説明

内燃機関の潤滑油制御装置

【課題】内燃機関の潤滑油制御装置において、内燃機関を自動的に停止させた最中にオイルヒータに滞留した潤滑油が過剰に加熱されることを回避しつつ、早期に潤滑油を温める技術を提供する。
【解決手段】アイドルストップ制御を搭載した車両において、オイルパン2の潤滑油を内燃機関1の各潤滑部4へ供給し、当該各潤滑部4から潤滑油をオイルパン2へ回収する潤滑油路3と、潤滑油路3の途中に設けられ、オイルパン2の潤滑油を汲み上げて潤滑油を潤滑油路内で循環させる電動オイルポンプ5と、潤滑油路3の途中に設けられ、潤滑油を温めるオイルヒータ7と、を備え、潤滑油温が所定温度TAよりも低い時にアイドルストップさせた最中は、電動オイルポンプ5を駆動して潤滑油を循環させると共に、オイルヒータ7で潤滑油を温める。また、油路切替弁9を開弁して潤滑油をバイパス油路8へ流す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の潤滑油制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
潤滑油温を検知する油温センサと、潤滑油を加熱するオイルヒータと、を備え、油温センサにより検知された油温が一定温度以下である場合には、オイルヒータで潤滑油を加熱する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−131732号公報
【特許文献2】特開2004−232587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年では、車両にアイドルストップ制御が搭載されたものが知られている。車両のアイドルストップ制御とは、車両が停止した場合等の規定の停止条件下で内燃機関を自動的に停止させる。一方、アイドルストップ中にアクセルペダルの踏み込み操作があった場合等の規定の始動条件下で内燃機関を自動的に再始動させる(例えば、特許文献2参照)。このようなアイドルストップ制御を搭載した車両において、アイドルストップ中は内燃機関の作動に連動して動作する機械式オイルポンプも停止し、潤滑油が循環しなくなる。このため、オイルヒータで潤滑油を加熱している場合には、アイドルストップ中はオイルヒータに滞留した潤滑油を過剰に加熱してしまうおそれがあった。過剰に加熱された潤滑油からは、スラッジやデポジットが発生する可能性があり、最悪の場合には潤滑油が炭化する可能性もある。
【0005】
本発明は上記問題点に鑑みたものであり、本発明の目的は、内燃機関の潤滑油制御装置において、内燃機関を自動的に停止させた最中にオイルヒータに滞留した潤滑油が過剰に加熱されることを回避しつつ、早期に潤滑油を温める技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にあっては、以下の構成を採用する。すなわち、本発明は、
内燃機関を自動的に停止させると共に前記内燃機関を自動的に再始動させる制御を行う自動制御手段と、
油貯留部の潤滑油を前記内燃機関の各潤滑部へ供給し、当該各潤滑部から潤滑油を前記油貯留部へ回収する潤滑油路と、
前記潤滑油路の途中に設けられ、前記油貯留部の潤滑油を汲み上げて潤滑油を前記潤滑油路内で循環させる電動オイルポンプと、
前記潤滑油路の途中に設けられ、潤滑油を温めるオイルヒータと、
前記自動制御手段が前記内燃機関を自動的に停止させた最中は、前記電動オイルポンプを駆動して潤滑油を循環させると共に、前記オイルヒータで潤滑油を温める潤滑油制御手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関の潤滑油制御装置である。
【0007】
本発明によると、潤滑油制御手段が、自動制御手段が内燃機関を自動的に停止させた最中は、電動オイルポンプを駆動して潤滑油を循環させると共に、オイルヒータで潤滑油を温める。このため、内燃機関を自動的に停止させた最中には、電動オイルポンプが駆動さ
れて潤滑油が循環しており、オイルヒータには潤滑油が滞留しないので、オイルヒータに滞留した潤滑油が過剰に加熱されることを回避できる。またこのとき、オイルヒータで潤滑油を温めるので、早期に潤滑油を温めることができる。このように、内燃機関を自動的に停止させた最中でも、潤滑油を劣化させることなく早期に温めることができ、内燃機関を自動的に停止させることによる燃費改善と、潤滑油温を早期に上昇させて潤滑油粘度を低くすることによる燃費改善とを両立できる。
【0008】
前記電動オイルポンプ及び前記オイルヒータよりも下流側且つ前記内燃機関の各潤滑部よりも上流側の前記潤滑油路から分岐し、前記油貯留部へ至るバイパス油路と、前記バイパス油路へ潤滑油を流す油路切替手段と、を備え、前記潤滑油制御手段は、前記自動制御手段が前記内燃機関を自動的に停止させた最中は、前記油路切替手段で潤滑油を前記バイパス油路へ流すとよい。
【0009】
本発明によると、潤滑油制御手段が、自動制御手段が内燃機関を自動的に停止させた最中は、油路切替手段で潤滑油をバイパス油路へ流す。このため、内燃機関を自動的に停止させた最中には、潤滑油は内燃機関の各潤滑部へ至らないので、潤滑油が内燃機関の各潤滑部に至って各潤滑部で潤滑油の熱が奪われることがない。またこのとき、潤滑油は、オイルヒータで温められてバイパス油路を流れて油貯留部に直接回収される。よって、内燃機関を自動的に停止させた最中に、潤滑油を早期に温めることができる。
【0010】
前記潤滑油制御手段は、潤滑油温が潤滑油粘度が低くなり燃費の良くなる所定温度よりも低い時に前記自動制御手段が前記内燃機関を自動的に停止させた最中は、前記電動オイルポンプを駆動して潤滑油を循環させると共に、前記オイルヒータで潤滑油を温めるものであって、前記自動制御手段が前記内燃機関を自動的に停止させた最中或いは停止させる直前に潤滑油温が前記所定温度に上昇した場合には、前記オイルヒータを停止させると共に、前記オイルヒータの停止から前記オイルヒータの余熱により潤滑油が劣化してしまうおそれのある所定時間経過までは前記電動オイルポンプを駆動して潤滑油を循環させるとよい。
【0011】
ここで、所定温度とは、潤滑油温が、潤滑油粘度が低くなり燃費の良くなる温度である。所定温度は、潤滑油路内の潤滑油温を温度センサで検知し、その検知温度として、潤滑油粘度が低くなり燃費の良くなる予め実験や検証等で設定した温度である。所定時間とは、オイルヒータが停止した後に、オイルヒータの余熱によりオイルヒータに滞留する潤滑油が劣化してしまうおそれのある時間である。所定時間は、予め実験や検証等で設定してもよいし、オイルヒータの表面温度やオイルヒータの潤滑油出入口温度を温度センサで検知し、その検知温度が、潤滑油が劣化してしまうおそれのなくなる温度以下になることで設定してもよい。
【0012】
本発明によると、潤滑油制御手段が、潤滑油温が潤滑油粘度が低くなり燃費の良くなる所定温度よりも低い時に自動制御手段が内燃機関を自動的に停止させた最中は、電動オイルポンプを駆動して潤滑油を循環させると共に、オイルヒータで潤滑油を温める。このため、潤滑油温が所定温度よりも低い時に内燃機関を自動的に停止させた最中には、電動オイルポンプが駆動されて潤滑油が循環しており、オイルヒータには潤滑油が滞留しないので、オイルヒータに滞留した潤滑油が過剰に加熱されることを回避できる。またこのとき、オイルヒータで潤滑油を温めるので、早期に潤滑油を温めることができる。このように、潤滑油温が所定温度よりも低い時に内燃機関を自動的に停止させた最中でも、潤滑油を劣化させることなく早期に温めることができ、内燃機関を自動的に停止させることによる燃費改善と、潤滑油温を早期に上昇させて潤滑油粘度を低くすることによる燃費改善とを両立できる。
【0013】
一方、本発明によると、潤滑油制御手段が、自動制御手段が内燃機関を自動的に停止させた最中或いは停止させる直前に潤滑油温が潤滑油粘度が低くなり燃費の良くなる所定温度に上昇した場合には、オイルヒータを停止させると共に、オイルヒータの停止からオイルヒータの余熱により潤滑油が劣化してしまうおそれのある所定時間経過までは電動オイルポンプを駆動して潤滑油を循環させる。このため、オイルヒータを停止させるのと同時に電動オイルポンプを停止させてしまうことがなく、オイルヒータの余熱によりオイルヒータに滞留した潤滑油が劣化してしまうことを抑制できる。
【0014】
前記電動オイルポンプ及び前記オイルヒータよりも下流側且つ前記内燃機関の各潤滑部よりも上流側の前記潤滑油路から分岐し、前記油貯留部へ至るバイパス油路と、前記バイパス油路へ潤滑油を流す油路切替手段と、を備え、前記潤滑油制御手段は、潤滑油温が前記所定温度よりも低い時に前記自動制御手段が前記内燃機関を自動的に停止させた最中は、前記油路切替手段で潤滑油を前記バイパス油路へ流すとよい。
【0015】
本発明によると、潤滑油制御手段が、潤滑油温が所定温度よりも低い時に自動制御手段が内燃機関を自動的に停止させた最中は、油路切替手段で潤滑油をバイパス油路へ流す。このため、潤滑油温が所定温度よりも低い時に内燃機関を自動的に停止させた最中には、潤滑油は内燃機関の各潤滑部へ至らないので、潤滑油が内燃機関の各潤滑部に至って各潤滑部で潤滑油の熱が奪われることがない。またこのとき、潤滑油は、オイルヒータで温められてバイパス油路を流れて油貯留部に直接回収される。よって、潤滑油温の低い時に内燃機関を自動的に停止させた最中に、潤滑油を早期に温めることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、内燃機関の潤滑油制御装置において、内燃機関を自動的に停止させた最中にオイルヒータに滞留した潤滑油が過剰に加熱されることを回避しつつ、早期に潤滑油を温めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1に係る内燃機関の潤滑油制御装置の概略構成を示す図である。
【図2】実施例1に係るヒータ制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図3】実施例1に係る切替弁及びポンプ制御ルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の具体的な実施例を説明する。
【0019】
<実施例1>
図1は、本実施例に係る内燃機関の潤滑油制御装置の概略構成を示している。図1に示す内燃機関1は、車両に搭載された4つの気筒を有する水冷式の4ストロークサイクル・ガソリンエンジンである。なお、本実施例ではガソリンエンジンを例に挙げて説明するが、他の周知のエンジン(例えばディーゼルエンジン)であっても同様に適用することができる。
【0020】
内燃機関1には、最下部に潤滑油を溜めておく油貯留部としてのオイルパン2が設けられている。油貯留部としては、オイルパンの他オイルタンク等でもよい。潤滑油路3は、オイルパン2の潤滑油を内燃機関1の各潤滑部4へ供給し、当該各潤滑部4から潤滑油をオイルパン2へ回収する。なお、各潤滑部4とは、内燃機関1における潤滑油が供給されて潤滑される部位であり、例えばクランクシャフト、シリンダ壁 、動弁機構等の内燃機関
1内の各部位である。また、潤滑油路3の図1に示す矢印は、潤滑油の流れる向きを示している。
【0021】
潤滑油路3の途中には、各潤滑部4よりも上流側に、電動オイルポンプ5が配置されている。電動オイルポンプ5は、バッテリ6から電力が供給されることにより作動し、オイルパン2の潤滑油を汲み上げて潤滑油を潤滑油路内で循環させる。なお、本実施例では、潤滑油路3には、電動オイルポンプ5だけを備える構成を例示するが、電動オイルポンプ5の他に内燃機関1の作動によって動作する機械式オイルポンプを並存するものであってもよい。
【0022】
潤滑油路3の途中には、電動オイルポンプ5よりも下流側且つ各潤滑部4よりも上流側に、オイルヒータ7が配置されている。オイルヒータ7は、バッテリ6から電力が供給されることにより発熱し潤滑油を温める電気加熱式のヒータである。
【0023】
潤滑油路3の途中においてオイルヒータ7よりも下流側且つ各潤滑部4よりも上流側で潤滑油路3から分岐し、オイルパン2へ至るバイパス油路8が設けられている。潤滑油がバイパス油路8を流れると、潤滑油は各潤滑部4には供給されずにオイルパン2へ直接回収される。バイパス油路8は、電動オイルポンプ5及びオイルヒータ7よりも下流側且つ各潤滑部4よりも上流側の潤滑油路3から分岐するものであればよい。バイパス油路8の図1に示す矢印は、潤滑油の流れる向きを示している。
【0024】
バイパス油路8の途中には、バイパス油路8へ潤滑油を流す油路切替手段としての油路切替弁9が配置されている。油路切替弁9が開弁されると、バイパス油路8へ潤滑油を流し、潤滑油は各潤滑部4には供給されなくなる。油路切替弁9が閉弁されると、潤滑油はバイパス油路8を流れない。なお、油路切替手段としては、開閉弁の他に、油路を切り替える切替弁や、バイパス油路8を開閉可能な機構等種々の機構を用いることができる。
【0025】
バイパス油路8との分岐位置よりも上流側の潤滑油路3の途中には、潤滑油の温度を検知する油温センサ10が配置されている。油温センサ10により潤滑油路3内の潤滑油の温度が検知できる。
【0026】
以上述べたように構成された内燃機関1には、内燃機関1を制御するための電子制御ユニットであるECU11が併設されている。ECU11には、油温センサ10等の各種センサが電気配線を介して接続され、これら各種センサの出力信号がECU11に入力される。また、ECU11には電動オイルポンプ5、オイルヒータ7及び油路切替弁9が電気配線を介して接続され、これらの機器をECU11が制御する。
【0027】
また、ECU11は、車両が停止した場合等の規定の停止条件が成立すると運転者の意思によらず内燃機関1を自動的に停止させる。一方、ECU11は、内燃機関1を自動的に停止させた最中にアクセルペダルの踏み込み操作があった場合等の規定の始動条件が成立すると運転者の意思によらず内燃機関1を自動的に再始動させる。このような制御をアイドルストップ制御といい、内燃機関1を自動的に停止させた状態をアイドルストップという。アイドルストップ制御等の自動制御を行うECU11が本発明の自動制御手段に相当する。
【0028】
なお、ハイブリッド車両でも、アイドルストップと同様な自動制御が適用される。ハイブリッド車両の場合には、モータで走行する低速域では運転者の意思によらず内燃機関1が自動的に停止され、中高速域に移行したときに運転者の意思によらず内燃機関1が自動的に再始動される。この場合、電動オイルポンプ5及びオイルヒータ7に供給される電力は、バッテリ6だけでなくモータジェネレータが発電する電力でもよい。
【0029】
ところで、車両の発進直後では、潤滑油温が低く潤滑油粘度が高いので、燃費が悪化す
る。このため、潤滑油を早期に温めることが望まれる。しかしながら、上記のようなアイドルストップ制御を搭載した車両においても、アイドルストップ中は、従来搭載されていたポンプであって内燃機関の作動に連動して動作する機械式オイルポンプは停止し、潤滑油が循環しなくなっていた。このため、車両の発進直後に潤滑油温が低く潤滑油粘度が高いことからオイルヒータで潤滑油を温めている場合には、アイドルストップ中はオイルヒータに滞留した潤滑油を過剰に加熱してしまうおそれがあった。過剰に加熱された潤滑油からは、スラッジやデポジットが発生する可能性があり、最悪の場合には潤滑油が炭化する可能性もある。
【0030】
そこで、本実施例では、潤滑油温が所定温度TAよりも低く潤滑油粘度が高いために燃費が悪化している時にアイドルストップさせた最中は、電動オイルポンプ5を駆動して潤滑油を循環させると共に、オイルヒータ7で潤滑油を温めるようにした。
【0031】
本実施例によると、潤滑油温が所定温度TAよりも低く潤滑油粘度が高いために燃費が悪化している時にアイドルストップさせた最中には、電動オイルポンプ5が駆動されて潤滑油が潤滑油路3内で循環しており、オイルヒータ7には潤滑油が滞留しない。よって、オイルヒータ7に滞留した潤滑油が過剰に加熱されることを回避できる。またこのとき、オイルヒータ7で潤滑油を温めるので、早期に潤滑油を温めることができる。このように、潤滑油を劣化させることなく早期に温めることができ、アイドルストップによる燃費改善と、潤滑油温を早期に上昇させて潤滑油粘度を低くすることによる燃費改善とを両立できる。
【0032】
また、潤滑油温が所定温度TAよりも低く潤滑油粘度が高いために燃費が悪化している時にアイドルストップさせた最中は、油路切替弁9を開弁して潤滑油をバイパス油路8へ流すようにした。
【0033】
本実施例によると、潤滑油温が所定温度TAよりも低く潤滑油粘度が高いために燃費が悪化している時にアイドルストップさせた最中には、潤滑油は各潤滑部4へ至らないので、潤滑油が各潤滑部4に至って各潤滑部4で潤滑油の熱が奪われることがない。またこのとき、潤滑油は、オイルヒータ7で温められてバイパス油路8を流れてオイルパン2に直接回収される。よって、潤滑油を早期に温めることができる。
【0034】
一方、アイドルストップさせた最中或いはアイドルストップさせる直前に潤滑油温が潤滑油粘度が低くなり燃費の良くなる所定温度TAに上昇した場合には、オイルヒータ7を停止させる。またそれと共に、オイルヒータ7の停止からオイルヒータ7の余熱により潤滑油が劣化してしまうおそれのある所定時間TB経過までは電動オイルポンプ5を駆動して潤滑油を循環させるようにした。
【0035】
本実施例によると、オイルヒータ7を停止させるのと同時に電動オイルポンプ5を停止させてしまうことがなく、オイルヒータ7の余熱によりオイルヒータ7に滞留した潤滑油が劣化してしまうことを抑制できる。
【0036】
ここで、所定温度TAとは、潤滑油温が、潤滑油粘度が低くなり燃費の良くなる温度である。所定温度TAは、潤滑油路3の潤滑油温を油温センサ10で検知し、その検知温度として、潤滑油粘度が低くなり燃費の良くなる温度であって予め実験や検証等で設定した温度である。所定時間TBとは、オイルヒータ7が停止した後に、オイルヒータ7の余熱によりオイルヒータ7に滞留する潤滑油が劣化してしまうおそれのある時間である。所定時間TBは、予め実験や検証等で設定される。
【0037】
次に、本実施例に係る潤滑油制御について説明する。潤滑油制御は、ヒータ制御ルーチ
ン並びに切替弁及びポンプ制御ルーチンから構成される。図2は、本実施例に係るヒータ制御ルーチンを示すフローチャートである。図3は、本実施例に係る切替弁及びポンプ制御ルーチンを示すフローチャートである。両ルーチンは、所定の時間毎に繰り返し実行される。両ルーチンを実行するECU11が本発明の潤滑油制御手段に相当する。
【0038】
図2に示すヒータ制御ルーチンにおいて、ステップS101では、油温センサ10で検知する潤滑油路3内の潤滑油温が所定温度TAよりも低いか否かを判別する。ステップS101において肯定判定された場合には、ステップS102へ移行する。ステップS101において否定判定された場合には、ステップS103へ移行する。
【0039】
ステップS102では、オイルヒータ7をONして潤滑油を温める。オイルヒータ7は、ステップS101で肯定判定されている場合には、内燃機関1が作動しているアイドルストップ前であっても、アイドルストップ中であっても、潤滑油を温める。本ステップの処理の後、本ルーチンを一旦終了する。
【0040】
ステップS103では、オイルヒータ7をOFFして潤滑油を温めない。オイルヒータ7は、ステップS101で否定判定されている場合には、内燃機関1が作動しているアイドルストップ前であっても、アイドルストップ中であっても、潤滑油を温めない。本ステップの処理の後、本ルーチンを一旦終了する。
【0041】
図3に示す切替弁及びポンプ制御ルーチンにおいて、ステップS201では、内燃機関1がアイドルストップしたか否かを判別する。内燃機関1がアイドルストップしたことは、当該アイドルストップを実行しているECU11で判断できる。ステップS201において肯定判定された場合には、ステップS202へ移行する。ステップS201において否定判定された場合には、ステップS208へ移行する。
【0042】
ステップS202では、オイルヒータ7をONしているか否かを判別する。オイルヒータ7をONしているか否かは、図2に示すヒータ制御ルーチンを実行しているECU11で判断できる。ステップS202において肯定判定された場合には、ステップS203へ移行する。ステップS202において否定判定された場合には、ステップS205へ移行する。
【0043】
ステップS203では、アイドルストップの最中且つオイルヒータ7がONの最中は、油路切替弁9を開弁して潤滑油をバイパス油路8へ流す。これにより、潤滑油は、内燃機関1の各潤滑部4に供給されなくなる。
【0044】
ステップS204では、アイドルストップの最中且つオイルヒータ7がONの最中は、電動オイルポンプ5を駆動して潤滑油を循環させる。電動オイルポンプ5は、内燃機関1が作動しているアイドルストップ前にも駆動されて潤滑油を循環させているので、結果として電動オイルポンプ5を継続して駆動させることになる。本ステップの後、本ルーチンを一旦終了する。
【0045】
一方、ステップS205では、オイルヒータ7をOFFしてから所定時間TB経過したか否かを判別する。ステップS205において所定時間経過したと肯定判定された場合には、ステップS206へ移行する。ステップS205において否定判定された場合には、ステップS203へ移行する。
【0046】
ステップS206では、アイドルストップの最中に、油路切替弁9を閉弁して潤滑油をバイパス油路8へ流さなくする。これにより、潤滑油は、内燃機関1の各潤滑部4に供給される。
【0047】
ステップS207では、アイドルストップの最中に、電動オイルポンプ5をOFFして潤滑油を循環させなくする。本ステップの後、本ルーチンを一旦終了する。
【0048】
一方、ステップS208では、アイドルストップしていない場合には、油路切替弁9を閉弁して潤滑油をバイパス油路8へ流さなくする。これにより、潤滑油は、内燃機関1の各潤滑部4に供給される。
【0049】
ステップS209では、アイドルストップしていない場合には、電動オイルポンプ5を駆動して潤滑油を循環させる。電動オイルポンプ5は、内燃機関1が作動しているアイドルストップしていない場合には駆動されて潤滑油を循環させる。本ステップの後、本ルーチンを一旦終了する。
【0050】
以上説明した両ルーチンによれば、アイドルストップさせた最中にオイルヒータ7に滞留した潤滑油が過剰に加熱されることを回避しつつ、早期に潤滑油を温めることができる。
【0051】
なお、本実施例では、潤滑油温が所定温度TAよりも低い時にアイドルストップする場合に、電動オイルポンプ5を駆動して潤滑油を循環させると共に、オイルヒータ7で潤滑油を温めていた。しかしこれに限られない。例えば、アイドルストップする場合は全て、電動オイルポンプ5を駆動して潤滑油を循環させると共に、オイルヒータ7で潤滑油を温めてもよい。またこのときアイドルストップする場合は全て、油路切替弁9を開弁して潤滑油をバイパス油路8へ流すようにしてもよい。さらに、本実施例では、潤滑油温が所定温度TAよりも低い時にアイドルストップする場合に、油路切替弁9を開弁して潤滑油をバイパス油路8へ流すようにしていた。しかしこれに限られない。バイパス油路8及び油路切替弁9を備えておらず、潤滑油を単に潤滑油路3内で循環させるようにしてもよい。
【0052】
本発明に係る内燃機関の潤滑油制御装置は、上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 内燃機関
2 オイルパン
3 潤滑油路
4 各潤滑部
5 電動オイルポンプ
6 バッテリ
7 オイルヒータ
8 バイパス油路
9 油路切替弁
10 油温センサ
11 ECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関を自動的に停止させると共に前記内燃機関を自動的に再始動させる制御を行う自動制御手段と、
油貯留部の潤滑油を前記内燃機関の各潤滑部へ供給し、当該各潤滑部から潤滑油を前記油貯留部へ回収する潤滑油路と、
前記潤滑油路の途中に設けられ、前記油貯留部の潤滑油を汲み上げて潤滑油を前記潤滑油路内で循環させる電動オイルポンプと、
前記潤滑油路の途中に設けられ、潤滑油を温めるオイルヒータと、
前記自動制御手段が前記内燃機関を自動的に停止させた最中は、前記電動オイルポンプを駆動して潤滑油を循環させると共に、前記オイルヒータで潤滑油を温める潤滑油制御手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関の潤滑油制御装置。
【請求項2】
前記電動オイルポンプ及び前記オイルヒータよりも下流側且つ前記内燃機関の各潤滑部よりも上流側の前記潤滑油路から分岐し、前記油貯留部へ至るバイパス油路と、
前記バイパス油路へ潤滑油を流す油路切替手段と、
を備え、
前記潤滑油制御手段は、前記自動制御手段が前記内燃機関を自動的に停止させた最中は、前記油路切替手段で潤滑油を前記バイパス油路へ流すことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の潤滑油制御装置。
【請求項3】
前記潤滑油制御手段は、潤滑油温が潤滑油粘度が低くなり燃費の良くなる所定温度よりも低い時に前記自動制御手段が前記内燃機関を自動的に停止させた最中は、前記電動オイルポンプを駆動して潤滑油を循環させると共に、前記オイルヒータで潤滑油を温めるものであって、前記自動制御手段が前記内燃機関を自動的に停止させた最中或いは停止させる直前に潤滑油温が前記所定温度に上昇した場合には、前記オイルヒータを停止させると共に、前記オイルヒータの停止から前記オイルヒータの余熱により潤滑油が劣化してしまうおそれのある所定時間経過までは前記電動オイルポンプを駆動して潤滑油を循環させることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の潤滑油制御装置。
【請求項4】
前記電動オイルポンプ及び前記オイルヒータよりも下流側且つ前記内燃機関の各潤滑部よりも上流側の前記潤滑油路から分岐し、前記油貯留部へ至るバイパス油路と、
前記バイパス油路へ潤滑油を流す油路切替手段と、
を備え、
前記潤滑油制御手段は、潤滑油温が前記所定温度よりも低い時に前記自動制御手段が前記内燃機関を自動的に停止させた最中は、前記油路切替手段で潤滑油を前記バイパス油路へ流すことを特徴とする請求項3に記載の内燃機関の潤滑油制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−27065(P2011−27065A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−175527(P2009−175527)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】