説明

切込シート基材の製造方法

【課題】成形材料として用いた場合、良好な流動性、成形追従性を有し、繊維強化プラスチックとした場合、優れた力学物性を発現する切込シート基材の製造方法を提供すること。
【解決手段】一方向に配列した強化繊維を含むシート基材3であって、シート厚みHが30〜300μmの範囲内の前記シート基材を繊維配列方向2に送り、前記シート基材に、刃を配置した抜き型を間欠的に押し当て、前記刃を前記シート基材に間欠的に進入させて、断続的な切込を挿入して、前記切込の繊維直交方向4成分Wsを30μm〜100mmの範囲内とし、実質的にすべての強化繊維の繊維長さLを10〜100mmの範囲内とする切込シート基材の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、良好な流動性、成形追従性を有し、繊維強化プラスチックとした場合、優れた力学物性、その低バラツキ性、優れた寸法安定性を発現する切込シート基材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
強化繊維とマトリックス樹脂からなる繊維強化プラスチックは、比強度、比弾性率が高く、力学特性に優れること、耐候性、耐薬品性などの高機能特性を有することなどから産業用途においても注目され、その需要は年々高まりつつある。
【0003】
高機能特性を有する繊維強化プラスチックの成形方法としては、プリプレグと称される連続した強化繊維にマトリックス樹脂を含浸せしめた半硬化状態の中間基材を積層し、高温高圧釜で加熱加圧することによりマトリックス樹脂を硬化させ繊維強化プラスチックを成形するオートクレーブ成形が最も一般的に行われている。また、近年では生産効率の向上を目的として、あらかじめ部材形状に賦形した連続繊維基材にマトリックス樹脂を含浸および硬化させるRTM(レジントランスファーモールディング)成形等も行われている。これらの成形法により得られた繊維強化プラスチックは、連続繊維である所以優れた力学物性を有する。また、連続繊維は規則的な配列であるため、基材の配置により必要とする力学物性に設計することが可能であり、力学物性のバラツキも小さい。しかしながら、一方で連続繊維である所以3次元形状等の複雑な形状を形成することは難しく、主として平面形状に近い部材に限られる。
【0004】
3次元形状等の複雑な形状に適した成形方法として、SMC(シートモールディングコンパウンド)成形等がある。SMC成形は、通常25mm程度に切断したチョップドストランドに熱硬化性樹脂であるマトリックス樹脂を含浸せしめ半硬化状態としたSMCシートを、加熱型プレス機を用いて加熱加圧することにより成形を行う。多くの場合、加圧前にSMCシートを成形体の形状より小さく切断して成形型上に配置し、加圧により成形体の形状に引き伸ばして(流動させて)成形を行う。そのため、その流動により3次元形状等の複雑な形状にも追従可能となる。しかしながら、SMCはそのシート化工程において、チョップドストランドの分布ムラ、配向ムラが必然的に生じてしまうため、力学物性が低下し、あるいはその値のバラツキが大きくなってしまう。さらには、そのチョップドストランドの分布ムラ、配向ムラにより、特に薄物の部材ではソリ、ヒケ等が発生しやすくなり、構造材としては不適な場合がある。
【0005】
上述のような材料の欠点を埋めるべく、連続繊維とマトリックス樹脂からなるプリプレグに断続的な切込を入れることにより、流動性可能で力学物性のバラツキも小さくなるとされる基材が開示されている(例えば特許文献1、2)。例えば、特許文献1ではプレスに装着した抜き刃の下にプリプレグを置き、切込を打ち抜く方法が開示されているが、連続的に基材を製造することができない、という問題点があった。例えば、特許文献1、2では回転ローラーに刃を埋め込み、対になるローラーに押し当てて切込を連続的に挿入する方法が開示されているが、断続的な切込を入れるために回転ローラーの曲面上に1つ1つの切込に対応する複数の刃を精度良く位置決めして設けるのが困難である、という問題点があった。
【特許文献1】特開昭63−247012号公報
【特許文献2】特開平9−254227号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、良好な流動性、複雑形状追従性を有し、繊維強化プラスチックとした場合、優れた力学物性、その低バラツキ性、優れた寸法安定性を発現する切込シート基材、あるいは予め樹脂が含浸した切込プリプレグ基材の効率的な製造方法を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、
(1)一方向に配列した強化繊維を含むシート基材であって、シート厚みHが30〜300μmの範囲内の前記シート基材を繊維配列方向に送り、前記シート基材に、刃を配置した抜き型を間欠的に押し当て、前記刃を前記シート基材に間欠的に進入させて、断続的な切込を挿入して、前記切込の繊維直交方向成分Wsを30μm〜100mmの範囲内とし、実質的にすべての強化繊維の繊維長さLを10〜100mmの範囲内とする切込シート基材の製造方法。
【0008】
(2)前記切込の繊維直交方向成分Wsを30μm〜100mmの範囲内とする手段が、前記刃の一部であり、切込を挿入する際に基材を貫通あるいは基材に進入する部位をカット部とし、前記抜き型を前記シート基材に押し当てる方向を押当方向としたときに、前記押当方向に、前記カット部の稜線を前記シート基材に投影した投影線Aの繊維直交方向成分Ws’が30μm〜100mmの範囲内となるように、前記抜き型を前記シート基材に押し当てることである、(1)に記載の切込シート基材の製造方法。
【0009】
(3)実質的にすべての強化繊維の繊維長さLを10〜100mmの範囲内とする手段が、前記刃の一部であり、切込を挿入する際に基材を貫通あるいは基材に進入する部位をカット部とし、前記抜き型を前記シート基材に押し当てる方向を押当方向としたときに、前記抜き型に含まれるすべての前記カット部の稜線を、前記押当方向に、前記シート基材に投影した投影線Aを、繊維配列方向に、同じ繊維直交面に投影して得た投影線B同士が実質的にすべて連結するように前記抜き型に前記シート基材を押し当てることである、(1)または(2)に記載の切込シート基材の製造方法。
【0010】
(4)前記刃の一部であり、切込を挿入する際に基材を貫通あるいは基材に進入する部位をカット部とし、前記抜き型を前記シート基材に押し当てる方向を押当方向としたときに、前記押当方向に、前記カット部の稜線を前記シート基材に投影した投影線Aと繊維配列方向とのなす角θが2〜60°の範囲内となるように前記抜き型にシート基材を押し当てる、(1)〜(3)のいずれかに記載の切込シート基材の製造方法。
【0011】
(5)前記刃として、板状のミシン刃を用いる、(1)〜(4)のいずれかに記載の切込シート基材の製造方法。
【0012】
(6)前記抜き型として、平板状であり、かつ複数の前記ミシン刃を、互いに平行となるように前記抜き型に配置したものを用いる、(5)に記載の切込シート基材の製造方法。
【0013】
(7)前記ミシン刃の一部であり、切込を挿入する際に基材を貫通あるいは基材に進入する部位をカット部とし、同一ミシン刃内で隣接するカット部間の距離をカット部間距離bとしたときに、前記カット部の長さWおよびカット部間距離bがそれぞれ一定となるように前記抜き型をシート基材に押し当てる、(5)または(6)に記載の切込シート基材の製造方法。
【0014】
(8)前記投影線B同士が、互いに端部のみで連結し、かつ前記シート基材を繊維配列方向に10〜100mm移動させる毎に、前記抜き型を前記シート基材に押し当てる、(3)〜(7)のいずれかに記載の切込シート基材の製造方法。
【0015】
(9)前記カット部間距離bに対する前記カット部の長さWの比(W/b)が1〜1.5の範囲内であり、前記投影線B同士が、互いに端部のみで連結するように、前記シート基材を繊維配列方向に10〜100mm移動させる毎に、前記抜き型を前記シート基材に押し当てる、(8)に記載の切込シート基材の製造方法。
【0016】
(10)前記ミシン刃同士を繊維配列方向に強化繊維の繊維長さLの1.5倍以上離して抜き型に配置する、(9)に記載の切込シート基材の製造方法。
【0017】
(11)前記シート基材が強化繊維とマトリックス樹脂とからなるプリプレグ基材である、(1)〜(10)のいずれかに記載の切込シート基材の製造方法。
【0018】
(12)テープ状支持体によって把持した前記プリプレグ基材を用いて、前記抜き型をテープ状支持体とは反対側の前記プリプレグ基材に押し当て、前記プリプレグ基材を貫通し、かつ、前記テープ状支持体の一部のみ侵入する前記切込を挿入する、(11)に記載の切込シート基材の製造方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、良好な流動性、複雑な形状の成形追従性を有し、繊維強化プラスチックとした場合、優れた力学物性、その低バラツキ性、優れた寸法安定性を発現する切込シート基材を効率的に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、前記課題、つまり切込シート基材の効率的な製造方法について、鋭意検討し、一方向に引き揃えられた強化繊維からなるシート基材に対して刃を設けた抜き型を間欠的に押し当て、シート基材に切込を挿入して、切込シート基材を製造することにより、かかる課題を一挙に解決することを究明したものである。本発明により、良好な流動性、複雑な形状の成形追従性を有し、繊維強化プラスチックとした場合、優れた力学物性、その低バラツキ性、優れた寸法安定性を発現する切込シート基材を短時間で大量かつ安定的に生産することができる。
【0021】
本発明の切込シート基材を製造するにあたり用いるシート基材としては、一方向に配列した強化繊維を含んでいれば何でもよく、強化繊維に強化目的でない繊維をまたいで配置して織り込み、ステッチング、熱融着などの手段で一体化したものや、タッキファイヤなどの樹脂を散布して点融着して一体化したものであってもよい。また、樹脂が強化繊維間に完全に含浸していない状態で一体化した樹脂半含浸基材(セミプレグ)や、樹脂が強化繊維間に完全に含浸したプリプレグであってもよい。上記シート基材に所定の切込を挿入し、切込シート基材を製造した後、さらに積層時に新たに樹脂シートや不織布などを切込シート基材上に配することで樹脂を付与してもよいし、成形時にそれらを切込シート基材に配してもよく、切込シート基材に樹脂を付与することで優れた成形追従性や流動性を発現する。なお、本明細書では、特に断らない限り、繊維あるいは繊維を含む用語(例えば“繊維方向”等)において、繊維とは強化繊維を表すものとする。
【0022】
本発明に用いるシート基材3は、強化繊維1が一方向に配列しており、厚みHが30〜300μmの範囲内である。本発明では、図1に示すように、前記シート基材3を繊維配列方向2に送り、前記シート基材3に刃6を配置した抜き型7を間欠的に押し当て、前記刃6を前記シート基材3に間欠的に進入させて、断続的な切込8を挿入する。このとき、図3(A)に示す前記切込8の繊維直交方向成分Ws54を30μm〜100mmの範囲内とし、実質的にすべての強化繊維1の繊維長さL(34)を10〜100mmの範囲内とする切込シート基材を製造する。このようにして得られた切込シート基材の積層体は、切込シート基材そのものが樹脂を含んだものである場合は、当該積層体単独もしくはさらに同種または異種の樹脂を付与することで、切込シート基材が樹脂を含まないドライな基材である場合は、当該積層体に樹脂を付与することで、プレス成形などを用いて成形する際に高い流動性を発揮することができ、また成形によって得られた繊維強化プラスチックは従来SMC材料よりも高い弾性率、強度を発揮することができる。なお、本発明において“実質的にすべての強化繊維の繊維長さLを10〜100mmの範囲内とする”とは、切込シート基材に含まれる強化繊維のうち、繊維長さLが10〜100mmの範囲内である繊維本数が、切込シート基材全体に占める割合の90%以上であることを示す。また、“切込の繊維直交方向成分Ws”とは、図3(A)に示した切込シート基材内の切込の拡大図において、切込8をシート基材3の繊維直交方向4を投影面として、切込8から該投影面に垂直(繊維配列方向2)に投影した際の長さ54を指す。
【0023】
本発明に用いるシート基材の厚みHは、30〜300μmの範囲である必要がある。本発明は切込を有するため、分断されるシート基材の層厚みが大きければ大きいほど切込部、つまり欠陥のサイズが大きくなり、強度が低下する傾向がある。そのため、構造材に適用することを前提とするならば、Hは300μm以下である必要がある。一方、Hが30μmより小さくなるような、極めて薄いシート基材を安定的に製造するのはプロセス上困難である。そのため、低コストに本発明の効果を得るには好ましくは30μm以上であることを必要とする。力学特性とコストとの関係を鑑みるとさらに好ましくは、50〜150μmの範囲内である。
【0024】
本発明において、シート基材の全面に断続的な切込を挿入し、切込シート基材を製造するにあたり、切込シート基材中の実質的にすべての強化繊維の繊維長さLを100mm以下とすることにより、成形時に繊維は流動可能、特に繊維の配列方向にも流動可能となり、複雑な形状の成形追従性にも優れる。該切込がない場合、すなわち連続繊維のみの場合、繊維の配列方向には流動しないため、複雑形状を形成することは出来ない。一方で繊維長さLを10mm未満にすると、さらに流動性が向上するが、他の要件を満たしても構造材として必要な高力学特性は得られない。好ましくは、10mm以下の繊維が配列している面積が、シート基材面積に占める割合の5%より小さいのがよい。流動性と力学特性との関係を鑑みると、さらに好ましくは20〜60mmの範囲内である。
【0025】
本発明において、シート基材に挿入された切込により生成された繊維束端部は、繊維強化プラスチックにおいては、荷重が加わったときに応力集中が起こり、破壊の起点となる可能性が高い。したがって、強化繊維をできるだけ分断しない方が強度上有利である。切込の繊維直交方向成分Wsが100mmより大きい場合には強度は一定となる。力学特性の観点から好ましくは、Wsが1.5mm以下とすると、強度向上が著しい。一方で、Wsが30μmより小さくなると、抜き型をシート基材に押し当てた際に刃から繊維が逃げやすく、切込の位置制御が難しいため、シート基材全面に渡って強化繊維の繊維長さLが10〜100mmとなるよう、保障することが難しい。すなわち、設計通りに分断されない繊維が存在すると基材の流動性は著しく低下するが、切込長さを過剰に長くとると、繊維長さLが10mmを下回る部位が多くなってしまう、という問題点がある。好ましくはWsを1mm以上とすることにより、簡易な装置で切込を挿入することができる。逆に、Wsが10mmより大きいときにはほぼ強度が一定に落ち着く。すなわち、繊維束端部がある一定以上に大きくなると、破壊が始まる荷重がほぼ同等となる。Wsが1.5mm以下であるときに、強度向上が著しくさらに好ましい。すなわち、簡易な装置で切込を挿入することができるという観点からは、Wsは1〜10mmであることが好ましく、一方、切込の制御のしやすさと力学特性との関係を鑑みると、Wsは30μm〜1.5mmであることが好ましく、さらに好ましくは50μm〜1mmの範囲内である。
【0026】
シート基材に断続的な切込を挿入する代表的な方法としては、次の3つが考えられる。1つ目は、カッターナイフのような一枚刃を用いて手作業で切込を挿入したり、自動裁断機(指定したCAD図面に沿って切り刃や丸刃を移動させ、基材を裁断する装置)を用いてシート基材に切込を挿入したりするカッター法である。2つ目は、予め刃を配置した回転ローラーに連続的にシート基材を押し当てることにより、シート基材に切込を挿入する回転刃法である。3つ目は、プレス機(昇降機)を用いて、シート基材に刃を配置した抜き型を押し当てることによって、シート基材に切込を挿入する押切法である。カッター法は、簡易的にシート基材に切込を入れる場合には適しているが、切込の数が多くなればなるほど切込の挿入にかかる時間が長くなり、量産には向かない。回転刃法は、切込の挿入速度は速く設定できるが、断続的な切込を入れるために回転ローラーの曲面上に1つ1つの切込に対応する刃を精度良く位置決めして設けるのが困難である。一方、押切法は、1回のプレスにより多量の切込を一度にシート基材に挿入することができるなど生産効率もよく、抜き型の加工も容易であるため、シート基材に断続的な切込を挿入する方法として最適である。なお、押切法において抜き型をプレス機に取り付ける方法としては、例えば、刃を土台となる木型などに埋め込み、抜き型としてプレス機に取り付けるのが好ましい。この手法を用いれば、抜き型の作製が容易であり、また刃の突出量などを簡単に調整することもできる。本発明はこの押切法を用いたものである。
【0027】
本発明は、シート基材を繊維配列方向に送り、シート基材に刃を配置した抜き型を間欠的に押し当てることによって、シート基材に切込を挿入する。繊維配列方向にシート基材を送ることで、繊維に張力をかけてシート基材を搬送でき、安定してシート基材を扱うことができる。また、シート基材を繊維配列方向に送りながら、間欠的に抜き型をシート基材に押し当てることにより、連続的に切込シート基材を製造できる。ここで、間欠的に抜き型をシート基材に押し当てる際、シート基材が常に移動していてもよいし、刃と基材が接触しているときのみ停止させ、それ以外の時間にシート基材を移動させる手段をとってもよい。前者には、裁断時に刃にかかる負荷が大きくなるが、裁断速度を高く設定できるというメリットがある。また、後者には、裁断速度は遅いが、刃にかかる負担は軽減でき、安定的に切込シート基材を量産することが出来るというメリットがある。
【0028】
さらに、本発明の製造方法を用いることにより奏される画期的な効果として、間欠的に抜き型を押し当てることで、一度に挿入する切込の量を減らすことができ、切込の挿入に必要な荷重も小さく抑えられる点がある。例として、図4(A)のようなパターンの切込8をシート基材3に挿入する場合を考える。仮に、このパターンの切込8を1回抜き型をシート基材3に押し当てる(以降、“プレス”と記す)だけで挿入しようとする場合、一度に挿入する切込8の量が多いため、繊維を分断するために大きな荷重が必要となる。そのため、一気に切込を挿入するのに十分な荷重を負荷することのできるプレス機を導入しようとすれば、プレス機が大型化し、生産コストが高騰するとともに、昇降速度が低下する。しかし、一度にすべての切込を挿入するのではなく、1回目のプレスでは図4(B)の実線部10、2回目のプレスでは点線部11を裁断するといったように、1回のプレスで挿入する切込8の本数を少なくし、複数回のプレスで切込8の挿入を行えば、一度に挿入する切込8の量が少なくなり、プレス機に要求される負荷荷重も小さく抑えられる。これに伴い、切込8の挿入に用いるプレス機も小さくすることができ、生産コストの低減につながるとともに、昇降速度を早くすることができ、切込シート基材の製造速度が向上する。また、供給するシート基材は1枚でもよいが、複数枚のシート基材を重ねることで、一気に複数枚の切込シート基材を製造することが出来る。
【0029】
さらに、間欠的にプレスすることによって切込を挿入するメリットとしては、抜き型に配置する刃の密度を低く抑えることができるという点も挙げられる。たとえば、図4(B)の実線部のように一回のプレスによって同時に挿入される切込が密集している場合、各切込に対応するようにそれぞれ独立した刃を抜き型に配置しようとすれば、各刃同士の距離が短いため、刃を配置する作業が困難となる場合がある。その場合、図4(B)のように、一度に挿入する切込を狭い領域に密集させるのではなく、好ましくは、例えば、図4(C)の実線部のように、一度に挿入する切込が密集しないように抜き型を設計するのがよい。図4(B)と図4(C)は異なる抜き型を用いて切込8を挿入した例であるが、シート基材3を矢印12の量だけ移動させることによって、いずれの抜き型を用いた場合にも、図4(A)に示すパターンの切込を挿入することが可能となる。このように抜き型を設計することにより、より簡易かつ安価に抜き型を作製することが可能となる。このように、刃の密度を低く抑えることができるという点も、本発明により奏される画期的な効果のひとつである。
【0030】
本発明に用いる抜き型としては、挿入したい切込毎に独立した刃を配置してもよいが、複数のカット部が一体となる刃を用いるのがよい。ここで“カット部”とは、図2B)に示すように、抜き型7に設けられた刃6の領域であり、シート基材3に切込を挿入する際に、シート基材3に進入するか、あるいはシート基材3を貫通する領域を指す。図2に切込挿入時のシート基材と刃とを模式的に示したが、本発明に定義するカット部は図2の斜線部にあたる。シート基材に挿入する切込をそれぞれ独立した刃で作製しようとした場合、非常に多くの刃をそれぞれ抜き型に配置する必要があるため、刃の取り付けに時間がかかる。また、切込シート基材においては、切込の位置精度が成形時の流動性や成形品の力学強度に大きく影響を与えるため、抜き型に刃を精度よく配置することが重要となる。したがって、取り付ける刃の数が多ければ多いほど、高精度に刃の位置調整をするにあたって、多くの時間がかかる。一方、予め複数のカット部が一体となる刃を用いれば、刃を抜き型に取り付ける回数を大幅に減少することが出来る。複数のカット部が一体となる刃の例としては、金属塊から切削により複数の鋭凸部を削りだした彫刻刃、金属塊をエッチング処理、その後機械加工するなどして得られる腐食刃、板状の刃であって、端部に複数の鋭凸部が設けられたミシン刃などが挙げられる。
【0031】
本発明において、所望のパターンの切込をシート基材に挿入する手段としては、次の2つの方法が有効である。ここで、図23(A)、(B)には、本発明における切込シート基材を製造方法の一例を示しており、また図23(C)、(D)には、それぞれの手法を用いて作製された切込シート基材の一例を示している。まず1つ目の手段としては、抜き型をシート基材に押し当てる方向(以下、押当方向と称する)に、抜き型に含まれる刃の刃先の稜線をシート基材3に投影した投影線を投影線O(59)としたとき、図23(C)に示すように、前記投影線O(59)と所望の切込パターンとが一致し、かつ図23(A)に示すように、前記刃の側面が前記押当方向に対して平行となるように刃を抜き型に配置する方法である。このようにして作製された抜き型をシート基材に押し当てることによって、所望のパターンの切込を前記シート基材に挿入することができる。2つ目は、図23(D)に示すように、所望とする切込のパターンが前記投影線O(59)上にあり、かつ、図23(B)のように、刃先に向かうにつれて先細りとなる刃を抜き型に配置し、所望のパターンの切込が挿入される位置まで前記抜き型をシート基材に押し当てる方法である。前者では、刃の刃先がシート基材を貫通しさえすれば、抜き型を押し当てる量を任意にとることができるというメリットがある。一方、後者では、抜き型をシート基材に押し当てる量を制御しなければならないが、基材を裁断するうちに刃が劣化し、シート基材を適切に裁断できず連続繊維が残るようになった場合、抜き型をシート基材に押し当てる量を多くするだけで連続繊維を残すことなく基材を裁断することができるというメリットがある。なお、図23(C)、(D)に示すように、前記押当方向に、抜き型に含まれるすべてのカット部の稜線をシート基材3に投影した投影線を投影線Aとしたとき、いずれの手法を用いた場合であっても投影線Aと切込は一致する。
【0032】
本発明において、切込の繊維直交方向成分Wsを30μm〜100mmの範囲内とする手段としては、前記投影線Aの繊維直交方向成分Ws’が30μm〜100mmの範囲内となるように、抜き型をシート基材に押し当てるのがよい。本発明では、基材の裁断時に基材自身の大きな変形を伴わず、また強化繊維の配列方向に基材を送る。そのため、本発明の製造方法では、図3(A)と図3(B)の関係のように、投影線Aのパターンがそのまま切込8の形状となる。したがって、前記投影線Aの繊維直交成分Ws’の値を30μm〜100mmの範囲内とすることによって、同時に切込の繊維直交成分Wsを30μm〜100mmの範囲内とすることが可能となる。
【0033】
さらに本発明において、実質的にすべての強化繊維の繊維長さLを10〜100mmの範囲内とする具体的な手段としては、次の方法が好ましい。すなわち、図5(A)に示すように、前記投影線A(47)を、さらに繊維配列方向2に、同じ繊維直交面48に投影して得た投影線B(13)同士が実質的にすべて連結するように抜き型をシート基材に押し当てるのがよい。図5(A)、図5(B)に、前記投影線A(47)および該投影線A(47)を繊維配列方向2に同じ繊維直交面48に投影した投影線B(13)を示す。図5(A)に示すように、前記投影線B(13)がすべて連結するように抜き型に刃を配置し、該抜き型をシート基材に押し当てる場合は、シート基材3を繊維配列方向2に送るに際し、前記カット部を強化繊維の配列方向2に10〜100mmの間隔でシート基材3に押し当てることによって、シート基材3内の強化繊維を10〜100mmの範囲に分断することが可能である。一方、投影線B(13)同士が「実質的に」すべて連結する、とあるように、その一部が連結されていない場合であっても本発明の範囲に含まれる場合があるが、かかる場合については、以下に説明するとおりである。すなわち、図5(B)に示すように、投影線B(13)に不連結部14が存在する場合、何度抜き型をシート基材3に押し当てたとしても、該箇所を通る繊維は切断されることなく連続繊維として存在することになる。その結果、切込シート基材は、十分な流動性を発揮することができない。ただし、この不連結部の幅15が0.5mm以下で、若干連続繊維が残る程度であれば、切込シート基材は良好な流動性を発揮することができる。すなわち、本発明における“投影線B同士が実質的にすべて連結する”とは、投影線Bをすべて重ね合わせたときに、0.5mmより大きな隙間が存在しないことを指す。好ましくは、不連結部の幅15が0.1mm以下とするのがよく、さらに好ましくは完全に不連結部が存在しない、すなわち連続繊維がまったく存在しないのが最もよい。
【0034】
前述の通り、図3(A)に示すように、切込の繊維直交方向成分Ws(54)は、切込シート基材3において切込8により分断される繊維量を示しており、好ましくは、Wsが1.5mm以下とすると、強度向上が著しい。Wsを小さくする、すなわち前記投影線分A(47)の繊維直交方向成分Ws’(5)を小さくする手段としては、まずカット部の長さW(19)を小さくする方法が考えられる。ここで、カット部の長さW(19)は、抜き型をシート基材に押し当てる方向に、カット部の稜線9をシート基材3に投影した投影線分A(47)の長さを示し、曲線の場合は図2(A)の右に示すように該投影線Aに沿った長さを示す。しかし、極度にカット部の長さWが小さいと刃が細かくなるため耐久性が低下し、裁断時に刃が破損し易くなる。裁断時の刃の破損を抑制するためには、カット部の長さWを100μm以上とすることが好ましい。また、Wsを小さくするもうひとつの手段としては、投影線Aと繊維配列方向とのなす角(絶対値)をθとしたとき、θが鋭角となるように刃をシート基材に押し当てるという方法がある。なお、本発明においては、図3(B)に示すように、投影線Aが曲線の場合は、投影線A上の点で繊維配列方向とのなす角が最大となる点における角をθとする。これによって、カット部の長さWが同じであっても、θを小さくすることにより、Ws(Ws’)の値も小さく抑えることが可能となる。その結果、この切込シート基材を用いて成形された繊維強化プラスチックの力学強度も向上する。
【0035】
また、θが鋭角となるように刃をシート基材に押し当てることによって、切込シート基材の成形品内の樹脂リッチ部を小さくすることもできる。図6(A)にθを90°とした場合の切込シート基材の模式図を、図6(B)にプレス成形によって得られた該切込シート基材の成形体の一部を示す。前記切込シート基材3をプレス成形した際、まず、図6(A)の切込8が開口し、繊維が強化繊維の配列方向2に移動しようとする。さらに、切込8の開口に伴い、開口部に樹脂が流入するが、これと同時に開口部と繊維直交方向4に隣接する強化繊維も若干同開口部に流入することになる。その結果、図6(B)に示すように、繊維端部近傍に繊維を含まない領域、すなわち樹脂リッチ部16が生成されることになる。繊維強化プラスチックでは、負荷された荷重のほとんどを繊維が負担するため、樹脂リッチ部近傍で応力集中が起こり、破壊の起点となり易い。一方、θを鋭角とした場合の切込シート基材の模式図を図7(A)に、プレス成形によって得られた該切込シート基材の成形体の一部を図7(B)に、前記成形体の開口部の拡大図を図7(C)に示す。θが鋭角となる切込シート基材3をプレス成形した場合、まず、θ=90°の成形品同様に、切込部8が開口しようとする。しかし、θが鋭角の場合は、切込が開口する際に開口部の繊維配列方向2の長さ17が大きくなるために、開口部に繊維直交方向4から繊維が流入し易くなる。さらに開口部の繊維直交方向4の長さ(Ws)も小さくなることも合わさり、樹脂リッチ部16の面積が小さくなる。さらに、θが鋭角となるように刃をシート基材に押し当てることによって、抜き型を強化繊維に押し付けた際に刃から強化繊維が逃げにくくなり、生産安定性が増す。すなわち、シート基材に含まれる強化繊維は、繊維配列方向にはほとんど変形しないが、繊維直交方向には蛇行し易く、刃から逃れようとするため、投影線Aと強化繊維の直交方向が揃う場合、カットミスが発生し易い。
【0036】
以上のように、θが鋭角となるように刃をシート基材に押し当てることは、得られた切込シート基材の力学特性の観点からも、製造プロセスの観点からも都合がよい。特に、θが60°以下であれば、刃から強化繊維が逃げにくくなる。さらに強度的な側面も鑑みると、好ましくは、θが45°以下、さらに好ましくは30°以下である。一方で、θが2°より小さくても流動性も力学特性も十分得ることが出来るが、切込を安定して挿入することが難しくなる。すなわち、繊維に対して切込が寝てくると、繊維間を刃が裂きやすくなる。また、繊維長さLを100mm以下とするためには、θが2°より小さいと少なくとも切込同士の最短距離が1.8mmより小さくなる。切込が多く挿入されることで、切込シート基材が形状を維持しにくくなり、取り扱い性に欠ける場合がある。
【0037】
前述のように、カット部の長さWを短くすることと、投影線Aを基材配列方向に対して斜めとなるように刃を抜き型に配置することの2つの手段によって、切込の繊維直交方向成分Wsを小さくすることができ、切込シート基材を用いた成形体を高強度化できる。しかし、前述のように、カット部の長さWが極端に短い、あるいは投影線Aと繊維配列方向とのなす角θがあまりに小さい場合、生産安定性に欠ける可能性がある。その場合は、これら2つの手段を同時に行うことが好ましく、これにより切込の繊維直交方向成分Wsの値をさらに小さくし、さらに強度を向上することが出来る。
【0038】
本発明の製造方法では、前述のように、彫刻刃、腐食刃、ミシン刃など、様々な刃を抜き型に配置することができる。その中でも、ミシン刃を用いるのが特に好ましい。一般的にミシン刃は、紙などに破線状の切込を挿入する際用いられる。この際、前記破線状の切込は、指定された線に沿って手で容易に裁断できるよう設計される。このミシン刃の形状に着目し、ミシン刃を一方向に配列した強化繊維を含むシート基材に断続的な切込を挿入するためのカット部として用いたことが、本発明の大きな特徴のひとつである。ミシン刃は、腐食刃、彫刻刃と比較しても、工業的にも安価に製造することが可能である。また、腐食刃では製法上の都合から高硬度な材料を使用することができないが、ミシン刃は鍛造のブレードに切り欠き加工することでも得られるため、より高硬度な材料を使用することが可能であり、耐久性に優れている。
【0039】
さらに好ましくは、本発明は平板状のミシン刃を用いるのがよい。ミシン刃を繊維配列方向に対して斜めに配置したり(前記投影線Aを繊維配列方向に対して斜めとする)、鋭凸部の大きさ、間隔を小さくすれば効果的に切込の繊維直交方向成分Wsを小さくすることができ、非常に容易かつ安価に抜き型を作製することができる。なお、仮にミシン刃を回転刃法に適用した場合、刃を取り付ける回転ローラーが湾曲しているため、本発明のようにミシン刃を繊維配列方向に対して斜めに配置するだけでは切込の繊維直交方向成分Wsを小さくすることができない。そのため、回転刃法では削り出しやエッチングといった手法により刃をローラー上に設けざるを得ず、製造コストが高くなる。
【0040】
ここで、本発明に好適に用いられるミシン刃の例を図8に示す。例えばミシン刃は、図8(A)のように、平面状のミシン刃であり、溝部が所定ピッチで削りだされているのがよい。その他、図8(B)のように、平板状のミシン刃であり、刃先が山・谷・山・谷の波型形状となっているもの、図8(C)、(D)のように、刃が平面状ではなく、面外方向に波状となっているものなどが好ましく用いられる。いずれの刃を用いても本発明を実施することは可能であるが、加工の容易性、コスト面を鑑みると、図8(A)の平板状のミシン刃が最も適している。また、ミシン刃を作製する具体的な方法としては、刃先を機械加工した連続刃またはエッチング刃(連続刃)にローレットを押し付ける方法、あるいは、刃先加工を行った連続刃を、工作機械を用いて所定ピッチで分割する方法などがある。
【0041】
前述の通り、本発明の切込シート基材を用いた成形体の力学強度は、前記投影線Aと繊維配列方向との角θに強く依存する。そのため、θが場所によって異なる場合、力学物性が不均一となり設計が困難となる。したがって、ミシン刃が平面状であり、かつ該ミシン刃を互いに平行に抜き型に配置するのが好ましい。
【0042】
また、前記ミシン刃の一部であり、切込を挿入する際に基材を貫通あるいは基材に進入する部位をカット部とし、同一ミシン刃内で隣接するカット部間の距離をカット部間距離bとしたときに、前記カット部の長さWおよびカット部間距離bがそれぞれ一定となるように前記抜き型をシート基材に押し当てるのが好ましい。ミシン刃のカット部の長さWと前記カット部間距離bが場所毎に異なる場合も、切込シート基材内の切込長さが場所毎に異なることになり、それに伴い材料の物性も変化する。そこで、カット部の長さWと前記カット部間距離bを、それぞれ一定とするのが好ましい。これにより、力学物性が均一となり、設計も容易となる。なお、本発明における前記カット部間距離bとは、図9に示すように、ミシン刃18において隣接するカット部46間の最小直線長さb(20)を指す。
【0043】
本発明では、抜き型を前記シート基材に押し当てる方向に、前記投影線Aを、繊維配列方向に、同じ繊維直交面に投影して得た投影線B同士が、互いに端部のみで連結するように、かつシート基材を繊維配列方向に10〜100mm移動するごとに抜き型をシート基材に押し当て、シート基材の裁断を行うのがよい。これにより、抜き型内でカット部が繊維配列方向に重複する箇所がなくなり、基材の裁断に使用する刃の量を最小限とすることができる。さらに、設計したい切込シート基材に含まれる強化繊維の繊維長さL分だけ、シート基材を繊維配列方向に移動しては、抜き型をシート基材に押し当てることによって、所定の繊維長さLを得ることができる。前述のように、抜き型に配置する刃の量を少なくすることで一度に挿入する切込の量が少なくなり、切込の挿入に必要な荷重も小さく抑えられる。本発明において、“投影線B同士が、互いに端部のみで連結する”とは、任意の投影線Bを投影線B1とし、その線分の長さをWs1、それに隣接する投影線Bを投影線B2とし、その線分の長さをWs2としたとき、両線分の共通部分の長さが(Ws1+Ws2)×0.1以下であることを指す。
【0044】
さらに好ましい手段としては、平板状のミシン刃を抜き型に平行に配置するにあたり、前記カット部間距離bに対するカット部の長さWの比(W/b)が1〜1.5の範囲内であり、投影線B同士が、互いに端部のみで連結するように、前記シート基材を繊維配列方向に10〜100mm移動させる毎に、前記抜き型を前記シート基材に押し当てるのが好ましい。一例を挙げると、抜き型を図10(A)に、また抜き型を用いて作製された切込シート基材を図10(B)に示す。このとき、シート基材の送り量は強化繊維の繊維長さLに相当する。これにより、シート基材の強化繊維の繊維長さを一定とすることができ、また使用する刃の量を最小限に抑えることができる。設計した繊維長さL以下の強化繊維を出来るだけ少なくするという観点からは、好ましくは前記カット部間距離bに対するカット部の長さWの比が1〜1.1の範囲内であるのがよい。
【0045】
さらに好ましくは、切込シート基材に含まれるすべての強化繊維の繊維長さLが一定であり、かつミシン刃同士を繊維配列方向に1.5L以上離して抜き型に配置するのが良い。図10(B)のような繊維配列方向から傾いた直線状の切込8をミシン刃を用いて挿入する場合、直線状に並んだ切込8の列(すなわち、ミシン刃によって一度に挿入される断続的な切込)同士の距離が小さくなる傾向にある。図10(A)のように、直線状に並んだ切込の列に対応するようにミシン刃18を用意すると、ミシン刃18同士の距離が小さくなり、ミシン刃18の抜き型への配置が難しくなる。また抜き型をシート基材に押し付ける際、荷重が局所化することで、抜き型が傾きやすい。シート基材を繊維配列方向にLずつ送りながら、間欠的に切込8を挿入するにあたり、ミシン刃同士を繊維配列方向に(0.5+n)L(ただし、nは0以上の整数)ずらして抜き型に配置することで、図10(B)のような切込を挿入できる。そこで、nを自然数とする、すなわち、ミシン刃同士を繊維配列方向に1.5L以上はなして抜き型に配置することで、容易にミシン刃を抜き型に配置し、バランスよく抜き型をシート基材に押し当てることが可能となる。
【0046】
本発明においては、ミシン刃を繊維配列方向と傾けて設ける場合、図10(A)に示すように、最小2枚のミシン刃で実施可能であるが、1枚あたりのミシン刃の長さが大きくなり、同時に抜き型もかなり長いものとなってしまうため、経済的ではない。そこで、図11に示すように、図10(A)のミシン刃を複数に分割し、それらを繊維直交方向にずらして配置するのがよい。これにより、抜き型の基材送り方向の長さを小さく抑えることができ、必要とされるプレス機(昇降機)も小さくなり、生産コストを低減させることができるとともに、昇降速度も向上する。
【0047】
本発明の切込シート基材に用いられる強化繊維としては、例えば、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリパラフェニレンベンズオキサドール(PBO)繊維などの有機繊維、ガラス繊維、炭素繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、チラノ繊維、玄武岩繊維、セラミックス繊維などの無機繊維、ステンレス繊維やスチール繊維などの金属繊維、その他、ボロン繊維、天然繊維、変性した天然繊維など、およびそれら2種類以上を混繊したものが挙げられる。その中でも特に炭素繊維は、これら強化繊維の中でも軽量であり、しかも比強度および比弾性率において特に優れた性質を有しており、さらに耐熱性や耐薬品性にも優れていることから、軽量化が望まれる自動車パネルなどの部材に好適である。なかでも、高強度の炭素繊維が得られやすいPAN系炭素繊維が好ましい。
【0048】
本発明で用いるシート基材としては、強化繊維とマトリックス樹脂からなるプリプレグ基材を用いるのが好ましい。シート基材が強化繊維のみからなる場合、裁断時に基材がばらけ易く、安定的に裁断を行うことが困難な場合がある。プリプレグ基材であれば、強化繊維の周囲が樹脂によって満たされているため、基材裁断時に強化繊維がばらけることなく、安定的に切込シート基材を作製することが可能となる。プリプレグ基材の樹脂の量としては、繊維体積含有率Vfが65%以下であれば、十分な流動性を得ることができる。Vfが低いほど流動性は向上するが、Vfが45%より小さくなると、構造材に必要な高力学特性は得られない。流動性と力学特性との関係を鑑みると、さらに好ましくは50〜60%の範囲内である。
【0049】
本発明に用いるプリプレグ基材に用いられるマトリックス樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、フェノキシ樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、マレイミド樹脂、シアネート樹脂などの熱硬化性樹脂や、ポリアミド、ポリアセタール、ポリアクリレート、ポリスルフォン、ABS、ポリエステル、アクリル、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリマー、塩ビ、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系樹脂、シリコーンなどの熱可塑性樹脂が挙げられる。その中でも特に熱硬化性樹脂を用いるのが好ましい。マトリックス樹脂が熱硬化性樹脂であることにより、切込プリプレグ基材は室温においてタック性を有しているため、該基材を積層した際に上下の該基材と粘着により一体化され、意図したとおりの積層構成を保ったままで成形することができる。
【0050】
さらに、本発明により製造された熱硬化性樹脂から構成される切込プリプレグ基材は、室温において優れたドレープ性を有するため、例えば、凹凸部を有する型を用いて成形する場合、予めその凹凸に沿わした予備賦形を容易に行うことが出来る。この予備賦形により成形性は向上し、流動の制御も容易になる。
【0051】
さらに好ましくは熱硬化性樹脂の中でも、エポキシ樹脂や不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂等や、それらの混合樹脂がよい。これらの樹脂の常温(25℃)における樹脂粘度としては、1×10Pa・s以下であることが好ましく、この範囲内であれば本発明を満たすタック性およびドレープ性を有するプリプレグ基材を得ることができる。中でもエポキシ樹脂は炭素繊維と組み合わせて得られる強化繊維複合材料としての力学特性に最も優れている。
【0052】
切込プリプレグ基材は、切込が多くなればなるほど、また切込が長ければ長いほど、切込プリプレグ基材の剛性が低下し、基材が変形し易くなる。これによって、積層作業時に切込プリプレグ基材を持ち上げた際、切込プリプレグ基材の形状が崩れるなど、取り扱いが難しくなる。そのような問題を回避するために、図12に示すように、前記プリプレグ基材28において抜き型7を押し当てる側とは反対側をテープ状支持体29によって把持し、テープ状支持体29を残したままプリプレグ基材28のみを裁断する、いわゆるハーフカットを実施するのがよい。これにより、切込の量が多くても、テープ状支持体が切込プリプレグ基材の変形を抑制するため、基材の取り扱い性が大幅に向上する。ここで、テープ状支持体とは、クラフト紙などの紙類やポリエチレン・ポリプロピレンなどのポリマーフィルム類、アルミなどの金属箔類などが挙げられ、さらに樹脂との離型性を得るために、シリコーン系や“テフロン(登録商標)”系の離型剤や金属蒸着等を表面に付与しても構わない。このとき、カット部46の先端30がプリプレグ基材28に進入する量としては、カット部46の先端30の進入する量がプリプレグ基材28をちょうど切断する深さであってもよいが、この場合、幾多の裁断によってカット部46が磨耗すると、切り残しが多発する可能性がある。カット部46がプリプレグ基材28を貫通し、テープ状支持体29の一部のみ侵入するのがよい。さらに、テープ状支持体29の厚みとしては、厚みが大きいと材料コストが増し経済的ではない。しかし、厚みが薄すぎると、プリプレグ基材28に抜き型7を押し当てた際に、カット部46の先端30をテープ状支持体29の内部に留めることが難しくなる。その結果、カット部46の先端30がテープ状支持体29を完全に貫通した場合には、切込プリプレグ基材の取り扱い性が低下し、カット部の先端がテープ状支持体に到達しなかった場合には、繊維を切断することができず、切込プリプレグ基材中に連続繊維が残り、成形時の流動性が低下する。そのため、テープ状支持体29の厚みは30〜300μmが好ましく、さらに好ましくは50〜200μmである。
【実施例】
【0053】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、実施例に記載の発明に限定されるというものではない。
【0054】
<刃数の比較(実施例1〜2)>
(実施例1):抜き型中の各カット部をすべて独立した刃で構成
すべて独立した刃で構成された抜き型を用いて、切込シート基材の製造を行った。
【0055】
使用した基材は、以下の手順により得られたプリプレグ基材である。エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製“エピコート(登録商標)”828:30重量部、“エピコート(登録商標)”1001:35重量部、“エピコート(登録商標)”154:35重量部)に、熱可塑性樹脂ポリビニルホルマール(チッソ(株)製“ビニレック(登録商標)”K)5重量部をニーダーで加熱混練してポリビニルホルマールを均一に溶解させた後、硬化剤ジシアンジアミド(ジャパンエポキシレジン(株)製DICY7)3.5重量部と、硬化促進剤3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチルウレア(保土谷化学工業(株)製DCMU99)4重量部を、ニーダーで混練して未硬化のエポキシ樹脂組成物を調整した。このエポキシ樹脂組成物を、リバースロールコーターを用いてシリコーンコーティング処理された厚さ100μmの離型紙上に塗布して樹脂フィルムを作製した。次に、一方向に配列させた炭素繊維(引張強度4,900MPa、引張弾性率235GPa)の両面に樹脂フィルムをそれぞれ重ね、加熱・加圧することによって樹脂を含浸させ、単位面積あたりの炭素繊維重さ125g/m、繊維体積含有率Vf55%、厚み0.125mmのプリプレグ基材を作製した。
【0056】
前記手段によって得られたプリプレグ基材に、本発明の製造方法により図13に示すような切込を連続的に挿入することによって、等間隔で規則的な切込を有する切込プリプレグ基材を得た。図13は、切込プリプレグ基材の一領域の切込パターンを示したものである。切込の方向は繊維直交方向4で、切込長さW(33)は5mm(すなわち、切込の繊維直交方向成分Ws=5mm)であり、間隔L(繊維長さ)34は30mmである。また、隣り合う切込の列35aと35bは繊維直交方向に5mm移動すると、幾何的に同等である。また、繊維長手方向に対になる切込の列には、35aと35c、35bと35dの組があり、切込の列のパターンは2パターン存在した。本発明に使用した抜き型は、図14に示すように、500mm×500mm×15mmのベニヤ板36を土台として、前記ベニヤ板の中央300mm×300mmの領域37に、図14(A)に示す幅5mm、長さ20mmの矩形状の刃を図13に示した切込パターンと抜き型をシート基材に押し当てる方向(シート基材に垂直)に、前記刃の稜線をシート基材に投影した投影線分Aが一致するように配置した。このとき、刃のベニヤ板からの突出量は5mmとした。また、使用した刃の総数は約600個であり、前記稜線の長さの総長は約3mであった。図14(B)に前記抜き型の模式図を示す。この抜き型を油圧式プレス機に取り付け、1回のプレスあたり300mmずつ基材を送りながら、1分間に30回の速度でプリプレグ基材に離型紙とは反対側から垂直に前記抜き型を押し当て、切込プリプレグ基材を作製した。このとき、基材の送り方向と、強化繊維の配列方向が一致するように、プリプレグ基材をプレス機に9m/分の一定速度で供給した。これにより、9m/分の速度で切込プリプレグ基材を作製することができ、本手法が切込シート基材を量産化する上で十分な製造速度を発揮できることが確認できた。
【0057】
作製された切込プリプレグ基材を図15の点線部に示す繊維配列方向に11cm、繊維直交方向に2cmの矩形状に切り出し、これをNMP溶液(N-メチル−2−ピロリドン)に浸漬し、樹脂部を溶解させた。このとき、切込の端部が短冊状基材の中央に位置するように、前記短冊状基材を切り出した。1時間後、NMP溶液から前記短冊状基材を取り出し、前記短冊状基材を上質紙の上に平面状に並べ、光学顕微鏡で炭素繊維の画像撮影を行い、繊維の本数をカウントした。その結果、およそ2600本の連続繊維が確認された。なお、切込をまったく含まないプリプレグ基材についても同様の試験を行ったが、そのときの繊維本数はおよそ38000本であった。これより、連続繊維の存在する割合は約7%で、残り93%の繊維については繊維長さが100mm以下となるように裁断できており、本検討により実質的にすべての強化繊維が分断されていることが確認できた。なお、わずかに連続繊維が残った理由としては、一度にプリプレグ基材に押し当てる刃の総長が長いことから、圧力不足が生じ、このようにわずかに切り残しが発生したものと考えられる。
【0058】
このようにして作製された切込プリプレグ基材から、繊維配列方向と、繊維配列方向から45度ずらした方向に、それぞれ250×250mmの大きさに切り出した。切り出したプリプレグ基材を16層疑似等方([45/0/−45/90]2S)に積層し、300×300mmの金型上に配置した後、加熱型プレス成型機により、6MPaの加圧下、150℃×30分間の条件により硬化せしめ、300×300×1.7mmの平板状の成形体を得た。前記繊維強化プラスチックは繊維のうねりがなく、その端部まで繊維が均等に流動していた。切込プリプレグ基材の一部に連続繊維がわずかに存在していたためか、切込の端部に繊維配向方向に沿って筋状の模様が観察されたものの、この連続繊維によって流動が阻害している箇所は見られなかった。また、切込部は幅5mm、長さ5mm程度開口し樹脂リッチ部を形成しており、前記開口部からは内側の層の強化繊維を観察することができた。
【0059】
得られた平板状の成形体より、長さ250±1mm、幅25±0.2mmの引張強度試験片を切り出した。JIS K−7073(1988)「炭素繊維強化プラスチックの引張試験方法」に規定する試験方法に従い、標点間距離を150mmとし、クロスヘッド速度2.0mm/分で引張強度を測定した。なお、本実施例においては、試験機としてインストロン(登録商標)万能試験機4208型を用いた。測定した試験片の数はn=5とし、平均値を引張強度とした。引張試験を行った結果、その引張強度は430MPa、弾性率は44GPaと非常に高い値が発現した。
【0060】
(実施例2)
実施例1と比較して、抜き型に取り付ける刃の量を減らして、切込プリプレグ基材の製造を行った。具体的には、抜き型に刃を取り付ける領域37を、図16に示すように300mm×30mmとした。また、1回のプレスあたり30mmずつ基材を送りながら、1分間に90回の速度でプリプレグ基材に前記抜き型を押し当てた。これ以外の条件は、実施例1と同様にして切込プリプレグ基材を作製した。これにより、2.7m/分の速度で切込プリプレグ基材を作製した。このとき使用した刃の総数は約60個であり、刃の総長は約0.3mであった。
【0061】
作製された切込プリプレグ基材を、実施例1同様にNMP溶液に浸漬し、10cmを上回る強化繊維の本数をカウントした。その結果、短冊状の基材に含まれていた10cmより長い強化繊維の本数は1800本(約5%)であり、実質的にすべての炭素繊維が100mm以下に分断されていることが確認できた。また、実施例1と比べて切り残しの量が少なくなっているが、これは刃数を減らすことで、各刃にかかる圧力が大きくなったことによると考えられる。
【0062】
こうして得られた切込プリプレグ基材を実施例1と同様の手順で成形し、平板状の繊維強化プラスチックを得た。実施例1に比べ、切込端部での連続繊維の量が少なくなったためか、筋状の模様も観察されず、実施例1よりもさらに良好な表面品位を保っていた。
【0063】
<刃形態の検討(ミシン刃:実施例3)>
(実施例3)
抜き型に配置する刃をカット部の長さW5mm、カット部間距離b5mmのミシン刃とする以外は、実施例2と同様の手順により、切込プリプレグ基材の作製、評価を行った。実施例3で用いたミシン刃の模式図を図17(A)に示した。抜き型として、図17(B)に示すように、前記ミシン刃を繊維直交方向かつ15mm離して配置し、さらに互いのミシン刃の位相(カット部の長さWまたはカット部間距離b)が繊維直交方向に半位相(カット部の長さWまたはカット部間距離bの半分の長さ)ずれるように配置したものを使用した。実施例2では刃を60個抜き型に取り付ける必要があったのに比べ、実施例3では2枚のミシン刃を抜き型に設置するだけでよく、抜き型作製に要する時間を大幅に短縮することができた。
【0064】
作製された切込プリプレグ基材を、実施例1、2同様にNMP溶液に浸漬し、10cmを上回る強化繊維の本数をカウントした。その結果、短冊状の基材に含まれていた10cmより長い強化繊維の本数は1400本(約4%)であり、実質的にすべての炭素繊維が100mm以下に分断されていることが確認できた。また、実施例2と比べて切り残しの量が少なくなっているが、これはミシン刃を用いたことにより、カット部をより高精度に配置できたことによると考えられる。
【0065】
<投影長さWsの検討(実施例4〜7)>
(実施例4〜7)
実施例4〜7では、ミシン刃のカット部の長さWとカット部間距離bを変更する以外は、実施例3と同様にして、切込プリプレグ基材を作製、評価を行った。具体的には、ミシン刃のカット部の長さWとカット部間距離bを1:1とし、それらの長さを実施例4では10mm、実施例5では2.5mm、実施例6では1.3mm、実施例7では0.63mm、とした。ここで、実施例4〜7では、切込と繊維直交方向とが一致するため、切込の長さWは、切込の繊維直交方向成分Wsに一致する。
【0066】
各実施例において作製された切込プリプレグ基材を実施例1、2同様にNMP溶液に浸漬し、10cmを上回る強化繊維の本数をカウントした。その結果、短冊状の基材に含まれていた10cmより長い強化繊維の本数は、実施例4では1400本(約3%)、実施例5では1500本(約3%)、実施例6では1500本(約3%)、実施例7では1600本(約4%)であった。したがって、実質的にすべての炭素繊維が100mm以下に分断されていることが確認できた。
【0067】
作製された切込プリプレグ基材を前記手順に従い成形し、実施例1〜3同様に平板状の繊維強化プラスチックを得た。外観品位、樹脂リッチ部の大きさは、実施例4〜7いずれもほぼ実施例1〜3と同等となった。また、引張強度については、表2に示すように、実施例4では410MPa、実施例5では460MPa、実施例6では520MPa、実施例7では560MPaと切込長さWが小さくなるにつれて強度が向上することが示された。弾性率については、表2に示すとおりであるが、いずれの水準も43GPa前後であった。
【0068】
<切込角θの検討(実施例8〜10)>
(実施例8〜10)
実施例8〜10では、実施例4のミシン刃を繊維配列方向に対して傾けて配置する以外は、実施例4と同様に切込プリプレグ基材を作製、評価を行った。使用した抜き型は、カット部の長さWとカット部間距離bが共に10mmとなるミシン刃を、図18に示すように、互いに平行かつ強化繊維の配列方向に対してθ(39)傾けて配置したものである。図18において、上側に並んだミシン刃21同士、または下側に並んだミシン刃22同士は互いに同位相(カット部の繊維配列方向の座標が同じ)であり、また、繊維配列方向に隣接するミシン刃(21と22)は繊維直交方向に互いに半位相(カット部の繊維配向方向成分の半分)ずれている。抜き型に配置したミシン刃は、繊維直交方向に互いに同位相となるもの21と互いに同位相となるもの22に分類され、ミシン刃の集合体21とミシン刃の集合体22は、互いに繊維配列方向に15mm離れている。また、各ミシン刃の繊維直交方向の長さは50mmとする。角θについては、実施例8ではθ=60°、実施例9ではθ=30°、実施例10ではθ=10°とした。
【0069】
各実施例において作製された切込プリプレグ基材をこれまでの実施例同様にNMP溶液に浸漬し、10cmを上回る強化繊維の本数をカウントした。その結果、短冊状の基材に含まれていた10cmより長い強化繊維の本数は、実施例8では1000本(約3%)、実施例9では900本(約2%)、実施例10では800本(約2%)であった。したがって、実質的にすべての炭素繊維が100mm以下に分断されていることが確認できた。また、角θが小さくなるにつれて繊維の切り残し量も少なくなった。θが小さくなることで、刃から繊維が逃げにくくなり、このような差異が生まれたと考えられる。
【0070】
また、作製された切込プリプレグ基材を前記手順に従い成形し、実施例1〜4同様に平板状の繊維強化プラスチックを得た。繊維強化プラスチック表面を観察すると、実施例4のモデルでは、図6(B)のように、切込開口部16に繊維直交方向4から強化繊維1がほとんど流入しておらず、開口部の形状もおおよそ矩形状であった。しかし、実施例8、9、10とθが小さくなるにつれて、図7(B)のように、切込開口部16に繊維直交方向4から強化繊維1が流入し、切込開口部16の大きさも減少した。実施例10のθが10°の場合には、開口部はおおよそ曲線状であり、内側の層の繊維を確認することができず、高い表面品位を得た。また、引張強度については、表3に示すように、θが小さくなるにつれて、前記投影長さWsも小さくなり、さらには引張強度が向上することが確認できた。切込を繊維直交方向とは斜めに配置し、前記投影長さWsを小さくしたことにより、樹脂リッチ部を小さくできたことが、強度向上の一因であると考えられる。また、弾性率については表3に示すとおり43GPaと、これまでの実施例と同等であった。
【0071】
<刃間隔の検討(実施例11)>
(実施例11)
抜き型に配置する2枚のミシン刃の間隔を45mmとし、プレス1回あたりの基材の送り量を30mmとする以外は、実施例3と同様の手順により、切込プリプレグ基材の作製、評価を行った。実施例11で用いた抜き型は、図19に示すように、2本の前記ミシン刃を繊維直交方向かつ互いに45mm離して配置し、さらに互いのミシン刃の位相(カット部の長さWおよびカット部間距離b)が繊維直交方向に半位相(カット部の長さWまたはカット部間距離bの半分)ずれるように配置したものである。
【0072】
実施例1〜10では隣接する刃の間隔が短い(15mm以下)であったために、大型の工具が使用できず、刃の取り付けが困難であったが、本実施例では刃の間隔が45mmと広く、工具の制限なく刃の取り付けを行うことができた。
【0073】
作製された切込プリプレグ基材をこれまでの実施例同様にNMP溶液に浸漬し、10cmを上回る強化繊維の本数をカウントした。その結果、短冊状の基材に含まれていた10cmより長い強化繊維の本数は、1500本(約4%)であった。したがって、実質的にすべての炭素繊維が100mm以下に分断されていることが確認できた。
【0074】
さらに、作製された切込プリプレグ基材を前記手順に従い成形し、実施例3同様に平板状の繊維強化プラスチックを得た。外観品位、樹脂リッチ部の大きさは実施例3とほぼ同等であった。引張強度、弾性率については、それぞれ420MPa、43GPaと、いずれをとっても実施例3とほぼ同等であった。
【0075】
<使用基材の検討(実施例12)>
(実施例12)
使用する基材を一方向に炭素繊維を配列したシート基材(樹脂を含まない)とする以外は、実施例10と同様に切込を挿入し、切込シート基材を得た。本実施例で使用した基材は、炭素繊維を一方向に配列し、それをガラス繊維で織り込んだUD織物UT70−30(東レ(株)製)である。また、RTM用の樹脂としては、エポキシ樹脂である“エピコート807”(油化シェルエポキシ社製)70重量部、“エピコート630”(油化シェルエポキシ社製)30重量部とアミン硬化剤である“アンカミン2049”(パシフィックアンカーケミカル社製)43重量部を混合して得た液状エポキシ樹脂を用いた。裁断後の基材を観察すると、連続繊維が存在する箇所もなく、概ね順調に裁断を行うことができた。
【0076】
実施例1同様に、作製された切込シート基材から短冊状の基材を切り出し、10cmを上回る強化繊維の本数をカウントした(ただし、本実施例では樹脂を溶解する必要がないため、NMP溶液には浸漬する作業のみ省略した)。その結果、短冊状の基材に含まれていた10cmより長い強化繊維の本数は1800本(約5%)であり、実質的にすべての炭素繊維が100mm以下に分断されていることが確認できた。
【0077】
さらに前記基材の積層体に樹脂を注入して繊維強化プラスチックを得るVa−RTM成形を行った。使用した成形型は図20に示すように、立ち面高さ5cm、幅30cm、長さ20cmの凸部を有する成形型40を使用した。また、この成形型のR部44の曲率半径は10mmとした。この成形型の端部にナイロンチューブからなる注入口41と減圧口42を設け、成形材料を含む全体をバギングフィルムで上面を覆って密封した。このとき、金型に配置した基材は、前記切込シート基材を400mm×100mmに切り出し、基材の長手方向を0°として、16層疑似等方([45/0/−45/90]2S)に積層したものとした。さらに、この基材の長手方向と、金型の長手方向とが一致するように基材を金型に配置した。注入口41とエポキシ樹脂を入れたディスポカップが接続しており、減圧口42から真空ポンプで吸引を行い、Va−RTM成形を行った。注入終了後、型ごとオーブンに入れて100℃に加熱し、2時間その状態を保持して樹脂を硬化させ、型を冷却後脱型を行い、未含浸部のない繊維強化プラスチックを得た。
【0078】
得られた繊維強化プラスチックは、繊維のうねりもなく、切込部での開口も小さく、外観品位は良好であった。さらに、R部44に相当する箇所を切り出し、切断面を研磨した後、光学顕微鏡で観察を行った。その結果、前記繊維強化プラスチックは、R部44においても厚み方向に均等に層構造を維持していることが確認された。
【0079】
以下、比較例を示す。
【0080】
<他製造法との比較>
(比較例1)
実施例1で作製した切込プリプレグ基材をカッター法(自動裁断機により、切込を挿入)により作製した。裁断装置の一例を図21に示す。刃はステンレス製の一枚刃であり、これをマシンのヘッド45に取り付け、サーボモーターによりヘッドのXY方向の移動量を制御した。目標とする切込パターンは、図13に示すものであり、繊維長さ30.0mm、切込長さ5.0mmとなるように、繊維を分断したものである。また、裁断に用いた基材は、実施例1と同様とした。
【0081】
しかし、すべての切込を一枚の刃で裁断することになるため、基材の生産速度は0.6m/分と極めて遅かった。実施例1の押切法と比較して、15倍もの時間を費やしており、工業的に量産できる手法ではないことが確認された。
(比較例2)
実施例1で作製した切込プリプレグ基材と同じものを回転刃法により作製した。裁断風景の模式図を図22(B)に示す。基材の裁断に用いた刃は図22(A)に示す幅10mmの矩形状の刃であり、これを直径95mmの金属製ローラー56に複数埋め込み、これを抜き型とした。抜き型の周方向の展開図が実施例1で作製した切込プリプレグ基材の切込パターンに一致するように、刃を埋め込む位置を定めた。さらに、ローラー表面から刃が突出している高さは約0.5mmとした。これにより、前記抜き型が1回転する間に搬送される基材長さは300mmとなった。しかし、ローラーの表面に刃を埋め込む作業は容易ではなく、抜き型作製にかなりの時間を要した。
【0082】
前記抜き型を用いて、プリプレグ基材の裁断を行った。裁断時の前記ローラーの回転速度は10回転/分とした。そのため、切込プリプレグ基材の製造速度は、約3.0m/分であった。しかし、300mほど基材を裁断した時点で、刃の先端が劣化したためか、切込の長さが他切込より短くなる箇所が観察され、シート基材に連続繊維が多く残るようになった。実施例1のように、ベニヤ板に刃を埋め込むタイプの抜き型では、例えば抜き型の裏面(刃が突出していない面)にムラ取りテープと呼ばれる金属製テープを貼り付けることで、刃の突出量を調整することができるが、本比較例で実施した回転刃では前記方法によるムラ取りが実施できない。そのため、該当する刃そのものを交換する必要があり、シート基材の生産性が大幅に低下した。
(比較例3)
刃の取り付ける角をローラーの周方向に30°傾ける以外は比較例2と同様にして抜き型を作製し、切込プリプレグ基材の作製を試みた。しかし、矩形状の刃をローラーに斜めに取り付ける作業は比較例2よりもさらに困難であり、抜き型作製にかなりの時間を要した。また、作成後の抜き型を試用してみても各刃に過度の負担がかかるためか、刃の取り付け位置がすぐにずれてしまい、適切に切込を挿入することができなかった。抜き型の作製方法や刃の形状を工夫すれば適切に切込を挿入可能な抜き型を作製できるのかもしれないが、コスト的に負担が大きくなり、現実的ではなかったため、検討を断念した。
【0083】
(比較例4)
シート基材に切込を挿入しないこと以外は、実施例11と同様に繊維強化プラスチックを成形した。全体的に実施例11同様に繊維のうねりもなく、外観品位は良好であったが、R部44に相当する箇所では一部プラスチックの色が黄色がかっているように観察された。さらに、実施例11同様にR部での断面を観察したところ、強化繊維が金型側に偏っていたり、また90°方向に配列した層が抜け落ちている箇所が観察された。そのため、R部の金型とは反対側においては樹脂リッチ部が形成されることになり、表面がやや黄色がかって見えたものと推測される。なお、繊維強化プラスチックの表面に樹脂リッチ部が存在すると、欠けなどの原因となる。今回の場合は、R部をまたいで連続繊維を賦形してしまったために、強化繊維が張力を受け、金型側に偏ってしまったものと考えられる。
【0084】
(比較例5)
実施例1と同様のプリプレグ基材を自動裁断機により短冊状に切り出し、シート状かつランダムに散布してSMC基材のシートを作製した。ここで、短冊状の基材の大きさは、幅5mm、長さ30mmとし、シート基材の目付はプリプレグ基材の16層分に相当する2.4kg/mとした。
【0085】
得られたSMC基材を実施例1と同様の手順に従い成形し、平板状の繊維強化プラスチックを得た。強化繊維がランダムに配向しているためか、平板状のプラスチックには若干のそりが観察された。また、金型の端部に基材の未充填部が観察され、実施例1で作製した切込プリプレグ基材よりも流動性が劣ることが確認された。さらに、実施例1と同様の手順により引張強度を行った結果、その引張強度は180MPaであり、また弾性率は35GPaと実施例1と比べてもはるかに低い値であった。
【0086】
【表1】

【0087】
【表2】

【0088】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の製造方法の一例を示す斜視図である。
【図2】本発明の抜き型の一例を示す上面図(A)と、断面図(B)である。
【図3】本発明により製造された切込シート基材の一例を示す平面図(A)と本発明に用いる抜き型の一例を示す上面図(B)である。
【図4】本発明により製造された切込シート基材の一例を示す平面図である。
【図5】本発明の抜き型の一例を示す上面図である。
【図6】本発明により製造された切込シート基材の一例を示す平面図(A)と、該切込シート基材から成形された繊維強化プラスチックの一例を示す図(B)である。
【図7】本発明により製造された切込シート基材の一例を示す平面図(A)と、該切込シート基材から成形された繊維強化プラスチックの一例を示す図(B)である。
【図8】本発明に用いるミシン刃の例を示す平面図である。
【図9】本発明に用いるミシン刃の一例を示す平面図である。
【図10】本発明に用いる抜き型の一例を示す平面図(A)と前記抜き型を用いて製造された切込シート基材の一例を示す平面図(B)である。
【図11】本発明に用いる抜き型の一例を示す平面図である。
【図12】本発明における切込プリプレグ基材の製造方法の一例を示す断面図である。
【図13】本発明に用いる切込シート基材の切込の一例を示す平面図である。
【図14】本発明に用いる刃の一例を示した斜視図(A)と、該刃を複数配置した抜き型の一例を示した斜視図(B)である。
【図15】本発明に用いる切込シート基材の切込の一例を示す平面図である。
【図16】本発明に用いる抜き型の一例を示した斜視図である。
【図17】本発明に用いるミシン刃の一例を示した斜視図(A)と、該ミシン刃を2つ配置した抜き型の一例を示した斜視図(B)である。
【図18】本発明に用いる抜き型の一例を示す平面図である。
【図19】本発明に用いる抜き型の一例を示した上面図である。
【図20】本発明により製造された切込シート基材を用いた成形法の一例を示す斜視図である。
【図21】従来の切込シート基材の製造方法の一例を示す斜視図である。
【図22】従来の切込シート基材の製造方法に用いる刃の一例を示す斜視図(A)と、製造方法の一例を示す斜視図で(B)ある。
【図23】本発明の切込シート基材の製造方法の一例を示す斜視図(A)、(B)と、本発明により製造された切込シート基材の一例を示す平面図(C)、(D)である。
【符号の説明】
【0090】
1:強化繊維
2:繊維配列方向
3:シート基材
4:繊維直交方向
5:カット部の稜線をシート基材に投影した投影線Aの繊維直交方向成分Ws’
6:刃
7:抜き型
8:切込
9:カット部の稜線
10:1回目のプレスで挿入する切込
11:2回目のプレスで挿入する切込
12:基材の送り量
13:投影線B
14:投影線Bの不連結部
15:投影線Bの不連結部の幅
16:樹脂リッチ部
17:開口部の繊維配列方向の長さ
18:ミシン刃
19:カット部の長さW
20:カット部間距離の長さb
21:互いに繊維配列方向に同位相となるミシン刃の集合1
22:互いに繊維配列方向に同位相となるミシン刃の集合2
28:プリプレグ基材
29:テープ状支持体
30:カット部の先端
31:離型フィルム
32:土台
33:切込長さW
34:繊維長さL
35:断続的な切込の列
35a:第1の断続的な切込の列
35b:第2の断続的な切込の列
35c:第3の断続的な切込の列
35d:第4の断続的な切込の列
36:ベニヤ板
37:ベニヤ板の中央領域
38:矩形状の刃
39:投影線Aと繊維配列方向とのなす角θ
40:成形型
41:注入口
42:減圧口
43:切込シート基材
44:R部
45:ヘッド
46:カット部
47:投影線分A
48:繊維直交面
49:n=1のときの領域A
50:n=3のときの領域B
51:L/2の長さ
52:ミシン刃A
53:ミシン刃B
54:切込の繊維直交方向成分Ws
55:切込の曲線に沿った長さ
56:回転ローラー
57:観察対象領域
58:押当方向
59:投影線O

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に配列した強化繊維を含むシート基材であって、シート厚みHが30〜300μmの範囲内の前記シート基材を繊維配列方向に送り、前記シート基材に、刃を配置した抜き型を間欠的に押し当て、前記刃を前記シート基材に間欠的に進入させて、断続的な切込を挿入して、前記切込の繊維直交方向成分Wsを30μm〜100mmの範囲内とし、実質的にすべての強化繊維の繊維長さLを10〜100mmの範囲内とする切込シート基材の製造方法。
【請求項2】
前記切込の繊維直交方向成分Wsを30μm〜100mmの範囲内とする手段が、前記刃の一部であり、切込を挿入する際に基材を貫通あるいは基材に進入する部位をカット部とし、前記抜き型を前記シート基材に押し当てる方向を押当方向としたときに、前記押当方向に、前記カット部の稜線を前記シート基材に投影した投影線Aの繊維直交方向成分Ws’が30μm〜100mmの範囲内となるように、前記抜き型を前記シート基材に押し当てることである、請求項1に記載の切込シート基材の製造方法。
【請求項3】
実質的にすべての強化繊維の繊維長さLを10〜100mmの範囲内とする手段が、前記刃の一部であり、切込を挿入する際に基材を貫通あるいは基材に進入する部位をカット部とし、前記抜き型を前記シート基材に押し当てる方向を押当方向としたときに、前記抜き型に含まれるすべての前記カット部の稜線を、前記押当方向に、前記シート基材に投影した投影線Aを、繊維配列方向に、同じ繊維直交面に投影して得た投影線B同士が実質的にすべて連結するように前記抜き型に前記シート基材を押し当てることである、請求項1または2に記載の切込シート基材の製造方法。
【請求項4】
前記刃の一部であり、切込を挿入する際に基材を貫通あるいは基材に進入する部位をカット部とし、前記抜き型を前記シート基材に押し当てる方向を押当方向としたときに、前記押当方向に、前記カット部の稜線を前記シート基材に投影した投影線Aと繊維配列方向とのなす角θが2〜60°の範囲内となるように前記抜き型にシート基材を押し当てる、請求項1〜3のいずれかに記載の切込シート基材の製造方法。
【請求項5】
前記刃として、板状のミシン刃を用いる、請求項1〜4のいずれかに記載の切込シート基材の製造方法。
【請求項6】
前記抜き型として、平板状であり、かつ複数の前記ミシン刃を、互いに平行となるように前記抜き型に配置したものを用いる、請求項5に記載の切込シート基材の製造方法。
【請求項7】
前記ミシン刃の一部であり、切込を挿入する際に基材を貫通あるいは基材に進入する部位をカット部とし、同一ミシン刃内で隣接するカット部間の距離をカット部間距離bとしたときに、前記カット部の長さWおよびカット部間距離bがそれぞれ一定となるように前記抜き型をシート基材に押し当てる、請求項5または6に記載の切込シート基材の製造方法。
【請求項8】
前記投影線B同士が、互いに端部のみで連結し、かつ前記シート基材を繊維配列方向に10〜100mm移動させる毎に、前記抜き型を前記シート基材に押し当てる、請求項3〜7のいずれかに記載の切込シート基材の製造方法。
【請求項9】
前記カット部間距離bに対する前記カット部の長さWの比(W/b)が1〜1.5の範囲内であり、前記投影線B同士が、互いに端部のみで連結するように、前記シート基材を繊維配列方向に10〜100mm移動させる毎に、前記抜き型を前記シート基材に押し当てる、請求項8に記載の切込シート基材の製造方法。
【請求項10】
前記ミシン刃同士を繊維配列方向に強化繊維の繊維長さLの1.5倍以上離して抜き型に配置する、請求項9に記載の切込シート基材の製造方法。
【請求項11】
前記シート基材が強化繊維とマトリックス樹脂とからなるプリプレグ基材である、請求項1〜10のいずれかに記載の切込シート基材の製造方法。
【請求項12】
テープ状支持体によって把持した前記プリプレグ基材を用いて、前記抜き型をテープ状支持体とは反対側の前記プリプレグ基材に押し当て、前記プリプレグ基材を貫通し、かつ、前記テープ状支持体の一部のみ侵入する前記切込を挿入する、請求項11に記載の切込シート基材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2009−220480(P2009−220480A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−68934(P2008−68934)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】