説明

内燃機関の排気浄化装置

【課題】燃料の消費を抑えつつ触媒昇温制御を行ない、NOx吸蔵触媒の吸蔵・還元能力を確保する。
【解決手段】NOx吸蔵触媒の触媒温度TLが触媒目標温度Ttより低い場合に、触媒温度が上昇するように、排気管内燃料噴射弁からの排気管内に燃料を噴射させる触媒昇温を行なう(S120、S130)触媒昇温制御において、窒素酸化物吸蔵触媒の劣化度合いに関連する積算燃料噴射量ΣQが増加するにしたがって触媒目標温度Ttを上昇させるように補正する(S90〜S110)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気浄化装置に係り、詳しくは、排気通路に備えられたNOx吸蔵触媒を再生する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
リーンバーンエンジンにおいて排出されるNOx(窒素酸化物)を浄化する装置として、NOx(窒素酸化物)吸蔵触媒が知られている。
NOx吸蔵触媒は、排気通路に設けられ、リーン雰囲気において排気中のNOxを吸蔵する。そして、定期的にNOx吸蔵触媒に燃料等の還元剤を供給することで、NOx吸蔵触媒に吸蔵されたNOxを還元、無害化して放出させ、NOx吸蔵触媒のNOx吸蔵機能を回復させる所謂NOxパージが行なわれる。
【0003】
NOx吸蔵触媒は、一般的に触媒温度が低下すると、NOxの吸蔵・還元機能が低下する傾向にある。そこで、NOx吸蔵触媒の温度が低下しているときのNOxの排出を抑制するために、排気温度が上昇するようにエンジンの作動を制御したり、排気通路に燃料を添加したりして、NOx吸蔵触媒を昇温させる触媒昇温制御が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−138768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、触媒昇温制御は、触媒の温度を上昇させるために燃料を消費するので、燃費の低下をもたらすこととなる。また、触媒昇温制御における目標温度は、一般的にある定まった温度に設定されるが、NOx吸蔵触媒におけるNOxの吸蔵・還元能力は劣化とともに低下するので、その劣化を見越して予め高めの温度設定がなされる。そのため、上記のように触媒昇温制御を行なう際には、触媒が劣化していても十分に吸蔵・還元機能が得られるように、燃料の供給量を設定しなければならず、更なる燃費の低下をもたらす虞があった。
【0006】
本発明の目的は、燃料の消費を抑えつつ触媒昇温制御を行ない、NOx吸蔵触媒の吸蔵・還元能力を確保可能な内燃機関の排気浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1の内燃機関の排気浄化装置は、内燃機関の排気通路に設けられ、リーン空燃比雰囲気下で排気中の窒素酸化物を吸蔵し、この吸蔵した窒素酸化物を理論空燃比またはリッチ空燃比雰囲気下で還元除去する窒素酸化物吸蔵触媒と、燃料を用いて窒素酸化物吸蔵触媒の触媒温度を上昇させる触媒昇温手段と、窒素酸化物吸蔵触媒の劣化度合いを推定する触媒劣化推定手段と、触媒温度が上昇するように触媒昇温手段の作動を制御する制御手段と、を備え、制御手段は、触媒劣化推定手段により推定した窒素酸化物吸蔵触媒の劣化度合いに応じて触媒昇温手段の作動条件を変更することを特徴とする。
【0008】
また、請求項2の内燃機関の排気浄化装置は、請求項1において、窒素酸化物吸蔵触媒の触媒温度を検出する触媒温度検出手段を備え、制御手段は、少なくとも触媒温度検出手段により検出した触媒温度が目標温度より低いことを作動条件とするとともに、目標温度を触媒劣化推定手段により推定した窒素酸化物吸蔵触媒の劣化度合いに応じて補正することを特徴とする。
【0009】
また、請求項3の内燃機関の排気浄化装置は、請求項2において、制御手段は、触媒劣化推定手段により推定した窒素酸化物吸蔵触媒の劣化度合いが増加するに従って目標温度が上昇するように補正することを特徴とする。
また、請求項4の内燃機関の排気浄化装置は、請求項1〜3のいずれかに1項において、制御手段は、触媒劣化推定手段により推定した窒素酸化物吸蔵触媒の劣化度合いが所定値以下である場合に、触媒昇温手段の作動を規制することを特徴とする。
【0010】
また、請求項5の内燃機関の排気浄化装置は、請求項1〜4のいずれか1項において、触媒劣化推定手段は、内燃機関の燃焼室または窒素酸化物吸蔵触媒の上流側の排気通路への燃料の積算噴射量に基づいて窒素酸化物吸蔵触媒の劣化度合いを推定することを特徴とする。
また、請求項6の内燃機関の排気浄化装置は、請求項1〜5のいずれか1項において、触媒劣化推定手段は、内燃機関の燃焼室または窒素酸化物吸蔵触媒の上流側の排気通路への燃料の単位時間当たりの噴射量により演算される硫黄吸蔵量に基づいて窒素酸化物吸蔵触媒の劣化度合いを推定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1の内燃機関の排気浄化装置によれば、窒素酸化物吸蔵触媒の劣化度合いに応じて触媒昇温の作動条件が最適化されるので、触媒の温度を上昇させるための燃料の無駄な消費を抑え、燃費を低減させることが可能となる。
本発明の請求項2の内燃機関の排気浄化装置によれば、窒素酸化物吸蔵触媒の劣化度合いに応じて触媒温度を上昇させるので、長期間経過後でのNOx吸蔵触媒の吸蔵、還元能力を十分に確保することができる。
【0012】
特に、熱劣化度合いに応じてNOx吸蔵触媒の目標温度の設定を行なうことから、熱劣化度合いが比較的低い状態では昇温手段による触媒温度の上昇を極力抑えることができ、触媒昇温制御に使用する燃料の無駄な消費を抑え、燃費を低減させることが可能となる。
本発明の請求項3の内燃機関の排気浄化装置によれば、窒素酸化物吸蔵触媒の劣化度合いが増加するに従って触媒昇温手段による目標温度が上昇するので、触媒昇温手段により窒素酸化物吸蔵触媒の温度が上昇する。よって、窒素酸化物吸蔵触媒の劣化度合いに応じて触媒昇温手段により窒素酸化物吸蔵触媒が吸蔵、還元能力を確保できるように触媒温度を確実に設定することができる。
【0013】
本発明の請求項4の内燃機関の排気浄化装置によれば、窒素酸化物吸蔵触媒の劣化度合いが所定値以下である場合には、触媒昇温手段の作動を規制するので、触媒昇温制御における不要な燃料使用を確実に抑制することができる。
本発明の請求項5の内燃機関の排気浄化装置によれば、窒素酸化物吸蔵触媒の劣化度合いを燃料の積算噴射量に基づいて容易に推定することができる。
【0014】
本発明の請求項6の内燃機関の排気浄化装置によれば、Sパージが実行される以前に硫黄吸蔵量に応じて既に触媒昇温がなされているので、硫黄吸蔵量が上限値Tsを超えてSパージが実行される場合には触媒温度をSパージに必要な温度まで速やかに昇温することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るエンジンの排気系の概略構成図である。
【図2】触媒昇温制御の実施判定要領を示すフローチャートである。
【図3】燃料噴射量積算値とNOx浄化率との関係を示すグラフである。
【図4】燃料噴射量積算値に対する各必要温度上昇幅の推移を示すグラフであり、(A)は硫黄吸蔵分、(B)は熱劣化分、(C)は合計値を示す。
【図5】燃料噴射量積算値に対する熱劣化分の必要温度上昇幅の他の設定要領を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の排気浄化装置が適用されたディーゼルエンジン(内燃機関)1の排気系の概略構成図である。
エンジン1の排気管2には、上流側から順番に、酸化触媒3、NOx吸蔵触媒4、ディーゼルパティキュレートフィルタ5が介装されている。酸化触媒3は、通路を形成する多孔質の壁にプラチナ(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)等の触媒貴金属を担持して形成されており、排気中のCO及びHCを酸化させてCO及びHOに変換させるとともに、排気中のNOを酸化させてNOを生成する機能を有する。
【0017】
NOx吸蔵触媒4は、例えば、白金(Pt),パラジウム(Pd)等の貴金属を含んだ担体に、バリウム(Ba),カリウム(K)等のNOx吸蔵剤を担持させて構成されており、リーン空燃比雰囲気(酸化雰囲気)下でNOxを捕捉する一方、リッチ空燃比雰囲気(還元雰囲気)下で、捕捉しているNOxを放出し、排気中のHC、COと反応させて還元する機能を有している。
【0018】
ディーゼルパティキュレートフィルタ5は、例えば、ハニカム担体の通路の上流側及び下流側を交互にプラグで閉鎖して、排気中のPMを捕集する機能を有しており、更に、通路を形成する多孔質の壁にプラチナ(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)等の触媒貴金属を担持して形成されている。
酸化触媒3の上流側には、排気管内燃料噴射弁6が設置されている。排気管内燃料噴射弁6には、図示しない燃料タンクから、エンジン1によって駆動される燃料ポンプによって燃料が供給される。排気管内燃料噴射弁6は、供給された燃料を排気管2内に噴射する機能を有している。
【0019】
排気管2には、NOx吸蔵触媒4の上流側に、NOx吸蔵触媒4に流入する排気の空燃比を検出する空燃比センサ11が備えられている。また、NOx吸蔵触媒4には、その触媒温度を検出するNOx吸蔵触媒温度センサ12(触媒温度検出手段)が備えられている。また、各触媒の上流側には、排気の温度を検出する温度センサが備えられるとともに、ディーゼルパティキュレートフィルタ5の上流側と下流側との差圧を検出する差圧センサが備えられている(図示せず)。
【0020】
ECU20は、エンジン1の運転制御をはじめとして総合的な制御を行うための制御装置であり、入出力装置、記憶装置(ROM、RAM、不揮発性RAM等)、中央処理装置(CPU)等を含んで構成されている。
ECU20の入力側には、上述する空燃比センサ11、NOx吸蔵触媒温度センサ12、各種温度センサ、差圧センサの他に、図示しないエンジン1の吸気流量を検出するエアフローセンサ、クランク角を検出するクランク角センサ、アクセルペダルの踏込量を検出するアクセルポジションセンサ等が接続されており、これらセンサ類からの検出情報が入力される。
【0021】
一方、ECU20の出力側には、エンジン1の燃焼室に燃料を噴射する燃料噴射弁13や図示しない吸気絞り弁等の各種出力デバイスが接続されている。ECU20は、各種センサ類からの検出情報に基づいて燃焼室への燃料噴射量、燃料噴射時期等を演算し、各種出力デバイスにそれぞれ出力することで、適正なタイミングで燃料噴射弁13や吸気絞り弁等を制御する。
【0022】
更に、ECU20には、NOx吸蔵触媒4に吸蔵されたNOxを排出させるNOxパージ機能が備えられている(パージ処理手段)。NOxパージは、ECU20により、上述する各種センサ類からの検出情報、即ちエンジン1の運転状態に基づいて排気管内燃料噴射弁6を制御して排気管2内に燃料を噴射させ、NOx吸蔵触媒4に流入する排気の空燃比をリッチ化させることで実行される。また、NOx吸蔵触媒4には、燃料中の硫黄成分の酸化によるSOxも硫酸塩として堆積されるので、この堆積した硫黄成分をNOx吸蔵触媒4から除去するために、エンジン1にはSパージ機能も備えられている。このSパージも、ECU20により排気管内燃料噴射弁6を制御して排気管2内に燃料を噴射することで、燃料を酸化触媒にて酸化させて排気の温度を上昇させ、NOx吸蔵触媒4に流入する排気を高温に制御するとともに空燃比をリッチ化させることで実行される。このようなNOxパージやSパージにより、NOx吸蔵触媒4の吸蔵、還元能力を回復させることができる。
【0023】
しかしながら、このようにNOxパージを行なうことで、NOx吸蔵触媒4の吸蔵限界に達することは防止可能であるが、吸蔵限界に達していない場合でも、NOx吸蔵触媒4が低温状態である場合には、NOxの吸蔵、還元機能が十分に得られない場合がある。
そこで、ECU20には、触媒温度が低下しないように、エンジン1の運転時にNOx吸蔵触媒4の温度を適切な温度に上昇させる触媒昇温制御機能が備えられている(触媒昇温手段)。本実施形態では、触媒昇温制御は、上記パージと同様に、排気管内燃料噴射弁6からの燃料噴射により行なわれる。
【0024】
更に、本実施形態では、ECU20はNOx吸蔵触媒4の劣化に応じて触媒昇温制御を可変制御する(制御手段)。
図2は、ECU20における触媒昇温制御の制御手順を示すフローチャートである。本ルーチンはエンジン作動時に単位時間毎に繰り返し実行される。
先ず、図2に示すように、ステップS10では、NOx吸蔵触媒4の硫黄吸蔵量ΣSを演算する。硫黄吸蔵量ΣSは、次式(1)により演算される。
【0025】
ΣS=ΣS old+ΔQ×k・・・(1)
ここで、ΣS oldは前回演算した硫黄吸蔵量、ΔQは単位時間での燃料噴射量、kは硫黄吸蔵係数である。即ち、硫黄吸蔵量ΣSは、今回の単位時間での燃料噴射量に硫黄吸蔵係数kを積算して求めた硫黄吸蔵量を前回演算した硫黄吸蔵量ΣS oldに加算することで求められる。そして、ステップS20に進む。
【0026】
ステップS20では、ステップS10で演算した硫黄吸蔵量ΣSが上限値Tsより大きいか否かを判別する。上限値Tsは、あらかじめ確認の上設定された値である。硫黄吸蔵量ΣSが上限値Tsより大きい場合には、ステップS30に進む。
ステップS30では、Sパージ要求信号を出力しSパージを実行させる。Sパージは、前述のように、排気管内燃料噴射弁6により燃料を排気管2に噴射して、NOx吸蔵触媒4に流入する排気の空燃比をリッチ(例えば12〜13)にするとともに、NOx吸蔵触媒4の温度を例えば700℃程度まで上昇させることで行なわれる。そして、ステップS40に進む。
【0027】
ステップS40では、Sパージを終了したか否かを判別する。具体的には、Sパージの時間やSパージ用に噴射した燃料噴射量からSパージが終了したか否かを判定すればよい。Sパージが終了していない場合には、ステップS30に戻る。Sパージが終了している場合には、ステップS50に進む。
ステップS50では、Sパージによる排気温度を上昇させる制御を解除させる。そして、ステップS60に進む。
【0028】
ステップS60では、現在のNOx吸蔵触媒4の硫黄吸蔵量ΣSを0に書き換える。そして、本ルーチンをリターンさせる。
ステップS20において、硫黄吸蔵量ΣSが上限値Ts以下であると判定された場合には、ステップS70に進む。
ステップS70では、NOx吸蔵触媒4の必要温度上昇幅(硫黄吸蔵分)ΔTsを演算する。必要温度上昇幅(硫黄吸蔵分)ΔTsは、硫黄吸蔵量ΣSの増加に応じて低下するNOx吸蔵触媒の吸蔵、還元能力が補填されるように設定され、例えばあらかじめ記憶したマップを用いて演算される。そして、ステップS80に進む。
【0029】
ステップS80では、積算燃料噴射量ΣQを演算する。積算燃料噴射量ΣQは、次式(2)により演算される。
ΣQ=ΣQ old+ΔQ・・・(2)
ここで、ΣQ oldは前回演算した積算燃料噴射量、ΔQは単位時間での燃料噴射量である。即ち、積算燃料噴射量ΣQは、前回演算した積算燃料噴射量ΣQ oldに今回の単位時間での燃料噴射量ΔQを加算して求められる。そして、ステップS90に進む。
【0030】
ステップS90では、ステップS80にて演算された積算燃料噴射量ΣQに基づいて、NOx吸蔵触媒4の必要温度上昇幅(熱劣化分)ΔThを演算する。必要温度上昇幅(熱劣化分)ΔThは、NOx吸蔵触媒4の熱劣化に応じて低下する吸蔵、還元能力が補填されるように設定され、例えばあらかじめ記憶したマップを用いて演算される。図3は、積算燃料噴射量ΣQとNOx吸蔵触媒におけるNOx浄化率との関係を示すグラフである。このように、燃料噴射をする毎にNOx吸蔵触媒4におけるNOx浄化率が低下する関係にある。上記必要温度上昇幅(熱劣化分)ΔThを求めるマップは、この図3に示すグラフとあらかじめ確認したNOx吸蔵触媒4における温度上昇に伴う吸蔵、還元能力の上昇度合いを元に設定すればよい。なお、本実施形態では、ステップS70からS90にかけて硫黄吸蔵量ΣS及び積算燃料噴射量ΣQからNOx吸蔵触媒4の必要温度上昇幅(硫黄吸蔵分)ΔTs及び必要温度上昇幅(熱劣化分)ΔThを演算することが、NOx吸蔵触媒4の劣化度合いを推定する本発明の触媒劣化推定手段に該当する。そして、ステップS100に進む。
【0031】
ステップS100では、合計必要温度上昇幅ΔTaを演算する。合計必要温度上昇幅ΔTaは、次式(3)に示すように、ステップS70で演算された必要温度上昇幅(硫黄吸蔵分)ΔTsと、ステップS90で演算された必要温度上昇幅(熱劣化分)ΔThとを加算して求められる。そして、ステップS110に進む。
ΔTa=ΔTs+ΔTh・・・(3)
ステップS110では、触媒目標温度Ttを演算する。触媒目標温度Ttは、次式(4)に示すように、NOx吸蔵触媒4の新品時における触媒目標温度Ttfに、ステップS100で演算した合計必要温度上昇幅ΔTaを加算して求められる。そして、ステップS120に進む。
【0032】
Tt=Ttf+ΔTa・・・(4)
ステップS120では、NOx吸蔵触媒4の触媒温度TLがステップS110で演算した触媒目標温度Ttがより低いか否かを判別する。なお、この触媒温度TLは、所定の時間内でNOx吸蔵触媒温度センサ12により複数回検出した値を平均処理して求められる。触媒温度TLが触媒目標温度Ttより低い場合には、ステップS130に進む。
【0033】
ステップS130では、NOx吸蔵触媒4の温度を上昇させる上記触媒昇温制御を要求する。なお、ここでのNOx吸蔵触媒4の温度は、例えば250℃程度に上昇させればよい。そして、本リーチンをリターンする。
ステップS120で触媒温度TLが触媒目標温度Tt以上であると判定した場合には、ステップS140に進む。
【0034】
ステップS140では、触媒昇温制御を行なわない通常運転を実施する。そして、本ルーチンを終了する。
図4は、積算燃料噴射量ΣQに対する各必要温度上昇幅の推移を示すグラフである。(A)は硫黄吸蔵分ΔTs、(B)は熱劣化分ΔTh、(C)は合計値ΔTaを示す。
図4(A)に示すように、積算燃料噴射量ΣQが増加すると硫黄吸蔵量が増加し、これに伴い必要温度上昇幅ΔTsは増加するが、Sパージの開始設定値である上限値Tsに到達する毎にSパージが行なわれ、硫黄吸蔵量が低下する。よって、必要温度上昇幅ΔTsは、鋸刃状に推移することになる。
【0035】
一方、NOx吸蔵触媒4は、燃料噴射量の増加に伴って回復不能な熱劣化をするので、図4(B)に示すように、積算燃料噴射量ΣQの増加に応じて必要温度上昇幅ΔThも増加する。
したがって、図4(C)に示すように、必要温度上昇幅の合計値ΔTaは、鋸刃状でかつ全体的に増加するように推移する。
【0036】
上記図2に示すように制御することで、NOx吸蔵触媒3の硫黄吸蔵量を監視し、硫黄吸蔵量が上限値Tsを超えたら、Sパージが実行される。そして、Sパージが実行される上限値Tsまで硫黄吸蔵量が増加していなくとも、NOx吸蔵触媒4を目標温度(例えば250℃)にまで上昇させる触媒昇温制御が行なわれる。これにより、NOx吸蔵触媒4の吸蔵、還元能力を確保することが可能となる。また、Sパージが実行される以前に硫黄吸蔵量に応じて触媒昇温がなされるので、硫黄吸蔵量が上限値Tsを超えてSパージが実行される場合には触媒温度をSパージに必要な温度まで速やかに昇温することができる。 更に、本実施形態では、NOx吸蔵触媒の硫黄吸蔵量ΣS及び積算燃料噴射量ΣQの値に応じて、NOx吸蔵触媒3の触媒目標温度Ttfを補正して触媒目標温度Ttを演算するので、NOx吸蔵触媒4の吸蔵、還元能力を常に確保することができる。特に、NOx吸蔵触媒の熱劣化度合いは、パージによって解消されるものではなく、常に増加していくので、長期間経過するほど熱劣化度合いによる吸蔵、還元能力への影響が大きくなる。本実施形態では、積算燃料噴射量ΣQに基づく熱劣化度合いに応じて触媒目標温度Ttfを補正することで、特に長期間経過後でのNOx吸蔵触媒の吸蔵、還元能力を十分に確保することができる。
【0037】
また、このように熱劣化度合いに応じてNOx吸蔵触媒4の触媒目標温度Ttの設定を行なうので、熱劣化度合いが比較的低い、即ち新品に近い状態では触媒目標温度Ttを極力抑えることができる。よって、新品に近い状態では、触媒昇温制御時に必要以上の温度上昇をさせることなく、触媒昇温制御に使用する燃料の消費を抑えることができ、燃費を低減させることができる。
【0038】
なお、本実施形態では、硫黄吸蔵量ΣS及び積算燃料噴射量ΣQからNOx吸蔵触媒4の必要温度上昇幅(硫黄吸蔵分)ΔTs及び必要温度上昇幅(熱劣化分)ΔThを共に演算することが、NOx吸蔵触媒4の劣化度合いを推定する本発明の触媒劣化推定手段に該当するとしたが、本発明ではこれに限定されるものではない。即ち、積算燃料噴射量ΣQからNOx吸蔵触媒4の必要温度上昇幅(熱劣化分)ΔThを演算することのみをNOx吸蔵触媒4の劣化度合いを推定する触媒劣化推定手段としてもよい。
【0039】
また、本実施形態では、図4(B)に示すように、積算燃料噴射量ΣQの増加に伴い連続的に必要温度上昇値ΔThを上昇させるように設定しているが、本発明ではこれに限定されるものではない。例えば積算燃料噴射量ΣQの増加に伴い必要温度上昇値ΔThを段階的に上昇させるように設定しても良い。また、図5に示すように、所定の積算燃料噴射量aまでは触媒昇温手段の作動を規制しても良い。触媒昇温手段の作動規制方法としては、必要温度上昇値ΔThを0にするように設定してもよい。このように必要温度上昇値ΔThを規制すれば、少なくとも新品に近い状態では、不要な温度上昇を抑えて確実に燃料消費を抑えることができる。また別の触媒昇温手段の作動規制方法として、所定の積算燃料噴射量aまでは制御手段による触媒昇温制御そのものを規制しても良いことは言うまでもない。
【0040】
また、本実施形態では、触媒昇温手段として、排気管内燃料噴射弁6を用いているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、筒内への燃料噴射弁13を用いて、排気管2に未燃燃料が排出されるようなタイミングで燃料を噴射する所謂ポスト噴射にて、NOx吸蔵触媒4を昇温させるようにしてもよく、燃料を用いてNOx吸蔵触媒4を昇温させるシステムであれば本発明を適用できる。
【0041】
また、本実施形態では、ディーゼルエンジンに本発明を適用しているが、本発明はガソリンエンジンでも適用可能であり、少なくともNOx吸蔵触媒4を備えたエンジンに適用可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 エンジン
2 排気管
4 NOx吸蔵触媒
6 排気管内燃料噴射弁
12 NOx吸蔵触媒温度センサ
20 ECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路に設けられ、リーン空燃比雰囲気下で排気中の窒素酸化物を吸蔵し、この吸蔵した窒素酸化物を理論空燃比またはリッチ空燃比雰囲気下で還元除去する窒素酸化物吸蔵触媒と、
燃料を用いて前記窒素酸化物吸蔵触媒の触媒温度を上昇させる触媒昇温手段と、
前記窒素酸化物吸蔵触媒の劣化度合いを推定する触媒劣化推定手段と、
前記触媒温度が上昇するように前記触媒昇温手段の作動を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記触媒劣化推定手段により推定した前記窒素酸化物吸蔵触媒の劣化度合いに応じて前記触媒昇温手段の作動条件を変更することを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項2】
前記窒素酸化物吸蔵触媒の触媒温度を検出する触媒温度検出手段を備え、
前記制御手段は、少なくとも前記触媒温度検出手段により検出した触媒温度が目標温度より低いことを前記作動条件とするとともに、前記目標温度を前記触媒劣化推定手段により推定した前記窒素酸化物吸蔵触媒の劣化度合いに応じて補正することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記触媒劣化推定手段により推定した前記窒素酸化物吸蔵触媒の劣化度合いが増加するに従って前記目標温度が上昇するように補正することを特徴とする請求項2に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記触媒劣化推定手段により推定した前記窒素酸化物吸蔵触媒の劣化度合いが所定値以下である場合に、前記触媒昇温手段の作動を規制することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項5】
前記触媒劣化推定手段は、前記内燃機関の燃焼室または前記窒素酸化物吸蔵触媒の上流側の排気通路への燃料の積算噴射量に基づいて前記窒素酸化物吸蔵触媒の劣化度合いを推定することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項6】
前記触媒劣化推定手段は、前記内燃機関の燃焼室または前記窒素酸化物吸蔵触媒の上流側の排気通路への燃料の単位時間当たりの噴射量により演算される硫黄吸蔵量に基づいて前記窒素酸化物吸蔵触媒の劣化度合いを推定することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の内燃機関の排気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−2141(P2012−2141A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138219(P2010−138219)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】