説明

分析装置および試薬収容具

【課題】簡単な構造の蓋部材を有する試薬収容具を用いて、蓋部材を自動的に開閉することが可能な分析装置を提供する。
【解決手段】この免疫分析装置1は、検体を吸引する検体分注アーム5と、筒部322と、略水平方向に往復直線移動することによって筒部322を開閉するスライド蓋330とを含む試薬収容具300を保持する試薬設置部7と、スライド蓋330を略水平方向に往復直線移動させることにより筒部322を開閉する開閉部61と、筒部322を介して試薬収容具300内にピペット9eを挿入して試薬を吸引する試薬分注アーム9と、検体分注アーム5によって吸引された検体と、試薬分注アーム9によって吸引された試薬とを用いて調製される分析用試料を分析する制御装置4とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、分析装置および試薬収容具に関し、特に、開口を開閉する開口開閉部を備えた分析装置および開口を開閉する蓋部材を含む試薬収容具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、試薬テーブルに載置された試薬容器の蓋を自動的に開閉することが可能な分析装置が知られている(たとえば、特許文献1〜8参照)。
【0003】
たとえば、特許文献1に記載の分析装置には、容器棚に試薬容器を載置し、容器棚を回転させることによって試薬容器の内蓋を水平方向に回転移動させることによって試薬容器の開口部を開閉させる開閉手段を備えた分析装置が開示されている。この分析装置によれば、試薬の吸引時のみ試薬容器の開口を開放し、それ以外の時は、開口を密閉しておくことが可能である。
【0004】
【特許文献1】実開昭57−185964号公報
【特許文献2】特開平8−160050号公報
【特許文献3】特開平10−311835号公報
【特許文献4】特開平1−61667号公報
【特許文献5】特開平8−94624号公報
【特許文献6】特開2000−338112号公報
【特許文献7】特開2001−34392号公報
【特許文献8】特開2006−30170号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載の分析装置では、試薬容器に、内蓋の回転中心となるための軸や、開口を押圧部材によって押圧して密閉するためのバネなどを設ける必要があり、蓋の構造が複雑になってしまう。試薬容器は、使い捨てである場合もあり、このような使い捨ての試薬容器の構造が複雑であると、検査にかかるコストが増加してしまう。一方、蓋を再使用するようにすると、試薬交換が煩雑になってしまう。また、上記特許文献2〜8記載の分析装置においても複雑な構造の蓋や、複雑な構造の蓋開閉機構を必要とする。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、簡単な構造の蓋部材を有する試薬収容具を用いて、蓋部材を自動的に開閉することが可能な分析装置を提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0007】
この発明の第1の局面による分析装置は、開口と、略水平方向に往復直線移動することによって開口を開閉する蓋部材とを含む試薬収容具を保持する収容具保持部と、蓋部材を略水平方向に往復直線移動させることにより開口を開閉する開口開閉部と、開口を介して試薬収容具内にピペットを挿入して試薬を吸引する試薬吸引部と、検体と、試薬とを用いて調製される分析用試料を分析する分析部とを備える。
【0008】
この第1の局面による分析装置では、上記のように、蓋部材を略水平方向に往復直線移動させることにより開口を開閉することによって、蓋部材を所定の軸を中心に回転させる必要がなくなる。このため、簡単な構造の蓋部材を有する試薬収容具を用いることが可能となる。また、蓋部材を略水平方向に往復直線移動させることにより開口を開閉する開口開閉部を設けることによって、開口開閉部により蓋部材を自動的に開閉することができる。
【0009】
上記第1の局面による分析装置において、好ましくは、収容具保持部は、ピペットを挿入するためのピペット挿入口を有し、蓋部材の上方に配置される蓋を含み、開口開閉部は、蓋に配置され、試薬吸引部は、開口開閉部が開口を開放したときに、ピペット挿入口および開口を介して試薬収容具内にピペットを挿入し、試薬を吸引する。このように構成すれば、収容具保持部の蓋により、ユーザが不用意に試薬収容具を保持する収容具保持部内に手を挿入してしまう不具合が生じるのを抑制することができる。また、収容具保持部の蓋を開けることなく試薬収容具の開口を開閉し、試薬収容具から試薬を吸引することができる。
【0010】
この場合、好ましくは、収容具保持部の内部を冷却するための冷却部をさらに備える。このように構成すれば、蓋で覆われた収容具保持部の内部を冷却することができるので、収容具保持部内を効率良く冷却することができる。
【0011】
上記収容具保持部が蓋を含む構成において、好ましくは、開口開閉部は、ピペット挿入口を通して蓋の下に突出した状態で試薬収容具の蓋部材と係合し、略水平方向に往復直線移動可能な係合部と、蓋の上面に設けられ、係合部を略水平方向に往復直線移動させる駆動部とを含む。このように構成すれば、駆動部により係合部を略水平方向に往復直線移動させて、係合部と係合する蓋部材を開放することができる。
【0012】
上記収容具保持部が蓋を含む構成において、好ましくは、蓋は、収容具保持部に保持された試薬収容具を1つ分通過させることが可能な大きさの収容具出入口を有する。このように構成すれば、蓋を開けることなく試薬収容具の交換が可能となり、しかも収容具保持部内部の温度上昇を抑えることができる。
【0013】
上記開口開閉部が係合部と駆動部とを含む構成において、好ましくは、収容具保持部に保持された試薬収容具を略水平方向に移動させる収容具移動部と、蓋の下面に設けられ、収容具移動部による試薬収容具の略水平方向への移動に伴って蓋部材に当接することによって蓋部材が開口開閉部の係合部と係合するようにガイドするガイド部とをさらに備える。このように構成すれば、ガイド部によって蓋部材が開口開閉部の係合部と係合するようにガイドすることができる。これにより、確実に開口開閉部によって蓋部材の開閉を行なうことができる。
【0014】
上記第1の局面による分析装置において、好ましくは、収容具保持部に保持された試薬収容具を略水平方向に移動させることによって、試薬収容具を開口開閉部による蓋部材の開閉のための位置に配置させる収容具移動部をさらに備える。このように構成すれば、収容具移動部によって試薬収容具を開口開閉部による蓋部材の開閉のための位置に配置させることにより、容易に、開口開閉部によって蓋部材の開閉を行なうことができる。
【0015】
上記第1の局面による分析装置において、好ましくは、試薬収容具の開口の縁を含む面は水平面から傾いており、蓋部材は、開口の縁を含む面の傾きと実質的に同じ傾きを有する開口閉鎖面を含み、開口閉鎖面が、開口閉鎖面の低い側から高い側に向かう方向に略水平直線移動することによって開口が閉鎖される。このように構成すれば、開口閉鎖面が開口の縁を含む面に被さるように開口を閉鎖することができる。したがって、開口閉鎖面と開口の縁を含む面との間に生じる摩擦が少なくなるので、摩擦による劣化を防ぐことができる。また、摩擦が生じにくいため、小さな力で開口を閉鎖することができる。これにより、開口開閉部が大きな力で蓋部材を移動させる必要がなくなる。
【0016】
この発明の第2の局面による試薬収容具は、開口と、試薬を吸引し、略水平方向に往復直線移動することによって開口を開閉する蓋部材とを備える試薬収容具であって、試薬収容具の開口の縁を含む面は、水平面から傾けて設けられており、蓋部材は、開口の縁を含む面の傾きと実質的に同じ傾きを有する開口閉鎖面を含み、開口閉鎖面が開口閉鎖面の低い側から高い側に向かう方向に略水平直線移動することによって開口が閉鎖される。
【0017】
この第2の局面による試薬収容具では、上記のように、開口閉鎖面を開口閉鎖面の低い側から高い側に向かう方向に略水平直線移動することによって開口を閉鎖することによって、開口閉鎖面が開口の縁を含む面に被さるように開口を閉鎖することができる。したがって、開口閉鎖面と開口の縁を含む面との間に生じる摩擦が少なくなるので、摩擦による劣化を防ぐことができる。また、蓋部材を往復直線移動させることによる開口の開閉が可能となるので、この試薬収容具を分析装置に適用し、開口を自動的に開閉する場合に、開口を開閉する機構の構造を簡単にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
まず、図1〜図6を参照して、本発明の一実施形態による免疫分析装置1の全体構成について説明する。
【0020】
本発明の一実施形態による免疫分析装置1は、血液などの検体を用いてB型肝炎、C型肝炎、腫瘍マーカおよび甲状腺ホルモンなど種々の項目の検査を行うための装置である。この免疫分析装置1では、測定対象である血液などの検体に含まれる抗原に結合した捕捉抗体(R1試薬)に磁性粒子(R2試薬)を結合させた後に、結合(Bound)した抗原、捕捉抗体および磁性粒子をBF(Bound Free)分離部14(図1および図2参照)の磁石(図示せず)に引き寄せることにより、未反応(Free)の捕捉抗体を含むR1試薬を除去する。そして、磁性粒子が結合した抗原と標識抗体(R3試薬)とを結合させた後に、結合(Bound)した磁性粒子、抗原および標識抗体をBF分離部14の磁石に引き寄せることにより、未反応(Free)の標識抗体を含むR3試薬を除去する。さらに、標識抗体との反応過程で発光する発光基質(R5試薬)を添加した後、標識抗体と発光基質との反応によって生じる発光量を測定する。このような過程を経て、標識抗体に結合する検体に含まれる抗原または抗体を定量的に測定している。
【0021】
この免疫分析装置1は、図1および図2に示すように、測定機構部2と、測定機構部2の前面側に配置された検体搬送部(サンプラ)3と、測定機構部2に電気的に接続されたPC(パーソナルコンピュータ)からなる制御装置4とを備えている。また、測定機構部2は、検体分注アーム5と、試薬設置部6および7と、試薬分注アーム8、9および10と、1次反応部11および2次反応部12と、キュベット供給部13と、BF分離部14と、検出部15とから構成されている。また、図3に示すように、測定機構部2における各機構(各種分注アーム、試薬設置部6および試薬設置部7など)は、測定機構部2に設けられた制御部2aにより制御されている。具体的には、制御部2aは、試薬設置部7に設けられた各種センサ(センサ60d、60fおよび原点検知センサ60eなど)の信号を受信するとともに、試薬設置部7に設けられた各種駆動源(ステッピングモータ53、63および駆動部73など)の駆動を制御している。また、搬送機構部3も制御部2aによって制御される。なお、各種分注アーム、各種センサおよび各種駆動源については後に詳細に説明する。
【0022】
制御部2aは、図4に示すように、CPU2bと、ROM2cと、RAM2dと、通信インターフェース2eとから主として構成されている。
【0023】
CPU2bは、ROM2cに記憶されているコンピュータプログラムおよびRAM2dに読み出されたコンピュータプログラムを実行することが可能である。ROM2cは、CPU2bに実行させるためのコンピュータプログラムおよびそのコンピュータプログラムの実行に用いるデータなどを記憶している。RAM2dは、ROM2cに記憶しているコンピュータプログラムの読み出しに用いられる。また、これらのコンピュータプログラムを実行するときに、CPU2bの作業領域として利用される。
【0024】
通信インターフェース2eは、制御装置4に接続されており、検体の光学的な情報(標識抗体と発光基質との反応によって生じる発光量のデータ)を制御装置4に送信するとともに、制御装置4の制御部4aからの信号を受信するための機能を果たす。また、通信インターフェース2eは、搬送機構部3および測定機構部2の各部を駆動するためのCPU2bからの指令を送信するための機能を有する。
【0025】
検体搬送部3は、図1および図2に示すように、検体を収容した複数の試験管100が載置されたラック101を、検体分注アーム5が検体を吸引する吸引位置1aに対応する位置まで搬送するように構成されている。この検体搬送部3は、未処理の検体を収容した試験管100が載置されたラック101をセットするためのラックセット部3aと、分注処理済みの検体を収容した試験管100が載置されたラック101を貯留するためのラック貯留部3bとを有している。そして、未処理の検体を収容した試験管100を検体分注アーム5の吸引位置1aに対応する位置まで搬送することにより、検体分注アーム5により試験管100内の血液などの検体の吸引が行われ、その後、その試験管100を載置したラック101がラック貯留部3bに貯留されるように構成されている。
【0026】
制御装置4(図1参照)は、パーソナルコンピュータ(PC)などからなり、CPU、ROM、RAMなどからなる制御部4aと、表示部4bと、キーボード4cとを含んでいる。また、表示部4bは、検出部15から送信されたデジタル信号のデータを分析して得られた分析結果などを表示するために設けられている。
【0027】
次に、制御装置4の構成について説明する。制御装置4は、図5に示すように、制御部4aと、表示部4bと、キーボード4cとから主として構成されたコンピュータ401によって構成されている。制御部4aは、CPU401aと、ROM401bと、RAM401cと、ハードディスク401dと、読出装置401eと、入出力インタフェース401fと、通信インタフェース401gと、画像出力インタフェース401hとから主として構成されている。CPU401a、ROM401b、RAM401c、ハードディスク401d、読出装置401e、入出力インタフェース401f、通信インタフェース401g、および画像出力インタフェース401hは、バス401iによって接続されている。
【0028】
CPU401aは、ROM401bに記憶されているコンピュータプログラムおよびRAM401cにロードされたコンピュータプログラムを実行することが可能である。そして、後述するようなアプリケーションプログラム404aをCPU401aが実行することにより、コンピュータ401が制御装置4として機能する。
【0029】
ROM401bは、マスクROM、PROM、EPROM、EEPROMなどによって構成されており、CPU401aに実行されるコンピュータプログラムおよびこれに用いるデータなどが記録されている。
【0030】
RAM401cは、SRAMまたはDRAMなどによって構成されている。RAM401cは、ROM401bおよびハードディスク401dに記録されているコンピュータプログラムの読み出しに用いられる。また、これらのコンピュータプログラムを実行するときに、CPU401aの作業領域として利用される。
【0031】
ハードディスク401dは、オペレーティングシステムおよびアプリケーションプログラムなど、CPU401aに実行させるための種々のコンピュータプログラムおよびそのコンピュータプログラムの実行に用いるデータがインストールされている。本実施形態に係る免疫分析用のアプリケーションプログラム404aも、このハードディスク401dにインストールされている。
【0032】
読出装置401eは、フレキシブルディスクドライブ、CD−ROMドライブ、またはDVD−ROMドライブなどによって構成されており、可搬型記録媒体404に記録されたコンピュータプログラムまたはデータを読み出すことができる。また、可搬型記録媒体404には、免疫分析用のアプリケーションプログラム404aが格納されており、コンピュータ401がその可搬型記録媒体404からアプリケーションプログラム404aを読み出し、そのアプリケーションプログラム404aをハードディスク401dにインストールすることが可能である。
【0033】
なお、上記アプリケーションプログラム404aは、可搬型記録媒体404によって提供されるのみならず、電気通信回線(有線、無線を問わない)によってコンピュータ401と通信可能に接続された外部の機器から上記電気通信回線を通じて提供することも可能である。たとえば、上記アプリケーションプログラム404aがインターネット上のサーバコンピュータのハードディスク内に格納されており、このサーバコンピュータにコンピュータ401がアクセスして、そのアプリケーションプログラム404aをダウンロードし、これをハードディスク401dにインストールすることも可能である。
【0034】
また、ハードディスク401dには、たとえば、米マイクロソフト社が製造販売するWindows(登録商標)などのグラフィカルユーザインタフェース環境を提供するオペレーティングシステムがインストールされている。以下の説明においては、本実施形態に係るアプリケーションプログラム404aは上記オペレーティングシステム上で動作するものとしている。
【0035】
入出力インタフェース401fは、たとえば、USB、IEEE1394、RS−232Cなどのシリアルインタフェース、SCSI、IDE、IEEE1284などのパラレルインタフェース、およびD/A変換器、A/D変換器などからなるアナログインタフェースなどから構成されている。入出力インタフェース401fには、キーボード4cが接続されており、ユーザがそのキーボード4cを使用することにより、コンピュータ401にデータを入力することが可能である。
【0036】
通信インタフェース401gは、たとえば、Ethernet(登録商標)インタフェースである。コンピュータ401は、その通信インタフェース401gにより、所定の通信プロトコルを使用して測定機構部2との間でデータの送受信が可能である。
【0037】
画像出力インタフェース401hは、LCDまたはCRTなどで構成された表示部4bに接続されており、CPU401aから与えられた画像データに応じた映像信号を表示部4bに出力するようになっている。表示部4bは、入力された映像信号にしたがって、画像(画面)を表示する。
【0038】
また、制御部4aのハードディスク401dにインストールされた免疫分析用のアプリケーションプログラム404aは、測定機構部2の検出部15から送信された測定用試料の発光量(デジタル信号のデータ)を用いて、測定用試料の抗原または抗体の量を測定している。
【0039】
検体分注アーム5(図1および図2参照)は、検体搬送部3により吸引位置1aに搬送された試験管100内の検体を、後述する1次反応部11の回転テーブル部11aの保持部11bに保持されるキュベット150内に分注する機能を有している。この検体分注アーム5は、図1および図2に示すように、モータ5aと、モータ5aに接続される駆動伝達部5bと、駆動伝達部5bに軸5cを介して取り付けられるアーム部5dとを含んでいる。駆動伝達部5bは、モータ5aからの駆動力によりアーム部5dを、軸5cを中心に回動させるとともに、上下方向(Z方向)に移動させることが可能なように構成されている。また、アーム部5dの先端部には、検体の吸引および吐出を行うピペット5eが設けられている。
【0040】
試薬設置部6(図1および図2参照)は、捕捉抗体を含むR1試薬が収容される試薬容器および標識抗体を含むR3試薬が収容される試薬容器を保持する試薬収容具を設置するために設けられている。この試薬設置部6は、図1に示すように、試薬収容具が保持される試薬保持部20と、試薬保持部20に取り付けられる蓋部30と、試薬保持部20内の試薬収容具を蓋部30に設けられた孔30aを介して交換するための昇降部40とを含んでいる。
【0041】
試薬設置部7(図1および図2参照)は、磁性粒子を含むR2試薬が収容される試薬容器を保持する試薬収容具300(図6参照)を設置するために設けられている。試薬設置部7の構造については後に詳細に説明する。
【0042】
試薬分注アーム8(図1および図2参照)は、試薬設置部6に設置される試薬収容具内のR1試薬を吸引するとともに、その吸引したR1試薬を1次反応部11の検体が分注されたキュベット150内に分注するための機能を有している。この試薬分注アーム8は、モータ8aと、モータ8aに接続される駆動伝達部8bと、駆動伝達部8bに軸8cを介して取り付けられたアーム部8dとを含んでいる。駆動伝達部8bは、モータ8aからの駆動力により軸8cを中心にアーム部8dを回動させるとともに、上下方向に移動させることが可能なように構成されている。また、アーム部8dの先端部には、試薬収容具内のR1試薬の吸引および吐出を行うためのピペット8e(図1参照)が取り付けられている。すなわち、ピペット8eは、試薬設置部6に設置された試薬収容具内のR1試薬を吸引した後、吸引したR1試薬を1次反応部11の検体が分注されたキュベット150内に分注するように構成されている。
【0043】
試薬分注アーム9(図1および図2参照)は、試薬設置部7に設置される試薬収容具300内のR2試薬を1次反応部11の検体およびR1試薬が分注されたキュベット150内に分注するための機能を有している。この試薬分注アーム9は、モータ9aと、モータ9aに接続される駆動伝達部9bと、駆動伝達部9bに軸9cを介して取り付けられたアーム部9dとを含んでいる。駆動伝達部9bは、モータ9aからの駆動力により、軸9cを中心にアーム部9dを回動させるとともに、上下方向に移動させることが可能なように構成されている。また、アーム部9dの先端部には、試薬収容具300内のR2試薬の吸引および吐出を行うためのピペット9e(図1参照)が取り付けられている。したがって、ピペット9eは、試薬設置部7の試薬収容具300内のR2試薬を吸引した後、吸引したR2試薬を1次反応部11の検体およびR1試薬が分注されたキュベット150内に分注するように構成されている。
【0044】
試薬分注アーム10(図1および図2参照)は、試薬設置部6に設置される試薬収容具内のR3試薬を吸引するとともに、その吸引されたR3試薬を2次反応部12の検体、R1試薬およびR2試薬が分注されたキュベット150内に分注するための機能を有している。この試薬分注アーム10は、モータ10aと、モータ10aに接続される駆動伝達部10bと、駆動伝達部10bに軸10cを介して取り付けられたアーム部10dとを含んでいる。駆動伝達部10bは、モータ10aからの駆動力により、軸10cを中心にアーム部10dを回動させるとともに、上下方向に移動させることが可能なように構成されている。また、アーム部10dの先端部には、試薬収容具内のR3試薬の吸引および吐出を行うためのピペット10e(図1参照)が取り付けられている。すなわち、ピペット10eは、試薬設置部6の試薬収容具内のR3試薬を吸引した後、吸引したR3試薬を2次反応部12の検体、R1試薬およびR2試薬が分注されたキュベット150内に分注される。
【0045】
1次反応部11は、図1および図2に示すように、回転テーブル部11aの保持部11bに保持されるキュベット150を所定の期間(本実施形態では、18秒)毎に所定の角度だけ回転移送するとともに、キュベット150内の検体、R1試薬およびR2試薬を攪拌するために設けられている。つまり、1次反応部11は、キュベット150内で磁性粒子を有するR2試薬と検体中の抗原とを反応させるために設けられている。この1次反応部11は、検体とR1試薬およびR2試薬とが収容されるキュベット150を回転方向に搬送するための回転テーブル部11aと、キュベット150内の検体、R1試薬およびR2試薬を攪拌するとともに、攪拌された検体、R1試薬およびR2試薬が収容されたキュベット150を後述するBF分離部14(図1および図2参照)に搬送する容器搬送部11cとから構成されている。
【0046】
また、回転テーブル部11aは、保持部11bに保持されたキュベット150を18秒毎に所定の角度だけ回転移送するように構成されている。そのため、免疫分析装置1の各種装置(検体分注アーム5や試薬分注アーム8および9など)は、回転テーブル部11aにより所定の位置に移送されたタイミングで、移送された所定の位置のキュベット150に対して動作するように制御されている。
【0047】
また、容器搬送部11cは、回転テーブル部11aの中心部分に回転可能に設置されている。この容器搬送部11cは、回転テーブル部11aの保持部11bに保持されるキュベット150を把持するとともにキュベット150内の試料を攪拌する機能を有している。さらに、容器搬送部11cは、検体、R1試薬およびR2試薬を攪拌してインキュベーションした試料を収容したキュベット150をBF分離部14(図1および図2参照)に搬送する機能も有している。
【0048】
2次反応部12(図1および図2参照)は、1次反応部11と同様の構成を有しており、回転テーブル部12aの保持部12bに保持されるキュベット150を所定の期間(本実施形態では、18秒)毎に所定の角度だけ回転移送するとともに、キュベット150内の検体、R1試薬、R2試薬、R3試薬およびR5試薬を攪拌するために設けられている。つまり、2次反応部12は、キュベット150内で標識抗体を有するR3試薬と検体中の抗原とを反応させるとともに、発光基質を有するR5試薬とR3試薬の標識抗体とを反応させるために設けられている。なお、R5試薬は、2次反応部12の近傍に設けられたR5試薬分注アーム(図示せず)により、2次反応部12の検体、R1試薬、R2試薬およびR3試薬が収容されたキュベット150内に分注されるように構成されている。この2次反応部12は、検体、R1試薬、R2試薬、R3試薬およびR5試薬が収容されるキュベット150を回転方向に搬送するための回転テーブル部12aと、キュベット150内の検体、R1試薬、R2試薬、R3試薬およびR5試薬を攪拌するとともに、攪拌された検体などが収容されたキュベット150をBF分離部14に搬送する容器搬送部12cとから構成されている。さらに、容器搬送部12cは、BF分離部14により処理されたキュベット150を再び回転テーブル部12aの保持部12bに搬送する機能を有している。なお、2次反応部12の詳細構造は、1次反応部11と同様であるので、その説明を省略する。
【0049】
キュベット供給部13(図1および図2参照)は、複数のキュベット150を1次反応部11の回転テーブル部11aの保持部11bに順次供給することが可能なように構成されている。
【0050】
BF分離部14は、1次反応部11の容器搬送部11cによって搬送されたキュベット150内の試料から未反応のR1試薬(不要成分)と磁性粒子とを分離する機能と、2次反応部12の容器搬送部12cによって搬送されたキュベット150(図1参照)内の試料から未反応のR3試薬(不要成分)と磁性粒子とを分離する機能とを有する。
【0051】
検出部15(図1および図2参照)は、所定の処理が行なわれた検体の抗原に結合する標識抗体と発光基質との反応過程で生じる光を光電子増倍管(Photo Multiplier Tube)で取得することにより、その検体に含まれる抗原の量を測定するために設けられている。
【0052】
次に、図6〜図17を参照して、本発明の一実施形態による免疫分析装置1の試薬設置部7および試薬設置部7に設置される試薬収容具300の構造を説明する。
【0053】
この試薬設置部7は、図6に示すように、試薬収容具300を円環状に並べて保持する円筒形状の試薬保持部50と、試薬保持部50に開閉可能に取り付けられる蓋部60と、円筒形状の試薬保持部50の側面(外壁部51)に取り付けられる昇降部70とを含んでいる。また、試薬設置部7の底部にはペルチエ素子(図示せず)が取り付けられており、試薬設置部7の内部は約15℃に保たれている。
【0054】
試薬保持部50は、図7および図8に示すように、円筒状の外壁部51と、中心に設けられる回転可能な回転軸52と、回転軸52を回転させるためのステッピングモータ53と、ステッピングモータ53の駆動力を回転軸52に伝達するためのベルト54(図8参照)とを含んでいる。外壁部51の内面には全面に渡って断熱材(図示せず)が取り付けられており、試薬保持部50内部の温度を低温(約15℃)に保っている。また、ステッピングモータ53の駆動力は、図8に示すように、ステッピングモータ53により回転するプーリ53aと、回転軸52に同軸上に固定されるプーリ52aとにより、ベルト54を介して回転軸52に伝達されるように構成されている。
【0055】
また、回転軸52には、図6に示すように、複数の試薬収容具300を円環状に保持するためのラック600が固定的に取り付けられる。ラック600に試薬収容具300を保持させた状態で回転軸52を回転させることにより、試薬収容具300が保持されたラック600が回転されるので、吸引する試薬を保持する試薬収容具300を後述する蓋部60の孔60bの下方に移動させることが可能である。このラック600は、図9に示すように、ラック600の中心に設けられ、回転軸52が挿入される挿入部601と、挿入部601を中心に円環状に形成され、試薬収容具300を保持するための複数の保持部602と、挿入部601の上方に突出するように設けられた原点検知片603とを含む。保持部602は、仕切板602aと支持部602bとにより構成されている。仕切板602aは、挿入部601から半径方向に放射状に延びるように所定の角度間隔で複数設けられている。支持部602bは、仕切板602aの互いに対向する部分の下部および挿入部501の下部に、内側に突出するように設けられている。各試薬収容具300は、一対の仕切板602aにより挟まれる空間に支持部602bにより底部326(図14参照)の周縁部が支持されるように配置される。また、保持部602の上部、下部および半径方向の外側部を開放端とすることにより、試薬収容具300を昇降させるための昇降部70の載置台71が昇降可能に構成されている。
【0056】
また、蓋部60は、図6に示すように、試薬保持部50にヒンジ部60aを介して開閉可能に取り付けられている。この蓋部60は、試薬設置部7内の温度が低温(15℃)に保たれるように外気を遮断するとともに、試薬設置部7内の試薬を外部から吸引可能で、かつ、試薬収容具300を試薬設置部7内に出し入れ可能なように構成されている。具体的には、蓋部60は、図10および図11に示すように、試薬収容具300の試薬容器310(図14参照)から試薬を吸引する際に試薬分注アーム9のピペット9eが挿入される孔60bと、試薬収容具300を試薬設置部7から昇降部70によって出し入れするための入出孔60cとを含んでいる。入出孔60cの大きさおよび形は、試薬収容具300の平面的な形状に対応しており、試薬収容具300が1つ分通過可能なように形成されている。また、蓋部60は、孔60bの下方に配置された試薬収容具300のスライド蓋330(図14参照)を開閉可能な開閉部材61と、開閉部材61を略水平方向にスライド可能に支持する直動ガイド62と、開閉部材61を往復直線駆動するステッピングモータ63とを含んでいる。また、蓋部60には、試薬収容具300がラック600の保持部602に保持されているか否かを検知するための反射型のセンサ60dと、ラック600の原点位置を検知するための透過型の原点検知センサ60eと、開閉部材61の原点位置を検知するための透過形のセンサ60fとが設けられている。センサ60dは、蓋部60の裏面側に向かって光を照射可能なように蓋部60の表面側に配置されており、原点検知センサ60eは、蓋部60の裏面側に配置されている。また、透過形のセンサ60fは、蓋部60の表面側に配置されている。
【0057】
開閉部材61は、図12に示すように、孔60bの下方に突出する二股の係合片61aを有する。また、図10および図11に示すように、係合片61aは、ステッピングモータ63の駆動力により、互いに固定された連結部材61b、61cおよび61dを介して矢印A方向および矢印B方向に往復直線移動可能に構成されている。また、連結部材61cは、直動ガイド62に取り付けられている。また、連結部材61dは、ステッピングモータ63の駆動力により移動する軸63aと接続されている。この連結部材61dと軸63aとの接続部分にはバネ部材61eが配置されている。このバネ部材61eの弾性により、後述するようにスライド蓋330を係合片61aによって閉める時(矢印B方向に係合片61aが移動する時)に、係合片61aが当接することによるスライド蓋330の係合片333(図14参照)への負荷を吸収するように構成されている。また、連結部材61dには、検知片61fが取り付けられている。この検知片61fがセンサ60fに検知された時に、開閉部材61(係合片61a)が原点位置(待機位置)に位置するように構成されている。また、ステッピングモータ63およびセンサ60fは、蓋部60の表面に設けられたモータブラケット63bに固定されている。
【0058】
また、試薬収容具300がスライド蓋330が閉まった状態で孔60bの下方に配置された場合には、試薬収容具300のスライド蓋330の係合片333(図14参照)が開閉部材61の二股の係合片61aの間に位置するように構成されている。すなわち、図13に示すように、スライド蓋330の係合片333は、スライド蓋330が閉まった状態でラック600の回転に伴って、R1a、R2aおよびR3aの経路を通過するように構成されている。また、蓋部60の裏面の孔60bの近傍には一対のガイド片60gが取り付けられている。この一対のガイド片60gは、試薬収容具300のスライド蓋330が開いた状態で孔60bの下方に配置された場合に、当接面60hがスライド蓋330の係合片333に当接してガイドすることにより、スライド蓋330の係合片333を開閉部材61の二股の係合片61aの間に位置させる機能を有する。すなわち、スライド蓋330の係合片333は、スライド蓋330が開いた状態でラック600の回転に伴って、R1b、R2bおよびR3aの経路を通過し、R3bに位置することがないように構成されている。
【0059】
また、反射型のセンサ60dは、ラック600の保持部602に試薬収容具300が保持されているか否かを検出するように構成されている。また、透過型の原点検知センサ30eは、ラック600に設けられた原点検知片603を検知することにより、回転するラック600の原点位置を検知する機能を有する。
【0060】
昇降部70は、試薬設置部7内に試薬収容具300を出し入れするために設けられている。昇降部70は、図7および図8に示すように、試薬収容具300が載置される載置台71と、載置台71を支持するアーム72と、アーム72を上下方向にスライドさせる駆動部73とを含んでいる。載置台71には、試薬収容具300のケース320の底部326に設けられたリブ326aと係合可能な溝71aが設けられておいる。また、アーム72は、外壁部51に設けられた上下方向に延びる孔(図示せず)を介して、試薬保持部50の外部に設けられた駆動部73の駆動力により載置台71を上下方向に移動させる機能を有する。昇降部70は、載置台71に試薬収容具300を載置した状態で載置台71を下降させることにより、試薬収容具300をラック600に保持させることが可能である。また、ラック600に保持された試薬収容具300の下方から上方に載置台71を移動させることにより、ラック600に保持された試薬収容具300を持ち上げて、蓋部60の入出孔60cから試薬収容具300を取り出すことが可能なように構成されている。
【0061】
次に、図14〜図17を参照して、本実施形態による免疫分析装置1に用いられる試薬収容具300の構造を説明する。
【0062】
試薬収容具300は、図14〜図17に示すように、R2試薬が収容される試薬容器310と、試薬容器310を収納するケース320とからなる。ケース320の上面321には、試薬容器310の開口310aに挿入されている筒部322と、蓋部60に設けられた反射型のセンサ60eが照射する光を反射するための反射部323と、後述するスライド蓋330がスライドするためのスライドレール324と、スライド蓋330の位置をそれぞれ規制するための凹部325とを有する。また、ケース320の上面321には、筒部322を密閉可能なスライド蓋330が取り付けられている。また、ケース320の底面326には、昇降部70の載置台71の溝71aと係合するリブ326aが設けられている。また、図15に示すように、ケース320の側面327には、試薬容器310に収容されている試薬の量を視認可能なスリット327aが設けられている。
【0063】
筒部322は、図16および図17に示すように、上側の開口端面322aが水平面から所定の角度傾斜した傾斜面となるように形成されている。また、凹部325は、後述するスライド蓋330の突出部332と当接することによりスライド蓋330の移動を規制するとともに、スライド蓋330がケース320から脱落することを抑制する機能を有する。また、凹部325には、スライド蓋330が筒部322の上側の開口端面322aを閉じる位置にある時に、スライド蓋330の突出部332と係合する凸状のリブ325aが設けられている。これにより、スライド蓋330が筒部322を密閉した状態でスライド蓋330を固定することが可能である。
【0064】
また、スライド蓋330は、ケース320に対してスライドすることにより筒部322を開閉するように構成されている。このスライド蓋330は、スライドレール324に係合する係合部331(図14参照)と、上面321の凹部325に嵌め込まれる突出部332(図17参照)と、蓋部60の開閉部材61(係合片61a)と係合する係合片333と、所定の角度傾斜する傾斜面となるように形成された当接部334(図17参照)とを含んでいる。図17に示すように、当接部334には、スライド蓋330が筒部322を密閉する時に筒部322の上側の開口端面322aと密着する板状のシリコンシート334aが取り付けられている。
【0065】
また、筒部322の上側の開口端面322aの傾斜角度と、スライド蓋330の当接部334の傾斜角度とは実質的に等しく形成されている。スライド蓋330が筒部322の開口端面322aの低い側から高い側へ向かう方向にスライドすることによって、開口端面322aとシリコンシート334aとが密着して、試薬容器310に収容された試薬が密閉状態となるように構成されている。
【0066】
次に、図1、図8、図11、図13および図18〜図22を参照して、本実施形態による免疫分析装置1における試薬収容具300から試薬分注アーム9のピペット9eにより試薬を吸引する吸引動作を説明する。
【0067】
試薬の吸引動作の開始時には、図11に示すように、開閉部材61(係合片61a)は、原点位置(待機位置)に待機している。まず、試薬保持部50の回転軸52(図8参照)が試薬収容具300を保持するラック600を回転させることにより、吸引対象の試薬を収容した試薬容器310を含む試薬収容具300が蓋部60の孔60bの下方に移動される。試薬収容具300が蓋部60の孔60bの下方に移動する際、試薬収容具300のスライド蓋330が閉まっている場合には、図18に示すように、スライド蓋330の係合片333が図13のR1a、R2aおよびR3aの経路を通過して、原点位置にある開閉部材61の二股の係合部61aの間に配置される。また、試薬収容具300が蓋部60の孔60bの下方に移動する際、試薬収容具300のスライド蓋330が開いている場合には、スライド蓋330の係合片333は、蓋部60の孔60bの近傍に配置されたガイド片60g(図13参照)によりガイドされて図13のR1b、R2bおよびR3aの経路を通過して、原点位置にある開閉部材61の二股の係合部61aの間に配置される。
【0068】
この状態で、まず、開閉部材61の原点位置を検知するセンサ60f(図11参照)の検知機能がOFFにされる。そして、図19に示すように、ステッピングモータ63により開閉部材61が矢印E方向にスライドされる。これにより、図20に示すように、スライド蓋330の係合片333が二股の係合部61aとともに矢印E方向にスライドされてスライド蓋330が開状態となる。これにより、蓋部60の孔60bのうち、開閉部材61がスライドすることによって空いた領域と、筒部322とを介して試薬分注アーム9のピペット9eを試薬容器310の内部に挿入することが可能となる。また、ピペット9eは、モータ9aおよび駆動伝達部9bによる回動により蓋部60の孔60bの上方に移動されている。図20に示すように、スライド蓋330の開状態でピペット9eが下降することによりピペット9eが孔60bと筒部322とを介して試薬容器310の内部に挿入されて、試薬が吸引される。
【0069】
そして、試薬を吸引したピペット9eは、モータ9aおよび駆動伝達部9bにより上昇するとともに回動されて、1次反応部11(図1参照)の上方に移動される。そして、1次反応部11のキュベット150に試薬容器310から吸引した試薬が分注される。
【0070】
また、図21に示すように、試薬の吸引が終了した後、開閉部材61がステッピングモータ63により矢印F方向に移動されることによって、スライド蓋330の係合片333が二股の係合部61aとともに矢印F方向にスライドされる。これにより、図22に示すように、筒部322の上側の開口端面322aとスライド蓋330の当接部334に取り付けられたシリコンシート334aとが密着して、試薬が密閉状態となる。また、筒部322の上側の開口端面322aとシリコンシート334aとが密着した状態で、スライド蓋330の突出部332とスライド蓋330の凹部325に設けられたリブ325aとが係合して、スライド蓋330がケース320に固定される。これにより、ラック600が回転されて試薬収容具300が移動される際などにも、試薬の密閉状態が保持される。
【0071】
その後、開閉部材61(係合片61a)の原点位置を検知するセンサ60fの検知機能がONにされる。そして、開閉部材61が、検知片61fがセンサ60fに検知されるまで矢印E方向に移動される。これにより、図11および図18に示すように、開閉部材61(係合片61a)は、待機位置である原点位置に配置される。
【0072】
なお、試薬設置部6の構成は、試薬収容具が2つのR1試薬およびR2試薬の2つの試薬容器を含むことに対応して蓋部30に蓋部材の開閉機構が2つ設けられていることなどを除き、試薬設置部7の構成と同様であるので説明を省略する。また、試薬設置部6に設置された試薬収容具から試薬を吸引する動作も、上記とほぼ同様であるので説明を省略する。
【0073】
本実施形態では、上記のように、略水平方向に往復直線移動されることによって開口310aを開閉可能なスライド蓋330を、開閉部材61を水平方向に往復直線移動させることによって、簡単な構造のスライド蓋330を有する試薬収容具300を用いて、スライド蓋330を自動的に開閉することができる。
【0074】
また、本実施形態では、上記のように、試薬分注アーム9は、開閉部材61がスライド蓋330を開いたときに、60bおよび開口310aを介して試薬収容具300内にピペット9eを挿入して、試薬を吸引するように構成されている。これにより、蓋部60により、ユーザが不用意に試薬収容具300を保持する試薬保持部50内に手を挿入してしまう不具合が生じるのを抑制することができる。また、試薬設置部7の蓋部60を開けることなく試薬収容具300のスライド蓋330を開閉し、試薬収容具300から試薬を吸引することができる。
【0075】
また、本実施形態では、上記のように、試薬設置部7の内部をペルチエ素子によって冷却することによって、蓋部60で覆われた試薬保持部50の内部を冷却することができるので、試薬設置部7内を効率良く冷却することができる。
【0076】
また、本実施形態では、上記のように、開閉部材61の係合片61aを試薬収容具300のスライド蓋330の係合片333に係合させた状態で、ステッピングモータ63によって係合片61aを矢印A方向およびB方向に往復直線移動させることによって、スライド蓋330を開閉することができる。
【0077】
また、本実施形態では、上記のように、蓋部60に、試薬設置部7に保持された試薬収容具300を1つ分通過させることが可能な大きさの入出孔60cを設けることによって、蓋部60を開けることなく試薬収容具300の交換が可能となり、しかも試薬設置部7内部の温度上昇を抑えることができる。
【0078】
また、本実施形態では、上記のように、試薬収容具300がスライド蓋330が開いた状態で孔60bの下方に移動された場合に、蓋部60の下面に設けられたガイド片60gによってスライド蓋330の係合片333が開閉部材61の係合片61aと係合するようにガイドすることにより、確実に開閉部材61によってスライド蓋330の開閉を行なうことができる。
【0079】
また、本実施形態では、上記のように、ラック600に保持された試薬収容具300を略水平方向に回転移動させることにより、試薬収容具300を孔60bの下方に移動させることによって、容易に開閉部材61の係合片61aとスライド蓋330の係合片333とを係合させることができる。
【0080】
また、本実施形態では、上記のように、試薬収容具300の筒部322の開口端面322aと、スライド蓋330の当接部334の傾きとを実質的に同じ傾きを有するように形成することによって、スライド蓋330を、開口端面322aの低い側から高い側に向かう方向に略水平直線移動することによって筒部322の開口端面322aをシールすることができる。したがって、当接部334と筒部322の開口端面322aとの間に生じる摩擦が少なくなるので、摩擦による劣化を防ぐことができる。また、摩擦が生じにくいため、小さな力で筒部322の開口端面322aを閉鎖することができる。これにより、大きな駆動力によって開閉部材61を移動させてスライド蓋330を開閉させる必要がなくなる。
【0081】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0082】
たとえば、上記実施形態では、本発明を免疫分析装置1に適用した例を示したが、本発明はこれに限らず、生化学分析装置および血液凝固測定装置などに適用してもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、試薬収容具300の筒部の上側の開口端面322aを所定の角度傾斜する傾斜面となるように形成した例を示したが、本発明はこれに限らず、筒部の上側の開口端面を水平面となるように形成してもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、試薬収容具300は、ケース320に試薬容器310が収納され、試薬容器310にR2試薬が収容されているが、試薬容器310はケース320に収納される必要はなく、試薬容器310そのものを試薬収容具としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の一実施形態による免疫分析装置の全体構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示した免疫分析装置の平面図である。
【図3】本発明の一実施形態による免疫分析装置の測定機構部の制御部を含むブロック図である。
【図4】図3に示した測定機構部の制御部の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の一実施形態による免疫分析装置の制御装置を示すブロック図である。
【図6】図1に示した試薬設置部の全体構成を示す斜視図である。
【図7】図6に示した試薬設置部の試薬保持部を示す斜視図である。
【図8】図6に示した試薬設置部の試薬保持部の平面図である。
【図9】本発明の一実施形態による免疫分析装置に用いられる試薬収容具を保持するためのラックを示す斜視図である。
【図10】図6に示した試薬設置部の蓋部の表面を示す斜視図である。
【図11】図6に示した試薬設置部の蓋部の表面を示す平面図である。
【図12】図6に示した試薬設置部の蓋部の裏面を示す斜視図である。
【図13】図6に示した試薬設置部の蓋部の裏面を示す平面図である。
【図14】本発明の一実施形態による免疫分析装置に用いられる試薬収容具の外観図である。
【図15】本発明の一実施形態による免疫分析装置に用いられる試薬収容具の外観図である。
【図16】一実施形態による免疫分析装置に用いられる試薬収容具の上面を示す斜視図である。
【図17】図14の200−200線に沿った断面図である。
【図18】図11の300−300線に沿った断面図である。
【図19】スライド蓋の開状態における蓋部を示す平面図である。
【図20】図19の400−400線に沿った断面図である。
【図21】スライド蓋の閉状態における蓋部を示す平面図である。
【図22】図21の500−500線に沿った断面図である。
【符号の説明】
【0086】
1 免疫分析装置(分析装置)
4 制御装置(分析部)
6、7 試薬設置部(収容具保持部)
8、9、10 試薬分注アーム(試薬吸引部)
60 蓋部(蓋)
300 試薬収容具
330 スライド蓋(蓋部材)
8e、9e、10e ピペット
60b 孔(ピペット挿入口)
61a 係合片(係合部)
63 ステッピングモータ(駆動部)
60c 入出孔(収容具出入口)
60g ガイド片(ガイド部)
322a 開口端面(面)
334 当接部(開口閉鎖面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口と、略水平方向に往復直線移動することによって前記開口を開閉する蓋部材とを含む試薬収容具を保持する収容具保持部と、
前記蓋部材を略水平方向に往復直線移動させることにより前記開口を開閉する開口開閉部と、
前記開口を介して前記試薬収容具内にピペットを挿入して試薬を吸引する試薬吸引部と、
検体と、試薬とを用いて調製される分析用試料を分析する分析部とを備える、分析装置。
【請求項2】
前記収容具保持部は、前記ピペットを挿入するためのピペット挿入口を有し、前記蓋部材の上方に配置される蓋を含み、
前記開口開閉部は、前記蓋に配置され、
前記試薬吸引部は、前記開口開閉部が前記開口を開放したときに、前記ピペット挿入口および前記開口を介して前記試薬収容具内に前記ピペットを挿入し、前記試薬を吸引する、請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記収容具保持部の内部を冷却するための冷却部をさらに備える、請求項2に記載の分析装置。
【請求項4】
前記開口開閉部は、
前記ピペット挿入口を通して前記蓋の下に突出した状態で前記試薬収容具の蓋部材と係合し、略水平方向に往復直線移動可能な係合部と、
前記蓋の上面に設けられ、前記係合部を略水平方向に往復直線移動させる駆動部とを含む、請求項2または3に記載の分析装置。
【請求項5】
前記蓋は、前記収容具保持部に保持された前記試薬収容具を1つ分通過させることが可能な大きさの収容具出入口を有する、請求項2〜4のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項6】
前記収容具保持部に保持された試薬収容具を略水平方向に移動させる収容具移動部と、
前記蓋の下面に設けられ、前記収容具移動部による前記試薬収容具の略水平方向への移動に伴って前記蓋部材に当接することによって前記蓋部材が前記開口開閉部の係合部と係合するようにガイドするガイド部とをさらに備える、請求項4に記載の分析装置。
【請求項7】
前記収容具保持部に保持された試薬容収容具を略水平方向に移動させることによって、前記試薬収容具を前記開口開閉部による前記蓋部材の開閉のための位置に配置させる収容具移動部をさらに備える、請求項1〜5のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項8】
前記試薬収容具の前記開口の縁を含む面は水平面から傾いており、
前記蓋部材は、前記開口の縁を含む面の傾きと実質的に同じ傾きを有する開口閉鎖面を含み、
前記開口閉鎖面が、前記開口閉鎖面の低い側から高い側に向かう方向に略水平直線移動することによって前記開口が閉鎖される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項9】
開口と、試薬を吸引し、略水平方向に往復直線移動することによって開口を開閉する蓋部材とを備える試薬収容具であって、
前記試薬収容具の開口の縁を含む面は、水平面から傾けて設けられており、
前記蓋部材は、前記開口の縁を含む面の傾きと実質的に同じ傾きを有する開口閉鎖面を含み、
前記開口閉鎖面が前記開口閉鎖面の低い側から高い側に向かう方向に略水平直線移動することによって前記開口が閉鎖される、試薬収容具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2008−96221(P2008−96221A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−276919(P2006−276919)
【出願日】平成18年10月10日(2006.10.10)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】