説明

内燃機関の始動時制御装置

【課題】 振動レベルやNOxの悪化を最小限に抑えつつ、始動直後より排温を上昇っせて、触媒の早期活性化を図る。
【解決手段】 クランキング中で、二次空気供給用のエアポンプを作動させることができない第1の期間、クランキングの終了後にバッテリ電圧が安定するまでの、エアポンプを作動させることができない第2の期間(Tbth)、及び、エアポンプの作動開始後、吐出量が安定するまでの第3の期間、多サイクル運転(12サイクル運転)に切換える。12サイクル運転中、通常の燃焼を行わせる膨張行程以外の他の膨張行程にて燃料カット又は点火カットにより非燃焼とし、直後の排気行程にて、空気又は未燃混合気を排出させ、これを二次空気の代わりにする。その後は、4サイクル運転に切換え、エアポンプからの二次空気で、排温を上昇させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、始動直後にエアポンプを作動させて排気通路に二次空気を供給し、排気温度を上昇させて、排気浄化触媒の早期活性化を図る内燃機関の始動時制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の技術では、始動直後にエアポンプを作動させて排気通路に二次空気を供給している。また、一部の気筒について燃料カットを行うことで、運転気筒の仕事を増大させて、その排気熱量を増大させると共に、休止気筒の排気弁を閉じることで、低温空気の排出を防止することにより、排気通路での二次空気供給による再燃焼を促進している。
【0003】
また、特許文献2に記載の技術では、二次空気を供給する専用のエアポンプを不要とするため、一部の気筒について燃料カットを行うことで、当該気筒からの排気(空気)を二次空気として触媒上流に供給している。
【特許文献1】特開2004−124823号公報
【特許文献2】特開平11−311119号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のように、エアポンプを用いる場合、クランキング中はスタータモータの作動を優先させるため、クランキング終了直後もバッテリ電圧の変動防止のため、エアポンプを作動させることができず、二次空気を供給できない。また、エアポンプの作動開始後も吐出量が安定するまでの間は、十分な二次空気の供給が困難である。従って、二次空気の供給は、始動直後の触媒の早期活性化やHC低減を目的とするものでありながら、肝心の期間に、二次空気を供給できず、再燃焼効果が得られない。
【0005】
また、特許文献2のように、一部の気筒について燃料カットを行って、当該気筒の排気(空気)を二次空気として用いる技術は、確かに始動直後の排温向上、HC低減に効果があるが、部分気筒運転中は、エンジンの振動レベルが増大し、また運転気筒の燃焼圧が上昇することでNOx排出量が大となるので、長時間の部分気筒運転により、振動レベル及びNOxの悪化が顕著となる。この点は、二次空気供給中に部分気筒運転する特許文献1についても同様である。
【0006】
本発明は、このような実状に鑑み、振動レベルやNOxの悪化を最小限に抑えつつ、始動直後より排温を上昇させて、触媒の早期活性化を図ることのできる内燃機関の始動時制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このため、本発明では、エアポンプによる排気通路への二次空気の供給が可能となるまでの期間、通常の4サイクル運転から、これよりサイクル数が多い多サイクル運転に切換え、多サイクル運転中、通常の燃焼を行わせる膨張行程以外の他の膨張行程にて非燃焼とし、非燃焼の膨張行程の直後の排気行程にて、空気又は未燃混合気を排気通路に排出させる構成とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、エアポンプによる排気通路への二次空気の供給が可能となるまでという限られた期間、多サイクル運転を行って、空気又は未燃混合気を排出させ、これを二次空気の代わりとすることで、始動直後より排温を上昇させて、触媒の早期活性化を図ることができる。そして、この期間の後は、エアポンプからの二次空気を用いることで、多サイクル運転の時間を短くして、振動レベルやNOxの悪化を最小限に抑えることができる。また、多サイクル運転は、これを燃料カットにより実現する場合でも、各気筒を所定の順序で燃料カットするようなものであることから、一部気筒の燃料カットより、振動レベルの悪化が少ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の一実施形態を示すエンジンのシステム図である。
エンジン1の吸気通路2には、吸気マニホールド3の入口側に位置させて、吸入空気量を制御する電制スロットル弁4が設置されている。電制スロットル弁4は、エンジンコントロールユニット(以下ECUという)20からの信号により作動するステップモータ等により開度制御される。
【0010】
吸気マニホールド3の出口側のブランチ部には、各気筒の吸気ポート5に(吸気弁7傘部を指向して)燃料を噴射する燃料噴射弁6が取付けられている。燃料噴射弁6は、ECU20からエンジン回転に同期して出力される噴射パルス信号により、そのパルス幅によって定められる時間、ソレノイドに通電されて開弁し、所定圧力に調圧された燃料を噴射する。
【0011】
電制スロットル弁4の制御を受けた空気と、燃料噴射弁6から噴射された燃料は、吸気弁7が開いたときに、エンジン1の燃焼室10に吸入される。
燃焼室10内に吸入された空気と燃料は、混合気を形成し、ECU20により制御される点火時期にて、点火プラグ11により点火されて燃焼する。燃焼後の排気は、排気弁12を介して、排気通路13へ排出される。排気通路13には排気浄化触媒14が設けられている。
【0012】
ここで、排気通路13の排気浄化触媒14上流、特に排気の高温部であるシリンダヘッド内の各気筒の排気ポート15に(排気弁12傘部を指向して)二次空気を供給し得るように、シリンダヘッド内に二次空気供給通路16が設けられている。そして、二次空気供給用の電動式エアポンプ17が設けられ、その吐出側は、遮断弁18、及び配管(ギャラリ)19を介して、各気筒への二次空気供給通路16に接続されている。尚、図1中のBはエアポンプ17の電源となるバッテリを示している。
【0013】
ECU20には、アクセルペダルセンサ21により検出されるアクセル開度APO、クランク角センサ22により検出されるエンジン回転数Ne、エアフローメータ23により検出される吸入空気量Qa、水温センサ24により検出されるエンジン冷却水温Tw、空燃比センサ25により検出される排気空燃比、触媒温度センサ26により検出される触媒温度Tcなどが入力されている。また、エアポンプ17の吐出側の圧力(二次空気圧)2Apを検出する圧力センサ27が設けられ、これからも信号が入力されている。この他、図示しないが、イグニッションスイッチ及びスタートスイッチを有するエンジンキースイッチからも信号が入力されている。
【0014】
ECU20は、これらの入力信号より検出されるエンジン運転条件に基づいて、電制スロットル弁4の開度、燃料噴射弁6の燃料噴射時期及び燃料噴射量、点火プラグ11の点火時期などを制御する。また、エアポンプ17、遮断弁18の作動を制御する。尚、遮断弁18はエアポンプ17のON時に開、OFF時に閉とするもので、エアポンプ17自体がOFF時の遮断機能を有しているときは省略できる。
【0015】
次に、始動直後の排気浄化触媒14の早期活性化(暖機)のための制御について、図2のタイムチャートにより説明する。
始動時のクランキング中は、スタータモータの駆動を優先させるため、エアポンプをOFFとする。
クランキング終了後は、バッテリ電圧が安定するまでの間、電圧変動を防止するために、エアポンプをOFFとする。従って、クランキング終了時点より、タイマTbをスタートさせ、タイマTbの値が、予め定めた時間Tbthに達した時点で、エアポンプをONとする。但し、エアポンプをONにしても、その動作遅れにより、ポンプ吐出量が安定する(二次空気圧が規定の圧力に到達する)までには、遅れを有する。
【0016】
その後、触媒の暖機が完了した時点でエアポンプを再びOFFとする。
一方、通常(常温始動の場合)は、クランキング中で、エアポンプをONにすることができない第1の期間、クランキングの終了後にバッテリ電圧が安定するまでの、エアポンプをONにすることができない第2の期間(Tbth)、及び、エアポンプのON後、吐出量が安定する(二次空気圧が規定の圧力に到達する)までの第3の期間、通常の4サイクル運転から、4×Nint (Nint は2以上の整数)で、かつ、気筒間の燃焼が等間隔となるようなサイクル数の多サイクル運転、4気筒エンジンの場合、12サイクル運転に切換える。そして、12サイクル運転中、通常の燃焼を行わせる膨張行程以外の他の膨張行程にて非燃焼とし、非燃焼の膨張行程の直後の排気行程にて、空気又は未燃混合気(生ガス)を排気通路に排出させ、これを二次空気の代わりにする。尚、燃料カットにより非燃焼とする場合に、空気を排出でき、点火カットにより非燃焼とする場合に、未燃混合気を排出できる。
【0017】
このため、クランキング開始より12サイクル運転を行い(常温始動の場合)、エアポンプのON時点より、圧力センサにより検出される二次空気圧を監視して、二次空気圧が規定の圧力に到達した時点で、12サイクル運転を終了し、4サイクル運転に切換える。
低温始動の場合(特に寒冷地での始動の場合)は、始動性能を優先させるため、クランキングから完爆まで、4サイクル運転し、完爆後に12サイクル運転を開始する。
【0018】
尚、クランキング後にバッテリ電圧が安定するまでの第2の期間は、ここでは、時間Tbthにより管理したが、バッテリ電圧を検出するセンサを設けて管理してもよい。また、エアポンプのON後、吐出量が安定するまでの第3の期間は、ここでは、エアポンプの吐出側に圧力センサを設けて管理したが、エアポンプのON時点よりタイマTpをスタートさせて、時間により管理してもよい。
【0019】
次に、始動直後の排気浄化触媒14の早期活性化(暖機)のための制御について、図3のエアポンプのON・OFF制御のフローチャートと、図4の4サイクル運転・12サイクル運転の切換制御のフローチャートとにより説明する。尚、これらのフローはクランキングの開始と共に時間同期又は回転同期で実行される。
先ず、図3のエアポンプのON/OFF制御のフローチャートについて説明する。
【0020】
S1では、触媒昇温要求があるか否かを判定する。具体的には、触媒温度センサ26により触媒温度Tcを検出し、所定の活性温度より低いか否かを判定する。運転条件から触媒温度を予測して、活性・非活性を判定してもよい。触媒昇温要求がある場合、すなわち触媒14が非活性の場合は、S2へ進む。
S2では、クランキング中、すなわちスタートスイッチがONか否かを判定し、クランキング中の場合は、S3の処理へ進む。
【0021】
S3では、二次空気供給用のエアポンプ17をOFF状態に保持し、遮断弁18も閉状態に保持して、リターンする。スタータモータによるクランキング中であるので、スタータモータの電源となるバッテリBの消費を抑えるためである。
S2での判定で、クランキング中でない場合(すなわちクランキング後の場合)は、S4へ進む。
【0022】
S4では、クランキング終了後の経過時間を計時するタイマTbの値を、バッテリ電圧が安定するまでの所定時間Tbthと比較して、タイマTb<Tbthか否かを判定し、タイマTb<Tbthの場合、すなわち、バッテリ電圧が安定するまでの間は、前記同様、S3の処理へ進み、二次空気供給用のエアポンプ17をOFF状態に保持し、遮断弁18も閉状態に保持して、リターンする。
【0023】
S4での判定で、タイマTb≧Tbthの場合、すなわち、バッテリ電圧が安定した後は、S5の処理へ進む。
S5では、二次空気供給用のエアポンプ17をONにし、遮断弁18を開いて、リターンする。但し、エアポンプ17をONにしても、エアポンプ17の吐出量が安定する(二次空気圧が規定の圧力に到達する)までには、所定期間の遅れがある。
【0024】
S1での判定で、触媒昇温要求がなくなった場合、すなわち触媒の暖機が終了した場合は、S6の処理へ進み、二次空気供給用のエアポンプ17をOFFにし、遮断弁18を閉じて、リターンする。
次に、図4の4サイクル運転・12サイクル運転の切換制御のフローチャートについて説明する。
【0025】
S10では、前記S1と同様、触媒昇温要求があるか否かを判定する。触媒昇温要求がある場合、すなわち触媒14が非活性の場合は、S11へ進む。
S11では、完爆判定未了か否かを判定する。完爆判定はエンジン回転数Neなどから行う。完爆判定未了の場合は、S12へ進む。
S12では、12サイクル運転での始動を禁止する条件(12サイクル始動禁止)か否か、具体的には、エンジン冷却水温Twが所定値以下である寒冷地での低温始動か否かを判定する。12サイクル始動禁止(低温始動)の場合は、S13の処理へ進む。
【0026】
S13では、通常の4サイクル運転として、リターンする。
S12での判定で、12サイクル始動禁止(低温始動)でない場合、すなわち常温始動の場合は、S15の処理へ進む。
S15では、12サイクル運転に切換えて、リターンする。
S11での判定で、完爆判定未了でない場合、すなわち完爆判定後の場合は、S14へ進む。
【0027】
S14では、圧力センサ27により検出される二次空気圧2Apを読込み、所定値2Apthと比較して、2Ap<2Apthか否かを判定し、2Ap<2Apthの場合、すなわち、エアポンプ17の吐出量が安定する(二次空気圧が規定の圧力に到達する)までの間は、前記同様、S15の処理へ進み、12サイクル運転を行う。
S14での判定で、2Ap≧2Apthの場合、すなわち、エアポンプ17の吐出量が安定した後は、S16の処理へ進む。
【0028】
S16では、通常の4サイクル運転に戻して、リターンする。但し、空燃比は、排気通路にてエアポンプ17からの二次空気によって未燃分を燃焼させて、排温を上昇させるために、必要十分な未燃分を排出できるようなリッチ設定である。
S10での判定で、触媒昇温要求がなくなった場合、すなわち触媒の暖機が終了した場合は、S17の処理へ進む。
【0029】
S17では、通常運転のため、4サイクル運転として、リターンする。
次に、4気筒エンジンの場合に、通常の4サイクル運転から、12サイクル運転に切換えることにより、二次空気の代わりに、排気通路に空気又は未燃混合気を供給する態様について、詳細に説明する。
〔第1の態様〕
図5は第1の態様(燃料カットにより空気を排出させる態様)を示している。
【0030】
4サイクル運転は、吸気(混合気)→圧縮(点火)→膨張(燃焼)→排気(既燃ガス)の4サイクルであり、点火順序は、#1→#3→#4→#2である。
12サイクル運転は、吸気→圧縮→膨張→排気のパターンを3回繰り返すものであり、吸気→圧縮→膨張→排気の1パターンでは、吸気行程にて直前の排気行程にて吸気通路内に噴射された燃料と空気との混合気を吸入し、圧縮行程の後期に混合気に点火して、膨張行程にて燃焼させ、排気行程にて既燃ガスを排出させる。残りの2パターンでは、直前の排気行程噴射を行わず(燃料カット)、吸気行程にて空気のみを吸入し、圧縮行程後の膨張行程にて非燃焼とし、排気行程にて空気を排出させる。
【0031】
従って、12サイクル運転は、吸気(混合気)→圧縮(点火)→膨張(燃焼)→排気(既燃ガス)→吸気(空気)→圧縮→膨張(非燃焼)→排気(空気)→吸気(空気)→圧縮→膨張(非燃焼)→排気(空気)となる。
尚、吸気行程にて空気のみを吸入した後の圧縮行程での点火は、カットしても、しなくてもよい。
【0032】
点火と燃焼の順序は、#1(燃焼)→#3→#4→#2(燃焼)→#1→#3→#4(燃焼)→#2→#1→#3(燃焼)→#4→#2であり、気筒間の燃焼を等間隔にすることができる。
この場合、燃焼気筒の空燃比はリッチに設定する(燃料噴射量を増量する)。燃焼気筒から排出される既燃ガス中の未燃燃料を非燃焼気筒から排出される空気で燃焼させるためである。
【0033】
また、多サイクル運転ではトルクが低下するため、スロットル開度増大による空気量アップが前提となる。
〔第2の態様〕
図6は第2の態様(点火カットにより未燃混合気を排出させる態様)を示している。異なる点について説明する。
【0034】
12サイクル運転は、吸気→圧縮→膨張→排気のパターンを3回繰り返すものであり、吸気→圧縮→膨張→排気の1パターンでは、吸気行程にて直前の排気行程にて吸気通路内に噴射された燃料と空気との混合気を吸入し、圧縮行程の後期に混合気に点火して、膨張行程にて燃焼させ、排気行程にて既燃ガスを排出させる。残りの2パターンでは、直前の排気行程噴射を行い、吸気行程にて混合気を吸入し、圧縮行程にて点火をカットすることで、膨張行程にて非燃焼とし、排気行程にて未燃混合気を排出させる。
【0035】
従って、12サイクル運転は、吸気(混合気)→圧縮(点火)→膨張(燃焼)→排気(既燃ガス)→吸気(混合気)→圧縮(非点火)→膨張(非燃焼)→排気(混合気)→吸気(混合気)→圧縮(非点火)→膨張(非燃焼)→排気(混合気)となる。
この場合、燃焼気筒の空燃比はストイキ〜リッチに設定し、非燃焼気筒の空燃比はストイキ〜リーンに設定する。非燃焼気筒から混合気を排出し、燃焼気筒から排出される既燃ガスの熱でその混合気を燃焼させる(既燃ガス中の未燃分も一緒に燃焼させる)ためである。
【0036】
〔第3の態様〕
図7は第3の態様(点火カットによる未燃混合気の排出と燃料カットによる空気の排出とを併用する態様)を示している。異なる点について説明する。
12サイクル運転は、吸気→圧縮→膨張→排気のパターンを3回繰り返すものであり、吸気→圧縮→膨張→排気の1パターンでは、吸気行程にて直前の排気行程にて吸気通路内に噴射された燃料と空気との混合気を吸入し、圧縮行程の後期に混合気に点火して、膨張行程にて燃焼させ、排気行程にて既燃ガスを排出させる。残りの2パターンのうち、1パターンでは、直前の排気行程噴射を行い、吸気行程にて混合気を吸入し、圧縮行程にて点火をカットすることで、膨張行程にて非燃焼とし、排気行程にて未燃混合気を排出させる。もう1パターンでは、直前の排気行程噴射を行わず(燃料カット)、吸気行程にて空気のみを吸入し、圧縮行程後の膨張行程にて非燃焼とし、排気行程にて空気を排出させる。
【0037】
従って、12サイクル運転は、吸気(混合気)→圧縮(点火)→膨張(燃焼)→排気(既燃ガス)→吸気(混合気)→圧縮(非点火)→膨張(非燃焼)→排気(混合気)→吸気(空気)→圧縮→膨張(非燃焼)→排気(空気)となる。
この場合、燃焼気筒の空燃比はストイキ〜リッチに設定し、非燃焼気筒の空燃比はストイキ〜リーンに設定する。
【0038】
パターン順は、燃焼パターン→点火カットによる非燃焼パターン→燃料カットによる非燃焼パターンの順とする。燃焼パターンの直前を、燃料カットによる非燃焼パターンとすることで、筒内に残留する非燃焼時混合気を追い出すことができる。
以上説明したように、本実施形態によれば、始動直後にエアポンプ17を作動させて排気通路13(排気ポート15)に二次空気を供給し、排温を上昇させる場合に、エアポンプ17による排気通路13への二次空気の供給が可能となるまでという限られた期間、多サイクル運転を行って、空気又は未燃混合気を排出させ、これを二次空気の代わりとすることで、始動直後より排温を上昇させて、触媒14の早期活性化を図ることができる。そして、この期間の後は、エアポンプ17からの二次空気を用いることで、多サイクル運転の時間を短くして、振動レベルやNOxの悪化を最小限に抑えることができる。
【0039】
また、多サイクル運転は、これを燃料カットにより実現する場合でも、各気筒を所定の順序で燃料カットするようなものであることから、一部気筒の燃料カットより、振動レベルの悪化が少ない。
また、前記多サイクル運転のサイクル数を、4×Nint (Nint は2以上の整数)とすることで、可変動弁装置が不要となり、かつ、サイクル数を、気筒数に応じ、気筒間の燃焼が等間隔となるように定めることで、可変サイクルでの安定性を向上させることができる。具体的には、4気筒(又は8気筒)エンジンの場合、12サイクル運転とすることで、実用的なものとなる。
【0040】
また、前記期間に、クランキング中で、エアポンプ17を作動させることができない第1の期間を含むことにより、クランキング中の消費電力の低減(スタータモータによる始動性の向上)と、触媒暖機性能とを両立させることができる。
また、前記期間に、クランキングの終了後にバッテリ電圧が安定するまでの、エアポンプ17を作動させることができない第2の期間を含むことにより、バッテリ電圧変動による誤動作の防止と、触媒暖機性能とを両立させることができる。
【0041】
また、前記期間に、エアポンプ17の作動開始後、吐出量が安定するまでの第3の期間を含むことにより、応答性の良くない安価なエアポンプ17でも使用でき、コストアップを防止できる。
また、前記期間のうち、クランキング開始から完爆までは、4サイクル運転し、完爆後に多サイクル運転することにより、始動性を優先させることも可能である。
【0042】
また、多サイクル運転での始動を禁止する条件を予め設定し、禁止条件の場合に、前記期間のうち、クランキング開始から完爆までは、4サイクル運転し、完爆後に多サイクル運転することにより、低温始動時などに、始動性を優先させることも可能である。
尚、以上の説明では、4気筒エンジンの例で12サイクル運転としたが、8気筒エンジンの場合も12サイクル運転で対応できる。
【0043】
8気筒エンジンの場合、4気筒エンジンと同様、各気筒について、吸気→圧縮→膨張(燃焼)→排気→吸気→圧縮→膨張(非燃焼)→排気→吸気→圧縮→膨張(非燃焼)→排気の12サイクル運転とすると、
点火順序が#1→#8→#7→#3→#6→#5→#4→#2のとき、
#1(燃焼)→#8→#7→#3(燃焼)→#6→#5→#4(燃焼)→#2→#1→#8(燃焼)→#7→#3→#6(燃焼)→#5→#4→#2(燃焼)→#1→#8→#7(燃焼)→#3→#6→#5(燃焼)→#4→#2で、等爆となる。
【0044】
また、6気筒エンジンにも適用できる。
6気筒エンジンの場合、各気筒について、吸気→圧縮→膨張(燃焼)→排気→吸気→圧縮→膨張(非燃焼)→排気→吸気→圧縮→膨張(非燃焼)→排気→吸気→圧縮→膨張(非燃焼)→排気→吸気→圧縮→膨張(非燃焼)→排気の20サイクル運転とすると、
点火順序が、#1→#5→#3→#6→#2→#4のとき、
#1(燃焼)→#5→#3→#6→#2→#4(燃焼)→#1→#5→#3→#6→#2(燃焼)→#4→#1→#5→#3→#6(燃焼)→#2→#4→#1→#5→#3(燃焼)→#6→#2→#4→#1→#5(燃焼)→#3→#6→#2→#4で、等爆となる。
【0045】
また、以上の説明では、吸気通路内に燃料を噴射供給する場合について示したが、燃焼室内に直接燃料を噴射供給する直噴式のものに適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施形態を示すエンジンのシステム図
【図2】始動直後の触媒の早期活性化のための制御のタイムチャート
【図3】エアポンプのON/OFF制御のフローチャート
【図4】4サイクル運転・12サイクル運転の切換制御のフローチャート
【図5】12サイクル運転の第1の態様を示す図
【図6】12サイクル運転の第2の態様を示す図
【図7】12サイクル運転の第3の態様を示す図
【符号の説明】
【0047】
1 エンジン
2 吸気通路
3 吸気マニホールド
4 電制スロットル弁
5 吸気ポート
6 燃料噴射弁
7 吸気弁
10 燃焼室
11 点火プラグ
12 排気弁
13 排気通路
14 排気浄化触媒
15 排気ポート
16 二次空気供給通路
17 電動式エアポンプ
18 遮断弁
19 配管(ギャラリ)
20 ECU
21 アクセルペダルセンサ
22 クランク角センサ
23 エアフローメータ
24 水温センサ
25 空燃比センサ
26 触媒温度センサ
27 圧力センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
始動直後にエアポンプを作動させて排気通路に二次空気を供給し、排気温度を上昇させる内燃機関の始動時制御装置において、
前記エアポンプによる排気通路への二次空気の供給が可能となるまでの期間、通常の4サイクル運転から、これよりサイクル数が多い多サイクル運転に切換え、多サイクル運転中、通常の燃焼を行わせる膨張行程以外の他の膨張行程にて非燃焼とし、非燃焼の膨張行程の直後の排気行程にて、空気又は未燃混合気を排気通路に排出させることを特徴とする内燃機関の始動時制御装置。
【請求項2】
前記多サイクル運転のサイクル数は、4×Nint (Nint は2以上の整数)であり、かつ、気筒数に応じ、気筒間の燃焼が等間隔となるように定められることを特徴とする請求項1記載の内燃機関の始動時制御装置。
【請求項3】
前記多サイクル運転は、4気筒又は8気筒エンジンの場合、12サイクル運転であることを特徴とする請求項2記載の内燃機関の始動時制御装置。
【請求項4】
前記多サイクル運転は、吸気→圧縮→膨張→排気のパターンを複数回繰り返すものであり、吸気→圧縮→膨張→排気の1パターンでは、燃料供給により形成された混合気に点火することで、その膨張行程にて燃焼させ、残りのパターンでは、燃料カットにより、その膨張行程にて非燃焼とし、直後の排気行程にて空気を排出させることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の内燃機関の始動時制御装置。
【請求項5】
前記多サイクル運転は、吸気→圧縮→膨張→排気のパターンを複数回繰り返すものであり、吸気→圧縮→膨張→排気の1パターンでは、燃料供給により形成された混合気に点火することで、その膨張行程にて燃焼させ、残りのパターンでは、点火カットにより、その膨張行程にて非燃焼とし、直後の排気行程にて未燃混合気を排出させることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の内燃機関の始動時制御装置。
【請求項6】
前記多サイクル運転は、吸気→圧縮→膨張→排気のパターンを複数回繰り返すものであり、吸気→圧縮→膨張→排気の1パターンでは、燃料供給により形成された混合気に点火することで、その膨張行程にて燃焼させ、残りの少なくとも1つのパターンでは、点火カットにより、その膨張行程にて非燃焼とし、直後の排気行程にて未燃混合気を排出させ、残りの他のパターンでは、燃料カットにより、その膨張行程にて非燃焼とし、直後の排気行程にて空気を排出させることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の内燃機関の始動時制御装置。
【請求項7】
燃焼を行わせる吸気→圧縮→膨張→排気の1パターンの直前は、燃料カットによる非燃焼パターンとすることを特徴とする請求項6記載の内燃機関の始動時制御装置。
【請求項8】
前記期間は、クランキング中で、前記エアポンプを作動させることができない第1の期間を含むことを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1つに記載の内燃機関の始動時制御装置。
【請求項9】
前記期間は、クランキングの終了後にバッテリ電圧が安定するまでの、前記エアポンプを作動させることができない第2の期間を含むことを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1つに記載の内燃機関の始動時制御装置。
【請求項10】
前記期間は、前記エアポンプの作動開始後、吐出量が安定するまでの第3の期間を含むことを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれか1つに記載の内燃機関の始動時制御装置。
【請求項11】
前記期間のうち、クランキング開始から完爆までは、4サイクル運転し、完爆後に多サイクル運転することを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれか1つに記載の内燃機関の始動時制御装置。
【請求項12】
多サイクル運転での始動を禁止する条件を予め設定し、禁止条件の場合に、前記期間のうち、クランキング開始から完爆までは、4サイクル運転し、完爆後に多サイクル運転することを特徴とする請求項1〜請求項11のいずれか1つに記載の内燃機関の始動時制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−214272(P2006−214272A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−24640(P2005−24640)
【出願日】平成17年2月1日(2005.2.1)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】