説明

内燃機関

【課題】内燃機関において、所定の成分がオイルパンに至る前に所定の成分をオイル中から除去する。
【解決手段】本発明に係る内燃機関10は、シリンダヘッド14からオイルパン18へ向けてオイルを戻すためのオイル戻し通路26に設けられた所定の成分を吸着する機能を有する反応体を有する機能部材34と、オイル戻し通路26へのオイルの流入を調整するように機能部材34よりも上流側に設けられた流量調整弁38と、シリンダヘッドカバー16に設けられた温度検出手段44と、該温度検出手段44を用いて検出された温度に応じて流量調整弁38を制御する流量調整弁制御手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等に用いることができる内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、内燃機関の潤滑システム内で使用する化学フィルターを開示する。特許文献1の記載によれば、この化学フィルターは、内燃機関潤滑システム内のオイルフィルターのハウジング内に使用されるか、またはそのオイルフィルターのバイパス部分に使用され、イオン交換材料を有することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2008−540123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、内燃機関のヘッドカバー内にはブローバイガスが存在し得、特にヘッドカバーの温度が低いとき、ヘッドカバー内では凝縮水が生じ易い。それ故、ヘッドカバー内では、ブローバイガス中のNOxおよびSOxと、そのような凝縮水とにより、酸性成分が生じ易い。このような酸性成分はオイルの劣化を促し得るので、このような成分がオイルパンに流れ得る前に、そのような成分を除去することが望まれる。しかし、特許文献1では、このような点が考慮されておらず、また、オイルパンに至る前にそのような成分を除去することは不可能である。
【0005】
そこで、本発明はかかる点に鑑みて創案されたものであり、その目的は、オイルパンに至る前にそのような成分をより好適に除去することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、シリンダヘッドからオイルパンへ向けてオイルを戻すためのオイル戻し通路に設けられた所定の成分を吸着する機能を有する反応体と、前記オイル戻し通路へのオイルの流入を調整するように反応体よりも上流側に設けられた流量調整弁と、ヘッドカバーまたはシリンダヘッドに設けられた温度検出手段と、該温度検出手段を用いて検出された温度に応じて流量調整弁を制御する流量調整弁制御手段とを備えた、内燃機関を提供する。当該構成を備える本発明によれば、オイルパンに至る前に所定の成分を好適に除去することが可能になる。
【0007】
なお、反応体は、オイル中に混入した所定のイオン成分を吸着するように設けられているとよい。
【0008】
反応体を迂回するように反応体上流側の前記オイル戻し通路の所定部位につなげられた迂回路と、該迂回路に設けられた迂回弁と、オイルパン内のオイルの量を検出するためのオイル量検出手段と、該オイル量検出手段を用いて検出されたオイル量に応じて迂回弁を制御する迂回弁制御手段であって、オイルパン内のオイル量が所定値未満のとき迂回弁を開くように制御する迂回弁制御手段とがさらに備えられるとよい。これにより、オイルパン内のオイルレベルを所定レベルに導くことができる。
【0009】
迂廻路は、流量調整弁下流側かつ反応体上流側のオイル戻し通路の部位と、オイルパン内との間に延びるとよい。これにより、反応体の上方にオイルが溜まっているとき、そのオイルをオイルパンに適切に流すことができる。
【0010】
迂回弁制御手段によって迂回弁が開くように制御された後、オイル量検出手段を用いて検出されるオイル量が所定値以上になったとき、反応体に異常があると判定する異常判定手段がさらに備えられるとよい。これにより、反応体に異常があるか否かを適切に判定することができる。
【0011】
迂回弁制御手段によって迂回弁が開くように制御された後、オイル量検出手段を用いて検出されるオイル量が所定値以上にならないとき、オイル不足と判定するオイル不足判定手段がさらに備えられるとよい。これにより、オイル不足か否かを適切に判定することができる。
【0012】
なお、上記所定値は、内燃機関の潤滑に必要なオイル量を基準として設定されているとよい。これにより、このような所定値に基づいて、オイルパン内のオイルレベルを適正レベルに導くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る内燃機関の概念図である。
【図2】図1の内燃機関の流量調整弁の作動制御を説明するための図である。
【図3】図1の内燃機関の迂回弁に関する作動制御を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
図1に本発明の実施形態に係る内燃機関(以下、エンジン)10が概念的に示されている。ただし、本実施形態でのエンジン10は、直列4気筒形式のエンジンであるが、本発明が適用されるエンジンは、その気筒数や気筒配列形式ばかりか、火花点火式機関であるか圧縮着火式機関であるかさえも問わない。
【0016】
エンジン10はクランクケースを一体的に備えたシリンダブロック12と、シリンダヘッド14と、シリンダヘッド14を上方から覆うヘッドカバー16と、オイルパン18とを備える。吸気通路20のスロットルバルブ22を介して取り込まれた空気と燃料噴射弁から噴射された燃料との混合気は燃焼室で燃焼され、排気ガスは排気通路24を介して排出される。
【0017】
シリンダブロック12とシリンダヘッド14には、ヘッドカバー16内またはシリンダヘッド14内とクランクケース内つまりオイルパン18内とを連通するようにオイル戻し通路(オイル落とし通路)26、28が形成されている(設けられている)。なお、オイル戻し通路の数は2つに限定されず、3つ以上であってもよい。オイル戻し通路26、28は、動弁系の潤滑を終えたオイルをシリンダヘッド14からオイルパン18内へ向けて戻す(落とす)ための通路であると同時に、クランクケース内のブローバイガスをヘッドカバー16内に向けて上昇移動させるための通路である。
【0018】
ここで、ブローバイガスとは、ピストンのピストンリングと、シリンダブロック12のシリンダボアとの隙間からクランクケース内へ漏れ出るガスのことである。このブローバイガスは多量の炭化水素や水分を含む。このため、ブローバイガスがあまりに多いとそれはエンジンオイルの早期劣化やエンジン内部の錆の原因になる。また、ブローバイガスには炭化水素が含まれているため、それをこのまま大気に解放することは環境上好ましくない。そのため、エンジン10は、図示しないブローバイガス環流装置を備えている。ブローバイガスは、ヘッドカバー16内に導入された後、吸気負圧を利用して後述の経路を通じて強制的に吸気系統へ戻され、燃焼室に供給される。
【0019】
ブローバイガス環流装置は、図示しないが、スロットルバルブ22の下流側の吸気通路と、ヘッドカバー16内とをつなぐPCV通路を備えている。ここでPCVとはPositive Crankcase Ventilationの略称である。また、スロットルバルブ22の上流側の吸気通路と、ヘッドカバー16内とは大気通路によって連通されている。PCV通路にはこれを開閉するPCVバルブが設けられる。PCVバルブは吸気負圧の大きさに応じて開閉し、流量を変えるものであり、ここではヘッドカバー16に固設されている。
【0020】
ところで、そのようなブローバイガス中にはNOx、SOxおよび水分が含まれている。そして、ヘッドカバー16がエンジンからの熱を伝達されづらくかつその外面が外気に晒されて冷却風等によって冷却されるので、ヘッドカバー16の内面には結露等による凝縮水が生じやすい。よって、ヘッドカバー16内には、それらの反応により、酸性物質、例えば硝酸、硫酸ができやすい。これら酸性物質は、潤滑油つまりエンジンオイルに混ざり得、エンジン内部におけるスラッジの発生、付着、堆積を促し得る。
【0021】
そこで、エンジンオイルからそのような酸性物質つまり酸性成分を除去するべく、エンジン10の潤滑装置30は不要成分除去装置32を有する。なお、潤滑装置30は、上記オイル戻し通路26、28やオイルパン18を含む。潤滑装置30は、図1においてはその一部のみ表されている。潤滑装置30はストレーナおよびオイルポンプを備え、オイルパン18内のオイルはストレーナを通じてオイルポンプによって汲み上げられる(吸引される)。こうして汲み上げたオイルはオイルフィルターを介して、エンジン10内に形成された油路(各供給部位に対応した複数の油路を含む。)を通じて、エンジン10内の各部、例えばカムシャフトジャーナル、クランクジャーナル、コンロッド、ピストンに供給される。そして、こうして各部に供給された潤滑油つまりオイルは自らの自重により最終的にはオイルパン18に戻る。
【0022】
このような潤滑装置30における上記不要成分除去装置32は、上記オイル戻し通路26に設けられた機能部材34を有する。機能部材34は、反応体としてイオン交換樹脂を備えている。機能部材34のイオン交換樹脂は、所定のイオン(イオン成分)を吸着する機能を有する。換言すると、所定のイオンをエンジンオイルから除去するべく、そのような所定のイオンを吸着する機能を機能部材34のイオン交換樹脂は有する。なお、イオン交換樹脂は、オイル中の所定のイオンを吸着し、その代わりに、別のイオンを放出する機能を有する。ここでは、イオン交換樹脂としてアニオン性イオン交換樹脂が用いられ、機能部材34のイオン交換樹脂はこれからなる。なお、イオン交換樹脂としては、例えば、三菱化学社製ダイヤイオン(登録商標)シリーズのイオン交換樹脂、ローム・アンド・ハース社製アンバーライト(登録商標)シリーズのイオン交換樹脂がある。
【0023】
ここでは、具体的に、ブローバイガス中のNOxと水とにより生じ得る硝酸イオン(NO3-)、ブローバイガス中のSOxと水とにより生じ得る硫酸イオン(SO42-)をオイル中から除去するべく、硝酸イオンや硫酸イオンを吸着する機能を有するアニオン性イオン交換樹脂が用いられる。このようなアニオン性イオン交換樹脂は、それら陰イオンを吸着し、その代わりに、例えば水酸化物イオンを放出する機能を有する。
【0024】
このようなイオン交換樹脂は、ビーズ状(球状)または膜状の種々の形状を有し得る。本実施形態では、イオン交換樹脂は、パンチングメッシュタイプのケースに入れられていて、機能部材34はそのケースと、そこに入れられたイオン交換樹脂とからなる。なお、機能部材34は別の同種の機能部材に交換可能であるので、不要成分除去装置32は、図示しない交換システムを有する。
【0025】
このような機能部材34は、オイル戻し通路26の途中に形成された処理室36に設けられている。処理室36は、機能部材34よりも上部にオイルを所定量収容可能な空間36sを有するように形成されている。そして、オイル戻し通路26へのオイルの流入を調整するように流量調整弁38が機能部材34よりも上流側に設けられている。ここでは、機能部材34よりも上流側のオイル戻し通路26の所定位置に、流量調整弁38が設けられている。流量調整弁38が開いているとき、オイルは、オイル戻し通路26に流れ込み、処理室36の機能部材34を通過して、オイルパン18に流れることができる。オイルが機能部材34を通過する過程で、機能部材34のイオン交換樹脂における反応により、オイル中の所定成分の吸着除去が生じ得る。つまり、機能部材34、特にそのイオン交換樹脂は、オイルフィルターとしての機能を有する。なお、流量調整弁38が閉じているとき、オイルは他のオイル戻し通路28を介してオイルパン18に戻ることができる。
【0026】
さらに、機能部材34を迂回するように、迂廻路40が形成されている。迂廻路40は、機能部材34上流側のオイル戻し通路26の所定部位につなげられていて、具体的には流量調整弁38下流側かつ機能部材34上流側のオイル戻し通路26の中間部位26mと、オイルパン18内との間に延びている。ここでは、より具体的に、迂廻路40の上流側端部40aは中間部位26mに連通し、その下流側端部40bはオイルパン18内に連通している。なお、ここでは中間部位26mは機能部材34に近接する。迂廻路40には、ここでは特にその上流側端部40aには、迂回弁42が設けられている。ここでは、迂廻路40は、迂回弁42の状態にかかわらず、処理室36から溢れたオイルを逃がすように処理室36頂面に連通する延出部40eを含む。なお、この迂廻路40は、ここでは、後述するように、オイルパン18内のオイルレベルの変動原因を調べるために用いられる。
【0027】
そして、エンジン10は、制御装置としてのECU(図1には示されず)を備える。ECUは、CPU、ROM、RAM、A/D変換器、入力インタフェース、出力インタフェース等を含むマイクロコンピュータで構成されている。入力インタフェースには、エンジン回転速度を検出するためのエンジン回転速度センサ、エンジン負荷を検出するためのエンジン負荷センサ、内燃機関10のうちの特にシリンダヘッドカバー16の温度を検出するための温度センサ44、オイルパン18内のオイルの量を検出するためのオイル量センサ46等を含む各種センサ類が電気的に接続されている。これら各種センサ類からの出力信号(検出信号)に基づき、予め設定されたプログラムにしたがって円滑なエンジン10の運転ないし作動がなされるように、ECUは出力インタフェースから電気的に燃料噴射弁、スロットルバルブ22用のアクチュエータ、流量調整弁38用のアクチュエータ、迂回弁42用のアクチュエータ等に作動信号(駆動信号)を出力する。
【0028】
このようなECUの一部は流量調整弁制御手段として機能する。また、ECUの一部は、迂回弁制御手段として機能する。また、温度検出手段としての上記温度センサ44とECUの一部とは内燃機関、特にここではシリンダヘッドカバーの温度を検出する温度検出装置を実質的に構成する。また、オイル量検出手段としての上記オイル量センサ46とECUの一部とはオイルパン18内のオイルの量を検出するオイル量検出装置を実質的に構成する。さらに、ECUの一部は機能部材34のイオン交換樹脂、つまり反応体に異常があるか否かを判定する異常判定手段として機能する。また、ECUの一部は、オイル不足であるか否かを判定するオイル不足判定手段として機能する。
【0029】
次に、上記流量調整弁38の作動制御に関して図2に基づいて説明する。なお、図2のフローは、エンジン10が起動された後、繰り返される。
【0030】
まず、ヘッドカバー16の温度が検出される(ステップS201)。ヘッドカバー16の温度は、ヘッドカバー16内の壁面温度であるとよく、該壁面温度を検出するように温度センサ44は設けられている。温度センサ44からの出力信号に基づいてヘッドカバー16の温度が検出される。
【0031】
そして、この検出されたヘッドカバー16の温度が所定温度域の温度か否かが判定される(ステップS203)。所定温度域は、下限温度Aよりも高く、上限温度Bよりも低い温度域であり、予め実験により定められている。所定温度域は、内燃機関内、特にヘッドカバー16内で上記したように凝縮水が発生する可能性が高い温度領域として定められている。加えて、下限温度Aは、機能部材34のイオン交換樹脂で所定成分をより適切に除去するように、イオン交換樹脂の活性温度に基づいて定められている。また、上限温度Bは、機能部材34のイオン交換樹脂に熱による劣化を生じさせないように定められている。例えば、下限温度Aは40℃に設定され、上限温度Bは90℃に設定される。ただし、所定温度域は、これ以外の温度域とされることもできる。なお、ヘッドカバー16の壁面温度はオイルの温度よりも概して低いので、この関係を考慮して、それら温度は設定されている。
【0032】
ヘッドカバー16の温度が所定温度域にないと判定されると(ステップS203で否定判定)、流量調整弁38が閉弁するようにそのアクチュエータの作動は制御される(ステップS205)。ただし、流量調整弁38は、初期状態では、閉弁状態にある。
【0033】
他方、ヘッドカバー16の温度が所定温度域にあると判定されるとき(ステップS203で肯定判定)、凝縮水が発生する可能性が高いため、流量調整弁38が開弁するようにそのアクチュエータの作動は制御される(ステップS207)。流量調整弁38が開かれることで、オイルがオイル戻し通路26に流れて、機能部材34に至り、その機能部材34でそのオイルの浄化が図られる。
【0034】
このように、オイル戻し通路26に設けた機能部材34に適宜の時期にオイルを通過させることで、オイルからの所定成分の除去が図られる。この所定成分の除去はオイル戻し通路26をオイルが流れる過程で、つまりオイルがオイルパン18に戻る前に行われ得るので、ヘッドカバー16内またはシリンダヘッド14内で生じた上記酸性成分がオイルパン18内のオイルに混ざることを適切に抑制できる。したがって、より適切に、オイルの劣化を抑制できる。
【0035】
しかし、機能部材34に対するオイルの通過し易さは、時間が経過するにつれて、変化し得る。機能部材34をオイルが通過し難くなった場合にも、オイルの適切な流通を保障するように、上記の如く、迂廻路40が形成されている。ここで迂廻路40に設けられた迂回弁42に関する作動制御について、図3に基づいて説明する。なお、図3のフローは所定タイミングで実行される。例えば、エンジン始動後、所定時間経過したときに実行される。
【0036】
まず、オイルパン18内のオイルの量が検出される(ステップS301)。オイルの量は、オイル量センサ46からの出力信号に基づいて検出される。
【0037】
そして、この検出されたオイルの量が所定値未満か否かが判定される(ステップS303)。所定値は、エンジン10の潤滑に必要なオイル量を基準として、予め実験に基づいて設定されている。
【0038】
オイルの量が所定値未満でないとき(ステップS303で否定判定)、迂回弁42が閉弁するようにそのアクチュエータの作動は制御される(ステップS305)。ただし、迂回弁42は、初期状態では、閉弁状態にある。
【0039】
他方、オイルの量が所定値未満のとき(ステップS303で肯定判定)、迂回弁42が開弁するようにそのアクチュエータの作動は制御される(ステップS307)。そして、この迂回弁42の開弁制御から所定時間経過したか否かが判定される(ステップS309)。所定時間は、迂回弁42の開弁後、該所定時間が経過することで、オイルパン18内のオイルの量に変化が生じ得る、時間として予め実験により定められている。なお、時間計測を行うために上記ECUはタイマ手段(時間計測手段)を備える。
【0040】
迂回弁42の開弁制御から所定時間経過したとき(ステップS309で肯定判定)、オイルの量が検出される(ステップS311)。オイルの量は、オイル量センサ46からの出力信号に基づいて検出される。
【0041】
そして、この検出されたオイルの量が所定値以上か否かが判定される(ステップS313)。この所定値は、上記所定値(ステップS303)と同じ値であり、エンジン10の潤滑に必要なオイル量を基準として予め実験に基づいて設定されている。なお、ステップS303での所定値と、ステップS313での所定値とは異なってもよい。
【0042】
オイルの量が所定値以上のとき(ステップS313で肯定判定)、目詰まり警告ランプがON状態にされる。目詰まり警告ランプは図示しないが運転席のフロントパネルに設けられている。目詰まり警告ランプをON状態にするということは、ECUが機能部材34つまりそこに備えられたイオン交換樹脂に異常があると判定して、それを運転者に知らせることを意味する。これにより、運転者は機能部材34の交換を適切に実行することが可能になる。なお、その警告ランプは目詰まり警告ランプと称するが、イオン交換樹脂および機能部材34の異常は目詰まり以外の異常も含み得る。
【0043】
迂回弁42の開弁後、それまで所定値未満であったオイル量がその所定値以上になるということは、迂回弁42の開弁時点で、機能部材34は、そこをオイルが通過し難い状態になっていて、機能部材34上にオイルが溜まっていたことを意味する。したがって、この場合には、上記したように目詰まり警告ランプをON状態にする共に、迂廻路40が開通状態に維持される。なお、この迂廻路40の迂回弁42は機能部材34が交換されることで閉じられて、初期状態にされる。
【0044】
他方、オイルの量が所定値以上でないとき(ステップS313で否定判定)、オイル不足警告ランプがON状態にされる。オイル不足警告ランプは図示しないが運転席のフロントパネルに設けられている。オイル不足警告ランプをON状態にするということは、ECUがオイル不足と判定して、それを運転者に知らせることを意味する。これにより、運転者はオイルを交換したり、足したりできる。なお、迂回弁42の開弁後、それまで所定値未満であったオイル量がそのままであるということは、迂回弁42の開弁時点で、オイルが不足していることを意味する。なお、この迂廻路40の迂回弁42は、オイル量が増えることで閉じられて、初期状態にされる。
【0045】
このように、オイルパン18内のオイルレベルが所定レベルより低いとき、迂廻路40へのオイルの流通を制御することにより、オイルパン18内のオイルレベルの低下原因を調べることができる。そして、その低下原因が何であるのか、具体的にはオイル不足であるのか、目詰まりであるのか、をより好適に調べるために、ステップS303での所定値やステップS313での所定値は定められ得る。
【0046】
以上、本発明を、上記実施形態に基づいて説明したが、本発明はこのような実施形態に限定されない。
【0047】
例えば、オイル戻し通路に設けられる反応体は、上記の如き、イオン交換樹脂に限定されない。反応体として、種々のアニオン性イオン交換樹脂および/またはカチオン性イオン交換樹脂を用いることが可能である。
【0048】
アニオン性イオン交換樹脂の使用によりオイル中から除去することが望まれるイオンには、そのような硝酸イオン(NO3-)、硫酸イオン(SO42-)ばかりでなく、例えば、ブローバイガスから生じ得る酢酸イオン(CH3COO-)、同様にブローバイガスから生じ得るギ酸イオン(HCOO-)、塩化物イオン(Cl-)、クロム酸イオン(CrO42-)がある。これらを含む群またはこれらからなる群から選択された少なくとも1つのイオンを吸着する機能を有するアニオン性イオン交換樹脂が用いられ得る。なお、アニオン性イオン交換樹脂から放出されるイオンは、オイルの劣化を促進しないイオンであるとよく、好ましくは、オイルの劣化を抑制するイオンであるとよい。
【0049】
また、スラッジ生成を抑制するようにオイル循環経路、例えばヘッドカバー16内面にアルカリ性物質、例えば炭酸カルシウムが設けられた場合、Caイオンを吸着する機能を有するイオン交換樹脂が用いられるとよい。また、オイル中に添加剤としてカルシウムスルホネートが添加されている場合には、このカルシウムスルホネートからCaイオンが生じ得るので、このような場合にもCaイオンを吸着する機能を有するカチオン性イオン交換樹脂が用いられるとよい。このようなカチオン性イオン交換樹脂は、そのような陽イオンを吸着し、代わりに、水素イオンおよび/またはNaイオンを放出する機能を有する。
【0050】
なお、カチオン性イオン交換樹脂の使用によりオイル中から除去することが望まれるイオンには、そのようなCaイオン(Ca2+)ばかりでなく、例えば、Al3+、Fe2+、Fe3+、Cr3+、Pb2+、Ni2+、Cu2+、Mg2+、Ti+がある。これらは、オイルへの添加剤、例えばZnDTPから生じたり、エンジンの構成部材の磨耗および/または溶出により生じたりする。特に、エンジンの摺動部の摩耗によりエンジンオイル中に生じるCuイオン、Alイオン、Feイオン等は、除去されることが望まれる。これらを含む群またはこれらからなる群から選択された少なくとも1つのイオンを吸着する機能を有するカチオン性イオン交換樹脂が用いられ得る。なお、カチオン性イオン交換樹脂から放出されるイオンは、オイルの劣化を促進しないイオンであるとよく、好ましくは、オイルの劣化を抑制するイオンであるとよい。
【0051】
また、本発明における反応体はイオン交換樹脂に限定されない。イオン交換樹脂、無機イオン交換体、キレート樹脂および/または合成吸着剤を反応体として用いることが可能である。反応体として、所定の成分を吸着する機能を有する種々の物質や、所定の成分を吸着する機能と別の所定の成分を放出する機能とを有する種々の物質を用いることができる。
【0052】
また、反応体によって吸着除去されるべき成分は、上記したような硝酸イオン、硫酸イオン等の酸、添加物から生じた成分、エンジンの構成部材の磨耗および/または溶出により生じた成分であって、オイル中の不要成分または不純物であるとよい。なお、吸着されるべき成分は、上記イオンに限定されず、また、イオン以外の成分をも含み得る。またオイルへ反応体から放出されるべき成分はエンジンオイルに無害である成分またはオイルへの添加剤として機能する有用成分であるとよい。なお、同様に、放出されるべき成分は、上記イオンに限定されず、イオン以外の成分も含み得る。
【0053】
このような反応体を用いて、オイル中の不要成分または不純物を除去できるので、オイル中にそのような不要成分または不純物を供給する可能性のある種々の材料および/または薬剤等の物質を、酸化防止剤、金属系洗浄剤、摩擦調整剤、無灰分散剤、pH調整剤としてオイルへ加えることも可能になる。
【0054】
また、機能部材では、金網ケース、金網や樹脂などを用いて形成された袋状ケース、メッシュタイプの筒状ケース(内筒と外筒との間に収納領域を有する。)等が用いられ得、その中にイオン交換樹脂等の反応体が入れられ得る。また、反応体は、板やフィルムに積層されたり、部品にスプレー等を用いて塗布されたりすることができ、そのようにして板等に固定された反応体が機能部材として用いられることができる。
【0055】
なお、このような反応体は、上記実施形態で説明したように、ケース等に入れられたり、板等に固定されたりすることで機能部材とされて、所定箇所に設置されることができる。しかし、反応体は、ケース等に入れられることなく、上記の如き所定箇所に設置されてもよい。
【0056】
なお、上記実施形態では、ヘッドカバー16の温度に応じて、流量調整弁38の作動が制御されたが、内燃機関の他の部位の温度に応じてその作動が制御されてもよい。例えば、シリンダヘッド14、特にその内部の温度に応じて、流量調整弁38の作動を制御することも可能である。この場合、温度センサ44はシリンダヘッド14に設けられ得る。温度センサ44は、ヘッドカバー16、シリンダヘッド14等の、内燃機関の種々の部位に設けられ得る。そして、温度センサ44の設置箇所に応じて、上記所定温度域は変化し得るが、上記思想に基づいて設定され得る。なお、内燃機関の種々の部位に設けられた温度センサ(温度検出手段)を用いてヘッドカバー16の温度が推定されて(検出されて)、それが上記所定温度域にあるか否かが判定されてもよい。
【0057】
以上、本発明を上記実施形態およびその変形例に基づいて説明した。しかし、本発明は、それら実施形態等に限定されず、他の実施形態を許容する。本発明には、特許請求の範囲によって規定される本発明の思想に包含されるあらゆる変形例や応用例、均等物が含まれる。
【符号の説明】
【0058】
10 エンジン
12 シリンダブロック
14 シリンダヘッド
16 ヘッドカバー
18 オイルパン
20 吸気通路
22 スロットルバルブ
24 排気通路
26、28 オイル戻し通路
30 潤滑装置
32 不要成分除去装置
34 機能部材
36 処理室
36s 空間
38 流量調整弁
40 迂廻路
40e 延出部
42 迂回弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダヘッドからオイルパンへ向けてオイルを戻すためのオイル戻し通路に設けられた所定の成分を吸着する機能を有する反応体と、
前記オイル戻し通路へのオイルの流入を調整するように前記反応体よりも上流側に設けられた流量調整弁と、
前記ヘッドカバーまたはシリンダヘッドに設けられた温度検出手段と、
該温度検出手段を用いて検出された温度に応じて前記流量調整弁を制御する流量調整弁制御手段と
を備えたことを特徴とする内燃機関。
【請求項2】
前記反応体は、オイル中に混入した所定のイオン成分を吸着するように設けられていることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関。
【請求項3】
前記反応体を迂回するように前記反応体上流側の前記オイル戻し通路の所定部位につなげられた迂回路と、
該迂回路に設けられた迂回弁と、
前記オイルパン内のオイルの量を検出するためのオイル量検出手段と、
該オイル量検出手段を用いて検出されたオイル量に応じて前記迂回弁を制御する迂回弁制御手段であって、前記オイルパン内のオイル量が所定値未満のとき前記迂回弁を開くように制御する迂回弁制御手段と
をさらに備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の内燃機関。
【請求項4】
前記迂廻路は、前記流量調整弁下流側かつ前記反応体上流側の前記オイル戻し通路の部位と、前記オイルパン内との間に延びることを特徴とする請求項3に記載の内燃機関。
【請求項5】
前記迂回弁制御手段によって前記迂回弁が開くように制御された後、前記オイル量検出手段を用いて検出されるオイル量が前記所定値以上になったとき、前記反応体に異常があると判定する異常判定手段をさらに備えたことを特徴とする請求項3または4に記載の内燃機関。
【請求項6】
前記迂回弁制御手段によって前記迂回弁が開くように制御された後、前記オイル量検出手段を用いて検出されるオイル量が前記所定値以上にならないとき、オイル不足と判定するオイル不足判定手段をさらに備えたことを特徴とする請求項3から5のいずれかに記載の内燃機関。
【請求項7】
前記所定値は、内燃機関の潤滑に必要なオイル量を基準として設定されていることを特徴とする請求項3から6のいずれかに記載の内燃機関。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−247120(P2011−247120A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−119189(P2010−119189)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】