説明

内径測定装置

【課題】内径を測定して当該部位における磨耗部位(磨耗部位までの長さ)及び磨耗深さ(磨耗量)を簡単に測定できるようにする。
【解決手段】本体部1の長手方向に沿ってスライド可能に装設されかつ後端部側が本体部1の後端から延出された可動体5、可動体5の長手方向に沿って配設され前端部を可動体5の前端から所定の長さ延出して一方の測定端部9が形成された被測定物に対して内径の寸法を測定する測定目盛Y2を付した第2の測定手段8、本体部1の前端部に装設され第2の測定手段8の前端部を直交方向に曲折案内するとともに、一方の測定端部9を可動体5の長手方向に対して直交方向に指向する案内部材2、本体部1に前端部において第2の測定手段8の測定端部9と反対方向でかつ測定端部9と同一直線上に突出形成された他方の測定端部11aが形成された基準部材11とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円形または楕円形等の管体、例えば、押出機のシリンダーにおいて、その内径部における磨耗部位(磨耗部位までの長さ)及び磨耗深さ(磨耗量)を測定するための内径測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、管体における内径の測定にあっては、アナログ式では、シリンダーゲージや内径マイクロメータ等の測定機器が使用されている。これらの測定機器においては、通常知られているように、測定精度において前者のシリンダーゲージの場合は0.01mm、後者の内径マイクロメータの場合は0.001mmという単位で測定できるものの、個々の測定機器の測定範囲は2mm〜5mmまでしか測定することができず、また、測定精度が高いため、実際の使用時には個々の測定機器をその都度、マスターゲージでゼロ点設定等の調整作業を必要とするものであった。
さらに、レーザー変位計を用いた光学手段の測定機器にあっては、レーザーによりその被測定物に対し、その内径部における未磨耗部位の表面までの距離を測定し次に磨耗部の表面までの距離を測定して、その差を磨耗深さ(量)として測定するものであるが、この光学手段の測定機器にあっても、その測定精度が0.01mmという単位で測定することができるものの、振動が生起する被測定物では測定機器の振幅が大きくなりその測定許容公差以上になった場合は測定機器が作動できず測定不能の事態が生起するものであった。また、この光学手段の測定機器においては、精密機器である構造上50℃以上の測定環境下では使用できないという問題点を有していた。
そして、機械的な測定装置として、長手方向の下方に引き込んで略T字状とすることが可能な測長尺と、一端が測長尺の長手方向の中央部に接合され、他端が測長尺の引き込み量に比例して移動する逆U字状の読取尺から構成された測長器具(特許文献1参照)やワークの内径部ないに挿入されワークの内径測定を行なうとともにワークの内径部の深さを測定するタッチセンサーがZ軸方向の任意の位置に位置した時点で零セットしそこからタッチセンサーがZ軸方向に移動した場合にはその移動距離を測定するZ軸方向移動検出手段を設けた構成の測定装置(特許文献2参照)等が案出されている。
【特許文献1】特開平8―128802号公報
【特許文献2】特開平6―129801号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記した特許文献1に示された測長器具にあっては、測定者のてが届かない高い所の長さ、或いは間隔長さを測定できるものの、被測定物が管体の内径を測定することが困難であり、また特許文献2に示された測定装置にあっては、ワークの内径を高い精度で簡単に測定することが可能で、内径の深さについても測定が可能であるが、比較的長尺の管体の内径の測定が困難であった。
そこで、本発明は、上記した従来の問題点に鑑み、被特定物が比較的長尺の管体の場合でも、内径を測定して当該部位における磨耗部位(磨耗部位までの長さ)及び磨耗深さ(磨耗量)を簡単に測定することができる内径測定装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の上記した課題は、以下の請求項記載の発明により解決される。
すなわち、請求項1記載の発明は、管体等の被測定物の内径を測定するための装置であって、被測定物に対して測定部位までの侵入長さを測定するための測定目盛を付した第1の測定手段が表面長手方向に配設された長尺の本体部と、この本体部の長手方向に沿ってスライド可能に装設されかつ後端部側が該本体部の後端から延出された可動体と、この可動体の長手方向に沿って配設され前端部を該可動体の前端から所定の長さ延出して一方の測定端部が形成された前記被測定物に対して内径の寸法を測定する測定目盛を付した第2の測定手段と、前記本体部の前端部に装設され前記第2の測定手段の前端部を直交方向に曲折案内するとともに前記一方の測定端部を可動体の長手方向に対して直交方向に指向する案内部材と、前記本体部に前端部において前記第2の測定手段の測定端部と反対方向でかつ該測定端部と同一直線上に突出形成された他方の測定端部が形成された基準部材とを備え、被測定物の測定部位における内周に対して第2の測定手段の測定端部と基準部材の測定端部とを当接して、そのときの本体部における後端側が指標する第2の測定手段の測定目盛により該測定部位の内径寸法を測定するとともに、被測定物の内径部における端部側が指標する第1の測定手段の測定目盛により測定部位までの侵入長さを測定するように構成したことを要旨とする。
この構成によれば、長尺の本体部に配設された第1の測定手段における指標部位の測定目盛を読取ることにより、測定部位までの侵入長さ(磨耗部位までの長さ)を測定するとともに、可動体に配設された前記第2の測定手段における指標部位の測定目盛を読取ることにより、測定部位の内径寸法(磨耗量)を測定することができるものである。すなわち、測定部位の測定内径寸法と当初の内径基準寸法との差が当該測定部位の磨耗量として測定することができる同時に、当該磨耗部位の位置、すなわち基準位置から磨耗部位までの長さ寸法が測定できるものである。
【0005】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の内径測定装置であって、前記本体部の前端部位に高感度CCDカメラ等の撮影手段とLDEライト等の照明手段を備え、この撮影手段とテレビモニター手段とを接続して該撮影手段による映像をテレビモニター手段に映し出すように構成したことを要旨とする。
この構成によれば、照明手段により測定部位或いはその付近を明るく照らすとともに、撮影手段及びテレビモニター手段により測定部位の磨耗状態を容易に視認することができるものである。
【0006】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の内径測定装置であって、前記本体部の基準部材に対し、被測定物の内周面の温度を測定する熱電対を備え、この熱電対で測定した温度を表示する温度表示手段にて確認するように構成したことを要旨とする。
この構成によれば、熱電対及び温度表示手段により、測定部位或いはその付近の温度を容易に確認することができるものである。
【0007】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1の請求項に記載の内径測定装置であって、前記本体部に圧縮エアーの供給源に接続されるエアー管路を形成され、このエアー管路の先端部には前記測定端部と同方向に指向されたエアーノズルを形成されていることを要旨とする。
この構成によれば、エアーノズルから噴出されるエアーによって、測定部位或いはその付近を洗浄することができ、測定部位の作業環境を良化を図ることができる。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の発明によれば、簡単な構造で、測定部位までの侵入長さ(磨耗部位までの長さ)を測定することができると同時に、 測定部位の内径寸法(磨耗量)を測定することができる。このことは、測定部位の測定内径寸法と当初の内径基準寸法との差を当該測定部位の磨耗量として測定することができる同時に、当該磨耗部位の位置、すなわち基準位置から磨耗部位までの長さ寸法が測定できる。
【0009】
請求項2記載の発明によれば、測定部位或いはその付近を明るく照らすことができるとともに、該測定部位の磨耗状態を容易に視認することができる。
【0010】
請求項3記載の発明によれば、測定部位或いはその付近の温度を容易に確認することができる。
【0011】
請求項4記載の発明によれば、測定部位或いはその付近を洗浄することができ、測定部位の作業環境の良化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明を実施するための最良の形態について、実施例にしたがって説明する。
(実施例)
【0013】
以下、本発明の実施例を図にしたがって説明する。図1は本実施例の内径測定具の全体を略字する斜視図、図2は同じく側断面図、図3は一部拡大側断面図、図4は別の実施例を示す分解斜視図、図5は図4の一部拡大断面図である。
図1及び図2に示すように、の比較的長尺の本体部1は、断面ほぼ矩形状の軽量金属(アルミニウム)等から筒状に形成され、その先端開放部には、その下辺に対し湾曲部と該品体部の長手方向と直交する垂直面とが形成された第1の案内部材2が一体的に装設され、上辺に対して該案内部材2の案内面と所定の間隔をおいて対向する管状の曲面を有する第2の案内部材3が形出されている。
そして、本体部1の表面(上面)長手方向には、被測定物Wに対して測定部位までの侵入長さを測定するための測定目盛Y1を付したメジャー等からなる第1の測定手段4が直線状に一体的に配設されている。
なお、第1の測定手段4における測定目盛Y1は、0基準が後述する第2の測定手段8の測定端部9となるようにその目盛が設定されている。そして、該第1の測定手段4における測定目盛Y1の指標は被測定物Wの孔部の端面(測定すべき内径部の端面)とするものである。
【0014】
前記本体部1内にはその長手方向に沿って板状の軽量金属(アルミニウム)等からなる可動体5がスライド可能に装設されており、該可動体5は、その後端部側が前記本体部1の後端から外方に突出するように延出され、かつ先端部側が前記本体部1内においてその先端開放部から突出しないように所定のスライド範囲を確保する状態に位置されている。なお。この可動体5は、その一部には長手方向に所定の長さの長孔6が形成され、この長孔6に前記本体部1に装設されたピン7が挿通されることにより、本体部1内から抜脱することなく所定のスライド範囲が確保されるものである。
【0015】
前記可動体5の表面(上面)長手方向には、前記被測定物Wに対して内径の寸法を測定する測定目盛Y2を付したメジャー等からなる第2の測定手段8が直線状に一体的に配設されている。この第2の測定手段8はその先端部を該可動体5の前端から所定の長さ延出して一方の測定端部9が形成されていて、この測定端部9が前記本体部1の案内部材2に沿って曲折されかつ該可動体5の長手方向に対して直交方向に指向して本体部1の先端開放部から上方に突出状態で位置されている。そして、この測定端部9は先端が鋭角状に形成されて前記被測定物Wの測定すべき内周面に当接可能とされるとともに、第2の測定手段8における測定目盛Y2の0基準とされている。
【0016】
前記本体部1の後端には第2の測定手段8における測定目盛Y2の指標を構成する合成樹脂製の指標プレート10が一体的に設けられている。
【0017】
前記本体部1の先端部の下部には、基準端部先端を鋭角状に形成したピン状の他方の測定端部11aを構成する基準部材11が下方に向って突出形成されている。この基準部材11の測定端部11aは、前記第2の測定手段8の測定端部9と反対方向でかつ該測定端部9と同一直線上に位置されるとともに、前記被測定物Wの測定すべき内周面に当接可能とされている。
【0018】
前記本体部1の先端部側の上部には、高感度CCDカメラ等のコンパクト形態の撮影手段12とLDEライト等の照明手段13を装設され、この撮影手段12と別設のテレビモニター手段(図示しない)とを接続して該撮影手段12による映像を映し出すように構成されている。なお、LDEライト等の照明手段13は撮影手段12に内蔵した形態でもよく、LDEライト等の照明手段13の直線状に指向する光源を直角鏡14のより測定すべき内径面に変角するようにした形態の構成でもよい。
【0019】
また、前記基準部材11に熱電対15を設け、この熱電対15により測定した温度を表示する別設のデジタル計等の温度表示手段16にて確認するように構成されている。
【0020】
さらに、前記本体部1の下辺の長手方向には、圧縮エアーの供給源(図示しない)に接続されるエアー管路17が配設形成され、このエアー管路17の先端部には前記測定端部9、11と同方向にそれぞれ指向されたエアーノズル18、18が形成され、測定部位或いはその付近に圧縮エアーを任意に噴出できるように構成されている。
【0021】
本例の内径測定装置は、上述のように構成されたものであり、その測定手順の一例を説明する。
【0022】
被測定物Wの内径における磨耗量を測定すべき測定部位における内周に対し、第2の測定手段8の測定端部9と本体部1の基準部材11の測定端部11aとを当接して、そのときの本体部1における後端側の指標プレート10が指標する第2の測定手段8の測定目盛Y2を直読することにより該測定部位の内径寸法を測定する。
【0023】
例えば、当初の内径基準寸法を60mmとした場合、前記指標プレート10が指標した第2の測定手段8の測定目盛Y2を70mmとして直読すると、その測定部位の測定内径寸法が70mmであるので、該測定内径寸法が70mmから前記当初の内径基準寸法60mmを引いた10mmが当該測定部位の磨耗量(径)として測定することができる。
【0024】
これと同時に、当該磨耗部位の位置、すなわち基準位置から磨耗部位までの長さ寸法が被測定物Wの内径部における端部側が指標する第1の測定手段4の測定目盛Y1を直読することによって、当該測定部位までの侵入長さ(測定部位までの長さ)を測定することができる。
【0025】
このように、本実施例の内径測定装置にあっては、第1の測定手段4と変位可能に動作する第2の測定手段8をそれそれ指標する部位の測定目盛Y1、Y2を直読することによって、被特定物が比較的長尺の管体の場合でも、測定すべき内径における磨耗部位(磨耗部位までの長さ)及び磨耗深さ(磨耗量)を一度に素早く、簡単に測定することができるものである。
【0026】
本実施例においては、照明手段13により測定部位或いはその付近を明るく照らすとともに、撮影手段12及びテレビモニター手段により該測定部位の磨耗状態を容易に視認することができるものである。
また、熱電対15及び温度表示手段16により、測定部位或いはその付近の温度を容易に確認することができるものである。
さらには、このエアー管路17を介してエアーノズル18、18から噴出されるエアーによって、測定部位或いはその付近を洗浄することができ、測定部位の作業環境を良化を図ることができるものである。
【0027】
なお、図4及び図5に示す実施例は、本体部1及び可動体5をさらに長くして使用する場合であって、前述の実施例と同様に構成した本体部1Aと、該本体部1A内に前述の実施例と同様に構成した可動体5Aとをそれぞれ端部を接続部材19を介して接続することによって対応することができる。すなわち、本体部1、1Aのそれぞれの端部を断面矩形の筒状の接続部材19をビス20、20により一体状に接続し、可動体5Aの端部をほぼU字状に形成するとともに、この可動体5AのほぼU字状端部と前述の実施例の可動体5の端部を嵌合してボルト、ナット21により連結して使用するもであり、この場合、第1の測定手段4及び第2の測定手段8の測定目盛Y1、Y2はそれぞれ連続するように配設されるものである。なお、上記した別設の本体部1A、可動体5Aはアタッチメントとして構成されるものであり、これによって、本体部1及び可動体5をさらに長くして使用することができ、比較的長尺の被測定物Wの内径の測定に簡単に対応することができる。
【0028】
なお、上述した実施例における各部材及び構成は本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本実施例の内径測定具の全体を略字する斜視図である。
【図2】同じく側断面図である。
【図3】一部拡大側断面図である。
【図4】別の実施例を示す分解斜視図である。
【図5】図4の一部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 本体部
4 第1の測定手段
5 可動体
8 第2の測定手段
Y1、Y2 測定目盛


【特許請求の範囲】
【請求項1】
管体等の被測定物の内径を測定するための装置であって、
被測定物に対して測定部位までの侵入長さを測定するための測定目盛を付した第1の測定手段が表面長手方向に配設された長尺の本体部と、
この本体部の長手方向に沿ってスライド可能に装設されかつ後端部側が該本体部の後端から延出された可動体と、
この可動体の長手方向に沿って配設され前端部を該可動体の前端から所定の長さ延出して一方の測定端部が形成された前記被測定物に対して内径の寸法を測定する測定目盛を付した第2の測定手段と、
前記本体部の前端部に装設され前記第2の測定手段の前端部を直交方向に曲折案内するとともに、前記一方の測定端部を可動体の長手方向に対して直交方向に指向する案内部材と、
前記本体部に前端部において前記第2の測定手段の測定端部と反対方向でかつ該測定端部と同一直線上に突出形成された他方の測定端部が形成された基準部材と、を備え、
被測定物の測定部位における内周に対して第2の測定手段の測定端部と基準部材の測定端部とを当接して、そのときの本体部における後端側が指標する第2の測定手段の測定目盛により該測定部位の内径寸法を測定するとともに、被測定物の内径部における端部側が指標する第1の測定手段の測定目盛により測定部位までの侵入長さを測定するように構成したことを特徴とする内径測定装置。
【請求項2】
請求項1記載の内径測定装置であって、前記本体部の前端部位に高感度CCDカメラ等の撮影手段とLDEライト等の照明手段を備え、この撮影手段とテレビモニター手段とを接続して該撮影手段による映像をテレビモニター手段に映し出すように構成したことを特徴とする内径測定装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の内径測定装置であって、前記本体部の基準部材に対し、被測定物の内周面の温度を測定する熱電対を備え、この熱電対で測定した温度を表示する温度表示手段にて確認するように構成したことを特徴とする内径測定装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1の請求項に記載の内径測定装置であって、前記本体部に圧縮エアーの供給源に接続されるエアー管路を形成され、このエアー管路の先端部には前記測定端部と同方向に指向されたエアーノズルを形成されていることを特徴とした内径測定装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−192357(P2009−192357A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−33032(P2008−33032)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(505457628)中部ティーイーケィ株式会社 (2)
【出願人】(305021650)有限会社近藤研究所 (4)
【Fターム(参考)】