説明

冷媒用電動ポンプの駆動システム

【課題】コストの低減が可能で、複雑な駆動制御をほとんど必要としない電力変換器冷却用の冷媒用電動ポンプの駆動システムを提供する。
【解決手段】電源からの直流電力または交流電力を交流電力または直流電力に電力変換を行う電力変換器と、電力変換器を経由する循環経路内に冷媒を供給するための電動ポンプと、を有し、電動ポンプは、電力変換器の駆動回路から電力を供給される冷媒用電動ポンプの駆動システムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換器冷却用の冷媒用電動ポンプの駆動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境に配慮した自動車としてハイブリッド自動車および電気自動車等の電動機により推進される電動車が大きく注目されている。ハイブリッド自動車は、従来のエンジンに加え、直流電源とインバータとインバータによって駆動されるモータとを動力源とする自動車である。すなわち、エンジンを駆動することにより動力源を得るとともに、直流電源からの直流電圧をインバータによって交流電圧に変換し、その変換された交流電圧によりモータを回転させることによって動力源を得るものである。また、電気自動車は、直流電源とインバータとインバータによって駆動されるモータとを動力源とする自動車である。すなわち、これらの電動車では、二次電池等で構成された直流電源装置から、インバータ等の半導体電力変換器を介して、車両駆動用の交流モータへ電力供給する電気システムが備えられている。
【0003】
モータ等を駆動するためのインバータ等の電力変換器は発熱が大きいため、電動ウォータポンプ等により電力変換器を経由する循環経路内に冷却水を供給して循環させる冷却装置等によって、電力変換器を冷却する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−122870号公報
【特許文献2】特開2005−287149号公報
【特許文献3】特開2006−300038号公報
【特許文献4】特開2002−364576号公報
【特許文献5】特開2008−199850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電動ウォーターポンプを駆動するためには駆動回路が必要であるが、コストアップの要因となる。また、電動ウォータポンプを駆動するために通常インバータが用いられ、さらに保護機能も有しているため、複雑な駆動制御が必要になる。
【0006】
本発明は、コストの低減が可能で、複雑な駆動制御をほとんど必要としない電力変換器冷却用の冷媒用電動ポンプの駆動システムである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、電源からの直流電力または交流電力を交流電力または直流電力に電力変換を行う電力変換器と、前記電力変換器を経由する循環経路内に冷媒を供給するための電動ポンプと、を有し、前記電動ポンプは、前記電力変換器の駆動回路から電力を供給される冷媒用電動ポンプの駆動システムである。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、電動ポンプが電力変換器の駆動回路から電力を供給されることにより、コストの低減が可能で、複雑な駆動制御をほとんど必要としない電力変換器冷却用の冷媒用電動ポンプの駆動システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る電力変換器冷却用の冷媒用電動ポンプの駆動システムの一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0011】
本発明の実施形態に係る電力変換器冷却用の冷媒用電動ポンプの駆動システムの一例の概略構成を図1に示し、その構成について説明する。電力変換器冷却用の冷媒用電動ポンプの駆動システム1は、直流電源16からの直流電力を交流電力に電力変換を行う電力変換器としてのインバータ10と、インバータ10内を経由する循環経路18内に冷媒を供給するための電動ポンプ12とを備える。インバータ10は、モータジェネレータ14等の回転電機等を制御する。
【0012】
図1において、直流電源16はインバータ10に電気的に接続されている。インバータ10は、U相アーム20と、V相アーム22と、W相アーム24とを含む。U相アーム20、V相アーム22およびW相アーム24は、直流電源16の出力ライン間に並列に接続されている。
【0013】
U相アーム20は、直列接続されたIGBT素子Q1,Q2と、IGBT素子Q1,Q2とそれぞれ並列に接続されるダイオードD1,D2とを含む。ダイオードD1のカソードはIGBT素子Q1のコレクタと接続され、ダイオードD1のアノードはIGBT素子Q1のエミッタと接続されている。ダイオードD2のカソードはIGBT素子Q2のコレクタと接続され、ダイオードD2のアノードはIGBT素子Q2のエミッタと接続されている。
【0014】
V相アーム22は、直列接続されたIGBT素子Q3,Q4と、IGBT素子Q3,Q4とそれぞれ並列に接続されるダイオードD3,D4とを含む。ダイオードD3のカソードはIGBT素子Q3のコレクタと接続され、ダイオードD3のアノードはIGBT素子Q3のエミッタと接続されている。ダイオードD4のカソードはIGBT素子Q4のコレクタと接続され、ダイオードD4のアノードはIGBT素子Q4のエミッタと接続されている。
【0015】
W相アーム24は、直列接続されたIGBT素子Q5,Q6と、IGBT素子Q5,Q6とそれぞれ並列に接続されるダイオードD5,D6とを含む。ダイオードD5のカソードはIGBT素子Q5のコレクタと接続され、ダイオードD5のアノードはIGBT素子Q5のエミッタと接続されている。ダイオードD6のカソードはIGBT素子Q6のコレクタと接続され、ダイオードD6のアノードはIGBT素子Q6のエミッタと接続されている。
【0016】
U,V,W各相アームの中間点は、U,V,W各相の電力ケーブルを介してモータジェネレータ14の各相コイルの各相端に接続されている。すなわち、モータジェネレータ14は、3相の交流モータであり、U,V,W相の3つのコイルは各々の一方端が中性点に共に接続されている。そして、U相コイルの他方端が、U相電力ケーブルを介してIGBT素子Q1,Q2の接続ノードに接続される。またV相コイルの他方端が、V相電力ケーブルを介してIGBT素子Q3,Q4の接続ノードに接続される。またW相コイルの他方端が、W相電力ケーブルを介してIGBT素子Q5,Q6の接続ノードに接続されている。
【0017】
電源は、直流電源または交流電源であり、通常は直流電源である。直流電源16は、例えば、バッテリ等であり、ニッケル水素またはリチウムイオン等の二次電池等が挙げられる。直流電源16は、直流電圧をインバータ10へ供給するとともに、インバータ10からの直流電圧によって充電されてもよい。
【0018】
直流電源16と、インバータ10との間には、直流電源16からの直流電圧を昇圧する昇圧コンバータ、直流電源16から供給された直流電圧を平滑化し、その平滑化した直流電圧を昇圧コンバータへ供給するコンデンサ等を設けてもよい。
【0019】
電力変換器は、直流電源からの直流電力を交流電力に電力変換を行うインバータ、または交流電源からの交流電力を直流電力に電力変換を行うコンバータであり、通常はインバータである。インバータ10は、直流電源16からの直流電圧を交流電圧に変換して、モータジェネレータ14等を駆動する。また、インバータ10は、モータジェネレータ14が発電した交流電圧を直流電圧に変換して直流電源16を充電してもよい。すなわち、インバータ10は、直流電源16によって供給される直流電力と、モータを駆動制御する交流電力およびジェネレータによって発電される交流電力との間で電力変換を行う「電力変換器」として設けられている。
【0020】
回転電機は、モータ、またはモータおよびジェネレータの機能を併せ持つモータジェネレータ等である。モータジェネレータ14は、例えば、3相交流同期電動発電機からなる。モータジェネレータ14は、例えば、エンジン等によって駆動される発電機として動作するものとしてハイブリッド自動車等に組み込まれるものであってもよいし、ハイブリッド自動車の駆動輪を駆動する電動機としてハイブリッド自動車等に組み込まれるものであってもよい。
【0021】
インバータ10は、例えばハイブリッド自動車、電気自動車等の車輪を駆動するモータジェネレータ14に対して直流電源16からの直流電圧を3相交流に変換して出力する。モータジェネレータ14は、インバータ10から受ける3相交流電圧によって車両等の駆動トルクを発生する。また、モータジェネレータ14は、車両等の回生制動時、3相交流電圧を発生してインバータ10へ出力してもよい。インバータ10は、回生制動に伴い、モータジェネレータ14で発電された電力を昇圧コンバータ等に戻してもよい。このとき昇圧コンバータは降圧回路として動作するように制御装置等によって制御される。
【0022】
インバータ10は、直流電源16に対して図示しない第二インバータと並列的に接続されてもよい。第二インバータは、例えば、直流電源16からの直流電圧を交流電圧に変換して、図示しない第二モータジェネレータ等を駆動する。第二インバータは、第二モータジェネレータに対して例えば直流電源16の出力する直流電圧を3相交流に変換して出力する。第二モータジェネレータは、第二インバータから受ける3相交流電圧によって駆動力を発生し、例えばエンジン等の始動を行ってもよい。第二インバータは、エンジン等のクランクシャフトから伝達される回転トルクによって第二モータジェネレータで発電された電力を昇圧コンバータに戻してもよい。このとき昇圧コンバータは降圧回路として動作するように制御装置等によって制御される。
【0023】
インバータ10には、モータジェネレータ14等の要求出力に応じて比較的大電流が通過するため、温度上昇を防ぐための冷却機構を設ける。本実施形態では、以下に述べるように、インバータ10を冷却するための冷媒を用いてインバータ10を冷却する構成とする。
【0024】
本実施形態に係る冷媒用電動ポンプの駆動システム1において、インバータ10内を経由する循環経路18と、循環経路18内に冷媒を供給するための電動ポンプ12とが設けられている。循環経路18へは、電動ポンプ12によって不凍液等の冷却水等の冷媒が供給される。インバータ10と電動ポンプ12との間の循環経路18には、ラジエータ等の熱交換器が設けられてもよい。
【0025】
電動ポンプ12により、冷媒が循環経路18内へ供給され、インバータ10内を通過した冷媒は、ラジエータ等により熱交換されて冷却されて再度インバータ10内を通過し、循環される。これによりインバータ10が冷却される。なお、インバータ10、電動ポンプ12、ラジエータ等の配置順には特に制限はない。
【0026】
電動ポンプ12は、冷媒を循環させるためのポンプであり、例えば、3相の交流モータにより駆動するものである。
【0027】
本実施形態に係る冷媒用電動ポンプの駆動システム1において、電動ポンプ12は、インバータ10等の電力変換器の駆動回路に並列接続され、その駆動回路から電力を供給される。例えば、インバータ10とモータジェネレータ14とを接続するU,V,W各相の電力ケーブルは、U,V,W各相の電力ケーブルを介して電動ポンプ12のU,V,W各相コイルの各相端に接続される。
【0028】
このように、電動ポンプ12をその冷却対象であるインバータ10の駆動回路に並列接続して駆動運転する。モータジェネレータ14の駆動に必要な電流指令が高くなり、インバータ10からの電流量が多くなって、インバータ10の負荷が大きくなると、インバータ10の素子に電流が流れ、発熱が大きくなる。インバータ10の発熱が大きい場合、すなわちインバータ10がモータジェネレータ14の駆動のために消費する電流値が大きい場合には、モータジェネレータ14と並列に接続されている電動ポンプ12にも成り行きで流れる電流が多くなる。インバータ10の駆動回路に追従して電動ポンプ12にも電流が流れてポンプの出力が上がり、ポンプの流量が増加して冷却性能が上昇して、インバータ10の素子の発熱が放熱される。一方、電流値が小さい場合には、電動ポンプ12へ流れる電流が小さくなり、ポンプの流量が減少し、冷却性能が低下する。すなわち、インバータ10の負荷により電動ポンプ12の駆動が制御され、発熱元(この場合は、インバータ10)の電流値により冷却が行われる。
【0029】
電動ポンプ12自身は専用の駆動回路を有さず、冷却対象のインバータ10の駆動回路からの電力を利用する。冷却対象のインバータ10の駆動システムの負荷に応じて電流値が変化し、それに伴い、電動ポンプ12は出力が成り行きで調整され、冷却性能が最適に制御される。
【0030】
電動ポンプには装置部と駆動回路部とがあり、品質確保のため様々な対策が施されていた。駆動回路部は経年劣化に弱い場合があり、性能のよいものを確保しなければならず、その結果コストアップにつながっていた。しかし、本構成により、既存部品から電動ポンプ専用の駆動回路を削減することができるため、大幅なコストダウンが可能である。また、電動ポンプの駆動回路に対する品質問題が解消される。
【0031】
電動ポンプを駆動するために用いられるインバータは保護機能等を有しており、駆動制御が複雑化していた。しかし、本構成により、電動ポンプの駆動の複雑な制御も不要となる。
【0032】
温度センサ等による電動ポンプ駆動を行う場合には、冷却対象であるインバータとの温度追従性に差があり、安全のために常時駆動する制御を行うことがあった。しかし、本構成により、従来の温度センサによる電動ポンプの駆動とは異なり、インバータの負荷に追従した電動ポンプ駆動システムとなるため、発熱元のインバータが動作すれば電動ポンプが駆動するので、追従性が格段に向上する。インバータに電流がほとんど流れていない場合には、電動ポンプの出力が抑制され、制御回路を設けずにポンプの出力制御が実現可能である。
【0033】
なお、ハイブリッド自動車においては、電動ポンプ12は、ハイブリッド自動車の駆動輪を駆動するモータジェネレータと並列接続されて、電力供給を受けることが好ましい。ハイブリッド自動車においては、主に車両駆動力発生用に用いられてハイブリッド自動車の駆動輪を駆動するモータジェネレータは力行運転が多く、発熱量は、主に発電用途に用いられるモータジェネレータの発熱量よりも大きくなる傾向があるためである。また、回生時は電動ポンプが逆回転となり効率が低下する場合があるが、回生時のインバータの発熱は力行時より大きくなく、その頻度は少ないためである。
【0034】
本実施形態において、プラグインハイブリッド自動車や電気自動車のシステムにおいて、直流電源16側を交流電源とし、モータジェネレータ14を充電器とした場合の、「充電器冷却システム」としても同じシステムを実現することが可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 冷媒用電動ポンプの駆動システム、10 インバータ、12 電動ポンプ、14 モータジェネレータ、16 直流電源、18 循環経路、20 U相アーム、22 V相アーム、24 W相アーム、Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6 IGBT素子、D1,D2,D3,D4,D5,D6 ダイオード。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源からの直流電力または交流電力を交流電力または直流電力に電力変換を行う電力変換器と、
前記電力変換器を経由する循環経路内に冷媒を供給するための電動ポンプと、
を有し、
前記電動ポンプは、前記電力変換器の駆動回路から電力を供給されることを特徴とする冷媒用電動ポンプの駆動システム。

【図1】
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【公開番号】特開2011−160556(P2011−160556A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−19930(P2010−19930)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】