説明

光導波路デバイスおよび光導波路デバイス製造方法

【課題】簡易な構成で信号光と同位相のモニタリングを行うことのできる光導波路デバイスおよび光導波路デバイス製造方法を得ること。
【解決手段】LNチップ11の出力側端面は、導波路11aにおける信号光の進行方向に対して傾斜した構成を有する。傾斜は、信号光の一部が上方向に反射するように形成する。加えて、出力側端面の上方に設けた補強部材31_2の上に受光素子41を配置し、出力側端面で反射した信号光を受光する。かかる構造によって、受光素子41が取り出すモニタ光と出力側端面から透過する信号光は同位相となり、モニタ光に基づいて制御を行うことでバイアスシフトの発生を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路デバイスおよび光導波路デバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光伝送システムの変調器として、半導体を使用した直接変調及びLiNbO3(ニオブ酸リチウム)等を使用したマッハツェンダ型外部変調器が知られている。このうち、外部変調器は、高速特性や波長特性が直接変調に比較し有利である為、特に10GHz以上の高速光通信システムに広く用いられている。
【0003】
LiNbO3外部変調器(以下LN変調器)では、温度により動作点がシフトする現象、いわゆる温度ドリフトや、直流(DC:Direct Current)電圧を印加することにより動作点がシフトする現象、いわゆるDCドリフトが発生する。したがって、所望の動作点にて動作させ、所望の出力を得る為には常に出力光をモニタし、バイアス電圧として直流電圧を印加することとなる。そこで、出力光をモニタするフォトダイオードをLN変調器内部に内蔵する手法が提案されている。
【0004】
フォトダイオードを内蔵する構成として、マッハツェンダ干渉計のカプラ部で発生する不要光をモニタする構成が知られている。不要光を受光した場合、信号光とモニタ光は逆位相、すなわち信号光がON状態のときモニタ光はOFF状態となり、信号光がOFF状態のとき信号光はON状態になる。
【0005】
一方で、RZ(Return to Zero)方式やNRZ(Non Return to Zero)伝送方式だけでなく、差動位相偏移変調(DPSK)伝送方式、DuoBinary伝送方式など各種の伝送方式が検討されている。利用する伝送方式によっては、信号光とモニタ光の位相を揃えることで、制御を容易にすることが求められる。
【0006】
そこで、信号光と同位相のモニタリングを行うため、導波路上に直接フォトダイオードを配置する構造も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−215371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、導波路上に直接モニタ用のフォトダイオードを配置する構成は、製造に際し、複雑で精密な工程が求められるという問題点があった。
【0009】
このため、簡易な構成で信号光と同位相のモニタリングを行うことのできる光導波路デバイスおよび光導波路デバイス製造方法の実現が重要な課題となっていた。
【0010】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、簡易な構成で信号光と同位相のモニタリングを行うことのできる光導波路デバイスおよび光導波路デバイス製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願の開示する光導波路デバイスおよび光導波路デバイス製造方法は、光導波路が形成された基板に信号光の進行方向に対して傾斜した出力側端面を設け、出力側端面において反射した信号光を受光する受光素子を配置する。
【発明の効果】
【0012】
本願の開示する光導波路デバイスおよび光導波路デバイス製造方法によれば、簡易な構成で信号光と同位相のモニタリングを行うことのできる光導波路デバイスおよび光導波路デバイス製造方法を得ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、実施例に係る光導波路デバイスの構成図である。
【図2】図2は、図1に示した光導波路デバイスの出力側端面の拡大図である。
【図3】図3は、光導波路によって形成されるマッハツェンダ型外部変調器の説明図である。
【図4】図4は、光出力Poutと動作点の変動についての説明図である。
【図5】図5は、マッハツェンダ干渉計のカプラ部で発生する不要光をモニタする場合の説明図である。
【図6】図6は、信号光とモニタ光の位相についての説明図である。
【図7】図7は、本実施例に係る光導波路デバイスの製造方法を説明するフローチャートである。
【図8】図8は、導波路の形成について説明する説明図である。
【図9】図9は、電極の形成について説明する説明図である。
【図10】図10は、チップの切り出しについて説明する説明図である。
【図11】図11は、他の誘電体や高分子材料を用いる場合の導波路形成の説明図である。
【図12】図12は、他の誘電体や高分子材料を用いる場合の電極形成の説明図である。
【図13】図13は、補強部材の上面を荒らした光導波路デバイスの構成図である。
【図14】図14は、図13に示した光導波路デバイスの出力側端面の拡大図である。
【図15】図15は、補強部材の側面に受光素子を配置した光導波路デバイスの構成図である。
【図16】図16は、図15に示した光導波路デバイスの出力側端面の拡大図である。
【図17】図17は、LNチップの側面に受光素子を配置した光導波路デバイスの構成図である。
【図18】図18は、図17に示した光導波路デバイスの出力側端面の拡大図である。
【図19】図19は、LNチップの下面に受光素子を配置した光導波路デバイスの構成図である。
【図20】図20は、図19に示した光導波路デバイスの出力側端面の拡大図である。
【図21】図21は、出力側端面の透過光をモニタ光として受光する光導波路デバイスの構成図である。
【図22】図22は、図21に示した光導波路デバイスの出力側端面の拡大図である。
【図23】図23は、複数の受光素子を有する光導波路デバイスの構成図である。(その1)
【図24】図24は、複数の受光素子を有する光導波路デバイスの構成図である。(その2)
【図25】図25は、複数の受光素子を有する光導波路デバイスの構成図である。(その3)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本願の開示する光導波路デバイスおよび光導波路デバイス製造方法を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の具体的な実施例に本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0015】
[装置の構成]
図1は、実施例に係る光導波路デバイスの構成図である。図1に示したように光導波路デバイスは、LiNbO3チップ(以下LNチップ)11に導波路11aを形成し、電極21を設けた構成を有する。導波路11aの一端は、ファイバ61_1と光学的に結合し、ファイバ61_1から光信号の入力を受ける入力側端面となる。また、導波路11aの他端は、ファイバ61_2と光学的に結合し、ファイバ61_2に光信号を出力する出力側端面となる。
【0016】
LNチップ11は、後述するように、ウェハ上に電極等を積層し、ダイシングによって切り出して製造する。図1に示した光導波路デバイスは、LNチップ11の積層方向側の面、かつ入力端面側の近傍に補強部材31_1を有する。同様に、図1に示した光導波路デバイスは、LNチップ11の積層方向側の面、かつ出力端面側の近傍に補強部材31_2を有する。以降の説明では、積層方向を上方向として説明する。
【0017】
補強部材31_1および補強部材31_2は、LNチップ11を形成するプロセスのダイシング工程でチップ表面付近の導波路にチッピングが起こらないように配置するものである。したがって、補強部材31_1は、入力側端面の近傍、具体的には入力側端面におけるチッピングを防止できる距離に配置する。同様に、補強部材31_2は、出力端面側の近傍、具体的には出力側端面におけるチッピングを防止できる距離に配置する。
【0018】
また、補強部材31_1および補強部材31_2は、ファイバ61_1,61_2をバットジョイントするときにファイバをチップに接着固定する面積を広くする効果をもつ。図1に示した構成では、ファイバ61_1,61_2側についても接着固定する面積を広くするため、ファイバ61_1,61_2側にガラスブロック51_1,51_2を設けている。
【0019】
図1に示したように、LNチップ11の出力側端面は、光導波路11aにおける信号光の進行方向に対して傾斜した構成を有する。傾斜は、信号光の一部が上方向に反射するように形成する。加えて、図1に示した光導波路デバイスは、出力側端面の上方に設けた補強部材31_2の上に受光素子41を有する。受光素子41には、出力側端面で反射した信号光が入射する。
【0020】
かかる構造によって、図1に示した光導波路デバイスは、受光素子41が信号光の一部を直接モニタ光として効率よく取り出すことができる。このため、信号光とモニタ光は同位相となり、モニタ光に基づいて制御を行うことでバイアスシフトの発生を抑制することができる。
【0021】
図2は、図1に示した光導波路デバイスの出力側端面の拡大図である。受光素子41を補強部材から空間的に離して配置すると補強部材上面で再び光が反射し、モニタ光の光量が減衰したり、不要な迷光が増えたりする。このため、受光素子41は補強部材31_2とほぼ同じ、もしくは補強部材31_2よりも大きい屈折率をもつ接着剤71等で補強部材31_2に接着固定することが望ましい。
【0022】
また、LNチップ11の上面の境界面で反射光が全反射して受光素子41に入射できない場合やLNチップ11の端面で全反射してファイバ61_2に入射できない場合を防ぐよう角度設計や材料を選択する。
【0023】
LNチップ11の屈折率をn、補強部材31_2の屈折率をn、接着剤71の屈折率をn、ファイバ61_1の屈折率をnとする。信号光の出力端面に対する角度をθ、補強部材31_2に反射した信号光の入射角度をθ、受光素子41への反射光の入射角度をθ、ファイバ61_2に透過した信号光の入射角度をθとする。この場合、角度設計や材料は、
/n×sin(90°−2θ)<1
/n×sin(θ)<1
/n×sin(θ)<1
を満足するように選択すればよい。ニオブ酸リチウムを導波路材料および補強部材に選んだ場合、端面角度は30度程度となる。
【0024】
[光導波路の説明]
図3は、光導波路によって形成されるマッハツェンダ型外部変調器の説明図である。図3に示したLNチップ10は、光導波路と電極20によってマッハツェンダ型外部変調器として動作する。LN変調器の出力光は、Z−cut変調器の場合、出力Poutが
Pout = 4k(1−k)cos(Δφ)
となる。ここで、kはマッハツェンダ干渉計のカプラの分岐比であり、通常0.5である。また、Δφは、マッハツェンダ干渉計の枝間の位相差である。
【0025】
図4は、光出力Poutと動作点の変動についての説明図である。図4に示したように、LN変調器は、温度により動作点がシフトする温度ドリフトや、直流電圧を印加することにより動作点がシフトするDCドリフトを潜在的に持つ。このため、所望の動作点と出力で動作させる為には出力光をモニタし、バイアス電圧を印加することとなる。
【0026】
図5は、マッハツェンダ干渉計のカプラ部で発生する不要光をモニタする場合の説明図である。図5に示したLNチップ10aは、Y分岐などの1×2カプラであり、出力光信号と同一の面から出力された不要光をフォトダイオードなどの受光素子40aで受光する構成である。また、図5に示したLNチップ10bは、方向性結合器などの2×2カプラであり、LNチップ10bの内部に反射溝を設けて不要光を反射させ、出力光信号と異なる面から出力された不要光をフォトダイオードなどの受光素子40bで受光する構成である。
【0027】
図6に示したように、不要光をモニタ光として受光する構成では、信号光とモニタ光は逆位相、すなわち信号光がON状態のときモニタ光はOFF状態、信号光がOFF状態のとき信号光はON状態になる。信号光の位相とモニタ光の位相が異なると、伝送方式によっては制御が煩雑になる。
【0028】
このように不要光をモニタする構成に対し、図1に示した光導波路デバイスは、出力側端面で信号光の一部を反射させ、モニタ光として使用するので、信号光と同位相のモニタ光を得ることかできる。
【0029】
[製造方法]
図1に示した光導波路デバイスの製造方法について説明する。図7は、本実施例に係る光導波路デバイスの製造方法を説明するフローチャートである。まず、ウェハ状のLN基板上に導波路を形成し(ステップS1)、導波路上に電極などを積層して形成する(ステップS2)。
【0030】
そして、導波路と電極が形成されたLN基板を切断してLNチップを切り出すダイシングを行う(ステップS3)。このダイシングにおいて、出力側端面は、光導波路における信号光の進行方向に対して傾斜するよう形成する。
【0031】
切り出したLNチップの出力側端面において反射した信号光を受光する位置に受光素子を形成する(ステップS4)ことで、図1に示した光導波路デバイスを得ることができる。
【0032】
図8は、導波路の形成について説明する説明図である。図8に示したように、まず、LiNbO3基板101上に導波路となるべきTi層102の蒸着を1000Åおこなう(ステップS1a)。
【0033】
蒸着後のTi層102上にフォトレジスト103を1μm前後塗布する。一般的なフォトリソグラフィー法によりレジストをパターニングする。このレジストをマスクにTi層102をパタン化する(ステップS1b)。パタン化に際しては、ドライエッチングでもウェットエッチングでも良い。このとき変調器やスイッチ、フィルタ、VOA(Variable Optical Attenuator)等で一般的な方向性結合器やY分岐を使用したマッハツェンダ干渉計を構成する。
【0034】
パタン化を行った後、Ti層102を1000℃〜1100℃にてLN基板101内に拡散し、導波路の形成を行う(ステップS1c)ここで、Tiに代えてにMgを用いてもよい。また、プロトン交換法を用いて導波路を形成してもよい。
【0035】
図9は、電極の形成について説明する説明図である。電極による光の吸収損失防止やインピーダンス整合用のバッファ層となるSiO2層104と、温度ドリフトを抑圧するSi層105のコーティングをウェハ上面に施す(ステップS2a)。SiO2層104の蒸着はスパッタや電子ビーム(EB)蒸着器等を使用する。SiO2層104の厚さは必要帯域や電気反射量により最適化されるが、一例として0.5μm〜1.0μm程度である。Si層105もスパッタ等にて蒸着し、厚みは0.1μm前後とする。
【0036】
Si層105の上に電極Auメッキ形成用の下地としてAuの蒸着を行う。これもEB蒸着器等にて0.1μm程度蒸着する。そして、レジストパターン化後、エッチングをおこなって電極用Au層106をメッキする。メッキ厚もSiO2層104同様に帯域及び電気反射等により最適化されるが、一例として5〜20μm程度である(ステップS2b)。
【0037】
図10は、チップの切り出しについて説明する説明図である。導波路を形成し、電極を積層してチップパタン形成領域112を作成したウェハ110に対し、チップカットを行う際に補強部材111をチップの端面になる場所に貼る(ステップS3a)。このとき、所望の端面角度がつくように角度のついた台座113にウエハを固定するなどしてダイシングソーのブレード114にてチップの切り出しを行う(ステップS3b)。
【0038】
その後、チップを変調器のパッケージに実装し、受光素子を補強部材の上に接着し、ファイバを光軸調整して固定する。ファイバの固定方法は図1にはバットジョイントで示したが、レンズを用いた結合形でもよい。
【0039】
開示の構成は、LN変調器だけでなく、LNのように電気光学係数の大きい他の誘電体や高分子材料を用いても形成でき、LN変調器と同様の光回路パタンで可変減衰器を形成することもできる。
【0040】
図11は、他の誘電体や高分子材料を用いる場合の導波路形成の説明図である。まず、Siやガラスの基板121に高分子材料をスピンナなどを用いて塗布し、厚さ20μm程度のアンダークラッド122を形成する(ステップS5a)。
【0041】
つぎに、同様にスピンナなどを用いてコア材料123の薄膜を厚さ7μm程度に形成する(ステップS5b)。コア材料123の薄膜の上にレジスト124を塗り,フォトリソグラフィー法によりレジストを所望の導波路回路になるようにパターニングする(ステップS5c)。そして、RIE(Reactive Ion Etching)などによりコア材料123を加工し、コア123aを形成する(ステップS5d)。
【0042】
コア123aの上に、アンダークラッド122と同様の手法で20μm程度の膜厚のオーバークラッド125を形成する(ステップS5e)。
【0043】
図12は、他の誘電体や高分子材料を用いる場合の電極形成の説明図である。アンダークラッド122、コア123aおよびオーバークラッド125を形成した上に、電極材料126となるAuをEB蒸着器等にて0.2μm程度蒸着する(ステップS6a)。
【0044】
電極材料126の上にフォトレジスト127を塗布してパターンニングする(ステップS6b)。そして、エッチングによって電極材料を加工し(ステップS6c)、レジストを除去して(ステップS6d)、電極パターンを得る。なお、チップ化と実装についてはLN変調器の場合と同一であるので、説明を省略する。
【0045】
また、電気光学効果ではなく熱光学効果を利用して、ガラス導波路を用いたPLC(Planar Lightwave Circuit)で形成した可変減衰器などの光モニタリングを利用する光素子に開示の技術を適用してもよい。その場合の光回路の構成も、これまで説明した素子と同じ構成になる。
【0046】
具体的には、まず、Si基板あるいはガラス基板に厚さ20μm程度のアンダークラッドを形成する。アンダークラッドの形成方法としては火炎堆積法、CVD法、スパッタ法などがある。続いて同様の方法でコア材料を厚さ7um程度の薄膜に形成する。
【0047】
コア材料の上にレジストを塗り、フォトリソグラフィー法によりレジストを所望の導波路回路になるようにパターニングして、RIEなどによりコアを形成する。コアの上からオーバークラッド部分をアンダークラッド部と同様の手法で20μm程度の膜厚で形成する。
【0048】
オーバークラッドの上に、電極となるPtをEB蒸着器等にて0.2μm程度蒸着する。そしてレジストパターン化後エッチングをおこない、電極パターンを形成する。
【0049】
[変形例]
図1に示した光導波路デバイスの変形例について説明する。図13に示した光導波路デバイスは、受光素子42を実装する出力側端面の補強部材32_2の上面を荒らした表面32aを形成し、光が散乱するように構成している。図14は、図13に示した光導波路デバイスの出力側端面の拡大図である。
【0050】
図13,図14に示した構成では、接着剤は不要となり、材料の選択および端面角度は、
/n×sin(90°−2θ)<1
/n×sin(θ)<1
の2式を満足すればよく、設計の自由度が広がる。なお、補強部材32_1,32_2および受光素子42以外の構成、屈折率、角度については図1および図2と同様であるので、同一の符号を付して説明を省略する。また、補強部材32_1は、補強部材31_1と同一の構成とする。
【0051】
図15に示した光導波路デバイスは、受光素子43を補強部材33_2の導波路の入力側の側面に接着剤72で実装した構成である。図16は、図15に示した光導波路デバイスの出力側端面の拡大図である。
【0052】
図15,図16に示した構成では、
/n×sin(90°−2θ)<1
/n×sin(θ)<1
/n×sin(θ)<1
を満たすように材料の選択および端面角度の設計を行う。また、受光素子43側の補強部材33_2の面を光が散乱するように荒らしておけば、図13、図14に示した構成と同様に設計自由度が広がる。
【0053】
また補強部材33_2と受光素子43の境界面での反射光が迷光となって、受光素子43に入り込むのを防ぐため、その反射光が散乱するように補強部材33_2の上面を荒らしておくことが望ましい。
【0054】
なお、補強部材33_1,33_2、受光素子43、接着剤72以外の構成、屈折率、角度については図1および図2と同様であるので、同一の符号を付して説明を省略する。また、補強部材33_1は、補強部材31_1と同一の構成とする。
【0055】
図17に示した光導波路デバイスは、受光素子44をLNチップ12の側面に接着剤73にて実装した構成である。図18は、図17に示した光導波路デバイスの出力側端面の拡大図である。
【0056】
図17,図18に示した構成では、LNチップ12の出力側端面は信号光を基板の面方向、すなわち横方向に反射する傾斜を有し、受光素子44を基板の積層方向に対して平行な面、すなわちLNチップ12の側面に設けている。また、LNチップ12の入力側端面も出力側端面と平行である。
【0057】
このため、補強部材34_1,34_2、ファイバ62_1,62_2、ガラスブロック52_1,52_2についてもLNチップ12の入力側端面および出力側端面の角度に合わせて傾斜を持たせている。
【0058】
図17,図18に示した構成では、補強部材34_1,34_2の材料の選択は自由であり、端面角度は
/n×sin(90°−2θ)<1
1/n×sin(θ)<1
を満たすようにする。
【0059】
ここで、LNチップ12の屈折率はn、接着剤73の屈折率はn、ファイバ62_1の屈折率はnである。そして、信号光の出力端面に対する角度はθ、反射光のLNチップ12の側面に対する角度がθ、ファイバ62_2に透過した信号光の入射角度がθである。
【0060】
加えて、受光素子44側のチップの側面を光が散乱するように荒らしておけばn1/n×sin(θ)<1のみを満足すればよく、設計自由度が広がる。なお、接着剤73による固定は必須ではなく、受光素子44とLNチップ12との間に空気がある場合には空気の屈折率をnとする。
【0061】
また、図17,図18に示した構成では、チップの製造工程の切り出しにおいて、台座に角度を設ける必要はない。
【0062】
図19に示した光導波路デバイスは、受光素子45をLNチップ13の下面に接着剤74にて実装した構成である。図20は、図19に示した光導波路デバイスの出力側端面の拡大図である。
【0063】
図19,図20に示した構成では、LNチップ13の出力側端面は信号光を基板の積層方向に対して反対方向、すなわち下方向に反射する傾斜を有し、受光素子をLNチップ13の下面に設けている。また、LNチップ13の入力側端面も出力側端面と平行である。
【0064】
このため、補強部材35_1,35_2、ファイバ63_1,63_2、ガラスブロック53_1,53_2についてもLNチップ13の入力側端面および出力側端面の角度に合わせて傾斜を持たせている。
【0065】
図19,図20に示した構成では、補強部材35_1,35_2の材料の選択は自由であり、端面角度は
/n×sin(90°−2θ)<1
1/n×sin(θ)<1
を満たすようにする。
【0066】
ここで、LNチップ13の屈折率はn、接着剤74の屈折率はn、ファイバ63_1の屈折率はnである。そして、信号光の出力端面に対する角度はθ、反射光のLNチップ13の下面に対する角度がθ、出力側端面で反射して接着剤74に入射した信号光の入射角度がθ、ファイバ63_2に透過した信号光の入射角度がθである。
【0067】
加えて、受光素子45側のLNチップ13の側面を光が散乱するように荒らしておけばn1/n×sin(θ)<1のみを満足すればよく、設計自由度が広がる。また、接着剤74による固定は必須ではなく、受光素子45とLNチップ13との間に空気がある場合には空気の屈折率をnとする。
【0068】
図21に示した光導波路デバイスは、出力側端面の透過光をモニタ光として受光する構成である。図22は、図21に示した光導波路デバイスの出力側端面の拡大図である。
【0069】
図21,図22に示した構成では、LNチップ14の出力側端面は信号光の大部分を基板の面方向、すなわち横方向に反射する傾斜を有し、受光素子46をLNチップ14の出力側端面に設けている。そして、出力側端面で反射した反射光をLNチップ14の側面に光学的に結合したファイバ64_2から取り出して信号光として使用する。
【0070】
このため、補強部材36_1,36_2、ファイバ64_1、ガラスブロック54_1についてもLNチップ14の入力側端面および出力側端面の角度に合わせて傾斜を持たせている。加えて、ファイバ64_2、ガラスブロック54_2は、LNチップ14の側面から信号光を取り出すために適切な角度を有して形成する。
【0071】
図21,図22に示した構成では、補強部材36_1,36_2の材料の選択は自由であり、端面角度は、
×sin(θ)<1
/n×sin(θ)<1
を満たせばよい。
【0072】
加えて、ファイバ64_2との挿入損失を低減するため、LNチップ14の出力側端面の反射点から側面のファイバ64_2との結合部まで導波路を形成しておくことが望ましい。
【0073】
これまでに示した構成は、複数の受光素子を有する光導波路デバイスにも適用可能である。図23は、複数の受光素子を有する光導波路デバイスの構成例である。図23に示した光導波路デバイスは、LNチップ15に導波路15aを形成し、電極22を設けた構成を有する。導波路15aの一端は、ファイバ65_1と光学的に結合し、ファイバ65_1から光信号の入力を受ける入力側端面となる。
【0074】
また、導波路15aは、2つの光信号を合波素子23に出力する。合波素子23は2つの光信号を合波し、ファイバ65_2に出力する。ガラスブロック55_1は、ファイバ65_1とLNチップ15との接続を補助する。同様に、ガラスブロック55_2は、ファイバ65_2と合波素子23との接続を補助する。
【0075】
補強部材37_1は、LNチップ15の入力側端面の近傍に配置され、ダイシング工程での入力側端面のチッピングを防止する。補強部材37_2は、LNチップ15の出力側端面の近傍に配置され、ダイシング工程での出力側端面のチッピングを防止する。
【0076】
補強部材37_2の上には、2つの光信号に対応する2つの受光素子47を有する。この2つの受光素子47によってLNチップ15の出力側端面で反射した2つの光信号をモニタすることができる。
【0077】
なお、図23では、補強部材37_2の上に受光素子47を配置する場合について説明したが、LNチップ15の下面に受光素子を配置する構成とすることもできる。
【0078】
また、図24に示したように、補強部材37_2の側面に受光素子48を配置してもよい。他の構成については図23と同一であるので、同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0079】
図25は、信号光が横方向に反射するようにLNチップ16と合波素子24との境界を傾斜させた構成である。この構成では、LNチップ16の出力側の端面24aの傾斜によって導波路16aの2つの出力側の長さが異なるため、受光素子49をLNチップ16の側面に横方向に並べて配置することで、2つの反射光を得ることができる。また、補強部材38_1,38_2についても、LNチップ16の出力側端面と入力側端面の形状に合わせる。他の構成については図23と同一であるので、同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0080】
上述してきたように、本実施例に係る光導波路デバイスおよび光導波路デバイス製造方法は、導波路の出力側端面の端面に傾斜を持たせて信号光の一部を反射させ、反射光もしくは透過光を受光素子によってモニタ光として受光する。このため、簡易な構成で信号光と同位相のモニタリングを行うことのできる光導波路デバイスおよび光導波路デバイス製造方法を得ることができる。
【0081】
以上の各実施例を含む実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0082】
(付記1)光導波路が形成された基板と、
前記光導波路における信号光の進行方向に対して傾斜した出力側端面と、
前記出力側端面において反射した信号光を受光する受光素子と、
を備えたことを特徴とする光導波路デバイス。
【0083】
(付記2)前記受光素子が受光した信号光をモニタ用信号光として用いることを特徴とする付記1に記載の光導波路デバイス。
【0084】
(付記3)前記光導波路は、少なくとも一つのマッハツェンダ干渉計を形成することを特徴とする付記1または2に記載の光導波路デバイス。
【0085】
(付記4)前記光導波路は、外部変調器を形成することを特徴とする付記1〜3のいずれか一つに記載の光導波路デバイス。
【0086】
(付記5)前記基板はLiNbO3であり、前記光導波路はTi拡散、Mg拡散、プロトン交換のいずれかで形成されたことを特徴とする付記1〜4のいずれか一つに記載の光導波路デバイス。
【0087】
(付記6)前記基板はSiまたはガラスであり、前記光導波路を高分子材料で形成したことを特徴とする付記1〜4のいずれか一つに記載の光導波路デバイス。
【0088】
(付記7)前記基板はSiであり、前記光導波路は火炎堆積法によるガラス、CVD(Chemical Vapor Deposition)法によるガラス、スパッタ法によるガラスのいずれかで形成したことを特徴とする付記1〜4のいずれか一つに記載の光導波路デバイス。
【0089】
(付記8)前記出力側端面は前記信号光を前記基板の積層方向に反射する傾斜を有し、前記受光素子を前記基板の積層方向側の面に設けたことを特徴とする付記1〜7のいずれか一つに記載の光導波路デバイス。
【0090】
(付記9)前記出力側端面は前記信号光を前記基板の積層方向に対して反対方向に反射する傾斜を有し、前記受光素子を前記基板の積層方向の面に対向する面に設けたことを特徴とする付記1〜7のいずれか一つに記載の光導波路デバイス。
【0091】
(付記10)前記出力側端面は前記信号光を前記基板の面方向に反射する傾斜を有し、前記受光素子を前記基板の積層方向に対して平行な面に設けたことを特徴とする付記1〜7のいずれか一つに記載の光導波路デバイス。
【0092】
(付記11)前記受光素子は、前記反射した信号光を前記基板の非光導波路領域を介して受光することを特徴とする付記1〜10のいずれか一つに記載の光導波路デバイス。
【0093】
(付記12)前記基板の積層方向側の面、かつ前記出力端面側の近傍に配置された補強部材を更に備え、
前記受光素子は、前記補強部材の積層方向側の面もしくは前記積層方向に対して平行な面に設けたことを特徴とする付記11に記載の光導波路デバイス。
【0094】
(付記13)前記受光素子は、前記透過した信号光を受光することを特徴とする付記1〜7のいずれか一つに記載の光導波路デバイス。
【0095】
(付記14)前記光導波路は複数の光信号を出力し、
前記光導波路が出力した複数の光信号を合波する光合波素子を更に備えたことを特徴とする付記1〜13のいずれか一つに記載の光導波路デバイス。
【0096】
(付記15)光導波路が形成された基板を切断し、前記光導波路における信号光の進行方向に対して傾斜した出力側端面を形成するステップと、
前記出力側端面において反射した信号光を受光する位置に受光素子を形成するステップと
を含んだことを特徴とする光導波路デバイス製造方法。
【符号の説明】
【0097】
10〜16,10a,10b LNチップ
11a,15a,16a 導波路
20〜22 電極
23〜24 合波素子
24a 端面
31_1〜38_1,31_2〜38_2,111 補強部材
40a,40b,41〜49 受光素子
51_1〜55_1,51_2〜55_2 ガラスブロック
61_1〜65_1,61_2〜65_2 ファイバ
71〜74 接着剤
101 LN基板
102 Ti層
103,124,127 フォトレジスト
104 SiO2層
105 Si層
106 Au層
110 ウェハ
112 チップパタン形成領域
113 台座
114 ブレード
121 基板
122 アンダークラッド
123 コア材料
123a コア
125 オーバークラッド
126 電極材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光導波路が形成された基板と、
前記光導波路における信号光の進行方向に対して傾斜した出力側端面と、
前記出力側端面において反射した信号光を受光する受光素子と、
を備えたことを特徴とする光導波路デバイス。
【請求項2】
前記受光素子が受光した信号光をモニタ用信号光として用いることを特徴とする請求項1に記載の光導波路デバイス。
【請求項3】
前記光導波路は、少なくとも一つのマッハツェンダ干渉計を形成することを特徴とする請求項1または2に記載の光導波路デバイス。
【請求項4】
前記光導波路は、外部変調器を形成することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の光導波路デバイス。
【請求項5】
前記出力側端面は前記信号光を前記基板の積層方向に反射する傾斜を有し、前記受光素子を前記基板の積層方向側の面に設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の光導波路デバイス。
【請求項6】
前記出力側端面は前記信号光を前記基板の積層方向に対して反対方向に反射する傾斜を有し、前記受光素子を前記基板の積層方向の面に対向する面に設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の光導波路デバイス。
【請求項7】
前記受光素子は、前記反射した信号光を前記基板の非光導波路領域を介して受光することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の光導波路デバイス。
【請求項8】
前記基板の積層方向側の面、かつ前記出力端面側の近傍に配置された補強部材を更に備え、
前記受光素子は、前記補強部材の積層方向側の面もしくは前記積層方向に対して平行な面に設けたことを特徴とする請求項7に記載の光導波路デバイス。
【請求項9】
前記受光素子は、前記透過した信号光を受光することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の光導波路デバイス。
【請求項10】
光導波路が形成された基板を切断し、前記光導波路における信号光の進行方向に対して傾斜した出力側端面を形成するステップと、
前記出力側端面において反射した信号光を受光する位置に受光素子を形成するステップと
を含んだことを特徴とする光導波路デバイス製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2011−191564(P2011−191564A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−58466(P2010−58466)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(309015134)富士通オプティカルコンポーネンツ株式会社 (72)
【Fターム(参考)】