説明

光焼結及び/またはレーザー焼結を強化するためのバッファ層

電子部品間に電気を伝えるための配線を製造するために、基板上に導電線を堆積させる。基板上にパターン形成された金属層が形成され、次いで低熱伝導率を有する材料の層が、パターン形成された金属層及び基板上に被覆される。低熱伝導率を有する材料の層を通るビアが形成されることによって、パターン化された金属層の一部が露出される。次いで、導電性インクの膜が低熱伝導率を有する材料の層上及びビア内に被覆されることによって、パターン化された金属層の前記部分が被覆され、その後焼結される。パターン化された金属層の部分に被覆された導電性インクの膜は、低熱伝導率を有する材料の層上に被覆された導電性インクの膜ほど、焼結由来のエネルギーを吸収しない。低熱伝導率を有する材料の層は、ポリイミドなどのポリマーであり得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国特許仮出願第61/174,758号及び第61/163,894号の優先権を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
マイクロエレクトロニクス及び半導体パッケージ産業は、プリンタブルエレクトロニクスにシフトし始めている。電子回路は、互いに電気的に接続されたさまざまな部品を備えている。このような異なる部品間の電気的接続は、基板上に導電インクで印刷可能な導電金属線からなり得る。導電性にするために、インクは、基板上に堆積された後に処理及び焼結される。熱焼結では、インク中のナノ粒子を溶かすために高温(例えば250℃以上)が使用される。光及びレーザー焼結では、下部の基板を損傷しないように低温で非常に短期間(例えばマイクロ秒)でナノ粒子を溶かすために、非常に高強度のランプ/レーザーが使用される。しかしながら、光/レーザー焼結工程では、ナノ粒子が効果的にエネルギーを吸収し、熱エネルギーが基板へと散逸する前に焼結するために、基板に低熱伝導性材料を使用しなければならないという制限がある。言い換えると、これらの用途で使用することができる基板は、低熱伝導性材料に非常に限定されることになる。
【0003】
一方で、低熱伝導性基板は、フレキシブルプリンタブルエレクトロニクスに使用され得る。ポリエチレン(PE)、ポリエステル(PET)などの低融点材料では、ナノ粒子インクの適切な焼結が妨げられ、基板が損傷し、結果として抵抗が非常に高くなることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願第2008/0286488号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態は、ポリイミド基板上の金属ナノ粒子を効果的に焼結することによって、バルク材料に近い、非常に高い導電性を膜にもたらすための光焼結について開示する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】4つのシリコンウエハ上で光焼結された銅インクを示すデジタル写真である。
【図2】光焼結される前の銅インクを示すデジタル写真である。
【図3】光焼結された後の銅インクを示すデジタル写真である。
【図4】カプトン基板上のレーザー焼結された線を示すデジタル写真である。
【図5】図4のレーザー焼結された線を示す拡大デジタル写真である。
【図6】レーザーによって焼結された銅インクの抵抗が、レーザー出力に反比例するだけでなく、ポリイミドからなるバッファ層の厚さにも反比例することを示すグラフである。
【図7】さまざまな回転速度で測定された硬化後のポリイミドの厚さを示すグラフである。
【図8】焼結銅膜の抵抗がポリイミドの厚さに反比例することを示すグラフである。
【図9】銅インク膜のポリイミドへの接着力がポリイミドの厚さに比例することを示すグラフである。
【図10】レーザー書き込み線幅がレーザー出力密度に比例することを示すグラフである。
【図11】図11Aから11Fは、本発明の実施形態による工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
一方で、光焼結工程は、セラミック及びシリコンウエハなどの高熱伝導率を保有する基板上に被覆されたナノ粒子インク上ではうまく機能しない。表1は、さまざまな材料の熱伝導率を示す。
【0008】
【表1】

【0009】
ナノ粒子がより効果的に溶融するように、光焼結工程の間にナノ粒子から熱エネルギー散逸を分離するために、ポリイミドなどの低熱伝導性材料を、セラミック及びシリコンウエハなどの他の高熱伝導性基板上への被覆材料として使用することができる。熱散逸の速度は、低熱伝導性材料(例えばポリイミド膜)の厚さに依存する。
【0010】
本発明を実施する方法を示すために、以下の実験を行った。3つのウエハをそれぞれ1、1.5、及び2.3マイクロメートル厚のDuPont社のPI−2610ポリイミドでスピンコートし、350℃で30分間熱硬化した。未処理のシリコンウエハ(ウエハ1)を比較のために使用した。ドローダウン法を使用して4つのウエハ全てに銅インクを被覆した。100℃で60分間の乾燥工程の後、各ウエハを3つの異なるエネルギーレベルで個別に焼結した3つの領域に分割した。各領域及び各ウエハの抵抗を電圧計で測定した結果を表2に示す。表2は、シリコンウエハ上のさまざまな被覆厚のポリイミドを光焼結した後の銅膜の電気抵抗を示す。
【0011】
【表2】

【0012】
ウエハ4の領域3以外、4つのウエハの全ての領域において、光焼結後に抵抗の変化は見られなかった。図1に示すように、ウエハ4の領域3では、最も高いエネルギーレベルで金属色に変化が見られた。該部分は、激しい吹き出し(blow off)を有していた。周囲の部分には、導電性を有する銅破片が残されていた。これは、ポリイミド材料が断熱材として使用され得ることの明確な根拠である。ポリイミドの厚さは、3マイクロメートルを超え得る。ポリイミド及びシリコンの熱伝導率はそれぞれ、0.12及び148W/m.Kである。ポリイミド材料がないために、シリコン基板(ウエハ1)への熱散逸は非常に高速であり、銅ナノ粒子を焼結することが出来なかった。
【0013】
ウエハ1、2、及び3は全て高抵抗(20メガオーム超)を有する。図1に示すように、中央領域で20オームの抵抗を有するウエハ4では、銅ナノ粒子が溶融、焼結し、銅色に変化した。従って、低熱伝導性材料の厚さが厚いほど、優れた断熱材として使用することができる。
【0014】
上記に記載した液体ポリイミドに加えて、乾燥ポリイミド膜をさらに利用した。銅インクを50マイクロメートルのポリイミド膜(カプトン)上に被覆した。図2に示すように、サンプルをシリコンウエハ及びcarbAL(登録商標)高熱伝導性ヒートシンク上に配置した。優れた熱的接触を確保するために、シリコングリースをカプトンとシリコンウエハとcarbALとの間に塗布した。サンプルは、単一ショットで同時に光焼結した。図3に示すように、銅は、非常に良好に焼結され、光沢のある銅色に変わった。カプトンが配置された材料には関係しなかった。少なくとも50マイクロメートル厚のポリイミドは、光焼結工程の熱エネルギー散逸を防止し、分離するために十分な厚さであったが、より導電線に望まれる導電率がより低い実施形態では、50マイクロメートル未満の厚さを利用することも可能である。
【0015】
さらに、上述のものと同一の組立を有するシリコンウエハ上でレーザー焼結を行った。レーザーは、830nmの波長及び800mWの出力を有する固体ダイオードである。図4及び5に示すように、焦点ビームサイズは15マイクロメートル径であり、コリメータ及び対物レンズで制御した。
【0016】
このレーザーは、ナノ粒子を焼結及び溶融させ、銅インクを導電性にするために十分な出力を有する。4つのシリコンウエハに、それぞれ1、1.5、2及び3マイクロメートルのさまざまな厚さのポリイミドを被覆し、未処理のシリコンウエハを比較用とした。図6に、レーザー出力と各ウエハの抵抗をプロットした。このグラフは、銅膜の導電性がポリイミドの厚さに比例し、レーザーによって生成された熱が、ポリイミドが被覆されていない未処理シリコンよりもポリイミドが被覆された基板に伝わりにくいことを示唆している。このことから、ポリイミド材料などの低熱伝導率を有するいかなる材料も断熱材として使用することが可能であり、光及びレーザー焼結工程を強化することが明確に証明されている。
【0017】
さらに、さまざまな厚さのポリイミドをシリコンウエハ上に被覆し、350℃で1時間硬化した。次いで、ドローダウンによって標準銅インクを被覆し、炉内で乾燥させ、光/レーザー焼結した。電気的測定を行い、銅インクサンプルの特性を明らかにした。
【0018】
DuPont社製の3種のポリイミド材料を使用して、シリコンウエハ上に1000、2000、3000、4000、及び5000rpmでスピンコートした。図7は、さまざまな回転速度で測定された硬化後のポリイミドの厚さを示すグラフである。各ウエハの範囲はそれぞれ1から20マイクロメートルであった。
【0019】
サンプルを調製した後、光及びレーザー焼結の両方を銅インク上で行った。異なる種類の焼結での抵抗及び接着性、並びにレーザー焼結での線幅を比較した。表3は、さまざまな厚さのポリイミドに同一のエネルギーレベルで光焼結したサンプルを示す。表4は、さまざまな厚さのポリイミドに一定の出力レベルでレーザー焼結したサンプルを示す。
【0020】
【表3】

【0021】
【表4】

【0022】
図8は、焼結後の銅膜の抵抗がポリイミドの厚さに反比例することを示すグラフである。抵抗の飽和点は、光焼結では約10マイクロメートルの場合であり、レーザー焼結では約5マイクロメートルの場合であった。光焼結の出力密度はレーザー焼結よりもずっと低く、抵抗がより高いことの理由が示される。
【0023】
図9は、銅インク膜の接着性がポリイミドの厚さに比例することを示すグラフである。いくつかのノイズがあるが、グラフから傾向は明確である。ポリイミドが厚いほど、接着性が高くなる。再度になるが、ポリイミドの厚さの臨界点は、光焼結では約10マイクロメートルの場合であり、レーザー焼結では約5マイクロメートルの場合である。
【0024】
図10は、レーザー書込み線幅がレーザー出力密度に比例することを示すグラフである。所与のレーザー出力では、レーザー書込み線幅はポリイミド膜厚に比例し、これらの工程でポリイミドが優れた断熱材であることのさらなる根拠となる。ポリイミドの厚さが増大すると同時に、銅インク表面上に蓄積されるレーザーエネルギー及び熱は、垂直方向にはそれ以上深く拡散しないが、横方向に拡散する。
【0025】
図11A〜11Fには、本発明の実施形態を実施するための工程を示す。電子回路がその上に搭載される基板1101を提供する。図11Bでは、周知の製造方法を使用して、少量の金属材料1102を基板1101上に所望のパターンに堆積する。図11Cでは、ポリイミドなどの低熱伝導性材料1103の層を金属線1102及び基板1101上に被覆する。堆積されるべき導電線のさらなるパターンを形成するために、材料1103を通るビア1104を形成し、金属線1102の一部を露出させる。図11Eでは、インクジェット装置1106によって銅ナノ粒子などの導電インク1105を、ビア1104によって露出された金属線1102及び基板1103上に堆積させる。図11Fでは、堆積された導電インクナノ粒子1105に光またはレーザー焼結工程を実施して導電線1107へと焼結させる。導電インクの堆積及び焼結工程は、特許文献1に開示されており、その内容は参照によりここに組み込まれる。
【0026】
1.光焼結工程の有効性は、金属ナノ粒子サイズだけでなく、基板の種類にも依存する。
2.効果的な光焼結は、300nm未満のナノ粒子によってもたらされる。
3.基板の熱伝導率は、金属インクの光焼結に影響を及ぼし得る。基板の熱伝導率が低いほど、ナノ粒子膜の導電性が優れる。
4.高熱伝導性基板は、効果的な光焼結工程のために、ポリイミドまたはポリマーなどの低熱伝導性材料で被覆することによって、調整及び分離することができる。
5.熱散逸を分離するために必要なポリイミド被膜の厚さは、約1〜50マイクロメートルである。
6.レーザー焼結及び光焼結の両方によって、シリコンウエハなどの高熱伝導性材料上で銅インクが導電膜となることが実証された。
7.高熱伝導性シリコンウエハ上での熱散逸が、ウエハ上に被覆されたさまざまな厚さのポリイミドで示された。低熱伝導性材料は、熱散逸の速度を落とし、光またはレーザー焼結を強化するためのバッファ層として使用することができる。
8.銅インクは、光焼結では、1x10−5Ω・cmの抵抗を有するシリコンウエハ上に被覆されたポリイミドの場合、レーザー焼結では、4x10−6Ω・cmの場合に良好に焼結され得る。
9.ポリイミド材料は、高熱伝導性基板上で断熱材として利用して、銅インク光及びレーザー焼結の効果を増大させることができるだけでなく、低融点の基板に適用して焼結工程の間に熱的損傷から基板を保護する断熱材としても利用することができる。
10.ポリイミド層及び金属線層は、多層回路として数回繰り返すことができる。
11.ポリイミド層は、誘電材料として使用することができ、キャパシタとして組み込まれることができる。
12.ナノ−銅インクは、二次元及び三次元チップパッケージ用途におけるコンタクト金属として上層導体で使用することができる。
【符号の説明】
【0027】
1101 基板
1102 金属材料
1103 低熱伝導性材料
1104 ビア
1105 導電インク
1106 インクジェット装置
1107 導電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に導電線を堆積する方法であって、
前記基板上に金属層をパターン状に堆積するステップと、
パターン形成された前記金属層及び前記基板上に低熱伝導率を有する材料の層を被覆するステップと、
前記低熱伝導率を有する材料の層上に導電性インクの膜を堆積するステップと、
前記導電性インクの膜を焼結するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記低熱伝導率を有する材料の層を通るビアを形成することによって、前記パターン形成された金属層の一部分を露出させるステップをさらに含み、前記導電性インクの膜を堆積するステップが、導電性インクの膜を前記ビア内に堆積することによって、前記パターン化された金属層の前記部分を前記導電性インクの膜で被覆するステップを有し、前記パターン化された金属層の前記部分を被覆する前記導電性インクの膜もまた焼結される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記パターン形成された金属層の前記部分上に被覆された導電性インクの膜が、前記低熱伝導率を有する材料の層上に被覆された導電性インクの膜よりも、焼結からのエネルギーを散逸しない、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記低熱伝導率を有する材料の層がポリマーを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記低熱伝導率を有する材料の層がポリイミドを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリイミドが少なくとも50マイクロメートルの厚さを有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記焼結を光焼結装置で実施する、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記焼結をレーザー焼結装置で実施する、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記レーザー焼結装置が、830nmの波長及び800mWの出力を有する固体ダイオードを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記固体ダイオードが直径15マイクロメートルの焦点ビームサイズを有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリイミドが少なくとも5マイクロメートルの厚さを有する、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
前記ポリイミドが少なくとも2.3マイクロメートルの厚さを有する、請求項5に記載の方法。
【請求項13】
前記基板がシリコンを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項14】
前記基板がセラミックを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項15】
前記基板が、前記低熱伝導率を有する材料の層より大きな熱伝導率を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記導電性インクの膜が銅ナノ粒子を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項17】
基板と、
前記基板上に堆積された金属線のパターンと、
前記基板、及び前記基板上に堆積された前記金属線のパターンの上に被覆された低熱伝導性材料の層であって、前記金属線のパターンの部分上に前記低熱伝導性材料の層を通るビアが形成された、低熱伝導性材料の層と、
前記基板上に被覆された前記低熱伝導性材料の層上に被覆された焼結導電インクの膜であって、前記焼結導電インクの膜が、前記低熱伝導性材料の層を通って形成されたビア内の金属線のパターンの部分上に被覆された、焼結導電インクの膜と、
を含む電子回路。
【請求項18】
前記基板が前記低熱伝導性材料の層より大きな熱伝導率を有する、請求項17に記載の電子回路。
【請求項19】
前記低熱伝導性材料の層がポリイミドを含む、請求項18に記載の電子回路。
【請求項20】
前記ポリイミドが少なくとも50マイクロメートルの厚さを有する、請求項19に記載の電子回路。
【請求項21】
前記焼結導電性インクが、光焼結装置で焼結された焼結銅ナノ粒子を含む、請求項19に記載の電子回路。
【請求項22】
前記焼結導電性インクが、レーザー焼結装置で焼結された焼結銅ナノ粒子を含む、請求項19に記載の電子回路。
【請求項23】
前記ポリイミドが少なくとも5マイクロメートルの厚さを有する、請求項19に記載の電子回路。
【請求項24】
前記ポリイミドが少なくとも2.3マイクロメートルの厚さを有する、請求項19に記載の電子回路。
【請求項25】
前記基板がシリコンを含む、請求項19に記載の電子回路。

【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図11D】
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【図11E】
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【図11F】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−522383(P2012−522383A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502281(P2012−502281)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【国際出願番号】PCT/US2010/028811
【国際公開番号】WO2010/111581
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(505131522)アプライド・ナノテック・ホールディングス・インコーポレーテッド (27)
【Fターム(参考)】