ファイバが接続された第2の光学部品とが筐体内に収容された光学装置を製造する方法であって、前記第1の光学部品を収容するための第1筐体よりも狭い幅を有する第2筐体に前記第2の光学部品の少なくとも一部を収容して、前記第2の光学部品に接続された光ファイバと前記第2筐体とを封止する第1工程と、前記第1筐体と前記第1工程後の前記第2筐体とを、高周波誘導加熱によって半田を溶融することにより接合する第2工程と、前記第1の光学部品と前記第2工程後の前記第2の光学部品とを光学的に結合させる第3工程と、を含むことを特徴とする。
また、本発明は、第1の光学部品と光ファイバが接続された第2の光学部品とが筐体内に収容された光学装置を製造する方法であって、前記第1の光学部品を収容するための第1筐体よりも狭い幅を有する第2筐体に前記第2の光学部品の少なくとも一部を収容して、前記第1筐体と前記第2筐体とを、高周波誘導加熱によって半田を溶融することにより接合する第1工程と、前記第1の光学部品と前記第1工程後の前記第2の光学部品とを光学的に結合させる第2工程と、前記第2工程の後、前記第2の光学部品に接続された光ファイバと前記第2筐体とを封止する第3工程と、を含むことを特徴とする。
また、本発明は、第1の光学部品と光ファイバが接続された第2の光学部品とが筐体内に収容された光学装置を製造する方法であって、前記第1の光学部品を収容するための第1筐体よりも狭い幅を有する第2筐体に前記第2の光学部品の少なくとも一部を収容して、前記第1の光学部品と前記第2の光学部品とを光学的に結合させる第1工程と、前記第1工程の後、前記第1筐体と前記第2筐体とを、高周波誘導加熱によって半田を溶融することにより接合する第2工程と、前記第2工程の後、前記第2の光学部品に接続された光ファイバと前記第2筐体とを封止する第3工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、第1筐体と第2筐体の接合に高周波誘導加熱を用いているので、接合部分の温度上昇をシーム溶接等の場合に比べて低く抑えつつ、筐体の気密封止をすることができる。また、温度上昇が小さいので、第1筐体よりも幅が狭い形状を有する(つまり小型の)第2筐体から第2の光学部品への熱の影響が少ない。そのため、気密封止工程による光学特性の劣化を抑えることができる。したがって、気密封止され、良好な光学特性を有し、且つ小型の光学装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態による光学装置の構成を示す図である。
【図2】光学装置を製造する際の各工程を順に示した図である。
【図3】高周波誘導加熱の詳細を示す図である。
【図4】第1の光学部品と第2の光学部品の具体例である、光変調器の構成を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
図1は、本発明の一実施形態による光学装置10の構成を示す図である。同図(A)は、光学装置10を上面から見た断面図を表し、同図(B)は、光学装置10を同図(A)内に示した矢印Zの方向から見た正面図を表している。
【0012】
光学装置10は、第1筐体201と第2筐体202からなる筐体の内部に第1の光学部品101と第2の光学部品102が収容された構造を有する。本実施形態において、光学装置10は、光通信用の光学装置である。光通信用の光学装置として、例えば、光変調器、光送信器、光受信器、光合分波器、光増幅器などがあり、第1の光学部品101や第2の光学部品102は、適宜、それらのいずれかに応じた光学部品が利用される。
【0013】
第1の光学部品101は、ある所定の機能を持った光導波路やバルクの光学素子、あるいはそれらを一体に組み立てた光モジュール等であり、その内部を通過してきた光を第2の光学部品102の側へ出射する(または、第2の光学部品102からの光が第1の光学部品101へ入射される)。なお、第1の光学部品101は、上記光導波路等に所定の電気信号を供給する回路基板を含んでいてもよい。第2の光学部品102は、第1の光学部品101と同様、ある所定の機能を持った光導波路やバルクの光学素子、あるいはそれらを一体に組み立てた光モジュール等であり、第1の光学部品101から出射された光が入射される(または、第1の光学部品101の側へ光を出射する)。
【0014】
第1の光学部品101と第2の光学部品102とは、両者を入出射する光の結合効率が最適となるような位置関係に調整されて、互いに向かい合った端面が接着剤等を用いて接合されている。また、第2の光学部品102の第1の光学部品101と反対の面には、光ファイバ103が接続されている。光ファイバ103の表面には、少なくともその一部に金メッキが施されている。
【0015】
第1の光学部品101は、平板状の形状を有し、上面から見た幅がW1である。上記のように第1の光学部品101に回路基板が含まれる場合には、回路基板の幅もW1に含まれるとする。ここで、幅とは、第1の光学部品101と第2の光学部品102が並んでいる方向に垂直な方向の寸法のことをいう。第2の光学部品102は、円筒状の形状を有し、幅(直径)がW1よりも小さいW2である。
【0016】
第1筐体201は、第1の光学部品101の全体と第2の光学部品102の一部を収容する筐体である。図1(A)の点線Xで示す位置よりも第1の光学部品101の側において、第1筐体201は、下面M2及び側面M3,M4の3面で囲まれ、上面M1の1面が開放された直方体状の形状を有している。この直方体部分の幅はW3(>W1)である。また、点線Xの位置に対して反対側の部分において、第1筐体201は、円筒状の形状を有している。この円筒部分には、第2の光学部品102のみが収容されるので、その幅(円筒の直径)は、直方体部分の幅W3より小さいW4(>W2)である。
【0017】
第2筐体202は、第2の光学部品102の残りの一部を収容する筐体であり、第1筐体201の円筒部分と同じ幅(直径)W4を持つ円筒状の形状を有している。また、第2筐体202の上面Mの中央には、第2筐体202の外部(図の上側)及び内部(図の下側)に向かってそれぞれ突出した突出部202Aを有する、光ファイバ103を通すための穴が形成されている。
【0018】
第1筐体201と第2筐体202は、互いの円筒部分の端面が半田300によって接合され、1つの筐体を形成している。当該箇所の接合の具体的方法については後述する。更に、第1筐体201の直方体部分の開放された上面M1の部分には、蓋203が溶接(例えばシーム溶接)等により接合されている。また、第2筐体202の突出部202Aを有する穴と金メッキされた光ファイバ103は、半田400によって接合されている。このように、半田及び溶接による各部の接合によって、筐体の気密封止が施されている。
【0019】
上記筐体の内部において、第1の光学部品101は、第1筐体201の直方体部分に収容されており、第2の光学部品102は、第2筐体202,第1筐体201の円筒部分,及び第1筐体201の直方体部分にわたって収容されている。
【0020】
次に、光学装置10の製造(組立て)方法を説明する。図2は、光学装置10を製造する際の各工程を(A),(B),(C)の順に示した図である。
【0021】
まず、図2(A)に示すように、第2筐体202の突出部202Aを有する穴に、第2の光学部品102に接続されている金メッキ付きの光ファイバ103を通し、光ファイバ103と穴の隙間に挿入された半田400を溶融させて固化させることで、光ファイバ103の表面の金メッキと第2筐体202の穴とを接合(封止)する。
【0022】
次に、図2(B)に示すように、第2筐体202と第1筐体201の円筒部分の端面の間に半田300を介挿した状態で、半田300を溶融させて固化させることで、第1筐体201と第2筐体202とを接合(封止)する。なお、この時、第2の光学部品102は第1筐体201と第2筐体202の内側に挿入されている。半田300の溶融は、高周波誘導加熱によって行う。
【0023】
図3は、この工程における高周波誘導加熱の詳細を示す図である。図3に示すように、まず、半田300(第1筐体201の円筒部分と同じ径を持つ円状の形状)を第1筐体201と第2筐体202の間に介挿して三者を接触させる。次に、ワークコイル(銅板)900の円状の穴部900Aを第2筐体202にくぐらせて、ワークコイル900を、半田300を介挿した位置に配置する。この状態で、ワークコイル900の端子901,902間に高周波の電流を流すと、ワークコイル900の円状の穴部900Aの周囲に高周波電流が周回して流れ、この高周波の周回電流により、半田300及びそのごく近傍の筐体円筒部分に高周波電流が誘導される。そして、誘導された電流によってジュール熱が発生し、半田300が溶融する。
なお、高周波誘導加熱に関する文献として、例えば、特開2006−129185号公報や特開2006−339307号公報がある。
【0024】
上記の高周波誘導加熱を用いる場合、半田及び筐体側に誘導される電流の大きさは、ワークコイル900側に流れる電流との距離によって敏感に変化する。つまり、ワークコイル900の円状の穴部900Aの径を変えると半田及び筐体側に誘導される電流の大きさは変化し、誘導される電流を最大にする(誘導効率を最大にする)ための穴部900Aの径の最適値が存在する。
【0025】
ワークコイル900の穴部900Aの径を当該最適値としたとき、ワークコイル900に流す電流の大きさによって、半田300の部分の加熱温度を調節することが可能である。例えば、半田300が溶融する200℃近辺の加熱温度が得られるように、ワークコイル900の電流を設定すればよい。
【0026】
また、このとき、第1筐体201と第2筐体202の円筒部分において、高周波誘導加熱の誘導効率は、半田300の位置から(図3の上方向又は下方向へ)離れるにつれて急速に低下する。そのため、誘導される電流は、半田300とそのごく近傍の筐体部分に集中することになり、加熱される範囲が局所的となる。よって、第2筐体202の内壁及び第1筐体201の円筒部分の内壁と第2の光学部品102との距離d2が、第1筐体201の直方体部分の内壁と第2の光学部品102との距離d1より短くても(図1(A)参照)、半田300を加熱する際の熱が第2の光学部品102の光学特性に与える影響を小さく抑えることができる。これにより、第2筐体202(及び第1筐体201の円筒部分)のサイズ(幅W4)を第1筐体201(の直方体部分)のサイズ(幅W3)より小さくすることが可能となり、且つ気密性及び光学特性についても良好な光学装置10が実現可能である。
【0027】
図2(B)の工程の後、図2(C)に示すように、第1の光学部品101と第2の光学部品102の光学的結合を行う。
その後、第1筐体201の上面M1に蓋203をシーム溶接により接合させる。このとき、溶接箇所の温度は高周波誘導加熱の際よりも高い温度になる。しかし、例えば、図1(A)に示す溶接箇所Pにおいて蓋203と第2の光学部品102との距離d4は、上述した高周波誘導加熱をする際の第2筐体202と第2の光学部品102との距離d3よりも長いため(図1(B)参照)、蓋203を溶接する際の熱が第2の光学部品102の光学特性に与える影響は極めて僅かである。
【0028】
次に、第1の光学部品101と第2の光学部品102の具体例を説明する。図4は、LN基板上に導波路及び変調電極が形成された変調器本体1010と、変調器本体1010からの出力光を偏波合成する空間コリメート光学系による偏波合成部1021とを有して構成される光変調器1002の構成を示す上面図であって、同図において、変調器本体1010が第1の光学部品101に対応し、偏波合成部1021が第2の光学部品102に対応する。また、図示は省略するが、変調器本体1010の横(図中の上又は下)には、変調器本体1010に変調電圧を供給する回路基板が隣接して設けられており、この回路基板も第1の光学部品101の一部であるとする。
【0029】
変調器本体1010は、マッハツェンダー導波路MAの両アームにマッハツェンダー導波路MB,MCが設けられ、マッハツェンダー導波路MBの両アームにマッハツェンダー導波路1101,1102が、マッハツェンダー導波路MCの両アームにマッハツェンダー導波路1103,1104が、それぞれ設けられた入れ子構造を有する。即ち、入力ファイバ1105からマッハツェンダー導波路MAの入力導波路1106へ導入された入力光は、アーム上のマッハツェンダー導波路MBとMCへ分岐して入力される。また、マッハツェンダー導波路MBへの入力光は、マッハツェンダー導波路1101と1102へ分岐して入力され、マッハツェンダー導波路MCへの入力光は、マッハツェンダー導波路1103と1104へ分岐して入力される。更に、マッハツェンダー導波路1101と1102からの出力光は、マッハツェンダー導波路MBにより合波され、マッハツェンダー導波路MAのアーム1108へ導入され、マッハツェンダー導波路1103と1104からの出力光は、マッハツェンダー導波路MCにより合波され、マッハツェンダー導波路MAのアーム1109へ導入される。
【0030】
マッハツェンダー導波路1101〜1104は、それぞれに設けられた変調電極とともにLN光変調器を形成している。各LN光変調器1101〜1104の変調電極には、不図示の回路基板に設けられた駆動回路から25Gb/sの駆動信号が与えられ、各LN光変調器1101〜1104は、25Gb/sで変調された変調光を出力する。ここで、マッハツェンダー導波路MBのLN光変調器1101と1102の変調方式は、DQPSK(差動四相位相偏移変調)を用いる。マッハツェンダー導波路MCのLN光変調器1103と1104の変調方式も同様である。これにより、マッハツェンダー導波路MAのアーム1108,1109へは、それぞれ50Gb/sの変調光が入力されることになる。
【0031】
マッハツェンダー導波路MAのアーム1108の途中には、偏波回転手段1107が設けられている。偏波回転手段1107は、アーム1108を伝搬する光の偏波面を90°回転させる機能を有する。これにより、マッハツェンダー導波路MAのアーム1108とアーム1109をそれぞれ伝搬する光は、互いに偏波面が90°傾いた状態になる。偏波回転手段1107としては、例えば、LN基板に形成した溝に1/2波長板を埋め込んだ構成とすることができる。また、LN基板の導波路端面や2穴フェルールコリメータ1111の端面に1/2波長板を貼り付けた構成とすることもできる。なお、1/2波長板を設けたことにより発生する2つの光路の光路差を補償するため、所定の光学的長さを有する板を光路中に挿入することが望ましい。
なお、アーム1108を伝搬する光の偏波面を45°回転させ、アーム1109を伝搬する光の偏波面を逆方向に45°回転させる構成とすることで、両者の偏波面を互いに90°傾かせるようにしてもよい。
【0032】
マッハツェンダー導波路MAのアーム1108と1109は、変調器本体(LN基板)1010の出力側端面(図4において右側の端面)において、2穴フェルールコリメータ1111の2穴の間隔と同じ間隔を持つようにして配置される。この配置間隔は、例えば125μm〜150μm程度である。なお、LN基板の出力側端面は、反射を防止するため、光の出射方向に対して5°程度の角度を有するように研磨するか、無反射(AR)コーティングを施すことが好ましい。
【0033】
偏波合成部1021は、円筒型の金属性筐体1118内に、2穴フェルールコリメータ1111と偏波合成素子1110と1穴フェルールコリメータ1112の各光学素子が変調器本体1010の側からこの順序で配置されてなる、空間コリメート光学系として構成されている。
【0034】
2穴フェルールコリメータ1111は、2穴フェルールの2つの穴部にそれぞれ偏波保持ファイバからなるファイバコリメータを内蔵した構成を有する。このファイバコリメータは、ファイバと同じ直径を持つロッド状のレンズをファイバと融着して一体構造としたものであり、レンズドファイバとも呼ばれるものである。各偏波保持ファイバは、その偏波方向を、変調器本体1010の2つの出力導波路1108,1109から出射される各変調光の偏波方向と合うように設定する。また、ファイバコリメータの両端面(図4において右側の入射端面及び左側の出射端面)には、無反射(AR)コーティングを施すことが好ましい。このような構成の2穴フェルールコリメータ1111は、LN基板の導波路端面で出力導波路1108,1109と光軸が合った状態となるようにしてバットジョイントされている。
これにより、変調器本体1010の出力導波路1108,1109からの各変調光が、偏波合成部1021の2穴フェルールコリメータ1111のファイバコリメータへ入射され、更に、このファイバコリメータから偏波合成素子1110へ向けて出射される。
【0035】
偏波合成素子1110は、互いの偏波面が90°傾いた状態で異なる入射位置に入射された2つの光を、同一の光路上に出射する機能を有する。ここでは、偏波合成素子1110は、互いの偏波面が90°傾いた状態で出力された2穴フェルールコリメータ1111からの各変調光を、出射側(出力ファイバ1113側)端面の同一位置から出力ファイバ1113の光軸に沿って出射する。これにより、50Gb/sの変調光が偏波合成されてなる100Gb/sの変調光が得られる。
【0036】
偏波合成素子1110としては、例えば、ルチルや方解石から作られたものを用いることができるが、特に、ルチル等の同一厚の2枚の板(偏光分離板1110A,1110B)をその光学軸が直交するように貼り合わせて構成されるサバール板を用いるのが好適である。サバール板を用いることにより、アーム1108からの光とアーム1109からの光の光路長が等しくなるので、2つの光を光路差ゼロで偏波合成することができる。なお、サバール板以外の偏波合成素子を用いて、2つの偏波の間に生じる光路差を補償する構成としてもよい。
【0037】
1穴フェルールコリメータ1112は、1穴フェルールの穴部にシングルモードファイバを用いたファイバコリメータを内蔵した構成を有し、2穴フェルールコリメータ1111と対向して配置される。
ここで、偏波合成素子1110の波長分散によって、変調器本体1010の出力導波路1108から出射された変調光と出力導波路1109から出射された変調光の偏波合成後の各位置、即ち、偏波合成素子1110からの各出射位置が、波長とともに変化する。より詳しくは、短波長の場合と長波長の場合とで、出力導波路1108からの変調光と出力導波路1109からの変調光(一方がP偏波、他方がS偏波)の出力の中心の位置関係が逆転する。したがって、1穴フェルールコリメータ1112の配置位置を、ファイバコリメータがP偏波とS偏波のほぼ中心となるように設定する。これにより、波長が変化して各偏波の結合位置が変化したとしても、両偏波の出力位置のずれ量がほぼ同程度となるので、偏波依存性損失(PDL)を低減することができる。
【0038】
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
例えば、第1の光学部品101,第2の光学部品102,第1筐体201,及び第2筐体202の形状は上記説明したものに限定されない。第2筐体202の形状、及び第2筐体202と接合される部分の第1筐体201の形状は、上記実施形態のように円筒状であることが好ましいが、高周波誘導加熱によって接合が可能な形状であれば、任意である。
【0039】
また、上述(図2)した光学装置10の製造工程を、次の(A’),(B’),(C’)の順、あるいは、(A”),(B”),(C”)の順で行うよう変更してもよい。
(A’)第2筐体202の突出部202Aを有する穴に、第2の光学部品102に接続されている金メッキ付きの光ファイバ103を通す。そして、第2筐体202と第1筐体201の円筒部分の端面の間に半田300を介挿した状態で、半田300を溶融させて固化させることで、第1筐体201と第2筐体202とを接合(封止)する。なお、この時、第2の光学部品102は第1筐体201と第2筐体202の内側に挿入されている。半田300の溶融は、高周波誘導加熱によって行う。
(B’)第1の光学部品101と第2の光学部品102の光学的結合を行う。
(C’)光ファイバ103と穴の隙間に挿入された半田400を溶融させて固化させることで、光ファイバ103の表面の金メッキと第2筐体202の穴とを接合(封止)する。その後、第1筐体201の上面M1に蓋203をシーム溶接により接合させる。
(A”)第2筐体202の突出部202Aを有する穴に、第2の光学部品102に接続されている金メッキ付きの光ファイバ103を通す。そして、第1の光学部品101と第2の光学部品102の光学的結合を行う。
(B”)第2筐体202と第1筐体201の円筒部分の端面の間に半田300を介挿した状態で、半田300を溶融させて固化させることで、第1筐体201と第2筐体202とを接合(封止)する。なお、この時、第2の光学部品102は第1筐体201と第2筐体202の内側に挿入されている。半田300の溶融は、高周波誘導加熱によって行う。
(C”)光ファイバ103と穴の隙間に挿入された半田400を溶融させて固化させることで、光ファイバ103の表面の金メッキと第2筐体202の穴とを接合(封止)する。その後、第1筐体201の上面M1に蓋203をシーム溶接により接合させる。
【符号の説明】
【0040】
10…光学装置 101…第1の光学部品 102…第2の光学部品 103…光ファイバ 201…第1筐体 202…第2筐体 203…蓋 300,400…半田 900…ワークコイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の光学部品と第2の光学部品とを筐体内に収容して該筐体を気密封止した光学装置において、
前記筐体は、前記第1の光学部品を収容する第1筐体、及び、前記第1筐体よりも狭い幅を有し、前記第2の光学部品の少なくとも一部を収容する第2筐体から構成され、
前記第1筐体と前記第2筐体の境界は、高周波誘導加熱によって半田を溶融して接合されている
ことを特徴とする光学装置。
【請求項2】
前記第1の光学部品は、光導波路及び該光導波路に電界を印加するための電極を有する光導波路素子と、前記光導波路の伝搬光を変調するための変調電圧を前記電極に供給する回路基板と、を備え、
前記光導波路素子と前記回路基板は、前記第1筐体の幅方向に隣接して配置され、
前記第2の光学部品は、空間光学系を副筐体内に収容して構成される
ことを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項3】
第1の光学部品と光ファイバが接続された第2の光学部品とが筐体内に収容された光学装置を製造する方法であって、
前記第1の光学部品を収容するための第1筐体よりも狭い幅を有する第2筐体に前記第2の光学部品の少なくとも一部を収容して、前記第2の光学部品に接続された光ファイバと前記第2筐体とを封止する第1工程と、
前記第1筐体と前記第1工程後の前記第2筐体とを、高周波誘導加熱によって半田を溶融することにより接合する第2工程と、
前記第1の光学部品と前記第2工程後の前記第2の光学部品とを光学的に結合させる第3工程と、
を含むことを特徴とする光学装置の製造方法。
【請求項4】
第1の光学部品と光ファイバが接続された第2の光学部品とが筐体内に収容された光学装置を製造する方法であって、
前記第1の光学部品を収容するための第1筐体よりも狭い幅を有する第2筐体に前記第2の光学部品の少なくとも一部を収容して、前記第1筐体と前記第2筐体とを、高周波誘導加熱によって半田を溶融することにより接合する第1工程と、
前記第1の光学部品と前記第1工程後の前記第2の光学部品とを光学的に結合させる第2工程と、
前記第2工程の後、前記第2の光学部品に接続された光ファイバと前記第2筐体とを封止する第3工程と、
を含むことを特徴とする光学装置の製造方法。
【請求項5】
第1の光学部品と光ファイバが接続された第2の光学部品とが筐体内に収容された光学装置を製造する方法であって、
前記第1の光学部品を収容するための第1筐体よりも狭い幅を有する第2筐体に前記第2の光学部品の少なくとも一部を収容して、前記第1の光学部品と前記第2の光学部品とを光学的に結合させる第1工程と、
前記第1工程の後、前記第1筐体と前記第2筐体とを、高周波誘導加熱によって半田を溶融することにより接合する第2工程と、
前記第2工程の後、前記第2の光学部品に接続された光ファイバと前記第2筐体とを封止する第3工程と、
を含むことを特徴とする光学装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−237366(P2010−237366A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−84241(P2009−84241)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】