説明

光学補償フィルム、偏光板及び液晶表示装置

【課題】位相差の調節に優れた光学補償フィルムと、該光学補償フィルムを用いた偏光板と、該偏光板を有する液晶表示装置の提供。
【解決手段】少なくとも一方の液晶セルと偏光膜間に配置する2層以上からなる光学補償フィルムであって、少なくとも第1の光学異方性層と、第2の光学異方性層とからなり、第2の光学異方性層の遅相軸と、第1の光学異方性層の遅相軸とのなす角度が0°度から42°もしくは48°から90°であることを特徴とする光学補償フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学補償フィルム、該光学補償フィルムを用いた偏光板及び液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(LCD)として、例えば、棒状液晶性分子を含む液晶セルと、該液晶セルを挟む一対の偏光板とを有するものが知られている。この液晶表示装置(LCD)の偏光板は、該液晶セルを透過した光の位相差を調節するための光学補償フィルムを備える。
【0003】
該光学補償フィルムとしては、例えば、ディスコティック化合物を含む光学異方性層を、透過性及び光学的等方性に優れたトリアセチルセルロース(TAC)等の支持体上に形成したものが知られている(例えば、特許文献1)。
【0004】
ところで、近年、液晶表示装置が、カーナビゲーションシステム、インストゥルメンタルパネル、ヘッドアップディスプレイ等として、車両で用いられることがある。
【0005】
車両等の温度変化が大きな環境下で用いられる液晶表示装置には、OCB(Optically Compensatory Bend)モードの液晶セルが用いられる。該液晶セルは応答速度が速く、特に、低温環境下においても応答速度が低下しないため、車両等の液晶表示装置の液晶セルとして好ましい。
【0006】
また、OCBモードは自己光学補償機能を有するため、TNモード等の他の液晶モードよりも視野角が広いという特徴を有する。しかしながら、車両等の、特に広い視野角が要求される場合、OCBモードの液晶セルであっても、光学補償フィルムによって、光学補償を行うことが必須となっている。
【0007】
以上のような事情等により、光学補償の調節の自由度が高い、光学補償フィルムの要求が高まっている(例えば、非特許文献1)。
【0008】
【非特許文献1】「A Novel Optical Compensation Film for OCB−LCDs」、IDW/AD’05 FMC12−1 平成17年、Vol.2 p.1328
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来における前記問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明は、位相差の調節に優れた光学補償フィルムと、該光学補償フィルムを用いた偏光板と、該偏光板を有する液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。即ち、
<1>少なくとも、一方の、液晶セルと偏光子間に配置する2層以上からなる光学補償フィルムであって、少なくとも第1の光学異方性層と、第2の光学異方性層とからなり、 第2の光学異方性層の遅相軸と、第1の光学異方性層の遅相軸とのなす角が0°から42°もしくは48°から90°であることを特徴とする光学補償フィルムである。
<2>少なくとも、一方の、液晶セルと偏光子間に配置する2層以上からなる光学補償フィルムであって、少なくとも第1の光学異方性層と、第2の光学異方性層とからなり、第2の光学異方性層の遅相軸と、第1の光学異方性層の遅相軸とのなす角が略直交もしくは略平行である前記<1>記載の光学補償フィルムである。
<3>第1の光学異方性層の遅相軸と略直交もしくは略平行である遅相軸を有する第2の光学異方性層の面内レタデーション(Re2)が、第1の光学異方性層の面内レタデーション(Re1)との間において、1nm<│Re2│<│Re1│の関係を有する前記<2>記載の光学補償フィルムである。
<4>少なくとも、一方の、液晶セルと偏光膜間に配置する2層以上からなる光学補償フィルムであって、少なくとも第1の光学異方性層と、第2の光学異方性層とからなり、 第2の光学異方性層の遅相軸と、第1の光学異方性層の遅相軸とのなす角が30°〜42°もしくは48°〜60°である前記<1>記載の光学補償フィルムである。
<5>第1の光学異方性層の遅相軸となす角が30°〜42°もしくは48°〜60°である遅相軸を有する第2の光学異方性層の面内レタデーション(Re2)が、第1の光学異方性層の面内レタデーション(Re1)との間において、│Re1│/2<│Re2│である前記<4>記載の光学補償フィルムである。
<6>第1の光学異方性層の面内レタデーション(Re1)が、10nm<Re1<50nmを満たす前記<1>から<5>記載の光学補償フィルムである。
<7>第1の光学異方性層の配向軸と面内直交方向と法線を含む平面内で、前記法線から前記第1の光学異方性層の面方向に40°傾いた方向から測定した面内レタデーション(Re1(40°)、及び前記法線から逆に40°傾いた方向から測定したレタデーション値Re1(−40°)が、下記数式(1)又は(2)
Re1(40°)> Re1(−40°)の場合
3 ≦ Re1(40°)/ Re1(−40°)≦ 20・・・(1)
Re1(40°)< Re1(−40°)の場合
3 ≦ Re1(−40°)/ Re1(40°)≦ 20・・・(2)
を満たす前記<1>請求項1から6記載の光学補償フィルム。
<8>第1の光学異方性層が、膜厚方向にハイブリッド配向した状態に固定されたディスコティック液晶及び棒状液晶の少なくともいずれかを含有する前記<1>から<7>記載の光学補償フィルムである。
<9>第1の光学異方性層が、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミド、及びポリエステルイミドからなる群から選ばれる少なくとも一種の非液晶性ポリマーを含有する前記<1>から<7>記載の光学補償フィルムである。
<10>第2の光学異方性層が、セルロースアシレートフィルム、環状オレフィン共重合体(COC)フィルム、又は環状オレフィン重合体(COP)フィルムである前記<1>から<7>記載の光学補償フィルム。
<11>第1の光学異方性層、第2の光学異方性層、並びに偏光子が、一体化された状態で配置されている前記<1>から<10>記載の光学補償フィルムを用いた偏光板である。
<12>第1の光学異方性層の遅相軸がロール長手方向に対し略45°であり、さらに、ロール状に作製された偏光子と第3の光学異方性層の貼合物と、ロール状に作製された第1の光学異方性層及び第2の光学異方性層とをロールtoロールで貼り合せて作製された前記<11>記載の偏光板である。
<13>第1の光学異方性層の配向軸方向と略直交もしくは略平行である遅相軸を有する第2の光学異方性層の遅相軸をロール長手方向に対して略45°方向に発現させ、さらに、ロール状に作製された偏光子と第1の光学異方性層及び第2の光学異方性層とをロールtoロールで貼り合せて作製された前記<2>もしくは<3>記載の光学補償フィルムを用いた偏光板である。
<14>第1の光学異方性層の遅相軸と略直交もしくは略平行である遅相軸を有する第2の光学異方性層の遅相軸をロール長手方向に対して略直行もしくは略平行に発現させ、その他の層とフィルム長手方向が40°〜50°をなす角度に単位長さ毎に枚葉に貼り合わせて作成した前記<2>もしくは<3>記載の光学補償フィルムを用いた偏光板である。
<15>第1の光学異方性層の遅相軸とのなす角が30°〜42°もしくは48°〜60°である遅相軸を有する第2の光学異方性層の遅相軸をロール長手方向に対して直行もしくは平行より3°以上ずれた方向に発現させ、さらに、ロール状に作製された偏光膜と、ロール状に作製された第1および第2の光学異方性層とをロールtoロールで貼り合せて作製された前記<4>もしくは<5>記載の光学補償フィルムを用いた偏光板である。
<16>2層以上からなる光学補償フィルムの液晶セルの配向軸と直交方向の面内レタデーション(Re_total)の表裏フィルムの合計値が、液晶セルの黒もしくは白表示時の面内レタデーション(Re0)と略一致する前記<1>から<7>記載の光学補償フィルムを用いた液晶パネルである。
<17>2層以上からなる光学補償フィルムの液晶セルの配向軸と直交方向の面内レタデーション(Re_total)が表用と裏用とで略一致する前記<16>記載の液晶パネルである。
<18>第2の光学異方性層の厚み方向のレタデーション(Rth2)が、0nm<Rth2<Δnd/2を満たす請求項16または17記載の液晶パネルである。ただし、Δnは駆動電圧非印加状態の液晶セルの複屈折を表し、dは液晶セルの液晶層の厚み(nm)を表す。
<19>液晶セルのΔndが、500nm<Δnd<1300nmを満足する前記<16>から<18>記載の液晶パネルである。
<20>液晶セルが、ベンド配向モードまたは水平配向モードの液晶セルである前記<11>から<15>記載の偏光板を1枚以上用いた液晶パネルである。
<21>少なくとも一方の液晶セルと偏光膜間に配置され、第1の光学異方性層と、該第1の光学異方性層を支持し、かつ、光学異方性を有する第2の光学異方性層とを有する光学補償フィルムの位相差調節方法であって、第1の光学異方性層の遅相軸と、第2の光学異方性層の遅相軸とがなす角度を、0°から42°もしくは48°から90°に調節することを特徴とする光学補償フィルムの位相差調節方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、位相差の調節に優れた光学補償フィルムと、該光学補償フィルムを用いた偏光板と、該偏光板を有する液晶表示装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の光学補償フィルム、該光学補償フィルムを用いた偏光板、該偏光板を用いた液晶表示装置について説明する。
【0013】
〔偏光板〕
本発明の偏光板は、少なくとも、偏光子と、光学補償フィルムとを有する。
【0014】
<偏光子>
前記偏光子としては、公知のものを適宜選択して用いられるが、Optiva Inc.に代表される塗布型偏光子、又はバインダーとヨウ素、もしくは二色性色素とからなる偏光子が好ましい。
前記ヨウ素及び二色性色素は、バインダー中で配向することで偏向性能を発現する。ヨウ素及び二色性色素は、バインダー分子に沿って配向するか、もしくは二色性色素が液晶のような自己組織化により一方向に配向することが好ましい。
現在市販の偏光子は、延伸したポリマーを、浴槽中のヨウ素もしくは二色性色素の溶液に浸漬し、バインダー中にヨウ素、もしくは二色性色素をバインダー中に浸透させることで作製されるのが一般的である。
また、市販の偏光子は、ポリマー表面から4μm程度(両側合わせて8μm程度)にヨウ素もしくは二色性色素が分布しており、十分な偏光性能を得るためには、少なくとも10μmの厚みが必要である。浸透度は、ヨウ素もしくは二色性色素の溶液濃度、同浴槽の温度、同浸漬時間により制御することができる。
したがって、上記のように、バインダーの厚みの下限は、10μmであることが好ましい。厚みの上限は、偏光板を液晶表示装置に使用した場合に発生する光漏れ現象の観点からは、薄ければ薄い程よい。現在市販の偏光板(約30μm)以下であることが好ましく、25μm以下が好ましく、20μm以下が更に好ましい。20μm以下であると、光漏れ現象は、17インチの液晶表示装置で観察されなくなる。
【0015】
偏光子のバインダーは架橋していてもよい。偏光子のバインダーとして、それ自体架橋可能なポリマーを用いてもよい。官能基を有するポリマー、又はポリマーに官能基を導入して得られたポリマーに、光、熱あるいはpH変化を与えて、官能基を反応させてポリマー間を架橋させ、偏光子を形成することができる。
また、架橋剤によりポリマーに架橋構造を導入してもよい。反応活性の高い化合物である架橋剤を用いてバインダー間に架橋剤に由来する結合基を導入して、バインダー間を架橋することにより形成することができる。
架橋は一般に、架橋可能なポリマー、又はポリマーと架橋剤との混合物を含む塗布液を、支持体上に塗布した後、加熱することにより実施できる。最終商品の段階で耐久性が確保できればよいため、架橋させる処理は、最終の偏光板を得るまでのいずれの段階で行なってもよい。
【0016】
上記した様に、偏光子のバインダーとしては、それ自体架橋可能なポリマーあるいは架橋剤により架橋されるポリマーのいずれも使用することができる。
ポリマーの例には、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、ポリビニルトルエン、クロロスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、塩素化ポリオレフィン(例、ポリ塩化ビニル)、ポリエステル、ポリイミド、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、カルボキシメチルセルロース、ポリプロピレン、ポリカーボネート及びそれらのコポリマー(例、アクリル酸/メタクリル酸共重合体、スチレン/マレインイミド共重合体、スチレン/ビニルトルエン共重合体、酢酸ビニル/塩化ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体)が含まれる。シランカップリング剤をポリマーとして用いてもよい。
水溶性ポリマー(例、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコール)が好ましく、ゼラチン、ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコールが更に好ましく、ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコールが特に好ましい。
【0017】
ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコールの鹸化度は、70〜100%が好ましく、80〜100%が更に好ましく、95〜100%が特に好ましい。ポリビニルアルコールの重合度は、100〜5,000が好ましい。
変性ポリビニルアルコールは、ポリビニルアルコールに対して、共重合変性、連鎖移動変性あるいはブロック重合変性により変性基を導入して得られる。共重合変性では、変性基として、COONa、Si(OH)、N(CH・Cl、C19COO、SO3Na、C1225を導入することができる。連鎖移動変性では、変性基として、COONa、SH、SC1225を導入することができる。
変性ポリビニルアルコールの重合度は、100〜3,000が好ましい。変性ポリビニルアルコールについては、特開平8−338913号公報、特開平9−152509号公報、及び特開平9−316127号公報に記載がある。
また、鹸化度が85〜95%の未変性ポリビニルアルコール、及びアルキルチオ変性ポリビニルアルコールが特に好ましい。
更に、ポリビニルアルコール、及び変性ポリビニルアルコールは、二種以上を併用してもよい。
【0018】
架橋剤については、米国再発行特許23297号明細書に記載があり、本発明に用いることができる。また、ホウ素化合物(例、ホウ酸、硼砂)も、架橋剤として用いることができる。
バインダーの架橋剤は、多く添加すると、偏光子の耐湿熱性を向上させることができる。ただし、バインダーに対して架橋剤を50質量%以上添加すると、ヨウ素、もしくは二色性色素の配向性が低下する。架橋剤の添加量は、バインダーに対して、0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜15質量%が更に好ましい。
バインダーは、架橋反応が終了した後でも、反応しなかった架橋剤をある程度含んでいる。ただし、残存する架橋剤の量は、バインダー中に1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることが更に好ましい。
バインダー中に1.0質量%を超える量で架橋剤が含まれていると、耐久性に問題が生じる場合がある。すなわち、架橋剤の残留量が多い偏光子を液晶表示装置に組み込み、長期使用、あるいは高温高湿の雰囲気下に長期間放置した場合に、偏光度の低下が生じることがある。
【0019】
前記二色性色素としては、アゾ系色素、スチルベン系色素、ピラゾロン系色素、トリフェニルメタン系色素、キノリン系色素、オキサジン系色素、チアジン系色素あるいはアントラキノン系色素が用いられる。二色性色素は、水溶性であることが好ましい。二色性色素は、親水性置換基(例、スルホ、アミノ、ヒドロキシル)を有することが好ましい。
二色性色素の例には、C.I.ダイレクト・イエロー12、C.I.ダイレクト・オレンジ39、C.I.ダイレクト・オレンジ72、C.I.ダイレクト・レッド39、C.I.ダイレクト・レッド79、C.I.ダイレクト・レッド81、C.I.ダイレクト・レッド83、C.I.ダイレクト・レッド89、C.I.ダイレクト・バイオレット48、C.I.ダイレクト・ブルー67、C.I.ダイレクト・ブルー90、C.I.ダイレクト・グリ−ン59、C.I.アシッド・レッド37が含まれる。
二色性色素については、特開平1−161202号公報、特開平1−172906号公報、特開平1−172907号公報、特開平1−183602号公報、特開平1−248105号公報、特開平1−265205号公報、特開平7−261024号公報に記載がある。
【0020】
二色性色素は、遊離酸、又はアルカリ金属塩、アンモニウム塩、もしくはアミン塩等の塩として用いられる。二種類以上の二色性色素を配合することにより、各種の色相を有する偏光子を製造することができる。偏光軸を直交させた時に黒色を呈する化合物(色素)を用いた偏光子、あるいは黒色を呈するように各種の二色性分子を配合した偏光子又は偏光板が、単板透過率及び偏光率とも優れており、好ましい。
【0021】
<偏光子の製造方法>
前記偏光子は、公知の方法を用いて適宜製造されるが、バインダーを偏光子の長手方向(MD方向)に延伸した後に、ヨウ素、二色性染料で染色することが好ましい。
【0022】
延伸法の場合、延伸倍率は、2.5〜30.0倍が好ましく、3.0〜10.0倍が更に好ましい。延伸は、空気中でのドライ延伸で実施できる。
また、水に浸漬した状態でのウェット延伸を実施してもよい。ドライ延伸の延伸倍率は、2.5〜5.0倍が好ましく、ウェット延伸の延伸倍率は、3.0〜10.0倍が好ましい。
延伸工程は、数回に分けて行ってもよい。数回に分けることによって、高倍率延伸でもより均一に延伸することができる。
延伸前に、横あるいは縦に若干の延伸(幅方向の収縮を防止する程度)を行ってもよい。延伸は、二軸延伸におけるテンター延伸を左右異なる工程で行うことによって実施できる。上記二軸延伸は、通常のフィルム製膜において行われている延伸方法と同様である。
【0023】
偏光子の両面には、保護フィルムを配置するのが好ましく、一方の面の保護フィルムとして、本発明のロール状光学フィルムの一部を用いるのが好ましい。
例えば、保護フィルム/偏光子/第3の光学異方性層/第2の光学異方性層/第1の光学異方性層の順に積層されるか、保護フィルム/偏光子/第3の光学異方性層/第2の光学異方性層/配向膜/第1の光学異方性層の順に積層されることが好ましい。
但し、この構成に限定されず、偏光子と第1の光学異方性層の表面側とを貼りあわせてもよい。貼り合せには接着剤を用いてもよく、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂(アセトアセチル基、スルホン酸基、カルボキシル基、オキシアルキレン基による変性ポリビニルアルコールを含む)やホウ素化合物水溶液を接着剤として用いることができる。これらの中でも、ポリビニルアルコール系樹脂が好ましい。
接着剤層の厚みは、乾燥後に0.01〜10μmの範囲にあることが好ましく、0.05〜5μmの範囲にあることが特に好ましい。
【0024】
〔光学補償フィルム〕
前記光学補償フィルムは、少なくとも、第1の光学異方性層と、第1の光学異方性以外の他の光学異方性層とを備える。
【0025】
<第1の光学異方性層>
前記第1の光学異方性層は、液晶化合物から形成された光学異方性層であることが好ましい。
第1の光学異方性層の形成に用いる液晶化合物としては、棒状液晶化合物及びディスコティック液晶化合物が挙げられる。棒状液晶化合物及びディスコティック液晶化合物は、高分子液晶でも低分子液晶でもよく、更に、低分子液晶が架橋され、液晶性を示さなくなったものも含まれる。
【0026】
(棒状液晶化合物)
本発明に使用可能な棒状液晶化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類及びアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。
なお、棒状液晶化合物には、金属錯体も含まれる。また、棒状液晶化合物を繰り返し単位中に含む液晶ポリマーも用いることができる。言い換えると、棒状液晶化合物は、(液晶)ポリマーと結合していてもよい。
棒状液晶化合物については、季刊化学総説第22巻「液晶の化学(1994)日本化学会編」の第4章、第7章、及び第11章、及び液晶デバイスハンドブック日本学術振興会第142委員会編の第3章に記載がある。
【0027】
本発明に用いる棒状液晶化合物の複屈折率は、0.001〜0.7の範囲にあることが好ましい。
棒状液晶化合物は、その配向状態を固定するために、重合性基を有することが好ましい。重合性基は、不飽和重合性基又はエポキシ基が好ましく、不飽和重合性基が更に好ましく、エチレン性不飽和重合性基が特に好ましい。
【0028】
(ディスコティック液晶化合物)
ディスコティック液晶化合物には、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年)に記載されているベンゼン誘導体、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.122巻、141頁(1985年)、Physics lett,A,78巻、82頁(1990)に記載されているトルキセン誘導体、B.Kohneらの研究報告、Angew.Chem.96巻、70頁(1984年)に記載されたシクロヘキサン誘導体及びJ.M.Lehnらの研究報告、J.Chem.Commun.,1794頁(1985年)、J.Zhangらの研究報告、J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年)に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクルが含まれる。
【0029】
前記ディスコティック液晶化合物には、分子中心の母核に対して、直鎖のアルキル基、アルコキシ基、又は置換ベンゾイルオキシ基が母核の側鎖として放射線状に置換した構造の、液晶性を示す化合物も含まれる。分子又は分子の集合体が、回転対称性を有し、一定の配向を付与できる化合物であることが好ましい。
ディスコティック液晶化合物から第1の光学異方性層を形成した場合、最終的に第1の光学異方性層に含まれる化合物は、もはや液晶性を示す必要はない。
例えば、低分子のディスコティック液晶化合物が熱、又は光で反応する基を有しており、熱又は光によって該基が反応して、重合又は架橋し、高分子量化することによって第1の光学異方性層が形成される場合などは、第1の光学異方性層中に含まれる化合物は、もはや液晶性を失っていてもよい。
ディスコティック液晶化合物の好ましい例は、特開平8−50206号公報に記載されている。また、ディスコティック液晶化合物の重合については、特開平8−27284号公報に記載がある。
【0030】
ディスコティック液晶化合物を重合により固定するためには、ディスコティック液晶化合物の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させる必要がある。ただし、円盤状コアに重合性基を直結させると、重合反応において配向状態を保つことが困難になる。そこで、円盤状コアと重合性基との間に、連結基を導入する。
従って、重合性基を有するディスコティック液晶化合物は、下記一般式(I)で表わされる化合物であることが好ましい。
【0031】
【化1】


上記一般式(I)中、Dは円盤状コアであり、Lは二価の連結基であり、Qは重合性基であり、nは4〜12の整数である。
【0032】
円盤状コア(D)の例として、(D1)〜(D15)を以下に示す。以下の各例において、LQ(又はQL)は、二価の連結基(L)と重合性基(Q)との組み合わせを意味する。
【0033】
【化2】

【0034】
【化3】

【0035】
【化4】

【0036】
【化5】

【0037】
また、上記一般式(I)において、二価の連結基(L)は、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、−CO−、−NH−、−O−、−S−及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。
二価の連結基(L)は、アルキレン基、アリ−レン基、−CO−、−NH−、−O−及び−S−からなる群より選ばれる二価の基を少なくとも二つ組み合わせた二価の連結基であることが更に好ましい。
二価の連結基(L)は、アルキレン基、アリーレン基、−CO−及び−O−からなる群より選ばれる二価の基を少なくとも二つ組み合わせた二価の連結基であることが特に好ましい。
前記アルキレン基の炭素原子数は、1〜12であることが好ましい。前記アルケニレン基の炭素原子数は、2〜12であることが好ましい。前記アリ−レン基の炭素原子数は、6〜10であることが好ましい。
【0038】
二価の連結基(L)の例として、(L1〜L24)を以下に示す。左側が円盤状コア(D)に結合し、右側が重合性基(Q)に結合する。ALはアルキレン基又はアルケニレン基、ARはアリーレン基を意味する。なお、アルキレン基、アルケニレン基及びアリーレン基は、置換基(例、アルキル基)を有していてもよい。
【0039】
L1:−AL−CO−O−AL−
L2:−AL−CO−O−AL−O−
L3:−AL−CO−O−AL−O−AL−
L4:−AL−CO−O−AL−O−CO−
L5:−CO−AR−O−AL−
L6:−CO−AR−O−AL−O−
L7:−CO−AR−O−AL−O−CO−
L8:−CO−NH−AL−
L9:−NH−AL−O−
L10:−NH−AL−O−CO−
【0040】
L11:−O−AL−
L12:−O−AL−O−
L13:−O−AL−O−CO−
L14:−O−AL−O−CO−NH−AL−
L15:−O−AL−S−AL−
L16:−O−CO−AR−O−AL−CO−
L17:−O−CO−AR−O−AL−O−CO−
L18:−O−CO−AR−O−AL−O−AL−O−CO−
L19:−O−CO−AR−O−AL−O−AL−O−AL−O−CO−
L20:−S−AL−
L21:−S−AL−O−
L22:−S−AL−O−CO−
L23:−S−AL−S−AL−
L24:−S−AR−AL−
【0041】
上記一般式(I)の重合性基(Q)は、重合反応の種類に応じて決定する。重合性基(Q)は、不飽和重合性基又はエポキシ基であることが好ましく、不飽和重合性基であることが更に好ましく、エチレン性不飽和重合性基であることが特に好ましい。
また、上記一般式(I)において、nは4〜12の整数である。具体的な数字は、円盤状コア(D)の種類に応じて決定される。なお、複数のLとQの組み合わせは、異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0042】
前記第1の光学異方性層中に液晶化合物の配向については、第1の光学異方性層の分子対称軸の平均方向が、長手方向に対して43°〜47°であることが好ましい。
ハイブリッド配向では、液晶化合物の分子対称軸と第2の光学異方性層の面との角度が、第1の光学異方性層の深さ方向でかつ第2の光学異方性層の面からの距離の増加と共に増加又は減少している。
角度は、距離の増加と共に増加することが好ましい。更に、角度の変化としては、連続的増加、連続的減少、間欠的増加、間欠的減少、連続的増加と連続的減少を含む変化、あるいは、増加及び減少を含む間欠的変化が可能である。間欠的変化は、厚さ方向の途中で傾斜角が変化しない領域を含んでいる。
角度は、角度が変化しない領域を含んでいても、全体として増加又は減少していればよい。更に、角度は連続的に変化することが好ましい。
【0043】
液晶化合物の分子対称軸の平均方向は、一般に液晶化合物もしくは配向膜の材料を選択することにより、又はラビング処理方法の選択することにより、調整することができる。
本発明の好ましい実施態様として、第2の光学異方性層と液晶化合物層の遅相軸が互いに直交でも平行でもない光学フィルムの場合、第2の光学異方性層の遅相軸と異なる方向にラビング処理をすることで、液晶化合物層の遅相軸は、いかようにも簡便に調整することができる。
また、表面側(空気側)の液晶化合物の分子対称軸方向は、一般に、液晶化合物又は液晶化合物と共に使用する添加剤の種類を選択することにより調整することができる。
液晶化合物と共に使用する添加剤の例としては、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマー及びポリマーなどを挙げることができる。分子対称軸の配向方向の変化の程度も、上記と同様に、液晶化合物と添加剤との選択により調整できる。特に界面活性剤に関しては、上述の塗布液の表面張力制御と両立することが好ましい。
【0044】
液晶化合物と共に使用する可塑剤、界面活性剤及び重合性モノマーは、ディスコティック液晶化合物と相溶性を有し、液晶化合物の傾斜角の変化を与えられるか、あるいは配向を阻害しないことが好ましい。前記重合性モノマーとしては、ビニル基、ビニルオキシ基、アクリロイル基、及びメタクリロイル基を有する化合物が好ましい。
また、上記化合物の添加量は、液晶化合物に対して一般に1〜50質量%の範囲にあり、5〜30質量%の範囲にあることが好ましい。なお、重合性の反応性官能基数が4以上のモノマーを混合して用いると、配向膜と第1の光学異方性層間の密着性を高めることができる。
【0045】
液晶化合物としてディスコティック液晶化合物を用いる場合は、ディスコティック液晶化合物とある程度の相溶性を有し、ディスコティック液晶化合物に傾斜角の変化を与えられるポリマーを用いるのが好ましい。
ポリマーの例としては、セルロースエステルを挙げることができる。セルロースエステルの好ましい例としては、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、ヒドロキシプロピルセルロース、及びセルロースアセテートブチレートを挙げることができる。
ディスコティック液晶化合物の配向を阻害しないように、上記ポリマーの添加量は、ディスコティック液晶化合物に対して0.1〜10質量%の範囲にあることが好ましく、0.1〜8質量%の範囲にあることがより好ましく、0.1〜5質量%の範囲にあることが更に好ましい。
ディスコティック液晶化合物のディスコティックネマティック液晶相−固相転移温度は、70〜300℃が好ましく、70〜170℃がより好ましい。
【0046】
本発明において、第1の光学異方性層の厚さは、0.1〜20μmであることが好ましく、0.5〜15μmであることが更に好ましく、1〜10μmであることが特に好ましい。
【0047】
前記第1の光学異方性層は、後述する他の光学異方性層(第2の光学異方性層)の表面に直接形成してもよいし、該他の光学異方性層上に配向膜を形成し、該配向膜上に形成してもよい。
また、別の基材に形成した液晶化合物層を、粘着剤等を用いて、該他の光学異方性層上に転写することで、本発明の光学補償フィルムを作製することも可能である。
【0048】
第1の光学異方性層のReレターデーション値、及びRthレターデーション値は、それぞれ、下記式(I)及び(II)で定義される。なお、下記式(I)、及び(II)において、nxはフィルム面内の遅相軸方向(屈折率が最大となる方向)の屈折率を指し、nyは、フィルム面内の進相軸方向(屈折率が最小となる方向)の屈折率を指し、nzは、フィルムの厚み方向の屈折率を指し、dは単位をnmとするフィルムの厚さを指す。
Re=(nx−ny)×d・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・式(I)
Rth={(nx+ny)/2−nz}×d・・・・・・・・・・・・式(II)
【0049】
また、本発明の光学補償フィルムは、第1の光学異方性層の配向軸と面内直交方向と法線を含む平面内で、前記法線から前記第1の光学異方性層の面方向に40°傾いた方向から測定した面内レターデーション(Re1(40°)、及び前記法線から逆に40°傾いた方向から測定したレターデーション値Re1(−40°)が、下記数式(1)又は(2)
Re1(40°)> Re1(−40°)の場合
3 ≦ Re1(40°)/ Re1(−40°)≦ 20・・・(1)
Re1(40°)< Re1(−40°)の場合
3 ≦ Re1(−40°)/ Re1(40°)≦ 20・・・(2)
を満たすことが好ましい。
【0050】
また、本発明の光学補償フィルムは、第1の光学異方性層の面内レタデーション(Re1)が、10nm<Re1<50nmを満たすことが好ましい。
【0051】
<他の光学異方性層>
(第2の光学異方性層及び第3の光学異方性層)
前記他の光学異方性層は、前記第1の光学異方性層に積層される。該他の光学異方性層は、1層又は2層以上からなるものであってよい。
なお、本願明細書において、該他の光学異方性層を、第2の光学異方性層、第3の光学異方性層と称する場合がある。
該他の光学異方性層は、透明であるのが好ましく、具体的には、光透過率が80%以上である透明なポリマーフィルムが好ましい。
【0052】
該他の光学異方性層として使用可能なポリマーフィルムとしては、セルロースエステル(例、セルロースアセテート、セルロースジアセテート)、ノルボルネン系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等からなるポリマーフィルムが挙げられる。市販のポリマー(ノルボルネン系ポリマーでは、ア−トン(登録商標)、及びゼオネックス(登録商標)を用いてもよい。中でもセルロースエステルからなるフィルムが好ましく、セルロースの低級脂肪酸エステルからなるフィルムが更に好ましい。低級脂肪酸とは、炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味する。特に、炭素原子数が2(セルロースアセテート)、3(セルロースプロピオネート)又は4(セルロースブチレート)が好ましい。
そして、これらの中でも、セルロースアセテートからなるフィルムが特に好ましい。また、セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートのような混合脂肪酸エステルを用いることもできる。
【0053】
なお、従来知られているポリカーボネートやポリスルホンのような複屈折の発現しやすいポリマーであっても、国際公開WO00/26705号パンフレットに記載のように、分子を修飾することで複屈折の発現性を制御すれば、本発明において、他の光学異方性層として用いることもできる。
【0054】
ポリマーフィルムとしては、酢化度が55.0〜62.5%であるセルロースアセテートを使用することが好ましい。酢化度は、57.0〜62.0%であることが更に好ましい。ここで、酢化度とは、セルロース単位質量当たりの結合酢酸量を意味する。
酢化度は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテート等の試験法)におけるアセチル化度の測定及び計算によって求められる。
セルロースアセテートの粘度平均重合度(DP)は、250以上であることが好ましく、290以上であることが更に好ましい。また、セルロースアセテートは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるMw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)の分子量分布が狭いことが好ましい。
具体的なMw/Mnの値としては、1.0〜40であることが好ましく、1.0〜1.65であることが更に好ましく、1.0〜1.6であることが特に好ましい。
【0055】
セルロースアセテートでは、セルロースの2位、3位及び6位のヒドロキシルが均等に置換されるのではなく、6位の置換度が小さくなる傾向がある。
他の光学異方性層として用いるポリマーフィルムでは、セルロースの6位置換度が、2位、3位に比べて同程度又は多い方が好ましい。
2位、3位及び6位の置換度の合計に対する6位の置換度の割合は、30〜40%であることが好ましく、31〜40%であることがより好ましく、32〜40%であることが特に好ましい。また、6位の置換度は0.88以上であることが好ましい。なお、各位置の置換度は、NMRによって測定することできる。
6位置換度が高いセルロースアセテートは、特開平11−5851号公報の段落番号[0043]〜「0044」に記載の合成例1、段落番号[0048]〜[0049]に記載の合成例2、及び段落番号[0051]〜[0052]に記載の合成例3の方法を参照して合成することができる。
【0056】
他の光学異方性層のReレターデーション値、及びRthレターデーション値は、それぞれ、下記式(I)及び(II)で定義される。なお、下記式(I)、及び(II)において、nxはフィルム面内の遅相軸方向(屈折率が最大となる方向)の屈折率を指し、nyは、フィルム面内の進相軸方向(屈折率が最小となる方向)の屈折率を指し、nzは、フィルムの厚み方向の屈折率を指し、dは単位をnmとするフィルムの厚さを指す。
Re=(nx−ny)×d・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・式(I)
Rth={(nx+ny)/2−nz}×d・・・・・・・・・・・・式(II)
【0057】
また、該他の光学異方性層は、その製膜方向、及び該製膜方向に直交する方向の光弾性係数の絶対値が、共に10×10−12/N以下であることが好ましい。
【0058】
該他の光学異方性層に、セルロースアセテートフィルムを用いる場合、レターデーション上昇剤をフィルム中に含有させるのが好ましい。好ましい化合物例、及びその製造方法は、例えば、特開2000−154261号公報、及び特開2000−111914号公報に記載されている。
【0059】
(配向膜)
本発明の光学補償フィルムは、第1の光学異方性層と、該第1の光学異方性層と接する他の光学異方性層の間に配向膜を有しているのが好ましい。
本発明において、前記配向膜は、架橋されたポリマーからなる層であるのが好ましい。
配向膜に使用されるポリマーは、それ自体架橋可能なポリマーであっても、架橋剤により架橋されるポリマーのいずれも使用することができる。
上記配向膜は、官能基を有するポリマーあるいはポリマーに官能基を導入したものを、光、熱又はPH変化等により、ポリマー間で反応させて形成するか、又は、反応活性の高い化合物である架橋剤を用いてポリマー間に架橋剤に由来する結合基を導入して、ポリマー間を架橋することにより形成することができる。
【0060】
架橋されたポリマーからなる配向膜は、通常、上記ポリマー又はポリマーと架橋剤との混合物を含む塗布液を、第2の光学異方性層上に塗布した後、加熱等を行なうことにより形成することができる。
後述のラビング工程において、配向膜の発塵を抑制するために、架橋度を上げておくことが好ましい。前記塗布液中に添加する架橋剤の量(Mb)に対して、架橋後に残存している架橋剤の量(Ma)の比率(Ma/Mb)を1から引いた値(1−(Ma/Mb))を架橋度と定義した場合、架橋度は50〜100%が好ましく、65〜100%がより好ましく、75〜100%が特に好ましい。
【0061】
前記配向膜に使用されるポリマーは、それ自体架橋可能なポリマーあるいは架橋剤により架橋されるポリマーのいずれも使用することができる。なお、双方の機能を有するポリマーを使用することもできる。
上記ポリマーの例としては、ポリメチルメタクリレート、アクリル酸/メタクリル酸共重合体、スチレン/マレインイミド共重合体、ポリビニルアルコール、及び変性ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、スチレン/ビニルトルエン共重合体、クロロスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル/塩化ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリカーボネート等のポリマー及びシランカップリング剤等の化合物を挙げることができる。
好ましいポリマーの例としては、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリビニルアルコール及び変性ポリビニルアルコール等の水溶性ポリマーであり、更にゼラチン、ポリビルアルコール、及び変性ポリビニルアルコールが好ましく、特にポリビルアルコール及び変性ポリビニルアルコールを挙げることができる。
【0062】
上記ポリマーの中で、ポリビニルアルコール、又は変性ポリビニルアルコールが好ましい。ポリビニルアルコールとしては、例えば鹸化度70〜100%のものであり、一般に鹸化度80〜100%のものであり、より好ましくは鹸化度85〜95%のものである。
重合度としては、100〜3,000の範囲が好ましい。変性ポリビニルアルコールとしては、共重合変性したもの(変性基として、例えば、COONa、Si(OX)、N(CH・Cl、C19COO、SO、Na、C1225等が導入される)、連鎖移動により変性したもの(変性基として、例えば、COONa、SH、C1225等が導入されている)、ブロック重合による変性をしたもの(変性基として、例えば、COOH、CONH、COOR、C等が導入される)等のポリビニルアルコールの変性物を挙げることができる。
重合度としては、100〜3,000の範囲が好ましい。これらの中で、鹸化度80〜100%の未変性〜変性ポリビニルアルコールが好ましく、より好ましくは鹸化度85〜95%の未変性、又はアルキルチオ変性ポリビニルアルコールである。
【0063】
配向膜に用いる変性ポリビニルアルコールとして、下記一般式(2)で表わされる化合物とポリビニルアルコールとの反応物が好ましい。なお、下記一般式(2)において、Rは無置換のアルキル基、又はアクリロリル基、メタクリロイル基もしくはエポキシ基で置換されたアルキル基を表わし、Wはハロゲン原子、アルキル基、又はアルコキシ基を表わし、Xは活性エステル、酸無水物又は酸ハロゲン化物を形成するために必要な原子群を表わし、lは0又は1を表わし、nは0〜4の整数を表わす。
【0064】
【化6】

【0065】
また、配向膜に用いる変性ポリビニルアルコールとして、下記一般式(3)で表わされる化合物とポリビニルアルコールとの反応物も好ましい。なお、下記一般式(3)において、Xは活性エステル、酸無水物又は酸ハロゲン化物を形成するために必要な原子群を表わし、mは2〜24の整数を表わす。
【0066】
【化7】

【0067】
前記一般式(2)、及び一般式(3)により表される化合物と反応させるために用いられるポリビニルアルコールとしては、上記変性されていないポリビニルアルコール、及び上記共重合変性したもの、即ち連鎖移動により変性したもの、ブロック重合による変性をしたもの等のポリビニルアルコールの変性物、を挙げることができる。
上記特定の変性ポリビニルアルコールの好ましい例としては、特開平8−338913号公報に詳しく記載されている。
配向膜にポリビニルアルコール等の親水性ポリマーを使用する場合、硬膜度の観点から、含水率を制御することが好ましく、制御される含水率としては、0.4〜2.5%であることが好ましく、0.6〜1.6%であることがより好ましい。含水率は、市販のカールフィッシャー法の水分率測定器で測定することができる。
なお、配向膜は、10μm以下の膜厚であるのが好ましい。
【0068】
光学補償フィルムのReレターデーション値、及びRthレターデーション値は、それぞれ、下記式(I)及び(II)で定義される。なお、下記式(I)、及び(II)において、nxはフィルム面内の遅相軸方向(屈折率が最大となる方向)の屈折率を指し、nyは、フィルム面内の進相軸方向(屈折率が最小となる方向)の屈折率を指し、nzは、フィルムの厚み方向の屈折率を指し、dは単位をnmとするフィルムの厚さを指す。
Re=(nx−ny)×d・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・式(I)
Rth={(nx+ny)/2−nz}×d・・・・・・・・・・・・式(II)
【0069】
〔光学補償フィルムの製造方法〕
前記光学補償フィルムは、第1の光学異方性層の面内遅相軸と、少なくとも1つの他の光学異方性層(例えば、第2の光学異方性層)の面内遅相軸とのなす角(角度)が0°から42もしくは48°から90°となるように、第1の光学異方性層と、他の光学異方性層(第2の光学異方性層)とを積層して、製造される。該光学補償フィルムは、適宜、公知の方法を選択して、製造される。
【0070】
以下、ロール状光学補償フィルムの製造方法を例に挙げて、光学補償フィルムの製造方法を説明する。
【0071】
(ロール状光学フィルムの製造方法)
ロール状光学フィルムの製造方法は、下記工程(1)〜(4)を連続して行う。
工程(1):長手方向に搬送される長尺状の他の光学異方性層(例えば、第2の光学異方性層)の表面、又は該他の光学異方性層上に形成された配向膜の表面に、ラビングロールによりラビング処理を施す工程。
工程(2):液晶性化合物を含む塗布液を前記ラビング処理面に塗布する工程。
工程(3):塗布された塗布液を乾燥するのと同時に又は乾燥した後に、液晶転移温度以上の温度で前記液晶化合物を配向させ、その配向を固定して第1の光学異方性層を作製する工程。
工程(4):前記第1の光学異方性層が形成された長尺状の積層体を巻き取る工程。
【0072】
ここで、工程(3)における液晶転移温度以上の温度で前記液晶化合物を配向させる間に、前記ラビング処理された方向以外の方向に吹く液晶化合物表面の膜面風速が、下記数式(3)を満たすことが好ましく、下記式(3)において、Vが0〜2.5×10−3×ηであることがより好ましい。なお、下記式(3)中、Vは液晶化合物表面の膜面風速(m/sec)、ηは液晶化合物の配向温度での液晶化合物層の粘度(cp)である。
【0073】
0<V<5.0×10−3×η・・・・・・・・・・・・・・・・・式(3)
【0074】
該製造方法によれば、光学フィルムを連続的に安定に製造することができ、大量生産に適する。
OCBモードの液晶表示装置に本発明の光学フィルムを適用する場合は、該光学フィルムと、偏光子とを、ロールtoロールで貼合することが好ましい。
【0075】
更に、本発明の光学フィルムの製造方法においては、以下の(a)〜(d)のいずれかの要件を含むことが望ましい。なお、これらの各工程の詳細は、特開平9−73081号公報に記載されている。
(a)上記工程(2)において、液晶化合物として架橋性官能基を有する重合性液晶化合物を用い、上記工程(3)において、連続的に塗布層を光照射して重合性液晶化合物を重合により硬化させて配向状態に固定し、その後、連続的に上記工程(4)を行なう。
(b)上記工程(1)において、前記第2の光学異方性層又は配向膜の表面を除塵しながら、ラビングロールでラビング処理する。
(c)上記工程(2)の前に、ラビング処理した前記第2の光学異方性層又は前記配向膜の表面を除塵する工程を行う。
(d)上記工程(4)の前に、形成した第1の光学異方性層の光学特性を連続的に測定することにより検査する検査工程。
【0076】
ここで、上記工程(1)〜(4)の詳細について、以下に説明する。
【0077】
[工程(1)]
前記工程(1)では、長手方向に搬送される長尺状の光学異方性層積層体の第2の光学異方性層の表面、又は該第2の光学異方性層上に形成された配向膜の表面に、ラビングロールによりラビング処理を施す。
【0078】
前記工程(1)に用いるラビングロールの直径は、ハンドリング適性、及び布寿命の観点から、100〜500mmであることが好ましく、200〜400mmであることが更に好ましい。
ラビングロールの幅は、搬送するフィルムの幅よりも広いことが必要であり、フィルム幅×21/2以上であることが好ましい。
また、ラビングロールの回転数は、発塵の観点から低く設定することが好ましく、液晶化合物の配向性にもよるが、100〜1,000rpmであることが好ましく、250〜850rpmであることが更に好ましい。
【0079】
ラビングロールの回転数を低くしても液晶化合物の配向性を維持するには、ラビング時の第2の光学異方性層又は配向膜を加熱することが好ましい。加熱温度は、第2の光学異方性層又は配向膜表面の膜面温度で、(素材のTg−50℃)〜(素材のTg+50℃)であることが好ましい。ポリビニルアルコールからなる配向膜を使用する場合は、ラビングの環境湿度を制御することが好ましく、25℃の相対湿度として25〜70%RHであることが好ましく、30〜60%RHであることが更に好ましく、35〜55%RHであることが特に好ましい。
【0080】
前記光学異方性層積層体の搬送速度は、生産性の観点と液晶の配向性の観点から、10〜100m/分であることが好ましく、15〜80m/分であることが更に好ましい。搬送は、従来、フィルムの搬送に用いられる種々の装置を用いて行うことができ、特に搬送方式については制限されない。
【0081】
なお、配向膜は、前述のポリビニルアルコール等の素材を、水及び/又は有機溶媒等に溶解した塗布液を、第2の光学異方性層の表面に塗布して、乾燥することによって作製することができる。配向膜の作製は、上記一連の工程の前に行うことができ、搬送される長尺状の第2の光学異方性層の表面に配向膜を連続的に作製してもよい。
【0082】
[工程(2)]
上記工程(2)では、液晶性化合物を含む塗布液を前記ラビング処理面に塗布する。第1の光学異方性層形成用の塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。
有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラクロロエタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライド及びケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
【0083】
均一性の高い第1の光学異方性層を作製するためには、塗布液の表面張力は、25mN/m以下であることが好ましく、22mN/m以下であるのが更に好ましい。
この低表面張力を実現するには、該第1の光学異方性層を形成する塗布液に、界面活性剤、又はフッ素化合物、特に、下記(i)のモノマーに相当する繰り返し単位及び下記(ii)のモノマーに相当する繰り返し単位を含むフルオロ脂肪族基含有共重合体等のフッ素系ポリマーを含有することが好ましい。
(i)下記一般式(4)で表されるフルオロ脂肪族基含有モノマー
(ii)ポリ(オキシアルキレン)アクリレート及び/又はポリ(オキシアルキレン)メタクリレート
【0084】
【化8】

【0085】
上記一般式(4)において、Rは水素原子又はメチル基を表し、Xは酸素原子、硫黄原子、又は−N(R)−を表し、mは、1以上6以下の整数、nは、2〜4の整数を表す。また、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。
【0086】
第1の光学異方性層形成用塗布液中に添加する前記フッ素系ポリマーの重量平均分子量は、3,000〜100,000が好ましく、6,000〜80,000がより好ましい。
更に、前記フッ素系ポリマーの添加量は、液晶化合物を主とする塗布組成物(溶媒を除いた塗布成分)に対して0.005〜8質量%が好ましく、0.01〜1質量%がより好ましく、0.05〜0.5質量%が更に好ましい。
前記フッ素系ポリマーの添加量が、0.005質量%未満では効果が不十分であり、また8質量%より多くなると、塗膜の乾燥が十分に行われなくなったり、光学フィルムとしての性能(例えばレターデーションの均一性、等)に悪影響を及ぼす。
【0087】
前記塗布液のラビング処理面への塗布は、公知の方法(例、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により実施することができる。塗布量は、第1の光学異方性層の所望の厚みに基づいて適宜決定することができる。
【0088】
[工程(3)]
上記工程(3)では、塗布された塗布液を乾燥するのと同時、又は乾燥した後に、液晶転移温度以上の温度で前記液晶化合物を配向させ、その配向を固定して第1の光学異方性層を作製する。液晶化合物は、乾燥時の加熱によってもしくは乾燥後の加熱によって、所望の配向となる。
乾燥温度は、塗布液に用いた溶媒の沸点、並びに第2の光学異方性層、第3の光学異方性層及び配向膜の素材を考慮して決定することができる。液晶化合物の配向温度は、用いる液晶化合物の液晶相−固相転移温度に応じて決定することができる。
液晶化合物として、ディスコティック液晶化合物を用いる場合は、配向温度は、70〜300℃が好ましく、70〜170℃が更に好ましい。
また、液晶状態の粘度は、10〜10,000cpであることが好ましく、100〜1,000cpであることが更に好ましい。
粘度が低すぎると、配向時の風の影響を受けやすく、連続生産のために、非常に高精度の風速/風向制御が必要となる。一方、粘度が高いと風の影響は受けにくいが、液晶の配向が遅くなり、生産性が非常に悪化することとなる。
液晶層の粘度は、液晶化合物の分子構造によって適宜制御できる。また、上述の添加剤(特にセルロース系のポリマー、等)、及びゲル化剤等を適量使用することで所望の粘度に調整する方法が好ましく用いられる。
加熱は、所定の温度の温風を送風することによって、又は所定の温度に維持された加熱室内を搬送することによって実施できる。
このときの温風は、下記式(3)に示すように、液晶化合物層に当たるラビング方向以外の風速を制御されることが好ましい。なお、下記式(3)中、Vは液晶化合物表面の膜面風速(m/sec)、ηは液晶化合物の配向温度での液晶化合物層の粘度(cp)である。
【0089】
0<V<5.0×10−3×η・・・・・・・・・・式(3)
【0090】
更に、配向させた液晶化合物を、配向状態を維持して固定し、第1の光学異方性層を形成する。液晶化合物の固定は、固相転移温度まで冷却することによって、又は重合反応により実施することができるが、重合反応により行うのが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれる。光重合反応が好ましい。
光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、及び米国特許2367670号の各明細書に記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書に記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書に記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、及び米国特許2951758号の各明細書に記載)、トリアリールイミダゾールダイマーと、p−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書に記載)、アクリジン及びフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、及び米国特許4239850号明細書に記載)、及びオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書に記載)が含まれる。
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%の範囲にあることが好ましく、0.5〜5質量%の範囲にあることが更に好ましい。
【0091】
液晶化合物の重合を進行させて固定するための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、20〜50J/cmの範囲にあることが好ましく、20〜5,000mJ/cmの範囲にあることがより好ましく、100〜800mJ/cmの範囲にあることが更に好ましい。
また、光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。光照射は、第1の光学異方性層形成用塗布液を塗布した第2の光学異方性層、及び第3の光学異方性層を、1以上の光源が上下及び左右のいずれかの位置に配置された搬送路を通過させることによって実施することができる。
【0092】
上記工程(4)に移行する前に、上記工程(3)で作製した第1の光学異方性層の上に、保護層を設けることもできる。例えば、あらかじめ作製した保護層用フィルムを、長尺状に作製された第1の光学異方性層の表面に連続的にラミネートしてもよい。
【0093】
上記工程(4)では、前記第1の光学異方性層が形成された長尺状の積層体を巻き取る。巻き取りは、例えば、連続的に搬送される第1の光学異方性層を有する第2の光学異方性層、及び第3の光学異方性層を、円筒状の芯に巻きつけることによって行ってもよい。
上記工程(4)により得られる光学フィルムは、ロール形態であるので、大量に製造した場合にもその取り扱いが容易である。そのままの形態で保管・搬送できる。
【0094】
本発明の製造方法の各工程の諸条件、使用可能な装置等の詳細については、特開平9−73081号公報に記載の諸条件、装置を適用することができる。
【0095】
〔偏光板の製造方法〕
前記偏光板は、前記光学補償フィルムと、前記偏光子とを積層し、一体化することによって製造される。一体化する際、光学補償フィルムの第1の光学補償層の遅相軸と、偏光子の透過軸とが、所定の角度をなすように、設定される。一体化には、該偏光板の機能を損なわない限り、適宜、公知の接着剤等を用いることができる。該偏光板は、偏光機能のみならず、光学補償機能をも有する。
【0096】
〔液晶表示装置〕
本発明の光学補償フィルム、該光学補償フィルムを用いた偏光板は、複屈折モードの液晶表示装置、特にOCB方式の液晶表示装置、及びECB型反射型液晶表示装置、等、光学フィルムが装着されないと黒/白表示が困難な液晶表示装置に有利に用いられる。
透過型液晶表示装置は、液晶セルと、その両側に配置される二枚(一対)の偏光板を備える。該液晶セルは、二枚の電極基板の間に液晶を担持している。
光学フィルムは、液晶セルと一方の偏光板との間に、一枚配置するか、あるいは液晶セルと双方の偏光板との間に二枚配置する。
【0097】
OCBモードの液晶セルは、棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させるベンド配向モードの液晶セルを用いた液晶表示装置であり、米国特許4583825号明細書、及び米国特許5410422号明細書に開示されている。棒状液晶分子が液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。
そのため、この液晶モードは、OCB(Optically Compensatory Bend)液晶モードとも呼ばれる。ベンド配向モードの液晶表示装置は、応答速度が速いとの利点がある。
また、OCB方式は、高速応答駆動が可能なため、フィールドシーケンシャル駆動方式と組み合わせることが好ましい。
【0098】
図1は、本発明の一実施形態に係る偏光板1の分解斜視図である。該偏光板1は、少なくとも、該光学補償フィルム30と、偏光子(偏光膜)50を備える。該偏光板1は、液晶セル60上に配置される。なお、説明の便宜上、図1には、液晶表示側に配置される偏光板1のみを図示した。
【0099】
該光学補償フィルム30は、少なくとも第1の光学異方性層10と、第1の光学異方性層10以外の光学異方性層である他の光学異方性層(第2の光学異方性層)20とを備える。図1に示される光学補償フィルム30は、他の光学異方性層20を2層(第2の光学異方性層21、第3の光学異方性層22)備える。
【0100】
本発明の光学補償フィルムは、第1の光学異方性層の遅相軸と、第2の光学異方性層とがなす角(角度)が、0°〜42°もしくは48°〜90°であることを特徴としている。図1に示される光学補償フィルム30においては、第1の光学異方性層10の遅相軸112と、第2の光学異方性層20(21)の遅相軸121とのなす角(角度)が、0°となっている。前記角度が0°となっていると、光学補償フィルム30全体のRe値を、第1の光学補償フィルム10単独のRe値よりも、大きくできる。
なお、前記角度が90°であると、光学補償フィルム30全体のRe値を、第1の光学補償フィルム10単独のRe値よりも、小さくできる。
【0101】
図11は、第1の光学異方性層10の遅相軸112と、第2の光学異方性層20(21)の遅相軸121とのなす角(角度)の関係を示す説明図である。図11におけるX軸及びY軸は直行している。
説明の便宜上、遅相軸、配向軸、透過軸等の軸の位置を、上記X軸を基準にして表現する場合がある。例えば、図11における遅相軸112の位置は、135°となる。
【0102】
上記実施形態(図1参照)において、第3の光学異方性層20(22)の遅相軸122と、第1の光学異方性層10の遅相軸112とがなす角は、45°となっている。そのため、該第3の光学異方性層20(22)は、光学補償に寄与していない。
これに対し、第2の光学異方性層20(21)の遅相軸121と、第1の光学異方性層10の遅相軸112とがなす角は、0°となっている。そのため、該第2の光学異方性層20(21)は、光学補償フィルム全体のRe値が増加するように、光学補償に寄与している。
なお、図1において、偏光子(偏光膜50)の透過軸150と、第1の光学異方性層10の遅相軸112とがなす角は45°となっている。また、図1における符号210は、第1の光学異方性層10の配向方向を表し、符号60は、液晶セル60の配向方向を表す。
【0103】
本発明の光学補償フィルムは、第1の光学異方性層の遅相軸と略直交もしくは略平行である遅相軸を有する第2の光学異方性層の面内レタデーション(Re2)が、第1の光学異方性層の面内レタデーション(Re1)との間において、1nm<│Re2│<│Re1│の関係を有することが好ましい。
【0104】
本実施形態の説明において「45°」、「平行」あるいは「直交」とは、厳密な角度±5°未満の範囲内であることを意味する。厳密な角度との誤差は、4°未満であることが好ましく、3°未満であることがより好ましい。
角度について、「+」は時計周り方向を意味し、「−」は反時計周り方向を意味するものとする。
また、「遅相軸」は、屈折率が最大となる方向を意味し、「可視光領域」とは、380〜780nmのことをいう。
更に、屈折率の測定波長は、特別な記述がない限り、可視光域(λ=550nm)での値である。
【0105】
また、本実施形態において、「偏光板」とは、特別な記述がない限り、長尺の偏光板、及び液晶装置に組み込まれる大きさに裁断された偏光板の両者を含む意味で用いている。なお、ここでいう「裁断」には「打ち抜き」及び「切り出し」等も含むものとする。
また、本実施形態の説明では、「偏光子」と「偏光板」とを区別して用いるが、「偏光板」は「偏光子」の少なくとも片面に該偏光子を保護する透明保護膜を有する積層体のことを意味するものとする。
【0106】
また、本実施形態の説明において「分子対称軸」とは、分子が回転対称軸を有する場合は、当該対称軸を指すが、厳密な意味で、分子が回転対称性であることを要求するものではない。
一般的に、円盤状液晶性化合物において、分子対称軸は、円盤面の中心を貫く円盤面に対して垂直な軸と一致し、棒状液晶性化合物において、分子対称軸は、分子の長軸と一致する。
【0107】
また、本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は、各々、波長λにおける面内のレターデーション、及び厚さ方向のレターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH、又はWR(王子計測機器(株)製)において、波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。
測定されるフィルムが、1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)が算出される。
Rth(λ)は、前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH、又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合には、フィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50°まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH、又はWRが算出する。
なお、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合には、フィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値、及び入力された膜厚値を基に、以下の式(A)、及び式(II)よりRthを算出することもできる。
【0108】

・・・・・・式(A)
【0109】
なお、上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値をあらわす。
また、式(A)におけるnxは、面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは、面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzは、nx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。
【0110】
Rth=((nx+ny)/2−nz)×d・・・・・・・・・・・式(II)
【0111】
測定されるフィルムが、1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法により、Rth(λ)は算出される。
Rth(λ)は、前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH、又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として、フィルム法線方向に対して−50°から+50°まで10°ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
また、上記の測定において、平均屈折率の仮定値は、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについては、アッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx,ny,nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
【実施例】
【0112】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
【0113】
〔実施例1〕
<光学補償フィルム>
(第3の光学異方性層)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液Aを調製した。
【0114】
[セルロースアセテートA溶液組成]
・酢化度60.9%のセルロースアセテート 100質量部
・トリフェニルホスフェート 7.8質量部
・ビフェニルジフェニルホスフェート 3.9質量部
・メチレンクロリド 300質量部
・メタノール 45質量部
【0115】
別のミキシングタンクに、酢化度60.9%のセルロースアセテート(リンター)4質量部、下記のレターデーション上昇剤25質量部、シリカ微粒子(平均粒子サイズ:20nm)0.5質量部、メチレンクロリド80質量部、及びメタノール20質量部を投入し、加熱しながら攪拌して、レターデーション上昇剤溶液を調製した。
【0116】
【化9】

【0117】
上記セルロースアセテート溶液A 470質量部に、上記レターデーション上昇剤溶液34.4質量部を混合し、十分に攪拌してドープを調製した。レターデーション上昇剤のセルロースアセテートに対する質量比は6.5%であった。残留溶剤量が35質量%のフィルムをバンドから剥離した後、140℃の温度で、フィルムのテンターを用いて未延伸の状態で搬送した後、クリップを外して130℃で45秒間乾燥させ、フィルム形態の第3の光学異方性層を製造した。
【0118】
(第2の光学異方性層)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液Bを調製した。
【0119】
[セルロースアセテート溶液B組成]
・酢化度60.9%のセルロースアセテート 100質量部
・トリフェニルホスフェート 7.8質量部
・ビフェニルジフェニルホスフェート 3.9質量部
・メチレンクロリド 300質量部
・メタノール 45質量部
【0120】
上記セルロースアセテート溶液470質量部に、上記レターデーション上昇剤溶液18.5質量部を混合し、十分に攪拌してドープを調製した。レターデーション上昇剤のセルロースアセテートに対する質量比は3.5%であった。残留溶剤量が35質量%のフィルムをバンドから剥離した後、140℃の温度で、フィルムのテンターを用いて38%の延伸倍率で横延伸した後、クリップを外して130℃で45秒間乾燥させ、フィルム形態の第2の光学異方性層を製造した。
【0121】
作製した第2の光学異方性層の一方の面に、1.5規定の水酸化カリウムのイソプロピルアルコール溶液を25ml/mとなるように塗布し、25℃で5秒間放置した後、流水で10秒洗浄し、25℃の空気を吹き付けることでフィルムの表面を乾燥した。このようにして、第2の光学異方性層の一方の表面のみを鹸化した。
【0122】
<<配向膜の形成>>
鹸化処理した第2の光学異方性層の一方の面に、下記の組成の配向膜塗布液を#14のワイヤーバーコーターで24ml/m塗布した。60℃の温風で60秒、更に90℃の温風で150秒乾燥した。次に、該膜にラビング処理を施した。
【0123】
[配向膜塗布液組成]
・下記の変性ポリビニルアルコール 10質量部
・水 371質量部
・メタノール 119質量部
・グルタルアルデヒド(架橋剤) 0.5質量部
【0124】
【化10】

【0125】
(第1の光学異方性層)
204.0質量部のメチルエチルケトンに、下記のディスコティック化合物91質量部、エチレンオキサイド変成トリメチロールプロパントリアクリレート(V#360、大阪有機化学(株)製)9質量部、セルロースアセテートブチレート(CAB531−1、イーストマンケミカル社製)0.5質量部、光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製)3質量部、増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)1質量部を溶解して塗布液を調製した。
配向膜上に塗布液を、#3.2のワイヤーバーで5.52ml/m塗布した。これを金属の枠に貼り付けて、130℃の恒温槽中で2分間加熱し、ディスコティック化合物を配向させた。
次に、90℃で120W/cm高圧水銀灯を用いて、4分間紫外線照射しディスコティック化合物を重合させた。その後、室温まで放冷した。このようにして、第1の光学異方性層を形成し、光学補償フィルムを作製した。
【0126】
【化11】

【0127】
自動複屈折率計(KOBRA−21ADH、王子計測機器(株)社製)を用い、波長550nmの光で、第1の光学異方性層、第2の光学異方性層、第3の光学異方性層及び光学補償フィルム(total)のRe(550nm)値を測定した。結果は表1に示した。
【0128】
(遅相軸の設定角度)
光学補償フィルム31において、第1の光学異方性層10と、第2の光学異方性層20(21)とを、それぞれの遅相軸112と、遅相軸121とがなす角(θ1)が、0°となるように、設定した。
また、第3の光学異方性層20(22)を、その遅相軸122と、第1の光学異方性層10の遅相軸とがなす角(θ2)が、45°となるように設定した。
【0129】
(楕円偏光板の作製)
延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光膜(偏光子)を作製した。次に、作製した光学補償フィルムの第3の光学異方性層側を、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて偏光膜の片側に貼り付けた。第3の光学異方性層20(22)の遅相軸122と偏光膜(偏光子)50の透過軸150とが平行になるように配置した(図1参照)。
市販のセルローストリアセテートフィルム(フジタックTD80UF、富士フイルム(株)製)を前記と同様に鹸化処理し、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の反対側(光学フィルムを貼り付けなかった側)に貼り付けた(図示せず)。このようにして、楕円偏光板1を作製した。
【0130】
(ベンド配向液晶セルの作製)
ITO電極付きのガラス基板に、ポリイミド膜を配向膜として設け、配向膜にラビング処理を行った。得られた二枚のガラス基板をラビング方向が平行となる配置で向かい合わせ、液晶セルの厚さ(d)を7900nmに設定した。液晶セルの間隙にΔn(駆動電圧非印加状態の液晶セルの複屈折率)が0.1396の液晶性化合物(ZLI1132、メルク社製)を注入し、ベンド配向の液晶セルAを作製した。Δndは、1100nmである。
【0131】
(液晶表示装置の作製)
ベンド配向液晶セル60と、上記一対の偏光板1とを組み合わせて液晶表示装置を作製した(図1参照)。
なお、液晶セル60と、一対の偏光板1との配置は、偏光板が第1の光学異方性層、及び液晶セルの基板が対面し、液晶セルのラビング方向とそれに対向する第1の光学異方性層のラビング方向とが反平行になるようにした。
作製した液晶セル60を挟むように、それぞれ別の透明基板に、視認側、及びバックライト側に偏光板1をそれぞれ貼り付けた。
偏光板1の第1の光学異方性層10が前記透明基板に対向し、液晶セル60のラビング方向260とそれに対向する第1の光学異方性層10のラビング方向210とが反平行となるように配置し、液晶セル60の大きさが20インチである液晶表示装置を作製した。
【0132】
<液晶表示装置の評価>
液晶表示装置の「視野角の広さ」、「視野角非対称性」及び「正面Reコントロール性」を評価した。結果は表2に示した。
なお、「視野角の広さ」、「視野角非対称性」の評価に際し、温度:25℃、湿度60%の環境下において、作製した液晶表示装置をバックライト上に配置し、ベンド配向液晶セルに55Hz矩形波で電圧を印加した。
電圧を調整しながら色彩輝度計(BM−5A、TOPCON製)を用い、黒輝度(正面輝度)が最も小さくなる電圧を判定した。
【0133】
<<視野角の広さ>>
前記輝度計を用い、画面中央での黒輝度と白輝度(正面輝度)を測定し、黒輝度と白輝度の比をコントラストとして表す。
前記コントラストをパネル前方の半球上から、方位角0°から350°まで、極角0°から80°まで、それぞれ、10°きざみで測定し、視野角の広さを評価した。結果は表2に示した。
【0134】
[評価基準]
◎:コントラスト視野角が非常に広い(160°を超える場合)
○:コントラスト視野角が広い(140°以上160°未満の場合)
△:普通(110°以上140°未満の場合)
×:コントラスト視野角が狭い(110°未満)
【0135】
<<視野角非対称性>>
前記輝度計を用い、画面中央での黒輝度から白輝度(正面輝度)の差を8等分した輝度になるように前記セルに印加する電圧を調整し、それぞれの設定での輝度および色度を測定した。
前記輝度および色度をパネル前方の半球上から、方位角0°から350°まで、極角0°から80°まで、それぞれ、10°きざみで測定し、画面左右方向の輝度および色度の差異を評価した。結果は表2に示した。
【0136】
[評価基準]
◎:ほぼ左右対称
○:やや左右非対称だが気にならない
△:左右非対称が認識できるが、問題ない
×:左右の輝度もしくは色が大きく異なり、違和感あり
【0137】
<<正面Reコントロール性>>
1種類の光学異方性層10で対応可能なセルReの範囲について評価した。
【0138】
[評価基準]
◎:セルのRe値をほぼ自由に選択できる
○:セルのRe値にやや制約あり
△:普通
×:一種のセルにしか対応できない
【0139】
〔実施例2〜8〕
実施例2〜8の光学補償フィルム32〜38(図2〜図8参照)を、表1に示される第1の光学異方性層、第2の光学異方性層及び第3の光学異方性層を用いて作製し、更に、これらの光学補償フィルム32〜38を用いて、実施例2〜8の偏光板2〜8及び液晶表示装置を作製した。
また、実施例1と同様にして、実施例2〜8の液晶表示装置の評価を行った。結果は表2に示した。
なお、図2は、実施例2の光学補償フィルム32を含む偏光板2を備えた液晶表示装置の分解斜視図である。図3は、実施例3の光学補償フィルム33を含む偏光板3を備えた液晶表示装置の分解斜視図である。図4は、実施例4の光学補償フィルム34を含む偏光板4を備えた液晶表示装置の分解斜視図である。図5は、実施例5の光学補償フィルム35を含む偏光板5を備えた液晶表示装置の分解斜視図である。図6は、実施例6の光学補償フィルム36を含む偏光板6を備えた液晶表示装置の分解斜視図である。図7は、実施例7の光学補償フィルム37を含む偏光板7を備えた液晶表示装置の分解斜視図である。図8は、実施例8の光学補償フィルム38を含む偏光板8を備えた液晶表示装置の分解斜視図である。
【0140】
〔実施例9〜12〕
実施例9〜12の光学補償フィルムを、表1に示される第1の光学異方性層、第2の光学異方性層及び第3の光学異方性層を用いて作製し、更に、これらの光学補償フィルムを用いて、実施例9〜12の偏光板及び液晶表示装置を作製した。また、実施例1と同様にして、実施例9〜12の液晶表示装置の評価を行った、結果は表2に示した。
【0141】
〔比較例1及び2〕
比較例1及び2の光学補償フィルムを、表1に示される第1の光学異方性層、第2の光学異方性層及び第3の光学異方性層を用いて作製し、更に、これらの光学補償フィルムを用いて、比較例1及び2の偏光板及び液晶表示装置を作製した。また、実施例1と同様にして、比較例1及び2の液晶表示装置の評価を行った。結果は表2に示した。
なお、図9は、比較例1の光学補償フィルム301を含む偏光板101を備えた液晶表示装置の分解斜視図である。図10は、比較例2の光学補償フィルム302を含む偏光板102を備えた液晶表示装置の分解斜視図である。
【0142】
【表1】

【0143】
【表2】

【0144】
表2に示される評価結果からわかるように、実施例1〜8及び実施例9〜12の光学補償フィルムを備えた液晶表示装置は、正面のRe値のコントロール性に優れることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0145】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る液晶表示装置(実施例1)の分解斜視図である。
【図2】図2は、他の実施形態に係る液晶表示装置(実施例2)の分解斜視図である。
【図3】図3は、他の実施形態に係る液晶表示装置(実施例3)の分解斜視図である。
【図4】図4は、他の実施形態に係る液晶表示装置(実施例4)の分解斜視図である。
【図5】図5は、他の実施形態に係る液晶表示装置(実施例5)の分解斜視図である。
【図6】図6は、他の実施形態に係る液晶表示装置(実施例6)の分解斜視図である。
【図7】図7は、他の実施形態に係る液晶表示装置(実施例7)の分解斜視図である。
【図8】図8は、他の実施形態に係る液晶表示装置(実施例8)の分解斜視図である。
【図9】図9は、従来の液晶表示装置(比較例1)の分解斜視図である。
【図10】図10は、他の従来の液晶表示装置(比較例2)の分解斜視図である。
【図11】図11は、第1の光学異方性層の遅相軸と、第2の光学異方性層の遅相軸とのなす角(角度θ)の関係を示す説明図である。
【符号の説明】
【0146】
1 偏光板
10 第1の光学異方性層
20 他の光学異方性層
21 他の光学異方性層(第2の光学異方性層)
22 他の光学異方性層(第3の光学異方性層)
30 光学補償フィルム
50 偏光子
60 液晶セル
112 第1の光学異方性層の面内遅相軸
121 第2の光学異方性層の面内遅相軸
122 第3の光学異方性層の面内遅相軸
150 偏光子の透過軸
260 液晶セルの配向方向
210 第1の光学補償層の配向方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、一方の、液晶セルと偏光子間に配置する2層以上からなる光学補償フィルムであって、
少なくとも第1の光学異方性層と、第2の光学異方性層とからなり、
第2の光学異方性層の遅相軸と、第1の光学異方性層の遅相軸とのなす角が0°から42°もしくは48°から90°であることを特徴とする光学補償フィルム。
【請求項2】
少なくとも、一方の、液晶セルと偏光子間に配置する2層以上からなる光学補償フィルムであって、
少なくとも第1の光学異方性層と、第2の光学異方性層とからなり、
第2の光学異方性層の遅相軸と、第1の光学異方性層の遅相軸とのなす角が略直交もしくは略平行である請求項1記載の光学補償フィルム。
【請求項3】
第1の光学異方性層の遅相軸と略直交もしくは略平行である遅相軸を有する第2の光学異方性層の面内レタデーション(Re2)が、第1の光学異方性層の面内レタデーション(Re1)との間において、1nm<│Re2│<│Re1│の関係を有する請求項2記載の光学補償フィルム。
【請求項4】
少なくとも、一方の、液晶セルと偏光膜間に配置する2層以上からなる光学補償フィルムであって、
少なくとも第1の光学異方性層と、第2の光学異方性層とからなり、
第2の光学異方性層の遅相軸と、第1の光学異方性層の遅相軸とのなす角が30°〜42°もしくは48°〜60°である請求項1記載の光学補償フィルム。
【請求項5】
第1の光学異方性層の遅相軸となす角が30°〜42°もしくは48°〜60°である遅相軸を有する第2の光学異方性層の面内レタデーション(Re2)が、第1の光学異方性層の面内レタデーション(Re1)との間において、│Re1│/2<│Re2│である請求項4記載の光学補償フィルム。
【請求項6】
第1の光学異方性層の面内レタデーション(Re1)が、10nm<Re1<50nmを満たす請求項1から5記載の光学補償フィルム。
【請求項7】
第1の光学異方性層の配向軸と面内直交方向と法線を含む平面内で、前記法線から前記第1の光学異方性層の面方向に40°傾いた方向から測定した面内レタデーション(Re1(40°)、及び前記法線から逆に40°傾いた方向から測定したレタデーション値Re1(−40°)が、下記数式(1)又は(2)
Re1(40°)> Re1(−40°)の場合
3 ≦ Re1(40°)/ Re1(−40°)≦ 20・・・(1)
Re1(40°)< Re1(−40°)の場合
3 ≦ Re1(−40°)/ Re1(40°)≦ 20・・・(2)
を満たす請求項1から6記載の光学補償フィルム。
【請求項8】
第1の光学異方性層が、膜厚方向にハイブリッド配向した状態に固定されたディスコティック液晶及び棒状液晶の少なくともいずれかを含有する請求項1から7記載の光学補償フィルム。
【請求項9】
第1の光学異方性層が、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミド、及びポリエステルイミドからなる群から選ばれる少なくとも一種の非液晶性ポリマーを含有する請求項1から7記載の光学補償フィルム。
【請求項10】
第2の光学異方性層が、セルロースアシレートフィルム、環状オレフィン共重合体(COC)フィルム、又は環状オレフィン重合体(COP)フィルムである請求項1から7記載の光学補償フィルム。
【請求項11】
第1の光学異方性層、第2の光学異方性層、並びに偏光子が、一体化された状態で配置されている請求項1から10記載の光学補償フィルムを用いた偏光板。
【請求項12】
第1の光学異方性層の遅相軸がロール長手方向に対し略45°であり、さらに、ロール状に作製された偏光子と第3の光学異方性層の貼合物と、ロール状に作製された第1の光学異方性層及び第2の光学異方性層とをロールtoロールで貼り合せて作製された請求項11記載の偏光板。
【請求項13】
第1の光学異方性層の配向軸方向と略直交もしくは略平行である遅相軸を有する第2の光学異方性層の遅相軸をロール長手方向に対して略45°方向に発現させ、さらに、ロール状に作製された偏光子と第1の光学異方性層及び第2の光学異方性層とをロールtoロールで貼り合せて作製された請求項2もしくは3記載の光学補償フィルムを用いた偏光板。
【請求項14】
第1の光学異方性層の遅相軸と略直交もしくは略平行である遅相軸を有する第2の光学異方性層の遅相軸をロール長手方向に対して略直行もしくは略平行に発現させ、その他の層とフィルム長手方向が40°〜50°をなす角度に単位長さ毎に枚葉に貼り合わせて作成した請求項2もしくは3記載の光学補償フィルムを用いた偏光板。
【請求項15】
第1の光学異方性層の遅相軸とのなす角が30°〜42°もしくは48°〜60°である遅相軸を有する第2の光学異方性層の遅相軸をロール長手方向に対して直行もしくは平行より3°以上ずれた方向に発現させ、さらに、ロール状に作製された偏光膜と、ロール状に作製された第1および第2の光学異方性層とをロールtoロールで貼り合せて作製された請求項4もしくは5記載の光学補償フィルムを用いた偏光板。
【請求項16】
2層以上からなる光学補償フィルムの液晶セルの配向軸と直交方向の面内レタデーション(Re_total)の表裏フィルムの合計値が、液晶セルの黒もしくは白表示時の面内レタデーション(Re0)と略一致する請求項1から7記載の光学補償フィルムを用いた液晶パネル。
【請求項17】
2層以上からなる光学補償フィルムの液晶セルの配向軸と直交方向の面内レタデーション(Re_total)が表用と裏用とで略一致する請求項16記載の液晶パネル。
【請求項18】
第2の光学異方性層の厚み方向のレタデーション(Rth2)が、
0nm<Rth2<Δnd/2を満たす請求項16または17記載の液晶パネル。
ただし、Δnは駆動電圧非印加状態の液晶セルの複屈折を表し、dは液晶セルの液晶層の厚み(nm)を表す。
【請求項19】
液晶セルのΔndが、500nm<Δnd<1300nmを満足する請求項16から18記載の液晶パネル。
【請求項20】
液晶セルが、ベンド配向モードまたは水平配向モードの液晶セルである請求項11から15記載の偏光板を1枚以上用いた液晶パネル。
【請求項21】
少なくとも一方の液晶セルと偏光膜間に配置され、
第1の光学異方性層と、
該第1の光学異方性層を支持し、かつ、光学異方性を有する第2の光学異方性層とを有する光学補償フィルムの位相差調節方法であって、
第1の光学異方性層の遅相軸と、第2の光学異方性層の遅相軸とがなす角度を、0°から42°もしくは48°から90°に調節することを特徴とする光学補償フィルムの位相差調節方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−86379(P2009−86379A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−256902(P2007−256902)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】