説明

冷却装置

【課題】簡素化を図りつつ冷却対象における冷却目標温度に応じた値に冷媒温度を維持する。
【解決手段】冷却装置10は、エンジン100とメインラジエータ130との間でLLCが循環する循環路110と、LLCを循環路110に循環させる電動ポンプ120と、PCU200とサブラジエータ220との間でLLCが循環する循環路210と、循環機構300とを含む。循環機構300は、第1羽根車310、回転軸320および第2羽根車330を含む。第1羽根車310は、第2サイドタンク140から流れ込むLLCの流体エネルギの一部により回転する。第1羽根車310に接続される回転軸320も連動して回転する。第2羽根車330は、回転軸320が回転することにより回転し、自身の回転エネルギを流体エネルギとして第2流路308内のLLCに付与して、LLCを循環させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの発熱体を冷却する冷却装置に関し、特に、車両に搭載される内燃機関と電子素子とを冷却する冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンとモータとを駆動源とするハイブリッド車両が知られている。ハイブリッド車両には、モータに電力を供給する電力制御ユニットであるPCU(Power Control Unit)が搭載される。PCUは、その内部の電気回路(パワー素子)で構成されるIPM(Intelligent Power Module)による温度上昇を抑制するために冷却液(たとえば、LLC(Long Life Coolant))により冷却される。このPCUの冷却液は、専用の電動ポンプにより、エンジン冷却系統のラジエータとは異なる専用のラジエータとPCUとの間を循環する。このように、ハイブリッド車両においては、エンジン冷却系統とPCU冷却系統とに電動ポンプおよびラジエータがそれぞれ必要であり、冷却装置が複雑になっていた。そのため、ハイブリッド車両における冷却装置を簡素にする技術が望まれている。このようなハイブリッド車両における冷却装置を簡素にする技術に関して、以下の公報に開示された技術がある。
【0003】
特開2002−276364号公報(特許文献1)は、内燃機関と電動機との冷却装置の統合化により、冷却装置を簡素で安価にする技術を開示する。この公報に開示されたハイブリッド電気自動車の冷却装置は、内燃機関および電動機を動力装置として備え、内燃機関を流通する冷却水を冷却する第1ラジエータと、電動機を流通する冷却水を冷却する第2ラジエータとを有する、ハイブリッド電気自動車に用いられる。この冷却装置は、内燃機関および第1ラジエータの間を冷却水が循環する内燃機関冷却水路と、第1ラジエータの下流側となる下流側水路に対して並列となるように分岐、合流するとともに、第2ラジエータおよび電動機が配設される電動機冷却水路と、下流側水路の分岐部に設けられるとともに、下流側水路および電動機冷却水路を流通する冷却水の流量配分を調整する流量調整弁と、内燃機関冷却水路に冷却水を循環させる電動ポンプと、流量調整弁および電動ポンプの作動を制御する制御手段とを有する。制御手段は、内燃機関および電動機の負荷状態に応じて、流量調整弁の弁開度および電動ポンプの吐出流量を制御する。
【0004】
この公報に開示されたハイブリッド電気自動車の冷却装置によると、内燃機関および電動機の冷却装置として、それぞれ独立して設けなくても、流量調整弁を設けることで内燃機関冷却水路から分岐する電動機冷却水路が形成できる。また、1つの電動ポンプで両冷却水路の冷却水を循環させることができる。そのため、簡素で安価な冷却装置を実現できる。また、流量調整弁により下流側水路と電動機冷却水路への流量配分を調整することや、電動ポンプにより吐出流量を変えることで、各ラジエータに必要とされる冷却水量を流通させることができる。これにより、内燃機関および電動機の負荷状態に応じた冷却が可能となる。
【特許文献1】特開2002−276364号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されたハイブリッド電気自動車の冷却装置においては、内燃機関冷却系統と電動機冷却系統との冷却水を1つの電動ポンプで循環させることができるが、両冷却系統を循環する冷却水が流量調整弁で合流する。そのため、たとえば、電動機の冷却目標温度と内燃機関の冷却目標温度とが異なる場合であっても、各冷却水の温度を、各々の目標温度に応じた温度に維持し難いという問題があった。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、簡素化を図りつつ冷却対象における冷却目標温度に応じた値に冷媒温度を維持することができる冷却装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明に係る冷却装置は、第1の発熱体と第2の発熱体とを冷却する。この冷却装置は、第1の発熱体を冷却する第1の冷媒が循環する第1の循環路と、第1の循環路に設けられ、第1の冷媒を循環させるポンプ機構と、第1の循環路と独立して構成され、第2の発熱体を冷却する第2の冷媒が循環する第2の循環路と、ポンプ機構により発生させた第1の冷媒の循環を利用して、第2の冷媒を循環させるための循環手段とを含む。
【0008】
第1の発明によると、第1の発熱体を冷却する第1の冷媒が循環する第1の循環路と、第2の発熱体を冷却する第2の冷媒が循環する第2の循環路とが、独立して構成される。そのため、第1の冷媒の温度と第2の冷媒の温度とを、各々の発熱体の冷却目標温度に応じた温度に維持することができる。さらに、第1の循環路に設けられたポンプ機構により発生させた第1の冷媒の循環を利用して、第2の冷媒は第2の循環路を循環する。たとえば、第1の冷媒の流体エネルギの一部が循環手段により第2の冷媒に付与されて、第2の冷媒は第2の循環路を循環する。そのため、ポンプ機構を第1の循環路に1つ設けるだけで、第2の冷媒を循環させることができる。これにより、第2の循環路にポンプを新たに設けることが抑制される。その結果、簡素化を図りつつ冷却対象における冷却目標温度に応じた値に冷媒温度を維持することができる冷却装置を提供することができる。
【0009】
第2の発明に係る冷却装置においては、第1の発明の構成に加えて、循環手段は、第1の冷媒の流体エネルギの一部を第2の冷媒に流体エネルギとして付与することにより、第2の冷媒を循環させるための手段を含む。
【0010】
第2の発明によると、第1の冷媒の流体エネルギの一部が第2の冷媒に流体エネルギとして付与される。そのため、ポンプ機構を作動して第1の冷媒に流体エネルギを付与することにより、第1の冷媒を第1の循環路に、第2の冷媒を第2の循環路に、それぞれ循環させることができる。
【0011】
第3の発明に係る冷却装置においては、第1の発明の構成に加えて、循環手段は、第1の循環路に設けられ、第1の冷媒の流体エネルギの一部を回転エネルギに変換するための変換手段と、一端が変換手段に接続され、回転エネルギを他端に伝達するための伝達手段と、第2の循環路において、他端に接続され、伝達された回転エネルギを第2の冷媒に流体エネルギとして付与するための付与手段とを含む。
【0012】
第3の発明によると、第1の冷媒の流体エネルギの一部が、第1の循環路に設けられる変換手段により回転エネルギに変換される。変換された回転エネルギは、伝達手段により、第2の循環路に設けられた付与手段に伝達される。伝達された回転エネルギは、付与手段により第2の冷媒に流体エネルギとして付与される。そのため、ポンプ機構を作動して第1の冷媒に流体エネルギを付与することにより、第1の冷媒を第1の循環路に、第2の冷媒を第2の循環路に、それぞれ循環させることができる。
【0013】
第4の発明に係る冷却装置は、第1〜第3のいずれかの発明の構成に加えて、第1の循環路に設けられ、第1の冷媒を冷却する第1の冷却器と、第2の循環路に設けられ、第2の冷媒を冷却する第2の冷却器とをさらに含む。
【0014】
第4の発明によると、第1の冷媒と第2の冷媒とを、異なる冷却器で冷却することができる。そのため、各冷却器を各々の発熱体の冷却目標温度に応じた冷却性能にすることにより、第1の冷媒の温度と第2の冷媒の温度とを、各目標温度に応じた温度にすることができる。
【0015】
第5の発明に係る冷却装置においては、第1〜第4のいずれかの発明の構成に加えて、第1の発熱体は、車両に搭載された内燃機関である。第2の発熱体は、車両に搭載された電子素子である。
【0016】
第5の発明によると、冷却目標温度が異なる内燃機関と電子素子とを冷却する場合において、内燃機関の冷却目標温度に応じた温度の冷媒と、電子素子の冷却目標温度に応じた温度の冷媒とを、1つのポンプ機構で循環させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。なお、以下においては、本実施の形態に係る冷却装置を、ハイブリッド車両に適用した形態を説明するが、本発明に係る冷却装置はハイブリッド車両に適用されることに限定されない。
【0018】
<第1の実施の形態>
図1を参照して、本実施の形態に係る冷却装置10について説明する。なお、以下の説明においては、図1の紙面の上方を現実の上方として、図1の紙面の下方を現実の下方として説明する。なお、方向はこれに限定されない。
【0019】
冷却装置10は、ハイブリッド車両に搭載されるエンジン100とPCU200とを冷却する。冷却装置10は、循環路110、電動ポンプ120、メインラジエータ130、循環路210、サブラジエータ220、および循環機構300を含む。
【0020】
エンジン100は、ハイブリッド車両の駆動源の1つであり、駆動により発熱する。エンジン100には冷却水通路(図示せず)が設けられ、この冷却水通路を流れるLLCがエンジン100を冷却する。
【0021】
循環路110は、エンジン100とメインラジエータ130との間をLLCが循環する通路である。循環路110は、循環路110A,110Bから構成される。エンジン100の熱を吸収したLLCは、循環路100Aを流れ、メインラジエータ130に入る。メインラジエータ130で冷却されたLLCが、循環路110Bを流れて、再びエンジン100に戻ってエンジン100を冷却する。
【0022】
電動ポンプ120は、エンジン100およびハイブリッド車両のもう1つの駆動源であるモータ(図示せず)により駆動され、LLCを循環路110に循環させる。
【0023】
メインラジエータ130は、いわゆるクロスフロー型のラジエータである。メインラジエータ130は、サーモスタット132、第1サイドタンク134、チューブ136、放熱フィン138、第2サイドタンク140から構成される。
【0024】
サーモスタット132は、温度によって開閉する弁であり、第1サイドタンク134の上部側面に接続される。LLCの温度が予め定められた設定温度になるまでは、メインラジエータ130の上部に設けられるバイパス通路142にLLCが流れるように弁は閉じられる(点線矢印参照)。LLCの温度が予め定められた設定温度になると、LLCが第1サイドタンク134、チューブ136、第2サイドタンク140を流れるように弁は開かれる。
【0025】
第1サイドタンク134は、サーモスタット132から入り込んだLLCをチューブ136に流すタンクである。
【0026】
チューブ136は、メインラジエータ130の本体部分に複数設けられる細いパイプであり、上流側が第1サイドタンク134に接続される。チューブ136の外側には薄い板状の放熱フィン138が設けられる。
【0027】
第2サイドタンク140は、バイパス通路142およびチューブ136の下流側に接続される。バイパス通路142およびチューブ136から流れてきたLLCは、第2サイドタンク140を経由して循環機構300、循環路110B、エンジン100の順に流れる。
【0028】
バイパス通路142は、上流側がサーモスタット132に、下流側が第2サイドタンク140に接続される。バイパス通路142を流れるLLCは、メインラジエータ130を迂回して第2サイドタンク140に流れる。
【0029】
なお、循環路110のLLCの温度は、循環路110のLLC流量やメインラジエータ130の冷却能力を適切に設定することなどにより、エンジン100の冷却目標温度に応じた温度(たとえば100℃)になるように制御される。
【0030】
PCU200は、駆動用バッテリ(図示せず)からの直流電流を交流電流に変換してモータに供給するユニットである。PCU200は、直流電流を交流電流に変換する際に発熱する。PCU200には冷却水通路(図示せず)が設けられ、この冷却水通路を流れるLLCがPCU200を冷却する。
【0031】
循環路210は、PCU200とサブラジエータ220との間でLLCが循環する通路である。循環路210は、循環路210A,210Bから構成され、循環路110とは独立して構成される。PCU200の熱を吸収したLLCは、循環路210Aを流れ、サブラジエータ220に入る。サブラジエータ220で冷却されたLLCが、循環路210Bを流れて、再びPCU200に戻ってPCU200を冷却する。
【0032】
サブラジエータ220は、バイパス通路142の上部に接続される、いわゆるクロスフロー型のラジエータである。サブラジエータ220は、第1サイドタンク222、チューブ224、放熱フィン226、第2サイドタンク228から構成される。
【0033】
第1サイドタンク222は、循環路210Aに接続され、循環路210Aから入り込んだLLCをチューブ224に流すタンクである。
【0034】
チューブ224は、サブラジエータ220の本体部分に複数設けられる細いパイプであり、上流側が第1サイドタンク222に接続される。チューブ224の外側には薄い板状の放熱フィン226が設けられる。
【0035】
第2サイドタンク228は、チューブ224の下流側に接続される。チューブ224から流れてきたLLCは、第2サイドタンク228を経由して循環機構300、循環路210B、PCU200の順に流れる。
【0036】
なお、循環路210のLLCの温度は、循環路210のLLC流量やサブラジエータ220の冷却能力を適切に設定することなどにより、PCU200の冷却目標温度に応じた温度(たとえば70℃)になるように制御される。すなわち、循環路210のLLC温度は、循環路110のLLCよりも低い温度になるように制御される。
【0037】
循環機構300は、ケース302、遮断壁304、第1羽根車310、回転軸320、および第2羽根車330から構成される。ケース302の内部が遮断壁304によって分割されて、第1流路306と第2流路308とが形成される。
【0038】
第1流路306は、上流側が第2サイドタンク140の上部側面に接続され、下流側が循環路110Bに接続される。第1流路306の内部には、第1羽根車310が回転軸320の一端に接続されて支持される。
【0039】
第1羽根車310は、第2サイドタンク140から流れ込むLLCの流体エネルギの一部により回転する。第1羽根車310に接続される回転軸320も連動して回転する。
【0040】
第2流路308は、上流側が第2サイドタンク228の下部側面に接続され、下流側が循環路210Bに接続される。第2流路308の内部には、第2羽根車330が、第1羽根車310が接続される側と異なる側の回転軸320の一端に接続されて支持される。
【0041】
第2羽根車330は、回転軸320が回転することにより回転し、自身の回転エネルギを流体エネルギとして第2流路308内のLLCに付与して、LLCを循環させる。
【0042】
回転軸320は、遮断壁304を貫通し、一端が第1羽根車310の回転中心に、多端が第2羽根車330の回転中心に、それぞれ接続される。
【0043】
以上のような構造に基づく、本実施の形態に係る冷却装置10の動作について説明する。
【0044】
運転者によりハイブリッド車両の運転操作が開始されると、エンジン100やPCU200が発熱し始め、電動ポンプ120の作動によりLLCが循環路110を循環し始める。エンジン100の熱を吸収したLLCは、循環路110Aからサーモスタット132に流れ込む。
【0045】
LLCの温度が予め定められた設定温度になるまでは、サーモスタット132の弁が閉じられ、LLCはメインラジエータ130を迂回してバイパス通路142に流れる。バイパス通路142から第2サイドタンク140に流れ込んだLLCは、第1流路306を経由して循環路110Bに流れ、再びエンジン100に戻る。これにより、LLCが冷却されずに循環し、エンジン100が速やかに暖機される。
【0046】
一方、LLCの温度が予め定められた設定温度になると、サーモスタット132の弁が開かれ、LLCが第1サイドタンク134、チューブ136に流れて、放熱フィン138を介して放熱する。チューブ136から第2サイドタンク140に流れ込んだLLCは、第1流路306を経由して循環路110Bに流れ、再びエンジン100に戻る。これにより、エンジン100の冷却目標温度に応じた温度に制御されるLLCでエンジン100を冷却することができる。
【0047】
LLCが第1流路306を流れる際、LLCの流体エネルギの一部が第1羽根車310に伝わり、第1羽根車310が回転する。これにより、回転軸320で接続される第2羽根車320が連動して回転する。第2羽根車320が回転することにより、第2流路308内のLLCに流体エネルギが付与され、LLCが循環路210Bに流れ出す。循環路210BからPCU200に流れ込んでPCU200の熱を吸収したLLCは、循環路210A、第1サイドタンク222、チューブ224に流れて、放熱フィン226を介して放熱する。チューブ224から第2サイドタンク228に流れ込んだLLCは、第2流路308に流れ込み、再び第2羽根車320により流体エネルギが付与され、循環路210を循環する。循環路210は、循環路110に対して独立して構成されるため、循環路210のLLCは、高温の循環路110のLLCの影響を受けず、PCU200の冷却目標温度に応じた温度に維持される。さらに、循環路110に設けられた電動ポンプ120を作動することにより、循環路210のLLCが循環する。そのため、循環路210に電動ポンプを新たに設けることが抑制される。
【0048】
以上のように、本実施の形態に係る冷却装置によれば、エンジン冷却用のLLCが循環する循環路と、PCU冷却用のLLCが循環する循環路とが、独立して構成される。そのため、エンジン冷却用のLLCの温度とPCU冷却用のLLCの温度とを、エンジンおよびPCUの各々の冷却目標温度に応じた温度に維持することができる。さらに、エンジン冷却用のLLCの循環路に設けられた電動ポンプによりPCU冷却用のLLCが循環する。そのため、PCU冷却用の循環路に電動ポンプを新たに設けることが抑制される。
【0049】
なお、本実施の形態に係る冷却装置おいては、エンジン冷却用のLLCの循環路のみに電動ポンプを設け、この電動ポンプによりPCU冷却用のLLCを循環させる構成について説明したが、電動ポンプが設けられる循環路はこれに限定されない。すなわち、PCU冷却用のLLCが循環する循環路のみに電動ポンプを設け、この電動ポンプによりエンジン冷却用のLLCを循環させるように構成してもよい。
【0050】
<第2の実施の形態>
図2を参照して、本実施の形態に係る冷却装置20について説明する。本実施の形態に係る冷却装置20は、上述の第1の実施の形態に係る冷却装置10の構成と比較して、循環路110,210に代えて、循環路1110,1210、切替弁2100,2200,2300,2400、およびバイパス通路2500,2600を含む点が異なる。これら以外の構成は、上述の第1の実施の形態に係る冷却装置10の構成と同じ構成である。同じ構成については同じ参照符号が付してある。それらの機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明はここでは繰返さない。
【0051】
循環路1110は、循環路1110A,1110B,1110C,1110Dから構成される。循環路1110Aは、上流側がエンジン100に接続され、下流側が切替弁2100で循環路1110Bと接続される。循環路1110Bの下流側は、サーモスタット132に接続される。循環路1110Cは、上流側が第1流路306に接続され、下流側が切替弁2400で循環路1110Dと接続される。循環路1110Dの下流側は、エンジン100に接続される。
【0052】
循環路1210は、循環路1210A,1210B,1210C,1210Dから構成される。循環路1210Aは、上流側がPCU200に接続され、下流側が切替弁2300で循環路1210Bと接続される。循環路1210Bの下流側は、第1サイドタンク222に接続される。循環路1210Cは、上流側が第2流路308に接続され、下流側が切替弁2200で循環路1210Dと接続される。循環路1210Dの下流側は、PCU200に接続される。
【0053】
切替弁2100,2200,2300,2400は、温度センサ(図示せず)により検知されるエンジン100の温度によって制御部(図示せず)により制御される。
【0054】
切替弁2100は、エンジン100の温度が予め定められた温度より低い場合、循環路1110Aとバイパス通路2500とを連通し、循環路1110Bを遮断するように制御される。切替弁2100は、エンジン100の温度が予め定められた温度より高くなると、循環路1110Aと循環路1110Bとを連通し、バイパス通路2500を遮断するように制御される。
【0055】
切替弁2200は、エンジン100の温度が予め定められた温度より低い場合、バイパス通路2500と循環路1210Dとを連通し、循環路1210Cを遮断するように制御される。切替弁2200は、エンジン100の温度が予め定められた温度より高くなると、循環路1210Cと循環路1210Dとを連通し、バイパス通路2500を遮断するように制御される。
【0056】
切替弁2300は、エンジン100の温度が予め定められた温度より低い場合、循環路1210Aとバイパス通路2600とを連通し、循環路1210Bを遮断するように制御される。切替弁2300は、エンジン100の温度が予め定められた温度より高くなると、循環路1210Aと循環路1210Bとを連通し、バイパス通路2600を遮断するように制御される。
【0057】
切替弁2400は、エンジン100の温度が予め定められた温度より低い場合、バイパス通路2600と循環路1110Dとを連通し、循環路1110Cを遮断するように制御される。切替弁2400は、エンジン100の温度が予め定められた温度より高くなると、循環路1110Cと循環路1110Dとを連通し、バイパス通路2600を遮断するように制御される。
【0058】
以上のような構造に基づく、本実施の形態に係る冷却装置20の動作について説明する。
【0059】
運転者によりハイブリッド車両の運転操作が開始されると、エンジン100やPCU200が発熱し始め、電動ポンプ120の作動によりLLCが循環し始める。
【0060】
エンジン100の温度が予め定められた温度より低い場合は、切替弁2100により、循環路1110Aとバイパス通路2500とが連通され、循環路1110Bが遮断される。切替弁2200により、バイパス通路2500と循環路1210Dとが連通され、循環路1210Cが遮断される。切替弁2300により、循環路1210Aとバイパス通路2600とが連通され、循環路1210Bが遮断される。切替弁2400により、バイパス通路2600と循環路1110Dとが連通され、循環路1110Cが遮断される。これにより、図2の矢印に示すように、エンジン100の熱を吸収したLLCは、循環路1110A、バイパス通路2500、循環路1210Dを経由してPCU200に流れ込む。PCU200の熱を吸収したLLCが、循環路1210A、バイパス通路2600、循環路1110Dを経由して、エンジン100に流れ込む。そのため、PCU200の熱を吸収したLLCによりエンジン100が速やかに暖機される。
【0061】
一方、エンジン100の温度が予め定められた温度より高くなると、切替弁2100により、循環路1110Aと循環路1110Bとが連通され、バイパス通路2500が遮断される。切替弁2200により、循環路1210Cと循環路1210Dとが連通され、バイパス通路2500が遮断される。切替弁2300により、循環路1210Aと循環路1210Bとが連通され、バイパス通路2600が遮断される。切替弁2400により、循環路1110Cと循環路1110Dとが連通され、バイパス通路2600が遮断される。これにより、上述の第1の実施の形態に係る冷却装置10と同様に、エンジン100を冷却するLLCの循環路1100と、PCU200を冷却するLLCの循環路1210とが、独立して構成される。そのため、循環路1210のLLCは、高温の循環路1110のLLCの影響を受けず、PCU200の冷却目標温度に応じた温度に維持される。さらに、循環路1110に設けられた電動ポンプ120を作動することにより、循環路1210のLLCが循環する。そのため、循環路1210に電動ポンプを新たに設けることが抑制される。
【0062】
以上のように、本実施の形態に係る冷却装置によれば、エンジンの温度が予め定められた温度より低い場合は、エンジン冷却用のLLCが循環する循環路と、PCU冷却用のLLCが循環する循環路とがバイパス通路により連結される。電動ポンプの作動により、LLCはPCUとエンジンとの間をラジエータを経由せずに循環する。そのため、PCUの熱を吸収したLLCによりエンジンを速やかに暖機することができる。エンジンの温度が予め定められた温度より高くなると、エンジン冷却用のLLCが循環する循環路と、PCU冷却用のLLCが循環する循環路とが、独立して構成される。そのため、エンジン冷却用のLLCの温度とPCU冷却用のLLCの温度とを、エンジンおよびPCUの各々の冷却目標温度に応じた温度に維持することができる。さらに、エンジン冷却用のLLCの循環路に設けられた電動ポンプによりPCU冷却用のLLCが循環する。そのため、PCU冷却用の循環路にポンプを新たに設けることが抑制される。
【0063】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る冷却装置の模式図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係る冷却装置の模式図である。
【符号の説明】
【0065】
10,20 冷却装置、100 エンジン、110,110A,110B,210,210A,210B,1110,1110A,1110B,1110C,1110D,1210,1210A,1210B,1210C,1210D 循環路、120 電動ポンプ、130 メインラジエータ、132 サーモスタット、134,222 第1サイドタンク、136,224 チューブ、138,226 放熱フィン、140,228 第2サイドタンク、142 バイパス通路、200 PCU、220 サブラジエータ、300 循環機構、302 ケース、304 遮断壁、306 第1流路、308 第2流路、310 第1羽根車、320 回転軸、330 第2羽根車、2100,2200,2300,2400 切替弁、2500,2600 バイパス通路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の発熱体と第2の発熱体とを冷却する冷却装置であって、
前記第1の発熱体を冷却する第1の冷媒が循環する第1の循環路と、
前記第1の循環路に設けられ、前記第1の冷媒を循環させるポンプ機構と、
前記第1の循環路と独立して構成され、前記第2の発熱体を冷却する第2の冷媒が循環する第2の循環路と、
前記ポンプ機構により発生させた第1の冷媒の循環を利用して、前記第2の冷媒を循環させるための循環手段とを含む、冷却装置。
【請求項2】
前記循環手段は、前記第1の冷媒の流体エネルギの一部を前記第2の冷媒に流体エネルギとして付与することにより、前記第2の冷媒を循環させるための手段を含む、請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記循環手段は、
前記第1の循環路に設けられ、前記第1の冷媒の流体エネルギの一部を回転エネルギに変換するための変換手段と、
一端が前記変換手段に接続され、前記回転エネルギを他端に伝達するための伝達手段と、
前記第2の循環路において、前記他端に接続され、前記伝達された回転エネルギを前記第2の冷媒に流体エネルギとして付与するための付与手段とを含む、請求項1に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記冷却装置は、
前記第1の循環路に設けられ、前記第1の冷媒を冷却する第1の冷却器と、
前記第2の循環路に設けられ、前記第2の冷媒を冷却する第2の冷却器とをさらに含む、請求項1〜3のいずれかに記載の冷却装置。
【請求項5】
前記第1の発熱体は、車両に搭載された内燃機関であり、
前記第2の発熱体は、前記車両に搭載された電子素子である、請求項1〜4のいずれかに記載の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−74132(P2008−74132A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−252432(P2006−252432)
【出願日】平成18年9月19日(2006.9.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】