説明

光電変換素子およびその使用方法、撮像素子、光センサ、光電変換膜

【課題】本発明は、高光電変換効率、低暗電流性、高速応答性を示すと共に、高速で連続して製造した際にも製造ロッド間での応答速度のばらつきが小さい光電変換素子を提供することを目的とする。
【解決手段】導電性膜、光電変換材料を含む光電変換膜、および透明導電性膜をこの順で積層してなる光電変換素子であって、光電変換膜が固体からなる膜であり、該光電変換材料が、一般式(1)で表される化合物を含む、光電変換素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子およびその使用方法、撮像素子、光センサ、および光電変換膜に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の光センサは、シリコン(Si)などの半導体基板中にフォトダイオード(PD)を形成した素子であり、固体撮像素子としては、PDを2次元的に配列し、各PDで発生した信号電荷を回路で読み出す平面型固体撮像素子が広く用いられている。
【0003】
カラー固体撮像素子を実現するには、平面型固体撮像素子の光入射面側に、特定の波長の光を透過するカラーフィルタを配した構造が一般的である。現在、デジタルカメラなどに広く用いられている2次元的に配列した各PD上に、青色(B)光、緑色(G)光、赤色(R)光を透過するカラーフィルタを規則的に配した単板式固体撮像素子がよく知られている。
この単板式固体撮像素子においては、カラーフィルタを透過しなかった光が利用されず光利用効率が悪い。近年、多画素化が進む中、画素サイズが小さくなっており、開口率の低下、集光効率の低下が問題になっている。
【0004】
これらの欠点を解決するため、アモルファスシリコンによる光電変換膜や有機光電変換膜を信号読出し用基板上に形成する構造が知られている。
有機光電変換膜を用いた光電変換素子、撮像素子、光センサについては幾つかの公知例がある。有機光電変換膜を用いた光電変換素子では、特に光電変換効率の向上や暗電流の低減が課題とされている。その改善方法として、前者については、pn接合導入やバルクへテロ構造の導入、後者については、ブロッキング層の導入などが開示されている。
【0005】
pn接合導入、バルクへテロ構造の導入による高光電変換効率化を行おうとする場合、暗電流の増大が問題になることが多い。また、光電変換効率の改善程度も材料の組み合わせにより程度の差があり、光信号量/暗時ノイズ比が、これらの構造の導入前に対し増大しない場合もある。これらの手段を取る場合、どの材料を組み合わせるかが重要であり、特に暗時ノイズの低減を考える場合、既に報告されている材料の組み合わせでは達成が困難であった。
【0006】
また、使用する材料の種類、膜構造は、光電変換効率(励起子解離効率、電荷輸送性)、暗電流(暗時キャリア量等)の主要因の一つであるとともに、これまでの報告ではほとんど触れられていないが、信号応答性の支配因子となる。固体撮像素子として用いる場合、高光電変換効率、低暗電流、高応答速度を全て満たす必要があるが、そのような有機光電変換材料、素子構造がどのようなものであるか、具体的に示されてこなかった。
【0007】
例えば、フラーレン類を含む光電変換膜が特許文献1に記載されているが、フラーレン類のみでは、上記のような高光電変換効率、低暗電流、高応答速度をすべて満たすことは不可能であった。
一方、特許文献2および特許文献3においては、キナクリドン系化合物を使用した光電変換膜を使用した撮像素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−123707号公報
【特許文献2】特開2006−100767号公報
【特許文献3】特開2007−234651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年、撮像素子や光センサなどの性能向上の要求に伴い、これらに使用される光電変換膜に求められる諸特性(光電変換効率、暗電流、応答速度など)に関してもその向上が求められている。
本発明者らは、特許文献2および3で具体的に開示されているキナクリドン系化合物を使用して光電変換膜の作製を行ったところ、光電変換効率、応答速度、および暗電流の発生の点において必ずしも昨今求められるレベルに達しておらず、さらなる向上が必要であることを見出した。また、高速で連続して光電変換膜を作製すると、各製造ロッド間で応答速度がばらつくという、製造上の問題があることも見出した。
【0010】
本発明は、上記実情に鑑みて、高光電変換効率、低暗電流性、高速応答性を示すと共に、高速で連続して製造した際にも製造ロッド間での応答速度のばらつきが小さい光電変換素子を提供することを目的とする。
また、本発明は、該光電変換素子の使用方法、該光電変換素子で使用される光電変換膜、並びに、該光電変換素子を含む撮像素子および光センサを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らによる鋭意検討の結果、上記応答速度の安定性の問題は、使用される材料の結晶性と関連性があることを見出した。より具体的には、光電変換膜を高速で製膜する場合に、使用される材料が膜内で凝集し、結晶化が進行して、異なった結晶状態が多数できる結果、場所により信号電荷が出力される時間が異なる事態が生じると考えられる。このような問題を解決する一つの方法として、結晶性の低い材料を選択することで上記の凝集の問題を避けることが出来ると考えられる。本発明では、これらの知見を元に、特定の構造の化合物を使用することで、光電変換素子の優れた性能、および、連続作製した際の製造ロッド間での応答速度の安定性を付与することができ、上記の目的を達成できることを見出した。
すなわち、以下に示す手段により上記課題を解決し得る。
【0012】
(1) 導電性膜、光電変換材料を含む光電変換膜、および透明導電性膜をこの順で積層してなる光電変換素子であって、該光電変換膜が固体からなる膜であり、該光電変換材料が、後述する一般式(1)で表される化合物を含む、光電変換素子。
(2) 該一般式(1)中におけるA1が、後述する一般式(2−a)で表される基、または後述する一般式(2−b)で表される基である、(1)に記載の光電変換素子。
【0013】
(3) R1が、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基である、(1)または(2)に記載の光電変換素子。
(4) R1が、アリール基である、(1)〜(3)のいずれかに記載の光電変換素子。
【0014】
(5) 上記光電変換膜が、さらにフラーレンまたはフラーレン誘導体を含む、(1)〜(4)のいずれかに記載の光電変換素子。
(6) 上記光電変換膜が、後述する一般式(1)で表される化合物と、フラーレンまたはフラーレン誘導体とを混合した状態で形成されるバルクヘテロ構造を有する、(5)に記載の光電変換素子。
【0015】
(7) さらに基板を含み、基板上に導電性膜、光電変換膜、および透明導電性膜をこの順で積層してなる、(1)〜(6)のいずれかに記載の光電変換素子。
(8) さらに、電荷ブロッキング層を備える、(1)〜(7)のいずれかに記載の光電変換素子。
【0016】
(9) 透明導電性膜が、透明導電性金属酸化物からなる、(1)〜(8)のいずれかに記載の光電変換素子。
(10) さらに、封止層を備える、(1)〜(9)のいずれかに記載の光電変換素子。
(11) 光が透明導電性膜を介して光電変換膜に入射される、(1)〜(10)のいずれかに記載の光電変換素子。
【0017】
(12) 光電変換膜が、真空蒸着法により成膜されたものである、(1)〜(11)のいずれかに記載の光電変換素子。
(13) (1)〜(12)のいずれかに記載の光電変換素子を含む撮像素子。
(14) (1)〜(12)のいずれかに記載の光電変換素子を含む光センサ。
【0018】
(15) (1)〜(12)のいずれかに記載の光電変換素子の使用方法であって、導電性膜と透明導電性膜とが一対の電極であり、一対の電極間に1×10-4〜1×107V/cmの電場を印加させる、光電変換素子の使用方法。
(16) 後述する一般式(1)で表される化合物を含む光電変換膜。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、高光電変換効率、低暗電流性、高速応答性を示すと共に、高速で連続して製造した際にも製造ロッド間での応答速度のばらつきが小さい光電変換素子を提供することができる。
また、本発明によれば、該光電変換素子の使用方法、該光電変換素子で使用される光電変換膜、並びに、該光電変換素子を含む撮像素子および光センサを提供することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1(a)および図1(b)は、それぞれ光電変換素子の一構成例を示す断面模式図である。
【図2】撮像素子の1画素分の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の光電変換素子について図面を参照して説明する。図1に、本発明の光電変換素子の一実施形態の断面模式図を示す。
図1(a)に示す光電変換素子10aは、下部電極として機能する導電性膜(以下、下部電極とも記す)11と、下部電極11上に形成された電子ブロッキング層16Aと、電子ブロッキング層16A上に形成された光電変換膜12と、上部電極として機能する透明導電性膜(以下、上部電極とも記す)15とがこの順に積層された構成を有する。
図1(b)に別の光電変換素子の構成例を示す。図1(b)に示す光電変換素子10bは、下部電極11上に、電子ブロッキング層16Aと、光電変換膜12と、正孔ブロッキング層16Bと、上部電極15とがこの順に積層された構成を有する。なお、図1(a)、図1(b)中の電子ブロッキング層16A、光電変換膜12、正孔ブロッキング層16Bの積層順は、用途、特性に応じて逆にしても構わない。
【0022】
光電変換素子10a(10b)の構成では、透明導電性膜15を介して光電変換膜12に光が入射されることが好ましい。
また、光電変換素子10a(10b)を使用する場合には、電場を印加することができる。この場合、導電性膜11と透明導電性膜15とが一対の電極をなし、この一対の電極間に、1×10-3〜1×107V/cmの電場を印加することが好ましい。性能および消費電力の観点から、1×10-4〜1×106V/cmの電場が好ましく、1×10-5〜5×105V/cmの電場が特に好ましい。
なお、電圧印加方法については、図1(a)および(b)において、電子ブロッキング層16A側が陰極であり、光電変換膜12側が陽極となるように印加することが好ましい。光電変換素子10a(10b)を光センサとして使用した場合、また、撮像素子に組み込んだ場合も、同様の方法により電圧の印加を行うことができる。
【0023】
以下に、光電変換素子10a(10b)を構成する各層(光電変換膜、下部電極、上部電極、電子ブロッキング層、正孔ブロッキング層など)の態様について詳述する。
まず、光電変換膜12について詳述する。
【0024】
[光電変換膜]
光電変換膜12は、光電変換材料として後述する一般式(1)で表される化合物を含む膜である。該化合物を使用することにより、高光電変換効率、低暗電流性、高速応答性を示すと共に、高速で連続して製造した際にも製造ロッド間での応答速度のばらつきが小さい光電変換素子を得ることができる。特に、本発明においては、一般式(1)中のR1およびR2の組み合わせによって、上記特性が大きく向上することを見出している。
なお、通常、光電変換膜12は固体からなる膜である。光電変換膜12、導電性膜11および透明導電性膜15を含めた光電変換素子10a(10b)の全ての構成部分に流動する部分をなくすことで、得られる光電変換素子が熱による変形耐性に優れると共に、200℃前後の高い耐熱性を有することになり、結果として素子自体の高い信頼性が得られる。
まず、光電変換膜12で使用される一般式(1)で表される化合物について詳述する。
【0025】
【化1】

【0026】
(一般式(1)で表される化合物)
一般式(1)中、A1は、炭素数3以上の芳香族ヘテロ環基、または、炭素数3以上のカルボニル基を含まない芳香族炭化水素基を表し、得られる光電変換素子の特性(光電変換効率、応答速度など)がより優れる点から、芳香族炭化水素基が好ましい。
該芳香族炭化水素基および芳香族ヘテロ環基中の炭素数は3以上であり、得られる光電変換素子の特性(光電変換効率、応答速度など)がより優れる点から、4以上が好ましく、5以上がより好ましく、6以上が特に好ましい。炭素数の上限は特に制限されないが、化合物の合成上の点から、炭素数14以下が好ましく、10以下がより好ましく、6以下が特に好ましい。
【0027】
1で表される基の具体例としては、例えば、ベンゼン基、ナフタレン基、アントラセン基、フェナントレン基、ナフタセン基、ピレン基、ピリジン基、ベンゾピリジン基、ジベンゾピリジン基、ピリミジン基、ベンゾピリミジン基、ピラジン基、ベンゾピラジン基、トリアジン基、フラン基、ベンゾフラン基、ジベンゾフラン基、チオフェン基、ベンゾチオフェン基、ジベンゾチオフェン基、ピロール基、ベンゾピロール基、ジベンゾピロール基、ジアゾール基、ベンゾジアゾール基、チアゾール基、ベンゾチアゾール基などが好ましく挙げられる。なかでも、得られる光電変換素子の特性(光電変換効率、応答速度など)がより優れる点から、ベンゼン基、ナフタレン基、アントラセン基がより好ましく、ベンゼン基、ナフタレン基が特に好ましい。
【0028】
1で表される基の好適態様としては、以下の一般式(2−a)で表される基、または一般式(2−b)で表される基が挙げられ、一般式(2−a)で表される基がより好ましい。A1がこれらの基であれば、得られる光電変換素子の特性(光電変換効率、応答速度など)がより優れる。なお、A1が一般式(2−a)で表される基、または一般式(2−b)で表される基の場合、n1は2を表す。
なお、式中、*は結合位置を表す。
【0029】
【化2】

【0030】
なお、A1中の芳香族炭化水素は、カルボニル基を含まない。つまり、A1は、アントラキノン基などを含まない。A1がカルボニル基を環内に含むと、高光電変換効率の点で劣る。
【0031】
また、A1は、カルボニル基を含まない置換基Wを有していてもよい。置換基Wの定義については、後述する。
1に置換する置換基Wとしては、水素原子、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アミノ基、またはシアノ基が好ましく、水素原子、アルキル基、またはアリール基がより好ましい。より具体的には、水素原子、メチル基、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、フッ素原子、塩素原子、またはシアノ基が更に好ましく、水素原子、メチル基、フェニル基、またはフッ素原子が特に好ましい。これらの置換基に更に置換基(例えば、置換基W)があってもよい。
【0032】
1は、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜12)、アリール基、またはヘテロ環基を表す。なかでも、得られる光電変換素子の特性(光電変換効率、応答速度など)がより優れる点から、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基が好ましく、各製造ロッド間での応答速度のばらつきがより少ない点で、アリール基がより好ましい。
より具体的には、R1としては、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、t−ブチル基、1−プチル基、2−ブチル基、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−アンスリル基、または9−アンスリル基が好ましく、メチル基、フェニル基、1−ナフチル基、または2-ナフチル基が特に好ましい。
【0033】
2は、アルキル基(好ましくは炭素数5以上、より好ましくは炭素数6〜12のアルキル基)、アリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、アミノ基、またはシアノ基を表す。なかでも、得られる光電変換素子の特性(光電変換効率、応答速度など)がより優れる点から、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、またはアミノ基が好ましく、アリール基またはアミノ基が特に好ましい。
より具体的には、R2としては、メチル基、t−ブチル基、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、塩素原子、シアノ基、ピリジル基、フリル基、チオフェニル基、ピロリル基、ジメチルアミノ基、またはジフェニルアミノ基がより好ましく、水素原子、メチル基、フェニル基、フッ素原子、またはジメチルアミノ基が特に好ましい。
なお、これらの置換基に更に置換基(例えば、置換基W)があってもよい。
【0034】
なお、本明細書において、アミノ基とは、非置換アミノ基、および、置換アミノ基を含む。非置換アミノ基としては、−NH2基が挙げられる。置換アミノ基としては、−N(R3)2で表される基が挙げられる。R3としては、水素原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基などが挙げられ、2つのR3が同時に水素原子をとることはない。
【0035】
1は、2〜3の整数を表す。なかでも、得られる光電変換素子の特性(光電変換効率、応答速度など)がより優れる点から、2が好ましい。
【0036】
2は、1〜4の整数を表す。なかでも、得られる光電変換素子の特性(光電変換効率、応答速度など)がより優れる点から、1〜2が好ましい。
2が2以上の場合、複数のR2は互いに結合して環を形成していてもよい。形成される環(以後、環Rとも称する)の種類は特に制限されず、芳香族若しくは非芳香族の炭化水素環、または、芳香族若しくは非芳香族の複素環や、これらが更に組み合わされて形成された多環縮合環が挙げられる。例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フルオレン環、トリフェニレン環、ナフタセン環、ビフェニル環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、インドリジン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、イソベンゾフラン環、キノリジン環、キノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キノキサゾリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、フェナントリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、チアントレン環、クロメン環、キサンテン環、フェノキサチイン環、フェノチアジン環、またはフェナジン環が挙げられる。
【0037】
なお、n2が2であって複数のR2がオルトの位置に置換しているもの(言い換えると、複数のR2がベンゼン環上で互いに隣接して置換しているもの)が特に好ましい。この場合、R2としては、置換基がオルト縮合したものであって、具体的には、ベンゾ基、ナフト基、ピリド基、チエノ基、フロ基、ピラジノ基、ピロロ基が好ましく、ベンゾ基、ナフト基は特に好ましい。
【0038】
なお、R1が水素原子である場合、R2はアリール基、ヘテロ環基、若しくは炭素数が5以上のアルキル基を表す(パターン1)か、または、n2が2以上で、複数のR2が互いに結合して芳香族環を形成する(パターン2)。上記パターン2の場合、n2は2以上を表し、好ましくは2である。また、パターン2の場合には、複数(好ましくは2つ、特に好ましくは互いに隣接する2つ)のR2が互いに結合して、芳香族炭化水素環(例えば、ベンゼン環、ナフタレン環など)または芳香族複素環(例えば、フラン環、チオフェン環など)などの芳香族環を形成する。パターン2を言い換えると、R2が上記ベンゾ基、ナフト基、ピリド基、チエノ基、フロ基、ピラジノ基、ピロロ基など表す。
2が該基以外(パターン1およびパターン2以外)の場合、得られる光電変換膜が所望の効果を奏しない。
【0039】
本明細書における置換基Wについて記載する。
置換基Wとしては、ハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、複素環基(ヘテロ環基といってもよい)、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アンモニオ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルまたはアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキルまたはアリールスルフィニル基、アルキルまたはアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリールまたはヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、ホスホノ基、シリル基、ヒドラジノ基、ウレイド基、ボロン酸基(−B(OH)2)、ホスファト基(−OPO(OH)2)、スルファト基(−OSO3H)、その他の公知の置換基が挙げられる。
なお、置換基Wの詳細については、特開2007-234651号公報の段落[0023]に記載される。
【0040】
また、2つの置換基Wが共同して環を形成してもよい。このような環としては、芳香族もしくは非芳香族の炭化水素環、または、芳香族もしくは非芳香族の複素環や、これらが更に組み合わされて形成された多環縮合環が挙げられる。具体的な環の種類としては、上記環Rで記載した具体例が挙げられる。
上記の置換基Wの中で、水素原子を有するものは、これを取り去り更に上記の基で置換されていてもよい。
【0041】
一般式(1)で表される化合物は、公知の方法に従い、一部改変して実施することで製造することができる。以下に、一般式(1)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0042】
【化3】

【0043】
【表1】

【0044】
【化4】

【0045】
【表2】

【0046】
一般式(1)で表される化合物のイオン化ポテンシャル(以下IPと略すことがある)は6.0ev以下であることが好ましく、5.8eV以下がより好ましく、5.6eV以下が特に好ましい。この範囲であれば、電極および他の材料が存在する場合、その材料との電子の授受を小さな電気抵抗で行うために好ましい。IPは理研計器(株)製AC−2を用いればよい。
【0047】
一般式(1)で表される化合物は、紫外可視吸収スペクトルにおいて400nm以上720nm未満に吸収極大を有するものが好ましく、吸収スペクトルのピーク波長(吸収極大波長)は、可視領域の光を幅広く吸収するという観点から450nm以上700nm以下が好ましく、480nm以上650nm以下がより好ましく、510nm以上600nm以下が更に好ましい。
一般式(1)で表される化合物の吸収極大波長は、一般式(1)で表される化合物のクロロホルム溶液を、島津製作所社製UV−2550を用いて測定することができる。クロロホルム溶液の濃度は5×10-5〜1×10-7mol/lが好ましく、3×10-5〜2×10-6mol/lがより好ましく、2×10-5〜5×10-6mol/lが特に好ましい。
【0048】
一般式(1)で表される化合物は、紫外可視吸収スペクトルにおいて400nm以上720nm未満に吸収極大を有し、その吸収極大波長のモル吸光係数が10000mol-1・l・cm-1以上であるものが好ましく、光電変換膜の膜厚を薄くし、高い電荷捕集効率、高速応答性の素子とするには、モル吸光係数が大きい材料が好ましい。本発明における化合物のモル吸光係数としては5000mol-1・l・cm-1以上が好ましく、10000mol-1・l・cm-1以上がより好ましく、15000mol-1・l・cm-1以上が特に好ましい。本発明における化合物のモル吸光係数は、クロロホルム溶液で測定したものである。
【0049】
一般式(1)で表される化合物は、融点と蒸着温度との差(融点−蒸着温度)が大きいほど蒸着時に分解しにくく、高い温度をかけて蒸着速度を大きくすることができ好ましい。また、融点と蒸着温度の差(融点−蒸着温度)は40℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましく、60℃以上が更に好ましい。
また、一般式(1)で表される化合物の融点は200℃以上が好ましく、220℃以上がより好ましく、240℃以上が更に好ましい。融点が200℃以上であれば蒸着前に融解することが少なく、安定して成膜できることに加え、化合物の分解物が生じにくいため、光電変換性能が低下しにくいため好ましい。
化合物の蒸着温度は、4×10-4Pa以下の真空度でるつぼを加熱し、蒸着速度が0.4オングストローム/s(0.4×10-10m/s)に到達した温度とする。
【0050】
一般式(1)で表される化合物のガラス転移点(Tg)は、95℃以上が好ましく、110℃以上がより好ましく、135℃以上がさらに好ましく、150℃以上が特に好ましく、160℃以上が最も好ましい。ガラス転移点が高くなると、光電変換素子の耐熱性が向上するため好ましい。
【0051】
一般式(1)で表される化合物の分子量は、300〜1500であることが好ましく、500〜1000であることがより好ましく、500〜800が特に好ましい。分子量が大きすぎると、蒸着温度が高くなり、分子が分解しやすくなり、小さすぎると光電変換膜のガラス転移点が低くなり、光電変換素子の耐熱性が悪化する。
【0052】
一般式(1)で表される化合物は、撮像素子、光センサ、または光電池に用いる光電変換膜の材料として特に有用である。なお、通常、一般式(1)で表される化合物は、光電変換膜内で有機p型化合物として機能する。また、他の用途として、着色材料、液晶材料、有機半導体材料、有機発光素子材料、電荷輸送材料、医薬材料、蛍光診断薬材料、等としても用いることもできる。
【0053】
(その他材料)
光電変換膜は、さらに有機p型化合物または有機n型化合物の光電変換材料を含有してもよい。
有機p型半導体(化合物)は、ドナー性有機半導体(化合物)であり、主に正孔輸送性有機化合物に代表され、電子を供与しやすい性質がある有機化合物をいう。さらに詳しくは、2つの有機材料を接触させて用いたときにイオン化ポテンシャルの小さい方の有機化合物をいう。したがって、ドナー性有機化合物は、電子供与性のある有機化合物であればいずれの有機化合物も使用可能である。例えば、トリアリールアミン化合物、ベンジジン化合物、ピラゾリン化合物、スチリルアミン化合物、ヒドラゾン化合物、トリフェニルメタン化合物、カルバゾール化合物等を用いることができる。
【0054】
有機n型半導体(化合物)とは、アクセプター性有機半導体であり、主に電子輸送性有機化合物に代表され、電子を受容しやすい性質がある有機化合物をいう。半導体であるからナノチューブ、グラファイト、導電性高分子などの導電体は含まれない。更に詳しくは、2つの有機化合物を接触させて用いたときに電子親和力の大きい方の有機化合物をいう。したがって、アクセプター性有機半導体は、電子受容性のある有機化合物であればいずれの有機化合物も使用可能である。好ましくは、フラーレンまたはフラーレン誘導体、縮合芳香族炭素環化合物(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、フルオランテン誘導体)、窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含有する5〜7員のヘテロ環化合物(例えば、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、キノリン、キノキサリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、イソキノリン、プテリジン、アクリジン、フェナジン、フェナントロリン、テトラゾール、ピラゾール、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、インダゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、カルバゾール、プリン、トリアゾロピリダジン、トリアゾロピリミジン、テトラザインデン、オキサジアゾール、イミダゾピリジン、ピラリジン、ピロロピリジン、チアジアゾロピリジン、ジベンズアゼピン、トリベンズアゼピン等)、ポリアリーレン化合物、フルオレン化合物、シクロペンタジエン化合物、シリル化合物、含窒素ヘテロ環化合物を配位子として有する金属錯体などが挙げられる。
【0055】
上記有機n型化合物としては、フラーレンまたはフラーレン誘導体が好ましい。フラーレンとは、フラーレンC60、フラーレンC70、フラーレンC76、フラーレンC78、フラーレンC80、フラーレンC82、フラーレンC84、フラーレンC90、フラーレンC96、フラーレンC240、フラーレン540、ミックスドフラーレンを表し、フラーレン誘導体とはこれらに置換基が付加された化合物のことを表す。置換基としては、アルキル基、アリール基、または複素環基が好ましい。フラーレン誘導体としては、特開2007−123707号公報に記載の化合物が好ましい。
【0056】
光電変換膜は、上記一般式(1)で表される化合物と、フラーレンまたはフラーレン誘導体とが混合された状態で形成されるバルクヘテロ構造をなしていることが好ましい。バルクヘテロ構造は光電変換膜内で、p型有機半導体(一般式(1)で表される化合物)とn型有機半導体が混合、分散している膜であり、湿式法、乾式法のいずれでも形成できるが、共蒸着法で形成するものが好ましい。へテロ接合構造を含有させることにより、光電変換膜のキャリア拡散長が短いという欠点を補い、光電変換膜の光電変換効率を向上させることができる。なお、バルクへテロ接合構造については、特開2005−303266号公報の[0013]〜[0014]等において詳細に説明されている。
【0057】
光電変換膜における上記一般式(1)で表される化合物に対する有機n型化合物のモル比率(有機n型化合物/上記一般式(1)で表される化合物)は、0.5以上であることが好ましく、1以上10以下であることがより好ましく、2以上5以下であることが更に好ましい。
【0058】
本発明の一般式(1)で表される化合物が含まれる光電変換膜(なお、有機n型化合物が混合されていてもよい)は非発光性膜であり、有機電界発光素子(OLED)とは異なる特徴を有する。非発光性膜とは発光量子効率が1%以下の膜の場合であり、0.5%以下であることがより好ましく、0.1%以下であることが更に好ましい。
【0059】
(製膜方法)
光電変換膜12は、乾式成膜法または湿式成膜法により成膜することができる。乾式成膜法の具体例としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法,MBE法等の物理気相成長法、または、プラズマ重合等のCVD法が挙げられる。湿式成膜法としては、キャスト法、スピンコート法、ディッピング法、LB法等が用いられる。好ましくは乾式成膜法であり、真空蒸着法がより好ましい。真空蒸着法により成膜する場合、真空度、蒸着温度等の製造条件は常法に従って設定することができる。
【0060】
光電変換膜12の厚みは、10nm以上1000nm以下が好ましく、50nm以上800nm以下がより好ましく、100nm以上500nm以下が特に好ましい。10nm以上とすることにより、好適な暗電流抑制効果が得られ、1000nm以下とすることにより、好適な光電変換効率が得られる。
【0061】
[電極]
電極(上部電極(透明導電性膜)15と下部電極(導電性膜)11)は、導電性材料から構成される。導電性材料としては、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、またはこれらの混合物などを用いることができる。
上部電極15から光が入射されるため、上部電極15は検知したい光に対し十分透明であることが必要である。具体的には、アンチモンやフッ素等をドープした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の導電性金属酸化物、金、銀、クロム、ニッケル等の金属薄膜、更にこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物または積層物、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどの有機導電性材料、およびこれらとITOとの積層物などが挙げられる。この中で好ましいのは、高導電性、透明性等の点から、透明導電性金属酸化物である。
【0062】
TCOなどの透明導電膜を上部電極15とした場合、DCショート、あるいはリーク電流増大が生じる場合がある。この原因の一つは、光電変換膜12に導入される微細なクラックがTCOなどの緻密な膜によってカバレッジされ、反対側の下部電極11との間の導通が増すためと考えられる。そのため、Alなど膜質が比較して劣る電極の場合、リーク電流の増大は生じにくい。上部電極15の膜厚を、光電変換膜12の膜厚(すなわち、クラックの深さ)に対して制御することにより、リーク電流の増大を大きく抑制できる。上部電極15の厚みは、光電変換膜12厚みの1/5以下、好ましくは1/10以下であるようにすることが望ましい。
【0063】
通常、導電性膜をある範囲より薄くすると、急激な抵抗値の増加をもたらすが、本実施形態に係る光電変換素子を組み込んだ固体撮像素子では、シート抵抗は、好ましくは100〜10000Ω/□でよく、薄膜化できる膜厚の範囲の自由度は大きい。また、上部電極(透明導電性膜)15は厚みが薄いほど吸収する光の量は少なくなり、一般に光透過率が増す。光透過率の増加は、光電変換膜12での光吸収を増大させ、光電変換能を増大させるため、非常に好ましい。薄膜化に伴う、リーク電流の抑制、薄膜の抵抗値の増大、透過率の増加を考慮すると、上部電極15の膜厚は、5〜100nmであることが好ましく、更に好ましくは5〜20nmであることが望ましい。
【0064】
下部電極11は、用途に応じて、透明性を持たせる場合と、逆に透明を持たせず光を反射させるような材料を用いる場合等がある。具体的には、アンチモンやフッ素等をドープした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の導電性金属酸化物、金、銀、クロム、ニッケル、チタン、タングステン、アルミ等の金属およびこれらの金属の酸化物や窒化物などの導電性化合物(一例として窒化チタン(TiN)を挙げる)、更にこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物または積層物、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどの有機導電性材料、およびこれらとITOまたは窒化チタンとの積層物などが挙げられる。
【0065】
電極を形成する方法は特に限定されず、電極材料との適正を考慮して適宜選択することができる。具体的には、印刷方式、コーティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式等により形成することができる。
電極の材料がITOの場合、電子ビーム法、スパッタリング法、抵抗加熱蒸着法、化学反応法(ゾル−ゲル法など)、酸化インジウムスズの分散物の塗布などの方法で形成することができる。更に、ITOを用いて作製された膜に、UV−オゾン処理、プラズマ処理などを施すことができる。電極の材料がTiNの場合、反応性スパッタリング法をはじめとする各種の方法が用いられ、更にUV−オゾン処理、プラズマ処理などを施すことができる。
【0066】
[電荷ブロッキング層:電子ブロッキング層、正孔ブロッキング層]
本発明の光電変換素子は、電荷ブロッキング層を有していてもよい。該層を有することにより、得られる光電変換素子の特性(光電変換効率、応答速度など)がより優れる。電荷ブロッキング層としては、電子ブロッキング層と正孔ブロッキング層とが挙げられる。以下に、それぞれの層について詳述する。
【0067】
(電子ブロッキング層)
電子ブロッキング層には、電子供与性有機材料を用いることができる。具体的には、低分子材料では、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPD)や4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)等の芳香族ジアミン化合物、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、イミダゾロン、スチルベン誘導体、ピラゾリン誘導体、テトラヒドロイミダゾール、ポリアリールアルカン、ブタジエン、4,4’,4”トリス(N−(3−メチルフェニル)N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)、ポルフィリン、テトラフェニルポルフィリン銅、フタロシアニン、銅フタロシアニン、チタニウムフタロシアニンオキサイド等のポルフィリン化合物、トリアゾール誘導体、オキサジザゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アニールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、シラザン誘導体などを用いることができ、高分子材料では、フェニレンビニレン、フルオレン、カルバゾール、インドール、ピレン、ピロール、ピコリン、チオフェン、アセチレン、ジアセチレン等の重合体や、その誘導体を用いることができる。電子供与性化合物でなくとも、十分なホール輸送性を有する化合物であれば用いることは可能である。具体的には特開2008−72090号公報の[0083]〜[0089]に記載の化合物が好ましい。
【0068】
電子ブロッキング層は一般式(F−1)で表される化合物を含有することも好ましい。該化合物を使用することにより、得られる光電変換膜の応答速度がより優れると共に、各製造ロッド間の応答速度のばらつきがより抑制される。
【0069】
【化5】

【0070】
(一般式(F−1)中、R”11〜R”18、R’11〜R’18はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、複素環基、水酸基、アミノ基、またはメルカプト基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。R”15〜R”18中のいずれか一つは、R’15〜R’18中のいずれか一つと連結し、単結合を形成する。A11およびA12はそれぞれ独立に下記一般式(A−1)で表される基を表し、R”11〜R”14、およびR’11〜R’14中のいずれか一つとして置換する。Yはそれぞれ独立に炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、またはケイ素原子を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。)
【0071】
【化6】

【0072】
(一般式(A−1)中、Ra1〜Ra8は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、または複素環基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。*は結合位置を表す。Xaは、単結合、酸素原子、硫黄原子、アルキレン基、シリレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、アリーレン基、2価の複素環基、またはイミノ基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。S11はそれぞれ独立に下記置換基(S11)を示し、Ra1〜Ra8中のいずれかひとつとして置換する。n’は0〜4の整数を表す。)
【0073】
【化7】

【0074】
(R’1〜R’3はそれぞれ独立に、水素原子またはアルキル基を表す。)
【0075】
一般式(F−1)中、R”11〜R”18、R’11〜R’18はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、複素環基、水酸基、アミノ基、またはメルカプト基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。更なる置換基の具体例は上述した置換基Wが挙げられ、好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アリール基、複素環基、水酸基、アミノ基、またはメルカプト基であり、より好ましくはハロゲン原子、アルキル基、アリール基、または複素環基であり、更に好ましくはフッ素原子、アルキル基、またはアリール基であり、特に好ましくはアルキル基、アリール基であり、最も好ましくはアルキル基である。
R”11〜R”18、R’11〜R’18として好ましくは、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、アリール基、または複素環基であり、より好ましくは、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜18のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基、または炭素数4〜16の複素環基である。中でも一般式(A−1)で表される置換基がR”12およびR’12にそれぞれ独立に置換することが好ましく、一般式(A−1)で表される置換基がR”12およびR’12にそれぞれ独立に置換し、R”11、R”13〜R”18、R’11、R’13〜R’18が水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜18のアルキル基であることがより好ましく、特に好ましくは一般式(A−1)で表される置換基がR”12およびR’12にそれぞれ独立に置換し、R”11、R”13〜R”18、R’11、R’13〜R’18が水素原子である。
【0076】
Yはそれぞれ独立に炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、またはケイ素原子を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。すなわち、Yは炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、またはケイ素原子からなる二価の連結基を表す。このうち−C(R’21)(R’22)−、−Si(R’23)(R’24)−、−N(R’20)−、が好ましく、−C(R’21)(R’22)−、−N(R’20)−、がより好ましく、−C(R’21)(R’22)−が特に好ましい。
R’20〜R’24は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、アリール基、複素環基、水酸基、アミノ基、またはメルカプト基を表す。その更なる置換基の具体例は置換基Wが挙げられる。R’20〜R’24として好ましくは水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、アリール基、または複素環基であり、より好ましくは、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜18のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基、または炭素数4〜16の複素環基であり、更に好ましくは水素原子、または置換基を有していてもよい炭素数1〜18のアルキル基であり、特に好ましくは炭素数1〜18のアルキル基である。
【0077】
一般式(A−1)におけるRa1〜Ra8は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、アリール基、複素環基、水酸基、アミノ基、またはメルカプト基を表す。その更なる置換基の具体例は置換基Wが挙げられる。また、これらの置換基は複数が互いに結合して環を形成していてもよい。
【0078】
Ra1〜Ra8として好ましくは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基、または炭素数4〜16の複素環基が好ましく、水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、または炭素数6〜14のアリール基がより好ましく、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、または炭素数6〜10のアリール基が更に好ましい。アルキル基は分岐を有するものであってもよい。
好ましい具体例としては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、またはナフチル基が挙げられる。
また、Ra3およびRa6が水素原子または炭素数1〜6のアルキル基であり、かつRa1、Ra2、Ra4、Ra5、Ra7、Ra8は、水素原子である場合が特に好ましい。
【0079】
Xaは、単結合、酸素原子、硫黄原子、アルキレン基、シリレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、アリーレン基、2価の複素環基、またはイミノ基を表し、これらは更に置換基を有していてもよい。
Xaは、単結合、炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数2〜12のアルケニレン基、炭素数6〜14のアリーレン基、炭素数4〜13の複素環基、酸素原子、硫黄原子、炭素数1〜12の炭化水素基(好ましくはアリール基またはアルキル基)を有するイミノ基(例えばフェニルイミノ基、メチルイミノ基、t−ブチルイミノ基)、またはシリレン基が好ましく、単結合、酸素原子、炭素数1〜6のアルキレン基(例えばメチレン基、1,2−エチレン基、1,1−ジメチルメチレン基)、炭素数2のアルケニレン基(例えば−CH2=CH2−)、炭素数6〜10のアリーレン基(例えば1,2−フェニレン基、2,3−ナフチレン基)、またはシリレン基がより好ましく、単結合、酸素原子、炭素数1〜6のアルキレン基(例えばメチレン基、1,2−エチレン基、1,1−ジメチルメチレン基)が更に好ましい。これらの置換基に更に置換基Wを有していてもよい。
一般式(A−1)で表される基の具体例としては、下記N1〜N11で例示される基が挙げられる。但し、これらに限定されない。一般式(A−1)で表される基として好ましくはN−1〜N−7であり、N−1〜N−6がより好ましく、N−1〜N−3がより好ましく、N−1〜N−2が特に好ましく、N−1が最も好ましい。
【0080】
【化8】

【0081】
置換基(S11)において、R’1は水素原子またはアルキル基を表す。R’1として好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、iso−プロピル基、ブチル基、またはtert−ブチル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、iso−プロピル基、またはtert−ブチル基であり、更に好ましくはメチル基、エチル基、iso−プロピル基、またはtert−ブチル基であり、特に好ましくはメチル基、エチル基、またはtert−ブチル基である。
【0082】
R’2は、水素原子またはアルキル基を表す。R’2として好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、iso−プロピル基、ブチル基、またはtert−ブチル基であり、更に好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、またはプロピル基であり、より好ましくは水素原子、メチル基であり、特に好ましくはメチル基である。
【0083】
R’3は水素原子またはアルキル基を表す。R’3として好ましくは水素原子、またはメチル基であり、より好ましくはメチル基である。
【0084】
また、R’1〜R’3はそれぞれ互いに結合して環を形成していてもよい。環を形成する場合、環員数は特に限定されないが、好ましくは5または6員環であり、更に好ましくは6員環である。
【0085】
11は上記置換基(S11)を示し、Ra1〜Ra8中のいずれかひとつとして置換する。一般式(A−1)におけるRa3およびRa6のいずれか少なくとも1つがそれぞれ独立に、上記置換基(S11)を表すことが好ましい。
置換基(S11)として好ましくは下記(a)〜(x)を挙げることができ、(a)〜(j)がより好ましく、(a)〜(h)がより好ましく、(a)〜(f)が特に好ましく、更に(a)〜(c)が好ましく、(a)が最も好ましい。
【0086】
【化9】

【0087】
n’はそれぞれ独立に0〜4の整数を表し、0〜3が好ましく、0〜2がより好ましく、1〜2が更に好ましく、2が特に好ましい。
【0088】
上記一般式(A−1)としては、下記一般式(A−3)で表される基、下記一般式(A−4)で表される基、または下記一般式(A−5)で表される基でもよい。
【0089】
【化10】

【0090】
(一般式(A−3)〜(A−5)中、Ra33〜Ra38、Ra41、Ra44〜Ra48、Ra51、Ra52、Ra55〜Ra58は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、またはアルキル基を表し、これらは更に置換基を有してもよい。*は結合位置を表す。Xc1、Xc2、およびXc3は、それぞれ独立に、単結合、酸素原子、硫黄原子、アルキレン基、シリレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、アリーレン基、2価の複素環基、またはイミノ基を表し、これらは更に置換基を有してもよい。Z31、Z41、およびZ51は、それぞれ独立に、シクロアルキル環、芳香族炭化水素環、または芳香族複素環を表し、これらは更に置換基を有してもよい。)
【0091】
一般式(A−3)〜(A−5)において、Ra33〜Ra38、Ra41、Ra44〜Ra48、Ra51、Ra52、Ra55〜Ra58は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子)、またはアルキル基を表す。極性の低い置換基であると正孔の輸送に有利であるという理由から、水素原子、またはアルキル基であることが好ましく、水素原子であることがより好ましい。
Ra33〜Ra38、Ra41、Ra44〜Ra48、Ra51、Ra52、Ra55〜Ra58がアルキル基を表す場合、該アルキル基としては、炭素数1〜18のアルキル基が好ましく、炭素数1〜12のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜6のアルキル基が更に好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、またはシクロヘキシル基が好ましい。
一般式(A−3)〜(A−5)において、Ra33〜Ra38、Ra41、Ra44〜Ra48、Ra51、Ra52、Ra55〜Ra58のうち隣接するもの同士が互いに結合して環を形成してもよい。環としては前述の環Rが挙げられる。該環としては、好ましくは、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ピリジン環、ピリミジン環等である。
【0092】
Xc1、Xc2、およびXc3は、それぞれ独立に、単結合、酸素原子、硫黄原子、アルキレン基、シリレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、アリーレン基、2価の複素環基、またはイミノ基を表す。Xc1、Xc2、およびXc3がアルキレン基、シリレン基、アルケニレン基、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基、アリーレン基、2価の複素環基、またはイミノ基を表す場合、これらは更に置換基を有していてもよい。該更なる置換基としては、置換基Wが挙げられる。
【0093】
Xc1、Xc2、およびXc3は、単結合、炭素数1〜12のアルキレン基、炭素数2〜12のアルケニレン基、炭素数6〜14のアリーレン基、炭素数4〜13の複素環基、酸素原子、硫黄原子、炭素数1〜12の炭化水素基(好ましくはアリール基またはアルキル基)を有するイミノ基(例えば、フェニルイミノ基、メチルイミノ基、t−ブチルイミノ基)が好ましく、単結合、炭素数1〜6のアルキレン基(例えば、メチレン基、1,2−エチレン基、1,1−ジメチルメチレン基)、炭素数2のアルケニレン基(例えば、−CH2=CH2−)、炭素数6〜10のアリーレン基(例えば、1,2−フェニレン基、2,3−ナフチレン基)がさらに好ましい。
【0094】
31、Z41、およびZ51は、それぞれ独立に、シクロアルキル環、芳香族炭化水素環、または芳香族複素環を表す。一般式(A−3)〜(A−5)において、Z31、Z41、およびZ51はベンゼン環と縮合している。光電変換素子の高い耐熱性と高い正孔輸送能が期待できるという理由から、Z31、Z41、およびZ51は芳香族炭化水素環であることが好ましい。
【0095】
なお、電子ブロッキング層は、複数層で構成してもよい。
電子ブロッキング層としては無機材料を用いることもできる。一般的に、無機材料は有機材料よりも誘電率が大きいため、電子ブロッキング層に用いた場合に、光電変換膜に電圧が多くかかるようになり、光電変換効率を高くすることができる。電子ブロッキング層となりうる材料としては、酸化カルシウム、酸化クロム、酸化クロム銅、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化銅、酸化ガリウム銅、酸化ストロンチウム銅、酸化ニオブ、酸化モリブデン、酸化インジウム銅、酸化インジウム銀、酸化イリジウム等がある。電子ブロッキング層が単層の場合にはその層を無機材料からなる層とすることができ、または、複数層の場合には1つまたは2以上の層を無機材料からなる層とすることができる。
【0096】
(正孔ブロッキング層)
正孔ブロッキング層には、電子受容性有機材料を用いることができる。
電子受容性材料としては、1,3−ビス(4−tert−ブチルフェニル−1,3,4−オキサジアゾリル)フェニレン(OXD−7)等のオキサジアゾール誘導体、アントラキノジメタン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、バソクプロイン、バソフェナントロリン、及びこれらの誘導体、トリアゾール化合物、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体、ビス(4−メチル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、ジスチリルアリーレン誘導体、シロール化合物などを用いることができる。また、電子受容性有機材料でなくとも、十分な電子輸送性を有する材料ならば使用することは可能である。ポルフィリン系化合物や、DCM(4−ジシアノメチレン−2−メチル−6−(4−(ジメチルアミノスチリル))−4Hピラン)等のスチリル系化合物、4Hピラン系化合物を用いることができる。具体的には特開2008−72090号公報の[0073]〜[0078]に記載の化合物が好ましい。
【0097】
電荷ブロッキング層の製造方法は特に制限されず、乾式製膜法または湿式製膜法により製膜できる。乾式製膜法としては、蒸着法、スパッタ法等が使用できる。蒸着は、物理蒸着(PVD)、化学蒸着(CVD)のいずれでもよいが、真空蒸着等の物理蒸着が好ましい。湿式製膜法としては、インクジェット法、スプレー法、ノズルプリント法、スピンコート法、ディップコート法、キャスト法、ダイコート法、ロールコート法、バーコート法、グラビアコート法等が使用可能であるが、高精度パターニングの観点からはインクジェット法が好ましい。
【0098】
電荷ブロッキング層(電子ブロッキング層および正孔ブロッキング層)の厚みは、それぞれ、10〜200nmが好ましく、更に好ましくは30〜150nm、特に好ましくは50〜100nmである。この厚みが薄すぎると、暗電流抑制効果が低下してしまい、厚すぎると光電変換効率が低下してしまうためである。
【0099】
[基板]
本発明の光電変換素子は、さらに基板を含んでいてもよい。使用される基板の種類は特に制限されず、半導体基板、ガラス基板、またはプラスチック基板を用いることができる。
なお、基板の位置は特に制限されないが、通常、基板上に導電性膜、光電変換膜、および透明導電性膜をこの順で積層する。
【0100】
[封止層]
本発明の光電変換素子は、さらに封止層を含んでいてもよい。光電変換材料は水分子などの劣化因子の存在で顕著にその性能が劣化してしまうことがあり、水分子を浸透させない緻密な金属酸化物・金属窒化物・金属窒化酸化物などセラミクスやダイヤモンド状炭素(DLC)などの封止層で光電変換膜全体を被覆して封止することが上記劣化を防止することができる。
なお、封止層としては、特開2011−082508号公報の段落[0210]〜[0215]に記載に従って、材料の選択および製造を行ってもよい。
【0101】
[光センサ]
光電変換素子の用途として、例えば、光電池と光センサが挙げられるが、本発明の光電変換素子は光センサとして用いることが好ましい。光センサとしては、上記光電変換素子単独で用いたものでもよいし、上記光電変換素子を直線状に配したラインセンサや、平面上に配した2次元センサの形態とするものが好ましい。本発明の光電変換素子は、ラインセンサでは、スキャナー等の様に光学系および駆動部を用いて光画像情報を電気信号に変換し、2次元センサでは、撮像モジュールのように光画像情報を光学系でセンサ上に結像させ電気信号に変換することで撮像素子として機能する。
光電池は発電装置であるため、光エネルギーを電気エネルギーに変換する効率が重要な性能となるが、暗所での電流である暗電流は機能上問題にならない。更にカラーフィルタ設置等の後段の加熱工程が必要ない。光センサは明暗信号を高い精度で電気信号に変換することが重要な性能となるため、光量を電流に変換する効率も重要な性能であるが、暗所で信号を出力するとノイズとなるため、低い暗電流が要求される。更に後段の工程に対する耐性も重要である。
【0102】
[撮像素子]
次に、光電変換素子10aを備えた撮像素子の構成例を説明する。
なお、以下に説明する構成例において、すでに説明した部材などと同等な構成・作用を有する部材等については、図中に同一符号または相当符号を付すことにより、説明を簡略化或いは省略する。
撮像素子とは画像の光情報を電気信号に変換する素子であり、複数の光電変換素子が同一平面状でマトリクス上に配置されており、各々の光電変換素子(画素)において光信号を電気信号に変換し、その電気信号を画素ごとに逐次撮像素子外に出力できるものをいう。そのために、画素ひとつあたり、一つの光電変換素子、一つ以上のトランジスタから構成される。
図2は、本発明の一実施形態を説明するための撮像素子の概略構成を示す断面模式図である。この撮像素子は、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ等の撮像装置、電子内視鏡、携帯電話機等の撮像モジュール等に搭載して用いられる。
この撮像素子は、図1に示したような構成の複数の光電変換素子と、各光電変換素子の光電変換膜で発生した電荷に応じた信号を読み出す読み出し回路が形成された回路基板とを有し、該回路基板上方の同一面上に、複数の光電変換素子が1次元状または二次元状に配列された構成となっている。
【0103】
図2に示す撮像素子100は、基板101と、絶縁層102と、接続電極103と、画素電極(下部電極)104と、接続部105と、接続部106と、光電変換膜107と、対向電極(上部電極)108と、緩衝層109と、封止層110と、カラーフィルタ(CF)111と、隔壁112と、遮光層113と、保護層114と、対向電極電圧供給部115と、読出し回路116とを備える。
【0104】
画素電極104は、図1に示した光電変換素子10aの電極11と同じ機能を有する。対向電極108は、図1に示した光電変換素子10aの電極15と同じ機能を有する。光電変換膜107は、図1に示した光電変換素子10aの電極11および電極15間に設けられる層と同じ構成である。
【0105】
基板101は、ガラス基板またはSi等の半導体基板である。基板101上には絶縁層102が形成されている。絶縁層102の表面には複数の画素電極104と複数の接続電極103が形成されている。
【0106】
光電変換膜107は、複数の画素電極104の上にこれらを覆って設けられた全ての光電変換素子で共通の層である。
【0107】
対向電極108は、光電変換膜107上に設けられた、全ての光電変換素子で共通の1つの電極である。対向電極108は、光電変換膜107よりも外側に配置された接続電極103の上にまで形成されており、接続電極103と電気的に接続されている。
【0108】
接続部106は、絶縁層102に埋設されており、接続電極103と対向電極電圧供給部115とを電気的に接続するためのプラグ等である。対向電極電圧供給部115は、基板101に形成され、接続部106および接続電極103を介して対向電極108に所定の電圧を印加する。対向電極108に印加すべき電圧が撮像素子の電源電圧よりも高い場合は、チャージポンプ等の昇圧回路によって電源電圧を昇圧して上記所定の電圧を供給する。
【0109】
読出し回路116は、複数の画素電極104の各々に対応して基板101に設けられており、対応する画素電極104で捕集された電荷に応じた信号を読出すものである。読出し回路116は、例えばCCD、CMOS回路、またはTFT回路等で構成されており、絶縁層102内に配置された図示しない遮光層によって遮光されている。読み出し回路116は、それに対応する画素電極104と接続部105を介して電気的に接続されている。
【0110】
緩衝層109は、対向電極108上に、対向電極108を覆って形成されている。封止層110は、緩衝層109上に、緩衝層109を覆って形成されている。カラーフィルタ111は、封止層110上の各画素電極104と対向する位置に形成されている。隔壁112は、カラーフィルタ111同士の間に設けられており、カラーフィルタ111の光透過効率を向上させるためのものである。
【0111】
遮光層113は、封止層110上のカラーフィルタ111及び隔壁112を設けた領域以外に形成されており、有効画素領域以外に形成された光電変換膜107に光が入射する事を防止する。保護層114は、カラーフィルタ111、隔壁112、及び遮光層113上に形成されており、撮像素子100全体を保護する。
【0112】
このように構成された撮像素子100では、光が入射すると、この光が光電変換膜107に入射し、ここで電荷が発生する。発生した電荷のうちの正孔は、画素電極104で捕集され、その量に応じた電圧信号が読み出し回路116によって撮像素子100外部に出力される。
【0113】
撮像素子100の製造方法は、次の通りである。
対向電極電圧供給部115と読み出し回路116が形成された回路基板上に、接続部105,106、複数の接続電極103、複数の画素電極104、および絶縁層102を形成する。複数の画素電極104は、絶縁層102の表面に例えば正方格子状に配置する。
【0114】
次に、複数の画素電極104上に、光電変換膜107を例えば真空加熱蒸着法によって形成する。次に、光電変換膜107上に例えばスパッタ法により対向電極108を真空下で形成する。次に、対向電極108上に緩衝層109、封止層110を順次、例えば真空加熱蒸着法によって形成する。次に、カラーフィルタ111、隔壁112、遮光層113を形成後、保護層114を形成して、撮像素子100を完成する。
【0115】
撮像素子100の製造方法においても、光電変換膜107の形成工程と封止層110の形成工程との間に、作製途中の撮像素子100を非真空下に置く工程を追加しても、複数の光電変換素子の性能劣化を防ぐことができる。この工程を追加することで、撮像素子100の性能劣化を防ぎながら、製造コストを抑えることができる。
【実施例】
【0116】
以下に実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0117】
(例示化合物(A−2)の合成)
2,5−ジヒドロキシ−p−ベンゾキノン15gと4−t−ブチルアニリン15gとを窒素下90℃で加熱した。TLCで反応終了確認後、得られた混合物にメタノール80mlを加え、分散液を調製した。得られた分散液を濾過し、回収された固体をトルエン400ml中に分散させ、大気下加熱還流を行った。TLCで反応終了確認後、溶液を冷却し、得られた固体を濾過した。回収された濾過物をメタノールで洗浄し、メタンスルホン酸30ml中に投入し、140℃まで昇温後、室温で攪拌した。反応混合液を水に分散し、得られる固体を濾別して、水、メタノールで順次洗浄し、その後1,2−ジエトキシエタン、t−BuOK、および硫酸ジメチルと共に加熱還流した。TLCで反応終了確認後、反応液を水に分散し、得られる固体を濾別して、水、メタノールで順次洗浄することで化合物(A−2)12gを得た。
【0118】
(例示化合物(A−7)の合成)
上記例示化合物(A−2)の合成において、4−t−ブチルアニリンを等モルの2−アミノナフタレンに置き換え、2,5−ジヒドロキシ−p−ベンゾキノンと加熱反応させた。その後、例示化合物(A−2)の合成の場合と同様に、得られた混合物にメタノールを加えて分散液とし、分散液中から固体を回収し、トルエン中で加熱環流を行い、例示化合物(A−7)17gを得た。
【0119】
(例示化合物(A−9)の合成)
2,5−ジヒドロキシ−p−ベンゾキノン15gと4−t−ブチルアニリン15gとを窒素下90℃で6時間加熱した。得られた混合物にメタノール80mlを加え、分散液を調製した。得られた分散液を濾過し、回収された固体をトルエン400ml中に分散させ、大気下8時間加熱還流した。反応溶液を冷却後、得られた固体を濾過し、メタノールで洗浄した。その後、濾過物をヨードベンゼン40ml、炭酸カリウム6g、銅3.2g、ヨウ化銅0.6gと共に窒素下、160℃で一晩加熱攪拌した。室温まで冷却後、反応溶液を塩化メチレンに分散し、不溶物を除去した後、母液を濃縮することで固体を得た。得られた固体をメタンスルホン酸30ml中に投入し、140℃まで昇温後、室温で攪拌した。反応混合液を水に分散し、得られた固体を濾別して、水、メタノールで順次洗浄することで例示化合物(A−9)13gを得た。
【0120】
(例示化合物(A−17)の合成)
上記例示化合物(A−9)の合成において、4−t−ブチルアニリンを3−ジメチルアミノアニリンに置き換えた以外は、同様の手順に従って、例示化合物(A−17)10gを得た。
【0121】
(例示化合物(A−23)の合成)
上記例示化合物(A−2)の合成において、4−t−ブチルアニリンを4−t−アミルアニリンに置き換えた以外は、同様の手順に従って、例示化合物(A−23)11gを得た。
【0122】
(例示化合物(A−24)の合成)
例示化合物(A−7)10gをヨードベンゼン40ml、炭酸カリウム6g、銅3.2g、ヨウ化銅0.6gと共に窒素下、160℃で一週間加熱攪拌した。反応溶液を室温まで冷却後、反応溶液を塩化メチレンに分散し不溶物を除去した。その後、母液を濃縮し、メタノールに分散させた後、濾過することで例示化合物(A−24)8gを得た。
【0123】
(例示化合物(A−25)の合成)
上記例示化合物(A−2)の合成において、4−t−ブチルアニリンを等モルの4−ジメチルアミノアニリンに置き換えた以外は、同様の手順に従って、例示化合物(A−25)11gを得た。
【0124】
以上で合成した化合物は、アルバック理工製TRS-160を用いて、0.02paのアルゴン雰囲気下で昇華精製を行った。昇華精製は必要に応じ複数回行った。昇華精製中の昇華温度は280−350℃であった。これらの含水率をカールフィッシャー法、含溶媒量をエスアイアイ・ナノテクノロジー社製TG/DTA 6200 AST−2を用いた重量減少法を用いて測定したところ、いずれも0.1%以下であった。
なお、上記例示化合物(A−2)、(A−7)、(A−9)、(A−17)、(A−23)、(A−24)、および(A−25)は、上述した一般式(X−1)で表される化合物中の例示化合物にそれぞれ該当する。
【0125】
<光電変換素子の作製>
[実施例1]
図1(a)の形態の、光電変換素子を作製した。ここで、光電変換素子は、下部電極11、電子ブロッキング層16A、光電変換膜12、および上部電極15からなる。
すなわち、ガラス基板上に、アモルファス性TiN 100nmをスパッタ法により成膜して下部電極11を形成し、さらに下部電極11上に化合物(Y−1)100nmを真空加熱蒸着法により成膜し、電子ブロッキング層16Aを形成した。更に、基板の温度を25℃で制御した状態で、電子ブロッキング層16A上に、光電変換材料として例示化合物(A-2)とフラーレン(C60)とをそれぞれ単層換算で150nm、250nmとなるように真空加熱蒸着により共蒸着して成膜し、光電変換膜12を形成した。更に、光電変換膜12上に、スパッタ法によりアモルファス性ITOを15nm成膜して、透明電極(上部電極)15を形成した。上部電極15上には、加熱蒸着により封止層としてSiO膜を形成した後、その上にALD法により酸化アルミニウム層を形成し、光電変換素子を作製した。
その後、るつぼ内の材料(電子ブロッキング層材料、化合物(A-2)、C60)を入れ替えることなく、同様の素子構成、膜厚で、計5回繰り返して光電変換素子を作製した。電子ブロッキング層16Aおよび光電変換膜12の真空蒸着は、全て4×10-4Pa以下の真空度で行った。蒸着温度は、電子ブロッキング層16Aが1.0オングストローム/s、光電変換膜12は5.0オングストローム/sであった。
【0126】
[実施例2〜12、比較例1〜6]
実施例1において、電子ブロッキング層16Aに用いた化合物(Y−1)、および、光電変換膜12に用いた(A−2)、および、各々の膜厚を下記表3に示すように変更した以外は、実施例1と同様の手順に従って、光電変換素子を作製した。
但し、実施例12のみ共蒸着するC60の膜厚を200nmにして行った。いずれの実施例および比較例においても、一般式(1)で表される化合物とC60とは混合膜として蒸着された。
【0127】
【化11】

【0128】
【化12】

【0129】
[評価]
上記実施例および比較例で製造された各光電変換素子について、下部電極にマイナスの電圧を、上部電極プラスの電圧を、1.5×105V/cmの電界強度となるように電圧を印加した。
光電変換効率は、オプテル製定エネルギー量子効率測定装置(ソースメーターはケースレー6430を使用)を用いて光照射時における光電流を測定し、外部量子効率を求め、素子表面の反射光の影響を除くため、520nmでの外部量子効率を520nmの光吸収率で除算することで量子効率とした。照射した光量は50uW/cm2であった。
暗電流は、暗所でケースレー6430により電流を測定し、電極面積で割ることで電流密度とした。
応答速度は、LEDを瞬間的に点灯させ、素子を照射し、オシロスコープで光電流を測定し、0から90%信号強度への立ち上がり時間を求めた。応答速度は、連続で5ヶ作製した光電変換素子を用いて測定された5回の測定値の平均値、および、平均値に対する最大値と最小値の差の比[{(最大値−最小値)/平均値}×100]をばらつき(%)として計算した。結果を表3に示す。
なお、各素子の光電変換性能の測定の際には、上部電極(透明導電性膜)側から光を入射した。
【0130】
表3中、比較例1〜6においては、光電変換材料として「一般式(1)で表される化合物」の代わりに、上記(Z−1)〜(Z−6)の化合物を使用した。該(Z−1)〜(Z−6)は、上述した特許文献2および3などの実施例で具体的に使用されている化合物に該当する。
【0131】
【表3】

【0132】
表3から明らかなように、実施例1〜12は比較例1〜6に比べて、応答速度のばらつきが小さく、製造に適した光電変換素子を作製できた。さらに、実施例1〜12では比較例に対して高い光電変換効率、低い暗電流、短い応答時間を同時に満たしており、優れた光電変換素子であるといえる。とりわけ、実施例1、3〜12では高い光電変換効率、低い暗電流、短い応答時間が高レベルで同時に実現しており、特に優れていることがわかった。また、R1がアリール基であるA−9、A−17,A−24を使用した実施例3,4、6においては、応答速度がより小さく、ばらつきも非常に小さく、より優れた光電変換素子といえる。さらに、実施例6、8および9の比較より、電子ブロッキング材料として、Y−1(上記一般式(F−1)で表される化合物に該当)を使用すると、応答速度がより小さく、ばらつきも小さくなることが分かった。
なお、特許文献2および3で具体的に開示されている化合物を使用した比較例1〜6においては、本発明で使用される光電変換素子と比較して、光電変換効率、暗電流の発生、応答速度のいずれの点においても劣っていた。
【0133】
更に図2に示す形態と同様の撮像素子を作製した。すなわち、CMOS基板上に、アモルファス性TiN 30nmをスパッタ法により成膜後、フォトリソグラフィーによりCMOS基板上のフォトダイオード(PD)の上にそれぞれ1つずつ画素が存在するようにパターニングして下部電極とし、電子ブロッキング材料の製膜以降は実施例1〜12、比較例1〜6と同様に作製した。その評価も同様に行い、表1と同様な結果が得られ、撮像素子においても製造に適していることと、優れた性能を示すことが分かった。
【符号の説明】
【0134】
10a、10b 光電変換素子
11 下部電極(導電性膜)
12 光電変換膜
15 上部電極(透明導電性膜)
16A 電子ブロッキング層
16B 正孔ブロッキング層
100 撮像素子
101 基板
102 絶縁層
103 接続電極
104 画素電極(下部電極)
105 接続部
106 接続部
107 光電変換膜
108 対向電極(上部電極)
109 緩衝層
110 封止層
111 カラーフィルタ(CF)
112 隔壁
113 遮光層
114 保護層
115 対向電極電圧供給部
116 読出し回路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性膜、光電変換材料を含む光電変換膜、および透明導電性膜をこの順で積層してなる光電変換素子であって、前記光電変換膜が固体からなる膜であり、
前記光電変換材料が、一般式(1)で表される化合物を含む、光電変換素子。
【化1】


(一般式(1)中、A1は、炭素数3以上の芳香族ヘテロ環基、または、炭素数3以上のカルボニル基を含まない芳香族炭化水素基を表す。R1は、水素原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。R2は、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、アミノ基、またはシアノ基を表す。n1は、2または3の整数を表す。n2は、1〜4の整数を表す。なお、n2が2以上の場合、複数のR2は互いに結合して環を形成してもよい。
但し、R1が水素原子である場合、R2はアリール基、ヘテロ環基、若しくは炭素数が5以上のアルキル基を表すか、または、n2が2以上で、複数のR2が互いに結合して芳香族環を形成する。)
【請求項2】
一般式(1)中におけるA1が、一般式(2−a)で表される基、または一般式(2−b)で表される基である、請求項1に記載の光電変換素子。
【化2】


(一般式(2−a)および一般式(2−b)中、*は結合位置を表す。)
【請求項3】
1が、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基である、請求項1または2に記載の光電変換素子。
【請求項4】
1が、アリール基である、請求項1〜3のいずれかに記載の光電変換素子。
【請求項5】
前記光電変換膜が、さらにフラーレンまたはフラーレン誘導体を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の光電変換素子。
【請求項6】
さらに、電荷ブロッキング層を備える、請求項1〜5のいずれかに記載の光電変換素子。
【請求項7】
前記透明導電性膜が、透明導電性金属酸化物からなる、請求項1〜6のいずれかに記載の光電変換素子。
【請求項8】
光が前記透明導電性膜を介して前記光電変換膜に入射される、請求項1〜7のいずれかに記載の光電変換素子。
【請求項9】
前記光電変換膜が、真空蒸着法により成膜されたものである、請求項1〜8のいずれかに記載の光電変換素子。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の光電変換素子を含む撮像素子。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれかに記載の光電変換素子を含む光センサ。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれかに記載の光電変換素子の使用方法であって、
前記導電性膜と前記透明導電性膜とが一対の電極であり、前記一対の電極間に1×10-4〜1×107V/cmの電場を印加させる、光電変換素子の使用方法。
【請求項13】
一般式(1)で表される化合物を含む光電変換膜。
【化3】


(一般式(1)中、A1は、炭素数3以上の芳香族ヘテロ環基、または、炭素数3以上のカルボニル基を含まない芳香族炭化水素基を表す。R1は、水素原子、アルキル基、アリール基、またはヘテロ環基を表す。R2は、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、アミノ基、またはシアノ基を表す。n1は、2〜3の整数を表す。n2は、1〜4の整数を表す。なお、n2が2以上の場合、複数のR2は互いに結合して環を形成していてもよい。
但し、R1が水素原子である場合、R2はアリール基、ヘテロ環基、または炭素数が5以上のアルキル基を表すか、または、n2が2以上で、複数のR2が互いに結合して芳香族環を形成する。)



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−12535(P2013−12535A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143238(P2011−143238)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】