光走査装置および画像形成装置
【課題】 簡易な方法で各光路間の像面照度比の差を抑制し、高精彩印字に好適な光走査装置及びそれを用いた画像形成装置を提供する。
【解決手段】 P偏光の場合、反射光学素子の数が少ない方の光路に対応する被走査面において、中央像高での光量をAp、最軸外像高のうちでより高い方の光量をAm、反射光学素子の数が多い方の光路に対応する被走査面において、中央像高での光量をBp、最軸外像高のうちでより低い方の光量をBm、中央像高に対する主走査方向の有効走査領域を±W、各被走査面での光量が同量となる像高をLとするとき、Ap<Bp、Am>Bm、0.4W<L<0.8Wなる条件を満足するように少なくとも一方の光路に対応する光源の出力を調整する。
【解決手段】 P偏光の場合、反射光学素子の数が少ない方の光路に対応する被走査面において、中央像高での光量をAp、最軸外像高のうちでより高い方の光量をAm、反射光学素子の数が多い方の光路に対応する被走査面において、中央像高での光量をBp、最軸外像高のうちでより低い方の光量をBm、中央像高に対する主走査方向の有効走査領域を±W、各被走査面での光量が同量となる像高をLとするとき、Ap<Bp、Am>Bm、0.4W<L<0.8Wなる条件を満足するように少なくとも一方の光路に対応する光源の出力を調整する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光走査装置に関し、例えば、レーザービームプリンタ(LBP)やデジタル複写機、マルチファンクションプリンタ(多機能プリンタ)等の画像形成装置に用いられる光走査装置に好適である。
【背景技術】
【0002】
従来より、レーザービームプリンタ(LBP)やデジタル複写機等画像形成装置が備える光走査装置においては、画像信号に応じてレーザ光源等の光源から光変調された光束が出射される。そして光変調された光束を、例えばポリゴンミラー等の偏向器により周期的に偏向させている。そして、偏向させられた光束を、fθ特性を有する結像光学系によって像担持体としての感光体の感光面にスポット状に集光させることにより、感光面上を光走査して画像記録を行っている。
【0003】
また、カラー画像形成における各色に対応する複数の被走査面を同時に走査する、タンデム型の画像形成装置が提案されている。タンデム型の画像形成装置が備える光走査装置(以下、タンデム型の光走査装置とする)においては、偏向器により偏向走査された複数の光束の夫々が、対応する結像光学素子及び反射光学素子を介して異なる複数の被走査面に導光される。結像光学素子及び反射光学素子を介した光束は、被走査面としての感光面を、ほぼ一定の速度で走査する。
【0004】
しかし、各像高によって光強度の強弱(像面照度比)が生じるという問題がある。像面照度比は光源から出射される光束が、被走査面に到達するまでの間に通過する結像光学素子等の光学素子の透過率が光束の入射角によって異なること、結像光学素子の厚みが像高によって異なることや、fθ特性の欠陥などが原因となって生じる。
【0005】
また、タンデム型の光走査装置においては、偏向器により偏向させられた複数の光束の夫々が対応する複数の被走査面に到達するまでの光路長を等しくする必要がある。そのため、各部材の配置などを考慮すると、各光路間で配置される反射光学素子の枚数(反射面の数)を異ならせて構成することが多い。さらに、一般的に、反射光学素子は各光路において同一の反射率を有するものを使用するため、反射光学素子の枚数が異なる光路間では、被走査面における像面照度比の差が生じてしまう。像面照度比は、形成画像の主走査方向の濃度に影響を及ぼすため、タンデム型の光走査装置においては、異なる光路間で像面照度比の差を抑制する必要がある。
【0006】
特許文献1においては、被走査面上で像面照度比を測定する光量測定部と、光源から出射される光束の強度を補正する光強度補正部を有し、像面照度比の測定結果に基づいて電気的に像面照度比を補正する装置が開示されている。また、特許文献2においては、反射光学素子の夫々に対して異なる反射率を設定し、さらに反射率角度依存性を付加することによって、像面照度比を補正した装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−351234号公報
【特許文献2】特開2009−271352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の装置においては、光強度補正部等の手段を別途設ける必要があり、光走査装置の構成が複雑となってしまう。また、特許文献2の装置では、各々の光路における像面照度比を補正するために、光路毎に異なる反射率角度依存性を有する反射光学素子を設けなければならない。よって、特許文献1及び2に記載の像面照度比の補正方法では、光走査装置の製造コストが高くなるという問題がある。
【0009】
そこで、本発明の目的は、簡易な方法で各光路間の像面照度比の差を抑制し、高精彩印字に好適な光走査装置及びそれを用いた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の代表的な構成は、複数の光源と、前記複数の光源から出射した複数の光束を偏向させる偏向器と、前記偏向器の偏向面により偏向させられた複数の光束を複数の被走査面上に夫々集光する複数の結像光学系と、を有する走査光学装置であって、前記偏向器の偏向面に入射する前記複数の光束はP偏光であって、前記偏向器の偏向面と前記複数の被走査面との間の複数の光路の夫々において、副走査断面内で光束を反射する反射光学素子を少なくとも1枚備えており、前記複数の光路は、前記反射光学素子の数が異なる第1及び第2の光路を含み、前記第1及び第2の光路のうち前記反射光学素子の数が少ない方の光路に対応する被走査面において、中央像高での光量をAp、最軸外像高のうちでより高い方の光量をAm、前記第1及び第2の光路のうち前記反射光学素子の数が多い方の光路に対応する被走査面において、中央像高での光量をBp、最軸外像高のうちでより低い方の光量をBm、前記第1及び第2の光路の夫々に対応する被走査面における中央像高に対する主走査方向の有効走査領域を±W、前記第1の光路に対応する被走査面と前記第2の光路に対応する被走査面とで光量が同量となる像高をL、とするとき、Ap>Bp、Am<Bm、0.4W<L<0.8W、なる条件を満足するように、前記複数の光源のうち、前記第1及び第2の光路の少なくとも一方の光路に対応する光源の出力を調整する調整部を有することを特徴とする。
【0011】
また本発明の他の代表的な構成は、上記「P偏光」を「S偏光」に置き換え、かつ、上記「最軸外像高のうちでより低い方の光量をBm」を「最軸外像高のうちでより高い方の光量をBm」に置き換えた構成であることを特徴とする。
【0012】
本発明の更なる目的又はその他の特徴は、以下、添付の図面を参照して説明される好ましい実施形態によって明らかにされる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡易な方法で各光路間の像面照度比の差を抑制し、高精彩印字に好適な光走査装置及びそれを用いた画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)は第1の実施形態に係る光走査装置における光路毎の像面照度比を示す図、(b)は光源の出力を調整する調整部を示す図である。
【図2】(a)は第1の実施形態に係るタンデム型の光走査装置の主走査断面図、(b)は副走査断面図である。
【図3】第1の実施形態に係るカラー画像形成装置の要部概略図である。
【図4】第2の実施形態に係る光走査装置における光路毎の像面照度比を示す図である。
【図5】第3の実施形態に係る光走査装置における光路毎の像面照度比を示す図である。
【図6】第4の実施形態に係るタンデム型の光走査装置の副走査断面図である。
【図7】第4の実施形態に係る光走査装置の光路毎の像面照度比を示す図である。
【図8】本発明の作用を示す図である。
【図9】P偏光及びS偏光が結像光学素子に入射するときの、反射率及び透過率と入射角との関係を示した説明図である。
【図10】本実施形態で用いるAL(アルミニウム)で反射面を形成された反射光学素子の反射率特性を示す図である。
【図11】各被走査面に対して夫々一つの偏向器を設けた変形例を示す図である。
【図12】従来の光走査装置における光路毎の像面照度比を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。
【0016】
《第1の実施形態》
(画像形成装置)
図3は、本発明の実施形態のカラー画像形成装置の要部概略図である。カラー画像形成装置60は、光走査装置11により、光ビーム41、42、43、44を走査して、各々並行して像担持体としての感光体21、22、23、24の夫々の感光面上に画像情報を記録するタンデムタイプのカラー画像形成装置である。
【0017】
図3において、カラー画像形成装置60には、パーソナルコンピュータ等の外部機器52からR(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)の各色信号が入力する。これらの色信号は、装置内のプリンタコントローラ53によって、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各画像データ(ドットデータ)に変換される。これらの画像データは、光走査装置11に入力される。そして、光走査装置11からは、各画像データに応じて変調された光ビーム41、42、43、44が出射され、これらの光ビームによって感光ドラム21、22、23、24の感光面が主走査方向に走査される。
【0018】
本実施形態におけるカラー画像形成装置は光走査装置11により4つのビームを走査し、各々がY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色に対応している。そして各々平行して感光ドラム21、22、23、24面上に画像信号(画像情報)を記録し、カラー画像を高速に印字している。
【0019】
本実施形態におけるカラー画像形成装置は、上述の如く光走査装置11により各々の画像データに基づいた光ビームを用いて、各色の潜像を各々対応する感光ドラム21、22、23、24の感光面上に形成している。その後、現像器31、32、33、34によって各色のトナー像を形成し、搬送ベルト51により搬送される記録材に、各色のトナー像を多重転写して1枚のフルカラー画像を形成している。
【0020】
外部機器52としては、例えばCCDセンサを備えたカラー画像読取装置が用いられても良い。この場合には、このカラー画像読取装置と、カラー画像形成装置60とで、カラーデジタル複写機が構成される。
【0021】
(光走査装置)
図2(a)は本発明の第1の実施形態に係るタンデム型の光走査装置の、主走査方向の要部断面図(主走査断面図)、図2(b)はその副走査方向の要部断面図(副走査断面図)である。以下の説明において、副走査方向(Z方向)とは、偏向器の回転軸と平行な方向である。主走査断面とは、副走査方向を法線とする断面である。主走査方向(Y方向)とは、偏向器で偏向走査される光束が被走査面上を走査した位置を主走査断面に投射した方向である。副走査断面とは、主走査方向を法線とする断面である。
【0022】
図中、1y、1m、1c、1kは各々光源であり、半導体レーザより成っている。2y、2m、2c、2kは各々開口絞りであり、光源1y、1m、1c、1kから出射されたP偏光の発散光束を特定のビーム形状に成形している。3y、3m、3c、3kは各々集光レンズであり、主走査断面内と副走査断面内とで異なる屈折力(パワー)を有するアナモフィックコリメータレンズである。
【0023】
これにより、開口絞り2y、2m、2c、2kを通過した発散光束を主走査方向では平行光束(もしくは収束光束)、副走査方向では収束光束に変換している。即ち、集光レンズ3y、3m、3c、3kは、夫々の光束の集光状態を変換する光束変換手段として機能する。尚、光源1y、1m、1c、1kと、開口絞り2y、2m、2c、2kと、集光レンズ3y、3m、3c、3kとの各要素によって、入射光学系Ly、Lm、Lc、Lkが構成されている。
【0024】
尚、集光レンズ3y、3m、3c、3kを2つの光学素子(コリメータレンズとシリンダーレンズ)より構成しても良い。また、集光レンズ3y、3m、3c、3kの夫々を一体化して形成しても良い。5は偏向器としてのポリゴンミラーであり、モータより成る駆動手段(不図示)により図中矢印A方向に一定速度(等角速度)で回転している。光源1y、1mから出射した光束の夫々は偏向器5の偏向面5ymに入射し、光源1c、1kから出射した光束の夫々は偏向器5の偏向面5ckに入射している。6ym、6ckは集光機能とfθ特性とを有する結像光学系である。
【0025】
本実施形態における結像光学系6ymは第1の結像レンズ61ym及び第2の結像レンズ62ymを有し、結像光学系6ckは、第1の結像レンズ61ck及び第2の結像レンズ62ckを有している。本実施形態における第1の結像レンズ61ym、61ck及び第2の結像レンズ62ym、62ckは、主走査断面内と副走査断面内とで異なるパワーを有しており、プラスチック材料(樹脂)より成るトーリックレンズである。そして、偏向器5の偏向面5ym、5ckによって偏向された複数の光束の夫々を、被走査面としての感光ドラム面7y、7m、7c、7k上(被走査面上)に集光している。
【0026】
第1の結像レンズ61ym、61ck及び第2の結像レンズ62ym、62ckの夫々は、副走査断面内において、偏向器5の偏向面5ymと感光ドラム面7y、7mとの間、及び偏向器5の偏向面5ckと感光ドラム面7c、7kとの間を夫々共役関係にすることにより、偏向面5ym、5ckの面倒れ補償を行っている。第1の結像レンズ61ym、61ckは、光軸上では、主走査断面内において正のパワー、副走査断面内において負のパワーを有している。
【0027】
防塵ガラス9y、9m、9c、9kは、結像光学系6ym、6ckと被走査面7y、7m、7c、7kとの間に夫々配置されており、光走査装置内への塵埃の侵入を防いでいる。
【0028】
次に本実施形態の目的を達成するための手段と効果について、説明する。本実施形態の光走査装置は4つの光源1y、1m、1c、1kから出射した光束の夫々を異なる4つの被走査面7y、7m、7c、7kに導光し、光走査するものである。以下、光走査装置の機能説明においては、簡単のため1つの光源1kから発せられた光束の光路について説明する。
【0029】
光源である半導体レーザ1kから出射した発散光束は、絞り2kによって光量を制限され、対応する集光レンズ3kに入射する。集光レンズ3kは、光源1kからの光束を主走査断面内に関しては平行光束に変換し、副走査断面内に関しては偏向器5の偏向面5ckに集光するよう光束の状態を変換している。偏向器5に入射した光束は偏向面5ckにより偏向され、結像光学手段6ckに入射する。
【0030】
本実施形態において結像光学系6ckは、主に主走査方向にパワーを有するプラスチック製の第1の結像レンズ61ckと、主に副走査方向にパワーを有するプラスチック製の第2の結像レンズ62ckとより構成される。なお、結像光学系6ckは、一部のレンズのみをプラスチック製としても良い。また、結像光学系6ckは、偏向面5ckからの偏向光束を被走査面7kに集光するとともに偏向面5ckの面倒れを補償している。
【0031】
本実施形態における第1の結像レンズ61ck、第2の結像レンズ62ckは、光源1c、1kから出射する光束による2つの光路で共通に使用されている。なお、結像光学手段6ckの形態、製法はこれに限定されるものではない。上記結像光学系6ckにより被走査面7k上に結像した光束は、偏向器5の回転により被走査面7k上を矢印B方向(主走査方向)に等角速度で偏向走査する。本実施形態における光走査装置は、異なる4つの色に対応する画像情報を、同時に異なる4つの被走査面7y、7m、7c、7k上に記録するタンデム型の光走査装置であり、以下、それについて、詳細に説明する。
【0032】
本実施形態における4つの光源1y、1m、1c、1kは、各々主走査方向及び副走査方向に矩形状に配置されている。このうち、光源1c、1kからの光束を偏向器5の偏向面5ckへ、光源1y、1mからの光束を偏向器5の偏向面5ymへ入射させ、それぞれの光束を偏向器5の左右に分離している。さらに光源1c、1kからの光束を、副走査断面内で異なる入射角を持つように偏向器5に斜入射させることにより、第1の結像レンズ61ck及び第2の結像レンズ62ckの後に配置した反射光学素子(ミラー)81cにより空間分離している。尚、光源1y、1mからの光束に関しても同様である。
【0033】
このように偏向器5に対し異なる斜入射角を有する複数の光束を、偏向器5の異なる2つの偏向面51ym,51ckに入射させることにより、一つの偏向器5で4つの光束を同時に走査可能としている。
【0034】
空間的に偏向器5に最も遠い側の被走査面7y、7kに向かう光源1y、1kからの光束は、偏向器5により偏向走査された後、それぞれ1枚の反射光学素子81y、81kで偏向され、それぞれの被走査面7y、7kに導光される。以下、被走査面7y、7kに向かう光源1y、1kからの光束の光路を「外側光路」と称す。
【0035】
一方、空間的に偏向器5に最も近い側の被走査面7m、7cに向かう光源1m、1cからの光束は、偏向器5により偏向走査された後、それぞれ3枚の反射光学素子81m、82m、83m及び81c、82c、83cで偏向される。そして、それぞれの被走査面7m、7cに導光される。以下、被走査面7m、7cに向かう光源1m、1cからの光束の光路を「内側光路」と称す。なお、本実施例における各反射光学素子は、全て副走査断面内で光束を反射している。
【0036】
外側光路と内側光路において反射光学素子の枚数が相違している理由は、全ての光路においてその光路長を合わせるという制約条件のもと、光学素子と光路との物理的干渉、組立て性等を考慮し配置を決定するためである。尚、本実施形態では反射光学素子の枚数を内側光路で3枚、外側光路で1枚として構成したが、これに限定されることはない。複数の被走査面間の間隔や結像光学素子の位置等によって、内側光路及び外側光路における反射光学素子の枚数を決定すれば良い。
【0037】
本実施形態で用いられている結像光学素子(結像レンズ)は、プラスチック製である。光走査装置に用いるプラスチック製レンズは、製造の観点から反射防止コーティングを施していないものが主流であり、本実施形態もノンコートレンズである。反射防止コートの無いレンズに偏光状態の光束が入射する場合、画角により透過率が異なる。つまり被走査面上において像面照度が不均一になるという問題がある。
【0038】
このように発生する像面照度の不均一性を、反射光学素子にその逆特性を持たせる、つまり入射角に応じてその反射率が異なる(反射率角度依存性を有する)ような反射光学素子を用いることにより補正することが必要となる。しかしながら光走査装置の製造コストを抑えるためには、使用される反射光学素子全てを同一の膜構成を有する反射光学素子とする必要がある。ここで一般的に安価なAL(アルミニウム)で形成された反射光学素子の膜特性は、反射角が大きくなるとP偏光の反射率が落ちるため、反射光学素子が多く配された光路ほど被走査面上で端部像高での光量は低くなる傾向にある(これについては後に詳述する)。
【0039】
そしてタンデム型の光走査装置では、像面照度比を補正することもさることながら、複数の被走査面間において像面照度比の差を抑制することがより重要となる。これは複数の被走査面間で像面照度比に差があるということが、色毎の濃度むらとなり、走査領域内での色味むらとなるためである。通常、単色の濃度むらより、色重ね後の色味むらの方が視認性が高いため、タンデム型の光走査装置では、複数の被走査面間において像面照度比の差を抑制することが重要視されるのである。一般的に複数の光路同士の像面照度比が10ポイントを超えると、色重ね後の色味むらの視認性が高まり問題となる。
【0040】
図12に、従来の場合のシアン、ブラックの像面照度比を示す。図12には反射光学素子が1枚配された外側光路の内、被走査面7kに導光しているブラック光路と、3枚の反射光学素子が配された内側光路の内、被走査面7cに導光しているシアン光路の像面照度比を示している。従来の光走査装置においては、各々の光路の中央像高付近で光量を測定し、同量の光量となるように光源の出力を調整していた。すると、最軸外像高にて最も光路間での像面照度比が大きくなってしまい、色重ね後の中央像高と最軸外像高との色味むらが顕著に発生してしまう。
【0041】
(走査光学系)
走査光学系の具体的数値例を、以下に示す。
【0042】
本実施形態における光学配置を表1に、レンズ面形状を表2に夫々示す。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
本実施形態の第1の結像レンズ61ym、61ck、第2の結像レンズ62ym、62ckの入射面、出射面の母線形状は、10次までの関数として表せる非球面形状により構成している。結像レンズ61ym、61ck、62ym、62ckのそれぞれのレンズ面は以下に述べる非球面式から定義される。そして、各レンズ面の面形状は、各レンズ面と光軸(X軸)との交点を原点とし、主走査断面内において光軸と直交する軸をY軸としたとき、主走査方向と対応する母線方向が、
【0046】
【数1】
【0047】
(但し、Rは母線曲率半径、K、B4、B6、B8、B10は非球面係数)なる式で表されるものである。
【0048】
また、レンズ面の面形状は、副走査断面内において光軸と直交する軸をZ軸とすると、副走査方向と対応する子線方向が、
【0049】
【数2】
【0050】
なる式で表されるものである。Sは母線方向の各々の位置における母線の法線を含み主走査断面と垂直な面内に定義される子線形状である。
【0051】
ここで、主走査方向に光軸からY離れた位置における副走査方向の曲率半径(子線曲率半径)r´は、
【0052】
【数3】
【0053】
(但し、rは光軸上の子線曲率半径、D2、D4、D6、D8、D10は子線変化係数)なる式で表される。
【0054】
また、Mj_kは子線方向の非球面を表す係数である。例えば、Mj_1はZの1次項であり、副走査方向の面の傾き(子線チルト)を表している。本実施形態では、主走査方向に0、2、4、6、8、10次の係数を使って子線チルト量を変化させている。
【0055】
また、表1に示した各係数には添え字u及びlが付いている。それぞれUpper側、Lower側の意味であり、結像光学系の各レンズ面頂点に対し、光源1y、1m、1c、1kがある側をLower側、光源1y、1m、1c、1kがある側と反対側をUpper側と定義する。添え字U及びlが付いていない係数については、Upper側、Lower側に共通の係数である。
【0056】
本実施形態では、図2に示した如く感光ドラム7y、7mに到達する光路で第一の結像レンズ61ym、及び第二の結像レンズ62ymを共用している。また、結像レンズ62ymの入射面、及び出射面に関しては、副走査断面内において2つのトーリック面を重ねたことを特徴とする多段トーリック面より成っている。
【0057】
同様に図2に示した如く感光ドラム7c,7kに到達する光路で第一の結像レンズ61ck、及び第二の結像レンズ62ckを共用している。また、結像レンズ62ckの入射面、及び出射面に関しては、副走査断面内において2つのトーリック面を重ねたことを特徴とする多段トーリック面より成っている。
【0058】
(偏光と反射光量および像面照度比)
本発明の作用に関連して、偏光と反射光量および像面照度比について説明する。図9は、例えば屈折率1.524の偏向器の偏向面にP偏光及びS偏光で光束を入射させたときの反射率及び透過率の角度依存性を示した説明図である。本実施例においては、偏向器の偏向面にP偏光の光束を入射させた場合は結像光学素子に入射する光束もP偏光となり、偏向器の偏向面にS偏光の光束を入射させた場合は結像光学素子に入射する光束もS偏光となる。同図から明らかなように結像光学素子のレンズ面におけるP偏光の反射率は、入射角が増大するほど低くなり、入射角がブリュースター角に達して一旦ゼロになった後、今度は入射角の増大に伴い大きくなる。主走査方向において軸上から軸外に向かうほどレンズ面に対する入射角は増大するが、通常の光走査装置においてブリュースター角を越えることは無い。本実施形態に係る光走査装置も、レンズ面に対する光束の入射角がブリュースター角以下となるように構成されている。したがって、P偏光の場合、結像光学素子のレンズ面での反射率は軸上から軸外に向かい低くなり、逆に透過率は高くなっていくことになる。よってP偏光の場合、fθレンズおよび防塵ガラスを介して、走査領域中央部に対し走査領域端部での透過光量が上がる像面照度比となる。一方S偏光の場合は逆に走査領域中央部に対し走査領域端部での透過光量が下がる像面照度比となる。
【0059】
図10に本実施形態で用いるAL(アルミニウム)で反射面を形成された反射光学素子の反射率特性を示す。ここで、偏向器の偏向面にP偏光を入射させた場合を考える。その場合、反射光学素子の反射面に関し、入射角が15度乃至60度の範囲では、入射角が大きくなるほど、反射率が低くなり、反射光量が低下していくことがわかる。即ち、光走査装置において走査領域中央部から走査領域端部にいくほど入射角が大きくなることから、走査領域端部にいくほど走査領域中央部に対し反射光量が下がる。そして反射面の数が増えれば、図8に示すように、走査領域端部での反射光量の低下はより大きくなる。
【0060】
一方、偏向器の偏向面にS偏光を入射させた場合は、反射光学素子の反射面に関し、入射角が15度乃至60度の範囲では反射率が高くなり、反射光量が増加していくことがわかる。即ち、光走査装置において走査領域端部にいくほど入射角が大きくなることから、走査領域端部にいくほど走査領域中央部に対し反射光量が上がる。そして反射面の数が増えれば、図8に示すように、走査領域端部での反射光量の上昇はより大きくなる。本発明においては、以下に詳述するように、光源出力調整により光路間の像面照度比の差の抑制を図る(図8)。
【0061】
なお、P偏光とは、該P偏光の成分比が90%以上であることを指している。また、S偏光とは、該S偏光の成分比が90%以上であることを指している。
【0062】
(光路間の像面照度比の差の抑制)
本実施形態では、偏向器の偏向面に入射する光束をP偏光とし、偏向器の偏向面から複数の被走査面に向かう複数の光路のうち、配置された反射光学素子の数が異なる2つの光路同士の光量を調整する場合を考える。ここで、各光路の中央像高に対する主走査方向の有効走査領域を±W、一方の光路の被走査面を走査する光束の光量と他方の光路の被走査面を走査する光束の光量が同量となる像高をLとする。また、反射光学素子の枚数が少ない方の第1の光路に対応する被走査面上の中央像高での光量をAp、最軸外像高のうちでより高い方の光量をAmとする。そして、反射光学素子の枚数が多い方の第2の光路に対応する被走査面上の中央像高での光量をBp、最軸外像高のうちでより低い方の光量をBmとする。
【0063】
このとき、以下の3つの条件式を満足するように、第1の光路、第2の光路の少なくとも一方の光路に対応する光源の出力を調整部で調整する(図1(b)に調整部100c、100kを示す)。
Ap<Bp ・・・(1)
Am>Bm ・・・(2)
0.4W<L<0.8W ・・・(3)
条件式(1)、(2)、(3)の条件を外れると、色重ね後の色味むらの視認性が高まり問題となるので好ましくないものとなる。
【0064】
ここで、図1(a)に本実施形態におけるシアン、ブラックの像面照度比を示す。図1(a)に示す如く本実施形態においては以下のように設定している。
W=156(mm)、L=100(mm)、L/W=0.64、Ap=196(μW)、Bp=201(μW)、Am=202(μW)、Bm=197(μW)
さらに望ましくは上記条件式(3)を次の条件式(3a)に設定するのが好ましい。
0.5W<L<0.7W ・・・(3a)
図1(a)より反射光学素子の枚数が異なる光路間においても、条件式(1)、(2)、(3)を満足するよう適切に設定することで、双方の被走査面上における像面照度比の差を抑制することを実現している。本実施形態においては、条件式(1)、(2)、(3)を満足するように、外側光路の被走査面を走査する光束の光量と、内側光路の被走査面を走査する光束の光量が、同量となる像高Lを100mmに設定している。そのために光量の測定を、図1(a)の円で囲んだ±100mm像高で行い、該像高にて各々の光路の光量が同量となるよう光源の出力を調整している。
【0065】
なお、光源の出力を調整は、調整部100c及び100kの少なくとも一方によって、光源1c及び光源1kの少なくとも一方の出力を調整することにより行うことができる。以上のような調整を、光源1y及び光源1mに対しても行うことにより、各色の像面照度比の差を抑制することができる。なお、本実施例では、シアンとブラックとの像面照度比の差を抑制するために光源1c及び光源1kの少なくとも一方の出力を調整しているが、例えばシアンとイエローや、ブラックとマゼンタとの像面照度比の差を抑制するように各光源の出力を調整しても良い。
【0066】
更に本実施形態では、以下の条件を満足するように光走査装置の光量を設定している。
0.9Bm≦Ap≦1.1Bm ・・・(4)
0.9Am≦Bp≦1.1Am ・・・(5)
条件式(4)(5)の条件を外れると、各光路同士の像高による色重ね後の色味むらの視認性が高まり、好ましいものではない。本実施形態においては、条件式(4)(5)を満足するよう、以下の如く具体的数値を設定している。
Ap/Bm=0.971
Bp/Am=1.019
さらに望ましくは、次の如く設定するのが良い。
0.95Bm≦Ap≦1.05Bm ・・・(4a)
0.95Am≦Bp≦1.05Am ・・・(5a)
これにより、反射光学素子の枚数が異なる光路間においても、条件式(4)(5)を満足するよう適切に設定することで、双方の被走査面上における像面照度比の差を抑制することを実現している。
【0067】
《第2の実施形態》
次に本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態において、第1の実施形態と異なる点は、被走査面を走査する光束の光量を測定する像高を変更し、予め設計段階で予測した像面照度比より算出した光量オフセット量を加味した光量を光量調整値として設定した点である。その他の構成及び光学的作用は第1の実施形態と同様であり、これにより同様の効果を得ている。
【0068】
図4に本実施形態のシアン光路、ブラック光路の像面照度比を示す。光走査装置の構成は第1の実施形態と同様であるため、各々の光路の照度分布は第1の実施形態と同様である。第1の実施形態では、被走査面を走査する光束の光量を±100mm像高で測定し、該像高にて各々の光路の光量が同じ所望の値となるよう光源の出力を調整している。これにより、色重ね後の中央像高と最軸外像高の色味むらを低減している。しかし光量の測定においては、所望の像高に走査線湾曲等、その他光学性能を測定する測定手段を設けられていて光量測定手段を設けられない場合がある。
【0069】
そこで、本実施形態では被走査面を走査する光束の光量を中央像高付近(図4丸枠)で測定し、予め設計段階で予測した像面照度比より算出した光量オフセット値を加味した光量に調整している。各々の光路の被走査面における所望の光量が200μWであり、ブラック光路の像面照度比ppが3%(設計値)の場合、200μWに3%/2=1.5%を差し引いた197μWを中央像高における光量の調整値とし調整する。
【0070】
一方、シアン光路の像面照度比ppが−2%(設計値)の場合、シアン光路においては像面照度比がブラック光路と相反するため、像面照度比2%/2=1%を付加した202μWを中央像高における光量の調整値とし調整する。尚、光量のオフセット値の算出方法はこれに限定されるものではなく、像面照度比の設計値のプロファイルによって考慮されるべきものである。
【0071】
本実施形態においては、第1の実施形態に対し、被走査面を走査する光束の光量の測定及び調整像高を変更したのみである。このため、上記条件式(1)乃至(5)に用いられるパラメータの値は同じであり、第1の実施形態と同様、条件式(1)、(2)、(3)、4)、(5)を満足している。
【0072】
《第3の実施形態》
本実施形態において、第1の実施形態と異なる点は、像面照度比が傾きを有している点である。その他の構成及び光学的作用は第1の実施形態と同様であり、これにより同様の効果を得ている。図5に本実施形態の光走査装置のシアン光路、ブラック光路の像面照度比を示す。図5で、ブラック光路の像面照度比が傾きを有していることが分かる。像面照度比が傾く原因としては、偏向器の偏向面の主走査方向における反射率むら、プラスチック製の結像光学素子の複屈折分布、光源の偏光方向の傾き等が考えられる。
【0073】
しかし上記の原因による像面照度の傾きが生じていても、本実施形態によれば色重ね後の色味むらを低減することが出来る。本実施形態においては、条件式(3)を満足するように外側光路の被走査面を走査する光束の光量と内側光路の被走査面を走査する光束の光量が同量となる像高Lを95mmに設定している。そのために光量の測定を95mm像高で行い、該像高にて各々の光路の光量が所望の同量となるよう光源の出力を調整している。
【0074】
上記の結果により、本実施形態では上記条件式(3)を満足するように中央像高に対する主走査方向の有効走査領域±W、一方の光路の被走査面を走査する光束の光量と他方の光路の被走査面を走査する光束の光量が同量となる像高Lを以下の如く設定している。
【0075】
また条件式(1)、(2)を満足するように副走査断面内において前記偏向器の偏向面から前記被走査面に向かう光路中に配された前記反射光学素子の枚数が最も少ない第1の光路の前記被走査面上の中央像高での光量をAp、最軸外像高での光量をAmとする。また、前記偏向器の偏向面から前記被走査面に向かう光路中に配された前記反射光学素子の枚数が最も多い第2の光路の前記被走査面上の中央像高での光量をBp、最軸外像高でより光量が低い側の光量をBmとする。このとき、以下の如く設定している。
W=156(mm)、L=95(mm)、L/W=0.61、Ap=196(μW)、Bp=202(μW)、Am=204(μW)、Bm=198(μW)
図5より、反射光学素子の枚数が異なる光路間においても、条件式(1)、(2)、(3)を満足するよう適切に設定することで、双方の被走査面上における像面照度比の差を抑制することを実現している。本実施形態においては、条件式(1)、(2)、(3)を満足するように外側光路の被走査面を走査する光束の光量と、内側光路の被走査面を走査する光束の光量が、同量となる像高Lを95mmに設定している。そのために、光量の測定を±95mm像高で行い、該像高にて各々の光路の光量が所望の同量となるよう光源の出力を調整している。
【0076】
更に本実施形態では、以下のなる条件を満足するように光走査装置の光量を設定している。
0.9Bm≦Ap≦1.1Bm ・・・(4)
0.9Am≦Bp≦1.1Am ・・・(5)
本実施形態においては以下の如く設定している。
Ap/Bm=0.962
Bp/Am=1.019
よって反射光学素子の枚数が異なる光路間において、像面照度が傾きを有している場合でも各々の被走査面上における像面照度比の差を抑制することを実現している。
【0077】
《第4の実施形態》
本実施形態において、第1の実施形態と異なる点は、内側光路に配された反射光学素子が2枚である点である。その他の構成及び光学的作用は第1の実施形態と同様であり、これにより同様の効果を得ている。
【0078】
図6に本実施形態のタンデム型の光走査装置の副走査要部断面図、図7に本実施形態の光走査装置のシアン光路、ブラック光路の像面照度比を示す。図6に示すように、空間的に偏向器5に最も近い側の被走査面7m、7cに向かう光源1m、1cからの光束は、偏向器5により偏向走査される。その後、それぞれ2枚の反射光学素子81m、82mと、81c、82cとで偏向され、それぞれの被走査面7m、7cに導光される。
【0079】
図7には反射光学素子が1枚配された外側光路の内、被走査面7kに導光しているブラック光路と、上記のように2枚の反射光学素子が配された内側光路の内、被走査面7cに導光しているシアン光路の像面照度比を示している。第1の実施形態に比べて、シアン光路に配されている反射光学素子が1枚少ないため、最軸外像高における像面照度が第1の実施形態ほど落ちていないことがわかる。このような場合においても、本実施形態によれば色重ね後の色味むらを低減することが出来る。
【0080】
本実施形態においては、条件式(3)を満足するように、外側光路の被走査面を走査する光束の光量と内側光路の被走査面を走査する光束の光量が同量となる像高Lを90mmに設定している。そのために光量の測定を90mm像高で行い、該像高にて各々の光路の光量が所望の同量となるよう光源の出力を調整している。
【0081】
上記の結果により、本実施形態では上記条件式(3)を満足するように中央像高に対する主走査方向の有効走査領域±W、一方の光路の被走査面を走査する光束の光量と他方の光路の被走査面を走査する光束の光量が同量となる像高Lを以下の如く設定している。
【0082】
また条件式(1)、(2)を満足するように、副走査断面内において偏向器の偏向面から被走査面に向かう光路中に配された反射光学素子の枚数が最も少ない第1の光路の被走査面上の中央像高での光量をAp、最軸外像高でより光量が高い側の光量をAmとする。また、偏向器の偏向面から被走査面に向かう光路中に配された反射光学素子の枚数が最も多い第2の光路の被走査面上の中央像高での光量をBp、最軸外像高での光量をBmとする。このとき、以下の如く設定している。
W=156(mm)、L=90(mm)、L/W=0.58、Ap=196(μW)、Bp=199(μW)、Am=203(μW)、Bm=200(μW)
【0083】
図7より反射光学素子の枚数が異なる光路間においても、条件式(1)、(2)、(3)を満足するよう適切に設定することで、双方の被走査面上における像面照度比の差を抑制することを実現している。本実施形態においては、条件式(1)、(2)、(3)を満足するように、外側光路の被走査面を走査する光束の光量と、内側光路の被走査面を走査する光束の光量が、同量となる像高Lを90mmに設定している。そのために光量の測定を±90mm像高で行い、該像高にて各々の光路の光量が所望の同量となるよう光源の出力を調整している。
【0084】
更に本実施形態では、以下の条件を満足するように光走査装置の光量を設定している。
0.9Bm≦Ap≦1.1Bm ・・・(4)
0.9Am≦Bp≦1.1Am ・・・(5)
本実施形態においては以下の如く設定している。
Ap/Bm=0.969
Bp/Am=0.994
よって反射光学素子の枚数が異なる光路間において、反射光学素子の枚数が幾つの場合であっても各々の被走査面上における像面照度比の差を抑制することを実現している。
【0085】
以上、種々の実施形態について述べてきたが、本発明の範囲内で開示した技術事項を適宜組合せたり、あるいは変形させたりすることが可能である。
【0086】
(変形例1)
上述した実施形態においては、偏向器の偏向面に入射する光束がP偏光の場合を詳述したが、偏向器の偏向面に入射する光束がS偏光の場合でも、図8に示したように光源の出力を調整すればよい。この場合、反射光学素子の数が少ない方の第1の光路の被走査面の中央像高での光量をAp、最軸外像高のうちでより高い方の光量をAm、反射光学素子の数が多い方の第2の光路の被走査面の中央像高での光量をBp、最軸外像高のうちでより高い方の光量をBmとする。
【0087】
また、被走査面での中央像高に対する主走査方向の有効走査領域を±W、第1の光路と第2の光路の各被走査面での光量が同量となる像高をLとする。このとき、以下の3つの条件を満足するように、第1の光路、第2の光路の少なくとも一方の光路に対応する光源の出力を調整部で調整する。
Ap>Bp
Am<Bm
0.4W<L<0.8W
更に以下の条件を満足すると好ましい。
0.9Bm≦Ap≦1.1Bm
0.9Am≦Bp≦1.1Am
【0088】
(変形例2)
上述した実施形態では、感光ドラム面7y、7m、7c、7kへの各光路に対して偏向器5を共用したが、すべての光路に対して共用する構成でなく、例えば図11に示すように、各ドラム面に対して夫々一つの偏向器を設けても良い。個別の偏向器5y、5m、5c、5kを用いるものであっても良い。同様に結像光学系も共用のものでなく、個別のものを構成しても良い。
【0089】
また、反射光学素子の数が光路間で異なることを本発明では前提とするが、図11に示すように、反射光学素子を有さない光路と、反射光学素子80を所定枚数(例えば1枚)有する光路と、を対象にしても良い。この場合も、上述したような光源出力を調整することで、光路間の像面照度比の差を抑制することができる。
【0090】
(変形例3)
上述した各実施形態では、反射光学素子の数が異なる光路が2種類のみであったが、例えば反射光学素子の数が全ての光路で互いに異なる構成としてもよい。また、各実施形態では、偏向器の1つの偏向面で2つの光源からの光束を偏向しているが、本発明はこれに限らない。例えば、複数の偏向面の夫々で1つの光源からの光束のみを偏向しかつ各光路における反射光学素子の数が異なる構成や、1つの偏向面で3つ以上の光源からの光束を偏向する場合等にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0091】
1y、1m、1c、1k 光源手段
5 偏向手段
6ck、6ym 結像光学系
7y、7m、7c、7k 被走査面(感光ドラム面)
Ly、Lm、Lc、Lk 入射光学系
100c、100k 光源出力調整手段
【技術分野】
【0001】
本発明は光走査装置に関し、例えば、レーザービームプリンタ(LBP)やデジタル複写機、マルチファンクションプリンタ(多機能プリンタ)等の画像形成装置に用いられる光走査装置に好適である。
【背景技術】
【0002】
従来より、レーザービームプリンタ(LBP)やデジタル複写機等画像形成装置が備える光走査装置においては、画像信号に応じてレーザ光源等の光源から光変調された光束が出射される。そして光変調された光束を、例えばポリゴンミラー等の偏向器により周期的に偏向させている。そして、偏向させられた光束を、fθ特性を有する結像光学系によって像担持体としての感光体の感光面にスポット状に集光させることにより、感光面上を光走査して画像記録を行っている。
【0003】
また、カラー画像形成における各色に対応する複数の被走査面を同時に走査する、タンデム型の画像形成装置が提案されている。タンデム型の画像形成装置が備える光走査装置(以下、タンデム型の光走査装置とする)においては、偏向器により偏向走査された複数の光束の夫々が、対応する結像光学素子及び反射光学素子を介して異なる複数の被走査面に導光される。結像光学素子及び反射光学素子を介した光束は、被走査面としての感光面を、ほぼ一定の速度で走査する。
【0004】
しかし、各像高によって光強度の強弱(像面照度比)が生じるという問題がある。像面照度比は光源から出射される光束が、被走査面に到達するまでの間に通過する結像光学素子等の光学素子の透過率が光束の入射角によって異なること、結像光学素子の厚みが像高によって異なることや、fθ特性の欠陥などが原因となって生じる。
【0005】
また、タンデム型の光走査装置においては、偏向器により偏向させられた複数の光束の夫々が対応する複数の被走査面に到達するまでの光路長を等しくする必要がある。そのため、各部材の配置などを考慮すると、各光路間で配置される反射光学素子の枚数(反射面の数)を異ならせて構成することが多い。さらに、一般的に、反射光学素子は各光路において同一の反射率を有するものを使用するため、反射光学素子の枚数が異なる光路間では、被走査面における像面照度比の差が生じてしまう。像面照度比は、形成画像の主走査方向の濃度に影響を及ぼすため、タンデム型の光走査装置においては、異なる光路間で像面照度比の差を抑制する必要がある。
【0006】
特許文献1においては、被走査面上で像面照度比を測定する光量測定部と、光源から出射される光束の強度を補正する光強度補正部を有し、像面照度比の測定結果に基づいて電気的に像面照度比を補正する装置が開示されている。また、特許文献2においては、反射光学素子の夫々に対して異なる反射率を設定し、さらに反射率角度依存性を付加することによって、像面照度比を補正した装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−351234号公報
【特許文献2】特開2009−271352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の装置においては、光強度補正部等の手段を別途設ける必要があり、光走査装置の構成が複雑となってしまう。また、特許文献2の装置では、各々の光路における像面照度比を補正するために、光路毎に異なる反射率角度依存性を有する反射光学素子を設けなければならない。よって、特許文献1及び2に記載の像面照度比の補正方法では、光走査装置の製造コストが高くなるという問題がある。
【0009】
そこで、本発明の目的は、簡易な方法で各光路間の像面照度比の差を抑制し、高精彩印字に好適な光走査装置及びそれを用いた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の代表的な構成は、複数の光源と、前記複数の光源から出射した複数の光束を偏向させる偏向器と、前記偏向器の偏向面により偏向させられた複数の光束を複数の被走査面上に夫々集光する複数の結像光学系と、を有する走査光学装置であって、前記偏向器の偏向面に入射する前記複数の光束はP偏光であって、前記偏向器の偏向面と前記複数の被走査面との間の複数の光路の夫々において、副走査断面内で光束を反射する反射光学素子を少なくとも1枚備えており、前記複数の光路は、前記反射光学素子の数が異なる第1及び第2の光路を含み、前記第1及び第2の光路のうち前記反射光学素子の数が少ない方の光路に対応する被走査面において、中央像高での光量をAp、最軸外像高のうちでより高い方の光量をAm、前記第1及び第2の光路のうち前記反射光学素子の数が多い方の光路に対応する被走査面において、中央像高での光量をBp、最軸外像高のうちでより低い方の光量をBm、前記第1及び第2の光路の夫々に対応する被走査面における中央像高に対する主走査方向の有効走査領域を±W、前記第1の光路に対応する被走査面と前記第2の光路に対応する被走査面とで光量が同量となる像高をL、とするとき、Ap>Bp、Am<Bm、0.4W<L<0.8W、なる条件を満足するように、前記複数の光源のうち、前記第1及び第2の光路の少なくとも一方の光路に対応する光源の出力を調整する調整部を有することを特徴とする。
【0011】
また本発明の他の代表的な構成は、上記「P偏光」を「S偏光」に置き換え、かつ、上記「最軸外像高のうちでより低い方の光量をBm」を「最軸外像高のうちでより高い方の光量をBm」に置き換えた構成であることを特徴とする。
【0012】
本発明の更なる目的又はその他の特徴は、以下、添付の図面を参照して説明される好ましい実施形態によって明らかにされる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡易な方法で各光路間の像面照度比の差を抑制し、高精彩印字に好適な光走査装置及びそれを用いた画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)は第1の実施形態に係る光走査装置における光路毎の像面照度比を示す図、(b)は光源の出力を調整する調整部を示す図である。
【図2】(a)は第1の実施形態に係るタンデム型の光走査装置の主走査断面図、(b)は副走査断面図である。
【図3】第1の実施形態に係るカラー画像形成装置の要部概略図である。
【図4】第2の実施形態に係る光走査装置における光路毎の像面照度比を示す図である。
【図5】第3の実施形態に係る光走査装置における光路毎の像面照度比を示す図である。
【図6】第4の実施形態に係るタンデム型の光走査装置の副走査断面図である。
【図7】第4の実施形態に係る光走査装置の光路毎の像面照度比を示す図である。
【図8】本発明の作用を示す図である。
【図9】P偏光及びS偏光が結像光学素子に入射するときの、反射率及び透過率と入射角との関係を示した説明図である。
【図10】本実施形態で用いるAL(アルミニウム)で反射面を形成された反射光学素子の反射率特性を示す図である。
【図11】各被走査面に対して夫々一つの偏向器を設けた変形例を示す図である。
【図12】従来の光走査装置における光路毎の像面照度比を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。
【0016】
《第1の実施形態》
(画像形成装置)
図3は、本発明の実施形態のカラー画像形成装置の要部概略図である。カラー画像形成装置60は、光走査装置11により、光ビーム41、42、43、44を走査して、各々並行して像担持体としての感光体21、22、23、24の夫々の感光面上に画像情報を記録するタンデムタイプのカラー画像形成装置である。
【0017】
図3において、カラー画像形成装置60には、パーソナルコンピュータ等の外部機器52からR(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)の各色信号が入力する。これらの色信号は、装置内のプリンタコントローラ53によって、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各画像データ(ドットデータ)に変換される。これらの画像データは、光走査装置11に入力される。そして、光走査装置11からは、各画像データに応じて変調された光ビーム41、42、43、44が出射され、これらの光ビームによって感光ドラム21、22、23、24の感光面が主走査方向に走査される。
【0018】
本実施形態におけるカラー画像形成装置は光走査装置11により4つのビームを走査し、各々がY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色に対応している。そして各々平行して感光ドラム21、22、23、24面上に画像信号(画像情報)を記録し、カラー画像を高速に印字している。
【0019】
本実施形態におけるカラー画像形成装置は、上述の如く光走査装置11により各々の画像データに基づいた光ビームを用いて、各色の潜像を各々対応する感光ドラム21、22、23、24の感光面上に形成している。その後、現像器31、32、33、34によって各色のトナー像を形成し、搬送ベルト51により搬送される記録材に、各色のトナー像を多重転写して1枚のフルカラー画像を形成している。
【0020】
外部機器52としては、例えばCCDセンサを備えたカラー画像読取装置が用いられても良い。この場合には、このカラー画像読取装置と、カラー画像形成装置60とで、カラーデジタル複写機が構成される。
【0021】
(光走査装置)
図2(a)は本発明の第1の実施形態に係るタンデム型の光走査装置の、主走査方向の要部断面図(主走査断面図)、図2(b)はその副走査方向の要部断面図(副走査断面図)である。以下の説明において、副走査方向(Z方向)とは、偏向器の回転軸と平行な方向である。主走査断面とは、副走査方向を法線とする断面である。主走査方向(Y方向)とは、偏向器で偏向走査される光束が被走査面上を走査した位置を主走査断面に投射した方向である。副走査断面とは、主走査方向を法線とする断面である。
【0022】
図中、1y、1m、1c、1kは各々光源であり、半導体レーザより成っている。2y、2m、2c、2kは各々開口絞りであり、光源1y、1m、1c、1kから出射されたP偏光の発散光束を特定のビーム形状に成形している。3y、3m、3c、3kは各々集光レンズであり、主走査断面内と副走査断面内とで異なる屈折力(パワー)を有するアナモフィックコリメータレンズである。
【0023】
これにより、開口絞り2y、2m、2c、2kを通過した発散光束を主走査方向では平行光束(もしくは収束光束)、副走査方向では収束光束に変換している。即ち、集光レンズ3y、3m、3c、3kは、夫々の光束の集光状態を変換する光束変換手段として機能する。尚、光源1y、1m、1c、1kと、開口絞り2y、2m、2c、2kと、集光レンズ3y、3m、3c、3kとの各要素によって、入射光学系Ly、Lm、Lc、Lkが構成されている。
【0024】
尚、集光レンズ3y、3m、3c、3kを2つの光学素子(コリメータレンズとシリンダーレンズ)より構成しても良い。また、集光レンズ3y、3m、3c、3kの夫々を一体化して形成しても良い。5は偏向器としてのポリゴンミラーであり、モータより成る駆動手段(不図示)により図中矢印A方向に一定速度(等角速度)で回転している。光源1y、1mから出射した光束の夫々は偏向器5の偏向面5ymに入射し、光源1c、1kから出射した光束の夫々は偏向器5の偏向面5ckに入射している。6ym、6ckは集光機能とfθ特性とを有する結像光学系である。
【0025】
本実施形態における結像光学系6ymは第1の結像レンズ61ym及び第2の結像レンズ62ymを有し、結像光学系6ckは、第1の結像レンズ61ck及び第2の結像レンズ62ckを有している。本実施形態における第1の結像レンズ61ym、61ck及び第2の結像レンズ62ym、62ckは、主走査断面内と副走査断面内とで異なるパワーを有しており、プラスチック材料(樹脂)より成るトーリックレンズである。そして、偏向器5の偏向面5ym、5ckによって偏向された複数の光束の夫々を、被走査面としての感光ドラム面7y、7m、7c、7k上(被走査面上)に集光している。
【0026】
第1の結像レンズ61ym、61ck及び第2の結像レンズ62ym、62ckの夫々は、副走査断面内において、偏向器5の偏向面5ymと感光ドラム面7y、7mとの間、及び偏向器5の偏向面5ckと感光ドラム面7c、7kとの間を夫々共役関係にすることにより、偏向面5ym、5ckの面倒れ補償を行っている。第1の結像レンズ61ym、61ckは、光軸上では、主走査断面内において正のパワー、副走査断面内において負のパワーを有している。
【0027】
防塵ガラス9y、9m、9c、9kは、結像光学系6ym、6ckと被走査面7y、7m、7c、7kとの間に夫々配置されており、光走査装置内への塵埃の侵入を防いでいる。
【0028】
次に本実施形態の目的を達成するための手段と効果について、説明する。本実施形態の光走査装置は4つの光源1y、1m、1c、1kから出射した光束の夫々を異なる4つの被走査面7y、7m、7c、7kに導光し、光走査するものである。以下、光走査装置の機能説明においては、簡単のため1つの光源1kから発せられた光束の光路について説明する。
【0029】
光源である半導体レーザ1kから出射した発散光束は、絞り2kによって光量を制限され、対応する集光レンズ3kに入射する。集光レンズ3kは、光源1kからの光束を主走査断面内に関しては平行光束に変換し、副走査断面内に関しては偏向器5の偏向面5ckに集光するよう光束の状態を変換している。偏向器5に入射した光束は偏向面5ckにより偏向され、結像光学手段6ckに入射する。
【0030】
本実施形態において結像光学系6ckは、主に主走査方向にパワーを有するプラスチック製の第1の結像レンズ61ckと、主に副走査方向にパワーを有するプラスチック製の第2の結像レンズ62ckとより構成される。なお、結像光学系6ckは、一部のレンズのみをプラスチック製としても良い。また、結像光学系6ckは、偏向面5ckからの偏向光束を被走査面7kに集光するとともに偏向面5ckの面倒れを補償している。
【0031】
本実施形態における第1の結像レンズ61ck、第2の結像レンズ62ckは、光源1c、1kから出射する光束による2つの光路で共通に使用されている。なお、結像光学手段6ckの形態、製法はこれに限定されるものではない。上記結像光学系6ckにより被走査面7k上に結像した光束は、偏向器5の回転により被走査面7k上を矢印B方向(主走査方向)に等角速度で偏向走査する。本実施形態における光走査装置は、異なる4つの色に対応する画像情報を、同時に異なる4つの被走査面7y、7m、7c、7k上に記録するタンデム型の光走査装置であり、以下、それについて、詳細に説明する。
【0032】
本実施形態における4つの光源1y、1m、1c、1kは、各々主走査方向及び副走査方向に矩形状に配置されている。このうち、光源1c、1kからの光束を偏向器5の偏向面5ckへ、光源1y、1mからの光束を偏向器5の偏向面5ymへ入射させ、それぞれの光束を偏向器5の左右に分離している。さらに光源1c、1kからの光束を、副走査断面内で異なる入射角を持つように偏向器5に斜入射させることにより、第1の結像レンズ61ck及び第2の結像レンズ62ckの後に配置した反射光学素子(ミラー)81cにより空間分離している。尚、光源1y、1mからの光束に関しても同様である。
【0033】
このように偏向器5に対し異なる斜入射角を有する複数の光束を、偏向器5の異なる2つの偏向面51ym,51ckに入射させることにより、一つの偏向器5で4つの光束を同時に走査可能としている。
【0034】
空間的に偏向器5に最も遠い側の被走査面7y、7kに向かう光源1y、1kからの光束は、偏向器5により偏向走査された後、それぞれ1枚の反射光学素子81y、81kで偏向され、それぞれの被走査面7y、7kに導光される。以下、被走査面7y、7kに向かう光源1y、1kからの光束の光路を「外側光路」と称す。
【0035】
一方、空間的に偏向器5に最も近い側の被走査面7m、7cに向かう光源1m、1cからの光束は、偏向器5により偏向走査された後、それぞれ3枚の反射光学素子81m、82m、83m及び81c、82c、83cで偏向される。そして、それぞれの被走査面7m、7cに導光される。以下、被走査面7m、7cに向かう光源1m、1cからの光束の光路を「内側光路」と称す。なお、本実施例における各反射光学素子は、全て副走査断面内で光束を反射している。
【0036】
外側光路と内側光路において反射光学素子の枚数が相違している理由は、全ての光路においてその光路長を合わせるという制約条件のもと、光学素子と光路との物理的干渉、組立て性等を考慮し配置を決定するためである。尚、本実施形態では反射光学素子の枚数を内側光路で3枚、外側光路で1枚として構成したが、これに限定されることはない。複数の被走査面間の間隔や結像光学素子の位置等によって、内側光路及び外側光路における反射光学素子の枚数を決定すれば良い。
【0037】
本実施形態で用いられている結像光学素子(結像レンズ)は、プラスチック製である。光走査装置に用いるプラスチック製レンズは、製造の観点から反射防止コーティングを施していないものが主流であり、本実施形態もノンコートレンズである。反射防止コートの無いレンズに偏光状態の光束が入射する場合、画角により透過率が異なる。つまり被走査面上において像面照度が不均一になるという問題がある。
【0038】
このように発生する像面照度の不均一性を、反射光学素子にその逆特性を持たせる、つまり入射角に応じてその反射率が異なる(反射率角度依存性を有する)ような反射光学素子を用いることにより補正することが必要となる。しかしながら光走査装置の製造コストを抑えるためには、使用される反射光学素子全てを同一の膜構成を有する反射光学素子とする必要がある。ここで一般的に安価なAL(アルミニウム)で形成された反射光学素子の膜特性は、反射角が大きくなるとP偏光の反射率が落ちるため、反射光学素子が多く配された光路ほど被走査面上で端部像高での光量は低くなる傾向にある(これについては後に詳述する)。
【0039】
そしてタンデム型の光走査装置では、像面照度比を補正することもさることながら、複数の被走査面間において像面照度比の差を抑制することがより重要となる。これは複数の被走査面間で像面照度比に差があるということが、色毎の濃度むらとなり、走査領域内での色味むらとなるためである。通常、単色の濃度むらより、色重ね後の色味むらの方が視認性が高いため、タンデム型の光走査装置では、複数の被走査面間において像面照度比の差を抑制することが重要視されるのである。一般的に複数の光路同士の像面照度比が10ポイントを超えると、色重ね後の色味むらの視認性が高まり問題となる。
【0040】
図12に、従来の場合のシアン、ブラックの像面照度比を示す。図12には反射光学素子が1枚配された外側光路の内、被走査面7kに導光しているブラック光路と、3枚の反射光学素子が配された内側光路の内、被走査面7cに導光しているシアン光路の像面照度比を示している。従来の光走査装置においては、各々の光路の中央像高付近で光量を測定し、同量の光量となるように光源の出力を調整していた。すると、最軸外像高にて最も光路間での像面照度比が大きくなってしまい、色重ね後の中央像高と最軸外像高との色味むらが顕著に発生してしまう。
【0041】
(走査光学系)
走査光学系の具体的数値例を、以下に示す。
【0042】
本実施形態における光学配置を表1に、レンズ面形状を表2に夫々示す。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
本実施形態の第1の結像レンズ61ym、61ck、第2の結像レンズ62ym、62ckの入射面、出射面の母線形状は、10次までの関数として表せる非球面形状により構成している。結像レンズ61ym、61ck、62ym、62ckのそれぞれのレンズ面は以下に述べる非球面式から定義される。そして、各レンズ面の面形状は、各レンズ面と光軸(X軸)との交点を原点とし、主走査断面内において光軸と直交する軸をY軸としたとき、主走査方向と対応する母線方向が、
【0046】
【数1】
【0047】
(但し、Rは母線曲率半径、K、B4、B6、B8、B10は非球面係数)なる式で表されるものである。
【0048】
また、レンズ面の面形状は、副走査断面内において光軸と直交する軸をZ軸とすると、副走査方向と対応する子線方向が、
【0049】
【数2】
【0050】
なる式で表されるものである。Sは母線方向の各々の位置における母線の法線を含み主走査断面と垂直な面内に定義される子線形状である。
【0051】
ここで、主走査方向に光軸からY離れた位置における副走査方向の曲率半径(子線曲率半径)r´は、
【0052】
【数3】
【0053】
(但し、rは光軸上の子線曲率半径、D2、D4、D6、D8、D10は子線変化係数)なる式で表される。
【0054】
また、Mj_kは子線方向の非球面を表す係数である。例えば、Mj_1はZの1次項であり、副走査方向の面の傾き(子線チルト)を表している。本実施形態では、主走査方向に0、2、4、6、8、10次の係数を使って子線チルト量を変化させている。
【0055】
また、表1に示した各係数には添え字u及びlが付いている。それぞれUpper側、Lower側の意味であり、結像光学系の各レンズ面頂点に対し、光源1y、1m、1c、1kがある側をLower側、光源1y、1m、1c、1kがある側と反対側をUpper側と定義する。添え字U及びlが付いていない係数については、Upper側、Lower側に共通の係数である。
【0056】
本実施形態では、図2に示した如く感光ドラム7y、7mに到達する光路で第一の結像レンズ61ym、及び第二の結像レンズ62ymを共用している。また、結像レンズ62ymの入射面、及び出射面に関しては、副走査断面内において2つのトーリック面を重ねたことを特徴とする多段トーリック面より成っている。
【0057】
同様に図2に示した如く感光ドラム7c,7kに到達する光路で第一の結像レンズ61ck、及び第二の結像レンズ62ckを共用している。また、結像レンズ62ckの入射面、及び出射面に関しては、副走査断面内において2つのトーリック面を重ねたことを特徴とする多段トーリック面より成っている。
【0058】
(偏光と反射光量および像面照度比)
本発明の作用に関連して、偏光と反射光量および像面照度比について説明する。図9は、例えば屈折率1.524の偏向器の偏向面にP偏光及びS偏光で光束を入射させたときの反射率及び透過率の角度依存性を示した説明図である。本実施例においては、偏向器の偏向面にP偏光の光束を入射させた場合は結像光学素子に入射する光束もP偏光となり、偏向器の偏向面にS偏光の光束を入射させた場合は結像光学素子に入射する光束もS偏光となる。同図から明らかなように結像光学素子のレンズ面におけるP偏光の反射率は、入射角が増大するほど低くなり、入射角がブリュースター角に達して一旦ゼロになった後、今度は入射角の増大に伴い大きくなる。主走査方向において軸上から軸外に向かうほどレンズ面に対する入射角は増大するが、通常の光走査装置においてブリュースター角を越えることは無い。本実施形態に係る光走査装置も、レンズ面に対する光束の入射角がブリュースター角以下となるように構成されている。したがって、P偏光の場合、結像光学素子のレンズ面での反射率は軸上から軸外に向かい低くなり、逆に透過率は高くなっていくことになる。よってP偏光の場合、fθレンズおよび防塵ガラスを介して、走査領域中央部に対し走査領域端部での透過光量が上がる像面照度比となる。一方S偏光の場合は逆に走査領域中央部に対し走査領域端部での透過光量が下がる像面照度比となる。
【0059】
図10に本実施形態で用いるAL(アルミニウム)で反射面を形成された反射光学素子の反射率特性を示す。ここで、偏向器の偏向面にP偏光を入射させた場合を考える。その場合、反射光学素子の反射面に関し、入射角が15度乃至60度の範囲では、入射角が大きくなるほど、反射率が低くなり、反射光量が低下していくことがわかる。即ち、光走査装置において走査領域中央部から走査領域端部にいくほど入射角が大きくなることから、走査領域端部にいくほど走査領域中央部に対し反射光量が下がる。そして反射面の数が増えれば、図8に示すように、走査領域端部での反射光量の低下はより大きくなる。
【0060】
一方、偏向器の偏向面にS偏光を入射させた場合は、反射光学素子の反射面に関し、入射角が15度乃至60度の範囲では反射率が高くなり、反射光量が増加していくことがわかる。即ち、光走査装置において走査領域端部にいくほど入射角が大きくなることから、走査領域端部にいくほど走査領域中央部に対し反射光量が上がる。そして反射面の数が増えれば、図8に示すように、走査領域端部での反射光量の上昇はより大きくなる。本発明においては、以下に詳述するように、光源出力調整により光路間の像面照度比の差の抑制を図る(図8)。
【0061】
なお、P偏光とは、該P偏光の成分比が90%以上であることを指している。また、S偏光とは、該S偏光の成分比が90%以上であることを指している。
【0062】
(光路間の像面照度比の差の抑制)
本実施形態では、偏向器の偏向面に入射する光束をP偏光とし、偏向器の偏向面から複数の被走査面に向かう複数の光路のうち、配置された反射光学素子の数が異なる2つの光路同士の光量を調整する場合を考える。ここで、各光路の中央像高に対する主走査方向の有効走査領域を±W、一方の光路の被走査面を走査する光束の光量と他方の光路の被走査面を走査する光束の光量が同量となる像高をLとする。また、反射光学素子の枚数が少ない方の第1の光路に対応する被走査面上の中央像高での光量をAp、最軸外像高のうちでより高い方の光量をAmとする。そして、反射光学素子の枚数が多い方の第2の光路に対応する被走査面上の中央像高での光量をBp、最軸外像高のうちでより低い方の光量をBmとする。
【0063】
このとき、以下の3つの条件式を満足するように、第1の光路、第2の光路の少なくとも一方の光路に対応する光源の出力を調整部で調整する(図1(b)に調整部100c、100kを示す)。
Ap<Bp ・・・(1)
Am>Bm ・・・(2)
0.4W<L<0.8W ・・・(3)
条件式(1)、(2)、(3)の条件を外れると、色重ね後の色味むらの視認性が高まり問題となるので好ましくないものとなる。
【0064】
ここで、図1(a)に本実施形態におけるシアン、ブラックの像面照度比を示す。図1(a)に示す如く本実施形態においては以下のように設定している。
W=156(mm)、L=100(mm)、L/W=0.64、Ap=196(μW)、Bp=201(μW)、Am=202(μW)、Bm=197(μW)
さらに望ましくは上記条件式(3)を次の条件式(3a)に設定するのが好ましい。
0.5W<L<0.7W ・・・(3a)
図1(a)より反射光学素子の枚数が異なる光路間においても、条件式(1)、(2)、(3)を満足するよう適切に設定することで、双方の被走査面上における像面照度比の差を抑制することを実現している。本実施形態においては、条件式(1)、(2)、(3)を満足するように、外側光路の被走査面を走査する光束の光量と、内側光路の被走査面を走査する光束の光量が、同量となる像高Lを100mmに設定している。そのために光量の測定を、図1(a)の円で囲んだ±100mm像高で行い、該像高にて各々の光路の光量が同量となるよう光源の出力を調整している。
【0065】
なお、光源の出力を調整は、調整部100c及び100kの少なくとも一方によって、光源1c及び光源1kの少なくとも一方の出力を調整することにより行うことができる。以上のような調整を、光源1y及び光源1mに対しても行うことにより、各色の像面照度比の差を抑制することができる。なお、本実施例では、シアンとブラックとの像面照度比の差を抑制するために光源1c及び光源1kの少なくとも一方の出力を調整しているが、例えばシアンとイエローや、ブラックとマゼンタとの像面照度比の差を抑制するように各光源の出力を調整しても良い。
【0066】
更に本実施形態では、以下の条件を満足するように光走査装置の光量を設定している。
0.9Bm≦Ap≦1.1Bm ・・・(4)
0.9Am≦Bp≦1.1Am ・・・(5)
条件式(4)(5)の条件を外れると、各光路同士の像高による色重ね後の色味むらの視認性が高まり、好ましいものではない。本実施形態においては、条件式(4)(5)を満足するよう、以下の如く具体的数値を設定している。
Ap/Bm=0.971
Bp/Am=1.019
さらに望ましくは、次の如く設定するのが良い。
0.95Bm≦Ap≦1.05Bm ・・・(4a)
0.95Am≦Bp≦1.05Am ・・・(5a)
これにより、反射光学素子の枚数が異なる光路間においても、条件式(4)(5)を満足するよう適切に設定することで、双方の被走査面上における像面照度比の差を抑制することを実現している。
【0067】
《第2の実施形態》
次に本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態において、第1の実施形態と異なる点は、被走査面を走査する光束の光量を測定する像高を変更し、予め設計段階で予測した像面照度比より算出した光量オフセット量を加味した光量を光量調整値として設定した点である。その他の構成及び光学的作用は第1の実施形態と同様であり、これにより同様の効果を得ている。
【0068】
図4に本実施形態のシアン光路、ブラック光路の像面照度比を示す。光走査装置の構成は第1の実施形態と同様であるため、各々の光路の照度分布は第1の実施形態と同様である。第1の実施形態では、被走査面を走査する光束の光量を±100mm像高で測定し、該像高にて各々の光路の光量が同じ所望の値となるよう光源の出力を調整している。これにより、色重ね後の中央像高と最軸外像高の色味むらを低減している。しかし光量の測定においては、所望の像高に走査線湾曲等、その他光学性能を測定する測定手段を設けられていて光量測定手段を設けられない場合がある。
【0069】
そこで、本実施形態では被走査面を走査する光束の光量を中央像高付近(図4丸枠)で測定し、予め設計段階で予測した像面照度比より算出した光量オフセット値を加味した光量に調整している。各々の光路の被走査面における所望の光量が200μWであり、ブラック光路の像面照度比ppが3%(設計値)の場合、200μWに3%/2=1.5%を差し引いた197μWを中央像高における光量の調整値とし調整する。
【0070】
一方、シアン光路の像面照度比ppが−2%(設計値)の場合、シアン光路においては像面照度比がブラック光路と相反するため、像面照度比2%/2=1%を付加した202μWを中央像高における光量の調整値とし調整する。尚、光量のオフセット値の算出方法はこれに限定されるものではなく、像面照度比の設計値のプロファイルによって考慮されるべきものである。
【0071】
本実施形態においては、第1の実施形態に対し、被走査面を走査する光束の光量の測定及び調整像高を変更したのみである。このため、上記条件式(1)乃至(5)に用いられるパラメータの値は同じであり、第1の実施形態と同様、条件式(1)、(2)、(3)、4)、(5)を満足している。
【0072】
《第3の実施形態》
本実施形態において、第1の実施形態と異なる点は、像面照度比が傾きを有している点である。その他の構成及び光学的作用は第1の実施形態と同様であり、これにより同様の効果を得ている。図5に本実施形態の光走査装置のシアン光路、ブラック光路の像面照度比を示す。図5で、ブラック光路の像面照度比が傾きを有していることが分かる。像面照度比が傾く原因としては、偏向器の偏向面の主走査方向における反射率むら、プラスチック製の結像光学素子の複屈折分布、光源の偏光方向の傾き等が考えられる。
【0073】
しかし上記の原因による像面照度の傾きが生じていても、本実施形態によれば色重ね後の色味むらを低減することが出来る。本実施形態においては、条件式(3)を満足するように外側光路の被走査面を走査する光束の光量と内側光路の被走査面を走査する光束の光量が同量となる像高Lを95mmに設定している。そのために光量の測定を95mm像高で行い、該像高にて各々の光路の光量が所望の同量となるよう光源の出力を調整している。
【0074】
上記の結果により、本実施形態では上記条件式(3)を満足するように中央像高に対する主走査方向の有効走査領域±W、一方の光路の被走査面を走査する光束の光量と他方の光路の被走査面を走査する光束の光量が同量となる像高Lを以下の如く設定している。
【0075】
また条件式(1)、(2)を満足するように副走査断面内において前記偏向器の偏向面から前記被走査面に向かう光路中に配された前記反射光学素子の枚数が最も少ない第1の光路の前記被走査面上の中央像高での光量をAp、最軸外像高での光量をAmとする。また、前記偏向器の偏向面から前記被走査面に向かう光路中に配された前記反射光学素子の枚数が最も多い第2の光路の前記被走査面上の中央像高での光量をBp、最軸外像高でより光量が低い側の光量をBmとする。このとき、以下の如く設定している。
W=156(mm)、L=95(mm)、L/W=0.61、Ap=196(μW)、Bp=202(μW)、Am=204(μW)、Bm=198(μW)
図5より、反射光学素子の枚数が異なる光路間においても、条件式(1)、(2)、(3)を満足するよう適切に設定することで、双方の被走査面上における像面照度比の差を抑制することを実現している。本実施形態においては、条件式(1)、(2)、(3)を満足するように外側光路の被走査面を走査する光束の光量と、内側光路の被走査面を走査する光束の光量が、同量となる像高Lを95mmに設定している。そのために、光量の測定を±95mm像高で行い、該像高にて各々の光路の光量が所望の同量となるよう光源の出力を調整している。
【0076】
更に本実施形態では、以下のなる条件を満足するように光走査装置の光量を設定している。
0.9Bm≦Ap≦1.1Bm ・・・(4)
0.9Am≦Bp≦1.1Am ・・・(5)
本実施形態においては以下の如く設定している。
Ap/Bm=0.962
Bp/Am=1.019
よって反射光学素子の枚数が異なる光路間において、像面照度が傾きを有している場合でも各々の被走査面上における像面照度比の差を抑制することを実現している。
【0077】
《第4の実施形態》
本実施形態において、第1の実施形態と異なる点は、内側光路に配された反射光学素子が2枚である点である。その他の構成及び光学的作用は第1の実施形態と同様であり、これにより同様の効果を得ている。
【0078】
図6に本実施形態のタンデム型の光走査装置の副走査要部断面図、図7に本実施形態の光走査装置のシアン光路、ブラック光路の像面照度比を示す。図6に示すように、空間的に偏向器5に最も近い側の被走査面7m、7cに向かう光源1m、1cからの光束は、偏向器5により偏向走査される。その後、それぞれ2枚の反射光学素子81m、82mと、81c、82cとで偏向され、それぞれの被走査面7m、7cに導光される。
【0079】
図7には反射光学素子が1枚配された外側光路の内、被走査面7kに導光しているブラック光路と、上記のように2枚の反射光学素子が配された内側光路の内、被走査面7cに導光しているシアン光路の像面照度比を示している。第1の実施形態に比べて、シアン光路に配されている反射光学素子が1枚少ないため、最軸外像高における像面照度が第1の実施形態ほど落ちていないことがわかる。このような場合においても、本実施形態によれば色重ね後の色味むらを低減することが出来る。
【0080】
本実施形態においては、条件式(3)を満足するように、外側光路の被走査面を走査する光束の光量と内側光路の被走査面を走査する光束の光量が同量となる像高Lを90mmに設定している。そのために光量の測定を90mm像高で行い、該像高にて各々の光路の光量が所望の同量となるよう光源の出力を調整している。
【0081】
上記の結果により、本実施形態では上記条件式(3)を満足するように中央像高に対する主走査方向の有効走査領域±W、一方の光路の被走査面を走査する光束の光量と他方の光路の被走査面を走査する光束の光量が同量となる像高Lを以下の如く設定している。
【0082】
また条件式(1)、(2)を満足するように、副走査断面内において偏向器の偏向面から被走査面に向かう光路中に配された反射光学素子の枚数が最も少ない第1の光路の被走査面上の中央像高での光量をAp、最軸外像高でより光量が高い側の光量をAmとする。また、偏向器の偏向面から被走査面に向かう光路中に配された反射光学素子の枚数が最も多い第2の光路の被走査面上の中央像高での光量をBp、最軸外像高での光量をBmとする。このとき、以下の如く設定している。
W=156(mm)、L=90(mm)、L/W=0.58、Ap=196(μW)、Bp=199(μW)、Am=203(μW)、Bm=200(μW)
【0083】
図7より反射光学素子の枚数が異なる光路間においても、条件式(1)、(2)、(3)を満足するよう適切に設定することで、双方の被走査面上における像面照度比の差を抑制することを実現している。本実施形態においては、条件式(1)、(2)、(3)を満足するように、外側光路の被走査面を走査する光束の光量と、内側光路の被走査面を走査する光束の光量が、同量となる像高Lを90mmに設定している。そのために光量の測定を±90mm像高で行い、該像高にて各々の光路の光量が所望の同量となるよう光源の出力を調整している。
【0084】
更に本実施形態では、以下の条件を満足するように光走査装置の光量を設定している。
0.9Bm≦Ap≦1.1Bm ・・・(4)
0.9Am≦Bp≦1.1Am ・・・(5)
本実施形態においては以下の如く設定している。
Ap/Bm=0.969
Bp/Am=0.994
よって反射光学素子の枚数が異なる光路間において、反射光学素子の枚数が幾つの場合であっても各々の被走査面上における像面照度比の差を抑制することを実現している。
【0085】
以上、種々の実施形態について述べてきたが、本発明の範囲内で開示した技術事項を適宜組合せたり、あるいは変形させたりすることが可能である。
【0086】
(変形例1)
上述した実施形態においては、偏向器の偏向面に入射する光束がP偏光の場合を詳述したが、偏向器の偏向面に入射する光束がS偏光の場合でも、図8に示したように光源の出力を調整すればよい。この場合、反射光学素子の数が少ない方の第1の光路の被走査面の中央像高での光量をAp、最軸外像高のうちでより高い方の光量をAm、反射光学素子の数が多い方の第2の光路の被走査面の中央像高での光量をBp、最軸外像高のうちでより高い方の光量をBmとする。
【0087】
また、被走査面での中央像高に対する主走査方向の有効走査領域を±W、第1の光路と第2の光路の各被走査面での光量が同量となる像高をLとする。このとき、以下の3つの条件を満足するように、第1の光路、第2の光路の少なくとも一方の光路に対応する光源の出力を調整部で調整する。
Ap>Bp
Am<Bm
0.4W<L<0.8W
更に以下の条件を満足すると好ましい。
0.9Bm≦Ap≦1.1Bm
0.9Am≦Bp≦1.1Am
【0088】
(変形例2)
上述した実施形態では、感光ドラム面7y、7m、7c、7kへの各光路に対して偏向器5を共用したが、すべての光路に対して共用する構成でなく、例えば図11に示すように、各ドラム面に対して夫々一つの偏向器を設けても良い。個別の偏向器5y、5m、5c、5kを用いるものであっても良い。同様に結像光学系も共用のものでなく、個別のものを構成しても良い。
【0089】
また、反射光学素子の数が光路間で異なることを本発明では前提とするが、図11に示すように、反射光学素子を有さない光路と、反射光学素子80を所定枚数(例えば1枚)有する光路と、を対象にしても良い。この場合も、上述したような光源出力を調整することで、光路間の像面照度比の差を抑制することができる。
【0090】
(変形例3)
上述した各実施形態では、反射光学素子の数が異なる光路が2種類のみであったが、例えば反射光学素子の数が全ての光路で互いに異なる構成としてもよい。また、各実施形態では、偏向器の1つの偏向面で2つの光源からの光束を偏向しているが、本発明はこれに限らない。例えば、複数の偏向面の夫々で1つの光源からの光束のみを偏向しかつ各光路における反射光学素子の数が異なる構成や、1つの偏向面で3つ以上の光源からの光束を偏向する場合等にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0091】
1y、1m、1c、1k 光源手段
5 偏向手段
6ck、6ym 結像光学系
7y、7m、7c、7k 被走査面(感光ドラム面)
Ly、Lm、Lc、Lk 入射光学系
100c、100k 光源出力調整手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光源と、前記複数の光源から出射した複数の光束を偏向させる偏向器と、前記偏向器の偏向面により偏向させられた複数の光束を複数の被走査面上に夫々集光する複数の結像光学系と、を有する走査光学装置であって、
前記偏向器の偏向面に入射する前記複数の光束はP偏光であって、
前記偏向器の偏向面と前記複数の被走査面との間の複数の光路の夫々において、副走査断面内で光束を反射する反射光学素子を少なくとも1枚備えており、
前記複数の光路は、前記反射光学素子の数が異なる第1及び第2の光路を含み、
前記第1及び第2の光路のうち前記反射光学素子の数が少ない方の光路に対応する被走査面において、中央像高での光量をAp、最軸外像高のうちでより高い方の光量をAm、
前記第1及び第2の光路のうち前記反射光学素子の数が多い方の光路に対応する被走査面において、中央像高での光量をBp、最軸外像高のうちでより低い方の光量をBm、
前記第1及び第2の光路の夫々に対応する被走査面における中央像高に対する主走査方向の有効走査領域を±W、
前記第1の光路に対応する被走査面と前記第2の光路に対応する被走査面とで光量が同量となる像高をL、
とするとき、
Ap<Bp
Am>Bm
0.4W<L<0.8W
なる条件を満足するように、前記複数の光源のうち、前記第1及び第2の光路の少なくとも一方の光路に対応する光源の出力を調整する調整部を有することを特徴とする光走査装置。
【請求項2】
前記調整部は、
0.9Bm≦Ap≦1.1Bm
0.9Am≦Bp≦1.1Am
なる条件を更に満足するように、前記複数の光源のうち、前記第1及び第2の光路の少なくとも一方の光路に対応する光源の出力を調整することを特徴とする請求項1に記載の光走査装置。
【請求項3】
前記像高Lは、前記複数の被走査面で測定した光量に対して、像面照度の設計値から算出したオフセット値を加味した時の光量が同量となる像高であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光走査装置。
【請求項4】
前記第1の光路は、前記偏向器から空間的に最も遠い被走査面に向かう光路であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光走査装置。
【請求項5】
前記第2の光路は、前記偏向器から空間的に最も近い被走査面に向かう光路であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光走査装置。
【請求項6】
前記複数の光路に配置される前記反射光学素子の夫々の膜構成は、全て同一であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の光走査装置。
【請求項7】
前記結像光学系を構成する結像光学素子の内、少なくとも一つはプラスチック製であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の光走査装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の前記光走査装置と、前記複数の被走査面に配置され、互いに異なった色の画像を形成する複数の像担持体とを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
外部機器から入力した色信号を異なった色の画像データに変換して前記光走査装置に入力せしめるプリンタコントローラを有していることを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
複数の光源と、前記複数の光源から出射した複数の光束を偏向させる偏向器と、前記偏向器の偏向面により偏向させられた複数の光束を複数の被走査面上に夫々集光する複数の結像光学系と、を有する走査光学装置であって、
前記偏向器の偏向面に入射する前記複数の光束はS偏光であって、
前記偏向器の偏向面と前記複数の被走査面との間の複数の光路の夫々において、副走査断面内で光束を反射する反射光学素子を少なくとも1枚備えており、
前記複数の光路は、前記反射光学素子の数が異なる第1及び第2の光路を含み、
前記第1及び第2の光路のうち前記反射光学素子の数が少ない方の光路に対応する被走査面において、中央像高での光量をAp、最軸外像高のうちでより高い方の光量をAm、
前記第1及び第2の光路のうち前記反射光学素子の数が多い方の光路に対応する被走査面において、中央像高での光量をBp、最軸外像高のうちでより高い方の光量をBm、
前記第1及び第2の光路の夫々に対応する被走査面における中央像高に対する主走査方向の有効走査領域を±W、
前記第1の光路に対応する被走査面と前記第2の光路に対応する被走査面とで光量が同量となる像高をL、
とするとき、
Ap>Bp
Am<Bm
0.4W<L<0.8W
なる条件を満足するように、前記複数の光源のうち、前記第1及び第2の光路の少なくとも一方の光路に対応する光源の出力を調整する調整部を有することを特徴とする光走査装置。
【請求項11】
前記調整部は、
0.9Bm≦Ap≦1.1Bm
0.9Am≦Bp≦1.1Am
なる条件を更に満足するように、前記複数の光源のうち、前記第1及び第2の光路の少なくとも一方の光路に対応する光源の出力を調整することを特徴とする請求項10に記載の光走査装置。
【請求項12】
前記像高Lは、前記複数の被走査面で測定した光量に対して、像面照度の設計値から算出したオフセット値を加味した時の光量が同量となる像高であることを特徴とする請求項10又は11に記載の光走査装置。
【請求項13】
前記第1の光路は、前記偏向器から空間的に最も遠い被走査面に向かう光路であることを特徴とする請求項10乃至12のいずれか1項に記載の光走査装置。
【請求項14】
前記第2の光路は、前記偏向器から空間的に最も近い被走査面に向かう光路であることを特徴とする請求項10乃至13のいずれか1項に記載の光走査装置。
【請求項15】
前記複数の光路に配置される前記反射光学素子の夫々の膜構成は、全て同一であることを特徴とする請求項10乃至14のいずれか1項に記載の光走査装置。
【請求項16】
前記結像光学系を構成する結像光学素子の内、少なくとも一つはプラスチック製であることを特徴とする請求項10乃至15のいずれか1項に記載の光走査装置。
【請求項17】
請求項1乃至16のいずれか1項に記載の前記光走査装置と、前記複数の被走査面に配置され、互いに異なった色の画像を形成する複数の像担持体とを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項18】
外部機器から入力した色信号を異なった色の画像データに変換して前記光走査装置に入力せしめるプリンタコントローラを有していることを特徴とする請求項17に記載の画像形成装置。
【請求項1】
複数の光源と、前記複数の光源から出射した複数の光束を偏向させる偏向器と、前記偏向器の偏向面により偏向させられた複数の光束を複数の被走査面上に夫々集光する複数の結像光学系と、を有する走査光学装置であって、
前記偏向器の偏向面に入射する前記複数の光束はP偏光であって、
前記偏向器の偏向面と前記複数の被走査面との間の複数の光路の夫々において、副走査断面内で光束を反射する反射光学素子を少なくとも1枚備えており、
前記複数の光路は、前記反射光学素子の数が異なる第1及び第2の光路を含み、
前記第1及び第2の光路のうち前記反射光学素子の数が少ない方の光路に対応する被走査面において、中央像高での光量をAp、最軸外像高のうちでより高い方の光量をAm、
前記第1及び第2の光路のうち前記反射光学素子の数が多い方の光路に対応する被走査面において、中央像高での光量をBp、最軸外像高のうちでより低い方の光量をBm、
前記第1及び第2の光路の夫々に対応する被走査面における中央像高に対する主走査方向の有効走査領域を±W、
前記第1の光路に対応する被走査面と前記第2の光路に対応する被走査面とで光量が同量となる像高をL、
とするとき、
Ap<Bp
Am>Bm
0.4W<L<0.8W
なる条件を満足するように、前記複数の光源のうち、前記第1及び第2の光路の少なくとも一方の光路に対応する光源の出力を調整する調整部を有することを特徴とする光走査装置。
【請求項2】
前記調整部は、
0.9Bm≦Ap≦1.1Bm
0.9Am≦Bp≦1.1Am
なる条件を更に満足するように、前記複数の光源のうち、前記第1及び第2の光路の少なくとも一方の光路に対応する光源の出力を調整することを特徴とする請求項1に記載の光走査装置。
【請求項3】
前記像高Lは、前記複数の被走査面で測定した光量に対して、像面照度の設計値から算出したオフセット値を加味した時の光量が同量となる像高であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光走査装置。
【請求項4】
前記第1の光路は、前記偏向器から空間的に最も遠い被走査面に向かう光路であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光走査装置。
【請求項5】
前記第2の光路は、前記偏向器から空間的に最も近い被走査面に向かう光路であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光走査装置。
【請求項6】
前記複数の光路に配置される前記反射光学素子の夫々の膜構成は、全て同一であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の光走査装置。
【請求項7】
前記結像光学系を構成する結像光学素子の内、少なくとも一つはプラスチック製であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の光走査装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の前記光走査装置と、前記複数の被走査面に配置され、互いに異なった色の画像を形成する複数の像担持体とを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
外部機器から入力した色信号を異なった色の画像データに変換して前記光走査装置に入力せしめるプリンタコントローラを有していることを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
複数の光源と、前記複数の光源から出射した複数の光束を偏向させる偏向器と、前記偏向器の偏向面により偏向させられた複数の光束を複数の被走査面上に夫々集光する複数の結像光学系と、を有する走査光学装置であって、
前記偏向器の偏向面に入射する前記複数の光束はS偏光であって、
前記偏向器の偏向面と前記複数の被走査面との間の複数の光路の夫々において、副走査断面内で光束を反射する反射光学素子を少なくとも1枚備えており、
前記複数の光路は、前記反射光学素子の数が異なる第1及び第2の光路を含み、
前記第1及び第2の光路のうち前記反射光学素子の数が少ない方の光路に対応する被走査面において、中央像高での光量をAp、最軸外像高のうちでより高い方の光量をAm、
前記第1及び第2の光路のうち前記反射光学素子の数が多い方の光路に対応する被走査面において、中央像高での光量をBp、最軸外像高のうちでより高い方の光量をBm、
前記第1及び第2の光路の夫々に対応する被走査面における中央像高に対する主走査方向の有効走査領域を±W、
前記第1の光路に対応する被走査面と前記第2の光路に対応する被走査面とで光量が同量となる像高をL、
とするとき、
Ap>Bp
Am<Bm
0.4W<L<0.8W
なる条件を満足するように、前記複数の光源のうち、前記第1及び第2の光路の少なくとも一方の光路に対応する光源の出力を調整する調整部を有することを特徴とする光走査装置。
【請求項11】
前記調整部は、
0.9Bm≦Ap≦1.1Bm
0.9Am≦Bp≦1.1Am
なる条件を更に満足するように、前記複数の光源のうち、前記第1及び第2の光路の少なくとも一方の光路に対応する光源の出力を調整することを特徴とする請求項10に記載の光走査装置。
【請求項12】
前記像高Lは、前記複数の被走査面で測定した光量に対して、像面照度の設計値から算出したオフセット値を加味した時の光量が同量となる像高であることを特徴とする請求項10又は11に記載の光走査装置。
【請求項13】
前記第1の光路は、前記偏向器から空間的に最も遠い被走査面に向かう光路であることを特徴とする請求項10乃至12のいずれか1項に記載の光走査装置。
【請求項14】
前記第2の光路は、前記偏向器から空間的に最も近い被走査面に向かう光路であることを特徴とする請求項10乃至13のいずれか1項に記載の光走査装置。
【請求項15】
前記複数の光路に配置される前記反射光学素子の夫々の膜構成は、全て同一であることを特徴とする請求項10乃至14のいずれか1項に記載の光走査装置。
【請求項16】
前記結像光学系を構成する結像光学素子の内、少なくとも一つはプラスチック製であることを特徴とする請求項10乃至15のいずれか1項に記載の光走査装置。
【請求項17】
請求項1乃至16のいずれか1項に記載の前記光走査装置と、前記複数の被走査面に配置され、互いに異なった色の画像を形成する複数の像担持体とを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項18】
外部機器から入力した色信号を異なった色の画像データに変換して前記光走査装置に入力せしめるプリンタコントローラを有していることを特徴とする請求項17に記載の画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−101333(P2013−101333A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−227979(P2012−227979)
【出願日】平成24年10月15日(2012.10.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年10月15日(2012.10.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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