説明

光集積デバイス及びその製造方法

【課題】光集積デバイスにおける光半導体素子と光導波路との間の光結合効率を高めることができ、温度特性の向上をはかる。
【解決手段】基板上に光半導体素子と光導波路を集積化した光集積デバイスであって、基板11上の一部に設けられた下部クラッド層12と、基板11上に設けられ、光出射端面又は光入射端面を下部クラッド層12の一端面に対向させて配置された光半導体素子15と、下部クラッド層12上に設けられ、先端部分が下部クラッド層12の一端部に向けてテーパー状に絞られた光導波路13と、光半導体素子15の光出射端面又は光入射端面と光導波路13の先端部分とを結ぶ線に沿って、下部クラッド層12上及び光導波路13の先端部分上に設けられた、下部クラッド層12よりも屈折率の大きな上部クラッド層14とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に光半導体素子と光導波路を集積化した光集積デバイス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIの高集積化に伴う配線遅延の問題を解決する技術として、光配線技術が注目されている。光配線技術は、光導波路を用いて光信号を伝送する方式であり、LSIの微細化に伴う配線抵抗や配線間容量の増大が発生せず、更なる動作速度の高速化が期待できる。このような光配線を用いて信号伝送を行うLSIとして、光電気混載LSIが提案されている。
【0003】
光電気混載LSIにおいては、各機能ブロックによる信号処理は電気で行われ、これらの機能ブロック間は光信号で伝送される。このため、伝送する光信号を電気信号に変換する発光素子及び信号処理が行われた電気信号を光信号に変換する受光素子が必要である。電気信号を光信号に変換する発光素子としては、端面発光レーザや面発光レーザ(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser)などの半導体レーザが用いられており、GHz帯での動作の報告例もある。
【0004】
これらの半導体レーザと光導波路の集積形態である光集積デバイスとしては、光導波路の上部にウェハ接合によりレーザ構造が形成されたもの(非特許文献1)、光導波路とレーザ構造が有機膜を介して接着されたもの(非特許文献2)、基板であるSi上に光導波路とレーザ構造を直接搭載されたもの(特許文献1)などがある。
【0005】
しかし、非特許文献1に記載の構造は、レーザ構造の下部に空気層を有するため、レーザ部で発生した熱を効率良く放熱することが難しく、良好な温度特性が得られていない。また、非特許文献2に記載の構造は、有機膜上にレーザ素子が形成されているため、放熱性が悪く、良好な温度特性が得られない。さらに、レーザ素子と光導波路の間に有機膜層が存在していることから、レーザ素子からの出力光を効率良く光導波路に結合させることが難しい。また、特許文献1に記載された構造は、光導波路に対してレーザ素子を配置する際、高精度なアライメントが必要であり、高効率の光結合を得ることが非常に困難である。
【特許文献1】特開2004―85868号公報
【非特許文献1】Optics Express, Vol. 14, Issue 20, pp. 9203-9210
【非特許文献2】2006 3rd IEEE International Conference on Group IV Photonics, pp. 188-191.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、光半導体素子と光導波路との間の高効率の光結合を得ることができ、且つ温度特性に優れた光集積デバイス及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係わる光集積デバイスは、基板上の一部に設けられた下部クラッド層と、前記基板上に設けられ、光出射端面又は光入射端面を前記下部クラッド層の一端面に対向させて配置された光半導体素子と、前記下部クラッド層上に設けられ、先端部分が前記下部クラッド層の一端部に向けてテーパー状に絞られた光導波路と、前記光半導体素子の光出射端面又は光入射端面と前記光導波路の先端部分とを結ぶ線に沿って、前記下部クラッド層上及び前記光導波路の先端部分上に設けられた、前記下部クラッド層よりも屈折率の大きな上部クラッド層と、を具備したことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の別の一態様に係わる光集積デバイスは、基板上の中央部に設けられた、光入射端面及び光出射端面を有する光半導体素子と、前記基板上に設けられ、前記光半導体素子の光入射端面に一端面を対向させて配置された第1の下部クラッド層と、前記第1の下部クラッド層上に設けられ、先端部分が前記第1の下部クラッド層の一端部に向けてテーパー状に絞られた第1の光導波路と、前記光半導体素子の光入射端面と前記第1の光導波路の先端部分とを結ぶ線に沿って、前記第1の下部クラッド層上及び前記第1の光導波路の先端部分上に設けられた、前記第1の下部クラッド層よりも屈折率の大きな第1の上部クラッド層と、前記基板上に設けられ、前記光半導体素子の光出射端面に一端面を対向させて配置された第2の下部クラッド層と、前記第2の下部クラッド層上に設けられ、先端部分が前記第2の下部クラッド層の一端部に向けてテーパー状に絞られた第2の光導波路と、前記光半導体素子の光出射端面と前記第2の光導波路の先端部分とを結ぶ線に沿って、前記第2の下部クラッド層上及び前記第2の光導波路の先端部分上に設けられた、前記第2の下部クラッド層よりも屈折率の大きな第2の上部クラッド層と、を具備し、前記第1の光導波路の先端部から前記第1の上部クラッド層及び第1の下部クラッド層に入射された光を、前記光半導体素子の光入射端面に結合させ、前記光半導体素子から前記第2の下部クラッド層及び前記第2の上部クラッド層に入射された光を、前記第2の上部クラッド層により該クラッド層側へ引きつけ、前記第2の光導波路の先端部分に結合させることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の別の一態様に係わる光集積デバイスの製造方法は、基板上の一部に下部クラッド層を形成し、且つ該クラッド層上に先端部分が該クラッド層の一端部に向けてテーパー状に絞られた光導波路を形成する工程と、前記基板上に、光出射端面又は光入射端面を前記下部クラッド層の一端面に対向させて光半導体素子を形成する工程と、前記下部クラッド層上及び前記光導波路の先端部分上に、前記下部クラッド層よりも屈折率の大きな上部クラッド層を、前記光半導体素子の光出射端面又は光入射端面と前記光導波路の先端部分とを結ぶ線に沿って形成する工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、光半導体素子を基板上に直接搭載することにより、光半導体素子の放熱性に優れている。しかも、下部クラッド層と上部クラッド層との屈折率差を利用して光半導体素子と光導波路とを光結合させることにより、高効率の光結合を得ることができる。即ち、光半導体素子と光導波路との間の光結合効率の向上及び温度特性の向上をはかることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の詳細を図示の実施形態によって説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係わる光集積デバイスを説明するためのもので、図1(a)は光集積デバイスを上方から見た平面図であり、図1(b)は図1(a)の矢視A−A’断面図である。
【0013】
Si基板11上にSiO2 膜からなる下部クラッド層12が形成され、下部クラッド層12の一部を除去することにより、Si基板露出部分及び下部クラッド層12の端面が形成されている。
【0014】
下部クラッド層12上の一部に、先端部を下部クラッド層12の端部と離し、先端部が下部クラッド層の端部に向くように、Siからなる細線光導波路13が形成されている。下部クラッド層12の厚さは1〜3μmであり、Si細線光導波路13は厚さ200〜400nm、幅300〜600nmである。Si細線光導波路13の先端部13aはテーパー状に加工されており、先端の幅は80nmとなっている。
【0015】
下部クラッド層12の一部を除去した基板露出部分に、発光素子としての半導体レーザ(光半導体素子)15が搭載されている。そして、半導体レーザ15と細線光導波路13を光学的に結合するために、半導体レーザ15と細線光導波路13を覆うように上部クラッド層14が形成されている。上部クラッド層14は、下部クラッド層12よりも屈折率の高い材料、例えばポリイミド,SiON,SiNで形成されている。
【0016】
ここで、上部クラッド層14は必ずしも半導体レーザ15と下部クラッド層12との間に充填される必要はなく、少なくとも下部クラッド層12上に細線光導波路13の先端部13aを覆うように形成されていればよい。
【0017】
半導体レーザ15は、図2に示すように、半導体基板151上にメサ状のダブルへテロ構造部152を形成し、このダブルヘテロ構造部152上に上部電極153を、基板151上に下部電極154を形成したものである。
【0018】
本実施形態の基本的な構造は、Si基板上に埋め込み絶縁膜を介してSi層を形成したSOI基板10で実現することができる。即ち、下部クラッド層12はSOI基板の埋め込み絶縁膜(SiO2 膜)であり、光導波路13はSOI基板10のSi層を細線状に加工したものである。
【0019】
本実施形態において、半導体レーザ15の光出力部の中心の垂直方向の位置は、上部クラッド層14と下部クラッド層12の間であり、下部クラッド層12の端部までは上部クラッド層14を伝搬する。そして、下部クラッド層12の端部から入射した後には、上部クラッド層14と下部クラッド層12の間を進行するが、屈折率の高い上部クラッド層14に引き付けられるため、光導波路13のテーパー状の先端部13aに効率良く結合することになる。
【0020】
図3は、本実施形態の光集積デバイスを上から見たときの半導体レーザ15と光導波路13の位置関係、及び光の伝搬の様子を示したものである。半導体レーザ15と光導波路13は、半導体レーザ15の光出射方向と光導波路13の光伝搬方向とが所定の角度を持つように設置されており、その角度は5度から20度の範囲である。即ち、半導体レーザ15の光出射方向に垂直な面と下部クラッド層12の端面との角度が5度から20度の範囲に設定されている。このように配置することで、半導体レーザ15から出射された光が下部クラッド層12の端部で反射されたときに、半導体レーザ15への戻り光を抑制することが可能となる。その結果、半導体レーザ15の安定動作が可能となる。
【0021】
ここで、半導体レーザ15の光出射方向に垂直な面と下部クラッド層12の端面との角度が5度より小さくなると、戻り光の抑制効果が殆ど認められない。また、角度が20度を超えると、下部クラッド層12の端面における十分な結合効率(70%以上)が得られなくなる。
【0022】
図4は、本実施形態の光集積デバイス内での光伝搬の様子を示す図である。図4(a)は光集積デバイスを上面から見たときの幅方向(X方向)の光の分布を示す図、図4(b)は光集積デバイスの側面から見たときの厚さ方向(Y方向)の光分布を示す図であり、図中の白い部分で光強度が高くなっている。また、図4(c)は光の進行方向(Z方向)における細線光導波路13への光結合効率を示している。これらの図から、半導体レーザ15から出力された光が効率良く光導波路13に結合されている様子が分かる。
【0023】
ビーム伝搬法による光伝搬シミュレーションを用いて結合効率を計算した結果、半導体レーザ15と下部クラッド層12の端部との距離5μm、上部クラッド層14の屈折率1.6、上部クラッド層14の幅4μm、上部クラッド層14の厚み0.7μm、下部クラッド層の屈折率1.45、下部クラッド層12の厚み3μm、光入射位置が上部クラッド層14と下部クラッド層12の境界部分としたとき、結合効率80%以上が得られた。
【0024】
次に、本実施形態の光集積デバイスの製造方法の一例を、図5を参照して説明する。この例は、SOI基板10を用いると共にウェハ接合を利用した方法である。なお、図5(a)〜(c)は断面図、図5(d)〜(f)において、上図は平面図、下図は断面図を示している。
【0025】
まず、図5(a)に示すように、SOI基板10のSi層を加工して、テーパー部13aを含む光導波路13を形成する。続いて、図5(b)に示すように、下部クラッド層12を一部エッチング除去することにより、下部クラッド層12の端面を形成すると共に、Si基板11の一部を露出させる。そして、図5(c)に示すように、Si基板露出部にレーザ用層構造18を有する半導体ウェハ16を接合した後、不要な支持基板17を除去する。
【0026】
次いで、Si基板露出部に接合した半導体レーザ用層構造18を加工し、半導体レーザ15の素子構造を形成する。具体的には、図5(d)に示すようにレーザストライプ19の形成、図5(e)に示すように電極20の形成などである。続いて、図5(f)に示すように、レーザストライプ19と光導波路13を光学的に接続するように上部クラッド層14を形成する。このとき、レーザストライプ19、上部クラッド層14、光導波路13は必ずしも同一直線上にある必要はなく、上部クラッド層14がレーザストライプ19と光導波路13を接続するように配置することで、それらの位置ずれを補完することが可能である。
【0027】
このように本実施形態によれば、半導体レーザ15の光出射方向が光導波路13の光伝搬方向に対して斜めとなるように半導体レーザ15をSi基板露出部に直接接合し、光導波路13と半導体レーザ15を上部クラッド層14で接続するため、戻り光の影響を受けずに安定した動作が可能であり、高い光結合効率を得ることが可能である。また、半導体レーザ15を基板10上に直接搭載することで放熱性に優れている。このため、安定、高効率、温度特性に優れた発光デバイスを持つ光集積デバイスが得られる。
【0028】
(第2の実施形態)
図6は、本発明の第2の実施形態に係わる光集積デバイスの製造工程を示す図である。なお、図6(a)〜(c)は断面図、図6(d)〜(f)において、上図は平面図、下図は断面図を示している。また、図5と同一部分には同一符号を付している。
【0029】
先に説明した第1の実施形態と同様に、図6(a)に示すように、SOI基板10のSi層を加工して光導波路13を形成する。その後、図6(b)に示すように、下部クラッド層12を一部エッチング除去してSi基板11を露出させる。そして、図6(c)に示すように、Si基板露出部にレーザ用層構造18を有する半導体レーザチップ22をフリップチップ実装するための金属パターン21を形成し、半導体レーザチップ22をフリップチップ実装する。
【0030】
次いで、図6(d)(e)に示すように、レーザチップ22の支持基板17を除去した後、レーザストライプ19の形成、電極20の形成などを行う。その後、図6(f)に示すように、レーザストライプ19と光導波路13を光学的に接続するように上部クラッド層14を形成する。
【0031】
このように本実施形態によれば、半導体レーザ15の光出射方向が光導波路13の光伝搬方向に対して斜めとなるように、半導体レーザ15をSi基板露出部に搭載することにより、戻り光の影響を受けずに安定した動作が可能であり、高い光結合効率を得ることが可能である。従って、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0032】
(第3の実施形態)
図7は、本発明の第3の実施形態に係わる光集積デバイスを説明するためのもので、図7(a)は平面図であり、図7(b)は図7(a)の矢視A−A’断面図である。なお、図1と同一部分には同一符号を付して、その詳しい説明は省略する。
【0033】
第1の実施形態では、半導体レーザ15の光出射方向と光導波路13の光伝搬方向に5〜20度の角度を持たせることにより、半導体レーザ15への戻り光を抑制したが、本実施形態では、これとは別の方法で戻り光の抑制を行っている。即ち、本実施形態では、半導体レーザ15と光導波路13の位置関係は直線上になっているが、下部クラッド層12の端面を光の伝搬方向に対して垂直から傾けている。具体的には、下部クラッド層12の端面を光の伝搬方向に対して垂直から5〜20度傾けている。
【0034】
このような構成であれば、レーザストライプ19と光導波路13の位置関係が直線上にある場合でも、図7のように下部クラッド層12の端面を光の伝搬方向に対して垂直でない角度を持って形成されていれば、第1の実施形態と同様に戻り光を抑制する効果がある。従って、第1の実施形態と同様に、半導体レーザ15の安定動作が可能となる。
【0035】
(第4の実施形態)
図8は、本発明の第4の実施形態に係わる光集積デバイスを説明するためのもので、図8(a)は平面図であり、図8(b)は図8(a)の矢視A−A’断面図である。なお、図1と同一部分には同一符号を付して、その詳しい説明は省略する。
【0036】
本実施形態が先に説明した第1の実施形態と異なる点は、半導体レーザ15と下部クラッド層12の端面の間の領域に関して、Si基板11との間に屈折率が上部クラッド層14よりも低い1種類以上の材料23を設けたことにある。即ち、半導体レーザ15と下部クラッド層12の端面の間の領域には上部クラッド層14ではなく低屈折率材料23が設けられ、この材料23上に上部クラッド14が配置されている。
【0037】
このような構成であれば、低屈折率材料23の挿入により、伝搬光の縦方向の広がりをより効果的に抑えることができる。従って、第1の実施形態と同様の効果が得られるのは勿論のこと、より高効率な結合が得られる利点がある。
【0038】
なお、本実施形態の構造に関して、半導体レーザ15と下部クラッド層12の端面の間の領域に低屈折率材料23を充填する部分は、空洞としても構わない。また、本実施形態の構造は、上記第1から第3の何れの実施形態に対しても適用可能である。
【0039】
(第5の実施形態)
図9は、本発明の第5の実施形態に係わる光集積デバイスを説明するためのもので、図9(a)は平面図であり、図9(b)は図9(a)の矢視A−A’断面図である。なお、図1と同一部分には同一符号を付して、その詳しい説明は省略する。
【0040】
第1の実施形態では光半導体素子として発光素子を用い、発光素子からの光を光導波路に結合させるものとしたが、光半導体素子として受光素子を用い、光導波路からの光を受光素子に結合させるようにしても良い。
【0041】
この場合、前記図1に示す構造において、半導体レーザ等の発光素子15の代わりにフォトダイオード等の受光素子35を用いるだけでよい。
【0042】
光導波路13に入力された光は、テーパー部13aから上部クラッド層14及び下部クラッド層12に入射し、上部クラッド層14及び下部クラッド層12を通り、受光素子35に結合される。このとき、上部クラッド層14の屈折率を下部クラッド層12のそれよりも高くしておくことにより、下部クラッド層12に入射した光が基板11に広がるのを防止でき、受光素子35に効率良く結合させることができる。
【0043】
(第6の実施形態)
図10は、本発明の第5の実施形態に係わる光集積デバイスを説明するためのもので、図10(a)は平面図であり、図10(b)は図10(a)の矢視A−A’断面図である。なお、図1と同一部分には同一符号を付して、その詳しい説明は省略する。
【0044】
本実施形態は、図1の構造を対向させた構造であり、光半導体素子45への光入力、光半導体素子45からの光出力、光半導体素子45での光信号処理が可能となっている。ここで示す光半導体素子45としては、例えば半導体レーザ、受光素子、光パワーモニター、光変調器、光スイッチ、光増幅器、波長変換素子、光アッテネータ、光アイソレータなどを用いることができる。また、本実施形態は、上記第1から第4の何れの実施形態に対しても適用可能である。
【0045】
Si基板11上の中央部に光半導体素子45がマウントされている。Si基板11上の光半導体素子45の左側には、SiO2 膜からなる第1の下部クラッド層112が、端面が光半導体素子45の光入射端面と対向するように形成されている。下部クラッド層112上の一部に、先端部を下部クラッド層112の端部と離し、先端部が下部クラッド層112の端部に向くように、Siからなる第1の細線光導波路113が形成されている。下部クラッド層112及び光導波路113の厚さや幅等の条件は第1の実施形態と同じである。
【0046】
光半導体素子45と光導波路113は、光半導体素子45の光入射方向と光導波路113の光伝搬方向とが所定の角度を持つように設置されており、その角度は5度から20度の範囲である。即ち、光半導体素子45の光入射方向に垂直な面と下部クラッド層112の端面との角度が5度から20度の範囲に設定されている。
【0047】
光半導体素子45と細線光導波路113を光学的に結合するために、光半導体素子45と細線光導波路113を覆うように第1の上部クラッド層114が形成されている。上部クラッド層114は、下部クラッド層112よりも屈折率の高い材料、例えばポリイミド,SiON,SiNで形成されている。
【0048】
Si基板11上の光半導体素子45の右側には、SiO2 膜からなる第2の下部クラッド層212が、端面が光半導体素子45の光出射端面と対向するように形成されている。下部クラッド層212上の一部に、先端部を下部クラッド層212の端部と離し、先端部が下部クラッド層212の端部に向くように、Siからなる第2の細線光導波路213が形成されている。下部クラッド層212及び光導波路213の厚さや幅等の条件は第1の実施形態と同じである。
【0049】
光半導体素子45と光導波路213は、光半導体素子45の光出射方向と光導波路213の光伝搬方向とが所定の角度を持つように設置されており、その角度は5度から20度の範囲である。即ち、光半導体素子45の光出射方向に垂直な面と下部クラッド層212の端面との角度が5度から20度の範囲に設定されている。
【0050】
光半導体素子45と細線光導波路213を光学的に結合するために、光半導体素子45と細線光導波路213を覆うように第2の上部クラッド層214が形成されている。上部クラッド層214は、下部クラッド層212よりも屈折率の高い材料、例えばポリイミド,SiON,SiNで形成されている。
【0051】
ここで、上部クラッド層114,214は必ずしも光半導体素子45と下部クラッド層112,212との間に充填される必要はなく、少なくとも下部クラッド層112,212上に細線光導波路113,213の先端部113a,213aを覆うように形成されていればよい。
【0052】
本実施形態の構造では、第1の光導波路113に入射された光は、第1の光導波路113の先端部分113aから第1の上部クラッド層114及び第1の下部クラッド層112に入射される。そして、上部クラッド層114及び下部クラッド層112を通り、光半導体素子45に結合される。このとき、上部クラッド層114の屈折率を下部クラッド層112のそれよりも高くしておくことにより、下部クラッド層112に入射した光が基板11に広がるのを防止でき、光半導体素子45に効率良く結合させることができる。
【0053】
一方、光半導体素子45から出射された光は、光半導体素子45と下部クラッド層122との間の第2の上部クラッド層214を通り下部クラッド層122に入射される。そして、下部クラッド層212を通り第2の光導波路213の先端部分に結合される。このとき、上部クラッド層214の屈折率を下部クラッド層212のそれよりも高くしておくことにより、下部クラッド層212を進行する光は屈折率の高い上部クラッド層14に引き付けられるため、光導波路13のテーパー状の先端部13aに効率良く結合することになる。
【0054】
このように本実施形態によれば、光半導体素子45をSi基板11上に直接搭載することにより、光半導体素子45の放熱性を高めることができる。しかも、下部クラッド層112,212と上部クラッド層114,214との屈折率差を利用して光半導体素子45と光導波路113,213とを光結合させることにより、高効率の光結合を得ることができる。即ち、光半導体素子45と光導波路113,213との間の光結合効率の向上及び温度特性の向上をはかることができる。
【0055】
(変形例)
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではない。実施形態では下部クラッド層としてSiO2 、上部クラッド層としてポリイミド,SiON,SiN、光導波路としてSiを用いたが、これらの材料は仕様に応じて適宜変更可能である。上部クラッド層の屈折率を下部クラッド層のそれよりも高くすればよい。さらに、基板は必ずしもSiに限るものではなく、ガラス基板であっても良い。
【0056】
また、光デバイスの構造も実施形態に何ら限定されるものではなく、仕様に応じて適宜変更可能である。半導体レーザ等の発光素子としては横方向に光を放出できるものであればよく、フォトダイオード等の受光素子としては、横方向から光を入射できるものであればよい。
【0057】
その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】第1の実施形態に係わる光集積デバイスの概略構成を示す平面図と断面図。
【図2】第1の実施形態に係わる光集積デバイスに用いた発光素子の一例を示す断面図。
【図3】第1の実施形態に係わる光集積デバイスの伝搬光の伝搬方向、及び伝搬光の各部における強度分布を示す図。
【図4】第1の実施形態に係わる光集積デバイスの内部における伝搬光の分布の様子と、結合効率を示す図である。
【図5】第1の実施形態に係わる光集積デバイスの製造工程を示す平面図と断面図。
【図6】第2の実施形態に係わる光集積デバイスの製造工程を示す平面図と断面図。
【図7】第3の実施形態に係わる光集積デバイスの概略構成を示す平面図と断面図。
【図8】第4の実施形態に係わる光集積デバイスの概略構成を示す平面図と断面図。
【図9】第5の実施形態に係わる光集積デバイスの概略構成を示す平面図と断面図。
【図10】第6の実施形態に係わる光集積デバイスの概略構成を示す平面図と断面図。
【符号の説明】
【0059】
10…SOI基板
11…Si基板
12…下部クラッド層
13…光導波路
13a…光導波路テーパー部
14…上部クラッド層
15…半導体レーザ(光半導体素子)
16…レーザ構造を有する半導体ウェハ
17…支持基板
18…半導体レーザ用層構造
19…レーザストライプ
20…電極
21…金属パターン
22…半導体レーザチップ
23…低屈折率材料
35…受光素子(光半導体素子)
45…光半導体素子
112…第1の下部クラッド層
113…第1の細線光導波路
113a,213a…先端部
114…第1の上部クラッド層
151…半導体基板
152…ダブルヘテロ構造部
153…上部電極
154…下部電極
212…第2の下部クラッド層
213…第2の細線光導波路
214…第2の上部クラッド層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上の一部に設けられた下部クラッド層と、
前記基板上に設けられ、光出射端面又は光入射端面を前記下部クラッド層の一端面に対向させて配置された光半導体素子と、
前記下部クラッド層上に設けられ、先端部分を前記下部クラッド層の一端部に向けて配置され、且つ該先端部分がテーパー状に絞られた光導波路と、
前記光半導体素子の光出射端面又は光入射端面と前記光導波路の先端部分とを結ぶ線に沿って、前記下部クラッド層上及び前記光導波路の先端部分上に設けられた、前記下部クラッド層よりも屈折率の大きな上部クラッド層と、
を具備したことを特徴とする光集積デバイス。
【請求項2】
前記光半導体素子は発光素子であり、前記発光素子から前記下部クラッド層及び前記上部クラッド層に入射された光を、前記上部クラッド層により該クラッド層側へ引きつけ、前記光導波路の先端部分に結合させることを特徴とする請求項1記載の光集積デバイス。
【請求項3】
前記光半導体素子は受光素子であり、前記光導波路の先端部分から前記各クラッド層に入射された光を前記受光素子の光入射端面に結合させることを特徴とする請求項1記載の光集積デバイス。
【請求項4】
前記発光素子の光出射方向が、前記光導波路の光伝搬方向に対して一定の角度を持っていることを特徴とする請求項2記載の光集積デバイス。
【請求項5】
前記発光素子の光出射方向と光導波路の光伝搬方向とが成す角度が、5度から20度の範囲であることを特徴とする請求項4記載の光集積デバイス。
【請求項6】
前記発光素子の光出射方向と前記光導波路の光伝搬方向が一直線であり、前記下部クラッド層の一端面が、前記発光素子の光出射方向に対して垂直から傾いていることを特徴とする請求項2記載の光集積デバイス。
【請求項7】
前記発光素子は、半導体レーザであることを特徴とする請求項2記載の光集積デバイス。
【請求項8】
前記上部クラッド層は、前記光半導体素子から前記下部クラッド層の端部を通り、前記光導波路の先端部分まで連続して形成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の光集積デバイス。
【請求項9】
前記光導波路は、細線光導波路であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の光集積デバイス。
【請求項10】
前記細線光導波路はSi、前記下部クラッド層はSiO2 からなることを特徴とする請求項9記載の光集積デバイス。
【請求項11】
前記下部クラッド層は、Si基板上に埋め込み絶縁膜を介してSi層を形成したSOI基板の埋め込み絶縁膜であり、前記光導波路は、前記SOI基板のSi層を線状に加工したものであることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の光集積デバイス。
【請求項12】
基板上の中央部に設けられた、光入射端面及び光出射端面を有する光半導体素子と、
前記基板上に設けられ、前記光半導体素子の光入射端面に一端面を対向させて配置された第1の下部クラッド層と、
前記第1の下部クラッド層上に設けられ、先端部分を前記第1の下部クラッド層の一端部に向けて配置され、且つ該先端部分がテーパー状に絞られた第1の光導波路と、
前記光半導体素子の光入射端面と前記第1の光導波路の先端部分とを結ぶ線に沿って、前記第1の下部クラッド層上及び前記第1の光導波路の先端部分上に設けられた、前記第1の下部クラッド層よりも屈折率の大きな第1の上部クラッド層と、
前記基板上に設けられ、前記光半導体素子の光出射端面に一端面を対向させて配置された第2の下部クラッド層と、
前記第2の下部クラッド層上に設けられ、先端部分を前記第2の下部クラッド層の一端部に向けて配置され、且つ該先端部分がテーパー状に絞られた第2の光導波路と、
前記光半導体素子の光出射端面と前記第2の光導波路の先端部分とを結ぶ線に沿って、前記第2の下部クラッド層上及び前記第2の光導波路の先端部分上に設けられた、前記第2の下部クラッド層よりも屈折率の大きな第2の上部クラッド層と、
を具備し、
前記第1の光導波路の先端部分から前記第1の上部クラッド層及び第1の下部クラッド層に入射された光を、前記光半導体素子の光入射端面に結合させ、
前記光半導体素子から前記第2の下部クラッド層及び前記第2の上部クラッド層に入射された光を、前記第2の上部クラッド層により該クラッド層側へ引きつけ、前記第2の光導波路の先端部分に結合させることを特徴とする光集積デバイス。
【請求項13】
基板上の一部に下部クラッド層を形成し、且つこのクラッド層上に、テーパー状に絞られた先端部分が該クラッド層の一端部に向くように光導波路を形成する工程と、
前記基板上に、光出射端面又は光入射端面を前記下部クラッド層の一端面に対向させて光半導体素子を設ける工程と、
前記下部クラッド層上及び前記光導波路の先端部分上に、前記下部クラッド層よりも屈折率の大きな上部クラッド層を、前記光半導体素子の光出射端面又は光入射端面と前記光導波路の先端部分とを結ぶ線に沿って形成する工程と、
を含むことを特徴とする光集積デバイスの製造方法。
【請求項14】
Si基板上に埋め込み絶縁膜を介してSi層を形成したSOI基板を用意し、前記SOI基板の埋め込み絶縁膜下部クラッド層として用い、前記SOI基板のSi層を前記光導波路として用いることを特徴とする請求項13記載の光集積デバイスの製造方法。
【請求項15】
前記下部クラッド層の一部を選択的にエッチング除去することにより露出したSi基板部分に、前記光半導体素子を搭載することを特徴とする請求項14記載の光集積デバイスの製造方法。
【請求項16】
前記光半導体素子を設ける工程として、前記基板上にフリップチップ実装により前記光半導体素子を搭載することを特徴とする請求項13記載の光集積デバイスの製造方法。
【請求項17】
前記光半導体素子を設ける工程として、支持基板上に発光デバイスのための層構造を有する発光デバイス基板を前記基板上に接着した後に前記支持基板を除去し、次いで前記発光デバイス基板を発光デバイス構造に加工し、次いで前記発光デバイス構造に電極を形成することを特徴とする請求項13記載の光集積デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−152274(P2010−152274A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−333070(P2008−333070)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】