説明

内燃機関の燃料改質制御装置

【課題】エンジンに供給される燃料を改質する機能を備えたシステムにおいて、燃料の改質効率を向上させることができるようにする。
【解決手段】ECU34は、エンジン運転状態(例えばエンジン回転速度やエンジン負荷等)とEGRガス流量に応じて改質用燃料噴射弁26で噴射する改質用燃料の噴射量を算出する。その際、EGRガスの温度や改質用燃料のアルコール濃度に応じて改質用燃料の噴射量を変更して、改質用燃料の気化熱による燃料改質触媒28やEGRガスの温度低下を抑制する。また、改質用燃料の噴射量やEGRガス流量に応じて改質用燃料の噴射周期を変更して、燃料改質触媒28に流れるEGRガス中の改質用燃料が濃くなったり薄くなったりする改質用燃料の偏在(濃淡)を抑制する。更に、エンジン回転速度に応じて改質用燃料の噴射周期を変更して、各気筒の改質燃料供給量をほぼ均一にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に供給される燃料を改質する機能を備えた内燃機関の燃料改質制御装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
内燃機関に改質した燃料を供給する技術としては、例えば、特許文献1(特許第4038770号公報)に記載されているように、内燃機関の吸気通路に、吸入空気をバイパスさせるバイパス通路を接続し、このバイパス通路に、改質用の燃料を噴射する燃料噴射弁と燃料を改質する改質触媒とを配置するようにしたものがある。
【0003】
また、特許文献2(特開2006−291901号公報)に記載されているように、内燃機関の排出ガスの一部を吸気通路に還流させるガス還流通路に、改質用の燃料を噴射する燃料噴射弁と燃料を改質する改質触媒とを配置するようにしたものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4038770号公報
【特許文献2】特開2006−291901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、改質触媒の温度や改質触媒を通過する媒体ガス(例えばEGRガス)の温度が低いときに、改質用燃料を大量に噴射すると、改質用燃料の気化熱により媒体ガスや改質触媒の温度が更に低下して、燃料の改質効率が低下する可能性がある。
【0006】
また、改質用燃料の噴射量が多いときに、改質用燃料の噴射周期が長いと、改質触媒に流れる媒体ガス中の改質用燃料の濃度が濃くなったり薄くなったりする改質用燃料の偏在(濃淡)が生じて、改質触媒を有効に利用することができず、燃料の改質効率が低下する可能性がある。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、内燃機関に供給される燃料を改質する機能を備えたシステムにおいて、燃料の改質効率を向上させることができる内燃機関の燃料改質制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、内燃機関の吸気系に供給される媒体ガス中に改質用の燃料を噴射する改質用燃料噴射手段と、媒体ガス中の燃料を改質する燃料改質手段と、少なくとも内燃機関の運転状態に応じて改質用燃料の噴射量を設定する改質用燃料噴射制御手段とを備えた内燃機関の燃料改質制御装置において、改質用燃料噴射制御手段は、燃料改質手段と媒体ガスのうちの少なくとも一方の温度に応じて改質用燃料の噴射量を変更するようにしたものである。
【0009】
このように、燃料改質手段(例えば燃料改質触媒)の温度や媒体ガス(例えばEGRガス)の温度に応じて改質用燃料の噴射量を変更することで、改質用燃料の噴射量を燃料改質手段の温度や媒体ガスの温度に応じた適正値に設定して、改質用燃料の気化熱による媒体ガスや燃料改質手段の温度低下を抑制することができ、燃料の改質効率を向上させることができる。
【0010】
この場合、請求項2のように、温度が低くなるほど改質用燃料の噴射量を減量し、温度が高くなるほど改質用燃料の噴射量を増量すると良い。このようにすれば、燃料改質手段の温度や媒体ガスの温度が低いときには、改質用燃料の噴射量を減量することで、改質用燃料の気化熱による媒体ガスや燃料改質手段の温度低下を抑制して、燃料の改質効率の低下を抑制することができる。一方、燃料改質手段の温度や媒体ガスの温度が高いときには、改質用燃料の噴射量を増量することで、燃料の改質量(改質される燃料量)を増加させることができる。
【0011】
また、請求項3のように、内燃機関の吸気系に供給される媒体ガス中に改質用の燃料を噴射する改質用燃料噴射手段と、媒体ガス中の燃料を改質する燃料改質手段と、少なくとも内燃機関の運転状態に応じて改質用燃料の噴射量を設定する改質用燃料噴射制御手段とを備えた内燃機関の燃料改質制御装置において、改質用燃料噴射制御手段は、改質用燃料の噴射量と媒体ガスの流量のうちの少なくとも一方に応じて改質用燃料の噴射周期を変更するようにしても良い。
【0012】
このように、改質用燃料の噴射量や媒体ガスの流量に応じて改質用燃料の噴射周期を変更することで、改質用燃料の噴射周期を改質用燃料の噴射量や媒体ガスの流量に応じた適正値に設定して、燃料改質手段に流れる媒体ガス中の改質用燃料が濃くなったり薄くなったりする改質用燃料の偏在(濃淡)を抑制することができ、燃料改質手段を有効に利用して燃料の改質効率を向上させることができる。
【0013】
この場合、請求項4のように、改質用燃料の噴射周期の最小値は、改質用燃料の噴射期間が改質用燃料噴射手段の最小噴射時間(燃料を正常に噴射可能な噴射時間の下限値)以上となる範囲内で最小の周期とすると良い。このようにすれば、改質用燃料の噴射期間が改質用燃料噴射手段の最小噴射時間以上となる範囲内で改質用燃料の噴射周期を変更することができる。
【0014】
また、請求項5のように、改質用燃料の噴射量が多くなるほど改質用燃料の噴射周期を短くすると良い。このようにすれば、改質用燃料の噴射量が多くなるほど改質用燃料の偏在が生じ易くなるのに対応して、改質用燃料の噴射周期を短くして、改質用燃料の偏在を抑制することができる。
【0015】
更に、請求項6のように、媒体ガスの流量が多くなるほど改質用燃料の噴射周期を短くすると良い。このようにすれば、媒体ガスの流量が多くなるほど改質用燃料の偏在が生じ易くなるのに対応して、改質用燃料の噴射周期を短くして、改質用燃料の偏在を抑制することができる。
【0016】
また、請求項7のように、内燃機関の回転速度に応じて改質用燃料の噴射周期を変更するようにしても良い。このようにすれば、内燃機関の気筒間で改質燃料供給量(改質された燃料の供給量)にばらつきが生じることを抑制して、各気筒の改質燃料供給量をほぼ均一にすることができる。
【0017】
ところで、燃料として、ガソリン、アルコール、ガソリンとアルコールの混合燃料をいずれも使用可能なシステムの場合、改質用燃料のアルコール濃度が高いと、改質用燃料の気化熱が大きくなるため、改質用燃料の気化熱による媒体ガスや燃料改質手段の温度低下が増大して、燃料の改質効率が低下する可能性がある。
【0018】
そこで、請求項8のように、改質用燃料のアルコール濃度に応じて改質用燃料の噴射量を変更するようにしても良い。このように、改質用燃料のアルコール濃度に応じて改質用燃料の噴射量を変更することで、改質用燃料の噴射量をアルコール濃度に応じた適正値に設定して、改質用燃料の気化熱による媒体ガスや燃料改質手段の温度低下を抑制することができ、燃料の改質効率を向上させることができる。
【0019】
この場合、請求項9のように、改質用燃料のアルコール濃度が高くなるほど改質用燃料の噴射量を減量すると良い。このようにすれば、改質用燃料のアルコール濃度が高くなるほど改質用燃料の気化熱が大きくなるのに対応して、改質用燃料の噴射量を減量して、改質用燃料の気化熱による媒体ガスや燃料改質手段の温度低下を抑制することができる。
【0020】
更に、請求項10のように、改質用燃料のアルコール濃度が高くなるほど改質用燃料の噴射周期を短くするようにしても良い。このようにすれば、改質用燃料の偏在を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は本発明の一実施例におけるエンジン制御システムの概略構成を示す図である。
【図2】図2は改質用燃料噴射制御ルーチンの処理の流れを示すフローチャート(その1)である。
【図3】図3は改質用燃料噴射制御ルーチンの処理の流れを示すフローチャート(その2)である。
【図4】図4は温度補正係数のマップの一例を概念的に示す図である。
【図5】図5はアルコール濃度補正係数のマップの一例を概念的に示す図である。
【図6】図6は改質用燃料の噴射周期のマップの一例を概念的に示す図である。
【図7】図7は改質用燃料の噴射周期の設定方法を説明する図である。
【図8】図8は本実施例の改質用燃料噴射制御の効果を説明するタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態を具体化した一実施例を説明する。
まず、図1に基づいてエンジン制御システム全体の概略構成を説明する。
【0023】
内燃機関であるエンジン11の吸気管12の最上流部には、エアクリーナ13が設けられ、このエアクリーナ13の下流側に、モータ等によって開度調節されるスロットルバルブ14が設けられている。
【0024】
更に、スロットルバルブ14の下流側には、サージタンク15が設けられている。このサージタンク15には、エンジン11の各気筒に空気を導入する吸気マニホールド16が設けられ、各気筒の吸気マニホールド16に接続された吸気ポート(図示せず)又はその近傍に、それぞれ吸気ポートに燃料を噴射する燃料噴射弁17が取り付けられている。また、エンジン11のシリンダヘッドには、各気筒毎に点火プラグ18が取り付けられ、各点火プラグ18の火花放電によって筒内の混合気に着火される。
【0025】
一方、エンジン11の排気管19には、排出ガスを浄化する三元触媒等の触媒20が設けられ、この触媒20の上流側と下流側に、それぞれ排出ガスの空燃比又はリッチ/リーン等を検出する排出ガスセンサ21,22(空燃比センサ、酸素センサ等)が設けられている。
【0026】
このエンジン11には、排出ガスの一部をEGRガスとして吸気側へ還流させるEGR装置23が搭載されている。このEGR装置23は、排気管19のうちの触媒20の上流側と吸気管12のうちのスロットルバルブ14の下流側との間にEGR配管24が接続され、このEGR配管24に、排出ガス還流量(外部EGR量)を調整するEGR弁25が設けられている。
【0027】
更に、EGR配管24には、EGRガス(媒体ガス)中に改質用の燃料を噴射する改質用燃料噴射弁26(改質用燃料噴射手段)を備えた燃料噴射装置27と、EGRガス中の燃料を改質する燃料改質触媒28(燃料改質手段)を備えた燃料改質器29が設けられ、この燃料改質器29(燃料改質触媒28)の入口側と出口側に、それぞれEGRガスの温度を検出する温度センサ30,31が設けられている。各気筒の燃料噴射弁17と改質用燃料噴射弁26には、共通の燃料タンク(図示せず)から燃料が供給される。
【0028】
また、エンジン11には、吸入空気量を検出するエアフローメータ32や、クランク軸(図示せず)が所定クランク角回転する毎にパルス信号を出力するクランク角センサ33等が設けられ、このクランク角センサ33の出力信号に基づいてクランク角やエンジン回転速度が検出される。
【0029】
これら各種センサの出力は、電子制御ユニット(以下「ECU」と表記する)34に入力される。このECU34は、マイクロコンピュータを主体として構成され、内蔵されたROM(記憶媒体)に記憶された各種のエンジン制御用のプログラムを実行することで、エンジン運転状態に応じて、燃料噴射量、点火時期、スロットル開度(吸入空気量)等を制御する。
【0030】
また、ECU34は、エンジン11の運転状態が所定の改質運転領域(例えば低回転・低負荷運転領域)のときに、通常運転モードから改質運転モードに切り換える(図8参照)。この改質運転モードでは、EGR弁25を開弁して排出ガスの一部をEGRガスとして吸気側へ還流させながら、改質用燃料噴射弁26でEGRガス中に改質用の燃料を噴射して気化させ、燃料改質触媒28でEGRガス中の燃料を燃焼性の高い状態に改質することで、改質された燃料をエンジン11の吸気管12に供給する。
【0031】
その際、ECU34は、後述する図2及び図3の改質用燃料噴射制御ルーチンを実行することで、エンジン運転状態(例えばエンジン回転速度やエンジン負荷等)とEGRガス流量(例えばEGR弁25の開度等)に応じて改質用燃料噴射弁26で噴射する改質用燃料の噴射量をマップにより算出する。
【0032】
ところで、燃料改質触媒28の温度や燃料改質触媒28を通過するEGRガスの温度が低いときに、改質用燃料を大量に噴射すると、改質用燃料の気化熱によりEGRガスや燃料改質触媒28の温度が更に低下して、燃料の改質効率が低下する可能性がある。
【0033】
そこで、本実施例では、EGRガスの温度に応じて改質用燃料の噴射量を変更する。このように、EGRガスの温度に応じて改質用燃料の噴射量を変更することで、改質用燃料の噴射量をEGRガスの温度に応じた適正値に設定して、改質用燃料の気化熱による燃料改質触媒28やEGRガスの温度低下を抑制する。
【0034】
また、燃料として、ガソリン、アルコール、ガソリンとアルコールの混合燃料をいずれも使用可能なシステムの場合、改質用燃料のアルコール濃度が高いと、改質用燃料の気化熱が大きくなるため、改質用燃料の気化熱によるEGRガスや燃料改質触媒28の温度低下が増大して、燃料の改質効率が低下する可能性がある。
【0035】
そこで、本実施例では、改質用燃料のアルコール濃度に応じて改質用燃料の噴射量を変更する。このように、改質用燃料のアルコール濃度に応じて改質用燃料の噴射量を変更することで、改質用燃料の噴射量をアルコール濃度に応じた適正値に設定して、改質用燃料の気化熱によるEGRガスや燃料改質触媒28の温度低下を抑制する。
【0036】
また、改質用燃料の噴射量が多いときに、改質用燃料の噴射周期が長いと、燃料改質触媒28に流れるEGRガス中の改質用燃料の濃度が濃くなったり薄くなったりする改質用燃料の偏在(濃淡)が生じて、燃料の改質効率が低下する可能性がある。
【0037】
そこで、本実施例では、改質用燃料の噴射量とEGRガス流量に応じて改質用燃料の噴射周期を変更する。このように、改質用燃料の噴射量やEGRガス流量に応じて改質用燃料の噴射周期を変更することで、改質用燃料の噴射周期を改質用燃料の噴射量やEGRガス流量に応じた適正値に設定して、燃料改質触媒28に流れるEGRガス中の改質用燃料が濃くなったり薄くなったりする改質用燃料の偏在(濃淡)を抑制する。
【0038】
以下、ECU34が実行する図2及び図3の改質用燃料噴射制御ルーチンの処理内容を説明する。
【0039】
図2及び図3に示す改質用燃料噴射制御ルーチンは、ECU34の電源オン期間中(イグニッションスイッチのオン期間中)に所定周期で繰り返し実行され、特許請求の範囲でいう改質用燃料噴射制御手段としての役割を果たす。本ルーチンが起動されると、まず、ステップ101で、改質運転モードであるか否かを判定し、改質運転モードではない(つまり通常運転モードである)と判定された場合には、ステップ102以降の処理を行うことなく、本ルーチンを終了する。
【0040】
一方、上記ステップ101で、改質運転モードであると判定された場合には、ステップ102以降の処理を次のようにして実行する。まず、ステップ102で、エンジン運転状態(例えばエンジン回転速度やエンジン負荷等)とEGRガス流量(例えばEGR弁25の開度等)に応じて改質用燃料のベース噴射量をマップにより算出する。改質用燃料のベース噴射量のマップ又は数式等は、予め試験データや設計データ等に基づいて作成され、ECU34のROMに記憶されている。
【0041】
この後、ステップ103に進み、図4の温度補正係数のマップを参照して、EGRガスの温度に応じた温度補正係数を算出する。この温度補正係数のマップは、予め試験データや設計データ等に基づいて作成され、ECU34のROMに記憶されている。ここで、EGRガスの温度は、燃料改質器29の入口側の温度センサ30の検出値又は出口側の温度センサ31の検出値を用いる。或は、入口側の温度センサ30の検出値と出口側の温度センサ31の検出値の平均値をEGRガスの温度として用いるようにしても良い。
【0042】
図4の温度補正係数のマップは、EGRガスの温度が低くなるほど温度補正係数が小さくなって改質用燃料の噴射量を減量し、一方、EGRガスの温度が高くなるほど温度補正係数が大きくなって改質用燃料の噴射量を増量するように設定されている。これにより、EGRガスの温度が低いときには、改質用燃料の噴射量を減量することで、改質用燃料の気化熱によるEGRガスや燃料改質触媒28の温度低下を抑制して、燃料の改質効率の低下を抑制する。一方、EGRガスの温度が高いときには、改質用燃料の噴射量を増量することで、燃料改質量(改質される燃料量)を増加させる。
【0043】
この後、ステップ104に進み、図5のアルコール濃度補正係数のマップを参照して、改質用燃料のアルコール濃度に応じたアルコール濃度補正係数を算出する。このアルコール濃度補正係数のマップは、予め試験データや設計データ等に基づいて作成され、ECU34のROMに記憶されている。ここで、改質用燃料のアルコール濃度は、図示しないアルコール濃度センサで検出する。或は、空燃比フィードバック補正量、エンジン回転変動、燃焼変動(筒内圧力変動)等に基づいて燃料のアルコール濃度を算出(推定)するようにしても良い。
【0044】
図5のアルコール濃度補正係数のマップは、アルコール濃度が高くなるほどアルコール濃度補正係数が小さくなって改質用燃料の噴射量を減量するように設定されている。これにより、改質用燃料のアルコール濃度が高くなるほど改質用燃料の気化熱が大きくなるのに対応して、改質用燃料の噴射量を減量して、改質用燃料の気化熱によるEGRガスや燃料改質触媒28の温度低下を抑制する。
【0045】
この後、ステップ105に進み、温度補正係数とアルコール濃度補正係数を用いて改質用燃料のベース噴射量を補正して、最終的な改質用燃料の噴射量を求めた後、ステップ106に進み、改質用燃料の噴射量に基づいて改質用燃料の噴射デューティDuty (改質用燃料噴射弁26の噴射オンの時間比率)を算出する。
【0046】
この後、ステップ107に進み、図6の改質用燃料の噴射周期のマップを参照して、改質用燃料の噴射量とEGRガス流量に応じた改質用燃料の噴射周期を算出する。この改質用燃料の噴射周期のマップは、予め試験データや設計データ等に基づいて作成され、ECU34のROMに記憶されている。ここで、噴射周期は、改質用燃料噴射弁26が噴射オンしてから次の噴射オフ後に再び噴射オンするまでの時間である。
【0047】
図6の改質用燃料の噴射周期のマップは、改質用燃料の噴射量が多くなるほど改質用燃料の噴射周期を短くするように設定されている。これにより、改質用燃料の噴射量が多くなるほど改質用燃料の偏在が生じ易くなるのに対応して、改質用燃料の噴射周期を短くして、改質用燃料の偏在を抑制する。また、EGRガス流量が多くなるほど改質用燃料の噴射周期を短くするように設定されている。これにより、EGRガス流量が多くなるほど改質用燃料の偏在が生じ易くなるのに対応して、改質用燃料の噴射周期を短くして、改質用燃料の偏在を抑制する。
【0048】
更に、改質用燃料の噴射周期のマップは、改質用燃料の噴射周期の最小値を、改質用燃料の噴射期間が改質用燃料噴射弁26の最小噴射時間τmin (燃料を正常に噴射可能な噴射時間の下限値)以上となる範囲内で最小の周期とするように設定されている。これにより、改質用燃料の噴射期間が改質用燃料噴射弁26の最小噴射時間τmin 以上となる範囲内で改質用燃料の噴射周期を変更することができる。
【0049】
この後、ステップ108に進み、改質用燃料の噴射周期と噴射デューティDuty に基づいて改質用燃料の噴射期間(=噴射周期×噴射デューティDuty )を算出した後、ステップ109に進み、改質用燃料の噴射期間が改質用燃料噴射弁26の最小噴射時間τmin 以下であるか否かを判定する。
【0050】
このステップ109で、改質用燃料の噴射期間が改質用燃料噴射弁26の最小噴射時間τmin 以下であると判定された場合には、上記ステップ107,108で算出した噴射周期と噴射期間をそのまま採用して、本ルーチンを終了する。
【0051】
一方、上記ステップ109で、改質用燃料の噴射期間が改質用燃料噴射弁26の最小噴射時間τmin よりも長いと判定された場合には、噴射周期と噴射期間を更に短くできる可能性があると判断して、図3のステップ110に進み、分割数Nを初期値「2」にセットした後、ステップ111に進み、次の(1)式が成立するか否か、つまり、(エンジン回転周期/N)に噴射デューティDuty を乗算した値が最小噴射時間τmin よりも短いか否かを判定する。
【0052】
(エンジン回転周期/N)×Duty <τmin ……(1)
ここで、エンジン回転周期は、エンジン11が1回転するのに要する時間であり、エンジン回転速度に応じて変化する。
【0053】
上記(1)式が不成立である[(エンジン回転周期/N)×Duty ≧τmin ]と判定された場合には、ステップ112に進み、分割数Nを「1」だけ大きくした後、ステップ111に戻り、上記(1)式が成立するか否かを判定する処理を繰り返す。
【0054】
その後、上記(1)式が成立する[(エンジン回転周期/N)×Duty <τmin ]と判定された時点で、ステップ113に進み、エンジン回転周期/(N−1)を改質用燃料の噴射周期として設定する。
【0055】
改質用燃料の噴射周期=エンジン回転周期/(N−1)
この後、ステップ114に進み、改質用燃料の噴射周期と噴射デューティDuty に基づいて改質用燃料の噴射期間(=噴射周期×噴射デューティDuty )を算出する。
【0056】
これらのステップ110〜114の処理により、エンジン回転速度に応じて変化するエンジン回転周期に応じて改質用燃料の噴射周期を変更すると共に、分割数Nを徐々に大きくして改質用燃料の噴射期間が改質用燃料噴射弁26の最小噴射時間τmin 以上となる範囲内で最小の周期となるように改質用燃料の噴射周期を設定する(図7参照)。
【0057】
以上説明した本実施例では、EGRガスの温度に応じて改質用燃料の噴射量を変更するようにしたので、改質用燃料の噴射量をEGRガスの温度に応じた適正値に設定することができて、改質用燃料の気化熱による燃料改質触媒28やEGRガスの温度低下を抑制することができ、燃料の改質効率を向上させることができる。
【0058】
また、本実施例では、改質用燃料の噴射量とEGRガス流量に応じて改質用燃料の噴射周期を変更するようにしたので、改質用燃料の噴射周期を改質用燃料の噴射量やEGRガス流量に応じた適正値に設定することができて、燃料改質触媒28に流れるEGRガス中の改質用燃料が濃くなったり薄くなったりする改質用燃料の偏在(濃淡)を抑制することができ、燃料改質触媒28を有効に利用して燃料の改質効率を向上させることができる。
【0059】
更に、本実施例では、エンジン回転速度(エンジン回転周期)に応じて改質用燃料の噴射周期を変更すると共に、改質用燃料の噴射期間が改質用燃料噴射弁26の最小噴射時間τmin 以上となる範囲内で最小の周期となるように改質用燃料の噴射周期を設定するようにしたので、エンジン11の気筒間で改質燃料供給量(改質された燃料の供給量)にばらつきが生じることを抑制して、各気筒の改質燃料供給量をほぼ均一にすることができる。
【0060】
また、本実施例では、改質用燃料のアルコール濃度に応じて改質用燃料の噴射量を変更するようにしたので、改質用燃料の噴射量をアルコール濃度に応じた適正値に設定することができて、改質用燃料の気化熱によるEGRガスや燃料改質触媒28の温度低下を抑制することができ、燃料の改質効率を向上させることができる。
【0061】
図8に示すように、従来例(例えば改質運転モード中に改質用燃料の噴射量や噴射周期を変更しないシステム)に比べて、本実施例の改質用燃料噴射制御では、上述したように、改質運転モード中に改質用燃料の噴射量や噴射周期を適正に変更して、燃料の改質効率を向上させることができるため、燃焼安定性を高めてドライバビリティを向上させることができると共に、燃料消費率を改善することができる。
【0062】
尚、上記実施例では、EGRガスの温度に応じて改質用燃料の噴射量を変更するようにしたが、これに限定されず、例えば、燃料改質触媒28の温度に応じて改質用燃料の噴射量を変更するようにしたり、或は、EGRガスの温度と燃料改質触媒28の温度の両方に応じて改質用燃料の噴射量を変更するようにしても良い。
【0063】
また、上記実施例では、改質用燃料の噴射量とEGRガス流量の両方に応じて改質用燃料の噴射周期を変更するようにしたが、これに限定されず、例えば、改質用燃料の噴射量とEGRガス流量のうちの一方のみに応じて改質用燃料の噴射周期を変更するようにしても良い。
【0064】
また、上記実施例では、改質用燃料のアルコール濃度に応じて改質用燃料の噴射量を変更するようにしたが、更に、改質用燃料のアルコール濃度が高くなるほど改質用燃料の噴射周期を短くするようにしても良い。このようにすれば、改質用燃料の偏在を抑制することができる。
【0065】
また、上記実施例では、EGR配管に改質用燃料噴射弁と燃料改質触媒を配置したシステムに本発明を適用したが、これに限定されず、例えば、EGR配管に改質用燃料噴射弁のみを配置して燃料改質触媒を省略したシステムに本発明を適用しても良く、この場合、高温のEGRガス(媒体ガス)中に改質用の燃料を噴射することで燃料を改質することができるため、EGR装置が燃料改質手段としての役割を果たす。
【0066】
或は、吸気管に吸入空気を過給する過給機を設けると共に、吸気管のうちの過給機の下流側に改質用燃料噴射弁と燃料改質触媒を配置したシステムに本発明を適用しても良い。また、吸気管のうちの過給機の下流側に改質用燃料噴射弁のみを配置して燃料改質触媒を省略したシステムに本発明を適用しても良く、この場合、過給機で過給された高圧の吸入空気(媒体ガス)中に改質用の燃料を噴射することで燃料を改質することができるため、過給機が燃料改質手段としての役割を果たす。
【0067】
その他、本発明は、図1に示すような吸気ポート噴射式エンジンに限定されず、筒内噴射式エンジンや、吸気ポート噴射用の燃料噴射弁と筒内噴射用の燃料噴射弁の両方を備えたデュアル噴射式のエンジンにも適用して実施できる。
【符号の説明】
【0068】
11…エンジン(内燃機関)、12…吸気管、14…スロットルバルブ、17…燃料噴射弁、18…点火プラグ、19…排気管、23…EGR装置、24…EGR配管、25…EGR弁、26…改質用燃料噴射弁(改質用燃料噴射手段)、27…燃料噴射装置、28…燃料改質触媒(燃料改質手段)、29…燃料改質器、30,31…温度センサ、34…ECU(改質用燃料噴射制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の吸気系に供給される媒体ガス中に改質用の燃料を噴射する改質用燃料噴射手段と、前記媒体ガス中の燃料を改質する燃料改質手段と、少なくとも前記内燃機関の運転状態に応じて前記改質用燃料の噴射量を設定する改質用燃料噴射制御手段とを備えた内燃機関の燃料改質制御装置において、
前記改質用燃料噴射制御手段は、前記燃料改質手段と前記媒体ガスのうちの少なくとも一方の温度に応じて前記改質用燃料の噴射量を変更することを特徴とする内燃機関の燃料改質制御装置。
【請求項2】
前記改質用燃料噴射制御手段は、前記温度が低くなるほど前記改質用燃料の噴射量を減量し、前記温度が高くなるほど前記改質用燃料の噴射量を増量することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の燃料改質制御装置。
【請求項3】
内燃機関の吸気系に供給される媒体ガス中に改質用の燃料を噴射する改質用燃料噴射手段と、前記媒体ガス中の燃料を改質する燃料改質手段と、少なくとも前記内燃機関の運転状態に応じて前記改質用燃料の噴射量を設定する改質用燃料噴射制御手段とを備えた内燃機関の燃料改質制御装置において、
前記改質用燃料噴射制御手段は、前記改質用燃料の噴射量と前記媒体ガスの流量のうちの少なくとも一方に応じて前記改質用燃料の噴射周期を変更することを特徴とする内燃機関の燃料改質制御装置。
【請求項4】
前記改質用燃料の噴射周期の最小値は、前記改質用燃料の噴射期間が前記改質用燃料噴射手段の最小噴射時間以上となる範囲内で最小の周期とすることを特徴とする請求項3に記載の内燃機関の燃料改質制御装置。
【請求項5】
前記改質用燃料噴射制御手段は、前記改質用燃料の噴射量が多くなるほど前記改質用燃料の噴射周期を短くすることを特徴とする請求項3又は4に記載の内燃機関の燃料改質制御装置。
【請求項6】
前記改質用燃料噴射制御手段は、前記媒体ガスの流量が多くなるほど前記改質用燃料の噴射周期を短くすることを特徴とする請求項3乃至5のいずれかに記載の内燃機関の燃料改質制御装置。
【請求項7】
前記改質用燃料噴射制御手段は、前記内燃機関の回転速度に応じて前記改質用燃料の噴射周期を変更することを特徴とする請求項3乃至6のいずれかに記載の内燃機関の燃料改質制御装置。
【請求項8】
前記改質用燃料噴射制御手段は、前記改質用燃料のアルコール濃度に応じて前記改質用燃料の噴射量を変更することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の内燃機関の燃料改質制御装置。
【請求項9】
前記改質用燃料噴射制御手段は、前記改質用燃料のアルコール濃度が高くなるほど前記改質用燃料の噴射量を減量することを特徴とする請求項8に記載の内燃機関の燃料改質制御装置。
【請求項10】
前記改質用燃料噴射制御手段は、前記改質用燃料のアルコール濃度が高くなるほど前記改質用燃料の噴射周期を短くすることを特徴とする請求項9に記載の内燃機関の燃料改質制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−237217(P2012−237217A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105785(P2011−105785)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】