説明

光結合装置

【課題】光結合の精度を維持しつつ、光結合装置の軽量化・小型化を実現すること。
【解決手段】光結合装置1は、パッケージ6の底板6aが0.6ミリメートル以下の厚さを有する光結合装置であり、ペルチェ素子5の光軸方向の長さW1に対する、ペルチェ素子5と側壁6bとの光軸方向の距離W2の比率、が0.51より大きく、且つ、ペルチェ素子5の光軸方向の長さW1に対する、基板部材4の光軸方向の長さW3の比率、が0.85以下であり、且つ、基板部材4の光軸方向の中心O2が、ペルチェ素子5の光軸方向の中心O1よりも側壁6b寄りに位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光結合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レンズを介して、レーザと光ファイバとの光結合を行う光結合装置が知られている。
【0003】
図4は、このような光結合装置の簡単な構成を示す図であり、光結合装置の断面図を示す図である。
【0004】
同図に示す光結合装置41は、レーザ42と、レーザ42から出力されるレーザ光を集光するレンズ43と、レーザ42とレンズ43とが設置された基板部材44と、基板部材44が設置され、レーザ42の温度を調整するペルチェ素子45と、これらが収容されるパッケージ46と、レンズ43を透過した光が結合される光ファイバ47と、を含む。パッケージ46は、破線で示されるレーザ光の光軸と略垂直な壁を有し、パッケージ46の底板46aにペルチェ素子45が設置されている。また、パッケージ46には、上述の壁を貫通する貫通孔部46bが光軸上に形成され、この貫通孔部46bに光ファイバ47が連絡されている。
【0005】
このような光結合装置41は、例えば−5度から75度の環境温度下で動作することが求められる。環境温度の変化に伴い生じる熱変形によって光ファイバ47に対して光軸がほんの少しでもずれると、光ファイバ47に結合される光の量が大きく減少してしまい、その結果、光結合の精度が大きく落ちる。そこで、このような光結合装置41では、熱変形が発生しても、光結合の精度が落ちないよう工夫が施されている。
【0006】
例えば、下記特許文献1では、下記に示すような工夫が施されている。図5は、下記特許文献1で想定された熱変形の様子を示す図である。同図に示すように、熱変形により、底板46a全体が凹型に変形する。そこで、下記特許文献1では、このような熱変形が発生しても、光ファイバ47に対する光軸のずれが小さくなるよう、ペルチェ素子45を貫通孔部46bになるべく近づけるようにしている。
【0007】
具体的には、ペルチェ素子45が、ペルチェ素子45の光軸方向の長さw(図4参照)に対するペルチェ素子45と上述の壁との距離l(図4参照)の比率が0.51以下になるように配置されている(特許文献1の第0034段落参照)。こうすることにより、ペルチェ素子45が、底板46aの真ん中よりも右側に配置されるようになり、光ファイバ47に対する光軸のずれが小さくなるよう配慮されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−262766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、熱変形の態様は、図5に示す態様ばかりではない。例えば、底板46aの厚さが0.6ミリメートル以下である場合、底板46a全体が変形するのではなく、主に、底板46aのうちのペルチェ素子45に接する部分が凹型に変形することがわかっている。つまり、底板46aの厚さが0.6ミリメートル以下である場合、熱変形の態様が図5に示す態様とは異なる。
【0010】
そのため、底板46aの厚さが0.6ミリメートル以下である場合、特許文献1に記載の技術を適用しても、熱変形が発生した場合に光結合の精度が落ちてしまうという問題がある。そのため、底板46aの厚さを0.6ミリメートル以下にして、光結合装置41を軽量化・小型化することが困難であった。
【0011】
なお、ペルチェ素子45の小型化が進み、長さwに対する長さlの比率を0.51以下にすることが困難であるという実情もある。
【0012】
本発明の目的は、光結合の精度を維持しつつ、光結合装置の軽量化・小型化を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明に係る光結合装置は、レーザ素子と、前記レーザ素子から出力されるレーザ光を集光するレンズと、前記レーザ素子と前記レンズとが設置された基板部材と、前記基板部材が設置され、前記レーザ素子の温度を調整する温度制御素子と、前記レーザ素子と、前記レンズと、前記基板部材と、前記温度制御素子と、を収納してなる容器であって、前記レーザ素子から出力されるレーザ光の光軸と略垂直な壁を有し、且つ、該壁を貫通する貫通孔部が前記光軸上に形成された容器と、前記貫通孔部に連絡され、前記レンズを透過した光が結合される光ファイバと、を含み、前記温度制御素子が前記容器の底板に設置され、前記底板が0.6ミリメートル以下の厚さを有する光結合装置において、前記温度制御素子の前記光軸に平行な光軸方向の長さに対する、該温度制御素子と前記壁との前記光軸方向の距離の比率、が0.51より大きく、且つ、前記温度制御素子の前記光軸方向の長さに対する、前記基板部材の前記光軸方向の長さの比率、が0.85以下であり、且つ、前記基板部材の前記光軸方向の中心が、前記温度制御素子の前記光軸方向の中心よりも前記壁寄りに位置していることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る光結合装置の構成を示す図である。
【図2】熱変形を説明するための図である。
【図3】基板部材が傾く様子を示す図である。
【図4】光結合装置の簡単な構成を示す図である。
【図5】熱変形の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る光結合装置1の断面図であり、光結合装置1の構成を示す図である。同図に示すように、光結合装置1は、レーザ2と、レーザ2から出力されるレーザ光を集光するレンズ3と、レーザ2とレンズ3とが設置された基板部材4と、前記基板部材4が設置され、レーザ2の温度を調整するペルチェ素子(温度制御素子)5と、パッケージ(容器)6と、レンズ3を透過した光が結合する光ファイバ7と、を含む。レーザ2と、レンズ3と、基板部材4と、ペルチェ素子5と、はパッケージ6に収容される。
【0017】
レーザ2は、レーザ光を出力する。図1に示される破線は、レーザ光の光軸を示している。
【0018】
レンズ3は、レーザ2から出力されたレーザ光を集光する。上述のように、レーザ2と、レンズ3と、は基板部材4上に設置されている。
【0019】
基板部材4は、上述のように、ペルチェ素子5上に設置される。図1の長さW3は、基板部材4の光軸方向の長さを示す。
【0020】
ペルチェ素子5は、基板部材4を加熱したり冷却したりする。基板部材4を加熱したり冷却したりすることにより、ペルチェ素子5は、レーザ2の温度が所望の温度になるよう、調整する。
【0021】
図1に示すように、ペルチェ素子5は、冷却基板5aと、放熱基板5bと、冷却基板5aと放熱基板5bとに挟まれた熱電素子5cと、からなる。ここでは、ペルチェ素子5は、冷却基板5aの温度が25℃から60℃までの温度範囲内に収まるよう駆動制御される。一般的には、冷却基板5aと放熱基板5bとの材質はアルミナであり、熱電素子5cの材質はビスマステルル合金である。また、ペルチェ素子5の光軸方向(すなわち、光軸と平行な方向)の長さW1は、2ミリメートルから4ミリメートルである。
【0022】
パッケージ6は、底板6aと、側壁6b,6cと、側壁6bを貫通する貫通孔6dと、を含む。底板6aは、光軸方向と平行な板であり、ペルチェ素子5が設置される。底板6aは、ペルチェ素子5の発する熱を放熱する役割を有し、その材質は、一般的には、銅の含有率が10パーセントから20パーセントである銅タングステンである。ここでは、光結合装置1を軽量化・小型化するため、底板6aの厚さは、0.6ミリメートル以下に設定されている。側壁6b,6cは、光軸方向と略垂直な壁であり、側壁6bの材質は、一般的には、鉄ニッケルコバルト合金である。貫通孔6dは、光軸上に形成され、その材質は、一般的には、鉄ニッケルコバルト合金である。なお、パッケージ6の光軸方向の長さは、概ね、5ミリメートルから30ミリメートルである。
【0023】
ここで、ペルチェ素子5と側壁6bとの光軸方向の距離であり、ペルチェ素子5と側壁6bの内壁面との距離でもある距離W2は、1ミリメートルから3ミリメートルに設定される。これは、部品同士の干渉を避けるためである。
【0024】
光ファイバ7は、貫通孔6dに連絡される。すなわち、光ファイバ7は、貫通孔6dに挿入される。上述のように、光ファイバ7には、レンズ3を透過した光が結合されることとなる。
【0025】
以下、側壁6bのうちの、貫通孔6dより下の部分を下壁と呼び、側壁6bのうちの、貫通孔6dより上の部分を上壁と呼ぶ。
【0026】
この光結合装置1では、以下に説明するように、熱変形が発生する。図2は、熱変形を説明するための図である。
【0027】
すなわち、側壁6bが、外気温度に応じて熱膨張する。そのため、下壁が膨張し、下壁が図1の上方向に伸びる。その結果、貫通孔6dが、図1の上方向に移動する。例えば、側壁6bの材質である鉄ニッケルコバルト合金の線膨張係数は5.4であるので、外気温度が25℃から75℃に変化した場合、底板6aと貫通孔6dとの距離が3ミリメートルであるとき、貫通孔6dは、0.8マイクロメートルだけ上方向に移動する。
【0028】
また、上述のように、冷却基板5aの温度が25℃から60℃までの温度範囲内に収まるようペルチェ素子5が駆動制御されるため、外気温度が25℃から75℃に変化したときに冷却基板5aと放熱基板5bとの温度差により、ペルチェ素子5は、凹型に変形する。その結果、底板6aの厚さが0.6ミリメートル以下と薄いので、底板6aのうちの、ペルチェ素子5が設置された部分も凹型に変形する。
【0029】
光ファイバ7に対して光軸がわずかにずれただけでも、光ファイバ7に結合される光の量が大きく減少し、光結合の精度が損なわれてしまう。このことに鑑みれば、図2に示すような熱変形が生じた場合に、光結合の精度が損なわれないよう図る必要がある。
【0030】
この点、この光結合装置1では、図2に示すような熱変形が生じた場合に、光結合の精度が損なわれないよう図られている。以下、この点について説明する。
【0031】
上述のように、図2に示すような熱変形が発生すると、貫通孔6dが図1の上方向に移動することは先に述べた。この場合、光ファイバ7に導入される光の量を維持するためには、熱変形が発生した場合にレーザ2から出力されるレーザ光の仰角が大きくなるようにする必要がある。
【0032】
この点、この光結合装置1では、ペルチェ素子5の光軸方向の長さW1に対する、基板部材4の光軸方向の長さであり基板部材4とペルチェ素子5との接合面の光軸方向の長さでもある長さW3の比率が、0.85以下となるようになっている。また、基板部材4がペルチェ素子5の右側に設置されるようになっている。より詳しくは、図1に示すように、基板部材4の光軸方向の中心O2がペルチェ素子5の光軸方向の中心O1よりも側壁6b寄りに位置するようになっている。
【0033】
そのため、図2に示すような熱変形が発生した場合に、基板部材4が図3に示すように傾くことになるので、レーザ2から出力されるレーザ光の仰角が小さくなるのではなく、レーザ2から出力されるレーザ光の仰角が大きくなるようになっている。なお、図3は、図2に示す熱変形が発生した場合に基板部材4が傾く様子を示す図である。
【0034】
但し、レーザ2と光ファイバ7との距離が小さすぎる場合、レーザ2から出力されるレーザ光の仰角を大きくしても光軸が光ファイバ7の下を通過することとなり、依然として、光ファイバ7に導入される光の量の減少を抑止することができない。
【0035】
この点、この光結合装置1では、レーザ2と光ファイバ7との距離が小さくなりすぎないよう図られている。すなわち、この光結合装置1では、レーザ2と光ファイバ7との距離が小さくなりすぎないよう、ペルチェ素子5の光軸方向の長さでありペルチェ素子5と底板6aとの接合面の光軸方向の長さでもある長さW1に対する、ペルチェ素子5と側壁6bとの光軸方向の距離でありペルチェ素子5と側壁6bの内壁面との距離でもある距離W2の比率、が0.51より大きくなるように、ペルチェ素子5が底板6a上に設置されている。
【0036】
その結果、光ファイバ7に導入される光の量が維持され、光結合の精度が損なわれなくなるようになる。
【0037】
以上のように、光結合装置1では、ペルチェ素子5の光軸方向の長さW1に対する、ペルチェ素子5と側壁6bとの光軸方向の距離W2の比率、が0.51より大きく、且つ、ペルチェ素子5の光軸方向の長さW1に対する、基板部材4の光軸方向の長さW3の比率、が0.85以下であり、且つ、基板部材4の光軸方向の中心O2が、ペルチェ素子5の光軸方向の中心O1よりも側壁6b寄りに位置しているので、底板6aの厚さを0.6ミリメートル以下として光結合装置1を軽量化・小型化しても、光結合の精度が維持することが可能となる。
【0038】
実際、ペルチェ素子5の光軸方向の長さW1が3.1ミリメートル、基板部材4の光軸方向の長さW2が長さW1の0.75倍の2.7ミリメートルであり、且つ、基板部材4の光軸方向の中心O2が、ペルチェ素子5の光軸方向の中心O1より0.45ミリメートルだけ側壁6b寄りに位置している場合、外気温度が25℃から75℃に変化したときのレーザ光の仰角の変化は約0.02度となることがわかっている。ここにおいて、例えば、ペルチェ素子5と側壁6bとの距離が長さW1の0.74倍である2.3ミリメートルであるとき、光軸と側壁6bとの交点は、貫通孔6dと同様に、上方向に約0.8マイクロメートル移動することとなるので、光結合の精度が維持される。
【符号の説明】
【0039】
1 光結合装置、2 レーザ、3 レンズ、4 基板部材、5 ペルチェ素子、5a 冷却基板、5b 放熱基板、5c 熱電素子、6 パッケージ、6a 底板、6b,6c 側壁、6d 貫通孔、7 光ファイバ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ素子と、
前記レーザ素子から出力されるレーザ光を集光するレンズと、
前記レーザ素子と前記レンズとが設置された基板部材と、
前記基板部材が設置され、前記レーザ素子の温度を調整する温度制御素子と、
前記レーザ素子と、前記レンズと、前記基板部材と、前記温度制御素子と、を収納してなる容器であって、前記レーザ素子から出力されるレーザ光の光軸と略垂直な壁を有し、且つ、該壁を貫通する貫通孔部が前記光軸上に形成された容器と、
前記貫通孔部に連絡され、前記レンズを透過した光が結合される光ファイバと、を含み、
前記温度制御素子が前記容器の底板に設置され、
前記底板が0.6ミリメートル以下の厚さを有する光結合装置において、
前記温度制御素子の前記光軸に平行な光軸方向の長さに対する、該温度制御素子と前記壁との前記光軸方向の距離の比率、が0.51より大きく、且つ、
前記温度制御素子の前記光軸方向の長さに対する、前記基板部材の前記光軸方向の長さの比率、が0.85以下であり、且つ、
前記基板部材の前記光軸方向の中心が、前記温度制御素子の前記光軸方向の中心よりも前記壁寄りに位置していること、
を特徴とする光結合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−151209(P2011−151209A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−11305(P2010−11305)
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(301005371)日本オプネクスト株式会社 (311)
【Fターム(参考)】