説明

免疫保護性刺激物質としてカチオン性抗菌ペプチド発現を誘導するためのPPAR−γアゴニスト

PPAR−γ受容体を有する組織においてCAMP発現を誘導するための、ロシグリタゾン、5−ASA又は構造的に類似の一般式(I)の化合物又は一般式(Ia)の化合物。このような組織として、PPAR−γ受容体を有する上皮又は粘膜組織が挙げられ、腸管におけるCAMP発現が特に注目される。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PPAR−γアゴニストによるデフェンシンの誘導に関する。デフェンシンは、皮膚、口腔、鼻、眼の上皮及び、膣粘膜を含むその他の上皮粘膜に免疫保護を提供する。特に、本発明は、上皮及び/又は粘膜におけるPPAR受容体の活性化を介した、このようなアゴニストによる防御生成の刺激に関係している。より詳しくは、本発明は、腸管PPAR受容体の活性化による、このようなアゴニストによる腸デフェンシン生成の刺激に関係している。
【背景技術】
【0002】
クローン病(CD)及び潰瘍性大腸炎(UC)をはじめとする炎症性腸疾患(IBD)は、寛解及び増悪を伴う慢性再発性疾患であり、主に若年患者において発症する。炎症は、腸のすべての領域及び腸管粘膜のすべての層に、例えば、CDでは、隣接する腸間膜脂肪組織及び肛門周辺部に影響を及ぼすことがある。これらの疾患は、臨床的には、長期の、変動する経過、多様な腸の症状、並びに重篤な局所合併症及び全身合併症の発生を特徴とする。CD及びUCの病因はまだわかっていないが、病的な腸の炎症反応は、遺伝的に素因のある個体の消化管における細菌叢耐性の崩壊の結果であると考えられている
【0003】
IBDは、先進国において、特に、西ヨーロッパ、北アメリカ及びオーストラリアにおいて、より顕著である。CD及びUCの有病率は、約1〜2人/住民1000人である。特に、2005年には、フランスでは、合計120000人のCD及び80000人のUCが推定されており、米国では、約250万人のIBD患者が推定されている。利用可能な治癒的治療分子がまったくなく、治療管理は対症療法(鎮痛剤、抗生物質、栄養物)、抗炎症剤及び免疫抑制剤(アミノサリチレート、ステロイド、アザチオプリン、メトトレキサート、シクロスポリン、モノクローナル抗TNF抗体、例えば、インフリキシマブ)及び外科治療と関連している。したがって、総合すると、新規治療分子の開発は、臨床管理にとって極めて重要である。
【0004】
消化粘膜は、種々の免疫戦略を発達させて、親密に接触する共生生物を許容し、病原菌が宿主組織に蔓延するのを防いできた。食物由来の常在性及び病原性微生物の認識は、昆虫及び哺乳類の生存にとって必須のバリア機能である。特に、病原体に対する哺乳類の耐性は、主に、膜結合型Toll様受容体(TLR)及び細胞質ヌクレオチド結合性オリゴマー形成ドメインロイシンリッチリピート含有タンパク質(NODLRR)の最近同定されたファミリーによって付与される。NOD1及びNOD2は、N末端カスパーゼ補充ドメイン(CARD)、中心ヌクレオチド結合性ドメイン(NOD)及びC末端ロイシンリッチリピートドメイン(LRR)を有する。
【0005】
NOD2遺伝子の突然変異はクローン病(CD)と関連していたために3、4、NOD2シグナル伝達は相当な注目を集めてきた。NOD2は、細菌増殖の際に放出され、再循環される主要なムロペプチド−ムラミルジペプチドMurNAc−L−Ala−D−イソGln(MDP)6〜8を検出することによって、細菌ペプチドグリカンの細胞質パターン認識分子(PRM)として作用する。NOD2は、MDPを認識した後、転写因子及びキナーゼ活性化を介して自然免疫及び獲得免疫の両方を促進及び調節する。したがって、マウスでは、NOD2シグナル伝達がないことは、理解できるように、特定の腸内カチオン性抗菌ペプチド(CAMP)の調節を介してリステリア菌(Listeria monocytogenes)に対する経口感受性を付与する。最近の研究によって、NOD1がメソ−ジアミノピメリン酸を含有するペプチドグリカン(主にグラム陰性菌で見られる)に対する応答性を付与するという証拠が提供されている9、10。NOD1は、NOD2の生理学的役割と同様に、ピロリ菌(Helicobacter pylori)感染の際の胃上皮細胞による特定のβ−デフェンシンの発現に必要とされる11
【0006】
胃腸管の抗菌ペプチド(CAMP:デフェンシン、カスレリシジン(cathlelicidins)):炎症性疾患への影響
最近の報告書によって、腸管上皮を補充する幹細胞が、持続的な抗菌性保護を必要とするために、腸管ホメオスタシスの監視及び侵入する微生物の包含におけるCAMPのエフェクターの役割が明らかにされた。CAMP発現のレベルは、妊娠の間の局所防御機構の未熟性から誕生後の腸管の細菌定着への、後生動物における腸の発達に対応している12。哺乳類の腸管に蔓延している2種類のCAMP、即ち、デフェンシン及びカテリシジンのNF−κB依存性及び非依存性調節は特に注目される。
【0007】
α−及びβ−デフェンシンは、小さなポリペプチドであり、空間的に分離している疎水性の、正に帯電した残基を有する。6個の不変のシステインが3つの特異的な分子内ジスルフィド結合を形成し、このようにしてタンパク質を複雑にフォールディングされた三重鎖βシート立体配置で安定化する12、13。α−デフェンシンHD−1〜HD−4(ヒト好中球タンパク質1〜4としても知られる)は、好中球によって発現されるが、HD−5及びHD−6(マウスではクリプトジンとしても知られる)は、パネート細胞と呼ばれる、特定化された腸の上皮細胞によって産生される。後者は、主に、小腸のリーベルキューンの陰窩の基部に位置し、微生物及び/又は微生物産物に対する曝露に続いて、タンパク質性顆粒を合成し、管腔中に放出することによって回腸粘膜の自然免疫において主要な役割を有する。これらの分泌顆粒は、膜の完全性を破壊することによって微生物の壊死を引き起こし得る両親媒性ペプチドに富んでいる12
【0008】
パネート細胞は、共生動物に対する寛容の維持において、また、抗菌ペプチド、例えば、デフェンシンを産生することによる病原性感染の忌避において重要な役割を果たす。Wnt/Tcf/β−カテニンシグナル伝達経路は、腸のホメオスタシス及びパネート細胞分化の制御において必須である。
【0009】
興味深いことに、CDにおいて、腸α−デフェンシン(即ち、HD−5)の損なわれた腸での発現が報告されており、これが管腔細菌叢の変化の一因となり、且つ/又は腸管病原体、例えば、付着侵入性大腸菌(E.coli)59及びパラ結核菌(M.paratuberculosis)60(図2)の感染に対する上皮性関門全体の脆弱性を生じさせる可能性がある。結腸における生理学的細菌負荷は、小腸においてよりも高いので、結腸疾患の発生に対するその他の微生物センサー及びCAMPの影響も解明される必要がある。最後に、突然変異CAMPを有するマウス及び主要なCD関連NOD2突然変異を保持する最近開発されたマウスモデル61の使用も、損なわれた腸のデフェンシン機能及び/又は自然NOD突然変異が、腸の炎症性疾患の発生を引き起こすのに十分であるかどうかを調べるのに役立つ可能性がある。α−デフェンシンのin vivo抗菌機能は、胃腸の管腔における優勢細菌叢の組成の著しい変化が同時に起こった、HD−5トランスジェニックマウスにおいて、ネズミチフス菌(salmonella typhimurium)感染に対するより大きな耐性が観察されたことによって実験的に調べられている14。パネート細胞によって産生されたα−デフェンシンは、β−デフェンシンとは異なり、細胞外プロテアーゼ15、例えば、マウス及びヒトではそれぞれ、マトリックスメタロプロテイナーゼ−7(MMP−7、マトリライシン)及びトリプシン16、17によって転写後レベルで主に調節される。したがって、MMP−7−/−マウスは、クリプトジンの不活性型を蓄積し、ネズミチフス菌(S.typhimurium)の経口感染に、野生型の動物よりも容易に屈する17。6種のヒトβ−デフェンシン(hBD−1〜hBD−6)は、ほとんどの上皮細胞によって主に合成される。hBD1相同分子種を欠くマウスは、黄色ブドウ球菌(staphylococcus aureus)感染に対する感受性の増大を示し18、このことは、自然免疫におけるこのタンパク質の役割を支持する。
【0010】
カテリシジンは、デフェンシンとは構造的及び進化的に別個であるが、消化管において同様の存在量及び分布を有するCAMPである12。それらは、抗菌活性を有するC末端ペプチドに結合された、高度に保存されたN末端ドメイン(カテリン(cathelin))を含有する大きな前駆体ペプチドとして合成される。デフェンシンと同様に、カテリシジンは、細胞外、部分タンパク質分解によって活性化される19。その他の哺乳類種では、このファミリーのいくつかのメンバーが同定されているが、ヒト及びマウスは、単一のカテリシジン遺伝子(それぞれ、LL37/FALL39/hCAP18及びカテリン関連抗菌ペプチド(CRAMP)と呼ばれる)を有する20。実験的証拠によって、CRAMPを欠くマウスは、A群連鎖球菌による皮膚感染及び侵襲性大腸菌(Escherichia coli)による尿路感染に対してより感受性であるということが示されている21、22。さらに、CRAMP欠損マクロファージは、ネズミチフス菌(S.typhimurium)の複製を制御できなかった23
【0011】
NF−κB及びMyD88シグナル伝達経路に突然変異を有するマウスは、それぞれ、ヘリコバクター誘導性大腸炎24及び共生動物誘発性大腸炎25に対する感受性の増大を示し、このことは、細菌に対する腸管寛容/耐性におけるNF−κBの必須の役割及びCAMP産生の調節における関与の可能性を示す。ヒトでは、hBD−1発現は、小腸及び結腸では構成的であるが、hBD−2〜−4の結腸での合成は、消化管における感染性病原体(例えば、ピロリ菌(H.pylori))及び/又は炎症性サイトカインによるNF−κB活性化に強力に依存している12。TLRシグナル伝達の調節的影響に加え、NOD1及びNOD2シグナル伝達経路が、hBD−2発現を誘発することがわかっている11、27。さらに、最近の知見により、hBD−2及び/又は−3発現には、MAPキナーゼ経路の活性化も必要であることがわかっている11、26
【0012】
NOD2遺伝子における3つの突然変異(即ち、R702W、G908R及び1007fs)は、CDに対する素因につながることがわかっている3、4。遺伝子型−表現型相関性から、NOD2突然変異は、主に回腸CDと関連していることが立証されている42。よく見られる突然変異及び稀な突然変異の両方が、MDP誘導性NF−κB活性化の低下5、7及び末梢血単球におけるサイトカイン産生と関連している7、43〜45。Lalaらは、NOD2はパネート細胞において高度に発現されること46、47、NOD2突然変異と回腸炎症病変の発生の間の関連を説明し得る知見42を最近報告した。回腸におけるNOD2の保護効果と一致して、Nod2−ノックアウトマウスは、(i)グラム陽性通性細胞内細菌リステリア菌(L.monocytogenes)の経口感染(全身感染ではない)に対する感受性の増大及び(ii)クリプトジン遺伝子のサブグループの発現の著しい減少を示した
【0013】
重要なことに、回腸CD患者から得た外科的切除試料及び生検においてHD−5及びHD−6の産生の減少が見られ14、48、49、報告によれば、CD関連NOD2突然変異がこの障害の一因であった。他方、結腸クローン病の個体は、正常なα−デフェンシンレベルを示したが、かなり減少したコピー数のβ−デフェンシン遺伝子hBD−2を有し、これが結腸における発現の低下をもたらす50。NOD2突然変異と同様に、NOD1遺伝子の複雑なイントロン多型は、IBDの発病と関連している51。さらに、Nod1欠損マウスは、ピロリ菌(H.pylori)感染に対する感受性の増大52及び特定のβ−デフェンシンの発現の減少を示す11
【0014】
回腸CDにおけるデフェンシンの発現の減少は、管腔細菌叢の変化の一因となり、ひいては、CD関連病原体、例えば、付着侵入大腸菌(E.coli)59及びパラ結核菌(M.paratuberculosis)60の感染に対する上皮性関門全体の脆弱性を生じさせ得る。
【0015】
同時に、NF−κB非依存性シグナル伝達経路は、上皮細胞再生、分化及び/又は分化系列決定を調節することによって、CAMP産生を制御し得る。興味深いことに、Wingless(Wnt)シグナル伝達の障害は、胎児小腸上皮における増殖細胞の完全な欠損と関連しており28、このことは、この経路が腸の上皮細胞の増殖/未分化状態の維持において必須の役割を有するということを示唆する。エフリンB3遺伝子(Wntシグナル伝達経路によってダウンレギュレートされる)がないことは、異常なパネート細胞分化系列決定をもたらすことがわかった29。さらに、Wntシグナル伝達経路は、パネート細胞由来の細胞におけるデフェンシン遺伝子発現を監視し得るが(転写因子4、Tcf4を介して)、これは、クリプトジンが、胎児Tcf4−/−マウスの小腸又はWnt受容体Frizzled−5を欠く成体のものでは検出されなかったからである30。逆に、クリプトジン遺伝子は、マウスにおいて過剰発現され、このことは、Wntシグナル伝達経路の突然変異による活性化を示す30、31
【0016】
α−デフェンシンプロモーターの部位特異的突然変異分析によって、TCF結合部位の必須の調節的役割が示された30。総じて、これらの知見は、パネート細胞由来CAMPの産生にはWntシグナル伝達の活性化が必要であるということを示す。したがって、パネート細胞決定要因(例えば、Mtgr1及びGfi1)は、慢性炎症性疾患に対する感受性の可能性ある候補と考えられるべきである32、33
【0017】
最後に、免疫、細菌誘導性炎症及び細胞増殖/成熟における特定の核受容体の重要な役割を考えると、これらの受容体は、CAMP生合成を調節することによって胃腸の自然免疫において可能性ある役割を有し得るということが示唆されている。興味深いことに、グルココルチコイド受容体アゴニスト(デキサメタゾン)は、hBD−2発現を増強することがわかったが、機序は調べられていないままである34。より最近、カテリシジンをコードする遺伝子及びhBD2をコードする遺伝子が、ビタミンD受容体(VDR)35、ウシ結核菌(M.bovis)感染に対する耐性に必要な核受容体36の標的として同定された。単球の、合成VDRリガンドでの処理が、カテリシジン遺伝子転写の用量依存性アップレギュレーションにつながり、これが結核菌(M.tuberculosis)に対する直接抗菌効果を発揮した37。これらの知見と一致して、内因性VDRリガンドレベルが低下した個体は、結核菌(M.tuberculosis)感染に対する感受性の増大を示す37
【0018】
微生物(一般に、病原体)は、CAMPの殺菌活性を回避するために、抗生物質耐性に関与しているものを彷彿とさせるさまざまな戦略を発達させてきた39。不活化を達成するための1つの方法は、CAMPを分解するプロテアーゼを産生することであるが、デフェンシンの場合には、分子内ジスルフィド橋が、ペプチドを酵素的タンパク質分解に対して相対的に耐性にしている。別の戦略は、細菌エンベロープの正味の正電化を低下させ、CAMPに対するその親和性を低下させることからなり、これは、正に帯電した基を細菌細胞壁中のタイコ酸ポリマー(D−アラニン)中及び脂質A(アミノアラビノース)中に組み込むことによって達成される。CAMP耐性へのその他の細菌アプローチは、分泌タンパク質によって細胞外捕獲すること及び細胞膜を越えてペプチドを活発に供給することによって、宿主エフェクターがその標的に接近するのを防ぐことを含む39。しかし、これらの種々の保護的武器をもってしても(互いに排他的ではない)、微生物は、宿主がデフェンシンの場合と同様に多量のCAMPを腸の管腔中に放出できる場合には、CAMPによって、おそらくはやはり阻害される。このような状況では、細菌成分による(細菌性赤痢の患者において40、また、ネズミチフス菌(S.typhimurium)に経口感染したマウスにおいて41報告されるような)転写レベルでのCAMPをコードする遺伝子のダウンレギュレーションは、極めて洗練された対向機構である(図2)。
【0019】
特定の腸内微生物による微生物の検知及び攻撃の障害は、腸管におけるCAMP機能に影響を及ぼし、慢性炎症性疾患、例えば、炎症性腸疾患(IBD)の発生をもたらし得る。これらの知見は、古くから、微生物免疫原による異常なT細胞活性化に起因すると考えられていたCDの発病を新たに明らかにする。
【0020】
CAMPの抗菌活性に加え、多面的機能は、デフェンシン及びカテリシジンによるものであった(表1)53。両CAMPは、自然免疫に関与している免疫細胞(好中球及び単球/マクロファージ)、獲得免疫に関与している免疫細胞(樹状細胞及びTリンパ球)及びアレルギー/炎症反応に関与している免疫細胞(肥満細胞)を化学的に誘引する能力を有する。さらに、hBD2は、樹状細胞においてTLR4依存性シグナル伝達経路を活性化し得る54
【0021】
他方、Hancockらは、最近、LL−37は、ヒト単球におけるTLR依存性活性化の勢いを弱め55、樹状細胞の成熟を促進し、T細胞のTh1極性化をもたらし得る56と報告した。総じて、これらの知見は、CAMP相互作用は、自然免疫と獲得免疫を関連づけることによって炎症反応を開始及び制御し得るということを示す(表1)。最後に、LL−37などのCAMPは、血管新生を促進する能力を有することが、CRAMP欠損マウスにおける皮膚損傷修復の際の血管新生の減少によって実証された57。パネート細胞生物学が、共生動物の認識を介して腸の血管新生に影響を及ぼすので58、これらの知見は、IBDの発病への洞察を提供する。腸内CAMPは、微生物耐性、血管新生、走化性及び体液性反応の活性化/成熟を調節することによって、消化管の自然免疫及び獲得免疫の両方において、いくつかの必須の、新たな役割を有する(表1)。特に、CAMPの管腔中への放出は、有糸分裂的に活性な陰窩細胞(上皮細胞単層を再生する)を、病原微生物によるコロニー形成から保護すると考えられる。トランスジェニック動物の使用は、生理学的役割及びこれらのエフェクターの調節のより良好な理解をもたらす。NOD1/2は、デフェンシンの上皮産生を調節することによって、殺菌活性を発揮することがわかっており、これは、PRMパターン認識分子(Pattern Recognition Molecules)が宿主をCDの発生から保護し得る、可能性ある機構を示唆する(図2)。
【0022】
上皮抗菌ペプチド:免疫系刺激への影響
いくつかの最近の研究によって、デフェンシンを含めた抗菌ペプチドが、皮膚、口腔、鼻、眼の上皮及びその他の上皮粘膜、例えば、膣粘膜における保護的役割に関与しているとされている。すべてが同一の胚層から始まるので、すべての粘膜は、共通の胚発生起源を共有し、保護的デフェンシン発現を含めた類似の生化学的反応を示すと予測され得る。
【0023】
2003年には、Dinulosらは、皮膚の免疫防御におけるβ−デフェンシン−2のケラチノサイト発現の抗菌活性を調べた。β−デフェンシン−2発現は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、ストレプトコッカス・エピデルミディス(Streptococcus epidermidis)、大腸菌(Escherichia coli)及び緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)によって誘導されるとわかったが、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)は弱いβ−デフェンシン−2誘導物質であるとわかった。この研究によって、抗菌効果と組み合わせた、β−デフェンシン−2発現を誘導する能力が、グラム陰性菌生物による皮膚感染の希少性の一因となっている可能性がある一方で、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)によって与えられる刺激がないことが、免疫系防御を回避し、皮膚疾患を引き起こす化膿性連鎖球菌の能力を指し示し得ると示された67
【0024】
過去1年以内に、Huangらは、抗菌アッセイを実施して、NaCl又は涙の存在下で、緑膿菌(Pseudomonas aerginosa)(PA)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(SA)及び表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)(SE)などの微生物に対する、いくつかのヒト眼表面に発現された抗菌ペプチド、例えば、β−デフェンシン1〜3の抗菌活性を調べた。β−デフェンシン−3は、SA及びSEの両方に対して強力な活性を有するとわかったが、β−デフェンシン−2は中程度の活性を有し、β−デフェンシン−1はこれらの株に対して活性を示さなかった。活性は、NaClによって減弱され、涙は、β−デフェンシン−1及び2の活性を完全に阻害したが、β−デフェンシン−3活性には影響を及ぼさなかった。この研究によって、いくつかのデフェンシンのin vivo抗菌剤としての役割が確認された68
【0025】
2007年後半に向けて、Vanhinsberghは、特定の免疫調節性遺伝子発現、特に、toll様受容体(TRL)及びデフェンシンのレベルの低下が、アレルギー発生、例えば、アレルギー性及び非アレルギー性鼻炎発生と関連していると示した69
【0026】
最後に、Chungらは、皮膚、口腔粘膜及びその他の上皮において、病原体及び共生動物が、デフェンシン及びカテリシジンなどの抗菌ペプチドの刺激を受け取る特異的シグナル伝達経路を同定し、歯周病のため新規治療薬の開発でこれらの経路を同定した70
【0027】
このような研究によって、ヒト免疫系におけるデフェンシンの保護的役割が強められ、身体においてデフェンシン産生を刺激する経路を提供することによる病原体に対する免疫応答の増大の重要性が強調される。
【0028】
その他の背景技術
米国特許第6,326,364号には、5−ASAなどの5−アミノサリチレート化合物が、in vitroで選択的抗菌効果を有するとして記載されている。実施例は、好気条件及び嫌気条件でアガープレート上の一連のクロストリジウム(Clostridium)細菌培養物に対して阻害効果を示す。乳酸桿菌(Lactobacillus)、腸球菌(Enterococcus)又はバクテロイデス(Bacteroides)のコロニーに対しては、効果は観察されなかった。
【0029】
PPAR−γの役割
最近、核受容体ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPAR−γ)が、IBDの治療において用いられる抗炎症薬の標的として同定され、このことは、腸管において核受容体ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γがin vivo抗炎症効果を媒介する機構を示す。しかし、PPAR受容体発現は、おそらくは、共通の粘膜胚発生起源のために、腸管以外の種々の粘膜領域において実証されている。最近の研究によって、PPAR−γは、通年性アレルギー性鼻炎における鼻腔粘膜の慢性炎症の一因であり得ることが示唆されている70
【0030】
PPAR−γは、β−カテニン及びT細胞転写因子(Tcf−4)と相互作用することによって腸のホメオスタシスを制御する必須の核受容体である。Tcf−4は、腸の細胞の運命の決定において、またパネート細胞による天然抗生物質の発現の調節において必須の転写因子である
【0031】
5−アミノサリチレート(5−ASA)は、炎症性腸疾患の治療において広く用いられる抗炎症薬(メサラジン)であるが、その腸内効果の根底にある機序はまだあまり理解されていない。最近、核受容体ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPAR−γが、5−ASAの標的として同定され、このことは、5−ASAがin vivoで腸管におけるその抗炎症効果を媒介する機序を示す。したがって、5−ASAの抗菌特性を考えると、このような化合物及びその誘導体は、PPAR−γ活性化を介して抗菌遺伝子の発現を調節する可能性がある。ロシグリタゾンもまた、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)、具体的には、PPAR−γの活性化を達成し、ロシグリタゾンは抗炎症効果を有する。
【0032】
定義
本発明の理解を容易にするために、いくつかの用語を以下に定義する。
【0033】
本明細書において、用語「抗菌ペプチド」とは、α−又はβ−デフェンシン(例えば、ヒトデフェンシン5についてはHD−5)、又は空間的に分離している疎水性の、正に帯電した残基を有する小さなポリペプチドのいずれかを指す。
【0034】
本明細書において、用語「デフェンシンを活性化する」とは、デフェンシンを活性化する任意の分子に関連して用いられる場合、α−又はβ−デフェンシンの遺伝子発現を誘導する分子(即ち、PPAR−γアゴニスト)を指す。
【0035】
本明細書において、用語「プライマー」とは、核酸鎖に対して相補的であるプライマー伸長産物の合成が誘導される条件下に置かれた場合に、合成の開始点として作用できる合成オリゴヌクレオチドを指す。
【0036】
本明細書において、用語「ポリメラーゼ連鎖反応」(本明細書において以下、「PCR」)とは、クローニング又は精製を伴わず、ゲノムDNAの混合物中で標的配列のセグメントを増幅するための方法である。2種のプライマーは、二本鎖標的配列のそれらのそれぞれの鎖に対して相補的である。
【0037】
本明細書において、用語「構造類似体」とは、分子構造が、そのPPAR−γ受容体との結合能力に関して5−ASAの模倣体として作用する化合物に関する。特に、その構造が類似の種類の水素結合及びPPAR−γ受容体での静電相互作用を可能にする化合物。
【0038】
本明細書において、用語「Caco−2細胞」とは、ヒトコーカサス人種結腸腺癌細胞を指す。
【0039】
本明細書において、用語「ロシグリタゾン」とは、PPAR−γの高度に選択的な、強力な化学アゴニストを指す。本明細書において、用語「上皮」とは、皮膚の表面及び消化管の内壁などの臓器表面を覆う細胞層からなる身体組織を指す。
【0040】
本明細書において、用語「粘膜」とは、吸収及び分泌に関与している、ほとんど内胚葉起源の内張りであり、上皮で覆われている粘液性の膜を指す。粘膜は、外部環境に曝されている種々の身体の腔及び内臓の内側を覆っている。それらは、鼻孔、唇、耳、生殖器部及び肛門で皮膚と接続して見られる。
【0041】
本発明の目的
PPAR−γ受容体を刺激して、腸管において腸内デフェンシン発現を誘導できるPPAR−γアゴニストを提供することが本発明の一目的である。
【0042】
PPAR−γ受容体を刺激して、上皮又はPPAR−γ受容体が見られるその他の組織、特に、皮膚、口腔、鼻、眼の上皮及びその他の上皮粘膜、例えば、膣粘膜においてデフェンシン発現を誘導できるPPAR−γアゴニストを提供することが本発明のさらなる目的である。
【0043】
5−ASA、ロシグリタゾン、それらの誘導体及び腸管における腸内CAMP発現、特に、デフェンシン発現を誘導するための刺激物質として使用するためにPPAR受容体に対して活性であるとわかった一連の化合物を含むそれらの一連の構造類似体などのPPAR−γアゴニストを提供することが本発明の一目的である。
【0044】
PPAR−γ受容体を刺激して、上皮又はPPAR−γ受容体が見られるその他の組織、特に、皮膚、口腔、鼻、眼の上皮及びその他の上皮粘膜、例えば、膣粘膜においてデフェンシン発現を誘導できるPPAR−γアゴニストを提供することが本発明のさらなる目的である。
【0045】
CAMP発現を刺激することによって微生物を死滅させることができる化合物を提供することが、本発明のもう1つの目的である。CAMPは、デフェンシン及び/又はカテリシジンであり得る。微生物とは、細菌、ウイルス、真菌及びその他の感染性病原体を死滅させることができる物質である。
【0046】
CAMPの発現によって身体の防御機構を増強する化合物をさらに提供することがさらなる目的である。CAMPは、デフェンシン及び/又はカテリシジンであり得る。
【0047】
クローン病、潰瘍性大腸炎、インテスティナル・バウエル・シンドローム(intestinal bowel syndrome)及び急性憩室炎などの消化管の状態の治療介入において使用するための化合物を提供することが、本発明のなおさらなる目的である。
【0048】
結腸憩室症、分類不能大腸炎及び感染性大腸炎に冒されている患者において、急性憩室炎などの状態の予防のための治療介入を提供することが、本発明のさらなる目的である。
【0049】
膿痂疹、丹毒、皮膚炎、毛包炎及び尋常性ざ瘡などの皮膚炎症状態及び感染の治療介入において使用するための化合物を提供することが、本発明のなおさらなる目的である。
【0050】
眼、口腔、鼻又は膣粘膜を侵すものなどの粘膜の炎症状態及び感染、特に、眼の炎症及び感染、歯周病、アレルギー性及び非アレルギー性鼻炎及び細菌性膣疾患などの状態の治療介入において使用するための化合物を提供することが、本発明のなおさらなる目的である。
【0051】
このような疾患の治療及び予防のための薬剤の調製において使用するための化合物を提供することが、本発明のさらなる目的である。
【0052】
感受性個体の消化管におけるCAMP発現の調節に基づいた新規治療戦略の開発を可能にする方法を提供することが、本発明のさらなる目的である。抗炎症効果、抗生物質効果及び/又は抗菌効果を有する化合物は、CAMP発現、特に、デフェンシン発現の刺激によって同定できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0053】
CAMP発現のモジュレーターを提供することが、本発明の一目的である。
【課題を解決するための手段】
【0054】
本発明によれば、PPAR−γに対して作用するさまざまな化学物質を使用して、CAMP産生を誘導する方法が提供される。このような化合物を、PPAR−γ受容体を有する組織、例えば、上皮及び/又は粘膜におけるCAMP発現の誘導に使用できる。特に、これらの化合物を用いて腸管において腸内CAMP発現を誘導できる。デフェンシンは、CAMPの例である。
【0055】
本発明によれば、5−ASA、ロシグリタゾン、誘導体及び組織におけるCAMP発現、特に、デフェンシン発現を誘導するための刺激物質として使用するためにPPAR−γ受容体に対して活性であるとわかった一連の化合物を含む一連の構造類似体などのPPAR−γアゴニストが提供される。
【0056】
本発明によれば、5−ASA、ロシグリタゾン、誘導体並びにPPAR−γ受容体を有する上皮及び/又は粘膜におけるCAMP発現、特に、デフェンシン発現を誘導するための刺激物質として使用するためにPPAR−γ受容体に対して活性であるとわかった一連の化合物を含む一連の構造類似体などのPPAR−γアゴニストが提供される。
【0057】
本発明によれば、5−ASA、ロシグリタゾン、誘導体及び腸管における腸内CAMP発現、特に、デフェンシン発現を誘導するための刺激物質として使用するためにPPAR−γ受容体に対して活性であるとわかった一連の化合物を含む一連の構造類似体などのPPAR−γアゴニストが提供される。
【0058】
本明細書に記載される化合物は、以下の一般式(I):
【化1】


[式中、
同一であっても異なっていてもよいR及びRは、−H又は1〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐アルキル基を含む群から選択されるか、或いは、一緒になって5又は6個の原子を有する芳香族又は脂肪族環を形成し;
同一であっても異なっていてもよいY及びZは、−H、−OH、−COOH、−OR、−CH(OR)COOHを含む群から選択され、ここで、Rは、H、フェニル、ベンジル、−CF又は−CFCF、ビニル、アリル及び1〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐アルキル基から選択される]
或いは、
一般式(Ia)の化合物:
【化2】


[式中、
同一であっても異なっていてもよいR及びRは、H、−C2n−1(ここで、n=1〜6である)、1〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐アルキル基を含む群から選択されるか、或いは、一緒になって5又は6個の原子を有する芳香族又は脂肪族環を形成し;
は、−CO−CH、−NHOH、−OH、−ORから選択され、ここで、Rは、1〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐アルキル基であり;
は、H、1〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐アルキル基、フェニル、ベンジル、−CF又は−CFCF、ビニル又はアリルから選択され;R、R、Rは、水素原子であるか、
或いは、
及びR、R及びR、又はR及びRは一緒になって、N、Oを含む群から独立に選択される1〜2個のヘテロ原子を含む5又は6個の原子を有する、ベンゼン、芳香族又は脂肪族環と縮合している環を形成する]
に従って定義できる。
【0059】
これらの化合物を、PPAR−γ受容体を有する組織、例えば、上皮及び/又は粘膜におけるCAMP発現の誘導に使用できる。特に、これらの化合物を使用して、腸管において腸内CAMP発現を誘導できる。
【0060】
一態様では、本発明によれば、このような方法において使用できる化合物として、以下の一般式(I)を含む化合物が挙げられる
【化3】


[式中、
同一であっても異なっていてもよいR及びRは、−H又は1〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐アルキル基を含む群から選択されるか、或いは、一緒になって5又は6個の原子を有する芳香族又は脂肪族環を形成し;
同一であっても異なっていてもよいY及びZは、−H、−OH、−COOH、−OR、−CH(OR)COOHを含む群から選択され、ここで、Rは、H、フェニル、ベンジル、−CF又は−CFCF、ビニル、アリル及び1〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐アルキル基から選択される]。
【0061】
別の態様では、本発明はまた、以下の一般式(I)の化合物のサブグループの使用に関する
【化4】


[式中、
同一であっても異なっていてもよいR及びRは、−H又は1〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐アルキル基を含む群から選択され、
同一であっても異なっていてもよいY及びZは、−H、−OH、−COOH、−OR、−CH(OR)COOHを含む群から選択され、ここで、Rは、H及び1〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐アルキル基から選択される]。
【0062】
本発明のいくつかの実施形態では、Z及びYは異なっている。本発明のいくつかの実施形態では、Y又はZの少なくとも一方は、−COOHで終結する。したがって、本発明のいくつかの実施形態では、Y又はZ(また、いくつかの実施形態では、Y又はZの少なくとも一方、また、いくつかの実施形態では、Y又はZの一方のみ)が−COOHである。本発明のいくつかの実施形態では、Y又はZ(また、いくつかの実施形態では、Y又はZの少なくとも一方、また、いくつかの実施形態では、Y又はZの一方のみ)が−CH(OR)COOHである。
【0063】
さらに別の態様では、本発明はまた、同一であっても異なっていてもよいY及びZが、−H、−COOH、−OR、−CH(OR)COOHを含む群から選択される点を除いて式(I)及び(I)の両方に従う、本発明の方法における化合物の使用に関する。
【0064】
本発明のいくつかの実施形態では、Yが−Hであり、Zが−CH(OH)COOHである場合は、基NRは3’位で接続していてもよい。
【0065】
本発明のその他の実施形態では、Zが−OCHであり、Yが−COOHである場合は、基NRは4’位で接続していてもよい。
【0066】
本発明のいくつかの実施形態では、Yが−Hであり、Zが−CH(OCH)COOHである場合には、基NRは4’位で接続していてもよい。
【0067】
特に、前記の1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分岐アルキル基は、−CH、−CHCH、−CH(CH、−CHCHCH、−C2n−1(ここで、n=1〜6である)から選択され得る。
【0068】
式(I)及び(I)の化合物は、以下を含む群から選択され得る:
3−(3’−アミノフェニル)2−ヒドロキシプロパン酸(化合物20)
2−(4−アミノフェニル)2−メトキシ酢酸(化合物23)
2−(3−アミノフェニル)2−エトキシ酢酸(化合物32)
2−(4−アミノフェニル)2−エトキシ酢酸(化合物33)
3−(4’−アミノフェニル)2−メトキシプロピオン酸(化合物34)「R34」
3−(4’−アミノフェニル)2−エトキシプロピオン酸(化合物39)
3−(3’−アミノフェニル)2−エトキシプロピオン酸(化合物40)。
【0069】
上記の化合物名は、以下のように標準化学命名法でも書くことができる(この命名法を本文を通じて用いる):
(±)−2−ヒドロキシ−3−(3’−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物20)
(±)−2−メトキシ−2−(4’−アミノフェニル)酢酸(化合物23)
(±)−2−エトキシ−2−(3’−アミノフェニル)酢酸(化合物32)
(±)−2−エトキシ−2−(4’−アミノフェニル)酢酸(化合物33)
(±)−2−メトキシ−3−(4’−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物34)「R34」(ラセミ体)
(±)−2−エトキシ−3−(4’−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物39)
(±)−2−エトキシ−3−(3’−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物40)。
【0070】
特に、本発明の方法で用いられる化合物は、以下のラセミ混合物のエナンチオマーであり得る:
(R,S)−2−ヒドロキシ−2−(3−アミノフェニル)酢酸(化合物10)
(R,S)−2−ヒドロキシ−2−(4−アミノフェニル)酢酸(化合物11)
(R,S)−2−ヒドロキシ−3−(4’−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物21)
(R,S)−2−メトキシ−2−(3’−アミノフェニル)酢酸(化合物22)
(R,S)−2−メトキシ−3−(3’−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物35)
(R,S)−2−メトキシ−3−(3−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物34)「R34」(ラセミ体)
【0071】
R34のエナンチオマー:
(+)2−S−メトキシ−3−(3−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物34)「34−E1」又は「E−1」。
(−)2−R−メトキシ−3−(3−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物34)「34−E2」又は「E−2」
【0072】
化合物のラセミ混合物も、本明細書に記載される方法において使用してよい。ラセミ混合物の例として、それだけには限らないが以下が挙げられる:
(±)−2−ヒドロキシ−2−(3’−アミノフェニル)酢酸(化合物10)
(±)−2−ヒドロキシ−2−(4’−アミノフェニル)酢酸(化合物11)
(±)−2−ヒドロキシ−3−(4’−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物21)
(±)−2−メトキシ−2−(3’−アミノフェニル)酢酸(化合物22)
(±)−2−メトキシ−3−(3’−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物35)
(±)−2−メトキシ−3−(4’−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物34)「R34」(ラセミ体)。
【0073】
本明細書に記載される任意の立体異性化合物について、一方のエナンチオマーを、もう一方を上回って過剰に含有する組成物も、本明細書に記載される方法において使用してよい。
【0074】
一実施形態によれば、本発明の方法において使用してよい化合物として、以下の式(II)に従う、式(I)の化合物のRがHであり得るものが挙げられる
【化5】


[式中、R、R、X及びYは、上記に定義のとおりである]。
【0075】
別の実施形態によれば、使用してよい化合物として、以下の式(III)に従う、式(I)の化合物のRが−CHであり得るものが挙げられる
【化6】


[式中、R、R、X及びYは、上記に定義のとおりである]。
【0076】
さらに別の実施形態によれば、使用してよい化合物として、以下の式(IV)に従う、式(I)の化合物のRが−CHCHであり得るものが挙げられる
【化7】


[式中、R、R、X及びYは、上記に定義のとおりである]。
【0077】
さらに別の実施形態によれば、使用してよい化合物として、以下の式(V)に従う、式(I)の化合物のRが−CHCHであり得るものが挙げられる
【化8】


[式中、R、R、X及びYは、上記に定義のとおりである]。
【0078】
さらに別の実施形態によれば、使用してよい化合物として、以下の式(VI)に従う、式(I)の化合物のRが−CHであり得るものが挙げられる
【化9】


[式中、R、R、X及びYは、上記に定義のとおりである]。
【0079】
本発明によれば、式(VI)を有する(R,S)−2−メトキシ−3−(3−アミノフェニル)プロピオン酸、即ち、(−)2−R−メトキシ−3−(3−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物34)「34−E2」又は「E−2」の1種のエナンチオマーは、腸管におけるデフェンシン発現誘導において特に有効であるとわかった(図8&9)。本発明によれば、一部のエナンチオマーは、その立体異性体よりも優れたCAMP発現を提供し得る。その他の実施形態では、一部のラセミ混合物は、その個々の立体異性体よりも優れたCAMP発現を提供し得る。
【0080】
さらに別の実施形態によれば、使用してよい化合物として、以下の式(VII)に従う、式(I)の化合物のRが−CHであり得るものが挙げられる
【化10】


[式中、R、R、X及びYは、上記に定義のとおりである]。
【0081】
さらに別の実施形態によれば、使用してよい化合物として、以下の式(VIII)に従う、式(I)の化合物のRが−CHCHであり得るものが挙げられる
【化11】


[式中、R、R、X及びYは、上記に定義のとおりである]。
【0082】
さらに別の実施形態によれば、使用してよい化合物として、以下の式(IX)に従う、式(I)の化合物のRが−CHCHであり得るものが挙げられる
【化12】


[式中、R、R、X及びYは、上記に定義のとおりである]。
【0083】
別の実施形態によれば、使用してよい化合物として、以下の式(X)に従う、式(I)の化合物のRが−CHであり得るものが挙げられる
【化13】


[式中、R、R、X及びYは、上記に定義のとおりである]。
【0084】
本発明の方法において使用してよい式(Ia)の化合物は、以下を含む群から選択され得ることが好ましく:
(±)−2−ヒドロキシ−3−(3’−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物20)
(±)−2−メトキシ−2−(4’−アミノフェニル)酢酸(化合物23)
(±)−2−エトキシ−2−(3’−アミノフェニル)酢酸(化合物32)
(±)−2−エトキシ−2−(4’−アミノフェニル)酢酸(化合物33)
(±)−2−メトキシ−3−(4’−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物34)「R34」
(+)2−S−メトキシ−3−(3−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物34)「34−E1」又は「E−1」
(−)2−R−メトキシ−3−(3−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物34)「34−E2」又は「E−2」
(±)−2−エトキシ−3−(4’−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物39)
(±)−2−エトキシ−3−(3’−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物40)、それらの式は先に示されている。
【0085】
本発明によれば、以下の一般式(Ia)の化合物を、本明細書に記載される本発明の方法において使用してよい:
【化14】


[式中、
同一であっても異なっていてもよいR及びRは、H、−C2n−1(ここで、n=1〜6である)、1〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐アルキル基を含む群から選択されるか、或いは、一緒になって5又は6個の原子を有する芳香族又は脂肪族環を形成し;
は、−CO−CH、−NHOH、−OH、−ORから選択され、ここで、Rは、1〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐アルキル基であり;
は、H、1〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐アルキル基、フェニル、ベンジル、−CF又は−CFCF、ビニル又はアリルから選択され;R、R、Rは、水素原子であるか、
或いは、
及びR、R及びR、又はR及びRは一緒になって、N、Oを含む群から独立に選択される1〜2個のヘテロ原子を含む5又は6個の原子を有する、ベンゼン、芳香族又は脂肪族環と縮合している環を形成する]。
【0086】
本発明はまた、以下の一般式(Ia)の化合物の特定のサブグループの本発明の方法における使用に関する
【化15】


[式中、
同一であっても異なっていてもよいR及びRは、H、−CO−CH、−C2n−1(ここで、n=1〜6である)、1〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐アルキル基を含む群から選択されるか、或いは、一緒になって5又は6個の原子を有する芳香族又は脂肪族環を形成し;
は、−NHOH、−OH、−ORから選択され、ここで、Rは、1〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐アルキル基であり;
は、H、1〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐アルキル基から選択され;R、R、Rは、水素原子であるか、
或いは、
及びR、R及びR、又はR及びRは一緒になって、N、Oを含む群から独立に選択される1〜2個のヘテロ原子を含む5又は6個の原子を有する、ベンゼン、芳香族又は脂肪族環と縮合している環を形成する]。
【0087】
1〜6個の炭素原子を有する式(Ia)又は(Ia)の前記の直鎖若しくは分岐アルキル基は、−CH、−C、イソプロピル、プロピル、C2n−1(ここで、n=1〜6である)から選択され得る。
【0088】
本発明の式(Ia)及び(Ia)両方のいくつかの実施形態では、使用してよい化合物として、R及びRが環を形成し得るものが挙げられる。したがって、R及びR又はR及びRは一緒になって、N、Oを含む群から独立に選択される1〜2個のヘテロ原子を含む5又は6個の原子を有する、ベンゼン、芳香族又は脂肪族環と縮合している環を形成してもよい。
【0089】
本発明の式(Ia)及び(Ia)両方のいくつかの実施形態では、R及びRは、RがCHである場合を除いて環を形成してもよい。本発明の式(Ia)及び(Ia)両方のいくつかの実施形態では、R及びRは、RがHから選択される場合に環を形成し得る。いくつかの実施形態では、本発明は、本発明によって提供されるケトレン(ketolene)に関する。
【0090】
いくつかの実施形態では、使用してよい化合物として、R及びRが環を形成し得る式(Ia)及び(Ia)両方のものが挙げられる。したがって、同一であっても異なっていてもよいR及びRは、−H、−C2n−1、1〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐アルキル基(ここで、n=1〜6である)を含む群から選択され得る。
【0091】
いくつかの実施形態では、使用してよい化合物として、Rが分岐していてもよい式(Ia)及び(Ia)両方のものが挙げられる。したがって、Rは、H、1〜6個の炭素原子を有する直鎖アルキル基から選択されてもよく;R、R、Rは水素原子である。
【0092】
いくつかの実施形態では、アミノ基がフェニル環の4’位にある場合にRは分岐していてもよい。
【0093】
いくつかの実施形態では、直鎖アルキル基は1個のみの炭素原子を有し得る(即ち、CH)。
【0094】
本発明の式(Ia)及び(Ia)両方のいくつかの実施形態では、R及びRが−Hである。本発明の式(Ia)及び(Ia)両方のいくつかの実施形態では、RはRと異なっていなくてもよい。
【0095】
いくつかの実施形態では、使用してよい化合物として、Rが−OHであり、Rが、−H、1〜6個の炭素原子を有する分岐アルキル基からなる群から選択される式(Ia)及び(Ia)両方のもの、又はR及びRが一緒になって、N、Oを含む群から独立に選択される1〜2個のヘテロ原子を含む5又は6個の原子を有する、ベンゼン、芳香族環又は環と縮合している環を形成する式(Ia)及び(Ia)両方のものが挙げられる。いくつかの実施形態では、分岐アルキル基は、−CH(CHであり得る。いくつかの実施形態では、分岐アルキル基は、R位の−CH(CHであり得る。いくつかの実施形態では、R及びRは、単一のO原子を含む5員の脂肪族環を形成する。
【0096】
いくつかの実施形態では、使用してよい化合物として、Rが−OHであり、Rが−Hであり、基NRが4位であり得る(R又はRであるはずである)、式(Ia)及び(Ia)両方のものが挙げられる。いくつかの実施形態では、これは特に、R及びRが−CHである場合であり得る。
【0097】
いくつかの実施形態では、使用してよい化合物として、R及びRが同一である式(Ia)及び(Ia)両方のものが挙げられる。
【0098】
いくつかの実施形態では、使用してよい化合物として、Rが−OHであり、Rが−Hであり、基NRがRであり得る(Rであるはずである)、式(Ia)及び(Ia)両方のものが挙げられる。いくつかの実施形態では、これはR及びRが−Hであるものであり得る。
【0099】
いくつかの実施形態では、使用してよい化合物として、Rが−NHOHであり、Rが1〜6個の炭素原子を有する直鎖又は分岐アルキル基である(又は、式(I)の場合には、フェニル、ベンジル、−CF又は−CFCF、ビニル又はアリル)式(Ia)及び(Ia)両方のもの、R及びRが一緒になって、N、Oを含む群から独立に選択される1〜2個のヘテロ原子を含む5又は6個の原子を有する、ベンゼン、芳香族又は脂肪族環と縮合している環を形成する式(Ia)及び(Ia)両方のものが挙げられる。
【0100】
いくつかの実施形態では、使用してよい化合物として、Rが−NHOHであり、Rが2個の炭素原子を有する直鎖又は分岐アルキル基であり、基NRが4位であってもよく、R位であり得る、式(Ia)及び(Ia)両方のものが挙げられる。
【0101】
いくつかの実施形態では、使用してよい化合物として、Rが−NHOHであり、Rが−Hであり、基NRがRであってもよく、4’位であるはずである、式(Ia)及び(Ia)両方のものが挙げられる。一実施形態によれば、式(Ia)及び(Ia)の化合物のR及びRが、以下の式(XII)の環を形成し得る
【化16】


[式中、R、R、R、R及びRは、上記に定義のとおりである]。
【0102】
別の実施形態によれば、式(Ia)及び(Ia)の使用される化合物のR及びRは、以下の式(XII)の環を形成し得る
【化17】


[式中、R、R、R、R及びRは、上記に定義のとおりである]。
【0103】
さらなる実施形態によれば、式(Ia)及び(Ia)の使用される化合物のR及びRは、以下の式(XIII)又は(XIV)の環を形成し得る
【化18】


[式中、R、R、R、R及びRは、上記に定義のとおりである]。
【0104】
特に、式(Ia)及び(Ia)の化合物は、本発明に記載される方法に従って使用でき、以下を含む群から選択され得る:
4−アミノ−N−ヒドロキシ−2−メトキシベンズアミド(化合物13)
5−アミノ−N−ヒドロキシ−2−メトキシベンズアミド(化合物14)
5−アミノ−2,3−ジヒドロベンゾフラン−7−カルボン酸(化合物17)
5−アミノ−2−エトキシ−N−ヒドロキシベンズアミド(化合物26)
6−アミノ−2,2−ジメチル−4H−ベンゾ[1,3]ジオキシン−4−オン(化合物28)
1,2,3,4−テトラヒドロ−6−ヒドロキシキノリン−5−カルボン酸(化合物29)
5−アミノ−2−イソプロポキシ安息香酸(化合物31)
6−メトキシキノリン−5−カルボン酸(化合物36)
6−メトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−5−カルボン酸(化合物37)
5−ジイソプロピルアミノサリチル酸(化合物38)
4−ジイソプロピルアミノサリチル酸(化合物42)。
【0105】
本発明はまた、R及びRが、−H及び−CH(CHからなる群から選択される化合物の使用を提供する。R及びRは、両方とも同一であってもよい。いくつかの実施形態では、R及びRは、−CH(CHであり得る。
【0106】
一実施例は、以下の化合物(化合物38)の使用を含む:
【化19】

【0107】
本発明のその他の実施形態では、R及びRは、両方とも−Hである。
【0108】
本発明はまた、Rが−NHOH及び−OHからなる群から選択される化合物の使用を提供する。いくつかの実施形態では、Rは−NHOHであり得る。一実施例は、以下の化合物(化合物13)を含む:
【化20】

【0109】
さらなる実施例は、以下の化合物(化合物14)の使用を含む:
【化21】

【0110】
さらなる実施例は、以下の化合物(化合物26)の使用を含む:
【化22】

【0111】
本発明のいくつかの実施形態では、Rは、−OHであり得る。
【0112】
適した実施例は、以下の化合物(化合物17)の使用を含む:
【化23】

【0113】
さらなる実施例は、以下の化合物(化合物31)の使用を含む:
【化24】

【0114】
本発明のいくつかの実施形態では、Rは−Hであり得る。本発明のいくつかの実施形態では、RはCHであり得る。本発明のいくつかの実施形態では、Rは−CHCHであり得る。本発明のいくつかの実施形態では、Rは−CH(CHであり得る。
【0115】
さらなる実施例は、以下の化合物(化合物28)の使用を含む:
【化25】

【0116】
本発明のいくつかの実施形態では、R及びRは一緒になって、1個のヘテロ原子O(酸素)を含む5又は6個の原子のベンゼンと縮合している脂肪族環を形成し得る。
【0117】
本発明はまた、ヒト及び/又は哺乳類(例えば、げっ歯類、家畜、家庭内ペット、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ヒツジ、ウシ、ウマ)の治療の方法に関する。
【0118】
特に、上記の具体的な化合物の使用は別として、以下の化合物を本明細書に記載される方法及び適用に使用できる:
5−アミノサリチロ−ヒドロキサム酸(化合物5)
3−ジメチルアミノサリチル酸(化合物6)
2−メトキシ−4−アミノ安息香酸(化合物7)
2−メトキシ−5−アミノ安息香酸(化合物8)
5−メチルアミノサリチル酸(化合物9)
4−メチルアミノサリチル酸(化合物12)
4−アセチルアミノサリチル酸(化合物16)
2−エトキシ−4−アミノ安息香酸(化合物18)
2−エトキシ−5−アミノ安息香酸(化合物19)
4−ジメチルアミノサリチル酸(化合物24)
2−エトキシ−4−アミノベンゾイルヒドロキサム酸(化合物25)
6−ヒドロキシキノリン−5−カルボン酸(化合物27)
2−(2−プロピル)オキシ−4−アミノ安息香酸(化合物30)
4−(1−ピペラジニル)サリチル酸(化合物41)。
【0119】
上記の化合物の使用に加え、本発明は、以下の化合物(接頭辞「2_」に続く化合物番号)の使用を提供する:
【化26】

【0120】
本発明によれば、クローン病、潰瘍性大腸炎、インテスティナル・バウエル・シンドローム(intestinal bowel syndrome)及び急性憩室炎などの消化管の状態の治療介入において使用するための化合物が提供される。
【0121】
本発明の一態様では、結腸憩室症、分類不能大腸炎及び感染性大腸炎に冒されている患者において、急性憩室炎などの状態の予防において使用するための化合物が提供される。
【0122】
本発明の別の態様では、膿痂疹、丹毒、皮膚炎、毛包炎及び尋常性ざ瘡などの皮膚炎症状態及び感染の治療介入において使用するための化合物が提供される。
【0123】
本発明の別の態様では、眼、口腔、鼻又は膣粘膜を侵すもの、例えば、眼の炎症及び感染、歯周病、アレルギー性及び非アレルギー性鼻炎及び細菌性膣疾患などの粘膜の炎症状態及び感染の治療介入において使用するための化合物が提供される。
【0124】
本発明の化合物は、PPAR−γを刺激してCAMPを産生するために、医療分野において使用できることが有利である。CAMPSとして、デフェンシン及び/又はカテリシジンが挙げられる。したがって、本発明の別の態様は、有効成分として上記で定義される1種又は複数の化合物を、1種又は複数の製薬上許容される賦形剤又はアジュバントと組み合わせて含む医薬組成物に関する。
【0125】
別の態様では、本発明は、クローン病、潰瘍性大腸炎、インテスティナル・バウエル・シンドローム(intestinal bowel syndrome)、急性憩室炎などの疾患の治療及び予防、並びに結腸憩室症、分類不能大腸炎及び感染性大腸炎に冒されている患者における急性憩室炎などの状態の予防のための薬剤の調製において使用するための化合物を提供する。
【0126】
別の態様では、本発明は、膿痂疹、丹毒、皮膚炎、毛包炎及び尋常性ざ瘡などの皮膚炎症状態及び感染を含む疾患の治療及び予防のための薬剤の調製において使用するための化合物を提供する。
【0127】
別の態様では、本発明は、眼、口腔、鼻又は膣粘膜を侵すもの、例えば、眼の炎症及び感染、歯周病、アレルギー性及び非アレルギー性鼻炎及び細菌性膣疾患などの粘膜の炎症状態及び感染の治療及び予防のための薬剤の調製において使用するための化合物を提供する。
【0128】
本発明はまた、ヒト及び/又は哺乳類(例えば、げっ歯類、家畜、家庭内ペット、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ヒツジ、ウシ、ウマ)の治療の方法に関する。
【0129】
さらに別の態様では、本発明は、感受性個体の消化管におけるCAMP発現の調節に基づいた新規治療戦略の開発を可能にする方法を提供する。本発明は、抗炎症効果及び/又は抗菌効果を有する可能性がある化合物のスクリーニングを提供する。このような化合物リードは、CAMP発現、特に、デフェンシン発現の刺激によって同定できる。
【0130】
特定の態様では、本発明は、CAMP発現、特に、デフェンシン発現のモジュレーター及びアップレギュレーターを提供する。CAMP発現、特に、デフェンシン発現のアップレギュレーション又は刺激は、身体における抗炎症効果及び抗菌効果につながる。これは特に、抗菌効果を引き起こすデフェンシン産生に関する場合であり、これでは刺激性化合物が、デフェンシン産生をもたらし、身体の生理学的/生化学的経路を用いて、抗菌効果が誘導される。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】定量PCR分析によって確認されるが、ロシグリタゾンは、Caco−2細胞においてHD−5を活性化することを示す図である。
【図2】定量PCR分析によって確認されるが、化合物14は、Caco−2細胞においてHD−5を活性化することを示す図である。
【図3】定量PCR分析によって確認されるが、化合物40は、Caco−2細胞においてHD−5を活性化することを示す図である。
【図4】定量PCR分析によって確認されるが、化合物39は、Caco−2細胞においてHD−5を活性化することを示す図である。
【図5】定量PCR分析によって確認されるが、メサラジンは、Caco−2細胞においてHD−5を活性化することを示す図である。
【図6】ヒトデフェンシン及びカテリシジンの構造を示す図である。 A.腸α−デフェンシンHD−5、β−デフェンシンHBD−2及びカテリシジンhCAP−18のヒト配列を示す図である。灰色の矢印は、HD−5及びカテリシジンの切断部位を表す。概略図と三次元構造(青色の棒)の両方で、α及びβ−デフェンシンの3つの分子内ジスルフィド結合(S−S)のパターンが記されている。 B.デフェンシン及びカテリシジンの三次元解(h−BD2及びカテリシジン)又は結晶(HD−5)構造を示す図である。例示のために用いられたタンパク質データバンク受託番号は、以下のとおりである:HD−5の1ZMP、h−BD2の1E4Q及びLL−37の2FCG(hCAP−18のC末端断片)。βターンは橙で表されており、αヘリックスは赤で表されている。分子の疎水性が示されている。
【図7】慢性的腸炎の病態生理学モデルを示す図である。微生物及び/又はその産物が、TLR及び/又はNODによって検知されると(図の左側)、NF−κB及び/又はその他の転写因子(本文参照のこと)の作用によってCAMPが合成される。CAMPは、その分泌及び細胞外プロセシングの後、(i)炎症細胞の寛容及び補充を促進し、(ii)微生物病原体の浸潤を防ぎ、(iii)慢性的腸炎の発生から保護する。異常な抗菌ペプチド合成及び/又は機能は、獲得免疫系の異常な活性化、及び微生物の脅威及び/又は自然免疫の低下(即ち、NOD2突然変異)による腸炎につながり得る(図の右側)。
【図8】5−ASA、ロシグリタゾン、ラセミR34&エナンチオマー34−E2は、Caco−2細胞においてhBD1(ヒトデフェンシン−1)の発現を誘導することを示す図である。
【図9】健常マウス(n=5)における、mRNAレベルでの、PPAR−γ及びLL37(デフェンシン)レベルに対するラセミR34&エナンチオマー34−E1&34−E2の効果を示す図である。健常マウスにおける10日間の間の浣腸による5−ASA(30mM)、R34(1mM)、El及びE2(1mM)の投与は、結腸PPARγ mRNA及びデフェンシン発現を誘導した。
【図10】表1を示す図である。デフェンシン及びカテリシジンの多用途の機能。α/β−デフェンシン及びカテリシジンの機能が、表に列挙されており、本文において論じられている。
【発明を実施するための形態】
【0132】
Wnt/Tcf/β−カテニンシグナル伝達経路に対する、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPAR−γ)の直接的な負の役割を考え、デフェンシン生合成を調査するためにPPAR−γ活性化を調べた。
【0133】
実験データ
定量PCR分析によって調べられるように、試験したPPAR−γアゴニスト、ロシグリタゾン(1μMで、1、3又は6時間)及びその他のものは、Caco−2細胞においてHD−5を活性化する(図1〜5)。
【0134】
方法
培養腸上皮細胞系、即ち、Caco−2(ヒト起源の)及びICcl2(マウス起源の)を、GSK−3阻害剤LiCl(20μM)又はホスファターゼ阻害剤カリクリン(50nM)で処理し、続いて、PPAR−γアゴニスト、例えば、ロシグリタゾン(1μM)で刺激した、又はしなかった。
【0135】
デフェンシン並びにWnt及びPPAR−γシグナル伝達経路両方の既知標的遺伝子の発現を、定量的リアルタイムPCRによって調査した。GSK3、β−カテニン、NF−κB、ERK1/2、SAPK/JNK及びp38の活性化を、特異的免疫ブロット法によって測定した。
【0136】
PPAR−γの抗菌的役割を調査するために、Rawマクロファージ細胞系において、クローン病関連大腸菌(Escherichia coli)(LF82)の細胞内複製を、ロシグリタゾンでの刺激時又は非刺激時に測定した。
【0137】
結果
ロシグリタゾン及びその他のPPAR−γアクチベーターととものインキュベーションによって、腸上皮細胞によるα−(HD−5及びHD−6)及びβ−(Defb10)デフェンシンの両方の発現が大幅に増加した(図3)。このような抗菌遺伝子発現は、β−カテニン分解を促進するカリクリンによる同時刺激後に相乗作用を与えられた。したがって、ロシグリタゾンによるPPAR−γ活性化を介するLF82の細胞内複製の減少が観察された。
【0138】
逆に、Wnt/Tcf/β−カテニン標的遺伝子、サイクリン−D1の発現及びβ−カテニンの安定性は、カリクリン及びロシグリタゾン両方による刺激時に著しく低下した。
【0139】
最後に、LiCl、Wnt/TCF/β−カテニン依存性シグナル伝達経路のアクチベーターは、同時刺激時に、ロシグリタゾン誘導性デフェンシン遺伝子発現を妨げた。
【0140】
試験物質とのインキュベーションによって、腸上皮細胞によるα−(HD−5及びHD−6)及びβ−(Defb10)デフェンシン両方の発現が大幅に増大した(図3は、ロシグリタゾンの効果を示す)。したがって、ロシグリタゾンによるPPAR−γ活性化による、LF82の細胞内複製の減少が観察された。
【0141】
結論
総じて、結果は、PPAR−γ活性化は、Tcf/β−カテニン複合体の形成を負に調節することによって抗菌性遺伝子プログラムの誘導を促進することを示す。これらの知見は、クローン病、潰瘍性大腸炎、インテスティナル・バウエル・シンドローム(intestinal bowel syndrome)、急性憩室炎などの多数の胃腸障害におけるデフェンシン欠乏を補完することにおける、また、結腸憩室症、分類不能大腸炎及び感染性大腸炎に冒されている患者における急性憩室炎などの状態の予防ための、PPAR−γの治療的可能性を強調する。
【0142】
さらに、これらの知見は、その他の粘膜障害、例えば、それだけには限らないが、眼の炎症及び感染、歯周病、アレルギー性及び非アレルギー性鼻炎及び細菌性膣疾患などのもの及び膿痂疹、丹毒、皮膚炎、毛包炎及び尋常性ざ瘡などの皮膚炎症状態及び感染において、デフェンシン欠乏を補完することにおけるPPAR−γアゴニストの治療的可能性を強調する。
【0143】
ラセミ化合物34及びエナンチオマー34−E1及び34−E2を用いたin vitro研究
材料
5−ASAは、Sigma−Aldrich(St Quentin Fallavier、France)で購入した。ロシグリタゾンは、標準手順に従って実験室で合成した。ラセミ化合物34及び化合物の2種のエナンチオマー、34−El及び34−E2は、Giuliani SpA(Milano、Italy)によって提供された。化合物は、DMEM培地(Gibco)に再懸濁し、必要に応じて、10N NaOHを用いてpH=7に調整した。
【0144】
結腸上皮細胞におけるhBD1デフェンシンの発現の調節
細胞系
結腸癌腫細胞系Caco−2(ATCC HTB−39)を、それぞれ10%又は20%加熱−FCS及び抗生物質を補給したDMEMで通常どおり増殖させた。細胞を、5% CO2及び95%相対湿度中、37℃で、単層で増殖させ、インキュベートした。
【0145】
細胞を、5−ASA、R34、34−E1及び34−E2によって24時間刺激した。製造業者の使用説明書に従ってRneasyキット(Macherey Nagel、Hoerdt、France)を用いて細胞から全RNAを単離した。RNA定量は、分光光度法を用いて実施した。20〜50ユニットのRNアーゼ不含DNアーゼI(Roche Diagnostics Corporation、Indianapolis、IN、USA)を用い、37℃で30分間処理した後、オリゴ−dTプライマー(Roche Diagnostics Corporation、Indianapolis、USA)を用いて一本鎖cDNAを合成した。GeneAmp Abiprism 7000(Applera、Courtaboeuf、France)で、hBD1のヒト特異的オリゴヌクレオチド(S:5’−ATACTTCAAAAGCAATTTTCCTTTAT−3’;AS:5’−TTgTCTGAGATGGCCTCAggTggTAAC−3’)とともにSYBRグリーンMaster Mix(Applera、Courtaboeuf、France)を用いてmRNAを定量した。各アッセイにおいて、較正される対照及び鋳型を含まない対照を含めた。各サンプルを3連で実施した。SYBRグリーン色素強度は、Abiprism 7000 SDSソフトウェア(Applera、Courtaboeuf、France)を用いて分析した。すべての結果は、影響を受けないヒトβ−アクチンのハウスキーピング遺伝子(S:5’−TCACCCACACTgTgCCCATCTACg−3’;AS:5’−CAgCggAACCgCTCATTgCCAATg−3’)に対して標準化した。
【0146】
健常マウスにおけるβ−デフェンシン発現の評価
5−ASA(30mM)、ラセミR34及び34−E1&34−E2(1mM)を、8日間の直腸点滴注入によって投与した。死後、製造業者の使用説明書に従ってRneasyキット(Macherey Nagel、Hoerdt、France)を用いて、全マウス結腸組織から全RNAを単離した。RNA定量は、分光光度法を用いて実施した。20〜50ユニットのRNアーゼ不含DNアーゼI(Roche Diagnostics Corporation、Indianapolis、IN、USA)を用い、37℃で30分間処理した後、オリゴ−dTプライマー(Roche Diagnostics Corporation、Indianapolis、USA)を用いて一本鎖cDNAを合成した。GeneAmp Abiprism 7000 (Applera、Courtaboeuf、France)で、LL37のマウス特異的オリゴヌクレオチド(S:5’−gCTgATTCTTTTgACATCAgCTgTAA−3’AS:5’−gCCAgCCgggAAATTTTCT−3’)とともにSYBRグリーンMaster Mix(Applera、Courtaboeuf、France)を用いてmRNAを定量した。各アッセイにおいて、較正された対照及び鋳型を含まない対照を含めた。各サンプルを3連で実施した。SYBRグリーン色素強度は、Abiprism 7000 SDSソフトウェア(Applera、Courtaboeuf、France)を用いて分析した。すべての結果は、影響を受けないハウスキーピング遺伝子β−アクチン(S:5’−gggTCAgAAggATTCCTATg−3’;AS:5’ggTCTCAAACATgATCTggg−3’)に対して標準化した。
【0147】
in vivo研究
ラットにおける内臓痛の調節
動物
この研究には、体重175〜200gの雄のスプラーグ−ドーリーラット(Charles River、I’Arbresle、France)を用いた。ラットは、実験前に実験室条件で1週間維持した。これらの動物を、ケージあたり5匹収容し、餌及び水は随意利用可能にした。すべての研究は、疼痛の研究のための国際協会の研究及び倫理問題)(Research and Ethical Issues of the International Association for the Study of Pain)の委員会の提案(Zimmermann M、Pain 1983年;16:109〜110頁)に従って実施した。動物への不快感を避ける又は最小にするために、特に、収容条件に関して十分な注意を払った。
【0148】
結腸感受性の評価
結腸に入れたバルーンの膨張による結腸直腸膨満(CRD)の際の行動反応を誘導するのに必要な結腸内圧を測定することによって、動物における痛覚を評価した。この反応は、動物の身体の後部の上昇及び重篤な収縮に対応する明確に視認できる腹部収縮を特徴とする(Al Chaer、gastro 2000年;Tarrerias、pain2002年;Bourduら、2005年)。手短には、ラットに、揮発性麻酔(2%イソフルラン)で麻酔し、バルーン(Bourduら、2005年に先に記載されたように調製した)を、最小の侵襲的方法で、肛門から7cmに直腸内挿入し、カテーテルを尾の付け根にテープで貼った。5分後、ラットを40×40cmのプレキシグラスボックスの中央に入れ、カテーテルを電子バロスタット装置(G&J Electronics Inc.、Toronto、Canada)に接続した。疼痛行動が示されるまで、又は80mmHgのカットオフ圧力に達するまで漸増圧力を連続的にかけた。
【0149】
動物の治療
化合物は、直腸内点滴注入によって毎日投与した。各浣腸のために、カテーテル(2mmフォガティー(Fogarty)カテーテル)を肛門から7cmの結腸中に入れ、動物に、DMEM培地に最適濃度で再懸濁し、必要に応じて10N NaOHによってpH7に調整した500μlの化合物を21日間与えた。対照動物には、培地単独を与えた。処理の2及び3週間後、内臓痛に対する化合物の効果を評価した。
【0150】
統計
すべての比較は、2つの独立サンプルの並べかえ検定を用いて分析した。統計は、ソフトウェアStatXact(Cytel Inc、Cambridge、MA、USA)を用いて計算した。差異は、P値が<0.05である場合に統計的に有意と考えた。
【0151】
結論
得られたin vitro及びin vivo結果は、5−ASA及びR34、E1及びE2が用いられた場合のデフェンシン発現の誘導を明らかに示す。特に、驚くべきことに、E1及びE2は、5−ASAと比較して高い効力を示した。
【0152】
(参考文献)








【特許請求の範囲】
【請求項1】
CAMP発現の誘導における、ロシグリタゾン、5−ASA又は以下の一般式(I)の化合物:
【化1】


[式中、
同一であっても異なっていてもよいR及びRは、−H又は1〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐アルキル基を含む群から選択されるか、或いは、一緒になって5又は6個の原子を有する芳香族又は脂肪族環を形成し;
同一であっても異なっていてもよいY及びZは、−H、−OH、−COOH、−OR、−CH(OR)COOHを含む群から選択され、ここで、Rは、H、フェニル、ベンジル、−CF又は−CFCF、ビニル、アリル及び1〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐アルキル基から選択される]
又は以下の一般式(Ia)の化合物:
【化2】


[式中、
同一であっても異なっていてもよいR及びRは、H、−C2n−1(ここで、n=1〜6である)、1〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐アルキル基を含む群から選択されるか、或いは、一緒になって5又は6個の原子を有する芳香族又は脂肪族環を形成し;
は、−CO−CH、−NHOH、−OH、−ORから選択され、ここで、Rは、1〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐アルキル基であり;
は、H、1〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐アルキル基、フェニル、ベンジル、−CF又は−CFCF、ビニル又はアリルから選択され;R、R、Rは、水素原子であるか、
或いは、
及びR、R及びR、又はR及びRは一緒になって、N、Oを含む群から独立に選択される1〜2個のヘテロ原子を含む5又は6個の原子を有する、ベンゼン、芳香族又は脂肪族環と縮合している環を形成する]
の使用。
【請求項2】
CAMP発現が、PPAR−γ受容体を有する組織におけるものである、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
CAMP発現が、PPAR−γ受容体を有する上皮又は粘膜組織におけるものである、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
CAMP発現が腸管におけるものである、請求項1から3までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
化合物が、
5−アミノサリチル酸(5−ASA)
ロシグリタゾン
2−ヒドロキシ−3−(3’−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物20)
2−メトキシ−2−(4’−アミノフェニル)酢酸(化合物23)
2−エトキシ−2−(3’−アミノフェニル)酢酸(化合物32)
2−エトキシ−2−(4’−アミノフェニル)酢酸(化合物33)
2−メトキシ−3−(4’−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物34)「R34」
2−エトキシ−3−(4’−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物39)
2−エトキシ−3−(3’−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物40)
4−アミノ−N−ヒドロキシ−2−メトキシベンズアミド(化合物13)
5−アミノ−N−ヒドロキシ−2−メトキシベンズアミド(化合物14)
5−アミノ−2,3−ジヒドロベンゾフラン−7−カルボン酸(化合物17)
5−アミノ−2−エトキシ−N−ヒドロキシベンズアミド(化合物26)
6−アミノ−2,2−ジメチル−4H−ベンゾ[1,3]ジオキシン−4−オン(化合物28)
1,2,3,4−テトラヒドロ−6−ヒドロキシキノリン−5−カルボン酸(化合物29)
5−アミノ−2−イソプロポキシ安息香酸(化合物31)
6−メトキシキノリン−5−カルボン酸(化合物36)
6−メトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−5−カルボン酸(化合物37)
5−ジイソプロピルアミノサリチル酸(化合物38)
4−ジイソプロピルアミノサリチル酸(化合物42)
5−アミノサリチロ−ヒドロキサム酸(化合物5)
3−ジメチルアミノサリチル酸(化合物6)
2−メトキシ−4−アミノ安息香酸(化合物7)
2−メトキシ−5−アミノ安息香酸(化合物8)
5−メチルアミノサリチル酸(化合物9)
4−メチルアミノサリチル酸(化合物12)
4−アセチルアミノサリチル酸(化合物16)
2−エトキシ−4−アミノ安息香酸(化合物18)
2−エトキシ−5−アミノ安息香酸(化合物19)
4−ジメチルアミノサリチル酸(化合物24)
2−エトキシ−4−アミノベンゾイルヒドロキサム酸(化合物25)
6−ヒドロキシキノリン−5−カルボン酸(化合物27)
2−(2−プロピル)オキシ−4−アミノ安息香酸(化合物30)
4−(1−ピペラジニル)サリチル酸(化合物41)
5−オキサ−キノリン6−カルボン酸(化合物15)
2−ヒドロキシ−2−(3−アミノフェニル)酢酸(化合物10)
2−ヒドロキシ−2−(4−アミノフェニル)酢酸(化合物11)
2−ヒドロキシ−3−(4’−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物21)
2−メトキシ−2−(3’−アミノフェニル)酢酸(化合物22)
2−メトキシ−3−(3’−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物35)
及び2−メトキシ−3−(3−アミノフェニル)プロピオン酸(化合物34)
を含む群から選択され得る、請求項1から4までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
化合物が、以下を含む群から選択される、請求項1から5までのいずれか一項に記載の使用。
【化3】

【請求項7】
化合物が、以下を含む群から選択される、請求項1から5までに記載の使用。
【化4】

【請求項8】
化合物が非立体特異的であり、エナンチオマー的に純粋な、ラセミ混合物又は一方のエナンチオマーをもう一方を上回って過剰に含む混合物である、請求項1から7までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
化合物が、クローン病、潰瘍性大腸炎、インテスティナル・バウエル・シンドローム及び急性憩室炎を含む群から選択される消化管の状態の治療又は予防においてCAMP産生を誘導する、請求項1から8までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
憩室炎が、結腸憩室症、分類不能大腸炎及び感染性大腸炎を含む群から選択される、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
化合物が、膿痂疹、丹毒、皮膚炎、毛包炎及び尋常性ざ瘡などの皮膚炎症状態及び感染の治療又は予防においてCAMP産生を誘導する、請求項1から8までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
化合物が、眼、口腔、鼻又は膣粘膜を侵すもの、例えば、眼の炎症及び感染、歯周病、アレルギー性及び非アレルギー性鼻炎及び細菌性膣疾患などの粘膜の炎症状態及び感染の治療又は予防においてCAMP産生を誘導する、請求項1から8までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
クローン病、潰瘍性大腸炎、インテスティナル・バウエル・シンドローム、並びに結腸憩室症、分類不能大腸炎及び感染性大腸炎などの急性憩室炎をはじめとする消化管の状態;膿痂疹、丹毒、皮膚炎、毛包炎及び尋常性ざ瘡などの皮膚炎症状態及び感染;並びに眼の炎症及び感染、歯周病、アレルギー性及び非アレルギー性鼻炎及び細菌性膣疾患をはじめとする眼、口腔、鼻又は膣粘膜を侵すものなどの状態及び感染を含む群から選択される状態のいずれかの治療又は予防において、薬剤として使用するための組成物の調製における、請求項1から8までのいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項14】
化合物が被験体においてCAMP発現を調節する、請求項1から12までのいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項15】
抗炎症剤及び/又は抗菌剤を同定する方法であって、試験物質がCAMP発現をアップレギュレートできるかどうかを判定することを含む方法。
【請求項16】
CAMP発現が消化管におけるものである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
可能性ある抗炎症剤及び抗菌剤を同定する方法であって、試験物質がPPAR−γを刺激してCAMPを産生できるかどうかを判定することを含む方法。
【請求項18】
発現されるCAMPがデフェンシンである、請求項1から17までのいずれか一項に記載の使用。
【請求項19】
発現されるCAMPがカテリシジンである、請求項1から17に記載の使用。
【請求項20】
CAMP発現の誘導に用いるための、ロシグリタゾン、5−ASA又は以下の一般式(I)の化合物:
【化5】


[式中、
同一であっても異なっていてもよいR及びRは、−H又は1〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐アルキル基を含む群から選択されるか、或いは、一緒になって5又は6個の原子を有する芳香族又は脂肪族環を形成し;
同一であっても異なっていてもよいY及びZは、−H、−OH、−COOH、−OR、−CH(OR)COOHを含む群から選択され、ここで、Rは、H、フェニル、ベンジル、−CF又は−CFCF、ビニル、アリル及び1〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐アルキル基から選択される]
又は以下の一般式(Ia)の化合物:
【化6】


[式中、
同一であっても異なっていてもよいR及びRは、H、−C2n−1(ここで、n=1〜6である)、1〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐アルキル基を含む群から選択されるか、或いは、一緒になって5又は6個の原子を有する芳香族又は脂肪族環を形成し;
は、−CO−CH、−NHOH、−OH、−ORから選択され、ここで、Rは、1〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐アルキル基であり;
は、H、1〜6個の炭素原子を有する直鎖若しくは分岐アルキル基、フェニル、ベンジル、−CF又は−CFCF、ビニル又はアリルから選択され;R、R、Rは、水素原子であるか、
或いは、
及びR、R及びR、又はR及びRは一緒になって、N、Oを含む群から独立に選択される1〜2個のヘテロ原子を含む5又は6個の原子を有する、ベンゼン、芳香族又は脂肪族環と縮合している環を形成する]
を含むCAMP誘導性組成物。
【請求項21】
クローン病、潰瘍性大腸炎、インテスティナル・バウエル・シンドローム、並びに結腸憩室症、分類不能大腸炎及び感染性大腸炎などの急性憩室炎をはじめとする消化管の状態;膿痂疹、丹毒、皮膚炎、毛包炎及び尋常性ざ瘡などの皮膚炎症状態及び感染;並びに眼の炎症及び感染、歯周病、アレルギー性及び非アレルギー性鼻炎及び細菌性膣疾患をはじめとする眼、口腔、鼻又は膣粘膜を侵すものなどの状態及び感染を含む群から選択される状態を患っている患者を治療する方法であって、製薬上許容される量の、請求項1から8までに記載される少なくとも1種の化合物を投与することを含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−520166(P2010−520166A)
【公表日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−551194(P2009−551194)
【出願日】平成20年2月27日(2008.2.27)
【国際出願番号】PCT/EP2008/052354
【国際公開番号】WO2008/104557
【国際公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(505367017)ジュリアーニ インターナショナル リミテッド (9)
【Fターム(参考)】