説明

制御装置、転写媒体の製造方法及びプログラム

【課題】転写される画像の画質を向上させつつ、接着液の消費を抑える。
【解決手段】本発明は、カラーインクを吐出するノズルと、接着液を吐出するノズルとを備えた記録装置を制御する制御装置であって、前記カラーインクで形成されるカラードットから構成される前記カラー画像を示すカラー画像データを生成し、前記接着液で形成されるドットである接着ドットから構成される接着画像を示す接着画像データを生成するステップであって、前記カラーインクの単位面積当たりの塗布量に応じた量の前記接着液が塗布されるように前記接着ドットを配置させる前記接着画像データを生成するとともに、前記カラーインクの単位面積当たりの塗布量がゼロの場合における前記接着液の塗布量が、前記接着画像の領域の内外で異なるように、前記接着ドットを配置させて前記接着画像データを生成することを特徴とする制御装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、転写媒体の製造方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクを基材上に付着させて形成した文字その他の画像のパターンを、被転写媒体に転写する転写媒体が知られている。この転写媒体において、例えば、特許文献1に記載されるように、パターン形状に合わせて、例えばスクリーン印刷版を用いて当該パターン上に接着液を塗布する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−314879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スクリーン印刷版の他、フレキソ、及びグラビア等の印刷版を用いて画像パターンや接着液パターンを形成する場合、転写媒体の少量多品種生産では製版にコストがかかるため、不向きである。そこで、転写媒体の少量多品種生産において製造コストを安価に抑えるため、インクジェットヘッドからインク及び接着液を吐出して基材に付着させることにより、基材上に着色層及び接着層を順に形成して転写媒体を製造する方法が考えられる。
【0005】
インクジェット方式で形成されるカラー画像は、多数のカラードットから構成されるため、画像の淡い領域ではカラードットが分散して配置されることになる。このため、インクジェット方式で転写媒体を製造する際には、分散配置されたドットも被転写媒体に転写できるように、接着液を塗布する必要がある。したがって、カラードットがほとんど形成されないような淡い領域においても、接着液を塗布する必要がある。
【0006】
ここで、カラードットが形成されない領域(カラーインクの単位面積当たりの塗布量がゼロの領域)に接着液を塗布すべきか否かが問題となる。仮に、カラードットの形成されない全ての領域に接着液を塗布しないことにすると、被転写媒体に転写された画像の光沢性が不均一になるおそれがある。一方、仮に、カラードットが形成されない全ての領域にも所定量の接着液を塗布することにすると、接着液の消費が多くなり、コストがかかってしまう。
【0007】
本発明は、転写される画像の画質を向上させつつ、接着液の消費を抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための主たる発明は、カラーインクを吐出するノズルと、接着液を吐出するノズルとを備えた記録装置を制御する制御装置であって、前記カラーインクで形成されるカラードットから構成される前記カラー画像を示すカラー画像データを生成し、前記接着液で形成されるドットである接着ドットから構成される接着画像を示す接着画像データを生成するステップであって、前記カラーインクの単位面積当たりの塗布量に応じた量の前記接着液が塗布されるように前記接着ドットを配置させる前記接着画像データを生成するとともに、前記カラーインクの単位面積当たりの塗布量がゼロの場合における前記接着液の塗布量が、前記接着画像の領域の内外で異なるように、前記接着ドットを配置させて前記接着画像データを生成することを特徴とする制御装置である。
【0009】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1Aは、基材の構成の説明図である。図1Bは、基材の表面に形成される着色層及び接着層の説明図である。図1Cは、転写媒体から被転写媒体への転写の様子の説明図である。
【図2】図2は、記録装置1の全体構成ブロック図である。
【図3】図3Aは、記録装置1の概略断面図であり、図3Bは、記録装置1の概略上面図である。
【図4】図4は、ヘッド41の下面のノズルの説明図である。
【図5】図5は、描画された画像の説明図である。
【図6】図6は、記録ドライバーが行う処理のフロー図である。
【図7】図7Aは、ハーフトーン処理前の画像データの説明図である。図7Bは、ハーフトーン処理後の画像データの説明図である。
【図8】図8は、接着画像領域設定処理の説明図である。
【図9】図9は、S105の処理を説明するためのグラフである。
【図10】図10A及び図10Bは、S105の処理の説明図である。
【図11】図11は、参考例の記録方法の説明図である。
【図12】図12は、インターレース方式で着色層(カラー画像)を形成した後に接着層(接着画像)を形成するときの記録方法の説明図である。
【図13】図13A及び図13Bは、着色層と接着層の形成順序の説明図である。
【図14】図14A及び図14Bは、転写媒体上のドットの説明図である。
【図15】図15Aは、被転写媒体を見るときの2つの視点の説明図である。図15Bは、転写された画像を視点(1)から見た様子の説明図である。図15C及び図15Dは、転写された画像を視点(2)から見た様子の説明図である。図15Cは、比較用の説明図であり、前述のS105において接着ドットを追加しなかった場合の説明図である(図10Aも参照)。図15Dは、本実施形態の説明図であり、S105により接着ドットが追加された場合の説明図である(図10Bも参照)。
【図16】図16は、変形例の転写媒体の説明図である。
【図17】図17A及び図17Bは、混在層の形成方法の概要の説明図である。
【図18】図18は、変形例の記録方法の説明図である。
【図19】図19は、図18の領域Aにおける8個のラスタラインのドットの様子の説明図である。
【図20】図20A及び図20Bは、膨張処理の説明図である。
【図21】図21A及び図21Bは、カラー画像の解像度と接着画像の解像度の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
【0012】
カラーインクを吐出するノズルと、接着液を吐出するノズルとを備えた記録装置を制御する制御装置であって、前記カラーインクで形成されるカラードットから構成される前記カラー画像を示すカラー画像データを生成し、前記接着液で形成されるドットである接着ドットから構成される接着画像を示す接着画像データを生成するステップであって、前記カラーインクの単位面積当たりの塗布量に応じた量の前記接着液が塗布されるように前記接着ドットを配置させる前記接着画像データを生成するとともに、前記カラーインクの単位面積当たりの塗布量がゼロの場合における前記接着液の塗布量が、前記接着画像の領域の内外で異なるように、前記接着ドットを配置させて前記接着画像データを生成することを特徴とする制御装置が明らかになる。
このような制御装置によれば、転写される画像の画質を向上させつつ、接着液の消費を抑えるように、記録装置を制御することができる。
【0013】
前記記録装置に、前記カラー画像データに従って基材に前記カラードットを形成させると共に、前記接着画像データに従って前記基材に前記接着ドットを形成させることによって、前記記録装置に前記転写媒体を製造させることが望ましい。このような転写媒体を用いれば、転写された画像の画質が向上する。
【0014】
前記カラー画像データを基準にして、ドットを形成すべき画素を更に追加することによって、前記接着画像データを生成することが望ましい。これにより、カラードットが形成される画素には、接着ドットが必ず形成されることになる。
【0015】
前記接着画像の領域内では、前記カラーインクの単位面積当たりの塗布量が少なくなるほど、前記カラーインクの塗布量に対する前記接着液の塗布量の割合が多くなるように、前記接着画像データを生成することが望ましい。これにより、転写媒体の表面をできるだけ平滑にでき、転写性を向上させることができる。
【0016】
前記接着画像の領域を、前記カラー画像の領域よりも広い範囲に設定することが望ましい。これにより、カラー画像の転写性が向上する。
【0017】
カラーインクで形成されるカラードットから構成される前記カラー画像を示すカラー画像データを生成するステップと、接着液で形成されるドットである接着ドットから構成される接着画像を示す接着画像データを生成するステップであって、前記カラーインクの単位面積当たりの塗布量に応じた量の前記接着液が塗布されるように前記接着ドットを配置させる前記接着画像データを生成するステップと、を備え、前記カラーインクの単位面積当たりの塗布量がゼロの場合における前記接着液の塗布量が、前記接着画像の領域の内外で異なるように、前記接着ドットを配置させて前記接着画像データが生成されることを特徴とする転写媒体の製造方法が明らかになる。
このような転写媒体の製造方法によれば、転写される画像の画質を向上させつつ、接着液の消費を抑えることができる。
【0018】
基材にカラーインクと接着液を塗布して転写媒体を製造する装置を制御するコンピューターに、前記カラーインクで形成されるカラードットから構成される前記カラー画像を示すカラー画像データを生成するステップと、前記接着液で形成されるドットである接着ドットから構成される接着画像を示す接着画像データを生成するステップであって、前記カラーインクの単位面積当たりの塗布量に応じた量の前記接着液が塗布されるように前記接着ドットを配置させる前記接着画像データを生成するステップと、を実行させるプログラムであって、前記カラーインクの単位面積当たりの塗布量がゼロの場合における前記接着液の塗布量が、前記接着画像の領域の内外で異なるように、前記接着ドットを配置させて前記接着画像データが生成されることを特徴とするプログラムが明らかになる。
このようなプログラムによれば、転写される画像の画質を向上させつつ、接着液の消費を抑えることができる。
【0019】
===転写媒体の基本構造===
まず、転写媒体の構造について簡単に説明する。ここでは基本的な構造について説明する。
【0020】
本明細書において、「転写媒体」とは、被転写媒体に転写するための転写元の媒体を意味する。転写媒体は、基材、着色層及び接着層を少なくとも含む媒体である。また、「被転写媒体」とは、転写媒体から少なくとも着色層及び接着層が転写される転写先の媒体、即ちターゲットを意味する。
【0021】
図1Aは、基材の構成の説明図である。基材は、シート状又はフィルム状の形状をしている。ここで、「基材」とは、着色層及び接着層のパターンを転写するために用いられる支持体を意味する。ここでは、基材として、厚さ25μmのPETフィルムが用いられている。但し、基材の材質はこれに限られるものではなく、例えば他のプラスチック、金属、木材、紙などが用いられても良い。
【0022】
図1Aに示すように、基材の表面には、予め離型層及び保護層が形成されている。
離型層は、転写媒体から被転写媒体への転写性(箔切れ性)を高めるための層である。ここでの離型層は、ポリエチレンワックス系の離型剤を乾燥させた層である。但し、離型層はこれに限られるものではなく、例えばシリコーン系離型剤、フッ素系離型剤などが用いられても良い。保護層は、被転写媒体に転写された着色層の耐刷性を高めるための層である。
【0023】
離型層及び保護層は、基材の表面に予め形成されているが、これに限られるものではない。例えば、離型層及び保護層が後述する記録装置(転写媒体製造装置)によって形成されても良い。また、転写媒体から被転写媒体への転写性(箔切れ性)や、転写された着色層の耐刷性などを確保できるのであれば、基材の表面に離型層や保護層は無くても良い。
【0024】
図1Bは、基材の表面に形成される着色層及び接着層の説明図である。
着色層は、カラー画像を構成する層である。着色層は、カラーインク(シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインクなど)を基材の表面に塗布することによって、形成される。図中の着色層は、転写媒体上において、保護層の上側(基材の上側)に形成される。
【0025】
接着層は、着色層などを被転写媒体に接着させるための層である。接着層は、接着液を塗布することによって、形成される。図中の接着層は、着色層の上側に形成される。接着液として、例えば、エマルション形態の熱可塑性樹脂を含む水性液体が用いられる。接着液を塗布した後に乾燥させて形成した接着層は、その段階では接着力が弱い状態である。このため、転写媒体の製造後に、接着層が基材の裏面と接触するように転写媒体を巻き取ることが可能である。なお、接着層は、転写時に加熱されることによって、接着性を有することになる。
【0026】
図中では、着色層及び接着層の各層が明確に分離して描かれているが、実際には、各層が明確に分離しているとは限らない。例えば、着色層を形成するカラーインクが十分に乾燥する前に接着層を形成する接着液が塗布されると、カラーインクと接着液とが一部混ざることがある。
【0027】
また、図1Bの説明図は、転写媒体の製造工程の順序も示している。例えば、図中の転写媒体の場合、基材(保護層)の上に、まず着色層を形成するためのカラーインクが塗布され、次に接着層を形成するための接着剤が塗布されることによって、転写媒体が製造されることが示されている。
【0028】
インクジェット方式で各層が形成される場合には、必ずしも図に示された順の積層構造になるとは限らない。例えば、着色層のカラー画像が淡い画像の場合には、カラーインクで形成されたドット(カラードット)が分散するため、カラードット間に隙間がある。このため、本明細書において「層」と説明されていても、その層を形成する画像の内容に応じて、その層に隙間があることがある。
【0029】
図1Cは、転写媒体から被転写媒体への転写の様子の説明図である。
基材の裏面側から転写媒体を加熱すると、転写媒体の表面に位置する接着層に接着力が生じる。このため、加熱した転写媒体を被転写媒体の転写面に接触させると、基材上の層構造(転写箔)が剥離して、被転写媒体に転写される。転写後の被転写媒体上には、上(表面側)から順に、保護層、着色層、接着層が形成(転写)される。転写後の被転写媒体のことを「転写物」と呼ぶことがある。
【0030】
被転写媒体の転写面が曲面であっても、その曲面にカラー画像を形成することが容易である。このため、自動車の内装、ノートパソコンの外装、携帯電話の外装、化粧品容器、文房具などの様々な形状の被転写媒体に転写を行うことが可能である。但し、被転写媒体の転写面は、曲面に限られるものではなく、平面であっても良い。
【0031】
なお、ここでは転写媒体の基本的な構造を説明したが、後述する実施形態では、転写媒体の構造が基本的な構造と異なることがある。但し、ここで説明した転写媒体の基本的な構造を理解できれば、各実施形態の構造も理解可能である。
【0032】
===記録装置(転写媒体の製造装置)===
<基本的な構成>
図2は、記録装置1の全体構成ブロック図であり、図3Aは、記録装置1の概略断面図であり、図3Bは、記録装置1の概略上面図である。以下、記録装置1とコンピューター90が接続された記録システムを例に挙げて実施形態を説明する。
【0033】
記録装置1は、インクジェット方式で基材上に転写媒体を構成する層(例えば着色層など)を記録(形成)する装置である。この記録装置1は、インクジェットプリンターとほぼ同様の構成であり、転写媒体を製造するための転写媒体製造装置となる。なお、記録装置1は、コンピューター90から受信したデータに従って記録動作を実行することになる。このため、コンピューター90(後述する記録ドライバーをインストールしたコンピューター90)は、記録装置1を制御する制御装置となる。
【0034】
コントローラー10は、記録装置1の制御を行うための制御ユニットである。インターフェース部11はコンピューター90と記録装置1との間でデータの送受信を行うためのものである。CPU12は記録装置1全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリー13はCPU12のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものである。CPU12はユニット制御回路14により各ユニットを制御する。なお、記録装置1内の状況を検出器群60が監視し、その検出結果に基づいて、コントローラー10は各ユニットを制御する。
【0035】
搬送ユニット20は、媒体S(図1Aの基材)が連続する方向(搬送方向、図中のX方向)に、媒体Sを上流側から下流側に搬送する。モーターによって搬送ローラー21を回転させることによって記録前の媒体Sを液体塗布領域に供給し、その後、記録後の媒体S(図1Bの転写媒体)を巻取機構によりロール状に巻き取る。図3A及び図3Bでは、媒体Sの搬送経路が真っ直ぐになっているが、適宜ローラーなどを用いて搬送経路を屈曲させても良い。
【0036】
キャリッジユニット30は、ヘッドを移動方向(媒体Sの幅方向、図中のY方向)に往復移動させるものである。キャリッジユニット30は、ヘッド41を搭載するキャリッジ31と、キャリッジを往復移動させるためのキャリッジ移動機構32とを有する。
【0037】
ヘッドユニット40は、キャリッジ31に設けられたヘッド41を有する。ヘッド41の下面には、液体(インク、接着液など)を吐出するノズルが設けられている。ヘッド41の構成(ノズルの配置)については、後述する。
【0038】
乾燥ユニット50は、媒体Sに塗布された液体を乾燥させるためのものである。乾燥ユニットとして、例えば温風ヒーターなどが用いられる。
【0039】
記録装置1は、キャリッジ31を移動方向に移動させる動作(パス)と、搬送動作とを交互に繰り返す。このとき、コントローラー10は、各パスを行う際に、キャリッジユニット30を制御して、キャリッジ31を移動方向に移動させるとともに、ヘッドユニット40を制御して、ヘッド41の所定のノズルから液体を吐出させ、媒体Sに液体を塗布させる。また、コントローラー10は、搬送ユニット20を制御して、搬送動作の際に所定の搬送量にて媒体Sを搬送方向に搬送させる。
【0040】
パスと搬送動作が繰り返されることによって、液体の塗布された領域が徐々に乾燥ユニット50に向かって搬送される。そして、乾燥ユニット50に対向する位置において、媒体Sに塗布された液体が乾燥させられて、転写媒体が完成する。その後、完成した転写媒体が巻き取り機構によりロール状に巻き取られる。
【0041】
<ノズルの配置>
図4は、ヘッド41の下面のノズルの説明図である。なお、図示した構成は参考説明のためのものであり、後述する本実施形態のヘッド41は、これとは異なる構成になることがある。
【0042】
ヘッド41は、ここでは5個のノズル列を備えている。5個のノズル列は、ブラックノズル列(K)と、シアンノズル列(C)と、マゼンタノズル列(M)と、イエローノズル列(Y)と、接着液を吐出するための接着ノズル列(A)である。ブラックノズル列、シアンノズル列、マゼンタノズル列及びイエローノズル列は、カラー画像(着色層)を記録するためのカラーインクを吐出するノズル列(カラーノズル列)である。接着ノズル列は、接着画像(接着層)を記録するための接着液を吐出するノズル列である。
【0043】
各ノズル列は、それぞれ180個のノズルから構成されている。各ノズル列の180個のノズルは、1/180インチ間隔のノズルピッチで搬送方向に沿って並んでいる(つまり、図中のLは1インチである)。あるノズル列から液体を断続的に吐出することによって、キャリッジ31が移動方向に1回移動する毎に(1回のパス毎に)、1/180インチ間隔で多数のドット列が記録されることになる。媒体に記録するドットの間隔がDであるとき、整数kを用いてノズルピッチを“k×D”と表すことがある。例えば、720dpiの解像度で画像を記録する場合、Dは1/720インチなので、k=4である。
【0044】
===転写媒体の製造手順===
<コンピューター90の処理>
転写媒体を製造するまでの手順について説明する。まず、コンピューター90上で行われる処理について説明する。
【0045】
ユーザーは、コンピューター90上において、描画プログラムを用いて画像を描画し、その画像を記録装置1に記録させる操作を行う。ここでは、コンピューター90上において、図5に示すように、中央が濃く外側ほど淡いグラデーションパターンに文字「E」が白抜きされた画像が描画され、この画像を記録装置1に記録させることが指示されたものとする。描画プログラム上でユーザーからの記録指示があると、コンピューター90の記録ドライバープログラム(以下、「記録ドライバー」という)が立ち上がる。
【0046】
図6は、記録ドライバーが行う処理のフロー図である。
【0047】
まず、記録ドライバーは、描画プログラムから入手した画像データ(テキストデータ、イメージデータなど)を、媒体に記録する際の解像度(記録解像度)に変換する解像度変換処理を行う(S101)。例えば、記録解像度が720×720dpiの場合、描画プログラムから受け取ったベクター形式の画像データを720×720dpiの解像度のビットマップ形式の画像データに変換する。解像度変換処理により、RGB色空間により表される多階調(例えば256階調)のRGBデータ(ビットマップ形式の画像データ)が生成される。
【0048】
次に、記録ドライバーは、RGB色空間のデータをCMYK色空間のデータに変換する色変換処理を行う(S102)。CMYKデータは、記録装置1が有するカラーインクの色に対応したデータである。この色変換処理は、RGBデータの階調値とCMYKデータの階調値とを対応づけたテーブル(色変換ルックアップテーブルLUT)に基づいて、行われる。色変換処理により、CMYK色空間により表される256階調のCMYKデータ(ビットマップ形式の画像データ)が生成される。但し、以下では、説明の簡略化のため、記録すべきカラー画像がモノクロ単色の画像であるものとし、CMYKデータのうちのKデータについて説明する。
【0049】
図7Aは、ハーフトーン処理前の画像データの説明図である。画像データは、2次元配置された多数の画素から構成されており、各画素には256階調の画素データが対応付けられている。ここでは、濃い領域を構成する画素には最大階調値「255」が対応付けられており、グラデーションの領域を構成する画素にはグレーを示す中間的な階調値が対応付けられており、白抜き文字の領域やカラー画像の外部領域の画素には無色を示す階調値「0」が対応付けられている。
【0050】
次に、記録ドライバーは、高階調数のデータを、記録装置1が形成可能な階調数のデータに変換するハーフトーン処理を行う(S103)。例えば、ハーフトーン処理により、256階調を示すデータが、2階調を示す1ビットデータなどに変換される。ハーフトーン処理では、ディザ法・γ補正・誤差拡散法などが利用される。ハーフトーン処理されたデータは、記録解像度(例えば720×720dpi)と同等の解像度である。ハーフトーン処理後の画像データでは、画素ごと1ビットの画素データが対応しており、この画素データは各画素でのドットの形成状況(ドットの有無)を示すデータになる。
【0051】
図7Bは、ハーフトーン処理後の画像データの説明図である。ハーフトーン処理後の画像データでは、各画素に2階調の画素データが対応付けられている。濃い領域では、ほぼ全ての画素に対して、ドットを形成することを示す階調値「1」が対応付けられている。つまり、この領域の画像データは、全ての画素にドットを配置することを示している。白抜き文字の領域やカラー画像の外部領域では、いずれの画素においても、ドットを形成しないことを示す階調値「0」が対応付けられている。グラデーションの領域(グレーの領域)では、階調値「1」が対応付けられた画素と、階調値「0」が対応付けられた画素が混在している。つまり、この領域の画像データは、ドットを分散配置することを示している。また、淡いグレーの領域では、階調値「0」に対応付けられた画素の方が、階調値「1」に対応付けられた画素よりも多い状態である。
【0052】
次に、記録ドライバーは、接着層を形成するための接着画像の領域設定を行う(S104)。図8は、接着画像領域設定処理の説明図である。
【0053】
まず、記録ドライバーは、前述の解像度変換処理後の256階調の画像データ(RGBデータ)若しくは色変換処理後の256階調の画像データ(CMYKデータ)に対してエッジ抽出処理を行う。エッジ抽出処理では、256階調のカラー画像の中で階調値「0」の画素(無色の画素)と隣接する階調値「1」以上の画素(色の付いた画素)が、エッジ画素として抽出されることになる。このエッジ抽出処理により、256階調のカラー画像の輪郭(エッジ)を示すエッジ画像が生成される。図中のエッジ画像では、エッジ画素として抽出された画素を黒(黒線)で示している。ここでは、グラデーションパターンの外側の輪郭の画素と、白抜き文字「E」の輪郭の画素(グラデーションパターンの内側の輪郭の画素)が、エッジ画素として抽出されて、エッジ画像が生成されている。
【0054】
そして、記録ドライバーは、エッジ画素で囲まれた領域を接着画像の領域(図中の斜線部の領域)として自動的に設定する。図8のエッジ画像のように、エッジ画素で囲まれた領域(グラデーションパターンの外側の輪郭を示すエッジ画素で囲まれた領域)の中に、更にエッジ画素で囲まれた領域(白抜き文字「E」の輪郭を示すエッジ画素で囲まれた領域)がある場合には、その間の領域を、エッジ画素で囲まれた領域として、接着画像の領域に設定する。この自動領域設定の結果、256階調のカラー画像の中で階調値「1以上の画素(色の付いた画素)の領域が、接着画像の領域として自動的に設定される。
【0055】
自動設定された接着画像は、ユーザー(グラフィックデザイナー)の確認のため、コンピューター90のディスプレイ上に表示される。ユーザーは、記録ドライバーを介して、自動設定された接着画像の領域を手動で設定することができる。ここでは、ユーザーが、被転写媒体に転写された後の画像の光沢を考慮して、文字「E」の領域を接着画像の領域に含めることを望み、そのようにユーザーが接着画像の領域を設定したものとする(後述するように、図15Cのような光沢ではなく、図15Dのような光沢をユーザーが望んでいるものとする)。
【0056】
次に、記録ドライバーは、接着液のドット形成状況を示す2階調のデータ(接着画像データ)を生成する処理を行う(S105)。この接着画像データ生成処理は、接着ドットから構成される接着画像を示すデータを生成する処理である。
図9は、S105の処理を説明するためのグラフである。グラフの横軸はカラーインクのDutyであり、グラフの縦軸は接着液のDutyである。Dutyとは、液体の吐出量を示すパラメータであり、全ての画素に液体を塗布する場合(全ての画素にドットを形成する場合)をDuty100%としている。グラフ中の太線は、接着液のDutyのグラフである。つまり、グラフ中の太線は、カラーインクDutyに対する接着液のDutyを示している。カラーインクDutyに対する接着液のDutyの関係を示すデータは、記録ドライバーの中に予め記憶されている。
図10A及び図10Bは、S105の処理の説明図である。
以下、図9、図10A及び図10Bを用いて、接着画像データ生成処理(S105)について説明する。
【0057】
記録ドライバーは、図10Aに示すように、カラードットを形成する画素に接着ドットを形成するような画像データを生成する。言い換えると、記録ドライバーは、図7Bのカラー画像データのコピーを生成する。この画像データは、仮の接着画像用のデータになる。画像データにおいて、階調値「1」が対応付けられた画素は接着ドットを形成することを示し、階調値「0」が対応付けられた画素は接着ドットを形成しないことを示している。もし仮に、このときの画像データに従って接着液が媒体に吐出されると、接着液のDutyは図9の細線の通りになる。なお、ここではカラー画像データがKデータだけとしているが、複数色のカラー画像(CMYKデータ)の場合には、仮の接着画像用のデータは、各色の画像データの論理和として生成すると良い。
【0058】
次に、記録ドライバーは、S104で設定された接着画像の領域の画素データを対象にして、カラーインクのDutyに対する接着液のDutyが図9の太線の通りになるように、階調値「0」の画素データを階調値「1」に変換する。言い換えると、記録ドライバーは、図10Aの画像データから更に接着ドットを追加して、図10Bのように接着画像用の画像データを更新する。図10Bでは、接着ドットが追加された画素を太枠で示している。記録ドライバーは、ハーフトーン処理後のカラー画像データ(図7B)に基づいてカラーインクのDutyを求め、このカラーインクのDutyに基づいて、追加すべき接着ドットの数・量を決定する。これにより、接着液のDuty(接着液の単位面積当たりの塗布量)がカラーインクのDutyに応じた塗布量になるように接着ドットを配置した接着画像用のデータが生成される。
【0059】
本実施形態では、図10Aの画像データを基準にして接着ドットを追加するようにして、図10Bの画像データ(接着ドットの形成状態を示す画像データ)を生成している。これにより、カラードットが形成される画素に必ず接着ドットを形成するように、接着画像用の画像データを生成することができる。この結果、カラードットの転写性が向上する。
【0060】
追加すべき接着ドットの数・量は、図9の太線と細線の差分に相当する数・量である。例えばカラーインクのDutyが50%の領域では、追加された接着ドットによる接着液のDutyは、図中の「追加分」に相当するDutyとなる。
【0061】
図9の太線に示すように、カラーインクのDutyが少なくなるほど、カラーインクのDutyに対する接着液のDutyの割合が多くなっている。例えば、カラーインクのDutyが50%の領域では、カラーインクのDutyに対して接着液のDutyは若干多い程度であるのに対し、カラーインクのDutyが20%の領域では、カラーインクのDutyに対する接着液のDutyの割合は約2倍になる。更にカラーインクのDutyが20%よりも低い領域では、カラーインクのDutyに対する接着液のDutyの割合は、更に高い割合になる。このように、カラーインクのDutyが少なくなるほど、カラーインクのDutyに対する接着液のDutyの割合が多くなることによって、後述するように、転写媒体の表面をできるだけ平滑にでき、転写性が向上する。
【0062】
また、図9の太線に示すように、カラーインクのDutyが少なくなるほど、追加される接着ドットのDutyが多くなっている。このため、図9の太線のグラフは、細線のグラフよりも、傾きが小さい状態になっている。このように、カラーインクのDutyが少なくなるほど、追加される接着ドットのDutyが多くなることによって、後述するように、転写媒体の表面をできるだけ平滑にでき、転写性が向上する。さらに、図9の太線のグラフでは、カラーインクのDutyが少ない領域では、カラーインクのDutyが多い領域よりも、傾きが小さい状態になっている。これにより、転写媒体の表面をより平滑化でき、転写性が向上する。
【0063】
本実施形態では、記録ドライバーは、接着画像の領域の内部であれば、カラーインクのDutyがゼロの領域においても所定のDutyで接着ドットが形成されるように、接着画像用の画像データを生成する。例えば、図7Aの白抜き文字の領域では、カラーインクのDutyがゼロになるが(この領域内のカラーの画素データは、階調値「0」が対応付けられているが)、この領域は接着画像の領域に含まれるため、接着画像の画像データでは、この領域の画素データの一部が階調値「1」に変換されることになる。
一方、記録ドライバーは、接着画像の領域の外側の画素データに対しては、このような処理を行われない。例えば、図7Aのカラー画像の外部領域では、カラーインクのDutyがゼロになるが(カラーの画素データは、階調値「0」が対応付けられているが)、この領域は接着画像の領域に含まれないため、この領域には接着ドットは形成されない。
【0064】
このように、本実施形態によれば、カラーインクのDutyがゼロの領域であっても(256階調のカラー画像データ上で階調値「0」の領域であっても)、接着画像の領域の内外に応じて単位面積当たりの接着液の塗布量(接着ドットの生成率)が異なるように、接着画像用の画像データが生成される。そして、接着画像の領域であれば、カラーインクのDutyがゼロであっても、その領域には所定のDutyで接着ドットが形成されるように、接着画像用の画像データが生成される。一方、接着画像の領域の外側において、カラーインクのDutyがゼロであれば、転写すべきカラードットが無いので、接着ドットは形成されない(接着液のDutyがゼロになる)。
【0065】
最後に、記録ドライバーは、S103で生成したカラー画像用の画像データと、S105で生成した接着画像用の画像データに、記録装置1を制御するための制御データを適宜付加して記録データを生成し、記録データを記録装置1に送信する(S106)。
【0066】
<記録装置1の処理>
記録装置1は、記録データの中の制御データに従って各ユニットを制御しつつ、記録データの中の画像データの示すドット生成状況に従って、カラードットから構成される着色層(カラー画像)と、接着ドットから構成される接着層(接着画像)とを媒体に形成する。このとき、記録装置1は、キャリッジ31を移動方向に移動させる動作(パス)と、搬送動作とを交互に繰り返す。各パスにおいて、記録装置1は、キャリッジ31を移動方向に移動させるとともに、ヘッド41の所定のノズルから液体を吐出させ、媒体Sに液体を塗布させる。また、各搬送動作において、記録装置1は、搬送ユニット20を用いて、所定の搬送量にて媒体Sを搬送方向に搬送させる。
【0067】
図11は、参考例の記録方法の説明図である。まず参考例として、1種類のノズル列を用いて1つの画像を媒体に形成する場合について説明する(これに対し、本実施形態では、後述するように、カラーノズル列と接着ノズル列とを用いてカラー画像と接着画像とを重ねて媒体に形成することになる)。図には、インターレース方式における記録方法のパス1〜パス4におけるヘッド(ノズル列)の位置とドットの記録の様子が示されている。
【0068】
説明の都合上、複数あるノズル列のうちの一つのノズル列のみを示し、ノズル数も少なくしている(ここでは12個)。図中の黒丸で示されるノズルは、液体を吐出可能なノズルである。一方、白丸で示されるノズルは、液体を吐出不可のノズルである。また、説明の便宜上、ノズル列が(媒体Sに対して)移動しているように描かれているが、同図はヘッドと媒体との相対的な位置を示すものであって、実際には媒体Sが搬送方向に搬送される。また、説明の都合上、各ノズルが数ドット(図中の丸印)しか記録していないように示されているが、実際には、移動方向に移動するノズルから間欠的に液滴が吐出されるので、移動方向に多数のドットが並ぶことになる。このドットの列をラスタラインともいう。黒丸で示されるドットは、最後のパスで記録されるドットであり、白丸で示されるドットは、それ以前のパスで記録されたドットである。
【0069】
「インターレース方式」では、kが2以上であり、1回のパスで記録されるラスタラインの間に記録されないラスタラインが挟まれるような記録方法になる。例えば、図に示した記録方法では、1回のパスで記録されるラスタラインの間に、3本のラスタラインが挟まれている。
【0070】
インターレース方式では、媒体が搬送方向に一定の搬送量Fで搬送される毎に、各ノズルが、その直前のパスで記録されたラスタラインのすぐ上のラスタラインを記録する。このように搬送量を一定にして記録を行うためには、(1)液体を吐出可能なノズル数N(整数)はkと互いに素の関係にあること、(2)搬送量FはN・Dに設定されること、が条件となる。
【0071】
同図では、ノズル列は搬送方向に並ぶ12個のノズルを有する。ノズルピッチk×Dの整数kは4なので、インターレース方式の条件である「Nとkが互いに素の関係」を満たすため、全てのノズルは用いられずに、11個のノズル(ノズル♯1〜ノズル♯11)が用いられる。また、11個のノズルが用いられるため、媒体は搬送量11・Dにて搬送される。その結果、180dpi(4・D)のノズルピッチのノズル列を用いて、720dpi(=D)のドット間隔にて媒体にドットが記録される。なお、180個のノズルを備えたノズル列によってインターレース方式を行う場合、179個のノズルを用いたパスと、179・Dの搬送量の搬送動作とが交互に繰り返されることになる。
【0072】
インターレース方式の場合、ノズルピッチ幅の連続するラスタラインが完成するためには、k回のパスが必要となる。例えば、180dpiのノズルピッチのノズル列を用いて720dpiのドット間隔にて連続する4つのラスタラインが完成するためには、4回のパスが必要となる。同図によれば、パス3のノズル♯3が記録したラスタラインよりも搬送方向上流側に、連続的なラスタラインがドット間隔Dにて記録されることが示されている。
【0073】
図12は、インターレース方式で着色層(カラー画像)を形成した後に接着層(接着画像)を形成するときの記録方法の説明図である。図中では、カラーノズル列のノズルを丸印で示し、接着ノズル列のノズルを三角印で示している。
【0074】

着色層の上に接着層を重ねて記録する場合、カラーノズル列の搬送方向上流側の半分のノズルを用いて着色層を形成し、接着ノズル列の搬送方向下流側の半分のノズルを用いて接着層を形成する。ここでは、カラーノズル列では搬送方向上流側の半分のノズル(ノズル♯7〜12)が用いられ、接着ノズル列では搬送方向下流側の半分のノズル(ノズル♯1〜6)が用いられる。但し、インターレース方式の条件((1)インクを吐出可能なノズル数N(整数)はkと互いに素の関係にあること、(2)搬送量FはN・Dに設定されること)を満たすために、6個のノズルのうちの5個のノズルから液体が吐出されると共に、媒体が搬送量5・Dにて搬送される。
【0075】
図に示すようにドットを記録することによって、いずれのラスタラインの位置においても、カラーノズル列のノズルによってカラードットが形成されてから、接着ノズル列のノズルによって接着ドットが形成されている。例えば、図中の点線の位置のラスタラインでは、パス1のカラーノズル列のノズル♯10がカラードットを形成した後、パス5の接着ノズル列のノズル♯5が接着ドットを形成する。
【0076】
図13A及び図13Bは、着色層と接着層の形成順序の説明図である。図13A及び図12に示すように、カラーノズル列の搬送方向上流側の半分のノズルを用いて4回のパスで形成された着色層の上に、搬送方向下流側の半分の接着ノズル列のノズルを用いて4回のパスで接着層が形成される。このようにして、カラードットから構成される着色層(カラー画像)の上に、接着ドットから構成される接着層(接着画像)を形成することができる。
【0077】
<転写媒体・被転写媒体の画像>
図14A及び図14Bは、転写媒体上のドットの説明図である。図14Aは、比較用の説明図であり、前述のS105において接着ドットを追加しなかった場合の説明図である(図10Aも参照)。図14Bは、本実施形態の説明図であり、S105により接着ドットが追加された状態の説明図である(図10Bも参照)。図中の白丸はカラードットを示しており、黒丸は接着ドットを示している。
【0078】
本実施形態では、カラードットが形成される画素には、接着ドットが必ず形成されることになる。このため、カラードットを被転写媒体に高精度で転写でき、カラードットの転写漏れを抑制することができる。もし仮にカラードットの形成される画素に接着ドットが形成されないとすると、そのカラードットの転写性が悪くなるからである。
【0079】
また、本実施形態では、接着画像の領域の内部では、カラーインクのDutyがゼロの領域においても所定のDutyで接着ドットが形成されている。このため、接着画像の領域の内部では、保護層(図1C参照)の一部が被転写媒体に転写されることになる。例えば、図14の白抜き文字の領域では、カラーインクのDutyがゼロになるが、この領域には接着ドットが形成されている。このため、図14の白抜き文字の領域では、保護層の一部が被転写媒体に転写されることになる。これに対し、接着画像の領域の外部では、接着ドットが形成されていないため、保護層は転写されないことになる。この影響について説明する。
【0080】
図15Aは、被転写媒体を見るときの2つの視点の説明図である。図15Bは、転写された画像を視点(1)から見た様子の説明図である。図15C及び図15Dは、転写された画像を視点(2)から見た様子の説明図である。図15Cは、比較用の説明図であり、前述のS105において接着ドットを追加しなかった場合の説明図である(図10Aも参照)。図15Dは、本実施形態の説明図であり、S105により接着ドットが追加された場合の説明図である(図10Bも参照)。図15C及び図15Dでは、光って見える領域(光沢性の高い領域)にハッチングを施している。
【0081】
図15Bに示すように、観察者が被転写媒体を上から見ると、光沢の影響を殆ど受けずに画像の色を見ることになる。これに対し、観察者が、図15C及び図15Dに示すように被転写媒体を斜めから見ると、被転写媒体から正反射された光を見ることになり、画像の色ではなく、主に画像の光沢を観察する状態になる。このとき、転写された画像の無い領域では、被転写媒体の転写面自体の光沢が観察されることになる。一方、画像の在る領域では、転写媒体から転写された保護層の光沢が観察されることになる。つまり、転写された画像の有無に応じて、光沢が異なる状態になる。
【0082】
白抜き文字の領域では、本来、転写すべきカラードットが存在しない。但し、もし仮に、白抜き文字の領域に接着ドットを形成しないことにすると、保護層が被転写媒体に転写されないため、図15Cに示すように、白抜き文字の領域の光沢が、周囲の光沢と異なってしまう。しかし、画像を作成したユーザー(グラフィックデザイナー)が、このように視認されることを望まないことがある。
【0083】
そこで本実施形態では、ユーザーが白抜き文字の領域だけ光沢性が異なることを望まない場合には、既に図8に示したように、文字「E」の領域を接着画像の領域に含めるように接着画像の領域を設定する。そして、カラーインクのDutyがゼロの領域であっても、接着画像の領域の内外で接着液のDutyが異なるように、接着ドットが配置されるようにしている。
【0084】
具体的には、接着画像の領域の内側である白抜き文字の領域では、カラーインクのDutyがゼロであっても、所定のDutyになるように接着ドットが形成される(図14B参照)。この結果、図15Dに示すように、接着画像として設定された領域では、光沢性の差が生じにくくなり、ほぼ一様な光沢性を得ることができる。
一方、接着画像の領域の外側では、カラーインクのDutyがゼロの場合、接着ドットも形成されない。この結果、図15Dに示すように、接着画像の外側の領域は、内側の領域とは異なる光沢になる。但し、この領域に接着ドットを形成しないので、接着液の消費を抑制できる。
【0085】
更に本実施形態では、図9に示したように、カラーインクのDutyが少なくなるほど、カラーインクのDutyに対する接着液のDutyの割合は、多くなっている。また、図9に示すように、カラーインクのDutyが少なくなるほど、追加される接着ドットのDutyが多くなっている。この結果、転写媒体上において、カラー画像の濃い領域と淡い領域との間の液体(カラーインク及び接着液)の塗布量の差が抑制される。例えば、濃い領域とグレーの領域との間の液体の塗布量の差について、図14Aと図14Bとを比較すると、図14Bの方が、液体の塗布量の差が小さくなっている。これにより、本実施形態では、転写媒体の表面をできるだけ平滑にでき、転写性が向上する。
【0086】
===変形例1===
図16は、変形例の転写媒体の説明図である。変形例では、カラーインク及び接着液から構成された混在層が形成される。混在層では、或る画素ではカラードットの上に接着ドットが形成されるが、別の画素では接着ドットの上にカラードットが形成される。つまり、混在層では、カラードットの上に接着ドットが形成された画素と、接着ドットの上にカラードットが形成された画素とが混在している。
【0087】
図17A及び図17Bは、混在層の形成方法の概要の説明図である。キャリッジが往路を移動するパスでは、接着ノズル列がカラーノズル列に対してキャリッジの移動方向下流側に位置するため、接着ドットの上にカラードットが形成される。一方、復路を移動するパスでは、カラーノズル列が接着ノズル列に対してキャリッジの移動方向下流側に位置するため、カラードットの上に接着ドットが形成される。このように、キャリッジが往復移動しながら記録する双方向記録を行うことによって、混在層が形成される。
【0088】
図18は、変形例の記録方法の説明図である。この記録方式では、パス毎に、各ノズルが1ドットおきに間隔を空けてドットを記録する。そして、他のパスにおいて、間隔を空けて記録されたドットの間に他のノズルが補完するように(ドットの間を埋めるように)ドットを記録する。これにより、各ラスタラインが、それぞれ複数のノズルで記録される。このような記録方法は「オーバーラップ記録方式」と呼ばれている。ここで、M回のパスにて1つのラスタラインが記録される場合、「オーバーラップ数M」と定義する。
【0089】
オーバーラップ方式において、搬送量を一定にして記録を行うためには、(1)N/Mが整数であること、(2)N/Mはkと互いに素の関係にあること、(3)搬送量Fが(N/M)・Dに設定されること、が条件となる。図18では、ノズル列は搬送方向に並ぶ12個のノズルを有する。ノズルピッチk×Dの整数kは4なので、オーバーラップ方式の条件である「N/Mとkが互いに素の関係」を満たすために、全てのノズルは用いられずに、10個のノズルが用いられる。また、10個のノズルが用いられるため、媒体は搬送量5・Dにて搬送される。その結果、例えば、180dpi(4・D)のノズルピッチのノズル列を用いて、720dpi(=D)のドット間隔にて媒体にドットが記録される。
【0090】
図に示すように、キャリッジが往復移動しながら記録する双方向記録が行われる。パス1、3、6、8ではキャリッジが往路を移動し、パス2、4、5、7ではキャリッジが復路を移動する。また、図に示すように、パス1〜4では奇数画素にドットが形成され、パス5〜8では偶数画素にドットが形成される。
【0091】
図19は、図18の領域Aにおける8個のラスタラインのドットの様子の説明図である。図中では、カラードットを白丸で示し、接着ドットを黒三角印で示し、カラードットと接着ドットの上下関係を白丸印と黒三角印の上下関係で示している。ここでは説明の簡略化のため、全ての画素にカラードット及び接着ドットを形成している。
【0092】
領域Aの上から奇数番目のラスタラインに注目すると、奇数画素にはキャリッジが往路に移動するパスでドットが形成され、偶数画素にはキャリッジが復路に移動するパスでドットが形成される。例えば、領域Aの上から1番目のラスタラインは、キャリッジが往路に移動するパス1のときに奇数画素にノズル♯9によってドットが形成され、キャリッジが復路に移動するパス5のときに偶数画素にノズル♯4によってドットが形成される。この結果、領域Aの上から奇数番目のラスタラインでは、奇数画素では接着ドットの上にカラードットが形成され、偶数画素ではカラードットの上に接着ドットが形成される。
【0093】
一方、領域Aの上から偶数番目のラスタラインに注目すると、奇数画素にはキャリッジが復路に移動するパスでドットが形成され、偶数画素にはキャリッジが往路に移動するパスでドットが形成される。例えば、領域Aの上から2番目のラスタラインは、キャリッジが復路に移動するパス2のときに奇数画素にノズル♯8によってドットが形成され、キャリッジが往路に移動するパス6のときに偶数画素にノズル♯3によってドットが形成される。この結果、領域Aの上から奇数番目のラスタラインでは、奇数画素ではカラードットの上に接着ドットが形成され、偶数画素では接着ドットの上にカラードットが形成される。
【0094】
このように、領域Aでは、いずれのラスタラインにおいても、キャリッジが往路に移動するパスでドットが形成される画素と、キャリッジが復路に移動するパスでドットが形成される画素とが、移動方向に交互に並んでいる。この結果、いずれのラスタラインにおいても、カラードットの上に接着ドットが形成された画素と画素の間に、接着ドットの上にカラードットが形成された画素が位置する。つまり、いずれのラスタラインにおいても、カラードットの上に接着ドットが形成された画素と、接着ドットの上にカラードットが形成された画素とが混在している。
【0095】
変形例によれば、カラーインク及び接着液から構成された混在層を形成することができる。これにより、転写媒体上でのカラーインクと保護層との密着性が向上し、転写時のカラーインクと保護層との剥離を抑制できる。
【0096】
===変形例2===
前述の実施形態では、S104の接着画像の領域の自動設定の際に、図8に示すようにエッジ抽出処理を行っていた。しかし、接着画像の領域の自動設定方法は、これに限られるものではない。例えば、以下に説明する膨張処理を用いて、接着画像の領域を自動的に設定することも可能である。
【0097】
図20A及び図20Bは、膨張処理の説明図である。膨張処理とは、画像を所定画素分だけ大きくする処理である。具体的には、膨張処理では、入力画像をFijとし出力画像をGijとしたとき、以下のような処理が行われる。
【0098】
(A)入力画像Fijの画素F(i,j)あるいはその8近傍のいずれかの画素データが「0」以外のとき、出力画像Gijの画素G(i,j)は接着画像の領域内とする。
【0099】
(B)上記A以外のとき、出力画像Gijの画素G(i,j)は接着画像の領域外とする。(入力画像Fijの画素F(i,j)あるいはその8近傍のいずれの画素データも「0」のとき、出力画像Gijの画素G(i,j)は接着画像の領域外とする。)
【0100】
この膨張処理により、接着画像の領域が、カラー画像よりも広い領域になる。この結果、転写媒体上においてカラードットに隣接して接着ドットが形成されるようになり、カラー画像の転写性が向上する。なお、膨張処理とは別の処理によって接着画像の領域をカラー画像の領域よりも広く設定しても良い。このような場合であっても、転写媒体上においてカラードットに隣接して接着ドットが形成されるようになり、カラー画像の転写性が向上する。
【0101】
===変形例3===
前述の実施形態では、カラー画像の解像度と接着画像の解像度が同じであった。しかし、これに限られるものではない。
【0102】
図21A及び図21Bは、カラー画像の解像度と接着画像の解像度の説明図である。図21Aのカラー画像は720×720dpiの解像度であるのに対し、図21Bの接着画像は360×360dpiの解像度になっている。
【0103】
図21Cは、図21A及び図21Bの画像データに従って形成されたカラードットと接着ドットの説明図である。カラードットは1/720インチの間隔で形成されているのに対し、接着ドットは1/360インチの間隔で形成されている。このように、両者の解像度が異なっていても、カラードットと接着ドットを重ねて形成することが可能である。
【0104】
但し、この変形例の場合、接着ドットは、カラードットよりも大きいことが望ましい。図に示すように、両者の解像度が2倍異なる場合には、接着ドットは、カラー画像の4画素分に相当する大きさであることが望ましい。また、カラー画像の4画素(2×2画素)のうちのいずれか1つの画素にカラードットが形成される場合には、その位置に接着ドットが形成されるように接着画像を生成することが望ましい。言い換えると、カラー画像の4画素の画素データの論理和に基づいて、接着画像の1画素の画素データを生成しても良い。これにより、カラーインクが塗布された領域に必ず接着液が塗布されるようになる。
【0105】
===その他===
上記の実施形態は、主として記録装置(インクジェットプリンター)について記載されているが、その中には、印刷装置、印刷方法、プログラム、プログラムを記憶した記憶媒体等の開示が含まれていることは言うまでもない。
【0106】
また、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0107】
<ノズルについて>
前述の実施形態では、圧電素子を用いてインクを吐出していた。しかし、液体を吐出する方式は、これに限られるものではない。例えば、熱によりノズル内に泡を発生させる方式など、他の方式を用いてもよい。
【符号の説明】
【0108】
1 記録装置、10 コントローラー、
11 インターフェース部、12 CPU、
13 メモリー、14 ユニット制御回路、
20 搬送ユニット、21 搬送ローラー、
30 キャリッジユニット、31 キャリッジ、32 キャリッジ移動機構、
40 ヘッドユニット、41 ヘッド、
50 乾燥ユニット、60 検出器群、
90 コンピューター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラーインクを吐出するノズルと、接着液を吐出するノズルとを備えた記録装置を制御する制御装置であって、
前記カラーインクで形成されるカラードットから構成される前記カラー画像を示すカラー画像データを生成し、
前記接着液で形成されるドットである接着ドットから構成される接着画像を示す接着画像データを生成するステップであって、前記カラーインクの単位面積当たりの塗布量に応じた量の前記接着液が塗布されるように前記接着ドットを配置させる前記接着画像データを生成する
とともに、
前記カラーインクの単位面積当たりの塗布量がゼロの場合における前記接着液の塗布量が、前記接着画像の領域の内外で異なるように、前記接着ドットを配置させて前記接着画像データを生成する
ことを特徴とする制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記記録装置に、前記カラー画像データに従って基材に前記カラードットを形成させると共に、前記接着画像データに従って前記基材に前記接着ドットを形成させることによって、前記記録装置に前記転写媒体を製造させる
ことを特徴とする制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の制御装置であって、
前記カラー画像データを基準にして、ドットを形成すべき画素を更に追加することによって、前記接着画像データを生成することを特徴とする制御装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法であって、
前記接着画像の領域内では、前記カラーインクの単位面積当たりの塗布量が少なくなるほど、前記カラーインクの塗布量に対する前記接着液の塗布量の割合が多くなるように、前記接着画像データを生成することを特徴とする制御装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の制御装置であって、
前記接着画像の領域を、前記カラー画像の領域よりも広い範囲に設定することを特徴とする制御装置。
【請求項6】
カラーインクで形成されるカラードットから構成される前記カラー画像を示すカラー画像データを生成するステップと、
接着液で形成されるドットである接着ドットから構成される接着画像を示す接着画像データを生成するステップであって、前記カラーインクの単位面積当たりの塗布量に応じた量の前記接着液が塗布されるように前記接着ドットを配置させる前記接着画像データを生成するステップと、
を備え、
前記カラーインクの単位面積当たりの塗布量がゼロの場合における前記接着液の塗布量が、前記接着画像の領域の内外で異なるように、前記接着ドットを配置させて前記接着画像データが生成される
ことを特徴とする転写媒体の製造方法。
【請求項7】
基材にカラーインクと接着液を塗布して転写媒体を製造する装置を制御するコンピューターに、
前記カラーインクで形成されるカラードットから構成される前記カラー画像を示すカラー画像データを生成するステップと、
前記接着液で形成されるドットである接着ドットから構成される接着画像を示す接着画像データを生成するステップであって、前記カラーインクの単位面積当たりの塗布量に応じた量の前記接着液が塗布されるように前記接着ドットを配置させる前記接着画像データを生成するステップと、
を実行させるプログラムであって、
前記カラーインクの単位面積当たりの塗布量がゼロの場合における前記接着液の塗布量が、前記接着画像の領域の内外で異なるように、前記接着ドットを配置させて前記接着画像データが生成される
ことを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−245660(P2012−245660A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117687(P2011−117687)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】