説明

入力回路

【課題】入力レベルに対してヒステリシス特性を持たせる。
【解決手段】第1トランジスタM1は、ソースが接地端子P2に接続され、ゲートに入力デジタル信号S1が入力される。第2トランジスタM2は、ソースが電源端子P1に接続され、そのドレインが第1トランジスタM1のドレインに接続される。第2トランジスタM2はデプレッション型で構成する。第1インバータ12は、第1トランジスタM1、第2トランジスタM2の接続点P3、すなわちドレイン電位Vxを反転し、第2トランジスタM2のゲートに出力する。入力回路10は、接続点P3のドレイン電位Vxに応じたレベルを出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路において、外部からのデジタル信号を受ける入力回路に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路に外部からのデジタル信号を入力する場合、半導体集積回路の入力段に、入力インピーダンスの高い入力回路(入力バッファ)を備えるのが一般的である。入力回路の代表的な構成としては、特許文献1の図2に記載されるインバータが挙げられる。インバータは、電源電圧Vddと接地電位0V間に直列に接続されたPチャンネルMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)およびNチャンネルMOSFETを備える。
【特許文献1】特開平2−273965号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
入力回路をインバータで構成すると、インバータの電源電圧Vddと接地電位0Vの中点電位Vdd/2をスライスレベルとして、外部からのデジタル信号のハイレベルとローレベルが判定されることになる。したがって、デジタル信号のハイレベルが、中点電位Vdd/2より低い場合、使用することができない。
【0004】
デジタル信号に対するスライスレベルを低く設定するために、PチャンネルMOSFETをインピーダンス素子で置換した回路も利用される。しかし、インバータのPチャンネルMOSFETに代えてプルアップ抵抗を設けた場合、抵抗値を高く設定する必要があるため、LSI化する際に大面積が必要とされるという問題がある。
また、特許文献1の図1に記載されるように、PチャンネルMOSFETに代えて、ゲートソース間の電位をほぼ等しく設定したデプレッション型のNチャンネルMOSFETを用いる回路も提案されている。この場合、抵抗に比べて面積は変更できるが、入力デジタル信号のレベルによらずオン抵抗が一定で動作するため、入力レベルに対してヒステリシス特性を持たせることができない。
【0005】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その包括的な目的は、入力デジタル信号に対してヒステリシス特性を有する入力回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、デジタル信号を受ける入力回路に関する。入力回路は、ソースが第1固定電位端子に接続され、ゲートにデジタル信号が入力された第1電界効果トランジスタと、ソースが第2固定電位端子に接続され、ドレインが第1電界効果トランジスタのドレインに接続されたデプレッション型の第2電界効果トランジスタと、第1、第2電界効果トランジスタのドレインの電位を反転し、第2電界効果トランジスタのゲートに出力する第1インバータと、を備え、第1、第2電界効果トランジスタのドレインの電位に応じたレベルを出力する。
【0007】
この態様によると、デプレッション型の第2電界効果トランジスタは、第1電界効果トランジスタがオン状態において、ゲート電圧とソース電圧が等しい状態(以下、弱オン状態という)となり、第1電界効果トランジスタがオフ状態において、ゲートソース間電圧がしきい値電圧を超えてオンする状態(以下、フルオン状態という)となる。つまり、デジタル信号(以下、入力デジタル信号ともいう)のレベルに応じて、第2電界効果トランジスタの抵抗値を変化するため、第1電界効果トランジスタのドレイン電流が変化する。その結果、入力デジタル信号に対して、ヒステリシス特性を持たせることができる。
【0008】
第1電界効果トランジスタはNチャンネルMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)であり、第2電界効果トランジスタはPチャンネルMOSFETであり、第1固定電位端子は接地端子であり、第2固定電位端子は電源端子であってもよい。
【0009】
第1電界効果トランジスタはPチャンネルMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)であり、第2電界効果トランジスタはNチャンネルMOSFETであり、第1固定電位端子は電源端子であり、第2固定電位端子は接地端子であってもよい。
【0010】
(i) 第1インバータの出力を、当該入力回路の出力としてもよい。
(ii) また、ある態様の入力回路は、第1、第2電界効果トランジスタのドレインの電位を反転する第2インバータをさらに備えてもよい。このとき、第2インバータの出力を当該入力回路の出力としてもよい。
(i)の場合、入力デジタル信号のレベルと同じ論理レベルの信号を内部回路に出力でき、回路面積を小さくすることができる。(ii)の場合、第1インバータのサイズを、第2電界効果トランジスタのゲートを駆動するために最適化し、第2インバータのサイズを内部回路を駆動するために最適化することができる。
【0011】
ある態様の入力回路は、第1、第2電界効果トランジスタのドレインと、第1インバータの入力端子の間に設けられたシュミットバッファをさらに備えてもよい。
この場合、ノイズ等に対する耐性を高め、回路動作を安定化することができる。
【0012】
入力回路は、ひとつの半導体基板上に一体集積化されてもよい。「一体集積化」とは、回路の構成要素のすべてが半導体基板上に形成される場合や、回路の主要構成要素が一体集積化される場合が含まれ、回路定数の調節用に一部の抵抗が半導体基板の外部に設けられていてもよい。
【0013】
なお、以上の構成要素の任意の組合せや本発明の構成要素や表現を、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ヒステリシス特性を有する入力回路が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0016】
また、本明細書において、「部材Aと部材Bが接続」された状態とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合や、部材Aと部材Bが、電気的な接続状態に影響を及ぼさない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
同様に、「部材Aと部材Bの間に部材Cが設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、電気的な接続状態に影響を及ぼさない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0017】
図1は、本発明の実施の形態に係る入力回路10の構成を示す回路図である。入力回路10は、半導体集積回路100に内蔵されており、入力パッド102から入力されるデジタル信号(以下、入力デジタル信号という)S1を受ける入力バッファとして機能する。入力回路10は、電源電圧Vddが与えられる電源端子P1と、接地電位が与えられる接地端子P2を受けて動作する。入力回路10は、入力デジタル信号S1を受け、図示しない内部回路に入力デジタル信号S1と同論理の出力デジタル信号S2を出力する。
【0018】
図1は、入力回路10の基本的な構成を示す回路図であり、第1トランジスタM1、第2トランジスタM2、第1インバータ12を備える。
第1トランジスタM1はNチャンネルMOSFETであり、ソースが第1固定電位端子である接地端子P2に接続される。第1トランジスタM1のゲートは、入力パッド102と接続されており、入力デジタル信号S1が入力される。
【0019】
第2トランジスタM2はデプレッション型のPチャンネルMOSFETである。第2トランジスタM2のソースは、第2固定電位端子である電源端子P1に接続され、そのドレインが第1トランジスタM1のドレインに接続される。
【0020】
第1インバータ12は、第1トランジスタM1と第2トランジスタM2の接続点P3の電位レベル、すなわち両トランジスタのドレインの電位Vxを反転する。第1インバータ12の出力は、第2トランジスタM2のゲートに入力される。
【0021】
入力回路10は、第1トランジスタM1、第2トランジスタM2の接続点P3(ドレイン)の電位Vxに応じたレベルを、出力デジタル信号S2として出力する図1の回路では、Vxと出力デジタル信号S2は反転論理となる。
ただし本発明はこれに限定されず第1トランジスタM1、第2トランジスタM2のドレイン電位Vxと同論理の信号を出力デジタル信号S2としてもよい。この場合、ドレイン電位Vxをそのまま出力するか、バッファを介して出力すればよい。
【0022】
以上が入力回路10の構成である。次に入力回路10の動作を説明する。入力デジタル信号S1がローレベルのとき、第1トランジスタM1はオフする。ここで入力デジタル信号S1のローレベル、ハイレベルは、第1トランジスタM1のゲートソース間のしきい値電圧Vtによりスライスされ、入力デジタル信号S1の電位をV1と書くとき、V1>Vtのときハイレベル、V1<Vtのときローレベルとなる。つまり、入力デジタル信号S1に対するスライスレベルは、電源電圧Vddと接地電位0Vの中点レベルではない。
【0023】
第1トランジスタM1がオフすると、接続点P3が第2トランジスタM2によってプルアップされ、ドレイン電位Vxがハイレベル(=Vdd)となる。このとき、第1インバータ12から出力される出力デジタル信号S2はローレベル(0V)となる。つまり入力デジタル信号S1と同論理の出力デジタル信号S2が内部回路へと出力される。
また、このとき第2トランジスタM2のゲートはローレベル(0V)となるから、第2トランジスタM2は強オン状態となり、インピーダンスが小さくなる。
【0024】
入力デジタル信号S1がハイレベルのとき、第1トランジスタM1はオンし、接続点P3のドレイン電位Vxはローレベル(0V)となり、第1インバータ12の出力はハイレベル(Vdd)となる。つまりこの場合も、入力デジタル信号S1と同論理の出力デジタル信号S2が内部回路へと出力される。
【0025】
また、出力デジタル信号S2がハイレベル(Vdd)のとき、第2トランジスタM2のゲートソース間電圧は0Vに近くなる。もし、第2トランジスタM2をエンハンスメント型で構成した場合、第2トランジスタM2は完全なオフ状態となるが、本実施の形態では、デプレッション型で構成しているため、弱オン状態となる点に着目すべきである。
【0026】
本実施の形態に係る入力回路10では、第2トランジスタM2にデプレッション型を用い、そのゲート電位を入力デジタル信号S1に応じて変化させることにより、以下の効果を有する。
第2トランジスタM2は、入力デジタル信号S1がハイレベルの間、弱オン状態であり、入力デジタル信号S1がローレベルの間、強オン状態となる。したがって、入力デジタル信号S1のレベルに応じて、第2トランジスタM2のインピーダンスが変化する。第2トランジスタM2は、第1トランジスタM1に対して負荷として機能するから、第2トランジスタM2のインピーダンスが変化すると、入力デジタル信号S1に対するスライスレベルが変化することになる。
【0027】
1. 入力デジタル信号S1がローレベルからハイレベルへ遷移する場合
入力デジタル信号S1がローレベルからハイレベルに遷移する場合、第2トランジスタM2のインピーダンスは、相対的に低い状態から高い状態に遷移する。つまり、入力デジタル信号S1のドレイン電流が減少するように動作するため、入力デジタル信号S1に対するしきい値レベル(スライスレベル)は見かけ上高くなる。
【0028】
2. 入力デジタル信号S1がハイレベルからローレベルへ遷移する場合
入力デジタル信号S1がハイレベルからローレベルに遷移する場合、第2トランジスタM2のインピーダンスは、相対的に高い状態から低い状態に遷移する。つまり、入力デジタル信号S1のドレイン電流が増加するように動作するため、入力デジタル信号S1に対するしきい値レベル(スライスレベル)は見かけ上低くなる。
【0029】
したがって、本実施の形態に係る入力回路10によれば、入力デジタル信号S1に対するしきい値レベルにヒステリシス特性を持たせることができる。
つまり、入力デジタル信号S1がローレベル、第1トランジスタM1がオフの状態において、第2トランジスタM2のインピーダンスは低くなるため、入力デジタル信号S1のレベル変動に対する接続点P3のドレイン電位Vxの変動量を抑制することができ、ノイズ耐性を高めることができる。
【0030】
実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、変形例について説明する。
【0031】
図2(a)〜(c)は、変形例に係る入力回路の構成を示す回路図である。
図2(a)の入力回路10aにおいて、第1インバータ12aは図1の第1インバータ12に対応する。シュミットバッファ14は、接続点P3と第1インバータ12aの入力端子の間に設けられる。図2(a)の回路によれば、接続点P3のドレイン電位Vxが変動しても、回路を安定に動作させることができる。
【0032】
図2(b)の入力回路10bは、図1の入力回路10に加えて第2インバータ16を備える。第2インバータ16は、接続点P3のドレイン電位Vxを反転し、出力デジタル信号S2として出力する。
図2(b)の回路によれば、第2トランジスタM2のゲートを駆動する第1インバータ12と内部回路を駆動する第2インバータ16を別個に設けることによりそれぞれのサイズを最適化することができる。
【0033】
図2(c)の入力回路10cは、図1の入力回路10のPチャンネルとNチャンネルを置換して天地反転した回路である。図2(c)の第3トランジスタM3は、PチャンネルMOSFETであり、図1の第1トランジスタM1に対応する。第4トランジスタM4は、デプレッション型のNチャンネルMOSFETであり、図1の第2トランジスタM2に対応する。第1インバータ12cは図1の第1インバータ12に対応し、第3トランジスタM3、第4トランジスタM4の接続点P4のドレイン電位Vyを反転して第4トランジスタM4のゲートに印加する。図2(c)の回路は、第3トランジスタM3のゲートソース間のしきい値電圧をVtとするとき、入力デジタル信号S1に対するスライスレベルがVdd−Vtに設定されるため、大振幅の入力に対して有効である。図2(a)、(b)の回路に対して、図2(c)の変形を適用してもよい。
【0034】
また、実施の形態では、基本的な構成要素のみを示したが、各部材の間に、抵抗、トランジスタを設けてもよい。
【0035】
実施の形態にもとづき、本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を離脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施の形態に係る入力回路の構成を示す回路図である。
【図2】図2(a)〜(c)は、変形例に係る入力回路の構成を示す回路図である。
【符号の説明】
【0037】
10 入力回路、 12 第1インバータ、 14 シュミットバッファ、 16 第2インバータ、 M1 第1トランジスタ、 M2 第2トランジスタ、 M3 第3トランジスタ、 M4 第4トランジスタ、 P1 電源端子、 P2 接地端子、 P3 接続点、 100 半導体集積回路、 102 入力パッド、 S1 入力デジタル信号、 S2 出力デジタル信号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタル信号を受ける入力回路であって、
ソースが第1固定電位端子に接続され、ゲートに前記デジタル信号が入力された第1電界効果トランジスタと、
ソースが第2固定電位端子に接続され、ドレインが前記第1電界効果トランジスタのドレインに接続されたデプレッション型の第2電界効果トランジスタと、
前記第1、第2電界効果トランジスタのドレインの電位を反転し、前記第2電界効果トランジスタのゲートに出力する第1インバータと、
を備え、前記第1、第2電界効果トランジスタのドレインの電位に応じたレベルを出力することを特徴とする入力回路。
【請求項2】
前記第1電界効果トランジスタはNチャンネルMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)であり、前記第2電界効果トランジスタはPチャンネルMOSFETであり、前記第1固定電位端子は接地端子であり、前記第2固定電位端子は電源端子であることを特徴とする請求項1に記載の入力回路。
【請求項3】
前記第1電界効果トランジスタはPチャンネルMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)であり、前記第2電界効果トランジスタはNチャンネルMOSFETであり、前記第1固定電位端子は電源端子であり、前記第2固定電位端子は接地端子であることを特徴とする請求項1に記載の入力回路。
【請求項4】
前記第1インバータの出力を、当該入力回路の出力とすることを特徴とする請求項1または2に記載の入力回路。
【請求項5】
前記第1、第2電界効果トランジスタのドレインの電位を反転する第2インバータをさらに備え、
前記第2インバータの出力を、当該入力回路の出力とすることを特徴とする請求項1または2に記載の入力回路。
【請求項6】
前記第1、第2電界効果トランジスタのドレインと、前記第1インバータの入力端子の間に設けられたシュミットバッファをさらに備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の入力回路。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−199089(P2008−199089A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−29244(P2007−29244)
【出願日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】