説明

入力装置

【課題】 音を発生させるための手段と、振動を発生させるための手段を、それぞれ別々に設けることなく、構造の単純化が図れる入力装置を提供する。
【解決手段】 筐体1と、筐体1に手動操作可能に支持された操作部材7と、操作部材7の操作状態を検出する検出手段11と、操作部材7の操作状態を報知する報知手段と、検出手段11からの検出情報に基づいて報知手段の駆動制御を行なう制御手段22とを備え、報知手段は、操作部材7に伝振可能に結合された被打接部材12と、被打接部材12を打接する打接手段13とからなり、打接手段13により被打接部材12を打接することにより被打接部材12が音を発生すると共に、操作部材7に振動を伝えるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車に搭載される電気機器の操作に用いられる入力装置に係り、特に手動操作される操作部材の操作状態に応じて、操作部材を操作する操作者に音や振動を伝えて操作状態をフィードバックする入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気機器の入力装置において、操作部材の操作状態を操作者にフィードバックする手段の一つとしては、スピーカを用いて音を発生させて知らせるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
また。操作部材の操作状態を操作者にフィードバックする手段の他の一つとして、操作部材の内部に内蔵したバイブレータを用いて操作部材を振動させて知らせるものも知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
この、従来の電気機器の入力装置において、操作部材の操作状態を操作者にフィードバックするのに、このフィードバックをより明確にするために、音と振動の両方を発生させるようにしても良く、このような入力装置の構成を図3に示す。尚、この入力装置は公知のものとして存在するものでなく、本願発明の説明のために設定したものである。
【0004】
図において、操作部材31は、操作者によって手動操作されるもので、支軸32を軸として図示A−B方向に回動可能に軸支されている。検出手段33は、例えば回転型のロータリーエンコーダからなり、操作部材31の回動方向や回動角度などの操作状態を検出するものである。
【0005】
報知手段の一つである、振動して操作部材31の操作状態を知らせるバイブレータ34は、ソレノイドと振動ヘッドを備え、操作部材31に内蔵されており、制御手段36を介して検出手段33と接続されている。また、報知手段の他の一つである、音によって操作部材の操作状態を知らせるスピーカ35は、同じく、制御手段36を介して検出手段33と接続されている。
【0006】
制御手段36は、マイコン、メモリなどを備えた制御回路部からなり、検出手段からの検出情報に基づいて報知手段であるバイブレータ34やスピーカ35の駆動制御を行ない、操作部材31の操作状態を操作者にフィードバックするものとなっている。
【0007】
【特許文献1】特開2003−153354号公報
【特許文献2】特開平11−327677号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した従来の入力装置の構造においては、音を発生させるための手段と、振動を発生させるための手段とが、それぞれ別々に設けられているため、構造が複雑となり、装置が大型化するという問題があった。
【0009】
従って、本発明では上述した問題点を解決し、音を発生させるための手段と、振動を発生させるための手段を、それぞれ別々に設けることなく、構造の単純化が図れる入力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明では第1の解決手段として、筐体と、この筐体に手動操作可能に支持された操作部材と、この操作部材の操作状態を検出する検出手段と、前記操作部材の操作状態を報知する報知手段と、前記検出手段からの検出情報に基づいて前記報知手段の駆動制御を行なう制御手段とを備え、前記報知手段は、前記操作部材に伝振可能に結合された被打接部材と、前記被打接部材を打接する打接手段とからなり、前記打接手段により前記被打接部材を打接することにより該被打接部材が音を発生すると共に、前記操作部材に振動を伝えるようにした構成とした。
【0011】
また、第2の解決手段として、前記打接手段を、前記筐体に支持すると共に、前記被打接部材は、前記操作部材の何れの操作状態においても前記打接手段からの距離が、前記打接手段により打接可能な距離となる被打接面を有する構成とした。
また、第3の解決手段として、前記打接手段が、電磁ソレノイドからなる構成とした。
また、第4の解決手段として、前記被打接部材が、前記操作部材の操作軸に固着されたコーン状の金属板からなる構成とした。
【発明の効果】
【0012】
上述したように、本発明の入力装置は、筐体と、筐体に手動操作可能に支持された操作部材と、操作部材の操作状態を検出する検出手段と、操作部材の操作状態を報知する報知手段と、検出手段からの検出情報に基づいて報知手段の駆動制御を行なう制御手段とを備え、報知手段は、操作部材に伝振可能に結合された被打接部材と、被打接部材を打接する打接手段とからなり、打接手段により被打接部材を打接することにより被打接部材が音を発生すると共に、操作部材に振動を伝えるようにしたことから、被打接部材は音を発生すると共に操作部材に振動を伝えることができるので、音発生手段と振動発生手段とを共通化でき、構造の単純化を図ることができる。
【0013】
また、打接手段を、筐体に支持すると共に、被打接部材は、操作部材の何れの操作状態においても打接手段からの距離が、打接手段により打接可能な距離となる被打接面を有することから、打接手段の位置を操作部材の操作状態に合わせて変化させる必要がないので、打接手段への配線接続等を容易に行なうことができる。
また、打接手段が、電磁ソレノイドからなることから、被打接部材との打接を確実に行なうことができ、構成が簡易となる。
また、被打接部材が、操作部材の操作軸に固着されたコーン状の金属板からなることから、簡単な構成で、打接時の音と振動を確実に発生させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図1及び図2に示す。図1は本発明に係る入力装置の構成を示す断面図、図2は本発明に係る入力装置のブロック図である。
【0015】
図において、筐体1は、合成樹脂等の絶縁材で形成され、内部に空洞部1aを有する箱状に形成されている。この筐体1は、表面パネル部2と、この表面パネル部2の側面を覆う側壁3と、この側壁3の下面側に係合されて空洞部を塞ぐ底板4と、この底板4の一端側から側壁3の中央付近まで突設した支持段部5から形成されている。また、前記表面パネル部2の上面側には、挿通孔2aが設けられており、この挿通孔2aに軸受孔を有する軸受6が嵌合されている。この軸受6に後述する操作部材7の操作軸7bが回転可能に軸支されるものとなっている。
【0016】
操作部材7は、合成樹脂等の絶縁材からなり、太径で短寸円柱状のつまみ部7aと、このつまみ部7aの下端側に延出する細径で長寸円柱状の操作軸7bとを有している。この操作部材7は、操作軸7bが前記表面パネル2の軸受6に挿通され、つまみ部7aが前記表面パネル部2の上面側に突出して前記軸受6に軸支され、前記筐体1に回転可能に取付けられている。
【0017】
また、前記筐体1の底板4の略中央には、前記操作部材7に回転力を付与するモータ8が取付けられている。また、前記モータ8の回転軸8aの一端が筐体1の空洞部1aへ延出された前記操作部材7の操作軸7bの一端と結合されており、前記モータ8の回転に伴って、回転時の力覚が前記操作部材7のつまみ部7aに付与されるものとなっている。
【0018】
また、前記モータ8の回転軸8aの一端と前記操作軸7bとが結合されて一体化した軸には、回転軸8aの回転角、すなわち操作部材7の回転角を検出し、その回転角に相当する回転角信号を出力する円周方向に沿って多数のコード、例えば複数のスリット(図示せず)が配列されたコード板9が固着されている。また、前記筐体1の側壁3あるいは支持段部5の側面部には、コ字状のフォトセンサ10が取付けられており、このフォトセンサ10にはコード板9を挟んで対向した位置に投光素子および受光素子(図示せず)が取付けられている。このコード板9とフォトセンサ10とで検出手段である回転型のエンコーダ11が構成されている。
【0019】
また、前記操作軸7bには、コーン状の金属板からなり、断面が略コ字状をした被打接部材12が結合されている。この被打接部材12は、円筒状の外周面が被打接面12aを形成しており、この被打接面12aは、前記操作部材7の何れの操作状態(左右方向へ任意に回転させた状態)においても、回転軌跡が、前記操作軸7bの軸中心からの距離が同一となるように形成されている。この被打接部材12の被打接面12aを後述する打接手段である電磁ソレノイド13の駆動棒13bが打接するものとなっている。
【0020】
前記筐体1の支持段部5には、打接手段である電磁ソレノイド13が取付けられている。この電磁ソレノイド13は、コイル部13aと、このコイル部13a内をスライド移動する鉄芯からなる駆動棒13bとを有し、この駆動棒13bの先端と前記被打接部材12の被打接面12aとが一定の距離Sを維持した状態で対向して配置されている。この距離Sは、前記操作部材7のつまみ部7aを回転させた場合でも、駆動棒13aの先端と前記被打接面との距離Sが同一となるように形成されている。
【0021】
このように、打接手段である前記電磁ソレノイド13を、前記筐体1の支持段部5に支持すると共に、前記被打接部材12は、前記操作部材7の何れの操作状態においても、電磁ソレノイド13の駆動棒13bの先端からの距離が、前記駆動棒13bにより打接可能な距離となる前記被打接面12aを有することから、電磁ソレノイド13の取付位置を前記操作部材7の操作状態に合わせて変化させる必要がないので、電磁ソレノイド13への配線接続等を容易に行なうことができるものとなっている。
【0022】
また、打接手段を、前記電磁ソレノイド13で構成したので、コーン状の金属板からなる前記被打接部材12との打接を確実に行なうことができ、構成が簡易となっている。また、前記被打接部材12を、前記操作部材7の操作軸7aに固着されたコーン状の金属板から構成したので、簡単な構成で、打接時の音と振動を確実に発生させることができるものとなっている。
【0023】
図2は、本発明の入力装置のブロック図を示している。本発明の入力装置は、外部のコントローラ(図示せず)に接続されており、このコントローラは、信号調節回路21、制御部22、フォースパターン記憶部23、駆動回路24、25を有している。
【0024】
信号調節回路21は、エンコーダ11から出力された回転角信号と、回転方向信号とを調整するものである。制御部22は、信号調整回路21からの信号に応じてモータ8と電磁ソレノイド13を制御する制御信号の値(電圧値)を演算し、演算結果を駆動回路24、25に送信するものである。駆動回路24、25は、制御部22の演算結果に応じて、モータ8と電磁ソレノイド13に制御信号を出力するものである。そして、フォースパターン記憶部23には、制御部22を動作させるための制御プログラムと、制御信号の値の演算に使用される関数と、演算式とを予め記憶させている。
【0025】
次に、上記構成の入力装置の動作について説明する。この場合、操作対象の電気機器が例えばエアコンで、操作対象モードが風量の時について説明する。
まず、操作部材7を回転操作すると、回転角がエンコーダ11(コード板9及びフォトセンサ10)により検出され、その回転角の相当する回転角信号が信号調整回路21を介して制御部22に入力される。そして、制御部22により、操作部材7の回転角と、フォースパターン記憶部23に予め記憶されている関数とから操作部材7の回転角に応じた操作信号の値が演算される。そして、制御部22により算出された値の操作信号が出力部(図示せず)から出力される。これにより例えばエアコンなどの風量が増加するものとなる。
【0026】
このとき、制御部22では、操作部材7の回転角に応じたモータ8の制御信号の値の演算も行われる。そして、制御部22により算出された値の制御信号が駆動回路25からモータ8に出力される。これにより、モータ8から操作部材7に回転操作に抵抗する力が加えられ、この力が操作部材7の回転角の増大に従って、その回転操作方向に抵抗する力が増大する。つまり、操作者は、操作部材7から与えられる抵抗力の増大に伴う抵抗感触(力覚)により、風量を増加させる方向に操作部材7をどの程度回転させたかを把握することができるものとなる。
【0027】
更に、制御部22では、操作部材7の回転角に応じた電磁ソレノイド13の制御信号の値の演算も行なわれる。そして、制御部22により算出された値の制御信号が駆動回路24から電磁ソレノイド13に出力される。これにより、電磁ソレノイド13が駆動され、駆動棒13bがコイル部13a内を前後方向にスライド移動を繰り返すことにより、駆動棒13bの先端がコーン状の金属板からなる被打接部材12の被打接面12aを繰り返し打接することで、操作部材7の回転操作に対応した操作音及び振動が発生するものとなる。
【0028】
この操作音及び振動は、例えば、操作部材7の回転角の増大に従って、その回転操作方向に順次大きくなるように設定したり、あるいは、打接の回数が順次多くなるように設定することができる。つまり、操作者は、操作部材7を回転操作させる時の操作音及び振動の変化によって、風量を増加させる方向に操作部材7をどの程度回転させたかを把握することができるものとなる。
また、この場合に、コーン状の金属板からなる前記被打接部材12の形状や材質、また、厚さ等を変えることにより、発生する操作音及び振動を色々変更させることができ、報知手段の種々のバラエティー対応が可能となっている。
【0029】
また、操作部材7の回転角が所定の回転角(例えば、MAX位置)に達すると、エンコーダ11により所定の回転角が検出され、その所定の回転角に相当する回転角信号が信号調節回路21を介して制御部22に入力される。そして、制御部22により、フォースパターン記憶部23に予め記憶されている演算式に基づいて、操作部材7の回転を阻止する旨が決定され、この決定に対するブレーキ制御信号が駆動回路25からモータ8に出力される。これにより、操作部材7が所定の回転角を超えて回転することが阻止されるものとなる。
【0030】
また、この時、同様に上記ブレーキ制御信号が駆動回路24から電磁ソレノイド13に出力されるものとなり、これにより、駆動棒13bの先端がコーン状の金属板からなる被打接部材12の被打接面12aを繰り返し打接する回数を最多の極限数にしたり、打接音を最大にすることにより、音や振動で操作部材7が所定の回転角に到達したことを操作者に報知することができるものとなっている。
【0031】
このように、上記構成の入力装置は、前記操作部材7を手動で回転操作することにより、例えば、車載用電気機器を操作する操作信号を出力するものであり、車載用エアコンの風量の調節や吹出口の切り換え、ラジオの音量やチューナーの調整、オーディオの音量や音質の調整などが操作対象となるものである。
【0032】
上記した本発明の実施例によれば、筐体と、この筐体に手動操作可能に支持された操作部材と、この操作部材の操作状態を検出する検出手段と、前記操作部材の操作状態を報知する報知手段と、前記検出手段からの検出情報に基づいて前記報知手段の駆動制御を行なう制御手段とを備え、前記報知手段は、前記操作部材に伝振可能に結合されたコーン状の金属板からなる被打接部材と、この被打接部材の被打接面を打接する打接手段である電磁ソレノイドとからなり、この電磁ソレノイドの駆動棒により前記被打接部材の被打接面を打接することにより、前記被打接部材が音を発生すると共に、前記操作部材に振動を伝えるようにしたことから、前記被打接部材は音を発生すると共に前記操作部材に振動を伝えることができるので、音発生手段と振動発生手段とを共通化でき、構造の単純化を図ることができるものとなっている。
【0033】
尚、上記した本発明の実施例においては、力覚として抵抗感触が得られる入力装置を挙げたが、本発明はこれに限るものではなく、力覚として加速する感触や、クリック感触が得られる入力装置にしてもよい。
また、エンコーダはスリットを通して光の透過を検出するようにしたが、光を反射するコードを有するコード板を使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の入力装置の構成を示す断面図である。
【図2】本発明の入力装置のブロック図である。
【図3】従来の入力装置の構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0035】
1:筐体
1a:空洞部
2:表面パネル
2a:挿通孔
3:側壁
4:底板
5:支持段部
6:軸受
7:操作部材
7a:つまみ部
7b:操作軸
8:モータ
8a:回転軸
9:コード板
10:フォトセンサ
11:エンコーダ(検出手段)
12:被打接部材(報知手段)
12a:被打接面
13:電磁ソレノイド(打接手段、報知手段)
13a:コイル部
13b:駆動棒
21:信号調整回路
22:制御部
23:フォースパターン記憶部
24:駆動回路
25:駆動回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、この筐体に手動操作可能に支持された操作部材と、この操作部材の操作状態を検出する検出手段と、前記操作部材の操作状態を報知する報知手段と、前記検出手段からの検出情報に基づいて前記報知手段の駆動制御を行なう制御手段とを備え、前記報知手段は、前記操作部材に伝振可能に結合された被打接部材と、前記被打接部材を打接する打接手段とからなり、前記打接手段により前記被打接部材を打接することにより該被打接部材が音を発生すると共に、前記操作部材に振動を伝えるようにしたことを特徴とする入力装置。
【請求項2】
前記打接手段を、前記筐体に支持すると共に、前記被打接部材は、前記操作部材の何れの操作状態においても前記打接手段からの距離が、前記打接手段により打接可能な距離となる被打接面を有することを特徴とする請求項1記載の入力装置。
【請求項3】
前記打接手段が、電磁ソレノイドからなることを特徴とする請求項1、又は2記載の入力装置。
【請求項4】
前記被打接部材が、前記操作部材の操作軸に固着されたコーン状の金属板からなることを特徴とする請求項1、又は2記載の入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−39825(P2006−39825A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−217197(P2004−217197)
【出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】