光源装置及びこれを用いた撮像装置
【課題】 広帯域にわたる波長掃引を高速に行い得る光源装置を提供する。
【解決手段】 第1の光共振器を備えたレーザ発振器と、該第1の光共振器に入力部が互いに並列に接続された複数の第2の光共振器と、該第2の光共振器の出力部を介して光を取出す光取出し部と、該光取出し部を経由した光を合波する合波部と、を備え、前記複数の第2の光共振器を経由した光を前記合波部より出射する光源装置であって、前記複数の第2の光共振器内にはそれぞれ、屈折率分散を有する光学部材と、光増幅媒体と、が配されており、該光増幅媒体が、互いに異なる最大利得波長を有する光源装置。
【解決手段】 第1の光共振器を備えたレーザ発振器と、該第1の光共振器に入力部が互いに並列に接続された複数の第2の光共振器と、該第2の光共振器の出力部を介して光を取出す光取出し部と、該光取出し部を経由した光を合波する合波部と、を備え、前記複数の第2の光共振器を経由した光を前記合波部より出射する光源装置であって、前記複数の第2の光共振器内にはそれぞれ、屈折率分散を有する光学部材と、光増幅媒体と、が配されており、該光増幅媒体が、互いに異なる最大利得波長を有する光源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発振波長を変化させることが可能な光源装置及びこれを用いた撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、通信ネットワークの分野や検査装置の分野等で、発振波長を可変とする光源装置について、波長掃引速度の高速化と掃引帯域の広帯域化が要望されてきている。
【0003】
検査装置の一例として、光干渉を用いて検体の断層像を撮像する光干渉トモグラフィー(Optical Coherence Tomography:以下、「OCT」ともいう。)装置があり、無侵襲性等の理由から医用分野における研究が近年、盛んになってきている。
【0004】
波長掃引光源を用いる波長掃引型光干渉トモグラフィー(SS−OCT:Swept Source Optical Coherence Tomography)では深さ情報を得るのにスペクトル干渉を用い、分光器を必要としないことから光量のロスが少なく、高SN比の像取得も期待されている。
【0005】
SS−OCT装置においては、波長掃引速度が大きいほど像取得時間を短縮できると共に、生体の不可避的な動きの影響を抑制した生体観察が可能となることから波長掃引速度の高速化が望まれる。
【0006】
また、波長の掃引帯域が広いほど断層像の空間解像度を高めることが可能となるため、広帯域化も望まれるところである。
【0007】
ここで、断層像の深さ方向の分解能は、波長掃引幅をΔλ、発振波長をλ0、として以下の式(1)で表される。
【0008】
【数1】
【0009】
したがって深さ分解能を高めるためには波長掃引幅Δλの拡大が有用となる。
【0010】
こうした中、SS−OCT装置に用いる光源として、主に通信分野で使用される帯域にて検討されてきた共振器中の屈折率の波長分散(以下、単に「分散」ともいう。)を利用して波長可変を行う分散チューニングの適用が非特許文献1に開示されている。
【0011】
この分散チューニングでは共振器の自由スペクトル間隔(Free Spectral Range :以下「FSR」ともいう。)が波長依存性を持っていることを用いて、能動モード同期状態での発振波長を制御する。つまり、能動モード同期を生じせしめる変調信号の周波数を変化させることで波長掃引行うことから、変調信号の周波数を高速に変化させることで、高速な波長掃引が可能となる。
【0012】
ここで、自由スペクトル間隔は、共振器内を周回する光に対する共振器モードの周波数間隔を示す。自由スペクトル間隔(FSR)は真空中の光速をcとし、共振器が持つ屈折率をn、共振器長をLとしたとき以下の式(2)で表される。
【0013】
【数2】
【0014】
また、非特許文献1は、分散チューニングによる波長掃引範囲Δλは以下の式で表わされるとしている。
【0015】
【数3】
【0016】
一方、複数の位置に同期してレーザ光を照射するレーザ装置として、一つのマスターレーザより出射される光を複数の増幅器に導入して、複数の出力ヘッドを同期制御することが特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許第7,443,903号明細書
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】S.Yamashita, et al. Opt.Exp. Vol.14, pp.9299(2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
非特許文献1に開示された能動モード同期による分散チューニング方式では変調信号の周波数を高速に変化させることで波長掃引速度を高めることが可能であるものの、波長掃引範囲は共振器を構成する半導体光増幅器(Semiconductor Optical Amplifier:以下、「SOA」ともいう。)に依存することから掃引範囲の広帯域化は制約を受ける。
【0020】
特許文献1は、同一のマスターレーザに結合した複数の増幅器を介して、複数の出力ヘッドより同期した光を出力するレーザ装置を開示するものの、出力光の波長を掃引するという思想はない。
【0021】
本発明は、広帯域にわたる波長掃引を高速に行い得る光源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明により提供される光源装置は、第1の光共振器を備えたレーザ発振器と、該第1の光共振器に入力部が互いに並列に接続された複数の第2の光共振器と、該第2の光共振器の出力部を介して光を取出す光取出し部と、該光取出し部を経由した光を合波する合波部と、を備え、前記複数の第2の光共振器を経由した光を前記合波部より出射する光源装置であって、前記複数の第2の光共振器内にはそれぞれ、屈折率分散を有する光学部材と、光増幅媒体と、が配されており、該光増幅媒体が、互いに異なる最大利得波長を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明の光源装置では、第1の光共振器を備えたレーザ発振器に、屈折率分散を有する光学部材と光増幅部材とを内部に備えた複数の第2の光共振器が互いに並列に接続されており、複数の第2の光共振器を経由した複数の光を合波部を介して出力する。各第2の光共振器内には互いに異なる最大利得波長を有する光増幅媒体が備わり、第2の光共振器の複数を経由した複数の光を合波して出力することから広帯域の波長掃引が可能となる。また、屈折率分散を有する光学部材を用いることから分散チューニングにより、高速な波長掃引が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示す模式図
【図2】本発明の装置に適用可能な光増幅器の特性の例を示すグラフ
【図3】本発明の装置における波長掃引の例を示す模式図
【図4】本発明の装置に適用可能な光取出し部の特性の例を示すグラフ
【図5】本発明の装置の一例を示す模式図
【図6】本発明の装置における波長掃引の例を示す模式図
【図7】本発明の装置における波長掃引の例を示す模式図
【図8】本発明の装置の一例を示す模式図
【図9】本発明の装置の一例を示す模式図
【図10】本発明の装置に適用可能な光増幅器の特性の例を示すグラフ
【図11】本発明の装置における波長掃引の例を示す模式図
【図12】本発明の装置における波長掃引の例を示す模式図
【図13】本発明の装置の一例を示す模式図
【図14】本発明の装置の一例を示す模式図
【図15】本発明の装置を適用したOCT装置の模式図
【図16】本発明の装置を適用したOCT装置の模式図
【図17】本発明の装置を適用したOCT装置の模式図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
【0026】
図1は、本発明の光源装置の一例を示す模式図である。
【0027】
図1に示した光源装置100は大別すると、第1の光共振器15を備えたレーザ発振器101と、第1の光共振器15に入力部(110A、110B、110C)が互いに並列に接続された複数の第2の光共振器(150A、150B、150C)と、第2の光共振器の出力部(116A、116B、116C)より光を取出す光取出し部(106A、106B、106C)と、光取出し部を経由した複数の光を合波する合波部109と、を含んで構成されている。
【0028】
レーザ発振器101は、光を増幅させる光増幅媒体13を一対の光共振器15間に配して構成され、光出射面をなす光共振器15の一端は、複数の光導波路(102A、102B、102C)を介して第2の共振器の入力部(110A、110B、110C)に接続されている。
【0029】
第2の光共振器内(150A、150B、150C)には、屈折率分散を有する光学部材としての光導波路(123A、123B、123C)と、光増幅媒体(103A、103B、103C)と、必要に応じて設けられる光アイソレータ(113A、113B、113C)と、が配されている。
【0030】
第2の共振器は、入力部を構成する入力カップラ(110A、110B、110C)と出力部を構成する出力カップラ(116A、116B、116C)とを含み、これらのカップラと導波路(123A、123B、123C)とが光学的に結合してリング共振器を構成している。
【0031】
光アイソレータはリング共振器内の光を一方向に周回させることで、光増幅媒体内に生ずる定在波により発生するゲインの空間分布の抑制を目的として導入してある。
【0032】
ここで、光増幅媒体(103A、103B、103C)として電流駆動の半導体光増幅器(SOA(Semiconductor Optical Amplifier))を用いて説明する。
【0033】
SOAは、基本的に半導体レーザと同等の構造をもつ光源兼光増幅媒体である。但し、共振器構造をもたないように、端面での反射を抑えた構造をとっていることが半導体レーザと異なる点である。
【0034】
図1に示した光源装置では、レーザ発振器101に複数の共振器(150A、150B、150C)を並列に接続して構成されている。
【0035】
レーザ発振器101内で生じた光は、第2の共振器を構成する複数の光増幅媒体に入射することで、複数の共振器内の光増幅媒体のゲイン(利得)を変動させ、周期的なゲイン変動により複数の共振器内でモードロックが生ずる。この点に鑑みてレーザ発振器101をマスターレーザ、複数の共振器(150A、105B、105C)をスレーブレーザとして捉えることもできる。それ故、以下の説明では、マスター及びスレーブという表現をも用いる。
【0036】
本発明の光源装置では第2の共振器を構成する複数の光増幅媒体は、図2に示すように、異なる最大利得波長(ゲインスペクトルピーク波長)を有し、且つその利得帯域(ゲインスペクトル)の一部が互いに重複するように構成することが好ましい。
【0037】
その理由は、複数のスレーブより出射される光の列で構成される帯域を互いに異なる帯域とし、これらをつなぎ合わせて得られる総合的な波長掃引範囲を広帯域化するとの、波長掃引帯域内に発振しない大きな帯域がないようにするためである。
【0038】
レーザ発振器101は、パルス発振をするレーザ光源を採用できる。このようなレーザとしては、例えばゲインスイッチング動作をする半導体レーザ、モード同期レーザ等を挙げることができる。
【0039】
本発明の光源装置では、第1の共振器を備えたレーザ発振器101で発生させたパルスを第2の共振器の複数に入射させて、第2の共振器を構成する光増幅媒体に対して相互利得変調をかける。
【0040】
これにより複数の第2の共振器内では、各々分散チューニングによるモードロックがかかり、変調信号に応じて各共振器内で波長の異なる光(発振周波数が異なる光)が発生する。複数の第2の共振器内で発生した波長の異なる光は光取出し部(106A、106B、106C)より取出され、合波部109で合波して出射される。
【0041】
本発明の光源装置では、複数の第2の共振器内における波長掃引帯域を異なるものとし、これを合波して出射すると共に、分散チューニングによる変調信号に応じて発振波長を可変とすることから広帯域、かつ高速な波長掃引が可能となる。
【0042】
本発明の光源装置では、レーザ発振器(マスターレーザ)の発振波長は複数の第2の共振器(スレーブレーザ)を構成する光増幅媒体が有する増幅帯域内の波長かもしくはそれよりも短い波長であることが好ましい。マスターレーザで発生した光パルスによりスレーブレーザ内の光増幅媒体に相互利得変調をかけるためである。
【0043】
複数の第2の共振器(スレーブ)を構成する光増幅媒体はDC電源により駆動され、ここにマスターレーザからのパルス光が注入されると、光増幅媒体が有する利得(ゲイン)が該光パルスにより消費され、利得(ゲイン)が低下する。つまり、マスターレーザからの光パルスによってスレーブレーザの利得(ゲイン)が変調されることとなる。
【0044】
以下、説明するモード同期発振では共振器に何らかの変調を与えることで縦多モード発振を実現する必要があるが、その変調手段として本発明ではマスターレーザからの光パルスによるスレーブ共振器内のゲイン変調を用いる。
【0045】
次に、レーザの能動モード同期動作および分散チューニングについて説明する。
【0046】
能動モード同期発振とは、複数の共振器モードを同時に励振し(縦多モード発振)、これらの位相関係を一定にするときにレーザが高周波パルス発振動作をするものである。
【0047】
縦多モード発振及びモード間の位相関係確定のために、典型的にはレーザの光学系内に非線形性を持たせると共に何らかの光変調器を導入する。
【0048】
例えば、光変調器が透過率制御型の光変調器である場合、光変調器で高周波に透過率を変動させることで、始めに励振された共振器モードの低周波側及び高周波側に側帯波(サイドバンド)を励振する。
【0049】
光変調器から印加される周波数をω’とするとき、当初励振された共振器モードの周波数をω0として、サイドバンドはω0±ω’の周波数で励振される。
【0050】
このときω’が共振器モード間隔またはその整数倍に等しいとすると、前記サイドバンドがω0の隣の共振器モードを励振する。このように共振器モード同士が互いにサイドバンドを通して励起しあい、縦多モード発振が可能となる。
【0051】
また、共振器内に光増幅器や非線形媒質、もしくは光変調器そのものなどが持つ非線形性を導入することでモード間相互作用が生じ、モード間の位相関係が確定する。その結果、レーザはパルス列を発振し出力するようになる。
【0052】
このように外部から共振器に変調を加え、強制的にモード同期状態を発生させるのが能動モード同期である。本発明では、共振器外部にあるマスターレーザから光パルスを共振器内の光増幅器に導入して、スレーブ共振器のゲインを変調することでモード同期を行う。
【0053】
複数のスレーブ共振器を有するレーザ装置において、各スレーブ共振器のゲインを個別に(電気的に)制御する場合にあっては、各スレーブの光パルス発生のレートを揃えること、更に、その他動作を正確に同調させて行うのは、容易なことではない。まして、その変調周波数がGHz帯であるならば尚更である。
【0054】
そこで、本発明の装置では、スレーブ同士(複数の第2の共振器間)の同調を外部より光パルスを分岐させて並列的に複数のスレーブに導入することで得る。
【0055】
この手法を採用すると、導入するパルスの周波数とスレーブの駆動周波数が原理的に一致するため、全てのスレーブにおいて、光パルスの発生レートが等しくなり、且つ同一タイミング、同一速度での波長掃引が可能となる。
【0056】
モード同期の周波数としては、例えば、複数の第2の共振器(各スレーブ)の長さを200m、屈折率を約1.5とすると、スレーブ共振器の光学的周回長は300m程度となり、この中を伝搬する光は約1MHzで共振器内を周回することになる。
【0057】
従ってこの共振器の共振器モード間隔(自由スペクトル間隔(FSR))も約1MHzとなる。
【0058】
そこで光変調器の駆動周波数を1MHzもしくはこの整数倍に設定するとモード同期が得られる。この状態では繰り返し周波数が1MHzの整数倍のパルス列が発生する。実際にはモード同期動作の安定化のため、繰り返し周波数の100から1000倍程度で用いることが好適である。したがって、100MHzから1GHz程度でモード同期の為の変調を行うことになる。
【0059】
次に分散チューニングについて説明する。
【0060】
分散チューニングとは、上述のモード同期を掛けるレーザの共振器の屈折率が波長依存性を持つ場合、その結果として該共振器の有するFSRが波長依存性を持つことを用いて能動モード同期レーザの発振波長を変化させる動作方法である。
【0061】
上述のとおり、能動モード同期は発振周波数帯において光共振器が有するFSRまたはその整数倍の変調を掛けることで実現可能だが、分散チューニングにおいてはFSRが波長依存性を持つため、変調周波数を変化させることでモード同期の発振波長を変化させるのがその原理である。
【0062】
つまり、本発明においては、スレーブの能動モード同期を得る為にマスターレーザより導入する光パルスの繰り返し周波数(これは光パルスをスレーブに導入する周波数とも言い換えることができる)を変化させることで、スレーブ内の光増幅器の利得(ゲイン)変調の周期が変化し、これによりモード同期状態での発振波長が変化する。
【0063】
ここで、一つのマスターレーザより複数のスレーブ(第2の共振器)に同時にパルスを導入して、各スレーブがモード同期発振する状況を考える。
【0064】
各スレーブの光導波路の群屈折率が波長依存性を持っている場合、上述のとおりマスターレーザからのパルスによって各スレーブで能動モード同期が掛かり、マスターレーザからのパルス注入の周波数を変化させることで、各スレーブから取出される光パルスの中心周波数も各スレーブで変化する。
【0065】
このとき、マスターレーザからのパルス注入の繰り返し周波数f0の変化、つまり能動モード同期の為の変調周波数を変化させる場合、全てのスレーブにおいて同じf0に対して能動モード同期がかかるためには、まず全てのスレーブが同じ能動モード同期周波数を持つ必要がある。
【0066】
このためには全てのスレーブにおいてFSRが等しいことが条件となる。つまり、各スレーブを構成する共振器の屈折率をn(ν)、共振器長をLとするとき、以下の式(4)が各スレーブで互いに等しいことが条件となる。
【0067】
【数4】
【0068】
繰り返し周波数f0の変化に対して各スレーブで発生する光パルスの波長の変化量、正確には光の中心周波数の変化量が全てのスレーブにおいて揃っていることも好適である。この条件が満たされているときにはどのスレーブからも同じ波長掃引速度の光パルス列が発生することになり、この条件を満たすと、例えばOCT装置用光源として好適となる。
【0069】
それは、以下の式(5)で表される自由スペクトル間隔(FSR)の周波数依存性が各スレーブ間で互いに等しいことが条件となる。
【0070】
【数5】
【0071】
また、本発明の光源装置を動作させ、全てのスレーブからの光パルスを用いて発振波長が時間と共に掃引される光パルス列を効果的に生成するためには、各スレーブからのパルスの取出し方及び合波方法を工夫することが好ましい。
【0072】
こうした光源装置としては、以下の形態を採用することができる。
【0073】
<(1)第2の共振器(スレーブ)のうち一つだけに能動モード同期が掛かる形態>
マスターレーザからパルスの繰り返し周波数f0で光パルスを各スレーブに注入する。
【0074】
分散チューニング方式において、共振器の分散パラメータをD、光速をc、共振器内の屈折率をλとして、λ=λ0の周りでテーラー展開すると以下の式(6)が得られる。
【0075】
【数6】
【0076】
ここで、第一項を
【0077】
【数7】
【0078】
と書き、スレーブに導入する光パルスの周波数をfm、さらにfm0=N×FSRとする。ここでNはモード同期の次数である。
【0079】
これらのパラメータを用いると、分散モード同期時のスレーブの発振波長は以下の式(7)で表される。
【0080】
【数8】
【0081】
ここでLはスレーブの共振器長である。
【0082】
さらに、あるスレーブにおいて能動モード同期発振が可能なのは波長λmであるが、実際に発振が生じるためにはこのλmが光増幅媒質の帯域内である必要がある。
【0083】
したがって複数のスレーブのうち注目しているスレーブのみで発振が生じ、その他のスレーブで発振を生じさせないためには、マスターレーザの繰り返し周波数fmに対して注目するスレーブのみλmが当該スレーブのゲイン帯域内に存在し、その他のスレーブではλmがゲイン帯域の外にある状態とすることが好適である。
【0084】
これは、式(7)中の各パラメータを適宜設定してやることで可能となる。
【0085】
こうしたパラメータ設定により、複数のスレーブのうち発振しているのはいかなる時刻においても一つのスレーブだけという状態が得られる。
【0086】
また、光源装置の設計をし易くする観点から、各スレーブの受け持つ波長掃引範囲もしくは光増幅媒体の増幅波長帯域をほぼそろえておくことも好適である。
【0087】
次数Nのモードと次数N+1のモード間の波長間隔Δλmは以下の式(8)で表される。
【0088】
【数9】
【0089】
したがって、スレーブの数をM個としたとき、上記Δλmが各スレーブで受け持つ波長掃引範囲もしくは光増幅媒体の増幅波長帯域のM倍としておくことも、ある発振周波数fmにおいて一つのスレーブのみに能動モード同期がかかるためには好適である。
【0090】
<(2)各スレーブに同時に能動モード同期を掛けゲートで間引く形態>
マスターレーザからパルスの繰り返し周波数f0で光パルスを各スレーブレーザに注入する。本形態では、この状況で各スレーブレーザには夫々能動モード同期が掛かるものとする。
【0091】
この状態でf0を変化させると、各スレーブで発振している光パルスの中心周波数も変化する。したがって、各スレーブからはそれぞれ波長掃引した光パルスが取り出されることになる。例えば、スレーブ1からは波長λ11からλ12の光パルスが取出され、スレーブ2からは波長λ21からλ22の光パルス、スレーブ3からはλ31からλ32の光パルスがそれぞれ取出される。
【0092】
こうして各スレーブから取出したパルスを、適切なゲート機構を用いた後に合波することで、合波後の光パルスを、SS−OCT用光源として適切な波長掃引パルス列にすることができる。
【0093】
図3に各スレーブにおけるパルスの波長関係の例を示す。図3に示すようにλ11、λ12、λ21、λ22、λ31、λ32の波長関係にあるとき、波長掃引をλ11⇒λA⇒λB⇒λ32の順に行う。
【0094】
ここで、図1に示したスレーブレーザ150Aに接続された光取出し部としてのゲート106Aは、スレーブ150Aより波長λ11からλAまでのパルスを取出す間はOPENになっていて、その他の時間はCLOSEとなるように動作させる。
【0095】
同様に、スレーブレーザ150Bに接続されたゲート106Bは、スレーブ150Bより波長λAからλBのパルスを取出す間はOPEN、他の時間はCLOSEとなるよう動作させる。同じくスレーブ150Cについてもゲート106Cは、スレーブ150Cより波長λBからλ32のパルスを取出す間はOPEN、他の時間はCLOSEとなるよう動作させる。
【0096】
このような動作をさせるためには、マスターレーザより出射されるパルス周波数と、各スレーブレーザで発振するパルスの中心周波数と、の対応関係が予めわかっていることが好ましい。この場合、例えば、光源制御装置170から、マスターレーザ101に対してマスターレーザ101のパルスの繰り返し周波数f0を制御する信号を出すのと同時に、各スレーブのゲート106A乃至106Cに対してゲートをOPENないしはCLOSEする制御信号を送出すればよい。
【0097】
ゲートの機構としては例えば高速に動作が可能な電気光学変調素子(EOM:Electro−Optic Modulator)などが好適である。また、マスターレーザからの注入パルスの繰り返し周波数f0の変化によって各スレーブの発振周波数が変化するまでにタイムラグが生じる場合には、各ゲートに対して適宜遅延させた信号を光源制御装置から送出すればよい。
【0098】
ここで、スレーブを3つとする場合、例えば上記ゲートの各々を、各スレーブが波長掃引する際に3回掃引するごとにそのうちの1回分の掃引分だけを透過させるようにゲートを制御することも可能である。
【0099】
例えば、光増幅器(103A乃至103C)から合波カップラ109までの光学的距離を等しくしておき、かつゲート(106A乃至106C)から合波カップラ109までの光学的距離も等しくしておく。
【0100】
ここで、各スレーブ(150A乃至150C)の波長掃引に対して、各ゲート(106A乃至106C)の制御を、マスターレーザの繰り返し周波数f0の掃引に対して一回目の掃引時にはゲート106AのみがOPEN、2回目の掃引時にはゲート106BのみがOPEN、3回目の掃引時にはゲート106CのみがOPENになるように行う。
【0101】
こうすると合波カップラ109で合波後の光パルスはλ11からλ32まで逐次掃引さる光パルス列が生成できる。
【0102】
このような動作のためにはマスターレーザ102の繰り返し周波数の変化が各スレーブの光増幅器に伝搬し、その結果、各スレーブでの発振波長が変化し、変化した発振波長の光パルスが出力カップラを通して合波カップラ109まで伝搬するという経路を考慮すると、以下のようにすることが考えられる。
【0103】
即ち、第2の共振器の各々について、マスターレーザ(レーザ発振器)から光増幅媒体までの光学的光路長と光増幅媒体から合波カップラ(合波部)までの光学的光路長の和が等しければよいことになる。
【0104】
また、図4に示すように、ゲート106Aとして波長λ11からλAまでを透過するバンドパスフィルタを用い(透過率スペクトル401)、ゲート106Bとして波長λAからλBまでを透過するバンドパスフィルタ(透過率スペクトル402)、ゲート106Cとして波長λBからλ32までを透過するバンドパスフィルタ(透過率スペクトル403)を用いることも可能である。
【0105】
この場合、各スレーブに接続されるバンドパスフィルタにより各スレーブでの発振波長の重複を防ぐことが可能であり、レーザ出力の安定性やノイズ抑制の観点から好適である。
【0106】
<(3)間引かずに各スレーブレーザのパルスを分割する形態>
上述したパルスを間引く手法の他に、光回路をスイッチングして光パルスを別の導波路に送り込む手法も採用できる。
【0107】
図5に、こうした手法を採用する光学装置の例を示した。図5では、図1におけるゲート106A乃至106Cよりも出射側の光学系を部分的に示している。
【0108】
尚、以降の説明では、原則、各図における同一の部位には同一の符号を付すようにし、重複した説明はなるべく避けることとする。
【0109】
図5において光導波路515(A、B、C)、516(A、B、C)及び517(A、B、C)ついて、各々光路長は等しいものとする。
【0110】
以下、動作例について説明する。
【0111】
ゲート106Aより取出した光パルスを三分岐の光導波路515(A、B、C)へ導入する。ゲート106Aは、ここでは光導波路515(A、B、C)のどの導波路に光を導入するかを制御するスイッチング素子である。
【0112】
ゲート106Aにおいて、スレーブ150Aにおける発振波長の掃引に合わせ、1回目の繰り返し周波数掃引時には光導波路515Aに光を導入し、2回目の掃引時には光導波路515Bに、3回目の掃引時には光導波路515Cに光を導入する制御をする。
【0113】
同様にゲート106Bにおいては、1回目の掃引時には光導波路516Cに、2回目の掃引時には光導波路516Aに、3回目の掃引時には光導波路516Bに光を導入する。
【0114】
ゲート106Cでは、1回目の掃引時には光導波路517Bに、2回目の掃引時には光導波路517Cに、3回目の掃引時には光導波路517Aへ光を導入する。
【0115】
こうした状態で、合波カップラ109(A、B、C)においては、中心波長が時間と共に掃引される光パルスが生成されるので、このままの状態で各々の合波カップラからの出力を単独で用いてOCT装置用光源とすることも使用可能である。
【0116】
さらには、これら3つ(複数)の合波カップラ(合波部)からの出力を、測定物の複数の場所に同時にビームを照射する形態のマルチビーム型OCT装置用の光源として使用することも可能である。
【0117】
このような形態を採用すると高速にOCT撮像が可能になる。
【0118】
<(4)掃引をN分の1に間引く形態>
マスターレーザのパルス発生の繰り返し周波数f0を掃引する際の方式として、図6に示すようにT毎(時間毎)に繰り返し掃引を連続的に行うのではなく、図7に示すようにスレーブの数Nに応じて、N周期に一回の掃引を行う方式も採用可能である。図7ではN=3として、3回に1回の割合で波長掃引がなされる。
【0119】
本形態の装置例を図8に示す。図8の装置は、図1の装置におけるゲート106(A、B、C)に代えて遅延機構806(A、B、C)を備えている点が図1に示した装置との主たる相違点である。
【0120】
図8の装置では、出力カップラ116(A、B、C)より合波カップラ109に至る光導波路の長さを、夫々異ならせておく。
【0121】
例えば、マスターレーザ101の繰り返し周波数f0の掃引周期に対応する時間をTとするとき、出力カップラ116Aから合波カップラ109に光パルスが到達するまでの時間よりもT遅れて、出力カップラ116Bから合波カップラ109に光パルスが到達し、更にT遅れて出力カップラ116Cから合波カップラ109に光パルスが到達する。こうなるような光学的遅延を遅延機構806(A、B、C)で与えればよい。
【0122】
遅延機構としては、単純に光学的長さがVgT分ずつだけ異なるような導波路を用いても良いし(vgは群屈折率)、あるいは光路長可変のディレイライン等を採用しても良い。
【0123】
こうした遅延機構はマスターレーザから各スレーブに導入される経路の途中に設けることも可能である。
【0124】
本形態の間引き動作のためには、マスターレーザ101の繰り返し周波数の変化が各スレーブ内の光増幅器に伝搬、各スレーブでの発振波長が変化し発振波長の変化した光パルスが出力カップラを通して合波カップラ109まで伝搬する経路を考慮する必要がある。
【0125】
この点を勘案すると、マスターレーザ103から光増幅器103(A、B、C)までの光学的光路長と光増幅器から合波カップラ109までの光学的光路長の合計の長さについて、各スレーブ間で上述のVgT分の差異があることが条件となる。
【0126】
このような光学系の構成にすれば高速な切り替えスイッチングなども必要なくなるので簡便な構成を取ることが可能である。
【0127】
この構成においては、例えばスレーブ内に、可飽和吸収体や音響光学素子(Acoustic−Optic Modulator: AOM)など、パルスを安定化させる機構を挿入することもできる。この場合、マスターレーザからのパルス注入によりスレーブにおいて安定的なパルス発振が望まれる。
【0128】
また、繰り返し周波数を掃引していない時間帯には、マスターレーザやスレーブレーザーの出力をoffにすることもできる。
【0129】
こうすることで、マスターレーザからのパルスの繰りかえし周波数が掃引されていない間にスレーブ内の増幅された自然放出(Amplified Spontaneous Emission: ASE)成分から連続発振(Continuous Wave: CW)光の発振やASEによるノイズ成分の増大を抑制可能となる。これによりノイズが抑えられた光源として動作可能である。
【0130】
<光源装置を構成する部材等についての説明>
本発明の第1の共振器を備えたレーザ発振器は、パルス光を生ずるレーザ光源を採用することができる。
【0131】
パルス光を得る手法としては、レーザ共振器の利得や損失を制御して蓄えたエネルギーを放出させる利得スイッチングや、Qスイッチング動作するレーザの他、他モード発振におけるモード間の位相を固定するモード同期レーザ等を挙げることができる。
【0132】
利得スイッチング半導体レーザは、発振閾値よりも低いレベルの直流バイアス電流に大きな振幅の電流パルスを重畳させて急速に発振状態を得る半導体レーザである。
【0133】
モード同期半導体レーザとしては、上述した能動モード同期レーザの他、可飽和吸収体等を用いた受動モード同期レーザ、能動モード同期と受動モード同期を併用したハイブリッドモード同期レーザ等を採用することができる。
【0134】
本発明の第2の共振器(スレーブ)は、上述したリング共振器の他、直線型共振器やσ型共振器等を採用することができる。リング共振器は、光ファイバーを用いた共振器の他、スラブ導波路、ミラーを用いて空中や真空中を光が伝播する光学系を用いたもの等を採用することができる。
【0135】
直線型共振器としては、一対の平行平面を備えた光共振器(所謂、ファブリー・ペロー共振器)や、光ファイバーの端面をミラーとして直線状とした共振器等を挙げることができる。
【0136】
ここで図14を参照して直線型(リニア型)の共振器を用いて構成した装置例を説明する。
【0137】
図14の装置は、リング共振器(150A、150B、150C)に代えて直線状の共振器(151A、151B、151C)を用いている点がこれまで説明した装置との主たる相違である。
【0138】
図14においては、各スレーブ共振器は、両端に光ファイバの終端部を反射ミラーとしたミラー終端ファイバ1411Gと1411Hを配し、これら反射ミラー間に入力カップラ(110A、110B、110C)、出力カップラ(116A、116B、116C)、光増幅器(103A、103B、103C)、及び屈折率分散ファイバ(123A、123B、123C)を配して構成されている。
【0139】
各スレーブ(151A、151B、151C)で発生した光は光取出し部(106A、106B、106C)及び合波カップラ109を介して出射される。尚、アイソレータ(1440A、1440B、1440C)と注入光カットフィルタ1420は必要に応じて設けられる部材である。
【0140】
第2の共振器(スレーブ)の個数は、これまで3つの例で説明してきたが、複数であれば個数が特に限定されるものではない。しかし光源装置の大きさ、制御のし易さ等を考慮すると第2の共振器の数は、一般的には2以上20以下の範囲とされ、より好ましくは3以上10以下、最適には3以上5以下とするのが好ましい。
【0141】
第2の共振器内に配される屈折率分散を有する光学部材は、光ファイバーや導波路で構成することができる。本発明において、当該光学部材が有する屈折率分散の分散値は、負(−)のものから正(+)のものまで、採用する光増幅媒体、得ようと掃引速度、掃引波長範囲等を考慮して適宜、所定の分散値のものを採用することができる。
【0142】
これまで光増幅媒体として半導体光増幅器(SOA)を例に説明したが、この他、光増幅媒体としては、エルビウムやネオジウム等を含有する希土類添加(イオンドープ)光ファイバ、光ファイバ中に色素を添加して色素により増幅を行うもの等を採用することができる。
【0143】
希土類添加光ファイバは、高利得で良好な雑音特性を得るためには好適である。色素添加光ファイバは、蛍光色素材料やそのホスト材料などを適宜選択することで可変波長の選択肢が増す。
【0144】
半導体光増幅器は、小型で且つ高速制御が可能なことから好ましい。半導体光増幅器としては、共振器型光増幅器と進行波形光増幅器の双方を用いることができる。半導体光増幅器を構成する材料は、一般的な半導体レーザを構成する化合物半導体等を用いることができ、具体的にはInGaAs系、InAsP系、GaAlSb系、GaAsP系、AlGaAs系、GaN系等の化合物半導体を挙げることができる。半導体光増幅器は、利得の中心波長が、例えば、840nm、1060nm、1300nm、1550nmのものの中から光源の用途等に応じて適宜、選択して採用することができる。
【0145】
第2の共振器の入力部と出力部は、共振器を光ファイバを用いて構成した場合にはファイバカップラ等で構成することができ、共振器を光ファイバ以外の部材を用いて構成した場合には、ハーフミラー等で構成できる。
【0146】
第2の共振器の出力部より光を取出す光取出し部は、光変調器、光スイッチ、等を採用することができる。これまでの説明や本願の図では、光取出し部はスレーブに対応して個別に設けられた例を挙げているが、光取出し部は集合的に光取出しを行なう1つのユニットで構成することもできる。
【0147】
光変調器の例としては高速変調が可能な導波路型変調器が挙げられ、具体例としては、電気光学効果(ポッケルス効果)を用いたLN強度変調器(LiNbO3基板使用)や電界吸収型光変調器(EA変調器)が挙げられる。LN強度変調器では、干渉計を備えた構成で一方の光路の屈折率を変化させて得られる干渉状態の変化により光のON/OFF制御を行うもので、高速制御に優れている。
【0148】
電界吸収型光変調器は、電界印加により半導体の吸収端がシフトすることを利用した強度変調器であり、小型で低電圧動作が可能である。
【0149】
光スイッチの例としては光の経路を切り替える光路変換スイッチと単に光の透過をON/OFF制御するゲートスイッチの両方を採用することができる。
【0150】
光路変換スイッチとしては1×2光スイッチ、1×3光スイッチの他、1×2の分岐の導波路を多段に組み合わせた1×Nのスイッチングデバイス等が挙げられる。
【0151】
光スイッチは動作の仕方で分類すると機械的に光路を切り替える機械型光スイッチ、電子的に切り替える電子型光スイッチ、光で光路を切り替える全光型光スイッチに分けられ、何れも採用することができるが、高速動作という観点からは、電子型光スイッチ、全光型光スイッチが好適である。
【0152】
電子型光スイッチとしては、電気光学効果を利用したLN光スイッチ、磁気光学効果を用いた磁気光学光スイッチ、音響光学効果を利用した音響光学変調器、をゲートとして用いるスイッチ等が挙げられるが、動作速度と高いオン/オフ比の観点から電気光学効果を利用したLN光スイッチが好適である。
【0153】
全光型光スイッチは、非線形光学効果を利用して光制御による超高速なスイッチングを可能とするものでピコ秒以下の制御が可能である。
【0154】
光取出し部を経由した光を合波する合波部は、光カップラ(光結合器)で構成され、空間型、光ファイバ型、平面導波路型に大別される。空間型としてはビームスプリッタ(ハーフプリズム)を光結合器として用いる形態が挙げられる。
【0155】
光ファイバ型としては複数本の光ファイバのコアを近づけた光ファイバカップラや、複数の光信号を1本の光ファイバに合波するマルチプレクサが、平面導波路型としては基板上に形成された結合器等が挙げられる。
【0156】
以下、具体的な実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。
【実施例1】
【0157】
図9に本例の光源装置を示す。図9に示した装置は、図1の装置に類似するものである。
【0158】
図9に示した光源装置は、駆動装置933を介して駆動されるマスターレーザ101に、スレーブ共振器(150A、150B、150C)が光学的に結合されて構成されている。
【0159】
光学的結合には導入導波路として機能する長さ1mの偏波保存ファイバ(102A、102B、102C)と、ファイバカップラで構成された入力カップラ(110A、110B、110C)と、を用いている。940A、940B、940Cはアイソレータであり、各スレーブからの戻り光がマスターレーザ101に入射しマスターレーザの動作の不安定化を防ぐため挿入されている。
【0160】
各スレーブ共振器(150A、150B、150C)は、屈折率が波長分散を持つ偏波保存ファイバ(透過波長帯域1000nmから1100nm)を用いてリング共振器をなし、その共振器長は100mに設定されている。
【0161】
各スレーブ共振器(150A、150B、150C)にはアイソレータ(113A、113B、113C)と、半導体光増幅器(103A、103B、103C)とが、それぞれ配置され、各半導体光増幅器は駆動装置(927A、927B、927C)によって駆動される。
【0162】
半導体光増幅器(103A、103B、103C)には、各増幅器が有する利得帯域(増幅帯域)が図10の増幅率スペクトル1001、増幅率スペクトル1002、増幅率スペクトル1003を示す、帯域が互いに一部重複するものを用意した。
【0163】
マスターレーザ101からのパルス光入射が無い状態では光増幅器(103A、103B、103C)の増幅率が時間的に一定となるように、光増幅器は、駆動装置(927A、927B、927C)によりDC駆動される。具体的には、駆動装置からは温度コントロール及び電流供給が行われる(SOAの温度を一定に保ちつつ、定電流を流す)。
【0164】
マスターレーザ101としては半導体レーザをゲインスイッチング動作させたものを用いる。
【0165】
より具体的には、駆動装置933を駆動することで直流成分と交流成分が重畳された電圧をマスターレーザ101に印加し、発振する光パルスの中心波長980nm、発振の繰り返し周波数1GHzを得る。
【0166】
この1GHzの光パルスを受けて、光増幅器(103A、103B、103C)にゲインの変調が掛かり、スレーブ920で分散チューニングのモード同期発振が生じる。
【0167】
この状態でマスターレーザ101の繰り返し周波数を図11に示すように1GHz−300kHzから1GHz+300kHzまで周波数変化させる。ここで周波数変化の周期は1ミリ秒である。
【0168】
こうした制御により、共振器内には100mW程度のパルス光が生成される。
【0169】
マスターレーザから各スレーブに上記の繰り返し周波数で光パルスを導入することで、各スレーブ(150A、150B、150C)より光パルスが上記マスターレーザの繰り返し周波数で発生する。
【0170】
マスターレーザの周波数変化に応じて、スレーブ105Aからの発振波長は1005nmから1035nmまで掃引されることとなり、同様にスレーブ105Bでは1035nmから1065nmまで、スレーブ105Cでは1065nmから1095nmまで波長掃引される。
【0171】
各スレーブ(150A、150B、150C)で発生した光パルスは出力カップラ(116A、116B、116C)を通してスレーブ外に取出される。
【0172】
各出力カップラには光ファイバで構成した出力導波路(934A、934B、934C)が接続され、各出力導波路は、各々駆動装置(930A、930B、930C)によって駆動されるゲート(106A、106B、106C)に接続されている。
【0173】
ここで、光ゲートは電気光学効果を利用したLN光スイッチで構成し、各スレーブ(150A、150B、150C)で発生した光パルスを駆動装置(930A、930B、930C)の駆動信号に応じて遮断(OFF)もしくは透過(ON)させる。
【0174】
ここで半導体光増幅器に接続された駆動装置(927A、927B、927C)、ゲートに接続された駆動装置(930A、930B、903C)、及びマスターレーザに接続された駆動装置933は、すべて光源制御装置170によって制御される。
【0175】
光源制御装置170は、PC(パーソナルコンピュータ)と、光源駆動のための信号発生源、スレーブの光増幅媒体の駆動信号を発生する信号源、及びゲート駆動のための駆動信号を発生する信号源とを接続して構成されている。光源制御装置170は駆動装置933に対して繰り返し周波数を指定する信号を送出する。これにより各スレーブから発振する光パルスの発振波長が決定されると共に、光源制御装置170から駆動装置(930A、930B、930C)の制御信号が送られ、この信号に基づいて各ゲート(106A、106B、106C)の開閉状態が決定する。
【0176】
ここで、ゲート(106A、106B、106C)と、光ファイバカップラで構成した合波カップラ109とは、長さ1mの光ファイバ導波路(937A、937B、937C)で接続してある。
【0177】
光源制御装置170からマスターレーザ101に接続された駆動装置933に対してパルスの繰り返し周波数掃引の制御信号が供給される。
【0178】
制御信号により1度目の掃引時にはゲート106Aのみがオープンになり、その他のゲート106B、106Cがクローズとなるようにゲート駆動装置(930A、930B、930C)が制御される。
【0179】
その結果、光ファイバカップラで構成した合波カップラ109に、波長1005nmから1035nmの光パルスが順次送出される。
【0180】
次いで、マスターレーザ101のパルス繰り返し周波数の2度目の掃引時にはゲート106Bのみがオープンとなり、スレーブ150Bで発生した波長1035nmから1065nmの光パルスが合波カップラ109より送出される。同様に、マスターレーザのパルス繰り返し周波数の3度目の掃引時にはゲート106Cのみがオープンとなり、合波カップラ109より波長1065nmから1095nmの光パルスが順次送出される。
【0181】
これにより合波カップラ109より波長1005nmから1095nmの範囲の光パルスが順次出射される。この掃引波長帯域は、通常のスレーブ(共振器)が1つの光源装置に比べて広帯域化されたものとなる。
【0182】
本例より理解されるように主にスレーブの数と光増幅媒体を使用目的を考慮して適宜選択することにより、本発明によると広範囲な用途に適用可能は波長掃引光源が提供できる。
【0183】
以上の例では、各スレーブにおいて発振する光パルスの波長は互いに重複しない例としたが、波長が重複する形態を採用することもできる。
【0184】
例えば、スレーブ150Aでの発振波長を1000nmから1040nm、スレーブ150Bでの発振波長を1030nmから1070nm、スレーブ150Cでの発振波長を1060nmから1100nmとして、一部波長を重複させる。
【0185】
この場合、例えばゲート106Aと合波カップラ109の間に透過波長が1005nmから1035nmのバンドパスフィルタを挿入し、同様にゲート106B、106Cの後ろにはそれぞれ透過波長が1035nmから1065nmと1065nmから1095nmのバンドパスフィルタを挿入すればよい。
【0186】
このようにバンドパスフィルタの波長帯を各スレーブで重複しないように構成することで、各スレーブから取出される光パルスの波長の掃引を連続的で飛び無く行うことが可能となる。
【0187】
一方、このままではバンドパスフィルタで各スレーブにおける発振波長の裾にあたる波長のパルスをカットすることで、合波カップラ109から送出される光パルス列に、時間的な空白が生ずることになる。つまり、ゲート106Aからの光パルスが合波カップラ109を通過して若干の空白時間の後、ゲート106Bからの光パルスが到達することになる。
【0188】
そこで合波カップラ109に到達するパルスの波長と到達時刻の関係を予め光源制御装置170に記憶させておくことも、好適である。あるいは空白時間の分だけ光ファイバ導波路937Aよりもファイバ導波路937Bを短く、そして同様の関係にファイバ導波路937Cもしておくことで、マスターレーザの繰り返し周波数掃引の3回分の光パルスを合波カップラ109より連続して取出すことが可能となる。
【0189】
この他、導入導波路(102A、102B、103C)の長さを変えることで、マスターレーザから各スレーブの光増幅器までの光路長を変えてもよい。あるいは導入導波路(102A、102B、103C)もしくは合波導波路(937A、937B、937C)内に光路長可変デバイスや遅延量が変えられるディレイライン等を挿入してもよい。
【0190】
また、光源制御装置170よりマスターレーザの駆動装置933に信号送出を行ってから各スレーブ内に発生する光パルスの波長が所望の波長になるまでのタイムラグがある場合には、駆動装置933への制御信号の送出と各ゲート(106A、106B、106C)の駆動装置(930A、930B、930C)への制御信号の送出に関して遅延を与えることも好適である。
【0191】
更には、各スレーブ内に発生している光パルスの波長をモニタするための機構を設けても良い。
【0192】
更に別の形態として、各スレーブからの光を一部取り出して狭帯域のバンドパスフィルタに通した後フォトディテクタに検知させることで波長掃引開始のトリガ信号を得ることも可能である。具体的には各スレーブ内で生じ得る光パルスの最短波長もしくは最長波長等のパルスのみを透過するバンドパスフィルタを用いることで上記動作は可能となる。
【0193】
これらのトリガ信号を各スレーブに接続された制御装置(930A、930B、930C)に与えることで、スレーブ内の光パルスの所望のタイミングでの取出しもしくは遮断が可能となる。
【実施例2】
【0194】
上述した実施例1の装置を変形した別の例について説明する。本例は、図9に示した光源装置のマスターレーザ101の駆動形態として、図12に示した掃引タイミングを採用した例である。マスターレーザ101の繰り返し周波数を図12に示すように1GHz−300kHzから1GHz+300kHzまで周波数変化させるのに、繰返し掃引を連続的に行うのではなく、スレーブの数N=3に対応して3回に1回の割合で(間引き)掃引する。
【0195】
本例では、合波導波路937Aの長さよりも合波導波路937Bの長さを、次に示す
VgT(スレーブ150A内のパルス光の発振波長における群速度をVg、マスターレーザの繰り返し周波数の掃引周期をTとして)だけ長くし、同様の関係を合波導波路937Bと合波導波路937Cに対してももたせる。
【0196】
これにより合波カップラ109には波長が1005nmから1095nmの光パルスが順次到着し、出射されることとなる。この動作様態においてはゲート(106A、106B、106C)必須の部材ではなくなるため部品点数の減少により安価な装置構成の実現が図れる。またゲートの高速制御も必要ないため電気系の負担が減少する。
【0197】
また、マスターレーザから各光増幅媒体までの光学的距離と、該光増幅媒体から合波部(合波カップラ)までの光学的距離の和を各共振器ごとにVgTずつ異ならせた形態も採用し得る。
【実施例3】
【0198】
図13を参照して複数の光ビームを発生する波長掃引光源の例を示す。
【0199】
図13に示した光源装置は、合波部を複数備えた装置であり、図9に示した実施例1の光源装置の合波導波路と、合波カップラ部を変形させた以外、実施例1の装置と同様である。
【0200】
図13の装置においては、ゲート106Aには、光ファイバで構成した3分岐の光導波路515(A、B、C)が接続され、ゲート106Bには、同じく3分岐の光導波路516(A、B、C)が、ゲート106Cには、光導波路517(A、B、C)が接続されている。
【0201】
そして、これら3組の光導波路515(A、B、C)、516(A、B、C)、517(A、B、C)を介してゲート106(A、B、C)と光ファイバで構成した3つの合波カップラ109(A、B、C)とが接続されている。ここで、これら3組の光導波路515、156、517の光路長は等しくしてある。
【0202】
以下、動作について説明する。
【0203】
ゲート106Aより取出した光パルスを三分岐の光ファイバで構成した光導波路515(A、B、C)へ導入する。ゲート106Aにおいて、スレーブ150Aにおける発振波長の掃引に合わせ、1回目の繰り返し周波数掃引時には光導波路515Aに光を導入し、2回目の掃引時には光導波路515Bに、3回目の掃引時には光導波路515Cに光を導入する制御をする。
【0204】
同様にゲート106Bにおいては、1回目の掃引時には光導波路516Cに、2回目の掃引時には光導波路516Aに、3回目の掃引時には光導波路516Bに光を導入する。
【0205】
ゲート106Cでは、1回目の掃引時には光導波路517Bに、2回目の掃引時には光導波路517Cに、3回目の掃引時には光導波路517Aへ光を導入する。
【0206】
こうした状態で、合波カップラ109(A、B、C)においては、中心波長が時間と共に掃引される光パルスがそれぞれ生成される。
【0207】
本実施例の基本的な動作は実施例1と同様である。つまり光源制御装置170を駆動させてマスターレーザ101から光パルスが1GHz近傍の周波数で発生する。
【0208】
この光パルスをスレーブ150A、スレーブ150B、スレーブ150Cに導入して各スレーブでモード同期動作(分散チューニング)を行う。
【0209】
これによりスレーブ150Aでは波長1005nmから1035nmの光パルスが発生し、スレーブ150Bでは波長1035nmから1065nmの光パルス、スレーブ150Cでは波長1065nmから1095nmの光パルスがそれぞれ発生する。
【0210】
ここで上述したゲート操作を行うことにより、各合波カップラから出力される光は波長1005nmから1095nmの光パルスが時間的に順次並んでいる状態となる。
【0211】
本例の光源装置は、複数光照射(マルチビーム照射)を可能とするOCT装置の光源として適用可能な装置となる。
【実施例4】
【0212】
本例では、本発明の光源を用いた光断層撮像装置の例を示す。
【0213】
図15は本例のOCT装置の模式図である。
【0214】
図15のOCT装置は、基本的には光源部(1501等)、光源部からの光を検体に照射し、検体部からの反射光を伝達させる検体測定部(1507等)、光を参照ミラーに照射し、参照ミラーからの反射光を伝達させる参照部(1502等)、2つの反射光を干渉させる干渉部(1503)、干渉部により得られた干渉光を検出する光検出部(1509等)、光検出部で検出された光に基づいて画像処理を行う(断層像を得る)画像処理部(1511)で構成されている。以下、各構成要素を説明する。
【0215】
光源部は、波長可変光源1501と該波長可変光源を制御する光源制御部1512を有して構成され、波長可変光源1501は光照射用の光ファイバ1510を介して干渉部を構成するファイバカップラ1503に接続されている。
【0216】
干渉部のファイバカップラ1503は、光源の波長帯域でシングルモードのもので構成し、各種ファイバカップラは3dBカップラで構成した。
【0217】
反射ミラー1504は、参照光光路用ファイバ1502に接続されて参照部を構成し、ファイバ1502は、ファイバカップラ1503に接続されている。
【0218】
検査光光路用1505ファイバ、照射集光光学系1506、照射位置走査用ミラー1507により測定部が構成され、検査光光路用1505ファイバは、ファイバカップラ1503に接続されている。ファイバカップラ1503では、検査物体1514の内部及び表面から発生した後方散乱光と、参照部からの戻り光とが干渉して干渉光となる。
【0219】
光検出部は、受光用ファイバ1508とフォトディテクタ1509で構成され、ファイバカップラ1503で生ずる干渉光をフォトディテクタ1509に導く。
【0220】
フォトディテクタ1509で受光された光は信号処理装置1511にてスペクトル信号に変換され、さらにフーリエ変換を施すことで被験物体の奥行き情報を取得する。取得された奥行き情報は画像出力モニター1513に断層画像として表示される。
【0221】
ここで、信号処理装置1511は、パーソナルコンピュータ等で構成することができ、画像出力モニター1513は、パーソナルコンピュータの表示画面等で構成できる。
【0222】
本実施例で特徴的なのは光源部であり、波長可変光源1501は光源制御装置1512によりその発振波長や強度及びその時間変化が制御される。
【0223】
光源制御装置1512は、照射位置走査用ミラー1507の駆動信号等をも制御する信号処理装置1511に接続され、走査用ミラー1507の駆動と同期して波長可変光源1501が制御される。
【0224】
例えば、実施例1で説明した光源装置を本例の波長可変光源1501として用いると、この光源装置は広帯域を高速で波長掃引が可能であるため、奥行き分解能が高解像な断層画像情報を高速に取得可能である。このOCT装置は、眼科、歯科、皮膚科等における断層画像撮影に有用である。
【実施例5】
【0225】
本例では、干渉信号を差動検出するための光学系を備えた光断層撮像装置の例について説明する。本例の光断層撮像装置は、図16に模式図を示すもので、図15に示した装置と同一の部位には同一の符号を付している。
【0226】
図16の装置は図15のフォトディテクタ1509に代えて光検出器と差動増幅器とを兼ね備えたバランスフォトディテクタ1510とファイバカップラ1503及び1504を組み込んで構成したことが図1の装置との主たる違いである。
【0227】
バランスフォトディテクタ1510は、一端には、信号処理部1511が接続され、他端には、2端子がある。そのうち一つの端子はファイバ1516を介して光カップラ1503に接続され、残りの一端子は、ファイバ1517、光カップラ1504を介して結合部を構成する光カップラ1505に接続されている。
【0228】
こうした接続により本例の装置では、測定物1514と参照ミラー1504からの反射光による干渉信号を二つに分け、その一方と、他方との差動を検出する。
【0229】
バランスフォトディテクタ1510に到達する前に光を2つに分割することで干渉信号の位相が逆位相になるため、両者を引き算すると、分割前の信号に含まれるDC成分だけが除去され、干渉信号だけが取り出せるので好適である。
【0230】
尚、図中、1502はアイソレータ、1518、1519はそれぞれ偏波コントローラである。
【0231】
また、光源1501からの出射光の強度を逐次モニタリングし、そのデータを干渉信号の振幅補正に用いることも可能である。
【実施例6】
【0232】
実施例3で説明した複数の光ビームを発生する波長掃引光源(マルチビーム光源)をOCT装置に適用した例について、図17を参照して説明する。
【0233】
図17の装置は、3つの干渉系(1656、1657、1658)を備えて構成され、各干渉系は、図16を用いて説明した実施例5の装置構成と同様である。そこで、図16の装置と同一の構成部材には同一の符号を付しているので詳しい説明は省略する。
【0234】
本例で特徴的なのは、実施例3で説明した光源装置を光源部1501に適用したことで、光源部1501より出射された3つの光ビームは、アイソレータ1502を介して各干渉系に導入される。
【0235】
本例では、マルチビームをファイババンドルから平行光束の形で取出し、被測定物1514に照射して被測定物内の複数の箇所を同時に干渉計測することが可能となるため、高速な測定が可能な断層撮像装置が構成できる。
【符号の説明】
【0236】
101 第1の光共振器を備えたレーザ発信器
150A 150B 150C 第2の共振器
103A 103B 103C 光増幅媒体
106A 106B 106C 光取出し部
109 合波部
123A 123B 123C 屈折率分散を有する光学部材
【技術分野】
【0001】
本発明は発振波長を変化させることが可能な光源装置及びこれを用いた撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、通信ネットワークの分野や検査装置の分野等で、発振波長を可変とする光源装置について、波長掃引速度の高速化と掃引帯域の広帯域化が要望されてきている。
【0003】
検査装置の一例として、光干渉を用いて検体の断層像を撮像する光干渉トモグラフィー(Optical Coherence Tomography:以下、「OCT」ともいう。)装置があり、無侵襲性等の理由から医用分野における研究が近年、盛んになってきている。
【0004】
波長掃引光源を用いる波長掃引型光干渉トモグラフィー(SS−OCT:Swept Source Optical Coherence Tomography)では深さ情報を得るのにスペクトル干渉を用い、分光器を必要としないことから光量のロスが少なく、高SN比の像取得も期待されている。
【0005】
SS−OCT装置においては、波長掃引速度が大きいほど像取得時間を短縮できると共に、生体の不可避的な動きの影響を抑制した生体観察が可能となることから波長掃引速度の高速化が望まれる。
【0006】
また、波長の掃引帯域が広いほど断層像の空間解像度を高めることが可能となるため、広帯域化も望まれるところである。
【0007】
ここで、断層像の深さ方向の分解能は、波長掃引幅をΔλ、発振波長をλ0、として以下の式(1)で表される。
【0008】
【数1】
【0009】
したがって深さ分解能を高めるためには波長掃引幅Δλの拡大が有用となる。
【0010】
こうした中、SS−OCT装置に用いる光源として、主に通信分野で使用される帯域にて検討されてきた共振器中の屈折率の波長分散(以下、単に「分散」ともいう。)を利用して波長可変を行う分散チューニングの適用が非特許文献1に開示されている。
【0011】
この分散チューニングでは共振器の自由スペクトル間隔(Free Spectral Range :以下「FSR」ともいう。)が波長依存性を持っていることを用いて、能動モード同期状態での発振波長を制御する。つまり、能動モード同期を生じせしめる変調信号の周波数を変化させることで波長掃引行うことから、変調信号の周波数を高速に変化させることで、高速な波長掃引が可能となる。
【0012】
ここで、自由スペクトル間隔は、共振器内を周回する光に対する共振器モードの周波数間隔を示す。自由スペクトル間隔(FSR)は真空中の光速をcとし、共振器が持つ屈折率をn、共振器長をLとしたとき以下の式(2)で表される。
【0013】
【数2】
【0014】
また、非特許文献1は、分散チューニングによる波長掃引範囲Δλは以下の式で表わされるとしている。
【0015】
【数3】
【0016】
一方、複数の位置に同期してレーザ光を照射するレーザ装置として、一つのマスターレーザより出射される光を複数の増幅器に導入して、複数の出力ヘッドを同期制御することが特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許第7,443,903号明細書
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】S.Yamashita, et al. Opt.Exp. Vol.14, pp.9299(2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
非特許文献1に開示された能動モード同期による分散チューニング方式では変調信号の周波数を高速に変化させることで波長掃引速度を高めることが可能であるものの、波長掃引範囲は共振器を構成する半導体光増幅器(Semiconductor Optical Amplifier:以下、「SOA」ともいう。)に依存することから掃引範囲の広帯域化は制約を受ける。
【0020】
特許文献1は、同一のマスターレーザに結合した複数の増幅器を介して、複数の出力ヘッドより同期した光を出力するレーザ装置を開示するものの、出力光の波長を掃引するという思想はない。
【0021】
本発明は、広帯域にわたる波長掃引を高速に行い得る光源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明により提供される光源装置は、第1の光共振器を備えたレーザ発振器と、該第1の光共振器に入力部が互いに並列に接続された複数の第2の光共振器と、該第2の光共振器の出力部を介して光を取出す光取出し部と、該光取出し部を経由した光を合波する合波部と、を備え、前記複数の第2の光共振器を経由した光を前記合波部より出射する光源装置であって、前記複数の第2の光共振器内にはそれぞれ、屈折率分散を有する光学部材と、光増幅媒体と、が配されており、該光増幅媒体が、互いに異なる最大利得波長を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明の光源装置では、第1の光共振器を備えたレーザ発振器に、屈折率分散を有する光学部材と光増幅部材とを内部に備えた複数の第2の光共振器が互いに並列に接続されており、複数の第2の光共振器を経由した複数の光を合波部を介して出力する。各第2の光共振器内には互いに異なる最大利得波長を有する光増幅媒体が備わり、第2の光共振器の複数を経由した複数の光を合波して出力することから広帯域の波長掃引が可能となる。また、屈折率分散を有する光学部材を用いることから分散チューニングにより、高速な波長掃引が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示す模式図
【図2】本発明の装置に適用可能な光増幅器の特性の例を示すグラフ
【図3】本発明の装置における波長掃引の例を示す模式図
【図4】本発明の装置に適用可能な光取出し部の特性の例を示すグラフ
【図5】本発明の装置の一例を示す模式図
【図6】本発明の装置における波長掃引の例を示す模式図
【図7】本発明の装置における波長掃引の例を示す模式図
【図8】本発明の装置の一例を示す模式図
【図9】本発明の装置の一例を示す模式図
【図10】本発明の装置に適用可能な光増幅器の特性の例を示すグラフ
【図11】本発明の装置における波長掃引の例を示す模式図
【図12】本発明の装置における波長掃引の例を示す模式図
【図13】本発明の装置の一例を示す模式図
【図14】本発明の装置の一例を示す模式図
【図15】本発明の装置を適用したOCT装置の模式図
【図16】本発明の装置を適用したOCT装置の模式図
【図17】本発明の装置を適用したOCT装置の模式図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
【0026】
図1は、本発明の光源装置の一例を示す模式図である。
【0027】
図1に示した光源装置100は大別すると、第1の光共振器15を備えたレーザ発振器101と、第1の光共振器15に入力部(110A、110B、110C)が互いに並列に接続された複数の第2の光共振器(150A、150B、150C)と、第2の光共振器の出力部(116A、116B、116C)より光を取出す光取出し部(106A、106B、106C)と、光取出し部を経由した複数の光を合波する合波部109と、を含んで構成されている。
【0028】
レーザ発振器101は、光を増幅させる光増幅媒体13を一対の光共振器15間に配して構成され、光出射面をなす光共振器15の一端は、複数の光導波路(102A、102B、102C)を介して第2の共振器の入力部(110A、110B、110C)に接続されている。
【0029】
第2の光共振器内(150A、150B、150C)には、屈折率分散を有する光学部材としての光導波路(123A、123B、123C)と、光増幅媒体(103A、103B、103C)と、必要に応じて設けられる光アイソレータ(113A、113B、113C)と、が配されている。
【0030】
第2の共振器は、入力部を構成する入力カップラ(110A、110B、110C)と出力部を構成する出力カップラ(116A、116B、116C)とを含み、これらのカップラと導波路(123A、123B、123C)とが光学的に結合してリング共振器を構成している。
【0031】
光アイソレータはリング共振器内の光を一方向に周回させることで、光増幅媒体内に生ずる定在波により発生するゲインの空間分布の抑制を目的として導入してある。
【0032】
ここで、光増幅媒体(103A、103B、103C)として電流駆動の半導体光増幅器(SOA(Semiconductor Optical Amplifier))を用いて説明する。
【0033】
SOAは、基本的に半導体レーザと同等の構造をもつ光源兼光増幅媒体である。但し、共振器構造をもたないように、端面での反射を抑えた構造をとっていることが半導体レーザと異なる点である。
【0034】
図1に示した光源装置では、レーザ発振器101に複数の共振器(150A、150B、150C)を並列に接続して構成されている。
【0035】
レーザ発振器101内で生じた光は、第2の共振器を構成する複数の光増幅媒体に入射することで、複数の共振器内の光増幅媒体のゲイン(利得)を変動させ、周期的なゲイン変動により複数の共振器内でモードロックが生ずる。この点に鑑みてレーザ発振器101をマスターレーザ、複数の共振器(150A、105B、105C)をスレーブレーザとして捉えることもできる。それ故、以下の説明では、マスター及びスレーブという表現をも用いる。
【0036】
本発明の光源装置では第2の共振器を構成する複数の光増幅媒体は、図2に示すように、異なる最大利得波長(ゲインスペクトルピーク波長)を有し、且つその利得帯域(ゲインスペクトル)の一部が互いに重複するように構成することが好ましい。
【0037】
その理由は、複数のスレーブより出射される光の列で構成される帯域を互いに異なる帯域とし、これらをつなぎ合わせて得られる総合的な波長掃引範囲を広帯域化するとの、波長掃引帯域内に発振しない大きな帯域がないようにするためである。
【0038】
レーザ発振器101は、パルス発振をするレーザ光源を採用できる。このようなレーザとしては、例えばゲインスイッチング動作をする半導体レーザ、モード同期レーザ等を挙げることができる。
【0039】
本発明の光源装置では、第1の共振器を備えたレーザ発振器101で発生させたパルスを第2の共振器の複数に入射させて、第2の共振器を構成する光増幅媒体に対して相互利得変調をかける。
【0040】
これにより複数の第2の共振器内では、各々分散チューニングによるモードロックがかかり、変調信号に応じて各共振器内で波長の異なる光(発振周波数が異なる光)が発生する。複数の第2の共振器内で発生した波長の異なる光は光取出し部(106A、106B、106C)より取出され、合波部109で合波して出射される。
【0041】
本発明の光源装置では、複数の第2の共振器内における波長掃引帯域を異なるものとし、これを合波して出射すると共に、分散チューニングによる変調信号に応じて発振波長を可変とすることから広帯域、かつ高速な波長掃引が可能となる。
【0042】
本発明の光源装置では、レーザ発振器(マスターレーザ)の発振波長は複数の第2の共振器(スレーブレーザ)を構成する光増幅媒体が有する増幅帯域内の波長かもしくはそれよりも短い波長であることが好ましい。マスターレーザで発生した光パルスによりスレーブレーザ内の光増幅媒体に相互利得変調をかけるためである。
【0043】
複数の第2の共振器(スレーブ)を構成する光増幅媒体はDC電源により駆動され、ここにマスターレーザからのパルス光が注入されると、光増幅媒体が有する利得(ゲイン)が該光パルスにより消費され、利得(ゲイン)が低下する。つまり、マスターレーザからの光パルスによってスレーブレーザの利得(ゲイン)が変調されることとなる。
【0044】
以下、説明するモード同期発振では共振器に何らかの変調を与えることで縦多モード発振を実現する必要があるが、その変調手段として本発明ではマスターレーザからの光パルスによるスレーブ共振器内のゲイン変調を用いる。
【0045】
次に、レーザの能動モード同期動作および分散チューニングについて説明する。
【0046】
能動モード同期発振とは、複数の共振器モードを同時に励振し(縦多モード発振)、これらの位相関係を一定にするときにレーザが高周波パルス発振動作をするものである。
【0047】
縦多モード発振及びモード間の位相関係確定のために、典型的にはレーザの光学系内に非線形性を持たせると共に何らかの光変調器を導入する。
【0048】
例えば、光変調器が透過率制御型の光変調器である場合、光変調器で高周波に透過率を変動させることで、始めに励振された共振器モードの低周波側及び高周波側に側帯波(サイドバンド)を励振する。
【0049】
光変調器から印加される周波数をω’とするとき、当初励振された共振器モードの周波数をω0として、サイドバンドはω0±ω’の周波数で励振される。
【0050】
このときω’が共振器モード間隔またはその整数倍に等しいとすると、前記サイドバンドがω0の隣の共振器モードを励振する。このように共振器モード同士が互いにサイドバンドを通して励起しあい、縦多モード発振が可能となる。
【0051】
また、共振器内に光増幅器や非線形媒質、もしくは光変調器そのものなどが持つ非線形性を導入することでモード間相互作用が生じ、モード間の位相関係が確定する。その結果、レーザはパルス列を発振し出力するようになる。
【0052】
このように外部から共振器に変調を加え、強制的にモード同期状態を発生させるのが能動モード同期である。本発明では、共振器外部にあるマスターレーザから光パルスを共振器内の光増幅器に導入して、スレーブ共振器のゲインを変調することでモード同期を行う。
【0053】
複数のスレーブ共振器を有するレーザ装置において、各スレーブ共振器のゲインを個別に(電気的に)制御する場合にあっては、各スレーブの光パルス発生のレートを揃えること、更に、その他動作を正確に同調させて行うのは、容易なことではない。まして、その変調周波数がGHz帯であるならば尚更である。
【0054】
そこで、本発明の装置では、スレーブ同士(複数の第2の共振器間)の同調を外部より光パルスを分岐させて並列的に複数のスレーブに導入することで得る。
【0055】
この手法を採用すると、導入するパルスの周波数とスレーブの駆動周波数が原理的に一致するため、全てのスレーブにおいて、光パルスの発生レートが等しくなり、且つ同一タイミング、同一速度での波長掃引が可能となる。
【0056】
モード同期の周波数としては、例えば、複数の第2の共振器(各スレーブ)の長さを200m、屈折率を約1.5とすると、スレーブ共振器の光学的周回長は300m程度となり、この中を伝搬する光は約1MHzで共振器内を周回することになる。
【0057】
従ってこの共振器の共振器モード間隔(自由スペクトル間隔(FSR))も約1MHzとなる。
【0058】
そこで光変調器の駆動周波数を1MHzもしくはこの整数倍に設定するとモード同期が得られる。この状態では繰り返し周波数が1MHzの整数倍のパルス列が発生する。実際にはモード同期動作の安定化のため、繰り返し周波数の100から1000倍程度で用いることが好適である。したがって、100MHzから1GHz程度でモード同期の為の変調を行うことになる。
【0059】
次に分散チューニングについて説明する。
【0060】
分散チューニングとは、上述のモード同期を掛けるレーザの共振器の屈折率が波長依存性を持つ場合、その結果として該共振器の有するFSRが波長依存性を持つことを用いて能動モード同期レーザの発振波長を変化させる動作方法である。
【0061】
上述のとおり、能動モード同期は発振周波数帯において光共振器が有するFSRまたはその整数倍の変調を掛けることで実現可能だが、分散チューニングにおいてはFSRが波長依存性を持つため、変調周波数を変化させることでモード同期の発振波長を変化させるのがその原理である。
【0062】
つまり、本発明においては、スレーブの能動モード同期を得る為にマスターレーザより導入する光パルスの繰り返し周波数(これは光パルスをスレーブに導入する周波数とも言い換えることができる)を変化させることで、スレーブ内の光増幅器の利得(ゲイン)変調の周期が変化し、これによりモード同期状態での発振波長が変化する。
【0063】
ここで、一つのマスターレーザより複数のスレーブ(第2の共振器)に同時にパルスを導入して、各スレーブがモード同期発振する状況を考える。
【0064】
各スレーブの光導波路の群屈折率が波長依存性を持っている場合、上述のとおりマスターレーザからのパルスによって各スレーブで能動モード同期が掛かり、マスターレーザからのパルス注入の周波数を変化させることで、各スレーブから取出される光パルスの中心周波数も各スレーブで変化する。
【0065】
このとき、マスターレーザからのパルス注入の繰り返し周波数f0の変化、つまり能動モード同期の為の変調周波数を変化させる場合、全てのスレーブにおいて同じf0に対して能動モード同期がかかるためには、まず全てのスレーブが同じ能動モード同期周波数を持つ必要がある。
【0066】
このためには全てのスレーブにおいてFSRが等しいことが条件となる。つまり、各スレーブを構成する共振器の屈折率をn(ν)、共振器長をLとするとき、以下の式(4)が各スレーブで互いに等しいことが条件となる。
【0067】
【数4】
【0068】
繰り返し周波数f0の変化に対して各スレーブで発生する光パルスの波長の変化量、正確には光の中心周波数の変化量が全てのスレーブにおいて揃っていることも好適である。この条件が満たされているときにはどのスレーブからも同じ波長掃引速度の光パルス列が発生することになり、この条件を満たすと、例えばOCT装置用光源として好適となる。
【0069】
それは、以下の式(5)で表される自由スペクトル間隔(FSR)の周波数依存性が各スレーブ間で互いに等しいことが条件となる。
【0070】
【数5】
【0071】
また、本発明の光源装置を動作させ、全てのスレーブからの光パルスを用いて発振波長が時間と共に掃引される光パルス列を効果的に生成するためには、各スレーブからのパルスの取出し方及び合波方法を工夫することが好ましい。
【0072】
こうした光源装置としては、以下の形態を採用することができる。
【0073】
<(1)第2の共振器(スレーブ)のうち一つだけに能動モード同期が掛かる形態>
マスターレーザからパルスの繰り返し周波数f0で光パルスを各スレーブに注入する。
【0074】
分散チューニング方式において、共振器の分散パラメータをD、光速をc、共振器内の屈折率をλとして、λ=λ0の周りでテーラー展開すると以下の式(6)が得られる。
【0075】
【数6】
【0076】
ここで、第一項を
【0077】
【数7】
【0078】
と書き、スレーブに導入する光パルスの周波数をfm、さらにfm0=N×FSRとする。ここでNはモード同期の次数である。
【0079】
これらのパラメータを用いると、分散モード同期時のスレーブの発振波長は以下の式(7)で表される。
【0080】
【数8】
【0081】
ここでLはスレーブの共振器長である。
【0082】
さらに、あるスレーブにおいて能動モード同期発振が可能なのは波長λmであるが、実際に発振が生じるためにはこのλmが光増幅媒質の帯域内である必要がある。
【0083】
したがって複数のスレーブのうち注目しているスレーブのみで発振が生じ、その他のスレーブで発振を生じさせないためには、マスターレーザの繰り返し周波数fmに対して注目するスレーブのみλmが当該スレーブのゲイン帯域内に存在し、その他のスレーブではλmがゲイン帯域の外にある状態とすることが好適である。
【0084】
これは、式(7)中の各パラメータを適宜設定してやることで可能となる。
【0085】
こうしたパラメータ設定により、複数のスレーブのうち発振しているのはいかなる時刻においても一つのスレーブだけという状態が得られる。
【0086】
また、光源装置の設計をし易くする観点から、各スレーブの受け持つ波長掃引範囲もしくは光増幅媒体の増幅波長帯域をほぼそろえておくことも好適である。
【0087】
次数Nのモードと次数N+1のモード間の波長間隔Δλmは以下の式(8)で表される。
【0088】
【数9】
【0089】
したがって、スレーブの数をM個としたとき、上記Δλmが各スレーブで受け持つ波長掃引範囲もしくは光増幅媒体の増幅波長帯域のM倍としておくことも、ある発振周波数fmにおいて一つのスレーブのみに能動モード同期がかかるためには好適である。
【0090】
<(2)各スレーブに同時に能動モード同期を掛けゲートで間引く形態>
マスターレーザからパルスの繰り返し周波数f0で光パルスを各スレーブレーザに注入する。本形態では、この状況で各スレーブレーザには夫々能動モード同期が掛かるものとする。
【0091】
この状態でf0を変化させると、各スレーブで発振している光パルスの中心周波数も変化する。したがって、各スレーブからはそれぞれ波長掃引した光パルスが取り出されることになる。例えば、スレーブ1からは波長λ11からλ12の光パルスが取出され、スレーブ2からは波長λ21からλ22の光パルス、スレーブ3からはλ31からλ32の光パルスがそれぞれ取出される。
【0092】
こうして各スレーブから取出したパルスを、適切なゲート機構を用いた後に合波することで、合波後の光パルスを、SS−OCT用光源として適切な波長掃引パルス列にすることができる。
【0093】
図3に各スレーブにおけるパルスの波長関係の例を示す。図3に示すようにλ11、λ12、λ21、λ22、λ31、λ32の波長関係にあるとき、波長掃引をλ11⇒λA⇒λB⇒λ32の順に行う。
【0094】
ここで、図1に示したスレーブレーザ150Aに接続された光取出し部としてのゲート106Aは、スレーブ150Aより波長λ11からλAまでのパルスを取出す間はOPENになっていて、その他の時間はCLOSEとなるように動作させる。
【0095】
同様に、スレーブレーザ150Bに接続されたゲート106Bは、スレーブ150Bより波長λAからλBのパルスを取出す間はOPEN、他の時間はCLOSEとなるよう動作させる。同じくスレーブ150Cについてもゲート106Cは、スレーブ150Cより波長λBからλ32のパルスを取出す間はOPEN、他の時間はCLOSEとなるよう動作させる。
【0096】
このような動作をさせるためには、マスターレーザより出射されるパルス周波数と、各スレーブレーザで発振するパルスの中心周波数と、の対応関係が予めわかっていることが好ましい。この場合、例えば、光源制御装置170から、マスターレーザ101に対してマスターレーザ101のパルスの繰り返し周波数f0を制御する信号を出すのと同時に、各スレーブのゲート106A乃至106Cに対してゲートをOPENないしはCLOSEする制御信号を送出すればよい。
【0097】
ゲートの機構としては例えば高速に動作が可能な電気光学変調素子(EOM:Electro−Optic Modulator)などが好適である。また、マスターレーザからの注入パルスの繰り返し周波数f0の変化によって各スレーブの発振周波数が変化するまでにタイムラグが生じる場合には、各ゲートに対して適宜遅延させた信号を光源制御装置から送出すればよい。
【0098】
ここで、スレーブを3つとする場合、例えば上記ゲートの各々を、各スレーブが波長掃引する際に3回掃引するごとにそのうちの1回分の掃引分だけを透過させるようにゲートを制御することも可能である。
【0099】
例えば、光増幅器(103A乃至103C)から合波カップラ109までの光学的距離を等しくしておき、かつゲート(106A乃至106C)から合波カップラ109までの光学的距離も等しくしておく。
【0100】
ここで、各スレーブ(150A乃至150C)の波長掃引に対して、各ゲート(106A乃至106C)の制御を、マスターレーザの繰り返し周波数f0の掃引に対して一回目の掃引時にはゲート106AのみがOPEN、2回目の掃引時にはゲート106BのみがOPEN、3回目の掃引時にはゲート106CのみがOPENになるように行う。
【0101】
こうすると合波カップラ109で合波後の光パルスはλ11からλ32まで逐次掃引さる光パルス列が生成できる。
【0102】
このような動作のためにはマスターレーザ102の繰り返し周波数の変化が各スレーブの光増幅器に伝搬し、その結果、各スレーブでの発振波長が変化し、変化した発振波長の光パルスが出力カップラを通して合波カップラ109まで伝搬するという経路を考慮すると、以下のようにすることが考えられる。
【0103】
即ち、第2の共振器の各々について、マスターレーザ(レーザ発振器)から光増幅媒体までの光学的光路長と光増幅媒体から合波カップラ(合波部)までの光学的光路長の和が等しければよいことになる。
【0104】
また、図4に示すように、ゲート106Aとして波長λ11からλAまでを透過するバンドパスフィルタを用い(透過率スペクトル401)、ゲート106Bとして波長λAからλBまでを透過するバンドパスフィルタ(透過率スペクトル402)、ゲート106Cとして波長λBからλ32までを透過するバンドパスフィルタ(透過率スペクトル403)を用いることも可能である。
【0105】
この場合、各スレーブに接続されるバンドパスフィルタにより各スレーブでの発振波長の重複を防ぐことが可能であり、レーザ出力の安定性やノイズ抑制の観点から好適である。
【0106】
<(3)間引かずに各スレーブレーザのパルスを分割する形態>
上述したパルスを間引く手法の他に、光回路をスイッチングして光パルスを別の導波路に送り込む手法も採用できる。
【0107】
図5に、こうした手法を採用する光学装置の例を示した。図5では、図1におけるゲート106A乃至106Cよりも出射側の光学系を部分的に示している。
【0108】
尚、以降の説明では、原則、各図における同一の部位には同一の符号を付すようにし、重複した説明はなるべく避けることとする。
【0109】
図5において光導波路515(A、B、C)、516(A、B、C)及び517(A、B、C)ついて、各々光路長は等しいものとする。
【0110】
以下、動作例について説明する。
【0111】
ゲート106Aより取出した光パルスを三分岐の光導波路515(A、B、C)へ導入する。ゲート106Aは、ここでは光導波路515(A、B、C)のどの導波路に光を導入するかを制御するスイッチング素子である。
【0112】
ゲート106Aにおいて、スレーブ150Aにおける発振波長の掃引に合わせ、1回目の繰り返し周波数掃引時には光導波路515Aに光を導入し、2回目の掃引時には光導波路515Bに、3回目の掃引時には光導波路515Cに光を導入する制御をする。
【0113】
同様にゲート106Bにおいては、1回目の掃引時には光導波路516Cに、2回目の掃引時には光導波路516Aに、3回目の掃引時には光導波路516Bに光を導入する。
【0114】
ゲート106Cでは、1回目の掃引時には光導波路517Bに、2回目の掃引時には光導波路517Cに、3回目の掃引時には光導波路517Aへ光を導入する。
【0115】
こうした状態で、合波カップラ109(A、B、C)においては、中心波長が時間と共に掃引される光パルスが生成されるので、このままの状態で各々の合波カップラからの出力を単独で用いてOCT装置用光源とすることも使用可能である。
【0116】
さらには、これら3つ(複数)の合波カップラ(合波部)からの出力を、測定物の複数の場所に同時にビームを照射する形態のマルチビーム型OCT装置用の光源として使用することも可能である。
【0117】
このような形態を採用すると高速にOCT撮像が可能になる。
【0118】
<(4)掃引をN分の1に間引く形態>
マスターレーザのパルス発生の繰り返し周波数f0を掃引する際の方式として、図6に示すようにT毎(時間毎)に繰り返し掃引を連続的に行うのではなく、図7に示すようにスレーブの数Nに応じて、N周期に一回の掃引を行う方式も採用可能である。図7ではN=3として、3回に1回の割合で波長掃引がなされる。
【0119】
本形態の装置例を図8に示す。図8の装置は、図1の装置におけるゲート106(A、B、C)に代えて遅延機構806(A、B、C)を備えている点が図1に示した装置との主たる相違点である。
【0120】
図8の装置では、出力カップラ116(A、B、C)より合波カップラ109に至る光導波路の長さを、夫々異ならせておく。
【0121】
例えば、マスターレーザ101の繰り返し周波数f0の掃引周期に対応する時間をTとするとき、出力カップラ116Aから合波カップラ109に光パルスが到達するまでの時間よりもT遅れて、出力カップラ116Bから合波カップラ109に光パルスが到達し、更にT遅れて出力カップラ116Cから合波カップラ109に光パルスが到達する。こうなるような光学的遅延を遅延機構806(A、B、C)で与えればよい。
【0122】
遅延機構としては、単純に光学的長さがVgT分ずつだけ異なるような導波路を用いても良いし(vgは群屈折率)、あるいは光路長可変のディレイライン等を採用しても良い。
【0123】
こうした遅延機構はマスターレーザから各スレーブに導入される経路の途中に設けることも可能である。
【0124】
本形態の間引き動作のためには、マスターレーザ101の繰り返し周波数の変化が各スレーブ内の光増幅器に伝搬、各スレーブでの発振波長が変化し発振波長の変化した光パルスが出力カップラを通して合波カップラ109まで伝搬する経路を考慮する必要がある。
【0125】
この点を勘案すると、マスターレーザ103から光増幅器103(A、B、C)までの光学的光路長と光増幅器から合波カップラ109までの光学的光路長の合計の長さについて、各スレーブ間で上述のVgT分の差異があることが条件となる。
【0126】
このような光学系の構成にすれば高速な切り替えスイッチングなども必要なくなるので簡便な構成を取ることが可能である。
【0127】
この構成においては、例えばスレーブ内に、可飽和吸収体や音響光学素子(Acoustic−Optic Modulator: AOM)など、パルスを安定化させる機構を挿入することもできる。この場合、マスターレーザからのパルス注入によりスレーブにおいて安定的なパルス発振が望まれる。
【0128】
また、繰り返し周波数を掃引していない時間帯には、マスターレーザやスレーブレーザーの出力をoffにすることもできる。
【0129】
こうすることで、マスターレーザからのパルスの繰りかえし周波数が掃引されていない間にスレーブ内の増幅された自然放出(Amplified Spontaneous Emission: ASE)成分から連続発振(Continuous Wave: CW)光の発振やASEによるノイズ成分の増大を抑制可能となる。これによりノイズが抑えられた光源として動作可能である。
【0130】
<光源装置を構成する部材等についての説明>
本発明の第1の共振器を備えたレーザ発振器は、パルス光を生ずるレーザ光源を採用することができる。
【0131】
パルス光を得る手法としては、レーザ共振器の利得や損失を制御して蓄えたエネルギーを放出させる利得スイッチングや、Qスイッチング動作するレーザの他、他モード発振におけるモード間の位相を固定するモード同期レーザ等を挙げることができる。
【0132】
利得スイッチング半導体レーザは、発振閾値よりも低いレベルの直流バイアス電流に大きな振幅の電流パルスを重畳させて急速に発振状態を得る半導体レーザである。
【0133】
モード同期半導体レーザとしては、上述した能動モード同期レーザの他、可飽和吸収体等を用いた受動モード同期レーザ、能動モード同期と受動モード同期を併用したハイブリッドモード同期レーザ等を採用することができる。
【0134】
本発明の第2の共振器(スレーブ)は、上述したリング共振器の他、直線型共振器やσ型共振器等を採用することができる。リング共振器は、光ファイバーを用いた共振器の他、スラブ導波路、ミラーを用いて空中や真空中を光が伝播する光学系を用いたもの等を採用することができる。
【0135】
直線型共振器としては、一対の平行平面を備えた光共振器(所謂、ファブリー・ペロー共振器)や、光ファイバーの端面をミラーとして直線状とした共振器等を挙げることができる。
【0136】
ここで図14を参照して直線型(リニア型)の共振器を用いて構成した装置例を説明する。
【0137】
図14の装置は、リング共振器(150A、150B、150C)に代えて直線状の共振器(151A、151B、151C)を用いている点がこれまで説明した装置との主たる相違である。
【0138】
図14においては、各スレーブ共振器は、両端に光ファイバの終端部を反射ミラーとしたミラー終端ファイバ1411Gと1411Hを配し、これら反射ミラー間に入力カップラ(110A、110B、110C)、出力カップラ(116A、116B、116C)、光増幅器(103A、103B、103C)、及び屈折率分散ファイバ(123A、123B、123C)を配して構成されている。
【0139】
各スレーブ(151A、151B、151C)で発生した光は光取出し部(106A、106B、106C)及び合波カップラ109を介して出射される。尚、アイソレータ(1440A、1440B、1440C)と注入光カットフィルタ1420は必要に応じて設けられる部材である。
【0140】
第2の共振器(スレーブ)の個数は、これまで3つの例で説明してきたが、複数であれば個数が特に限定されるものではない。しかし光源装置の大きさ、制御のし易さ等を考慮すると第2の共振器の数は、一般的には2以上20以下の範囲とされ、より好ましくは3以上10以下、最適には3以上5以下とするのが好ましい。
【0141】
第2の共振器内に配される屈折率分散を有する光学部材は、光ファイバーや導波路で構成することができる。本発明において、当該光学部材が有する屈折率分散の分散値は、負(−)のものから正(+)のものまで、採用する光増幅媒体、得ようと掃引速度、掃引波長範囲等を考慮して適宜、所定の分散値のものを採用することができる。
【0142】
これまで光増幅媒体として半導体光増幅器(SOA)を例に説明したが、この他、光増幅媒体としては、エルビウムやネオジウム等を含有する希土類添加(イオンドープ)光ファイバ、光ファイバ中に色素を添加して色素により増幅を行うもの等を採用することができる。
【0143】
希土類添加光ファイバは、高利得で良好な雑音特性を得るためには好適である。色素添加光ファイバは、蛍光色素材料やそのホスト材料などを適宜選択することで可変波長の選択肢が増す。
【0144】
半導体光増幅器は、小型で且つ高速制御が可能なことから好ましい。半導体光増幅器としては、共振器型光増幅器と進行波形光増幅器の双方を用いることができる。半導体光増幅器を構成する材料は、一般的な半導体レーザを構成する化合物半導体等を用いることができ、具体的にはInGaAs系、InAsP系、GaAlSb系、GaAsP系、AlGaAs系、GaN系等の化合物半導体を挙げることができる。半導体光増幅器は、利得の中心波長が、例えば、840nm、1060nm、1300nm、1550nmのものの中から光源の用途等に応じて適宜、選択して採用することができる。
【0145】
第2の共振器の入力部と出力部は、共振器を光ファイバを用いて構成した場合にはファイバカップラ等で構成することができ、共振器を光ファイバ以外の部材を用いて構成した場合には、ハーフミラー等で構成できる。
【0146】
第2の共振器の出力部より光を取出す光取出し部は、光変調器、光スイッチ、等を採用することができる。これまでの説明や本願の図では、光取出し部はスレーブに対応して個別に設けられた例を挙げているが、光取出し部は集合的に光取出しを行なう1つのユニットで構成することもできる。
【0147】
光変調器の例としては高速変調が可能な導波路型変調器が挙げられ、具体例としては、電気光学効果(ポッケルス効果)を用いたLN強度変調器(LiNbO3基板使用)や電界吸収型光変調器(EA変調器)が挙げられる。LN強度変調器では、干渉計を備えた構成で一方の光路の屈折率を変化させて得られる干渉状態の変化により光のON/OFF制御を行うもので、高速制御に優れている。
【0148】
電界吸収型光変調器は、電界印加により半導体の吸収端がシフトすることを利用した強度変調器であり、小型で低電圧動作が可能である。
【0149】
光スイッチの例としては光の経路を切り替える光路変換スイッチと単に光の透過をON/OFF制御するゲートスイッチの両方を採用することができる。
【0150】
光路変換スイッチとしては1×2光スイッチ、1×3光スイッチの他、1×2の分岐の導波路を多段に組み合わせた1×Nのスイッチングデバイス等が挙げられる。
【0151】
光スイッチは動作の仕方で分類すると機械的に光路を切り替える機械型光スイッチ、電子的に切り替える電子型光スイッチ、光で光路を切り替える全光型光スイッチに分けられ、何れも採用することができるが、高速動作という観点からは、電子型光スイッチ、全光型光スイッチが好適である。
【0152】
電子型光スイッチとしては、電気光学効果を利用したLN光スイッチ、磁気光学効果を用いた磁気光学光スイッチ、音響光学効果を利用した音響光学変調器、をゲートとして用いるスイッチ等が挙げられるが、動作速度と高いオン/オフ比の観点から電気光学効果を利用したLN光スイッチが好適である。
【0153】
全光型光スイッチは、非線形光学効果を利用して光制御による超高速なスイッチングを可能とするものでピコ秒以下の制御が可能である。
【0154】
光取出し部を経由した光を合波する合波部は、光カップラ(光結合器)で構成され、空間型、光ファイバ型、平面導波路型に大別される。空間型としてはビームスプリッタ(ハーフプリズム)を光結合器として用いる形態が挙げられる。
【0155】
光ファイバ型としては複数本の光ファイバのコアを近づけた光ファイバカップラや、複数の光信号を1本の光ファイバに合波するマルチプレクサが、平面導波路型としては基板上に形成された結合器等が挙げられる。
【0156】
以下、具体的な実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。
【実施例1】
【0157】
図9に本例の光源装置を示す。図9に示した装置は、図1の装置に類似するものである。
【0158】
図9に示した光源装置は、駆動装置933を介して駆動されるマスターレーザ101に、スレーブ共振器(150A、150B、150C)が光学的に結合されて構成されている。
【0159】
光学的結合には導入導波路として機能する長さ1mの偏波保存ファイバ(102A、102B、102C)と、ファイバカップラで構成された入力カップラ(110A、110B、110C)と、を用いている。940A、940B、940Cはアイソレータであり、各スレーブからの戻り光がマスターレーザ101に入射しマスターレーザの動作の不安定化を防ぐため挿入されている。
【0160】
各スレーブ共振器(150A、150B、150C)は、屈折率が波長分散を持つ偏波保存ファイバ(透過波長帯域1000nmから1100nm)を用いてリング共振器をなし、その共振器長は100mに設定されている。
【0161】
各スレーブ共振器(150A、150B、150C)にはアイソレータ(113A、113B、113C)と、半導体光増幅器(103A、103B、103C)とが、それぞれ配置され、各半導体光増幅器は駆動装置(927A、927B、927C)によって駆動される。
【0162】
半導体光増幅器(103A、103B、103C)には、各増幅器が有する利得帯域(増幅帯域)が図10の増幅率スペクトル1001、増幅率スペクトル1002、増幅率スペクトル1003を示す、帯域が互いに一部重複するものを用意した。
【0163】
マスターレーザ101からのパルス光入射が無い状態では光増幅器(103A、103B、103C)の増幅率が時間的に一定となるように、光増幅器は、駆動装置(927A、927B、927C)によりDC駆動される。具体的には、駆動装置からは温度コントロール及び電流供給が行われる(SOAの温度を一定に保ちつつ、定電流を流す)。
【0164】
マスターレーザ101としては半導体レーザをゲインスイッチング動作させたものを用いる。
【0165】
より具体的には、駆動装置933を駆動することで直流成分と交流成分が重畳された電圧をマスターレーザ101に印加し、発振する光パルスの中心波長980nm、発振の繰り返し周波数1GHzを得る。
【0166】
この1GHzの光パルスを受けて、光増幅器(103A、103B、103C)にゲインの変調が掛かり、スレーブ920で分散チューニングのモード同期発振が生じる。
【0167】
この状態でマスターレーザ101の繰り返し周波数を図11に示すように1GHz−300kHzから1GHz+300kHzまで周波数変化させる。ここで周波数変化の周期は1ミリ秒である。
【0168】
こうした制御により、共振器内には100mW程度のパルス光が生成される。
【0169】
マスターレーザから各スレーブに上記の繰り返し周波数で光パルスを導入することで、各スレーブ(150A、150B、150C)より光パルスが上記マスターレーザの繰り返し周波数で発生する。
【0170】
マスターレーザの周波数変化に応じて、スレーブ105Aからの発振波長は1005nmから1035nmまで掃引されることとなり、同様にスレーブ105Bでは1035nmから1065nmまで、スレーブ105Cでは1065nmから1095nmまで波長掃引される。
【0171】
各スレーブ(150A、150B、150C)で発生した光パルスは出力カップラ(116A、116B、116C)を通してスレーブ外に取出される。
【0172】
各出力カップラには光ファイバで構成した出力導波路(934A、934B、934C)が接続され、各出力導波路は、各々駆動装置(930A、930B、930C)によって駆動されるゲート(106A、106B、106C)に接続されている。
【0173】
ここで、光ゲートは電気光学効果を利用したLN光スイッチで構成し、各スレーブ(150A、150B、150C)で発生した光パルスを駆動装置(930A、930B、930C)の駆動信号に応じて遮断(OFF)もしくは透過(ON)させる。
【0174】
ここで半導体光増幅器に接続された駆動装置(927A、927B、927C)、ゲートに接続された駆動装置(930A、930B、903C)、及びマスターレーザに接続された駆動装置933は、すべて光源制御装置170によって制御される。
【0175】
光源制御装置170は、PC(パーソナルコンピュータ)と、光源駆動のための信号発生源、スレーブの光増幅媒体の駆動信号を発生する信号源、及びゲート駆動のための駆動信号を発生する信号源とを接続して構成されている。光源制御装置170は駆動装置933に対して繰り返し周波数を指定する信号を送出する。これにより各スレーブから発振する光パルスの発振波長が決定されると共に、光源制御装置170から駆動装置(930A、930B、930C)の制御信号が送られ、この信号に基づいて各ゲート(106A、106B、106C)の開閉状態が決定する。
【0176】
ここで、ゲート(106A、106B、106C)と、光ファイバカップラで構成した合波カップラ109とは、長さ1mの光ファイバ導波路(937A、937B、937C)で接続してある。
【0177】
光源制御装置170からマスターレーザ101に接続された駆動装置933に対してパルスの繰り返し周波数掃引の制御信号が供給される。
【0178】
制御信号により1度目の掃引時にはゲート106Aのみがオープンになり、その他のゲート106B、106Cがクローズとなるようにゲート駆動装置(930A、930B、930C)が制御される。
【0179】
その結果、光ファイバカップラで構成した合波カップラ109に、波長1005nmから1035nmの光パルスが順次送出される。
【0180】
次いで、マスターレーザ101のパルス繰り返し周波数の2度目の掃引時にはゲート106Bのみがオープンとなり、スレーブ150Bで発生した波長1035nmから1065nmの光パルスが合波カップラ109より送出される。同様に、マスターレーザのパルス繰り返し周波数の3度目の掃引時にはゲート106Cのみがオープンとなり、合波カップラ109より波長1065nmから1095nmの光パルスが順次送出される。
【0181】
これにより合波カップラ109より波長1005nmから1095nmの範囲の光パルスが順次出射される。この掃引波長帯域は、通常のスレーブ(共振器)が1つの光源装置に比べて広帯域化されたものとなる。
【0182】
本例より理解されるように主にスレーブの数と光増幅媒体を使用目的を考慮して適宜選択することにより、本発明によると広範囲な用途に適用可能は波長掃引光源が提供できる。
【0183】
以上の例では、各スレーブにおいて発振する光パルスの波長は互いに重複しない例としたが、波長が重複する形態を採用することもできる。
【0184】
例えば、スレーブ150Aでの発振波長を1000nmから1040nm、スレーブ150Bでの発振波長を1030nmから1070nm、スレーブ150Cでの発振波長を1060nmから1100nmとして、一部波長を重複させる。
【0185】
この場合、例えばゲート106Aと合波カップラ109の間に透過波長が1005nmから1035nmのバンドパスフィルタを挿入し、同様にゲート106B、106Cの後ろにはそれぞれ透過波長が1035nmから1065nmと1065nmから1095nmのバンドパスフィルタを挿入すればよい。
【0186】
このようにバンドパスフィルタの波長帯を各スレーブで重複しないように構成することで、各スレーブから取出される光パルスの波長の掃引を連続的で飛び無く行うことが可能となる。
【0187】
一方、このままではバンドパスフィルタで各スレーブにおける発振波長の裾にあたる波長のパルスをカットすることで、合波カップラ109から送出される光パルス列に、時間的な空白が生ずることになる。つまり、ゲート106Aからの光パルスが合波カップラ109を通過して若干の空白時間の後、ゲート106Bからの光パルスが到達することになる。
【0188】
そこで合波カップラ109に到達するパルスの波長と到達時刻の関係を予め光源制御装置170に記憶させておくことも、好適である。あるいは空白時間の分だけ光ファイバ導波路937Aよりもファイバ導波路937Bを短く、そして同様の関係にファイバ導波路937Cもしておくことで、マスターレーザの繰り返し周波数掃引の3回分の光パルスを合波カップラ109より連続して取出すことが可能となる。
【0189】
この他、導入導波路(102A、102B、103C)の長さを変えることで、マスターレーザから各スレーブの光増幅器までの光路長を変えてもよい。あるいは導入導波路(102A、102B、103C)もしくは合波導波路(937A、937B、937C)内に光路長可変デバイスや遅延量が変えられるディレイライン等を挿入してもよい。
【0190】
また、光源制御装置170よりマスターレーザの駆動装置933に信号送出を行ってから各スレーブ内に発生する光パルスの波長が所望の波長になるまでのタイムラグがある場合には、駆動装置933への制御信号の送出と各ゲート(106A、106B、106C)の駆動装置(930A、930B、930C)への制御信号の送出に関して遅延を与えることも好適である。
【0191】
更には、各スレーブ内に発生している光パルスの波長をモニタするための機構を設けても良い。
【0192】
更に別の形態として、各スレーブからの光を一部取り出して狭帯域のバンドパスフィルタに通した後フォトディテクタに検知させることで波長掃引開始のトリガ信号を得ることも可能である。具体的には各スレーブ内で生じ得る光パルスの最短波長もしくは最長波長等のパルスのみを透過するバンドパスフィルタを用いることで上記動作は可能となる。
【0193】
これらのトリガ信号を各スレーブに接続された制御装置(930A、930B、930C)に与えることで、スレーブ内の光パルスの所望のタイミングでの取出しもしくは遮断が可能となる。
【実施例2】
【0194】
上述した実施例1の装置を変形した別の例について説明する。本例は、図9に示した光源装置のマスターレーザ101の駆動形態として、図12に示した掃引タイミングを採用した例である。マスターレーザ101の繰り返し周波数を図12に示すように1GHz−300kHzから1GHz+300kHzまで周波数変化させるのに、繰返し掃引を連続的に行うのではなく、スレーブの数N=3に対応して3回に1回の割合で(間引き)掃引する。
【0195】
本例では、合波導波路937Aの長さよりも合波導波路937Bの長さを、次に示す
VgT(スレーブ150A内のパルス光の発振波長における群速度をVg、マスターレーザの繰り返し周波数の掃引周期をTとして)だけ長くし、同様の関係を合波導波路937Bと合波導波路937Cに対してももたせる。
【0196】
これにより合波カップラ109には波長が1005nmから1095nmの光パルスが順次到着し、出射されることとなる。この動作様態においてはゲート(106A、106B、106C)必須の部材ではなくなるため部品点数の減少により安価な装置構成の実現が図れる。またゲートの高速制御も必要ないため電気系の負担が減少する。
【0197】
また、マスターレーザから各光増幅媒体までの光学的距離と、該光増幅媒体から合波部(合波カップラ)までの光学的距離の和を各共振器ごとにVgTずつ異ならせた形態も採用し得る。
【実施例3】
【0198】
図13を参照して複数の光ビームを発生する波長掃引光源の例を示す。
【0199】
図13に示した光源装置は、合波部を複数備えた装置であり、図9に示した実施例1の光源装置の合波導波路と、合波カップラ部を変形させた以外、実施例1の装置と同様である。
【0200】
図13の装置においては、ゲート106Aには、光ファイバで構成した3分岐の光導波路515(A、B、C)が接続され、ゲート106Bには、同じく3分岐の光導波路516(A、B、C)が、ゲート106Cには、光導波路517(A、B、C)が接続されている。
【0201】
そして、これら3組の光導波路515(A、B、C)、516(A、B、C)、517(A、B、C)を介してゲート106(A、B、C)と光ファイバで構成した3つの合波カップラ109(A、B、C)とが接続されている。ここで、これら3組の光導波路515、156、517の光路長は等しくしてある。
【0202】
以下、動作について説明する。
【0203】
ゲート106Aより取出した光パルスを三分岐の光ファイバで構成した光導波路515(A、B、C)へ導入する。ゲート106Aにおいて、スレーブ150Aにおける発振波長の掃引に合わせ、1回目の繰り返し周波数掃引時には光導波路515Aに光を導入し、2回目の掃引時には光導波路515Bに、3回目の掃引時には光導波路515Cに光を導入する制御をする。
【0204】
同様にゲート106Bにおいては、1回目の掃引時には光導波路516Cに、2回目の掃引時には光導波路516Aに、3回目の掃引時には光導波路516Bに光を導入する。
【0205】
ゲート106Cでは、1回目の掃引時には光導波路517Bに、2回目の掃引時には光導波路517Cに、3回目の掃引時には光導波路517Aへ光を導入する。
【0206】
こうした状態で、合波カップラ109(A、B、C)においては、中心波長が時間と共に掃引される光パルスがそれぞれ生成される。
【0207】
本実施例の基本的な動作は実施例1と同様である。つまり光源制御装置170を駆動させてマスターレーザ101から光パルスが1GHz近傍の周波数で発生する。
【0208】
この光パルスをスレーブ150A、スレーブ150B、スレーブ150Cに導入して各スレーブでモード同期動作(分散チューニング)を行う。
【0209】
これによりスレーブ150Aでは波長1005nmから1035nmの光パルスが発生し、スレーブ150Bでは波長1035nmから1065nmの光パルス、スレーブ150Cでは波長1065nmから1095nmの光パルスがそれぞれ発生する。
【0210】
ここで上述したゲート操作を行うことにより、各合波カップラから出力される光は波長1005nmから1095nmの光パルスが時間的に順次並んでいる状態となる。
【0211】
本例の光源装置は、複数光照射(マルチビーム照射)を可能とするOCT装置の光源として適用可能な装置となる。
【実施例4】
【0212】
本例では、本発明の光源を用いた光断層撮像装置の例を示す。
【0213】
図15は本例のOCT装置の模式図である。
【0214】
図15のOCT装置は、基本的には光源部(1501等)、光源部からの光を検体に照射し、検体部からの反射光を伝達させる検体測定部(1507等)、光を参照ミラーに照射し、参照ミラーからの反射光を伝達させる参照部(1502等)、2つの反射光を干渉させる干渉部(1503)、干渉部により得られた干渉光を検出する光検出部(1509等)、光検出部で検出された光に基づいて画像処理を行う(断層像を得る)画像処理部(1511)で構成されている。以下、各構成要素を説明する。
【0215】
光源部は、波長可変光源1501と該波長可変光源を制御する光源制御部1512を有して構成され、波長可変光源1501は光照射用の光ファイバ1510を介して干渉部を構成するファイバカップラ1503に接続されている。
【0216】
干渉部のファイバカップラ1503は、光源の波長帯域でシングルモードのもので構成し、各種ファイバカップラは3dBカップラで構成した。
【0217】
反射ミラー1504は、参照光光路用ファイバ1502に接続されて参照部を構成し、ファイバ1502は、ファイバカップラ1503に接続されている。
【0218】
検査光光路用1505ファイバ、照射集光光学系1506、照射位置走査用ミラー1507により測定部が構成され、検査光光路用1505ファイバは、ファイバカップラ1503に接続されている。ファイバカップラ1503では、検査物体1514の内部及び表面から発生した後方散乱光と、参照部からの戻り光とが干渉して干渉光となる。
【0219】
光検出部は、受光用ファイバ1508とフォトディテクタ1509で構成され、ファイバカップラ1503で生ずる干渉光をフォトディテクタ1509に導く。
【0220】
フォトディテクタ1509で受光された光は信号処理装置1511にてスペクトル信号に変換され、さらにフーリエ変換を施すことで被験物体の奥行き情報を取得する。取得された奥行き情報は画像出力モニター1513に断層画像として表示される。
【0221】
ここで、信号処理装置1511は、パーソナルコンピュータ等で構成することができ、画像出力モニター1513は、パーソナルコンピュータの表示画面等で構成できる。
【0222】
本実施例で特徴的なのは光源部であり、波長可変光源1501は光源制御装置1512によりその発振波長や強度及びその時間変化が制御される。
【0223】
光源制御装置1512は、照射位置走査用ミラー1507の駆動信号等をも制御する信号処理装置1511に接続され、走査用ミラー1507の駆動と同期して波長可変光源1501が制御される。
【0224】
例えば、実施例1で説明した光源装置を本例の波長可変光源1501として用いると、この光源装置は広帯域を高速で波長掃引が可能であるため、奥行き分解能が高解像な断層画像情報を高速に取得可能である。このOCT装置は、眼科、歯科、皮膚科等における断層画像撮影に有用である。
【実施例5】
【0225】
本例では、干渉信号を差動検出するための光学系を備えた光断層撮像装置の例について説明する。本例の光断層撮像装置は、図16に模式図を示すもので、図15に示した装置と同一の部位には同一の符号を付している。
【0226】
図16の装置は図15のフォトディテクタ1509に代えて光検出器と差動増幅器とを兼ね備えたバランスフォトディテクタ1510とファイバカップラ1503及び1504を組み込んで構成したことが図1の装置との主たる違いである。
【0227】
バランスフォトディテクタ1510は、一端には、信号処理部1511が接続され、他端には、2端子がある。そのうち一つの端子はファイバ1516を介して光カップラ1503に接続され、残りの一端子は、ファイバ1517、光カップラ1504を介して結合部を構成する光カップラ1505に接続されている。
【0228】
こうした接続により本例の装置では、測定物1514と参照ミラー1504からの反射光による干渉信号を二つに分け、その一方と、他方との差動を検出する。
【0229】
バランスフォトディテクタ1510に到達する前に光を2つに分割することで干渉信号の位相が逆位相になるため、両者を引き算すると、分割前の信号に含まれるDC成分だけが除去され、干渉信号だけが取り出せるので好適である。
【0230】
尚、図中、1502はアイソレータ、1518、1519はそれぞれ偏波コントローラである。
【0231】
また、光源1501からの出射光の強度を逐次モニタリングし、そのデータを干渉信号の振幅補正に用いることも可能である。
【実施例6】
【0232】
実施例3で説明した複数の光ビームを発生する波長掃引光源(マルチビーム光源)をOCT装置に適用した例について、図17を参照して説明する。
【0233】
図17の装置は、3つの干渉系(1656、1657、1658)を備えて構成され、各干渉系は、図16を用いて説明した実施例5の装置構成と同様である。そこで、図16の装置と同一の構成部材には同一の符号を付しているので詳しい説明は省略する。
【0234】
本例で特徴的なのは、実施例3で説明した光源装置を光源部1501に適用したことで、光源部1501より出射された3つの光ビームは、アイソレータ1502を介して各干渉系に導入される。
【0235】
本例では、マルチビームをファイババンドルから平行光束の形で取出し、被測定物1514に照射して被測定物内の複数の箇所を同時に干渉計測することが可能となるため、高速な測定が可能な断層撮像装置が構成できる。
【符号の説明】
【0236】
101 第1の光共振器を備えたレーザ発信器
150A 150B 150C 第2の共振器
103A 103B 103C 光増幅媒体
106A 106B 106C 光取出し部
109 合波部
123A 123B 123C 屈折率分散を有する光学部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の光共振器を備えたレーザ発振器と、該第1の光共振器に入力部が互いに並列に接続された複数の第2の光共振器と、該第2の光共振器の出力部を介して光を取出す光取出し部と、該光取出し部を経由した光を合波する合波部と、を備え、前記複数の第2の光共振器を経由した光を前記合波部より出射する光源装置であって、前記複数の第2の光共振器内にはそれぞれ、屈折率分散を有する光学部材と、光増幅媒体と、が配されており、該光増幅媒体が、互いに異なる最大利得波長を有することを特徴とする光源装置。
【請求項2】
前記第1の光共振器を備えたレーザ発振器よりパルス光が前記第2の光共振器の複数に導入されることを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記パルス光の導入により前記光増幅媒体を相互利得変調することを特徴とする請求項2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記パルス光の導入により前記第2の光共振器にモード同期が生ずることを特徴とする請求項2に記載の光源装置。
【請求項5】
前記光パルスの繰り返し周波数を変化させることで、前記第2の光共振器内のモード同期状態が変化し、該共振器内で発生するパルス光の波長が変化することを特徴とする請求項3に記載の光源装置。
【請求項6】
前記パルス光の波長は、前記第2の光共振器内に配された前記光増幅媒体が有する増幅帯域内の波長かもしくはそれよりも短いことを特徴とする請求項2に記載の光源装置。
【請求項7】
前記複数の光増幅媒体は、互いに利得帯域の一部が重複することを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項8】
前記複数の第2の光共振器の有する自由スペクトル間隔が互いに等しいことを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項9】
前記複数の第2の光共振器の有する自由スペクトル間隔の以下の式で表される周波数依存性が、各第2の光共振器において互いに等しいことを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【数1】
(ただし、νは光の周波数、Lは共振器の共振器長、n(ν)は共振器の屈折率をそれぞれ表す。)
【請求項10】
前記光増幅媒体が半導体光増幅器であることを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項11】
前記第2の共振器の各々について、前記レーザ発振器からから前記光増幅媒体までの光学的距離と、該光増幅媒体から前記合波部までの光学的距離と、の和が等しいことを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項12】
前記レーザ発振器から前記光増幅媒体までの光学的距離と、該光増幅媒体から合波部までの光学的距離と、の和が各共振器で、VgTずつ異なることを特徴とする請求項1に記載の光源装置(但し、Vgは共振器内のパルス光の発振波長における群速度、Tはレーザ発振器の繰り返し周波数の掃引周期を示す)。
【請求項13】
前記複数の第2の光共振器内で発生したパルス光を前記合波部より順次出射することを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項14】
前記合波部を複数備え、該複数の合波部より複数の光ビームを出射することを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項15】
請求項1ないし14の何れかに記載の光源装置を用いた光源部と、
前記光源部からの光を検体に照射し、検体からの反射光を伝達させる検体測定部と、
前記光源部からの光を参照ミラーに照射し、該参照ミラーからの反射光を伝達させる参照部と、
前記検体測定部からの反射光と前記参照部からの反射光とを干渉させる干渉部と、
前記干渉部からの干渉光を検出する光検出部と、
前記光検出部で検出された光に基づいて、前記検体の断層像を得る画像処理部と、
を有することを特徴とする光断層撮像装置。
【請求項1】
第1の光共振器を備えたレーザ発振器と、該第1の光共振器に入力部が互いに並列に接続された複数の第2の光共振器と、該第2の光共振器の出力部を介して光を取出す光取出し部と、該光取出し部を経由した光を合波する合波部と、を備え、前記複数の第2の光共振器を経由した光を前記合波部より出射する光源装置であって、前記複数の第2の光共振器内にはそれぞれ、屈折率分散を有する光学部材と、光増幅媒体と、が配されており、該光増幅媒体が、互いに異なる最大利得波長を有することを特徴とする光源装置。
【請求項2】
前記第1の光共振器を備えたレーザ発振器よりパルス光が前記第2の光共振器の複数に導入されることを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記パルス光の導入により前記光増幅媒体を相互利得変調することを特徴とする請求項2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記パルス光の導入により前記第2の光共振器にモード同期が生ずることを特徴とする請求項2に記載の光源装置。
【請求項5】
前記光パルスの繰り返し周波数を変化させることで、前記第2の光共振器内のモード同期状態が変化し、該共振器内で発生するパルス光の波長が変化することを特徴とする請求項3に記載の光源装置。
【請求項6】
前記パルス光の波長は、前記第2の光共振器内に配された前記光増幅媒体が有する増幅帯域内の波長かもしくはそれよりも短いことを特徴とする請求項2に記載の光源装置。
【請求項7】
前記複数の光増幅媒体は、互いに利得帯域の一部が重複することを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項8】
前記複数の第2の光共振器の有する自由スペクトル間隔が互いに等しいことを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項9】
前記複数の第2の光共振器の有する自由スペクトル間隔の以下の式で表される周波数依存性が、各第2の光共振器において互いに等しいことを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【数1】
(ただし、νは光の周波数、Lは共振器の共振器長、n(ν)は共振器の屈折率をそれぞれ表す。)
【請求項10】
前記光増幅媒体が半導体光増幅器であることを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項11】
前記第2の共振器の各々について、前記レーザ発振器からから前記光増幅媒体までの光学的距離と、該光増幅媒体から前記合波部までの光学的距離と、の和が等しいことを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項12】
前記レーザ発振器から前記光増幅媒体までの光学的距離と、該光増幅媒体から合波部までの光学的距離と、の和が各共振器で、VgTずつ異なることを特徴とする請求項1に記載の光源装置(但し、Vgは共振器内のパルス光の発振波長における群速度、Tはレーザ発振器の繰り返し周波数の掃引周期を示す)。
【請求項13】
前記複数の第2の光共振器内で発生したパルス光を前記合波部より順次出射することを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項14】
前記合波部を複数備え、該複数の合波部より複数の光ビームを出射することを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項15】
請求項1ないし14の何れかに記載の光源装置を用いた光源部と、
前記光源部からの光を検体に照射し、検体からの反射光を伝達させる検体測定部と、
前記光源部からの光を参照ミラーに照射し、該参照ミラーからの反射光を伝達させる参照部と、
前記検体測定部からの反射光と前記参照部からの反射光とを干渉させる干渉部と、
前記干渉部からの干渉光を検出する光検出部と、
前記光検出部で検出された光に基づいて、前記検体の断層像を得る画像処理部と、
を有することを特徴とする光断層撮像装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2011−258828(P2011−258828A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−133293(P2010−133293)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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