説明

内燃機関の制御装置

【課題】自動停止始動機能による燃料消費量の低減と学習機能による機関運転状態の安定化との好適な両立を図ることのできる内燃機関の制御装置を提供する。
【解決手段】この装置は、アイドル運転時に内燃機関を安定運転することの可能な吸入空気量についての学習値を学習し、同学習値に基づいて吸入空気量を調節する。機関運転領域がアイドル運転領域を内包する特定運転領域であるとの条件を含む所定の停止条件が成立したときに内燃機関を一時的に自動停止させるとともに所定の再始動条件が成立したときに内燃機関を再始動させる自動停止始動機能を有する。特定運転領域以外の領域における通路吸気量GAを検出するとともにその基準値GATAとの差ΔGAを算出し(S303)、同差ΔGAに基づいて学習値の学習を実行する(S304〜S309)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の自動停止および自動始動を行う自動停止始動機能とアイドル運転時における安定運転が実現される機関制御量を学習する学習機能とを実行する内燃機関の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、燃料消費量やエミッションの低減を図るために、交差点等で車両が走行停止したときに内燃機関を自動停止させるとともに、同自動停止中における任意のタイミングで内燃機関を自動始動させて車両を発進可能とする制御、いわゆる自動停止始動制御を実行することが提案され、実用されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、車載内燃機関のアイドル運転時において、その出力軸の回転速度(機関回転速度)についての目標速度を設定するとともに同目標速度と実際の機関回転速度とが一致するように吸入空気量や燃料噴射量等の機関制御量をフィードバック制御する、いわゆるアイドルスピードコントロール(ISC)制御が実用されている。このISC制御では、その目標回転速度として、アイドル運転時における内燃機関の安定運転が保たれる条件の下で極力低い回転速度が設定される。これにより、アイドル運転時における内燃機関の安定運転を維持しつつ、機関騒音や燃料消費率が極力抑制される。
【0004】
さらに、ISC制御の実行中における機関制御量を学習する学習制御を実行することも提案されている。この学習制御を通じて学習した機関制御量(ISC学習値)をアイドル運転領域やそれ以外の運転領域において用いることにより、内燃機関の個体差や経時変化によらず、機関制御量が精度良く調節されるようになる。
【特許文献1】特開2006−46103号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動停止始動制御が実行される内燃機関では、アイドル運転される状況において内燃機関の運転が自動停止されるために、学習制御を通じてISC学習値を学習する機会がごく少なくなってしまい、同ISC学習値が実態に即した値と懸け離れた値になってしまうおそれがある。
【0006】
そうした不都合の発生を抑えるために、定期的に、自動停止始動制御による内燃機関の自動停止を禁止した上でISC学習値の学習を実行することが考えられる。しかしながら、この場合には内燃機関が自動停止される機会が少なくなるため、その分だけ内燃機関の燃料消費量を低減する効果が低くなってしまう。
【0007】
なお、上述したISC制御や学習制御が実行される装置に限らず、アイドル運転時において内燃機関を安定運転することの可能な機関制御量(学習値)を学習する学習制御が実行される装置であれば、こうした実情は概ね共通している。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、自動停止始動機能による燃料消費量の低減と学習機能による機関運転状態の安定化との好適な両立を図ることのできる内燃機関の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について説明する。
請求項1に記載の発明は、アイドル運転時に内燃機関を安定運転することの可能な機関制御量についての学習値を学習する学習手段と、前記学習値に基づき前記機関制御量を調節する調節手段と、機関運転領域がアイドル運転領域を内包する特定運転領域であるとの条件を含む所定の停止条件が成立したときに前記内燃機関を一時的に自動停止させるとともに所定の再始動条件が成立したときに同内燃機関を再始動させる自動停止始動手段とを備える内燃機関の制御装置において、前記機関制御量の実際値を検出する検出手段を有し、前記学習手段は、前記学習値の学習を、前記特定運転領域以外の領域における前記実際値と予め定められた基準値との乖離度合いに基づき実行することをその要旨とする。
【0010】
上記構成によれば、アイドル運転時に内燃機関を安定運転することの可能な機関制御量についての学習値を、特定運転領域以外の領域、換言すればアイドル運転領域以外の運転領域における機関制御量に基づいて学習することができる。これにより、学習値を学習するために内燃機関の自動停止を禁止する必要がなくなるために、内燃機関の自動停止の実行頻度を高く維持することが可能になり、自動停止始動機能によって燃料消費量を好適に低減させることができるようになる。
【0011】
しかも、内燃機関のアイドル運転領域以外の領域における機関制御量に基づいて上記学習値が学習されるとはいえ、機関制御量の実際値と予め定められた基準値との乖離度合いに基づいて同乖離を抑えることの可能な機関制御量、言い換えればアイドル運転時において内燃機関を安定運転するのに適した機関制御量の補正量を求めて、これをもとに学習値を学習することができる。そのため、学習値による学習機能によって機関運転状態を好適に安定させることができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の内燃機関の制御装置において、当該制御装置は前記内燃機関の運転状態と前記基準値との関係を予め記憶してなり、前記学習手段は前記内燃機関の運転状態に基づいて前記関係から前記基準値を求めることをその要旨とする。
【0013】
上記構成によれば、予め定められた関係をもとに内燃機関の運転状態に基づいて基準値が算出されるために、広い運転領域にわたって精度良く学習値を学習することができるようになる。
【0014】
なお前記機関制御量としては、燃料噴射量の他、請求項3によるように、吸入空気量を採用することができる。
また、前記機関制御量として吸入空気量が採用される構成は、請求項4によるように、吸気通路の通路断面積を変更するスロットルバルブが設けられた内燃機関に適用されて、吸気通路における前記スロットルバルブより吸気流れ方向上流側に設けられたエアフローメータが前記検出手段として機能し、内燃機関の運転状態としてスロットルバルブの開度および機関回転速度が採用される装置に適用することができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の内燃機関の制御装置において、前記学習手段は、前記スロットルバルブの開度が所定開度より小さいとの実行条件の成立時に検出した前記実際値とその前記基準値とに基づいて前記乖離度合いを求めるものであることをその要旨とする。
【0016】
通常、内燃機関がアイドル運転領域であるときとそれ以外の運転領域であるときとでは、スロットルバルブの開度が異なる開度に設定され、機関制御量が異なる量に調節される。そのため、上述のようにアイドル運転時に内燃機関を安定運転することの可能な機関制御量についての学習値をアイドル運転領域以外の領域であるときの機関制御量に基づいて学習する場合、機関運転領域が、上記学習値が実際に適用されるとき(適用時)と同学習値の学習のために機関制御量の実際値を検出するとき(検出時)とで異なる領域になる。したがって、そうした機関運転領域の相違に起因して適用時と検出時とで機関制御量が異なる量になり、その分だけ、学習値をアイドル運転領域であるときの機関制御量に基づいて学習する場合と比較して、学習値の学習精度の低下を招き易いと云える。
【0017】
この点、上記構成によれば、スロットルバルブの開度が所定開度より小さいとき、言い換えれば、機関運転領域の相違に起因する機関制御量の相違分が少ないときに検出した機関制御量の実際値に基づいて上記学習値を学習することができ、同学習を精度良く実行することができる。
【0018】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の内燃機関の制御装置において、前記学習手段は、前記乖離度合いが所定値より大きいことを条件に、前記学習値の更新を許可することをその要旨とする。
【0019】
上記構成によれば、内燃機関の運転状態が不安定化する可能性が高くなったときに限って学習値を更新することができるようになり、同学習値の更新頻度を抑えつつ内燃機関の運転状態の不安定化を的確に抑えることができるようになる。
【0020】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の内燃機関の制御装置において、前記学習手段は、前記学習値の更新に合わせて、その更新量に相当する分だけ前記所定値を変更することをその要旨とする。
【0021】
上記構成によれば、内燃機関の運転状態の不安定化を抑えるべく学習値を一旦更新した後に、前記乖離度合いが更に大きくなったことをもって学習値を再度更新するといったように、同乖離度合いの増大に合わせて学習値を繰り返し更新することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を具体化した一実施の形態にかかる内燃機関の制御装置について説明する。
図1に、本実施の形態にかかる制御装置が適用される内燃機関の概略構成を示す。
【0023】
同図1に示すように、内燃機関10の吸気通路11にはその通路断面積を変更するためのスロットルバルブ12が設けられている。スロットルバルブ12には、スロットルモータ13が連結されている。そして、このスロットルモータ13の駆動制御(スロットル制御)を通じてスロットルバルブ12の開度(スロットル開度TA)が調節され、これにより吸気通路11を通じて燃焼室14内に吸入される空気の量が調節される。また、上記吸気通路11には燃料噴射バルブ15が設けられている。この燃料噴射バルブ15の駆動制御(燃料噴射制御)を通じて吸気通路11内に燃料が噴射される。
【0024】
内燃機関10には、その燃焼室14内部の吸入空気と噴射燃料とからなる混合気に対して点火を行うための点火プラグ16が設けられている。この点火プラグ16にはイグナイタ17が接続されている。点火プラグ16は、イグナイタ17から出力される高電圧が印加されることによって作動する。このイグナイタ17の作動制御(点火時期制御)を通じて適宜のタイミングで混合気が燃焼してピストン18が往復移動し、内燃機関10の出力軸としてのクランクシャフト19が回転する。そして、燃焼後の混合気は排気として燃焼室14から排気通路20に送り出される。
【0025】
内燃機関10において、吸気通路11と燃焼室14との間は吸気バルブ21の開閉動作によって連通・遮断される。そして、この吸気バルブ21はクランクシャフト19の回転が伝達される吸気カムシャフト22の回転に伴って開閉動作する。一方、内燃機関10の燃焼室14と排気通路20との間は排気バルブ23の開閉動作によって連通・遮断される。そして、排気バルブ23はクランクシャフト19の回転が伝達される排気カムシャフト24の回転に伴って開閉動作する。
【0026】
図2に、上記内燃機関10が搭載される車両の概略構成を示す。
同図2に示すように、車両30では、その駆動源としての内燃機関10のクランクシャフト19が、同クランクシャフト19の端部に固定されたフライホイール31、並びに運転者によるクラッチペダル32の操作に応じて同フライホイール31と変速機33との接続を断接するクラッチ34を介して変速機33に連結されている。また、変速機33の出力軸であるプロペラシャフト35は、ディファレンシャルギヤ36を介して、車輪37が装着されたドライブシャフト38に接続されている。
【0027】
変速機33は、クランクシャフト19の駆動力を車輪37側へ伝達しないニュートラル状態とクランクシャフト19の駆動力を車輪37側へ伝達する伝達状態とを運転者によるシフトレバー39の操作によって切換可能な多段式の手動変速機である。具体的には、クランクシャフト19の駆動力が車輪37側に伝達されないニュートラル(N)位置、クランクシャフト19の回転が変速された上で車輪37側に伝達される前進変速位置(1速〜5速)、クランクシャフト19の回転が反転された上で車輪37側に伝達される後進変速位置のいずれかのシフト位置が、運転者によるシフトレバー39の操作によって選択される。
【0028】
そして、車両30を走行させるべく内燃機関10によってクランクシャフト19に回転力が出力されて且つ変速機33が伝達状態(前進変速位置または後進変速位置)であるときには、フライホイール31と変速機33とがクラッチ34により連結される。これにより、クランクシャフト19の回転力が、クラッチ34を介して変速機33、プロペラシャフト35、ディファレンシャルギヤ36、ドライブシャフト38を順に経て、最終的に車輪37に伝達される。
【0029】
車両30にはトルクを発生するスタータモータ40が設けられている。このスタータモータ40は内燃機関10の始動時に駆動されて、その回転力がクランクシャフト19に伝達される。これにより、内燃機関10の始動が補助されるようになる。
【0030】
車両30は、その運転状態や内燃機関10の運転状態を検出するための各種センサ類を備えている。そうしたセンサ類としては、例えば内燃機関10(図1)のクランクシャフト19の回転速度(機関回転速度NE)を検出するためのクランクセンサ51や、吸気通路11における前記スロットルバルブ12より吸気流れ方向上流側に設けられて同吸気通路11を通過する空気の量(通路吸気量GA)を検出するためのエアフローメータ52が設けられている。また、アクセルペダル41の踏み込み量ACを検出するためのアクセルセンサ53や、スロットル開度TAを検出するためのスロットルセンサ54、機関冷却水の温度(冷却水温THW)を検出するための温度センサ55が設けられている。その他、クラッチペダル32の踏み込みの有無を検出するためのクラッチセンサ58や、ブレーキペダル42の踏み込みの有無を検出するためのブレーキセンサ59、車両30の走行速度(車速SPD)を検出するための速度センサ60等も設けられている。
【0031】
また車両30には、例えばマイクロコンピュータを有して構成される電子制御装置50が設けられている。この電子制御装置50は、センサ類の検出信号を取り込むとともに各種の演算を行い、その演算結果に基づいてスロットル制御や、燃料噴射制御、点火時期制御などの各種制御を実行する。
【0032】
本実施の形態では、内燃機関10の燃焼室14(図1)に吸入される空気の量(筒内吸気量)が次のように調節される。すなわち先ず、そのときどきのアクセルペダル41の踏み込み量AC、機関回転速度NE、および後述するISC学習値GKに基づいて筒内吸気量についての制御目標値(要求筒内吸気量Tga)が算出される。次に、スロットル開度TAについての制御目標値(目標スロットル開度Tta)として、要求筒内吸気量Tgaと実際の筒内吸気量とが一致するようになる値が算出される。
【0033】
そして、目標スロットル開度Ttaと実際のスロットル開度TAとが一致するように、スロットルモータ13の駆動が制御される。こうしたスロットル制御を通じて、内燃機関10の燃焼室14に吸入される空気の量が運転状態に見合う量に調節される。
【0034】
なお本実施の形態では、上記要求筒内吸気量Tgaとして、ISC学習値GKに応じた基本吸気量にアクセルペダル41の踏み込み量ACに応じた加算吸気量を加算した値が算出される。基本吸気量はアクセルペダル41が踏み込まれていない場合において内燃機関10の安定運転が可能になる筒内吸気量に相当する値であり、加算吸気量はアクセルペダル41の踏み込みによって増量するべき筒内吸気量に相当する値である。本実施の形態では、筒内吸気量の調節にかかる処理が調節手段として機能する。
【0035】
車両30(図2)は、交差点等で車両30が停止したときに内燃機関10を自動停止させるとともに同自動停止中における任意のタイミングで内燃機関10を自動始動して車両30を発進可能とさせる自動停止始動機能を備えている。この自動停止始動機能により、内燃機関10の燃料消費量やエミッションの低減が図られるようになっている。
【0036】
以下、内燃機関10を自動停止させる処理(自動停止処理)および内燃機関10を自動始動させる処理(再始動処理)について、図3および図4を参照して説明する。本実施の形態では、これら自動停止処理および再始動処理が自動停止始動手段として機能する。
【0037】
なお、図3は自動停止処理の処理手順を示すフローチャートであり、図4は再始動処理の処理手順を示すフローチャートである。また、これらフローチャートに示される一連の処理は、それぞれ所定周期毎の割り込み処理として、電子制御装置50により実行される。
【0038】
ここでは先ず、図3を参照して、自動停止処理の処理手順を説明する。
同図3に示すように、この処理では先ず、上記各種のセンサ類の検出信号を通じて車両30や内燃機関10の運転状態が読み込まれるとともに(ステップS101)、その運転状態から自動停止条件が成立したか否かが判断される(ステップS102)。具体的には、例えば以下の各条件(イ)〜(ト)が全て満たされたことをもって、自動停止条件が成立したと判断される。
(イ)車両30が停止していること。
(ロ)内燃機関10の暖機が完了していること(冷却水温THWが水温下限値より高いこと)。
(ハ)アクセルペダル41が踏み込まれていないこと。
(ニ)ブレーキペダル42が踏み込まれていること。
(ホ)クラッチペダル32が踏み込まれていること。
(ヘ)シフトレバー39の操作位置が(N)位置であること。
(ト)上記条件(イ)〜(ト)の全てが満たされた後において、内燃機関10の自動停止が実行された履歴がないこと。
【0039】
上記条件(イ)〜(ト)のいずれか一つでも満足されていない場合には(ステップS102:NO)、自動停止条件が成立しておらず、内燃機関10の自動停止を実行する条件下にないとして、本処理は一旦終了される。
【0040】
その後、交差点にて車両30が停止する等して上記自動停止条件が成立したと判断されるようになると(ステップS102:YES)、例えば内燃機関10への燃料供給が停止される等して内燃機関10の運転が停止される(S103)。そしてその後、本処理は一旦終了される。
【0041】
このように本実施の形態では、条件(イ)〜(ト)の全てが満たされることをもって機関運転状態が特定運転領域であるとの条件を含む自動停止条件が成立していると判断され、この判断のもとに内燃機関10の運転が自動停止される。なお、条件(イ)〜(ト)から明らかなように、上記特定運転領域は内燃機関10のアイドル運転領域を含んでいる。
【0042】
次に、図4を参照して、再始動処理の処理手順を説明する。
同図4に示すように、この処理では先ず、上記各種のセンサ類の検出信号を通じて車両30や内燃機関10の運転状態が読み込まれるとともに(ステップS201)、その運転状態から再始動条件が成立したか否かが判断される(ステップS202)。具体的には、上述した自動停止処理を通じて内燃機関10が停止状態にあるとの条件下において、上記各条件(イ)〜(ヘ)のうちの1つでも満足されなくなった場合に再始動条件が成立したと判断される。
【0043】
そして、内燃機関10が自動停止されていない場合、あるいは内燃機関10が自動停止されている場合であっても上記各条件(イ)〜(ヘ)の全てが満足されている場合には(ステップS202:NO)、再始動条件が成立しておらず、内燃機関10の再始動を実行する条件下にないとして、本処理は一旦終了される。
【0044】
その後、内燃機関10の自動停止状態において上記各条件(イ)〜(ヘ)の一つでも満足されなくなると(ステップS202:YES)、再始動条件が成立したとして、内燃機関10を再始動させる処理が実行される(ステップS203)。具体的には、スタータモータ40が駆動されて内燃機関10のクランキングが実行されるとともに周知の燃料噴射制御や点火時期制御が実行されて、内燃機関10が再始動される。そしてその後、本処理は一旦終了される。
【0045】
本実施の形態では、前述したISC学習値GKとして、アイドル運転時において内燃機関10を安定運転することの可能な吸入空気量(詳しくは、筒内吸気量)についての学習値が算出される。
【0046】
通常、ISC学習値GKの学習は、内燃機関10のアイドル運転時における吸入空気量に基づいて実行される。本実施の形態では、自動停止始動機能による内燃機関10の自動停止が、同内燃機関10の運転領域がアイドル運転領域を含む特定運転領域であることを条件に実行される。そのため、内燃機関10のアイドル運転時における吸入空気量に基づいてISC学習値GKを学習するようにすると、同吸入空気量の検出機会、ひいてはISC学習値GKの学習機会がごく少なくなってしまい、ISC学習値GKが実態に即した値と懸け離れた値になってしまうおそれがある。
【0047】
そこで本実施の形態では、ISC学習値GKの学習を、機関運転領域が特定運転領域以外の運転領域であるときの吸入空気量に基づき実行するようにしている。これにより、アイドル運転時に内燃機関10を安定運転することが可能になるISC学習値GKが、特定運転領域以外の運転領域、換言すればアイドル運転領域以外の運転領域における吸入空気量に基づいて学習されるようになる。そのため、ISC学習値GKを学習するために内燃機関10の自動停止を禁止する必要がなくなり、同内燃機関10の自動停止の実行頻度が高く維持されて、自動停止始動機能によって燃料消費量が好適に低減されるようになる。
【0048】
ここで、内燃機関10のアイドル運転時における吸入空気量と特定運転領域以外の運転領域であるときの吸入空気量とは高い相関を有する。そのため、それら吸入空気量の関係を実験やシミュレーションの結果等に基づいて予め求めておくことにより、特定運転領域以外の運転領域であるときの吸入空気量に基づいて、アイドル運転領域であるときの吸入空気量を精度良く求めることが可能である。
【0049】
こうしたことから、本実施の形態では内燃機関10のアイドル運転領域以外の領域における吸入空気量に基づいてISC学習値GKが学習されるとはいえ、吸入空気量の実際値(本実施の形態では、通路吸気量GA)に基づいて、アイドル運転時において内燃機関10を安定運転するのに適した吸入空気量の補正量を求めることができ、その補正量をもとにISC学習値GKを学習することができる。そのため、ISC学習値GKによる学習機能によって機関運転状態を好適に安定させることができるようになる。
【0050】
なお本実施の形態では、ISC学習値GKは基本値GKbと補正量GKkとからなり、基本値GKbと補正量GKkとを加算した値がISC学習値GK(=GKb+GKk)として求められる。基本値GKbは、内燃機関10の吸気系部品(例えば、吸気通路11やスロットルバルブ12など)の個体差に起因する筒内吸気量とその基準量との差を補償するための値であり、工場出荷前において車両30に接続される外部機器の操作を
通じて求められるとともに電子制御装置50(詳しくは、その不揮発性のメモリ50a)に予め記憶されている。補正量GKkは、内燃機関10の吸気系部品の経時変化に起因する筒内吸気量とその基準量との差を補償するための値であり、以下の学習処理を通じて学習される。本実施の形態では、この学習処理が学習手段として機能する。
【0051】
以下、上記学習処理の実行手順について説明する。
図5は学習処理の具体的な処理手順を示すフローチャートを示しており、図6は学習処理の実行態様の一例を示すタイミングチャートを示している。なお図5のフローチャートに示される一連の処理は所定周期毎の処理として電子制御装置50により実行される。
【0052】
図5に示すように、この処理では先ず、実行条件が成立しているか否かが判断される(ステップS301)。ここでは、以下の条件が全て満たされていることをもって実行条件が成立していると判断される。
・内燃機関10が自動停止処理を通じて自動停止されていないこと。
・スロットル開度TAが所定開度より小さいこと(具体的には、スロットル開度TAがアイドル運転状態であるときの開度「アイドル開度」に相当する開度であること)。
【0053】
そして、上記実行条件が未成立である場合には(ステップS301:NO)、実行条件が未成立になった直後でない限り(ステップS306:NO)、以下の処理(ステップS302〜S305,S307〜S311)が実行されることなく、本処理は一旦終了される。
【0054】
図6に示す例では、時刻t1より前において、スロットル開度TAが大きく通路吸気量GAが多い状態で車両30が走行しており、上記実行条件が成立していないために、以下の処理が実行されない。そして、そうした車両30の走行中においてアクセルペダル41の踏み込みが解除されると、スロットル開度TAがごく小さい開度(アイドル開度)になり、これにより実行条件が成立して(時刻t1以降)、以下の処理の実行が開始される。
【0055】
すなわち学習処理の実行が繰り返されて上記実行条件が成立すると(図5のステップS301:YES)、先ず、スロットル開度TAおよび機関回転速度NEに基づいてマップから、通路吸気量GAについての基準値GATAが求められる(ステップS302)。なお基準値GATAとしては、基準となる特性を有する内燃機関10にあってその吸気系部品が経時変化していないと仮定したときの通路吸気量GAに相当する値が求められる。上記マップには、そうした基準値GATAと、スロットル開度TAおよび機関回転速度NEにより定まる機関運転状態との関係が実験結果などから求められて設定されている。このマップは電子制御装置50(具体的には、そのROM)に予め記憶されている。このように本実施の形態では、内燃機関10の運転状態に基づいてマップから基準値GATAが算出されるために、広い運転領域にわたって精度良く基準値GATAを算出することができるようになる。
【0056】
次に、基準値GATAと実際の通路吸気量GAとの差ΔGA(=GATA−GA)が算出されるとともに(ステップS303)、実行条件の成立が継続している期間における同差ΔGAの平均値ΔGAaveが算出される(ステップS304)。
【0057】
また、上記差ΔGAが算出されるタイミングにおける機関回転速度NEについての、上記実行条件の成立が継続している期間における平均値NEaveが算出される(ステップS305)。こうした処理の後、本処理は一旦終了される。
【0058】
ここで、内燃機関10がアイドル運転領域であるときとそれ以外の運転領域であるときとでは、スロットル開度TAが異なる開度に設定され、吸入空気量が異なる量に調節される。
【0059】
本実施の形態のようにISC学習値GKをアイドル運転領域以外の領域であるときの吸入空気量に基づいて学習する場合、機関運転領域が、ISC学習値GKが実際に適用されるとき(適用時)と同ISC学習値GKの学習のために吸入空気量の実際値(通路吸気量GA)を検出するとき(検出時)とで異なる領域になる。そのため、そうした機関運転領域の相違に起因して吸入空気量が適用時と検出時とで異なる量になり、その分だけ、ISC学習値GKをアイドル運転領域であるときの吸入空気量に基づいて学習する場合と比較して、ISC学習値GKの学習精度の低下を招き易いと云える。
【0060】
本実施の形態では、実行条件の成立をもって、スロットル開度TAが小さいこと、言い換えれば、機関運転領域の相違に起因する吸入空気量の相違分が小さい機関運転領域であることが判断され、そうした機関運転領域であるときに検出した通路吸気量GAに基づいて前記差ΔGAが求められる。これにより、上記差ΔGAとしてISC学習値GKの学習精度の低下を招き難い値を算出することが可能になる。
【0061】
こうしたステップS302〜S305の処理は、実行条件の成立が継続している間(ステップS301:YES)、繰り返し実行される。
その後、実行条件が不成立になると(ステップS301:NO、且つステップS306:YES)、差ΔGAの平均値ΔGAaveおよび機関回転速度NEの平均値NEaveに基づいてマップから、換算値GAcnが算出される(ステップS307)。
【0062】
ここでは、機関回転速度NEが基準回転速度NEbであるときにおける差ΔGAの平均値ΔGAaveに相当する値になるように同平均値ΔGAaveを換算した値が、換算値GAcnとして算出される。上記マップには、そのように換算値GAcnが算出されるようになる関係(具体的には、上記差ΔGAの平均値ΔGAaveと機関回転速度NEの平均値NEaveと換算値GAcnとの関係)が実験やシミュレーションの結果等に基づいて求められて設定されており、同マップは電子制御装置50(具体的には、そのROM)に予め記憶されている。なお、基準回転速度NEbとしては、基準となる特性を有する内燃機関10のアイドル運転時における標準的な機関回転速度NE(例えば、650回転/分)が設定されている。
【0063】
次に、換算値GAcnが関係式「上限値MAX>換算値GAcn>下限値MIN」を満たす値であるか否かが判断される(ステップS308)。ここでは、上記関係式が満たされることをもって、現状の補正量GKkと換算値GAcnとの差が所定量(本実施の形態では、同補正量GKkの1%に相当する量)未満であると判断される。
【0064】
そして、上記関係式が満たされない場合(ステップS308:NO)、すなわち「上限値MAX≦換算値GAcn」あるいは「換算値GAcn≦下限値MIN」である場合には上記差ΔGAが大きくなっており、内燃機関10の吸気系部品の経時変化による筒内吸気量の変化が進んでいるとして、このときの換算値GAcnが補正量GKkとして記憶される(ステップS309)。
【0065】
その後、ステップS309の処理における補正量GKkの更新量(具体的には「更新後の補正量GKk」−「更新前の補正量GKk」)を上限値MAXおよび下限値MINそれぞれに加算した値が新たな上限値MAXおよび下限値MINとして算出される(ステップS310)。そして、差ΔGAの平均値ΔGAaveおよび機関回転速度NEの平均値NEaveが共に「0」にリセットされた後(ステップS311)、本処理は一旦終了される。
【0066】
図6に示す例は、換算値GAcnと上限値MAXとが等しくなった場合における学習処理の実行態様を示している。図6に示す例では、実行条件が不成立になると(時刻t2)、このとき求められた換算値GAcnが補正量GKkとして記憶されるとともに、上限値MAXおよび下限値MINが補正量GKkの更新量(図中に「A」で示す量)だけ変更される。
【0067】
一方、上記関係式が満たされる場合には(図5のステップS308:YES)、上記差ΔGAが小さく、内燃機関10の吸気系部品の経時変化による筒内吸気量の変化がさほど進んでいないとして、補正量GKkを更新する処理(ステップS309)や上限値MAXおよび下限値MINを変更する処理(ステップS310)が実行されない(ジャンプされる)。そして、差ΔGAの平均値ΔGAaveおよび機関回転速度NEの平均値NEaveが「0」にリセットされた後(ステップS311)、本処理は一旦終了される。
【0068】
このように本実施の形態では、通路吸気量GAと基準値GATAとの乖離度合いが所定値以上であることを条件に、具体的には換算値GAcnが上限値MAX以上であること或いは下限値MIN以下であることを条件に、補正量GKkの更新が許可される。そのため、内燃機関10の吸気系部品の経時変化による筒内吸気量の変化が進んで内燃機関10の運転状態が不安定化する可能性が高くなったときに限って補正量GKkが更新されるようになり、同補正量GKkの更新頻度が抑えられつつ内燃機関10の運転状態の不安定化が的確に抑えられるようになる。
【0069】
また本実施の形態では、補正量GKkが更新された場合に、その更新に合わせて同補正量GKkの更新量と等しい量だけ上限値MAXおよび下限値MINが変更される。そのため、上限値MAXおよび下限値MINに基づく処理を通じて換算値GAcnが許容量以上変化したと一旦判断された後において、その判断に合わせて変更された上限値MAXおよび下限値MINに基づく処理を通じて換算値GAcnが更に変化したと判断することができるようになる。したがって、内燃機関10の運転状態の不安定化を抑えるべく補正量GKkを一旦更新した後に前記換算値GAcnが更に変化したことをもって補正量GKkを再度更新するといったように、同換算値GAcnの変化に合わせて補正量GKkを繰り返し更新することができるようになる。
【0070】
そして、前記実行条件が不成立になった直後において補正量GKkの更新にかかる処理が実行された後においては(ステップS301:NO、且つステップS306:NO)、ステップS307〜S311の処理が実行されず(ジャンプされ)、本処理は一旦終了される。
【0071】
本実施の形態の学習処理では、補正量GKkの更新が、前記特定運転領域以外の領域における通路吸気量GAとその基準値GATAとの差ΔGAに基づき実行される。そのため、補正量GKkの更新、ひいてはISC学習値GKの学習を特定運転領域以外の運転領域、換言すればアイドル運転領域以外の運転領域における通路吸気量GAに基づいて実行することができるようになる。これにより、ISC学習値GKを学習するために内燃機関10の自動停止を禁止する必要がなくなるために、内燃機関10の自動停止の実行頻度を高く維持することが可能になり、自動停止始動機能によって燃料消費量を好適に低減させることができるようになる。
【0072】
しかも、内燃機関10のアイドル運転領域以外の領域における吸入空気量に基づいてISC学習値GKが学習されるとはいえ、通路吸気量GAと予め定められた基準値GATAとの差ΔGAに基づいて同差ΔGAを抑えることの可能な補正量、言い換えればアイドル運転時において内燃機関10を安定運転するのに適した補正量を求めて、これをもとにISC学習値GK(詳しくは、補正量GKk)を学習することができる。そのため、ISC学習値GKによる学習機能によって機関運転状態を好適に安定させることができる。
【0073】
以上説明したように、本実施の形態によれば、以下に記載する効果が得られるようになる。
(1)自動停止始動機能によって燃料消費量を好適に低減させることができ、ISC学習値GKによる学習機能によって機関運転状態を好適に安定させることができる。
【0074】
(2)予め記憶されているマップをもとにスロットル開度TAおよび機関回転速度NEに基づいて基準値GATAを算出するようにしたために、広い運転領域にわたって精度良く基準値GATAを算出することができるようになり、ひいてはISC学習値GKを学習することができるようになる。
【0075】
(3)スロットル開度TAが小さいとき、言い換えれば、機関運転領域の相違に起因する吸入空気量の相違分が小さい機関運転領域であるときに検出した通路吸気量GAに基づいて前記差ΔGAを求めるようにした。そのため、同差ΔGAとしてISC学習値GKの学習精度の低下を招き難い値を算出することができ、ISC学習値GKを精度良く学習することができるようになる。
【0076】
(4)換算値GAcnが上限値MAX以上であること或いは下限値MIN以下であることを条件に、補正量GKkの更新を許可するようにした。そのため、内燃機関10の吸気系部品の経時変化による筒内吸気量の変化が進んで内燃機関10の運転状態が不安定化する可能性が高くなったときに限って補正量GKkを更新することができ、同補正量GKkの更新頻度を抑えつつ内燃機関10の運転状態の不安定化を的確に抑えることができる。
【0077】
(5)補正量GKkが更新された場合に、その更新に合わせて同補正量GKkの更新量と等しい量だけ上限値MAXおよび下限値MINを変更するようにした。そのため、内燃機関10の運転状態の不安定化を抑えるべく補正量GKkを一旦更新した後に前記換算値GAcnが更に変化したことをもって補正量GKkを再度更新するといったように、同換算値GAcnの変化に合わせて補正量GKkを繰り返し更新することができるようになる。
【0078】
なお、上記実施の形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・基準値GATAの算出パラメータとして、スロットル開度TAを用いることに代えて、目標スロットル開度Ttaを用いるようにしてもよい。また、目標スロットル開度Ttaの算出パラメータ(具体的には、アクセルペダル41の踏み込み量ACや、機関回転速度NE、ISC学習値GK、要求筒内吸気量Tga)を、基準値GATAの算出パラメータとして用いることも可能である。要は、内燃機関10の運転状態に基づいて精度良く基準値GATAを求めることができればよい。
【0079】
・差ΔGAの平均値ΔGAaveや機関回転速度NEの平均値NEaveを算出する期間は、実行条件の成立が継続されている期間に限らず、任意に変更することができる。この場合、上記期間が終了したときに各平均値ΔGAave,NEaveに基づく補正量GKkの更新を実行するようにすればよい。
【0080】
・差ΔGAの平均値ΔGAaveや機関回転速度NEの平均値NEaveを算出することに代えて、例えば「{「前回算出された徐変値」×(N−1)+「今回検出された値」}/N」などの計算式を通じて、差ΔGAが算出される度に同差ΔGAや機関回転速度NEの徐変値を算出するようにしてもよい。この場合には、任意のタイミングで、差ΔGAの徐変値および機関回転速度NEの徐変値に基づいて補正量GKkを更新するようにすればよい。
【0081】
・差ΔGAの平均値ΔGAaveや機関回転速度NEの平均値NEaveを算出することなく、通路吸気量GAと基準値GATAとの差ΔGA、および通路吸気量GAの検出時における機関回転速度NEに基づいて、補正量GKkを更新するようにしてもよい。
【0082】
・差ΔGAが算出される度に機関回転速度NEが基準回転速度NEbであるときの差ΔGAに相当する値になるように同差ΔGAを変換し、その変換した値の平均値を換算値として求めるようにしてもよい。
【0083】
・前記適用時および検出時の機関運転領域の相違に起因する吸入空気量の相違分によるISC学習値GKの学習精度の低下が適切に抑えられるのであれば、実行条件における「スロットル開度TAが所定開度より小さいこと」との条件を省略してもよい。
【0084】
・実行条件として、スロットルバルブ12を通過することなく燃焼室14に流入するガスの量が少ないこと」との条件を新たに追加して設定するようにしてもよい。ここで、スロットル開度TAが同一であっても、スロットルバルブ12を通過することなく燃焼室14に流入するガス(例えば排気通路20や燃焼室14から吸気通路11に戻される燃焼後のガス[EGRガス])の量が異なると、内燃機関10の吸入空気量も異なる量になる。一般に、そうしたガスの燃焼室14への流入量を精密に調量することは困難であるために、同ガスが燃焼室14に流入する状況で検出した吸入空気量の実際値は、そのときどきの機関運転状態に見合う値との間に誤差を生じ易い値になってしまう。この点、上記構成によれば、燃焼室14に流入する上記ガスの量が少ないとき、言い換えれば、同ガスの流入に起因する上記誤差が小さいときに検出した実際値に基づいて前記差ΔGAを求めることができ、同差ΔGAを精度良く求めることができる。なお、そうした条件としては、例えば以下の「条件イ」〜「条件ハ」を設定することができる。
「条件イ」吸気バルブ21の開弁時期を変更する変更機構や排気バルブ23の閉弁時期を変更するバルブ特性変更機構が設けられた内燃機関において、吸気バルブ21と排気バルブ23とが共に開弁される期間(バルブオーバラップ期間)が所定期間より短いこと。
「条件ロ」排気通路20および吸気通路11を連通するEGR通路と同EGR通路に設けられてその通路断面積を変更するEGRバルブとを備えた外部EGR機構を有する内燃機関において、EGRバルブの開度が所定開度(例えば、0[=閉弁])以下であること。
「条件ハ」変更機構や外部EGR機構を備えた内燃機関が搭載された車両にあって、同車両が減速走行中であること(具体的には、車速SPDの低下速度が所定速度以上であること)。なお、車両の走行中においてアクセルペダル41の踏み込みが解除されると、スロットル開度TAがごく小さい開度(前記アイドル開度)になり、筒内吸気量が少なくなって車速SPDが低下する。また、このときには通常、上記バルブ特性変更機構が設けられた内燃機関ではバルブオーバラップ期間が短くなるように同バルブ特性変更機構の作動が制御され、外部EGR機構が搭載された内燃機関ではEGRバルブの開度が小さい開度に調節されて、EGR量がごく少なくなる。したがって「条件ハ」を採用することにより、そのようにEGR量が少ないこと、すなわちスロットルバルブ12を通過することなく燃焼室14に流入するガスの量が少ないことを判断することができる。
【0085】
・通路吸気量GAと基準値GATAとの差ΔGAを算出することに代えて、通路吸気量GAと基準値GATAとの比Rgaを算出するようにしてもよい。要は、差ΔGAや比Rgaなどの通路吸気量GAと基準値GATAとの乖離度合いに相当する値を求めることができればよい。こうした構成によっても、上記乖離度合いに基づいて換算値を算出するとともに同換算値に基づいて補正量を更新することができ、ISC学習値GKを学習することができる。
【0086】
・ISC学習値として、基本値と補正量とを乗算した値を求めるようにしてもよい。この場合にも、上記実施の形態に準じたかたちで、通路吸気量GAと基準値GATAとの乖離度合いに基づいて補正量を更新するようにすればよい。
【0087】
・基本値GKbの学習方法は任意に変更可能である。具体的には、アイドルスピードコントロール(ISC)制御の実行中において吸入空気量についての学習値を学習する周知の学習方法や、上述した補正量を更新する方法などを採用することができる。
【0088】
・基本値GKbを学習するタイミングは、車両30の工場出荷前に限らず、車両30の工場出荷後でもよい。この場合、基本値GKbの学習が完了するまでの間、補正量GKkの更新を禁止することが望ましい。
【0089】
・基本値GKbを省略して補正量GKkをISC学習値GKとしてもよい。同構成によっても、ISC学習値GKの学習を通じて、内燃機関10の吸気系部品の個体差および経時変化に起因する筒内吸気量とその基準量との差を補償することができる。
【0090】
・自動停止条件は、機関運転領域がアイドル運転領域を内包する特定運転領域であるとの条件を含むのであれば、適宜変更可能である。
・本発明は、自動変速機が設けられた車両にも適用可能である。
【0091】
・本発明は、内燃機関が自動停止されないアイドル運転時においてISC制御が実行される制御装置にも適用することができる。
・本発明は、吸入空気量についての学習値をISC学習値として学習する装置に限らず、燃料噴射量についての学習値をISC学習値として学習する装置にも適用することができる。この場合には、次のようにISC学習値の学習を実行すればよい。すなわち先ず、特定運転領域以外の運転領域において実行された燃料噴射制御における燃料噴射バルブの開弁時間に基づき燃料噴射量についての基準値を求める。これに合わせて、排気通路に設けられた空燃比センサを通じて検出される混合気の空燃比や吸気量センサを通じて検出される通路吸気量に基づいて燃料噴射量についての実際値を算出する。そして、それら燃料噴射量の実際値と基準値との乖離度合いに基づいてISC学習値の学習を実行する。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明を具体化した一実施の形態にかかる制御装置が適用される内燃機関の概略構成図。
【図2】内燃機関が搭載される車両の概略構成図。
【図3】自動停止処理の具体的な処理手順を示すフローチャート。
【図4】再始動処理の具体的な処理手順を示すフローチャート。
【図5】学習処理の具体的な処理手順を示すフローチャート。
【図6】学習処理の処理態様の一例を示すタイミングチャート。
【符号の説明】
【0093】
10…内燃機関、11…吸気通路、12…スロットルバルブ、13…スロットルモータ、14…燃焼室、15…燃料噴射バルブ、16…点火プラグ、17…イグナイタ、18…ピストン、19…クランクシャフト、20…排気通路、21…吸気バルブ、22…吸気カムシャフト、23…排気バルブ、24…排気カムシャフト、30…車両、31…フライホイール、32…クラッチペダル、33…変速機、34…クラッチ、35…プロペラシャフト、36…ディファレンシャルギヤ、37…車輪、38…ドライブシャフト、39…シフトレバー、40…スタータモータ、41…アクセルペダル、42…ブレーキペダル、50…電子制御装置、50a…メモリ、51…クランクセンサ、52…エアフローメータ(検出手段)、53…アクセルセンサ、54…スロットルセンサ、55…温度センサ、58…クラッチセンサ、59…ブレーキセンサ、60…速度センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アイドル運転時に内燃機関を安定運転することの可能な機関制御量についての学習値を学習する学習手段と、前記学習値に基づき前記機関制御量を調節する調節手段と、機関運転領域がアイドル運転領域を内包する特定運転領域であるとの条件を含む所定の停止条件が成立したときに前記内燃機関を一時的に自動停止させるとともに所定の再始動条件が成立したときに同内燃機関を再始動させる自動停止始動手段とを備える内燃機関の制御装置において、
前記機関制御量の実際値を検出する検出手段を有し、
前記学習手段は、前記学習値の学習を、前記特定運転領域以外の領域における前記実際値と予め定められた基準値との乖離度合いに基づき実行する
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関の制御装置において、
当該制御装置は前記内燃機関の運転状態と前記基準値との関係を予め記憶してなり、
前記学習手段は前記内燃機関の運転状態に基づいて前記関係から前記基準値を求める
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の内燃機関の制御装置において、
前記機関制御量は吸入空気量である
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の内燃機関の制御装置において、
前記内燃機関は、その吸気通路の通路断面積を変更するスロットルバルブが設けられてなり、
前記検出手段は前記吸気通路における前記スロットルバルブより吸気流れ方向上流側に設けられたエアフローメータであり、
前記内燃機関の運転状態は前記スロットルバルブの開度および機関回転速度である
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載の内燃機関の制御装置において、
前記学習手段は、前記スロットルバルブの開度が所定開度より小さいとの実行条件の成立時に検出した前記実際値とその前記基準値とに基づいて前記乖離度合いを求めるものである
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の内燃機関の制御装置において、
前記学習手段は、前記乖離度合いが所定値より大きいことを条件に、前記学習値の更新を許可する
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載の内燃機関の制御装置において、
前記学習手段は、前記学習値の更新に合わせて、その更新量に相当する分だけ前記所定
値を変更する
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−65529(P2010−65529A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−229665(P2008−229665)
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】