説明

内燃機関の排気浄化装置

【課題】選択還元触媒からアンモニアが放出され、及び、選択還元触媒でNOxが浄化されずに排出されるのを抑制可能な内燃機関の排気浄化装置を提供する。
【解決手段】排気ガスに含まれる粒子状物質を捕集するフィルタ30と、選択還元触媒を担持する選択還元触媒コンバータ40と、尿素水を供給する尿素水添加弁70と、選択還元触媒の温度を検出する排気温度センサ60Cと、選択還元触媒に流入する排気ガスの温度を調整可能な温度調整手段としての蓄熱材90、バイパス通路16及びバイパスバルブ95と、フィルタ再生処理中に、バイパスバルブ95を制御して排気温度センサ60Cにより取得される選択還元触媒の温度をNOxの浄化率が相対的に高い第1の所定温度域に調整する第1の温度調整処理と、選択還元触媒に吸着されたアンモニアの吸着量を減少させる吸着量減少処理とを実行するECU100とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気通路に設けられる排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の排出する排気ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)を浄化する排気浄化装置として、尿素選択還元排気浄化装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この排気浄化装置は、排気通路に選択還元触媒(SCR)を備える触媒コンバータと、その上流側に設けられた尿素水添加弁とを備える。選択還元触媒は、その触媒担体に、酸化バナジウムなどの触媒金属を担持している。排気通路に尿素水を添加すると、排気ガスの熱により、尿素水が加水分解されてアンモニアが生成され、このアンモニアとNOxが選択還元触媒においてNOxと脱硝反応して窒素と水が生成される。
【0003】
また、特許文献2は、選択還元触媒の上流側に、排気ガスに含まれる粒子状物質を捕集するためのフィルタを設けた排気浄化装置を開示している。この排気浄化装置は、選択還元触媒がフィルタの再生処理による熱の影響を受けるのを抑制して床温を活性温度領域に維持するために、選択還元触媒の上流側に排気ガスの温度を調整するための熱交換器及びバイパス通路を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−286828号公報
【特許文献2】特開2007−154717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような排気浄化装置では、アンモニアスリップやNOxが浄化されずに排出されるのを防ぐために、選択還元触媒に吸着されるアンモニアの量を推定して選択還元触媒のアンモニア吸着量を管理している。
【0006】
特許文献1は、アンモニアスリップを防ぐために、選択還元触媒の床温が所定温度以下である状態が所定期間継続した場合に、選択還元触媒に吸着されたアンモニア量を吸着量減少促進手段(尿素水の添加量を減らす、あるいは、床温を上げる)を用いてリセットすることにより、アンモニア吸着量の推定誤差を抑制する技術を開示している。
【0007】
しかしながら、選択還元触媒の床温が高温であっても運転状況により誤差が生まれ、この誤差が蓄積されるとアンモニアスリップが発生する可能性がある。また、選択還元触媒の床温が低い状態が一定期間継続しないとリセット処理が実行されないため、運転状態によってはリセット処理が行われない、あるいは、リセット処理の実行タイミングが不定期になる可能性がある。さらに、尿素水の供給を停止させてアンモニア吸着量を減らす処理では、リセット処理が完了するまでに時間がかかり、選択還元触媒の床温によってはパージされずに選択還元触媒に残留するアンモニアが発生する可能性がある。また、選択還元触媒の床温が低い状態が一定期間継続して選択還元触媒の加熱を実行する場合、床温を相当に上昇させる必要があり、そのために燃料噴射や噴射時期遅角を行うと燃費が悪化する可能性がある。また、加熱する際に、選択還元触媒を過度に昇温すると、選択還元触媒からアンモニアがパージされる可能性もある。
【0008】
特許文献2の排気浄化装置では、選択還元触媒のアンモニア吸着量が一定に維持されるように制御されるので、フィルタ再生処理の際にもアンモニア吸着量がリセットされることがない。このため、選択還元触媒のアンモニア吸着量の推定量の誤差が積算されやすく、アンモニアスリップやNOxが浄化されずに排出される可能性がある。また、フィルタ再生処理の際に、フィルタの下流にある選択還元触媒も昇温されるため、選択還元触媒からアンモニアスリップが発生する可能性もある。
【0009】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、選択還元触媒からアンモニアが放出され、及び、選択還元触媒でNOxが浄化されずに排出されるのを抑制可能な内燃機関の排気浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る内燃機関の排気浄化装置は、内燃機関の排気通路に設けられ、かつ、排気ガスに含まれる粒子状物質を捕集するフィルタと、前記フィルタの下流側に設けられたアンモニアを還元剤として選択的に還元する選択還元触媒と、前記選択還元触媒へ前記還元剤を供給する還元剤供給手段と、前記選択還元触媒の温度を推定又は検出する温度取得手段と、前記フィルタと前記選択還元触媒との間に配置され、前記選択還元触媒に流入する排気ガスの温度を調整可能な温度調整手段と、前記フィルタの浄化機能を再生するためのフィルタ再生処理中に、前記温度調整手段を制御して前記温度取得手段により取得される前記選択還元触媒の温度をNOxの浄化率が相対的に高くなる第1の所定温度域に調整する第1の温度調整処理と、前記選択還元触媒に吸着されたアンモニアの吸着量を減少させる吸着量減少処理とを実行する制御手段と、を有することを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、フィルタ再生処理を行う際、温度調整手段を用いることで、選択還元触媒の床温をNOx浄化率が相対的に高くなる所定温度域に制御でき、かつ、過度の昇温を抑制して選択還元触媒の劣化を抑制できる。また、フィルタ再生処理終了までに、吸着量減少処理により、選択還元触媒に吸着されたアンモニアの吸着量をゼロに近づけることができるので、推定吸着量の誤差を抑制することができる。
【0012】
上記構成において、前記吸着量減少処理は、前記還元剤供給手段による還元剤の供給量を減少させる処理及び前記選択還元触媒の温度を前記第1の所定温度域よりも高い第2の所定温度域に調整する第2の温度調整処理の少なくとも一方を含む、構成を採用できる。
【0013】
この構成によれば、選択還元触媒に供給する還元剤の量を減少させることで、選択還元触媒に吸着されるアンモニアの量を減少させることができ、また、選択還元触媒の床温をNOx触媒に吸着されたアンモニアがパージされる第2の所定温度域まで上昇させることで、吸着量を減少させることができる。
【0014】
上記構成において、好適には、前記第2の所定温度域は、400〜450℃の範囲内である。
【0015】
選択還元触媒の床温を400〜450℃に維持することで、NOx浄化率を保ちながらアンモニアをパージすることができる。
【0016】
上記構成において、前記温度調整手段は、熱交換器を含む、構成を採用できる。
この構成によれば、選択還元触媒に流入する排気ガスの温度を調整できる。
【0017】
上記構成において、前記温度調整手段は、蓄熱材を含む、構成を採用できる。
この構成によれば、選択還元触媒に流入する排気ガスの温度を調整できる。
【0018】
上記構成において、前記排気通路の前記フィルタと前記選択還元触媒との間において、前記熱交換器又は蓄熱材をバイパスするように配置されたバイパス通路と、前記熱交換器又は蓄熱材と前記バイパス通路とに流入する排気ガスの流量を調整する流量調整手段と、を備え、前記制御手段は、前記流量調整手段を制御することにより、前記選択還元触媒に流入する排気ガスの温度を調整する、構成を採用できる。
【0019】
この構成によれば、排気ガスの一部又は全部を温度調整手段またはバイパス通路を通過させることができるので、より精密な温度調整が可能になる。
【0020】
上記構成において、前記排気通路内に前記フィルタに流入する排気ガスを加熱するための加熱手段をさらに有する、構成を採用できる。
【0021】
この構成によれば、フィルタ再生処理を実行する際や、排気ガスが低温であるときなどにおいて、フィルタ及びNOx触媒に流入する排気ガスの温度をより精密に制御できる。
【0022】
上記構成において、前記選択還元触媒の上流側の前記排気通路内に外気を取り込むための二次空気通路を有する、構成を採用できる。
【0023】
排気通路内に外気を取り込むことで、排気ガスが高温の時に温度を下げることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、選択還元触媒からアンモニアが放出され、及び、選択還元触媒からNOxが浄化されずに排出されるのを抑制可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係る内燃機関の排気浄化装置の概略構成図である。
【図2】ECUによるフィルタ再生処理の一例を示すフローチャートである。
【図3】フィルタ再生処理の際の各種状態量の一例を示すタイミングチャートである。
【図4】触媒床温とNOx浄化率との関係を示すグラフである。
【図5】触媒床温とアンモニア吸着量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照して説明する。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態に係る排気浄化装置の概略構成図である。
【0028】
図1において、内燃機関10は、例えば、ディーゼルエンジンである。この内燃機関10の排気通路15には、上流側から順に、加熱手段としてのバーナー20、フィルタとしてのDPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルタ)30、及び、選択還元触媒コンバータ40が設けられている。
【0029】
また、排気通路15には、DPF30と選択還元触媒コンバータ40との間には、流量調整手段としてのバイパスバルブ95、このバイパスバルブ95の下流側に設けられた蓄熱材90、蓄熱材90の下流側に設けられた排気通路15に尿素水溶液を添加するための尿素水添加弁70と、この尿素水添加弁70の下流に設けられて排気ガスEGと尿素水溶液を混合させるための添加弁下流ミキサ80とが設けられている。なお、尿素水添加弁70はECU100により制御されるようになっている。
【0030】
バイパスバルブ95からはバイパス通路16が分岐し、蓄熱材90を迂回して蓄熱材90の下流側で排気通路15に再び合流している。
【0031】
排気通路15には、DPF30の入口及び出口、ならびに、選択還元触媒コンバータ40の入口にそれぞれ排気温度センサ60A,60B及び60Cが設けられ、また、選択還元触媒コンバータ40の出口には、NOxセンサ65が設けられ、
これらの検出信号は、制御手段としての電子制御装置(ECU)100に入力される。排気温度センサ60Cは、選択還元触媒コンバータ40に流入する排気ガスの温度を検出する温度取得手段を構成している。なお、排気温度センサ60Cを使用せずに、選択還元触媒コンバータ40に流入する排気ガスの温度を推定することも可能である。
【0032】
バーナー20は、例えば、排気通路15に向けて燃料を噴射する燃料噴射弁、排気通路15に向けて空気を供給する空気導入口、燃料噴射弁から噴射されて空気と混合した燃料に点火する点火プラグ等から構成される。バーナー20の起動及び停止は、ECU100により制御される。このバーナー20を必要に応じて起動することにより、燃料が燃焼されて排気ガスEGの温度が上昇し、これと同時に、未燃燃料が排気通路15内に供給される。なお、バーナー20は、燃料を完全に燃焼したガスを排気通路15内に供給することもできるし、燃焼させたガスに未燃燃料を混ぜた状態で排気通路15内に供給し、DPF30にこの燃料を供給することもできる。
【0033】
DPF30は、排気ガスEGに含まれる粒子状物質(PM)を捕集するフィルタである。DPF30の構造は、周知のように、例えば、金属やセラミクス製のハニカム体で構成されている。DPF30は、PMが所定量堆積する毎にバーナー20を起動して捕集したPMを燃焼処理し、フィルタ機能を再生する必要がある。このフィルタ再生処理におけるDPF30の温度は、例えば、約600℃となる。なお、DPF30に所定量のPMが堆積したかの判断は、周知技術であるので、説明を省略する。また、フィルタ再生処理における加熱は、バーナー20を用いる代わりに、燃料添加によっても可能である。
【0034】
選択還元触媒コンバータ40は、尿素水添加弁70から添加される尿素水溶液を還元剤として用いて、排気ガスEGに含まれるNOxを選択的に還元して窒素ガスと水にする。具体的には、排気ガスEG中に添加された尿素水溶液は、排気ガスEGの熱により加水分解されてアンモニアに変化し、このアンモニアが触媒コンバータ40においてNOxと反応し、水と無害な窒素に還元される。この選択還元触媒コンバータ40は、周知の構造であり、例えば、Si、O、Alを主成分とすると共にFeイオンを含むゼオライトから構成されたものや、例えば、酸化アルミニウムアルミナからなる基材の表面にバナジウム触媒(V)を担持させたものなどを用いることができ、特に、これらに限定されるわけではない。なお、選択還元触媒コンバータ40には、尿素に代えてアンモニアを直接供給することも可能である。
【0035】
バイパスバルブ95、蓄熱材90及びバイパス通路16は、選択還元触媒コンバータ40に流入する排気ガスの温度を調整可能な温度調整手段を構成している。
【0036】
蓄熱材90は、供給される排気ガスの熱を吸収して蓄熱する。この蓄熱材90は、好適には、選択還元触媒コンバータ40に担持された触媒の相対的に高い浄化率が得られる温度域内に融点温度をもつ。したがって、この融点温度よりも高い温度の排気ガスが蓄熱材90に供給されると、排気ガスは蓄熱材90により熱を吸収され、融点温度付近の排気ガスとなって選択還元触媒コンバータ40に供給される。
【0037】
バイパスバルブ95は、ECU100からの制御指令に応じてバイパス通路16を開閉することにより、上流から供給される排気ガスの流量を排気通路15及びバイパス通路16へ分配する割合を調整する。このバイパスバルブ95を調整することにより、バイパス通路16を通じて選択還元触媒コンバータ40に供給される排気ガスの流量と蓄熱材90を通じて選択還元触媒コンバータ40に供給される排気ガスの流量とが調整され、その結果、温度調整された排気ガスが選択還元触媒コンバータ40に供給される。
【0038】
ECU100は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、EEPROM(Electronically Erasable and Programmable Read Only Memory)等のバックアップ用メモリ、A/D変換器やバッファ等を含む入力インターフェース回路、駆動回路等を含む出力インターフェース回路を含むハードウエアと所要のソフトウエアで構成される。ECU100は、各排気温度センサ60A〜60Cからの信号、NOxセンサ65からの信号等に基いて、バーナー20、尿素水添加弁70、バイパスバルブ95等を制御する。なお、ECU100による具体的な処理については後述する。
【0039】
次に、ECU100によるDPF30の再生処理手順の一例について図2に示すフローチャートを参照して説明する。なお、図2に示す再生処理ルーチンは、所定時間毎に実行されるが、所定距離走行毎、又は、フィルタに堆積したPMの堆積量に応じて実行されてもよい。
【0040】
PM再生処理が実行される前に状態においては、尿素水添加弁70から内燃機関10で発生するNOx量に応じた量の尿素水が添加されている。また、選択還元触媒のアンモニア吸着量は、逐次更新される推定吸着量に基づいてほぼ一定になるように制御されている。なお、選択還元触媒のアンモニアの推定吸着量の算出方法は、周知であるので詳細説明を省略する。
【0041】
先ず、フィルタ再生処理(以下、PM再生処理という)要求があったかを判断する(ステップS1)。PM再生処理要求がない場合には、処理を終了し、PM再生処理要求があった場合には、バーナー20を起動する(ステップS2)。バーナー20が起動されると、図3(a)に示すように、DPF30の床温が上昇し、PM再生処理が開始される。図3(b)に示すように、バーナー20を起動すると、選択還元触媒の触媒床温も上昇する。
【0042】
次いで、選択還元触媒の温度(選択還元触媒に流入する排気ガスの検出温度)をNOxの浄化率が相対的に高くなる第1の所定温度域に調整する第1の温度調整処理を実行する(ステップS3)。図4は、選択還元触媒の触媒床温のNOx浄化率との関係を示すグラフである。図4に示すように、選択還元触媒の触媒床温がT0からT1のような温度域は相対的にNOxの浄化率が高い。蓄熱材90の融点温度T2は、この触媒床温T0からT1の間にあることが好ましい。相対的にNOxの浄化率が高い温度域は、例えば、約350〜400℃である。
【0043】
第1の温度調整処理は、バイパスバルブ95を閉じることで実行される。バイパスバルブ95を閉じるとバイパス通路16を流れる排気ガスがゼロになり、排気ガスの全量が蓄熱材90に流れる。蓄熱材90の温度が融点温度T2に達すると、図3(b)に示すように、選択還元触媒の触媒床温がほぼT2に維持される。これにより、図3(e)に示すように、NOx浄化率が通常走行時よりも高くなる。これにより、PM再生処理時においてもNOxが効率よく浄化される。
【0044】
本実施形態では、バイパスバルブ95を全閉したが、蓄熱材90の融点温度T2に応じてバイパスバルブ95の開度を調整し、バイパスバルブ95と蓄熱材90の双方に排気ガスを流して選択還元触媒に流入する排気ガスの温度を調整することも可能である。
【0045】
次いで、PM再生処理を開始後、所定時間Xを経過したかを判断し(ステップS4)、経過した場合には、選択還元触媒のアンモニア吸着量を減少させて吸着量をリセットするために、尿素水添加弁70を閉じて、尿素の添加を停止する(ステップS5)。さらに、選択還元触媒のアンモニア吸着量を減少させて吸着量をリセットするために、選択還元触媒の第2の温度調整を実行する(ステップS6)。
【0046】
ここで、図5に示すように、選択還元触媒の吸着可能なアンモニア吸着量は、触媒床温が上昇するにしたがって増加し、温度T4に達したところで最大となり、その後、急激に減少する。第2の温度調整処理は、このアンモニア吸着量特性を利用し、選択還元触媒の床温(選択還元触媒に流入する排気ガスの検出温度)をアンモニア吸着量がパージされる温度まで上昇させる処理であり、例えば、400〜450℃の範囲の温度に上昇させる。
【0047】
ステップS5及びS6の吸着量リセット処理により、選択還元触媒のアンモニア吸着量は、図3(d)に示すように、ゼロまで減少する。ここで、ECU100のアンモニア吸着量の推定量もリセットする。これにより、アンモニア吸着量の推定値に誤差が生じにくくなる。なお、吸着量リセット処理を実行中は、NOx浄化率も、図3(e)に示すように、一時的に低下する。また、吸着量リセット処理は、ステップS5及びS6の一方のみで実施してもよい。
【0048】
次いで、PM再生処理が終了したかを判断し(ステップS7)、終了した場合には、バーナー20を停止し(ステップS8)、尿素水添加弁70を再び開き、尿素水を通常の添加量よりも増量して添加する集中添加を開始する(ステップS9)。このとき、アンモニアスリップの発生をできるだけ抑制する観点から、選択還元触媒の触媒床温に応じて添加量を調整する。また、第1の温度調整処理後の触媒床温における選択還元触媒の飽和アンモニア吸着量を超えない範囲で尿素水を供給する。
【0049】
図3(c)に示すように、選択還元触媒のアンモニア吸着量が増加する。そして、アンモニア吸着量が通常走行時に必要な一定量(目標吸着量)に達したかを判断し(ステップS10)、達した場合には尿素水の集中添加を終了して、発生するNOx量に応じて尿素水を添加する当量比添加に移行させる(ステップS11)。
【0050】
上記実施形態では、選択還元触媒の温度調整手段を、バイパスバルブ95、蓄熱材90及びバイパス通路16で実現したが、これに限定されるわけではない。例えば、蓄熱材の代わりに熱交換器を使用することも可能である。また、選択還元触媒コンバータ40の上流側の排気通路15内に外気を取り込むための二次空気通路を設け、外気の供給量を調整することにより、選択還元触媒の温度調整をすることも可能である。要するに、選択還元触媒の温度調整ができる手段であれば、適用可能である。
【0051】
上記実施形態における、吸着量リセット処理では、選択還元触媒のアンモニア吸着量をゼロにした場合について説明したが、これに限定されるわけではなく、アンモニア吸着量を少なくとも第1の所定温度域T2における選択還元触媒の飽和アンモニア吸着量よりも減少させればよい。
【符号の説明】
【0052】
10…内燃機関
15…排気通路
16…バイパス通路
20…バーナー
30…DPF(フィルタ)
40…選択還元触媒コンバータ
60A〜60C…排気温度センサ
70…尿素水添加弁
90…蓄熱材
95…バイパスバルブ
100…ECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路に設けられ、かつ、排気ガスに含まれる粒子状物質を捕集するフィルタと、
前記フィルタの下流側に設けられたアンモニアを還元剤として選択的に還元する選択還元触媒と、
前記選択還元触媒へ前記還元剤を供給する還元剤供給手段と、
前記選択還元触媒の温度を推定又は検出する温度取得手段と、
前記フィルタと前記選択還元触媒との間に配置され、前記選択還元触媒に流入する排気ガスの温度を調整可能な温度調整手段と、
前記フィルタの浄化機能を再生するためのフィルタ再生処理中に、前記温度調整手段を制御して前記温度取得手段により取得される前記選択還元触媒の温度をNOxの浄化率が相対的に高くなる第1の所定温度域に調整する第1の温度調整処理と、前記選択還元触媒に吸着されたアンモニアの吸着量を減少させる吸着量減少処理とを実行する制御手段と、
を有することを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項2】
前記吸着量減少処理は、前記還元剤供給手段による還元剤の供給量を減少させる処理及び前記選択還元触媒の温度を前記第1の所定温度域よりも高い第2の所定温度域に調整する第2の温度調整処理の少なくとも一方を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項3】
前記吸着量減少処理は、前記温度調整手段により前記選択還元触媒の温度を前記第1の所定温度域から前記第2の所定温度域まで昇温するときに、前記アンモニアの吸着量を少なくとも前記第1の所定温度域における選択還元触媒の飽和アンモニア吸着量よりも減少させる、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項4】
前記吸着量減少処理の後に、前記選択還元触媒のアンモニア吸着量が前記第1の所定温度域における選択還元触媒の飽和アンモニア吸着量を超えないように前記還元剤を前記選択還元触媒に供給することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項5】
前記第2の所定温度域は、400〜450℃の範囲内である、ことを特徴とする請求項2ないし4のいずれかに記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項6】
前記温度調整手段は、熱交換器を含む、ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項7】
前記温度調整手段は、蓄熱材を含む、ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項8】
前記排気通路の前記フィルタと前記選択還元触媒との間において、前記熱交換器又は蓄熱材をバイパスするように配置されたバイパス通路と、
前記熱交換器又は蓄熱材と前記バイパス通路とに流入する排気ガスの流量を調整する流量調整手段と、を備え、
前記制御手段は、前記流量調整手段を制御することにより、前記選択還元触媒に流入する排気ガスの温度を調整する、
ことを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項9】
前記排気通路内に前記フィルタに流入する排気ガスを加熱するための加熱手段をさらに有する、ことを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項10】
前記選択還元触媒の上流側の前記排気通路内に外気を取り込むための二次空気通路を有することを特徴とする、請求項1ないし9のいずれかに記載の内燃機関の排気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−261423(P2010−261423A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−114707(P2009−114707)
【出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】