説明

処理槽洗浄方法および基板処理装置

【課題】処理槽を洗浄している間に異常が発生した場合に、安全を確実に確保できる技術を提供する。
【解決手段】処理槽10を洗浄している間に異常検知部96が異常を検知した場合に、リカバー制御部97が、比抵抗計14から取得した計測値に基づいて処理槽10が純水状態であるか否かを判定し、処理槽10が純水状態でない場合には、比抵抗回復処理を行って、処理槽10を薬液状態から純水状態に移行させる。一方、処理槽10が純水状態である場合には、基板処理装置1をスローリーク状態とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板、液晶表示装置用ガラス基板、フォトマスク用ガラス基板等の基板に対して処理槽の中で薬液による薬液処理と純水によるリンス処理とを順次に行う基板処理装置、および、このような基板処理装置に用いられる処理槽を洗浄する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板の製造工程においては、1つの処理槽の中で基板に対して薬液による薬液処理と純水によるリンス処理とを順次に行う、いわゆるワンバス方式の基板処理装置が使用されている。ワンバス方式の基板処理装置は、処理槽に貯留された薬液中に基板を浸漬し、処理槽の底部から薬液を供給しつつ処理槽の上部から薬液をオーバーフローさせることにより、基板に対して薬液処理を行う。また、ワンバス方式の基板処理装置は、所定時間の薬液処理が終了すると、処理槽の底部から純水を供給しつつ処理槽の上部から液体をオーバーフローさせることにより、処理槽の内部の液体を薬液から純水に徐々に置換する。そして、純水に置換された後の処理槽の内部において、基板に対して純水によるリンス処理を行う。
【0003】
ところで、基板を浸漬処理する際に用いられる処理槽は、基板に対する処理を重ねるうちに次第にパーティクルが蓄積して汚染されていく。汚染された処理槽では安定した基板処理を行えないため、定期的に処理槽の洗浄を行って処理槽を清浄な状態に保つ必要がある。処理槽を洗浄する技術は従来から各種提案されており、例えば特許文献1には、基板の純水洗浄処理に用いる処理槽を、塩酸を含む液体で洗浄する構成が提案されている。また、特許文献2には、基板の純水洗浄処理に用いる処理槽にロットが投入されないまま所定時間が経過した場合に、当該処理槽を自動洗浄する構成が提案されている。
【0004】
また、上述したワンバス方式の基板処理装置においては、処理槽の洗浄を手動で行うこともある。処理槽を手動で洗浄する場合、オペレータが、基板処理装置を手動モードに切り換え、リモコン等を使って基板処理装置に対して逐一指示を入力しながら、処理槽に薬液等を貯留させ、一定時間が経過した後に処理槽内を薬液から純水に置換させる、といった一連の処理槽洗浄工程を進めるのである。
【0005】
また、場合によっては、オペレータが手作業で処理槽の洗浄を行うこともある。処理槽を手作業で洗浄する場合、オペレータは、基板処理装置を完全にダウンさせた状態で、薬液や水をいれた容器を処理槽のところまで運んできて、処理槽内に薬液や水を貯めていく作業を行って一連の処理槽洗浄工程を進めていく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−252197号公報
【特許文献2】特開平10−150012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来行われていた処理槽の洗浄方法では、処理槽の洗浄を行っている間に何らかの異常が発生した場合の対処については全く考慮されておらず、異常が検知された場合には、オペレータが槽内の状態を自ら判断して対処するしかなかった。しかしながら、特に、経験の乏しいオペレータにとって、異常発生時に適切な判断を速やかに下して適切な対処を行うことは容易なことではない。異常発生時に適切な対処がなされなければ重大な危険を招く可能性も高く、オペレータの判断に頼りきりの現状は問題視されていた。
【0008】
この発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、処理槽を洗浄している間に異常が発生した場合に、オペレータの判断に依存せずに、安全を確実に確保できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、基板に対して薬液による薬液処理と純水によるリンス処理とを順次に行う処理槽を、洗浄する方法であって、前記処理槽を洗浄している間に異常が検知された場合に、前記処理槽が、前記処理槽内の純水の純度が所定値以上である純水状態であるか否かを判定する槽状態判定工程と、前記処理槽が前記純水状態でない場合に、前記処理槽に第1流量で純水を供給して、前記処理槽を前記純水状態に移行させる純水供給工程と、を備える。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1に記載の処理槽洗浄方法であって、前記処理槽が前記純水状態である場合に、前記処理槽に前記第1流量よりも少ない第2流量で純水を供給する。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の処理槽洗浄方法であって、前記処理槽を洗浄している間に異常が検知された場合に、前記異常が、前記処理槽に前記第1流量以上の純水を供給できない純水供給困難異常であるか否かを判定する異常種別判定工程、を備え、前記異常が前記純水供給困難異常でないと判定された場合に、前記槽状態判定工程を行い、前記異常が前記純水供給困難異常であると判定された場合に、前記槽状態判定工程を行うことなく、前記処理槽に前記第1流量よりも少ない第2流量で純水を供給する。
【0012】
請求項4の発明は、請求項2または3に記載の処理槽洗浄方法であって、前記処理槽を洗浄している間に異常が検知された場合に、前記処理槽の洗浄を中止し、前記異常をオペレータに報知するアラームを発生させる工程と、前記処理槽に前記第2流量での純水の供給を開始した場合に、前記アラームを解除する工程と、を備える。
【0013】
請求項5の発明は、請求項4に記載の処理槽洗浄方法であって、中止された前記処理槽の洗浄を再開する方法を、オペレータからの指示に基づいて決定する再開方法決定工程と、アラームが解除された後に、前記再開方法決定工程において決定された方法で、前記処理槽の洗浄を再開する槽洗浄再開工程と、を備える。
【0014】
請求項6の発明は、請求項5に記載の処理槽洗浄方法であって、前記再開方法決定工程が、前記処理槽の洗浄を再開する方法の候補をオペレータに複数提示して、そのいずれかをオペレータに選択させる再開方法候補提示工程、を備え、オペレータが選択した方法を、前記処理槽の洗浄を再開する方法に決定する。
【0015】
請求項7の発明は、請求項6に記載の処理槽洗浄方法であって、前記処理槽の洗浄を再開する方法の候補の1つとして、前記処理槽の洗浄を初めからやり直す方法をオペレータに提示する。
【0016】
請求項8の発明は、処理槽の中で基板に対して薬液による薬液処理と純水によるリンス処理とを順次に行う基板処理装置であって、前記処理槽に薬液を供給する薬液供給手段と、前記処理槽に純水を供給する純水供給手段と、前記処理槽に供給する純水の流量を切り換える切換手段と、前記処理槽の内部に貯留された液体の比抵抗値を計測する計測手段と、前記薬液供給手段、前記純水供給手段、および前記切換手段の動作を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段が、前記処理槽を洗浄する手順を記述した槽洗浄レシピに基づいて、前記薬液供給手段、前記純水供給手段、および前記切換手段の動作を制御して、前記処理槽の洗浄を実行させる槽洗浄処理制御手段と、前記処理槽を洗浄している間に異常が発生した場合に、それを検知するとともに、前記薬液供給手段、前記純水供給手段、および前記切換手段の動作を制御して、所定の異常回復処理を行わせる異常回復処理制御手段と、を備え、前記異常回復処理制御手段が、前記異常が検知された際の前記処理槽の内部に貯留された液体の比抵抗値を前記計測手段から取得し、取得された前記比抵抗値に基づいて、前記処理槽が、前記処理槽内の純水の純度が所定値以上である純水状態であるか否かを判定し、前記処理槽が前記純水状態でない場合に、前記純水供給手段に、前記処理槽へ第1流量で純水を供給させて前記処理槽を前記純水状態に移行させる。
【0017】
請求項9の発明は、請求項8に記載の基板処理装置であって、前記異常回復処理制御手段が、前記処理槽が前記純水状態である場合に、前記純水供給手段に、前記処理槽に前記第1流量よりも少ない第2流量で純水を供給させる。
【発明の効果】
【0018】
請求項1〜7の発明によると、処理槽を洗浄している間に異常が検知された場合に、処理槽が、処理槽内の純水の純度が所定値以上である純水状態であるか否かを判定し、処理槽が純水状態でない場合には、処理槽に第1流量で純水を供給して処理槽を純水状態に移行させる。これにより、オペレータの判断に依存せずに、安全を確実に確保することができる。
【0019】
特に、請求項2の発明によると、処理槽が純水状態である場合には、処理槽に第1流量よりも少ない第2流量で純水を供給するので、純水が無駄に消費されることを防止できる。
【0020】
特に、請求項3の発明によると、処理槽が純水状態であるか否かの判定に先立って、検知された異常が処理槽に第1流量以上の純水を供給できない純水供給困難異常であるか否かを判定し、純水供給困難異常であると判定された場合は、処理槽が純水状態であるか否かにかかわらず処理槽に第2流量で純水を供給する。この構成によると、無理に純水状態に移行させようとして再び異常が検知される、といった事態を未然に回避することができる。
【0021】
特に、請求項4の発明によると、処理槽に第2流量での純水の供給を開始した場合に、アラームを解除する。この構成によると、処理槽が安全な状態となってからアラームが解除されるので、安全を担保することができる。
【0022】
特に、請求項5の発明によると、アラームが解除された後に処理槽の洗浄を再開する方法をオペレータからの指示に基づいて決定するので、槽洗浄の再開をオペレータが所望する通りの方法で行うことができる。
【0023】
特に、請求項6の発明によると、処理槽の洗浄を再開する方法の候補をオペレータに複数提示して、そのいずれかをオペレータに選択させるので、オペレータは、自らの所望する再開方法を簡易に選択することができる。
【0024】
特に、請求項7の発明によると、オペレータは、再開方法として、処理槽の洗浄を初めからやり直す方法を選択することができる。この方法を選択すれば、処理槽の洗浄がどの程度進んだ時点で異常が発生していたかにかかわらず、処理槽を確実に清浄な状態とすることができる。
【0025】
請求項8、9の発明によると、処理槽を洗浄している間に異常が検知された場合に、処理槽が純水状態であるか否かを判定し、処理槽が純水状態でない場合には、純水供給手段に、処理槽へ第1流量で純水を供給させて処理槽を純水状態に移行させる。これにより安全を確実に確保することができる。
【0026】
特に、請求項9の発明によると、処理槽が純水状態である場合には、純水供給手段に、処理槽に第1流量よりも少ない第2流量で純水を供給させるので、純水が無駄に消費されることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】基板処理装置の構成を示した図である。
【図2】基板処理装置における処理の流れを示したフローチャートである。
【図3】槽洗浄機能およびリカバー機能に関する構成を示すブロック図である。
【図4】再開方法の選択画面の構成例を示す図である。
【図5】槽洗浄処理に関する処理の流れを示す図である。
【図6】槽洗浄処理の実行中に異常が発生した場合の処理の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0029】
〈1.基板処理装置〉
〈1−1.構成〉
図1は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置1の構成を示した図である。この基板処理装置1は、1つの処理槽10の中で基板Wに対して薬液処理と純水によるリンス処理とを順次に行う、いわゆるワンバス方式の基板処理装置である。なお、以下の説明では、各種の薬液や純水およびこれらの中間の濃度を有する液体を総称して「処理液」という。
【0030】
図1に示したように、基板処理装置1は、主として、処理液を貯留するための処理槽10と、複数枚の基板(以下、単に「基板」という)Wを保持しつつ上下に搬送するリフタ20と、処理槽10に処理液を供給するための処理液供給部30と、処理槽10から処理液を回収するための処理液回収部40と、処理槽10を内部に収容するチャンバ50と、チャンバ50の内部に窒素ガスを供給するための窒素ガス供給部60と、装置内の各部の動作を制御するための制御部70とを備えている。
【0031】
〈処理槽10〉
処理槽10は、石英等の耐薬性の材料により構成された貯留容器である。処理槽10は、各種処理液を順次に貯留してその内部に基板Wを浸漬させる内槽11と、内槽11の外周部に形成された外槽12とを有している。
【0032】
内槽11の底部には、内槽11の内部に向けて処理液を吐出する処理液吐出部13aが設けられている。処理液吐出部13aは、一対のノズル管131a,132aを有しており、各ノズル管131a,132aには、複数の吐出口(図示省略)が形成されている。このため、ノズル管131a,132aに供給された処理液は、複数の吐出口から内槽11へ吐出され、内槽11の内部に貯留される。また、内槽11の上部まで貯留された処理液は、内槽11の上部から外槽12へオーバーフローする。
【0033】
また、内槽11の上部には、内槽11の内部に向けて処理液を吐出する上方処理液吐出部13bが設けられている。上方処理液吐出部13bは、一対のノズル管131b,132bを有しており、各ノズル管131b,132bには、複数の吐出口(図示省略)が形成されている。このため、ノズル管131b,132bに供給された処理液は、複数の吐出口から内槽11の内部に向けて吐出される。
【0034】
内槽11の内部には、処理液の比抵抗値を計測する比抵抗計14が設置されている。比抵抗計14は、一対の金属電極を有しており、金属電極間の電気抵抗を計測することにより、処理液の比抵抗値を計測する。比抵抗計14は、処理液の置換処理の際や後述するアラーム発生時に、処理槽10の内部に貯留された処理液の比抵抗値を計測し、取得された比抵抗値の情報を制御部70に送信する。なお、比抵抗計14は、金属電極中に温度センサを内蔵し、所定温度における比抵抗値の換算値を制御部70に送信するものであってもよい。
【0035】
〈リフタ20〉
リフタ20は、チャンバ50の内部において基板Wを保持しつつ上下に搬送するための搬送機構である。リフタ20は、図1において紙面と直交する方向にのびる3本の保持棒21を有しており、各保持棒21には複数の保持溝(図示省略)が刻設されている。基板Wは、その周縁部を保持溝に嵌合させた状態で3本の保持棒21上に互いに平行に起立姿勢で保持される。また、リフタ20は、図1において概念的に示した駆動機構22と接続されている。駆動機構22を動作させるとリフタ20は上下に移動し、基板Wは、処理槽10の内部の浸漬位置(図1の状態)と、処理槽10の上方の引き上げ位置との間で搬送される。
【0036】
〈処理液供給部30〉
処理液供給部30は、処理液吐出部13aおよび上方処理液吐出部13bのそれぞれへ処理液を供給するための配管系である。図1に示したように、処理液供給部30は、純水供給源31、混合部32、流量計33a,33b、レギュレータ34、配管35a,35b,36、および開閉弁37a,37bを組み合わせて構成されている。純水供給源31は、配管36を介して配管35a,35bに接続されている。配管35aの経路途中には、上流側から順に、流量計33a、レギュレータ34、開閉弁37a、および混合部32が介挿されている。また、配管35aの下流側は2本に分岐して一対のノズル管131a,132aにそれぞれ接続されている。一方、配管35bの経路途中には、上流側から順に、流量計33bおよび開閉弁37bが介挿されている。また、配管35bの下流側は2本に分岐して一対のノズル管131b,132bにそれぞれ接続されている。
【0037】
混合部32は、例えばミキシングバルブにより構成される。混合部32には、1以上の薬液供給源321のそれぞれと接続された配管322が接続されている。配管322の経路途中には開閉弁323が介挿されている。このため、開閉弁37aおよび選択された開閉弁323を開放すると、純水供給源31から供給される純水と薬液供給源321(開放された開閉弁323が介挿された配管322と接続された薬液供給源321)から供給される薬液とが混合部32において所定の割合で混合される。これにより処理液として用いられる薬液(処理用薬液)が生成される。混合部32にて生成された処理液は、配管35aを通ってノズル管131a,132aに供給され、ノズル管131a,132aの複数の吐出口から処理槽10へ供給される。薬液供給源から供給される薬液としては、基板Wの洗浄に効果を発揮するアンモニア過水(NH4OH,H22,H2O)や、アンモニア過水に界面活性剤を添加したもの、塩酸やフッ酸などが使用される。例えば、混合部32において、水酸化アンモニウムと過酸化水素と純水とが混合されることにより、処理用薬液としてSC−1液が生成される。また例えば、塩酸と過酸化水素と純水とが混合されることにより、処理用薬液としてSC−2液が生成される。
【0038】
また、開閉弁323を閉鎖するとともに開閉弁37aを開放すると、純水供給源31から供給される純水のみが、配管35aを通ってノズル管131a,132aへ供給され、ノズル管131a,132aの複数の吐出口から処理槽10へ供給される。なお、レギュレータ34は、純水供給源31から配管35aを通ってノズル管131a,132aに供給される純水の流量を、第1流量、もしくは、第1流量に比べて流量の少ない第2流量に調整する。
【0039】
一方、開閉弁37bを開放すると、純水供給源31から供給される純水が、配管35bを通ってノズル管131b,132bに供給され、ノズル管131b,132bの複数の吐出口から処理槽10へ供給される。
【0040】
〈処理液回収部40〉
処理液回収部40は、外槽12から処理液を回収し、回収した処理液を排出させるための配管系である。図1に示したように、処理液回収部40は、配管41〜43と、開閉弁44,45とを備えている。配管41の上流側の端部は外槽12に接続されており、下流側の端部は配管43に接続されている。一方、配管42の上流側の端部は内槽11の底部に接続されており、下流側の端部は配管43に接続されている。また、配管41,42の経路途中にはそれぞれ、開閉弁44,45が介挿されている。配管43の下流側は工場内の排液設備に接続されている。
【0041】
このような処理液回収部40において、開閉弁45を閉鎖するとともに開閉弁44を開放すると、外槽12から配管41へ回収された処理液が、配管43を通って排液設備へ排出される。また、処理液回収部40において、開閉弁44を閉鎖するとともに開閉弁45を開放すると、内槽11から配管42へ回収された処理液が、配管43を通って排液設備へ排出される。
【0042】
〈チャンバ50〉
チャンバ50は、気密性の材料により構成された筐体である。チャンバ50の内部は、基板Wの処理を行うための処理空間となっており、処理空間に処理槽10が配置されている。チャンバ50の上部には、基板Wを搬入又は搬出させるための開口部51が形成されている。開口部51は、スライド式の蓋部52によって閉鎖および開放される。開口部51が開放されたときには、開口部51を介して基板Wを搬入・搬出することができ、また、開口部51が閉鎖されたときには、チャンバ50の内部の処理空間を外部から隔離された密閉空間とすることができる。なお、スライド式の蓋部52は、図1において概念的に示した駆動機構53によりスライド移動する。
【0043】
チャンバ50の内部の処理槽10の上方には、チャンバ50の内部に窒素ガスを吐出する窒素ガス吐出部54が配置されている。窒素ガス吐出部54は、一対のノズル管541,542を有しており、各ノズル管541,542には、複数の吐出口(図示省略)が形成されている。このため、ノズル管541,542に窒素ガスが供給されると、窒素ガスがノズル管541,542の複数の吐出口からチャンバ50の内部に向けて吐出される。また、チャンバ50の底部付近には、排気用の配管55が接続されている。配管55の経路途中には開閉弁56が介挿されており、配管55の下流側は工場内の排気設備に接続されている。このため、開閉弁56を開放することにより、チャンバ50の内部の気体を、配管55を介して排気設備へ排出することができる。
【0044】
〈窒素ガス供給部60〉
窒素ガス供給部60は、不活性ガスである窒素ガスを窒素ガス吐出部54へ供給するための配管系である。図1に示したように、窒素ガス供給部60は、窒素ガス供給源61と、配管62と、開閉弁63とを有している。配管62の上流側の端部は窒素ガス供給源61に接続されており、配管62の経路途中には開閉弁63が介挿されている。また、配管62の下流側は2本に分岐して一対のノズル管541,542にそれぞれ接続されている。このため、開閉弁63を開放すると、窒素ガス供給源61から配管62を通って一対のノズル管541,542へ窒素ガスが供給され、ノズル管541,542の複数の吐出口からチャンバ50の内部へ窒素ガスが吐出される。
【0045】
〈制御部70〉
制御部70は、基板処理装置1の各部の動作を制御するためのコンピュータ装置であり、CPUやメモリ等を備える。制御部70は、比抵抗計14、駆動機構22、開閉弁37a,37b、混合部32、流量計33a,33b、レギュレータ34、開閉弁44,45、駆動機構53、開閉弁56、および開閉弁63と電気的に接続されている。また、制御部70には、ハードディスクやメモリにより構成された記憶部が接続されている。記憶部には、基板Wを処理する手順を定めたレシピ(以下「処理レシピ」という)や、処理槽10を洗浄する手順を定めたレシピ(以下「槽洗浄レシピ」という)が記憶されている。処理レシピや槽洗浄レシピは、例えば、オペレータが、後述する操作部72を介して入力して記憶部に記憶させることによって、基板処理装置1に取得される。
【0046】
制御部70は、比抵抗計14、流量計33a,33b、レギュレータ34等から受信する計測値、およびレシピの記述に基づいて、駆動機構22、開閉弁37a,37b、レギュレータ34、混合部32、開閉弁44,45、駆動機構53、開閉弁56、および開閉弁63を動作させることにより、レシピに記述された基板Wの処理や処理槽10の洗浄処理を進行させる。
【0047】
また、基板処理装置1は、ユーザーインターフェイスとして、制御部70のディスプレイとして機能する表示部71と、制御部70に対するコマンド入力を受け付ける操作部72とを備えている。オペレータは、表示部71に表示された情報から基板処理装置1の状態等を把握することができる。また、オペレータは、操作部72から種々のコマンドを入力することができる。なお、表示部71をタッチパネルにて構成し、表示部71から制御部70に対するコマンド入力を行えるようにしてもよい。また、制御部70に対するコマンド入力は、基板処理装置1の制御部70に対して各種のコマンド信号を発信する遠隔操作機器(リモコン)(図示省略)を用いて行われてもよい。
【0048】
〈1−2.基板処理時の動作〉
基板処理装置1において基板Wを処理するときの動作について説明する。図2は、基板処理装置1における処理の流れを示したフローチャートである。
【0049】
この基板処理装置1において基板Wの処理を行うときには、まず、制御部70が開閉弁323を閉鎖した状態で開閉弁37a,44を開放する。これにより、純水供給源31から配管36,35aを介して処理液吐出部13aに純水が供給され、処理液吐出部13aから処理槽10の内部に純水が吐出される。処理液吐出部13aから吐出された純水は、内槽11の内部に徐々に貯留され、やがて内槽11の上部から外槽12へオーバーフローする(ステップS1)。
【0050】
次に、制御部70は、駆動機構53を動作させて蓋部52をスライド移動させ、チャンバ50の開口部51を開放する。そして、所定の搬送機構により他装置から搬送されてきた基板Wを、開口部51を介してチャンバ50の内部に搬入する。チャンバ50の内部では、処理槽10の上方においてリフタ20が待機しており、基板Wは、リフタ20の3本の保持棒21上に載置される。基板Wの搬入が完了すると、制御部70は、再び蓋部52をスライド移動させ、チャンバ50の開口部51を閉鎖する。
【0051】
その後、制御部70は、駆動機構22を動作させてリフタ20を下降させ、処理槽10の内部に貯留された純水中に基板Wを浸漬する(ステップS2)。また、制御部70は、開閉弁63を開放して窒素ガス吐出部54からチャンバ50の内部に窒素ガスを吐出するとともに、開閉弁56を開放してチャンバ50からの気体の排出を行う。このような窒素ガスの吐出およびチャンバ50からの排気は、以降の処理においても継続して行われる。このため、チャンバ50の内部の処理空間は、常に窒素ガスに充填された状態とされる。
【0052】
続いて、制御部70は、開閉弁37a,44の開放状態を維持しつつ、所定の開閉弁323を開放する。これにより、純水供給源31から供給される純水と所定の薬液供給源321から供給される薬液とが混合部32において所定の割合で混合されて所定の処理用薬液が生成される。生成された処理用薬液は、処理液吐出部13aから内槽11の内部に吐出される。この処理用薬液の吐出により、処理槽10の内部に貯留された処理液は、純水から処理用薬液に徐々に置換される(ステップS3)。
【0053】
処理槽10の内部において純水から処理用薬液への置換が完了した後も、処理液吐出部13aからの処理用薬液の吐出は継続され、基板Wは、処理槽10の内部に貯留された処理用薬液の中に浸漬された状態となる。基板Wの周囲には、上方へ向けて流れる処理用薬液の液流が形成され、基板Wは処理用薬液による薬液洗浄処理を受ける(ステップS4)。なお、後述するリンス処理が完了するまでの間、基板Wは処理槽10の内部において処理液中に浸漬されたままとなる。
【0054】
所定時間の薬液洗浄処理が完了すると、制御部70は、開閉弁37a,44の開放状態を維持しつつ、開閉弁323を閉鎖する。また、レギュレータ34に、純水供給源31から配管36,35aを介して処理液吐出部13aに供給される純水の流量を第1流量に調整させる。これにより、混合部32からの処理用薬液の供給が停止されるとともに、純水供給源31から配管36,35aを介して処理液吐出部13aに第1流量で純水が供給され、処理液吐出部13aから処理槽10の内部に純水が大流量で吐出される(ステップS5)。なお、このように、純水供給源31から処理液吐出部13aに第1流量で純水を供給して、処理槽10に対して大流量での純水供給を行わせる処理を、以下「純水アップフロー処理」という。
【0055】
純水アップフロー処理が開始されると、比抵抗計14から取得される比抵抗値が徐々に高くなり(すなわち、処理槽10内の純水の純度が徐々に高くなり)、比抵抗値が所定の閾値を超えると、処理槽10内の処理液が処理用薬液から純水へ置換されたとみなすことができる。この閾値としては、残留薬液の影響が無視できる純度の純水の比抵抗値を用いればよく、以下においてこの閾値を「純度閾値」という。ここで、処理槽10に純水アップフロー処理を開始してから、比抵抗値が純度閾値を超えるまでに要する時間(比抵抗回復見込み時間)は、純水アップフロー処理における純水の吐出流量や処理槽10の容量等に応じて規定される値であり、シミュレーションや実験等から求められる。この実施の形態に係る基板処理装置1においては、シミュレーションや実験等によって比抵抗回復見込み時間の値が予め取得されており、取得された値が制御部70の記憶部に記憶されているものとする。制御部70は、カウンタ・タイマ(図示省略)を備え、純水アップフロー処理が開始されるとともに、カウンタ・タイマを始動して計時を開始させる。そして、制御部70は、カウンタ・タイマを監視し、比抵抗回復見込み時間として規定された時間が経過した時点で、処理槽10内の処理液が処理用薬液から純水へ置換されたと判断する。このように、純水アップフロー処理を比抵抗回復見込み時間として規定された時間行うことを、以下「比抵抗回復処理」という。
【0056】
比抵抗回復処理が行われることにより処理槽10の内部において処理用薬液から純水への置換が完了すると、純水の中に浸漬された基板Wは、純水によるリンス処理を受ける(ステップS6)。なお、リンス処理の間も、純水アップフロー処理は継続される。そして、所定時間のリンス処理が終了すると、制御部70は、駆動機構22を動作させてリフタ20を上昇させ、処理槽10に貯留された純水から基板Wを引き上げる(ステップS7)。その後、制御部70は、駆動機構53を動作させて蓋部52をスライド移動させ、チャンバ50の開口部51を開放する。そして、所定の搬送機構により基板Wをチャンバ50の外部へ搬出して、一組の基板Wに対する一連の処理を終了する。
【0057】
なお、所定時間のリンス処理が完了すると、制御部70は、開閉弁37a,44の開放状態を維持しつつ、レギュレータ34に、純水供給源31から配管36,35aを介して処理液吐出部13aに供給される純水の流量を第1流量から第2流量に切り換えさせる。これにより、純水供給源31から配管36,35aを介して処理液吐出部13aに第2流量で純水が供給され、処理液吐出部13aから処理槽10の内部に純水が小流量で吐出される。なお、このように、純水供給源31から処理液吐出部13aに第2流量で純水が供給され、処理槽10に対して小流量での純水供給が行われている状態を、以下「スローリーク状態」という。つまり、制御部70は、一組の基板Wに対する一連の処理が終了すると、基板処理装置1をスローリーク状態とし、この状態で次の処理まで待機させる。基板処理装置1をスローリーク状態としておくことによって、配管等に純水が滞留することを防止できる。
【0058】
〈2.槽洗浄機能〉
〈2−1.機能構成〉
次に、基板処理装置1における処理槽10の洗浄に関する機能(槽洗浄機能)に関する構成について、図3を参照しながら説明する。図3は、槽洗浄機能に関する構成を示すブロック図である。なお、図3に示される各機能部は、制御部70のハードディスクに予め記憶された動作プログラムに従ってCPUが演算処理を行うことにより実現されてもよいし、専用のハードウェアによって実現されてもよい。
【0059】
制御部70には、槽状態制御部91、槽洗浄指示受付部92、ライフ管理部93、レシピ解析部94、シーケンス動作部95、異常検知部96、リカバー制御部97、および再開制御部98が実現されている。
【0060】
槽状態制御部91、槽洗浄指示受付部92、ライフ管理部93、レシピ解析部94、およびシーケンス動作部95は、互いに連動して、槽洗浄レシピに基づいてそこに記述された一連の槽洗浄処理を実行させる機能部を実現している。また、槽状態制御部91、シーケンス動作部95、異常検知部96、リカバー制御部97、および再開制御部98は、互いに連動して、槽洗浄処理を行っている間に何らかの異常が発生した場合に、それを検知するとともに適切なリカバー処理(異常回復処理)を行う機能部を実現している。
【0061】
槽状態制御部91は、処理槽10の状態を統括制御する。槽状態制御部91は、槽洗浄指示受付部92およびライフ管理部93からの指示に応じて、処理槽10の洗浄処理(槽洗浄処理)を開始させる。また、異常検知部96からの指示に応じて、実行中の槽洗浄処理を中止させる。
【0062】
槽洗浄指示受付部92は、操作部72を介してオペレータから槽洗浄処理の開始を指示するコマンドが入力された場合に、当該入力を受け付けて、槽状態制御部91に対して槽洗浄処理の開始を指示する。なお、操作部72(もしくは、リモコン)に当該コマンドの入力専用のボタン(槽洗浄ボタン)を設けておく、もしくは、タッチパネルにて実現された表示部71に当該コマンドの入力専用のアイコン(槽洗浄アイコン)を表示させる構成とすることが好ましい。このようなボタン(もしくは、アイコン)を設けておけば、オペレータは当該ボタンを押下することによって(もしくは、当該アイコンの表示領域に触れることによって)槽洗浄処理の開始を簡単に指示することができる。
【0063】
ライフ管理部93は、「ライフタイム」として規定された時間が経過した際に、槽状態制御部91に対して槽洗浄処理の開始を指示する。すなわち、ライフ管理部93は、カウンタ・タイマ(図示省略)を備え、槽洗浄処理が終了するとともに、カウンタ・タイマを始動して計時を開始させる。そして、ライフ管理部93は、カウンタ・タイマを監視し、ライフタイムとして規定された時間が経過した時点で、槽状態制御部91に対して槽洗浄処理の開始を指示する。なお、ライフタイムの具体的な値は、オペレータが操作部72を介して予め設定することができるものとする。
【0064】
レシピ解析部94は、槽状態制御部91からの指示に応じて、槽洗浄レシピを解析する。具体的には、制御部70の記憶部に格納された槽洗浄レシピを読み出し、読み出された槽洗浄レシピに記述された一連の処理工程に含まれる各処理工程について、当該処理工程にて使用する薬液の種類、処理時間等を特定する。さらに、レシピ解析部94は、特定された内容をシーケンス動作部95に通知する。
【0065】
シーケンス動作部95は、レシピ解析部94から与えられた情報にしたがって、開閉弁37a,37b、混合部32の開閉弁323、開閉弁44,45をそれぞれ所定のタイミングで開閉制御するとともに、レギュレータ34を所定のタイミングで切換制御して、槽洗浄レシピに記述された一連の処理を実行させる。また、リカバー制御部97から与えられた指示にしたがって上記各部を制御して、指示されたリカバー処理を実行させる。また、再開制御部98から与えられた指示にしたがって上記各部を制御して、指示された方法で槽洗浄を再開させる。
【0066】
異常検知部96は、槽洗浄処理が実行されている間、基板処理装置1に異常が発生していないかを監視する。具体的には、異常検知部96は、比抵抗計14、流量計33a,33b、レギュレータ34等の各計測値を取得し、取得した各値がそれぞれ予め規定された正常範囲内であるか否かを監視している。そして、正常範囲内を超える計測値が発生した場合に、何らかの異常が発生していると判断する。
【0067】
なお、異常の発生を検知した場合、異常検知部96はアラームを発生させる。ただし、基板処理装置1において発生させることができるアラームは複数種類あり、各アラームには、予めデータ値(比抵抗計14、流量計33a,33b、レギュレータ34等の各計測値)による定義付けがされている(ここでは、定義付けの具体的な内容を記述したファイルが制御部70の記憶部に予め格納されており、異常検知部96は、基板処理装置1の起動時に、このファイルを記憶部から読み込んで各アラームの定義付けを行っているものとする)。異常検知部96は、異常の発生を検知した場合、その際の比抵抗計14、流量計33a,33b、レギュレータ34等の各計測値に基づいてどのアラームを発生させるべきかを判断し、異常のタイプに応じたアラームを発生させる。
【0068】
例えば、「スローリーク」という属性のアラームは「流量計33aが示す流量値が正常範囲以下」と定義されている。したがって、異常検知部96は、異常の発生を検知した場合に、その際の流量計33aの流量値が正常値以下であることを確認すると、「スローリーク」という属性のアラームを発生させる。つまり、「スローリーク」という属性のアラームは、開放弁37aを開放しても純水の流量を確保できないという異常が検知された場合に発生されることになる。例えば、純水アップフロー処理を行う際に、開放弁37aを開放しても純水の流量を第1流量以上に確保できないという異常が検知された場合に「スローリーク」という属性のアラームが発生されることになる。
【0069】
リカバー制御部97は、異常の発生により槽洗浄処理が中止された場合に、シーケンス動作部95に指示を与えて、安全を確保するためのリカバー処理を実行させる。具体的には、リカバー制御部97は、処理槽10の状態が、純水状態、薬液状態のいずれであるかを判定し、薬液状態である場合には、シーケンス動作部95に比抵抗回復処理を行わせる。ただし、「純水状態」とは、処理槽10内の純水の純度が、残留薬液の影響が無視でき程度に高純度である状態をいい、具体的には、処理槽10内の純水の比抵抗値が純度閾値以上となっている状態をいう。また、「薬液状態」とは、それ以外の状態(具体的には、比抵抗計14から取得される比抵抗値が純度閾値よりも低い状態)をいう。
【0070】
ただし、リカバー制御部97は、異常検知部96が発生させたアラームが「スローリーク」と定義されたアラームである場合は、アラーム発生時の処理槽10の状態が薬液状態であったとしても比抵抗回復処理を行わせない。このアラームは、純水の流量を確保できない状態を意味しているため、比抵抗回復処理を実行することが物理的に不可能だからである。
【0071】
再開制御部98は、アラームの発生により中止された槽洗浄処理を再開する方法(再開方法)を、オペレータからの指示に基づいて決定するとともに、アラームが解除された後に、シーケンス動作部95に指示を与えて、決定された方法で槽洗浄処理を再開させる。オペレータからの指示の受け付けは、例えば、再開方法の候補を一覧表示した選択画面G(図4に例示)を表示部71に表示させ、表示された候補のいずれかをオペレータに選択させることによって行うことができる。なお、再開方法の候補としては、例えば、槽洗浄レシピに記述されていた一連の処理工程をもう一度初めから実行する方法、槽洗浄処理をそのまま終了する方法、比抵抗回復処理を行う方法、アラーム解除時の処理槽10の状態が、純水状態、薬液状態のいずれであるかを判定し、薬液状態である場合には比抵抗回復処理を行い、薬液状態でない場合には終了する方法、等がある。
【0072】
〈2−2.槽洗浄処理の流れ〉
基板処理装置1において槽洗浄処理が実行される際の処理の流れについて図5を参照しながら説明する。図5は、槽洗浄処理に関する処理の流れを示す図である。
【0073】
オペレータが操作部72を介して槽洗浄処理の開始を指示するコマンドを入力した場合、槽洗浄指示受付部92は当該入力を受け付けて、槽状態制御部91に対して槽洗浄処理の開始を指示する。また、ライフタイムとして規定された時間が経過すると、ライフ管理部93は槽状態制御部91に対して槽洗浄処理の開始を指示する。
【0074】
槽洗浄指示受付部92もしくはライフ管理部93から槽洗浄処理の開始を指示されると(ステップS11でYES)、槽状態制御部91は、レシピ解析部94にレシピ解析の指示を与える。ただし、槽状態制御部91は、レシピ解析の指示を与える前に、基板処理装置1における基板Wの処理状況を確認し、現在処理中の基板Wが存在せず、処理待ちで待機している基板Wも存在しないと確認された場合だけ、レシピ解析部94にレシピ解析の指示を与える。現在処理中の基板Wが存在する、もしくは、処理待ちで待機している基板Wが存在すると判断された場合は、槽状態制御部91は、現在処置中の基板W、および、現在待機中の基板Wの全てに対する処理が終了するのを待ってからレシピ解析部94にレシピ解析の指示を与える。
【0075】
槽状態制御部91からレシピ解析の指示を受けたレシピ解析部94は、当該指示に応じて、制御部70の記憶部に格納された槽洗浄レシピを読み出し、読み出された槽洗浄レシピに記述された一連の処理工程それぞれの具体的な内容を特定する(ステップS12)。レシピ解析部94は、得られた情報をシーケンス動作部95に通知する。
【0076】
レシピ解析部94からの通知を受けたシーケンス動作部95は、レシピ解析部94から与えられた情報にしたがって、開閉弁37a,37b、混合部32の開閉弁323、開閉弁44,45をそれぞれ所定のタイミングで開閉制御するとともに、レギュレータ34を所定のタイミングで切換制御して、槽洗浄レシピに記述された一連の処理を実行させる(ステップS13)。
【0077】
例えば、槽洗浄レシピに、所定濃度の塩酸と純水の混合液による所定時間の薬液洗浄処理、および純水による所定時間のリンス処理、という一連の処理が記述されていた場合、シーケンス動作部95は以下の制御を行う。
【0078】
まず、シーケンス動作部95は、開閉弁37a,44の開放状態を維持しつつ、塩酸が貯留された薬液供給源321と接続された開閉弁323を開放する。これにより、純水供給源31から供給される純水と薬液供給源321から供給される塩酸とが混合部32において所定の割合で混合されて所定濃度の塩酸が生成される。生成された塩酸は、処理液吐出部13aから内槽11の内部に吐出される。この塩酸の吐出により、処理槽10の内部に貯留された処理液は、純水から塩酸に徐々に置換される。
【0079】
処理槽10の内部において純水から塩酸への置換が完了した後も、処理液吐出部13aからの塩酸の吐出は継続され、処理槽10の内部には塩酸が貯留された状態となる。これにより処理槽10は薬液洗浄処理される。
【0080】
所定時間の薬液洗浄処理が完了すると、シーケンス動作部95は、比抵抗回復処理を行う。具体的には、開閉弁37a,44の開放状態を維持しつつ、開閉弁323を閉鎖する。また、レギュレータ34に、純水供給源31から配管36,35aを介して処理液吐出部13aに供給される純水の流量を第1流量に調整させる。これにより、混合部32からの塩酸の供給が停止されるとともに、純水供給源31から配管36,35aを介して処理液吐出部13aに第1流量で純水が供給され、処理液吐出部13aから処理槽10の内部に純水が大流量で吐出される(純水アップフロー処理)。純水アップフロー処理を行った時間が比抵抗回復見込み時間として規定された時間に達すると、処理槽10内の処理液が処理用薬液から純水へ置換されたとみなすことができる。なお、ここで開閉弁37bを開放して、上方処理液吐出部13bからの純水吐出を行わせてもよい。
【0081】
比抵抗回復処理が行われることにより処理槽10の内部において処理用薬液から純水への置換が完了すると、処理槽10は、純水によるリンス処理を受ける。なお、リンス処理の間も、純水アップフロー処理は継続される。所定時間のリンス処理が終了すると、処理槽10の洗浄処理が終了する。
【0082】
なお、シーケンス動作部95は、槽洗浄レシピに記述された一連の処理が終了すると、基板処理装置1をスローリーク状態とし、この状態で次の処理まで待機させる。
【0083】
〈2−3.リカバー処理の流れ〉
次に、基板処理装置1において槽洗浄処理が実行されている間に何らかの異常が発生した場合の処理の流れについて、図6を参照しながら説明する。図6は、この処理の流れを示したフローチャートである。
【0084】
槽洗浄処理が基板処理装置1にて実行開始されると、異常検知部96は、比抵抗計14、流量計33a,33b、レギュレータ34等から取得される各計測値の監視を開始する。そこで何らかの異常の発生を検知した場合(ステップS21でYES)、異常検知部96は、槽状態制御部91に異常の発生を通知するとともに、異常が発生した際の比抵抗計14、流量計33a,33b、レギュレータ34等の各計測値に基づいて異常のタイプを判断し、異常のタイプに応じたアラームを発生させる(ステップS22)。
【0085】
異常の発生を通知された槽状態制御部91は、シーケンス動作部95に槽洗浄処理の中止を指示する。シーケンス動作部95は、槽状態制御部91からの指示に応じて、実行中の槽洗浄処理を中止する(ステップS23)。
【0086】
槽洗浄処理が中止されると、続いてリカバー処理が開始される。まず、リカバー制御部97が、ステップS22で発生されたアラームが、「スローリーク」と定義されたアラームであるか否かを判断する(ステップS24)。
【0087】
ステップS22で発生されたアラームが「スローリーク」と定義されたアラームである場合(ステップS24でYES)、リカバー制御部97は、シーケンス動作部95に、基板処理装置1をスローリーク状態とするように指示を与える。シーケンス動作部95は、当該指示に応じて基板処理装置1をスローリーク状態とする(ステップS27)。具体的には、シーケンス動作部95は、開閉弁37a,44の開放状態を維持しつつ、レギュレータ34に、純水供給源31から配管36,35aを介して処理液吐出部13aに供給される純水の流量を第2流量に調整させる。
【0088】
ステップS22で発生されたアラームが「スローリーク」と定義されたアラームでない場合(ステップS24でNO)、リカバー制御部97は、処理槽10が純水状態であるか否かを判断する(ステップS25)。具体的には、比抵抗計14の計測値が純度閾値以上であるか否かを判断し、純度閾値以上である場合には処理槽10が純水状態であると判断し、純度閾値よりも小さい場合には処理槽10が薬液状態であると判断する。
【0089】
処理槽10が純水状態であると判断された場合(ステップS25でYES)、リカバー制御部97は、シーケンス動作部95に、基板処理装置1をスローリーク状態とするように指示を与える。シーケンス動作部95は、当該指示に応じて基板処理装置1をスローリーク状態とする(ステップS27)。
【0090】
処理槽10が純水状態でない(薬液状態である)と判断された場合(ステップS25でNO)、リカバー制御部97は、シーケンス動作部95に比抵抗回復処理を実行するように指示を与える。シーケンス動作部95は、当該指示に応じて比抵抗回復処理を実行する(ステップS26)。具体的には、シーケンス動作部95は、開閉弁37a,44の開放状態を維持しつつ、全ての開閉弁323を閉鎖する。また、レギュレータ34に、純水供給源31から配管36,35aを介して処理液吐出部13aに供給される純水の流量を第1流量に調整させる。これにより、純水供給源31から配管36,35aを介して処理液吐出部13aに第1流量で純水が供給され、処理液吐出部13aから処理槽10の内部に純水が大流量で吐出される(純水アップフロー処理)。純水アップフロー処理を比抵抗回復見込み時間として規定された時間行うことによって、処理槽10内の処理液が処理用薬液から純水へ置換される。なお、ここで開閉弁37bを開放して、上方処理液吐出部13bからの純水吐出を行わせてもよい。比抵抗回復処理が行われることにより処理槽10の状態が薬液状態から純水状態に移行し、処理槽10は安全な状態となる。
【0091】
なお、例えば、槽洗浄処理において比抵抗回復処理を行っている最中に異常が検知されて槽洗浄処理が中止された場合、一定時間の純水アップフロー処理が既に行われており、処理槽10内の処理液が純水へ置換されつつある。この場合は、ステップS26において、比抵抗回復見込み時間として規定された時間の純水アップフロー処理を行う必要はなく、既に行われた純水アップフロー処理時間を比抵抗回復見込み時間から差し引いた残り時間だけ、純水アップフロー処理を行えばよい。
【0092】
比抵抗回復処理が完了して処理槽10が純水状態となると、リカバー制御部97は、シーケンス動作部95に、基板処理装置1をスローリーク状態とするように指示を与える。シーケンス動作部95は、当該指示に応じて基板処理装置1をスローリーク状態とする(ステップS27)。
【0093】
ステップS27の処理により基板処理装置1がスローリーク状態となると、リカバー制御部97は、異常検知部96にリカバー処理が終了した旨を通知する。異常検知部96は、当該通知を受けると、ステップS22で発生させたアラームを解除する(ステップS28)。
【0094】
アラームが解除されると、続いて、再開制御部98が、再開方法の候補を一覧表示した選択画面G(図4参照)を表示部71に表示させ、表示された候補のいずれかをオペレータに選択させる。オペレータがいずれかの再開方法を選択すると、再開制御部98は、当該選択を受け付ける(ステップS29)。
【0095】
そして、再開制御部98は、シーケンス動作部95に、ステップS29で受け付けた再開方法で、中止された槽洗浄処理を再開させるように指示を与える。シーケンス動作部95は、当該指示に応じて、指示された方法で槽洗浄処理を再開する(ステップS30)。
【0096】
〈3.効果〉
上記の実施の形態に係る基板処理装置1によると、処理槽10を洗浄している間に異常検知部96が異常を検知した場合に、リカバー制御部97が、処理槽10が純水状態であるか否かを判定し、処理槽10が純水状態でない場合には、比抵抗回復処理を行って、処理槽10を薬液状態から純水状態に移行させる。これにより安全を確実に確保することができる。
【0097】
また、リカバー制御部97は、処理槽10が純水状態である場合には、基板処理装置1をスローリーク状態とする。これにより、純水が無駄に消費されることを防止できる。
【0098】
また、リカバー制御部97は、処理槽10が純水状態であるか否かの判定に先立って、異常検知部96が検知した異常が処理槽10に所定量以上の純水を供給できない異常であるか否かを判定する。そして、このような異常であると判定された場合は、処理槽10が純水状態であるか否かにかかわらず基板処理装置1をスローリーク状態とする。この構成によると、無理に比抵抗回復処理を行おうとして再度アラームが発生する、といった事態を未然に回避して、適切なリカバー処理を行うことができる。
【0099】
また、上記の実施の形態に係る基板処理装置1によると、異常検知部96は、異常を検知すると、アラームを発生させて当該異常をオペレータに報知する。したがって、オペレータは異常の発生を迅速に知得することができる。特に、異常検知部96は、異常の発生を検知した際の比抵抗計14、流量計33a,33b、レギュレータ34等の各計測値に基づいて異常のタイプを判断し、異常のタイプに応じたアラームを発生させる。したがって、オペレータは、どのような異常が発生しているかを迅速に把握することができる。
【0100】
また、異常検知部96は、基板処理装置1がスローリーク状態とされた場合に、アラームを解除する。この構成によると、処理槽10が安全な状態となってからアラームが解除されるので、安全を担保することができる。
【0101】
また、上記の実施の形態に係る基板処理装置1によると、再開制御部98が、槽洗浄処理の再開方法をオペレータからの指示に基づいて決定するので、槽洗浄処理をオペレータが所望する通りの方法で再開することができる。特に、再開制御部98は、表示部71に、再開方法の候補を一覧表示して、そのいずれかをオペレータに選択させるので、オペレータは、自らの所望する再開方法を簡易に選択することができる。
【0102】
また、上記の実施の形態に係る基板処理装置1によると、オペレータは、再開方法として、処理槽10の洗浄をもう一度初めからやり直す方法を選択することができる。この方法を選択すれば、槽洗浄処理がどの程度進んだ時点で異常が発生していたかにかかわらず、処理槽10を確実に清浄な状態とすることができる。
【0103】
また、上記の実施の形態に係る基板処理装置1によると、槽洗浄指示受付部92が、操作部72を介してオペレータから槽洗浄処理の開始を指示するコマンドが入力された場合に、当該入力を受け付けて、槽状態制御部91に対して槽洗浄処理の開始を指示する。したがって、オペレータは任意のタイミングで処理槽10を洗浄させることができる。
【0104】
また、上記の実施の形態に係る基板処理装置1によると、ライフ管理部93が、ライフタイムとして規定された時間が経過した際に、槽状態制御部91に対して槽洗浄処理の開始を指示する。この構成によると、槽洗浄処理が定期的に自動で実行されるので、処理槽10を常に清浄な状態に保つことができる。
【0105】
〈4.変形例〉
本発明は、半導体基板を処理対象とする基板処理装置だけではなく、液晶表示装置用ガラス基板やフォトマスク用ガラス基板等の種々の基板を処理対象とする基板処理装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0106】
1 基板処理装置
10 処理槽
13a 処理液吐出部
14 比抵抗計
70 制御部
91 槽状態制御部
92 槽洗浄指示受付部
93 ライフ管理部
94 レシピ解析部
95 シーケンス動作部
96 異常検知部
97 リカバー制御部
98 再開制御部
W 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に対して薬液による薬液処理と純水によるリンス処理とを順次に行う処理槽を、洗浄する方法であって、
前記処理槽を洗浄している間に異常が検知された場合に、前記処理槽が、前記処理槽内の純水の純度が所定値以上である純水状態であるか否かを判定する槽状態判定工程と、
前記処理槽が前記純水状態でない場合に、前記処理槽に第1流量で純水を供給して、前記処理槽を前記純水状態に移行させる純水供給工程と、
を備えることを特徴とする処理槽洗浄方法。
【請求項2】
請求項1に記載の処理槽洗浄方法であって、
前記処理槽が前記純水状態である場合に、前記処理槽に前記第1流量よりも少ない第2流量で純水を供給することを特徴とする処理槽洗浄方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の処理槽洗浄方法であって、
前記処理槽を洗浄している間に異常が検知された場合に、前記異常が、前記処理槽に前記第1流量以上の純水を供給できない純水供給困難異常であるか否かを判定する異常種別判定工程、
を備え、
前記異常が前記純水供給困難異常でないと判定された場合に、前記槽状態判定工程を行い、
前記異常が前記純水供給困難異常であると判定された場合に、前記槽状態判定工程を行うことなく、前記処理槽に前記第1流量よりも少ない第2流量で純水を供給することを特徴とする処理槽洗浄方法。
【請求項4】
請求項2または3に記載の処理槽洗浄方法であって、
前記処理槽を洗浄している間に異常が検知された場合に、前記処理槽の洗浄を中止し、前記異常をオペレータに報知するアラームを発生させる工程と、
前記処理槽に前記第2流量での純水の供給を開始した場合に、前記アラームを解除する工程と、
を備えることを特徴とする処理槽洗浄方法。
【請求項5】
請求項4に記載の処理槽洗浄方法であって、
中止された前記処理槽の洗浄を再開する方法を、オペレータからの指示に基づいて決定する再開方法決定工程と、
アラームが解除された後に、前記再開方法決定工程において決定された方法で、前記処理槽の洗浄を再開する槽洗浄再開工程と、
を備えることを特徴とする処理槽洗浄方法。
【請求項6】
請求項5に記載の処理槽洗浄方法であって、
前記再開方法決定工程が、
前記処理槽の洗浄を再開する方法の候補をオペレータに複数提示して、そのいずれかをオペレータに選択させる再開方法候補提示工程、
を備え、
オペレータが選択した方法を、前記処理槽の洗浄を再開する方法に決定することを特徴とする処理槽洗浄方法。
【請求項7】
請求項6に記載の処理槽洗浄方法であって、
前記処理槽の洗浄を再開する方法の候補の1つとして、前記処理槽の洗浄を初めからやり直す方法をオペレータに提示することを特徴とする処理槽洗浄方法。
【請求項8】
処理槽の中で基板に対して薬液による薬液処理と純水によるリンス処理とを順次に行う基板処理装置であって、
前記処理槽に薬液を供給する薬液供給手段と、
前記処理槽に純水を供給する純水供給手段と、
前記処理槽に供給する純水の流量を切り換える切換手段と、
前記処理槽の内部に貯留された液体の比抵抗値を計測する計測手段と、
前記薬液供給手段、前記純水供給手段、および前記切換手段の動作を制御する制御手段と、
を備え、
前記制御手段が、
前記処理槽を洗浄する手順を記述した槽洗浄レシピに基づいて、前記薬液供給手段、前記純水供給手段、および前記切換手段の動作を制御して、前記処理槽の洗浄を実行させる槽洗浄処理制御手段と、
前記処理槽を洗浄している間に異常が発生した場合に、それを検知するとともに、前記薬液供給手段、前記純水供給手段、および前記切換手段の動作を制御して、所定の異常回復処理を行わせる異常回復処理制御手段と、
を備え、
前記異常回復処理制御手段が、
前記異常が検知された際の前記処理槽の内部に貯留された液体の比抵抗値を前記計測手段から取得し、取得された前記比抵抗値に基づいて、前記処理槽が、前記処理槽内の純水の純度が所定値以上である純水状態であるか否かを判定し、前記処理槽が前記純水状態でない場合に、前記純水供給手段に、前記処理槽へ第1流量で純水を供給させて前記処理槽を前記純水状態に移行させることを特徴とする基板処理装置。
【請求項9】
請求項8に記載の基板処理装置であって、
前記異常回復処理制御手段が、
前記処理槽が前記純水状態である場合に、前記純水供給手段に、前記処理槽に前記第1流量よりも少ない第2流量で純水を供給させることを特徴とする基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−232244(P2010−232244A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−75524(P2009−75524)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】