説明

内燃機関の油圧制御装置

【課題】例えば内燃機関の状態に対応して潤滑油圧を切り替える内燃機関の油圧制御装置において、効率良く触媒暖機を行いつつ、内燃機関の状態に対応して油圧を適切に切り替える。
【解決手段】油圧制御装置(100)は、油圧を段階的又は連続的に変更可能としつつ内燃機関(10)にオイルを循環させることが可能なポンプ(13)と、内燃機関の排気を浄化する触媒(23)の温度に応じて、油圧を変更するようにポンプを制御する制御手段(40)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば内燃機関の状態に対応して潤滑油圧を切り替える内燃機関の油圧制御装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の油圧制御装置として、例えばターボチャージャ付の内燃機関の冷間始動時に、非過給領域でリリーフバルブを作動させ、油圧を、過給領域での油圧よりも低い値に制御することで、オイルポンプの駆動損失の増大を回避するものがある(特許文献1参照)。
【0003】
また、例えばメインオイルポンプ及びサブオイルポンプを備え、低速域で、メインオイルポンプにおける吐出流量を低下させると共に、サブオイルポンプを駆動させることで、低/中速域でメインオイルポンプの駆動抵抗を小さくするものもある(特許文献2参照)。
【0004】
更に、例えば内燃機関の冷間始動時に、所定油圧に達すると、リリーフ弁を開弁させることで、オイルポンプの負荷を低減させるものもある(特許文献3参照)。
【0005】
また、油圧制御装置に係る装置として、例えば油圧の切り替え動作の作動時間に応じて、内燃機関の出力のダウン率を設定し、次回の切り替え動作時に、設定されたダウン率で内燃機関の出力を低下させるものがある(特許文献4参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平6−159029号公報
【特許文献2】特開2004−68680号公報
【特許文献3】特開2007−107485号公報
【特許文献4】特開平6−101439号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の特許文献1から4によれば、油圧を切り替える各々の制御により、燃費向上を図る一方、触媒暖機性について考慮されていない。本願発明者の知るところによれば、例えば冷間始動時に、油圧が低く設定されると、オイルポンプにおけるフリクションが低下される。これに伴って燃料噴射量が低減されるため、触媒暖機の熱源である排気熱も低減されるので、触媒暖機が十分に行われず、冷間始動時の排気浄化率が低迷してしまいかねないという技術的問題点がある。
【0008】
本発明は、上述した問題点に鑑みなされたものであり、例えば効率良く触媒暖機を行いつつ、内燃機関の状態に対応して油圧を適切に切り替え可能な内燃機関の油圧制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る内燃機関の油圧制御装置は上記課題を解決するために、油圧を段階的又は連続的に変更可能としつつ内燃機関にオイルを循環させることが可能なポンプと、前記内燃機関の排気を浄化する触媒の温度に応じて、前記油圧を変更するように前記ポンプを制御する制御手段とを備える。
【0010】
本発明の内燃機関の油圧制御装置によれば、適用される内燃機関として、例えば希薄燃焼エンジンが使用される。内燃機関は、例えば弁機構やカムシャフト等を配置するためのシリンダヘッド、ピストンやクランクシャフト等を配置するためのシリンダブロック、潤滑油を溜めるオイルパン、潤滑油の圧力を切り替える油圧切替手段、並びに内燃機関の各部及び各手段の少なくとも一部を制御するECU(Engine Controlling Unit)等の制御手段を備える。本発明の油圧制御装置は、例えば潤滑経路に潤滑油を供給し、カムやクランク等の回転部、及び弁機構やシリンダ壁面等の摺動部におけるフリクションを低減させる。
【0011】
ポンプは、典型的には、ギア式やロータリー式のオイルポンプであって、例えば上述した油圧切替手段等の一要素である。ポンプは、例えばクランクシャフトにより駆動されることで、段階的又は連続的に油圧を変更する。ここで「段階的に変更」は、例えば低圧及び高圧の少なくとも二段階に変更されることであり、「連続的に変更」は、例えば徐々に油圧を上昇又は下降させることである。ポンプは、例えばオイルパンからオイルを汲み上げると共に、汲み上げたオイルを潤滑経路に沿って圧送する。潤滑経路には、例えば上述した回転部や摺動部の各部が配置されている。潤滑経路は、例えば潤滑油としての役目を終えたオイルをオイルパンに戻して循環させるための循環路である。オイルが、上述した回転部や摺動部の各部に対し、より大量に供給されることで、該各部におけるフリクションは相対的に低められ、逆に、より少量だけ供給されることで、該各部におけるフリクションは相対的に高められる。
【0012】
制御手段は、例えば、プロセッサやメモリ等を含んでなるECU等の一部から構成され、触媒の温度に応じて、油圧を変更させる。ここで「触媒」は、例えば酸化触媒、三元触媒、及びNOx吸蔵触媒等の少なくとも一つである。制御手段は、例えば、触媒の温度を測定する測定手段からの測定出力を参照することで、触媒の温度が所定閾値を超えるか否かを判定する。ここで「所定閾値」は、例えば、実験、シミュレーション等により触媒暖機が完了されたのを示す温度として求められ、予め設定される。
【0013】
ここで本願発明者の研究によれば、次のことが判明している。即ち、ポンプのフリクション(言い換えれば、ポンプ出力)が増大されればされる程、より高圧の(即ち、より大量の)オイルが循環される。これに伴って、即ちオイルポンプを動作させるのに必要なエネルギが増大する分に対応する、内燃機関による要求出力の上昇に伴って、燃料噴射量が増大される。よって、内燃機関から触媒暖機の熱源である排気熱も増大されるので、結局、オイルの油圧を高めれば、触媒暖機が促進されることが判明している。逆に、ポンプのフリクションが低下されればされる程、より低圧の(即ち、より少量の)オイルが循環される。これに伴って、即ちオイルポンプを動作させるのに必要なエネルギが減少する分に対応する、内燃機関による要求出力の低下に伴って、燃料噴射量が低減される。即ち、オイルの油圧を低めれば、ポンプ自体におけるエネルギ消費の低減と共に内燃機関の燃焼における燃料消費の低減に繋がる、即ち燃費が向上することも判明している。
【0014】
そこで本発明では、制御手段による制御下で、触媒暖機を優先させるべき場合に、典型的には冷間始動時などの触媒の温度が低い場合に、油圧を高めるようにポンプを制御すれば、ポンプのフリクションが増大される分だけ、燃料噴射量を増大されることができ、よって、触媒暖機を促進させることが可能となる。例えば、例えば測定手段による測定結果により、触媒の温度が所定閾値より低い場合に、触媒暖機を優先して行うべき場合として、油圧を高めるようにポンプのギア又はロータが移動又は回転されればよい。
【0015】
他方、制御手段による制御下で、触媒暖機を優先させることなく燃費向上を優先させるべき場合に、典型的には冷間始動完了後などの触媒の温度が高い場合に、油圧を低めるようにポンプを制御すれば、燃費を向上させることが可能となる。例えば、例えば測定手段による測定結果により、触媒の温度が所定閾値より高い場合に、触媒暖機が完了されたとして、油圧を低めるようにギア又はロータが移動又は回転されればよい。この際に、内燃機関では、例えば空燃比がストイキ又はリーンであるストイキ燃焼又はリーン燃焼が行われる。
【0016】
以上のように、触媒の温度に応じてオイルの油圧を変更することで、触媒暖機を優先させるべき場合に触媒暖機を優先させることができ、燃費を優先させるべき場合に燃費を優先させることができる。
【0017】
本発明に係る内燃機関の油圧制御装置の一態様では、前記制御手段は、前記触媒の温度が第1温度閾値より低い場合に、前記油圧を高めるように前記ポンプを制御する。
【0018】
この態様によれば、「第1温度閾値」は、例えば、実験結果等により、触媒が活性状態となる温度として予め設定されている。第1温度閾値は、例えば摂氏200度である。具体的には、例えば触媒の温度が摂氏200度より低い場合に、触媒暖機が完了されていないとして、即ち、触媒暖機を優先させるべき場合として、油圧を高めることで、触媒暖機が行われる。これにより、内燃機関の冷間始動時に、効率良く触媒暖機を行うことができる。
【0019】
この態様では、前記制御手段は、前記触媒の温度が前記第1温度閾値より高い場合に、前記油圧を低めるように前記ポンプを制御してもよい。
【0020】
このように構成すれば、例えば触媒の温度が摂氏200度より高い場合に、触媒暖機が完了されたとして、油圧を低めることで、燃費を向上させることができる。
【0021】
本発明による内燃機関の油圧制御装置の他の態様では、前記制御手段は、前記オイルの温度が第2温度閾値より高いことを条件として、前記触媒の温度に応じて前記油圧を高めるように前記ポンプを制御する。
【0022】
この態様によれば、「第2温度閾値」は、例えば、実験結果等により、オイルの温度、即ち油温が最も上昇された限界温度として予め検知されている。第2温度閾値は、例えば摂氏100度である。典型的には、例えばオイルの温度が限界温度に達した時点で、オイルの粘性が低下されている。また、該時点では、触媒暖機が既に完了されている。具体的には、例えば、オイルの温度が摂氏100度より高い場合であって、触媒の温度が比較的高温である場合に、ポンプから高圧のオイルが循環され、高圧のオイルにより潤滑部が冷却される。一方、オイルの温度が摂氏100度より高い場合であって、触媒の温度が比較的低温である場合に、ポンプから低圧のオイルが循環され、低圧のオイルにより潤滑部が冷却される。
【0023】
このように、オイルの温度が第2温度閾値より高い際に、触媒の温度に応じて油圧を高めることで、触媒暖機させる機能と燃費を向上させる機能とを、オイルの温度に応じて適宜に維持することが可能となる。
【0024】
本発明に係る内燃機関の油圧制御装置の他の態様では、前記制御手段は、前記内燃機関における状態が所定基準に照らして始動時期を終えたものと判定されることを条件に、前記触媒の温度に加えて前記内燃機関の運転状態に応じて、前記油圧を変更するように前記ポンプを制御する。
【0025】
この態様によれば、「所定基準」は、例えば触媒が活性状態となる活性温度であったり、オイルが最も上昇される限界温度等である。「所定基準に照らして」は、例えば触媒の温度の実測値を活性温度と比較したり、オイルの温度(即ち、油温)の実測値を限界温度と比較することであり、「始動時期」は、典型的には、例えば内燃機関が冷えている状態で始動されてから、少なくとも触媒暖機が完了するまでの時期(言い換えれば、冷間始動時又は冷間始動時期)である。「運転状態」は、例えば回転数及び負荷、燃料噴射量等を示す。この場合に、例えば、触媒の温度が、活性温度である摂氏200度より高くなった後に、オイルの温度が、限界温度である摂氏100度に達すると、内燃機関について始動時期が終わったと判定される。すると、運転状態として、空燃比がリッチであるリッチ燃焼(即ち、高回転、高負荷、燃料噴射量:多)が行われる場合に、高温の排気が排出されるのに伴って、触媒の温度が高温になる。これに対応して、ポンプから高圧のオイルが循環され、高圧のオイルにより潤滑部が冷却される。一方で、始動時期が終わったと判定されると、例えば、運転条件として、空燃比がリーンであるリーン燃焼(即ち、低回転、低負荷、燃料噴射量:少)が行われる場合に、リッチ燃焼時より低い温度の排気が排出されるのに伴って、触媒の温度がリッチ燃焼時より低下される。これに対応して、ポンプから低圧のオイルが循環され、低圧のオイルにより潤滑部が冷却される。
【0026】
このように、内燃機関における状態が始動時期を終えた際には、触媒の温度に加えて内燃機関の運転状態に応じて油圧を変更することで、オイルによる潤滑という、オイル本来の機能を、いずれの運転状態においても高く維持することが可能となる。
【0027】
この態様では、前記制御手段は、前記触媒の温度が第3温度閾値より高いこと及び前記オイルの温度が第4温度閾値より高いことのうち少なくとも一方を前記条件として、前記ポンプを制御してもよい。
【0028】
このように構成すれば、「第3温度閾値」は、例えば第1温度閾値と異なる値とする摂氏210度であって、触媒が活性状態となる活性温度より高い暖機完了温度に設定されている。暖機完了温度は、例えば触媒全体が活性状態となるように触媒暖機が十分に行われたことを示す温度である。「第4温度閾値」は、例えば第2温度閾値と異なる値とする摂氏90度であって、オイルの温度、即ち油温が最も上昇された限界温度より低い低粘性温度に設定されている。低粘性温度は、例えば潤滑に支障をきたさない程度に、オイルの粘性が低下されたことを示す温度である。この場合に、例えば、触媒の温度が、暖機完了温度である摂氏210度より高くなった後に、油温が、低粘性温度である摂氏90度に達すると、内燃機関について始動時期が終わったと判定される。このように、第3及び第4温度閾値を設定して、始動時期の終わりを判定することで、触媒暖機をより確実に行いつつ、油圧をより適切に切り替えることができる。
【0029】
尚、「条件」は、上述したように、内燃機関における状態が所定基準に照らして始動時期を終えたものとして判定されることである。ここで「所定基準」は、例えば始動からの走行時間や走行距離に基づいて設定されてもよい。この場合に、例えば、走行距離が所定距離に達すると、内燃機関について始動時期が終わったと判定される。このように、触媒やオイルの温度の代わりに、走行時間や走行距離に応じて始動時期の終わりを判定することもできる。
【0030】
このように、触媒の温度及びオイルの温度に従って始動時期を終えたか否かを比較的簡単に判別でき、これにより始動時期を終えた際における制御を確実に行うことが可能となる。
【0031】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための最良の形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態について図を参照しつつ説明する。
【0033】
先ず、本実施形態に係る内燃機関の油圧制御装置の構成について図1を参照して説明する。ここに図1は、本実施形態に係る内燃機関の油圧制御装置の概要を示す概略的平面図である。
【0034】
図1において、本実施形態に係る内燃機関10の油圧制御装置100は、潤滑経路1、オイルパン11、オイルストレーナ12、オイルポンプ13、油温測定部14、ピストンジェット15、触媒温度測定部23及びECU40を備えている。油圧制御装置100は、潤滑経路1に沿って潤滑油であるオイルを循環させることで、内燃機関10の潤滑、緩衝、気密性保持、冷却、清浄等の役割を果たす。油圧制御装置100及び内燃機関10は、ECU40により総括的に制御される。
【0035】
潤滑経路1は、オイルパン11に溜まったオイルを、内燃機関10の内部に循環させるための経路である。潤滑経路1には、上流側から、オイルストレーナ12、オイルポンプ13、油温測定部14、及びピストンジェット15が配置されている。尚、潤滑経路1上の矢印は、オイルの流れを示す。
【0036】
オイルストレーナ12は、オイルポンプ13に吸引されるオイルを濾過する。オイルポンプ13は、本発明に係る「ポンプ」の一例として、不図示のクランクシャフトにより駆動される。オイルポンプ13は、オイルパン11からオイルストレーナ12を介してオイルを吸引すると共に、吸引したオイルを潤滑経路1に圧送する。オイルポンプ13は、ECU40の制御により、低圧又は高圧の二段階に油圧を切り替える。
【0037】
油温測定部14は、オイルポンプ13から圧送されるオイルの温度を測定すると共に、測定の結果をECU40に送信する。
【0038】
ピストンジェット15は、ピストン20に対して、その底面側からオイルを吹き付ける。ピストン20は、気筒21の燃焼室を形成している。気筒21には、排気通路22が接続されている。排気通路22上の矢印は、排気の流れを示す。排気通路22には、三元触媒23が配置されている。三元触媒22の内部には、触媒温度測定部24が配置されている。
【0039】
触媒温度測定部24は、三元触媒22の触媒の温度を測定すると共に、測定の結果をECU40に送信する。
【0040】
ECU40は、本発明に係る「制御手段」の一例として、図示しないCPU、ROM、RAM及びA/D変換器等を含んで構成される。ECU40は、触媒の温度に応じて、油圧を切り替えるようにオイルポンプ11を制御する。
【0041】
次に、ECU40による油圧切替制御について図2を参照して説明する。ここで図2は、内燃機関における車速、オイルの温度、及び触媒の温度、並びに油圧制御について、始動からの時間的推移を示すグラフである。
【0042】
図2において、縦軸に示される、車速、オイルの温度(油温)、及び触媒の温度(触媒温度)は、本発明に係る「内燃機関における状態」の一例を示している。図2に示すように、触媒温度は、原点(即ち、「0」で示す)から段階的(上昇の初期)又は連続的(上昇の終期)に、車速が比較的高い速度Vtに達する時点まで上昇され、それ以降、下降される。触媒温度の上昇過程では、触媒温度が摂氏200度(即ち、200℃)に達した時点で、触媒が活性状態となる。本実施形態では、触媒を活性状態にするための活性温度が、本発明に係る「第1温度閾値」の一例として、摂氏200度に設定されている。
【0043】
油温は、原点からなだらかに上昇して摂氏100度に達し、それ以降、該摂氏100度を維持する。本実施形態では、油温が最も上昇される限界温度が、本発明に係る「第2温度閾値」の一例として、摂氏100度に設定されている。
【0044】
ECU40は、本実施形態では、始動時期及び始動時期後で、異なる油圧切替制御を行う。図2において、始動時期は、原点から、油温が限界温度(即ち、摂氏100度)になるまでの時期である。始動時期後は、始動時期より後の時期である。
【0045】
ECU40は、始動時期に、触媒温度に応じて、油圧を切り替えるための制御を行う。具体的には、触媒温度が活性温度より低い場合に、触媒暖機をより優先して行うために、オイルポンプ13により高圧のオイルを圧送させる(即ち、高油圧制御)。一方、触媒温度が活性温度より高い場合に、オイルポンプ13の負荷を低減するために、即ち、これに伴う燃費向上をより優先して行うために、オイルポンプ13により低圧のオイルを圧送させる(即ち、低油圧制御)。
【0046】
ECU40は、触媒温度及び油温に基づいて、始動時期を終えたものと判定する。具体的には、先ず触媒温度の実測値が活性温度より高い場合に、触媒が活性状態にあり、触媒暖機が完了したと判断する。この後、油温の実測値が、限界温度に達した場合に、オイルの粘性が十分に低下したと判断する。これら2つの判断により、ECU40は、始動時期を終えたと判定する。
【0047】
ECU40は、始動時期後に、内燃機関10の運転状態に応じて、油圧を切り替えるための制御を行う。具体的には、始動時期後に、空燃比がリッチであるリッチ燃焼が行われる場合に、高回転、高負荷、及び燃料噴射量の増大に対応して、オイルポンプ13により高圧のオイルを圧送させる(即ち、高油圧制御)。一方、空燃比がリーンであるリーン燃焼が行われる場合に、低回転、低負荷、及び燃料噴射量の減少に対応して、オイルポンプ13により低圧のオイルを圧送させる(即ち、低油圧制御)。基本的には、内燃機関10が高回転である程、その潤滑のためのオイルはより大量に必要となり、内燃機関10が低回転である程、その潤滑のためのオイルはより少量だけ必要となる。このため、回転数等に応じて、オイルの供給量が増減される。
(油圧制御動作処理)
【0048】
次に、本実施形態の制御手段による油圧制御の動作処理について図3を参照しつつ説明する。ここで図3は、本実施形態に係る制御手段の油圧制御動作処理の概要を示すフローチャートである。
【0049】
図3において、先ずECU40により、内燃機関10の運転状態が読み込まれ(ステップS41)、触媒温度測定部24による触媒温度、及び油温測定部14による油温が測定される。続いて、触媒温度が摂氏200度より高いか否かが判定される(ステップS42)。この判定の結果、摂氏200度以下である場合に(ステップS42:NO)、触媒暖機が完了されていないとして、高油圧制御が行われ(ステップS43)、一連の油圧制御動作処理が終了される。この後、再びステップS41からの処理が行われる。
【0050】
一方、ステップS42の判定の結果、触媒温度が摂氏200度より高い場合に(ステップS42:YES)、触媒暖機が完了されたとして、油温が摂氏100度より低いか否かが判定される(ステップS44)。この判定の結果、摂氏100度以上である場合に(ステップS44:NO)、始動時期が終わったとして、触媒温度に応じて高油圧制御が行われ(ステップS43)、一連の油圧制御動作処理が終了される。この後、再びステップS41からの処理が行われる。
【0051】
一方、ステップS44の判定の結果、油温が摂氏100度より低い場合に(ステップS44:YES)、未だ始動時期であるとして、低油圧制御が行われ(ステップS45)、一連の油圧制御動作処理が終了される。この後、再びステップS41からの処理が行われる。
【0052】
このように、ECU40により、触媒の温度が、触媒暖機が完了されていないことを示す温度である場合に、高油圧に設定して触媒暖機を行うと共に、触媒の温度が、触媒暖機が完了されたことを示す温度である場合に、低油圧に設定してオイルポンプ13の負荷を軽減するので、始動時期に、効率良く触媒暖機を行いつつ、油圧を適切に切り替えて燃費を向上させることができる。
【0053】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】実施形態に係る内燃機関の油圧制御装置を示す概要的なブロック図である。
【図2】実施形態における内燃機関の状態、及び該状態に対応する油圧制御の時間的推移を示すグラフである。
【図3】実施形態における制御手段による油圧制御動作処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0055】
10…内燃機関、13…オイルポンプ、40…ECU、100…油圧制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧を段階的又は連続的に変更可能としつつ内燃機関にオイルを循環させることが可能なポンプと、
前記内燃機関の排気を浄化する触媒の温度に応じて、前記油圧を変更するように前記ポンプを制御する制御手段と
を備えることを特徴とする内燃機関の油圧制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記触媒の温度が第1温度閾値より低い場合に、前記油圧を高めるように前記ポンプを制御することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の油圧制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記触媒の温度が前記第1温度閾値より高い場合に、前記油圧を低めるように前記ポンプを制御することを特徴とする請求項2に記載の内燃機関の油圧制御装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記オイルの温度が第2温度閾値より高いことを条件として、前記触媒の温度に応じて前記油圧を高めるように前記ポンプを制御することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の内燃機関の油圧制御装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記内燃機関における状態が所定基準に照らして始動時期を終えたものと判定されることを条件に、前記触媒の温度に加えて前記内燃機関の運転状態に応じて、前記油圧を変更するように前記ポンプを制御することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の内燃機関の油圧制御装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記触媒の温度が第3温度閾値より高いこと及び前記オイルの温度が第4温度閾値より高いことのうち少なくとも一方を前記条件として、前記ポンプを制御することを特徴とする請求項5に記載の内燃機関の油圧制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−197589(P2009−197589A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−36933(P2008−36933)
【出願日】平成20年2月19日(2008.2.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】