説明

内燃機関を調整する方法

ディーゼル燃料源を備えるディーゼルエンジンの効率を向上する方法には、(a)遊離基開始剤を含む水性の第1の分散相及び第1の炭化水素液体と第1の界面活性剤と場合によりコサーファクタントとを含む第1の連続相を有する、逆ミセル組成物を、ディーゼル燃料に添加し、それによって改質ディーゼル燃料を生成する工程と、(b)エンジンを操作し、それによって改質ディーゼル燃料を燃焼する工程とが含まれる。また、二酸化セリウムの安定化ナノ粒子組成物を添加することにより潤滑油を改質することで、ディーゼル燃料源及び潤滑油源を備えるディーゼルエンジンの効率を向上することもできる。更に、ホウ酸又はホウ酸塩を含有する水性の分散相を含む逆ミセル組成物をディーゼル燃料に添加することにより、ディーゼルエンジンの効率を向上することもできる。

【発明の詳細な説明】
【関連出願に対する相互参照】
【0001】
本出願は、以下の優先権の利益を主張する:米国仮出願の出願番号60/824,514(CERIUM−CONTAINING FUEL ADDITIVE)(2006年9月5日出願);米国仮出願の出願番号60/911,159(REVERSE MICELLAR FUEL ADDITIVE COMPOSITION)(2007年4月11日出願);及び米国仮出願の出願番号60/938,314(REVERSE MICELLAR FUEL ADDITIVE COMPOSITION)(2007年5月16日出願)。前記出願の開示は参照することにより本明細書に組み込まれる。
【発明の分野】
【0002】
本発明は、内燃機関に関し、より詳細には、燃料添加剤の使用により前記機関の効率を向上させるための前記機関の条件に関する。
【発明の背景】
【0003】
ディーゼル燃料は、内燃機関用燃料としてガソリンに次いで第2位を占める。トラック、バス、トラクター、機関車、船舶、及び発電機などが、ディーゼル燃料を使用するデバイスの例である。乗用車及びスポーツ用多目的車は、特に比較的低いrpm(1分間当たりの回転数)での高トルクが望まれる場合に、改良された燃料効率を与えることができるディーゼルエンジンを使用するもう一つの潜在的成長分野である。
【0004】
ディーゼル燃料は、主として、中間留分(ガソリンより重いが潤滑油よりも軽い)と呼ばれる石油系化合物の混合物(blend)である。ディーゼル燃料は、ディーゼルエンジン中で作動するように設計される。そこでは、ディーゼル燃料が燃焼室の圧縮された高温の空気中に噴射されて自然に発火する。ここが、空気と予混合されてガソリンエンジン中で点火プラグにより発火するガソリンとは異なる。D2ディーゼル燃料は、米国材料試験協会(American Society for Testing and Materials)(ASTM)規定の規格D975に適合する。
【0005】
火花点火により作動するガソリンエンジンとは違って、ディーゼルエンジンは、圧縮点火を用いる。主要な環境問題を引き起こす排気ガス中の煙を結果的にもたらす不点火及び不均一又は不完全な燃焼を最小にするためにだけでなく、結果的に騒々しいエンジン運転をもたらす長い発火遅れを回避するためにも、炭化水素、一酸化炭素、及び粒子状物質(particulate matter)(普通は煤煙と呼ばれる)などの環境汚染物質を最小にするようにディーゼル燃料の燃焼性を改良することが極めて望ましい。
【0006】
セタンは、圧縮下で非常に容易に発火するアルカン分子であるので、セタン価(CN)100が割り当てられる。一般に、セタン価(CN)は、主にその炭化水素組成に依存する。飽和炭化水素、特に直鎖の開鎖を有する飽和炭化水素は、比較的高いセタン価を有するが、一方不飽和炭化水素は、比較的低いセタン価を有する。ディーゼル燃料中のその他の炭化水素はすべて、圧縮下にいかによく発火するかについて、セタンに指標付けされる。従って、セタン価は、ディーゼルエンジン条件下に、燃料が如何に速やかに燃焼し始める(自己発火する)か、を評価する。ディーゼル燃料中にはそれぞれが異なるセタン特性を有する何百という成分が存在するので、ディーゼルの全体的なセタン価は、全成分の平均セタン特性である。セタン価向上剤は、燃料の有効セタン価を増すように作用する。
【0007】
ディーゼル燃料のCNとその性能の間の関係は、火花点火エンジンにおけるガソリンのオクタン価とその性能の関係とは決して同等とみなすことはできないということを認識する必要がある。オクタン価を上げることで、圧縮比の増加が可能となり、それにより特定の燃料負荷における、出力増加と燃料節約増加を与える。対照的に、ディーゼルエンジンにおいては、望ましいCNは、高負荷と低気温において良好な発火を与える。高セタン価燃料は、エンジン騒音及びディーゼルノックを取り除き、エンジンがより低温で始動するのを可能にし、不点火又は煙産出なしでより速いエンジンのウォームアップを与え、有害沈降物形成を減少させる。他方において、あまりに高セタンの燃料は、あまりに発火遅れが短いために燃料と空気の適切な混合ができないため、結果的に不完全燃焼及び排気煙をもたらす。
【0008】
市販用ディーゼル燃料は、少なくとも40のCN価を有する。適切なディーゼル燃料は、適当な揮発度、流動及び曇点、粘性、比重、引火点を有し、並びにほんのわずかだが許容濃度の硫黄を含有する。炭素、燃え殻形成及び灰分が低く保たれるべきであることも重要である。
【0009】
通常の運転中に、ディーゼルエンジンは、しばしば、燃料の不完全燃焼によりエンジンシリンダー壁上に炭素堆積物を生じる。これらの堆積物により、エンジン磨耗が増加し、堆積物により引き起こされる摩擦のために、エンジン効率が減少する可能性がある。燃料の不完全燃焼はまた、環境的に有害な、煤煙ともいわれる粒子状材料(particulate materials)の排出をもたらす可能性もある。従って、燃料燃焼を増加させ、ディーゼルエンジンのシリンダー壁を保護し、エンジン摩擦を減少させて、結果的により大きい燃料効率をもたらす燃料添加剤が、極めて望ましい。
【0010】
Sanduja et al.の米国特許第6,645,262号明細書(この開示は参照することにより本明細書に組み込まれる)には、潤滑性を増加してエンジン磨耗を低減する目的で粒子状ホウ酸懸濁液を含む、低硫黄ディーゼル燃料濃縮物を含む、液体炭化水素燃料濃縮物が記載されている。
【0011】
Olahの米国特許第5,520,710号明細書(この開示は参照することにより本明細書に組み込まれる)には、セタン価を高め燃料燃焼を改善する目的で、燃料中に溶解され均一に分布される、そしてジアルキル、アルキル−シクロアルキル、又はジシクロアルキルエーテル化合物を含み、合わせてアルキル又はジアルキルペルオキシド化合物を含む、ディーゼル燃料添加剤が記載されている。
【0012】
Peters et al.の米国特許第6,158,397号明細書(この開示は参照することにより本明細書に組み込まれる)には、ディーゼルエンジン排気ガス中の煤煙を低減するプロセスが記載されており、そこでは、過酸化物化合物、好ましくは過酸化水素水溶液を含有する流体が別個に、燃料の噴射及び燃焼の開始後に、好ましくは燃焼段階に続いて、燃焼室中に供給される。
【0013】
Cunninghamの米国特許第5,405,417号明細書(この開示は参照することにより本明細書に組み込まれる)には、500ppm未満の硫黄含量及び30〜60の範囲にある明らかなセタン価を有する中間留分ベースの燃料、並びにそれに溶解されるペルオキシ酢酸t−ブチルなどの少量の少なくとも1のペルオキシエステル助燃剤を含む、燃料組成物が記載されている。
【0014】
Olsson et al.の米国特許第5,105,772号明細書(この開示は参照することにより本明細書に組み込まれる)には、次の工程を含むエンジンの燃焼を改良するプロセスが記載されている:過酸化物又はペルオキソ化合物を含む液体組成物をエンジン燃焼室中に噴射する工程、及びエンジンが排気段階から吸気段階へ進むときに組成物の一部を、排気口弁を通して通過させる工程であって、その通過が噴射工程の間に起こる前記工程。
【0015】
Mellovist et al.の米国特許第4,359,969号明細書(この開示は参照することにより本明細書に組み込まれる)には、次の工程を含む燃料燃焼を改良する方法が記載されている:本質的に1〜10%の過酸化水素、50〜80%の水、及び15〜45%のC〜C脂肪族アルコール(すべて容量で)からなる液体組成物を、微細小滴の形態で、エンジンの空気取り入れ口のマニホールド中へ導入する工程であって、そこでは小滴が燃焼室に入る前に空気又は燃料−空気混合物と混合する。好ましくは、液体組成物はまた、最大5%までの薄い潤滑油及び最大1%までの防食剤をも含有する。
【0016】
Kracklaurerの米国特許第4,389,220号明細書(この開示は参照することにより本明細書に組み込まれる)には、ディーゼルエンジンを調整する方法が記載されている。その方法では、エンジンの燃焼表面から炭素堆積物を除去し、そして燃焼表面上に酸化鉄の層(この層は炭素堆積物の更なる積層を防止するのに有効である)を堆積させるのに十分な時間の間、ディーゼルエンジンが、約20〜30ppmのジシクロペンタジエニル鉄を含有するディーゼル燃料で作動する。そのあと、ディーゼルエンジンは、約10〜15ppmのジシクロペンタジエニル鉄又は当量のその誘導体の維持濃度で継続的に運転される。維持濃度は、燃焼表面上で触媒的酸化鉄層を維持するのに有効であるが、エンジンのタイミング遅れを減らすには不十分である。添加したジシクロペンタジエニル鉄は、エンジンのシリンダー表面上に酸化鉄(Fe)を産生することができ、それが炭素堆積物(煤煙)と反応し、Fe及びCOを形成して、それにより堆積物を除去する。しかしながら、この方法では、錆びの形成によるエンジンの老朽化を加速する可能性がある。
【0017】
Valentine,et al.の米国特許出願公開第2003/0148235号明細書(この開示は参照することにより本明細書に組み込まれる)には、燃料燃焼効率を増すための、特異的なバイメタル又はトリメタル燃料添加触媒が記載されている。触媒は、未燃炭素による熱伝達面の汚れを低減する一方、典型的に使用される形態及び数量で使用されるとき、それ自体が粒子捕集器デバイスの過負荷又は毒性の超微粒子の排出を引き起こし得る二次添加剤灰分の量を制限する。白金並びにセリウム及び/又は鉄を含む少なくとも1の追加の金属からなる燃料可溶性触媒を含有する燃料を使用することにより、不完全燃焼により発生する型の汚染物質の産生が低減される。熱回収の改良及び規制汚染物質の排出低減のために、超低レベルの非毒性金属燃焼触媒を使用することができる。しかしながら、この型の燃料添加剤は、白金などの稀有且つ高価な金属を使用することに加えて、エンジンが「調整済み」になる前に数ヶ月かかる可能性がある。「調整済み」とは、エンジンが一定の時間にわたり触媒とともに運転されてしまうまでは、添加剤のすべての利益が得られないということを意味する。初期調整には、45日かかることがあり、最適な利益は、60〜90日たってやっと得ることができる。更に、遊離金属は、排気システムから大気中に排出される可能性があり、その場合はそのあとで遊離金属が生物と反応する可能性がある。
【0018】
ディーゼル車における毒性の排出排気ガスの除去及び粒子排出の低減のために、コンバーターの触媒として、二酸化セリウムが広く使用される。触媒コンバーター内で、二酸化セリウムは、酸化種との相互作用により酸素を除去するためだけでなく還元ガス存在下で酸素を排出するためにも働く、化学的活性成分として作用することができる。
【0019】
二酸化セリウムは、式1に示す可逆的プロセスによって、酸素を貯蔵しそして放出することができる。
【化1】

Ce3+とCe4+イオンの間の酸化還元電位は、1.3と1.8Vの間に位置して、存在する陰性基及び化学環境に高度に依存性である(CERIUM:A Guide to its Role in Chemical Technology,1992 by Molycorp,Inc,Library of Congress Catalog Card Number 92−93444))。これにより、前述の反応が排気ガス中で容易に起こることが可能となる。二酸化セリウムは、酸素の欠乏した環境では、CO若しくは炭化水素の酸化のために酸素を供給することができ、又は逆に酸素の豊富な環境では、窒素酸化物(NOx)の還元のために酸素を吸収することができる。類似の触媒活性はまた、燃料、例えばディーゼル又はガソリン、への添加剤として二酸化セリウムを添加するときに生じることもある。しかしながら、この効果が有用であるためには、二酸化セリウムは、燃料中に安定な分散系のままでいるのに十分に小さい粒子サイズ、すなわちナノ粒子(nanoparticulate)(<100nm)でなければならない。加えて、触媒効果が表面積に依存するので、小さい粒子サイズは、触媒としてより有効なナノ結晶性材料にする。燃料中に二酸化セリウムを組み入れることは、例えば、「水性ガスシフト反応」
【化2】

によって、燃料燃焼により産生される毒性の排気ガスを低減する触媒として作用するために役立つだけでなく、ディーゼルエンジンとともに典型的に使用される微粒子トラップ(particulate traps)中に蓄積する微粒子(particulates)の焼尽を促進するためにも役立つ。
【0020】
二酸化セリウムナノ粒子は、100nm未満の平均直径を有する粒子である。本開示の目的では、ほかに述べない限り、ナノ粒子の直径は、その流体力学直径(hydrodynamic diameter)を指し、それは、動的光散乱法によって測定される直径であり、分子吸着質及び付随する粒子の溶媒和シェルを含む。代替方法として、幾何学的粒子直径を、透過型電子顕微鏡写真を用いて測定することができる。
【0021】
燃料がエンジンに入る前に二酸化セリウムを燃料中に分配する乗り物搭載添加システムが知られているが、そのようなシステムは、複雑であり、適当量の添加剤を燃料へ供給するために広範囲の電子制御を必要とする。そのような複雑な搭載システムを回避するため、二酸化セリウムナノ粒子を、初期段階で燃料へ添加して、改良された燃料効率を達成することもできる。例えば、二酸化セリウムナノ粒子を、典型的には例えばセタン価向上剤などのプロセシング添加剤とともに製油所で組み入れることが出来、又は燃料流通石油貯蔵施設で添加することができる。
【0022】
二酸化セリウムナノ粒子はまた、燃料流通センターで添加することもでき、そこでは二酸化セリウムナノ粒子を大量(〜100,000gal)の燃料中にラックで注入(rack injected)することができるし、あるいはより小規模の燃料会社貯蔵所で添加することもでき、そこでは特定の個別の要求によって特注生産が可能となるであろう。更に、二酸化セリウムは、ガソリンスタンドで、燃料の乗り物への送達中に添加することができ、そこでは粒子分散系の安定性改良という潜在的利点を有するであろう。
【0023】
NOx及び粒子状材料排出の低減に有用である、Lubrizol Corporationにより製造されたPuriNOxTMなどの燃料添加剤が開発されている。しかしながら、これらの燃料添加剤組成物は、しばしば15〜20%の水を含む。この「乳化された」燃料添加剤は、一般に5〜10%のレベルで燃料と混合される。得られた高い含水量は、エンジン出力の損失とより低い燃料節約とをもたらす可能性がある。従って、同時に最適なエンジン性能を維持しながら、窒素酸化物及び粒子状材料排出を低減できる燃料添加剤を配合する(formulate)ことが望ましいであろう。
【0024】
下記で述べるような、逆ミセル組成物中に組み込まれるセリウムナノ粒子及びそれと会合する遊離基開始剤が、この問題の解決を可能にする。セリウムナノ粒子は、本質的にエンジンを触媒デバイスに変える、エンジンのシリンダー及び可動部品上にセラミック層を形成することができる。それらの触媒効率は、セリウムナノ粒子が、式(1)に従い還元を受けることにより燃焼中に酸素原子源を供給するという事実に由来する。このことが、結果的により良好な燃料燃焼と粒子状材料排出のレベル低下をもたらす。更に、燃料添加剤として使用されるとき、これらのナノ粒子は、エンジンの摩擦を減少させることにより改良されたエンジン性能を提供することができる。代替の導入モードとして、二酸化セリウムナノ粒子は、潤滑油に添加することができ、潤滑性増強剤として内部摩擦を減少させるように働くことができる。これもまた、燃料効率を向上させる。
【0025】
実質的に純粋な二酸化セリウムナノ粒子を燃料添加剤中に含めるのが有利であるが、更に酸素空孔の形成を引き起こす成分をドーピングした二酸化セリウムを使用することが、更に利益になり得る。これが起こるためには、ドーパントは、二価又は三価であるべきであり、すなわち希土類金属、遷移金属又は周期表のIIA、IIIB、VB、若しくはVIB族の金属である元素の二価又は三価のイオンであるべきであり、そして二酸化セリウムナノ粒子の表面又は表面下領域内の格子点位置への当該イオンの取り込みを可能にするサイズのものであるべきである。この置換型イオンドーピングは、ドーパントが正常な格子点位置の間の空間を占める、格子間イオンドーピングよりも好ましい。
【0026】
以下の刊行物(その刊行物のすべての開示が参照することにより本明細書に組み込まれる)には、セリウム酸化物系(oxidic)化合物を含有する燃料添加剤が記載されている。
【0027】
Hawkins et al.の米国特許第5,449,387号明細書には、式:
【化3】

(式中、ラジカルAは、同じもの又は異なるものであるが、それぞれ1を超えるpKを有する有機オキシ酸AHのアニオンであり、pは、0〜5の範囲の整数であり、nは、0〜2の範囲の数であり、及びmは、1〜12の範囲の整数である)
を有するセリウム(IV)酸化物系化合物が開示されている。有機オキシ酸は、好ましくはカルボン酸であり、より好ましくは、C〜C20モノカルボン酸又はC〜C12ジカルボン酸である。セリウム含有化合物は、炭化水素燃料の燃焼のための触媒として使用することができる。
【0028】
Valentine et al.の米国特許第7,063,729号明細書には、セリウムが燃料可溶性ヒドロキシルオレエートプロピオネート錯体として提供される、バイメタルの燃料可溶性白金族金属及びセリウム触媒を含む低排出ディーゼル燃料が開示されている。
【0029】
Chopin et al.の米国特許第6,210,451号明細書には、クリスタリット凝集体(好ましいサイズは3〜4nm)の形態にある二酸化セリウム粒子を含む安定な有機ゾル、全炭素数が少なくとも10である少なくとも1の酸を含有する両親媒性酸系及び有機希釈剤媒質、を含む石油系燃料が開示されている。制御された粒子サイズは、200nmしかない大きさである。
【0030】
Birchem et al.の米国特許第6,136,048号明細書には、20nmしかない大きさのd90を有する酸素化された化合物の粒子を含むゾル、両親媒性酸系、及び希釈剤、を含むディーゼルエンジン燃料のための補助剤が開示されている。酸素化された金属化合物粒子は、セリウム塩などの希土類塩の溶液中での塩基性媒質との反応のあと、生じた沈殿を噴霧化又はフリーズドライにより回収して製造される。
【0031】
Lemaire et al.の米国特許第6,093,223号明細書には、少なくとも1つのセリウム化合物の存在下で炭化水素燃料を燃焼させることによる、酸化第二セリウムクリスタリットの集合体を製造するプロセスが開示されている。煤煙は、少なくとも0.1wt%の酸化第二セリウムクリスタリット集合体を含有し、最大粒子サイズは50〜10,000オングストロームであり、クリスタリットサイズは50〜250オングストロームであり、及び煤煙は400℃未満の発火温度を有する。
【0032】
Hazarika et al.の米国特許出願公開第2003/0154646号明細書には、燃料効率を改良する方法及び/又は燃料燃焼装置の燃料排出ガスを低減する方法が開示されている。前記方法は、少なくとも1つの粒子状ランタニド酸化物、特に二酸化セリウムを燃料中に分散させる工程を含み、そこでは、粒子状酸化ランタンが少なくとも1つのC10〜C30アルキル基を有するアルキルカルボン酸無水物及びエステルからなる群から選択される界面活性剤でコーティングされる。
【0033】
Collier et al.の米国特許出願公開第2003/0182848号明細書には、ディーゼル燃料微粒子トラップの性能を改良し、並びに金属塩添加剤の形態にある1〜25ppmの金属及び100〜500ppmの油可溶性の窒素含有無灰洗剤添加剤の組合せを含有する、ディーゼル燃料組成物が開示されている。金属は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、IVB、VIIB、VIIIB、IB、IIB族の金属、又は原子番号57〜71を有する任意の希土類金属、特にセリウム、又は任意の前述の金属の混合物であることができる。
【0034】
Collier et al.の米国特許出願公開第2003/0221362号明細書には、微粒子トラップを備えるディーゼルエンジンのための燃料添加剤組成物が開示されている。前記組成物は、炭化水素溶媒、及び125個以下の炭素原子を含有するカルボン酸に由来する油可溶性金属カルボキシレート又は金属錯体を含む。金属は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、IVB、VIIB、VIIIB、IB、IIB族の金属、又はセリウムを含む希土類金属、又は任意の前述の金属の混合物であることができる。
【0035】
Caprotti et al.の米国特許出願公開第2004/0035045号明細書には、微粒子トラップを備えるディーゼルエンジンのための燃料添加剤組成物が開示されている。前記組成物は、酸性有機化合物の油可溶性又は油分散性の金属塩及び化学量論的に過剰の金属を含む。燃料に添加されるときに、組成物は、Ca、Fe、Mg、Sr、Ti、Zr、Mn、Zn、及びCeからなる群から選択される1〜25ppmの金属を供給する。
【0036】
Caprotti et al.の米国特許出願公開第2005/0060929号明細書には、コロイド状に分散又は可溶化した金属触媒化合物及び少なくともそのうちの1つがカルボン酸又はカルボキシレート基である少なくとも2つの極性基に結合した親油性ヒドロカルビル鎖を有する有機化合物である5〜1000ppmの安定剤を含有する、相分離に対して安定化されたディーゼル燃料組成物が開示されている。金属触媒化合物は、Ce、Fe、Ca、Mg、Sr、Na、Mn、Pt、若しくはその混合物の1以上の有機若しくは無機化合物又は錯体を含む。
【0037】
Wakefieldの米国特許第7,169,196B2号明細書には、希土類金属、遷移金属、又は周期表のIIa、IIIB、VB、若しくはVIB族の金属である二価若しくは三価金属又はメタロイドをドーピングした二酸化セリウム粒子を含む、燃料が開示されている。
【0038】
Caprotti et al.の米国特許出願公開第2006/0000140号明細書には、少なくとも1つのコロイド金属化合物又は種、並びにアルデヒド又はケトン並びにヒドロキシル置換基及び更にヒドロカルビル基、−COOR、又は−COR(Rは、水素原子又はヒドロカルビル基である)の中から選択される置換基を含有する1以上の芳香族部分を含む化合物との縮合生成物である安定剤成分、を含む燃料添加剤組成物が開示されている。コロイド金属化合物は好ましくは、少なくとも1つの金属酸化物、好ましくは酸化鉄、二酸化セリウム、又はセリウムドーピング酸化鉄である酸化物を含む。
【0039】
Scattergoodの国際公開番号WO2004/065529には、二酸化セリウム及び/又はドーピングした二酸化セリウム並びに、場合により1以上の燃料添加剤を、燃料に添加することを含む、内燃機関用燃料の燃料効率を向上する方法が開示されている。
【0040】
Anderson et al.の国際公開番号WO2005/012465には、潤滑油及びガソリンを含む、内燃機関用燃料の燃料効率を向上させる方法が開示されており、前記方法は、二酸化セリウム及び/又はドーピングした二酸化セリウムを潤滑油又はガソリンに添加することを含む。
【0041】
セリウム含有ナノ粒子は、当該技術分野で知られている様々な技術により製造することができる。合成ナノ粒子が親水性媒質中で製造されるか疎水性媒質中で製造されるかに関係なく、望ましくないアグロメレーションを防止するため、粒子は普通、安定剤を必要とする。以下の刊行物(その刊行物のすべての開示が参照することにより本明細書に組み込まれる)には、これらの合成技術の一部が記載されている。
【0042】
Talbot et al.の米国特許第6,752,979号明細書には、次の工程からなるナノサイズの粒(grains)を有する金属酸化物粒子を製造する方法が記載されている:1以上の金属カチオンを含有する溶液を、溶液内に界面活性剤ミセルが形成されるような条件下で界面活性剤と混合して、それによりミセル液体を形成する工程;及びミセル液体を加熱して、界面活性剤を除去し、不規則な細孔構造を有する金属酸化物粒子を形成する工程。金属カチオンは、周期表の1A、2A、3A、4A、5A、及び6A族からのカチオン、遷移金属、ランタニド、アクチニド、並びにその混合物からなる群から選択される。説明的実施例には、二酸化セリウムの粒子、並びにセリウム及び1以上のその他の金属を含有する混合酸化物の粒子の製造が含まれている。
【0043】
Chane−Ching et al.の米国特許第6,271,269号明細書には、次の工程を含む貯蔵安定な有機ゾルを製造するプロセスが開示されている:塩基反応物を酸性金属カチオン塩の水溶液と反応させて、過剰のヒドロキシルイオンを含有する水性コロイド分散系を形成する工程;水性コロイド分散系を有機液体媒質及び有機酸を含む有機相と接触させる工程;並びに得られた水相/有機相混合物を水相及び生成物有機相中に分離する工程。好ましい金属カチオンは、セリウムカチオン及び鉄カチオンである。コロイド粒子は、50〜2000オングストロームの範囲にある流体力学直径を有する。
【0044】
Chane−Chingの米国特許第6,649,156号明細書には、熱加水分解プロセス;有機液体相;並びにカルボン酸のポリオキシエチレン化されたアルキルエーテル、ポリオキシエチレン化されたアルキルエーテルホスフェート、スルホコハク酸ジアルキル、及び第四級アンモニウム化合物から選択される少なくとも1つの両親媒性化合物により製造される、二酸化セリウム粒子を含有する有機ゾルが開示されている。ゾルの含水量は、1%を超えることができない。平均クリスタリットサイズは、約5nmである一方、これらのクリスタリットの粒子凝集体は、サイズが200から10nmにわたる。
【0045】
Chane−Chingの米国特許第7,008,965号明細書には、セリウム化合物及び少なくとも1つの他の金属の水性コロイド分散系が開示されており、前記分散系は、多くとも5mS/cmの導電率及び5〜8のpHを有する。
【0046】
Chane−Chingの米国特許出願公開第2004/0029978号明細書(2005年12月7日放棄)には、両親媒性特性を有し、金属の酸化物、水酸化物及び/又はオキシ水酸化物に基づく、疎水性特性を有する有機鎖がその表面に結合している、少なくとも1つのナノ粒子から形成される界面活性剤が開示されている。金属は好ましくは、セリウム、アルミニウム、チタン又はケイ素の中から選択され、アルキル鎖は、6〜30個の炭素原子、又はポリオキシエチレンモノアルキルエーテルを含む。ポリオキシエチレンモノアルキルエーテルのアルキル鎖は、8〜30個の炭素原子を含み、ポリオキシエチレン部分が1〜10個のエトキシル基を含む。粒子は、2〜40nmの平均直径を有する等方性又は球状の粒子である。
【0047】
Blanchard et al.の米国特許出願公開第2006/0005465号明細書には、少なくとも1の希土類に基づく少なくとも1つの化合物の粒子、少なくとも1つの酸、及び少なくとも1つの希釈剤を含み、少なくとも90%の粒子が単結晶性である、有機コロイド分散系が開示されている。実施例1には、酢酸セリウム並びにイソパール(Isopar)炭化水素混合物及びイソステアリン酸を含む有機相、からの二酸化セリウムコロイド溶液の製造が記載されている。得られた二酸化セリウム粒子は、2.5nmのd50を有し、80%の粒子のサイズは、1〜4nmの範囲にあった。
【0048】
Zhou et al.の米国特許第7,025,943号明細書には、次の工程を含む二酸化セリウム結晶を製造する方法が開示されている:水溶性セリウム塩の第1の溶液をアルカリ金属又は水酸化アンモニウムの第2の溶液と混合する工程;得られた反応物溶液を乱流条件下で撹拌し、同時に溶液を通してガス状酸素を通過させる工程;及び3〜100nmの範囲内に支配的な粒子サイズを有する二酸化セリウム粒子を沈殿させる工程。実施例1には、粒子サイズが約3〜5nmであると記載されている。
【0049】
Noh et al.の米国特許出願公開第2004/0241070号明細書には、次の工程を含む単結晶性二酸化セリウムナノ粉末を製造する方法が開示されている:有機溶媒及び水(好ましくは重量で約0.1:1〜約5:1)の溶媒混合物の存在下で、セリウム塩を沈殿させることにより水酸化セリウムを製造する工程;及び水酸化セリウムを水熱反応で反応させる工程。ナノ粉末は、約30〜300nmの粒子サイズを有する。
【0050】
Chanの米国特許出願公開第2005/0031517号明細書には、次の工程を含む二酸化セリウムナノ粒子を製造する方法が開示されている:硝酸セリウム水溶液をヘキサメチレンテトラミン水溶液と速やかに混合し、温度を約320°K以下の温度に維持しながら、ナノ粒子を得られた混合物中に形成する工程;及び形成されたナノ粒子を分離する工程。混合装置は好ましくは、機械的撹拌機及び遠心分離機を備える。説明的実施例には、製造した二酸化セリウム粒子が約12nmの直径を有すると報告されている。
【0051】
Ying et al.の米国特許第6,413,489号及び第6,869,584号明細書には、逆ミセル技術による、凝集体を含まない、100nm未満の粒子サイズと少なくとも20m/gの表面積を有するナノ粒子の合成が開示されている。方法は、逆エマルション存在下に、バリウムアルコキシド及びアルミニウムアルコキシドを含むセラミック前駆体を導入する工程を含む。
【0052】
米国特許第6,413,489号及び第6,869,584号明細書の説明的実施例9には、エマルション混合物中に硝酸セリウムを介在させて、セリウムドーピングしたヘキサアルミン酸バリウム粒子を製造することが記載されている。前記粒子は、フリーズドライにより集められ、空気下に500℃及び800℃まで焼成された。得られた粒子は、500℃及び800℃で、それぞれ5nm未満及び7nm未満の粒サイズ(grain sizes)を有していた。説明的実施例10には、セリウムコーティングしたヘキサアルミン酸バリウム粒子の合成が記載されている。焼成後に、セリウムコーティングした粒子は、500℃、800℃、及び1100℃で、それぞれ4nm未満、6.5nm未満、及び16nm未満の粒サイズ(grain sizes)を有していた。
【0053】
関連する刊行物である、Ying et al.の米国特許出願公開第2005/0152832号明細書には、1〜40%含水量を有するエマルション内で逆ミセル技術による、凝集体を含まないで、100nm未満の粒子サイズを有する、ナノ粒子の合成が開示されている。ナノ粒子は好ましくは、炭化水素を酸化するために使用することができる、金属酸化物粒子である。
【0054】
米国特許出願公開第2005/0152832号明細書の説明的実施例9及び10には、それぞれ、セリウムドーピングした及びセリウムコーティングしたヘキサアルミン酸バリウム粒子の製造が記載されている。実施例13には、セリウムコーティング粒子を用いるメタンの酸化が記載されている。
【0055】
Hanawa et al.の米国特許第5,938,837号明細書には、主に研磨剤としての使用を意図した、二酸化セリウム粒子を製造する方法が開示されている。方法は、混合物のpH値が5〜10、好ましくは7〜9の範囲にあるような混合比で、撹拌しながら、硝酸第一セリウム水溶液を塩基、好ましくはアンモニア水溶液と混合する工程、次いで得られた混合物を70〜100℃の温度まで速やかに加熱する工程、及び硝酸第一セリウムの塩基との混合物をその温度で熟成して粒(grains)を形成する工程、を含む。生成物粒(grains)は、サイズ及び形状が一様であり、粒子サイズが10〜80nm、好ましくは20〜60nmを有する。
【0056】
欧州特許出願EP0208580(1987年1月14日公開、発明者Chane−Ching、出願人Rhone Poulenc)には、一般式:
【化4】

(式中、Mは、アルカリ金属又は第四級アンモニウムラジカルを表し、xは、0.01と0.2との間にあり、yは、y=4−z+xのようなものであり、及びzは、0.4と0.7との間にある)
に対応するセリウム(IV)化合物が開示されている。セリウム(IV)化合物のコロイド分散系を製造するプロセスでは、流体力学直径が約1nmと約60nmとの間、適切には約1nmと約10nmとの間、望ましくは約3nmと8nmとの間にある粒子が製造される。
【0057】
金属イオンでの二酸化セリウムのドーピング(早くも1975年に報告されている)並びに結果として生じたドーパントの電子的特性及び酸素拡散特性に対する効果は、Trovarelli,Catalysis by Ceria and Related Materials,Catalytic Science Series,World Scientific Publishing Co.,37−46(2002)及びそこで引用された引用文献により十分に記載されている。
【0058】
S.Sathyamurthy et al.,Nano Technology 16,(2005),pp1960−1964には、水酸化ナトリウムを沈殿剤として用い、並びに界面活性剤セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)及びコサーファクタント(cosurfactant)1−ブタノールを含有するn−オクタンを油相として用いる、硝酸セリウムからのCeOの逆ミセル合成が記載されている。得られた多面体粒子は、3.7nmの平均サイズを有したが、しかし反応は、低収率で進行することが予想されよう。
【0059】
S.Seal et al.,Journal of Nano Particle Research,(2002),p438には、AOTを界面活性剤として、及びトルエンを油相として含有する水性マイクロエマルション系を用いる、硝酸セリウム及び水酸化アンモニウムから高温度酸化抵抗性コーティング用のナノ結晶性セリア粒子の製造法が記載されている。反応混合物の上部油相に形成されるセリアナノ粒子は、5nmの粒子サイズを有していた。
【0060】
Pang et al.,J.Mater.Chem.,12(2002),pp3699−3704では、シクロヘキサン及び非イオン性界面活性剤TritonX−114を含有する油相、並びにl.0M AlC1Oを含有する水相を用いて、油中水型マイクロエマルション法によりAlナノ粒子が製造された。得られたA1粒子は、5〜15nmの粒子サイズを有していたが、直接沈殿プロセスで製造されるサブミクロンサイズの空洞ボール状粒子とは明らかに異なるようであった。
【0061】
Cuif et alの米国特許第6,133,194号明細書(この開示は参照することにより本明細書に組み込まれる)には、セリウム、ジルコニウム、又はその混合物、塩基、場合により酸化剤、並びにアニオン界面活性剤、非イオン性界面活性剤、ポリエチレングリコール、カルボン酸、及びカルボン酸塩からなる群から選択される添加剤を含有する金属塩溶液を反応させて、それにより生成物を形成することを含むプロセスが記載されている。生成物は、そのあと温度>500Cで焼成される(それによりクレームの界面活性剤が有効に炭化されるであろう)。
【0062】
Hazbun et al.の米国特許第4,744,796号明細書(この開示は参照することにより本明細書に組み込まれる)には、炭化水素燃料並びにt−ブチルアルコール及び少なくとも1つの両性、アニオン、カチオン、又は非イオン性界面活性剤のコサーファクタント組合せを含むマイクロエマルション燃料組成物が記載されている。好ましい界面活性剤は、脂肪酸又は脂肪酸混合物である。
【0063】
Hicks et al.の米国特許出願公開第2002/0095859号明細書(この開示は参照することにより本明細書に組み込まれる)には、両性、アニオン、カチオン、又は非イオン性界面活性剤からなる群から選択される1以上の界面活性剤、並びに場合によりアルコール、グリコール、及びエーテルからなる群から選択される1以上のコサーファクタントを含む液体水素燃料のための添加剤組成物が記載されている。
【0064】
これまで記載したように、様々な方法及び装置がセリウムナノ粒子を製造するために報告されてきた。これには、Chane−Ching,et al.の米国特許第5,017,352号明細書;Hanawa,et al.の米国特許第5,938,837号明細書;Melard,et al.の米国特許No4,786,325号明細書;Chopin,et al.の米国特許第5,712,218号明細書;Chanの米国特許出願公開第2005/0031517号明細書;及びZhou,et al.の米国特許第7,025,943号明細書に記載されるものが含まれ、それらの開示は参照することにより本明細書に組み込まれる。しかしながら、現行の方法では、極めて高い懸濁密度(0.5モラル(molal)、すなわち9wt%を超える)での短時間における、十分にサイズの小さい(平均直径が8nm未満)、サイズ頻度分布が一様な(15%未満の変動係数[COV]、ここでCOVは、標準偏差を平均直径で割ったもの)、そして多くの望ましい適用例に対して安定な、セリウムナノ粒子の経済的で容易な製造は可能ではない。
【0065】
二酸化セリウムを製造するために使用することができる典型的な化学反応器は、ミキサーを備える反応室を備えている(例えば、Zhou et al.の米国特許第7,025,943号明細書の図1を参照のこと)。ミキサーは典型的には、シャフト、及びシャフトに取り付けたプロペラ又はタービンブレード、及びプロペラが高速で回転する(1000〜5000rpm)ようにシャフトを回転させるモーターを備えている。シャフトは、良好な中型混合(微視的規模)のための平たいブレードタービン、及び巨視的混合(反応器の至る所に流体を上下運動させる)のための傾斜したブレードタービンを駆動することができる。
【0066】
そのようなデバイスが、“Scaleable Device Impeller Apparatus For Preparing Silver Halide Grains”と題するAntoniadesの米国特許第6,422,736号明細書に記載されている。この型の反応器は、下式に示すような高速反応のために有用である。下式では、生成物であるAgClが、およそ数百ナノメートル〜数千ナノメートル程度の直径を有する結晶性材料である。
【化5】

【0067】
この型の混合を用いて製造される二酸化セリウム粒子はしばしば、あまり大きすぎて特定の用途には有用であることができない。二酸化セリウム粒子の触媒性向(燃焼系に酸素を供与する能力、すなわち式1)は、特に10nm未満の平均直径を有する粒子に対しては、粒子サイズを減少するとともに増加するので、可能な最小の二酸化セリウム粒子の状態にすることが、極めて望ましい。
【0068】
二酸化セリウムナノ粒子を製造するために使用することができる回分反応器の略図例を、図1に示す。反応器(10)は、反応物を添加するための入口ポート(11、及び12)、混合するためのプロペラ、シャフト、及びモーター、15、14、及び13を備える。反応混合物18は、反応容器16中に収容される。硝酸セリウム、酸化剤、及び水酸化物イオンなどの反応物の添加により、ナノ粒子の形成という結果を得ることができる。粒子は初期には、非常に小さい核として生じる。図1の破線矢印(17)で示すように、混合は、核を循環させる。核が連続的に反応性混合体制の至る所に循環するにつれて、新鮮な反応物を組み入れながら、核は成長する(直径が増加する)。従って、核の初期定常状態濃度が形成された後は、この核の集団は、それ以降、連続的様態で成長してより大きい粒子になる。高い粒子懸濁密度をなお維持しながら粒子の最終サイズを制限することが望まれる場合は、この核形成及び成長プロセスは望ましくない。そのような回分反応器は、合理的に短い反応時間(例えば、60分未満)で、非常に小さい、例えば10nm未満の二酸化セリウムナノ粒子を、高い収量(1モラルを超える)で製造するためには有用でない。
【0069】
この核形成及び成長プロセスをCeOの水溶液沈殿に適用した例は、Zhang et al.,J.Appl.Phys.,95,4319(2004)及びZhang,et al.,Applied Physics Letters,80,127(2002)の業績である。硝酸セリウム六水和物をセリウム源として(0.0375Mで、非常に低濃度)及び0.5Mヘキサメチレンテトラミンをアンモニア前駆体として用いて、50分未満の時間で、2.5〜4.25nmの二酸化セリウム粒子が形成される。これらの粒子はそのあと、およそ250分(又は成長条件によっては600分)程度の反応時間を用いて、7.5nm以上まで成長する。粒子サイズ、濃度及び反応時間の制限があれば、CeOナノ粒子の大量市販用数量への経済的に実行可能な経路として、このプロセスは考慮から排除されるであろう。
【0070】
I.H.Leubner,Current Opinion in Colloid and Interface Science,5,151−159(2000),Journal of Dipersion Science and Technology,22,125−138(2001)及びibid.23,577−590(2002)、並びにそこで引用された引用文献は、形成される安定結晶の数を、反応物のモル添加速度、結晶の溶解度、及び温度と関係づける理論的取り扱いを提供する。モデルはまた、結晶数に対する拡散、動力学的に制御された成長プロセス、オストワルド熟成剤及び成長抑制剤/安定剤の効果も説明する。高いモル添加速度、低い温度、低い溶解度、及び成長抑制剤の存在はすべて、多数の核及びその結果としてより小さい最終粒(grain)又は粒子サイズが生じるのを容易にする。
【0071】
回分反応器とは対照的に、コロイドミルは典型的に、10,000rpmで回転する平たいブレードタービンを有し、それにより材料は、スクリーン(その孔はサイズが1ミリメートルの数分の1から数ミリメートルまで変化することができる)を通過するのを強制される。一般に、化学反応は起こっていなくて、ただ粒子サイズの変化だけが起こっている。ある特定の場合においては、粒子のサイズ及び安定性は、界面活性剤の存在によって熱力学的に制御することができる。例えば、Langer et al.は、米国特許第6,368,366号明細書及び米国特許第6,363,237号明細書(参照することにより本明細書に組み込まれる)において、高いせん断条件下に製造される炭化水素燃料組成物中の水性マイクロエマルションについて記載している。しかしながら、水性粒子相(燃料組成物中の不連続相)は、およそ1000nm程度の大きいサイズを有する。
【0072】
コロイドミルは、大きい二酸化セリウム粒子の粒子サイズを低減するのに有用ではない。何故なら粒子があまりに硬すぎて合理的な時間量ではミルによってせん断することができないからである。大きな凝集した二酸化セリウム粒子をミクロンサイズから下げてナノメートルサイズへ低減するための好ましい方法は、安定剤の存在下にボールミル上で数日間製粉すること(milling)である。これは、時間のかかる高価なプロセスであり、このプロセスでは常に幅広い粒子サイズ分布を生じる。従って、一様なサイズ分布を有する二酸化セリウムの非常に小さいナノメートル粒子を大量に(高い懸濁密度で)合成するための経済的で容易な方法に対する必要性が依然として存在する。
【0073】
水溶液沈殿は、セリウムナノ粒子へ便利な経路を与えることができる。しかしながら、燃料用の燃料添加触媒として有用であるためには、二酸化セリウムナノ粒子は、無極性媒質(例えば、ディーゼル燃料)中で安定性を示さなければならない。水性環境で凝集を防止するために使用される大部分の安定剤は、無極性環境での安定化の課題に適していない。無極性溶媒に入れたとき、そのような粒子は、すぐに塊になる傾向があり、その結果、その望ましいナノ粒子特性の全部ではないが、一部を失う傾向がある。従って、水性環境で安定な二酸化セリウム粒子を形成し、同じ安定剤を粒子表面上に保持し、次いでこれらの粒子を無極性溶媒へ移すことができることが望ましいであろう。そこでは粒子が安定なままであり均一な混合物を生じるであろう。この簡易化した経済的な様態においては、表面安定剤の親和性を極性から無極性へ変える必要性を除くことができるであろう。安定剤を変えることにより、困難な置換反応又は別個の単調な単離再分散法(例えば、沈殿させて、そのあとでボールミル粉砕を使用して新たな安定剤を用いて再分散する)を伴う可能性がある。
【0074】
従って、安定な二酸化セリウムナノ粒子を極性の水性環境で合成し、次いでこれらの粒子を安定で均一な混合物が形成される無極性環境へ移すための能率的で経済的な方法の必要性が依然として存在する。
【0075】
いくつかの用途に対しては、内燃機関の燃焼プロセスの間に存在する、いくらか比較的低レベルの水を有することが望ましくさえあり得る。前述したHicks et al.の米国特許出願公開第2002/0095859号明細書では、5〜95ppm程度の少量の水(マイクロエマルションとして)が、サイクルのばらつき(cyclic dispersion)(圧縮サイクルの間の可変性)の減少により炭化水素燃料燃焼を改善することが示唆されている。
【0076】
ディーゼル燃料に添加される水は、3つの仕方で燃焼を改善すると考えられる:
1.水は、より完全な燃焼のためのより細かい、より均一な噴霧パターンを促進する。
2.水は、燃焼温度を下げて亜酸化窒素排出を低減する(火炎温度2900°F)。
3.水は、わずかに燃焼を遅らせて粒子排出を低減する。
【0077】
J.Ying et alは、WO98/18884において、ミセルサイズ<100nmを有し、少なくとも8重量パーセントの量で水を含む、熱的に時間的に安定な燃料中水(water-in-fuel)エマルションについて記載する。エンジン出力の付随する測定がなかったので、粒子排出が85〜90%低減するという主張は、エンジン出力損失の人為的な結果であったかもしれず、従って排ガス低減のための力の受け入れがたい取引であったかもしれない。ナノ粒子が典型的に100nm以下の平均直径を有し、ドデシルコハク酸ナトリウムなどの界面活性剤で安定化され、場合により銅を含有する、二酸化セリウムナノ粒子を含む燃料添加剤が知られている。これらの型の燃料添加剤はまた、長い調整期間をも有する。
【0078】
高温酸化抵抗性コーティングを与えるためのセリウムナノ粒子の使用が、報告されている。例えば、“Synthesis Of Nano Crystalline Ceria Particles For High Temperature Oxidization Resistant Coating”,S.Seal et al.,Journal of Nanoparticle Research,4,433−438(2002)を参照のこと。Ni、クロミア及びアルミナ合金、並びにステンレス鋼を含む様々な表面上、及びNi、Ni−Crコーティング合金表面上への二酸化セリウムの析出(deposition)が研究されている。l0nm以下の二酸化セリウム粒子サイズが望ましいことが見出された。セリア粒子取り込みはその後、金属表面の酸化を抑制する。
【0079】
加えて、CeOが式1により記載される触媒酸素貯蔵材料として作用することができる範囲は、ある程度CeO粒子サイズによって支配される。粒子サイズが20nm以下では、格子パラメーターは、縮小するクリスタリットサイズとともに劇的に増加する(6nmで最大0.45%まで、例えば、Zhang,et al.,Applied Physics Letters,801,127(2002)を参照のこと).会合したサイズ誘発性格子ひずみは、表面酸素空孔の増加を伴い、結果的に触媒活性増強をもたらす。この(逆)サイズ依存性の活性は、より効率のよい燃料電池を提供するだけでなく、石油燃料の燃焼に使用されるときは、より良好な酸化的性質を提供する。
【0080】
Henlyの米国特許出願公開第2005/0005506号明細書(この開示は参照することにより本明細書に組み込まれる)には、スルホン酸カルシウム洗浄剤、スクシンイミド分散剤、及び有機マンガン化合物を含む、蒸留物燃料添加剤組成物が記載されていた。有機マンガン化合物は、その他の化合物とともに、燃料システムの清浄度を向上させるように働く。
【0081】
Rimの米国特許第6,892,531号明細書(この開示は参照することにより本明細書に組み込まれる)には、潤滑油及び0.05〜10wt%の触媒添加剤(カルボン酸セリウムを含む)を含む、ディーゼルエンジンのためのエンジン潤滑油組成物が記載されている。
【0082】
上記のように、現在入手可能な燃料添加剤は、ディーゼルエンジンの性能を改良してきた;しかしながら更なる改良がなお必要とされる。エンジン出力を維持する一方で同時にPM排出を低減し、低減させながら、改良された燃料燃焼を提供するディーゼルエンジン用燃料添加剤を配合することが望ましいであろう。加えて、磨耗からのエンジンの保護、エンジン摩擦の低減、より大きい潤滑性、及び燃料効率向上は、大いに有益であろう。更に、長い調整期間を必要とせずに1以上のこれらの特性を提供することも望ましいであろう。
【発明の要約】
【0083】
本発明は、ディーゼル燃料源を備えるディーゼルエンジンの効率を向上する方法において、前記方法が、(a)遊離基開始剤を含む水性の第1の分散相と、第1の炭化水素液体と第1の界面活性剤と場合によりコサーファクタントとを含む第1の連続相とを含む逆ミセル組成物を、前記ディーゼル燃料に添加し、それによって改質ディーゼル燃料を生成する工程と、(b)前記エンジンを操作し、それによって前記改質ディーゼル燃料を燃焼する工程とを含む、前記方法に導かれる。
【0084】
更に、本発明は、ディーゼル燃料源及び潤滑油源を備えディーゼルエンジンの効率を向上する方法において、前記方法が、(a)遊離基開始剤を含む水性の第1の分散相と、第1の炭化水素液体と第1の界面活性剤とを含む第1の連続相とを含む逆ミセル組成物を、前記ディーゼル燃料に添加し、それによって改質ディーゼル燃料を生成する工程と、(b)二酸化セリウムの安定化ナノ粒子組成物を潤滑油に添加し、それによって改質潤滑油を生成する工程と、(c)前記エンジンを操作し、それによって前記改質ディーゼル燃料を燃焼し、前記改質潤滑油で前記エンジンを滑らかにする工程とを含む、前記方法に導かれる。
【0085】
また、本発明は、ディーゼル燃料源を備えるディーゼルエンジンの効率を向上する方法において、前記方法が、(a)ホウ酸又はホウ酸塩を含む水性の第1の分散相と、第1の炭化水素液体と第1の界面活性剤と場合によりコサーファクタントとを含む第1の連続相とを含む第1逆ミセル組成物を、前記ディーゼル燃料に添加する工程と、(b)前記エンジンを操作する工程とを含む、前記方法に導かれる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】図1は、二酸化セリウムナノ粒子を形成する従来型回分反応器の略図を示す。
【図2】図2Aは、本発明で使用することができるコロイドミル反応器の略分解図を示す。図2Bは、本発明で使用することができるコロイドミル反応器の部分図を示す。図2Cは、本発明で使用することができる別の型のコロイドミル反応器の略分解図を示す。
【図3】図3は、非常に小さいセリウムナノ粒子を形成する連続反応器の略図を示す。
【図4】図4は、実施例1で製造される二酸化セリウム粒子のサイズ分布を示す。
【図5】図5は、実施例1の二酸化セリウム粒子の乾燥(dried-down)試料の透過型電子顕微鏡写真を示す。
【図6】図6は、実施例1で製造される二酸化セリウムナノ粒子のX線粉末回折スペクトルを示す。
【発明の詳細な説明】
【0087】
二酸化セリウムナノ粒子の調製は、本発明の譲受人に譲渡された、2007年9月 日出願の同時係属出願第 号の「二酸化セリウムナノ粒子の調製方法(METHOD OF PREPARING CERIUM DIOXIDE NANOPARTICLES)」に記載されている。前記出願で開示したものが、参照により本明細書に組み込まれている。
【0088】
第一セリウムイオンは、水酸化物イオンの存在下に反応して水酸化セリウムを形成する。次いで反応容器を加熱して、水酸化セリウムを二酸化セリウムに変換する。反応容器中の温度は、約50℃と約100℃の間に、より好ましくは約65〜75℃、最も好ましくは約70℃に維持する。時間と温度は、交換することができ、より高い温度は、典型的には、水酸化物の酸化物への変換に必要な時間を低減する。これらの高められた温度で、約1時間以下程度、適切には約0.5時間の時間の後、水酸化セリウムを二酸化セリウムへ変換して、反応容器の温度を約15〜25℃まで下げる。その後、二酸化セリウムナノ粒子を濃縮してから、最も便利には、例えば、透析濾過(diafiltration)によって、未反応セリウム、及び硝酸アンモニウムなどの廃棄副生成物を除去する。
【0089】
本発明の或る観点においては、二酸化セリウムナノ粒子を製造する方法は、第一セリウムイオン、水酸化物イオン、安定剤、及び酸化剤を含む水性反応混合物を小さい核サイズを発生させるのに有効な温度で供給する工程を含み、そのあと第一セリウムイオンの第二セリウムイオンへの酸化を達成させ、その結果これらの粒子はナノメートルの二酸化セリウムに成長することができる。反応混合物を、機械的せん断にかけ、好ましくは反応混合物を、穿孔スクリーンを通過させ、それにより約2nm〜約15nmの範囲に平均流体力学直径を有する二酸化セリウムナノ粒子の懸濁液を形成する。粒子直径は、2nm〜15nmの範囲内に制御することができるが、一方好ましくは、二酸化セリウムナノ粒子は、約10nm以下の平均流体力学直径を有し、より好ましくは約8nm以下、最も好ましくは、約6nmを有する。望ましくは、ナノ粒子は、粒子エッジ当たり1つ又は多くとも2つの一次クリスタリットを含み、各クリスタリットは平均2.5nm(約5単位格子)にある。このようにして、得られたナノ粒子サイズ頻度は実質的に単分散であり、すなわち変動係数(COV)15%未満を有し、ここでCOVは、標準偏差を平均値で割ったものとして定義される。
【0090】
機械的せん断は、ローターの表面などの表面上での流体の運動を含み、結果的にせん断応力の発生がもたらされる。特に、表面上での層流束は、ゼロ速度を有して、ゼロ速度表面と表面から離れたより高速の流れとの間にせん断応力が生じる。
【0091】
或る実施態様においては、本発明では、通常マイクロエマルション又はコロイドを製粉するのに使用するコロイドミルを、二酸化セリウムナノ粒子を製造するための化学反応器として使用する。有用なコロイドミルの例としては、Korstvedtの米国特許第6,745,961号明細書及び米国特許第6,305,626号明細書に記載されるものが挙げられる。前記の開示は参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0092】
シルバーソン・ミル(Silverson mill)と呼ばれるコロイドミルが、米国特許第5,552,133号明細書に描かれている。前記の開示は参照することにより本明細書に組み込まれる。図2Aは、反応物入口ノズル34及び35を備える、本発明によるコロイドミル反応器を図解的に示す。描かれたコロイドミル反応器は、パドルブレードローター31に連結される回転シャフト30を備える。ローターは、穿孔部36を備え及び反応室37を囲むカップ状スクリーンステーター32中に受け入れられる。ステーターは、入口ノズル34及び35を取り付けた函体33上に取り付けられる。入口ノズル34及び35は、函体33中に、穿孔スクリーンステーター32の底部へ、反応室37中へと延在する。プレート(図示せず)が、スクリーンステーター32の頂部を形成する。反応物は、ノズル34及び35により反応室中へ導入される。コロイドミル反応器は、恒温槽(図示せず)中に沈められ得る、反応容器38中に封入される。
【0093】
ローターシャフトの回転による反応混合物の撹拌の間に、シャフトの回転により、パドルローターの平らな面(35)とステーターの内筒表面との間で反応混合物の機械的せん断が引き起こされる。反応室中で初期に形成される水酸化セリウム粒子は、スクリーンの穿孔部を通って周囲の反応容器中へ押し出される。
【0094】
様々な要因が、平均直径サイズ及び生成物二酸化セリウム粒子の収量に影響を及ぼす。要因としては、反応物比率、ローター速度、ミルの「隙間」(これは、ローター31とステーター32の間の空間と定義することができる)及びステーターの穿孔部36のサイズが挙げられる。
【0095】
典型的なローター速度は、5000〜7500rpmである;しかしながら、非常に高い試薬濃度(約1モラル以上)では、7500rpmを超えるローター速度、例えば10,000rpm、が好ましい。隙間の間隔は、ステーターの穿孔部を通る粒子の容易な通過を可能にするように、コロイド室中の低背圧に合わせて、できるだけ小さく、典型的には約1mm〜約3mmに保つことが望ましい。或る実施態様においては、スクリーンの穿孔部は、好ましくは約0.5mm〜約5mmの平均直径を有する。
【0096】
図2Bは、入口ノズル34及び35並びに反応室の基部33Aを備える、反応器の部分図を示す。或る実施態様においては、入口ノズル34及び35は、反応室の底部33Aと実質的に同一平面である。
【0097】
図2Cは、上記のデバイスの変更形態の略図を示す。そこでは、入口ノズル34及び35は、ミル底部の代わりにミルの頂部から反応室中へ延在する。反応物は、反応入口(単数又は複数)手段によって反応室中へ導入されて、反応混合物が撹拌される。望ましくは、反応物は、第一セリウムイオン、例えば硝酸第一セリウムの水溶液;過酸化水素又は分子状酸素などの酸化剤;及び2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸などの安定剤を含む。典型的には、過酸化物などの二電子酸化剤は、好ましくはセリウムイオンの少なくとも2分の1モル濃度で存在している。水酸化物イオン濃度は、セリウムモル濃度の好ましくは少なくとも2倍、より好ましくは3倍の濃度である。
【0098】
最初は、反応室は、小さい水酸化第一セリウム核サイズを生成するのに十分な低い温度に維持される。核サイズは、そのあとのより高い温度への変化後に、ナノメートルの二酸化セリウム粒子へと成長することができ、結果的には第一セリウムイオンの第二セリウムイオン状態への変換がもたらされる。最初は、約25℃以下の温度が適切であり、好ましくは約20℃、より好ましくは約15℃である。或る実施態様においては、温度は約10〜20℃である。
【0099】
或る実施態様においては、第一セリウムイオン源、ナノ粒子安定剤、及び酸化剤を反応器に入れてから、水酸化アンモニウムなどの水酸化物イオン源を、撹拌しながら速やかに、好ましくは約90秒以下、より好ましくは約20秒以下、更により好ましくは約15秒以下の時間にわたり、添加する。代替実施態様においては、水酸化物イオン源及び酸化剤を反応器に入れてから、第一セリウムイオン源を、約15秒の時間にわたり添加する。第3の且つ好ましい実施態様においては、安定剤を反応容器に入れてから、最適な化学量論的モル比率2:1又は3:1のOH:Ceで、硝酸第一セリウムを、別個のノズルの水酸化アンモニウムと同時に反応室中に導入する。
【0100】
第一セリウムイオンは水酸化物イオンの存在下で反応して、水酸化セリウムを形成し、加熱により二酸化セリウムに変換することができる。反応容器の温度は、約50℃と約100℃の間に、好ましくは約65〜90℃、より好ましくは約80℃に維持される。これらの高められた温度で、好ましくは約1時間以下、より好ましくは約0.5時間の時間の後、水酸化セリウムは、実質的に二酸化セリウムへ変換されてしまうので、反応容器の温度を約15〜25℃まで下げる。時間及び温度変数は、交換することができ、温度がより高いほど一般に反応時間はより短くてすむ。二酸化セリウムナノ粒子懸濁液を濃縮してから、未反応セリウム及び廃棄副生成物(例えば硝酸アンモニウム)を除去する。これは、便利には透析濾過によって達成することができる。
【0101】
ナノ粒子安定剤は、反応混合物の重要な成分である。望ましくは、ナノ粒子安定剤は、水溶性であり、セリウムイオンと弱い結合を形成する。KBCは、水中セリウムイオンへのナノ粒子安定剤の結合定数を表す。硝酸イオンに対するlogKBCは、1であり、水酸化物イオンに対しては、14である。最も望ましくは、log(KBC)はこの範囲内にあり、好ましくはこの範囲の下のほうにある。有用なナノ粒子安定剤としては、アルコキシ置換カルボン酸、α−ヒドロキシルカルボン酸、ピルビン酸並びに酒石酸及びクエン酸などの小さい有機ポリ酸(polyacids)が挙げられる。エトキシ化カルボン酸の例としては、2−(メトキシ)エトキシ酢酸及び2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸(MEEA)が挙げられる。α−ヒドロキシカルボン酸のうちで、例としては、乳酸、グルコン酸及び2−ヒドロキシブタン酸が挙げられる。ポリ酸としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、酒石酸、及びクエン酸が挙げられる。EDTAなど大きいKBCを有する化合物の、乳酸など弱いKBCの安定剤との組合せも、特定の比率では有用である。グルコン酸など大きいKBCの安定剤は、低レベルで又は乳酸など弱いKBCの安定剤とともに使用することができる。
【0102】
或る望ましい実施態様においては、ナノ粒子安定剤は、式(Ia)で表される化合物を含む。式(Ia)においては、Rは、水素原子、又は置換若しくは非置換アルキル基又は芳香族基を表し、例えば、メチル基、エチル基又はフェニル基などを表す。より好ましくは、Rは、メチル基などの低級アルキル基を表す。Rは、水素原子、又はアルキル基などの置換基を表す。式(Ia)においては、nは、0〜5の整数、好ましくは2を表す。式(Ia)においては、Yは、H、又はアルカリ金属などの対イオン、例えば、Na又はKを表す。安定剤は、ナノ粒子に結合して、粒子の凝集及びその後の大きい粒子の塊の形成を防止する。
【化6】

【0103】
別の実施態様においては、ナノ粒子安定剤は、式(Ib)で表される。式中、それぞれのRは、独立して置換若しくは非置換アルキル基又は置換若しくは非置換芳香族基を表す。X及びZは、独立してH、又はNa若しくはKなどの対イオンを表し、及びpは、1又は2である。
【化7】

【0104】
有用なナノ粒子安定剤はまた、乳酸などのα−ヒドロキシ置換カルボン酸の中に、又はグルコン酸などのポリヒドロキシ置換酸の中にさえも見出される。
【0105】
好ましくは、ナノ粒子安定剤は、元素硫黄を含まない。何故なら、硫黄含有物質は、ある特定の用途には望ましくないことがあるからである。例えば、二酸化セリウム粒子が燃料添加剤組成物中に含まれる場合、AOTなどの硫黄含有安定剤の使用は、燃焼後に望ましくない硫黄酸化物の排出という結果をもたらす。
【0106】
得られた二酸化セリウム粒子のサイズは、粒子の流体力学直径測定のための測定技術である動的光散乱によって測定することができる。流体力学直径(B.J.Berne and R.Pecora,“Dynamic Light Scattering:With Applications to Chemistry,Biology and Physics”,John Wiley and Sons,NY 1976及び“Interactions of Photons and Neutrons with Matter”,S.H.Chen and M.Kotlarchyk,World Scientific Publishing,Singapore,1997を参照のこと)は、粒子の幾何学的直径よりわずかに大きく、本来の粒子サイズ及び粒子周囲の溶媒和シェルの両方を含む。光線がコロイド分散系を通過するとき、粒子又は小滴は、光の一部を全方向に散乱させる。光の波長に比べて粒子が非常に小さいとき、散乱光の強度は、全方向に一様である(レイリー散乱)。光が、例えば、レーザーからのように、コヒーレントな単色光である場合、光子計数モードで操作できる光電子増倍管などの適切な検出器を使用して、散乱強度における時間依存性のゆらぎを観測することが可能である。これらのゆらぎは、粒子がランダムな熱運動(ブラウン運動)を受けるのに十分小さく、従って粒子間の距離が絶えず変化しているという事実から生じる。照射されたゾーン内にある隣接する粒子によって散乱される光の干渉による強め合い及び弱め合いにより、それが粒子の運動から生じるため、この運動についての情報を含んでいる、検出面での強度のゆらぎが引き起こされる。従って、強度のゆらぎの時間依存性の解析により、粒子の拡散係数を与えることができ、それから、ストークス−アインシュタインの式及び媒質の既知の粘性により、粒子の流体力学半径又は直径を計算することができる。
【0107】
本発明の別の観点においては、小さい二酸化セリウムナノ粒子、すなわち約10nm未満の平均直径を有する粒子を製造する連続プロセスは、第一セリウムイオン、酸化剤、ナノ粒子安定剤、及び水酸化物イオンを連続反応器内で混合する工程を含み、前記反応器中に反応物及び他の成分を連続的に導入し、そこから生成物を連続的に取り出す。連続プロセスは、例えば、Ozawa,et al.の米国特許第6,897,270号明細書;Nickel,et al.の米国特許第6,723,138号明細書;Campbell,et al.の米国特許第6,627,720号明細書;Beckの米国特許第5,097,090号明細書;及びByrd,et al.の米国特許第4,661,321号明細書に記載され;前記特許明細書の開示は参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0108】
水などの溶媒がしばしばプロセスで使用される。溶媒は反応物を溶解し、溶媒の流れを調節して、プロセスを制御することができる。有利には、ミキサーを使用して、反応物を撹拌し混合することができる。
【0109】
反応物の連続的な流れを受け入れ、生成物の連続的な流れを排出することができる任意の反応器を使用することができる。これらの反応器としては、連続撹拌槽型反応器、及び栓流反応器などを挙げることができる。ナノ粒子の合成を実施するのに必要な反応物は、好ましくは流れの状態で反応器へ装填される;すなわち、反応物は、好ましくは液体又は溶液として導入される。反応物は、別個の複数の流れの状態で装填することができるし、又はある特定の反応物を、反応器に装填する前に混合することができる。
【0110】
反応物は、1以上の入口を通って、撹拌器を備える反応室中へ導入される。典型的には、反応物は、第一セリウムイオン、例えば、硝酸第一セリウムの水溶液;過酸化水素又は分子状酸素(周囲空気を含む)などの酸化剤;及び2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸などの安定剤、を含む。過酸化水素などの二電子酸化剤は、好ましくはセリウムイオンのモル濃度の少なくとも2分の1の濃度で存在している。代替方法として、分子状酸素を、混合物を通してバブリングすることができる。水酸化物イオン濃度は、好ましくはセリウムモル濃度の少なくとも2倍である。
【0111】
本発明の或る実施態様においては、小さい二酸化セリウムナノ粒子を形成する方法は、例えば、硝酸セリウム(III)のような第一セリウムイオン及び酸化剤を含む、第1の水性反応物流を形成する工程を含む。Ce(III)をCe(IV)へ酸化することができる適切な酸化剤は、例えば、過酸化水素又は分子状酸素を含む。場合により、第1の反応物流はまた、二酸化セリウムナノ粒子に結合して、それにより粒子の凝集が起こらないようにするナノ粒子安定剤も含む。有用なナノ粒子安定剤の例は、上述した。
【0112】
方法は更に、水酸化物イオン源、例えば、水酸化アンモニウム又は水酸化カリウムを含む、第2の水性反応物流を形成する工程を含む。場合により、第2の反応物流は更に、安定剤(その例は前述した)を含む。しかしながら、第1又は第2の反応物流のうちの少なくとも1つは、安定剤を含有しなければならない。
【0113】
第1及び第2の反応物流は、混合されて、反応流を形成する。最初に、反応流の温度は、小さい水酸化第一セリウム核を形成するのに十分低く維持される。その後、温度を上げると、その結果、酸化剤の存在下に、Ce(III)のCe(IV)への酸化が起こり、水酸化物は酸化物へ変換され、それにより二酸化セリウムを含む生成物流を生じる。水酸化物から酸化物へと変換する温度は、好ましくは約50〜100℃、より好ましくは約60〜90℃の範囲にある。或る実施態様においては、第1及び第2の反応物流を、約10〜20℃の温度で混合して、温度をその後、約60〜90℃まで高める。
【0114】
望ましくは、生成物流中の二酸化セリウムナノ粒子は、例えば1以上の半多孔質膜を用いる透析濾過技術によって濃縮される。或る実施態様においては、生成物流は、1以上の半多孔質膜によって約3mS/cm以下の導電率まで低減されている、二酸化セリウムナノ粒子の水性懸濁液を含む。
【0115】
本発明の実施に適した連続反応器の略図を図3に描く。反応器40は、硝酸セリウム水溶液を含有する第1の反応物流41を含む。過酸化水素などの酸化剤が、入口手段42によって反応物流へ添加され、反応物は、ミキサー43aで混合される。得られた混合物に、入口45を経由して安定剤が添加され、そのあとミキサー43bで混合される。次いで、ミキサー43bからの混合物は、ミキサー43cに入り、そこで入口44からの水酸化アンモニウムを含有する第2の反応物流と混合される。第1及び第2の反応物流は、ミキサー43cを用いて混合されて、反応流を形成し、それが穿孔スクリーンを通過することによって機械的せん断を受けることができる。更なる実施態様においては、ミキサー43cは、前述したように、反応物流を受け入れる入口ポート(複数)及び出口ポート45を備えるコロイドミル反応器を備えている。更なる実施態様においては、ミキサー43cの温度は、約10℃〜約25℃の範囲の温度に維持される。
【0116】
43cからの混合物は、管45を約60〜90℃の温度に維持する恒温槽46中に収容されている反応器管45に入る。セリウムナノ粒子は、コイル50を備えることができる反応器管45中で形成される。次いで、生成物流が1以上の透析濾過ユニット47に入り、そこでセリウムナノ粒子は、1以上の半多孔質膜を用いて濃縮される。1以上の透析濾過ユニットを、直列に連結して生成物の単回通過濃度を達成することができるし、又は前記ユニットを、超高容量処理量のために並列に設置することができる。透析濾過ユニットは、高容量及び高速の両処理量を達成するために、直列及び並列の両方に配置することができる。濃縮されたセリウムナノ粒子は、出口ポート49を経由して透析濾過ユニットを出て行き、過剰の反応物及び水は、出口ポート48を経由して透析濾過ユニット47から除去される。代替実施態様においては、安定剤は、ポート45を経由して第1の反応物流へというよりむしろポート51を経由して第2の反応物流へ添加することができる。
【0117】
本発明の或る実施態様においては、透析濾過ユニット47を出て行く濃縮されたセリウムナノ粒子生成物流は、無極性溶媒及び少なくとも1つの界面活性剤を含む流れと混合される。その場合、界面活性剤は、下記のように、逆ミセルがエマルション中に形成されるように選択される。
【0118】
二酸化セリウムナノ粒子を製造する連続プロセスの使用では、回分反応器によってあたえられるものと比較して、粒子核の産生及びその成長のより良好な制御が可能となる。核サイズは、初期試薬濃度、温度、及び試薬濃度に対するナノ粒子安定剤の比率によって制御することができる。小さい核は、約20℃未満の低い温度、及び試薬濃度に対するナノ粒子安定剤の高い比率によって助けられる。このような方法で、約10nm未満の平均流体力学直径を有する非常に小さい二酸化セリウムナノ粒子を経済的なやり方で製造することができる。
【0119】
二酸化セリウム粒子がその中で典型的に形成される水溶液沈殿媒質の一部を使用して、その後にナノ粒子活性を増強することか可能であり得る。セリウムナノ粒子及び少量の水を含む混合物が、ディーゼルエンジン中で空気及び燃料の存在下に燃焼を受けるとき、火炎温度は、900℃(1652°F)ほどの高いレベルに達することができる。これらの高い温度では、式1によるセリウムの還元と酸素の産生は、非常に効率的である。更に、これらの高められた温度では、水から過熱蒸気を発生することができる。これにより、圧縮比を高めて結果的により高いエンジン効率が得られるであろうというだけでなく、燃料波面が多数の非常に小さい高表面積の小滴へ分離するという結果も得られるであろう。これにより、空気−燃料領域のより良好な混合が可能となり、二酸化セリウム粒子がより容易に酸素を燃料に供給できるようになり、結果的により完全な燃料燃焼を得る。このことが今度はエンジン性能を高めると同時に粒子状物質排出を低減する。十分な水が存在する場合、燃焼温度はいくらか低くなるであろうし、より高い温度では最大である窒素酸化物(NO)産生レベルも低減することができる。しかしながら、十分に高い水のレベルでは、燃焼温度は、エンジン出力が低下する点まで低くなる可能性がある。この現象は、水相中の水の一部を過酸化水素又はt−ブチルヒドロペルオキシドなどの水溶性セタン価向上剤で置き換えることによって相殺することができる。従って、例えばディーゼル燃料などの無極性媒質中に、安定な二酸化セリウムナノ粒子及び水の均一な混合物を供給することは、有益であろう。
【0120】
本発明は、二酸化セリウムナノ粒子、ナノ粒子安定剤、界面活性剤、水、及び無極性溶媒を含む均一な混合物を配合する方法を提供する。好ましくは、ナノ粒子は、約10nm未満の平均直径を有し、より好ましくは約8nm未満、最も好ましくは約6nmの平均直径を有する。
【0121】
上記のように、二酸化セリウムナノ粒子は、様々な手順で製造することができる。典型的な合成経路は、溶媒として水を使用して、ナノ粒子及び1以上の塩の水性混合物を生じる。例えば、二酸化セリウム粒子は、式(2a)に示すように、硝酸セリウム(III)水和物を、例えば水酸化アンモニウム水溶液からの水酸化物イオンと反応させて、それにより水酸化セリウム(III)を形成することにより製造することができる。水酸化セリウムは、式(2b)に示すように、過酸化水素などの酸化剤を用いて二酸化セリウム(IV)へ酸化することができる。類似の三水酸化物(tris hydroxide)の化学量論を、式(3a)及び(3b)に示す。
【化8】


非常に高い塩基レベル、例えば5:1 OH:Ceを用いて形成される錯体もまた、二酸化セリウムへの経路を与える。
【0122】
いくつかの場合においては、特に、水酸化アンモニウムが第一セリウムイオンに対して過剰に存在しない場合、種Ce(OH)(NO)又は(NHCe(NOが最初に存在して、その後に二酸化セリウムへの酸化を受ける。
【0123】
二酸化セリウム粒子は、水性環境中で形成されて、1以上のナノ粒子安定剤と混合される。望ましくは、二酸化セリウムナノ粒子は、安定剤(単数又は複数)の存在下で形成されるか、又は前記粒子形成直後に安定剤(単数又は複数)が添加されるかいずれかである。有用なナノ粒子安定剤としては、アルコキシ置換カルボン酸、α−ヒドロキシルカルボン酸、ピルビン酸、及び小さい有機ポリカルボン酸が挙げられる。アルコキシ置換カルボン酸の例としては、2−(メトキシ)エトキシ酢酸及び2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸(MEEA)が挙げられる。α−ヒドロキシカルボン酸の例としては、乳酸、グルコン酸及び2−ヒドロキシブタン酸が挙げられる。ポリカルボン酸としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、酒石酸、及びクエン酸が挙げられる。望ましい実施態様においては、ナノ粒子安定剤は、上記の式(Ia)又は式(Ib)で表される化合物を含む。
【0124】
反応混合物は、二酸化セリウムナノ粒子に加えて、1以上の塩、例えば、硝酸アンモニウム及び未反応硝酸セリウムを含む。安定化粒子は、限外濾過又は透析濾過装置中で18メガオームの水を用いて洗浄することによって、これらの物質及び塩類から分離することができる。ミセル状態の保有水の形成及び安定化のためには、低いイオン強度(<3mS/cm)が極めて望ましい。洗浄した安定化二酸化セリウムナノ粒子は、例えばナノ粒子の水性濃縮物を形成するために、必要に応じて、半多孔質膜を用いて濃縮することができる。粒子は、なお他の手段、例えば遠心分離によっても濃縮することができる。
【0125】
或る好ましい実施態様においては、二酸化セリウムナノ粒子は、透析濾過によって濃縮される。透析濾過技術では、ナノ粒子含有混合物中の塩類の濃度を完全に除去し、置き換え、又は下げるために用いることができる限外濾過膜を使用する。プロセスは、その分子サイズに基づいて反応混合物の成分を分離するため、選択的に半透(半多孔質)膜フィルターを使用する。従って、適切な限外濾過膜は、塩類及び水などのより小さい分子が膜を通過するのを可能にしながら、形成されたナノ粒子の大部分を保持するように十分に多孔質であるだろう。このような方法で、ナノ粒子及び会合した結合安定剤を濃縮することができる。フィルターにより保持される材料は、安定化ナノ粒子を含めて、濃縮物又は未透過物と呼ばれ、廃棄された塩類及び未反応物質は、濾液と呼ばれる。
【0126】
小さい分子が膜を通過する速度(流量)を加速するために及び濃縮プロセスを速めるために、混合物に圧力を加えることができる。流量を増すその他の手段としては、高表面積を有する大きい膜を用いること、及び膜の細孔径を増すこと、但しナノ粒子の許容不可能な損失がない状態で増すことが挙げられる。
【0127】
或る実施態様においては、膜は、膜の平均細孔径がナノ粒子平均直径のサイズの約30%以下、20%以下、10%以下、又は更に5%以下でもあるように選択される。しかしながら、細孔直径は、水及び塩類分子の通過を可能にするのに十分な大きさでなければならない。例えば、硝酸アンモニウム及び未反応硝酸セリウムを、反応混合物から完全に又は部分的に除去すべきである。或る好ましい実施態様においては、平均膜細孔径は、未透過物中に3nm以上の直径の粒子を保持するのに十分に小さい。これは、約3キロダルトンのタンパク質サイズに相当するであろう。
【0128】
望ましくは、濃縮物は、安定化ナノ粒子及び残留水を含む。或る実施態様においては、二酸化セリウムナノ粒子の濃度は、好ましくは、約0.5モラルを超え、より好ましくは約1.0モラルを超え、更により好ましくは約2.0モラルを超える。
【0129】
濃縮物が形成するとすぐに、それを1以上の界面活性剤及び無極性溶媒と混合して、均一な混合物を形成する。界面活性剤は、無極性媒質中に分散する水性安定化二酸化セリウムナノ粒子からなる逆ミセルが形成されるように、選択する。無極性溶媒中に分散される水性環境中の粒子からなる逆ミセル溶液は、例えばYing,et al.の米国特許第6,869,584号明細書及び米国特許出願公開第2005/0152832号明細書に既に記載されている。前記開示は、参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0130】
二酸化セリウムナノ粒子及び逆ミセル粒子の相対的サイズに応じて、前者を、様々な範囲で後者の構造中に組み込むことができる。或る実施態様においては、安定化二酸化セリウムナノ粒子を、約25℃〜約0℃の範囲にある温度で、界面活性剤及びコサーファクタント及び無極性溶媒の溶液に、混合しながら、添加する。適切な無極性溶媒としては、例えば約6〜20個の炭素原子を含有する炭化水素、例えば、ペンタン、ヘプタン、オクタン、デカン及びトルエン、並びにガソリン、バイオディーゼル、及びディーゼル燃料などの炭化水素燃料が挙げられる。
【0131】
有用な界面活性剤としては、式:
【化9】


(式中、nは4〜6である)を有するノニルフェニルエトキシレートが挙げられる。
エーテル基及びアルコール基の両方を含有するその他の界面活性剤としては、式(Ic):
【化10】

(式中、Rは、置換又は非置換アルキル基を表し、及びmは、1〜8の整数である)で表される化合物が挙げられる。
【0132】
ある特定の実施態様においては、ステアリン酸、パルミチン酸、及びオレイン酸の塩類などのカルボン酸塩界面活性剤は、界面活性剤として有用であり得る。
【0133】
別の型の有用な界面活性剤は、式(Ib):
【化11】

(式中、それぞれのRは、独立して置換若しくは非置換アルキル基又は置換若しくは非置換芳香族基を表し、X及びZは、独立してH、又はNa若しくはKなどの対イオンを表し、並びにpは、1又は2である)で表される。
【0134】
別の実施態様においては、逆ミセル形成剤としては、アニオン界面活性剤及び非イオン性コサーファクタントが得げられる。有用なコサーファクタントとしては脂肪族アルコール、例えば、ペンタノール及びヘキサノール並びにそれらの幾何異性体が挙げられる。
【0135】
逆ミセル形成を用いて二酸化セリウムナノ粒子分散系を配合することにより、水性ナノ粒子安定剤(単数又は複数)が、界面活性剤(単数又は複数)のそれから独立して最適化することが可能となる。
【0136】
望ましい逆ミセル組成物は、ディーゼル燃料の冷流動曇点(cold pour cloud point)、すなわち、ろう結晶が形成し始め、ディーゼル燃料がゲル化し始める温度、を下げるのに有効である。冷流動曇点の議論については、Langer et al.の米国特許第6,368,366号及び第6,383,237号明細書を参照のこと。前記開示は参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0137】
望ましい逆ミセル組成物は、極めて安定で、非常に高い希釈比率が可能である;燃料:ミセル組成物の希釈率500:1以上が極めて有利である。逆ミセル組成物の安定度を最適化するため、二酸化セリウムナノ粒子濃縮物は、好ましくは高抵抗率の水、すなわち約1〜18メガオーム/cmの抵抗率を有する水、好ましくは約18メガオーム/cmの抵抗率を有する水を含む。純水は、18.3メガオーム/cmの抵抗率を有する。
【0138】
抵抗率は、導電率(物質が電流を通す能力)の逆数である。導電率計器では、試料中に置かれる2つのプレートを備え、プレート間に電位を負荷して(通常は正弦波電圧)、電流を測定することにより導電率を測定することができる。抵抗率(R)の逆である導電率(G)は、オームの法則:
【数1】

(式中、Iは、アンペア単位の電流であり、Eは、ボルト単位の電圧である)
によって電圧と電流から求められる。溶液中のイオンの電荷が電流の伝導性を容易にするので、溶液の導電率は、そのイオン濃度に比例する。導電率の基本単位は、ジーメンス(S)、又はミリジーメンス(mS)である。セルの形状が導電率の値に影響するので、標準測定値は、電極の寸法の変動を補正するため、比導電率単位(mS/cm)で表現される。
【0139】
最適なミセル組成物においては、二酸化セリウム濃縮物中に電気を通すイオンがほとんど存在しないことが望ましい。この状況は、透析濾過を通して二酸化セリウム粒子を濃縮することにより、5mS/cm未満の導電率レベルまで、好ましくは3mS/cm以下の導電率レベルまで、達成することができる。
【0140】
本発明は更に、二酸化セリウムナノ粒子、少なくとも1つのナノ粒子安定剤及び少なくとも1つの界面活性剤、水、及び無極性溶媒を含む均一な混合物を配合する方法を対象にする。第1の工程は、ナノ粒子安定剤の分子がナノ粒子と密接に会合する、安定化二酸化セリウムナノ粒子を含む水性混合物を供給する。第2の工程は、懸濁液のイオン強度を最小化しながら、安定化二酸化セリウムナノ粒子を濃縮して、アニオン及びカチオンを比較的含まない水性濃縮物を形成することを含む。第3の工程は、前記濃縮物を、界面活性剤を含有する無極性溶媒と混合して、それにより熱力学的に安定な多成分単一相の逆(「油中水」)ミセル溶液である、実質的に均一な混合物を形成することを含む。
【0141】
実質的に均一な混合物は、好ましくは約0.5wt%〜約20wt%、より好ましくは約5wt%〜約15wt%のレベルで水を含有する。
二酸化セリウムナノ粒子は、好ましくは約10nm未満、より好ましくは約8nm未満、最も好ましくは約6nmの平均流体力学直径を有する。望ましくは、二酸化セリウムナノ粒子は、約2.5nm±0.5nmの一次クリスタリットサイズを有して、粒子エッジ長当たり1又は多くとも2のクリスタリットを含む。
【0142】
水性混合物は、有利にはコロイドミル反応器中で形成されて、ナノ粒子安定剤は、イオン性界面活性剤、好ましくはカルボン酸基及びエーテル基を含む化合物を含むことができる。ナノ粒子安定剤は、式(Ia):
【化12】

(式中:
Rは、水素原子又は置換若しくは非置換アルキル基又は置換若しくは非置換芳香族基を表し;
は、水素原子又はアルキル基を表し;
Yは、H又は対イオンを表し;及び
nは、0〜5である)
で表される界面活性剤を含むことができる。
好ましくは、Rは、置換又は非置換アルキル基を表し、Rは、水素原子を表し、Yは、水素原子を表し、及びnは、2である。
【0143】
別の適切なナノ粒子安定剤は、式(Ib):
【化13】

(式中:
それぞれのRは、独立して水素原子、置換若しくは非置換アルキル基又は置換若しくは非置換芳香族基を表し;
X及びZは、独立してH又は対イオンを表し;及び
pは、1又は2である)
で表される化合物を含む。
【0144】
他の有用なナノ粒子安定剤は、乳酸、グルコン酸鏡像体、EDTA、酒石酸、クエン酸、及びその組合せからなる群に含まれる。
界面活性剤はまた、非イオン性界面活性剤、好ましくはアルコール基及びエーテル基を含む化合物、特に、式(Ic):
【化14】

(式中:
は、置換又は非置換アルキル基を表し;及びmは、1〜8の整数である)
で表される化合物を含むこともできる。
【0145】
非イオン性界面活性剤はまた、式(Id):
【化15】

(式中:
は、置換又は非置換アルキル基を表し;及び
Фは、芳香族基であり、
mは、4〜6の整数である)
で表される化合物を含むこともできる。
【0146】
界面活性剤はまた、アニオン界面活性剤、好ましくはスルホネート基又はホスホネート基を含有する化合物を含むこともできる。有用なアニオン界面活性剤は、ビス(2−エチル−1−ヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム(AOT)である。
【0147】
水性反応混合物は更に、コサーファクタント、好ましくはアルコールを含むことができる。
【0148】
水性混合物を濃縮することは、好ましくは透析濾過を用いて実施され、前記濃縮された水性混合物の導電率の約3mS/cm以下までの低下という結果を得る。
【0149】
実質的に均一な溶液中に含まれる無極性溶媒は、有利には、約6〜20個の炭素原子を含有する炭化水素の中から、例えばオクタン、デカン、トルエン、ディーゼル燃料、バイオディーゼル、及びその混合物の中から選択される。燃料添加剤として使用されるとき、1部の均一な混合物は、少なくとも約100部の燃料とともに存在する。
【0150】
更に本発明によれば、コア及びシェルを含む二酸化セリウムナノ粒子を製造する方法があり、そこではシェルは、遷移金属、ランタニド、メルカブチド基を含むことができる硫黄含有化合物、及びその組合せからなる群から選択される物質を含む。好ましくは、コアは、容量で約90%以下のナノ粒子を含み、シェルは、容量で約5%以上のナノ粒子を含む。シェルは、格子サイトを含み、格子サイトの最大約30%までが、遷移金属、ランタニド、硫黄含有化合物、及びその組合せからなる群から選択される物質を含む。
【0151】
遷移金属は、好ましくはFe、Mn、Cr、Ni、W、Co、V、Cu、Mo、及びZrからなる群から、又はランタニド系列から、並びにその組合せから選択される。望ましくは、遷移金属は、鉄に結合することができる。遷移金属が、硫黄の酸化物と反応することができることも望ましい。更なる実施態様においては、遷移金属を、硫黄を含む少なくとも1つの配位子と会合させる。
【0152】
コア及びシェル(シェルがそこでは少なくとも1つの遷移金属を含む)を含む水性懸濁二酸化セリウムナノ粒子を含む組成物は、その後、無極性媒質中へ溶媒変更することができる(粒子がそこでは本質的に水を含まず潤滑油中に組み込み可能である)。油中のナノ粒子は、動いているエンジン部分と接触する摩擦を更に減らすための補助剤として働く。
【0153】
ディーゼルエンジンシリンダー表面上にインサイチューでセラミック酸化物コーティングを形成することは、有益であろう。コーティングの潜在的利益は、熱応力からの付加的エンジン保護を含む;例えば、ディーゼルエンジン製造に使用される普通の材料である鋳鉄は、約1200〜1450℃で融解するのに対して、CeOは、2600℃で融解する。5nmのセリア粒子でさえ、1000℃で24時間の酸化から鋼鉄を保護する能力を実証したので、サイズ依存性融解の現象により、本発明の二酸化セリウムナノ粒子の融点が、エンジン中で遭遇する燃焼温度よりも下に低下することは予期されないであろう。例えば、Patil et al.,Journal of Nanoparticle Research,vol.4,pp433−438(2002)を参照のこと。そのように保護されたエンジンは、より高い温度及び圧縮比で運転することができ、結果的により大きい熱力学的効率をもたらすことができる。二酸化セリウムでコーティングされるシリンダー壁を有するディーゼルエンジンは、更なる酸化に耐えるであろうし(CeOは既に十分に酸化されている)、それによりエンジンを「錆びること」から防止するであろう。このことは重要である。何故なら、例えば、オキシジェネート MTBE、エタノール及び過酸化物などの他のセタン価向上剤などの、炭素排出を低減させ又は燃料節約を改良するために使用される特定の添加剤がまた、燃焼室中に導入されるときには腐食を増加させ、それが結果的に錆びの形成及びエンジン寿命及び性能の低下をもたらし得るからである。コーティングは、水循環冷却システムによるエンジン壁の冷却を妨げるほど厚くすべきではない。或る実施態様においては、本発明は、約10nm未満の、好ましくは約8nm未満の、より好ましくは6nm以下でさえもの平均流体力学直径を有する、ディーゼルエンジン用燃料添加剤として有用な、二酸化セリウムナノ粒子を提供する。二酸化セリウムナノ粒子表面は、鉄表面へのその結合を容易にするように修飾することができ、望ましくは、燃料添加剤組成物に含まれるとき、ディーゼルエンジンシリンダー表面にセラミック酸化物コーティングを速やかに形成するであろう。
【0154】
或る実施態様においては、鉄に対する結合親和力を有する遷移又はランタニド金属が、二酸化セリウムナノ粒子表面に組み込まれる。鉄表面の例は、多くのエンジン内部部品に存在するものを含む。適切な遷移金属としては、Mn、Fe、Ni、Cr、W、Co、V、Cu、及びZrが挙げられる。
【0155】
結晶中のセリウムイオン格子サイトを占有することにより二酸化セリウムナノ粒子中に組み込まれる遷移又はランタニド金属イオンは、二酸化セリウムの沈殿反応の後の方の段階の間にドーパントとして導入することができる。ドーパントは、例えば、第一セリウムイオン及び遷移金属イオンの両方がその中で、水酸化アンモニウムを含有する反応器中に一緒に導入される、単一ノズル様式でのように、第一セリウムイオンと組合わせて添加することができる。代替方法としては、ドーパント及び第一セリウムイオンは、水酸化物イオンの同時添加と一緒に添加することができる。ドーピングした粒子はまた、第2のノズルによって同時に導入される水酸化アンモニウム流に対して滴加される、第一セリウムイオンと溶解遷移金属イオンとの二重ノズル反応で形成することもできる。いずれにしても、初期粒子の凝集を防止するために十分なナノ粒子安定剤が存在するということが理解される。
【0156】
更なる実施態様においては、コア−シェル構造を有する二酸化セリウムナノ粒子を製造する。粒子のコアは、好ましくは、バルク粒子のうちの少なくとも約75%、より好ましくは、約95%以上を含み、場合により、金属をドーピングすることができる。シェルは、粒子の外部及び表面を含めて、粒子のうちの好ましくは約25%以下、より好ましくは約10%以下、最も好ましくは約5%以下を含み、遷移又はランタニド金属を含む。シェルのCe+4格子サイトのうち最大約30%までが、1以上の遷移又はランタニド金属によって占有され得る。適切な遷移金属としては、Mn、Fe、Ni、Cr、W、Co、V、Cu、Zr、及びMo、並びにその組合せが挙げられる。
【0157】
更なる実施態様においては、二酸化セリウムナノ粒子は、シェルが硫黄を含む少なくとも1つの化合物を含む、コア−シェル構造を有する。好ましくは、硫黄は、それが鉄との結合を形成できるように存在している。ディーゼルエンジン用燃料添加剤として使用されるとき、二酸化セリウム粒子のシェルに含有される硫黄は、エンジン燃焼室の鉄表面に結合して、それにより燃焼室表面上への二酸化セリウムの析出を加速する。適切な硫黄化合物としては、ZnS、MnS、FeS、Fe、CoS、NiS、及びCuSが挙げられる。硫黄は、遷移金属配位子の一部であることができ、そこでは金属及びその会合した配位子が二酸化セリウムナノ粒子の表面中に組み込まれる。例えば、メルカプチド基を含む配位子は、硫黄−鉄結合を形成することができる。
【0158】
硫黄は、例えば、チオ硫酸塩などの不安定な硫黄源と一緒に、適当な水溶性遷移金属塩(硝酸塩、硫酸塩又は塩化物)(代わりに、遷移金属のチオ硫酸塩を使用することができる)を、硝酸セリウム六水和物反応物とともに組み込むことにより、CeOの水溶液沈殿の間に、二酸化セリウムナノ粒子中に組み込むことができる。高められた温度、例えば、約70〜90℃で、水酸化セリウムが酸化物へ熱的に変換する間に、対応する遷移金属硫化物も生じるものである。
【0159】
別の実施態様においては、遷移金属は、二酸化セリウムナノ粒子の表面中に組み込まれる。望ましくは、この金属は、それが硫黄と反応して硫黄との結合を形成することができるように、選択される。CeO前駆体(水酸化セリウム)のシェル形成の間に、反応混合物中に、遷移金属が存在している。適切な金属としては、W、Co、V、Cu、及びMoだけでなくMn及びFeも挙げられる。典型的な水溶性遷移金属塩類としては、これらの金属の硫酸塩、硝酸塩、及び塩化物が挙げられる。
【0160】
燃料添加剤として使用されるとき、遷移金属含有ナノ粒子は、燃料中に存在している硫黄と結合することができる。例えば、鉄は、二酸化硫黄と反応してFeを生じることができる。これにより、燃料燃焼室から出るガス中に存在している反応性硫黄、例えば、硫黄酸化物のレベルが低減される。多くの乗り物の排気システムが、硫黄により活性がなくなり得る白金触媒を含有する微粒子トラップを備えているので、燃料燃焼後の硫黄の除去は、非常に望ましい。従って、硫黄が触媒に到達する前に硫黄を除去することで、触媒の寿命が長くなる。二酸化硫黄低減のために有用な金属はまた、Yamashita,et al.の米国特許第5,910,466号明細書にも記載されている。前記開示は参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0161】
少なくとも2つの不混和性液体の安定な混合物である、孤立したエマルション相内に、小さい粒子を作ることができることが当該技術分野で知られている。不混和性液体は2つのはっきり異なる相に分離する傾向があるけれども、液体相間の表面張力を減らす機能がある界面活性剤の添加によって、エマルションを安定化することができる。エマルションは、連続相及び界面活性剤によって安定化される分散相を含む。分散水相及び典型的に炭化水素を含む有機連続相を有する油中水(w/o)型エマルションは、しばしば、「逆ミセル組成物」と呼ばれる。
【0162】
更に本発明によれば、逆ミセル組成物は、セリウム(IV)ナノ粒子含有水性組成物を含む分散相を、炭化水素液体及び少なくとも1の界面活性剤を含む連続相と一緒に含む。本発明の燃料添加剤組成物は、水性分散相が、セリウム(IV)酸化物系化合物を含むインサイチューで形成されるナノ粒子を含み、連続相が炭化水素液体及び界面活性剤/安定剤混合物を含む、逆ミセル組成物を含む。界面活性剤/安定剤混合物は、このようにして形成されるナノ粒子のサイズを限定するのに有効であり、ナノ粒子の凝集を防止してナノ粒子の収量を高める。
【0163】
別の実施態様においては、逆ミセル組成物は、遊離基開始剤を含む水性分散相、並びに炭化水素液体及び少なくとも1の界面活性剤を含む連続相、を含む。場合により、逆ミセル組成物は、セリウム含有ナノ粒子を含むことができる。
【0164】
更なる実施態様においては、燃料添加剤組成物は、次の連続相を含む。すなわち、炭化水素液体、界面活性剤、及び場合によりコサーファクタントを含み、並びに燃料の燃焼中のエンジン出力を向上するのに有効なセタン価向上剤を含む水性分散相を含む逆ミセル組成物を形成する、連続相である。燃料添加剤組成物は、場合により更に、別個の分散系又は別個の逆ミセル組成物のいずれかに含まれ得る、セリウム含有ナノ粒子を含む。
【0165】
本発明の或る実施態様においては、油中水型エマルションが小さいミセル分散サイズを有し、粒子状材料が水性分散相内に形成される。界面活性剤及び反応条件の適当な選択により、安定なエマルションの形成、粒子サイズ分布及び成長の制御、並びに粒子凝集の防止が与えられる。油相は、好ましくは、更に酸素含有化合物を含むことができる、炭化水素を含む。ミセルにおいては、分散水相は、水相を有機連続相から分離して安定化する界面活性剤境界によって包まれる。
【0166】
逆ミセルを安定化するためにエマルションに含まれ、好ましくは連続相に含まれる界面活性剤は、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、又はその組合せであることができる。適切な界面活性剤としては、例えば、ノニルフェニルエトキシレート、モノアルキル及びジアルキルカルボキシレート、並びにその組合せが挙げられる。
【0167】
セリウム含有反応物のための及び水酸化アンモニウムなどの沈殿剤のための2つのはっきり異なる逆ミセルを使用するという困難な問題は、本発明によって回避される。本発明では、第1の反応物が第2の反応物の前駆体と均一に混合される、均一沈殿法を用いる単一の逆ミセル中への両反応物の組合せが提供される。適切な第1の反応物は、Ce+4含有化合物であり、それは、例えばCe(NO・6HOなどのCe+3含有化合物を、例えばHを用いて酸化することによって得ることができる。
【0168】
適切な第2の反応物は、アンモニアNHであり、それは、式(4):
【化16】

に示すように、ヘキサメチレンテトラミン(HMT)C12の、熱及び/又は光で活性化される加水分解によって得ることができる。
HMTを用いる二酸化セリウムの均一沈殿は、Zhang,F.,Chan Siu−Wai et al.,Applied Physics,80,1(2002),pp127−129及び既に議論したChanの米国特許出願公開第2005/0031517明細書に報告されている。安定剤がない場合、これらの引用文献に記載される手順によって製造される二酸化セリウム粒子のサイズは、時間とともに増加し続ける。更に、この手順では、非常に低濃度の溶液と長い反応時間を使用して、低い生成物収量を得る。
【0169】
有利に逆ミセルを均一沈殿技術と組合わせる本発明のプロセスの一例においては、Ce(NO(6HO)が、Hと混合されて、Ce+4含有溶液を生成する。好ましくは、溶液は更に、セリウム含有ナノ粒子のサイズを制御する安定剤を含む。好ましい安定剤は、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸(MEEA)である。得られた溶液を、時期尚早の反応を抑制するために十分に低い温度、約15℃未満の温度で、冷HMT溶液に添加する。次いで得られた混合物を、界面活性剤、及び例えばトルエン、オクタン、デカン、ガソリン、D2ディーゼル燃料、ULSD(超低硫黄ディーゼル)、バイオディーゼル、又はその組合せなどの有機溶媒、を含む油相にゆっくり添加する。新たな混合物を、実質的に完全なCe含有ナノ粒子形成を達成するのに十分なだけの温度まで加熱する。所要の正確な温度は、逆ミセル界面活性剤の選択並びに第1の反応物及び第2の反応物前駆体の濃度に依存するが、しかし望ましくは、約47℃より下に維持される。逆ミセル界面活性剤はまた、Ce含有ナノ粒子を安定化するのに役立つこともできる。代替方法としては、水性Ce+4−HMT混合物を、逆ミセル組成物を形成するために用いたのとは異なるもう一つの界面活性剤と前もって混合することができる。水性組成物は、場合により更に、高温での遊離基形成種と一般に認められているセタン価向上剤を含むことができる。
【0170】
反応条件に応じて、個々のミセルは、単一のセリウム含有ナノ粒子を包含するのに十分小さいか、又は複数のナノ粒子を含有するのに十分大きいかであることができる。従って、ミセルは、好ましくは約5nm〜約50nm、より好ましくは約20nmの直径を有する。セリウム含有ナノ粒子は、好ましくは約1nm〜約15nm、より好ましくは約2nm〜約10nmの直径を有する。
【0171】
HMTの加水分解により水相に生成したCHOは、その後の燃料燃焼プロセスで使用することができる。代替方法としては、逆ミセルがいくつかの架橋可能な基を含有する場合、CHOは、ミセル内に架橋結合をもたらすことができ、ミセルを強化し又はその耐熱性を高めることができる。
【0172】
本発明の逆ミセルプロセスによって形成される燃料添加剤エマルションは、セリウム含有ナノ粒子の沈殿において使用される水を含む。セリウム含有エマルションとともに燃料中に持ち込まれる過剰の水は、エンジン出力の損失の原因となり得る。この問題を克服して、それにより燃料性能を改善するために、水を、セリウム含有水相から除去して、セタン価向上剤によって置き換えることができる。例えば透析濾過によって除去される水を、水溶性セタン価向上化合物によって置き換えることができる。この目的に適した化合物としては、例えば、30〜50wt%H水溶液、t−ブチルヒドロペルオキシド、ニトロメタン、並びにジメチルエーテル及びジエチルエーテルなどの低分子量アルキルエーテルを挙げることができる。
【0173】
例えば、Hなどの遊離基開始剤は、煤煙及び炭化水素排出の低減をもたらす、ディーゼル燃料のための有効なセタン価向上剤であることが知られている。セタン価は、燃焼室中への燃料噴射後の発火遅れ時間の指標である;あるいは、セタン価は、発火時間、すなわち燃焼室の圧縮過熱空気中へのディーゼル燃料噴射と噴射された燃料流の実際の発火との間の時間の逆に相関すると見なすことができる。セタン価がより高いほど、燃料はより完全に燃焼されて、煤煙産生がより少なくなる。発火遅れが煤煙形成を引き起こすからである。追加して考慮すべきことは、ピストンが上死点(TDC)に達する時間にできるだけ近いところでこの発火が起こるという要求である。何故なら、発火時間があまりにも短いと、燃焼されるガスがピストンの圧縮行程に不利に作用するという結果をもたらすからである。12リットルのディーゼル及びより小さいエンジンについては、燃料噴射は通常、TDC前5又は6度のクランク角で起こる。従って、セタン価向上は、クランク角に対する非常に小さい効果及びエンジン出力に対する最小の逆効果を有するであろう。他方では、25度のクランク角を有するディーゼル機関車エンジンについては、実質的なセタン価向上は、クランク角の事前調整をしない場合、エンジン出力に対して問題があるだろう。
【0174】
燃焼効率向上に対して遊離基機構を使用することは、燃焼室中での単なるO化学量論の増加に対する非常に魅力的な代替案である。何故なら、式(5):
【化17】

で表される、Oによる直接酸化に比べて、O原子又はOH種を含む遊離基化学反応は、おおよそ2桁速いからである。これは、一部は、最初にO=O結合を破壊する必要(結合解離エネルギーΔHが119.2Kcal/mole)の結果であり、及び(起電力スケール又は自由エネルギースケールで)生成し得る最も化学的に反応性の種の一つであるOHラジカルの高い反応性(フッ素ラジカルよりほんの僅かに反応性が小さいが)の結果である。
【0175】
これに対して、遊離基化学反応による炭化水素及び煤煙の酸化は、式(7):
【化18】

に示すように、比較的弱いO−O単結合(過酸化水素に対するΔH=47kcal/mole)を破壊することを含み得、次いで直接的C−H結合開裂を経由して進行して、水及び「熱い」、すなわち化学的に反応性の炭化水素ラジカルを与える。その後でこの高反応性の炭化水素ラジカルは、容易に酸化を受けることができる。Born and Petersの“Reduction of Soot Emission in a DI Diesel Engine of Hydrogen Peroxide during Combustion,”S.A.E.Technical Paper 982676(1998)によれば、式(8)に示される水及び酸素を生成する熱分解反応ではなく、式(7)が、727℃より上の温度では、過酸化物の分解に対する支配的な反応経路を表す。
【0176】
Maganas et al.の米国特許第6,962,681号明細書(この開示は参照することにより本明細書に組み込まれる)には、触媒的に反応性のシリカ又はアルミナ粒子が、燃焼排気ガス中の水分と相互作用して、ヒドロキシルラジカルを生成し、それが燃焼サイトに戻されて、燃焼効率を向上させ、結果的に煤煙形成を低減するというシステムが記載されている。
【0177】
Hashimoto et al.の米国特許出願の出願番号2006/0185644(この開示は参照することにより本明細書に組み込まれる)には、95〜99.5wt%の基礎燃料、並びにジ−t−ブチルペルオキシドなどの有機過酸化物、硝酸n−ペンチルなどの硝酸エステル、亜硝酸n−ペンチルなどの亜硝酸エステル、及び2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ化合物からなる群から選択される0.1〜5wt%の添加剤化合物を含む、燃料組成物が記載されている。
【0178】
本発明の燃料添加剤組成物中において遊離基開始剤の介在物は、複数の利点を提供する:
【0179】
別個の逆ミセル組成物に組み込まれるか又は逆ミセル中にCeO燃料媒介添加剤(fuel borne additive)とともに同時に組み込まれる(co-incorporated)とき、それは、内部エンジン構成部品が、残留煤煙を「掃除」され又は洗われてその結果新鮮な表面を与えるという機構を提供する。これは、二酸化セリウムナノ粒子がエンジンの鋳鉄マトリックス中へ組み込まれ得る速度を大いに加速して、その結果エンジンを「調整する」のにかかる時間を低減し、すなわちmpg(マイル/ガロン)節約の増加をもたらす触媒ナノ粒子のコーティングを与える時間を低減する。更に、CeOナノ粒子に対する好ましい安定剤、例えば乳酸及びグルコン酸などのヒドロキシカルボン酸は、高温度では、それ自体強力なラジカル発生剤である。
【0180】
内部表面がセラミック触媒化されている十分に調整済みのディーゼルエンジンにおいてさえも、噴射された燃料のうち25%だけが実際にシリンダー壁と接触することにより触媒燃焼に利用可能となり、燃料の大部分がピストンヘッドの上の空間で燃焼されるという事実のため、遊離基機構はなお、観察された燃料効率の増加の大部分を説明するであろう。従って、逆ミセル内にHなどの水溶性遊離基開始剤を含有する燃料媒介添加剤は、非常に有用であろう。
【0181】
更に、逆ミセルが遊離基前駆体だけを含有する燃料媒介添加剤は、潤滑油の成分として導入されるナノ粒子潤滑性増強剤とともに非常に有利に使用することができる。
【0182】
一般に、非常に小さい分散粒子直径、好ましくは約5nm〜約50nm、より好ましくは約10nm〜約30nmを有する逆ミセル組成物は、非常に有効である。何故なら、それらの分解及び付随する過熱蒸気の放出が、燃焼室において添加剤含有ディーゼル燃料が空気と混合するのを助け、結果的により完全な燃料燃焼をもたらすからである。
【0183】
好ましくは、本発明による逆ミセルに含まれる遊離基開始剤は、実質的な水溶性を有する。以下の特許(その開示は参照することにより本明細書に組み込まれる)には、水溶性遊離基開始剤の使用が教示されている:
米国特許第3,951,934号明細書には、水溶性過酸化物の第三級アミン、サルファイト、及びブロメートとの組合せだけでなくアゾ−ビス化合物も開示されている。
米国特許第5,248,744号明細書には、ペルオキシジサルフェート及び有機過酸化物だけでなくアゾ−ビス化合物も教示されている。
米国特許第6,391,995号明細書には、Wako Chemicals,Dallas TXから市販されている4化合物を含む、水溶性アゾ開始剤の使用が開示されている。
【0184】
Oak Ridge National Laboratory document TM−11248 by W.V.Griffith and A.L.Compereには、本発明の逆ミセル組成物に含めることができる、エンジン出力を増加するセタン価向上剤の広範囲のリストがある。この目的のための有用な化合物としては、硝酸アルキル、エステル、アゾール、アジ化物、エーテル及びクメンヒドロペルオキシドなどのヒドロペルオキシドが挙げられる。
【0185】
Puchin et al.のソ連国特許第236,987号及び第214,710号明細書(1970)には、0.01%レベル、すなわち100ppmでのポリ(ジメチル(ビニルエチニル)メチル)t−ブチルペルオキシドが、1000のΔセタン%添加剤比率(10のセタン価向上に相当する)を与えることが開示されている。この引用文献にはまた、水性ミセル中に組み込まれる小さいモノエステルであることができるし、又は逆ミセルとして組み込むことを必要としないが、逆ミセルエマルション用界面活性剤として作用することができる長鎖脂肪酸モノエステル(高セタン価)でさえあることができる、「その他の添加剤」も開示されている。
【0186】
Hicks et al.の米国特許出願公開第2002/0095859号明細書(この開示は参照することにより本明細書に組み込まれる)には、濃縮されたマイクロエマルション形成燃料添加剤中のおよそ2.5:1程度の高い界面活性剤対水比率では、5〜95ppmだけの追加の水で炭化水素燃料燃焼の改良が引き起こされることが述べられている。
【0187】
本発明の燃料添加剤組成物は、1を超える型の逆ミセルを含むことができる。例えば、1の型の逆ミセルは、セタン価向上剤を含むことができ、第2の型の逆ミセルは、セリウム含有ナノ粒子を、少なくとも一部分は過酸化水素又は、より好ましくは安定化過酸化水素などの遊離基開始剤により置き換えることができる会合した逆ミセル相の水と一緒に、含むことができる。
【0188】
本発明によれば、セリウム含有燃料添加剤組成物は、好ましくは少なくとも1の非イオン性界面活性剤の少なくとも1のアニオン界面活性剤との組合せ、又は単一荷電したアニオン界面活性剤と複数荷電したアニオン界面活性剤との組合せを含む、界面活性剤/安定剤混合物を含む。界面活性剤/安定剤化合物の組合せの効果は、ナノ粒子サイズを抑え、それらの凝集を妨げ、及び反応物濃度の増加を可能にして、その結果、より高収量のナノ粒子を製造することである。
【0189】
界面活性剤/安定剤の組合せは、水性極性媒質から無極性油媒質への溶媒変更プロセスの助けになるという追加の利益を有することができる。荷電した及び荷電していない界面活性剤の組合せにおいては、荷電した界面活性剤化合物が、水性環境において支配的な役割を演ずる。しかしながら、溶媒変更が起こるにつれて、荷電した化合物は、水相中へ可溶化され押し流されがちになり、荷電していない化合物が逆ミセルエマルションを安定化するのにより重要になる。
【0190】
カルボキシル基が多くとも2のメチレン基によって分離されるジカルボン酸及びその誘導体、いわゆる「ジェミニカルボキシレート」はまた、有用な二酸化セリウムナノ粒子安定剤でもある。更に、C〜Cアルキル、アルコキシ及びポリアルコキシ置換ジカルボン酸は、有利な安定剤である。
【0191】
本発明によれば、ナノ粒子安定剤化合物は好ましくは、例えば、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸(MEEA)及びエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、乳酸、グルコン酸、酒石酸、クエン酸、及びその混合物などの有機カルボン酸を含む。
【0192】
本発明による逆ミセル組成物は、遊離基開始剤、好ましくは水溶性の遊離基開始剤を含む水性分散相、並びに界面活性剤、場合によりコサーファクタント、及び炭化水素液体、好ましくはトルエン、オクタン、デカン、D2ディーゼル燃料、ULSD、バイオディーゼル、及びその混合物の中から選択される炭化水素液体を含む連続相、を含む。一般に、約6〜20個の炭素原子を含有する炭化水素が有用である。組成物の水性分散相は、好ましくは約5nm〜約50nm、より好ましくは約3nm〜約10nmの平均直径を有するミセルを含む。
【0193】
水性分散相中の介在物に適した遊離基開始剤は、過酸化水素、有機ヒドロペルオキシド、有機過酸化物、有機過酸、有機ペルエステル、有機ナイトレート、有機ナイトライト、アゾビス化合物、ペルサルフェート化合物、ペルオキシジサルフェート化合物、及びその混合物からなる群から選択することができる。好ましいアゾビス化合物は、2−2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩;4−4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸);2−2’アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド];2−2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、及びその混合物からなる群から選択される。
【0194】
好ましい実施態様においては、水性分散相中の遊離基開始剤は、安定化過酸化水素又はt−ブチルヒドロペルオキシドを含む。水性分散相は更に、前述の過酸化物に加えて、第三級アミン化合物、サルファイト化合物、ブロメート化合物、及びその混合物からなる群から選択される化合物を含むことができる。
【0195】
逆ミセル組成物は更に、水性分散相中にホウ酸又はホウ酸塩を含むことができ、炭化水素液体は好ましくは、ディーゼル燃料を含む。本発明の更なる実施態様においては、場合によりセリウム含有ナノ粒子を含有する潤滑油は、逆ミセル燃料添加剤を含有する燃料を併せて使用することができる。
【0196】
本発明の逆ミセル組成物は好ましくは、ラジカル開始剤として、安定化過酸化水素又はt−ブチルヒドロペルオキシドを水相中に重量で30%、40%、又はさらに50%以上のレベルで含む。別の実施態様においては、逆ミセル組成物内で、炭化水素に対する水の重量での割合は、重量で約5%に等しいか若しくは超え、約10%に等しいか若しくは超え、又は好ましくは、約15%に等しいか又は超える。更なる実施態様においては、逆ミセル組成物は、ヘキサノールなどのアルコール、及び/又はTriton N−57などのアルコキシレート界面活性剤を含む。
【0197】
ディーゼルエンジンの性能を改良する方法は、ディーゼル燃料、例えばD2ディーゼル又はバイオディーゼルに、遊離基開始剤を含む水性第1の分散相並びに第1の炭化水素液体及び少なくとも1の第1の界面活性剤を含む第1の連続相を含む逆ミセル組成物を添加することを含む。過酸化水素又はt−ブチルヒドロペルオキシドなどの適切な遊離基開始剤、好ましくは約6〜約20個の炭素原子を含有する適切な炭化水素溶媒、及び適切な界面活性剤は、上に記載された。好ましい界面活性剤は、元素C、H、及びOのみを含む。好ましくは、水性分散相は、約20wt%、又は30wt%、又はより好ましくは40wt%以上のラジカル開始剤を含む。
エンジンを作動して改質ディーゼル燃料を燃焼することにより、未改質ディーゼル燃料と比較して改良されたエンジン効率が提供される。好ましくは、改質ディーゼル燃料は、等量の遊離基開始剤を伴わない場合、500ppm未満の水を含む。
【0198】
ディーゼル燃料添加剤として使用する有用な逆ミセル組成物は、ホウ酸又はホウ酸塩を含む水性分散相、並びに界面活性剤及び炭化水素液体を含む連続相を含む。有用なホウ酸塩の例としては、例えばホウ酸ナトリウム及びホウ酸カリウムが挙げられる。有用な炭化水素液体の例としては、トルエン、オクタン、デカン、D2ディーゼル燃料、バイオディーゼル、及びその混合物が挙げられる。一般に、約6〜20個の炭素原子を含有する炭化水素が有用である。適切な界面活性剤としては、Aerosol AOTが挙げられる;しかしながら、既述のように、好ましい界面活性剤は、元素C、H、及びOのみを含む。望ましくは、組成物の水性分散相は、好ましくは約5nm〜約50nm、より好ましくは約10nm〜約30nmの平均直径を有するミセルを含む。
【0199】
ディーゼルエンジンの性能を改良する方法は、上記のような添加剤をディーゼル燃料に添加して、改質ディーゼル燃料を得ることを含む。そのような添加剤は、ディーゼル燃料と組合せて使用するとき、ディーゼル燃料の燃費向上、ディーゼルエンジンの磨耗低減、又は汚染の低減又はこれらの特性の組合せを提供することができる。
【0200】
モーター油は、自動車及びその他の乗り物、ボート、芝刈り機、汽車、並びに飛行機などの様々な種類の内燃機関の潤滑剤として使用される。エンジンには、しばしば長期の時間にわたり、相互に対して高速度で動く接触部分が存在する。そのようなラビングモーションは、摩擦を引き起こし、一時的な溶接部を形成して、それがモーターによって生じる普通なら有用な出力を吸収し、エネルギーを無用な熱に変換する。摩擦はまた、これらの部分の接触面をすり減らし、それが燃料消費の増加及び効率低下及びモーターの劣化をもたらし得る。本発明の或る観点においては、モーター油は、潤滑油、二酸化セリウムナノ粒子、望ましくは約10nm未満、より好ましくは5nmの平均直径を有する二酸化セリウムナノ粒子、及び場合により表面吸着した安定剤を含む。
【0201】
ディーゼル潤滑油は、本質的に水を含まず、好ましくは300ppm未満であるが、しかし望ましくは、二酸化セリウムがその水性環境から有機又は無極性環境のそれへ溶媒変更されてしまっている二酸化セリウム含有逆ミセル組成物の添加によって、ディーゼル潤滑油を改質することができる。二酸化セリウム組成物は、既述したように、約10nm未満、より好ましくは約6nmの平均直径を有するナノ粒子を含む。改質ディーゼル燃料及び改質潤滑油で作動するディーゼルエンジンは、より大きい効率を提供し、特に、燃料の燃費向上、エンジン磨耗の低減又は汚染の低減、又はこれらの特性の組合せを提供することができる。
【0202】
バフ研磨とも称する金属研磨は、金属及び合金を滑らかにし、光った滑らかな鏡のような仕上がりまで研磨するプロセスである。金属研磨は、しばしば、自動車、オートバイ、及び古美術品などの価値を高めるために使用される。多くの医療機器も、金属にあるマークの汚れを防止するために研磨される。研磨剤はまた、レンズ及び鏡などの光学部材を研磨して、それらが取り扱うことになる光の波長の数分の一以内に表面を滑らかにするためにも使用される。本発明の滑らかな、丸い、一様な二酸化セリウム粒子は、有利に研磨剤として使用することができ、更に、そのあとの集積回路プロセシングのための半導体基板の平坦化(表面を原子レベルで滑らかにする)のために使用することができる。
【0203】
ナノ粒子、又は量子ドットは、多くの潜在的応用のために考慮されつつある。およそ1〜20nm程度のその小さいサイズのため、これらのナノ粒子は、100nm及びそれより大きいそのバルクバージョンとは異なる特性を有する。それらは、新規な電子的、磁気的、光学的、化学的、及び機械的特性を示し、それらの特性が多くの技術応用に対してそれらを魅力的なものにする。半導体材料のカテゴリーに入るそれらのナノ粒子は、生物学的標識及び診断学、発光ダイオード、固体照明、光起電デバイス、及びレーザー用に考慮されつつある。二酸化セリウムナノ粒子は、そのような応用に潜在的に有用なワイドギャップ半導体である。更に、二酸化セリウムナノ粒子の適切にドーピングしたバージョンは、応用範囲を拡大することができるであろう。
【0204】
独特に医療用に適するものとする、ナノ粒子状セリアの決定的特性が存在する。
【0205】
第1に、そして恐らく最も決定的には、セリアのヒトに対する毒性が非常に低いか存在しないことであり、それはヒトの細胞培養及びその他のデータに基づく結論である(Evaluation of Human Health Risk from Cerium Added to Diesel Fuel:Communication 9,2001 Health Effects Institute,Boston MA and Development of Reference Concenrations for Lanthanide,Toxicology Excellence for Risk Assessment,The bureau of Land Management,National Applied Resource Sciences Center,Amended Stage 2,November 1999)。
【0206】
第2の特性は、Ce3+/Ce4+レドックス対の有用性に関係している。身体に細胞損傷を引き起こし得るヒドロキシルラジカル(・OH)などの反応性遊離基種は、Ce3+によって、比較的無害なヒドロキシルアニオン(OH)まで化学的に還元され得る。逆に、もう一つの細胞損傷性ラジカル種である酸素ラジカルアニオン(O2・)は、Ce4+によって、分子状酸素まで酸化され得る。
【0207】
ナノ粒子状セリアのこれらの特性の利用を記載する多数の報告が現れてきている。例えば、細胞内過酸化物により誘発される網膜損傷を予防するという報告(Chen,et.al.Nature Nanotechnology,1,p142,Nov 2006)及びセリアが健康であるが癌性ではない細胞に対して放射線防護を与えるという腫瘍研究(Tarnuzzer,et.al.,NanoLetters 5,12,p2573,2005)がある。
【0208】
適切に技術設計されたナノ粒子状セリアは、その他のナノ材料と同様、免疫診断法、分子診断法及びプロテオミクスなどの分野のために、表面増強ラマン分光法を利用するバイオタグとして使用することができる。
【0209】
本発明は、更に以下の実施例によって説明される。これらの実施例は、いかなる方法によっても本発明を限定することを意図しない。
【0210】
実施例1.二酸化セリウムナノ粒子の製造:単一ノズル添加
3リットルの丸底ステンレス鋼反応容器に、1.267リットルの水を添加し、そのあと100mlのCe(NO・6HO溶液(600gm/リットル Ce(NO・6HO)を添加した。溶液は透明であった。そして20℃でpH4.2を有する。その後、30.5gmの2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸(MEEA)を、反応容器に添加した。溶液は透明のままであり、pHは20℃で2.8であった。高せん断ミキサーを反応容器中に降ろして、ミキサーヘッドを反応容器底部のわずか上に位置付けた。ミキサーは、Silverson Machines,Inc.により製造され、反応物が蠕動チューブポンプを経由してミキサーブレード中に直接に導入可能なように部分的に修正したコロイドミルであった。ミキサーを、5,000rpmに設定して、8.0gmの30%Hを反応容器に添加した。次いで、16mlの28%〜30%NHOHを40mlまで希釈して、ミキサーヘッドを経由して約12秒で反応容器中にポンプで供給した。初め透明な溶液が、橙色/褐色に変色した。反応容器を、温度制御ウォータージャケットのところまで動かし、R−100プロペラを備えるミキサーを使用して、溶液を450rpmで撹拌した。反応器中にNHOHをポンプで注入後3分で、pHは25℃で3.9であった。次の25分にわたり反応容器の温度を70℃まで上げた。その時間にpHは3.9であった。溶液温度を20分間70℃に維持した。その時間の間に、溶液の色は橙褐色から透明暗黄色へ変化した。pHは70℃で3.6であった。次の25分にわたり温度を25℃まで下げた。その時間にpHは25℃で4.2であった。動的光散乱による粒子サイズ分析では、二酸化セリウム強度加重流体力学直径6nmが示された。次いで分散系を、導電率3mS/cmまで透析濾過して、約10倍濃縮し、CeO粒子で名目上1モルまで濃縮した。
【0211】
二酸化セリウム粒子を集め、過剰の溶媒を蒸発させた。重量収率は、MEEAの重量に対して補正して、26%であることが測定された。動的光散乱により測定される二酸化セリウム粒子のサイズ分布(図4にプロットする)は、約6nmの平均強度加重流体力学直径を有する粒子サイズを示した。24回にわたる反復沈殿及びこれらの沈殿に依存しない測定法により、平均強度加重サイズ5.8nm±/−0.4nm(1標準偏差)を得た。従って、反応沈殿スキームは強固である。更に、サイズ分布は実質的に単峰性であり、すなわち唯一つの極大であり、大部分の粒子が5.2nm〜6.4nmの範囲に入る。サイズ分布の特徴55は、破棄すべき人為的な結果である。
【0212】
二酸化セリウム粒子を分析するために透過型電子顕微鏡(TEM)をも使用した。9マイクロリットル溶液(0.26M)をグリッド上で乾燥して、図5に示される像60を形成させて結像させた。暗色の円形画像61が結像された粒子である。粒子は、この乾燥した(dried-down)状態においてさえ、凝集の徴候を示していない。溶液においては、粒子は、凝集体への性向を更に少なく示すと予想される。グラディキュール(gradicule)(61)は、20nmを表す;平均粒子サイズは極めて小さく10nm未満であることが図5から明らかである。これらのような数枚の顕微鏡写真から、粒子を個々に大きさ順に並べ、平均値を計算して、6.7±1.6nmであった。これは、独立して、動的光散乱により測定される粒径計測データを確証する。
【0213】
図6は、乾燥した二酸化セリウムナノ粒子試料のX線粉末回折パターン70を、NIST(米国国立標準技術研究所(National Institute of Standards and Technology))ライブラリーにより提供された二酸化セリウムの対照スペクトル71と一緒に示す。試料スペクトルの線の位置は、標準スペクトルのそれに一致する。2θピーク幅が試料スペクトルにおいて非常に広かったが、これは非常に小さい一次クリスタリットサイズ及び粒子サイズと矛盾しない。X線データ(約8047evのCuKα線)及びシェラーの式:
【数2】

(式中、λはX線波長であり、δは全値全幅であり、及びθはX線ピークに対応する散乱角である)
から、一次クリスタリットサイズは、2.5±0.5nm(5レプリカの95%信頼度)であることが計算される。
【0214】
実施例1a〜f.MEEAの代替安定剤の評価
実施例1aにおいては、等モル量のコハク酸をMEEA安定剤と置き換えたことを除いては、実施例1を繰り返した。容易に沈降した(これは非常に大きい粒子(数十ミクロン)の指標である)褐色沈殿を得た。代替安定剤(マロン酸−実施例1b、グリセロール−実施例1c、アセト酢酸エチル−実施例1d)を置き換えるたびに、同じ実験を繰り返した。それぞれの場合に、容易に沈降する褐色沈殿を得た。これはナノ粒子を得ることができなかったことを示している。実施例1eについては、2倍モル濃度の乳酸を、MEEA安定剤と置き換えた。準非弾性動的光散乱測定による平均流体力学直径粒子サイズは、水酸化物を2倍にしたとき、5.4nmを示し、水酸化物を75%だけ増加したとき、5.7nmを示した。EDTA(これ単独では粒子を生じない)と乳酸との約20%/80%比率での混合物も、流体力学直径6nmを有するCeO粒子を与えた。実施例1fにおいては、最適なEDTA:乳酸の比率1:4を使用し、但しこの安定剤混合物の全濃度を2倍にして、平均粒子サイズ3.3nmまでの減少の結果を得た。3倍レベル(同じ比率)では、粒子は形成されなかった(安定剤が、すべての遊離セリウムイオンと有効に錯体をつくり、水酸化物の形成を妨げた)。従って、安定剤の成分比率及び安定剤の全濃度レベルを調整することによって粒子サイズを制御することが可能である。
【0215】
実施例2.EDTA/乳酸安定剤を用いるCeO沈殿−混合の影響
3リットルの丸底ステンレス鋼反応容器に、蒸留水中76.44gmのEDTA二ナトリウム塩(全重量1000gm)、74.04gmのDL−乳酸(85%)、220gmの蒸留水中240.0gmのCe(NO・6HO及び19.2gmの50%H水溶液を添加した。実施例1におけるように、ミキサー速度を5000rpmに設定して、反応器内容物を温度22℃まで持ってきた。別個に、128.0gmのNHOH(28〜30%)溶液を調製した。この水酸化物量は、セリウム溶液のモル数の2倍に等しいので、最初に核となる沈殿はビス−ヒドロキシル中間体と推定された。或る実験においては、水酸化アンモニウム溶液を、ミキサーブレードと穿孔スクリーンによって規定される反応ゾーンにある反応器中に単一ノズルで噴出させた。別の実験においては、水酸化物を、コロイドミキサーの活発な混合ゾーンから遠い位置にある反応器中のちょうど表面下に単一ノズルを経由して添加した。通常の熱処理と濾過の後、活発な混合ゾーンで生じたCeO粒子の強度加重直径は、6.1nmであり、多分散度0.129であった。第2の方法、すなわち反応ゾーンから遠い位置での水酸化アンモニウムの表面下導入により生じた粒子の直径は、本質的に同じ6.2nmであったが、多分散度はもっと大きく、0.149であった。従って、サイズ頻度分布は、コロイドミルの高せん断領域での混合によって狭めることができる。
【0216】
実施例3.CeO粒子サイズの水酸化物化学量論依存度
この実験の条件は、セリウムイオンが反応器中に存在せずに、水酸化アンモニウム溶液の噴出と同時に、別個に反応ゾーン中にノズルを経由して導入したことを除いては、実施例2の実験条件に従う。水酸化物イオン対セリウムイオンの3つのモル化学量論比、すなわち2:1、3:1及び5:1を検討した。次の表は、準非弾性動的光散乱技術によって得た強度加重粒子サイズ直径及び多分散度を要約する。
【表1】

【0217】
このデータから、最も小さく、最も一様に分布した粒子は、水酸化物対セリウムモル比が2:1であるとき、この二重ノズル手法によって好収率で得ることができることが明らかである。3:1化学量論条件下に、より高収率で得られた粒子のサイズは、実施例1fにおいて実証したように、安定剤レベルの適切な増加によって減少することができる。
【0218】
実施例4.CeO沈殿温度の影響
20℃での低温核形成のあとで70℃で水酸化物の酸化物への変換を行なうか、核形成も変換も両方とも70℃で実施する等温沈殿を行うか、その影響を、実施例2に指定した試薬条件を用いて研究した。好ましい二重ノズル法を使用した(セリウムイオンと水酸化物イオンに対して別個のノズルを用い、両方ともコロイドミキサーの反応性混合ゾーン中に導入する)。水酸化アンモニウム濃度は、128gm、すなわち2倍レベル又はOH:Ceモル化学量論比2:1であった。準非弾性動的光散乱測定により、より低い温度の沈殿で製造した粒子が、強度加重流体力学直径5.8nmを有し、多分散度0.117、及び収率54.6%であったが、一方等温沈殿では、より大きい粒子8.1nmを得、より広く分布し、多分散度0.143、及び同等の収率であったことが明らかになった。従って、より一様な粒子サイズ頻度分布が望ましい場合、より低い温度で核形成を行なった後で、より高い温度で水酸化物の酸化物への変換を実施することが好ましい。
【0219】
実施例5.各種バッチサイズの酸化セリウム含有添加剤配合物の製造
207ml、1.5リットル、及び9.5リットルの容積を有する配合物を、次の表に要約した手順により製造した:
【表2】

【0220】
粒子サイズを、上記のように製造した大きい(9.5リットル)バッチの19について測定した。平均粒子流体力学直径は、5.8nmであり、標準偏差0.40であった。207ml及び1.5リットルのバッチについて測定される平均粒子サイズは、一般に、5.2〜6.4nmの範囲に入り、十分に+/−2標準偏差5.8nm以内にあった(95%信頼水準)。従って、小さい方の2つのバッチからの粒子は、大きいバッチのものと本質的に同じサイズであると結論することが合理的である。
【0221】
実施例6.燃料濃縮物の製造
実施例1に記載するようにして製造した二酸化セリウム分散系の一部を、D2ディーゼル燃料、界面活性剤Aerosol AOT、及び1−ヘキサノールコサーファクタントの混合物にゆっくり添加して、燃料濃縮物として使用できる透明な赤味がかった褐色の溶液を得た。濃縮物は、容量で14%の二酸化セリウム分散系である;残りの容量は、1.72%1−ヘキサノールコサーファクタント、18.92%界面活性剤Aerosol AOT、及び65.36%ディーゼルD2希釈剤である。
【0222】
実施例7.燃料添加剤を含有する添加剤化(additivized)ディーゼル燃料の製造
実施例6で製造した燃料濃縮物の一部を、容量で600部のディーゼル燃料に対して1部の割合で希釈した。従って、最終添加剤化D2燃料は、濃度42ppm(重量で)のCeO及び258ppmの水及び361ppmのAerosol AOTを有する。
【0223】
実施例8.添加剤化ディーゼル燃料の評価
添加剤化ディーゼル燃料を、周波数60Hz及び力率cosφ=1.0、定格5KVA(AC出力)で作動する要素電源システム(Element Power Systems)モデル#HDY5000LXBディーゼル発電機において評価した。ディーゼルエンジンは、定格最大出力10HPを有するモデル#DH186FGED強制空冷4行程のものである。排気の一部を、ダウンストリームインライン真空ポンプの作用によって多孔質濾過材を通して引き出す。ディーゼル粒子状物質を150秒間濾過材の上に集め、この時間の後、そのグレースケール百分率を測定する(アドビフォトショップ(Adobe Photo shop))。グレースケール百分率は、集めた煤煙量の目安と考えられる。グレースケールレベルは、濾過材の上に存在している煤煙量が増加するほど増加する。
【0224】
ディーゼルエンジンを、標準D2(低硫黄500ppm)燃料を用いて、平衡化するために1時間にわたって動かした。この時間の終り頃に、ディーゼル粒子状物質を、150秒間濾過材の上に集めた。フィルターのグレースケール百分率は、存在している粒子状材料の量と相関するが、70%と測定された。これは、これらの作動条件及び採集時間に典型的な数字である。エンジンを止めて、燃料タンクのレギュラーD2を空にし、次いで添加剤化ディーゼル燃料を用いて部分的に満たし空にすることを2回行なった。次いでタンクを、添加剤化ディーゼル燃料で3分の2のレベルまで満たした。次いでエンジンを、添加剤化D2燃料で1時間にわたり動かして、新しい燃料に対して平衡化した。発電機のエネルギー出力の3%の増加を測定した(1.2KW負荷抵抗を通る電流×電圧)。エンジンを止めて、添加剤化燃料を燃料タンクから空にして、タンクを、標準ディーゼル燃料で2回すすぎ洗いし、次いで標準ディーゼル燃料を3分の2のマークまで満たした。次いで、任意の残留添加剤化燃料をラインとフィルターからパージするためにエンジンを20分間動かした。出力測定により、エンジンが、通常の作動条件に戻ったことが示された。すなわちエンジンを添加剤化燃料で動かしたときに得られる出力の3%増加は、もはや観察されず、システム中に残留添加剤化燃料は存在しないことが示された。前に記載したように、ディーゼル粒子を150秒間集めて、グレースケール百分率は、40%と測定された。これは、燃料がもはや添加剤を含有しないにもかかわらず、試験フィルターのグレースケール変化により測定されるディーゼル粒子状物質の43%低減を表す。
【0225】
この実施例は、エンジンの内部機構部分が、約1時間の時間スケールで、ナノ粒子状CeOによって調整済みとなったことを示す。調整は、エンジンの壁及びピストン中にCeOを組み込むことに関係する。CeOは、次の反応:
【化19】

に従い酸素を提供することによって炭素燃焼に役立っている。燃焼の改良は、試験フィルターのグレースケール減少に反映されるように、結果的に粒子状物質の低減をもたらす。
【0226】
実施例9.逆ミセル形成による二酸化セリウム含有燃料添加剤の製造
D2ディーゼル燃料(2320mL)及びコサーファクタント1−ペンタノール(200mL)を、6リットルの三角フラスコに入れた。次いで、界面活性剤AOT(800g)を、添加前に砕いて小片にして、磁気撹拌しながらフラスコに40gmずつ添加した。AOTの添加に続いて、得られた透明な溶液を1時間放置しておいた。この時間の間に、マイクロエマルションが形成するにつれて、溶液は、明るい琥珀色から橙色に変化した。
【0227】
525mLのCeO水溶液(1.5MのMEEAで安定化した名目上1.0MのCeO)を含有する500mLの分注器を、フラスコの上に取り付けた。この溶液の最初の400mLを、撹拌しながらゆっくりと一定の流れとして添加した。CeO水溶液を添加するにつれて、粘液様雲状物が渦巻きを取り囲んだ。100mL毎に添加を止めて、溶液を放置して透明にした。最初、溶液は、100mLずつ添加する間に透明になるのに約1分を要したが、200mLを添加し終わった後は、溶液は、より速やかに透明になった。最後の125mLについてはより遅い添加速度を用い、添加を50mL毎に止めて、溶液を放置して透明にした。90分の時間にわたるCeO水溶液の添加で、濃い橙褐色溶液を得、12時間放置して平衡化して、その時間の間に、色は橙褐色から緑がかった褐色に変化した。
【0228】
上記の手順を用いて、D2ディーゼル燃料中約19700ppmのCeOを含有し、水対界面活性剤(AOT)モル比16.2及び水性体積分率14%を有する、1.00ガロン(3.785L)のマイクロエマルションを製造した。D2ディーゼル燃料(密度0.85g/mL)にこのマイクロエマルションを1:600で添加することにより、32.8ppmの二酸化セリウム(最初の0.0945Ce(NO溶液から製造したCeOの10倍濃縮物の収率70%に基づく)を有し、30ppmの硫黄及び265ppmの水を有する燃料を得る。
【0229】
実施例10.試験データ:Griffith Energy路上試験
超低硫黄ディーゼル(ultra low sulfur diesel)中に懸濁した220ppmの過酸化水素及び220ppmの水を含有する逆ミセルを含む「セタン価向上」配合物を、対照及び試験の両方の12リットルディーゼル、クラス8トラクターを用いて、2006年10月18日から11月17日までGriffith Energyで試験を行なった。各週1回、mpg(マイル/ガロン)データを、ボルボトラック内蔵コンピューター(「Trip Manager」)からダウンロードして、mpg変動の80%を説明する線形回帰モデルに適合させた。データを下の表に示す。21日目及び35日目の最大の向上は、この配合物の真の潜在能力を過小評価するものである。何故なら、週の真中(20日目)に処置を開始したこと又はフィルター目詰まりに遭遇したこと(28日目)のいずれかのせいで、無処置日が、週1回の結果に平均化されたからである。目詰まりした燃料フェイルターの化学分析により、主に煤煙粒子であることが明らかになった。このことから、燃料循環システムを含めて、配合物によりエンジン部品のすべてがきれいにされることを結論することができる。49日目のデータは収集されなかったが、処置されたトラックは「汚れた」状態になってきており(通常運転)、49日目若しくはそれ以後のデータは、このトラックが4.74mpgのベースラインに戻ったことを示したことであろうということが考えられる。mpgベースライン補正値1.72%に基づき、セタン価向上配合物は、mpg向上9.44%の最大効果を実証した(35日目)。
【表3】

【0230】
実施例11.静的エンジン試験データ
試験データ:環境エネルギー技術(EET)静的エンジン試験−
EETディーゼル発電機仕様は次の通りである:
発電機: 要素電源システム モデル#HDY5000LXB
周波数 60Hz
力率 cosφ=1.0
定格AC出力 5KVA

エンジン: モデル#DH186FGED
型 強制空冷4行程
最大出力 10HP
燃料 ディーゼル軽質燃料
(BS−AI)
燃料消費率 210〜286g/kW
油温度 <95℃
排気温度 <480℃
【0231】
ディーゼル発電機のタンクを、空にして古い燃料を2回フラッシングして、そのあと新しいD2ディーゼル燃料を補給した。それぞれの日の試験の始めに、約10〜20分のウォームアップ時間で30%負荷で動かして(これがエンジン燃料からの古い燃料の排液を可能にする)、エンジンを定常状態まで持って行った。ウォームアップに続いて、1試料当たり持続時間150秒間濾紙を通して一定の流量で排気を引き出すことによって、所与の負荷について試験を行なった。ディーゼル粒子状物質(煤煙)及び燃料配合物の効果の評価は、煤煙を同伴した濾紙の光反射率を測定することによって行なった。燃料変更の間、エンジンに約5分間を与えて、定常状態作動条件に到達させた。燃料添加剤を必要とする試験については、エンジンを止めて、空にして、燃料添加剤エマルションを含有する予混合した燃料を用いて2回フラッシングした。
【0232】
次の表にあるデータは、1500ppmの水で、ディーゼル発電機出力が1080wから320wまで落ちること、5℃の落下に対して70%減少することを示している。これは、ディーゼル粒子状物質の16%低減を伴うが、明らかに汚染取引に対しては非常に弱い力である。
【0233】
その後の試験では、300ppmほどもの水が、ディーゼル粒子状物質を13%だけ低減しながら、出力に対してはたとえあるとしても非常に小さい効果を有することが明らかになった。最終的には、極めて実質的な水の濃度960ppmにより、配合物が540ppmの過酸化水素を含有したとき、小さい5%の出力損失だけで、28%ものディーゼル粒子状物質を低減することができる。従って、燃焼温度/効率を低下する水の影響と過酸化水素などの遊離基開始剤の存在による煤煙産生とのバランスをとることによって、同時に高いエンジン性能を維持することとDPM(diesel particulate matter;ディーゼル粒子状物質)の低下を達成することが可能であり、その結果、汚染取引に対する力を回避することが可能である。
【表4】

【0234】
実施例12.安定な非硫黄含有遊離基逆ミセル組成物の配合物
130mlの1−ヘキサノール溶液を、440mlの超低硫黄ディーゼルに、低せん断混合で添加する。次いで、310mlのTriton N−57を、ディーゼルアルコール混合物に添加する。1時間の熟成時間が許される。最後に、120mlの50%過酸化水素/水溶液を、15分間にわたり一定の流量で、この時間の間中、十分に一様な容積測定混合(volumetric mixing)を考慮に入れて、上の混合物に添加する。12時間の平衡化時間の後、マイクロエマルションは、5nm〜9nmの範囲にあると測定される(光散乱による)粒子を特徴とする状態に達した。500につき1部希釈されるこの濃縮物は、120ppmのH及び120ppmの水の最終濃度を与えるであろう。
【0235】
実施例13.安定化した過酸化水素を用いる逆ミセル遊離基開始剤の製造
次の配合により、1.0Lに対して12.7v%の50w%過酸化水素水溶液が、Triton N57/1−ヘキサノール/ディーゼルマイクロエマルション中において安定化する。この配合物は、超低硫黄ディーゼル中に1/500希釈されるとき、150ppm(mg/L)のH活性成分と150ppm(mg/L)の水を含有するであろう。
【0236】
1.5リットル容器中の435mLの超低硫黄ディーゼル燃料に、十分に容積測定撹拌をしながら、113mLの1−ヘキサノールを添加して、均一な混合物を形成させる。次いで、325mLの非イオン性界面活性剤Triton N57を、十分撹拌しながら添加する。3成分混合物の安定化が可能になる1時間後に、127mLの50wt%過酸化水素水溶液を、ゆっくり15分間にわたり添加する。過酸化水素水溶液は、スズ酸塩及び金属キレート化剤、例えばホスホン酸塩及び/又はエチドロン酸を用いて、前もって遊離金属による触媒分解に対して安定化されていた。
【0237】
最終エマルションが熱力学的平衡に達するのに、12時間の時間が与えられる。ULSDを用いて1:250部及び1:500部の両方に希釈したこのマイクロエマルションの試料は、5℃まで下げても明らかな化学分解を伴わずに安定であり、そして100℃でも明らかな酸化を伴わずに2.5時間安定である(UV/可視分光法により測定)。
【0238】
実施例14.t−ブチルヒドロペルオキシド及び70%中和されたオレイン酸を含有する逆ミセル遊離基開始剤組成物
次の配合により、1.0Lに対して30v%t−HYDRO溶液(第三級ブチルヒドロペルオキシド)が、オレイン酸/エタノールアミン/1−ヘキサノール/ディーゼルマイクロエマルション中において安定化する。この配合物は、超低硫黄ディーゼル中1/500で希釈されるとき、390.6ppm(mg/L)の活性成分(t−ブチルヒドロペルオキシド)を含有するであろう。
【0239】
1.5リットル容器中の418.0mLの超低硫黄ディーゼル燃料に、十分に容積測定撹拌をしながら、35.0mLの1−ヘキサノールを添加して、均一な混合物を形成させる。次いで、十分に撹拌しながら、220.0mLの工業用オレイン酸を添加し、そのあと27mLのエタノールアミンを添加する。4成分混合物の安定化が可能になる1時間後に、300.0mLのt−HYDRO(70v%t−ブチルヒドロペルオキシド/水)を、好ましくは25℃より上の温度で、25分間の時間にわたりゆっくり添加する。
【0240】
最終エマルションが熱力学的平衡に達するのに、12時間の時間が与えられる。ULSDを用いて1:250部に希釈したこのマイクロエマルションの試料は、5℃まで下げても明らかな化学分解を伴わずに安定であり、そして125℃でも明らかな酸化を伴わずに2.5時間安定である(UV/可視分光法により測定)。
【0241】
実施例15.二酸化セリウム粒子を含む燃料を用いる潤滑性の向上
潤滑性は、それぞれの燃料添加剤を含有する燃料でコーティングされたプレート上にラビングしたボールベアリング上の磨耗を測定することによって判断した。磨耗は、ラビングにより与えられた平均的な傷跡の深さ(mm)によって測定した。添加剤なしのニート燃料は、0.35mmの傷跡を与えた。市販用添加剤、Plutinum PlusTM;10nmの粒子を含む比較の燃料添加剤;及び5nm粒子を含む本発明の燃料添加剤を有する燃料についての試験結果は、それぞれ0.32、0.31、及び0.245mmであった。低い磨耗数は、より大きい潤滑性と相関する。従って、本発明の小さい粒子は、潤滑性において30%の向上を与える。
【0242】
本発明を、様々な特定の実施態様への言及により記載してきたが、一方記載した発明概念の精神及び範囲内で多数の変更をなし得ることは理解すべきである。従って、本発明は、記載されている実施態様に限定されることなく、以下の請求の範囲の言語により定義される全範囲を所有するであろうことを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディーゼル燃料源を備えるディーゼルエンジンの効率を向上する方法において、前記方法が、
(a)(i)遊離基開始剤を含む水性の第1の分散相と、
(ii)第1の炭化水素液体と第1の界面活性剤と場合によりコサーファクタントとを含む第1の連続相と
を含む逆ミセル組成物を、前記ディーゼル燃料に添加し、それによって改質ディーゼル燃料を生成する工程と、
(b)前記エンジンを操作し、それによって前記改質ディーゼル燃料を燃焼する工程と
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記ディーゼル燃料が、D2ディーゼル、低硫黄ディーゼル、超低硫黄ディーゼル、及びバイオディーゼルからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記遊離基開始剤が、安定化した過酸化水素、t−ブチルヒドロペルオキシド、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の炭化水素液体が、炭素原子約6個から約20個を含有する炭化水素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の炭化水素液体が、トルエン、オクタン、デカン、D2ディーゼル燃料、低硫黄ディーゼル、超低硫黄ディーゼル、バイオディーゼル、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の界面活性剤及び前記コサーファクタントが、元素C、H、及びOのみを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記改質ディーゼル燃料が、約500nm未満の水を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ディーゼルエンジンの効率を向上する方法において、
前記エンジンがディーゼル燃料源及び潤滑油源を備え、前記方法が、
(a)(i)遊離基開始剤を含む水性の第1の分散相と、
(ii)第1の炭化水素液体と第1の界面活性剤と場合によりコサーファクタントとを含む第1の連続相と
を含む逆ミセル組成物を、前記ディーゼル燃料に添加し、それによって改質ディーゼル燃料を生成する工程と、
(b)二酸化セリウムの安定化ナノ粒子組成物を潤滑油に添加し、それによって改質潤滑油を生成する工程と、
(c)前記エンジンを操作し、それによって前記エンジン中において前記改質ディーゼル燃料を燃焼し、前記改質潤滑油を使用して前記エンジンを滑らかにする工程と
を含む、前記方法。
【請求項9】
前記遊離基開始剤が、安定化した過酸化水素、t−ブチルヒドロペルオキシド、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記安定化ナノ粒子組成物が、約1nm〜約15nmの平均流体力学直径を有する二酸化セリウムナノ粒子を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記安定化ナノ粒子組成物が、約6nmの平均流体力学直径を有する二酸化セリウムナノ粒子を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の界面活性剤及び前記コサーファクタントが、元素C、H、及びOのみを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記逆ミセル組成物が、コサーファクタントとしてアルコールを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記改質ディーゼル燃料が、約500nm未満の水を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記逆ミセル組成物が、水性の第2の分散相を更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
ディーゼル燃料源を備えるディーゼルエンジンの効率を向上する方法において、前記方法が、
(a)(i)ホウ酸又はホウ酸塩を含む水性の第1の分散相と、
(ii)第1の炭化水素液体と第1の界面活性剤と場合によりコサーファクタントとを含む第1の連続相と
を含む第1逆ミセル組成物を、前記ディーゼル燃料に添加する工程と、
(b)前記エンジンを操作する工程と
を含む、前記方法。
【請求項17】
前記ディーゼル燃料が、D2ディーゼル、低硫黄ディーゼル、超低硫黄ディーゼル、及びバイオディーゼルからなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の炭化水素液体が、炭素原子約6個から約20個を含有する炭化水素を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の炭化水素液体が、トルエン、オクタン、デカン、D2ディーゼル燃料、低硫黄ディーゼル、超低硫黄ディーゼル、バイオディーゼル、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項18に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−502821(P2010−502821A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−527514(P2009−527514)
【出願日】平成19年9月4日(2007.9.4)
【国際出願番号】PCT/US2007/077543
【国際公開番号】WO2008/030813
【国際公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(509064635)セリオン テクノロジー, インコーポレーテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】CERION TECHNOLOGY, INC.
【Fターム(参考)】