説明

内燃機関の制御装置

【課題】ターボチャージャの軸受け部分の温度が過剰に上昇してしまうことを抑制しつつ、機関冷却水の循環量の制限を通じた機関温度制御を行うことにより、ターボチャージャの保護と機関温度の管理、並びに燃料消費量の低減の両立を図ることのできる内燃機関の制御装置を提供する。
【解決手段】内燃機関10に設けられたターボチャージャ11には、機関冷却水の一部が導入されるとともに、潤滑油が供給されている。本発明にかかる内燃機関の制御装置である電子制御装置100は、ウォーターポンプ20の駆動量を制限し、機関冷却水による冷却能力を調整することによって機関温度を制御する。電子制御装置100は、ウォーターポンプ20の駆動量を制限しており、ターボチャージャ11の軸受け部分の温度が基準温度以上になることが予測されるときに、ターボチャージャ11の軸受け部分に供給される潤滑油の循環量を確保する処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は内燃機関の制御装置に関し、特に冷却のために機関冷却水の一部が導入されるターボチャージャを備える内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、機関冷却水を循環させるためのウォーターポンプとして、内燃機関の駆動力によって駆動される機関駆動式のウォーターポンプが広く採用されてきた。
しかし、一般に機関駆動式のウォーターポンプは、内燃機関の出力軸と連結されているため、機関回転速度に応じて機関冷却水の吐出量が決定されてしまう。したがって、機関駆動式のウォーターポンプを備える内燃機関にあっては、機関回転速度が高いときには、それほど高い冷却性能を必要としていなくても機関回転速度に応じた吐出量でウォーターポンプから機関冷却水が吐出されてしまい、内燃機関が過剰に冷却されてしまうことがある。例えば、機関冷間時のように機関温度を速やかに上昇させることが望ましい状況であっても、機関回転速度に応じた吐出量で機関冷却水が吐出され、機関温度が上昇し難くなってしまう。
【0003】
また、上記のように内燃機関が過剰に冷却されている状況下にあっては、必要以上にウォーターポンプを駆動していることとなる。そのため、この場合には、ウォーターポンプを駆動するために内燃機関の駆動力の一部が無駄に消費されていることになり、燃料を余分に消費させることになってしてしまう。
【0004】
そこで、特許文献1に記載されているように、内燃機関との間の駆動力の伝達を遮断するクラッチを備えたウォーターポンプや、電動ウォーターポンプ等、機関回転速度に依存することなく機関冷却水の吐出量を制限することのできるウォーターポンプを採用した内燃機関が提案されている。
【0005】
このように機関冷却水の吐出量を制限することのできるウォーターポンプを備える内燃機関では、そのときの機関温度や内燃機関の発熱量に応じて冷却性能を調整することができる。そのため、例えば、機関冷間時にウォーターポンプを停止して暖機の促進を図ったり、内燃機関の発熱量が小さいときに機関冷却水の吐出量を制限して内燃機関の過剰な冷却とウォーターポンプの余分な駆動を抑制したりすることができるようになる。
【0006】
このように機関温度や発熱量に応じて機関冷却水の吐出量を制限し、冷却能力を調整することのできる構成を採用すれば、ウォーターポンプを駆動するための負荷や消費電力の低減を図り、ウォーターポンプやオルタネータ、ジェネレータを駆動するための内燃機関の駆動負荷を低減して燃料消費量を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008‐169750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、内燃機関に設けられたターボチャージャにあっては、内燃機関が高負荷運転から低負荷運転に移行したあとも、しばらくの間、タービンが惰性で高速回転し続ける。また、内燃機関が高負荷運転から低負荷運転に移行したあとも、排気マニホルド側からの熱伝達によってターボチャージャのハウジングが徐々に加熱される。そのため、このとき、内燃機関に設けられたターボチャージャの温度、特にターボチャージャの軸受け部分の温度は、内燃機関の温度や発熱量の変化に対して遅れて変化するようになる。
【0009】
すなわち、内燃機関に設けられたターボチャージャの温度変化と、内燃機関本体の温度変化は必ずしも一致したものとはならないことがある。
そのため、冷却のために機関冷却水の一部が導入されるターボチャージャを備える内燃機関にあっては、機関冷却水の吐出量を制限した状態で内燃機関本体の温度を適切に制御できている場合であっても、吐出量が制限された状態における冷却能力ではターボチャージャの冷却が不十分となり、軸受け部分の温度が過剰に上昇しまうおそれがある。
【0010】
例えば、高負荷運転から低負荷運転に移行した直後のような状況にあっては、低負荷運転への移行に伴って内燃機関の発熱量が低下したことに基づいて機関冷却水の循環量が制限されたときに、ターボチャージャの冷却が不十分になって軸受け部分の温度が過剰に上昇してしまうようになるおそれがある。
【0011】
この発明はこうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ターボチャージャの軸受け部分の温度が過剰に上昇してしまうことを抑制しつつ、機関冷却水の循環量の制限を通じた機関温度制御を行うことにより、ターボチャージャの保護と機関温度の管理、並びに燃料消費量の低減の両立を図ることのできる内燃機関の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、機関冷却水の一部が導入されるとともに、軸受け部分に潤滑油が供給されるターボチャージャを備える内燃機関を制御する内燃機関の制御装置であり、機関冷却水を吐出するウォーターポンプの駆動量を制限し、機関冷却水による冷却能力を調整することによって機関温度を制御する内燃機関の制御装置であって、前記ウォーターポンプの駆動量を制限しており、前記軸受け部分の温度が基準温度以上になることが予測されるときに、前記軸受け部分に供給される潤滑油の循環量を確保する処理を実行することをその要旨とする。
【0013】
内燃機関の発熱量が小さいことや機関温度が低いこと等に基づいてウォーターポンプの駆動量が制限され、機関冷却水による冷却能力が低減されているときには、ターボチャージャに導入される機関冷却水の量も少なくなり、ターボチャージャを冷却する能力も低減されてしまう。
【0014】
そのため、このようにウォーターポンプの駆動量が制限されてターボチャージャに導入される機関冷却水の量が少なくなっているときに、タービンの軸受け部分に供給されている潤滑油の循環量までもが少なくなってしまった場合には、ターボチャージャの軸受け部分の冷却能力が不足して温度が過剰に上昇しやすくなってしまう。
【0015】
これに対して上記請求項1に記載の発明にあっては、ウォーターポンプの駆動量が制限されており、軸受け部分の温度が基準温度以上になることが予測されるときに、軸受け部分に供給される潤滑油の循環量を確保する処理を実行する。そのため、上記構成によれば、ウォーターポンプの駆動量が制限されて軸受け部分の温度が上昇しやすい状況にあるときに、潤滑油の循環量が低減されてしまうことを抑制することができる。したがって、機関冷却水の循環量の制限を通じた機関温度の制御を実行しながら、ターボチャージャの温度が過剰に上昇してしまうことを抑制することができる。
【0016】
すなわち、上記請求項1に記載の発明によれば、ターボチャージャの軸受け部分の温度が過剰に上昇してしまうことを抑制しつつ、機関冷却水の循環量の制限を通じた内燃機関の温度制御を行うことにより、ターボチャージャの保護と機関温度の管理、並びに燃料消費量の低減の両立を図ることができるようになる。
【0017】
尚、上記基準温度は、潤滑油が炭化するオイルコーキングやタービンの焼き付き等が発生する可能性が高くなる温度の水準を示す基準値として設定するものであり、例えば、予め行う実験等の結果に基づき、オイルコーキングや焼き付き等が発生する温度の最小値に基づいて設定すればよい。
【0018】
請求項2に記載の発明は、アイドリングストップ条件が成立したときに、自動的に機関運転を停止するアイドリングストップ制御を実行する内燃機関の制御装置であり、前記ウォーターポンプの駆動量を制限しており、機関運転を停止した場合に前記軸受け部分の温度が基準温度以上になることが予測されるときには、機関運転の自動停止を禁止する請求項1に記載の内燃機関の制御装置である。
【0019】
潤滑油の循環量を確保する処理として具体的には、請求項2に記載されているように、機関運転の自動停止を禁止する、すなわちアイドリングストップ条件が成立していても機関運転を自動的に停止させない構成を採用することができる。
【0020】
燃料消費量を低減するために、所定のアイドリングストップ条件が成立したときに自動的に機関運転を停止するアイドリングストップ制御を実行するようにしている場合には、アイドリングストップ条件の成立に基づいて機関運転が停止されたときにオイルポンプも停止してしまい、潤滑油の循環も停止されてしまう。
【0021】
そのため、こうしたアイドリングストップ制御を実行する内燃機関において、ウォーターポンプの駆動力を制限することによる機関温度の制御を実行している場合には、ウォーターポンプの駆動量が制限されて軸受け部分の温度が上昇しやすい状況にあるときに、自動的に機関運転が停止されて潤滑油の循環が停止されてしまう場合がある。
【0022】
このように軸受け部分の温度が上昇しやすい状況にあるときに、更に潤滑油の循環まで停止されてしまった場合には、機関停止後にターボチャージャの温度が過剰に上昇してオイルコーキングや焼き付き等が発生してしまうおそれがある。
【0023】
これに対して上記請求項2に記載されているように、ウォーターポンプの駆動量を制限しており、機関運転を停止した場合に軸受け部分の温度が基準温度以上になることが予測されるときに、機関運転の自動停止を禁止する構成を採用すれば、ウォーターポンプの駆動量が制限されて軸受け部分の温度が上昇しやすい状況にあるときに、潤滑油の循環が停止されてしまうことを抑制することができる。したがって、請求項1に記載されているように、ウォーターポンプの駆動量を制限しており、軸受け部分の温度が基準温度以上になることが予測されるときに、潤滑油の循環量を確保する構成を実現することができる。
【0024】
これにより、ターボチャージャの軸受け部分の温度が過剰に上昇してしまうことを抑制しつつ、機関冷却水の循環量の制限を通じた内燃機関の温度制御を行うことにより、ターボチャージャの保護と機関温度の管理、並びに燃料消費量の低減の両立を図ることができるようになる。
【0025】
尚、具体的には、請求項3に記載されているように、ウォーターポンプの駆動量が制限されている状況下でアイドリングストップ条件が成立したときに、機関運転を停止した場合に軸受け部分の温度が基準温度以上になるか否かを予測し、機関運転を停止した場合に軸受け部分の温度が基準温度以上になることが予測された場合に、当該アイドリングストップ条件の成立に基づく機関運転の自動停止を禁止するようにすればよい。
【0026】
こうした構成を採用すれば、ウォーターポンプの駆動量が制限されている状況下でアイドリングストップ条件が成立したときに機関運転を停止した場合に軸受け部分の温度が基準温度以上になるか否かが予測されるようになるため、常に軸受け部分の温度が基準温度以上になるか否かを予測する構成と比較して制御装置の演算負荷を低減することができる。
【0027】
機関運転を停止した場合に軸受け部分の温度が基準温度以上になるか否かを予測する具体的な方法としては、請求項4に記載されているように、ウォーターポンプの駆動量が制限されている状況下でアイドリングストップ条件が成立したときに、その時点までの一定期間の間における機関回転速度の積算値を算出し、算出された積算回転速度に基づいて機関運転を停止した場合に軸受け部分の温度が基準温度以上になるか否かを予測する構成を採用することができる。
【0028】
内燃機関の出力軸の単位時間あたりの回転数を示す機関回転速度が高いほど、内燃機関において単位時間あたりに行われる燃焼の回数は多くなる。したがって、内燃機関で発生する燃焼による発熱量は機関回転速度と高い相関を有しており、その時点までの一定期間の間における機関回転速度の積算値を算出すれば、算出された積算回転速度に基づいてその一定期間の間に行われた燃焼の回数及びその燃焼によって得られた発熱量を推定することができる。具体的には、積算回転速度が高いときほど、その一定期間の間に得られた発熱量が大きいことが推定される。
【0029】
そのため、積算回転速度に基づいてその時点までの一定期間の間における内燃機関の発熱量を推定すれば、惰性で回転し続けるタービンの回転による熱と、内燃機関から伝達される熱とによって暖められるターボチャージャの温度変化を、その推定された発熱量に基づいて予測することができる。
【0030】
したがって、上記請求項4に記載されているように、アイドリングストップ条件が成立したときに、その時点までの一定期間の間における機関回転速度の積算値を算出する構成を採用すれば、積算回転速度に基づいて、機関運転を停止した場合にその後に軸受け部分の温度が基準温度以上になるか否かを予測することができる。
【0031】
請求項5に記載の発明は、前記ウォーターポンプの駆動量が制限されている状況下で前記アイドリングストップ条件が成立したときに、その時点までの一定期間の間における前記内燃機関の負荷率の積算値を算出し、算出された積算負荷率に基づいて機関運転を停止した場合に前記軸受け部分の温度が基準温度以上になるか否かを予測する請求項3又は請求項4に記載の内燃機関の制御装置である。
【0032】
内燃機関の燃料噴射量は、負荷率に応じて変化する。具体的には負荷率が高いときほど燃料噴射量が多くなり、負荷率が低いときには燃料噴射量が少なくなる。そのため、内燃機関で発生する燃焼による発熱量は負荷率とも高い相関を有している。したがって、その時点までの一定期間の間における負荷率の積算値を算出すれば、算出された積算負荷率に基づいてその一定期間の間に燃焼に供された燃料の量及びその燃料の燃焼によって得られた発熱量を推定することができる。具体的には、積算負荷率が大きいときほど、その一定期間の間に得られた発熱量が大きいことが推定される。
【0033】
そのため、積算負荷率に基づいてその時点までの一定期間の間における内燃機関の発熱量を推定すれば、惰性で回転し続けるタービンの回転による熱と、内燃機関から伝達される熱とによって暖められるターボチャージャの温度変化を、その推定された発熱量に基づいて予測することができる。
【0034】
したがって、上記請求項5に記載されているように、アイドリングストップ条件が成立したときに、その時点までの一定期間の間における負荷率の積算値を算出する構成を採用すれば、積算負荷率に基づいて、機関運転を停止した場合にその後に軸受け部分の温度が基準温度以上になるか否かを予測することができる。
【0035】
尚、負荷率は、単位機関回転速度あたりの吸入空気量を示す値であり、吸入空気量を機関回転速度で除算することにより算出される。
請求項6に記載の発明は、潤滑油の循環量を制限する低圧制御を実行して前記内燃機関に作用するオイルポンプの駆動負荷を低減する内燃機関の制御装置であり、前記ウォーターポンプの駆動量を制限しており、前記低圧制御を実行した場合に前記軸受け部分の温度が基準温度以上になることが予測されるときには、前記低圧制御の実行を禁止する請求項1〜5のいずれか一項に記載の内燃機関の制御装置である。
【0036】
潤滑油の循環量を確保する処理としては、請求項2に記載されているように機関運転の自動停止を禁止する構成の他、請求項6に記載されているように低圧制御の実行を禁止する構成を採用することもできる。
【0037】
ウォーターポンプの駆動力を制限することによる機関温度の制御に加え、燃料消費量を低減するために、潤滑油の循環量を制限して内燃機関に作用するオイルポンプの駆動負荷を低減する低圧制御を実行するようにしている場合には、低圧制御の実行に伴ってターボチャージャの軸受け部分に供給される潤滑油の量が減少してしまう。
【0038】
そのため、ウォーターポンプの駆動量が制限されて軸受け部分の温度が上昇しやすい状況にあるときに、低圧制御が実行されて更に潤滑油の循環量まで低減されてしまった場合には、ターボチャージャの温度が過剰に上昇してオイルコーキングや焼き付き等が発生してしまうおそれがある。
【0039】
これに対して上記請求項6に記載されているように、ウォーターポンプの駆動量を制限しており、低圧制御を実行した場合に軸受け部分の温度が基準温度以上になることが予測されるときに、低圧制御の実行を禁止する構成を採用すれば、ウォーターポンプの駆動量が制限されて軸受け部分の温度が上昇しやすい状況にあるときに、潤滑油の循環量が低減されてしまうことを抑制することができる。したがって、請求項1に記載されているように、ウォーターポンプの駆動量を制限しており、軸受け部分の温度が基準温度以上になることが予測されるときに、潤滑油の循環量を確保する構成を実現することができる。これにより、ターボチャージャの軸受け部分の温度が過剰に上昇してしまうことを抑制しつつ、機関冷却水の循環量の制限を通じた内燃機関の温度制御を行うことにより、ターボチャージャの保護と機関温度の管理、並びに燃料消費量の低減の両立を図ることができるようになる。
【0040】
軸受け部の潤滑に供されてターボチャージャから排出される潤滑油の温度である出口油温が高いときほど、軸受け部分の温度が高いことが推定される。そのため、低圧制御を実行した場合に軸受け部分の温度が基準温度以上になることを予測する具体的な方法としては、請求項7に記載されているように、出口油温が基準油温以上であることに基づいて軸受け部分の温度が基準温度以上になることを予測する構成を採用することができる。
【0041】
尚、基準油温の値は、出口油温が同基準油温以上になったときに、そのことに基づいて低圧制御を実行した場合に軸受け部分の温度が基準温度以上まで上昇することを予測することができるように、予め行う実験等の結果に基づいて設定すればよい。
【0042】
請求項8に記載の発明は、機関冷却水の一部が導入されるとともに、軸受け部分に潤滑油が供給されるターボチャージャを備える内燃機関を制御する制御装置であり、機関冷却水を吐出するウォーターポンプの駆動量を制限し機関冷却水による冷却能力を調整することによって前記内燃機関の温度を制御するとともに、潤滑油の循環量を制限する低圧制御を実行して前記内燃機関に作用するオイルポンプの駆動負荷を低減する内燃機関の制御装置であって、前記ウォーターポンプの駆動量を制限しているときには、前記軸受け部分の潤滑に供された潤滑油が前記ターボチャージャから排出されるときの同潤滑油の温度である出口油温に基づいて前記低圧制御の実行可否を判定し、前記出口油温が基準油温未満のときには前記低圧制御を実行する一方、前記出口油温が基準油温以上のときには前記低圧制御を実行せずに潤滑油を供給することをその要旨とする。
【0043】
上述したように、内燃機関の発熱量が小さいことや機関温度が低いこと等に基づいてウォーターポンプの駆動量が制限され、機関冷却水による冷却能力が低減されているときには、ターボチャージャに導入される機関冷却水の量も少なくなり、ターボチャージャを冷却する能力も低減されてしまう。
【0044】
そのため、このようにウォーターポンプの駆動量が制限されてターボチャージャに導入される機関冷却水の量が少なくなっているときに、低圧制御が実行されてタービンの軸受け部分に供給されている潤滑油の循環量までもが少なくなってしまった場合には、ターボチャージャの軸受け部分の冷却能力が不足して温度が過剰に上昇しやすくなってしまう。
【0045】
これに対して上記請求項8に記載の発明にあっては、ウォーターポンプの駆動量を制限しているときには、出口油温に基づいて低圧制御の実行可否を判定し、出口油温が基準油温以上のときには低圧制御を実行しないようにしている。
【0046】
そのため、ウォーターポンプの駆動量が制限されて軸受け部分の温度が上昇しやすい状況にあり、それに加えて出口油温が基準油温以上であり、低圧制御を実行した場合に軸受け部分の温度が高温になることが予測されるときには、低圧制御が実行されず、潤滑油の循環量が確保されるようになる。
【0047】
したがって上記請求項1に記載の発明と同様に、機関冷却水の循環量の制限を通じた機関温度の制御を実行しながら、ターボチャージャの温度が過剰に上昇してしまうことを抑制することができる。
【0048】
すなわち、上記請求項8に記載の発明によれば、ターボチャージャの軸受け部分の温度が過剰に上昇してしまうことを抑制しつつ、機関冷却水の循環量の制限を通じた内燃機関の温度制御を行うことにより、ターボチャージャの保護と機関温度の管理、並びに燃料消費量の低減の両立を図ることができるようになる。
【0049】
尚、上記請求項8における基準油温は、潤滑油が炭化するオイルコーキングやタービンの焼き付き等が発生する可能性が高くなる油温の水準を示す基準値として設定するものであり、例えば、予め行う実験等の結果に基づき、オイルコーキングや焼き付き等が発生する油温の最小値に基づいて設定すればよい。
【0050】
上述したように、内燃機関の発熱量は機関回転速度の積算値に基づいて推定することができる。そのため、機関回転速度の積算値に基づいて推定される内燃機関の発熱量に基づいて潤滑油の温度やその変化を推定することもでき、請求項9に記載されているようにその時点までの一定期間の間の機関回転速度の積算値に基づいて出口油温を推定する構成を採用することもできる。
【0051】
また、内燃機関の発熱量は、上述したように負荷率の積算値に基づいて推定することもできる。そのため、請求項10に記載されているようにその時点までの一定期間の間の負荷率の積算値に基づいて出口油温を推定する構成を採用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】この発明の第1の実施形態にかかる電子制御装置と、その制御対象である内燃機関の関係を示す模式図。
【図2】アイドリングストップに伴うターボチャージャの軸受け部分の温度変化を示すグラフ。
【図3】第1の実施形態にかかる循環量確保ルーチンにおける処理の流れを示すフローチャート。
【図4】この発明の第2の実施形態にかかる電子制御装置と、その制御対象である内燃機関の関係を示す模式図。
【図5】同実施形態にかかる内燃機関の潤滑油供給システムの高リリーフ圧状態における動作態様を説明する模式図。
【図6】同実施形態にかかる内燃機関の潤滑油供給システムの低リリーフ圧状態における動作態様を説明する模式図。
【図7】同実施形態にかかる循環量確保ルーチンにおける処理の流れを示すフローチャート。
【図8】変更例としての循環量確保ルーチンにおける処理の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0053】
(第1の実施形態)
以下、この発明にかかる内燃機関の制御装置を、車両に搭載される内燃機関を統括的に制御する電子制御装置として具体化した第1の実施形態について、図1〜3を参照して説明する。尚、図1は本実施形態にかかる電子制御装置100と、その制御対象である内燃機関10の関係を示す模式図である。
【0054】
図1に示されるように本実施形態にかかる内燃機関10は、ターボチャージャ11を備えている。
図1の中央に示されるように内燃機関10にはウォーターポンプ20が設けられており、ウォーターポンプ20はそのプーリ21がベルト22を介して内燃機関10の出力軸12と連結されている。これにより、機関運転に伴って出力軸12が回転すると、それに伴ってウォーターポンプ20が駆動され、ウォーターポンプ20から吐出された機関冷却水が内燃機関10の内部に形成されたウォータージャケットに供給されるようになる。
【0055】
尚、ターボチャージャ11にもウォータージャケットが形成されており、ウォーターポンプ20から吐出された機関冷却水の一部はターボチャージャ11にも供給されるようになっている。
【0056】
内燃機関10及びターボチャージャ11のウォータージャケットに供給され、これらの冷却に供された機関冷却水は還流通路25を通じて再びウォーターポンプ20に戻される。尚、図1に示されるように還流通路25の途中には、ラジエータ26が設けられている。これにより、内燃機関10及びターボチャージャ11の冷却に供されて温度が高くなった機関冷却水は、ラジエータ26を通過しながら放熱し、温度が低くなった状態でウォーターポンプ20に戻されるようになっている。
【0057】
図1の中央に示されるように還流通路25がウォーターポンプ20に接続する部分には、サーモスタットバルブ24が設けられている。このサーモスタットバルブ24には、図1の右上に示されるように還流通路25のラジエータ26よりも上流側の部分から分岐してラジエータ26を迂回してサーモスタットバルブ24に接続するバイパス通路27が接続されている。
【0058】
サーモスタットバルブ24は、機関冷却水の温度に応じて還流通路25及びバイパス通路27のうち、いずれか一方のみを選択的に閉塞するように構成されている。具体的には、サーモスタットバルブ24は、機関冷却水の温度が低いときには、還流通路25を閉塞して、バイパス通路27をウォーターポンプ20に接続させる。これに対して機関冷却水の温度が高くなると、サーモスタットバルブ24の内部に封入されたワックスが液化して膨張し、内部に設けられた弁体が変位してバイパス通路27が閉塞されるようになる。そして、バイパス通路27が閉塞されると、それに伴って還流通路25が開放され、還流通路25がウォーターポンプ20に接続されるようになる。
【0059】
図1の下方に示されるように内燃機関10には、オイルポンプ30が設けられている。このオイルポンプ30は図1の右側に破線で示されるように内燃機関10の出力軸12に連結された機関駆動式のポンプである。そのため、機関運転に伴って内燃機関10の出力軸12が回転すると、それに伴ってオイルポンプ30が駆動されるようになっている。
【0060】
オイルポンプ30には、オイルパン32と、内燃機関10及びターボチャージャ11とを接続する供給通路31が接続されている。そのため、オイルポンプ30が駆動されることにより、オイルパン32に貯留された潤滑油が内燃機関10の各部及びターボチャージャ11のタービンの軸受け部分に供給され、それらの潤滑に供されるようになる。
【0061】
尚、内燃機関10及びターボチャージャ11の被潤滑部に供給されて潤滑に供された潤滑油は、内燃機関10の内部やターボチャージャ11の内部を伝い落ちて回収され、内燃機関10の下部に取り付けられたオイルパン32に再び貯留されるようになっている。
【0062】
図1に示されるように供給通路31におけるオイルポンプ30よりも下流側の部分には、リリーフ弁34が設けられている。このリリーフ弁34には、供給通路31におけるオイルポンプ30よりも上流側の部位に接続するリリーフ通路33が接続されている。
【0063】
これにより、供給通路31内の潤滑油の油圧がリリーフ圧以上になったときには、リリーフ弁34が開弁し、供給通路31内の潤滑油の一部が、リリーフ通路33を通じて供給通路31におけるオイルポンプ30よりも上流側の部位に還流されるようになっている。
【0064】
内燃機関10を制御する電子制御装置100は、内燃機関10の制御にかかる各種演算処理を実行する中央演算処理装置(CPU)を備えている。また、電子制御装置100は、演算処理のための演算プログラムや演算マップ、そして各種のデータが記憶された読み出し専用メモリ(ROM)、演算の結果を一時的に記憶するランダムアクセスメモリ(RAM)等を備えている。
【0065】
電子制御装置100には、出力軸12の回転角に基づいて機関回転速度NEを検出するクランク角センサ90、内燃機関10の内部に形成されたウォータージャケット内を循環する機関冷却水の水温THWを検出する水温センサ91が接続されている。また、電子制御装置100には、車速Vを検出する車速センサ92、内燃機関10に導入される空気の温度TA及びその量である吸入空気量GAを検出するエアフロメータ93、運転者によるアクセルペダルの操作量を検出するアクセルポジションセンサ94等も接続されている。
【0066】
電子制御装置100は、これら各種センサ90〜94から出力される信号を取り込み、取り込まれた信号に基づいて燃料噴射量Qや点火時期の制御等にかかる各種の演算を実行する。
【0067】
また、電子制御装置100は、所定のアイドリングストップ条件が成立したときに自動的に機関運転を停止させ、信号待ち等における余分なアイドリングを抑制して燃料消費量の低減を図るアイドリングストップ制御を実行する。
【0068】
尚、ここで設定されているアイドリングストップ条件は、車両が信号待ち等で停車している状態であることを判定するための条件であり、具体的には、車速Vが「0」であること、アクセル操作量が「0」であること、ブレーキペダルが踏み込まれていること等の各要件が全て成立していることがその成立要件とされている。
【0069】
これにより、アイドリングストップ条件が成立すると、信号待ち等で停車している状態であることが判定されて、アイドリングストップが実行され、機関運転が自動的に停止されるようになる。尚、アイドリングストップ制御によるアイドリングストップ中に、ブレーキペダルの踏み込みが解除される等してアイドリングストップ条件が成立しなくなると、電子制御装置100は、それに基づいて発進に備えて自動的に内燃機関10を始動させる。
【0070】
ところで、ウォーターポンプ20のような機関駆動式のウォーターポンプを備える内燃機関にあっては、ウォーターポンプが内燃機関の出力軸と連結されているため、機関回転速度NEに応じて機関冷却水の吐出量が決定されてしまう。そのため、機関回転速度NEが高いときには、それほど高い冷却性能を必要としていなくても機関回転速度NEに応じた吐出量でウォーターポンプから機関冷却水が吐出されてしまい、内燃機関が過剰に冷却されてしまうことがある。
【0071】
例えば、機関冷間時のように機関温度を速やかに上昇させることが望ましい状況であっても、機関回転速度NEに応じた吐出量で機関冷却水が吐出され、機関温度が上昇し難くなってしまう。
【0072】
また、このように内燃機関が過剰に冷却されている状況下にあっては、必要以上にウォーターポンプを駆動していることとなる。そのため、この場合には、ウォーターポンプを駆動するために内燃機関の駆動力の一部が無駄に消費されていることになり、燃料を余分に消費させることになってしてしまう。
【0073】
そこで、本実施形態の内燃機関10にあっては、ウォーターポンプ20に、内燃機関10の出力軸12との間の駆動力の伝達を遮断するクラッチ23を設けている。これにより、本実施形態の内燃機関10にあっては、機関回転速度NEに依存することなく機関冷却水の吐出量を制限することができるようになっている。
【0074】
具体的には、本実施形態の内燃機関10にあっては、冷間始動直後のような機関冷間時にクラッチ23の係合を解除し、内燃機関10の出力軸12とウォーターポンプ20との間の駆動力の伝達を遮断することにより、ウォーターポンプ20の駆動を停止する水停止制御を実行する。このように機関冷間時にウォーターポンプ20を停止することにより、機関冷却水の循環を停止する水停止制御を実行すれば、冷却能力を低減して内燃機関10の暖機の促進を図ることができる。
【0075】
また、内燃機関10の発熱量が小さいときには、暖機完了後であっても、水停止制御を実行することができる。例えば、外気温が低い上に車速Vが速いときには、エンジンルーム内に入り込む走行風によって高い冷却作用が得られる。そのため、こうした状況下で内燃機関10が低負荷運転されており、内燃機関10の発熱量が極めて低い状態にある場合には、機関冷却水を循環させなくても機関温度を適切な温度に保持することができる場合がある。
【0076】
このように機関冷却水を循環させなくても機関温度を適切な温度に保持することができる状態のときに、水停止制御を実行し、機関冷却水の循環を停止するようにすれば、内燃機関10の過剰な冷却とウォーターポンプ20の余分な駆動を抑制することができるようになる。
【0077】
そして、このように機関温度や発熱量に応じて機関冷却水の吐出量を制限し、冷却能力を調整する構成を採用すれば、ウォーターポンプ20を駆動するための内燃機関10の駆動負荷を低減して燃料消費量を抑制することができる。
【0078】
そこで、本実施形態の電子制御装置100は、水温THWや車速V、外気温や機関回転速度NE等に基づいて内燃機関10における冷却能力と発熱量とを推定し、推定される冷却能力と発熱量のバランス、並びに現在の機関温度に応じて水停止制御を実行するか否かを決定している。
【0079】
尚、水温THWは、機関温度の水準を示すパラメータであるとともに、機関冷却水が単位量循環されたときの冷却能力を示すパラメータになる。すなわち、水温THWが低いときほど冷却能力は高くなる。また、機関回転速度NEはウォーターポンプ20の駆動量と高い相関を有しているとともに、内燃機関10において単位時間あたりに生じる燃焼の回数と高い相関を有している。そのため、機関回転速度NEは、冷却能力と発熱量の双方に関連するパラメータである。すなわち機関回転速度NEが高いほど、単位時間あたりの燃焼の回数が多くなるため、内燃機関10における発熱量は大きくなる。また、その一方で、水停止制御が実行されていないときには、機関回転速度NEが高いときほどウォーターポンプが高速で駆動され、機関冷却水の循環量が増大する。そのため、機関回転速度NEが高いときには、内燃機関10における冷却能力も高くなる。また、車速Vは、ラジエータ26に当たる単位時間あたりの走行風の量を示すパラメータになる。すなわち車速Vが高いときほど、ラジエータ26に当たる走行風の量が増えるため、ラジエータ26における機関冷却水の放熱量が多くなり、冷却能力が増大する。尚、外気温が低いときほど、ラジエータにおける放熱量が多くなるとともに、エンジンルーム内に入り込む走行風による冷却作用が大きくなるため、内燃機関10における冷却能力は大きくなる。
【0080】
本実施形態の電子制御装置100は、このように内燃機関10における発熱量や冷却能力と相関を有する各種のパラメータを参照して必要に応じて水停止制御を実行することにより、上述したように暖機の早期完了を図ったり、ウォーターポンプ20の駆動負荷を低減したりして燃料消費量の低減を図る。
【0081】
ところで、内燃機関10に設けられたターボチャージャ11にあっては、内燃機関10が高負荷運転から低負荷運転に移行したあとも、しばらくの間、タービンが惰性で高速回転し続ける。また、内燃機関10が高負荷運転から低負荷運転に移行したあとも、排気マニホルド側からの熱伝達によってターボチャージャ11のハウジングが徐々に加熱される。そのため、このとき、内燃機関10に設けられたターボチャージャ11の温度、特にターボチャージャ11の軸受け部分の温度は、内燃機関10の温度や発熱量の変化に対して遅れて変化するようになる。
【0082】
すなわち、内燃機関10に設けられたターボチャージャ11の温度変化と、内燃機関10本体の温度変化は必ずしも一致したものとはならないことがある。
そのため、上記のように内燃機関10における発熱量や冷却能力、機関温度だけを参照して水停止制御を実行する場合には、機関冷却水の循環を停止した状態で内燃機関10本体の温度を適切に制御できている場合であっても、機関冷却水の循環が停止された状態における冷却能力ではターボチャージャ11の冷却が不十分となるおそれがある。
【0083】
例えば、アイドリングストップ条件の成立に基づいて機関運転が停止されたときには、オイルポンプ30も停止してしまい、潤滑油の循環も停止されてしまう。そのため、図2に示されるように時刻t2においてアイドリングストップ条件が成立し、アイドリングストップが実行されて機関運転が停止された場合には、時刻t2以降にターボチャージャ11の軸受け部分の温度が上昇するようになる。
【0084】
このとき、図2に一点鎖線で示されるように、時刻t1から水停止制御が実行されており、機関冷却水の循環が停止されている場合には、図2に実線で示されているように機関冷却水が循環されている場合と比較して軸受け部分の温度が大幅に上昇するようになってしまう。
【0085】
その結果、図2に一点鎖線で示されるように軸受け部分の温度が、潤滑油が炭化してしまうオイルコーキングや焼き付き等が発生するようになる水準である「Tx」以上まで上昇してしまい、オイルコーキングや焼き付きが発生してしまう場合がある。
【0086】
尚、水停止制御が実行されていない場合には、機関運転が停止されるまでの間において機関冷却水が循環されて冷却能力が確保されているため、軸受け部分の温度は図2に実線で示されるように「Tx」以上まで上昇しにくい。
【0087】
このように水停止制御が実行されていて軸受け部分の温度が上昇しやすい状況にあるときに、更にアイドリングストップによって潤滑油の循環まで停止されてしまった場合には、図2に一点鎖線で示されるようにターボチャージャ11の軸受け部分の温度が過剰に上昇してオイルコーキングやタービンの焼き付きが発生してしまう。
【0088】
そこで、本実施形態の電子制御装置100は、潤滑油の循環量を確保してターボチャージャ11の保護を図るべく、水停止制御を実行しているときに、図3に示される循環量確保ルーチンを実行するようにしている。
【0089】
以下、図3を参照して循環量確保ルーチンについて説明する。尚、図3はこの第1の実施形態にかかる循環量確保ルーチンにおける処理の流れを示すフローチャートである。この循環量確保ルーチンは、水停止制御が実行されているときに電子制御装置100において所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0090】
図3に示されるように、この循環量確保ルーチンが開始されると、電子制御装置100はまずステップS100において、アイドリングストップ条件が成立しているか否かを判定する。
【0091】
そして、ステップS100においてアイドリングストップ条件が成立していない旨の判定がなされた場合(ステップS100:NO)には、電子制御装置100は何もせずにこの循環量確保ルーチンを一旦終了する。
【0092】
一方、ステップS100においてアイドリングストップ条件が成立している旨の判定がなされた場合(ステップS100:YES)には、ステップS110へと進む。
そして、電子制御装置100はステップS110においてその時点までの一定期間における機関回転速度NEの積算値及び負荷率KLの積算値を算出し、算出された積算回転速度及び積算負荷率に基づいて、機関運転を停止した場合のその後のターボチャージャ11の軸受け部分の温度変化を予測する。
【0093】
尚、負荷率KLは、単位機関回転速度あたりの吸入空気量を示す値であり、吸入空気量GAを機関回転速度NEで除算することにより算出される値である。
内燃機関10の出力軸12の単位時間あたりの回転数を示す機関回転速度NEが高いほど、内燃機関10において単位時間あたりに行われる燃焼の回数は多くなる。したがって、内燃機関10で発生する燃焼による発熱量は機関回転速度NEと高い相関を有している。また、内燃機関10の燃料噴射量Qは、負荷率KLに応じて変化する。具体的には負荷率KLが高いときほど燃料噴射量Qが多くなり、負荷率KLが低いときには燃料噴射量Qが少なくなる。そのため、内燃機関10で発生する燃焼による発熱量は負荷率KLとも高い相関を有している。
【0094】
したがって、アイドリングストップ条件が成立したときに、その時点までの一定期間の間における機関回転速度NEの積算値及び負荷率KLの積算値を算出すれば、算出された積算回転速度及び積算負荷率に基づいてその一定期間の間の内燃機関10の発熱量を推定することができる。具体的には、積算回転速度が高いときほど、また積算負荷率が大きいときほどその一定期間の間に得られた発熱量が大きいことが推定される。
【0095】
そして、その時点までの一定期間の間における内燃機関10の発熱量を推定すれば、惰性で回転するタービンの回転と、内燃機関10から伝達される熱とによって暖められるターボチャージャ11の温度変化を、その推定された発熱量に基づいて予測することができる。すなわち、推定された発熱量が大きいときほど、機関運転を停止した場合のその後の軸受け部分の温度上昇の度合いが大きくなることが予測されため、推定された発熱量に基づいてその後の軸受け部分の温度変化を予測することができる。
【0096】
ステップS110において機関運転を停止した場合の軸受け部分の温度変化を予測すると、ステップS120へと進み、電子制御装置100はその予測結果に基づいて、機関運転を停止した場合に軸受け部分の温度が基準温度以上になるか否かを判定する。すなわち軸受け部分の温度変化の予測結果に基づいて、軸受け部分の温度が基準温度以上になるのか、それとも基準温度以上にならないのかを予測する。
【0097】
尚、基準温度は、オイルコーキングやタービンの焼き付き等が発生する可能性が高くなる温度の水準を示す基準値として設定するものであり、例えば、予め行う実験等の結果に基づき、オイルコーキングや焼き付き等が発生する温度の最小値に基づいて設定すればよい。
【0098】
ステップS120において軸受け部分の温度が基準温度以上になる旨の判定がなされた場合(ステップS120:YES)、すなわち軸受け部分の温度が基準温度以上になることが予測される場合には、ステップS130へと進み、アイドリングストップの実行を禁止する。
【0099】
すなわち、この場合には、アイドリングストップ条件は成立しているものの、電子制御装置100は、機関運転の自動停止を実行しない。
一方、ステップS120において軸受け部分の温度が基準温度以上になる旨の判定がなされなかった場合(ステップS120:NO)、すなわち軸受け部分の温度が基準温度以上にならないことが予測される場合には、ステップS140へと進み、電子制御装置100は通常どおりアイドリングストップを実行する。
【0100】
本実施形態の内燃機関10にあっては、水停止制御を実行しているときに、このような循環量確保ルーチンを繰り返し実行することにより、アイドリングストップ条件が成立した時点で、その後の軸受け部分の温度変化が予測されるようになる。そして、その予測結果に基づいて、軸受け部分の温度が基準温度以上になることが予測された場合には、アイドリングストップ条件が成立していても、機関運転の自動停止が禁止されるようになる。
【0101】
以上説明した第1の実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)上記第1の実施形態にあっては、ウォーターポンプ20の駆動が停止されているときに、循環量確保ルーチンを実行するようにしている。そして、機関運転を停止した場合に軸受け部分の温度が基準温度以上になることが予測されるときに、機関運転の自動停止を禁止して軸受け部分に供給される潤滑油の循環量を確保する処理を実行するようにしている。そのため、ウォーターポンプ20の駆動が停止されて軸受け部分の温度が上昇しやすい状況にあるときに、潤滑油の循環量が低減されてしまうことを抑制することができる。したがって、機関冷却水の循環量の制限を通じた機関温度の制御を実行しながら、ターボチャージャ11の温度が過剰に上昇してしまうことを抑制することができる。
【0102】
すなわち、上記第1の実施形態によれば、ターボチャージャ11の軸受け部分の温度が過剰に上昇してしまうことを抑制しつつ、機関冷却水の循環量の制限を通じた内燃機関10の温度制御を行うことにより、ターボチャージャ11の保護と機関温度の管理、並びに燃料消費量の低減の両立を図ることができる。
【0103】
(2)上記第1の実施形態では、ウォーターポンプ20の駆動を停止しており、機関運転を停止した場合に軸受け部分の温度が基準温度以上になることが予測されるときに、機関運転の自動停止を禁止するようにしている。そのため、ウォーターポンプ20の駆動量が制限されて軸受け部分の温度が上昇しやすい状況にあるときに、潤滑油の循環が停止されてしまうことを抑制することができる。したがって、ウォーターポンプ20の駆動量を制限しており、軸受け部分の温度が基準温度以上になることが予測されるときに、潤滑油の循環量を確保する構成を実現することができる。これにより、ターボチャージャ11の軸受け部分の温度が過剰に上昇してしまうことを抑制しつつ、機関冷却水の循環量の制限を通じた内燃機関10の温度制御を行うことにより、ターボチャージャ11の保護と機関温度の管理、並びに燃料消費量の低減の両立を図ることができる。
【0104】
(3)ウォーターポンプの駆動が停止されている状況下でアイドリングストップ条件が成立したときに、機関運転を停止した場合に軸受け部分の温度が基準温度以上になるか否かを予測するようにしている。そして、機関運転を停止した場合に軸受け部分の温度が基準温度以上になることが予測された場合に、当該アイドリングストップ条件の成立に基づく機関運転の自動停止を禁止するようにしている。
【0105】
そのため、常に軸受け部分の温度が基準温度以上になるか否かを予測する構成と比較して電子制御装置100の演算負荷を低減することができる。
(4)ウォーターポンプ20の駆動が停止されている状況下でアイドリングストップ条件が成立したときに、その時点までの一定期間の間における機関回転速度NEの積算値を算出し、算出された積算回転速度に基づいて機関運転を停止した場合に軸受け部分の温度が基準温度以上になるか否かを予測するようにしている。
【0106】
内燃機関10の出力軸12の単位時間あたりの回転数を示す機関回転速度NEが高いほど、内燃機関10において単位時間あたりに行われる燃焼の回数は多くなる。したがって、内燃機関10で発生する燃焼による発熱量は機関回転速度NEと高い相関を有しており、その時点までの一定期間の間における機関回転速度NEの積算値を算出すれば、算出された積算回転速度に基づいてその一定期間の間に行われた燃焼の回数及びその燃焼によって得られた発熱量を推定することができる。具体的には、積算回転速度が高いときほど、その一定期間の間に得られた発熱量が大きいことが推定される。
【0107】
そのため、積算回転速度に基づいてその時点までの一定期間の間における内燃機関10の発熱量を推定すれば、惰性で回転し続けるタービンの回転による熱と、内燃機関10から伝達される熱とによって暖められるターボチャージャ11の温度変化を、その推定された発熱量に基づいて予測することができる。
【0108】
したがって、上記第1の実施形態のように、アイドリングストップ条件が成立したときに、その時点までの一定期間の間における機関回転速度NEの積算値を算出する構成を採用すれば、積算回転速度に基づいて機関運転を停止した場合にその後に軸受け部分の温度が基準温度以上になるか否かを予測することができる。
【0109】
(5)また、内燃機関10の燃料噴射量Qは、負荷率KLに応じて変化する。具体的には負荷率KLが高いときほど燃料噴射量Qが多くなり、負荷率KLが低いときには燃料噴射量Qが少なくなる。そのため、内燃機関10で発生する燃焼による発熱量は負荷率KLとも高い相関を有している。したがって、その時点までの一定期間の間における負荷率KLの積算値を算出すれば、算出された積算負荷率に基づいてその一定期間の間に燃焼に供された燃料の量及びその燃料の燃焼によって得られた発熱量を推定することができる。具体的には、積算負荷率が大きいときほど、その一定期間の間に得られた発熱量が大きいことが推定される。
【0110】
そのため、積算負荷率に基づいてその時点までの一定期間の間における内燃機関10の発熱量を推定すれば、惰性で回転し続けるタービンの回転による熱と、内燃機関10から伝達される熱とによって暖められるターボチャージャ11の温度変化を、その推定された発熱量に基づいて予測することができる。
【0111】
したがって、上記第1の実施形態のように、アイドリングストップ条件が成立したときに、その時点までの一定期間の間における負荷率KLの積算値を算出する構成を採用すれば、積算負荷率に基づいて機関運転を停止した場合にその後に軸受け部分の温度が基準温度以上になるか否かを予測することができる。
【0112】
(6)また、上記第1の実施形態にあっては、積算回転速度と積算負荷率の双方に基づいて、機関運転を停止した場合に軸受け部分の温度が基準温度以上になるか否かを予測するようにしているため、いずれか一方に基づいて予測する場合と比較してより高い精度で軸受け部分の温度が基準温度以上になるか否かを予測することができる。
【0113】
尚、上記第1の実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・上記第1の実施形態にあっては、積算回転速度と積算負荷率の双方に基づいて機関運転を停止した場合の軸受け部分の温度変化を予測し、機関運転を停止した場合に軸受け部分の温度が基準温度以上になるか否かを予測するようにしていた。これに対して、積算回転速度又は積算負荷率のいずれか一方に基づいて、軸受け部分の温度変化を予測するようにしてもよい。
【0114】
・また、内燃機関10の発熱量は吸入空気量GAが多いときほど大きくなる。そのため、機関回転速度NEの積算値や負荷率KLの積算値に換えて吸入空気量GAの積算値に基づいて機関運転を停止した場合の軸受け部分の温度変化を予測するようにしてもよい。
【0115】
・また、機関運転を停止した場合の軸受け部分の温度変化の予測方法は、アイドリングストップ条件が成立したときに、機関運転を停止した場合にその後に軸受け部分の温度が基準温度以上になるか否かを予測することのできるものであればよいため、その具体的な構成は適宜変更することができる。
【0116】
・上記実施形態にあっては、アイドリングストップ条件が成立したときに、機関運転を停止した場合の軸受け部分の温度変化を予測する構成を示した。これに対して、常に軸受け部分の温度変化を予測し、機関運転を停止した場合に軸受け部分の温度が基準温度以上になることが予測されるときに機関運転の自動停止を禁止するようにしてもよい。しかし、その場合には、温度変化を予測するための演算を常に行う必要があるため、電子制御装置100の演算負荷が増大してしまう。そこで、電子制御装置100の演算負荷の増大を抑制するためには、上記実施形態のようにアイドリングストップ条件が成立したときに機関運転を停止した場合の温度変化を予測する構成を採用することが望ましい。
(第2の実施形態)
以下、この発明にかかる内燃機関の制御装置を、車両に搭載される内燃機関を統括的に制御する電子制御装置として具体化した第2の実施形態について、図4〜7を参照して説明する。尚、図4は第2の実施形態にかかる電子制御装置100と、その制御対象である内燃機関10の関係を示す模式図である。
【0117】
この第2の実施形態は、潤滑油供給システムの構成が第1の実施形態と異なっている。またこの第2の実施形態にかかる内燃機関10にあっては、アイドリングストップ制御は実行されない。
【0118】
以下の説明では、第1の実施形態と同様の部分については同一の符号を付すのみとしてその説明を割愛し、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
図4の下方に示されるように、この実施形態にかかる潤滑油供給システムの供給通路31におけるオイルポンプ30よりも下流側の部分には、リリーフ弁40が設けられている。このリリーフ弁40には、供給通路31におけるオイルポンプ30よりも上流側の部位に接続するリリーフ通路33が接続されている。
【0119】
これにより、供給通路31内の潤滑油の油圧がリリーフ圧以上になったときには、リリーフ弁40が開弁し、供給通路31内の潤滑油の一部が、リリーフ通路33を通じて供給通路31におけるオイルポンプ30よりも上流側の部位に還流されるようになっている。
【0120】
リリーフ弁40は、後述するように、油圧切替え弁50を制御することによってリリーフ圧を2段階に変更することができるように構成されている。尚、油圧切替え弁50は、内燃機関10を統括的に制御する電子制御装置100からの駆動指令に基づいて駆動される。
【0121】
電子制御装置100は、内燃機関10の制御にかかる演算処理や、油圧切替え弁50の制御を通じた潤滑油の循環量制御にかかる演算処理等を実行する中央演算処理装置(CPU)を備えている。また、電子制御装置100は、演算処理のための演算プログラムや演算マップ、そして各種のデータが記憶された読み出し専用メモリ(ROM)、演算の結果を一時的に記憶するランダムアクセスメモリ(RAM)等を備えている。
【0122】
電子制御装置100は、各種センサ90〜94から出力される信号を取り込み、取り込まれた信号に基づいて燃料噴射量Qや点火時期の制御等にかかる各種の演算を実行するとともに、供給通路31を通じて内燃機関10及びターボチャージャ11に供給される潤滑油の油圧及び循環量を制御するために油圧切替え弁50を操作する。
【0123】
以下、本実施形態にかかる潤滑油供給システムにおけるリリーフ弁40の構成並びに動作について図5及び図6を参照して詳しく説明する。尚、図5及び図6はこの第2の実施形態にかかる潤滑油供給システムにおけるリリーフ弁40の構成を示す模式図であり、図5はリリーフ弁40が高リリーフ圧状態にあるときの状態を示しており、図6はリリーフ弁40が低リリーフ圧状態にあるときの状態を示している。
【0124】
上述したように供給通路31におけるオイルポンプ30よりも下流側の部分には、リリーフ弁40が設けられている。図5に示されるようにリリーフ弁40にあっては、そのハウジング内に、円筒状のスリーブ41が軸方向に摺動可能に収容されている。そして、このスリーブ41の径方向の側壁には、同側壁を貫通するリリーフポート42が形成されている。また、スリーブ41の内部には、このリリーフポート42を開閉するようにスリーブ41の軸方向、すなわち図5における上下方向に摺動可能に有底円筒状の弁体45が収容されている。
【0125】
リリーフ弁40のハウジングの図5における下方の底面には支持部材47が固定されている。そして、この支持部材47と弁体45との間には圧縮されたスプリング46が収容されている。これにより、弁体45は、スプリング46によって図5における上方、すなわちリリーフポート42を閉塞する方向に常に付勢されている。
【0126】
これにより、リリーフ弁40にあっては、供給通路31を流れる潤滑油の油圧が増大して弁体45に作用する油圧が増大したときに、矢印で示されるように弁体45がスプリング46の付勢力に抗して図5における下方に変位し、リリーフポート42が開口するようになっている。
【0127】
図5の右側に示されるようにリリーフポート42は、リリーフ通路33内に開口するように形成されている。そのため、弁体45が開弁位置、すなわちリリーフポート42が開口される位置まで変位することにより、リリーフポート42を介して供給通路31とリリーフ通路33とが連通されるようになる。
【0128】
そして、こうしてリリーフポート42を介して供給通路31とリリーフ通路33とが連通されると、供給通路31を流れる潤滑油の一部がリリーフ通路33を通じてオイルポンプ30の上流側に還流されるようになる。
【0129】
要するに、このリリーフ弁40にあっては、スプリング46の付勢力の大きさによってリリーフ圧が決定されている。すなわち、供給通路31を流れる潤滑油が弁体45を図5における下方に付勢する付勢力が、スプリング46の付勢力よりも大きくなったときにリリーフポート42が開口されて供給通路31を流れる潤滑油の一部がオイルポンプ30の上流側に還流されるようになる。
【0130】
図5の下方に示されるようにスリーブ41の底面41aと、支持部材47が固定されているハウジングの底面との間には背圧室48が形成されている。この背圧室48には、供給通路31を流れる潤滑油の一部が分岐通路51及び背圧通路52を通じて導かれるようになっている。
【0131】
上述したようにスリーブ41は、リリーフ弁40のハウジング内において、その軸方向に摺動可能に支持されている。これにより、このリリーフ弁40にあっては、スリーブ41の底面41aに作用する油圧に起因して同スリーブ41を図5における上方へ付勢する付勢力と、頂面41bに作用する油圧に起因して同スリーブ41を下方へ付勢する力との大小関係に応じて、スリーブ41がハウジング内で上下方向に変位するようになっている。
【0132】
尚、スリーブ41は、背圧室48内の油圧が作用する底面41aの面積が、供給通路31を流れる潤滑油の油圧が作用する頂面41bの面積よりも大きくなるようにその形状が設計されている。そのため、背圧室48が分岐通路51及び背圧通路52を通じて供給通路31と連通され、スリーブ41の底面41a及び頂面41bに等しい油圧が作用するようになったときには、底面41aの受圧面積が頂面41bの受圧面積よりも大きい分だけスリーブ41を上方に付勢する力が大きくなる。
【0133】
その結果、スリーブ41が上方に変位し、図6に示されるようにハウジング内の上方に位置するようになる。
図5の左側に示されるように供給通路31に接続されている分岐通路51と、背圧室48に接続されている背圧通路52との間には油圧切替え弁50が設けられている。この油圧切替え弁50には、更にドレン通路53が接続されており、油圧切替え弁50は、図6に示されるように分岐通路51と背圧通路52とを連通する状態と、図5に示されるように背圧通路52とドレン通路53とを連通する状態とを切替えることができるようになっている。
【0134】
ドレン通路53は供給通路31におけるオイルポンプ30よりも上流側の部位に接続されており、油圧切替え弁50が背圧通路52とドレン通路53とを連通する状態に切替えられているときに背圧室48内の潤滑油を供給通路31におけるオイルポンプ30よりも上流側の部分に還流させる。
【0135】
この第2の実施形態にかかる内燃機関10の潤滑油供給システムにあっては、油圧切替え弁50を操作することにより、背圧室48内の油圧を制御し、ハウジング内におけるスリーブ41の位置を変更することによってリリーフ圧を変更する。
【0136】
具体的には、図6に示されるように分岐通路51と背圧通路52とを連通するように油圧切替え弁50を操作し、供給通路31内の潤滑油の一部を背圧室48に導入するようにした場合には、スリーブ41の底面41aに供給通路31内の潤滑油の油圧と等しい油圧が作用するようになる。
【0137】
その結果、スリーブ41の底面41aに作用する油圧に起因してスリーブ41を図6における上方に付勢する力が、スリーブ41の頂面41bに作用する油圧に起因してスリーブ41を図6における下方に付勢する力よりも大きくなり、スリーブ41が上方に変位して図6に示されるようにリリーフ弁40のハウジングにおける上方に位置するようになる。
【0138】
一方で、図5に示されるように背圧通路52とドレン通路53とを連通するように油圧切替え弁50を操作した場合には、背圧室48内の潤滑油がドレン通路53を通じて供給通路31におけるオイルポンプ30よりも上流側の部分に還流されるようになり、背圧室48内の油圧が低下する。
【0139】
その結果、スリーブ41の頂面41bに作用する油圧に起因してスリーブ41を図5における下方に付勢する力が、スリーブ41の底面41aに作用する油圧に起因してスリーブ41を図5における上方に付勢する力よりも大きくなり、スリーブ41が下方に変位して図5に示されるようにリリーフ弁40のハウジングにおける下方に位置するようになる。
【0140】
このようにスリーブ41がハウジング内において下方に位置している場合には、スリーブ41が図6に示されるように上方に位置している場合よりも、弁体45を開弁位置までにさせたときのスプリング46の圧縮量が多くなる。すなわち、このときには、スリーブ41が上方に位置している場合と比較して弁体45がスプリング46から受ける付勢力が大きくなり、リリーフポート42が開口するときの供給通路31内の潤滑油の油圧、すなわちリリーフ圧が高くなる。
【0141】
一方で、図6に示されるようにスリーブ41がハウジング内において上方に位置している場合には、スリーブ41が下方に位置している場合よりも、弁体45を開弁位置まで変位させたときのスプリング46の圧縮量が少なくなる。すなわち、このときには、スリーブ41が下方に位置している場合と比較して弁体45がスプリング46から受ける付勢力が小さくなり、リリーフ圧が低くなる。
【0142】
このようにこの第2の実施形態にかかる潤滑油供給システムによれば、油圧切替え弁50を操作して背圧室48内の油圧を制御し、スリーブ41をスプリング46の伸縮方向に変位させることにより、リリーフ圧が高くなる高リリーフ圧状態と、リリーフ圧が低くなる低リリーフ圧状態とを切替えることができる。
【0143】
この第2の実施形態にかかる潤滑油供給システムにあっては、機関運転中に油圧切替え弁50を操作して低リリーフ圧状態に切替える低圧制御を実行するようにしている。
このように低リリーフ圧状態に切替えて供給通路31内を流れる潤滑油の油圧を低下させる低圧制御を実行すれば、潤滑油の循環量を制限し、内燃機関10に作用するオイルポンプ30の駆動負荷を低減して内燃機関10の燃料消費量を抑制することができるようになる。
【0144】
また、この第2の実施形態の内燃機関10にあっては、第1の実施形態にかかる内燃機関10と同様に、内燃機関10の出力軸12との間の駆動力の伝達を遮断するクラッチ23をウォーターポンプ20に設けている。これにより、内燃機関10にあっては、機関回転速度NEに依存することなく機関冷却水の吐出量を制限することができるようになっている。
【0145】
そして、この第2の実施形態の電子制御装置100は、第1の実施形態にかかる電子制御装置100と同様に、内燃機関10における発熱量や冷却能力と相関を有する各種のパラメータを参照して必要に応じて水停止制御を実行することにより、暖機の早期完了を図ったり、ウォーターポンプ20の駆動負荷を低減したりして燃料消費量の低減を図る。
【0146】
ところで、ウォーターポンプ20の駆動を停止する水停止制御に加え、燃料消費量を低減するために、潤滑油の循環量を制限して内燃機関に作用するオイルポンプの駆動負荷を低減する低圧制御を実行するようにしている場合には、低圧制御の実行に伴ってターボチャージャ11の軸受け部分に供給される潤滑油の量が減少してしまう。
【0147】
そのため、ウォーターポンプ20の駆動が停止されて軸受け部分の温度が上昇しやすい状況にあるときに、低圧制御が実行されて更に潤滑油の循環量まで低減されてしまった場合には、ターボチャージャ11の温度が過剰に上昇してオイルコーキングや焼き付き等が発生してしまうおそれがある。
【0148】
そこで、この第2の実施形態にかかる電子制御装置100は、潤滑油の循環量を確保してターボチャージャ11の保護を図るべく、水停止制御を実行しているときに、図7に示される循環量確保ルーチンを実行するようにしている。
【0149】
以下、図7を参照して循環量確保ルーチンについて説明する。尚、図7はこの第2の実施形態にかかる循環量確保ルーチンにおける処理の流れを示すフローチャートである。この循環量確保ルーチンは、水停止制御が実行されているときに電子制御装置100において所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0150】
図7に示されるように、この循環量確保ルーチンが開始されると、電子制御装置100はまずステップS200において、その時点までの一定期間における機関回転速度NEの積算値及び負荷率KLの積算値を算出する。そして、算出された積算回転速度及び積算負荷率に基づいてターボチャージャ11の軸受け部分の潤滑に供された潤滑油がターボチャージャ11から排出されるときの同潤滑油の温度である出口油温を推定する。
【0151】
内燃機関10で発生する燃焼による発熱量は機関回転速度NE及び負荷率KLと高い相関を有している。したがって、その時点までの一定期間の間における機関回転速度NEの積算値及び負荷率KLの積算値を算出すれば、算出された積算回転速度及び積算負荷率に基づいてその一定期間の間の内燃機関10の発熱量を推定することができる。具体的には、積算回転速度が高いときほど、また積算負荷率が大きいときほどその一定期間の間に得られた発熱量が大きいことが推定される。そして、内燃機関10の発熱量を推定することができれば、推定された発熱量に基づいて軸受け部分の温度と高い相関を有する出口油温の変化を推定することもできる。
【0152】
こうして出口油温を推定するとステップS210へと進み、電子制御装置100は、出口油温が基準油温以上であるか否かを判定する。尚、基準油温の値は、出口油温が同基準油温以上になったときに、そのことに基づいて、低圧制御を実行した場合に軸受け部分の温度が基準温度以上まで上昇するようになることを予測することができるように、予め行う実験等の結果に基づいて設定されている。
【0153】
尚、基準温度は、上記第1の実施形態と同様にオイルコーキングやタービンの焼き付き等が発生する可能性が高くなる温度の水準を示す基準値として設定される値であり、予め行う実験等の結果に基づき、オイルコーキングや焼き付き等が発生する温度の最小値に基づいて設定されている。
【0154】
ステップS210において出口油温が基準油温以上である旨の判定がなされた場合(ステップS210:YES)には、低圧制御を実行した場合に軸受け部分の温度が基準温度以上まで上昇することが予測されるため、ステップS220へと進み、電子制御装置100は低圧制御の実行を禁止する。
【0155】
一方、ステップS210において出口油温が基準油温未満である旨の判定がなされた場合(ステップS210:NO)には、低圧制御を実行しても軸受け部分の温度が基準温度以上まで上昇しないことが予測されるため、ステップS230へと進み、電子制御装置100は低圧制御の実行を許可する。
【0156】
本実施形態の内燃機関10にあっては、水停止制御を実行しているときにこのような循環量確保ルーチンを繰り返し実行することにより、出口油温に基づいて低圧制御の実行可否を決定する。そして、出口油温が基準油温以上である場合には、それに基づいて、低圧制御を実行した場合にターボチャージャ11の軸受け部分の温度が基準温度以上なることを予測し、低圧制御の実行を禁止するようにしている。
【0157】
以上説明した第2の実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)上記第2の実施形態にあっては、ウォーターポンプ20の駆動が停止されているときには、図7を参照して説明した循環量確保ルーチンを実行するようにしている。そして、低圧制御を実行した場合に軸受け部分の温度が基準温度以上になることが予測されるときに、低圧制御の実行を禁止して軸受け部分に供給される潤滑油の循環量を確保する処理を実行するようにしている。そのため、ウォーターポンプ20の駆動が停止されて軸受け部分の温度が上昇しやすい状況にあるときに、潤滑油の循環量が低減されてしまうことを抑制することができる。したがって、機関冷却水の循環量の制限を通じた機関温度の制御を実行しながら、ターボチャージャ11の温度が過剰に上昇してしまうことを抑制することができる。
【0158】
すなわち、上記第2の実施形態によれば、ターボチャージャ11の軸受け部分の温度が過剰に上昇してしまうことを抑制しつつ、機関冷却水の循環量の制限を通じた内燃機関10の温度制御を行うことにより、ターボチャージャ11の保護と機関温度の管理、並びに燃料消費量の低減の両立を図ることができる。
【0159】
(2)ウォーターポンプ20の駆動を停止しており、低圧制御を実行した場合に軸受け部分の温度が基準温度以上になることが予測されるときに、低圧制御の実行を禁止するようにしている。そのため、ウォーターポンプ20の駆動量が制限されて軸受け部分の温度が上昇しやすい状況にあるときに、潤滑油の循環量が低減されてしまうことを抑制することができる。したがって、ウォーターポンプ20の駆動量を制限しており、軸受け部分の温度が基準温度以上になることが予測されるときに、潤滑油の循環量を確保する構成を実現することができる。これにより、ターボチャージャ11の軸受け部分の温度が過剰に上昇してしまうことを抑制しつつ、機関冷却水の循環量の制限を通じた内燃機関10の温度制御を行うことにより、ターボチャージャ11の保護と機関温度の管理、並びに燃料消費量の低減の両立を図ることができる。
【0160】
(3)軸受け部の潤滑に供されてターボチャージャ11から排出される潤滑油の温度である出口油温が高いときほど、軸受け部分の温度が高いことが推定される。
そのため、上記第2の実施形態では、出口油温が基準油温以上であることが判定されたときに、それに基づいて、低圧制御を実行した場合に軸受け部分の温度が基準温度以上になることを予測するようにしている。したがって、出口油温に基づいて低圧制御の実行可否を判定することができる。
【0161】
(4)内燃機関10の出力軸12の単位時間あたりの回転数を示す機関回転速度NEが高いほど、内燃機関10において単位時間あたりに行われる燃焼の回数は多くなる。したがって、内燃機関10で発生する燃焼による発熱量は機関回転速度NEと高い相関を有しており、その時点までの一定期間の間における機関回転速度NEの積算値を算出すれば、算出された積算回転速度に基づいてその一定期間の間に行われた燃焼の回数及びその燃焼によって得られた発熱量を推定することができる。具体的には、積算回転速度が高いときほど、その一定期間の間に得られた発熱量が大きいことが推定される。
【0162】
そして、内燃機関10の発熱量を推定することができれば、推定された発熱量に基づいて軸受け部分の温度と高い相関を有する出口油温の変化を推定することもできる。
したがって、上記第2の実施形態のように、その時点までの一定期間の間における機関回転速度NEの積算値を算出し、算出された積算回転速度に基づいて出口油温を推定する構成を採用すれば、推定された出口油温に基づいて低圧制御を実行した場合に軸受け部分の温度が基準温度以上になるか否かを予測することができる。
【0163】
(5)また、内燃機関10の燃料噴射量Qは、負荷率KLに応じて変化する。具体的には負荷率KLが高いときほど燃料噴射量Qが多くなり、負荷率KLが低いときには燃料噴射量Qが少なくなる。そのため、内燃機関10で発生する燃焼による発熱量は負荷率KLとも高い相関を有している。したがって、その時点までの一定期間の間における負荷率KLの積算値を算出すれば、算出された積算負荷率に基づいてその一定期間の間に燃焼に供された燃料の量及びその燃料の燃焼によって得られた発熱量を推定することができる。具体的には、積算負荷率が大きいときほど、その一定期間の間に得られた発熱量が大きいことが推定される。
【0164】
そして、内燃機関10の発熱量を推定することができれば、推定された発熱量に基づいて軸受け部分の温度と高い相関を有する出口油温の変化を推定することもできる。
したがって、上記第2の実施形態のように、その時点までの一定期間の間における負荷率KLの積算値を算出し、算出された積算負荷率に基づいて出口油温を推定する構成を採用すれば、推定された出口油温に基づいて低圧制御を実行した場合に軸受け部分の温度が基準温度以上になるか否かを予測することができる。
【0165】
(6)また、上記第2の実施形態にあっては、積算回転速度と積算負荷率の双方に基づいて出口油温を推定し、その出口油温に基づいて軸受け部分の温度が基準温度以上になるか否かを予測するようにしている。そのため、いずれか一方に基づいて出口油温を推定する場合と比較してより高い精度で出口油温を推定することができ、軸受け部分の温度が基準温度以上になるか否かをより高い精度で予測することができる。
【0166】
尚、上記第2の実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・上記第2の実施形態では、内燃機関10とターボチャージャ11の双方に供給する潤滑油の循環量を低減させる低圧制御を実行する内燃機関10に本発明を適用した例を示したが、ターボチャージャ11に供給する潤滑油の循環量のみを低減させる低圧制御を実行する内燃機関にこの発明を適用することもできる。
【0167】
・上記第2の実施形態にあっては、積算回転速度と積算負荷率とに基づいて出口油温を推定する構成を示したが、出口油温の推定方法は適宜変更することができる。例えば、積算回転速度と積算負荷率のうち、いずれか一方に基づいて出口油温を推定する構成を採用することもできる。
【0168】
・機関回転速度NEの積算値や負荷率KLの積算値に換えて吸入空気量GAの積算値に基づいて内燃機関10の発熱量を推定することもできるため、吸入空気量GAの積算値である積算吸入空気量に基づいて出口油温を推定することもできる。
【0169】
・また、ターボチャージャ11のハウジングにおける潤滑油の出口近傍に温度センサを設け、この温度センサによって検出される温度に基づいて出口油温を推定する構成を採用することもできる。
【0170】
・上記第2の実施形態にあっては、軸受け部分の温度が基準温度以上になることが予測されるときに低圧制御の実行を禁止して潤滑油の循環量を確保する例を示したが、軸受け部分の温度に基づいて低圧制御を実行する構成を採用することもできる。具体的には、出口油温が基準油温未満のときには低圧制御を実行する一方、出口油温が基準油温以上のときには前記低圧制御を実行せずに潤滑油を供給する。
【0171】
こうした構成を採用した場合にも、ウォーターポンプ20の駆動が停止されて軸受け部分の温度が上昇しやすい状況にあり、それに加えて出口油温が基準油温以上であり、低圧制御を実行した場合に軸受け部分の温度が高温になることが予測されるときには、低圧制御が実行されず、潤滑油の循環量が確保されるようになる。
【0172】
したがって上記第2の実施形態と同様に、機関冷却水の循環量の制限を通じた機関温度の制御を実行しながら、ターボチャージャ11の温度が過剰に上昇してしまうことを抑制することができる。
【0173】
すなわち、ターボチャージャ11の軸受け部分の温度が過剰に上昇してしまうことを抑制しつつ、機関冷却水の循環量の制限を通じた内燃機関の温度制御を行うことにより、ターボチャージャ11の保護と機関温度の管理、並びに燃料消費量の低減の両立を図ることができるようになる。
【0174】
尚、上記のように出口油温に基づいて低圧制御を実行する場合における基準油温は、潤滑油が炭化するオイルコーキングやタービンの焼き付き等が発生する可能性が高くなる油温の水準を示す基準値として設定するものである。そのため、この場合の基準油温は、予め行う実験等の結果に基づき、オイルコーキングや焼き付き等が発生する油温の最小値に基づいて設定される。
【0175】
その他、上記各実施形態に共通して変更可能な要素としては次のようなものがある。
・第1の実施形態にあっては、アイドリングストップ制御を実行する内燃機関の制御装置として本発明を適用した例を示し、潤滑油の循環量を確保する処理として、アイドリングストップの実行を禁止する構成を示した。また、第2の実施形態にあっては、潤滑油の循環量を低減させる低圧制御を実行する内燃機関の制御装置として本発明を適用した例を示し、潤滑油の循環量を確保する処理として、低圧制御の実行を禁止する構成を示した。
【0176】
これに対して、アイドリングストップ制御と低圧制御の双方を実行する内燃機関に本発明を適用する場合には、各実施形態における循環量確保ルーチンを組み合わせた構成を採用することもできる。
【0177】
例えば、図8に示されるような循環量確保ルーチンを実行するようにすればよい。すなわち、図8に示されるようにステップS100においてアイドリングストップ条件が成立していない旨の判定がなされた場合(ステップS100:NO)又はステップS130においてアイドリングストップの実行が禁止された場合にステップS200へと進むようにする。そして、ステップS210において出口油温が基準油温以上であることが判定されたときに低圧制御の実行を禁止するようにすればよい。
【0178】
こうした構成を採用すれば、アイドリングストップが禁止されている状態のときに低圧制御が実行され、それによって軸受け部分の温度が過剰に上昇してしまうことを抑制することができる。
【0179】
・上記各実施形態にあっては、機関駆動式のウォーターポンプ20を備える内燃機関10を制御する電子制御装置100として本発明を適用した例を示したが、電動ウォーターポンプを備える内燃機関の制御装置としとこの発明を適用することもできる。尚、電動ウォーターポンプを備える内燃機関にあっては、電動ウォーターポンプの余分な駆動を抑制することにより、オルタネータやジェネレータの駆動量を低減することができる。したがって、ひいてはオルタネータやジェネレータを駆動するための内燃機関の駆動負荷を低減して燃料消費量の抑制を図ることができる。
【0180】
・尚、上記各実施形態にあっては、ウォーターポンプ20の駆動量を制限する処理としてクラッチ23による係合を解除してウォーターポンプ20の駆動を停止する水停止制御を実行する例を示したが電動ウォーターポンプであれば、機関回転速度NEに依存することなく自在に駆動量を調整することができる。そのため、電動ウォーターポンプを備える内燃機関にあっては、内燃機関の発熱量と冷却能力とのバランスに応じて最も効率的に機関温度を制御することができるようにウォーターポンプの駆動量をきめ細かく制御することができる。
【0181】
すなわち、内燃機関10の発熱量に合わせて電動ウォーターポンプの駆動量を調整することにより、最も少ない駆動量で機関温度を適切な水準に保持することができる。尚、本発明は、上記各実施形態で例示したようにウォーターポンプを停止する水停止制御を実行するもののみならず、このようにウォーターポンプの駆動量をきめ細かく制御することによってその駆動量を制限し、機関温度を制御する内燃機関の制御装置に対しても適用することができる。尚、電動ウォーターポンプに限らず、機関駆動式のウォーターポンプであってもクラッチの断接を間欠的に繰り返したり、クラッチの押圧力を調整したりすることによって駆動量を調整することが可能である。
【0182】
・アイドリングストップ条件として信号待ちによる車両停止状態を想定した条件を例示したが、ハイブリッド車のように走行中に機関運転が自動停止される車両に搭載される内燃機関の制御装置としてこの発明を適用する場合には、そうした走行中の機関停止も考慮したアイドリングストップ条件を設定することが望ましい。
【0183】
そして、走行中の機関停止も含めたアイドリングストップ条件が成立したときに、機関運転を停止した場合に軸受け部分の温度が基準温度以上まで上昇するか否かを予測するようにすれば、こうしたハイブリッド車に搭載される内燃機関の制御装置として本発明を適用することができるようになる。
【符号の説明】
【0184】
10…内燃機関、11…ターボチャージャ、12…出力軸、20…ウォーターポンプ、21…プーリ、22…ベルト、23…クラッチ、24…サーモスタットバルブ、25…還流通路、26…ラジエータ、27…バイパス通路、30…オイルポンプ、31…供給通路、32…オイルパン、33…リリーフ通路、34…リリーフ弁、40…リリーフ弁、41…スリーブ、41a…底面、41b…頂面、42…リリーフポート、45…弁体、46…スプリング、47…支持部材、48…背圧室、50…油圧切替え弁、51…分岐通路、52…背圧通路、53…ドレン通路、90…クランク角センサ、91…水温センサ、92…車速センサ、93…エアフロメータ、94…アクセルポジションセンサ、100…電子制御装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機関冷却水の一部が導入されるとともに、軸受け部分に潤滑油が供給されるターボチャージャを備える内燃機関を制御する内燃機関の制御装置であり、機関冷却水を吐出するウォーターポンプの駆動量を制限し、機関冷却水による冷却能力を調整することによって機関温度を制御する内燃機関の制御装置であって、
前記ウォーターポンプの駆動量を制限しており、前記軸受け部分の温度が基準温度以上になることが予測されるときに、前記軸受け部分に供給される潤滑油の循環量を確保する処理を実行する
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
アイドリングストップ条件が成立したときに、自動的に機関運転を停止するアイドリングストップ制御を実行する内燃機関の制御装置であり、
前記ウォーターポンプの駆動量を制限しており、機関運転を停止した場合に前記軸受け部分の温度が基準温度以上になることが予測されるときには、機関運転の自動停止を禁止する
請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記ウォーターポンプの駆動量が制限されている状況下でアイドリングストップ条件が成立したときに、機関運転を停止した場合に前記軸受け部分の温度が基準温度以上になるか否かを予測し、
機関運転を停止した場合に前記軸受け部分の温度が基準温度以上になることが予測された場合に、当該アイドリングストップ条件の成立に基づく機関運転の自動停止を禁止する
請求項2に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記ウォーターポンプの駆動量が制限されている状況下で前記アイドリングストップ条件が成立したときに、その時点までの一定期間の間における機関回転速度の積算値を算出し、算出された積算回転速度に基づいて機関運転を停止した場合に前記軸受け部分の温度が基準温度以上になるか否かを予測する
請求項3に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項5】
前記ウォーターポンプの駆動量が制限されている状況下で前記アイドリングストップ条件が成立したときに、その時点までの一定期間の間における前記内燃機関の負荷率の積算値を算出し、算出された積算負荷率に基づいて機関運転を停止した場合に前記軸受け部分の温度が基準温度以上になるか否かを予測する
請求項3又は請求項4に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項6】
潤滑油の循環量を制限する低圧制御を実行して前記内燃機関に作用するオイルポンプの駆動負荷を低減する内燃機関の制御装置であり、
前記ウォーターポンプの駆動量を制限しており、前記低圧制御を実行した場合に前記軸受け部分の温度が基準温度以上になることが予測されるときには、前記低圧制御の実行を禁止する
請求項1〜5のいずれか一項に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項7】
前記軸受け部分の潤滑に供された潤滑油が前記ターボチャージャから排出されるときの同潤滑油の温度である出口油温が基準油温以上であることに基づいて前記低圧制御を実行した場合に前記軸受け部分の温度が基準温度以上になることを予測し、
前記低圧制御の実行を禁止する
請求項6に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項8】
機関冷却水の一部が導入されるとともに、軸受け部分に潤滑油が供給されるターボチャージャを備える内燃機関を制御する制御装置であり、機関冷却水を吐出するウォーターポンプの駆動量を制限し機関冷却水による冷却能力を調整することによって前記内燃機関の温度を制御するとともに、潤滑油の循環量を制限する低圧制御を実行して前記内燃機関に作用するオイルポンプの駆動負荷を低減する内燃機関の制御装置であって、
前記ウォーターポンプの駆動量を制限しているときには、前記軸受け部分の潤滑に供された潤滑油が前記ターボチャージャから排出されるときの同潤滑油の温度である出口油温に基づいて前記低圧制御の実行可否を判定し、前記出口油温が基準油温未満のときには前記低圧制御を実行する一方、前記出口油温が基準油温以上のときには前記低圧制御を実行せずに潤滑油を供給する
ことを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項9】
その時点までの一定期間の間の機関回転速度の積算値に基づいて前記出口油温を推定する
請求項7又は請求項8に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項10】
その時点までの一定期間の間の前記内燃機関の負荷率の積算値に基づいて前記出口油温を推定する
請求項7〜9のいずれか一項に記載の内燃機関の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−21426(P2012−21426A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−158213(P2010−158213)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】