説明

光源装置及び露光装置

【課題】複数の波長の強度を個別に実用レベルで調整できる光源装置を提供する。
【解決手段】輝線スペクトルの一つの輝線波長の光を遮断する反射被膜が、前記光束を反射させるか又は透過させて通過させる複数の開口を有するように設けられ、該複数の開口の最大寸法は、所定波長の光束の照射面内に複数の開口が配置可能である微小な寸法であり、選択された所定波長の光束における少なくとも一つの特性を、微小な開口の形状、間隔及び数により決定する光源装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つ以上の所定波長の輝線を有する輝線スペクトルの光を放出する光源から出射された光が入射され、各輝線スペクトル毎の通過量(一般に光学では反射で用いる場合は反射量、透過で用いる場合は透過量というが、ここでは両方を示す意味で「通過量」と称する)を調整した光を出射する光源装置、及び、露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体回路の集積化や半導体のダウンサイジング化により、半導体の微細加工の要望が高まっている。その中で、回路基板の製造において、エッチングで残す部分やメッキを施さない部分のマスクとして用いるため、または、部品を実装して半田付けするときに半田が不要な部分を覆うために、基板上に所定の形状のレジストパターンを形成する技術が広く普及している。
【0003】
このようなレジストパターンを形成する方法の1つとして、コーティング装置により、基板上に感光性レジストを塗布してレジスト膜を形成し、露光装置によって、レジスト膜に所望の回路パターンを露光し、その後、所定の後処理を行なってレジストパターンを形成する方法が用いられている。また、レジストパターンの中には、光の照射により硬化する光硬化レジストを用いたものや、露光された部分を現像処理して形成するフォトレジストを用いたもの等がある。
【0004】
従って、レジストパターンの形状によって、基板上に形成される最終的な回路パターンの形状が決定されることになるので、微細な形状の回路基板を形成するためには、レジストパターンの断面形状も重要な要素となる。
一般的には、レジストパターンの断面形状は、基板面に対して垂直に立ち上がったストレート形状(矩形形状)が好ましい。しかし、用途に応じては、光の受光面に近い部分(上層部)が広がった逆テーパ形状(逆台形形状)の断面が求められる場合もあるし、逆に、光の受光面から離れた部分(下層部)が広がったテーパ形状(台形形状)の断面が求められる場合もある。
【0005】
様々な断面形状を有するレジストパターンを形成するため、従来では、各々の断面形状ごとに異なる組成の感光性レジストを製造し、各々の断面形状ごとに異なる感光性レジストを基板に塗布する必要があった。このため、感光性レジストについては、様々な種類の感光性レジストが開発されており、例えば、化合物の所定の波長に対する光の吸収度に注目して、より矩形に近い断面形状を有するレジストパターンを得るためのレジスト膜の製造方法も提案されている。(例えば、特許文献1参照。)
【0006】
また、矩形以外の様々な断面形状を有するレジストパターンを得るためには、一般的には基板に塗布する感光性レジスト自体を、各々の断面形状に応じた組成に変更して製造する必要がある。従って、矩形と異なる断面形状のレジストパターンが必要なときには、迅速に断面形状の変更に対応することは難しく、また、多くの種類の感光性レジストを準備する必要があるため、製造コストも高くなるという問題が生じていた。
【0007】
この感光性レジストを変更することなく、様々な断面形状を有するレジストパターンを形成するために、紫外線の光源部から出力される2以上の輝線部の波長の光のうち、少なくとも1の波長に対応した光学フィルタの設置角度を変更することで、その波長の光の入射角を変えて、その波長の光学強度を変更することができる光強度変更手段を備えた露光装置が提案されている。(例えば、特許文献2参照。)
【0008】
特許文献2の露光装置によれば、光学フィルタの設置角度を機械的に変更することで、光の入射角を変更し、それによってフィルタの通過特性(一般に光学では反射で用いる場合は反射特性、透過で用いる場合は透過特性というが、ここでは両方を示す意味で「通過特性」と称する)の中心波長を短波長側と長波長側との間でシフトさせている。中心波長が長波長側や短波長側にシフトした場合には、シフトさせない場合に比べてフィルタ通過率(一般に光学では反射で用いる場合は反射率、透過で用いる場合は透過率というが、ここでは両方を示す意味で「通過率」と称する)が減少して光学強度が弱くなる。特許文献2では、複数波長のフィルタを組み合わせ、各波長の光学強度を上記方法により調整することで、レジストパターンの断面形状における側面角度を調整し、テーパ形状や逆テーパ形状のレジストパターン断面を得るようにしている。
【0009】
また、波長の強度を調整する光学フィルタ装置としては、導波路型のマッハツェンダ(Mach−Zehnder:MZ)光学フィルタ、アコーストオプティックチューナブルフィルタ(Acousto−Optic Tunable Filter:AOTF)等の機械的な可動部分がなく電気的手段によって波長の損失特性を変化させることのできる可変光学フィルタが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−150171号公報
【特許文献1】特開2007−12970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
波長毎に通過率を制御する光学フィルタは、一般的に平ガラスに対して所定の膜厚のコーティングを行う方法が取られる。しかし、複雑な波長通過率を実現するコーティングは設計が難しく、コストも高いものとなってしまう。
【0012】
また、上記した各光学フィルタは、いずれも波長の強度を調整できる範囲が小さく、電圧や温度の変動に敏感であり制御が難しく、その制御手段は複雑であるという問題がある。例えば、特許文献2の露光装置によれば、光学フィルタの設置角度を機械的に変更することで、レジストパターンの断面形状における側面角度を調整し、テーパ形状や逆テーパ形状のレジストパターン断面を得ているが、その調整は、光学フィルタの設置角度を機械的に変更させて、中心波長をシフトさせて行っているので、そのシフト量は波長の強度全体と比較して非常に部分的であり、調整範囲は限られている。そのため、フィルタ通過率の調整範囲も光学強度の調整範囲も、調整するべき範囲と比較して狭い範囲に限定されている。
【0013】
従って、上記した各光学フィルタでは、機械的な光学フィルタの設置角度の変更に対して、レジストパターンの断面にテーパ形状や逆テーパ形状を形成できる量は僅かである。つまり、光学フィルタの設置角度の変更に対する、フィルタ通過率の調整範囲も、光学強度の調整範囲も僅かであり、光の強度を実用レベルで十分に調整できないという問題があった。また、従来は強度を十分に調整できないことから、露光装置では、露光領域の照度の均一性を悪化させる可能性があった。
【0014】
そこで本発明は、上記の課題を解決するために、複数の波長の強度を個別に実用レベルで調整できる光源装置、及び、露光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明の実施態様に係る光源装置においては、複数の輝線を有する光束を発生する光源が発生した光束を凹面鏡で集光し、該集光された光束から光学フィルタ装置を有する選択手段で所定波長の光束を選択し、該所定波長の光束を照明対象物に照射する光源装置であって、該光学フィルタ装置には、前記輝線スペクトルの少なくとも一つの輝線の波長の光を遮断する反射被膜が、前記光束を反射させるか又は透過させて通過させる複数の開口を有するように設けられ、該複数の開口の最大寸法は、前記所定波長の光束の照射面内に複数の開口が配置可能である微小な寸法であり、前記選択された所定波長の光束における少なくとも一つの特性を、前記微小な開口の形状、間隔及び数により決定する。
本実施態様では、光学装置に微小な開口を設けて、その開口の形状と数を決定することで、波長通過率の仕様に基づいて光学フィルタのコーティングを設計、製造する必要が無く、輝線波長の強度等の特性を実用レベルで調整することができる。また、照明のσムラとxy波長の照明ムラを取ることができる。
【0016】
本発明の実施態様に係る光源装置においては、前記複数の微小な開口が設けられた光学フィルタ装置は、前記所定波長の光束の照射面内に、前記開口の形状、間隔若しくは数が異なる部分領域を有し、前記光束の照射面内における前記部分領域の割合が変動するように、前記光学フィルタ装置の各光学フィルタ部を可動させる駆動手段を有するようにしてもよい。
本実施態様では、開口の形状、間隔若しくは数が異なる部分領域を有し、光学フィルタ部の可動装置を有することで、輝線波長の強度等の特性の調整を容易にすることができる。
【0017】
本発明の実施態様に係る光源装置においては、前記光学フィルタ装置は、複数個の光学フィルタ部が直列に配置され、各光学フィルタ部は、他の光学フィルタ部に対して、前記光源が発生した光束に対する光学的特性、前記開口の形状、前記開口間の間隔、及び、前記開口の数の少なくとも1つが異なるようにしてもよい。
本実施態様では、開口の形状、間隔若しくは数が異なる複数の光学フィルタ部を有することで、輝線波長の強度等の周波数に対する複雑な特性についても調整を容易にすることができる。
【0018】
本発明の実施態様に係る光源装置においては、前記光学フィルタ装置を通過した光束により前記照明対象物の各部を照明する照度を均一化する照明均一化手段を有するようにしてもよい。
本実施態様では、出射する光束を均一化することで、フォトマスク及びポジレジストに照射される光束を均一にすることができる。
【0019】
上記課題を解決するために、本発明の実施態様に係る光源装置においては、複数の輝線を有する光束を発生する光源が発生した光束を凹面鏡で集光し、該集光された光束から光学フィルタ装置を有する選択手段で所定波長の光束を選択し、該所定波長の光束をフォトマスク上に形成された所定のパターンを介して照明光としてポジレジストに照射する露光装置であって、該光学フィルタ装置には、前記光束を反射させるか又は透過させて通過させる複数の開口が設けられ、該複数の開口の最大寸法は、前記所定波長の光束の照射面内に複数の開口が配置可能である微小な寸法であり、少なくとも一つの特性が前記微小な開口の形状、間隔及び数により決定された前記選択され、前記光学フィルタ装置を通過した前記所定波長の光束により前記照明対象物の各部を照明する照度を均一化する照明均一化手段を有し、前記均一化され、前記フォトマスクを通過した前記所定波長の光束が、前記ポジレジスト上に照射される。
本実施態様では、光学装置に微小な開口を設けて、その開口の形状と数を決定することで、輝線波長の強度等の特性を実用レベルで調整し、ポジレジストに対して、所望の周波数を所望の強度で露光させることができる。
【0020】
本発明の実施態様に係る光源装置においては、前記所定波長の光束は、前記光源が発生する光束が有する輝線であるi線、h線、g線の少なくとも何れか一つの波長を含むようにしてもよい。
本実施態様では、紫外線光源の輝線であるi線、h線、g線に対応することができる。
【0021】
上記課題を解決するために、本発明の実施態様に係る光源装置においては、所定波長の輝線を有する輝線スペクトルの光を放出する光源から出射された光が入射され、各輝線スペクトル毎の通過量を調整した光を出射する光源装置であって、前記輝線スペクトルの少なくとも一つの輝線の波長の光を遮断する反射被膜を一部に設け、該反射被膜の通過する表面領域及び遮断する表面領域の各々の全表面積に対する面積比率を異ならせることで、前記輝線の波長の光のフィルタ通過率を異ならせた少なくとも2つの部分領域を隣接させて設けた光学フィルタ部と、前記光学フィルタ部と各々個別に接触又は結合され、前記光学フィルタ部における前記光の照射領域の位置を、前記2部分領域の一方から他方へ各部分領域の境界線を横切って連続的に移動させることができるように駆動することができる駆動手段と、前記光学フィルタ部を移動させることで前記光の照射領域における前記2部分領域の面積比率を変化させて、前記光学フィルタ部における前記照射領域に入射した前記光の通過量を制御する通過波長制御部とを有する。
本実施態様では、輝線波長に対して所定の通過特性を有する光学フィルタにフィルタ通過率が異なる部分領域を設け、その光学フィルタにおける光の照射領域の位置を各部分領域の境界線を横切って連続的に制御することにより、輝線波長の強度を実用レベルで調整することができる。
【0022】
本発明の実施態様に係る光源装置においては、前記光学フィルタ部は、少なくとも第1光学フィルタ部と第2光学フィルタ部とを有し、前記第1光学フィルタ部は、第1透明基板上の表面に少なくとも第1部分領域と第2部分領域が設けられ、第1輝線波長の光に対して所定の通過特性を有する第1通過特性被膜上に前記光を遮断する第1反射被膜が、前記第1部分領域と前記第2部分領域とで異なるフィルタ通過率となるように形成され、前記第2光学フィルタ部は、第2透明基板上の表面に少なくとも第3部分領域と第4部分領域が設けられ、前記第1輝線波長の光と異なる第2輝線波長の光に対して所定の通過特性を有する第2通過特性被膜上に前記光を遮断する第2反射被膜が、前記第3部分領域と前記第4部分領域とで異なるフィルタ通過率となるように形成され、前記駆動手段は、少なくとも第1駆動手段と第2駆動手段とを有し、前記第1駆動手段は、前記第1光学フィルタ部における前記照射領域の位置を前記第1部分領域と前記第2部分領域の境界線を横切って連続的に移動させることができるように駆動することができ、前記第2駆動手段は、前記第2光学フィルタ部における前記照射領域の位置を前記第3部分領域と前記第4部分領域の境界線を横切って連続的に移動させることができるように駆動することができ、前記通過波長制御部は、前記第1駆動手段と前記第2駆動手段の駆動量を各々制御することで、前記各光学フィルタ部の光の通過量を各々制御するようにしてもよい。
本実施態様では、複数の輝線波長に対する通過特性が各々異なる複数の光学フィルタの各々にフィルタ通過率が異なる部分領域を設け、各光学フィルタにおける光の照射領域の位置を各部分領域の境界線を横切って連続的に制御することにより、複数の波長の強度を個別に実用レベルで調整することができる。
【0023】
本発明の実施態様に係る光源装置においては、前記第1光学フィルタ部と前記第2光学フィルタ部には、各々を個別に回転させることが可能な回転軸が設けられ、前記第1駆動手段は、前記第1光学フィルタ部を回転駆動することにより、前記光の照射領域の位置を前記第1部分領域と前記第2部分領域の境界線を横切って連続的に移動させ、前記第2駆動手段は、前記第2光学フィルタ部を回転駆動することにより、前記光の照射領域の位置を前記第3部分領域と前記第4部分領域の境界線を横切って連続的に移動させることができるように駆動されるようにしてもよい。
本実施態様では、光学フィルタの各々のフィルタ通過率を回転移動により制御するので、ステッピングモータ等により照射領域の位置を容易に制御できる。
【0024】
本発明の実施態様に係る光源装置においては、前記第1光学フィルタ部と前記第2光学フィルタ部は、各々を個別に直線的に移動させることが可能なように前記第1駆動手段と前記第2駆動手段に取り付けられ、前記第1駆動手段は、前記第1光学フィルタ部を直線的に駆動することにより、前記光の照射領域の位置を前記第1部分領域と前記第2部分領域の境界線を横切って連続的に移動させ、前記第2駆動手段は、前記第2光学フィルタ部を直線的に駆動することにより、前記光の照射領域の位置を前記第3部分領域と前記第4部分領域の境界線を横切って連続的に移動させることができるように駆動されるようにしてもよい。
本実施態様では、光学フィルタの各々のフィルタ通過率を直線的な移動により制御するので、モータと回転運動を直線運動に変換するラックとピニヨン等により照射領域の位置を容易に制御できる。
【0025】
本発明の実施態様に係る光源装置においては、前記光学フィルタ部は、更に第3光学フィルタ部を有し、前記第3光学フィルタ部は、第3透明基板上の表面に少なくとも第5部分領域と第6部分領域が設けられ、前記第1輝線波長及び前記第2輝線波長と異なる第3輝線波長の光に対して所定の通過特性を有する第3通過特性被膜上に前記光を遮断する第3反射被膜が、前記第5部分領域と前記第6部分領域とで異なるフィルタ通過率となるように形成され、前記駆動手段は、更に第3駆動手段を有し、前記第3駆動手段は、前記第3光学フィルタ部における前記照射領域の位置を前記第5部分領域と前記第6部分領域の境界線を横切って連続的に移動させることができるように駆動することができ、前記通過波長制御部は、更に前記第3駆動手段の駆動量も制御することで、前記第3光学フィルタ部の光の通過量も制御するようにしてもよい。
本実施態様では、第3光学フィルタと組み合わせるので、波長毎に個別に、より複雑に光を制御することができる。
【0026】
本発明の実施態様に係る光源装置においては、前記各光学フィルタ部の前記各部分領域毎に異なるフィルタ通過率を有する各反射被膜は、前記フィルタ通過率に対応する所定の図形パターンをマスキングに用いて、前記各反射被膜が形成される領域と前記各反射被膜が形成されない領域の比率が異なるように形成されることにより、前記フィルタ通過率を異ならせるようにしてもよい。
本実施態様の光学フィルタでは、複数の輝線波長に対する通過特性が各々異なる複数の光学フィルタの表面の被膜に、マスキングを用いて、照射領域と非照射領域を設けることで、光学フィルタにおける光のフィルタ通過率を制御するので、フィルタ通過率が異なる部分領域の形成が容易である。
【0027】
本発明の実施態様に係る光源装置においては、前記各反射被膜は、対応する波長の光を反射する反射被膜であるようにしてもよい。
本実施態様の光学フィルタでは、本実施態様の光学フィルタでは、反射被膜を反射被膜にすることで、金属材料等を被膜に用いることができるので、フィルタ通過率が異なる部分領域の形成が容易である。
【0028】
本発明の実施態様に係る光源装置においては、前記各光学フィルタ部における反射被膜の前記所定の図形パターンによる領域は、前記フィルタ通過率の異なる部分領域が中心から放射状に周辺部に達する帯状に交互に形成されるようにしてもよいし、前記フィルタ通過率の異なる部分領域が複数の直径が異なる同心円のリング状に交互に形成されるようにしてもよいし、前記フィルタ通過率の異なる部分領域が複数の円形部分とその周囲部分となるように形成されるようにしてもよいし、前記フィルタ通過率の異なる部分領域がスリット状に交互に形成されるようにしてもよいし、前記フィルタ通過率の異なる部分領域が千鳥格子状に交互に形成されるようにしてもよい。
【0029】
また、複数の輝線波長に対する通過特性が各々異なる複数の光学フィルタの各々にフィルタ通過率が異なる部分領域を放射状に設ける場合、光学フィルタを回転駆動させて光学フィルタのフィルタ通過率を個別に調整することができる。複数の輝線波長に対する通過特性が各々異なる複数の光学フィルタの各々にフィルタ通過率が異なる部分領域を同心円状に設ける場合、光学フィルタを直線的に駆動させて光学フィルタのフィルタ通過率を個別に調整することができる。複数の輝線波長に対する通過特性が各々異なる複数の光学フィルタの各々にフィルタ通過率が異なる部分領域を所定の図形パターンにより円形部分とその周囲部分となるように設ける場合、円形部分の間隔又は直径を変更する場合、フィルタ通過率の異なる光学フィルタの領域形成が容易である。
【0030】
また、複数の輝線波長に対する通過特性が各々異なる複数の光学フィルタの各々にフィルタ通過率が異なる部分領域を所定の図形パターンによりスリット状に交互に設ける場合、スリット幅を変更することで、フィルタ通過率の異なる光学フィルタの領域形成が容易である。複数の輝線波長に対する通過特性が各々異なる複数の光学フィルタの各々にフィルタ通過率が異なる部分領域を所定の図形パターンにより千鳥格子状に交互に設ける場合、千鳥格子の大きさを変えることで、フィルタ通過率の異なる光学フィルタの領域形成が容易である。
【0031】
本発明の実施態様に係る光源装置においては、前記光学フィルタ部における前記所定の通過特性は、ローパスフィルタ、バンドパスフィルタ及びハイパスフィルタの中の少なくとも一つの通過特性であるようにしてもよい。
本実施態様では、複数の光学フィルタの各々の波長の通過特性が異なり、ローパスフィルタ、バンドパスフィルタ及びハイパスフィルタの中の少なくとも一つであるので、調整範囲を広げることができる。
【0032】
本発明の実施態様に係る光源装置においては、前記第1光学フィルタ部の前記第1通過特性被膜又は前記第2光学フィルタ部の前記第2通過特性被膜の少なくとも何れか一方は、第1輝線波長の光に対するバンドパスフィルタと第2輝線波長の光に対するハイパスフィルタの通過特性を有するようにしてもよい。
本実施態様では、複数の光学フィルタの少なくとも一つが1波長のバンドパスと他の波長のハイパスの複合通過特性を有しているので、複雑な波長と光強度への対応が可能になる。
【0033】
本発明の実施態様に係る光源装置においては、前記各光学フィルタ部の少なくとも1つは、当該透明基板上の表面に少なくとも3つ以上の部分領域が設けられ、前記各部分領域の前記被膜のフィルタ通過率が各々異なるように形成されるようにしてもよい。
本実施態様では、フィルタ通過率が異なる部分領域を3個以上設けるので、より多様にフィルタ通過率を調整することができる。
【0034】
本発明の実施態様に係る光源装置においては、前記各光学フィルタ部のうち、フィルタ通過率の異なる部分領域が設けられず一様である光学フィルタ部を、部分領域が設けられた他の光学フィルタ部の形成された透明基板における当該フィルタ面とは反対面に形成するようにしてもよい。
本実施態様では、フィルタ通過率が一様な光学フィルタ部を他の光学フィルタ部の基板を挟んだ反対面に設けることで、基板枚数を減らして工数及びコストを減らすことができる。
【0035】
上記課題を解決するために、本発明の実施態様に係る光源装置においては、請求項1〜16に記載した光学フィルタ装置と、光源と、前記光源から出射された光を前記光学フィルタ装置に入射させる入射光学系と、前記光学フィルタ装置から出射された光を被照射物の照射領域に集光させる出射光学系とを有する。
本発明の光学フィルタを光源装置に利用した場合、複数の輝線波長に対する通過特性が各々異なる複数の光学フィルタの各々にフィルタ通過率が異なる部分領域を設け、各光学フィルタにおける光の照射領域の位置を各部分領域の境界線を横切って連続的に制御することにより、複数の波長の強度を個別に調整することができる。
【0036】
本発明の実施態様に係る光源装置においては、前記光源は、複数の輝線波長を有する紫外線光源であり、前記光学フィルタ装置における前記第1輝線波長の光は、紫外線の輝線波長のi線であり、前記光学フィルタ装置における前記第2輝線波長の光は、紫外線の輝線波長のh線であるようにしてもよい。
本実施態様では、露光用の紫外線の複数の輝線波長のうちの第1輝線波長(i線)と第2輝線波長(h線)のフィルタ通過率を制御することができることから、レジストパターンの断面形状における側面のテーパ角度制御を容易に実施できる。
【0037】
上記課題を解決するために、本発明の実施態様に係る露光装置においては、基板上に塗布された感光性レジストに光源装置から出射された光を所定のパターンを介して露光させることで、該基板上に前記所定パターンの回路を形成する露光装置であって、請求項1〜16に記載した光学フィルタ装置を備えた光源装置と、前記通過波長制御部による前記光源からの光の通過量の制御と連動させて、前記光源からの光が照射される前記所定パターンの位置、及び、露光される基板の位置を制御する制御部とを有する。
本発明の光学フィルタを露光装置に利用した場合、感光性レジストに照射する2以上の波長の光の強度を個別に調整できるので、感光性レジストを変更することなく、レジストパターンの断面形状における側面角度を実用レベルで制御できる。例えば、レジストパターンの断面形状をストレート形状、テーパ形状、逆テーパ形状等に迅速且つ容易に制御できる。
【発明の効果】
【0038】
本発明の実施態様の光学フィルタ装置によれば、輝線波長に対する通過特性を有する光学フィルタにフィルタ通過率が異なる部分領域を設けて、その光学フィルタにおける光の照射領域の位置を各部分領域の境界線を横切って連続的に制御するので、輝線波長の強度を実用レベルで調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る第1実施形態の投影露光装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態の投影露光装置1を用いてプリント基板に回路パターンを形成する場合の一例を示すフローチャートである。
【図3】紫外線光源の複数の輝線波長における各フィルタ通過率と回路基板上に形成されるパターン回路の断面形状との関係を示す図であり、(a)が光学フィルタなしの場合の標準分校特性とその際の断面形状、(b)が第1波長と第2波長を減光した場合の分光特性とその際の断面形状、(c)第1波長と第2波長をさらに減光した場合の分光特性とその際の断面形状、(d)が(c)に加えて第3波長も減光した場合の分校特性とその際の断面形状を示す。
【図4】本発明に係る第1実施形態の光源装置における主要部の一例を示す斜視図あり、(a)が光学フィルタ部が円形である場合を示し、(b)が光学フィルタ部が方形である場合を示す。
【図5】本発明に係る第1実施形態の光源装置における主要部の他の例を示す平面図あり、(a)が同直径の微小開口を間隔を異ならせて光学フィルタ部の部分領域をリボルバ状に配置した場合を示し、(b)が直径を異ならせた微小開口を同間隔に設けた光学フィルタ部の部分領域をリボルバ状に配置した場合を示す。
【図6】本発明に係る第1実施形態の光源装置における主要部の変形例を示す側面図あり、(a)が光学フィルタ部が通過型である場合を示し、(b)が光学フィルタ部が反射型である場合を示し、(c)が異なる特性の通過型の光学フィルタ部を直列に配置した場合を示す。
【図7】光学フィルタ装置の主要部における被膜形成パターンの他の例を示す斜視図であり、(a)が放射状パターンの場合、(b)が同心円状パターンの場合を示す。
【図8】本発明に係る第2実施形態の光源装置における主要部の一例を示す斜視図あり、(a)が光学フィルタ部が円形である場合を示し、(b)が光学フィルタ部が方形である場合を示す。
【図9】本発明に係る第2実施形態の光源装置における複数の光学フィルタを用いる場合の一例を示す斜視図であり、(a)が基板の入射側表面の被膜を形成した部分領域と形成しない部分領域で2等分した場合を示し、(b)が基板の入射側表面の被膜を形成した部分領域と形成しない部分領域で4等分した場合を示し、(c)が基板の入射側表面のフィルタ通過率が3段階に異なるレベルの被膜を形成した部分領域及び形成しない部分領域で4等分した場合を示す。
【図10】本発明に係る第2実施形態の光源装置の各光学フィルタ部単体における反射部分領域の面積比率が変化することによるフィルタ通過率の変化を示す図であり、(a)が面積比率が100%、75%、50%、25%の各場合の第1光学フィルタ部の単体特性を示し、(b)が面積比率が100%、75%、50%、25%の各場合の第2光学フィルタ部の単体特性を示す。
【図11】本発明に係る第2実施形態の光源装置の第1光学フィルタ部と第2光学フィルタ部と組み合わせた場合のフィルタ通過率と波長特性の関係を示す図であり、(a)が面積比率が100%の第1光学フィルタ部と50%の第2光学フィルタ部と組み合わせた場合のフィルタ通過率を示し、(b)が(a)の場合の波長特性を示す。
【図12】本発明に係る第2実施形態の光源装置の第1光学フィルタ部と第2光学フィルタ部と組み合わせた場合のフィルタ通過率の変化と波長特性の変化とをそれらの関係を含めて示す図であり、(a)が面積比率が100%の第1光学フィルタ部と0%〜100%の間で変化する第2光学フィルタ部と組み合わせた場合のフィルタ通過率を示し、(b)が(a)の場合の波長特性の変化を示す。
【図13】本発明に係る第3実施形態の光学フィルタ装置における主要部の一例を示す斜視図であり、(a)が基板の入射側表面の被膜を形成した部分領域と形成しない部分領域で2等分した場合を示し、(b)が基板の入射側表面の被膜を形成した部分領域と形成しない部分領域で4等分した場合を示し、(c)が基板の入射側表面のフィルタ通過率が3段階に異なるレベルの被膜を形成した部分領域及び形成しない部分領域で4等分した場合を示す。
【図14】本発明に係る第4実施形態の光源装置の特殊な特性の第2光学フィルタ部のフィルタ通過率の変化と波長特性の変化とをそれらの関係を含めて示す図であり、(a)が面積比率が0%〜100%の間で変化する特殊な特性の第2光学フィルタ部のフィルタ通過率を示し、(b)が面積比率が0%〜100%の間で変化する第2光学フィルタ部のフィルタ通過率の変化を示し、(c)が(b)の場合の波長特性の変化を示す。
【図15】本発明に係る第5実施形態の光源装置における主要部の他の例を示す平面図ある。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明における第1実施形態の投影露光装置、光源装置及び光学フィルタついて、以下に図面を参照して詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明に係る第1実施形態の投影露光装置の概略構成を示すブロック図である。
ここでは、本実施形態の所定波長の輝線を有する輝線スペクトルの光を放出する光源から出射された光が入射され、各輝線スペクトル毎の通過量を調整した光を出射する光学フィルタ装置、その光学フィルタ装置を用いた光源装置、及び、その光学フィルタ装置を備える光源を用いた投影露光装置について説明する。
【0041】
投影露光装置1は、光源2を含む光源装置10からの出射光をフォトマスク20に形成された回路パターンに照射し、そのフォトマスク20を通過した回路パターンの像を含む光を、投影光学系50を介してプリント基板100上に投影して露光させる装置である。より詳しくは、露光前のプリント基板材料の上に均等に塗布された感光材料(フォトレジスト)に、回路パターンを露光させることで、プリント基板材料の上にプリント配線部を形成する装置である。露光装置には、使用される感光材料に対応してソルダレジスト用とパターンレジスト(ドライフィルムレジスト等)用がある。後工程ではんだを付着させる場合にはソルダレジストが用いられ、基板の銅箔層をエッチングする場合には、パターンレジストが用いられる。
【0042】
ソルダレジストは、例えば、はんだが付いてはいけない場所へのはんだの付着を防いだ状態ではんだ槽にディップすること等によって、配線または銅箔パターンの保護層を形成するものである。感光性のソルダレジストを用いた場合は、露光した部分のみか、露光した部分を除いて、はんだを付着させることができる。感光性のパターンレジストは、プリント基板材料(例えば表面に銅箔層を有する樹脂板:銅張積層板等)における銅箔等の上に均等に塗布され、その感光性パターンレジストに対して回路パターンを露光装置により感光させて焼き付けし、露光しなかった感光性パターンレジストを除去してから銅箔層をエッチングすることで露光した部分のみか、露光した部分を除いて、銅箔をエッチング等で除去することができる。
【0043】
図1の光源装置10は、例えば、光源2、反射鏡3、コリメータレンズ4、第1光学フィルタ部5、第2光学フィルタ部6、第3光学フィルタ部7、照明均一化手段8、集光レンズ9、通過波長制御部11、第1駆動手段12、第2駆動手段13、第3駆動手段14を含んでいる。光源装置10は、光源2から出射される光を所定の均一性・照射領域を有する光束に成形し、その光束を目的の照射面に照射する。投影露光装置にこのような光源装置10を使用することで、感光性のフォトレジストを感光させることができる。
【0044】
光源2は、例えば、レーザ光発生器、アークランプ、または、水銀灯等であり、複数の所定波長域の輝線を有する輝線スペクトルの光を放出する。光源2の波長としては、X線域、紫外線域、可視域、赤外域を含むあらゆる波長域の光を含む。光源装置10は、1つの光源2で構成してもよいし、波長ごと、または波長帯域ごとに2以上の光源2を備えるようにしてもよい。本実施形態では、光源2は、複数の輝線波長を有する紫外線光源(紫外線ランプ)であり、光学フィルタ装置における第1輝線波長の光は、紫外線の輝線波長のi線であり、光学フィルタ装置における第2輝線波長の光は、紫外線の輝線波長のh線であり、光学フィルタ装置における第3輝線波長の光は、紫外線の輝線波長のg線であることとする。
【0045】
反射鏡3は、光源2から出射された光を光学フィルタ装置に入射させる入射光学系を構成する集光手段であり、一般的に楕円鏡や双曲面鏡が使用される。反射鏡3は光源2から全周囲に放出される光を一点に収束させるか、平行光に近いレベルの拡散光にする。この反射鏡3により、各光学フィルタに入射する光を照射領域に収束させることができる。
コリメータレンズ4は、反射鏡3で収束光又は平行光に近い拡散光となった光を平行光にして出射する。平行光にすることで、各光学フィルタに入射する光の照射領域を略同様にすることができる。
【0046】
第1光学フィルタ部5は、光源2から出射され、反射鏡3で集光された光が入射され、例えば、第1の輝線波長(i線)スペクトル毎の通過量を調整した光を出射する光学フィルタ装置又はその光学フィルタ装置の一部である。第1光学フィルタ部5は、例えば、第1透明基板上の表面に、第1輝線波長の光に対して所定の通過特性を有する第1通過特性被膜が形成され、その上に紫外線を遮断する第1反射被膜が形成される。但し、第1通過特性被膜は、第1透明基板上の表面に均等に形成されてよいが、第1反射被膜は表面に均等に形成されるわけではない。第1前記光学フィルタ部5における所定の通過特性は、ローパスフィルタ、バンドパスフィルタ及びハイパスフィルタの中の少なくとも一つの通過特性である。
複数の光学フィルタ部の各々の波長の通過特性を異ならせることで、光学フィルタ全体の調整範囲を広げることができる。
【0047】
第1反射被膜は、第1透明基板上の表面上に少なくとも2つの部分領域を隣接させて設け、各部分領域における第1輝線波長のフィルタ通過率が異なるように、反射被膜が表面に形成される総面積を異ならせて形成される。なお、所定の通過特性とは、例えば、第1輝線波長の光を通過又は遮断する特性である。また、第1透明基板上への第1反射被膜の形成方法については、図5及び、図9を用いて更に詳しく後述する。第1反射被膜としては、紫外線を吸収する被膜と反射する被膜を使用することができ、本実施形態では、反射被膜を使用する。反射被膜としては、金属膜や、単層・多層の誘電膜、あるいはそれら複合して用いることができる。
【0048】
なお、誘電膜の材料としては、高屈折率と低屈折率物材料が知られている。高屈折率材料としては、Al23、ZrO2、HfO2、Sc23、Y23、NdF3、LaF3、YbF3、CeF3、ThF4等を用いることができる。また、低屈折率材料としては、SiO2、MgO、MgF2、Na3AlF6、Na5Al314、AlF3、CaF2、NaF、LiF等を用いることができる。
【0049】
第2光学フィルタ部6は、第1光学フィルタ部5から出射された光が入射され、例えば、第2の輝線波長(h線)スペクトル毎の通過量を調整した光を出射する光学フィルタ装置又はその光学フィルタ装置の一部である。第2光学フィルタ部6は、例えば、第2透明基板上の表面に、第2輝線波長の光に対して所定の通過特性を有する第2通過特性被膜が形成され、その上に紫外線を遮断する第2反射被膜が形成される。但し、第2通過特性被膜は、第2透明基板上の表面に均等に形成されてよいが、第2反射被膜は表面に均等に形成されるわけではない。
【0050】
第2反射被膜は、第2透明基板上の表面上に少なくとも2つの部分領域を隣接させて設け、各部分領域における第2輝線波長のフィルタ通過率が異なるように、第2反射被膜が表面に形成される総面積を異ならせて形成される。なお、所定の通過特性とは、例えば、第2輝線波長の光を通過又は遮断する特性である。また、第2透明基板上への第2反射被膜の形成方法についても、図5及び、図9を用いて更に詳しく後述する。第2反射被膜としても、紫外線を吸収する被膜と反射する被膜を使用することができ、本実施形態では、反射被膜を使用する。
【0051】
第3光学フィルタ部7は、第2光学フィルタ部6から出射された光が入射され、例えば、第3の輝線波長(g線)スペクトル毎の通過量を調整した光を出射する光学フィルタ装置又はその光学フィルタ装置の一部である。第3光学フィルタ部7は、例えば、第3透明基板上の表面に、第3輝線波長の光に対して所定の通過特性を有する第3通過特性被膜が形成され、その上に紫外線を遮断する第3反射被膜が形成される。但し、第3通過特性被膜は、第3透明基板上の表面に均等に形成されてよいが、第3反射被膜は表面に均等に形成されるわけではない。
【0052】
第3反射被膜は、第3透明基板上の表面上に少なくとも2つの部分領域を隣接させて設け、各部分領域における第3輝線波長のフィルタ通過率が異なるように、第3反射被膜が表面に形成される総面積を異ならせて形成される。なお、所定の通過特性とは、例えば、第3輝線波長の光を通過又は遮断する特性である。また、第3透明基板上への第3反射被膜の形成方法については、図5及び、図9を用いて更に詳しく後述する。第3反射被膜としても、紫外線を吸収する被膜と反射する被膜を使用することができ、本実施形態では、反射被膜を使用する。
【0053】
本実施形態では、第3光学フィルタ部7を第1、第2光学フィルタ部5、6を組み合わせて使用するが、光学フィルタに要求される特性によっては、第3光学フィルタ部7が設けられない場合もある。第3光学フィルタ部7を用いる場合は、波長毎に個別に、より複雑に光を制御することができる。
【0054】
なお、複数枚の光学フィルタを利用する場合には、最終的に必要となる波長の強度特性によっては、上記した第1反射被膜、第2反射被膜、第3反射被膜の何れかを形成しないようにできる。その場合には、反射被膜を形成しない第1通過特性被膜、第2通過特性被膜、第3通過特性被膜を、他のフィルタの被膜が形成された基板表面の使用されていない裏面に形成してもよい。
【0055】
各光学フィルタの波長の通過特性は、コーティングされる被膜を選択することにより任意に設定可能であり、また、バンドパスフィルタとハイパスフィルタとの組み合わせのように複数利用することで、略希望する波長特性を得ることができる。さらに、本実施形態のように、各光学フィルタに反射被膜を部分的になるように形成して照射領域の面積を制御することで波長毎の強度(照度)を制御することができる。また、反射被膜はマスキング等を格子状やパンチング状に形成することで、照射領域を制御してもよい。
【0056】
また、例えば、各光学フィルタ部5、6、7のうち、第3光学フィルタ部7が、フィルタ通過率の異なる部分領域が設けられず一様である場合、部分領域が設けられた他の第1光学フィルタ部5、第2光学フィルタ部6の形成された第1透明基板120又は第2透明基板130における当該フィルタ面とは反対面に形成するようにしてもよい。その場合、フィルタ通過率が一様な光学フィルタ部を他の光学フィルタ部の基板を挟んだ反対面に設けることで、基板枚数を減らして工数及びコストを減らすことができる。
【0057】
照明均一化手段8は、第3光学フィルタ部7を出射した光を拡散するように内部反射させることで均一化して出射する手段である。照明均一化手段8としては、例えば、平方形や六角形のレンズを多数敷き詰めた構造のレンズからなり、少しずつ位置をずらした光源像を多数発生させて重ね合わせることで照射面の照度の均一性を改善するフライアイ方式インテグレータと、円柱や角柱型のガラスロッド内で全反射を繰り返すことで照射面の照度の均一性を改善するロッドレンズ方式のインテグレータが知られている。
集光レンズ9は、光学フィルタ装置から出射された光を被照射物の照射領域に集光させる出射光学系を構成する集光手段であり、照明均一化手段8から出射された光を、例えば、フォトマスク20等の上に収束させる。
【0058】
通過波長制御部11は、各光学フィルタ部5、6及び7を移動させることで光の照射領域における各2部分領域の面積比率を機械的な移動により変化させて、各光学フィルタ部5、6、7における照射領域に入射した光の通過量を制御する。また、各光学フィルタ部5、6、7の各透明基板上への反射被膜の形成方法については、図5及び、図9を用いて更に詳しく後述する。通過波長制御部11は、光の全てが反射被膜部分で反射される状態から、光の全てが反射被膜の無い部分を通過する状態まで、その光が反射被膜部分で反射される量を増大させることもできるし、逆にその光が反射被膜部分で反射される量は減少させ、反射被膜の無い部分の通過される量を増大させることもできる。これにより、各光学フィルタ部5、6、7を通過する光の強度を増大させるように変更することもできるし、光の強度を減少させるように変更することもできる。また、通過波長制御部11は、各光学フィルタ部5、6、7で変更可能な全ての波長の光の強度を変更することもできるし、各光学フィルタ部5、6、7で変更可能な波長の一部の光の強度だけを変更することもできる。
【0059】
第1駆動手段12は、第1光学フィルタ部5と接続され、第1光学フィルタ部5における光の照射領域の位置を、移動させることができるように駆動することができる第1光学フィルタ部5の駆動部である。本実施形態のように各光学フィルタを回転方向に移動させて位置制御する場合には、例えば、ステッピングモータ等を使用することができる。光学フィルタの各々のフィルタ通過率を回転移動により制御する場合には、ステッピングモータ等により照射領域の位置を容易に制御することができる。各光学フィルタを直線方向に移動させて位置制御する場合には、例えば、モータとラック・アンド・ピニオンを組み合わせて使用したり、リニアモータ等を使用することができる。
【0060】
第2駆動手段13は、第2光学フィルタ部6と接続され、第2光学フィルタ部6における光の照射領域の位置を、移動させることができるように駆動することができる第2光学フィルタ部6の駆動部である。
【0061】
第3駆動手段14は、第3光学フィルタ部7と接続され、第3光学フィルタ部7における光の照射領域の位置を、移動させることができるように駆動することができる第3光学フィルタ部7の駆動部である。
【0062】
フォトマスク側顕微鏡15は、露光させる波長の光を用いてフォトマスク20上のマスクマーク25と、ステージマーク75又はプリント基板100上のアライメントマーク105との座標値が合致するように調整する場合に使用する。フォトマスク側顕微鏡15は、2個又は4個等の複数の顕微鏡と各顕微鏡から得られた画像を撮像する撮像素子等のカメラを含む。複数のフォトマスク側顕微鏡15を用いることで、複数のマスクマーク25とステージマーク75の位置ずれ量を計測することができる。
【0063】
フォトマスク20は、レチクルとも称され、光源装置10から出射された光を、回路パターンの部分を除いて通過させるか、又は、回路パターンの部分だけ通過させ、残りの部分の光は遮る遮蔽板である。フォトマスク20の一方の表面上には、マスクマーク25が形成される。
【0064】
マスクマーク25は、フォトマスク20とステージ60上に設置されたステージマーク75とのアライメントを行う際に使用される。アライメント方法としては、例えば、フォトマスク側顕微鏡15をマスクマーク25の上に挿入し、フォトマスク側顕微鏡15によりマスクマーク25とステージマーク75の位置ずれ量を計測する。計測されたデータはマーク計測部70により処理され、フォトマスク20の投影像がステージ上のどの座標値に投影されるかの座標値関係が記憶される。
【0065】
次に基板側顕微鏡65をステージマーク75の上に移動し、基板側顕微鏡65によりマスクマーク25の投影像とステージマーク75の位置ずれ量を計測する。計測されたデータはマーク計測部70により同じく処理され、基板側顕微鏡65の計測した座標値とフォトマスク20の投影像との座標値関係が記憶される。
【0066】
ステージ60上にプリント基板100が搭載された際には、基板側顕微鏡65により計測されたプリント基板100上のアライメントマーク105の計測結果を、上記した各座標値関係の記憶を用いて補正することで、フォトマスク20の投影像をプリント基板100に正確にアライメントして露光する事が可能となる。
【0067】
XY独立倍率補正部30は、フォトマスク20と投影光学系50との間で特にフォトマスク20の直下、または、投影光学系50とプリント基板100との間で特にプリント基板100の直上に配置され、回路パターンにおけるX方向とY方向の倍率差(偏り)を減少させるように投影光を補正する。より詳しくは、XY独立倍率補正部30は、プリント基板上で直交するX方向とY方向のうちの何れか一方の方向の変倍率を補正する。XY独立倍率補正部30は投影倍率制御部90により駆動制御が行われる。
【0068】
可動板40は、フォトマスク20の上方には、フォトマスク20に対して平行を保ちつつ移動可能であり、フォトマスク20に照射される露光光のうちのフィールド外の光を遮断するブラインドとして機能する。露光フィールドの面積は、フォトマスク20上に設けられて遮光機能を有するブラインドとして機能する可動板40を駆動させることにより面積を変化させる。可動板40は可動板制御部85によりその開口面積が制御される。
【0069】
投影光学系50は、回路パターンを露光させる光を基板上に投影するレンズ等を含む光学系であり、入射した光は内部で一旦集光されてから拡散して、基板に対して出射される。投影光学系50には、等方的な基板の倍率誤差を、レンズを駆動する事で補正できる倍率補正機構55が内蔵されている。倍率補正機構55は、前述のXY独立倍率補正部30と同ように投影倍率制御部90により駆動制御が行われる。
【0070】
ステージ60は、例えば、プリント基板材料が設置される台であり、X方向とY方向に移動させて露光位置を微調整することができる。
基板側顕微鏡65は、複数の顕微鏡と各顕微鏡から得られた画像を撮像する撮像素子等のカメラを含む。基板側顕微鏡65を用いて、各アライメントマーク105の計測を行う。
【0071】
マーク計測部70は、上記した各マークを複数計測すること等により、プリント基板上で直交する2軸(X方向とY方向)の倍率を計測する。
ステージマーク75は、ステージ60上に設けられ、基板側顕微鏡65によりマスクマーク25との位置ずれ量が計測される。
【0072】
制御部80は、フォトマスク20の位置制御、露光の投影倍率制御、プリント基板100の露光範囲/露光座標値制御、に加えて通過波長制御部11への各波長の強度指示を行い、基板パターンの断面形状を制御する。制御部80は、例えば、マイクロプロセッサ等の計算素子と記憶素子と各周辺装置とのインターフェースを含み、マーク計測部70で計測された結果から、投影倍率制御部90にて投影像の倍率を制御する。更に、露光範囲を可変する場合は、可動板40を用いて、露光フィールドを順次移動させると共に、ステージ制御部95に指令して、ステージ60によりプリント基板100が適切な座標値で実露光フィールドの投影光を露光できるように座標値を制御する。
【0073】
投影倍率制御部90は、制御部80からの制御信号を受けて、例えば、モータと各種ギア等の駆動機構で倍率補正機構55のレンズ間隔及び、XY独立倍率補正部30内のシリンドリカルレンズを駆動する。
【0074】
プリント基板100は、ベースとなる絶縁樹脂の表面上に銅の薄板等を貼り付けたプリント基板材料であり、投影露光装置1に設置する場合には、さらに銅板上にパターンレジストが塗布される。このパターンレジストに対してフォトマスク20を通過した回路パターンの露光光が照射されることで、パターンレジストが露光される。基板の種類としては、例えば、芯材の紙に熱硬化性のフェノール樹脂を含浸させた紙フェノール基板、芯材の紙に熱硬化性のエポキシ樹脂を含浸させた紙エポキシ基板、芯材のガラス繊維にエポキシ樹脂を含浸させたガラスエポキシ基板等がある。
【0075】
アライメントマーク105は、フォトマスク20上のマスクマーク25との座標値が合致するように、プリント基板100上に設けられ、例えば、レーザ光でプリント基板100の表面を溶融するか、ドリル等によって機械的に加工するか、レーザにより基板材料を溶融するか、基板上の金属箔又はレジストの層を設けて露光とエッチングを行うか、あるいはシルクスクリーン印刷する等により形成される。
【0076】
このように本第1実施形態の光源装置は、複数の輝線を有する光束を発生する光源が発生した光束を凹面鏡で集光し、その集光された光束から光学フィルタ装置を有する選択手段で所定波長の光束を選択し、その所定波長の光束を照明対象物に照射する。この所定波長は、光源2が発生する光束が有する輝線であるi線、h線、g線の少なくとも何れか一つの波長を含んでいる。また、その光学フィルタ装置には、所定波長の光束を反射させるか又は透過させて通過させる複数の開口が設けられる。そして、複数の開口の最大寸法は、所定波長の光束の照射面内、すなわち、所定波長の光束が照射される光学フィルタ装置の照射面において、当該照射面の領域内に、複数の開口が配置可能である微小な寸法である。この微小な寸法とは、例えば、照射領域の直径等の最大寸法に対して、開口の直径等が1/5又は1/10よりも小さい寸法である場合である。
【0077】
また、本第1実施形態の光源装置の光学フィルタ装置は、所定波長の光束の照射面内に部分領域を有する。そして、光束の照射面内における部分領域の割合が変動するように、光学フィルタ装置の各光学フィルタ部5〜7を可動させる駆動手段(不図示)を有する。光学フィルタ装置の複数個の各光学フィルタ部5〜7は直列に配置され、各光学フィルタ部5〜7は、他の光学フィルタ部に対して、光源2が発生した光束に対する光学的特性、開口の形状、開口間の間隔及び、開口の数の少なくとも1つが異なっている。
また、本第1実施形態の光源装置の光学フィルタ装置は、光学フィルタ部5〜7を通過した光束によりフォトマスク20等の照明対象物の各部を照明する照度を均一化する照明均一化手段を有する。この照明均一化手段としては、例えば、上記したフライアイ方式インテグレータと、ロッドレンズ方式のインテグレーターの何れかを用いることができる。
【0078】
露光装置1に本第1実施形態の光源装置を用いる場合、光源装置からの所定波長の光束は、まずフォトマスクに照射される。その後、所定波長の光束は、フォトマスク上に形成された所定のパターンが通過するか、そのパターン以外が通過した照明光として、プリント基板等の上に塗布されたポジレジストに照射される。そして、本第1実施形態の光源装置の照明均一化手段8で均一化され、フォトマスクを通過した所定波長の光束が、ポジレジスト上に照射される。
【0079】
図2は、本実施形態の投影露光装置1を用いてプリント基板に回路パターンを形成する場合の一例を示すフローチャートである。
投影露光装置1で露光させる回路パターンにマスクマーク25が設けられたフォトマスク20を作成する(S1)。次に、アライメントマーク105が設けられた銅張積層板等のプリント基板材料を露光させるサイズに切断し(S2)、その銅箔層の表面にフォトレジストを塗布し(S3)、そのプリント基板材料を投影露光装置1のステージ60上に設置する(S4)。投影露光装置1は、マーク計測部70等を用いてプリント基板材料の複数のアライメントマーク105を計測する(S5)。ここで投影露光装置1は、投影露光装置1に設置されたプリント基板材料100上に投影された回路パターンの平面上で直交する2軸(X方向とY方向)を計測している。
【0080】
投影露光装置1は、検出された2軸方向の倍率(プリント基板材料の伸縮状態)に基づいて、倍率補正機構55及び、XY独立倍率補正部30で実施する補正量を計算する(S6)。投影露光装置1は、計算された誤差と補正量に基づいて、露光フィールドの面積と露光順序を設定する(S7)と共に、倍率補正機構55及び、XY独立倍率補正部30で露光光の倍率を補正して、プリント基板材料に回路パターンを繰り返し露光させる(S8)。投影露光装置1は、プリント基板100上のアライメントマーク105の座標値を、記憶素子等に予め記憶されている設計上アライメントマーク座標値に一致させるようにステージ60を順次移動させる。設計上アライメントマーク座標値は、設計上から得られた座標値、又は、基準基板を用いて計測した座標値を用いる。この処理を繰り返すことで、フォトマスク20上の回路パターンをプリント基板100上の複数の露光フィールドに各々順次転写することができる。
【0081】
露光後のプリント基板材料をエッチングすることにより、不要な配線部分を除去する(S9)。エッチングが終了したらフォトレジストを除去し(S10)、プリント基板材料にスルーホール加工等の後工程を実施し(S11)、最後にプリント基板の表面を保護するコーティングを実施する(S12)。
【0082】
なお、本実施態様では、「感光性レジスト」としてあらゆる感光性レジストを用いることができ、例えば、露光部分が硬化する光硬化レジスト、露光部分が現像液に不溶となるネガティブ型や露光部分が現像液に溶けるポジティブ型のあるフォトレジストが含まれる。また、感光性レジストには、液状のものとフィルム状のものがあるが、あらゆるものを用いることができる。液状の感光性レジストの場合には、スピンコータ、ローラコータ、スリットコータといったコーティング装置により予め基板上に塗布され、露光装置で露光が行なわれる。
【0083】
また、光源装置10から感光性レジストに達する光路の途中に、回路パターンが描かれたレチクル等を挿入することによって、所望の回路パターンを感光性レジストに露光させることができる。
【0084】
露光後の後処理によって形成された「レジストパターン」は、例えば、エッチングで残す部分のマスクとして用いるエッチングレジストや、メッキをしない部分のマスクとして用いるメッキレジストや、部品を実装して半田付けをするときに、半田が不要な部分を覆うためのソルダーレジストとして用いることができる。
【0085】
図3は、紫外線光源の複数の輝線波長における各フィルタ通過率と回路基板上に形成されるレジストパターンの断面形状との関係を示す図であり、(a)が光学フィルタなしの場合の標準分校特性とその際の断面形状、(b)が第1波長と第2波長を減光した場合の分光特性とその際の断面形状、(c)第1波長と第2波長をさらに減光した場合の分光特性とその際の断面形状、(d)が(c)に加えて第3波長も減光した場合の分校特性とその際の断面形状を示す。
回路基板の製造において、エッチングで 残す部分やメッキを施さない部分のマスクとして用いるため、または、部品を実装して半田付けするときに半田が不要な部分を覆うために、基板上に所定の形状 のレジストパターンを形成する技術が広く普及している。このようなレジストパターンを形成する方法の1つとして、コーティング装置により、基板上に感光性レジストを塗布してレジスト膜を形成し、露光装置によって、レジスト膜に所望の回路パターンを露光し、その後、所定の後処理を行なってレジストパターンを形成する方法が用いられている。また、レジストパターンの中には、光の照射により硬化する光硬化レジストを用いたものや、露光された部分を現像処理して形成するフォトレジストを用いたもの等がある。
【0086】
レジストパターンの形状によって、基板上に形成される最終的な回路パターンの形状が決定されることになるので、微細な形状の回路基板を形成するためには、レジストパターンの断面形状も重要な要素となる。一般的には図3(b)に示すように、レジストパターンの断面形状は、基板面に対して垂直に立ち上がったストレート形状(矩形形状)が好ましい。しかし、用途に応じては、図3(a)に示すように光の受光面に近い部分(上層部)が広がった逆テーパ形状(逆台形形状)の断面が求められる場合もあるし、逆に、図3(c)に示すように光の受光面から離れた部分(下層部)が広がったテーパ形状(台形形状)の断面が求められる場合もある。また、図3(d)に示すように、基本的にはストレート形状であるがレジストパターンの基板への接着力を高めるために上部がストレートで下部のみ広がった台形形状が求められる場合も有る。
【0087】
図4は、本発明に係る第1実施形態の光源装置における主要部の一例を示す斜視図あり、(a)が光学フィルタ部が円形である場合を示し、(b)が光学フィルタ部が方形である場合を示す。
【0088】
図4(a)の光学フィルタ部501は、光学フィルタ部501において、透明基板200の表面にフィルタ機能の所定の通過特性を有する被膜512が形成された上に、所定の図形パターンによる反射被膜511が形成される。反射被膜511は、複数の円形部分とその周囲部分となるように形成される。つまり、図4(a)の光学フィルタ部501では、フィルタ通過率の異なる部分領域(通過特性被膜512の領域と反射被膜511の領域)が複数の円形部分とその周囲部分となるように形成される。本実施形態では、この複数の円形部分が開口であり、微小な寸法である。この微小な寸法とは、例えば、照射領域550の直径等の最大寸法に対して、開口513の直径等が1/5又は1/10よりも小さい寸法である場合である。
【0089】
各円形部分同士の間隔はフィルタ通過率に応じて変更すればよい。このように被膜を形成した場合、複数の輝線波長に対する通過特性が各々異なる複数の光学フィルタの各々にフィルタ通過率が異なる部分領域を円形部分とその周囲部分となるように設けるので、円形部分の間隔又は直径を変更することで、フィルタ通過率の異なる光学フィルタの領域形成が容易である。
【0090】
図4(b)の光学フィルタ部601は、光学フィルタ部601において、透明基板200の表面にフィルタ機能の所定の通過特性を有する被膜612が形成された上に、所定の図形パターンによる反射被膜611が形成される。反射被膜611は、複数の円形部分とその周囲部分となるように形成される。つまり、図4(b)の光学フィルタ部601では、フィルタ通過率の異なる部分領域(通過特性被膜612の領域と反射被膜611の領域)が複数の円形部分とその周囲部分となるように形成される。本実施形態では、この複数の円形部分が開口であり、微小な寸法である。この微小な寸法とは、例えば、照射領域650の直径等の最大寸法に対して、開口613の直径等が1/5又は1/10よりも小さい寸法である場合である。
【0091】
図5は、本発明に係る第1実施形態の光源装置における主要部の他の例を示す平面図あり、(a)が同直径の微小開口を間隔を異ならせて光学フィルタ部の部分領域をリボルバ状に配置した場合を示し、(b)が直径を異ならせた微小開口を同間隔に設けた光学フィルタ部の部分領域をリボルバ状に配置した場合を示す。
【0092】
図5(a)では、円形の光学フィルタ520内に、第1部分領域521、第2部分領域522、及び、第3部分領域523が、リボルバ(回転式弾倉)状の配置で形成されている。第1部分領域521には、反射被膜が、複数の微小開口561を除いて形成されている。各微小開口561は、上下左右に隣接する他の開口561と間隔565だけ離間して形成されている。同様に第2部分領域522には、反射被膜が、複数の微小開口562を除いて形成されている。こちらの各微小開口562は、上下左右に隣接する他の開口562と間隔566だけ離間して形成されている。さらに第3部分領域523には、反射被膜が、複数の微小開口563を除いて形成されている。この各微小開口563は、上下左右に隣接する他の開口563と間隔567だけ離間して形成されている。
【0093】
図5(a)では、光学フィルタ520内の円形の微小開口561と微小開口562と微小開口563の直径寸法は同じであるが、各間隔565と間隔566と間隔567は、この順に広くなっている。その結果、第1部分領域521の反射被膜は第2部分領域522より少なく、第2部分領域522の反射被膜は第3部分領域523より少なくなっている。従って光のフィルタ通過率は、第1部分領域521よりも第2部分領域522の方が少なく、第2部分領域522よりも第3部分領域523の方が少ない。光学フィルタ520は、例えば第1駆動手段12等の駆動装置により円形プーリ等を介して外周を回すことで回転させることができ、照射領域550に対して、第1部分領域521、第2部分領域522、及び、第3部分領域523から所望の通過率の領域を選択することができる。
【0094】
図5(b)でも、円形の光学フィルタ530内に、第1部分領域531、第2部分領域532、及び、第3部分領域533が、リボルバ(回転式弾倉)状の配置で形成されている。第1部分領域531には、反射被膜が、複数の微小開口571を除いて形成されている。各微小開口571は、上下左右に隣接する他の開口571と間隔575だけ離間して形成されている。同様に第2部分領域532には、反射被膜が、複数の微小開口572を除いて形成されている。こちらの各微小開口572は、上下左右に隣接する他の開口572と間隔576だけ離間して形成されている。さらに第3部分領域533には、反射被膜が、複数の微小開口573を除いて形成されている。この各微小開口573は、上下左右に隣接する他の開口573と間隔575だけ離間して形成されている。
【0095】
図5(b)では、光学フィルタ530内の円形の微小開口571と微小開口572と微小開口573の直径寸法は異なっており、各開口の中心間の距離は同じことから、相対的に各間隔575と間隔576と間隔577は、この順に狭くなっている。その結果、第1部分領域531の反射被膜は第2部分領域532より多く、第2部分領域532の反射被膜は第3部分領域533より多くなっている。従って光のフィルタ通過率は、第1部分領域531よりも第2部分領域532の方が多く、第2部分領域532よりも第3部分領域533の方が多い。光学フィルタ530も、例えば第1駆動手段12等の駆動装置により円形プーリ等を介して外周を回すことで回転させることができ、照射領域550に対して、第1部分領域531、第2部分領域532、及び、第3部分領域533から所望の通過率の領域を選択することができる。
【0096】
図6は、本発明に係る第1実施形態の光源装置における主要部の変形例を示す側面図あり、(a)が光学フィルタ部が透過型である場合を示し、(b)が光学フィルタ部が反射型である場合を示し、(c)が異なる特性の透過型の光学フィルタ部を直列に配置した場合を示す。
【0097】
図6(a)は、通過光が光学フィルタ501を透過する場合を示し、通過光の光軸700は光学フィルタ501の一方の面から他方の面に貫通して延伸されている。この場合の反射被膜には、複数の微小開口が設けられて、透過する光の光量を調整している。
【0098】
それに対して図6(b)は、通過光が光学フィルタ502の表面で反射する場合を示し、通過光の光軸700は光学フィルタ501の一方の面で反射しており、他方の面には貫通しない。この場合の反射被膜には、複数の微小開口が設けられるか、微小開口の内側に反射被膜が設けられて、透過する光の光量を調整している。
【0099】
また図6(c)は、通過光が特性の異なる3枚の光学フィルタ503、504、505を透過する場合を示し、通過光の光軸700は光学フィルタ503の一方の面から入射し、光学フィルタ505の他方の面から出射している。この場合の各光学フィルタは、図6(a)と同様の構成でよいが、各フィルタの光学特性及び反射被膜により透過する光の質と光量を調整している。
【0100】
各円形部分同士の間隔はフィルタ通過率に応じて変更すればよい。このように被膜を形成した場合、複数の輝線波長に対する通過特性が各々異なる複数の光学フィルタの各々にフィルタ通過率が異なる部分領域を円形部分とその周囲部分となるように設けるので、円形部分の間隔又は直径を変更することで、フィルタ通過率の異なる光学フィルタの領域形成が容易である。
【0101】
図7(a)の光学フィルタ部201は、所定の図形パターンによる反射被膜211が形成される。反射被膜211は、中心から放射状に周辺部に達する帯状に交互に形成される。つまり、図7(a)の光学フィルタ部201では、フィルタ通過率の異なる部分領域(被膜212の領域と反射被膜211の領域)が中心から放射状に周辺部に達する帯状に交互に形成される。帯状の間隔はフィルタ通過率に応じて変更すればよい。光学フィルタのフィルタ通過率は個別に調整することができる。
【0102】
図7(b)の光学フィルタ部202も、所定の図形パターンによる反射被膜221が形成される。反射被膜221は、複数の直径が異なる同心円のリング状に交互に形成される。つまり、図7(b)の光学フィルタ部202では、フィルタ通過率の異なる部分領域(被膜222の領域と反射被膜221の領域)が複数の直径が異なる同心円のリング状に交互に形成される。同心円の間隔はフィルタ通過率に応じて変更すればよい。光学フィルタのフィルタ通過率は個別に調整することができる。
なお、中間のフィルタ通過率を有する光学フィルタ部は、上記に限らず、例えば、円形に放射方向の線を組み合わせた千鳥格子や多辺角形、網状などを利用でき、形状、数量、サイズ、配置、及び、それらの組合を任意に選択することができる。
【0103】
<第2実施形態>
図8は、本発明に係る第2実施形態の光源装置における主要部の一例を示す斜視図あり、(a)が光学フィルタ部が円形である場合を示し、(b)が光学フィルタ部が方形である場合を示す。
【0104】
図8(a)の上側に示した光学フィルタ部5は、円形の透明基板120上の表面に部分領域122と部分領域123が設けられ、輝線波長の光に対して所定の通過特性を有する通過特性被膜126が透明基板120上の表面の全領域又は反射被膜127が形成されない領域に形成され、さらに、その基板表面上に光を遮断する反射被膜127が、部分領域122と部分領域123とで異なるフィルタ通過率となるように形成される。
【0105】
光学フィルタ部5の各部分領域122、123毎に異なるフィルタ通過率を有する反射被膜127は、各々のフィルタ通過率を達成できるように形成された所定の図形パターンをマスキングに用いて、反射被膜127が形成される領域と反射被膜127が形成されない領域の面積比率が異なるように形成されることにより、フィルタ通過率を異ならせることができる。本実施形態の反射被膜127は、対応する波長の光を反射する反射被膜である。反射被膜127には、金属材料等を被膜に用いることができるので、フィルタ通過率が異なる部分領域の形成が容易にすることができる。
【0106】
図8(a)の下側に示した角度−通過率特性グラフは、横軸が回転角度、縦軸が通過率を示し、例えば、照射領域121が、全面に反射被膜127が形成された部分領域123内から、全面に通過特性被膜126が形成された部分領域122内に移動する場合を示している。このように光学フィルタ部5は回転させることで、照射領域121における部分領域122と部分領域123の面積の割合を変え、輝線波長の光の通過率を制御することができる。
【0107】
図8(b)の上側に示した光学フィルタ部5は、矩形の透明基板150上の表面に部分領域152と部分領域153が設けられ、輝線波長の光に対して所定の通過特性を有する通過特性被膜156が透明基板150上の表面の全領域又は反射被膜157が形成されない領域に形成され、さらに、その基板表面上に光を遮断する反射被膜157が、部分領域152と部分領域153とで異なるフィルタ通過率となるように形成される。
【0108】
光学フィルタ部5の各部分領域152、153毎に異なるフィルタ通過率を有する反射被膜157は、各々のフィルタ通過率を達成できるように形成された所定の図形パターンをマスキングに用いて、反射被膜157が形成される領域と反射被膜157が形成されない領域の面積比率が異なるように形成されることにより、フィルタ通過率を異ならせることができる。本実施形態の反射被膜157は、対応する波長の光を反射する反射被膜である。反射被膜157には、金属材料等を被膜に用いることができるので、フィルタ通過率が異なる部分領域の形成が容易にすることができる。
【0109】
図8(b)の下側に示した角度−通過率特性グラフは、横軸が回転角度、縦軸が通過率を示し、例えば、照射領域151が、全面に反射被膜157が形成された部分領域153内から、全面に通過特性被膜156が形成された部分領域152内に移動する場合を示している。このように光学フィルタ部5は直線的(例えば垂直)に移動させることで、照射領域151における部分領域152と部分領域153の面積の割合を変え、輝線波長の光の通過率を制御することができる。
【0110】
図9は、本発明に係る第2実施形態の光源装置における複数の光学フィルタ部を用いる場合の一例を示す斜視図であり、(a)が基板の入射側表面の被膜を形成した部分領域と形成しない部分領域で2等分した場合を示し、(b)が基板の入射側表面の被膜を形成した部分領域と形成しない部分領域で4等分した場合を示し、(c)が基板の入射側表面のフィルタ通過率が3段階に異なるレベルの被膜を形成した部分領域及び形成しない部分領域で4等分した場合を示す。
【0111】
図9(a)の光学フィルタ部は、第1光学フィルタ部5と第2光学フィルタ部6と第3光学フィルタ部7を有し、第1光学フィルタ部5は、第1透明基板120上の表面に第1部分領域122と第2部分領域123が設けられ、第1輝線波長の光に対して所定の通過特性を有する第1通過特性被膜126が第1透明基板120上の表面の全領域又は第1反射被膜127が形成されない領域に形成され、さらに、その基板表面上に光を遮断する第1反射被膜127が、第1部分領域122と第2部分領域123とで異なるフィルタ通過率となるように形成される。
【0112】
第1光学フィルタ部5の各部分領域122、123毎に異なるフィルタ通過率を有する第1反射被膜127は、各々のフィルタ通過率を達成できるように形成された所定の図形パターンをマスキングに用いて、第1反射被膜127が形成される領域と第1反射被膜127が形成されない領域の比率が異なるように形成されることにより、フィルタ通過率を異ならせることができる。本実施形態の第1反射被膜127は、対応する波長の光を反射する反射被膜である。第1反射被膜127には金属材料等を被膜に用いることができるので、フィルタ通過率が異なる部分領域の形成が容易にすることができる。
【0113】
第2光学フィルタ部6は、第2透明基板130上の表面に第3部分領域132と第4部分領域133が設けられ、第1輝線波長の光と異なる第2輝線波長の光に対して所定の通過特性を有する第2通過特性被膜136上の表面の全領域又は第2反射被膜137が形成されない領域に形成され、さらに、その基板表面上に光を遮断する第2反射被膜137が、第3部分領域132と第4部分領域133とで異なるフィルタ通過率となるように形成される。
【0114】
第2光学フィルタ部6の各部分領域132、133毎に異なるフィルタ通過率を有する第2反射被膜137は、各々のフィルタ通過率を達成できるように形成された所定の図形パターンをマスキングに用いて、第2反射被膜137が形成される領域と第2反射被膜137が形成されない領域の比率が異なるように形成されることにより、フィルタ通過率を異ならせることができる。本実施形態の第2反射被膜137は、対応する波長の光を反射する反射被膜である。第2反射被膜137を反射被膜にすることで、金属材料等を被膜に用いることができるので、フィルタ通過率が異なる部分領域の形成が容易にすることができる。
【0115】
第3光学フィルタ部7は、第3透明基板140上の表面に第5部分領域142と第6部分領域143が設けられ、第1輝線波長及び第2輝線波長の光と異なる第3輝線波長の光に対して所定の通過特性を有する第3通過特性被膜146上の表面の全領域又は第3反射被膜147が形成されない領域に形成され、さらに、その基板表面上に光を遮断する第3反射被膜147が、第5部分領域142と第6部分領域143とで異なるフィルタ通過率となるように形成される。
【0116】
第3光学フィルタ部7の各部分領域142、143毎に異なるフィルタ通過率を有する第3反射被膜147は、各々のフィルタ通過率を達成できるように形成された所定の図形パターンをマスキングに用いて、第3反射被膜147が形成される領域と第3反射被膜147が形成されない領域の比率が異なるように形成されることにより、フィルタ通過率を異ならせることができる。本実施形態の第3反射被膜147は、対応する波長の光を反射する反射被膜である。第3反射被膜147を反射被膜にすることで、金属材料等を被膜に用いることができるので、フィルタ通過率が異なる部分領域の形成が容易にすることができる。
【0117】
第1光学フィルタ部5と第2光学フィルタ部6と第3光学フィルタ部7は、各々個別に、例えば、回転ロータ等の駆動装置と接触又は結合され、駆動させることができる。
【0118】
本実施形態の駆動手段は、第1駆動手段12、第2駆動手段13、及び、第3駆動手段14を有する。第1駆動手段12は、第1光学フィルタ部5を回転駆動することにより、第1光学フィルタ部5における照射領域121の位置を、第1部分領域122内から第2部分領域123内まで、その両者間の境界線を横切って連続的に移動させることができるように駆動することができる。照射領域121は光軸700を中心とする光が通過する領域である。
【0119】
第2駆動手段13は、第1光学フィルタ部5を回転駆動することにより、第2光学フィルタ部6における照射領域131の位置を、第3部分領域132と第4部分領域133の境界線を横切って連続的に移動させることができるように駆動することができる。
第3駆動手段14は、第1光学フィルタ部5を回転駆動することにより、第3光学フィルタ部7における照射領域141の位置を、第5部分領域142と第6部分領域143の境界線を横切って連続的に移動させることができるように駆動することができる。
【0120】
通過波長制御部11は、第1駆動手段12と第2駆動手段13と第3駆動手段14の駆動量を各々制御することで、各光学フィルタ部5、6、7の光の通過量を各々制御する。
【0121】
図9(b)の第1光学フィルタ部5は、図9(a)の光学フィルタ部では、基板表面を2分割するように第1通過特性被膜126と第1反射被膜127を形成していたのに対し、基板表面を4分割するように第1通過特性被膜126と第1反射被膜127を形成している。4分割した場合には、2分割の場合よりも駆動距離を少なく制御することができる。第2光学フィルタ部6及び第3項獄フィルタ部6も同様な構成である。
【0122】
図9(c)の光学フィルタ部は、第1反射被膜127を有していない第1部分領域122と、第1反射被膜127に覆われた第2部分領域123との中間の、0%〜100%の任意の値のフィルタ通過率を有する部分領域122〜125を設けている。ここでは、第1光学フィルタ部5に、当該透明基板120上の表面に3つ以上の部分領域を設け、その部分領域122、123、124、125の第1反射被膜127、128、129のフィルタ通過率が各々異なるように形成している。第2光学フィルタ部6及び第3項獄フィルタ部6も同様な構成である。
【0123】
このように本実施形態の光学フィルタ部は、基板表面の面積における所定波長の光を反射する一部分に形成された第1部分と、その光を通過させる残りの部分である第2部分が設けられ、その光の照射領域の位置が第1部分と第2部分との間で自由に移動される。
【0124】
図10は、本発明に係る第1実施形態の光源装置の各光学フィルタ部単体における反射部分領域の面積比率が変化することによるフィルタ通過率の変化を示す図であり、(a)が通過する面積比率が概略で100%、75%、50%、25%の各場合の第1光学フィルタ部の単体特性を示し、(b)が通過する面積比率が概略で100%、75%、50%、25%の各場合の第2光学フィルタ部の単体特性を示す。
図11は、本発明に係る第1実施形態の光源装置の第1光学フィルタ部と第2光学フィルタ部と組み合わせた場合のフィルタ通過率と波長特性の関係を示す図であり、(a)が通過する面積比率が100%の第2光学フィルタ部と50%の第1光学フィルタ部と組み合わせた場合のフィルタ通過率を示し、(b)が(a)の場合の波長特性を示す。
図12は、本発明に係る第1実施形態の光源装置の第1光学フィルタ部と第2光学フィルタ部と組み合わせた場合のフィルタ通過率の変化と波長特性の変化とをそれらの関係を含めて示す図であり、(a)通過する面積比率が100%の第2光学フィルタ部と、通過する面積比率が0%〜100%の間で変化する第1光学フィルタ部と組み合わせた場合のフィルタ通過率を示し、(b)が(a)の場合の波長特性の変化を示す。
【0125】
例えば、第1光学フィルタ部5が図10(a)の特性を有し、第2光学フィルタ部6が図10(b)の特性を有する場合、両フィルタを通過光に対して直列に配置した場合には、従来の構成及び方法のフィルタでは、図10(a)の特性は得ることができるが、図10(b)の特性を有効にすることができなかった。
【0126】
それに対して、本実施形態では、図10(a)の特性を有する第1光学フィルタ部5のフィルタ通過率を0%〜100%の間の任意の比率に制御することができ、例えば、第1光学フィルタ部5のフィルタ通過率を50%とする。その場合の、第1光学フィルタ部と第2光学フィルタ部と組み合わせた場合のフィルタ通過率が図11(a)に示され、波長特性が図11(b)に示される。この図11(b)から本実施形態では、複数の輝線のうちの任意の輝線のみの強度(フィルタ通過率)を変更できることがわかる。
【0127】
次に、図12(a)では、図11(a)の第1光学フィルタ部5の通過する面積比率を0%〜100%の間で変化させた場合を示し、図12(b)では、その場合の輝線の強度変化を示している。この図12(a)及び図12(b)から本実施形態では、複数の輝線のうちの任意の輝線のみを任意の強度(フィルタ通過率)に制御できることがわかる。
【0128】
図12(a)及び図12(b)では、左端の第1の輝線のみを変動させた場合を示しているが、本実施啓太では、第1フィルタ装置5、第2フィルタ装置6、及び、第3フィルタ装置7の全てでフィルタ通過率を任意に設定できるので、図3(a)〜(d)に示した相対波長を容易に得ることができることがわかる。
【0129】
従って、本実施形態では、輝線波長に対して所定の通過特性を有する光学フィルタにフィルタ通過率が異なる部分領域を設け、その光学フィルタにおける光の照射領域の位置を各部分領域の境界線を横切って連続的に制御することにより、露光用の紫外線の複数の輝線波長のうちの第1輝線波長(i線)と第2輝線波長(h線)のフィルタ通過率(強度)を個別に実用レベルで制御することができる。例えば、h線フィルタ通過率100%に対してi線フィルタ通過率30%(70%カット)、又は、h線フィルタ通過率20%に対してi線フィルタ通過率100%等のように、指定した波長比率(照度比率)を自由に制御することができ、複数の輝線波長の強度を調整することができる。従って、本実施形態の光学フィルタを用いた露光装置では、レジストパターンの断面形状における側面のテーパ角度制御を容易に実施できる。また、本実施形態の光学フィルタは、比較的容易に製造することができ、コストアップを抑制できる。
【0130】
<第3実施形態>
上記した第1の実施形態では、フィルタが円形でフィルタ通過率が異なる領域を回転移動させることで、輝線波長毎に任意のフィルタ通過率を得る場合を示したが、フィルタが方形で直線移動させることでも、同様に輝線波長毎に任意のフィルタ通過率を得ることができる。その場合を、以下に第3実施形態として示す。なお、以下の説明においては、第1実施形態と同様な構成及び方法については重複する記載を省略し、第1実施形態とは異なる構成及び方法についてのみ記載する。
【0131】
図13は、本発明に係る第3実施形態の光学フィルタ装置における主要部の一例を示す斜視図であり、(a)が基板の入射側表面の被膜を形成した部分領域と形成しない部分領域で2等分した場合を示し、(b)が基板の入射側表面の被膜を形成した部分領域と形成しない部分領域で4等分した場合を示し、(c)が基板の入射側表面のフィルタ通過率が3段階に異なるレベルの被膜を形成した部分領域及び形成しない部分領域で4等分した場合を示す。
【0132】
図13(a)では、第1光学フィルタ部5と第2光学フィルタ部6と第3光学フィルタ部7は、各々を個別に直線的に移動させることが可能なように第1駆動手段12と第2駆動手段13と第3駆動手段14に取り付けられる。第1駆動手段12は、第1光学フィルタ部5を直線的に駆動することにより、光の照射領域151の位置を第1部分領域152と第2部分領域153の境界線を横切って連続的に移動させることができるように駆動することができる。
【0133】
第2駆動手段13は、第2光学フィルタ部6を直線的に駆動することにより、光の照射領域161の位置を第3部分領域162と第4部分領域163の境界線を横切って連続的に移動させることができるように駆動することができる。
第3駆動手段14は、第3光学フィルタ部7を直線的に駆動することにより、光の照射領域171の位置を第5部分領域172と第6部分領域173の境界線を横切って連続的に移動させることができるように駆動することができる。
【0134】
図13(b)の光学フィルタ部は、図13(a)の第1光学フィルタ部5では、基板表面を2分割するように第1通過特性被膜156と第1反射被膜157を形成していたのに対し、基板表面を4分割するように第1通過特性被膜156と第1反射被膜157を形成している。4分割した場合には、2分割の場合よりも駆動距離を少なく制御することができる。第2光学フィルタ部6及び第3光学フィルタ部6も同様な構成である。
【0135】
図13(c)の光学フィルタ部は、第1反射被膜157を有していない第1部分領域152と、第1反射被膜157に覆われた第2部分領域153との中間の、0%〜100%の任意の値のフィルタ通過率を有する部分領域152〜125を設けている。ここでは、第1光学フィルタ部5に、当該透明基板120上の表面に3つ以上の部分領域を設け、その部分領域122、123、124、125の第1反射被膜127、128、129のフィルタ通過率が各々異なるように形成している。第2光学フィルタ部6及び第3項獄フィルタ部6も同様な構成である。
このように本実施形態では、光学フィルタの各々のフィルタ通過率を直線的な移動により制御するので、モータと回転運動を直線運動に変換するラックとピニヨン、又は、リニアモータ等により照射領域の位置を容易に制御することができる。
【0136】
また、本実施形態でも、反射被膜の表面に複数の欠落部を設けて中間のフィルタ通過率を有する光学フィルタ部を使用することができる。
【0137】
<第4実施形態>
上記した第1実施形態と第3実施形態では、光学フィルタ部がハイパスフィルタの場合の組み合わせについて説明したが、近年の光学フィルタとしては、バンドパスフィルタ、複数バンドのバンドパスフィルタ、及び、バンドパスとハイパスフィルタを組み合わせた光学フィルタの製造が可能になっている。そのような特殊な光学フィルタを利用した場合を、以下に第4実施形態として示す。なお、以下の説明においては、第1実施形態及び第3実施形態と同様な構成及び方法については重複する記載を省略し、第1実施形態及び第3実施形態とは異なる構成及び方法についてのみ記載する。
【0138】
図14は、本発明に係る第1実施形態の光源装置の特殊な特性の第2光学フィルタ部のフィルタ通過率の変化と波長特性の変化とをそれらの関係を含めて示す図であり、(a)が面積比率が0%〜100%の間で変化する特殊な特性の第2光学フィルタ部のフィルタ通過率を示し、(b)が面積比率が0%〜100%の間で変化する第2光学フィルタ部のフィルタ通過率の変化を示し、(c)が(b)の場合の波長特性の変化を示す。
【0139】
本実施形態では、第2光学フィルタ部6の第1通過特性被膜が、図14(a)に示した第1輝線波長の光に対するバンドパスフィルタと第2輝線波長の光に対するハイパスフィルタの通過特性を有する。つまり、複数の光学フィルタの少なくとも一つが1波長のバンドパスと他の波長のハイパスの複合通過特性を有している。そして第1光学フィルタ部5の第1通過特性被膜が図10(a)の特性であり33%のフィルタ通過率とする。その場合の第1光学フィルタ部5と第2光学フィルタ部6を光の進行方向に直列に組み合わせた特性が図14(b)である。そしてその場合の各輝線部の波長特性が図14(c)に示される。このように特殊な特性の光学フィルタを利用すれば、さらに多様で複雑な波長と光強度への対応が可能になる。
【0140】
<第5実施形態>
図15は、本発明に係る第5実施形態の光源装置における主要部の他の例を示す平面図ある。
図15に示した光学フィルタ部5は、円形の透明基板120上の表面に輝線波長の光を通過させる部分領域122と、その光を反射する部分領域123に加えて、所定の割合の光量を通過させる複数の微小開口564が形成された部分領域524が設けられている。部分領域122と部分領域123とでは異なるフィルタ通過率となるように、部分領域122には、輝線波長の光に対して所定の通過特性を有する通過特性被膜126が透明基板120上の表面に形成され、部分領域123にはその光を遮断する反射被膜127が形成される。部分領域524の各微小開口564間の間隔は、光学フィルタ部5の回転角度位置により異なっており、部分領域122から時計回りに部分領域123に向かうに従い、徐々に間隔が狭くなるように形成されている。このように光学フィルタ部5を形成することで、光学フィルタ部5の回転角度により、第1実施形態と第2実施形態の両方の特性を備える光学フィルタを得ることができる。
【0141】
本実施形態では、本発明の光学フィルタを備えた光源装置を露光装置に用いる場合を示したが、例えば、波長多重通信(WDM)分野における、任意の波長の光を選択的に取り出す波長可変フィルタとしても利用することができる。なお、本発明は、上述の実施の形態例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば、種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0142】
1 投影露光装置、
2 光源、
3 反射鏡、
4 コリメータレンズ、
5 第1光学フィルタ部、
6 第2光学フィルタ部、
7 第3光学フィルタ部、
8 照明均一化手段、
9 集光レンズ、
10 光源装置、
11 通過波長制御部、
12 第1駆動手段、
13 第2駆動手段、
14 第3駆動手段、
15 フォトマスク側顕微鏡、
20 フォトマスク、
25 マスクマーク、
30 XY独立倍率補正部、
40 可動板、
50 投影光学系、
60 ステージ、
65 基板側顕微鏡、
70 マーク計測部、
80 制御部、
90 投影倍率制御部、
100 プリント基板、
105 アライメントマーク、
120 第1透明基板、
121 照射領域
122 第1部分領域、
123 第2部分領域、
126 第1通過特性被膜、
127 第1反射被膜、
130 第2透明基板、
132 第3部分領域、
133 第4部分領域、
136 第2通過特性被膜、
137 第2反射被膜、
140 第3透明基板、
142 第5部分領域、
143 第6部分領域、
146 第3通過特性被膜、
147 第3反射被膜、
150 (通過光の)光軸、
151 照射領域
122 第1部分領域、
123 第2部分領域、
126 第1通過特性被膜、
127 第1反射被膜、
200 透明基板、
500 光学フィルタ部、
501 光学フィルタ部、
511、611 反射被膜、
512 通過特性被膜、
513、613 開口、
520 光学フィルタ、
521 第1部分領域、
522 第2部分領域、
523 第3部分領域、
524 部分領域、
550、650 照射領域、
561、562、563、564 微小開口、
565、566、567、568 間隔、
600、601 光学フィルタ部、
700 光軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の輝線を有する光束を発生する光源が発生した光束を凹面鏡で集光し、該集光された光束から光学フィルタ装置を有する選択手段で所定波長の光束を選択し、該所定波長の光束を照明対象物に照射する光源装置であって、
該光学フィルタ装置には、前記輝線スペクトルの少なくとも一つの輝線の波長の光を遮断する反射被膜が、前記光束を反射させるか又は透過させて通過させる複数の開口を有するように設けることで、前記輝線の波長の光のフィルタ通過率を制御した光学フィルタ部を有し、
該複数の開口の最大寸法は、前記所定波長の光束の照射面内に複数の開口が配置可能である微小な寸法であり、
前記選択された所定波長の光束における少なくとも一つの特性を、前記微小な開口の形状、間隔及び数により決定する
ことを特徴とする光源装置。
【請求項2】
前記光学フィルタ部は、
前記開口の形状、間隔若しくは数の少なくとも1つが異なる複数の部分領域を有し、
前記光束の照射面を一の前記部分領域から他の前記部分領域に移動させるように、前記光学フィルタ部を可動させる駆動手段を有する
ことを特徴とした請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
複数の輝線を有する光束を発生する光源が発生した光束を凹面鏡で集光し、該集光された光束から光学フィルタ装置を有する選択手段で所定波長の光束を選択し、該所定波長の光束を照明対象物に照射する光源装置であって、
該光学フィルタ装置には、少なくとも一つの輝線の波長の光を遮断する反射被膜を一部に設け、該反射被膜を有する部分領域と、有していない部分領域の少なくとも2つの部分領域を隣接させて設けた光学フィルタ部と、
前記光束の照射面における一の前記部分領域と他の前記部分領域の面積比率が変わるように、前記光学フィルタ部を移動させる駆動手段を有する
ことを特徴とする光源装置。
【請求項4】
前記光学フィルタ装置を通過した光束により前記照明対象物の各部を照明する照度を均一化する照明均一化手段を有する
ことを特徴とした請求項5に記載の光源装置。
【請求項5】
前記駆動手段は、前記光学フィルタ部を回転駆動することにより前記各部分領域を移動させる
ことを特徴とした請求項1乃至4の何れかに記載の光源装置。
【請求項6】
前記駆動手段は、前記光学フィルタ部を直線駆動することにより前記各部分領域を移動させる
ことを特徴とした請求項1乃至4の何れかに記載の光源装置。
【請求項7】
前記光学フィルタ装置は、少なくとも前記光束に対する光学的特性が異なる複数の前記光学フィルタ部を有し
各光学フィルタ部は、前記光束の光軸に直列に配置される
ことを特徴とした請求項1乃至6の何れかに記載の光源装置。
【請求項8】
前記所定波長の光束は、前記光源が発生する光束が有する輝線であるi線、h線、g線の少なくとも何れか一つの波長を含む
ことを特徴とした請求項1〜7に記載の光源装置。
【請求項9】
請求項1乃至8の光源装置の光学フィルタ装置を用いて所定波長の光束を選択し、
該所定波長の光束をフォトマスク上に形成された所定のパターンに照射し、
前記フォトマスクを通過した前記所定波長の光束を照明光として前記ポジレジスト上に照射する
ことを特徴とした露光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−22529(P2011−22529A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−169832(P2009−169832)
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【出願人】(501466938)株式会社目白プレシジョン (31)
【Fターム(参考)】