説明

制動力制御装置

【課題】ブレーキ液温度が低い場合、液圧応答性の改善による減速度応答性の向上と、違和感を低減したペダルフィールと、を両立させること。
【解決手段】制動力制御装置1は、ブレーキ操作量検出部7と、目標減速度演算部と、ブレーキ液温度推定部83と、目標減速度補正部80と、マスタシリンダ圧制御部8と、を備える。ブレーキ操作量検出部7は、運転者のブレーキ操作を検出する。目標減速度演算部は、運転者のブレーキ操作に基づき目標減速度を演算する。ブレーキ液温度推定部83は、ブレーキ液温度を推定により取得する。目標減速度補正部80は、ブレーキ液温度とブレーキ操作とから、ブレーキ液温度が所定の温度以下の場合、常温時の実減速度に近づくように目標減速度補正量を演算する。マスタシリンダ圧制御部8は、目標減速度を目標減速度補正量により補正した補正後の目標減速度に基づき、マスタシリンダ圧Pmcを発生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者のブレーキ操作に基づき演算した目標減速度を得るようにマスタシリンダ圧を発生する制動力制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポンプ等の加圧手段によってブレーキ液の加圧し、車輪にその加圧したブレーキ液圧を減速度として働かせる制動装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
このような制動装置において、ブレーキ液の温度が低い時には、ブレーキ液の粘性が高くなりポンプ等の加圧性能を低下させ、常温時と比べ減速度が発生するまでに遅れが生じることがある。
この低温時のブレーキ液粘性に変化に起因する問題を解決するため、特許文献1では、ブレーキ液の温度を推定し、低温ほど目標減速度を大きくすることで、加圧応答性の改善をしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−90723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の制動装置にあっては、ブレーキ液の温度情報のみを入力し、ブレーキ液の温度が低下した場合に目標減速度を高くするように補正している。このため、ポンプ等の加圧手段を持つ代わりに、電動ブースタ等で直接マスタシリンダを助力するような電動倍力制動制御システムにおいては、ペダルフィールが悪化する可能性がある、という問題がある。
【0005】
すなわち、ブレーキ液の温度が低下した場合に目標減速度を高くするよう補正すると、それに応じてマスタシリンダ圧が高くなり、そのマスタシリンダ圧が直接ペダル反力に反映される。このため、例えば、ペダル操作量を一定に保っている、あるいは、ゆっくりとペダル操作しているとき、ブレーキ液の温度が低いことで目標減速度を高くする補正がなされると、意図しないペダル踏力の高まりがドライバの足に伝達され、ドライバに違和感を与える。
【0006】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、ブレーキ液温度が低い場合、液圧応答性の改善による減速度応答性の向上と、違和感を低減したペダルフィールと、を両立させることができる制動力制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の制動力制御装置は、ブレーキ操作検出部と、目標減速度演算部と、ブレーキ液温度情報取得部と、目標減速度補正部と、マスタシリンダ圧制御部と、を備える手段とした。
前記ブレーキ操作検出部は、運転者のブレーキ操作を検出する。
前記目標減速度演算部は、前記運転者のブレーキ操作に基づき目標減速度を演算する。
前記ブレーキ液温度情報取得部は、ブレーキ液温度を推定又は検出により取得する。
前記目標減速度補正部は、前記ブレーキ液温度と前記ブレーキ操作とから、前記ブレーキ液温度が所定の温度以下の場合、所定の温度以上のときの実減速度に近づくように目標減速度補正量を演算する。
前記マスタシリンダ圧制御部は、前記目標減速度を前記目標減速度補正量により補正した補正後の目標減速度に基づき、マスタシリンダ圧を発生する。
【発明の効果】
【0008】
よって、ブレーキ液温度が所定の温度以下の場合、目標減速度補正部において、ブレーキ液温度とブレーキ操作とから、所定の温度以上のときの実減速度に近づくように目標減速度補正量が演算される。そして、ペダルストローク量などの運転者のブレーキ操作に基づき演算された目標減速度を、目標減速度補正量により補正し、マスタシリンダ圧制御部において、補正後の目標減速度に基づき、マスタシリンダ圧が発生される。
すなわち、ブレーキ液温度が低いときには、所定の温度以上のときの実減速度に近づくように目標減速度補正量が演算されることで、ブレーキ液温度変化により、マスタシリンダ圧の応答性が変ることによる実減速度の変化が抑制される。そして、ペダルストローク速度などのブレーキ操作に基づいて、目標減速度補正量を演算することで、ペダルフィールへの影響が抑えられ、ドライバへの違和感が低減される。
この結果、ブレーキ液温度が低い場合、液圧応答性の改善による減速度応答性の向上と、違和感を低減したペダルフィールと、を両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1の制動力制御装置が適用された電気自動車を示す全体構成図である。
【図2】実施例1の制動力制御装置を示す全体構成図である。
【図3】実施例1の制動力制御装置における目標減速度補正部を示すブロック構成図である。
【図4】実施例1の制動力制御装置におけるブレーキ操作に対する補正ゲインのマップを示す補正ゲインマップ図である。
【図5】実施例1の制動力制御装置における目標減速度補正部のブレーキ液温度補正部を示すブロック構成図である。
【図6】実施例2の制動力制御装置における目標減速度補正部を示すブロック構成図である。
【図7】実施例2の制動力制御装置における目標減速度補正部のブレーキ液温度補正部を示すブロック構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の制動力制御装置を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1及び実施例2に基づいて説明する。
【実施例1】
【0011】
まず、構成を説明する。
実施例1の制動力制御装置の構成を、「電気自動車の構成」、「制動力制御装置の全体構成」、「マスタシリンダ圧制御構成」に分けて説明する。
【0012】
[電気自動車の構成]
図1は、実施例1の制動力制御装置が適用された電気自動車を示す全体構成図である。以下、図1に基づき前輪を電気モータで駆動する電気自動車の構成を説明する。
【0013】
前記電気自動車は、駆動力発生源としての電気モータ103(永久磁石をロータに埋め込んだ三相同期モータ)を備えており、各々のモータ回転軸は、減速機102を介して、電気自動車の前輪101FL,101FRに連結されている。なお、後輪101RL,101RRは、モータの連結がない従動輪とされている。この電気自動車は、駆動回路105と、制動力制御装置1と、統合コントローラ110と、を備えている。
【0014】
前記駆動回路105は、リチウムイオンバッテリ106との電力授受を制御し、電気モータ103での回生トルクを、統合コントローラ110から受信するトルク指令値と一致するように調整する。
【0015】
前記制動力制御装置1は、ドライバの制動操作に応じて各車輪のホイルシリンダ4a,4b,4c,4dにマスタシリンダ圧を供給し、ディスクロータ40a,40b,40c,40dを押圧することで摩擦制動トルクを付与する。また、統合コントローラ110からの回生協調制御指令に基づいて摩擦制動トルクを調整する。回生協調制御については後述する。
【0016】
前記統合コントローラ110は、車両全体の消費エネルギを管理し、最高効率で車両を走らせるための機能を担うもので、図示を省略したが、モータ回転数を検出するモータ回転数センサ、4輪の各車輪速を検出する車輪速センサ、前後加速度を検出するGセンサからの各センサ情報と、CAN通信線を介して得られた情報と、を入力する。
統合コントローラ110は、駆動回路105へ制御指令を出力することによって電気モータ103での駆動制御及び回生制御を行い、制動力制御装置1へ制御指令を出力することによって制動制御を行う。
【0017】
前記統合コントローラ110は、全体の減速度に対し回生制動トルクを優先して配分することにより、特に加減速を繰り返す走行パターンにおいて、エネルギ回収効率が高く、より低い車速まで回生制動によるエネルギの回収を実現している。
一方、回生制動トルクには車速によって決まる回転数に応じて上限があるため、目標減速度に対し回生制動トルクによる減速のみでは不足する場合、その不足分を液圧制動トルクで補うような回生協調制御指令を制動力制御装置1に出力する。
【0018】
[制動力制御装置の全体構成]
図2は、実施例1の制動力制御装置1を示す全体構成図であり、実施例1の制動力制御装置1は、電動モータ103で駆動する電気自動車に搭載している。
【0019】
前記制動力制御装置1は、マスタシリンダ2と、リザーバタンクRESと、各車輪に設けたホイルシリンダ4a〜4dと、マスタシリンダ2に接続して設けたマスタシリンダ圧制御機構(ブレーキ倍力部)5及びインプットロッド(入力部材)6と、ブレーキ操作量検出部7と、マスタシリンダ圧制御機構5を制御するマスタシリンダ圧制御部8と、を有する。
【0020】
前記インプットロッド6は、ブレーキペダルBPと共にストローク(進退)し、マスタシリンダ2内の液圧(以下、マスタシリンダ圧Pmc)を加減する。マスタシリンダ圧制御機構5及びマスタシリンダ圧制御部8は、マスタシリンダ2のプライマリピストン(アシスト部材)2bをストロークさせ、マスタシリンダ圧Pmcを加減する。
以下、説明のため、マスタシリンダ2の軸方向にx軸を設定し、ブレーキペダルBPの側を負方向と定義する。実施例1のマスタシリンダ2は、いわゆるタンデム型であり、マスタシリンダ2a内にプライマリピストン2b及びセカンダリピストン2cを有している。マスタシリンダ2aの内周面と、プライマリピストン2bのx軸正方向側の面及びセカンダリピストン2cのx軸負方向側の面との間で、第1液圧室としてのプライマリ液圧室2dを形成している。マスタシリンダ2aの内周面とセカンダリピストン2cのx軸正方向側の面との間で、第2液圧室としてのセカンダリ液室2eを形成している。
【0021】
前記プライマリ液圧室2dは、プライマリ回路10と連通可能に接続し、セカンダリ液室2eは、セカンダリ回路20と連通可能に接続している。プライマリ液圧室2dの容積は、プライマリピストン2b及びセカンダリピストン2cがマスタシリンダ2a内をストロークすることで変化する。プライマリ液圧室2dには、プライマリピストン2bをx軸負方向側に付勢する戻しバネ2fを設置している。セカンダリ液室2eの容積は、セカンダリピストン2cがマスタシリンダ2a内をストロークすることで変化する。セカンダリ液室2eには、セカンダリピストン2cをx軸負方向側に付勢する戻しバネ2gを設置している。
なお、図示は省略したが、プライマリ回路10及びセカンダリ回路20には、ABS制御等を実施するための各種バルブやモータポンプ、リザーバ等を設けている。
【0022】
前記プライマリ回路10には、プライマリ液圧センサ(マスタシリンダ圧検出手段)13、セカンダリ回路20にはセカンダリ液圧センサ(マスタシリンダ圧検出手段)14を設け、プライマリ液圧センサ13はプライマリ液圧室2dの液圧を、セカンダリ液圧センサ14はセカンダリ液室2eの液圧を検出し、この液圧情報をマスタシリンダ圧制御部8に送信している。
【0023】
前記インプットロッド6のx軸正方向側の一端6aは、プライマリピストン2bの隔壁2hを貫通し、プライマリ液圧室2d内に配置している。インプットロッド6の一端6aとプライマリピストン2bの隔壁2hとの間はシールしており、液密性を確保すると共に、一端6aは隔壁2hに対してx軸方向に摺動可能に設けている。一方、インプットロッド6のx軸負方向側の他端6bは、ブレーキペダルBPに連結している。ドライバがブレーキペダルBPを踏むと、インプットロッド6はx軸正方向側に移動し、ドライバがブレーキペダルBPを戻すとインプットロッド6はx軸負方向側に移動する。
【0024】
前記インプットロッド6には、プライマリピストン2bの隔壁2hの内周よりも大径、かつ、フランジ部6cの外径よりも小径の大径部6fを形成している。この大径部6fのx軸正方向側端面と隔壁2hのx軸負方向側端面との間には、ブレーキ非作動時においてギャップL1を設けている。このギャップL1により、統合コントローラ110から回生協調制御指令を受けた場合には、プライマリピストン2bをインプットロッド6に対してx軸負方向に相対移動することで、回生制動トルク分だけ摩擦制動トルクを減じることが可能である。またギャップL1により、インプットロッド6が、プライマリピストン2bに対してx軸正方向にギャップL1分相対変位すると、この大径部6fのx軸正方向の面と隔壁2hとが当接して、インプットロッド6とプライマリピストン2bとが一体に移動することが可能である。
【0025】
前記インプットロッド6又はプライマリピストン2bがx軸正方向側へ移動することによってプライマリ液圧室2dの作動液を加圧し、加圧した作動液をプライマリ回路10に供給する。また、加圧した作動液によるプライマリ液圧室2dの圧力により、セカンダリピストン2cがx軸正方向側へ移動する。セカンダリピストン2cがx軸正方向側へ移動することによってセカンダリ液室2eの作動液を加圧し、加圧した作動液をセカンダリ回路20に供給する。
【0026】
上記のように、インプットロッド6がブレーキペダルBPと連動して移動し、プライマリ液圧室2dを加圧する構成により、万が一、故障によりマスタシリンダ圧制御機構5の駆動モータ(倍力アクチュエータ)50が停止した場合にも、ドライバのブレーキ操作によってマスタシリンダ圧Pmcを上昇させ、所定の制動トルクを確保できる。また、マスタシリンダ圧Pmcに応じた力がインプットロッド6を介してブレーキペダルBPに作用し、ブレーキペダル反力としてドライバに伝達するため、上記構成を採らない場合に必要な、ブレーキペダル反力を生成するバネ等の装置が不要となる。よって、ブレーキ倍力部の小型化・軽量化を図ることができ、車両への搭載性が向上する。
【0027】
前記ブレーキ操作量検出部7は、ドライバの要求減速度を検出するためのもので、インプットロッド6の他端6b側に設けている。ブレーキ操作量検出部7は、インプットロッド6のx軸方向変位量(ストローク)を検出するストロークセンサ、すなわち、ブレーキペダルBPのストロークセンサである。
【0028】
前記リザーバタンクRESは、隔壁(不図示)によって互いに仕切られた少なくとも2つの液室を有している。各液室はそれぞれブレーキ回路11、12を介して、マスタシリンダ2のプライマリ液圧室2d及びセカンダリ液室2eと連通可能に接続している。
【0029】
前記ホイルシリンダ(摩擦制動部)4a〜4dは、シリンダ、ピストン、パッド等を有しており、マスタシリンダ2aが供給した作動液によって上記ピストンが移動し、このピストンに連結したパッドをディスクロータ40a〜40dに押圧するものである。なお、ディスクロータ40a〜40dは各車輪と一体回転し、ディスクロータ40a〜40dに作用するブレーキトルクは、各車輪と路面との間に作用するブレーキ力となる。
【0030】
前記マスタシリンダ圧制御機構5は、プライマリピストン2bの変位量すなわちマスタシリンダ圧Pmcを、マスタシリンダ圧制御部8の制御指令に従って制御するものであり、駆動モータ50と、減速部51と、回転−並進変換部55と、を有している。
【0031】
前記マスタシリンダ圧制御部8は、演算処理回路であり、ブレーキ操作量検出部7や駆動モータ50からのセンサ信号等に基づいて、駆動モータ50の作動を制御する。
【0032】
続いて、マスタシリンダ圧制御機構5の構成及び動作について説明する。
前記マスタシリンダ圧制御機構5は、駆動モータ50と、減速部51と、回転−並進変換部55と、を有する。
【0033】
前記駆動モータ50は、三相ブラシレスモータであり、マスタシリンダ圧制御部8の制御指令に基づき供給する電力によって動作し、所望の回転トルクを発生する。
【0034】
前記減速部51は、駆動モータ50の出力回転をプーリ減速方式により減速する。減速部51は、駆動モータ50の出力軸に設けた小径の駆動側プーリ52と、回転−並進変換部55のボールネジナット56に設けた大径の従動側プーリ53と、駆動側及び従動側プーリ52、53に巻き掛けたベルト54とを有している。減速部51は、駆動モータ50の回転トルクを、減速比(駆動側及び従動側プーリ52、53の半径比)分だけ増幅し、回転−並進変換部55に伝達する。
【0035】
前記回転−並進変換部55は、駆動モータ50の回転動力を並進動力に変換し、この並進動力によりプライマリピストン2bを押圧する。本実施例1では、動力変換機構としてボールネジ方式を採用しており、回転−並進変換部55は、ボールネジナット56と、ボールネジ軸57と、可動部材58と、戻しバネ59とを有している。
【0036】
前記マスタシリンダ2のx軸負方向側には、第1ハウジング部材HSG1を接続し、第1ハウジング部材HSG1のx軸負方向側には第2ハウジング部材HSG2を接続している。ボールネジナット56は、第2ハウジング部材HSG2内に設けられたベアリングBRGの内周に、軸回転可能に設置している。ボールネジナット56のx軸負方向側の外周には、従動側プーリ53を嵌合している。ボールネジナット56の内周には、中空のボールネジ軸57が螺合している。ボールネジナット56とボールネジ軸57との間の隙間には、複数のボールを回転移動可能に設置している。
【0037】
前記ボールネジ軸57のx軸正方向側の端には、可動部材58を一体に設け、この可動部材58のx軸正方向側の面にはプライマリピストン2bが接合している。プライマリピストン2bは、第1ハウジング部材HSG1内に収容し、プライマリピストン2bのx軸正方向側の端は、第1ハウジング部材HSG1から突出してマスタシリンダ2の内周に嵌合している。
【0038】
前記第1ハウジング部材HSG1内であって、プライマリピストン2bの外周には、戻しバネ59を設置している。戻しバネ59は、x軸正方向側の端を第1ハウジング部材HSG1内部のx軸正方向側の面Aに固定する一方、x軸負方向側の端を可動部材58に係合している。戻しバネ59は、面Aと可動部材58との間でx軸方向に押し縮めて設置しており、可動部材58及びボールネジ軸57をx軸負方向側に付勢している。
【0039】
前記従動側プーリ53が回転するとボールネジナット56が一体に回転し、このボールネジナット56の回転運動により、ボールネジ軸57がx軸方向に並進運動する。x軸正方向側へのボールネジ軸57の並進運動の推力により、可動部材58を介してプライマリピストン2bをx軸正方向側に押圧する。なお、図2では、ブレーキ非操作時にボールネジ軸57がx軸負方向側に最大変位した初期位置にある状態を示す。
【0040】
一方、ボールネジ軸57には、上記x軸正方向側への推力と反対方向(x軸負方向側)に、戻しバネ59の弾性力が作用する。これによりブレーキ中、すなわちプライマリピストン2bをx軸正方向側に押圧してマスタシリンダ圧Pmcを加圧している状態で、万が一、故障により駆動モータ50が停止し、ボールネジ軸57の戻し制御が不能となった場合でも、戻しバネ59の反力によりボールネジ軸27が初期位置に戻る。これによりマスタシリンダ圧Pmcがゼロ付近まで低下するため、ブレーキ力の引きずりの発生を防止し、この引きずりに起因して車両挙動が不安定になる事態を回避することができる。
【0041】
また、インプットロッド6とプライマリピストン2bとの間に画成した環状空間Bには、一対のバネ(付勢手段)6d、6eを配設している。一対のバネ6d、6eは、その各一端をインプットロッド6に設けたフランジ部6cに係止し、バネ6dの他端をプライマリピストン2bの隔壁2hに係止し、バネ6eの他端を可動部材58に係止している。これら一対のバネ6d、6eは、プライマリピストン2bに対してインプットロッド6を両者の相対変位の中立位置に向けて付勢し、ブレーキ非作動時にインプットロッド6とプライマリピストン2bとを相対移動の中立位置に保持する機能を有している。これら一つのバネ6d、6eにより、インプットロッド6とプライマリピストン2bとが中立位置からいずれかの方向に相対変位したとき、プライマリピストン2bに対してインプットロッド6を中立位置に戻す付勢力が作用する。
【0042】
なお、駆動モータ50には、例えば、レゾルバ等の回転角検出センサ50aを設けており、これにより検出したモータ出力軸の位置信号をマスタシリンダ圧制御部8に入力する。マスタシリンダ圧制御部8は、入力した位置信号に基づき駆動モータ50の回転角を算出し、この回転角に基づき回転−並進変換部25の推進量、すなわちプライマリピストン2bのx軸方向変位量を算出する。
【0043】
[マスタシリンダ圧制御構成]
図3は、実施例1の制動力制御装置における目標減速度補正部を示すブロック構成図である。図4は、実施例1の制動力制御装置におけるブレーキ操作に対する補正ゲインのマップを示す補正ゲインマップ図である。図5は、実施例1の制動力制御装置における目標減速度補正部のブレーキ液温度補正部を示すブロック構成図である。以下、図3〜図5に基づき、マスタシリンダ圧制御構成を説明する。
【0044】
実施例1では、マスタシリンダ圧制御部8は駆動モータ50によりインプットロッド6の変位に応じたプライマリピストン2bの変位、すなわちインプットロッド6とプライマリピストン2bの相対変位を制御している。そして、マスタシリンダ圧制御部8は、目標減速度演算部を備え、ドライバのブレーキ操作によるインプットロッド6の変位量で決まる目標減速度を算出し、その目標減速度に、目標減速度補正部80による目標減速度補正量を加えた、補正後の目標減速度に応じて、プライマリピストン2bを変位させる。これにより、プライマリ液圧室2dを、インプットロッド6の推力に加えてプライマリピストン2bの推力によって加圧し、マスタシリンダ圧Pmcを調整する。
【0045】
前記目標減速度補正部80は、マスタシリンダ圧制御部8に実装され、図3に示すように、ブレーキ操作補正部81と、外気温検出部82と、ブレーキ液温度推定部83(ブレーキ液温度情報取得部)と、ブレーキ液温度補正部84と、を有して構成される。
【0046】
前記ブレーキ操作補正部81では、ペダルストローク速度(ブレーキ操作)に基づいて目標減速度を補正する補正ゲインの演算が行われる。ブレーキ操作補正部81にブレーキ操作量検出部7(ブレーキ操作検出部)から入力されたペダルストロークは、時間微分されてペダルストローク速度が演算される。ここで、時間微分には、例えば次式のような擬似微分器Gds(s)を用いればよい。
Gds(s)=s/(fw-1*s+1) …(1)
ここで、sはラプラス演算子であり、fwはカットオフ周波数である。fwは制御帯域に比べ十分に高い値で設定する。なお、マスタシリンダ圧制御部8へはIIRフィルタ(無限インパルス応答フィルタ)として実装すればよい。
次に、演算されたペダルストローク速度に基づき、操作速度が速いほど大きい値になるように補正ゲインを設定する。補正ゲインの設定は、例えば、図4に示すようなマップを用いて行えばよい。マップは、液圧応答性とペダルフィールのトレードオフを実験等から決定し、ブレーキ操作が遅いと0に近い値に、ブレーキ操作が速いと1に近い値になるよう設定すればよい。
【0047】
前記ブレーキ液温度推定部83は、外気温検出部82により計測された外気温からブレーキ液温度を推定する。ブレーキ液温度の推定については、例えば、外気温とブレーキ液温度の対応関係を実験等により取得しておき、その関係に基づき作成したマップを用いればよい。
【0048】
前記ブレーキ液温度補正部84では、ペダルストロークに基づき演算された目標減速度を、ブレーキ操作補正部81で演算された補正ゲインと、ブレーキ液温度推定部83により推定されたブレーキ液温度と、で補正することで、目標減速度補正量を演算する。
このブレーキ液温度補正部84は、図5に示すように、乗算器841と、ブレーキ液温度補正フィルタ842と、減算器843と、を有して構成される。
【0049】
前記乗算器841は、ブレーキ液温度補正部84に入力された目標減速度と、ブレーキ操作補正部81によって演算された補正ゲインと、を乗算することでブレーキ操作対応補正量を演算する。
【0050】
前記ブレーキ液温度補正フィルタ842は、目標減速度と補正ゲインの乗算値にフィルタを通してブレーキ液温度によるブレーキ液温度対応補正量を演算する。ここで、ブレーキ液温度補正フィルタ842は、ブレーキ液温度帯ごとにフィルタを持っており、ブレーキ液温度推定部83で推定されたブレーキ液温度に最も近い温度帯のフィルタを使用してブレーキ液温度対応補正量を演算する。なお、ブレーキ液温度ごとのフィルタは、例えば、常温時の目標減速度から実減速度までの伝達関数(特性)を、それぞれの温度ごとの目標減速度から実減速度までの伝達関数で除算したものをIIRフィルタとして実装すればよい。
【0051】
前記減算器843は、ブレーキ液温度補正フィルタ842を通った信号(ブレーキ操作対応補正量)から、ブレーキ液温度補正フィルタ842を通過する前の信号(ブレーキ液温度対応補正量)との差分をとり、目標減速度補正量を演算する。
【0052】
次に、作用を説明する。
実施例1の制動力制御装置1における作用を、「電動倍力による制動力制御作用」、「目標減速度補正作用」に分けて説明する。
【0053】
[電動倍力による制動力制御作用]
制動力制御装置1での電動倍力による制動力制御作用を説明する。
マスタシリンダ圧制御機構5とマスタシリンダ圧制御部8によるインプットロッド6の推力の増幅比(以下、「倍力比α」という。)は、プライマリ液圧室2dにおけるインプットロッド6とプライマリピストン2bの軸直方向断面積(以下、それぞれ受圧面積AIR及びAPP)の比等により、以下のように決定される。
【0054】
マスタシリンダ圧Pmcの液圧調整は、
Pmc=(FIR+K×△x)/AIR=(FPP−K×△x)/APP …(2)
という式で示される圧力平衡関係をもって行われる。
ここで、圧力平衡式(2)における各要素は、以下のとおりである。
Pmc:プライマリ液圧室2dの液圧(マスタシリンダ圧)
FIR:インプットロッド6の推力
FPP:プライマリピストン2bの推力
AIR:インプットロッド6の受圧面積
APP:プライマリピストン2bの受圧面積
K:バネ6d、6eのバネ定数
Δx:インプットロッド6とプライマリピストン2bとの相対変位量
なお、実施例1では、インプットロッド6の受圧面積AIRを、プライマリピストン2bの受圧面積APPよりも小さく設定している。
ここで、相対変位量Δxは、インプットロッド6の変位(インプットロッドストローク)をXi、プライマリピストン2bの変位(ピストンストローク)をXbとして、Δx=Xb−Xiと定義する。よって、相対変位量Δxは、相対移動の中立位置では0、インプットロッド6に対してプライマリピストン2bが前進(x軸正方向側へストローク)する方向では正符号、その逆方向では負符号となる。なお、圧力平衡式(2)ではシールの摺動抵抗を無視している。プライマリピストン2bの推力FPPは、駆動モータ50の電流値から推定できる。
【0055】
一方、倍力比αは、
α=Pmc×(APP+AIR)/FIR …(3)
という式にて表すことができる。
よって、式(3)に上記式(2)のPmcを代入すると、倍力比αは、
α=(1+K×Δx/FIR)×(AIR+APP)/AIR …(4)
であらわされる式(4)のようになる。
【0056】
倍力制御では、目標のマスタシリンダ圧特性が得られるように、駆動モータ50(ピストンストロークXb)を制御する。ここで、マスタシリンダ圧特性とは、インプットロッドストロークXiに対するマスタシリンダ圧Pmcの変化特性を指す。インプットロッドストロークXiに対するピストンストロークXbを示すストローク特性と、上記目標マスタシリンダ圧特性とに対応して、インプットロッドストロークXiに対する相対変位量Δxの変化を示す目標変位量算出特性を得ることができる。検証により得られた目標変位量算出特性データに基づき、相対変位量Δxの目標値(以下、目標変位量Δx*)を算出する。
【0057】
すなわち、目標変位量算出特性は、インプットロッドストロークXiに対する目標変位量Δx*の変化の特性を示し、インプットロッドストロークXiに対応して1つの目標変位量Δx*が定まる。検出したインプットロッドストロークXiに対応して決定される目標変位量Δx*を実現するように駆動モータ50の回転(プライマリピストン2bの変位量Xb)を制御すると、目標変位量Δx*に対応する大きさのマスタシリンダ圧Pmcがマスタシリンダ2で発生する。
【0058】
ここで、上記のようにインプットロッドストロークXiをブレーキ操作量検出部7により検出し、ピストンストロークXbを回転角検出センサ50aの信号に基づき算出し、相対変位量Δxを上記検出(算出)した変位量の差により求めることができる。倍力制御では、具体的には、上記検出した変位量Xiと目標変位量算出特性とに基づいて目標変位量Δx*を設定し、上記検出(算出)された相対変位量Δxが目標変位量Δx*と一致するように駆動モータ50を制御(フィードバック制御)する。なお、ピストンストロークXbを検出するストロークセンサを別途設けることとしてもよい。
【0059】
実施例1では、踏力センサを用いることなく倍力制御を行うため、その分だけコストを低減できる。また、相対変位量Δxが任意の所定値となるように駆動モータ50を制御することにより、受圧面積比(AIR+APP)/AIRで定まる倍力比よりも大きな倍力比や小さな倍力比を得ることができ、所望の倍力比に基づく制動トルクを得ることができる。
【0060】
一定倍力制御は、インプットロッド6及びプライマリピストン2bを一体的に変位する、すなわち、インプットロッド6に対してプライマリピストン2bが常に上記中立位置となり、相対変位量Δx=0で変位するように、駆動モータ50を制御するものである。このようにΔx=0となるようにプライマリピストン2bをストロークさせた場合、上記式(4)により、倍力比αは、α=(AIR+APP)/AIRとして一意に定まる。よって、必要な倍力比に基づいてAIR及びAPPを設定し、変位量XbがインプットロッドストロークXiに等しくなるようにプライマリピストン2bを制御することで、常に一定の(上記必要な)倍力比を得ることができる。
【0061】
一定倍力制御における目標マスタシリンダ圧特性は、インプットロッド6の前進(x軸正方向側への変位)に伴い発生するマスタシリンダ圧Pmcが2次曲線、3次曲線、あるいはこれらにそれ以上の高次曲線等が複合した多次曲線(以下、これらを総称して多次曲線という)状に大きくなる。また、一定倍力制御は、インプットロッドストロークXiと同じ量だけプライマリピストン2bがストロークする(Xb=Xi)ストローク特性を有している。このストローク特性と上記目標マスタシリンダ圧特性とに基づき得られる目標変位量算出特性では、あらゆるインプットロッドストロークXiに対して目標変位量Δx*が0となる。
【0062】
これに対し、倍力可変制御は、目標変位量Δx*を正の所定値に設定し、相対変位量Δxがこの所定値となるように駆動モータ50を制御する。これにより、マスタシリンダ圧Pmcを増加する方向へインプットロッド6が前進移動するに従い、インプットロッドストロークXiに比べてプライマリピストン2bの変位量Xbが大きくなるようにするものである。上記式(4)により、倍力比αは、(1+K×Δx/FIR)倍の大きさとなる。すなわち、インプットロッドストロークXiに比例ゲイン(1+K×Δx/FIR)を乗じた量だけプライマリピストン2bをストロークさせることと同義となる。このようにΔxに応じて倍力比αが可変となり、マスタシリンダ圧制御機構5が倍力源として働いて、ドライバの要求通りの制動トルクを発生させつつペダル踏力の大きな低減を図ることができる。
【0063】
すなわち、制御性の観点からは上記比例ゲイン(1+K×Δx/FIR)は1であることが望ましいが、例えば緊急ブレーキ等によりドライバのブレーキ操作量を上回る制動トルクが必要な場合には、一時的に、1を上回る値に上記比例ゲインを変更することができる。これにより、同量のブレーキ操作量でも、マスタシリンダ圧Pmcを通常時(上記比例ゲインが1の場合)に比べて引き上げることができるため、より大きな制動トルクを発生させることができる。ここで、緊急ブレーキの判定は、例えば、ブレーキ操作量検出部7の信号の時間変化率が所定値を上回るか否かで判定できる。
【0064】
このように、倍力可変制御では、インプットロッド6の前進に対してプライマリピストン2bの前進をより進め、インプットロッド6に対するプライマリピストン2bの相対変位量Δxがインプットロッド6の前進に伴い大きくなり、これに対応してインプットロッド6の前進に伴うマスタシリンダ圧Pmcの増加が一定倍力制御よりも大きくなるように駆動モータ50を制御する方法である。
【0065】
倍力可変制御における目標マスタシリンダ圧特性は、インプットロッド6の前進(x軸正方向側への変位)に伴い発生するマスタシリンダ圧Pmcの増加が一定倍力制御よりも大きくなる(多次曲線状に増加するマスタシリンダ圧特性がより急峻になる)。また、倍力可変制御は、インプットロッドストロークXiの増加に対するピストンストロークXbの増加分が1よりも大きいストローク特性を有している。このストローク特性と上記目標マスタシリンダ圧特性とに基づき得られる目標変位量算出特性では、インプットロッドストロークXiが増加するに応じて目標変位量Δx*が所定の割合で増加する。
【0066】
また、倍力可変制御として、上記制御(マスタシリンダ圧Pmcを増加する方向へインプットロッド6が移動するに従い、インプットロッドストロークXiに比べてピストンストロークXbが大きくなるように駆動モータ50を制御すること)に加え、マスタシリンダ圧Pmcを増加する方向へインプットロッド6が移動するに従い、インプットロッドストロークXiに比べてピストンストロークXbが小さくなるように駆動モータ50を制御する。これにより、回生協調制御時、回生制動トルクの増加に応じて摩擦制動トルクを減じることができる。
【0067】
[目標減速度補正作用]
上記のように、制動力制御装置1は、目標減速度に応じてプライマリピストン2bを変位させてマスタシリンダ圧Pmcを調整する。このため、ブレーキ液温度が低い場合に減速度応答性の向上とペダルフィールを両立させるには、目標減速度補正量の演算を適切に行うことが必要である。以下、これを反映する目標減速度補正部80での目標減速度補正作用を説明する。
【0068】
まず、ブレーキ操作量検出部7において、ドライバのブレーキ操作によるインプットロッド6の変位量(ブレーキストローク量)が検出される。
一方、マスタシリンダ圧制御部8に備える目標減速度演算部において、ブレーキ操作量検出部7において検出されたブレーキストローク量に基づき、基本の目標減速度が演算される。
【0069】
次に、目標減速度補正部80のブレーキ操作補正部81において、ブレーキ操作補正部81に入力されたペダルストロークを時間微分することで、ペダルストローク速度が演算される。そして、演算されたペダルストローク速度に基づき、図4に示すマップを用い、操作速度が速いほど大きい値になるように補正ゲインが設定される。ここで、補正ゲインは、図4に示すマップから明らかなように、ブレーキ操作が遅いと0に近い値に設定され、ブレーキ操作が速いと1に近い値に設定される。
【0070】
次に、ブレーキ液温度推定部83において、外気温検出部82により計測された外気温からブレーキ液温度が推定される。このブレーキ液温度の推定の際、外気温とブレーキ液温度の対応関係を実験等により取得しておき、その関係に基づき作成したマップが用いられる。
【0071】
次に、ブレーキ液温度補正部84において、目標減速度演算部において演算された目標減速度と、ブレーキ操作補正部81で演算された補正ゲインと、の乗算値にフィルタを通して目標減速度補正量が演算される。
【0072】
すなわち、ブレーキ液温度補正部84の乗算器841では、ブレーキ液温度補正部84に入力された目標減速度と、ブレーキ操作補正部81によって演算された補正ゲインと、が乗算され、ブレーキ操作対応補正量が演算される。
【0073】
そして、ブレーキ温度帯ごとにフィルタを持っているブレーキ温度補正フィルタ842において、ブレーキ液温度推定部83で推定されたブレーキ液温度に最も近い温度帯のフィルタを選択する。そして、選択されたフィルタを使用し、ブレーキ液温度が低温であり、ブレーキ液の粘性が高い状態であっても、目標減速度から実減速度までの特性が、常温時の特性に近づくように、ブレーキ液温度対応補正量が演算される。このブレーキ液温度対応補正量は、ブレーキ温度補正フィルタ842を通したブレーキ操作対応補正量により得られる。
【0074】
次いで、ブレーキ液温度補正フィルタ842を通った信号(ブレーキ液温度対応補正量)と、減算器843でブレーキ液温度補正フィルタ842を通過する前の信号(ブレーキ操作対応補正量)との差分をとり、目標減速度補正量が演算される。つまり、ブレーキ液温度対応補正量を加算分とし、ブレーキ操作対応補正量を減算分として目標減速度補正量が演算される。
【0075】
次に、マスタシリンダ圧制御部8に備える目標減速度演算部において、ブレーキストローク量に基づき演算された目標減速度に、目標減速度補正部80による目標減速度補正量を加えることで、補正後の目標減速度とされる。そして、補正後の目標減速度に応じて、プライマリピストン2bを変位させる。これにより、プライマリ液圧室2dを、インプットロッド6の推力に加えてプライマリピストン2bの推力によって加圧し、マスタシリンダ圧Pmcが調整される。以上述べた演算処理の流れにより、実施例1の制動力制御装置1にてマスタシリンダ圧Pmcが制御される。
【0076】
上記のように目標減速度補正量を演算することにより、ブレーキ液温度が低温の時、ドライバ操作が遅いほどブレーキ操作対応補正量が小さくなり、かつ、小さいブレーキ操作対応補正量に基づくブレーキ液温度対応補正量も小さくなる。このため、ドライバ操作が遅いほど目標減速度補正量として小さな補正量が演算される。
したがって、遅いドライバ操作に対してマスタシリンダ圧Pmcが高くなりにくくなり、それによって感じるペダルフィールへの違和感を低減することができる。
【0077】
一方、ブレーキ液温度が低温であって、ドライバ操作が速い場合には、ドライバ操作が速いほどブレーキ操作対応補正量が大きくなり、かつ、大きいブレーキ操作対応補正量に基づくブレーキ液温度対応補正量も大きくなる。このため、ドライバ操作が速いほど目標減速度補正量として大きな補正量が演算される。
したがって、低温時にブレーキ液の粘性が高い状態であっても、常温時に近い液圧応答性を実現することができ、実減速度の発生遅れによる違和感を防ぐことができる。
【0078】
次に、効果を説明する。
実施例1の制動力制御装置1にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0079】
(1) 運転者のブレーキ操作を検出するブレーキ操作検出部(ブレーキ操作量検出部7)と、
前記運転者のブレーキ操作(ペダルストローク量)に基づき目標減速度を演算する目標減速度演算部(マスタシリンダ圧制御部8)と、
ブレーキ液温度を推定又は検出により取得するブレーキ液温度情報取得部(ブレーキ液温度推定部83)と、
前記ブレーキ液温度と前記ブレーキ操作(ペダルストローク速度)とから、前記ブレーキ液温度が所定の温度以下の場合、所定の温度以上のときの実減速度(常温時の実減速度)に近づくように目標減速度補正量を演算する目標減速度補正部80と、
前記目標減速度を前記目標減速度補正量により補正した補正後の目標減速度に基づき、マスタシリンダ圧Pmcを発生するマスタシリンダ圧制御部8と、
を備える。
このため、ブレーキ液温度が低い場合、液圧応答性の改善による減速度応答性の向上と、違和感を低減したペダルフィールと、を両立させることができる。
【0080】
(2) 前記目標減速度補正部80は、ブレーキ操作の操作速度(ペダルストローク速度)が遅いほど、前記目標減速度補正量を小さくする(図4)。
このため、(1)の効果に加え、ブレーキ操作が遅く、マスタシリンダ圧Pmcの変動をドライバが感じやすい操作状態においては、液圧応答性を改善しつつもペダルフィールの悪化を防ぐことができる。
【0081】
(3) 前記目標減速度補正部80は、ブレーキ操作から実際の減速度までの特性が、所定の温度以上のときの特性に近づくように前記目標減速度補正量を演算する(ブレーキ液温度補正部84)。
このため、(1),(2)の効果に加え、ブレーキ液温度によらず目標減速度から実減速度までの遅れ時間が常温状態に近づくことから、実減速度発生までの遅れ時間が変化することでドライバが感じる違和感を低減することができる。
【0082】
(4) 前記ブレーキ液温度情報取得部(ブレーキ液温度推定部83)は、外気温からの推定によりブレーキ液温度情報を取得する。
このため、(1)〜(3)の効果に加え、新たにセンサを追加せずブレーキ液温度を推定でき、目標減速度から実減速度発生までの遅れ時間を常温状態に近づけることができる。
【実施例2】
【0083】
実施例2は、目標減速度補正量を、ブレーキ液温度とブレーキ操作と湿度から演算するようにした例である。
【0084】
まず、構成を説明する。
[マスタシリンダ圧制御構成]
図6は、実施例2の制動力制御装置における目標減速度補正部を示すブロック構成図である。図7は、実施例2の制動力制御装置における目標減速度補正部のブレーキ液温度補正部を示すブロック構成図である。以下、図6及び図7に基づき、マスタシリンダ圧制御構成を説明する。
【0085】
前記マスタシリンダ圧制御部8に実装される実施例2の目標減速度補正部80は、図6に示すように、ブレーキ操作補正部81と、外気温検出部82と、湿度検出部85と、IGNタイマ86と、ブレーキ操作カウンタ87と、ブレーキ液状態推定部88と、ブレーキ液状態補正部89と、を有して構成される。
【0086】
前記ブレーキ操作補正部81と前記外気温検出部82は、実施例1のブレーキ操作補正部81と外気温検出部82と同様の構成である。
【0087】
前記ブレーキ液状態推定部88では、外気温検出部82と、湿度検出部85と、INGタイマ86と、ブレーキ操作カウンタ87の信号からブレーキ液状態を推定する。
【0088】
前記外気温検出部82の検出信号からブレーキ液温度を推定し、前記湿度検出部85の検出信号からブレーキ液の含水率を推定する。ブレーキ液温度の推定とブレーキ液の含水率の推定については、例えば、外気温とブレーキ液温度、ブレーキ液の含水率と湿度の対応関係を、それぞれ実験等により取得し、その関係に基づき作成したマップを用いればよい。
【0089】
前記IGNタイマ86では、IGN信号(イグニッション信号)がONになってからの時間をカウントし、所定時間経過するまでは0を出力し、所定時間経過後は1を出力する。ここで、所定時間は、走行によってブレーキ液温度が常温と同じ温度まで温められる時間を実験等で測定し、その時間を設定すればよい。
【0090】
前記ブレーキ操作カウンタ87では、IGN信号がONのときに、ドライバがブレーキ操作した回数をカウントし、所定回数操作されるまでは0を出力し、所定回数操作した後は1を出力する。ここで、所定回数は、ブレーキ操作によりブレーキ液温度が常温と同じ温度まで温められるブレーキ操作回数を実験等で測定し、その回数を設定すればよい。
【0091】
前記ブレーキ液温度補正部89では、目標減速度を、ブレーキ操作補正部81で演算された補正ゲインと、ブレーキ液状態推定部88により推定されたブレーキ液状態と、自動ブレーキ要求信号と、に基づいて補正する。
このブレーキ液状態補正部89は、図7に示すように、自動ブレーキ判断部845と、ブレーキ液状態補正フィルタ844と、減算器843と、を有して構成される。
【0092】
前記自動ブレーキ補正部845には、ブレーキ液状態補正部89に入力された目標減速度と、ブレーキ操作補正部81によって演算された補正ゲインと、自動ブレーキ要求信号とが入力される。ここで、自動ブレーキとは、ドライバがペダル操作していないにもかかわらず、車両に搭載された他の制御システムからブレーキ要求がある場合、自動ブレーキ要求信号にしたがって駆動モータ50への指令によりマスタシリンダ圧Pmcを発生させるブレーキをいう。自動ブレーキ要求信号が1(自動ブレーキが要求されている状況)の場合、自動ブレーキ補正部845は、目標減速度をそのまま出力する。自動ブレーキ要求信号が0(自動ブレーキが要求されていない状況)の場合、自動ブレーキ補正部845は、目標減速度と、ブレーキ操作補正部81で演算された補正ゲインと、を乗算したものを出力する。
【0093】
前記ブレーキ状態補正フィルタ844は、自動ブレーキ補正部845からのブレーキ操作対応補正量と、ブレーキ液状態推定部88と、を入力し、ブレーキ操作対応補正量にフィルタを通してブレーキ液状態によるブレーキ液状態対応補正量を演算する。ここで、ブレーキ液状態補正フィルタ844は、ブレーキ液温度とブレーキ液の含水率ごとにフィルタを持っており、ブレーキ液状態推定部88で推定されたブレーキ液状態に最も近い状態のフィルタを使用して補正量を演算する。なお、ブレーキ液状態補正フィルタ844は、実施例1と同様の方法で実装すればよい。
なお、「電気自動車の構成」、「制動力制御装置の全体構成」は、実施例1と同様であるので、図示並びに説明を省略する。
【0094】
次に、作用を説明する。
【0095】
[目標減速度補正作用]
ブレーキ液状態推定部88においては、IGNタイマ86もしくはブレーキ操作カウンタ87の少なくともいずれかの出力が1であれば、常温状態であると推定される。一方、IGNタイマ86もしくはブレーキ操作カウンタ87の両方の出力が0であれば、推定したブレーキ液温度とブレーキ液の含水率により、ブレーキ液状態が推定される。
【0096】
自動ブレーキ補正部845においては、自動ブレーキ要求信号が1の場合、目標減速度がそのまま出力される。一方、自動ブレーキ要求信号が0の場合、目標減速度と、ブレーキ操作補正部81で演算された補正ゲインと、を乗算したブレーキ操作対応補正量が出力される。
【0097】
次に、ブレーキ状態補正フィルタ844を通してブレーキ液状態によるブレーキ液状態対応補正量が演算される。ここで、ブレーキ液状態補正フィルタ844は、ブレーキ液温度とブレーキ液の含水率ごとにフィルタを持っており、ブレーキ液状態推定部88で推定されたブレーキ液状態に最も近い状態のフィルタを使用してブレーキ状態対応補正量が演算される。
【0098】
そして、ブレーキ液状態補正フィルタ844を通った信号(ブレーキ液状態対応補正量)と、減算器843でブレーキ液状態補正フィルタ844を通過する前の信号(ブレーキ操作対応補正量または目標減速度)との差分をとり、目標減速度補正量が演算される。つまり、ブレーキ液状態対応補正量を加算分とし、ブレーキ操作対応補正量を減算分として目標減速度補正量が演算される。
【0099】
次に、マスタシリンダ圧制御部8に備える目標減速度演算部において、ブレーキストローク量に基づき演算された目標減速度に、実施例2の目標減速度補正部80による目標減速度補正量を加えることで、補正後の目標減速度とされる。そして、補正後の目標減速度に応じて、プライマリピストン2bを変位させる。これにより、プライマリ液圧室2dを、インプットロッド6の推力に加えてプライマリピストン2bの推力によって加圧し、マスタシリンダ圧Pmcを調整する。以上述べた演算処理の流れにより、実施例2の制動力制御装置1にてマスタシリンダ圧Pmcが制御される。
【0100】
上記のように、実施例2では、ブレーキ状態補正フィルタ844を設定することで、ブレーキ液温度と含水率の両方から、より実際のブレーキ液状態に近いフィルタを選択できるようになる。このため、より目標減速度から実減速度までの特性が、常温時の特性に近づくように、目標減速度補正量を演算できるようになる。
なお、他の作用は、実施例1と同様であるので、説明を省略する。
【0101】
次に、効果を説明する。
実施例2の制動力制御装置1にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0102】
(5) 前記目標減速度補正部80は、自動ブレーキによる制動の場合、前記目標減速度補正量を大きくする。
このため、(1)〜(4)の効果に加え、自動ブレーキによる制動で、マスタシリンダ圧Pmcの変動をドライバが感じない、あるいは、ドライバが感じにくい場合には、液圧応答性がより改善される。この結果、目標減速度に対して実減速度の発生が遅れることによるドライバの違和感を低減することができる。
【0103】
(6) 前記目標減速度補正部80は、ブレーキ操作が所定の回数に達すると、前記目標減速度補正量を零にする。
このため、(1)〜(5)の効果に加え、外気温が低い状態でもブレーキ操作によりブレーキ液温度が上昇したことによる応答性の変化に追従できるようになる。この結果、目標減速度から実減速度発生までの遅れ時間を精度よく常温状態に近づけることができるようになり、ドライバが感じる違和感を低減することができる。
【0104】
(7) 前記目標減速度補正部80は、イグニッションスイッチを投入した後、所定の時間が経過すると、前記目標減速度補正量を零にする。
このため、(1)〜(6)の効果に加え、外気温が低い状態でもイグニッションスイッチを投入した後、内燃機関等の排熱によりブレーキ液温度が上昇したことによる応答性の変化に追従できるようになる。この結果、目標減速度から実減速度発生までの遅れ時間を精度よく制御できるようになり、ドライバが感じる違和感を低減することができる。
【0105】
(8) 湿度を検出する湿度検出部85と、を備え、
前記目標減速度補正部80は、ブレーキ液温度とブレーキ操作と湿度から、前記ブレーキ液温度が所定の温度以下の場合、所定の温度以上のときの実減速度に近づくように前記目標減速度補正量を演算する(ブレーキ液状態推定部88)。
このため、(1)〜(7)の効果に加え、湿度が高くよりブレーキ液粘性が高くなった状態にも対応することができる。この結果、目標減速度から実減速度発生までの遅れ時間を精度よく制御できるようになり、ドライバが感じる違和感を低減することができる。
【0106】
以上、本発明の制動力制御装置を実施例1及び実施例2に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0107】
実施例1,2では、ブレーキ液温度情報取得部として、外気温からの推定によりブレーキ液温度情報を取得する例を示した。しかし、ブレーキ液温度情報は、例えば、ブレーキ液温度を温度センサにより直接検出することで取得しても良い。
【0108】
実施例1,2では、ブレーキ液温度が所定値以下かどうかで、低温状態か否かを判定する旨の記載していなく、ブレーキ液温度補正フィルタ842やブレーキ液状態補正フィルタ844のフィルタ設定に委ねる例を示した。しかし、ブレーキ液温度やブレーキ液状態を監視し、ブレーキ液の粘性が高いとの判定をしてから目標減速度補正量を演算するような例としても良い。また、ブレーキ液温度やブレーキ液状態の判定が無くとも、マップ上で、所定値以下のブレーキ液温度で目標減速度に補正が入るような例としても良い。
【0109】
実施例1の図5では、目標減速度に対してブレーキ操作補正部の信号(ゲイン)をかけてブレーキ操作対応補正量を演算している。しかし、図5中のブレーキ液温度補正フィル842で、ブレーキ液温度対応補正量に対してブレーキ操作補正部の信号(ゲイン)をかけても良い。あるいは、ブレーキ液温度補正フィルタ842の出力に対してブレーキ操作補正部の信号(ゲイン)をかけても良い。
【0110】
実施例1,2では、ブレーキ操作対応補正量(自動ブレーキ要求時含む)をフィルタに通すことによりブレーキ液温度対応補正量あるいはブレーキ液状態対応補正量を演算する例を示した。しかし、ブレーキ液温度対応補正量あるいはブレーキ液状態対応補正量に対し、フィルタに通したり、ゲインを掛け合わせたりすることで、ブレーキ操作対応補正量(自動ブレーキ要求時含む)を演算する例としても良い。
【0111】
実施例1,2では、本発明の制動力制御装置を前輪駆動の電気自動車に適用する例を示した。しかし、本発明の制動力制御装置は、後輪駆動の電気自動車やハイブリッド車やエンジン車等の他の車両に対しても適用することができる。要するに、目標減速度に基づきマスタシリンダ圧を発生するようにした電動倍力による制動力制御装置を搭載した車両であれば適用できる。
【符号の説明】
【0112】
1 制動力制御装置
BP ブレーキペダル
2 マスタシリンダ
4a〜4d ホイルシリンダ
5 マスタシリンダ圧制御機構
6 インプットロッド
7 ブレーキ操作量検出部(ブレーキ操作検出部)
8 マスタシリンダ圧制御部(目標減速度演算部)
80 目標減速度補正部
81 ブレーキ操作補正部
82 外気温検出部
83 ブレーキ液温度推定部(ブレーキ液温度情報取得部)
84 ブレーキ液温度補正部
841 乗算器
842 ブレーキ液温度補正フィルタ
843 減算器
844 ブレーキ液状態補正フィルタ
845 自動ブレーキ判断部
85 湿度検出部
86 IGNタイマ
87 ブレーキ操作カウンタ
88 ブレーキ液状態推定部
89 ブレーキ液状態補正部
Pmc マスタシリンダ圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者のブレーキ操作を検出するブレーキ操作検出部と、
前記運転者のブレーキ操作に基づき目標減速度を演算する目標減速度演算部と、
ブレーキ液温度を推定又は検出により取得するブレーキ液温度情報取得部と、
前記ブレーキ液温度と前記ブレーキ操作とから、前記ブレーキ液温度が所定の温度以下の場合、所定の温度以上のときの実減速度に近づくように目標減速度補正量を演算する目標減速度補正部と、
前記目標減速度を前記目標減速度補正量により補正した補正後の目標減速度に基づき、マスタシリンダ圧を発生するマスタシリンダ圧制御部と、
を備えることを特徴とする制動力制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載された制動力制御装置において、
前記目標減速度補正部は、ブレーキ操作の操作速度が遅いほど、前記目標減速度補正量を小さくする
ことを特徴とする制動力制動装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載された制動力制御装置において、
前記目標減速度補正部は、自動ブレーキによる制動の場合、前記目標減速度補正量を大きくする
ことを特徴とする制動力制動装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか1項に記載された制動力制御装置において、
前記目標減速度補正部は、ブレーキ操作から実際の減速度までの特性が、所定の温度以上のときの特性に近づくように前記目標減速度補正量を演算する
ことを特徴とする制動力制動装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか1項に記載された制動力制御装置において、
前記ブレーキ液温度情報取得部は、外気温からの推定によりブレーキ液温度情報を取得する
ことを特徴とする制動力制御装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れか1項に記載された制動力制御装置において、
前記目標減速度補正部は、ブレーキ操作が所定の回数に達すると、前記目標減速度補正量を零にする
ことを特徴とする制動力制御装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れか1項に記載された制動力制御装置において、
前記目標減速度補正部は、イグニッションスイッチを投入した後、所定の時間が経過すると、前記目標減速度補正量を零にする
ことを特徴とする制動力制御装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7の何れか1項に記載された制動力制御装置において、
湿度を検出する湿度検出部と、を備え、
前記目標減速度補正部は、ブレーキ液温度とブレーキ操作と湿度から、前記ブレーキ液温度が所定の温度以下の場合、所定の温度以上のときの実減速度に近づくように前記目標減速度補正量を演算する
ことを特徴とする制動力制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−10372(P2013−10372A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142584(P2011−142584)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】