説明

列車制御用通信システム

【課題】地上装置と車上装置との間を暗号化して無線でデータを伝送する列車制御用通信システムにおいて、従来よりも更に高いセキュリティを確保すると共に、システムの構築費用を抑制すること。
【解決手段】列車制御用通信システムを、線路の所定毎に設けられ区間内に在線する列車を区間毎に管理する複数の地上装置10A,10B、各列車に搭載された車上装置20、前記車上装置に接続されたトランスポンダ車上子27、及び前記各区間の境界付近に設置され且つ前記地上装置に接続されたトランスポンダ地上子17A1,17A2,17B1,17B2,17C1,17C2で構成し、暗号文は無線伝送路通信2A,2Bによって伝送し、且つ鍵は前記トランスポンダ車上子と前記トランスポンダ地上子を含むトランスポンダ伝送路を介し前記車上装置の認証情報と同時に伝送するようにした。前記鍵は、通信する対象である列車および拠点(地上装置)の組み合わせが切り替わる際に設定・変更できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線を利用した列車制御システムに関し、特に地上装置と列車に搭載された車上装置との間で無線を利用して暗号化データを伝送する列車制御用通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から広く実施されている列車制御システムは、列車を運行する線路に連続して重ならないような区間を設定し、各区間には列車の車軸が左右のレールを短絡することで列車を検知する軌道回路を設け、軌道回路を利用して列車位置を検知し、これにより各区間では列車が一本ずつしか運行できないように管理するシステムである。この従来の列車制御システムに採用されている列車制御用通信システムの一つとして、特開2000−233750号公報(特許文献1)に記載されているものがある。この従来の列車制御用通信システムは、地上装置と車上装置との間で無線を利用して暗号化データを伝送する列車制御用通信システムであって、暗号文は無線通信によって伝送し、且つ鍵は軌道回路を利用した伝送路を介して伝送するようにし、これによって高いセキュリティの確保を図ったものである。
【0003】
近年、無線を利用した列車制御システムが規格化されつつある。このようなシステムのうち、特開2007−015517号公報(特許文献2)に記載されているATACS(Advanced Train Administration and Communication System)とも呼ばれるものは、線路に沿って所定間隔で設置されているトランスポンダ地上子、前記トランスポンダ地上子が接続された地上装置、列車に搭載された車上装置、及び前記車上装置に接続されたトランスポンダ車上子を含んで構成されたシステムであって、列車位置の検知は前記車上装置が自ら行うことを特徴とする。即ち、このシステムにおいて、トランスポンダ地上子の番号と設置位置のデータが車上装置の記憶装置に記憶されている。そして、トランスポンダ車上子とトランスポンダ地上子との間に通信が成立すると、車上装置はその記憶装置を検索し当該トランスポンダ地上子の設置位置を認識する。続いて、車上装置は前記認識した設置位置からの列車の移動距離を列車の速度を積算して算出し、これを前記認識した設置位置に加算して列車の現在位置を特定する。このようにして、車上装置は列車の現在位置を検知するのである。なお、地上装置は拠点装置とも表示されることもある。
【0004】
このような無線を利用した列車制御システムにおいては、車上装置は自ら特定した列車の位置情報を無線通信により地上装置に送信する。地上装置は車上装置から送られてきた各列車の位置情報やその他の線路情報に基いて、それぞれの列車の先行列車の位置情報と進路に関する停止限度を示す情報を生成し、これをそれぞれの列車の車上装置に無線により送信する。各列車の車上装置は受信した情報に基いて、列車が停止限界に近づくとブレーキパターンを作成してブレーキ制御を行い、列車衝突を回避する。このような列車制御システムを用いることにより、従来の軌道回路を用いて列車位置検知を行う列車制御システムに比較して、コストダウンと安全性の向上を図ることができるのである。
【0005】
上述の無線を利用した列車制御システムにおいては、列車制御ないし運行に関する重要な情報が単一の無線伝送路で地上装置と車上装置との間を行き来することになる。しかし、無線通信は電波を利用しているため、秘密裏に情報の盗聴が行え、改竄、なりすましといったセキュリティ上の脆弱性が指摘されている。このため、このような場合におけるセキュリティを確保するために、暗号化技術が用いられている。例えば図5の如く、地上装置10、車上装置20、無線伝送路1とからなる列車制御用通信システムが用いられている。地上装置10は地上制御装置11、暗号化/復号化部12、入出力部14とから構成されている。また、車上装置20は車上制御装置21、暗号化/復号化部22、入出力部24とから構成されている。そして、地上装置10と車上装置20との間の情報伝送が無線で行われる。
【0006】
このようなケースに適用可能な既存の暗号化技術のうち、公開鍵暗号方式は一般に安全性が高いことは保障されているが、セキュリティの程度を高めようとすると処理演算量が非常に大きくなるため、それらに制約のある列車制御情報のような通信には不向きである。一方、秘密鍵暗号方式は、演算処理は比較的簡単であるが、鍵配送の管理が必要となり、鍵を盗まれる危険性があるため,鍵の管理については,高いセキュリティをもつ通信路により鍵を配信するなどの盗聴防止策を実行し、セキュリティ確保に努めなければならない。
【0007】
また、暗号の解読については計算機の高速化、暗号解読アルゴリズムの発達もあり、将来にわたって確実に防止し得る保証はない。従って、情報伝送の対象ごとに別の鍵を適用し、また、鍵の変更を頻繁に行うといった対策を実施することは暗号文の不正な解読を防止するのに極めて有効となる。しかし、鍵の配布を頻繁に行おうとすると、配布に伴う暗号情報流出の危険性の増加、配布のための設備費の増加、配布作業に伴う処理負荷の増加などの要因となる。そのため、適切な時点で適切な対象に対してこれを行うような仕組みを設定する必要がある。
【0008】
しかしながら、これまでに提案されてきた列車制御用通信システムにおける鍵の配布は、システム全体に対して無線通信によって適当な時点で行うというものであって、鍵の管理に関するセキュリティ対策が十分に実施されているとは言い難い。そこで、本発明者は特許文献1に示されている暗号化データ伝送方式の技術を採用し、車上装置と地上装置の間で暗号文は無線通信によって伝送し、且つ鍵は前記車上装置に接続されたトランスポンダ車上子と地上装置に接続されているトランスポンダを含むトランスポンダ伝送路を介して伝送する列車制御用通信システムが無線を利用した列車制御システムに適したものか否かを検討した。その結果、この列車制御用通信システムは無線を利用した列車制御システムの特長、即ち従来の軌道回路を用いて列車位置検知を行う列車制御システムに比較して、コストダウンと安全性の向上を図ることができるという特長に見合ったセキュリティを確保するには未だ不十分であるとの結論に達した。
【特許文献1】特開2000−233750号公報
【特許文献2】特開2007−015517号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、地上装置と車上装置との間を暗号化して無線でデータを伝送する列車制御用通信システムにおいて、従来よりも更に高いセキュリティを確保すると共に、システムの構築費用を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する第1の列車制御用通信システムは、地上に設置された地上装置、列車に搭載された車上装置、前記地上装置に接続されたトランスポンダ地上子、及び前記車上装置に接続されたトランスポンダ車上子で構成され、列車位置の検知を前記車上装置が自ら行う列車制御システムに適用される列車制御用通信システムであって、暗号文は無線通信によって伝送し、且つ鍵は前記トランスポンダ車上子と前記トランスポンダ地上子を含むトランスポンダ伝送路を介して前記車上装置の認証情報、前記トランスポンダ地上子及び地上装置の認証情報の少なくとも一つの認証情報と同時に伝送するようにしたことを特徴とするものである。
【0011】
上記課題を解決する第2の列車制御用通信システムは、線路の所定毎に設けられ区間内に在線する列車を区間毎に管理する複数の地上装置、各列車に搭載された車上装置、前記車上装置に接続されたトランスポンダ車上子、及び前記各区間の境界付近に設置され且つ前記地上装置に接続されたトランスポンダ地上子で構成され、列車位置の検知を前記車上装置が自ら行う列車制御システムに適用される列車制御用通信システムであって、暗号文は無線通信によって伝送し、且つ鍵は前記車上装置に接続されたトランスポンダ車上子と前記トランスポンダ地上子を含むトランスポンダ伝送路を介して前記車上装置の認証情報、前記トランスポンダ地上子及び地上装置の認証情報の少なくとも一つの認証情報と同時に伝送することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る列車制御用通信システムにおいては、比較的に情報量が少ない鍵の伝送に鉄道専用であり他からのアクセスが困難なトランスポンダ伝送路を用いたものであるから、鍵の配布の安全性が確保された。また、通信対象となる列車・地上装置の組み合わせ毎に鍵を設定・変更することが可能になったため、鍵を用いたセキュリティ対策の有効性が更に向上し、暗号文の不正解読の危険性を大幅に低下することができた。しかも、車上装置の認証情報、トランスポンダ地上子の認証情報及び地上装置の認証情報の伝送と同時に鍵を送信するようにしたので、鍵の配布の安全性が更に高まった。
【0013】
また、車上装置・地上装置間で列車制御情報を暗号化して無線でデータ伝送し、トランスポンダ伝送路で受信してメモリに記憶している鍵情報を用い、その正当性をチェックすることによって高いセキュリティが保証されている。そして、無線を利用した列車制御システムにおいて、無線システムが利用不可となった場合に備えて地上装置側で列車検知を行うシステムなどが既に設備されている場合は、前記トランスポンダ伝送路はそれらの既存の伝送路と部分的に共用可能であるから、少ない設備投資で高いセキュリティを確保した列車制御用通信システムが実現可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
無線を利用した列車制御システムに適した列車制御用通信システムを、線路の所定毎に設けられ区間内に在線する列車を区間毎に管理する複数の地上装置、各列車に搭載された車上装置、前記車上装置に接続されたトランスポンダ車上子、及び前記各区間の境界付近に設置され且つ前記地上装置に接続されたトランスポンダ地上子で構成し、暗号文は無線通信によって伝送し、且つ鍵は前記トランスポンダ車上子と前記トランスポンダ地上子を含むトランスポンダ伝送路を介して前記車上装置の認証情報、前記トランスポンダ地上子及び地上装置の認証情報の少なくとも一つの認証情報と同時に伝送するようにした。
【実施例1】
【0015】
図1は本発明の一実施例、即ち、地上に設置され拠点装置とも呼ばれる地上装置10、レールRを走行する列車Tに搭載されている車上装置20、無線伝送路2及びトランスポンダ伝送路3とからなる列車制御用通信システムの構成図である。地上装置10は地上制御装置11、暗号化/復号化部12、暗号文入出力部14、鍵入力部15及びアンテナ16とから構成されている。また、車上装置20は車上制御装置21、暗号化/復号化部22、鍵生成部23、暗号文入出力部24、鍵出力部25およびアンテナ26とから構成されている。そして、トランスポンダ伝送路3は、地上装置10の鍵入力部15に有線ケーブル4で接続されたトランスポンダ地上子17と、車上装置20の鍵出力部25に接続されたトランスポンダ車上子27を含む。
【0016】
車上装置20においては、鍵生成部23からの鍵が車上装置20の認証情報と共に鍵出力部25から車上子トランスポンダ27を経てトランスポンダ伝送路3に送出される。地上装置10においては、前記鍵と認証情報はトランスポンダ伝送路3を介してトランスポンダ地上子17で受信され、鍵入力部15から地上制御装置11に入力される。地上制御装置11はそのメモリに記憶されている車上装置の認証情報と受信した認証情報から、その車上装置が認証できるか否かを判定し、認証できたときには、受信した鍵をそのメモリに記憶する。
【0017】
車上装置20から地上装置10への情報伝送としては、各列車の位置情報、速度情報、列車識別番号等の各種情報が伝送される。位置情報は、軌道の所定位置に設置された地上子を利用する絶対位置検知と車輪の回転数検知を組み合わせた移動距離算出方法で得られるが、これと加速度計やドップラー速度計を併用する方法や、GPSシステムを利用する方法によっても得られる。このようにして得られた位置情報や速度情報等は、車上制御装置21で生成される。この情報は、暗号化/復号化部22において、車上制御装置21のメモリに記憶されている鍵情報を用いて暗号文に変換され、暗号文入出力部24からアンテナ26に送出され、そして無線伝送路2を経て地上装置10に向けて送信される。
【0018】
地上装置10においては、無線伝送路2により伝送されてきた暗号文の位置情報等をアンテナ16を介して暗号文入出力部14で受信する。そして、暗号化/復号化部12は地上制御装置11のメモリに記憶されている鍵情報を用いて前記受信した暗号文を平文の位置情報等に変換し、これをメモリに記憶する。
【0019】
地上装置10から車上装置20への情報伝送としては、列車制御情報が伝送される。地上制御装置11が列車制御情報を生成し、暗号化/復号化部12は鍵入力部23から受信し地上制御装置11のメモリに記憶されている鍵情報を用いて、列車制御情報を暗号文に変換する。この暗号文の列車制御情報は暗号文入出力部14からアンテナ16に送出され、無線伝送路2を経て車上装置20に向けて送信される。
【0020】
車上装置20においては、無線伝送路2により伝送されてきた暗号文の列車制御情報をアンテナ26を介して暗号文入出力部24で受信する。そして、暗号化/復号化部22は車上制御装置21のメモリに記憶されている鍵情報を用いて前記受信した暗号文を平文の列車制御情報に変換し、これをメモリに記憶すると共に、前記平文の列車制御情報に基づいて所定の制御動作を行う。以上のように、暗号文は無線で、鍵はトランスポンダ装置を経て夫々送信・受信される。
【0021】
なお、本発明の一実施例の地上装置10において、暗号化/復号化部12、及び鍵入力部14は地上制御装置11とは別の装置として示してあるが、地上制御装置11の一部として夫々構成されてもよい。同様に、車上装置20において、暗号化/復号化部22、鍵生成部23、及び鍵出力部25は車上制御装置21とは別の装置として示してあるが、車上制御装置21の一部として夫々構成されてもよい。また、鍵生成部と鍵出力部は車上装置20にあり且つ鍵入力部は地上装置10にあるものとしているが、鍵生成部と鍵出力部が地上装置10にあり且つ鍵入力部が車上装置20にあってもよい。また、鍵生成部と鍵出力部が地上装置と車上装置の両方にあるものとして構成されていてもよい。また、地上装置が車上装置の認証情報を基に車上装置の認証を行うとしているが、トランスポンダ地上子の認証情報及び地上装置の認証情報を車上装置へ同時に伝送し、車上装置がトランスポンダ地上子及び地上装置の認証も同時に行うようにしてもよい。
【実施例2】
【0022】
本発明の実施例2は、通信対象となる列車・地上装置の組み合わせ毎に鍵の設定・変更を可能とするシステムであって、線路の所定毎に設けられ区間内に在線する列車を区間毎に管理する複数の地上装置、各列車に搭載された車上装置、前記車上装置に接続されたトランスポンダ車上子、及び前記各区間の境界付近に設置され且つ前記地上装置に接続されたトランスポンダ地上子で構成され、列車位置の検知を前記車上装置が自ら行う列車制御システムに適用される列車制御用通信システムであって、暗号文は無線通信によって伝送し、且つ鍵は前記トランスポンダ車上子と前記トランスポンダ地上子を含むトランスポンダ伝送路を介し前記車上装置の認証情報と同時に伝送すると共に、前記鍵は区間毎に変更されるものである。
【0023】
即ち、図2は、通信対象となる列車・地上装置の組み合わせ毎に鍵を設定・変更することを特徴とする本発明の実施例であって、線路の所定ごとに設けられた区間内に在線する列車を各区間を担当する地上装置がそれぞれ管理する方式の列車制御システムに適用した場合の構成図である。図2において、線路上には所定区間毎に制御エリアとしての拠点AとBが設定され、拠点Aには拠点装置としての地上装置10Aが設置され、また拠点Bには拠点装置としての地上装10Bが設置されている。拠点Bには、レールR2を走行する列車T2が在線している。レールR1を走行する列車T1はシステム外から拠点Aに進入しようとしている。各列車に付した矢印は進行方向を示す。
【0024】
拠点Aと隣接する表示なしのシステム外との境界付近の地上には、レールR1の近傍にトランスポンダ地上子17A1が、レールR2の近傍にトランスポンダ地上子17A2がそれぞれ設置されている。拠点Aと拠点Bとの境界付近の地上には、レールR1の近傍にトランスポンダ地上子17B1が、レールR2の近傍にトランスポンダ地上子17B2がそれぞれ設置されている。更に、拠点Bと隣接する表示なしの拠点の境界付近の地上には、レールR1の近傍にトランスポンダ地上子17C1が、レールR2の近傍にトランスポンダ地上子17C2がそれぞれ設置されている。これらのトランスポンダ地上子は、JRTCS列車制御システムにおいて列車認識用に設置されているものと兼用できるものである。
【0025】
トランスポンダ地上子17A1とトランスポンダ地上子17A2は地上ケーブル4Aを介して拠点Aの地上装置10Aに接続されている。トランスポンダ地上子17B1とトランスポンダ地上子17B2は地上ケーブル4Bを介して拠点Bの地上装置10Bと拠点Aの地上装置10Aに夫々接続されている。更に、トランスポンダ地上子17C1とトランスポンダ地上子17C2は地上ケーブル4Cを介して拠点Bと隣接する表示なしの地上装置と地上装置10Bと拠点Bの地上装置10Bに夫々接続されている。
【0026】
以下、図3と図4のフローチャートを参照しながら、鍵配布時の車上装置20と地上装置10の夫々の処理の流れを説明する。車上制御装置21は鍵生成部23による新しい鍵の生成を行い(101)、列車T1がシステム外から拠点Aの境界地点に達し、その車上装置20の車上制御装置21がトランスポンダ地上子17A1との通信路が形成されたことを検知すると(102)、新しい鍵を車上装置20の認証情報と一緒に鍵出力部25からトランスポンダ車上子27に送出し、トランスポンダ車上子27はトランスポンダ伝送路を介してトランスポンダ地上子17A1に向けて送信する(103)。車上制御装置21は検出したトランスポンダ地上子が境界に設置されているトランスポンダ地上子か否かをそのメモリに記憶されたデータを検索して判定する(104)。ステップ104の判定結果がyesならば、車上制御装置21は変更した新しい鍵をそのメモリに記憶し(105)、処理の流れを最初のステップに戻す。なお、ステップ104の判定結果がnoの場合も処理の流れは最初のステップに戻る。
【0027】
地上装置20Aにおいては、図4の流れで処理が行われる。即ち、地上装置20Aの地上制御装置11はトランスポンダ地上子17A1を介して鍵と認証情報を受信する(201)と、受信した認証情報によってその車上装置が認証できるか否かを判定する(202)。ステップ202の判定結果がyesならば、地上制御装置11は受信した新しい鍵をそのメモリに記憶し(203)、処理の流れを最初のステップに戻す。ステップ202の判定結果がnoの場合も処理の流れは最初のステップに戻る。
【0028】
次に、列車T2の車上装置20と地上装置10Aとの間の鍵の配布の際の処理の流れであるが、これは列車T1の車上装置20と地上装置10Aとの間の鍵の配布の際の図3の処理の流れと同様に行われる。即ち、車上制御装置21は鍵生成部23による新しい鍵の生成を行い(101)、列車T2が拠点Aの境界地点に達し、その車上装置20の車上制御装置21がトランスポンダ地上子17B2との通信路が形成されたことを検知すると(102)、新しい鍵を車上装置20の認証情報と一緒に鍵出力部25からトランスポンダ車上子27に送出し、トランスポンダ車上子27はトランスポンダ伝送路を介してトランスポンダ地上子17B2に向けて送信する(103)。車上制御装置21は検出したトランスポンダ地上子が境界に設置されているトランスポンダ地上子か否かをそのメモリに記憶されたデータを検索して判定する(104)。ステップ104の判定結果がyesならば、車上制御装置21は変更した新しい鍵をそのメモリに記憶し(105)、処理の流れを最初のステップに戻す。なお、ステップ104の判定結果がnoの場合も処理の流れは最初のステップに戻る。
【0029】
地上装置10Aにおいては、図4の流れで処理が行われる。即ち、地上装置10Aの地上制御装置11はトランスポンダ地上子17B2を介して鍵と認証情報を受信する(201)と、受信した認証情報によってその車上装置が認証できるか否かを判定する(202)。ステップ202の判定結果がyesならば、地上制御装置11は受信した新しい鍵をそのメモリに記憶し(203)、処理の流れを最初のステップに戻す。ステップ202の判定結果がnoの場合も処理の流れは最初のステップに戻る。
【0030】
実施例2において、車上装置で位置情報等をメモリに記憶された鍵を用いて暗号文に変換し、変換した暗号文を無線伝送路を介して車上装置から地上装置へ伝送すること、及び、地上装置で受信した暗号文を記憶された鍵を用いたて平文の位置情報等に変換することなどの処理は、上述の実施例1と同じである。また、実施例2において、地上装置で列車制御情報をメモリに記憶された鍵を用いて暗号文に変換し、変換した暗号文を無線伝送路を介して伝送すること、及び、車上装置で受信した暗号文を記憶された鍵を用いたて平文の列車制御情報に変換することなどの処理は、上述の実施例1と同じである。また、車上装置の認証だけでなく、トランスポンダ地上子及び地上装置の認証も同時に行うようにしてもよいことは、上述の実施例1と同じである。
【0031】
ところで、一般に拠点内においては列車を本線から退避させて停泊させるレールが設けられている。このような停泊区間に停泊している列車との通信もセキュリティが必要である。そこで、この停泊区間の出入り口にトランスポンダ地上子17A1,17A2,17B1,17B2,17C1,17C2と同様のトランスポンダ地上子を設ければ、鍵の変更を行うことができる。また、鍵の変更は、鍵の初期値だけを変更することでもよい。これは長い鍵を用いる場合に有利である。また、列車の運行によっては適当な時期に鍵の変更が行われないケースが考えられるが、その場合は適当な地点に前記トランスポンダ地上子と同様のトランスポンダ地上子を設けることで鍵の変更を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施例1の列車制御用通信システムの構成図である。
【図2】本発明の実施例2の列車制御用通信システムの構成図である。
【図3】車上装置の処理の流れを示すフローチャートの一例である。
【図4】地上装置の処理の流れを示すフローチャートの一例である。
【図5】従来の列車制御用通信システムの構成図である。
【符号の説明】
【0033】
1,2 無線伝送路
3 トランスポンダ伝送路
4,4A,4B,4C 地上ケーブル
10 地上装置
11 地上制御装置
12 暗号化/復号化部
14 暗号文入出力部
15 鍵入力部
16 アンテナ
17,17A1,17A2,17B1,17B2,17C1,17C2 地上子
20,20A,20B 車上装置
21 車上制御装置
22 暗号化/復号化部
23 鍵生成部
24 暗号文入出力部
25 鍵出力部
26 アンテナ
27 車上子
T,T1,T2 列車
R,R1,R2 線路

【特許請求の範囲】
【請求項1】

地上に設置された地上装置、列車に搭載された車上装置、前記地上装置に接続されたトランスポンダ地上子、及び前記車上装置に接続されたトランスポンダ車上子で構成され、列車位置の検知を前記車上装置が自ら行う列車制御システムに適用される列車制御用通信システムであって、暗号文は無線通信によって伝送し、且つ鍵は前記トランスポンダ車上子と前記トランスポンダ地上子を含むトランスポンダ伝送路を介して前記車上装置の認証情報、前記トランスポンダ地上子及び地上装置の認証情報の少なくとも一つの認証情報と同時に伝送するようにしたことを特徴とする列車制御用通信システム。
【請求項2】
線路の所定毎に設けられ区間内に在線する列車を区間毎に管理する複数の地上装置、各列車に搭載された車上装置、前記車上装置に接続されたトランスポンダ車上子、及び前記各区間の境界付近に設置され且つ前記地上装置に接続されたトランスポンダ地上子で構成され、列車位置の検知を前記車上装置が自ら行う列車制御システムに適用される列車制御用通信システムであって、暗号文は無線通信によって伝送し、且つ鍵は前記トランスポンダ車上子と前記トランスポンダ地上子を含むトランスポンダ伝送路を介して前記車上装置の認証情報、前記トランスポンダ地上子及び地上装置の認証情報の少なくとも一つの認証情報と同時に伝送することを特徴とする列車制御用通信システム。
【請求項3】
鍵は区間毎に変更されることを特徴とする請求項2に記載の列車制御用通信システム。





















【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−29298(P2009−29298A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−196375(P2007−196375)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【出願人】(000173784)財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【Fターム(参考)】