説明

制御パネル装置

【課題】計器のケースを貫通するカプラの防水密封度が適正になっているかどうかを外観から容易に認識できるようにする。
【解決手段】計器のケース(下部ケース)3に固定されるカプラ4は、ケース3を貫通するスリーブ41とスリーブ41から周囲に拡張されたフランジ43とを有する。フランジ43にはシールリング18を保持する環状溝44が形成されている。シールリング18の適正な圧縮量が外観から分かるように、スリーブ41の外周に目印としての段41aを設ける。この段41aはシールリング18が適正量圧縮されたときに下部ケース3の外表面3aと整列する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御パネル装置に関し、特に、防水性を高めた車両用計器として好適な制御パネル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には速度計やエンジン回転数計等が配置され、これら計器は計器ボックスに収容されて車両に取り付けられている。特開平8−142709号公報には、計器ボックス裏面側に配されて電気信号を送るためのフレキシブルプリント配線板(FPC)をロアカバー(裏面カバー)で覆うとともに、FPCへ車両側から電気信号を送るためのターミナルを有する中間コネクタを設け、この中間コネクタの鍔部がロアカバーと重なり合うように構成した防水性の車両用計器が記載されている。
【特許文献1】特開平8−142709号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載された車両用計器のロアカバーには中間コネクタが外部に突出可能となるように貫通した取り付け孔が形成されている。このような取り付け孔とロアカバーとの間には一般に防水性を確保するためにシール部材が使用されるが、シール部材が確実に被シール部材と密着していなければ良好な密封性は期待できない。通常、シール部材を被シール部材に密着させるためにねじによる締め付けが行われるが、適当なねじの締め付け力を得ることは容易でない。ところが、従来、トルク制限付き工具等を使用する以外は作業者の個々の感覚で適切な締め付け力を判断できる簡易的な手段はなかった。
【0004】
本発明の目的は、筐体からカプラを外部突出させるため該筐体に設けられる貫通した取り付け孔のシール性能を高めることができる制御パネル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するための本発明は、電気回路を収容した筐体と、前記電気回路に外部からの電気配線を接続するためのカプラであって、前記筐体に形成された取付孔を貫通するスリーブおよび該スリーブから外周方向に張り出したフランジからなるカプラとを有し、前記フランジと前記筐体内面との間に配置された弾性シール部材と、前記フランジを前記筐体内面に押圧する締結手段と、前記締結手段によって前記弾性シール部材の圧縮量が予定の適正値になるまで前記フランジが押圧された状態で、前記取付孔部分における筐体の外表面と同一面に整列するように前記スリーブの外周面に付加された目印とを具備している点に第1の特徴がある。
【0006】
また、本発明は、前記弾性シール部材を前記フランジに保持する環状溝が該フランジに形成されている点に第2の特徴がある。
【0007】
また、本発明は、前記筐体の内面で前記スリーブのフランジ外周に隣接して立設された環状部材を具備した点に第3の特徴がある。
【0008】
さらに、本発明は、前記目印が、前記スリーブの厚さを変化させて該スリーブの外周面に形成した段である点に第4の特徴がある。
【0009】
また、さらに、本発明は、車両用計器として構成された制御パネル装置である点に第5の特徴がある。
【発明の効果】
【0010】
第1の特徴を有する本発明によれば、例えばねじからなる締結手段で弾性シール部材を圧縮して所定の密封度を得る場合に、弾性シール部材が所定の密封度が得られるまで圧縮されたかどうかを、目印が前記筐体外表面と整列しているかどうかで判断できる。したがって、カプラを筐体に固定する際に、ねじの締め付け程度を、目印によって客観的にかつ容易に判断できるので、作業の能率を上げることができるし、作業者が違っても常に一定の密封度を確保することができる。
【0011】
第2の特徴を有する本発明によれば、弾性シール部材をカプラに保持させた状態で該カプラを筐体に組み合わせることができるので、作業の能率を向上させることができる。
【0012】
第3の特徴を有する本発明によれば、車両側の電気配線が接続されるカプラの周囲における筐体の部分が補強されるし、仮に弾性シール部材による密封度が低下したとしても、筐体内に浸入した水分が直ちに回路付近まで進入するのを環状部材で防御することができる。
【0013】
第4の特徴を有する本発明によれば、スリーブ表面に形成された段と筐体の外表面とが整列したことをもって所定の密封度が得られていることを認識することができる。
【0014】
第5の特徴を有する本発明によれば、例えば、不整地走行車両など過酷な外部環境で使用される車両における計器の防水性、防塵性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。図6は、本発明の一実施形態に係る制御パネル装置の一例である車両用計器を備えた車両の右後方から見た斜視図、図7は同車両の左側面図である。車両30は4輪駆動方式の不整地走行車両(ATV)である。車両30のほぼ中央にエンジンEおよび変速機31を含むパワーユニット32が縦置きで配置される。パワーユニット32は前方に配置したフロントファイナルアセンブリ33、および後方に配置されたリヤファイナルアセンブリ34にエンジンEの出力を伝達できるように接続される。
【0016】
車体フレーム37は、パワーユニット32の下部を支持する左右一対のロアフレーム37Aと、ロアフレーム37Aの上部に側面視でパワーユニット32を囲むように取り付けたアッパフレーム37Bと、アッパフレーム37Bの前上部およびロアフレーム37Aの前端部のそれぞれを連結する左右一対のフロントフレーム37Cと、フロントフレーム37Cおよびアッパフレーム37Bのそれぞれを連結する左右一対のフロント連結フレーム37Dと、アッパフレーム37Bの後上部から後方へ延ばすとともに中間部をロアフレーム37Aの後端に途中を連結した左右一対のリアアッパフレーム37Eとを備える。
【0017】
エンジンEの吸気側にはスロットルボディ38を介してエアクリーナ39が接続され、排気側には排気管52およびマフラ54とを備える。
【0018】
フロントファイナルアセンブリ33は、左右一対のドライブシャフト55を介して左右の前輪56,57側に連結される。フロントファイナルアッセンブリ33は、パワーユニット32からフロントファイナルアセンブリ34へ伝える駆動力を断続する駆動切り換え部58を後部に付設する。すなわち、駆動切り換え部58は、前輪56,57を駆動または非駆動とすることで車両30を後輪駆動または4輪駆動に切り替える。駆動力切り換え部58は、操作レバー59を操作されることによって前輪56,57を駆動可能状態に切り替える。リアファイナルアセンブリ34は左右一対のドライブシャフト60を介して左右の後輪61,62側に連結される。
【0019】
エンジンEの上部には運転者用のシート63が配され、シート63の前方には燃料タンク64が設けられる。エンジンEの両側下部には乗員が足を置くためのステップ65を備える。燃料タンク64の前方には車体フレーム37に取り付けられたステアリングシャフト66でステアリングハンドル67が支持される。ステアリングハンドル67の中央には計器パネル90が配される。計器パネル90の側部には、詳細を後述するイグニッションスイッチ35が設けられる。ステアリングハンドル67の左グリップ近傍には、変速機31の操作スイッチや、スタータスイッチ、エンジンストップスイッチ、ライティングスイッチ、ディマースイッチ等を含むコンビネーションスイッチ36が設けられる。
【0020】
車両の前部には、フロントキャリア69が設けられ、後部にはリアキャリア70が設けられる。
【0021】
図2は、上記ATV等、高い防水防塵性が要求される車両に装着される計器ボックスの背面斜視図である。計器ボックス1は、上部(表面側)ケース2と下部(裏面側)ケース3とからなる。計器ボックス1は、例えば、車両の速度、ギヤ位置、残燃料量等をデジタル表示するLEDやLED表示回路を設ける基板15(後述)を収容する。下部ケース3は、カプラ(雄カプラ)4を貫通させられるように形成された取付孔5を有している。雄カプラ4は車両側から電気配線つまりハーネス7を介して供給される電気信号を、上部ケース2に収容された基板上のLED表示回路に接続する。雄カプラ4は車両側から延長されるハーネス7に接続された雌カプラ8と結合される。雄カプラ4は下部ケース3の外側から挿入される4本の止めねじ6(1本は図示せず)で下部ケース3に固定される。雄カプラ4の取付構造はさらに後述する。
【0022】
下部ケース3には第1および第2のステー9,10と第3のステー11とが設けられ、上部ケース2には、第4のステー12が設けられる。これらのステー9〜12は下部ケース3や上部ケース2にそれぞれ一体的に形成される。計器ボックス1は、これら第1〜第4のステー9〜12を車体フレームにボルトなどを使って取り付けることによって固定される。
【0023】
次に、雄カプラ4の取付構造を説明する。図1はボックス1の横断面図であり、図8は図1の要部拡大図である。図1,図8において図2と同符号は同一または同等部分を示す。上部ケース2および下部ケース3は、上部ケース2が下部ケース3を覆うように組み合わされて複数本の止めねじ(1本だけ図示)13によって結合される。下部ケース3にはボス14が形成され、このボス14の上に基板15が固定される。基板15上にはLED表示回路16が設けられ、上部ケース2には、LEDによる表示を外部から見透かせるようにフロントガラス17が嵌め込まれる。
【0024】
下部ケース3の取付孔5に貫通される外側スリーブ(筒体)41を有する雄カプラ4は、外側スリーブ41から延長された内側スリーブ42を備える。内側スリーブ42は外周に張り出したフランジ43を有し、フランジ43は、下部ケース3の内面に対向する側が開放された環状溝44が形成された外縁45を有する。環状溝44には、シールリング18が嵌め込まれる。シールリング18を予め環状溝44に嵌めて保持させた状態で雄カプラ4を下部ケース3に組み合わせれば作業が容易になる。
【0025】
シールリング18は締め代を持たせるため、環状溝44の深さより大きい厚さを有している。つまり、シールリング18は環状溝44から突出部分を有するように装着される(詳細は図4,図5参照)。そして、このフランジ43に形成されるねじ孔に前記止めねじ6を下部ケース3の外側から貫通させて係合させ、フランジ43に螺送する。止めねじ6を送り込むに連れてフランジ43は下部ケース3の内面に引き寄せられ、シールリング18が下部ケース3の内面に押し付けられる。
【0026】
こうして、シールリング18を下部ケース3の内面に押し付けることにより、雄カプラ4と下部ケース3との間が密封されて取付孔5から計器ボックス1内への水分の浸入が防止される。
【0027】
下部ケース3の内面にはフランジ43の外周に沿って環状の補強リブ19を設け、下部ケース3の外面には雄カプラ4から外方に延びる複数条の補強リブ20を設ける。コネクタの抜き差しによって下部ケース3の貫通孔4の周囲には比較的大きい力が作用するからである。なお、内面の補強リブ19は、補強だけでなく、例えば、シールリング18が劣化して密封度が低下し、水分が浸入した場合に計器ボックス1の内部つまり回路部分まで浸透するのを防止する防護壁として機能する。
【0028】
雄カプラ4を止めねじ6で取り付ける場合、止めねじ6の廻し量つまり螺送量によってシールリング18による密封度が変わる。そこで、一定の適度な密封度を確保するため目安を決めておくのが望ましい。本実施形態では、雄カプラ4の外側スリーブ41が下部ケース3から突出している量をシールリング18による密封度の目安とできるようにした。適度にシールリング18が締め付けられたときに外側スリーブ41が下部ケース3から突出している量を実験的に求め、その目印を外側スリーブ41に付けておく。例えば、図1に示すように、外側スリーブ41を端部側で外形寸法を小さくして段41aを付けておき、シールリング18に対して適度の締め付けが行われたときに、この段41aが下部ケース3の外表面3aつまり取付孔5の周囲の面と一致するように形状を決定しておく。
【0029】
このようにすれば、作業者は、勘によらず、外側スリーブ41の外周の段41aと下部ケース3の外表面3aとの一致のみに注意して止めねじ6による締め付け作業をすればよい。したがって、作業が楽になるし、作業者が変わっても一定の密封度が確保できる。
【0030】
なお、密封度の目安は段に限らず、外側スリーブ41を取り巻く線であってもよいし、外側スリーブ41を2色に色分けしてその境界を目安としてもよい。
【0031】
図3は、雄カプラ4の正面図、図4は同側面図、図5は図3のA−A断面図である。これらの図において、雄カプラ4の外側スリーブ41と内側スリーブ42との間には絶縁壁21が設けられ、この絶縁壁21には複数の端子22が貫通している。フランジ43の最外周にはシールリング18が設けられ、図4,図5に示すように環状溝44から突出して締め代Cを有している。環状溝44を形成する一方の壁つまり内側の壁44aのさらに内側には、止めねじ6を挿入する止めねじ孔23が止めねじ6の本数と同数つまり4個所に設けられる。止めねじ孔23は底部が閉塞していて止めねじ孔23からの浸水が生じないようにしている。外側スリーブ41には、段41aが設けられており、この段41aは上述した止めねじ6の締め付けの「目安」になる。
【0032】
なお、上記車両用計器の組み付ける際、雄カプラ4を予め基板15に組み立てておく。こうしておいて、その後に雄カプラ4をケースの外側から止めねじ6で取り付けることができるようにすることにより、次の利点が生じる。
【0033】
車両用計器の機能として、フロントガラス17を透して外部から基板15上に設けられたLEDなどの表示素子が見やすいように、かつ見栄えがよいようになっていることが必要である。したがって、フロントガラス17に対して所定の位置に基板15が位置していなければならない。しかし、ケースと基板(雄カプラ4を含む)との公差により、組み立て後に所定の位置に基板15が収まっているとは限らない。そこで、位置の修正が必要となるが、従来の構造では組み立て後に基板15の位置を調整することは困難であった。
【0034】
本実施形態の車両用計器では、外部から止めねじ6を使って雄カプラ4を止めたときに基板15の位置が確定するので、止めねじ6の締め付け作業の中で、シールリング18の圧縮量調整とともに基板15の位置の微調整を行うことができる。
【0035】
上述のように、本実施形態では、止めねじ6の締め付けによるシールリング18の適正圧縮量を、雄カプラ4の外周に形成した目印つまり段が下部ケース3の外表面と整列したかどうかで判断できる。
【0036】
なお、本実施形態では、カプラを下ケースの外側から止めねじで締め付けて固定するようにしたが、下ケースの内側から止めねじでカプラを締め付けて固定する形式に本発明を適用することもできる。
【0037】
また、本実施形態では、車両用計器の例を挙げて本発明を説明したが、本発明は車両用計器に限らず、内部の電気回路を電気配線で外部と接続している構造を有し、高い防水性や防塵性を要求される制御パネル装置一般に広く適用できることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用計器の断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る車両用計器の斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る車両用計器に含まれるカプラの正面図である。
【図4】図3に示したカプラの側面図である。
【図5】図3に示したカプラのA−A断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る制御パネル装置の一例である車両用計器を備えた車両の右後方から見た斜視図である。
【図7】車両の左側面図である。
【図8】図1の要部拡大図である。
【符号の説明】
【0039】
1…車両用計器、 2…上部ケース、 3…下部ケース、 4…カプラ、 5…取付孔、 6…止めねじ、 7…ハーネス、 8…プラグ、 16…LED表示回路、 18…シールリング、 19…補強リブ、 41…外側スリーブ、 41a…段(目印)、 43…フランジ、 44…環状溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気回路を収容した筐体と、前記電気回路に外部からの電気配線を接続するためのカプラであって、前記筐体に設けられた取付孔を貫通するスリーブおよび該スリーブから外周方向に張り出したフランジとからなるカプラとを有する制御パネル装置において、
前記フランジと前記筐体内面との間に配置された弾性シール部材と、
前記フランジを前記筐体内面に押圧する締結手段と、
前記締結手段によって前記弾性シール部材の圧縮量が予定の適正値になるまで前記フランジが押圧された状態で、前記取付孔部分における筐体の外表面と同一面に整列するように前記スリーブの外周面に付加された目印とを具備していることを特徴とする制御パネル装置。
【請求項2】
前記弾性シール部材を前記フランジに保持する環状溝が該フランジに形成されていることを特徴とする請求項1記載の制御パネル装置。
【請求項3】
前記筐体の内面で前記スリーブのフランジ外周に隣接して立設された環状部材を具備したことを特徴とする請求項1または2記載の制御パネル装置。
【請求項4】
前記目印が、前記スリーブの厚さを変化させて該スリーブの外周面に形成した段であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の制御パネル装置。
【請求項5】
車両用計器として構成されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の制御パネル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−192720(P2007−192720A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−12407(P2006−12407)
【出願日】平成18年1月20日(2006.1.20)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】