説明

光接続構造およびこれに用いる光導波路の製法

【課題】光ファイバと光導波路コアとの間の光軸を、簡単かつ自動的に一致させることのできる光接続構造と、この光接続構造に用いる光導波路を、寸法精度よく効率的に製造する方法を提供する。
【解決手段】光導波路11のオーバークラッド層3の一端側が、長手方向に延設されて延設部4に形成され、この延設部4におけるコア2の延長線上に、延設部4の一端側端面に向けて開口する光ファイバ固定用溝5同軸的に形成され、ここに光ファイバが嵌合固定される。また、光ファイバ固定用溝5の他端側閉塞部とコア2の間には、上記オーバークラッド層の一端側部分からなる境壁部6が形成されており、この境壁部6を介して、光ファイバ固定用溝5に嵌合された光ファイバの光軸と、光導波路コア2の光軸とが一致した状態になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバと光導波路とを無調芯で接続することのできる光接続構造およびこの光接続構造に用いる光導波路の製法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、光信号を比較的長い距離を伝送する光通信等には光ファイバが使用され、これら光ファイバ間の接続や、比較的近い距離の信号伝送には光導波路が用いられている。従来、これら光ファイバと光導波路との間の光軸調整を簡便にして(いわゆる「無調芯」で)結合させる光接続構造として、光導波路が形成されている基板上に、光導波路コアと同軸上に光ファイバ固定用の溝を設け、この固定用溝に光ファイバを嵌合して位置決めし、固定することが行われている。
【0003】
この光ファイバ固定用の溝は、光導波路の長手方向一端部(コアのない部分で、かつ、コアの延長線上)に設けられているもので、通常、その一端が光導波路の長手方向一端面に向けて開口(連通)する、断面V字状あるいはU字状等の長溝形状に形成されている。
【0004】
また、上記光ファイバ固定用溝の形成方法としては、例えば、光導波路を形成するためのベースとなる基板上に、エッチングや、エンボス,切削等の機械加工により、予め溝を形成しておく方法(特許文献1,2)や、基板上に形成した光導波路の端部を、ダイシングやレーザー光等によりコアごと切除して、溝を形成すると同時にコアの端部(端面)を露出させる方法(特許文献3)等が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−313756号公報
【特許文献2】特開2001−350051号公報
【特許文献3】特開2000−105324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような、光導波路を形成するためのベース基板上に、予め光ファイバ固定用溝を形成しておく構造は、エッチングや機械加工等の加工精度の限界から、溝の寸法・位置精度が低いという問題がある。また、溝の形成後に、基板上に別途光導波路を形成することから、上記光ファイバ固定用溝と光導波路コアの位置合わせが難しく、この光導波路の端面を切断してコアの端部を露出させる加工がさらに必要な場合もあり、これらの加工誤差が次第に蓄積して、結果的に、光ファイバ(コア)と光導波路のコアの光軸が、精密に一致しない場合もある。
【0007】
また、上記基板上に形成した光導波路の端部を、ダイシング等によりコアごと切除して溝を形成する構造も、上記と同様、機械加工等の加工精度の限界から、溝の寸法・位置精度が低い。さらに、レーザー光等を利用して溝を形成する場合も、上記機械加工に比べ加工精度は高いものの、レーザー光等の加熱により光導波路の性能の低下が生じるうえ、加工後に残渣が残るという欠点がある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、光ファイバと光導波路コアとの間の光軸を、簡単かつ自動的に一致させることのできる光接続構造と、この光接続構造に用いる光導波路を、寸法精度よく効率的に製造する方法の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明は、光を伝達するコアと、このコアの下側に設けられるアンダークラッド層と、上記コアを被覆した状態で設けられるオーバークラッド層とからなる光導波路の長手方向一端に、光ファイバを固定して、この光ファイバと上記光導波路のコアとの間に光信号を相互に伝達する光接続構造であって、上記光導波路のオーバークラッド層の一端側が、長手方向に延設されて延設部に形成され、この延設部における上記コアの延長線上に、上記延設部の一端側端面に向けて開口する光ファイバ固定用溝が同軸的に形成され、この固定用溝に、光ファイバが嵌合して固定されているとともに、この光ファイバ固定用溝の他端側閉塞部と上記コアの間には、上記オーバークラッド層の一端側部分からなる境壁が形成されており、この境壁を介して、上記光ファイバ固定用溝に嵌合された光ファイバの光軸と、上記光導波路のコアの光軸とが一致した状態になっている光接続構造を第1の要旨とする。
【0010】
また、本発明は、上記の光接続構造に用いる光導波路の製法であって、上記アンダークラッド層およびその上に形成されたコアの上に、上記オーバークラッド層形成用の感光性樹脂を塗布して感光性樹脂層を形成する際に、この感光性樹脂を上記コアの一端部を越えて塗布して、上記延設部形成用の感光性樹脂層を延設する工程と、上記感光性樹脂層にフォトマスクを介して照射線を照射して露光し、現像することにより、上記オーバークラッド層およびその延設部を形成すると同時に、この延設部に、上記光ファイバ固定用溝を、その溝の他端側閉塞部と上記コアとの間が境壁となるように形成する工程と、を備える光接続構造用光導波路の製法を第2の要旨とする。
【0011】
すなわち、本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究を重ね、その結果、エッチング等による化学的な形状加工や、ダイシング等による物理的な形状加工を用いて形成された光ファイバ固定用溝の寸法精度の低さが、この溝に嵌合される光ファイバと光導波路コアとの間の光軸の不一致の最大の原因であることを突き止めた。そこで、本発明者らは、上記光ファイバ固定用溝を形成するにあたり、上記化学的や物理的な加工手段に比べ遙かに高精度に寸法加工できる、フォトリソグラフィ等の光学的手法を利用することを着想し、本発明に到達した。
【0012】
なお、本発明における「光軸の一致」とは、光ファイバコアの光軸と、光導波路コアの光軸とが、光信号の伝送に差し支えない程度に調芯(調心)されている状態をいう。そのため、これらの光軸同士が1本の軸上に完全に一致している場合は勿論、多少のずれが見られても、低結合損失の光接続が維持されている状態も包含する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の光接続構造は、光ファイバ固定用溝が、光導波路のオーバークラッド層の一端側を長手方向に延設した延設部に形成され、この光ファイバ固定用溝が、上記光導波路のコアの延長線上に、このコアと同軸的に形成されている。そのため、この光接続構造は、この光ファイバ固定用溝に嵌合固定した光ファイバが、光導波路のコアに対して自動的に適正な位置にくるようになっている。これにより、本発明の光接続構造は、上記光ファイバ固定用溝に嵌合固定した光ファイバと光導波路コアとの間の光軸を、簡単かつ自然に(無調芯で)一致させることができる。
【0014】
また、上記光ファイバ固定用溝の他端側閉塞部と上記コアの間には、上記オーバークラッド層の一端側部分からなる境壁が形成されており、この境壁を介して、上記光ファイバ固定用溝に嵌合された光ファイバの光軸と、上記光導波路のコアの光軸とが一致するようになっている。そのため、上記光ファイバ固定用溝に光ファイバを嵌合した場合でも、この光ファイバと上記コアが直接接触せず、このコアの端面(光接続面)が歪んだり傷ついたりすることがない。また、上記境壁は、オーバークラッド層の一部であるため、光ファイバから押圧を受けても変形せず、光軸のずれをある程度抑えることができる。なお、この境壁は、上記コアの端面を覆っているため、光接続面に埃等が付着するのを未然に防ぐことができる。
【0015】
また、上記オーバークラッド層およびその延設部が、上記コアの位置または位置決め用アライメントマークを基準として形成された感光性樹脂製の成形体からなるものは、上記オーバークラッド層およびその延設部と、この延設部に形成された光ファイバ固定用溝とが、上記光導波路のコアの光軸に対して、当初の設計どおりの位置に正確に形成される。そのため、上記光ファイバコアと光導波路のコアの光軸が、さらに精密に一致し、これらの間の光結合損失を低減することができるとともに、光ファイバ固定用溝が複数ある場合の溝間のばらつきや、製品ごとのばらつきも低減される。これにより、光接続の結合品質を向上させることができる。
【0016】
そして、上記コアの長手方向一端部が、外側に向かって反るレンズ曲面を有するレンズ部に形成されているものは、このレンズ部が、出光時はコアの光が拡散することを抑え、受光時は光ファイバコアの光を集光する。そのため、仮にコア同士が多少位置ずれしていても、コア同士の光軸ずれに起因する光結合損失の増大を抑制することができる。さらに、上記のように、オーバークラッド層からなる境壁を介して光信号を伝送する場合や、この境壁と光ファイバの先端が当接せず、これらの間に多少の隙間が空いている場合でも、上記集光等の作用により、これらの間で光信号を送受信することが可能になる。
【0017】
また、本発明の光接続構造に用いる光導波路の製法は、上記オーバークラッド層形成用の感光性樹脂を塗布して感光性樹脂層を形成する際に、この感光性樹脂を上記コアの一端部を越えて塗布し、上記延設部形成用の感光性樹脂層を延設するとともに、上記オーバークラッド層およびその延設部をフォトリソグラフィ法を用いて形成する際に、上記光ファイバ固定用溝を、その溝の他端側閉塞部と上記コアとの間に上記境壁ができるように形成している。そのため、この製法は、オーバークラッド層と同じ構成材料で、上記光ファイバ固定用溝を効率的に精度よく形成できる。また、従来の光接続構造のような、加工精度の劣る溝加工を使用しないため、上記光ファイバ固定用溝の寸法と位置が正確で、この溝に嵌合される光ファイバと光導波路コアとの間の光軸が高精度に一致し、これらの間の光結合損失を低減することができる。このことにより、本発明の光接続構造用光導波路の製法は、上記光接続構造に用いるための高品質な光導波路を、低コストで効率的に製造することができる。
【0018】
さらに、上記光接続構造に用いる光導波路の製法において、上記オーバークラッド層用フォトマスクを位置決めする際に、上記コアの位置または位置決め用アライメントマークを基準にこのフォトマスクを位置合わせし、上記光ファイバ固定用溝を、上記コアと同軸上に形成する場合には、この光ファイバ固定用溝が、上記光導波路のコアの位置(光軸)に対して、当初の設計どおりの所定位置に正確に形成される。そのため、上記光ファイバコアと光導波路のコアの光軸が、より正確に一致し、これらの間の光結合損失が低減される。また、この製法は、光導波路の製品間のばらつきを抑えるため、その歩留りが向上するという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態の光接続構造に用いる光導波路の構成を示す平面図である。
【図2】(a)〜(e)はそれぞれ、図1のA−A線断面図(a)、図1のB−B線断面図(b)、図1のC−C線端面図(c)、図1のD−D線断面図(d)、図1のE−E線断面図(e)である。
【図3】(a)は本実施例の光接続構造における光導波路の要部構造を示す図であり、(b)〜(d)は、この光導波路に光ファイバを嵌合する様子を説明する図である。
【図4】(a)〜(f)は、本発明の実施形態の光接続構造に用いる光導波路の製法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
つぎに、本発明の実施の形態を、図面にもとづいて詳しく説明する。
【0021】
図1は本発明の実施形態の光接続構造に用いる光導波路の構成を模式的に示す平面図であり、図2(a),図2(b)はこの光導波路の長手方向の断面図(図1のA−A断面およびB−B断面)、図2(c)は上記光導波路の長手方向の端面図(C−C端面)、図2(d),図2(e)は上記光導波路の幅方向の断面図(図1のD−D断面およびE−E断面)である。なお、図中の符号1は光導波路のアンダークラッド層を、符号2は光導波路のコアを、符号3は光導波路のオーバークラッド層を、符号10は基板を、符号11は帯状の光導波路全体を示す。また、図中の光導波路11において、光ファイバ固定用の溝5が形成されている側〔図1および図2(a),(b)においては図示左側〕を一端側、その反対で光導波路11が連続する側(図示右側)を他端側と呼ぶ。
【0022】
本実施形態の光接続構造に用いる光導波路11は、図1に示すように、帯状の光導波路11の長手方向一端に、オーバークラッド層3材料からなる延設部4が形成され、この延設部4に、光ファイバを1本ずつ嵌合固定するための光ファイバ固定用溝5が多数(本実施形態においては並列に6個)設けられている。この光ファイバ固定用溝5は、上記光導波路11の長手方向(コア2の光軸方向)に沿って形成された長溝形状で、図2(b)のように、その一端側(図示左側)が、延設部4の端面に向かって開口して外部に連通する開放端となっている。
【0023】
また、上記光ファイバ固定用溝5の他端側(図示右側)は、上記コア2の端部との間に形成された境壁(境壁部6)により閉じられた閉塞端となっており、上記光導波路11に光ファイバ12を接続(光接続)する際は、図3(b)〜(d)のように、上記各光ファイバ固定用溝5に、光ファイバ12の端部を挿入して嵌合させ、この光ファイバ12の先端(光接続面)を、溝5の奥の上記境壁部6に当接させて、その状態で固定する。
【0024】
上記光接続構造用の光導波路11の構成について、より詳しく説明すると、その基本的な構成は、フィルム状のポリマー系光導波路と同様であり、図1のように、光導波路長手方向に連続する断面略正方形状の複数(本実施形態においては6条)のコア2と、このコア2の下側に設けられた断面略方形状のアンダークラッド層1と、これらコア2およびアンダークラッド層1を被覆するオーバークラッド層3と、から形成されている。
【0025】
そして、通常の光導波路では長手方向端部となる位置(図1においては、おおよそD−D線の位置)よりさらに一端側(図示左側)に、上記オーバークラッド層3が延設された延設部4が形成されている。この延設部4は、図2(a)のように、オーバークラッド層3を構成する材料を、長手方向に上記コア2の一端部(2b)を越えるように塗布して形成されており、図2(c)のように、この延設部4内に、光導波路の幅方向に所定の間隔を空けて、長手方向の立壁部4a,4a,・・・が設けられている。そして、これら長手方向の立壁部4aは、上記光ファイバ固定用溝5の側壁を構成するようになっており、これらの間に各光ファイバ固定用溝5が形成される。この光ファイバ固定用溝5の長手方向の長さは、光ファイバの端部を保持するのに充分な長さが必要であり、例えば500μm〜5mmの長さに形成される。
【0026】
なお、上記光ファイバ固定用溝5を形成する各立壁部4aは、後述する光学的手法により形成されているため、その形成位置と寸法が極めて正確になっている。そのため、これらの間に形成される光ファイバ固定用溝5も、その形成位置と寸法の精度が高く、コア2の延長線上に、このコア2と同軸的にかつ正確に形成されている。また、後記するように、その溝幅も、接続する光ファイバの直径(クラッド層を含む外径)に合致する、設計通りの幅に正確に形成されている。
【0027】
また、上記延設部4は、上記コア2の一端部を越えるように形成されているため、これらコア2を被覆しているとともに、上記光ファイバ固定用溝5の他端側端部との間に、上記オーバークラッド層3材料からなる境壁部6を形成している。この境壁部6の厚さ(コア2の端部と光ファイバの端部との間の距離)は、例えば50〜500μmに形成されている。
【0028】
さらに、図2(b)のように、上記光ファイバ固定用溝5の底部には、基板10の表面(上面)が露出しており、上記光ファイバを下から支えるようになっている。
【0029】
そして、光路となるコア2は、その長手方向中央部が、図1および図2(e)のような断面方形状の直線形状(ストレート部2a)に形成されているとともに、上記境壁部6に接する、長手方向一端側の端部が、図1および図2(d)に示すようなレンズ部2bに形成されている。
【0030】
つぎに、上記光ファイバ固定用溝5に光ファイバ12を嵌合させ、これら上記光導波路11と光ファイバ12との間を無調芯で接続する、光接続構造について説明する。
【0031】
図3は、上記光導波路11の光ファイバ固定用溝5を用いた光ファイバ12の接続(光接続構造)を模式的に説明する図であり、図3(a)は、上記光導波路11の延設部4における光接続構造を説明する要部拡大図(平面図)、図3(b)〜(d)は、上記光ファイバ固定用溝5内における光ファイバ12の嵌合状態を示す断面図(X−X断面)である。なお、一点鎖線は、光導波路コアおよび光ファイバの光軸を示す。
【0032】
先に述べたように、上記光導波路11に光ファイバ12を接続(光接続)する際は、図3(c)のように、上記各光ファイバ固定用溝5に、光ファイバ12の端部(先端)を挿入し、最終的には、図3(d)のように、上記光ファイバ12の先端(光接続面)を、溝5の奥の上記境壁部6に当接させるとともに、この光ファイバ12の下面が、上記光ファイバ固定用溝5の底面の基板10上面に接して支持され、この光ファイバ12が、光ファイバ固定用溝5内の所定位置で位置決めされる。なお、この図〔図3(d)〕のように、上記アンダークラッド層1は、挿入される光ファイバ12のクラッド層と同じ厚さに形成されており、光ファイバ12を上記光ファイバ固定用溝5内の所定位置に固定した状態では、これらの光軸が垂直方向(図では上下方向)に自動的に一致するようになっている。
【0033】
このとき、上記光導波路11の延設部4に形成された光ファイバ固定用溝5が、上記光導波路コア2と同軸的に形成されているため、この溝5に嵌合した光ファイバ12が、コア2に対して自動的に適正な位置にくるようになっている。このことにより、上記光ファイバ12と光導波路11の光接続構造は、これら光ファイバ12と光導波路コア2との間の光軸を、簡単かつ自然に、無調芯で一致させることができる。
【0034】
また、光ファイバ12と光導波路コア2との間には、上記境壁部6が配置されており、この境壁部6を介して、上記光ファイバ12の光軸と、上記光導波路コア2の光軸とが一致するようになっている。そのため、上記光ファイバ固定用溝5に光ファイバ12を嵌合固定した場合でも、この光ファイバ12と上記コア2が直接接触せず、ポリマー系光導波路であっても、このコア2の端面(光接続面)が歪んだり傷ついたりすることがない。さらに、上記境壁部6は、光ファイバ12から押圧を受けても変形しにくく、光軸のずれをある程度抑えることができるという利点がある。なお、上記境壁部6は、コア2の端面を覆っているため、上記光接続面に、光結合損失の増大を招く塵や埃等が付着するのを防止する効果も奏する。
【0035】
また、上記光導波路11のコア2の一端部には、レンズ曲面を有する凸状のレンズ部2bが形成されているため、このレンズ部2bが、出光時はコア2の光が拡散することを抑え、受光時は光ファイバ12の光を集光することができる。これにより、本発明の光接続構造は、仮に光軸同士が多少位置ずれしていても、これに起因する光結合損失を小さくすることができる。さらに、これらの端部(光接続面)が上記境壁部6に当接せず、その間に多少の隙間が空いている場合でも、上記集光等の作用により、これら光ファイバ12と光導波路コア2との間で光信号を送受信することができる。
【0036】
なお、上記各コア2の厚さ(高さ)や幅、コアパターンの間隔(配線ピッチ)、コアの条数(本数)に関しては、接続する光ファイバ12の規格に応じて設計することができる。そして、上記光ファイバ固定用溝5の溝幅は、接続する光ファイバ12の外径に合わせて設計し、上記アンダークラッド層1の厚さは、接続する光ファイバ12のクラッド層と同じ厚さに形成される。
【0037】
また、本実施形態では、各コア2の一端部に凸状曲面のレンズ部2bを設けた例を示したが、このレンズ部2bの形状は、上記コア2とオーバークラッド層3(境壁部6)との屈折率差や、コア幅,コア高さ(厚さ)を基にして、テーパー角やレンズ面の曲率等が最適化される。
【0038】
さらに、このレンズ部2bに代えて、長手方向中央のストレート部から一端部(図示左側)にかけてコア幅が徐々に広がる形状としてもよい。例えば、50μmのコア径を持つ光ファイバ12と接続する場合、ストレート部2aのコアの断面形状を、高さ(厚さ)40μm×幅40μmに形成し、一端側(図示左側)のコア端面の断面形状を、高さ40μm×幅50μmと広めに形成してもよい。このことにより、上記レンズ部2bと同様、上記光導波路のコア2と光ファイバ12との間の光結合効率を向上させることができる。
【0039】
つぎに、本実施形態の光接続構造に用いる光導波路の製法を説明する。
図4は、光接続構造に用いる光導波路の製法を説明する図である。なお、図4(a)〜(f)は、その順に工程が進む様子を示している。
【0040】
本実施形態における光導波路の製法は、まず、図4(a)のように、感光性樹脂等を用いたフォトリソグラフィ法により、ガラス板,樹脂板,Siウエハ,薄膜フィルム,金属箔膜等の基板10の上に、所定幅のアンダークラッド層1を形成する。
【0041】
このアンダークラッド層1の形成は、つぎのようにして行われる。すなわち、まず、感光性樹脂からなるワニスを、スピンコート法,ディッピング法,ダイ塗工,ロール塗工等により、図4(a)のように、基板10上に塗布する。ついで、フォトマスクM1を介して、白抜き矢印Lで示す照射線を照射し、感光性樹脂層(1)を所定パターンに露光して現像して、図4(b)のような、所定パターンのアンダークラッド層1を作製する。
【0042】
つぎに、同様のフォトリソグラフィ法により、アンダークラッド層1の上にコア2を形成する。コア2の形成は、図4(c)に示すように、感光性樹脂からなるワニスを、スピンコート法,ディッピング法,ダイ塗工,ロール塗工等により塗布した後、コアパターンに対応する開口を有するフォトマスクM2を介して照射線Lを照射し、感光性樹脂層(2)を所定パターンに露光する。
【0043】
このとき使用するフォトマスクM2の開口パターンは、図4(c)の右に示すように、個々の開口パターンが、コア2のストレート部(2a)に対応する中央部では、このストレート部の縁部に沿った直線形状に形成され、コア2のレンズ部(2b)に対応する端部(一端側)が、上記ストレート部より広幅で、かつ、外側に向かって反るレンズ曲面を有する形状に形成されている。
【0044】
その後、感光性樹脂のタイプに応じて、光反応を完結させるための加熱処理を行った後、現像液を用いて浸漬法等により現像を行い、上記感光性樹脂層における未露光部分を溶解させて除去する。これにより、図4(d)に示すようなコア2を作製する。
【0045】
つぎに、図4(e)に示すように、塗布等により、オーバークラッド層3の形成材料(感光性樹脂)で、各コア2を被覆するとともに、この感光性樹脂を上記コア2の一端部(図示左側)を越えて塗布し、延設部形成用の感光性樹脂層を形成して、さらにアンダークラッド層1の一端部も被覆する。ついで、上記オーバークラッド層3の形成材料で被覆されたコア2の位置、または、上記コア2の作製と同時に形成された位置決め用アライメントマークの位置を、目視,光学顕微鏡,光学センサまたはカメラを用いた画像処理等により検出し、そのコア位置を基準としてフォトマスクM3を位置合わせしてから、オーバークラッド層形成用感光樹脂層(3)を露光して現像し、図4(f)に示すような光接続構造用の光導波路11を得る。
【0046】
より詳しく述べると、まず、感光性樹脂からなるワニスを、上記コア2とアンダークラッド層1の上に塗布する。このとき、図4(e)のように、コア2の長手方向一端部(レンズ部2b)を越えるように塗布するとともに、アンダークラッド層1の長手方向の一端部(図示左側)をも越えるように長く塗布する。このワニスの塗布は、例えば、スピンコート法,ディッピング法,ダイ塗工,ロール塗工等により行われる。ついで、これを硬化させる。
【0047】
この硬化に際しては、図4(e)の右に示すような、長手方向一端側に、上記光ファイバ固定用溝(5)に対応する櫛状のマスクパターンが形成されているフォトマスクM3を介して照射線Lにより露光する。このとき、上記フォトマスクM3を位置決めする前に、位置決めの起点となるコア2または位置決め用アライメントマークの位置を光学顕微鏡,光学センサ等により予め計測し、その計測位置を基準として、図4(e)のように、フォトマスクM3の上記光ファイバ固定用溝(5)用の開口パターンが、光導波路の延設部4上の所定位置にくるように、正確に位置制御する。
【0048】
上記フォトマスクM3の位置決め方法についてさらに詳しく説明すると、使用する位置決め方法としては、(A)アンダークラッド層1上に形成したコア2(コアパターン)そのものを基準として位置決めする方法と、(B)アンダークラッド層1上に、上記コア2と同時に形成したアライメントマークを基準に位置決めする方法があげられる。
【0049】
光導波路に用いられる材料は、一般的に、可視光において透明性を有しており、フォトマスクM3の位置合わせ方法には、フォトリソプロセスで用いられる画像処理方法が適用できる。例えば、上記(A)の方法の場合、コア2の材料が、アンダークラッド層1およびオーバークラッド層3の材料よりも、使用波長において通常0.01以上屈折率が高いため、この屈折率差を利用してコアパターンを認識し、画像処理等によって2値化することで、高精度なアライメントが可能となる。もちろん、光学顕微鏡や作業者の目視によって位置合わせすることも可能である。
【0050】
そして、基板が透明である場合、上記コアパターンのエッジ(輪郭)が検出できるように、基板裏面から光照射を行うことで、コアパターンを正確に認識することもできる。基板が透明でない場合は、コアパターンの上方から光を照射し、パターンのエッジを浮かび上がらせて認識し、位置合わせすることもできる。なお、コアパターンを基準とする場合、コアパターンの中央部(ストレート部2a)でなく、終端部(レンズ部2b)を確認する方が、位置ずれのリスクが少なく好ましい。また、上記コア2のうち、幅方向両端に位置するコア2,2またはその一方のコア2を基準とすることが好ましい。もちろん、すべてのコア2を基準としてもよい。
【0051】
また、上記コア2の形成と同時に、アンダークラッド層1上に予め形成された、位置決め用アライメントマークを基準に位置決めする方法(B)の場合も、目視,光学顕微鏡あるいは上記画像処理等によってこのアライメントマークを認識し、フォトマスクM3の位置合わせを行う。このアライメントマークは、上記コア露光用フォトマスクM2上に、コアパターンとは別に形成されているもので、上記コア2の形成時に、フォトリソグラフィ法によってコア2と同時に形成されるため、これらの相対的な寸法位置精度は、通常0.1μm程度の正確なものとなる。そのため、このアライメントマークを基準に上記フォトマスクM3の位置合わせを行っても、上記コアそのもののパターンを基準とする場合と同等の位置精度を維持できる。なお、フォトマスクM3の位置決めにアライメントマークを利用する場合も、このアライメントマークは、フォトマスクM2の中央付近でなく、その周辺部に配置する方が好ましい。上記アライメントマークの形状としては、十字マークや円形等の対象性を有する形状が、画像認識時の方向性による影響が少ないので、好ましい。
【0052】
フォトマスクM3の位置決めが完了したら、このフォトマスクM3を介して、照射線Lにより露光する。この露光された部分が、未露光部分の溶解除去工程を経て、オーバークラッド層3となる。照射線としては、好適に紫外線が用いられる。また、上記露光後、光反応を完結させるために、加熱処理を行う。その後、現像液を用いて現像を行うことにより、感光性樹脂層(3)における未露光部分を溶解させて除去し、この現像液を加熱処理により除去することによって、残存した感光性樹脂層が、図4(f)に示すように、オーバークラッド層3と延設部4、および、光ファイバ固定用溝5を構成する立壁部4aと境壁部6とが形成される。また、この方法により、上記光ファイバ固定用溝5が、光導波路のコア2の延長線上に、このコア2と同軸的に形成される。なお、上記延設部4が一端側に所要長さより長過ぎる場合には、切刃等を用いたダイシングにより、この延設部4の長手方向一端部の余長を切断する場合もある。
【0053】
このように、本実施形態の光接続構造用光導波路の製法では、上記オーバークラッド層3形成用の感光性樹脂を、上記コア2の一端部を越えて塗布し、延設部4形成用の感光性樹脂層を延設するとともに、上記オーバークラッド層3およびその延設部4をフォトリソグラフィ法を用いて形成する際に、上記コアの位置または位置決め用アライメントマークを基準に、上記光ファイバ固定用溝5を同時形成している。そのため、この製法は、オーバークラッド層3と同じ構成材料で、上記光ファイバ固定用溝5を効率的に精度よく形成できる。
【0054】
また、従来の光接続構造のような、加工精度の劣る機械加工等を使用しないため、上記光ファイバ固定用溝5の寸法と位置が設計通りに正確で、この溝5に嵌合される光ファイバ12と光導波路コア2との間の光軸が高精度に一致するため、これらの間の光結合損失を低減することができる。このことにより、上記製法は、上記光接続構造に用いるための高品質な光導波路を、低コストで効率的に製造することができる。
【0055】
また、光接続構造用光導波路の製法では、上記コア2の一端部に、フォトリソグラフィにより凸状のレンズ部2bを形成するとともに、このコア2のレンズ部2bと、上記光ファイバ固定用溝5の他端側(図示右側)閉塞部との間に境壁部6を形成している。そのため、本発明の光接続構造は、上記光ファイバ固定用溝5に光ファイバ12を嵌合固定した場合でも、この光ファイバ12と上記コア2が直接接触せず、このコア2のレンズ部2bが歪んだり傷ついたりすることがない。
【0056】
さらに、仮にこれらの光軸同士が多少位置ずれしていても、この光軸のずれに起因する光結合損失を小さくすることができる。そして、光ファイバ12の端部(光接続面)が上記境壁部6に当接せず、その間に多少の隙間が空いている場合でも、上記レンズ部2bの集光等の作用により、これら光ファイバ12と光導波路コア2との間で光信号を送受信することが可能になる。
【0057】
なお、本発明の光接続構造用光導波路の製法に使用する形成材料としては、クラッド層およびコアともに、エポキシ樹脂,ポリイミド樹脂,アクリル樹脂,メタクリル樹脂の他、オキセタン,シリコーン樹脂等の感光性樹脂(光重合性樹脂)があげられる。これらの樹脂のなかでも、コスト,膜厚制御性,損失等の観点から、カチオン重合性エポキシ樹脂が好ましい。
【0058】
また、上記光重合性樹脂は、光酸発生剤,光塩基剤,光ラジカル重合開始剤などの光触媒とともに光重合性樹脂組成物を構成し、他の成分として、反応性オリゴマー,希釈剤,カップリング剤等を含んでいてもよい。
【0059】
光酸発生剤としては、例えば、オニウム塩やメタロセン錯体などの化合物を用いることができる。オニウム塩としては、ジアゾニウム塩,スルホニウム塩,ヨードニウム塩,ホスホニウム塩およびセレニウム塩などが用いられ、これらの対イオンとしては、CF3SO3-,BF4-,PF6-,AsF6-,およびSbF6-などのアニオンが用いられる。具体例としては、トリフェニルスルホニウムトリフレート,4−クロロベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート,トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート,トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート,(4−フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート,(4−フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート,ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド−ビス−ヘキサフルオロアンチモネート,ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド−ビス−ヘキサフルオロホスフェート,(4−メトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート,(4−メトキシフェニル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート,ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート,ベンジルトリフェニルホスホニウムヘキサフルオロアンチモネート,トリフェニルセレニウムヘキサフルオロホスフェート等があげられる。これらの化合物は、単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0060】
反応性オリゴマーとしては、例えば、フルオレン誘導体型エポキシや、その他多くのエポキシ,エポキシ(メタ)アクリレート,ウレタンアクリレート,ブタジエンアクリレート,オキセタン等が用いられる。特に、オキセタン類は、少量添加するだけで重合性混合物の硬化を促進させる効果を有するため、好ましい。例として、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン,3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン,ジ(1−エチル(3−オキセタニル))メチルエーテル,3−エチル−3−(2−エチルヘキシロメチル)オキセタン等あげられる。これら反応性オリゴマーは、単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0061】
希釈剤としては、例えば、ブチルグリシジルエーテル,2−エチルヘキシルグリシジルエーテルなどの炭素数2から25のアルキルモノグリシジルエーテル,ブタンジオールジグリシジルエーテル,1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル,ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル,ドデカンジオールジグリシジルエーテル,ペンタエチトリトールポリグリシジルエエーテル,トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル,グリセロールポリグリシジルエーテル,フェニルグリシジルエーテル,レゾルシングリシジルエーテル,p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル,アリルグリシジルエーテル,テトラフルオロプロピルグリシジルエーテル,オクタフルオロプロピルグリシジルエーテル,ドデカフルオロペンチルグリシジルエーテル,スチレンオキシド,1,7−オクタジエンジエポキシド,リモネンジエポキシド,リモネンモノオキシド,α―ピネンエポキシド,β−ピネンエポキシド,シクロヘキセンエポキシド,シクロオクテンエポキシド,ビニルシクロヘキセンオキシドなどをあげることができる。
【0062】
さらに、耐熱性,透明性の観点から、好ましい希釈剤として、分子内に脂環式構造を有するエポキシである3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート,3,4−エポキシシクロヘキセニルエチル−8,4−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート,ビニルシクロヘキセンジオキシド,アリルシクロヘキセンジオキシド,8,4−エポキシ−4−メチルシクロヘキシル−2−プロピレンオキシド,ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)エーテル等をあげることができる。主剤となるエポキシ樹脂に、これらの希釈剤を適量混合することにより、エポキシ基の反応率を上昇させ、結果として、得られる硬化物の耐熱性やフィルムとしての柔軟性を向上させることができる。
【0063】
カップリング剤としては、エポキシ系のカップリング剤を使用することができる。例えば、2−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン,3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン,3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン,3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等をあげることができる。また、アミノ系の3−アミノプロピルトリメトキシシランや、3−アミノプロピルトリエトキシシランなども使用できる。
【0064】
なお、成形後の寸法伸縮等を考慮して、オーバークラッド層の形成材料となる光重合性樹脂組成物は、粘度調整用の溶媒(主剤である感光性樹脂と反応せず、樹脂を膨潤・可塑化させる作用のみの有機溶剤)を含まない方が好ましい。例えば、エポキシ樹脂を使用する場合、上記溶媒に代えて、液状のエポキシモノマーを使用することにより、オーバークラッド層の形成材料を無溶媒化できる。液状のエポキシモノマーとしては、例えば、ダイセル化学工業社製 セロキサイド2021P,ダイセル化学工業社製 セロキサイド2081,アデカレジン社製 EP4080E等があげられ、これらを用いて、固体状もしくは粘ちょう液体状のエポキシ樹脂を溶解させ、無溶媒化することができる。
【0065】
つぎに、本発明の実施例につい説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0066】
まず、実施例に先立って、使用材料を調整した。
【0067】
〔アンダークラッド層およびオーバークラッド層の形成材料〕
成分A:ビスフェノキシエタノールフルオレンジクリシジルエーテル〈大阪ガスケミカル社製 オグゾールEG〉 70重量部
成分B:1,1,3−トリス〔2,5−ジメチル−4−[2−(3−オキセタニル)ブトキシフェニル]〕−3−フェニルプロパン〈日東電工社製 特開2007−191433参照〉 30重量部
成分C:4,4’−ビス〔ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルフィニオ〕フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロアンチモネートの50%プロピオンカーボネート溶液(光酸発生剤) 1重量部
これらを乳酸エチル〈和光純薬社製〉40重量部に撹拌溶解(温度80℃,撹拌250rpm×3時間)することより、クラッド形成材料を調製した。調製したワニスの粘度をデジタル粘度計〈ブルックフィールド社製 HBDV−I+CP〉にて測定したところ、1300mPa・sであった。
【0068】
〔コアの形成材料〕
成分A:ビスフェノキシエタノールフルオレンジグリシジルエーテル〈大阪ガスケミカル社製 オグゾールEG〉 70重量部
成分D:ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテル〈大阪ガスケミカル社製 オグゾールPG〉 30重量部
成分C:4,4’−ビス〔ジ(β−ヒドロキシエトキシ)フェニルスルフィニオ〕フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロアンチモネートの50%プロピオンカーボネート溶液〈光酸発生剤〉 1重量部
これらをシクロヘキサノン〈和光純薬社製〉55重量部に撹拌溶解(温度80℃,撹拌400rpm×18時間)させることより、コア形成材料(光重合性樹脂組成物)を調製した。調製したワニスの粘度をデジタル粘度計〈ブルックフィールド社製 HBDV−I+CP〉にて測定したところ、1000mPa・sであった。
【0069】
〔アンダークラッド層の作製〕
まず、シリコンウエハ基板〈シリコンテクノロジー社製 厚さ500μm〉の表面に上記アンダークラッド層の形成材料をスピンコート装置〈ミカサ社製 1X−DX2〉により塗布した。そして、アンダークラッド層に対応する方形状パターンの開口を有し、この方形状開口の長手(長辺)方向と平行な線上の互いに離れた2カ所に、丸型アライメントマークA(直径1mm,幅50μm)に対応するパターンの開口が形成された石英製フォトマスクM1を介して、4000mJ/cm2の365nm線照射〈露光機(ミカサ社製MA−60F),超高圧水銀灯(ウシオ電機社製 USH−250D)〉による露光を行った。つづいて、70℃×15分間の加熱処理を行った。つぎに、γ―ブチロラクトン〈三菱化学製〉を用いて、3分間のディップ現像することにより、未露光部分を溶解除去した後、150℃×15分間の加熱処理を行うことにより、基板上に、アンダークラッド層と2個の丸型アライメントマークAを形成した。得られたアンダークラッドの断面寸法は、デジタルマイクロスコープ〈KEYENCE社製 VHX−200〉で測定したところ、厚さ38μmであった。
【0070】
〔コアの作製〕
つぎに、上記アンダークラッド層の表面に、上記コアの形成材料をスピンコート装置〈ミカサ社製 1X−DX2〉により塗布した後、150℃×20分間の乾燥処理を行った。ついで、長手方向に沿って互いに平行なストレート部に対応する開口パターン〔12条,各コアのL/S=40μm/210μm,図4(c)のマスクパターンの(2a)部分参照〕と、広幅曲面からなるレンズ部に対応する開口パターン〔図4(c)のマスクパターンの(2b)部分参照〕とを有し、これらコアパターンの開口の長手方向と平行な線上の互いに離れた2カ所に、十字型アライメントマークB(長さ1mm,幅50μm)に対応するパターンが形成されたフォトマスクM2を準備した。
【0071】
そして、上記石英製フォトマスクM2を、上記アンダークラッド層の上方に配置し、上記各十字型アライメントマークBに対応するパターンが、前記丸型アライメントマークAの枠内に納まるように、このフォトマスクM2を位置決めした。ついで、上記石英製フォトマスクM2を介して、その上から37000mJ/cm2の365nm線照射〈露光機(ミカサ社製 MA−60F),超高圧水銀灯(ウシオ電機社製 USH−250D)〉による露光を行った。つづいて、100℃×60分間の加熱処理を行った。つぎに、γ―ブチロラクトン〈三菱化学製〉を用いて3分間のディップ現像することにより、未露光部分を溶解除去した後、150℃×30分間の加熱処理を行うことにより、複数条のコアと、2個の十字型アライメントマークB(丸型アライメントマークAの枠内)とを形成した。得られた各コアのストレート部の断面寸法は、デジタルマイクロスコープ〈KEYENCE社製、VHX−200〉で測定したところ、幅50μm×高さ50μmであった。
【0072】
〔オーバークラッド層の作製〕
つぎに、その上に、上記オーバークラッド層の形成材料をスピンコート法により塗布して、各コアを被覆するとともに、このオーバークラッド層形成材料を、上記アンダークラッド層1の一端部を越える領域まで塗布し、これら全体を被覆した。なお、上記コアの一端部を越えて塗布された形成材料は、後述する延設部形成用の領域である。
【0073】
ついで、オーバークラッド層および延設部に対応する開口パターン〔図4(e)のマスクパターンの(3)および(4)部分参照〕を有し、その長手方向一端側に、立壁部に対応する開口パターンと光ファイバ固定用溝に対応するマスクパターンとが櫛状に形成された〔図4(e)のマスクパターンの(4a)および(5)部分参照〕フォトマスクM3を準備した。なお、このフォトマスクM3には、光ファイバ固定用溝のマスクパターンの他端部(閉塞部)と上記コアの位置との間の領域に、境壁部に対応する開口部位が設けられている。また、上記オーバークラッド層用および延設部用開口パターンの長手(長辺)方向と平行な線上の互いに離れた2カ所に、十字型アライメントマークC(1辺の長さ1mm,幅100μm)が形成されている。
【0074】
そして、この石英製フォトマスクM3を上記基板の上方に配置し、アライメント用光学顕微鏡により上記各十字型アライメントマークBの位置を認識し、このマークBの上に、上記フォトマスクM3に設けられている十字型アライメントマークCを合わせて、フォトマスクM3の水平位置を正確に位置決めした。
【0075】
その後、上記フォトマスクM3を介して、4000mJ/cm2の365nm線照射〈露光機(ミカサ社製 MA−60F),超高圧水銀灯(ウシオ電機社製 USH−250D)〉による露光を行った。つづいて、70℃×15分間の加熱処理を行った。つぎに、γ―ブチロラクトン〈三菱化学製〉を用いて3分間のディップ現像することにより、未露光部分を溶解除去した後、150℃×15分間の加熱処理を行うことにより、オーバークラッド層を完成させ、延設部を有する光導波路を得た。上記オーバークラッド層を含む光導波路全体の断面寸法は、デジタルマイクロスコープ〈KEYENCE社製 VHX−200〉で測定したところ、厚さ130μmであった。
【0076】
〔光導波路の端面加工〕
つぎに、上記作製した光導波路の端部に、ダイシング加工を施し、アンダークラッド層より一端側に突出しているオーバークラッド層を切断して、光ファイバ固定用溝の一端側端部開口(光ファイバ挿入口)を露出させ、実施例の光接続構造用光導波路を得た。
【0077】
〔光ファイバの固定〕
最後に、得られた光導波路の各光ファイバ固定用溝に、光ファイバを嵌め込み、これを固定するために、市販のUV硬化型エポキシ接着剤〈NTTアドバンステクノロジ社製 E3129〉を、上記光ファイバ固定用溝内に適量滴下した。そして、所定の紫外線を照射して、光ファイバと光導波路の一体化構造(光接続構造)を得た。
【0078】
得られた光導波路は、上記延設部の光ファイバ固定用溝が、光導波路コアと同軸的に形成されているため、この光ファイバ固定用溝に嵌合固定した光ファイバが、光導波路のコアに対して自動的に適正な位置にくるようになっている。このため、この光導波路を用いた光接続構造は、上記光ファイバと光導波路コアとの間の光軸が、無調芯で一致する。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の光接続構造は、光ファイバと光導波路コアとの間の光軸を、簡単かつ自動的に一致させることができ、電子機器内のボード間やボード上のチップ間等を接続する光配線に適する。また、本発明の光接続構造に用いる光導波路の製法は、この光接続構造に用いる光導波路を、効率的に安価に製造することができる。
【符号の説明】
【0080】
2 コア
3 オーバークラッド層
4 延設部
5 溝
6 境壁部
11 光導波路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を伝達するコアと、このコアの下側に設けられるアンダークラッド層と、上記コアを被覆した状態で設けられるオーバークラッド層とからなる光導波路の長手方向一端に、光ファイバを固定して、この光ファイバと上記光導波路のコアとの間に光信号を相互に伝達する光接続構造であって、上記光導波路のオーバークラッド層の一端側が、長手方向に延設されて延設部に形成され、この延設部における上記コアの延長線上に、上記延設部の一端側端面に向けて開口する光ファイバ固定用溝が同軸的に形成され、この固定用溝に、光ファイバが嵌合して固定されているとともに、この光ファイバ固定用溝の他端側閉塞部と上記コアの間には、上記オーバークラッド層の一端側部分からなる境壁が形成されており、この境壁を介して、上記光ファイバ固定用溝に嵌合された光ファイバの光軸と、上記光導波路のコアの光軸とが一致した状態になっていることを特徴とする光接続構造。
【請求項2】
上記オーバークラッド層およびその延設部が、上記コアの位置または位置決め用アライメントマークを基準として形成された感光性樹脂製の成形体からなる請求項1記載の光接続構造。
【請求項3】
上記コアの長手方向一端部が、外側に向かって反るレンズ曲面を有するレンズ部に形成されている請求項1または2記載の光接続構造。
【請求項4】
コアと、オーバークラッド層およびアンダークラッド層とからなる光導波路の長手方向一端に、上記オーバークラッド層の一端側が長手方向に延設されて延設部に形成され、この延設部に、上記延設部の一端側端面に向けて開口する光ファイバ固定用溝が形成された請求項1記載の光接続構造に用いる光導波路の製法であって、上記アンダークラッド層およびその上に形成されたコアの上に、上記オーバークラッド層形成用の感光性樹脂を塗布して感光性樹脂層を形成する際に、この感光性樹脂を上記コアの一端部を越えて塗布して、上記延設部形成用の感光性樹脂層を延設する工程と、上記感光性樹脂層にフォトマスクを介して照射線を照射して露光し、現像することにより、上記オーバークラッド層およびその延設部を形成すると同時に、この延設部に、上記光ファイバ固定用溝を、その溝の他端側閉塞部と上記コアとの間が境壁となるように形成する工程と、を備えることを特徴とする光接続構造用光導波路の製法。
【請求項5】
上記オーバークラッド層用フォトマスクを位置決めする際に、上記コアの位置または位置決め用アライメントマークを基準にこのフォトマスクを位置合わせし、上記光ファイバ固定用溝を、上記コアと同軸上に形成する請求項4記載の光接続構造用光導波路の製法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−247945(P2011−247945A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−118512(P2010−118512)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】