内蔵式RFID使用可能引出しモジュール
内蔵式のRFID使用可能な引出しモジュールが、容器の共振周波数に関係なく、容器内のRFIDタグを作動させるために、ファラデー箱内に容器内に安定したEM場を導入する、プローブアンテナを含む。受信アンテナおよびリーダが、作動されたRFIDタグのデータを読み取り、プロセッサおよび通信モジュールが、RFIDタグデータをリモートプロセッサに送信する。RFID使用可能なモジュールは内蔵式であり、電源および電源で動作するデータ接続のみを必要とする。イーサネットが使用される場合には、PoEによって電力が得られる。RFID使用可能なモジュールは、薬剤キャビネットの既存の薬剤引出しに後付けするために使用されてもよいし、新しいキャビネットの組立て中に使用されてもよい。RFID使用可能なシステムは、EM場での荷重変化を動的に補償するアンテナの自動同調を含む。組立ておよびテストコストが削減され、システムのサービス性が向上する。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、2010年2月9日に出願された同時係属中の米国特許出願第61/302,912号および2009年12月7日に出願された同時係属中の米国特許出願第12/631,861号の一部継続出願の利益を主張し、両出願の内容全体は、参照により本明細書に援用されるものとする。
【技術分野】
【0002】
本発明は、一般に、薬剤管理の分野に関し、特に、引出しのような容器内の薬剤の識別および追跡を提供する薬剤管理システムおよびその関連方法に関する。
【背景技術】
【0003】
長年にわたり、薬剤取出システムが使用されてきた。このようなシステムの当初の目的は、手作業による配布に伴う投薬ミスと、大量の在庫にかかる高い維持費と、を削減することであった。現在のシステムには、多くの利点があるが、この利点は、調剤配布に伴うコストの削減と、在庫管理の改善と、実物管理と、自動ドキュメンテーションと、ミスのさらなる低減と、専門家である薬剤師および看護師の業務負担の軽減と、を含む。
【0004】
規模の大きな医療施設において、医薬品の主な在庫の保管場所は、医薬品の使用者である患者から遠く離れた位置にある場合が多い。これらの保管場所から患者へ医薬品を安全かつ正確に届けるために、種々のシステムが提案されかつ実用化されてきた。「カート交換」システムと呼ばれる初期のシステムでは、薬剤カートが、中央薬局から離れた医療施設のナースステーションに運ばれ、そして、完全に供給された状態のカートと定期的に交換される。典型的に、これらのカートは、患者毎に個別の引出しに仕分けされた24時間供給分の薬剤を含む。「使用済み」のカートは、次の24時間分の薬剤が補給される供給エリアの中央薬局に戻される。睡眠薬は、フロアにある鍵付きの箱に保管されており、2人の看護師が別々の鍵を有することと、書面による記録と、が必要である。
【0005】
一部の薬剤に対しては、カート交換システムが未だに使用されているが、日中に中央薬局からの多くの新たなオーダを処理する作業や、大量の未使用薬剤を戻す作業は、多大な労力を要することになる。これらの薬剤の在庫補充は、正確に行われる必要があり、かつ、極めて時間を消費する。その結果、ナースフロアに自動化されたプロセッサベースの薬剤キャビネットを使用することが増えてきた。各キャビネットのプロセッサは、これらの固定キャビネットの医薬品へのアクセスをモニタし、現在の手持ち在庫と、補給が必要なものと、が中央薬局の場所にある中央処理装置に送信される。これらのプロセッサベースの取出キャビネットの当初の目的は、睡眠薬をより便利に管理することと、一般的な薬剤および他の医療補給品の「フロアストック」を有することと、であり、看護師は、交換カートにのせて薬局から運ばれてくる24時間分の補給を待ちながら、または、特別にオーダしたりしながら、フロアストックから、要求された新しい処方薬の初回投与を行うことができていた。
【0006】
以下、図23を参照すると、薬剤キャビネット300は、典型的に、制御ユニット306に連結された一体型のタッチスクリーン304と、中央サーバ310とリンクするための通信リンク308と、1つ以上のカート316とリンクするための通信リンク314とを備える。このような通信リンク308および314は、有線通信用の接続として概略的に示されているが、通信技術の当業者に認識されるように、無線通信用の送信機および受信機(例えば、RF、IR、音響)であってもよい。通信リンク308および314を介して入力されるデータに加え、タッチスクリーン304に含まれる仮想キーボードを介して、データが手動入力される。明確には示していないが、図示しているポインティングデバイス318以外にも、キーボードが設けられてもよい。キーボードおよびポインティングデバイスは、異なる形状をなすものであってもよい。一実施形態において、キーボードはフルサイズのものであってもよく、別の実施形態において、キーボードは小型のものであってもよい。同様に、ポインティングデバイスは、マウス、タッチパッドまたは他のデバイスであってもよい。通信リンク308は、サーバ310との接続であり、かつ、必要に応じて、薬剤キャビネット300を、サーバ310がリアルタイム更新のためにアクセスするデータベース320とのインタフェースになれるようにする。また、患者の薬剤、静脈注射用の溶液などを調合する際に、事前に権限を与えられたヘルスケアアテンダントを導くのに必要な情報を与える。図24に示す別の実施形態において、フルサイズの実際のキーボード322またはキーパッドが提供され、タッチスクリーン304の機能を代替したり、高めたりしてもよい。
【0007】
これらのプロセッサベースの薬剤キャビネット300は、そのフロアの患者が昼夜必要とする可能性のある薬剤の大部分を保管する能力を提供する。多くの場合、これらの薬剤は、鍵の掛かった引出しの中のポケットに保管される。看護師は、自分の個人IDと、特定の患者のIDとを入力すると、選択された患者に認められた薬剤全般を確認し、そして、一般に、「投薬期限薬剤」と呼ばれる、特定の時間に期限がくる薬剤を確認する。次に、中央薬局の業務は、キャビネットに保管された薬剤の手持ちストックをモニタし、そして、定期的な間隔で薬剤レベルを補充することである。このプロセスの重要な利点は、中央薬局に戻される未使用の薬剤がないことである。つまり、初回投与(その後の投与)がすぐに利用可能であることを意味する。
【0008】
薬剤を取り扱う場合、キャビネットから取り除かれた薬剤と、残ったままの薬剤とを決定する際に、手動プロセスがとられてきた。このような手動による取扱い、検査および調査には時間がかる。効率が高められるように、これらの要求の少なくとも一部を自動化可能なシステムおよび方法を提供することが望まれる。
【0009】
無線自動識別(「RFID」)は、応答デバイス(RFID「タグ」またはトランスポンダとして知られている)の応答を促すために電磁エネルギー(「EMエネルギー」)を使用して、個体識別を行い、場合によっては、さらに保管されたデータを提供するものである。RFIDタグは、典型的に、メモリ、回路およびアンテナを形成する1つ以上の導電性トレースを有する半導体デバイスを含む。典型的に、RFIDタグは、トランスポンダとして作用し、インテロゲータとも呼ばれるリーダから受信したRF呼掛け信号に応じて、半導体デバイスメモリに格納された情報を提供する。いくつかのRFIDタグは、パスワードおよび/または暗号化などのセキュリティ手段を含む。また、多くのRFIDタグにより、RF信号を介した半導体メモリへの情報の書き込みおよび格納が許可される。
【0010】
RFIDタグは、追跡される物品に組み込まれるか、または取り付けられてもよい。タグは、接着剤、テープまたは他の手段で物品の外側に取り付けられてもよい場合もあり、タグは、包装に含まれているような場合など、物品内に差し込まれたり、物品の容器内に設置されたり、または衣服に縫い付けられたりしてもよい。RFIDタグは、典型的に、固有の個体識別番号が付与されて製造されるが、この個体識別番号は、チェックディジットが取り付けられた数バイトの単純な通し番号である。この個体識別番号は、製造中にタグに組み込まれている。ユーザは、この通し番号/個体識別番号を変えられず、メーカーは、各通し番号を一度しか使用しないことを保証する。この構成は、RFIDタグが読取り専用であり、かつ、個体識別番号でのみ呼掛け信号に応答する点で、この技術の低コストの限界である。典型的に、タグは、個体識別番号に継続的に応答する。タグへのデータ送信はできない。これらのタグは非常に低コストであり、かつ、大量生産される。
【0011】
このような読取り専用のRFIDタグは、典型的に、追跡対象の物品に永久的に取り付けられ、一度取り付けられると、タグの通し番号は、コンピュータのデータベースのホスト物品に関連付けられる。例えば、特定のタイプの薬剤は、数百個または数千個の小瓶に含まれてもよい。製造時、または健康管理機関で小瓶を受け取ったとき、RFIDタグが各小瓶に取り付けられる。永久的に取り付けられたRFIDタグを有する各小瓶は、受け取られると、健康管理機関のデータベースでチェックされる。RFID個体識別番号は、データベースに、薬剤の種類、小瓶の用量のサイズ、場合によっては、薬の使用期限などの他の情報に関連付けられてもよい。その後、小瓶のRFIDタグが呼び掛けられ、そして、その個体識別番号が読み取られると、健康管理機関のデータベースは、その個体識別番号と小瓶に関する格納データとを整合できる。次に、小瓶の内容物とともに、データベースに格納されてきた任意の他の特性が決定されうる。このシステムでは、医療機関が、このようなデータをRFIDタグに組み込むのではなく、在庫の物品に関する包括的なデータベースを維持する必要がある。
【0012】
タグの目的は、製造施設、輸送車両、医療施設、保管エリアなど、特定の施設における物品の耐用期間が続く間、タグと物品とを関連付けることで、物品が移動する際、物品の位置が特定され、識別され、そして、追跡されるようにすることである。例えば、ある医療物品が医療施設のどの場所にあるかが常時分かれば、緊急事態が生じたときに必要とされる医療補給品の位置の特定が非常に容易になりうる。同様に、施設を通って物品を追跡することで、より効率的な取出および在庫管理システムを補助し、かつ、施設における作業フローの向上を促進することができる。さらに、有効期限がモニタし、そして、より古い期限間近の物品を、ラインの前方に移動してすぐに取り出せるようにすることができる。これにより、良好な在庫管理および低コスト化が図られる。
【0013】
他のRFIDタグは書込み可能のものであり、かつ、RFIDタグが取り付け可能な物品に関する情報は、個々のタグにプログラミングされうる。施設のコンピュータサーバが利用不能の場合、これは他とは違う利点を与えうるが、このようなタグは、タグにあるメモリのサイズに応じてコストが上がる。タグが取り付けられる物品に含まれる情報を有するようにタグの各々をプログラミングすると、さらなる費用が発生する。
【0014】
RFIDタグは、メーカー、受け取り側などによって追跡されるべき容器または物品に適用されてもよい。メーカーがタグを製品に適用する場合、メーカーは、タグの各々の個体識別番号と各物品の内容物とをリンクするそれぞれのデータベースファイルも供給する。メーカーが供給したデータベースは、顧客の全データベースに容易にインポート可能なファイル形式で顧客に配布することができ、これにより、顧客は、データベース作成の費用を節約できる。
【0015】
現在使用されている多くのRFIDタグはパッシブ型であり、バッテリまたは他の自立電源をもたず、その代わりに、タグを作動する電力を供給するためにRFIDリーダによって供給される呼掛けエネルギー(interrogating energy)に依存しなければならない。パッシブRFIDタグには、タグの作動および格納データの伝送を達成するために、ある一定の周波数レンジおよびある一定の最低強度のエネルギーの電磁場が必要である。別の選択肢として、アクティブRFIDタグがあるが、このようなタグには、タグを作動する動力を供給するために付属バッテリが必要であるため、タグのコストが上がり、多くの用途で使用するには望ましくないものになる。
【0016】
識別すべき物品の物理的サイズ、場所および物品へ容易に到達できることなどのRFIDタグの応用の要求に応じて、タグは、RFIDリーダによって近距離または長距離から読み取らなければならない場合がある。このような距離は、数cmから10メートル以上までさまざまでありうる。さらに、米国や他の国々では、このようなタグの動作が許可されている周波数レンジが限られている。一例として、125KHzや13.56MHzなどの低周波数帯が、いくつかの応用においてRFIDタグに使用されうる。この周波数レンジで、電磁エネルギーは、液体および他の誘電性材料によって影響を受けることはほとんどないが、呼掛け距離が短くなるという制限を受ける。915MHzや2.4GHzなどの、RFIDの使用が許可されているより高い周波数帯では、RFIDタグの呼掛け距離はより長くなるが、タグが付けられた材料が変わると、タグはより迅速に離調する。これらの高い周波数で、タグ間の間隔が小さくなると、近い間隔に設けられたRFIDタグが互いに離調することが分かった。
【0017】
RFIDタグがエンクロージャ内に設置される一般的な状況は数多くある。これらのエンクロージャの一部は、完全または部分的に金属表面または金属化表面を有してもよい。エンクロージャの例として、金属エンクロージャ(例えば、輸送用コンテナ)、部分的金属エンクロージャ(例えば、金属と他の材料との組み合わせで作られたハウジングを有する航空機、バス、列車および船舶などの乗り物)および非金属エンクロージャ(例えば、木造の倉庫や建物)などがある。これらのエンクロージャに設置されてもよいRFIDタグを有する物品の例として、容器に入っていない物品、包装された物品、倉庫内の区画、建物内の在庫品、小売店内のさまざまな品および乗り物内のさまざまな携帯型の品(例えば、乗員の身分証明書やチケット、荷物、貨物、救命胴衣やマスクなどの個々の救命設備)などがある。
【0018】
RFIDタグの読取りレンジ(すなわち、呼掛け信号および/または応答信号のレンジ)は制限されている。例えば、パッシブRFIDタグのいくつかのタイプは、最大レンジが約12メートルであり、また、このレンジは、好ましいアンテナ配向を有する理想的な自由空間条件でしか得られないことがある。現状では、観察されたタグレンジは、6メートル以下であることが多い。したがって、上述したエンクロージャの中には、個々のRFIDタグの読取りレンジをはるかに上回る寸法を有しうるものもある。RFIDリーダが、このようなエンクロージャにあるターゲットRFIDタグに近接して配置できなければ、タグは作動されず、かつ、読み取られない。さらに、エンクロージャの金属表面は、RFIDリーダとRFIDタグとの間で交換される必要のあるRF信号にとって、深刻な障害物であり、エンクロージャの金属表面の後ろ側に位置するRFIDタグは、検出が困難または不可能になる。
【0019】
上記に加えて、RFIDシステムの検出レンジは、典型的に、信号強度によって短距離に限定され、多くの場合、13.56MHzのシステムに対して約30センチメートル未満である。したがって、携帯型のリーダユニットは、特に、タグ付き品が、静止または固定した単一リーダアンテナの検出レンジより著しく大きな空間に保管されている場合、すべてのタグ付き品を検出するために、タグ付き品のグループを通過する必要がありうる。あるいは、多数のタグ付きアイテムを検出するのに十分な電力およびレンジを有する大型のリーダアンテナが使用されることもある。しかしながら、このようなアンテナは扱いにくく、かつ、許容可能な範囲を超えて放射電力のレンジを増大しうる。さらに、これらのリーダアンテナは、多くの場合、空間の価値が高いお店やその他の場所に設置され、このような大型のリーダアンテナを使用することは、高価でありかつ不都合である。別の可能な解決策として、複数の小型のアンテナが使用されてもよいが、空間が貴重で、配線を見えないようにすることが好ましい、または要求される場合、このような構成は設置が面倒な場合がある。
【0020】
医療補給品およびデバイスの場合、RFIDタグ付きデバイスおよび物品の位置が、要求されれば即座に特定できるように、また、有効期限など、他の目的で識別できるように、正確な追跡、在庫管理システムおよび取出システムの開発が望まれる。医療施設で使用される医療補給品や取出キャビネットの場合、多数の医療デバイスおよび物品が、例えば、複数の引出しなどのように、互いに密接した位置にある。このようなキャビネットは、典型的に、金属性のものであり、保管した物品を識別するために外部のRFIDシステムを使用することが困難な場合がある。場合によっては、このようなキャビネットは、盗難率が高い睡眠薬もしくは他の医療物品、または装置がキャビネット内にあるため、鍵が掛けられている。このようにして、キャビネットの内容物を手動で識別することは、アクセス管理の必要性から困難である。
【0021】
このようなキャビネットに内部RFIDシステムを設けることにも困難を伴う場合がある。内部の物品がキャビネット内でランダムに配置されている場合、RFIDシステムは、RFIDシステムが到達できない「デッドゾーン」が存在しないようにしなければならない。一般に、デッドゾーンは、RFIDリーダアンテナとRFIDタグとの間の連結レベルが、システムがタグの読取りに成功するのに十分ではないエリアである。このようなデッドゾーンの存在は、タグおよびリーダアンテナが垂直面にある配向によって生じうる。このように、デッドゾーンに配置された物品は、検出されないため、タグ付き物品の追跡が不正確になってしまう。
【0022】
医療分野では、多くの場合、このようなエンクロージャにある物品に取り付けられた多数のタグを読み取る必要があり、上述したように、このようなエンクロージャは、セキュリティ上の理由からアクセスが制限されている。エンクロージャの物理的寸法は、多数の物品または異なるサイズおよび形状の物品に対応するために、変える必要がある。このように密接に設置された医療物品またはデバイスを高精度に識別し、かつ、計数するために、このように保管されたすべての物品およびデバイスを取り囲み、タグがすべて確実に作動され読み取られるように、エンクロージャ内に適切な周波数で安定した電磁エネルギー場が提供されなければならない。このような医療デバイスは、容器の外側に取り付けられたRFIDタグを有してもよく、上向き、横向き、下向き、またはランダムなパターンで他の角度に向けられたRFIDタグ(および関連するアンテナ)を付けた状態でさまざまな向きに保管されてもよい。
【0023】
このような安定したEMエネルギー場を発生させることは容易な作業ではない。エンクロージャが、動作周波数で共振するサイズを有する場合、共振定常波は、エンクロージャ内で発生しうるため、安定したEM場を発生しやすい。
【0024】
しかしながら、RFID場では、使用可能な動作周波数は厳密に制御され、制限されている。エンクロージャが、許容RFID周波数の1つと整合する共振周波数を有していない物品を保管するのに望ましいことが分かった。このように、安定したEM場は、別の方法で確立されなければならない。
【0025】
さらに、EMエネルギーが、このようなエンクロージャに対して、内部にあるRFIDタグを読み取るために導入される場合、効率的なエネルギー伝達が重要となる。静止状態下では、エンクロージャ内へのEMエネルギーの入力または注入は、エネルギーを送り出す導体とエンクロージャとの間に位置付けられた単純なインピーダンス整合回路で最大限にされうる。当業者によく知られているように、このようなインピーダンス整合回路またはデバイスは、エンクロージャからの電力反射を最小限に抑えながら、エンクロージャへの電力の伝達を最大限にする。エンクロージャのインピーダンスが、エンクロージャとの間で物品を導入したり除去したりすることにより変化する場合、静的インピーダンス整合回路は、最適なエネルギー伝達をエンクロージャに与えないこともある。エネルギー伝達およびエンクロージャ内の結果的に得られるRF場強度が、しきい値レベルを下回れば、エンクロージャ内にある物品のタグのいくつかまたは多くが識別されるように作動されず、在庫システムが非効率的になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
EMエネルギーの使用を最小に維持し、あるいは少なくとも抑えることが、多くの医療施設の目標である。RFIDタグから位置を特定し、データを抽出するために高出力リーダを使用することは、一般に、医療施設では望ましくないが、労働者数が少ない倉庫や、航空機の貨物倉では許容可能な場合がある。EMエネルギーが隣接したより影響を受けやすいエリアに外れることがある広いエリアで、幅の広いEMエネルギービームを放射することは望ましくない。必要とされている個体識別情報をタグから得るために、リーダを動作する際の効率化が目的である。RFIDタグが読み取られる多くの場合、ハンドヘルド型のリーダが使用される。このようなリーダは、特定の場所にあるすべてのRFIDタグに到達する、比較的幅が広いエネルギービームを伝送する。各タグを作動し、読み取る最終的な結果が達成されうるが、エネルギーの伝送は、ユーザが照準を定める以外、制御されない。さらに、これは、1人以上の人員のサービスを要する手動システムであるため、スタッフ数が限られている施設では望ましくない可能性がある。多くのこのようなシステムにおいて、RFIDリーダが「拘束リーダヘッド」を有する携帯型ユニットであることにより、ユニットを見つけ、電力が供給されていることを確認し、在庫が要求される薬剤キャビネットまで運び、キャビネットを開き、在庫データを収集し、次に、在庫データを薬局サーバにアップロードするための、余分な時間と労力が課される。前述したものにはすべて、多大な時間がかかる。
【0027】
このようにして、当業者は、より自動化された在庫管理システムを提供する手段の必要性を認識しており、このようなシステムは、施設の人員の手動労力を要求せずに、引出しのような選択された容器の内容物に関する在庫データを自動的にアップロード可能な薬剤キャビネットの1つ以上の引出しに設置される。また、囲まれたエリアにあるすべてのRFIDタグを作動させ読み取るために、エネルギーを効率よく使用するRFIDタグリーダシステムの必要性も認識されてきた。ランダムな向きに配置されたタグを作動させ読み取るために、エンクロージャにおいて安定したEM場を確立するさらなる必要性も認識されてきた。キャビネットへのアクセス権を得る必要なく、金属キャビネットに保管された物品を自動システムが識別するさらなる必要性が認識されてきた。引出しのような容器を、容器内のRFIDタグを読み取るのに十分な非共振周波数で励起するさらなる別の必要性が認識されてきた。さらなる認識された必要性は、既存の薬剤キャビネットまたは他の保管容器をRFID有効化することである。本発明は、これらの必要性および他の必要性を満たすものである。
【課題を解決するための手段】
【0028】
簡潔かつ一般的な用語で言えば、本発明は、引出しのような既存の非共振容器に電磁場を確立し、この容器に設置されたRFIDタグを読み取るのに十分な場の強度で容器を励起することで、タグ付きの医療物品が識別され、追跡されうる内蔵式RFモジュールシステムに関する。本発明によるシステムおよび方法は、内容物の自動識別システムを備えていない薬剤キャビネット内へ据え付けに、特に適している。
【0029】
1つの態様において、品物が配置される所定のサイズの容器内にRF場を確立するためのRF使用可能モジュールシステムであって、品物が配置される容器に対して、選択された場所にベースを取り付けるように構成された取付け固定具を有するベースであって、容器が、ある容器サイズを有し、ベースが、ベースおよびベースのコンポーネントが容器内に配置された品物と相互作用するように、容器サイズと適合するように選択されたベースサイズを有し、ベースに設置され、かつ、容器の共振周波数に関係なく、所定の周波数レンジ内で容器内に安定した作動RF場を確立するように構成された同調プローブアンテナであって、安定したRF場が容器に配置されたすべての品物に及ぶ、同調プローブアンテナと、ベースに設置され、かつ、作動RF場に応じて容器内に生成されたデータ信号を受信するように構成された受信アンテナと、受信アンテナからデータ信号を受信し、データ信号を処理するように構成されたベースに設置されたリーダユニットと、リーダユニットから処理されたデータ信号を受信し、処理されたデータ信号を遠隔地へ通信するように構成された、ベースに設置された通信ユニットとを備えるRF使用可能モジュールシステムが提供される。
【0030】
本発明によるさらに詳細な態様は、容器内の品物の周囲に略完全に形成されたファラデー箱をさらに備え、少なくともプローブアンテナおよび受信アンテナが、ファラデー箱内に設置されるモジュールシステムを含む。プローブアンテナは、容器内の品物数の増減に対応するために、容器内に安定した作動RF場を確立するように、自動的に再同調するように構成される。容器は、ある共振周波数を有し、プローブアンテナの所定の周波数レンジが共振周波数を含まない。
【0031】
他の態様が、リーダと、プローブアンテナと、受信アンテナとの間にスイッチをさらに備え、リーダが、容器を作動し、容器からデータを受信するために各アンテナをオンまたはオフに切り換えるように構成されるRF使用可能モジュールシステムを含む。ベースのサイズは、ベースが既存の容器のサイズに合致して適合されるように選択されることで、モジュールシステムが、既存の容器に後付けするように使用される。ベースのサイズは、ベースが組み立てられている容器のサイズと合致して適合されるように選択されることで、組み立てられている容器の一体部分を形成するためにモジュールシステムが使用される。
【0032】
より詳細な態様は、ベースに形成されたメサ構造のそれぞれの上部に設置されるアンテナを含む。複数のプローブアンテナおよび複数の受信アンテナが使用され、リーダは、複数のアンテナの間のベースの中央に設置される。4つの受信アンテナと、2つのプローブアンテナと、2つのスイッチとを備え、リーダは、ベースに取り付けられるRFIDリーダ回路基板を備え、プローブアンテナ、スイッチおよびリーダは、アンテナ間の中央に設置されたRFIDリーダ回路基板に取り付けられる。
【0033】
他の態様が、品物が配置される所定のサイズの容器内にRF場を確立するためのRFID使用可能モジュールシステムであって、固有のデータ識別情報を有するRFIDタグをそれぞれが有する品物が配置される容器に対して、選択された場所にベースを取り付けるように構成された取付け固定具を有するベースであって、容器が、ある容器サイズを有し、ベースが、ベースおよびベースのコンポーネントが容器内に配置されたタグ付き品物と相互作用するように、容器サイズと適合するように選択されたベースサイズを有する、ベースと、ベースに設置され、かつ、容器の共振周波数を含まない所定の周波数レンジ内で容器内に安定した作動RF場を確立するように構成された、同調プローブアンテナであって、安定したRF場が、容器に配置された品物のRFIDタグを作動するように選択される、同調プローブアンテナと、ベースに設置され、かつ、作動RF場に応じて容器内に生成されたRFIDデータ信号を受信するように構成された、受信アンテナと、受信アンテナからRFIDデータ信号を受信ししてデータ信号を処理するように構成されたベースに設置されたRFIDリーダユニットと、リーダユニットから処理されたデータ信号を受信し、処理されたデータ信号を遠隔地へ通信するように構成されたベースに設置された通信ユニットと、容器内のタグ付き品物の周囲に略完全に形成されたファラデー箱と、少なくともプローブアンテナおよび受信アンテナが、ファラデー箱内に設置され、遠隔地に設置され、品物にそれぞれ取り付けられたタグのデータ識別情報と相関するタグ付き品物に関する情報を含むデータベースと、処理されたデータ信号を受信し、データ信号をデータベースと比較し、比較に基づいてタグ付き品物に関する情報を提供するように構成された、遠隔地に設置されたリモートプロセッサとを含む。
【0034】
さらなる詳細な態様は、比較に基づいたタグ付きの品物に関する情報が、以下の情報、すなわち、
再発注のために最小/最大レベルと比較される在庫レベル、
偽造防止、
電子ペディグリ/シリアル番号化能力、
ロット管理、
投薬ミスの防止、
NDC管理、および
使用期限管理、
の少なくとも1つを含むRFID使用可能モジュールシステムを含む。
【0035】
さらに、リーダは、スケジュールに従って容器にRF場を自動的に確立するように構成される。プローブアンテナは、容器内の品物数の増減に対応するために、容器内に安定した作動RF場を確立するように自動的に再同調するように構成される。
【0036】
本発明の方法の態様によれば、RFIDタグ付きの品物が配置される所定のサイズの容器内にRF場を確立するために、容器をRFID使用可能にする方法であって、RFIDタグ付きの品物が配置される容器に対して選択された場所にベースを取り付けるステップであって、前記容器は、ある容器サイズを有し、前記ベースは、ベースおよびベースのコンポーネントが容器内に配置された品物のRFIDタグと相互作用するように、容器サイズと適合するように選択されたベースサイズを有する、ステップと、容器の共振周波数に関係なく、所定の周波数レンジ内で、容器に安定したRFID作動RF場を確立するように、ベースに取り付けられた同調プローブアンテナを励起するステップであって、RFIDタグがRF場によって作動された後、容器内の品物にRFIDタグから固有のRFID個体識別データ信号を受信するステップと、容器内の作動した品物からRFIDデータ信号を読み取り、処理するステップと、処理されたRFIDデータ信号を遠隔地に通信するステップとを含む方法が提供される。
【0037】
さらに詳細な方法の態様は、容器内のRFIDタグ付き品物の周囲に略完全にファラデー箱を形成するステップと、ファラデー箱内に、少なくともプローブアンテナおよび受信アンテナを取り付けるステップとを含む。さらに、この方法は、容器内のRFIDタグ付きの品物数の増減に対応するために、プローブアンテナを自動的に再同調して、容器内に安定したRFID作動RF場を確立する、ステップを含む。さらに、励起するステップは、容器の共振周波数を含まない周波数レンジを有する同調プローブアンテナを励起するステップを含む。
【0038】
本発明の特徴および利点は、添付の図面を参照しながら読まれるべき以下の詳細な説明からさらに容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】引出しにランダムに位置付けられた複数の医療物品の保管を示し、医療物品の各々がランダムに配向された一体型のRFIDタグを有する、医療用取出キャビネット内に位置付けられてもよい、引出しの略図。
【図2】5段の引出しを有する薬剤取出キャビネットの斜視図であり、引出しの1つは図1の略図に類似しており、キャビネットは、キャビネット内に保管された物品に配置された任意のRFIDタグを定期的に読み取ることによって、キャビネットへのアクセスを管理し、在庫追跡を実行するための、およびリモートコンピュータに個体識別された物品を報告するための一体型コンピュータを有する、薬剤取出キャビネットの斜視図。
【図3】RFIDリーダが、単一の送信アンテナを用いてRFIDタグを含む引出し内に作動EMエネルギーを送信し、単一の受信アンテナを用いて作動されたRFIDタグから出力されたデータを受信し、コンピュータが、作動エネルギーの送信を管理し、処理するために、作動RFIDタグからデータを受信する実施形態を示すブロック流れ図。
【図4】RFIDリーダが、2つの送信アンテナを用いてRFIDタグを含む引出し内に作動EMエネルギーを送信し、3つの受信アンテナを用いて作動されたRFIDタグから出力されたデータを受信し、図3に示すように、コンピュータが、作動エネルギーの送信を管理し、処理するために、作動RFIDタグからデータを受信する実施形態を示す図3に類似したブロック流れ図。
【図5】EMエネルギーをエンクロージャ内に注入し、TEモードを励起するように構成された単一のプローブおよびコネクタを有するエンクロージャを示す図。
【図6】EMエネルギーをエンクロージャ内に注入し、TMモードを励起するように構成された単一のプローブおよびコネクタを有するエンクロージャを示す図。
【図7】エンクロージャの結合電力と共振エンクロージャの周波数との関係を示すプロットを示す図であり、fnはエンクロージャの固有共振周波数である。
【図8】エンクロージャの結合電力(縦座標軸)と周波数(横座標軸)との関係を示すプロットを示す図であり、ffは強制共振周波数であり、またはエンクロージャの共振周波数と等しくない周波数として呼ばれるものであり、fnは、ff周波数でエンクロージャの結合電力の安定した場の確立を示すエンクロージャの固有共振周波数である。
【図9】EMエネルギーをエンクロージャ内に注入するための2つのプローブの各々がコネクタを有し、一方のプローブがTMプローブであり、他方のプローブがTEプローブであるエンクロージャを示す図。
【図10】プローブとエンクロージャとの間のインピーダンス整合を高めるために使用される、プローブ、コネクタおよび減衰器を示す図。
【図11】プローブとエンクロージャとの間のインピーダンス整合を高めるために使用される、プローブ、コネクタおよびパッシブ整合回路を示す図。
【図12】エンクロージャに設置されたプローブと送受信機との間に接続されたアクティブ整合回路を示す図であり、アクティブ整合回路は、プローブとエンクロージャとの間のインピーダンス整合を高めるために閉ループ可変整合回路を提供するために使用される、同調キャパシタ、双方向カプラ、複数パワーセンサおよびコンパレータを備える。
【図13】引出しが閉位置においてキャビネットの適所にあるとき、引出しに安定したEM場を確立するための「天井取付け」構成において2つのプローブアンテナの配置を示し、明確にするために引出しを取り外した状態の引出しの場所にある図2のキャビネットの側断面図を与える。
【図14】挿入される引出しに安定したEM場を確立するための2つのプローブアンテナを再度示す、図13のプローブ構成を示す金属性エンクロージャの斜視図。
【図15】明確にするために引出しを取り外した状態の図13および図14の二重プローブアンテナが取り付けられた金属性エンクロージャまたはフレームの切欠斜視側面図。
【図16】金属性エンクロージャの適所にある切欠プラスチック引出しを有し、電磁的に不活性の保護カバーによって保護された二重天井取付けプローブアンテナをさらに示し、引出しの背面付近にキャビネットの背面に取り付けられた冷却システムコンポーネントをさらに示す、図14の図の正面斜視図であり、引出しはまた、キャビネットにおける開位置と閉位置との間で引出しをスライドする際に容易に行うための引出しスライド機構の部分図を示し、引出し正面パネルおよび背面パネルは、同図において切り取られた状態である。
【図17】プラスチック引出しを完全に取り外した状態の図16のものとは反対の角度からの正面斜視図であり、金属性エンクロージャに取り付けられたEM不活性保護カバーによって保護された二重天井取付けプローブアンテナを示し、引出しのラッチが解除されると、引出しを開位置に自動的に押し出すように、ばね装填フィーチャとしてキャビネットの背面に取り付けられた図16の冷却システムコンポーネントをさらに示し、引出しのスライドを受けるための取付けレールをさらに示す。
【図18】図13〜図15に示すエンクロージャの上面における2つのTE01モードプローブの配置のインチ単位の測定値の略図。
【図19】2つのマイクロストリップまたは「パッチ」アンテナおよびそれらのマイクロストリップ導体の図16の引出し内でのサイズおよび配置の略図であり、マイクロストリップ導体は、それぞれのアンテナと、一実施形態において、他のコンポーネントと相互接続するためにSMAコネクタに接続される引出しの背面との間に設けられる。
【図20】図19の図によるプローブがエンクロージャの適所に配置されたエンクロージャの実施形態の場の強さの図。
【図21】エンクロージャの前壁および背壁に近いほど場の強さがはっきりとしたものであることを示す、図20の場の強度の図のより下側の目盛の図。
【図22】個々のマルチプレクサスイッチ、単一のRFIDスキャナおよび電力制御装置を示す、図2に示すもののような複数引出し医療用キャビネットのブロック電気信号図。
【図23】制御ユニットと、一実施形態において、データおよび命令入力用のタッチスクリーンを含むディスプレイと、マウスの形状のポインティングデバイスと、RFIDタグを有する薬剤を保管するために使用される複数の引出しと、サーバ、データベースおよびカートへの接続とを有する薬剤管理キャビネットを示す図。
【図24】2つの入力デバイスの図を有し、一方がフルサイズキーボードであり、他方がマウスの形状のポインティングデバイスである、図23の薬剤管理キャビネットを示す図。
【図25】医療品を保管するためのポケットを作るための仕切り、およびキャビネットに作られたファラデー箱の部分を含む引出しのデザインの詳細を示す、薬剤キャビネットの開口およびファラデー箱から取り外された引出しの分解図。
【図26】引出しが閉位置にあるとき、RFIDシステムが効率的に動作するように引出しの周囲でファラデー箱を完全なものにするファラデー箱の部分を形成するように、引出しの金属性の正面が見えるように、引出しの背後から見た図25の引出しの拡大図。
【図27】取り外された引出しのフレーム内に形成されるファラデー箱の表示と、少なくともアンテナがファラデー箱内にあるようにファラデー箱に取り付けられるRFID使用可能モジュールと、ファラデー箱の表示内にスライド可能に取り付けられる引出しと、モジュール用の電力およびデータ接続をさらに示す、下側の引出しを取り外した薬剤キャビネットの分解図。
【図28】4つの受信アンテナ要素と、2つのプローブアンテナと、RFIDリーダプリント回路基板と、RFIDリーダプリント回路基板に取り付けられたRFIDリーダと、スイッチの各々が2つのアンテナ要素を相互接続し、プローブアンテナとRFIDリーダとを相互接続する2つのスイッチとを示す、本発明の態様によるRFID使用可能な引出しモジュールの平面図。
【図29】2つのプローブアンテナおよびアンテナ要素が形成されたメサ構造の側面プロファイルをより明確に示す図28の側面図。
【図30】プローブアンテナ、RFIDリーダおよびアンテナ要素が取り付けられるメサ構造の端部プロファイルを示す図28の正面図。
【図31】本発明の態様により、引出しがRFID使用可能である方法を表す流れ図。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、同様の参照番号がいくつかの図面において対応する要素または同様の要素を表す本発明の実施形態を説明するために例示的な図面をより詳細に参照しながら、固有個体識別番号を有するRFIDタグ24をそれぞれ有する複数の医療物品22が保管された部分的エンクロージャ20の略図が図1に示されている。部分的エンクロージャは、正面26と、左側28と、右側30と、背面32と、底面34とを有する引出しを備える。これらの物品は、RFIDタグがさまざまなランダムな方向に向いた状態で引出しにランダムに分散されている。
【0041】
本明細書の実施形態に対して使用される場合、「リーダ」および「インテロゲータ」は、読取りまたは書込み/読取りを行いうるデバイスをさす。データキャプチャデバイスは、常に、読取りのみ可能であるか、または書込みも可能であるかにかかわらず、リーダまたはインテロゲータと呼ばれる。リーダは、典型的に、無線周波数モジュール(「送受信機」と呼ばれることもある送信機および受信機)と、制御ユニットと、RFIDタグとの結合要素(1つまたは複数のアンテナなど)とを含む。さらに、多くのリーダは、RS−232インタフェースなど、データをどの場所にも転送するためのインタフェースを含む。リーダは、送信時、呼掛けゾーンを有し、このゾーン内でRFIDタグが作動される。呼掛けゾーン内で、リーダによって呼掛けゾーンに生じたRFIDタグが電場/磁場から電力を引き出す。連続RFIDシステム(SEQ)において、呼掛け場は、規則的な間隔でオフに切り換えられる。RFIDタグは、これらの「オフ」ギャップを認識するようにプログラミングされ、タグの固有個体識別番号のようなデータを送るためにタグによって使用される。いくつかのシステムにおいて、タグのデータ記録は、タグの製造時に取り込まれ、変更不可能な固有の通し番号を含む。この番号は、タグが特定の物品に取り付けられるとき、特定の物品にデータベースにおいて関連付けられてもよい。このようにして、タグの場所を決定することで、タグが取り付けられた物品の場所が決定される。他のシステムにおいて、RFIDタグは、物品名や物品の個体識別、使用期限、投与量、患者名および他の情報など、タグが取り付けられた物品に関するより多くの情報を含んでもよい。RFIDタグは、更新可能なように書込み可能であってもよい。
【0042】
本明細書の実施形態に対して使用される場合、「タグ」は、RFIDトランスポンダについて言及していることを意味する。このようなタグは、典型的に、アンテナのような結合要素と、電子マイクロチップとを有する。マイクロチップは、メモリとも呼ばれるデータストレージを含む。
【0043】
図2は、複数の可動引出し42を備える、代表的な医療用取出キャビネット40を表す。この実施形態では、引出しの内容物へアクセスできるようにキャビネットから外向きにスライドする5段の引出しがある。図1は、引出しの内容物へのアクセスを与えるために外向きにスライドし、引出しの内容物を厳重に保管するためにキャビネット内に内向きにスライドするために、図2のキャビネット内に位置付けられてもよい、代表的な引出しの略図である。キャビネットはまた、引出しへのアクセスを制御し、アクセスおよび内容物に関するデータを生成し、他のシステムとの通信を行うために使用されてもよい一体型のコンピュータ44を備える。この実施形態において、コンピュータは、引出しにある物品の番号および種類、物品が処方された患者の名前、処方された薬剤および処方された薬剤の投与日および時間に関するデータ、ならびに他の情報に関するデータを生成する。より単純なシステムにおいて、コンピュータは、保管された物品から固有個体識別番号を単純に受信し、個体識別番号と物品の明細とを整合するためにデータベースへのアクセス権を有する在庫管理コンピュータにこれらの個体識別番号を送る。
【0044】
このようなキャビネットは、健康管理機関の特定のフロアにあるナースステーションに設置されてもよく、また、そのフロアの患者の処方薬を含んでもよい。そのフロアの患者用の処方薬が準備されると、処方薬はキャビネット40に運ばれ配置される。処方薬は一体型コンピュータ44に記録され、処方薬の受領が薬局に通知されてもよい。引出しは、看護スタッフが決定した患者に払い出すための非処方医療補給品または物品を含んでもよい。適切な時間に、看護師は、コンピュータ44を使用することによって医療物品が保管された引出しにアクセスし、特定の患者の処方薬および任意の必要とされる非処方物品を取り除いた後、厳重に保管されるように引出しを閉じる。キャビネットにアクセスするために、看護師は、さまざまな情報を与える必要があってもよく、セキュアアクセスコードを必要としてもよい。引出し42は、要求される条件に応じてロック状態または非ロック状態にされてもよい。
【0045】
コンピュータ44は、場合によっては、健康管理機関の他の施設と通信状態にあってもよい。例えば、コンピュータ44は、特定に日時に投与するためにキャビネットから患者の処方薬が取り除かれたことを、健康管理機関の薬局に通知してもよい。コンピュータはまた、特定の患者に投与するために処方薬および他の医療物品が取り除かれたことを、健康管理機関の財務部に通知してもよい。その後、この投薬代は、患者の請求書に適用されてもよい。さらに、コンピュータ44は、患者の薬剤投与記録(MAR)、いわゆる、e−MARを更新するために投与したことを通信してもよい。薬剤キャビネット40のコンピュータ44は、健康管理機関の他のコンピュータに無線接続されてもよく、または有線接続を有してもよい。キャビネットには車輪が取り付けられてもよく、必要に応じて、キャビネットを移動させたり、静止させ移動できないようにさせたりしてもよい。
【0046】
RFIDタグを使用するシステムは、多くの場合、RFIDリーダによって集められたデータを格納、処理および共有する保管庫として作用する1つ以上のホストコンピューティングシステムと通信状態にあるRFIDリーダを採用する。以下、図3および図4を参照すると、物品を追跡するためのシステムおよび方法50が示されており、同図において、図2のキャビネット40の引出し20が、この引出しにある物品に配置されたRFIDタグからデータを得るようにモニタされている。上述したように、さまざまな保管物品に取り付けられたRFIDタグがどの方向を向いていようとも作動するように、保管場にはEMエネルギーの安定した場が確立される必要がある。
【0047】
図3および図4において、エンクロージャにある物品を識別するための追跡システム50が示されており、RFIDリーダの一部としてEMエネルギーの送信機52を備える。送信機52は、送信アンテナ54によってEMエネルギーを引出し20内に送信するために、915MHzなどの特定の周波数を有する。送信機52は、RFIDタグが配置されたエンクロージャ20内に、必要なRFIDのEMエネルギーおよび任意の必要なタイミングパルスおよびデータを送信するように構成される。この場合、エンクロージャは、引出し20である。RFIDリーダ51のコンピュータ44は、送信期間と非送信期間、いわゆる、オフ期間との間を繰り返すように、EM送信機52を制御する。送信期間中、しきい値強度レベル以上で送信されるEMエネルギーは、引出しにあるRFIDタグを取り囲むことによって、RFIDタグを作動する。次に、送信機52は、オフ期間に切り換えられ、オフ期間の間、RFIDタグは、それぞれの格納データに応答する。
【0048】
図3の実施形態は、単一の送信プローブアンテナ54と、引出し20内に設置された作動RFIDタグによって送信されるデータを最適に読み取るように配向された単一の受信アンテナ56とを備える。単一の受信アンテナ56は、引出し20の外側または引出しの内側底部に設置されたリーダ50のコンピュータ44に通信可能に結合される。他の取付け場所も可能である。受信アンテナ56をコンピュータ44に結合するために、同軸ケーブル58または他の適切な単一リンクが使用可能である。異なる実施形態において、ワイヤレスリンクが使用されてもよい。図面には示されていないが、当業者であれば、コンピュータによって使用するために、ディジタルデータをRFエネルギーから分離するために、さまざまな追加の回路およびデバイスが使用されることを認識するであろう。このような回路およびデバイスは、図面が不要に複雑にならないように、図3および図4には示されていない。
【0049】
図4の実施形態は、図3の実施形態に類似しているが、異なる点として、2つの送信プローブアンテナ60および62と、3つの受信アンテナ64、66および68を使用している。システムに使用される送信プローブアンテナおよび受信アンテナの構成および数は、エンクロージャ20のサイズ、動作周波数、動作周波数とエンクロージャの固有共振周波数との関係、およびエンクロージャ内に置かれるRFIDタグの予想数に少なくとも一部基づいて変動してもよいため、エンクロージャ内のRFIDタグのすべてが確実に作動され、読み取られうる。RFIDリーダコンポーネントの場所および数は、特定の応用に依存しうる。例えば、比較的小さなサイズのエンクロージャには、より少ない数のコンポーネントが要求されうるのに対して、図4に示すように、より多くのエンクロージャには、さらなるコンポーネントが要求されうる。図3および図4にはブロック形で示しているが、システム50の各受信アンテナ56、64、66および68は、異なる実施形態において、サブアレイを備えてもよい。
【0050】
送信アンテナ(54、60および62)および受信アンテナ(56、64、66および68)は、異なる形をとるものであってもよい。以下にさらに詳細に記述されるように、一実施形態において、複数の「パッチ」またはマイクロストリップアンテナは、リーダの受信アンテナとして使用され、引出しの底部のさまざまな部分に隣接した位置に設置されるのに対して、送信アンテナは、引出しの上部の部分に隣接した位置に設置されたワイヤプローブである。図3および図4の実施形態において、RFIDリーダ50は、引出し20に対して有利な位置に同じキャビネットに永久的に取り付けられてもよいことに留意されたい。
【0051】
エンクロージャに密集されまたはランダムに配向されたRFIDタグに確実に呼び掛けるための1つの解決策は、共振キャビティとしてエンクロージャを処理することである。キャビティエンクロージャ内に共振を確立すると、エンクロージャにあるすべてのRFIDタグを作動可能な安定した電磁場が得られる。これは、キャビティの固有共振周波数でキャビティに横電場(TE)または横磁場(TM)を励起するために、1つまたは複数のプローブを使用して、導電性の壁からエンクロージャを作り、金属性エンクロージャ、いわゆる、キャビティを励起することによって実行されうる。この技術は、キャビティの寸法が動作周波数で共振を設定するように特に選択可能であれば、または動作周波数が特定のエンクロージャサイズに対して選択可能であれば、機能する。RFIDの応用に使用するために利用可能な周波数帯は制限されているため、RFID周波数を変更することは、多くの応用の選択肢ではない。逆に、エンクロージャの固有共振周波数が利用可能なRFIDタグ作動周波数に等しくなるように、エンクロージャの特定のセットの物理的寸法を要求すると、エンクロージャが特定のサイズのものである必要がある応用に対して、この技術の使用は制約される。この後者のアプローチは、保管が必要な医療物品の多くの異なるサイズ、形状および量の観点から実用的ではない。
【0052】
以下、図5を参照すると、図2に示すキャビネットのように、医療用キャビネットの部分として形成されてもよい、矩形エンクロージャ80が提供される。エンクロージャは、このようなキャビネットにある非金属性引出しの周りに位置するフレームとして具現化されてもよい。エンクロージャ80は、金属性または金属化された壁82、床83および天井84の表面から形成され、それらすべては導電性である。壁82、床83および天井84のすべては、本明細書において、エンクロージャの「壁」と呼ばれてもよい。図5は、エンクロージャ80の上面84に設置されたエネルギー結合またはプローブ86の使用を示す。この実施形態において、プローブ88は、エンクロージャの天井84にある孔90を通って軸方向に進む第1の部分94を有する点で、キャパシタプローブ88の形をとる。結合の目的は、ソース52(図3および図4を参照)からエンクロージャ80の内部96にエネルギーを効率的に転送することである。プローブのサイズおよび位置は、結合が効率的になるように選択され、プローブは最大の場強度の領域に配置される。図5において、TE01モードは、容量結合を使用することで確立される。プローブ88の屈曲部分94の長さおよび距離は、プローブとエンクロージャ80との間の電位差に影響を及ぼす。
【0053】
同様に、図6は、エンクロージャ112への外部エネルギーの誘導結合110を表す。結合は、エンクロージャの側壁116を通して取り付けられたループプローブ114の形をとる。このプローブの目的は、エンクロージャにTM01モードを確立することである。
【0054】
図5および図6に示す矩形のエンクロージャ80および112の各々は、図7に示され、かつ、fnによってグラフの横座標軸118に示される、固有共振周波数fnを有する。これは、グラフの縦座標軸119に示すように、エンクロージャ内の結合電力が最大である周波数である。エンクロージャに注入されたエネルギーが、fn周波数と整合しなければ、結合電力は、エンクロージャの共振現象から利益を受けない。動作周波数が変更できず、fn以外のものであり、エンクロージャのサイズが動作周波数に等しいfnを得るために変更できない場合、別の電力結合装置および方法を使用しなければならない。本発明の態様によれば、建設的干渉を用いてエンクロージャ内に定常波を得るために、エンクロージャ内に強制共振ffが生じるようにするための装置および方法が提供される。このような定常波は、エンクロージャ内にあるすべてのRFIDタグを作動するのに十分な強さの安定したエネルギー場をエンクロージャ内に確立する。
【0055】
エンクロージャと共振するEM波が入ると、EM波は、低損失で、エンクロージャ内で前後に跳ね返る。より多くの波エネルギーがエンクロージャに入るにつれ、定常波と結合し、定常波を強めて、強度が増す(建設的干渉)。キャビティの寸法が、共振周波数で波長の整数倍であるため、特定の周波数で共振が起こる。注入されたエネルギーが、エンクロージャの固有共振周波数fnにないこのような場合、本発明の態様による解決策は、エンクロージャにおいて「強制共振」を設定することである。この強制共振は、エンクロージャの物理的寸法が、共振キャビティと同様に、励起エネルギーの波長の整数倍に等しくないという点で、エンクロージャの固有共振とは異なる。建設的干渉が結果として生じ、定常波が確立されるように、エネルギーがキャビティ内に注入されるようにするプローブ長さとともに、プローブ位置を決定することによって強制共振が達成されうる。この場合、エンクロージャ内に注入されるエネルギーは、キャビティ内に発振場領域を設定するが、共振キャビティの固有共振周波数fnに存在する定常波とは異なる。この強制共振から励起されたEM場は、共振キャビティの固有共振で見られる場の構造とは異なるが、プローブの適切なプローブ配置とともに、安定したEM場が、RFIDタグに呼び掛けるためにエンクロージャに確立されうる。このような状態は図8に示されており、同図において、強制共振ffの結合電力の曲線が固有共振fnの曲線のものに近いことに留意されたい。
【0056】
以下、図9を参照すると、2つのエネルギー注入プローブを有するエンクロージャ120が提供される。第1のプローブ86は、TE01モードを確立するために、図5に従ってエンクロージャ120に容量結合される。第2のプローブ114は、TM01モードを確立するために、図6に従って、エンクロージャ120に誘導結合される。これらの2つのプローブは、両方とも、エンクロージャの固有共振周波数fn以外の周波数ffでエネルギーを注入するために、エンクロージャに結合される。エンクロージャの天井126および壁128に対してこれらのプローブを配置することで、エネルギーをエンクロージャに最適に結合し、エンクロージャ内に設置されうるRFIDタグを読み取るための安定したEM場をエンクロージャ内に確立する強制共振がエンクロージャ120内に得られる。本発明の態様によれば、エンクロージャの壁に対してこれらのプローブを配置すると、図8に示す強制共振曲線ffが得られる。
【0057】
図10を簡単に参照すると、エネルギー源122のインピーダンスをエンクロージャ120に整合するように機能するインピーダンス整合回路121が示されている。インピーダンス整合回路は、エンクロージャ120に作動エネルギーを供給する同軸ケーブル122と、エンクロージャの金属性の天井126の孔を通る容量結合プローブ88との間に設置される。図10の図に孔は示されていないが、金属性天井からプローブを電気的に絶縁する絶縁体123が図示されている。この場合、整合回路121は、エンクロージャ120によってエネルギーの反射を低減するために使用される抵抗減衰器124のみからなる。しかしながら、当業者であれば認識するように、容量コンポーネントおよび誘導コンポーネントは、エンクロージャおよび結合88に存在する傾向がある。また、図11は、同軸ケーブル/エネルギー源122およびエンクロージャ120のインピーダンスを整合する際に使用するためのパッシブ反応コンポーネントを有するインピーダンス整合回路124を表す。この例示的なインピーダンス整合回路124において、誘導コンポーネント125および容量コンポーネント127は直列接続されるが、抵抗コンポーネントおよび他の接続構成の追加を含む他の構成も可能である。
【0058】
図10および図11に図示されているレジスタ、インダクタおよびキャパシタなどのパッシブコンポーネントは、エネルギー源およびエンクロージャのインピーダンスを整合するように整合回路を形成するために使用されうる。これは、エンクロージャ内の結合電力に役立つ。しかしながら、パッシブ整合回路により、空のエンクロージャ、部分的に荷重されたエンクロージャ、または完全に荷重されたエンクロージャなど、特定のエンクロージャの荷重に合わせたインピーダンス整合が高められる。しかしながら、エンクロージャの内容物は可変であるため、インピーダンス整合は、エンクロージャの内容物の変動により最適化されない場合があり、エンクロージャのインピーダンス特性が変化する。
【0059】
エンクロージャの荷重の変動によって生じるこのようなインピーダンス整合の非最適化は、順電力および反射電力をモニタするために閉ループ検知回路を利用するアクティブインピーダンス整合回路を使用することによって解消されうる。以下、図12を参照すると、インダクタ132、キャパシタ134またはレジスタ(図示せず)などの1つ以上の固定値パッシブコンポーネントを備えるアクティブ整合回路130が提供される。加えて、同調キャパシタ134などの1つの以上の可変リアクタンスデバイスが回路に組み込まれ、これらの同調デバイスにより、この回路はアクティブインピーダンス整合回路になる。同調キャパシタ134は、バラクタダイオード、スイッチドキャパシタアセンブリ、MEMSキャパシタ、またはBST(チタン酸バリウムストロンチウム)キャパシタの形状のものでありうる。同調キャパシタ134には、制御電圧が印加され、変更されて、デバイスによって与えられる容量を変更する。同調キャパシタ134は、プローブ140とエンクロージャ142との間のインピーダンス整合を能動的に変化させる能力を与える。
【0060】
アクティブ整合回路を完了するために、2つのパワーセンサ146とともに双方向カプラ144が組み込まれうる。双方向カプラ144およびパワーセンサ146は、RFID送受信機148とアクティブ整合回路130とエンクロージャ142との間の順電力および反射電力を検知する能力を与える。コンパレータ150によって順電力と反射電力の比率を継続的にモニタすることで、同調キャパシタ134を調節して、プローブ140をエンクロージャ142にインピーダンス整合したままにするために使用する測定基準が得られる。エンクロージャの内容物の変更に伴い、インピーダンス整合を継続的にモニタし、高める能力は、アクティブ整合回路130を用いて提供される。
【0061】
以下、図13の側断面図を参照すると、この実施形態においてファラデー箱として動作する、本明細書においてキャビティ166とも呼ばれる、エンクロージャ内に取り付けられた2つの天井取付け型160のプローブアンテナ162および164が示されている。図示するように、ファラデー箱166は、壁168(複数の壁のうちの1つを図示)168と、背面170と、床172と、天井160と、正面161(前壁の位置のみを図示)とを備える。キャビティを形成するすべての表面は、導電性であり、互いに電気的に接続され、2つのプローブ162および164によって注入されたエネルギー周波数ffを伝導可能なように構造的に形成される。この実施形態において、キャビティ166は、図2に示すものに類似した医療補給品キャビネットの一部を形成してもよい金属フレーム167として構築されてもよい。金属フレーム内には、スライド可能な引出しが取り付けられてもよい。この実施形態におけるスライド可能な引出しは、電気的に不活性の材料から形成され、すなわち、正面を除き、導電性ではない。引出しがキャビネット内にスライドして閉構成になると、引出しの導電性正面パネルは、金属性フレーム167の1つまたは複数の別の部分と電気的に接触した状態になることで、ファラデー箱167の前壁161を形成する。
【0062】
各プローブの中央導体180によるキャビティ内への差込み量または保持量は、最適な結合を達成するように選択される。プローブの屈曲部分94の長さは、良好なインピーダンス整合が得られるように選択される。キャビティの壁に対するプローブの位置は、キャビティに定常波を生じるように選択される。この実施形態において、プローブアンテナ162および164は、前壁161および背壁170からそれぞれ特定の距離D1およびD3に設置されたものである。本発明の1つの態様によれば、これらのプローブアンテナは、他方のプローブが非作動状態になった後、連続的に作動されるのみである。この構成により、建設的干渉が結果的に得られるように注入エネルギー波が同相である場合、定常波が得られることが分かった。
【0063】
図14は、挿入される物品保管用引出しに安定したEM場を確立するためにファラデータイプのエンクロージャ166に設置された2つのプローブアンテナ162および164を再度示す、図13のプローブ構成の正面斜視図である。ファラデーキャビティ166が金属性フレーム167として組み立てられることに再度留意されたい。同図において、キャビティは、「箱」の正面がない点で不完全である。一実施形態において、この正面は、スライド可能な引出しの導電性正面パネルによって与えられる。引出しがキャビネット内にスライドされると、引出しの正面パネル以外の他の部分はプラスチックであるか、またはプラスチックでなければ、非導電性のものであるが、正面パネルは、金属性フレーム167の他の部分と電気的に接触した状態になることで、ファラデー箱166が完成する。本明細書に記述され図示された実施形態において、2つのプローブアンテナ162および164は両方とも、フレーム166の側壁166および168の間の中心線に沿って設置される。エンクロージャは、一実施形態において、19.2インチ(約48.8cm)幅であり、プローブアンテナは、各側壁から9.6インチ(約24.4cm)の間隔が空けられている。2つの側壁間のこのような中心合わせした場所は、一実施形態の場合の便宜上のものである。プローブは、別の実施形態において、どの場所に配置されてもよい。この実施形態において、互いからのプローブ162および164の間隔は、連続的に作動されるためにほとんど重要ではない。図示していないが、キャビティ166内にある作動されたRFIDタグからの応答信号を受信するために、2つの受信アンテナもファラデー箱166内に配置される。
【0064】
図13に示すように、各プローブが、キャビティの天井160と容量結合するために使用される屈曲部分を有することに、図面の参照から留意されたい。正面側プローブ162は前方に曲げられているのに対して、背面側プローブ164は後方に曲げられている。この構成の目的は、引出しに確立されるEM場によって、より多くの空間的多様性と、より良好な到達範囲とを得ることである。キャビティ166内に安定した場を達成するために、他の配列も可能である。さらに、エンクロージャ166の良好なEM場の到達範囲が得られるように、特定のエンクロージャ166に2つのプローブが使用されている。
【0065】
図15は、図13および図14の二重プローブアンテナ162および164の切欠側面斜視図であり、明確にするために、引出しは取り外している。正面側プローブ162は、図示するように、動作周波数Ffの1/2λだけ左側の壁から間隔を空けて設けられている。各プローブは、図13に示すように、エンクロージャ166の天井160と容量結合するために使用される屈曲部分を有することに留意されたい。引出しのEM場によってより多くの空間多様性およびより良好な到達範囲を得るために、正面側プローブ162は、エンクロージャのより前方部分と結合するために前方に曲げられるのに対して、後方側プローブ164は、エンクロージャ166のより後方部分と結合するために後方に曲げられる。エンクロージャ内に安定した場ならびにさらなる空間多様性および到達範囲を達成するために、他の配列も可能である。
【0066】
図16は、フレーム167内にスライド可能に取り付けられた引出し180の部分を示すファラデー箱166を形成するフレーム167の正面上向き斜視図である。引出しの金属性の正面パネルは、スライド動作をより明確に見られるように取り外されている。二重天井取付け型のプローブアンテナ162および164が、電磁的に不活性の保護カバー182によって被覆され保護されていることに留意されたい。引出しは、プラスチックまたは低RF定数を有する他の電磁的に不活性な材料などの非金属性材料で形成される。フレーム167の背面に設置されたコイル186およびファン188を備える冷却システム189を見られるように、引出しの背面184が切り取られている。この場合、引出し180は、金属性のスライドハードウェア190とともに、ファラデー箱のフレームにスライド可能に取り付けられる。引出しのスライドハードウェアは、エンクロージャ166のフレーム167の側面付近にあり、エンクロージャの側壁168の金属性スライドハードウェアと電気的に接触した状態にあってもよいため、これらの金属レールは、エンクロージャ内に確立されるEM場に小さな影響しか及ぼさない。
【0067】
図17は、図16のものと反対の角度から上向きに見た正面斜視図であるが、引出しは取り外されている。フレーム167は、この実施形態において、引出し180のスライドを受けるための取付けレール192を含む。この実施形態において、取付けレールは金属材料で形成されるが、ファラデー箱の側面168に固着されるため、箱と電気的導通状態にある。また、同図は、引出しに保管された物品へアクセスできるように、引出しの外向きのスライドを促すように使用されるばね機構194を示す。ばねは、引出しのラッチが解除されると、引出しを外向きに自動的に押し出すように構成される。
【0068】
図18は、図13〜図15に示すフレーム167の天井160における、2つのTE01モードの容量結合プローブ162および164を配置の測定値を示す略図である。この実施形態において、RFIDタグの動作周波数は915MHzであり、したがって、波長は0.32764メートルまたは1.07494フィートである。したがって、1/2波長は、0.16382メートルまたは6.4495インチである。プローブの各々の容量結合屈曲部分200の長さは、5.08cmまたは2.00インチである。エンクロージャ内へのプローブの軸方向拡張部202の長さは、絶縁体204からエンクロージャ166内への測定した場合、3.81cmまたは1.50インチである。この実施形態におけるプローブの構成および配置は、915MHzの動作周波数に基づいたものである。一実施形態において、エンクロージャ166の深さは、16.1インチ(40.89cm)であり、幅は19.2インチ(48.77cm)であり、高さは3インチ(7.62cm)である。このサイズおよび形状(矩形)のエンクロージャおよび915MHzの動作周波数に最適なプローブ配置は、正面側プローブと前壁との間隔が5.0インチ(12.7cm)で、背面側プローブと背壁との間隔が5.0インチ(12.7cm)であることが分かった。上述したように、この実施形態において、プローブは連続的作動されるのみである。
【0069】
図19は、2つのマイクロストリップまたは「パッチ」アンテナ210および212、ならびにそれぞれのアンテナと、一実施形態において、SMAコネクタ(図示せず)にアンテナが接続されるエンクロージャの背面との間に位置するマイクロストリップ導体214および216の図16のエンクロージャ166内のサイズおよび配置の略図である。供給ライン58(図3)は、これらのSMAコネクタに接続されてもよく、さらなる処理のためにRFID信号を通信する際に使用するためのコンピュータ44にルーティングされてもよい。マイクロストリップコンポーネントのいくつかの間隔の測定値はインチ単位で与えられる。9.7インチの間隔は、24.64cmと同等である。0.67インチのマイクロストリップラインの幅は、17.0mmと同等である。1.4インチの間隔は、3.56cmと同等である。異なる数のこのようなアンテナとともに、他の構成およびタイプの受信アンテナが使用されてもよい。この実施形態において、受信アンテナは、受信パッチアンテナがファラデー箱の金属表面と接触した状態にならないように、金属性エンクロージャフレーム167の底部内側表面の絶縁材に取り付けられる。
【0070】
以下、図20を参照すると、上述したエンクロージャにおける場の強度または場の強さは、ボルト/メートル単位で示される縦座標軸およびメートル単位で示される横座標軸で示される。最大の場強度が、約5.0インチ(0.127m)の位置で生じ、この位置は、プローブの位置が前壁から5.0インチ(12.7cm)にあり、動作周波数が915MHzであることから生じていることが図から分かるであろう。以下、図21を参照すると、場の強度の大きな上昇が5.0インチ(12.7cm)で見られるが、スケールが縮小されている。場の強度が右側壁で低下するが、左側壁の非常に近いところで強いままであることが、より明確に見てとれる。したがって、ある実施形態において、右側壁から5.0インチ(12.7cm)の位置にある第2のプローブが使用されたことで、図21に示すものと鏡像の場の強度が得られる。2つのプローブ162および164は、連続的に作動されるものであり、両方が同時には作動されない。エンクロージャ166のより良好なEM場の到達範囲が2つのプローブを用いて得られ、前壁161の付近に位置付けられた物品のRFIDタグが、正面側プローブ162によって作動され、背壁170の付近に位置付けられた物品のRFIDタグが、背面側プローブ164(図13を参照)によって作動されることに留意されたい。
【0071】
理論に縛られることを望むものではないが、正方形または矩形の非共振キャビティにおいて、TEモードでのプローブ場所を導き出す際、以下の方程式が有用でありうる。
【数1】
式中、N=正の非ゼロ整数、例えば、1,2,3,など
L1=ローブと背壁との間の距離
L2=プローブと前壁との間の距離
λg=キャビティの波長
【0072】
L1は、TEモードでゼロではなく、TEモードを励起するためのプローブが、前壁または背壁の位置にはないことを意味する。TMモードの場合、方程式は同じであるが、Nはゼロおよび他の正の整数に等しい。プローブ位置は、前壁または背壁からλg/2ではない。L1およびL2は、Nが方程式を満たす正の整数でありうるように選択される。例えば、上述したエンクロージャ166の場合、
L1=4.785インチ(約12.154cm)
L2=11.225インチ(約28.511cm)
λg=12.83インチ(約32.59cm)
したがって、
【数2】
【0073】
実際のエンクロージャでは、方程式で示す値(4.785インチ(約12.154cm)とはわずかに異なる場所(5.0インチ(約12.7cm))にプローブが設置されるが、これは、場合によっては、キャビティにプラスチック引出しを挿入することで、反射信号からの位相に変化がもたらされるためである。上記の方程式は、前壁および背壁の両方からの反射位相が等しくなるように、すなわち、プローブの場所で「同相」になるように立てられる。
【0074】
エンクロージャの波長λgは、導波管方程式を用いて計算できる。矩形キャビティの方程式を以下に示す。この計算には、遮断周波数が必要である。円筒状のキャビティまたは他の形状の場合は、方程式は変化する。
【0075】
遮断周波数は、gが消滅する点のものである。したがって、ヘルツ単位の遮断周波数は、以下のとおりである。
【数3】
メートル単位の遮断周波数は、以下のとおりである。
【数4】
式中、a=内部の幅
b=内部の高さ
m=「a」方向の場の1/2波長変動の数
n=「b」方向の場の1/2波長変動の数
ε=誘電率
μ=透磁率
【0076】
最低遮断周波数を有するモードは、主モードと呼ばれる。TE10モードは、方形導波管に非ゼロの場の表現を与える最小可能モードであるため、主周波数が以下のようになるa>bの方形導波管の主モードである。
【数5】
【0077】
波動インピーダンスは、横電場および横磁場の比として定義される。したがって、インピーダンスは、以下のとおりである。
【数6】
【0078】
管内波長は、導波管に沿った2つの同位相平面間の距離として定義され、以下の式に等しい。
【数7】
式中、
【数8】
【数9】
【0079】
図22は、図2に示すような複数引出し医療用キャビネットのブロック電気信号図を表す。この場合、キャビネットは、8段の引出し220を有する。各引出しは、2つの上部アンテナと、2つの底部アンテナと、引出しをセキュリティ保護するためのロックセンサ222付きロックとを含む。各引出しのアンテナとの間でやりとりする信号は、RFマルチプレクサスイッチ224を通して供給される。各RFマルチプレクサスイッチ224は、この実施形態において、2段の引出しに対してRF信号のルーティングを取り扱う。RFID作動場およびRFID受信信号が、それぞれのRFマルチプレクサスイッチ224を通ってメインRFIDスキャナ230に送られる。スキャナ230の出力は、この場合、有線接続234および無線接続236によって、関連情報を遠隔地に通信する際に使用するためのマイクロプロセッサ232に向けられる。また、図20には、電力接続、電力分配、バックアップバッテリ、配線PCBA、USBサポート、冷却などのさまざまな支持システムが示されている。
【0080】
一実施形態によれば、引出しは連続的にモニタされる。各引出し内において、アンテナは、関連するマルチプレクサ224によって連続的に作動される。信号および電気制御システムの他の実施形態も可能である。
【0081】
本明細書において、一実施形態としてRFIDタグが使用されるが、電磁エネルギーによって通信する他のデータキャリアも使用可能であってもよい。RFエネルギーについて詳細に記述されているが、他の形式のEMエネルギーも使用可能である。
【0082】
内蔵式引出しモジュール
本発明の態様によれば、組み込み式のRFID検出システムを含まない薬剤キャビネットが、在庫の自動個体識別および追跡を行うことができるものになるように、RFID使用可能にされるか、変形されるか、または後付けされうる。同様に、組み立てられているキャビネットに、キャビネット、1つまたは複数の引出しを、個体識別および追跡用の自動在庫管理を実行する自動システムにするために、本明細書に開示されたRFID使用可能システムが組立て時に装着されてもよい。本明細書のシステムは、薬剤キャビネットのみに適用可能なものではなく、品物の他のタイプの容器に採用されてもよい。キャビネットは、本明細書において、一例としてのみ使用され、本発明は、これらのキャビネットのみとの使用に限定されるものではない。
【0083】
本明細書に開示されたRFID使用可能システムによれば、自己在庫管理が任意の方式で行われうる。本明細書の開示によるRFID使用可能な容器内の品物は、いつでも個体識別され追跡されうる。例えば、このような自己在庫管理は、真夜中や、一時間毎、引出しや容器が開かれるたび、より高い頻度で、またはより低い頻度で自動的に起こりうる。労力の要求基準が下がり、完全な柔軟性および多様性が提供される。以下に記述するように、このデザインから多くの利点が生じる。
【0084】
以下、図25を参照すると、薬剤キャビネット332内に非金属性のスライド可能な引出し330が取り付けられるように構成される。引出し330は、保管および投与のために薬剤などの医療物品が内部に配置される「ポケット」336を形成する引出しにさまざまな仕切りまたは区分け334を含む。この実施形態において、引出しがスライド可能に内部に取り付けられるキャビネットは、ファラデー箱として動作するように引出しを取り囲む金属性フレーム338を含む。以下、図26を参照しながら、引出し330の正面部分340は、金属342で形成されてもよく、または引出しが非金属性のものである場合、引出しが閉構成にあり、引出しの周りにファラデー箱が完成しているとき、キャビネット332の金属性フレーム338の残りと接触するようなサイズにされ配置される金属性部分を含む。引出しのファラデー箱内に本明細書に記載する内蔵式RF引出しモジュールを据え付けることによって、フレームは、引出しに配置されたRFIDタグ付き物品の存在を検出するためのRFシステムをフレーム内に有する。
【0085】
図23に示す実施形態において、健康管理施設が、患者用に処方され、または一般的使用のために薬剤キャビネットに保管するための薬剤および他の医療補給品のリストを維持できるようにデータベース320が使用される。
【0086】
図27において、底部引出し402が取り外された薬剤キャビネット400が示されている。この場合、底部引出しはプラスチックで形成され、引出しをRFID使用可能にする際に使用するためのファラデー箱を提供しない。また、引出しに配置されたRFIDタグを有する品物が検出、個体識別および追跡可能である環境を取り外された引出し402に与えるようにされたRFID使用可能な引出しモジュール404が示されている。以下に詳細に記載されるように、モジュールは、この実施形態において、引出し402によって形成され、または引出し402の周囲に形成されるファラデー箱内に取り付けられなければならない、プローブアンテナおよび受信アンテナを含む。本明細書に開示されるRFID使用可能モジュールが、容器の共振周波数に関係なく、容器に安定したEM場を発生できるため、図27に示すような引出しの後付けが可能になる。RFID使用可能モジュールシステムによって生じる安定したEM場は、RFIDタグが読み取られ、タグが付けられた品物が個体識別および追跡可能なように、引出し内のすべてのRFIDタグを作動可能である。
【0087】
この引出し402はプラスチックで形成されているため、ファラデー箱は引出しの周りに形成されなければならない。したがって、箱406として図27に略図的に表しているファラデー箱は、引出しの周囲に形成される。図示した実施形態において、ファラデー箱は、引出しがキャビネット内に再び挿入されて閉じられると、引出しを完全に囲むように、キャビネット400のフレーム内に取り付けられる金属性の壁を備えてもよい。金属性の壁は、さまざまな方法で形成されてもよく、その方法の1つは、フレーム内の引出しの周囲に金属箔を取り付けることである。金属箔は、引出しの正面408と係合して箱を完成するのに十分な大きさのものでなければならない。引出しの正面は、金属箔と接触し、引出しの正面全体にわたって箱を与えるために、正面パネルの外側、側面および内側に金属ペイントが塗装されてもよい。別の実施形態として、ファラデー箱を作るために、キャビネットのフレーム内に金属ペイントが使用されてもよい。個体識別され追跡されている品物が内部にある容器を取り囲むように、ファラデー箱を構築し、または完成するために、他の手段が使用されてもよい。
【0088】
引出しが金属性のものであり、引出し自体がファラデー箱を形成する実施形態において、モジュール404のアンテナは、箱内の場およびRFID送信と通信するために、ケージ内にあるように取り付けられなければならない。ある場合において、キャビネットおよび引出しの構成に応じて、モジュールは引出しの上方に配置され、他の場合において、モジュールは引出しの下方に配置されてもよい。さらに、キャビネットにある2つ以上の引出しは、本発明の態様によりRFID使用可能にされうる。
【0089】
上述したように、モジュール404は、引出しをRFID使用可能にするために、引出しの上方に取り付けられうる。図27に示す実施形態において、モジュールは、モジュールの表面の上方にある距離だけ突出する2つのプローブアンテナ414を有する。この場合、プローブアンテナは、モジュールの中央に位置決めされる。これらのアンテナを収容するために、引出しが開位置に引かれ、閉位置に押されるときに、引出しの背面がプローブアンテナにダメージを与えないように、引出しの背面にノッチ410が形成されている。図25に示すように、引出し内に区分けがあれば、区分けにノッチ412が形成されてもよい。図17に示すように、これらのプローブアンテナは、保護カバー182によって覆われてもよい。モジュール404は、スタンドオフおよびねじを引出しの周囲にあるフレームの天井内に取り付けることによって、ファラデー箱内に取り付けられてもよい。他の取付け技術も可能である。
【0090】
図27は、モジュールと電源418との接続およびデータ通信420とローカルコンピュータ416との接続を示す。モジュール404がイーサネット(Ethernet、登録商標)(図示せず)に接続される実施形態において、電力は、イーサネット接続(パワー・オーバー・イーサネット、いわゆる「PoE」)によってすべて供給されてもよい。さらに、ローカルコンピュータ416は、キャビネット400のRFID使用可能引出し402にあるモジュール404によって、個体識別され追跡された品物のRFIDデータを処理するようにプログラミングされてもよく、これらの品物のデータベースおよびこれらの品物に関連付けられたRFIDデータを作成するようにプログラミングされてもよい。処理されたRFIDデータおよびデータベースは、図23に示すような中央サーバ310およびそのデータベース320に通信されてもよく、他の場所または追加の場所に通信されてもよい。処理されたRFIDデータおよびデータベースは、図23にも示すように、カート316に通信されてもよい。中央サーバにおいて、必要に応じて、プログラムが、受信したRFIDおよび品物データをさらに処理するようにサーバを構成してもよい。また、ローカルコンピュータ416は、据え付けたハードウェアのデータベース、引出しに関係付けられたハードウェアアドレスおよび他のさまざまなデータベース項目を含む。このようなプログラムおよびデータベースの構造は、当業者によく知られているため、本明細書においてさらなる詳細は記載しない。
【0091】
以下、図28を参照すると、RF引出しモジュール404は、2つのメインシステムと、プラスチックベースと、RFIDリーダ/アンテナプリント回路基板とから構成される。プラスチックベース430は、およそ19インチ(48cm)×16インチ(41cm)であるか、または、一般に、RF使用可能な引出し402のサイズである。プラスチックベースは、アンテナ放射要素432の形状のパターン化された導電性材料が、メサ構造434に熱成形された4つのエリアを含む。アンテナ放射要素は、メサの高さおよび空気の誘電体に対して最適化される。プラスチックベースは、アンテナ放射要素の接地基準である遮蔽引出しエンクロージャの部分である金属表面上にある。導電性材料は、プラスチックベースの上部にパターン化され、RFIDリーダプリント回路基板438に放射要素を接続するために、メサおよびプラスチックベースの両方の上に伝導性トレース436を含む。
【0092】
RFIDリーダ/アンテナのプリント回路基板438は、RFIDリーダモジュール440と、2つのX4 RFスイッチ442と、2つのプローブアンテナ444用の取付けパッド446と、プラスチックメサ434上のパッチアンテナ432にスイッチを接続するためのトレース436とに対応するようにされている。プリント回路基板は、RFIDリーダモジュールをプリント回路基板に機械的に取り付けるための取付け孔を含む。プリント回路基板は、電力調整と、USBインタフェースと、RFIDリーダモジュール440をサポートするためのパワー・オーバー・イーサネット回路とを含む。RFIDリーダモジュール440の2つのRFポート450は、2つのMMCX to MMCX同軸ケーブルを介してプリント回路基板に接続される。これらのケーブルからの信号は、X4 RFスイッチ442の入力にそれぞれ接続される448。1つのプローブアンテナ用のはんだ位置、2つのパッチアンテナ用の配線トレースおよび接続なしの1つのスペア出力のように、2つのX4 RFスイッチの各々の4つの出力が接続される。
【0093】
RFIDリーダのプリント回路基板440は、プラスチックベース430の中心に機械的に付着される。プリント回路基板の配線トレースおよびプラスチックベースの導電性トレースは一致することで、プリント回路基板と、熱成形されたプラスチックベース上のアンテナ要素との間に容量結合接続452が得られる。
【0094】
図29は図28の側面図を表し、プローブアンテナ444が後方にある2つのメサ構造434を示す。また、RFIDリーダモジュール440も見られる。同様に、図28の端面図である図30は、2つのメサ434と、プローブアンテナ444と、RFIDリーダ440とを示す。
【0095】
RF引出しモジュール404を実装することで、以下の結果が得られる。
1.RF信号完全性の向上
2.RF使用可能な引出しの組立て、メンテナンスおよび修理の簡潔化
3.RF引出しの信頼性の向上
4.モジュール製品構成(RFID使用可能な引出しが、1つのユニットとして、またはいくつかの引出しを含むキャビネットの一部として販売可能)
【0096】
内蔵式のRFID使用可能な引出しモジュール404は、RFID技術または他の技術によって引出しの内容物の検出を与えるために、薬剤引出し、または他のタイプの引出しや容器の隣の場所に位置付けられてもよい。引出しは、例えば、薬剤キャビネット400の内外へスライド可能であってもよく、キャビネット内にスライドされると、モジュールは、引出しにRFIDタグ付き物品を検出および個体識別するように動作可能にされてもよい。上記説明および添付の図面によるモジュール404は、必要に応じて、電力およびデータ通信ラインと接続するだけで、引出しで完全な検出システムを確立するために使用されてもよい。引出しのサイズに応じて、使用するアンテナ要素およびプローブアンテナの数は増減されてもよい。また、異なる位置にある構造が使用されてもよく、例えば、開示されるメサ構造が使用されなくてもよく、または異なる形をなすものであってもよい。別の例として、RFIDリーダのプリント回路基板は、異なる形をなすものであってもよく、または別の方法でベースと一体化されてもよい。
【0097】
本明細書に開示されたシステムにより、RFID使用可能な引出しシステムの製造が容易になる。RFID使用可能なモジュールは、ファラデー箱内の差込み式のコンポーネントになる。このデザインにより、既存の引出しベースのキャビネットシステムの一部を後付けできる。このデザインは、容器に安定したEM場を発生するため、この容器の共振周波数に関係なく、多様な引出しおよび容器に有用である。一例として、「一段」の引出し、「二段」の引出しなどに有用である。これにより、ファラデー箱のサイズおよび荷重に基づいて、アンテナをさらに自動同調または動的同調することができる。例えば、より多くのタグ付き品物が引出し内に配置されると、より多くの品物がファラデー箱のRF場内にあるため、引出しの「荷重」が変化する。逆に、品物が取り除かれると、RF場の荷重も変わる。このような自動同調は、当業者に知られており、本明細書においてさらなる詳細は記載しない。例えば、Frimanらの米国特許第7,812,774号明細書およびShamblinらの同第7,830,320号明細書を参照されたい。さらに、RFID使用可能なモジュールは、電源および通信ポートのみしか見えず、SMAコネクタおよびRFケーブルを排除した内蔵式のモジュールである。これにより、組立ておよびテストコストが削減され、システムのサービス性が大幅に高められる。
【0098】
上記利益は、少なくとも以下のものを含む。
‐ 複数の品物を一度に自己在庫管理する能力
‐ 最小/最大在庫レベルに対して在庫確認する能力および再発注手段
‐ 投薬ミスの防止
‐ 偽造防止
‐ 電子ペディグリ/シリアル番号化能力
‐ ロット管理
‐ NDC管理
‐ 使用期限管理
‐ データマイニング
‐ データベースシステムの提供により、特定のRFIDタグをモニタし、タグが付けられた品物に関する補助情報とタグとを関連付ける能力
【0099】
本明細書に開示されるRFID使用可能なモジュールシステムとともに上記に挙げた利益を提供するためにデータを受信、送信および操作する構成システムおよびプロセッサが当業者に知られており、本明細書においてさらに記載しない。Andreassonらの米国特許第7,140,542号明細書およびAndreassonらの同第7,175,081号明細書を参照されたい。これらの内容全体は、参照により本明細書に援用され、本発明の譲受人に譲渡される。
【0100】
図31は、本発明の態様による方法を与える。引出しがRFID使用可能になると(470)、引出しが閉位置にあるとき、ファラデー箱構造内にあるかを決定する確認がなされる(472)。ファラデー箱内になければ、引出し内に適切なEM場を確立してRFIDタグを検出するように、引出しの周囲に完全にファラデー箱を設置するアクションをとる(474)。ファラデー箱がうまく確立されると、RFID使用可能モジュールは、引出しにあるこのようなRFIDタグを検出できるように、引出しに対してキャビネットに取り付けられる(476)。プローブアンテナは、引出しの全体に最大の場の強さを確立するように同調される(478)。1つまたは複数のデータラインおよび電源は、RFID使用可能モジュールに接続される(480および482)。適切なプロセッサ構成プログラムは、RFIDタグデータが処理可能であることで、RFIDタグに関連付けられた品物が個体識別され追跡されるように組み込まれる。
【0101】
便宜上、本明細書において使用する場合、周知のファラデー箱またはファラデーシールドまたはファラデーキャビティは、導電性材料によって、またはこのような材料のメッシュによって形成されたエンクロージャである。このようなエンクロージャは、外部の静電場を締め出す。
【0102】
明細書および以下の特許請求の範囲を通して、文脈において特段の要求がない限り、「comprise(含む)」という用語、およびその変形、例えば、「comprises」および「comprising」は、開放された包括的意味で解釈されるべきであり、「を含むが、〜に限定されるものではない」という意味のものである。
【0103】
最も実用的かつ好ましい実施形態であると現在考えられているものを用いて本発明を記載してきたが、本発明は、開示された実施形態および要素に限定されるものではなく、それとは反対に、添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲内に含まれるさまざまな修正例、特徴の組み合わせ、同等の配列および同等の要素に及ぶことが意図されていることを理解されたい。
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、2010年2月9日に出願された同時係属中の米国特許出願第61/302,912号および2009年12月7日に出願された同時係属中の米国特許出願第12/631,861号の一部継続出願の利益を主張し、両出願の内容全体は、参照により本明細書に援用されるものとする。
【技術分野】
【0002】
本発明は、一般に、薬剤管理の分野に関し、特に、引出しのような容器内の薬剤の識別および追跡を提供する薬剤管理システムおよびその関連方法に関する。
【背景技術】
【0003】
長年にわたり、薬剤取出システムが使用されてきた。このようなシステムの当初の目的は、手作業による配布に伴う投薬ミスと、大量の在庫にかかる高い維持費と、を削減することであった。現在のシステムには、多くの利点があるが、この利点は、調剤配布に伴うコストの削減と、在庫管理の改善と、実物管理と、自動ドキュメンテーションと、ミスのさらなる低減と、専門家である薬剤師および看護師の業務負担の軽減と、を含む。
【0004】
規模の大きな医療施設において、医薬品の主な在庫の保管場所は、医薬品の使用者である患者から遠く離れた位置にある場合が多い。これらの保管場所から患者へ医薬品を安全かつ正確に届けるために、種々のシステムが提案されかつ実用化されてきた。「カート交換」システムと呼ばれる初期のシステムでは、薬剤カートが、中央薬局から離れた医療施設のナースステーションに運ばれ、そして、完全に供給された状態のカートと定期的に交換される。典型的に、これらのカートは、患者毎に個別の引出しに仕分けされた24時間供給分の薬剤を含む。「使用済み」のカートは、次の24時間分の薬剤が補給される供給エリアの中央薬局に戻される。睡眠薬は、フロアにある鍵付きの箱に保管されており、2人の看護師が別々の鍵を有することと、書面による記録と、が必要である。
【0005】
一部の薬剤に対しては、カート交換システムが未だに使用されているが、日中に中央薬局からの多くの新たなオーダを処理する作業や、大量の未使用薬剤を戻す作業は、多大な労力を要することになる。これらの薬剤の在庫補充は、正確に行われる必要があり、かつ、極めて時間を消費する。その結果、ナースフロアに自動化されたプロセッサベースの薬剤キャビネットを使用することが増えてきた。各キャビネットのプロセッサは、これらの固定キャビネットの医薬品へのアクセスをモニタし、現在の手持ち在庫と、補給が必要なものと、が中央薬局の場所にある中央処理装置に送信される。これらのプロセッサベースの取出キャビネットの当初の目的は、睡眠薬をより便利に管理することと、一般的な薬剤および他の医療補給品の「フロアストック」を有することと、であり、看護師は、交換カートにのせて薬局から運ばれてくる24時間分の補給を待ちながら、または、特別にオーダしたりしながら、フロアストックから、要求された新しい処方薬の初回投与を行うことができていた。
【0006】
以下、図23を参照すると、薬剤キャビネット300は、典型的に、制御ユニット306に連結された一体型のタッチスクリーン304と、中央サーバ310とリンクするための通信リンク308と、1つ以上のカート316とリンクするための通信リンク314とを備える。このような通信リンク308および314は、有線通信用の接続として概略的に示されているが、通信技術の当業者に認識されるように、無線通信用の送信機および受信機(例えば、RF、IR、音響)であってもよい。通信リンク308および314を介して入力されるデータに加え、タッチスクリーン304に含まれる仮想キーボードを介して、データが手動入力される。明確には示していないが、図示しているポインティングデバイス318以外にも、キーボードが設けられてもよい。キーボードおよびポインティングデバイスは、異なる形状をなすものであってもよい。一実施形態において、キーボードはフルサイズのものであってもよく、別の実施形態において、キーボードは小型のものであってもよい。同様に、ポインティングデバイスは、マウス、タッチパッドまたは他のデバイスであってもよい。通信リンク308は、サーバ310との接続であり、かつ、必要に応じて、薬剤キャビネット300を、サーバ310がリアルタイム更新のためにアクセスするデータベース320とのインタフェースになれるようにする。また、患者の薬剤、静脈注射用の溶液などを調合する際に、事前に権限を与えられたヘルスケアアテンダントを導くのに必要な情報を与える。図24に示す別の実施形態において、フルサイズの実際のキーボード322またはキーパッドが提供され、タッチスクリーン304の機能を代替したり、高めたりしてもよい。
【0007】
これらのプロセッサベースの薬剤キャビネット300は、そのフロアの患者が昼夜必要とする可能性のある薬剤の大部分を保管する能力を提供する。多くの場合、これらの薬剤は、鍵の掛かった引出しの中のポケットに保管される。看護師は、自分の個人IDと、特定の患者のIDとを入力すると、選択された患者に認められた薬剤全般を確認し、そして、一般に、「投薬期限薬剤」と呼ばれる、特定の時間に期限がくる薬剤を確認する。次に、中央薬局の業務は、キャビネットに保管された薬剤の手持ちストックをモニタし、そして、定期的な間隔で薬剤レベルを補充することである。このプロセスの重要な利点は、中央薬局に戻される未使用の薬剤がないことである。つまり、初回投与(その後の投与)がすぐに利用可能であることを意味する。
【0008】
薬剤を取り扱う場合、キャビネットから取り除かれた薬剤と、残ったままの薬剤とを決定する際に、手動プロセスがとられてきた。このような手動による取扱い、検査および調査には時間がかる。効率が高められるように、これらの要求の少なくとも一部を自動化可能なシステムおよび方法を提供することが望まれる。
【0009】
無線自動識別(「RFID」)は、応答デバイス(RFID「タグ」またはトランスポンダとして知られている)の応答を促すために電磁エネルギー(「EMエネルギー」)を使用して、個体識別を行い、場合によっては、さらに保管されたデータを提供するものである。RFIDタグは、典型的に、メモリ、回路およびアンテナを形成する1つ以上の導電性トレースを有する半導体デバイスを含む。典型的に、RFIDタグは、トランスポンダとして作用し、インテロゲータとも呼ばれるリーダから受信したRF呼掛け信号に応じて、半導体デバイスメモリに格納された情報を提供する。いくつかのRFIDタグは、パスワードおよび/または暗号化などのセキュリティ手段を含む。また、多くのRFIDタグにより、RF信号を介した半導体メモリへの情報の書き込みおよび格納が許可される。
【0010】
RFIDタグは、追跡される物品に組み込まれるか、または取り付けられてもよい。タグは、接着剤、テープまたは他の手段で物品の外側に取り付けられてもよい場合もあり、タグは、包装に含まれているような場合など、物品内に差し込まれたり、物品の容器内に設置されたり、または衣服に縫い付けられたりしてもよい。RFIDタグは、典型的に、固有の個体識別番号が付与されて製造されるが、この個体識別番号は、チェックディジットが取り付けられた数バイトの単純な通し番号である。この個体識別番号は、製造中にタグに組み込まれている。ユーザは、この通し番号/個体識別番号を変えられず、メーカーは、各通し番号を一度しか使用しないことを保証する。この構成は、RFIDタグが読取り専用であり、かつ、個体識別番号でのみ呼掛け信号に応答する点で、この技術の低コストの限界である。典型的に、タグは、個体識別番号に継続的に応答する。タグへのデータ送信はできない。これらのタグは非常に低コストであり、かつ、大量生産される。
【0011】
このような読取り専用のRFIDタグは、典型的に、追跡対象の物品に永久的に取り付けられ、一度取り付けられると、タグの通し番号は、コンピュータのデータベースのホスト物品に関連付けられる。例えば、特定のタイプの薬剤は、数百個または数千個の小瓶に含まれてもよい。製造時、または健康管理機関で小瓶を受け取ったとき、RFIDタグが各小瓶に取り付けられる。永久的に取り付けられたRFIDタグを有する各小瓶は、受け取られると、健康管理機関のデータベースでチェックされる。RFID個体識別番号は、データベースに、薬剤の種類、小瓶の用量のサイズ、場合によっては、薬の使用期限などの他の情報に関連付けられてもよい。その後、小瓶のRFIDタグが呼び掛けられ、そして、その個体識別番号が読み取られると、健康管理機関のデータベースは、その個体識別番号と小瓶に関する格納データとを整合できる。次に、小瓶の内容物とともに、データベースに格納されてきた任意の他の特性が決定されうる。このシステムでは、医療機関が、このようなデータをRFIDタグに組み込むのではなく、在庫の物品に関する包括的なデータベースを維持する必要がある。
【0012】
タグの目的は、製造施設、輸送車両、医療施設、保管エリアなど、特定の施設における物品の耐用期間が続く間、タグと物品とを関連付けることで、物品が移動する際、物品の位置が特定され、識別され、そして、追跡されるようにすることである。例えば、ある医療物品が医療施設のどの場所にあるかが常時分かれば、緊急事態が生じたときに必要とされる医療補給品の位置の特定が非常に容易になりうる。同様に、施設を通って物品を追跡することで、より効率的な取出および在庫管理システムを補助し、かつ、施設における作業フローの向上を促進することができる。さらに、有効期限がモニタし、そして、より古い期限間近の物品を、ラインの前方に移動してすぐに取り出せるようにすることができる。これにより、良好な在庫管理および低コスト化が図られる。
【0013】
他のRFIDタグは書込み可能のものであり、かつ、RFIDタグが取り付け可能な物品に関する情報は、個々のタグにプログラミングされうる。施設のコンピュータサーバが利用不能の場合、これは他とは違う利点を与えうるが、このようなタグは、タグにあるメモリのサイズに応じてコストが上がる。タグが取り付けられる物品に含まれる情報を有するようにタグの各々をプログラミングすると、さらなる費用が発生する。
【0014】
RFIDタグは、メーカー、受け取り側などによって追跡されるべき容器または物品に適用されてもよい。メーカーがタグを製品に適用する場合、メーカーは、タグの各々の個体識別番号と各物品の内容物とをリンクするそれぞれのデータベースファイルも供給する。メーカーが供給したデータベースは、顧客の全データベースに容易にインポート可能なファイル形式で顧客に配布することができ、これにより、顧客は、データベース作成の費用を節約できる。
【0015】
現在使用されている多くのRFIDタグはパッシブ型であり、バッテリまたは他の自立電源をもたず、その代わりに、タグを作動する電力を供給するためにRFIDリーダによって供給される呼掛けエネルギー(interrogating energy)に依存しなければならない。パッシブRFIDタグには、タグの作動および格納データの伝送を達成するために、ある一定の周波数レンジおよびある一定の最低強度のエネルギーの電磁場が必要である。別の選択肢として、アクティブRFIDタグがあるが、このようなタグには、タグを作動する動力を供給するために付属バッテリが必要であるため、タグのコストが上がり、多くの用途で使用するには望ましくないものになる。
【0016】
識別すべき物品の物理的サイズ、場所および物品へ容易に到達できることなどのRFIDタグの応用の要求に応じて、タグは、RFIDリーダによって近距離または長距離から読み取らなければならない場合がある。このような距離は、数cmから10メートル以上までさまざまでありうる。さらに、米国や他の国々では、このようなタグの動作が許可されている周波数レンジが限られている。一例として、125KHzや13.56MHzなどの低周波数帯が、いくつかの応用においてRFIDタグに使用されうる。この周波数レンジで、電磁エネルギーは、液体および他の誘電性材料によって影響を受けることはほとんどないが、呼掛け距離が短くなるという制限を受ける。915MHzや2.4GHzなどの、RFIDの使用が許可されているより高い周波数帯では、RFIDタグの呼掛け距離はより長くなるが、タグが付けられた材料が変わると、タグはより迅速に離調する。これらの高い周波数で、タグ間の間隔が小さくなると、近い間隔に設けられたRFIDタグが互いに離調することが分かった。
【0017】
RFIDタグがエンクロージャ内に設置される一般的な状況は数多くある。これらのエンクロージャの一部は、完全または部分的に金属表面または金属化表面を有してもよい。エンクロージャの例として、金属エンクロージャ(例えば、輸送用コンテナ)、部分的金属エンクロージャ(例えば、金属と他の材料との組み合わせで作られたハウジングを有する航空機、バス、列車および船舶などの乗り物)および非金属エンクロージャ(例えば、木造の倉庫や建物)などがある。これらのエンクロージャに設置されてもよいRFIDタグを有する物品の例として、容器に入っていない物品、包装された物品、倉庫内の区画、建物内の在庫品、小売店内のさまざまな品および乗り物内のさまざまな携帯型の品(例えば、乗員の身分証明書やチケット、荷物、貨物、救命胴衣やマスクなどの個々の救命設備)などがある。
【0018】
RFIDタグの読取りレンジ(すなわち、呼掛け信号および/または応答信号のレンジ)は制限されている。例えば、パッシブRFIDタグのいくつかのタイプは、最大レンジが約12メートルであり、また、このレンジは、好ましいアンテナ配向を有する理想的な自由空間条件でしか得られないことがある。現状では、観察されたタグレンジは、6メートル以下であることが多い。したがって、上述したエンクロージャの中には、個々のRFIDタグの読取りレンジをはるかに上回る寸法を有しうるものもある。RFIDリーダが、このようなエンクロージャにあるターゲットRFIDタグに近接して配置できなければ、タグは作動されず、かつ、読み取られない。さらに、エンクロージャの金属表面は、RFIDリーダとRFIDタグとの間で交換される必要のあるRF信号にとって、深刻な障害物であり、エンクロージャの金属表面の後ろ側に位置するRFIDタグは、検出が困難または不可能になる。
【0019】
上記に加えて、RFIDシステムの検出レンジは、典型的に、信号強度によって短距離に限定され、多くの場合、13.56MHzのシステムに対して約30センチメートル未満である。したがって、携帯型のリーダユニットは、特に、タグ付き品が、静止または固定した単一リーダアンテナの検出レンジより著しく大きな空間に保管されている場合、すべてのタグ付き品を検出するために、タグ付き品のグループを通過する必要がありうる。あるいは、多数のタグ付きアイテムを検出するのに十分な電力およびレンジを有する大型のリーダアンテナが使用されることもある。しかしながら、このようなアンテナは扱いにくく、かつ、許容可能な範囲を超えて放射電力のレンジを増大しうる。さらに、これらのリーダアンテナは、多くの場合、空間の価値が高いお店やその他の場所に設置され、このような大型のリーダアンテナを使用することは、高価でありかつ不都合である。別の可能な解決策として、複数の小型のアンテナが使用されてもよいが、空間が貴重で、配線を見えないようにすることが好ましい、または要求される場合、このような構成は設置が面倒な場合がある。
【0020】
医療補給品およびデバイスの場合、RFIDタグ付きデバイスおよび物品の位置が、要求されれば即座に特定できるように、また、有効期限など、他の目的で識別できるように、正確な追跡、在庫管理システムおよび取出システムの開発が望まれる。医療施設で使用される医療補給品や取出キャビネットの場合、多数の医療デバイスおよび物品が、例えば、複数の引出しなどのように、互いに密接した位置にある。このようなキャビネットは、典型的に、金属性のものであり、保管した物品を識別するために外部のRFIDシステムを使用することが困難な場合がある。場合によっては、このようなキャビネットは、盗難率が高い睡眠薬もしくは他の医療物品、または装置がキャビネット内にあるため、鍵が掛けられている。このようにして、キャビネットの内容物を手動で識別することは、アクセス管理の必要性から困難である。
【0021】
このようなキャビネットに内部RFIDシステムを設けることにも困難を伴う場合がある。内部の物品がキャビネット内でランダムに配置されている場合、RFIDシステムは、RFIDシステムが到達できない「デッドゾーン」が存在しないようにしなければならない。一般に、デッドゾーンは、RFIDリーダアンテナとRFIDタグとの間の連結レベルが、システムがタグの読取りに成功するのに十分ではないエリアである。このようなデッドゾーンの存在は、タグおよびリーダアンテナが垂直面にある配向によって生じうる。このように、デッドゾーンに配置された物品は、検出されないため、タグ付き物品の追跡が不正確になってしまう。
【0022】
医療分野では、多くの場合、このようなエンクロージャにある物品に取り付けられた多数のタグを読み取る必要があり、上述したように、このようなエンクロージャは、セキュリティ上の理由からアクセスが制限されている。エンクロージャの物理的寸法は、多数の物品または異なるサイズおよび形状の物品に対応するために、変える必要がある。このように密接に設置された医療物品またはデバイスを高精度に識別し、かつ、計数するために、このように保管されたすべての物品およびデバイスを取り囲み、タグがすべて確実に作動され読み取られるように、エンクロージャ内に適切な周波数で安定した電磁エネルギー場が提供されなければならない。このような医療デバイスは、容器の外側に取り付けられたRFIDタグを有してもよく、上向き、横向き、下向き、またはランダムなパターンで他の角度に向けられたRFIDタグ(および関連するアンテナ)を付けた状態でさまざまな向きに保管されてもよい。
【0023】
このような安定したEMエネルギー場を発生させることは容易な作業ではない。エンクロージャが、動作周波数で共振するサイズを有する場合、共振定常波は、エンクロージャ内で発生しうるため、安定したEM場を発生しやすい。
【0024】
しかしながら、RFID場では、使用可能な動作周波数は厳密に制御され、制限されている。エンクロージャが、許容RFID周波数の1つと整合する共振周波数を有していない物品を保管するのに望ましいことが分かった。このように、安定したEM場は、別の方法で確立されなければならない。
【0025】
さらに、EMエネルギーが、このようなエンクロージャに対して、内部にあるRFIDタグを読み取るために導入される場合、効率的なエネルギー伝達が重要となる。静止状態下では、エンクロージャ内へのEMエネルギーの入力または注入は、エネルギーを送り出す導体とエンクロージャとの間に位置付けられた単純なインピーダンス整合回路で最大限にされうる。当業者によく知られているように、このようなインピーダンス整合回路またはデバイスは、エンクロージャからの電力反射を最小限に抑えながら、エンクロージャへの電力の伝達を最大限にする。エンクロージャのインピーダンスが、エンクロージャとの間で物品を導入したり除去したりすることにより変化する場合、静的インピーダンス整合回路は、最適なエネルギー伝達をエンクロージャに与えないこともある。エネルギー伝達およびエンクロージャ内の結果的に得られるRF場強度が、しきい値レベルを下回れば、エンクロージャ内にある物品のタグのいくつかまたは多くが識別されるように作動されず、在庫システムが非効率的になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
EMエネルギーの使用を最小に維持し、あるいは少なくとも抑えることが、多くの医療施設の目標である。RFIDタグから位置を特定し、データを抽出するために高出力リーダを使用することは、一般に、医療施設では望ましくないが、労働者数が少ない倉庫や、航空機の貨物倉では許容可能な場合がある。EMエネルギーが隣接したより影響を受けやすいエリアに外れることがある広いエリアで、幅の広いEMエネルギービームを放射することは望ましくない。必要とされている個体識別情報をタグから得るために、リーダを動作する際の効率化が目的である。RFIDタグが読み取られる多くの場合、ハンドヘルド型のリーダが使用される。このようなリーダは、特定の場所にあるすべてのRFIDタグに到達する、比較的幅が広いエネルギービームを伝送する。各タグを作動し、読み取る最終的な結果が達成されうるが、エネルギーの伝送は、ユーザが照準を定める以外、制御されない。さらに、これは、1人以上の人員のサービスを要する手動システムであるため、スタッフ数が限られている施設では望ましくない可能性がある。多くのこのようなシステムにおいて、RFIDリーダが「拘束リーダヘッド」を有する携帯型ユニットであることにより、ユニットを見つけ、電力が供給されていることを確認し、在庫が要求される薬剤キャビネットまで運び、キャビネットを開き、在庫データを収集し、次に、在庫データを薬局サーバにアップロードするための、余分な時間と労力が課される。前述したものにはすべて、多大な時間がかかる。
【0027】
このようにして、当業者は、より自動化された在庫管理システムを提供する手段の必要性を認識しており、このようなシステムは、施設の人員の手動労力を要求せずに、引出しのような選択された容器の内容物に関する在庫データを自動的にアップロード可能な薬剤キャビネットの1つ以上の引出しに設置される。また、囲まれたエリアにあるすべてのRFIDタグを作動させ読み取るために、エネルギーを効率よく使用するRFIDタグリーダシステムの必要性も認識されてきた。ランダムな向きに配置されたタグを作動させ読み取るために、エンクロージャにおいて安定したEM場を確立するさらなる必要性も認識されてきた。キャビネットへのアクセス権を得る必要なく、金属キャビネットに保管された物品を自動システムが識別するさらなる必要性が認識されてきた。引出しのような容器を、容器内のRFIDタグを読み取るのに十分な非共振周波数で励起するさらなる別の必要性が認識されてきた。さらなる認識された必要性は、既存の薬剤キャビネットまたは他の保管容器をRFID有効化することである。本発明は、これらの必要性および他の必要性を満たすものである。
【課題を解決するための手段】
【0028】
簡潔かつ一般的な用語で言えば、本発明は、引出しのような既存の非共振容器に電磁場を確立し、この容器に設置されたRFIDタグを読み取るのに十分な場の強度で容器を励起することで、タグ付きの医療物品が識別され、追跡されうる内蔵式RFモジュールシステムに関する。本発明によるシステムおよび方法は、内容物の自動識別システムを備えていない薬剤キャビネット内へ据え付けに、特に適している。
【0029】
1つの態様において、品物が配置される所定のサイズの容器内にRF場を確立するためのRF使用可能モジュールシステムであって、品物が配置される容器に対して、選択された場所にベースを取り付けるように構成された取付け固定具を有するベースであって、容器が、ある容器サイズを有し、ベースが、ベースおよびベースのコンポーネントが容器内に配置された品物と相互作用するように、容器サイズと適合するように選択されたベースサイズを有し、ベースに設置され、かつ、容器の共振周波数に関係なく、所定の周波数レンジ内で容器内に安定した作動RF場を確立するように構成された同調プローブアンテナであって、安定したRF場が容器に配置されたすべての品物に及ぶ、同調プローブアンテナと、ベースに設置され、かつ、作動RF場に応じて容器内に生成されたデータ信号を受信するように構成された受信アンテナと、受信アンテナからデータ信号を受信し、データ信号を処理するように構成されたベースに設置されたリーダユニットと、リーダユニットから処理されたデータ信号を受信し、処理されたデータ信号を遠隔地へ通信するように構成された、ベースに設置された通信ユニットとを備えるRF使用可能モジュールシステムが提供される。
【0030】
本発明によるさらに詳細な態様は、容器内の品物の周囲に略完全に形成されたファラデー箱をさらに備え、少なくともプローブアンテナおよび受信アンテナが、ファラデー箱内に設置されるモジュールシステムを含む。プローブアンテナは、容器内の品物数の増減に対応するために、容器内に安定した作動RF場を確立するように、自動的に再同調するように構成される。容器は、ある共振周波数を有し、プローブアンテナの所定の周波数レンジが共振周波数を含まない。
【0031】
他の態様が、リーダと、プローブアンテナと、受信アンテナとの間にスイッチをさらに備え、リーダが、容器を作動し、容器からデータを受信するために各アンテナをオンまたはオフに切り換えるように構成されるRF使用可能モジュールシステムを含む。ベースのサイズは、ベースが既存の容器のサイズに合致して適合されるように選択されることで、モジュールシステムが、既存の容器に後付けするように使用される。ベースのサイズは、ベースが組み立てられている容器のサイズと合致して適合されるように選択されることで、組み立てられている容器の一体部分を形成するためにモジュールシステムが使用される。
【0032】
より詳細な態様は、ベースに形成されたメサ構造のそれぞれの上部に設置されるアンテナを含む。複数のプローブアンテナおよび複数の受信アンテナが使用され、リーダは、複数のアンテナの間のベースの中央に設置される。4つの受信アンテナと、2つのプローブアンテナと、2つのスイッチとを備え、リーダは、ベースに取り付けられるRFIDリーダ回路基板を備え、プローブアンテナ、スイッチおよびリーダは、アンテナ間の中央に設置されたRFIDリーダ回路基板に取り付けられる。
【0033】
他の態様が、品物が配置される所定のサイズの容器内にRF場を確立するためのRFID使用可能モジュールシステムであって、固有のデータ識別情報を有するRFIDタグをそれぞれが有する品物が配置される容器に対して、選択された場所にベースを取り付けるように構成された取付け固定具を有するベースであって、容器が、ある容器サイズを有し、ベースが、ベースおよびベースのコンポーネントが容器内に配置されたタグ付き品物と相互作用するように、容器サイズと適合するように選択されたベースサイズを有する、ベースと、ベースに設置され、かつ、容器の共振周波数を含まない所定の周波数レンジ内で容器内に安定した作動RF場を確立するように構成された、同調プローブアンテナであって、安定したRF場が、容器に配置された品物のRFIDタグを作動するように選択される、同調プローブアンテナと、ベースに設置され、かつ、作動RF場に応じて容器内に生成されたRFIDデータ信号を受信するように構成された、受信アンテナと、受信アンテナからRFIDデータ信号を受信ししてデータ信号を処理するように構成されたベースに設置されたRFIDリーダユニットと、リーダユニットから処理されたデータ信号を受信し、処理されたデータ信号を遠隔地へ通信するように構成されたベースに設置された通信ユニットと、容器内のタグ付き品物の周囲に略完全に形成されたファラデー箱と、少なくともプローブアンテナおよび受信アンテナが、ファラデー箱内に設置され、遠隔地に設置され、品物にそれぞれ取り付けられたタグのデータ識別情報と相関するタグ付き品物に関する情報を含むデータベースと、処理されたデータ信号を受信し、データ信号をデータベースと比較し、比較に基づいてタグ付き品物に関する情報を提供するように構成された、遠隔地に設置されたリモートプロセッサとを含む。
【0034】
さらなる詳細な態様は、比較に基づいたタグ付きの品物に関する情報が、以下の情報、すなわち、
再発注のために最小/最大レベルと比較される在庫レベル、
偽造防止、
電子ペディグリ/シリアル番号化能力、
ロット管理、
投薬ミスの防止、
NDC管理、および
使用期限管理、
の少なくとも1つを含むRFID使用可能モジュールシステムを含む。
【0035】
さらに、リーダは、スケジュールに従って容器にRF場を自動的に確立するように構成される。プローブアンテナは、容器内の品物数の増減に対応するために、容器内に安定した作動RF場を確立するように自動的に再同調するように構成される。
【0036】
本発明の方法の態様によれば、RFIDタグ付きの品物が配置される所定のサイズの容器内にRF場を確立するために、容器をRFID使用可能にする方法であって、RFIDタグ付きの品物が配置される容器に対して選択された場所にベースを取り付けるステップであって、前記容器は、ある容器サイズを有し、前記ベースは、ベースおよびベースのコンポーネントが容器内に配置された品物のRFIDタグと相互作用するように、容器サイズと適合するように選択されたベースサイズを有する、ステップと、容器の共振周波数に関係なく、所定の周波数レンジ内で、容器に安定したRFID作動RF場を確立するように、ベースに取り付けられた同調プローブアンテナを励起するステップであって、RFIDタグがRF場によって作動された後、容器内の品物にRFIDタグから固有のRFID個体識別データ信号を受信するステップと、容器内の作動した品物からRFIDデータ信号を読み取り、処理するステップと、処理されたRFIDデータ信号を遠隔地に通信するステップとを含む方法が提供される。
【0037】
さらに詳細な方法の態様は、容器内のRFIDタグ付き品物の周囲に略完全にファラデー箱を形成するステップと、ファラデー箱内に、少なくともプローブアンテナおよび受信アンテナを取り付けるステップとを含む。さらに、この方法は、容器内のRFIDタグ付きの品物数の増減に対応するために、プローブアンテナを自動的に再同調して、容器内に安定したRFID作動RF場を確立する、ステップを含む。さらに、励起するステップは、容器の共振周波数を含まない周波数レンジを有する同調プローブアンテナを励起するステップを含む。
【0038】
本発明の特徴および利点は、添付の図面を参照しながら読まれるべき以下の詳細な説明からさらに容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】引出しにランダムに位置付けられた複数の医療物品の保管を示し、医療物品の各々がランダムに配向された一体型のRFIDタグを有する、医療用取出キャビネット内に位置付けられてもよい、引出しの略図。
【図2】5段の引出しを有する薬剤取出キャビネットの斜視図であり、引出しの1つは図1の略図に類似しており、キャビネットは、キャビネット内に保管された物品に配置された任意のRFIDタグを定期的に読み取ることによって、キャビネットへのアクセスを管理し、在庫追跡を実行するための、およびリモートコンピュータに個体識別された物品を報告するための一体型コンピュータを有する、薬剤取出キャビネットの斜視図。
【図3】RFIDリーダが、単一の送信アンテナを用いてRFIDタグを含む引出し内に作動EMエネルギーを送信し、単一の受信アンテナを用いて作動されたRFIDタグから出力されたデータを受信し、コンピュータが、作動エネルギーの送信を管理し、処理するために、作動RFIDタグからデータを受信する実施形態を示すブロック流れ図。
【図4】RFIDリーダが、2つの送信アンテナを用いてRFIDタグを含む引出し内に作動EMエネルギーを送信し、3つの受信アンテナを用いて作動されたRFIDタグから出力されたデータを受信し、図3に示すように、コンピュータが、作動エネルギーの送信を管理し、処理するために、作動RFIDタグからデータを受信する実施形態を示す図3に類似したブロック流れ図。
【図5】EMエネルギーをエンクロージャ内に注入し、TEモードを励起するように構成された単一のプローブおよびコネクタを有するエンクロージャを示す図。
【図6】EMエネルギーをエンクロージャ内に注入し、TMモードを励起するように構成された単一のプローブおよびコネクタを有するエンクロージャを示す図。
【図7】エンクロージャの結合電力と共振エンクロージャの周波数との関係を示すプロットを示す図であり、fnはエンクロージャの固有共振周波数である。
【図8】エンクロージャの結合電力(縦座標軸)と周波数(横座標軸)との関係を示すプロットを示す図であり、ffは強制共振周波数であり、またはエンクロージャの共振周波数と等しくない周波数として呼ばれるものであり、fnは、ff周波数でエンクロージャの結合電力の安定した場の確立を示すエンクロージャの固有共振周波数である。
【図9】EMエネルギーをエンクロージャ内に注入するための2つのプローブの各々がコネクタを有し、一方のプローブがTMプローブであり、他方のプローブがTEプローブであるエンクロージャを示す図。
【図10】プローブとエンクロージャとの間のインピーダンス整合を高めるために使用される、プローブ、コネクタおよび減衰器を示す図。
【図11】プローブとエンクロージャとの間のインピーダンス整合を高めるために使用される、プローブ、コネクタおよびパッシブ整合回路を示す図。
【図12】エンクロージャに設置されたプローブと送受信機との間に接続されたアクティブ整合回路を示す図であり、アクティブ整合回路は、プローブとエンクロージャとの間のインピーダンス整合を高めるために閉ループ可変整合回路を提供するために使用される、同調キャパシタ、双方向カプラ、複数パワーセンサおよびコンパレータを備える。
【図13】引出しが閉位置においてキャビネットの適所にあるとき、引出しに安定したEM場を確立するための「天井取付け」構成において2つのプローブアンテナの配置を示し、明確にするために引出しを取り外した状態の引出しの場所にある図2のキャビネットの側断面図を与える。
【図14】挿入される引出しに安定したEM場を確立するための2つのプローブアンテナを再度示す、図13のプローブ構成を示す金属性エンクロージャの斜視図。
【図15】明確にするために引出しを取り外した状態の図13および図14の二重プローブアンテナが取り付けられた金属性エンクロージャまたはフレームの切欠斜視側面図。
【図16】金属性エンクロージャの適所にある切欠プラスチック引出しを有し、電磁的に不活性の保護カバーによって保護された二重天井取付けプローブアンテナをさらに示し、引出しの背面付近にキャビネットの背面に取り付けられた冷却システムコンポーネントをさらに示す、図14の図の正面斜視図であり、引出しはまた、キャビネットにおける開位置と閉位置との間で引出しをスライドする際に容易に行うための引出しスライド機構の部分図を示し、引出し正面パネルおよび背面パネルは、同図において切り取られた状態である。
【図17】プラスチック引出しを完全に取り外した状態の図16のものとは反対の角度からの正面斜視図であり、金属性エンクロージャに取り付けられたEM不活性保護カバーによって保護された二重天井取付けプローブアンテナを示し、引出しのラッチが解除されると、引出しを開位置に自動的に押し出すように、ばね装填フィーチャとしてキャビネットの背面に取り付けられた図16の冷却システムコンポーネントをさらに示し、引出しのスライドを受けるための取付けレールをさらに示す。
【図18】図13〜図15に示すエンクロージャの上面における2つのTE01モードプローブの配置のインチ単位の測定値の略図。
【図19】2つのマイクロストリップまたは「パッチ」アンテナおよびそれらのマイクロストリップ導体の図16の引出し内でのサイズおよび配置の略図であり、マイクロストリップ導体は、それぞれのアンテナと、一実施形態において、他のコンポーネントと相互接続するためにSMAコネクタに接続される引出しの背面との間に設けられる。
【図20】図19の図によるプローブがエンクロージャの適所に配置されたエンクロージャの実施形態の場の強さの図。
【図21】エンクロージャの前壁および背壁に近いほど場の強さがはっきりとしたものであることを示す、図20の場の強度の図のより下側の目盛の図。
【図22】個々のマルチプレクサスイッチ、単一のRFIDスキャナおよび電力制御装置を示す、図2に示すもののような複数引出し医療用キャビネットのブロック電気信号図。
【図23】制御ユニットと、一実施形態において、データおよび命令入力用のタッチスクリーンを含むディスプレイと、マウスの形状のポインティングデバイスと、RFIDタグを有する薬剤を保管するために使用される複数の引出しと、サーバ、データベースおよびカートへの接続とを有する薬剤管理キャビネットを示す図。
【図24】2つの入力デバイスの図を有し、一方がフルサイズキーボードであり、他方がマウスの形状のポインティングデバイスである、図23の薬剤管理キャビネットを示す図。
【図25】医療品を保管するためのポケットを作るための仕切り、およびキャビネットに作られたファラデー箱の部分を含む引出しのデザインの詳細を示す、薬剤キャビネットの開口およびファラデー箱から取り外された引出しの分解図。
【図26】引出しが閉位置にあるとき、RFIDシステムが効率的に動作するように引出しの周囲でファラデー箱を完全なものにするファラデー箱の部分を形成するように、引出しの金属性の正面が見えるように、引出しの背後から見た図25の引出しの拡大図。
【図27】取り外された引出しのフレーム内に形成されるファラデー箱の表示と、少なくともアンテナがファラデー箱内にあるようにファラデー箱に取り付けられるRFID使用可能モジュールと、ファラデー箱の表示内にスライド可能に取り付けられる引出しと、モジュール用の電力およびデータ接続をさらに示す、下側の引出しを取り外した薬剤キャビネットの分解図。
【図28】4つの受信アンテナ要素と、2つのプローブアンテナと、RFIDリーダプリント回路基板と、RFIDリーダプリント回路基板に取り付けられたRFIDリーダと、スイッチの各々が2つのアンテナ要素を相互接続し、プローブアンテナとRFIDリーダとを相互接続する2つのスイッチとを示す、本発明の態様によるRFID使用可能な引出しモジュールの平面図。
【図29】2つのプローブアンテナおよびアンテナ要素が形成されたメサ構造の側面プロファイルをより明確に示す図28の側面図。
【図30】プローブアンテナ、RFIDリーダおよびアンテナ要素が取り付けられるメサ構造の端部プロファイルを示す図28の正面図。
【図31】本発明の態様により、引出しがRFID使用可能である方法を表す流れ図。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、同様の参照番号がいくつかの図面において対応する要素または同様の要素を表す本発明の実施形態を説明するために例示的な図面をより詳細に参照しながら、固有個体識別番号を有するRFIDタグ24をそれぞれ有する複数の医療物品22が保管された部分的エンクロージャ20の略図が図1に示されている。部分的エンクロージャは、正面26と、左側28と、右側30と、背面32と、底面34とを有する引出しを備える。これらの物品は、RFIDタグがさまざまなランダムな方向に向いた状態で引出しにランダムに分散されている。
【0041】
本明細書の実施形態に対して使用される場合、「リーダ」および「インテロゲータ」は、読取りまたは書込み/読取りを行いうるデバイスをさす。データキャプチャデバイスは、常に、読取りのみ可能であるか、または書込みも可能であるかにかかわらず、リーダまたはインテロゲータと呼ばれる。リーダは、典型的に、無線周波数モジュール(「送受信機」と呼ばれることもある送信機および受信機)と、制御ユニットと、RFIDタグとの結合要素(1つまたは複数のアンテナなど)とを含む。さらに、多くのリーダは、RS−232インタフェースなど、データをどの場所にも転送するためのインタフェースを含む。リーダは、送信時、呼掛けゾーンを有し、このゾーン内でRFIDタグが作動される。呼掛けゾーン内で、リーダによって呼掛けゾーンに生じたRFIDタグが電場/磁場から電力を引き出す。連続RFIDシステム(SEQ)において、呼掛け場は、規則的な間隔でオフに切り換えられる。RFIDタグは、これらの「オフ」ギャップを認識するようにプログラミングされ、タグの固有個体識別番号のようなデータを送るためにタグによって使用される。いくつかのシステムにおいて、タグのデータ記録は、タグの製造時に取り込まれ、変更不可能な固有の通し番号を含む。この番号は、タグが特定の物品に取り付けられるとき、特定の物品にデータベースにおいて関連付けられてもよい。このようにして、タグの場所を決定することで、タグが取り付けられた物品の場所が決定される。他のシステムにおいて、RFIDタグは、物品名や物品の個体識別、使用期限、投与量、患者名および他の情報など、タグが取り付けられた物品に関するより多くの情報を含んでもよい。RFIDタグは、更新可能なように書込み可能であってもよい。
【0042】
本明細書の実施形態に対して使用される場合、「タグ」は、RFIDトランスポンダについて言及していることを意味する。このようなタグは、典型的に、アンテナのような結合要素と、電子マイクロチップとを有する。マイクロチップは、メモリとも呼ばれるデータストレージを含む。
【0043】
図2は、複数の可動引出し42を備える、代表的な医療用取出キャビネット40を表す。この実施形態では、引出しの内容物へアクセスできるようにキャビネットから外向きにスライドする5段の引出しがある。図1は、引出しの内容物へのアクセスを与えるために外向きにスライドし、引出しの内容物を厳重に保管するためにキャビネット内に内向きにスライドするために、図2のキャビネット内に位置付けられてもよい、代表的な引出しの略図である。キャビネットはまた、引出しへのアクセスを制御し、アクセスおよび内容物に関するデータを生成し、他のシステムとの通信を行うために使用されてもよい一体型のコンピュータ44を備える。この実施形態において、コンピュータは、引出しにある物品の番号および種類、物品が処方された患者の名前、処方された薬剤および処方された薬剤の投与日および時間に関するデータ、ならびに他の情報に関するデータを生成する。より単純なシステムにおいて、コンピュータは、保管された物品から固有個体識別番号を単純に受信し、個体識別番号と物品の明細とを整合するためにデータベースへのアクセス権を有する在庫管理コンピュータにこれらの個体識別番号を送る。
【0044】
このようなキャビネットは、健康管理機関の特定のフロアにあるナースステーションに設置されてもよく、また、そのフロアの患者の処方薬を含んでもよい。そのフロアの患者用の処方薬が準備されると、処方薬はキャビネット40に運ばれ配置される。処方薬は一体型コンピュータ44に記録され、処方薬の受領が薬局に通知されてもよい。引出しは、看護スタッフが決定した患者に払い出すための非処方医療補給品または物品を含んでもよい。適切な時間に、看護師は、コンピュータ44を使用することによって医療物品が保管された引出しにアクセスし、特定の患者の処方薬および任意の必要とされる非処方物品を取り除いた後、厳重に保管されるように引出しを閉じる。キャビネットにアクセスするために、看護師は、さまざまな情報を与える必要があってもよく、セキュアアクセスコードを必要としてもよい。引出し42は、要求される条件に応じてロック状態または非ロック状態にされてもよい。
【0045】
コンピュータ44は、場合によっては、健康管理機関の他の施設と通信状態にあってもよい。例えば、コンピュータ44は、特定に日時に投与するためにキャビネットから患者の処方薬が取り除かれたことを、健康管理機関の薬局に通知してもよい。コンピュータはまた、特定の患者に投与するために処方薬および他の医療物品が取り除かれたことを、健康管理機関の財務部に通知してもよい。その後、この投薬代は、患者の請求書に適用されてもよい。さらに、コンピュータ44は、患者の薬剤投与記録(MAR)、いわゆる、e−MARを更新するために投与したことを通信してもよい。薬剤キャビネット40のコンピュータ44は、健康管理機関の他のコンピュータに無線接続されてもよく、または有線接続を有してもよい。キャビネットには車輪が取り付けられてもよく、必要に応じて、キャビネットを移動させたり、静止させ移動できないようにさせたりしてもよい。
【0046】
RFIDタグを使用するシステムは、多くの場合、RFIDリーダによって集められたデータを格納、処理および共有する保管庫として作用する1つ以上のホストコンピューティングシステムと通信状態にあるRFIDリーダを採用する。以下、図3および図4を参照すると、物品を追跡するためのシステムおよび方法50が示されており、同図において、図2のキャビネット40の引出し20が、この引出しにある物品に配置されたRFIDタグからデータを得るようにモニタされている。上述したように、さまざまな保管物品に取り付けられたRFIDタグがどの方向を向いていようとも作動するように、保管場にはEMエネルギーの安定した場が確立される必要がある。
【0047】
図3および図4において、エンクロージャにある物品を識別するための追跡システム50が示されており、RFIDリーダの一部としてEMエネルギーの送信機52を備える。送信機52は、送信アンテナ54によってEMエネルギーを引出し20内に送信するために、915MHzなどの特定の周波数を有する。送信機52は、RFIDタグが配置されたエンクロージャ20内に、必要なRFIDのEMエネルギーおよび任意の必要なタイミングパルスおよびデータを送信するように構成される。この場合、エンクロージャは、引出し20である。RFIDリーダ51のコンピュータ44は、送信期間と非送信期間、いわゆる、オフ期間との間を繰り返すように、EM送信機52を制御する。送信期間中、しきい値強度レベル以上で送信されるEMエネルギーは、引出しにあるRFIDタグを取り囲むことによって、RFIDタグを作動する。次に、送信機52は、オフ期間に切り換えられ、オフ期間の間、RFIDタグは、それぞれの格納データに応答する。
【0048】
図3の実施形態は、単一の送信プローブアンテナ54と、引出し20内に設置された作動RFIDタグによって送信されるデータを最適に読み取るように配向された単一の受信アンテナ56とを備える。単一の受信アンテナ56は、引出し20の外側または引出しの内側底部に設置されたリーダ50のコンピュータ44に通信可能に結合される。他の取付け場所も可能である。受信アンテナ56をコンピュータ44に結合するために、同軸ケーブル58または他の適切な単一リンクが使用可能である。異なる実施形態において、ワイヤレスリンクが使用されてもよい。図面には示されていないが、当業者であれば、コンピュータによって使用するために、ディジタルデータをRFエネルギーから分離するために、さまざまな追加の回路およびデバイスが使用されることを認識するであろう。このような回路およびデバイスは、図面が不要に複雑にならないように、図3および図4には示されていない。
【0049】
図4の実施形態は、図3の実施形態に類似しているが、異なる点として、2つの送信プローブアンテナ60および62と、3つの受信アンテナ64、66および68を使用している。システムに使用される送信プローブアンテナおよび受信アンテナの構成および数は、エンクロージャ20のサイズ、動作周波数、動作周波数とエンクロージャの固有共振周波数との関係、およびエンクロージャ内に置かれるRFIDタグの予想数に少なくとも一部基づいて変動してもよいため、エンクロージャ内のRFIDタグのすべてが確実に作動され、読み取られうる。RFIDリーダコンポーネントの場所および数は、特定の応用に依存しうる。例えば、比較的小さなサイズのエンクロージャには、より少ない数のコンポーネントが要求されうるのに対して、図4に示すように、より多くのエンクロージャには、さらなるコンポーネントが要求されうる。図3および図4にはブロック形で示しているが、システム50の各受信アンテナ56、64、66および68は、異なる実施形態において、サブアレイを備えてもよい。
【0050】
送信アンテナ(54、60および62)および受信アンテナ(56、64、66および68)は、異なる形をとるものであってもよい。以下にさらに詳細に記述されるように、一実施形態において、複数の「パッチ」またはマイクロストリップアンテナは、リーダの受信アンテナとして使用され、引出しの底部のさまざまな部分に隣接した位置に設置されるのに対して、送信アンテナは、引出しの上部の部分に隣接した位置に設置されたワイヤプローブである。図3および図4の実施形態において、RFIDリーダ50は、引出し20に対して有利な位置に同じキャビネットに永久的に取り付けられてもよいことに留意されたい。
【0051】
エンクロージャに密集されまたはランダムに配向されたRFIDタグに確実に呼び掛けるための1つの解決策は、共振キャビティとしてエンクロージャを処理することである。キャビティエンクロージャ内に共振を確立すると、エンクロージャにあるすべてのRFIDタグを作動可能な安定した電磁場が得られる。これは、キャビティの固有共振周波数でキャビティに横電場(TE)または横磁場(TM)を励起するために、1つまたは複数のプローブを使用して、導電性の壁からエンクロージャを作り、金属性エンクロージャ、いわゆる、キャビティを励起することによって実行されうる。この技術は、キャビティの寸法が動作周波数で共振を設定するように特に選択可能であれば、または動作周波数が特定のエンクロージャサイズに対して選択可能であれば、機能する。RFIDの応用に使用するために利用可能な周波数帯は制限されているため、RFID周波数を変更することは、多くの応用の選択肢ではない。逆に、エンクロージャの固有共振周波数が利用可能なRFIDタグ作動周波数に等しくなるように、エンクロージャの特定のセットの物理的寸法を要求すると、エンクロージャが特定のサイズのものである必要がある応用に対して、この技術の使用は制約される。この後者のアプローチは、保管が必要な医療物品の多くの異なるサイズ、形状および量の観点から実用的ではない。
【0052】
以下、図5を参照すると、図2に示すキャビネットのように、医療用キャビネットの部分として形成されてもよい、矩形エンクロージャ80が提供される。エンクロージャは、このようなキャビネットにある非金属性引出しの周りに位置するフレームとして具現化されてもよい。エンクロージャ80は、金属性または金属化された壁82、床83および天井84の表面から形成され、それらすべては導電性である。壁82、床83および天井84のすべては、本明細書において、エンクロージャの「壁」と呼ばれてもよい。図5は、エンクロージャ80の上面84に設置されたエネルギー結合またはプローブ86の使用を示す。この実施形態において、プローブ88は、エンクロージャの天井84にある孔90を通って軸方向に進む第1の部分94を有する点で、キャパシタプローブ88の形をとる。結合の目的は、ソース52(図3および図4を参照)からエンクロージャ80の内部96にエネルギーを効率的に転送することである。プローブのサイズおよび位置は、結合が効率的になるように選択され、プローブは最大の場強度の領域に配置される。図5において、TE01モードは、容量結合を使用することで確立される。プローブ88の屈曲部分94の長さおよび距離は、プローブとエンクロージャ80との間の電位差に影響を及ぼす。
【0053】
同様に、図6は、エンクロージャ112への外部エネルギーの誘導結合110を表す。結合は、エンクロージャの側壁116を通して取り付けられたループプローブ114の形をとる。このプローブの目的は、エンクロージャにTM01モードを確立することである。
【0054】
図5および図6に示す矩形のエンクロージャ80および112の各々は、図7に示され、かつ、fnによってグラフの横座標軸118に示される、固有共振周波数fnを有する。これは、グラフの縦座標軸119に示すように、エンクロージャ内の結合電力が最大である周波数である。エンクロージャに注入されたエネルギーが、fn周波数と整合しなければ、結合電力は、エンクロージャの共振現象から利益を受けない。動作周波数が変更できず、fn以外のものであり、エンクロージャのサイズが動作周波数に等しいfnを得るために変更できない場合、別の電力結合装置および方法を使用しなければならない。本発明の態様によれば、建設的干渉を用いてエンクロージャ内に定常波を得るために、エンクロージャ内に強制共振ffが生じるようにするための装置および方法が提供される。このような定常波は、エンクロージャ内にあるすべてのRFIDタグを作動するのに十分な強さの安定したエネルギー場をエンクロージャ内に確立する。
【0055】
エンクロージャと共振するEM波が入ると、EM波は、低損失で、エンクロージャ内で前後に跳ね返る。より多くの波エネルギーがエンクロージャに入るにつれ、定常波と結合し、定常波を強めて、強度が増す(建設的干渉)。キャビティの寸法が、共振周波数で波長の整数倍であるため、特定の周波数で共振が起こる。注入されたエネルギーが、エンクロージャの固有共振周波数fnにないこのような場合、本発明の態様による解決策は、エンクロージャにおいて「強制共振」を設定することである。この強制共振は、エンクロージャの物理的寸法が、共振キャビティと同様に、励起エネルギーの波長の整数倍に等しくないという点で、エンクロージャの固有共振とは異なる。建設的干渉が結果として生じ、定常波が確立されるように、エネルギーがキャビティ内に注入されるようにするプローブ長さとともに、プローブ位置を決定することによって強制共振が達成されうる。この場合、エンクロージャ内に注入されるエネルギーは、キャビティ内に発振場領域を設定するが、共振キャビティの固有共振周波数fnに存在する定常波とは異なる。この強制共振から励起されたEM場は、共振キャビティの固有共振で見られる場の構造とは異なるが、プローブの適切なプローブ配置とともに、安定したEM場が、RFIDタグに呼び掛けるためにエンクロージャに確立されうる。このような状態は図8に示されており、同図において、強制共振ffの結合電力の曲線が固有共振fnの曲線のものに近いことに留意されたい。
【0056】
以下、図9を参照すると、2つのエネルギー注入プローブを有するエンクロージャ120が提供される。第1のプローブ86は、TE01モードを確立するために、図5に従ってエンクロージャ120に容量結合される。第2のプローブ114は、TM01モードを確立するために、図6に従って、エンクロージャ120に誘導結合される。これらの2つのプローブは、両方とも、エンクロージャの固有共振周波数fn以外の周波数ffでエネルギーを注入するために、エンクロージャに結合される。エンクロージャの天井126および壁128に対してこれらのプローブを配置することで、エネルギーをエンクロージャに最適に結合し、エンクロージャ内に設置されうるRFIDタグを読み取るための安定したEM場をエンクロージャ内に確立する強制共振がエンクロージャ120内に得られる。本発明の態様によれば、エンクロージャの壁に対してこれらのプローブを配置すると、図8に示す強制共振曲線ffが得られる。
【0057】
図10を簡単に参照すると、エネルギー源122のインピーダンスをエンクロージャ120に整合するように機能するインピーダンス整合回路121が示されている。インピーダンス整合回路は、エンクロージャ120に作動エネルギーを供給する同軸ケーブル122と、エンクロージャの金属性の天井126の孔を通る容量結合プローブ88との間に設置される。図10の図に孔は示されていないが、金属性天井からプローブを電気的に絶縁する絶縁体123が図示されている。この場合、整合回路121は、エンクロージャ120によってエネルギーの反射を低減するために使用される抵抗減衰器124のみからなる。しかしながら、当業者であれば認識するように、容量コンポーネントおよび誘導コンポーネントは、エンクロージャおよび結合88に存在する傾向がある。また、図11は、同軸ケーブル/エネルギー源122およびエンクロージャ120のインピーダンスを整合する際に使用するためのパッシブ反応コンポーネントを有するインピーダンス整合回路124を表す。この例示的なインピーダンス整合回路124において、誘導コンポーネント125および容量コンポーネント127は直列接続されるが、抵抗コンポーネントおよび他の接続構成の追加を含む他の構成も可能である。
【0058】
図10および図11に図示されているレジスタ、インダクタおよびキャパシタなどのパッシブコンポーネントは、エネルギー源およびエンクロージャのインピーダンスを整合するように整合回路を形成するために使用されうる。これは、エンクロージャ内の結合電力に役立つ。しかしながら、パッシブ整合回路により、空のエンクロージャ、部分的に荷重されたエンクロージャ、または完全に荷重されたエンクロージャなど、特定のエンクロージャの荷重に合わせたインピーダンス整合が高められる。しかしながら、エンクロージャの内容物は可変であるため、インピーダンス整合は、エンクロージャの内容物の変動により最適化されない場合があり、エンクロージャのインピーダンス特性が変化する。
【0059】
エンクロージャの荷重の変動によって生じるこのようなインピーダンス整合の非最適化は、順電力および反射電力をモニタするために閉ループ検知回路を利用するアクティブインピーダンス整合回路を使用することによって解消されうる。以下、図12を参照すると、インダクタ132、キャパシタ134またはレジスタ(図示せず)などの1つ以上の固定値パッシブコンポーネントを備えるアクティブ整合回路130が提供される。加えて、同調キャパシタ134などの1つの以上の可変リアクタンスデバイスが回路に組み込まれ、これらの同調デバイスにより、この回路はアクティブインピーダンス整合回路になる。同調キャパシタ134は、バラクタダイオード、スイッチドキャパシタアセンブリ、MEMSキャパシタ、またはBST(チタン酸バリウムストロンチウム)キャパシタの形状のものでありうる。同調キャパシタ134には、制御電圧が印加され、変更されて、デバイスによって与えられる容量を変更する。同調キャパシタ134は、プローブ140とエンクロージャ142との間のインピーダンス整合を能動的に変化させる能力を与える。
【0060】
アクティブ整合回路を完了するために、2つのパワーセンサ146とともに双方向カプラ144が組み込まれうる。双方向カプラ144およびパワーセンサ146は、RFID送受信機148とアクティブ整合回路130とエンクロージャ142との間の順電力および反射電力を検知する能力を与える。コンパレータ150によって順電力と反射電力の比率を継続的にモニタすることで、同調キャパシタ134を調節して、プローブ140をエンクロージャ142にインピーダンス整合したままにするために使用する測定基準が得られる。エンクロージャの内容物の変更に伴い、インピーダンス整合を継続的にモニタし、高める能力は、アクティブ整合回路130を用いて提供される。
【0061】
以下、図13の側断面図を参照すると、この実施形態においてファラデー箱として動作する、本明細書においてキャビティ166とも呼ばれる、エンクロージャ内に取り付けられた2つの天井取付け型160のプローブアンテナ162および164が示されている。図示するように、ファラデー箱166は、壁168(複数の壁のうちの1つを図示)168と、背面170と、床172と、天井160と、正面161(前壁の位置のみを図示)とを備える。キャビティを形成するすべての表面は、導電性であり、互いに電気的に接続され、2つのプローブ162および164によって注入されたエネルギー周波数ffを伝導可能なように構造的に形成される。この実施形態において、キャビティ166は、図2に示すものに類似した医療補給品キャビネットの一部を形成してもよい金属フレーム167として構築されてもよい。金属フレーム内には、スライド可能な引出しが取り付けられてもよい。この実施形態におけるスライド可能な引出しは、電気的に不活性の材料から形成され、すなわち、正面を除き、導電性ではない。引出しがキャビネット内にスライドして閉構成になると、引出しの導電性正面パネルは、金属性フレーム167の1つまたは複数の別の部分と電気的に接触した状態になることで、ファラデー箱167の前壁161を形成する。
【0062】
各プローブの中央導体180によるキャビティ内への差込み量または保持量は、最適な結合を達成するように選択される。プローブの屈曲部分94の長さは、良好なインピーダンス整合が得られるように選択される。キャビティの壁に対するプローブの位置は、キャビティに定常波を生じるように選択される。この実施形態において、プローブアンテナ162および164は、前壁161および背壁170からそれぞれ特定の距離D1およびD3に設置されたものである。本発明の1つの態様によれば、これらのプローブアンテナは、他方のプローブが非作動状態になった後、連続的に作動されるのみである。この構成により、建設的干渉が結果的に得られるように注入エネルギー波が同相である場合、定常波が得られることが分かった。
【0063】
図14は、挿入される物品保管用引出しに安定したEM場を確立するためにファラデータイプのエンクロージャ166に設置された2つのプローブアンテナ162および164を再度示す、図13のプローブ構成の正面斜視図である。ファラデーキャビティ166が金属性フレーム167として組み立てられることに再度留意されたい。同図において、キャビティは、「箱」の正面がない点で不完全である。一実施形態において、この正面は、スライド可能な引出しの導電性正面パネルによって与えられる。引出しがキャビネット内にスライドされると、引出しの正面パネル以外の他の部分はプラスチックであるか、またはプラスチックでなければ、非導電性のものであるが、正面パネルは、金属性フレーム167の他の部分と電気的に接触した状態になることで、ファラデー箱166が完成する。本明細書に記述され図示された実施形態において、2つのプローブアンテナ162および164は両方とも、フレーム166の側壁166および168の間の中心線に沿って設置される。エンクロージャは、一実施形態において、19.2インチ(約48.8cm)幅であり、プローブアンテナは、各側壁から9.6インチ(約24.4cm)の間隔が空けられている。2つの側壁間のこのような中心合わせした場所は、一実施形態の場合の便宜上のものである。プローブは、別の実施形態において、どの場所に配置されてもよい。この実施形態において、互いからのプローブ162および164の間隔は、連続的に作動されるためにほとんど重要ではない。図示していないが、キャビティ166内にある作動されたRFIDタグからの応答信号を受信するために、2つの受信アンテナもファラデー箱166内に配置される。
【0064】
図13に示すように、各プローブが、キャビティの天井160と容量結合するために使用される屈曲部分を有することに、図面の参照から留意されたい。正面側プローブ162は前方に曲げられているのに対して、背面側プローブ164は後方に曲げられている。この構成の目的は、引出しに確立されるEM場によって、より多くの空間的多様性と、より良好な到達範囲とを得ることである。キャビティ166内に安定した場を達成するために、他の配列も可能である。さらに、エンクロージャ166の良好なEM場の到達範囲が得られるように、特定のエンクロージャ166に2つのプローブが使用されている。
【0065】
図15は、図13および図14の二重プローブアンテナ162および164の切欠側面斜視図であり、明確にするために、引出しは取り外している。正面側プローブ162は、図示するように、動作周波数Ffの1/2λだけ左側の壁から間隔を空けて設けられている。各プローブは、図13に示すように、エンクロージャ166の天井160と容量結合するために使用される屈曲部分を有することに留意されたい。引出しのEM場によってより多くの空間多様性およびより良好な到達範囲を得るために、正面側プローブ162は、エンクロージャのより前方部分と結合するために前方に曲げられるのに対して、後方側プローブ164は、エンクロージャ166のより後方部分と結合するために後方に曲げられる。エンクロージャ内に安定した場ならびにさらなる空間多様性および到達範囲を達成するために、他の配列も可能である。
【0066】
図16は、フレーム167内にスライド可能に取り付けられた引出し180の部分を示すファラデー箱166を形成するフレーム167の正面上向き斜視図である。引出しの金属性の正面パネルは、スライド動作をより明確に見られるように取り外されている。二重天井取付け型のプローブアンテナ162および164が、電磁的に不活性の保護カバー182によって被覆され保護されていることに留意されたい。引出しは、プラスチックまたは低RF定数を有する他の電磁的に不活性な材料などの非金属性材料で形成される。フレーム167の背面に設置されたコイル186およびファン188を備える冷却システム189を見られるように、引出しの背面184が切り取られている。この場合、引出し180は、金属性のスライドハードウェア190とともに、ファラデー箱のフレームにスライド可能に取り付けられる。引出しのスライドハードウェアは、エンクロージャ166のフレーム167の側面付近にあり、エンクロージャの側壁168の金属性スライドハードウェアと電気的に接触した状態にあってもよいため、これらの金属レールは、エンクロージャ内に確立されるEM場に小さな影響しか及ぼさない。
【0067】
図17は、図16のものと反対の角度から上向きに見た正面斜視図であるが、引出しは取り外されている。フレーム167は、この実施形態において、引出し180のスライドを受けるための取付けレール192を含む。この実施形態において、取付けレールは金属材料で形成されるが、ファラデー箱の側面168に固着されるため、箱と電気的導通状態にある。また、同図は、引出しに保管された物品へアクセスできるように、引出しの外向きのスライドを促すように使用されるばね機構194を示す。ばねは、引出しのラッチが解除されると、引出しを外向きに自動的に押し出すように構成される。
【0068】
図18は、図13〜図15に示すフレーム167の天井160における、2つのTE01モードの容量結合プローブ162および164を配置の測定値を示す略図である。この実施形態において、RFIDタグの動作周波数は915MHzであり、したがって、波長は0.32764メートルまたは1.07494フィートである。したがって、1/2波長は、0.16382メートルまたは6.4495インチである。プローブの各々の容量結合屈曲部分200の長さは、5.08cmまたは2.00インチである。エンクロージャ内へのプローブの軸方向拡張部202の長さは、絶縁体204からエンクロージャ166内への測定した場合、3.81cmまたは1.50インチである。この実施形態におけるプローブの構成および配置は、915MHzの動作周波数に基づいたものである。一実施形態において、エンクロージャ166の深さは、16.1インチ(40.89cm)であり、幅は19.2インチ(48.77cm)であり、高さは3インチ(7.62cm)である。このサイズおよび形状(矩形)のエンクロージャおよび915MHzの動作周波数に最適なプローブ配置は、正面側プローブと前壁との間隔が5.0インチ(12.7cm)で、背面側プローブと背壁との間隔が5.0インチ(12.7cm)であることが分かった。上述したように、この実施形態において、プローブは連続的作動されるのみである。
【0069】
図19は、2つのマイクロストリップまたは「パッチ」アンテナ210および212、ならびにそれぞれのアンテナと、一実施形態において、SMAコネクタ(図示せず)にアンテナが接続されるエンクロージャの背面との間に位置するマイクロストリップ導体214および216の図16のエンクロージャ166内のサイズおよび配置の略図である。供給ライン58(図3)は、これらのSMAコネクタに接続されてもよく、さらなる処理のためにRFID信号を通信する際に使用するためのコンピュータ44にルーティングされてもよい。マイクロストリップコンポーネントのいくつかの間隔の測定値はインチ単位で与えられる。9.7インチの間隔は、24.64cmと同等である。0.67インチのマイクロストリップラインの幅は、17.0mmと同等である。1.4インチの間隔は、3.56cmと同等である。異なる数のこのようなアンテナとともに、他の構成およびタイプの受信アンテナが使用されてもよい。この実施形態において、受信アンテナは、受信パッチアンテナがファラデー箱の金属表面と接触した状態にならないように、金属性エンクロージャフレーム167の底部内側表面の絶縁材に取り付けられる。
【0070】
以下、図20を参照すると、上述したエンクロージャにおける場の強度または場の強さは、ボルト/メートル単位で示される縦座標軸およびメートル単位で示される横座標軸で示される。最大の場強度が、約5.0インチ(0.127m)の位置で生じ、この位置は、プローブの位置が前壁から5.0インチ(12.7cm)にあり、動作周波数が915MHzであることから生じていることが図から分かるであろう。以下、図21を参照すると、場の強度の大きな上昇が5.0インチ(12.7cm)で見られるが、スケールが縮小されている。場の強度が右側壁で低下するが、左側壁の非常に近いところで強いままであることが、より明確に見てとれる。したがって、ある実施形態において、右側壁から5.0インチ(12.7cm)の位置にある第2のプローブが使用されたことで、図21に示すものと鏡像の場の強度が得られる。2つのプローブ162および164は、連続的に作動されるものであり、両方が同時には作動されない。エンクロージャ166のより良好なEM場の到達範囲が2つのプローブを用いて得られ、前壁161の付近に位置付けられた物品のRFIDタグが、正面側プローブ162によって作動され、背壁170の付近に位置付けられた物品のRFIDタグが、背面側プローブ164(図13を参照)によって作動されることに留意されたい。
【0071】
理論に縛られることを望むものではないが、正方形または矩形の非共振キャビティにおいて、TEモードでのプローブ場所を導き出す際、以下の方程式が有用でありうる。
【数1】
式中、N=正の非ゼロ整数、例えば、1,2,3,など
L1=ローブと背壁との間の距離
L2=プローブと前壁との間の距離
λg=キャビティの波長
【0072】
L1は、TEモードでゼロではなく、TEモードを励起するためのプローブが、前壁または背壁の位置にはないことを意味する。TMモードの場合、方程式は同じであるが、Nはゼロおよび他の正の整数に等しい。プローブ位置は、前壁または背壁からλg/2ではない。L1およびL2は、Nが方程式を満たす正の整数でありうるように選択される。例えば、上述したエンクロージャ166の場合、
L1=4.785インチ(約12.154cm)
L2=11.225インチ(約28.511cm)
λg=12.83インチ(約32.59cm)
したがって、
【数2】
【0073】
実際のエンクロージャでは、方程式で示す値(4.785インチ(約12.154cm)とはわずかに異なる場所(5.0インチ(約12.7cm))にプローブが設置されるが、これは、場合によっては、キャビティにプラスチック引出しを挿入することで、反射信号からの位相に変化がもたらされるためである。上記の方程式は、前壁および背壁の両方からの反射位相が等しくなるように、すなわち、プローブの場所で「同相」になるように立てられる。
【0074】
エンクロージャの波長λgは、導波管方程式を用いて計算できる。矩形キャビティの方程式を以下に示す。この計算には、遮断周波数が必要である。円筒状のキャビティまたは他の形状の場合は、方程式は変化する。
【0075】
遮断周波数は、gが消滅する点のものである。したがって、ヘルツ単位の遮断周波数は、以下のとおりである。
【数3】
メートル単位の遮断周波数は、以下のとおりである。
【数4】
式中、a=内部の幅
b=内部の高さ
m=「a」方向の場の1/2波長変動の数
n=「b」方向の場の1/2波長変動の数
ε=誘電率
μ=透磁率
【0076】
最低遮断周波数を有するモードは、主モードと呼ばれる。TE10モードは、方形導波管に非ゼロの場の表現を与える最小可能モードであるため、主周波数が以下のようになるa>bの方形導波管の主モードである。
【数5】
【0077】
波動インピーダンスは、横電場および横磁場の比として定義される。したがって、インピーダンスは、以下のとおりである。
【数6】
【0078】
管内波長は、導波管に沿った2つの同位相平面間の距離として定義され、以下の式に等しい。
【数7】
式中、
【数8】
【数9】
【0079】
図22は、図2に示すような複数引出し医療用キャビネットのブロック電気信号図を表す。この場合、キャビネットは、8段の引出し220を有する。各引出しは、2つの上部アンテナと、2つの底部アンテナと、引出しをセキュリティ保護するためのロックセンサ222付きロックとを含む。各引出しのアンテナとの間でやりとりする信号は、RFマルチプレクサスイッチ224を通して供給される。各RFマルチプレクサスイッチ224は、この実施形態において、2段の引出しに対してRF信号のルーティングを取り扱う。RFID作動場およびRFID受信信号が、それぞれのRFマルチプレクサスイッチ224を通ってメインRFIDスキャナ230に送られる。スキャナ230の出力は、この場合、有線接続234および無線接続236によって、関連情報を遠隔地に通信する際に使用するためのマイクロプロセッサ232に向けられる。また、図20には、電力接続、電力分配、バックアップバッテリ、配線PCBA、USBサポート、冷却などのさまざまな支持システムが示されている。
【0080】
一実施形態によれば、引出しは連続的にモニタされる。各引出し内において、アンテナは、関連するマルチプレクサ224によって連続的に作動される。信号および電気制御システムの他の実施形態も可能である。
【0081】
本明細書において、一実施形態としてRFIDタグが使用されるが、電磁エネルギーによって通信する他のデータキャリアも使用可能であってもよい。RFエネルギーについて詳細に記述されているが、他の形式のEMエネルギーも使用可能である。
【0082】
内蔵式引出しモジュール
本発明の態様によれば、組み込み式のRFID検出システムを含まない薬剤キャビネットが、在庫の自動個体識別および追跡を行うことができるものになるように、RFID使用可能にされるか、変形されるか、または後付けされうる。同様に、組み立てられているキャビネットに、キャビネット、1つまたは複数の引出しを、個体識別および追跡用の自動在庫管理を実行する自動システムにするために、本明細書に開示されたRFID使用可能システムが組立て時に装着されてもよい。本明細書のシステムは、薬剤キャビネットのみに適用可能なものではなく、品物の他のタイプの容器に採用されてもよい。キャビネットは、本明細書において、一例としてのみ使用され、本発明は、これらのキャビネットのみとの使用に限定されるものではない。
【0083】
本明細書に開示されたRFID使用可能システムによれば、自己在庫管理が任意の方式で行われうる。本明細書の開示によるRFID使用可能な容器内の品物は、いつでも個体識別され追跡されうる。例えば、このような自己在庫管理は、真夜中や、一時間毎、引出しや容器が開かれるたび、より高い頻度で、またはより低い頻度で自動的に起こりうる。労力の要求基準が下がり、完全な柔軟性および多様性が提供される。以下に記述するように、このデザインから多くの利点が生じる。
【0084】
以下、図25を参照すると、薬剤キャビネット332内に非金属性のスライド可能な引出し330が取り付けられるように構成される。引出し330は、保管および投与のために薬剤などの医療物品が内部に配置される「ポケット」336を形成する引出しにさまざまな仕切りまたは区分け334を含む。この実施形態において、引出しがスライド可能に内部に取り付けられるキャビネットは、ファラデー箱として動作するように引出しを取り囲む金属性フレーム338を含む。以下、図26を参照しながら、引出し330の正面部分340は、金属342で形成されてもよく、または引出しが非金属性のものである場合、引出しが閉構成にあり、引出しの周りにファラデー箱が完成しているとき、キャビネット332の金属性フレーム338の残りと接触するようなサイズにされ配置される金属性部分を含む。引出しのファラデー箱内に本明細書に記載する内蔵式RF引出しモジュールを据え付けることによって、フレームは、引出しに配置されたRFIDタグ付き物品の存在を検出するためのRFシステムをフレーム内に有する。
【0085】
図23に示す実施形態において、健康管理施設が、患者用に処方され、または一般的使用のために薬剤キャビネットに保管するための薬剤および他の医療補給品のリストを維持できるようにデータベース320が使用される。
【0086】
図27において、底部引出し402が取り外された薬剤キャビネット400が示されている。この場合、底部引出しはプラスチックで形成され、引出しをRFID使用可能にする際に使用するためのファラデー箱を提供しない。また、引出しに配置されたRFIDタグを有する品物が検出、個体識別および追跡可能である環境を取り外された引出し402に与えるようにされたRFID使用可能な引出しモジュール404が示されている。以下に詳細に記載されるように、モジュールは、この実施形態において、引出し402によって形成され、または引出し402の周囲に形成されるファラデー箱内に取り付けられなければならない、プローブアンテナおよび受信アンテナを含む。本明細書に開示されるRFID使用可能モジュールが、容器の共振周波数に関係なく、容器に安定したEM場を発生できるため、図27に示すような引出しの後付けが可能になる。RFID使用可能モジュールシステムによって生じる安定したEM場は、RFIDタグが読み取られ、タグが付けられた品物が個体識別および追跡可能なように、引出し内のすべてのRFIDタグを作動可能である。
【0087】
この引出し402はプラスチックで形成されているため、ファラデー箱は引出しの周りに形成されなければならない。したがって、箱406として図27に略図的に表しているファラデー箱は、引出しの周囲に形成される。図示した実施形態において、ファラデー箱は、引出しがキャビネット内に再び挿入されて閉じられると、引出しを完全に囲むように、キャビネット400のフレーム内に取り付けられる金属性の壁を備えてもよい。金属性の壁は、さまざまな方法で形成されてもよく、その方法の1つは、フレーム内の引出しの周囲に金属箔を取り付けることである。金属箔は、引出しの正面408と係合して箱を完成するのに十分な大きさのものでなければならない。引出しの正面は、金属箔と接触し、引出しの正面全体にわたって箱を与えるために、正面パネルの外側、側面および内側に金属ペイントが塗装されてもよい。別の実施形態として、ファラデー箱を作るために、キャビネットのフレーム内に金属ペイントが使用されてもよい。個体識別され追跡されている品物が内部にある容器を取り囲むように、ファラデー箱を構築し、または完成するために、他の手段が使用されてもよい。
【0088】
引出しが金属性のものであり、引出し自体がファラデー箱を形成する実施形態において、モジュール404のアンテナは、箱内の場およびRFID送信と通信するために、ケージ内にあるように取り付けられなければならない。ある場合において、キャビネットおよび引出しの構成に応じて、モジュールは引出しの上方に配置され、他の場合において、モジュールは引出しの下方に配置されてもよい。さらに、キャビネットにある2つ以上の引出しは、本発明の態様によりRFID使用可能にされうる。
【0089】
上述したように、モジュール404は、引出しをRFID使用可能にするために、引出しの上方に取り付けられうる。図27に示す実施形態において、モジュールは、モジュールの表面の上方にある距離だけ突出する2つのプローブアンテナ414を有する。この場合、プローブアンテナは、モジュールの中央に位置決めされる。これらのアンテナを収容するために、引出しが開位置に引かれ、閉位置に押されるときに、引出しの背面がプローブアンテナにダメージを与えないように、引出しの背面にノッチ410が形成されている。図25に示すように、引出し内に区分けがあれば、区分けにノッチ412が形成されてもよい。図17に示すように、これらのプローブアンテナは、保護カバー182によって覆われてもよい。モジュール404は、スタンドオフおよびねじを引出しの周囲にあるフレームの天井内に取り付けることによって、ファラデー箱内に取り付けられてもよい。他の取付け技術も可能である。
【0090】
図27は、モジュールと電源418との接続およびデータ通信420とローカルコンピュータ416との接続を示す。モジュール404がイーサネット(Ethernet、登録商標)(図示せず)に接続される実施形態において、電力は、イーサネット接続(パワー・オーバー・イーサネット、いわゆる「PoE」)によってすべて供給されてもよい。さらに、ローカルコンピュータ416は、キャビネット400のRFID使用可能引出し402にあるモジュール404によって、個体識別され追跡された品物のRFIDデータを処理するようにプログラミングされてもよく、これらの品物のデータベースおよびこれらの品物に関連付けられたRFIDデータを作成するようにプログラミングされてもよい。処理されたRFIDデータおよびデータベースは、図23に示すような中央サーバ310およびそのデータベース320に通信されてもよく、他の場所または追加の場所に通信されてもよい。処理されたRFIDデータおよびデータベースは、図23にも示すように、カート316に通信されてもよい。中央サーバにおいて、必要に応じて、プログラムが、受信したRFIDおよび品物データをさらに処理するようにサーバを構成してもよい。また、ローカルコンピュータ416は、据え付けたハードウェアのデータベース、引出しに関係付けられたハードウェアアドレスおよび他のさまざまなデータベース項目を含む。このようなプログラムおよびデータベースの構造は、当業者によく知られているため、本明細書においてさらなる詳細は記載しない。
【0091】
以下、図28を参照すると、RF引出しモジュール404は、2つのメインシステムと、プラスチックベースと、RFIDリーダ/アンテナプリント回路基板とから構成される。プラスチックベース430は、およそ19インチ(48cm)×16インチ(41cm)であるか、または、一般に、RF使用可能な引出し402のサイズである。プラスチックベースは、アンテナ放射要素432の形状のパターン化された導電性材料が、メサ構造434に熱成形された4つのエリアを含む。アンテナ放射要素は、メサの高さおよび空気の誘電体に対して最適化される。プラスチックベースは、アンテナ放射要素の接地基準である遮蔽引出しエンクロージャの部分である金属表面上にある。導電性材料は、プラスチックベースの上部にパターン化され、RFIDリーダプリント回路基板438に放射要素を接続するために、メサおよびプラスチックベースの両方の上に伝導性トレース436を含む。
【0092】
RFIDリーダ/アンテナのプリント回路基板438は、RFIDリーダモジュール440と、2つのX4 RFスイッチ442と、2つのプローブアンテナ444用の取付けパッド446と、プラスチックメサ434上のパッチアンテナ432にスイッチを接続するためのトレース436とに対応するようにされている。プリント回路基板は、RFIDリーダモジュールをプリント回路基板に機械的に取り付けるための取付け孔を含む。プリント回路基板は、電力調整と、USBインタフェースと、RFIDリーダモジュール440をサポートするためのパワー・オーバー・イーサネット回路とを含む。RFIDリーダモジュール440の2つのRFポート450は、2つのMMCX to MMCX同軸ケーブルを介してプリント回路基板に接続される。これらのケーブルからの信号は、X4 RFスイッチ442の入力にそれぞれ接続される448。1つのプローブアンテナ用のはんだ位置、2つのパッチアンテナ用の配線トレースおよび接続なしの1つのスペア出力のように、2つのX4 RFスイッチの各々の4つの出力が接続される。
【0093】
RFIDリーダのプリント回路基板440は、プラスチックベース430の中心に機械的に付着される。プリント回路基板の配線トレースおよびプラスチックベースの導電性トレースは一致することで、プリント回路基板と、熱成形されたプラスチックベース上のアンテナ要素との間に容量結合接続452が得られる。
【0094】
図29は図28の側面図を表し、プローブアンテナ444が後方にある2つのメサ構造434を示す。また、RFIDリーダモジュール440も見られる。同様に、図28の端面図である図30は、2つのメサ434と、プローブアンテナ444と、RFIDリーダ440とを示す。
【0095】
RF引出しモジュール404を実装することで、以下の結果が得られる。
1.RF信号完全性の向上
2.RF使用可能な引出しの組立て、メンテナンスおよび修理の簡潔化
3.RF引出しの信頼性の向上
4.モジュール製品構成(RFID使用可能な引出しが、1つのユニットとして、またはいくつかの引出しを含むキャビネットの一部として販売可能)
【0096】
内蔵式のRFID使用可能な引出しモジュール404は、RFID技術または他の技術によって引出しの内容物の検出を与えるために、薬剤引出し、または他のタイプの引出しや容器の隣の場所に位置付けられてもよい。引出しは、例えば、薬剤キャビネット400の内外へスライド可能であってもよく、キャビネット内にスライドされると、モジュールは、引出しにRFIDタグ付き物品を検出および個体識別するように動作可能にされてもよい。上記説明および添付の図面によるモジュール404は、必要に応じて、電力およびデータ通信ラインと接続するだけで、引出しで完全な検出システムを確立するために使用されてもよい。引出しのサイズに応じて、使用するアンテナ要素およびプローブアンテナの数は増減されてもよい。また、異なる位置にある構造が使用されてもよく、例えば、開示されるメサ構造が使用されなくてもよく、または異なる形をなすものであってもよい。別の例として、RFIDリーダのプリント回路基板は、異なる形をなすものであってもよく、または別の方法でベースと一体化されてもよい。
【0097】
本明細書に開示されたシステムにより、RFID使用可能な引出しシステムの製造が容易になる。RFID使用可能なモジュールは、ファラデー箱内の差込み式のコンポーネントになる。このデザインにより、既存の引出しベースのキャビネットシステムの一部を後付けできる。このデザインは、容器に安定したEM場を発生するため、この容器の共振周波数に関係なく、多様な引出しおよび容器に有用である。一例として、「一段」の引出し、「二段」の引出しなどに有用である。これにより、ファラデー箱のサイズおよび荷重に基づいて、アンテナをさらに自動同調または動的同調することができる。例えば、より多くのタグ付き品物が引出し内に配置されると、より多くの品物がファラデー箱のRF場内にあるため、引出しの「荷重」が変化する。逆に、品物が取り除かれると、RF場の荷重も変わる。このような自動同調は、当業者に知られており、本明細書においてさらなる詳細は記載しない。例えば、Frimanらの米国特許第7,812,774号明細書およびShamblinらの同第7,830,320号明細書を参照されたい。さらに、RFID使用可能なモジュールは、電源および通信ポートのみしか見えず、SMAコネクタおよびRFケーブルを排除した内蔵式のモジュールである。これにより、組立ておよびテストコストが削減され、システムのサービス性が大幅に高められる。
【0098】
上記利益は、少なくとも以下のものを含む。
‐ 複数の品物を一度に自己在庫管理する能力
‐ 最小/最大在庫レベルに対して在庫確認する能力および再発注手段
‐ 投薬ミスの防止
‐ 偽造防止
‐ 電子ペディグリ/シリアル番号化能力
‐ ロット管理
‐ NDC管理
‐ 使用期限管理
‐ データマイニング
‐ データベースシステムの提供により、特定のRFIDタグをモニタし、タグが付けられた品物に関する補助情報とタグとを関連付ける能力
【0099】
本明細書に開示されるRFID使用可能なモジュールシステムとともに上記に挙げた利益を提供するためにデータを受信、送信および操作する構成システムおよびプロセッサが当業者に知られており、本明細書においてさらに記載しない。Andreassonらの米国特許第7,140,542号明細書およびAndreassonらの同第7,175,081号明細書を参照されたい。これらの内容全体は、参照により本明細書に援用され、本発明の譲受人に譲渡される。
【0100】
図31は、本発明の態様による方法を与える。引出しがRFID使用可能になると(470)、引出しが閉位置にあるとき、ファラデー箱構造内にあるかを決定する確認がなされる(472)。ファラデー箱内になければ、引出し内に適切なEM場を確立してRFIDタグを検出するように、引出しの周囲に完全にファラデー箱を設置するアクションをとる(474)。ファラデー箱がうまく確立されると、RFID使用可能モジュールは、引出しにあるこのようなRFIDタグを検出できるように、引出しに対してキャビネットに取り付けられる(476)。プローブアンテナは、引出しの全体に最大の場の強さを確立するように同調される(478)。1つまたは複数のデータラインおよび電源は、RFID使用可能モジュールに接続される(480および482)。適切なプロセッサ構成プログラムは、RFIDタグデータが処理可能であることで、RFIDタグに関連付けられた品物が個体識別され追跡されるように組み込まれる。
【0101】
便宜上、本明細書において使用する場合、周知のファラデー箱またはファラデーシールドまたはファラデーキャビティは、導電性材料によって、またはこのような材料のメッシュによって形成されたエンクロージャである。このようなエンクロージャは、外部の静電場を締め出す。
【0102】
明細書および以下の特許請求の範囲を通して、文脈において特段の要求がない限り、「comprise(含む)」という用語、およびその変形、例えば、「comprises」および「comprising」は、開放された包括的意味で解釈されるべきであり、「を含むが、〜に限定されるものではない」という意味のものである。
【0103】
最も実用的かつ好ましい実施形態であると現在考えられているものを用いて本発明を記載してきたが、本発明は、開示された実施形態および要素に限定されるものではなく、それとは反対に、添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲内に含まれるさまざまな修正例、特徴の組み合わせ、同等の配列および同等の要素に及ぶことが意図されていることを理解されたい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
品物が配置される所定のサイズの容器内にRF場を確立するためのRF使用可能モジュールシステムであって、
品物が配置される容器に対して、選択された場所にベースを取り付けるように構成された取付け固定具を有するベースであって、前記容器が、ある容器サイズを有し、前記ベースが、前記ベースおよび前記ベースのコンポーネントが前記容器内に配置された品物と相互作用するように、前記容器サイズと適合するように選択されたベースサイズを有する、ベースと、
前記ベースに設置され、かつ、前記容器の共振周波数に関係なく、所定の周波数レンジ内で前記容器内に安定した作動RF場を確立するように構成された、同調プローブアンテナであって、前記安定した作動RF場が前記容器に配置されたすべての品物に及ぶ、同調プローブアンテナと、
前記ベースに設置され、かつ、前記作動RF場に応じて前記容器内に生成されたデータ信号を受信するように構成された、受信アンテナと、
前記受信アンテナから前記データ信号を受信し、前記データ信号を処理するように構成された、前記ベースに設置されたリーダユニットと、
前記リーダユニットから前記処理されたデータ信号を受信し、前記処理されたデータ信号を遠隔地へ通信するように構成された、前記ベースに設置された通信ユニットと、
を備えるRF使用可能モジュールシステム。
【請求項2】
前記容器内の前記品物の周囲に略完全に形成されたファラデー箱をさらに備え、
少なくとも前記プローブアンテナおよび前記受信アンテナが、前記ファラデー箱内に設置される、請求項1に記載のRF使用可能モジュールシステム。
【請求項3】
前記プローブアンテナが、自動的に再同調して、前記容器内の品物数の増減に対応するために、前記容器内に前記安定した作動RF場を確立するように構成される、請求項1に記載のRF使用可能モジュールシステム。
【請求項4】
前記容器が、ある共振周波数を有し、かつ、前記プローブアンテナの所定の周波数レンジが、前記共振周波数を含まない、請求項1に記載のRF使用可能モジュールシステム。
【請求項5】
前記リーダと、前記プローブアンテナと、前記受信アンテナとの間にスイッチをさらに備え、前記リーダが、前記容器を作動し、かつ、前記容器からデータを受信するために、各アンテナをオンまたはオフに切り換えるように構成される、請求項1に記載のRF使用可能モジュールシステム。
【請求項6】
前記ベースのサイズが、前記ベースが既存の容器のサイズに合致して適合されるように選択されることにより、前記モジュールシステムが、前記既存の容器に後付けするように使用される、請求項1に記載のRF使用可能モジュールシステム。
【請求項7】
前記ベースのサイズが、前記ベースが組み立てられている容器のサイズと合致して適合されるように選択されることにより、前記モジュールシステムが、前記組み立てられている容器の一体部分を形成するように使用される、請求項1に記載のRF使用可能モジュールシステム。
【請求項8】
前記アンテナが、前記ベースに形成されたメサ構造のそれぞれの上部に設置される、請求項1に記載のRF使用可能モジュールシステム。
【請求項9】
複数のプローブアンテナと、複数の受信アンテナとをさらに備え、前記リーダが前記複数のアンテナの間の前記ベースの中央に設置される、請求項1に記載のRF使用可能モジュールシステム。
【請求項10】
4つの受信アンテナと、2つのプローブアンテナと、2つのスイッチとを備え、前記リーダが、前記ベースに取り付けられるRFIDリーダ回路基板を備え、前記プローブアンテナ、前記スイッチおよび前記リーダが、前記アンテナ間の中央に設置されたRFIDリーダ回路基板に取り付けられる、請求項9に記載のRF使用可能モジュールシステム。
【請求項11】
品物が配置される所定のサイズの容器内にRF場を確立するためのRFID使用可能モジュールシステムであって、
品物が配置される容器に対して選択された場所にベースを取り付けるように構成された取付け固定具を有するベースであって、各品物は、固有のデータ識別情報を有するRFIDタグを有し、前記容器が、ある容器サイズを有し、前記ベースが、前記ベースおよび前記ベースのコンポーネントが前記容器内に配置されたタグ付き品物と相互作用するように、前記容器サイズと適合するように選択されたベースサイズを有する、ベースと、
前記ベースに設置され、かつ、前記容器の共振周波数を含まない所定の周波数レンジ内で前記容器内に安定した作動RF場を確立するように構成された、同調プローブアンテナであって、前記安定したRF場が、前記容器に配置された品物のRFIDタグを作動するように選択される、同調プローブアンテナと、
前記ベースに設置され、かつ、前記作動RF場に応じて前記容器内に生成されたRFIDデータ信号を受信するように構成された、受信アンテナと、
前記受信アンテナから前記RFIDデータ信号を受信し、前記データ信号を処理するように構成された前記ベースに設置されたRFIDリーダユニットと、
前記リーダユニットから前記処理されたデータ信号を受信し、前記処理されたデータ信号を遠隔地へ通信するように構成された前記ベースに設置された通信ユニットと、
前記容器内の前記タグ付き品物の周囲に略完全に形成されたファラデー箱と、
少なくとも前記プローブアンテナおよび前記受信アンテナが、前記ファラデー箱内に設置され、
前記遠隔地に設置されたデータベースであって、前記品物にそれぞれ取り付けられた前記タグのデータ識別情報と相関する前記タグ付き品物に関する情報を含むデータベースと、
前記処理されたデータ信号を受信し、前記データ信号を前記データベースと比較し、前記比較に基づいて前記タグ付き品物に関する情報を提供するように構成された、前記遠隔地に設置されたリモートプロセッサと、
を備えるRFID使用可能モジュールシステム。
【請求項12】
前記比較に基づいた前記タグ付きの品物に関する情報が、以下の情報、すなわち、
再発注のために最小/最大レベルと比較される在庫レベル、
偽造防止、
電子ペディグリ/シリアル番号化能力、
ロット管理、
投薬ミスの防止、
NDC管理、および
使用期限管理、
の少なくとも1つを含む、請求項11に記載のRFID使用可能モジュールシステム。
【請求項13】
前記リーダが、スケジュールに従って、前記容器に、前記RF場を自動的に確立するように構成される、請求項11に記載のRFID使用可能モジュールシステム。
【請求項14】
前記プローブアンテナが、前記容器内の品物数の増減に対応するために、自動的に再同調して、前記容器内に前記安定した作動RF場を確立するように構成される、請求項11に記載のRFID使用可能モジュールシステム。
【請求項15】
RFIDタグ付きの品物が配置される所定のサイズの容器内にRF場を確立するために、前記容器をRFID使用可能にする方法であって、
RFIDタグ付きの品物が配置される容器に対して選択された場所にベースを取り付けるステップであって、前記容器は、ある容器サイズを有し、前記ベースは、ベースおよび前記ベースのコンポーネントが前記容器内に配置された品物のRFIDタグと相互作用するように、前記容器サイズと適合するように選択されたベースサイズを有する、ステップと、
前記容器の共振周波数に関係なく、所定の周波数レンジ内で前記容器内に安定した作動RF場を確立するように、前記ベースに取り付けられた同調プローブアンテナを励起するステップであって、前記安定した作動RF場は、前記容器に配置されたすべてのRFIDタグ付きの品物に及ぶ、ステップと、
RFIDタグが前記安定した作動RF場によって作動された後、前記容器内の品物にRFIDタグから固有のRFID個体識別データ信号を受信するステップと、
前記容器内の前記作動した品物からRFIDデータ信号を読み取り、処理するステップと、
前記処理されたRFIDデータ信号を遠隔地に通信するステップと、
を含む方法。
【請求項16】
前記容器内の前記RFIDタグ付きの品物の周囲に略完全にファラデー箱を形成するステップと、
ファラデー箱内に、少なくともプローブアンテナおよび受信アンテナを取り付けるステップと、
をさらに含む請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記容器内のRFIDタグ付きの品物数の増減に対応するために、前記プローブアンテナを自動的に再同調して、前記容器内に安定した作動RF場を確立する、ステップを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記励起するステップが、前記容器の共振周波数を含まない周波数レンジを有する前記同調プローブアンテナを励起するステップを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項1】
品物が配置される所定のサイズの容器内にRF場を確立するためのRF使用可能モジュールシステムであって、
品物が配置される容器に対して、選択された場所にベースを取り付けるように構成された取付け固定具を有するベースであって、前記容器が、ある容器サイズを有し、前記ベースが、前記ベースおよび前記ベースのコンポーネントが前記容器内に配置された品物と相互作用するように、前記容器サイズと適合するように選択されたベースサイズを有する、ベースと、
前記ベースに設置され、かつ、前記容器の共振周波数に関係なく、所定の周波数レンジ内で前記容器内に安定した作動RF場を確立するように構成された、同調プローブアンテナであって、前記安定した作動RF場が前記容器に配置されたすべての品物に及ぶ、同調プローブアンテナと、
前記ベースに設置され、かつ、前記作動RF場に応じて前記容器内に生成されたデータ信号を受信するように構成された、受信アンテナと、
前記受信アンテナから前記データ信号を受信し、前記データ信号を処理するように構成された、前記ベースに設置されたリーダユニットと、
前記リーダユニットから前記処理されたデータ信号を受信し、前記処理されたデータ信号を遠隔地へ通信するように構成された、前記ベースに設置された通信ユニットと、
を備えるRF使用可能モジュールシステム。
【請求項2】
前記容器内の前記品物の周囲に略完全に形成されたファラデー箱をさらに備え、
少なくとも前記プローブアンテナおよび前記受信アンテナが、前記ファラデー箱内に設置される、請求項1に記載のRF使用可能モジュールシステム。
【請求項3】
前記プローブアンテナが、自動的に再同調して、前記容器内の品物数の増減に対応するために、前記容器内に前記安定した作動RF場を確立するように構成される、請求項1に記載のRF使用可能モジュールシステム。
【請求項4】
前記容器が、ある共振周波数を有し、かつ、前記プローブアンテナの所定の周波数レンジが、前記共振周波数を含まない、請求項1に記載のRF使用可能モジュールシステム。
【請求項5】
前記リーダと、前記プローブアンテナと、前記受信アンテナとの間にスイッチをさらに備え、前記リーダが、前記容器を作動し、かつ、前記容器からデータを受信するために、各アンテナをオンまたはオフに切り換えるように構成される、請求項1に記載のRF使用可能モジュールシステム。
【請求項6】
前記ベースのサイズが、前記ベースが既存の容器のサイズに合致して適合されるように選択されることにより、前記モジュールシステムが、前記既存の容器に後付けするように使用される、請求項1に記載のRF使用可能モジュールシステム。
【請求項7】
前記ベースのサイズが、前記ベースが組み立てられている容器のサイズと合致して適合されるように選択されることにより、前記モジュールシステムが、前記組み立てられている容器の一体部分を形成するように使用される、請求項1に記載のRF使用可能モジュールシステム。
【請求項8】
前記アンテナが、前記ベースに形成されたメサ構造のそれぞれの上部に設置される、請求項1に記載のRF使用可能モジュールシステム。
【請求項9】
複数のプローブアンテナと、複数の受信アンテナとをさらに備え、前記リーダが前記複数のアンテナの間の前記ベースの中央に設置される、請求項1に記載のRF使用可能モジュールシステム。
【請求項10】
4つの受信アンテナと、2つのプローブアンテナと、2つのスイッチとを備え、前記リーダが、前記ベースに取り付けられるRFIDリーダ回路基板を備え、前記プローブアンテナ、前記スイッチおよび前記リーダが、前記アンテナ間の中央に設置されたRFIDリーダ回路基板に取り付けられる、請求項9に記載のRF使用可能モジュールシステム。
【請求項11】
品物が配置される所定のサイズの容器内にRF場を確立するためのRFID使用可能モジュールシステムであって、
品物が配置される容器に対して選択された場所にベースを取り付けるように構成された取付け固定具を有するベースであって、各品物は、固有のデータ識別情報を有するRFIDタグを有し、前記容器が、ある容器サイズを有し、前記ベースが、前記ベースおよび前記ベースのコンポーネントが前記容器内に配置されたタグ付き品物と相互作用するように、前記容器サイズと適合するように選択されたベースサイズを有する、ベースと、
前記ベースに設置され、かつ、前記容器の共振周波数を含まない所定の周波数レンジ内で前記容器内に安定した作動RF場を確立するように構成された、同調プローブアンテナであって、前記安定したRF場が、前記容器に配置された品物のRFIDタグを作動するように選択される、同調プローブアンテナと、
前記ベースに設置され、かつ、前記作動RF場に応じて前記容器内に生成されたRFIDデータ信号を受信するように構成された、受信アンテナと、
前記受信アンテナから前記RFIDデータ信号を受信し、前記データ信号を処理するように構成された前記ベースに設置されたRFIDリーダユニットと、
前記リーダユニットから前記処理されたデータ信号を受信し、前記処理されたデータ信号を遠隔地へ通信するように構成された前記ベースに設置された通信ユニットと、
前記容器内の前記タグ付き品物の周囲に略完全に形成されたファラデー箱と、
少なくとも前記プローブアンテナおよび前記受信アンテナが、前記ファラデー箱内に設置され、
前記遠隔地に設置されたデータベースであって、前記品物にそれぞれ取り付けられた前記タグのデータ識別情報と相関する前記タグ付き品物に関する情報を含むデータベースと、
前記処理されたデータ信号を受信し、前記データ信号を前記データベースと比較し、前記比較に基づいて前記タグ付き品物に関する情報を提供するように構成された、前記遠隔地に設置されたリモートプロセッサと、
を備えるRFID使用可能モジュールシステム。
【請求項12】
前記比較に基づいた前記タグ付きの品物に関する情報が、以下の情報、すなわち、
再発注のために最小/最大レベルと比較される在庫レベル、
偽造防止、
電子ペディグリ/シリアル番号化能力、
ロット管理、
投薬ミスの防止、
NDC管理、および
使用期限管理、
の少なくとも1つを含む、請求項11に記載のRFID使用可能モジュールシステム。
【請求項13】
前記リーダが、スケジュールに従って、前記容器に、前記RF場を自動的に確立するように構成される、請求項11に記載のRFID使用可能モジュールシステム。
【請求項14】
前記プローブアンテナが、前記容器内の品物数の増減に対応するために、自動的に再同調して、前記容器内に前記安定した作動RF場を確立するように構成される、請求項11に記載のRFID使用可能モジュールシステム。
【請求項15】
RFIDタグ付きの品物が配置される所定のサイズの容器内にRF場を確立するために、前記容器をRFID使用可能にする方法であって、
RFIDタグ付きの品物が配置される容器に対して選択された場所にベースを取り付けるステップであって、前記容器は、ある容器サイズを有し、前記ベースは、ベースおよび前記ベースのコンポーネントが前記容器内に配置された品物のRFIDタグと相互作用するように、前記容器サイズと適合するように選択されたベースサイズを有する、ステップと、
前記容器の共振周波数に関係なく、所定の周波数レンジ内で前記容器内に安定した作動RF場を確立するように、前記ベースに取り付けられた同調プローブアンテナを励起するステップであって、前記安定した作動RF場は、前記容器に配置されたすべてのRFIDタグ付きの品物に及ぶ、ステップと、
RFIDタグが前記安定した作動RF場によって作動された後、前記容器内の品物にRFIDタグから固有のRFID個体識別データ信号を受信するステップと、
前記容器内の前記作動した品物からRFIDデータ信号を読み取り、処理するステップと、
前記処理されたRFIDデータ信号を遠隔地に通信するステップと、
を含む方法。
【請求項16】
前記容器内の前記RFIDタグ付きの品物の周囲に略完全にファラデー箱を形成するステップと、
ファラデー箱内に、少なくともプローブアンテナおよび受信アンテナを取り付けるステップと、
をさらに含む請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記容器内のRFIDタグ付きの品物数の増減に対応するために、前記プローブアンテナを自動的に再同調して、前記容器内に安定した作動RF場を確立する、ステップを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記励起するステップが、前記容器の共振周波数を含まない周波数レンジを有する前記同調プローブアンテナを励起するステップを含む、請求項15に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22−1】
【図22−2】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22−1】
【図22−2】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【公表番号】特表2013−519177(P2013−519177A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552962(P2012−552962)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【国際出願番号】PCT/US2011/024233
【国際公開番号】WO2011/100356
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(512148573)エムイーピーエス、リアル‐タイム、インコーポレイテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】MEPS REAL−TIME, INC.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【国際出願番号】PCT/US2011/024233
【国際公開番号】WO2011/100356
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(512148573)エムイーピーエス、リアル‐タイム、インコーポレイテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】MEPS REAL−TIME, INC.
【Fターム(参考)】
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