説明

制御装置

【課題】比較的単純な処理内容で、第一係合装置の温度上昇の抑制を迅速に行うことができる制御装置を実現する。
【解決手段】車輪の駆動力源に駆動連結される入力部材と、車輪に駆動連結される出力部材と、変速機構とを備えた車両用駆動装置用の制御装置。制御装置は、入力換算速度が入力部材の実回転速度よりも低い低出力回転状態で第一係合装置をスリップ係合状態とする係合制御部と、第一係合装置の温度又は発熱量を主監視対象量M1として取得する対象量取得部と、主監視対象量M1が第一判定閾値Th1以上となった場合に、第一係合装置をスリップ係合状態から解放状態へと移行させると共に第二係合装置をスリップ係合状態へと移行させて第1の変速段から第2の変速段へ変速段を移行させる変速制御部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪の駆動力源として内燃機関及び回転電機の少なくとも一方を有する車両の駆動力源に駆動連結される入力部材と、車輪に駆動連結される出力部材と、第一係合装置及び第二係合装置を含む複数の係合装置の状態に応じて複数の変速段が形成され、入力部材の回転速度を各変速段の変速比で変速して出力部材に伝達する変速機構と、を備えた車両用駆動装置を制御対象とする制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような車両用駆動装置を制御対象とする制御装置として、例えば特開2010−149629号公報(特許文献1)に記載されたものが既に知られている。以下、この背景技術の欄の説明では、〔〕内に特許文献1における部材名を引用して説明する。特許文献1の制御装置〔コントローラ1,2,5,7,10等〕は、車速が所定の判定閾値よりも低い状態で、変速機構〔変速機AT〕内の第一係合装置〔第2クラッチCL2(Low/B)〕をスリップ係合状態とする。スリップ係合状態の第一係合装置は発熱し、温度が高くなりすぎる可能性がある。この点に鑑み、特許文献1の制御装置は、第一係合装置の推定温度が所定温度以上になった場合には、変速段をアップシフトさせる(相対的に小さい変速比の変速段に移行させる)指令を出力し、スリップ係合状態とする係合装置を、変速機構内の第一係合装置とは別の第二係合装置〔2−3−4−6/B〕に変更する。
【0003】
より具体的には、そのような場合、制御装置は、スリップ係合状態にある第一係合装置を直結係合状態へと移行させ、第二係合装置を解放状態からスリップ係合状態へと移行させる。そのようなスリップ係合状態とする係合装置を切り替える制御の実行に伴い、変速機構で形成される変速段は、第1の変速段〔1速(1st)〕から第2の変速段〔2速(2nd)〕へと切り替えられる。ここで、特許文献1の変速機構において、状態移行される2つの係合装置(第一係合装置、第二係合装置)は、いずれも切替後の第2の変速段の形成のために係合されるものである。そのため、仮に上記のような第一係合装置の状態移行と第二係合装置の状態移行とを同時に実行し、過渡段階で第一係合装置及び第二係合装置の双方を同時にスリップ係合状態とすると、車輪に伝達されるトルクを目標値に維持することが困難となる。
【0004】
一方、両係合装置が同時にスリップ係合状態となるのを回避するべく、第一係合装置の状態移行が完全に完了してから第二係合装置の状態移行を実行するように構成することも考えられる。しかし、第一係合装置の状態移行に際して係合ショックの発生を抑制しようとすれば、当該第一係合装置の状態移行を徐々に行う必要があるので、直結係合状態への移行が遅れてしまう。その結果、第一係合装置の温度上昇の抑制を迅速に行うことができないという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−149629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、低車速走行中等の特定の走行状態において、比較的単純な処理内容で、第一係合装置の温度上昇の抑制を迅速に行うことができる制御装置の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る、車輪の駆動力源として内燃機関及び回転電機の少なくとも一方を有する車両の前記駆動力源に駆動連結される入力部材と、前記車輪に駆動連結される出力部材と、第一係合装置及び第二係合装置を含む複数の係合装置の状態に応じて複数の変速段が形成され、前記入力部材の回転速度を各変速段の変速比で変速して前記出力部材に伝達する変速機構と、を備えた車両用駆動装置を制御対象とする制御装置の特徴構成は、少なくとも前記第一係合装置を係合状態とし前記第二係合装置を解放状態とする第1の変速段が形成されている状態において、当該第1の変速段の変速比に応じて前記出力部材の回転速度を前記入力部材に伝達された場合の回転速度に換算して得られる入力換算速度が、前記入力部材の実回転速度よりも低い低出力回転状態で、前記第一係合装置をスリップ係合状態とする係合制御部と、前記第一係合装置の温度及び発熱量の少なくとも一方を主監視対象量として取得する対象量取得部と、前記主監視対象量が予め設定された第一判定閾値以上となった場合に、前記第一係合装置をスリップ係合状態から解放状態へと移行させると共に前記第二係合装置をスリップ係合状態へと移行させて前記第1の変速段から第2の変速段へ変速段を移行させる変速段移行制御を実行する変速制御部と、を備える点にある。
【0008】
なお、「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念として用いている。
また、「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を意味し、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転要素が一又は二以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む概念として用いている。このような伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材が含まれ、例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等が含まれる。また、このような伝動部材として、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合装置、例えば摩擦クラッチ等が含まれていても良い。ここで、「駆動力」は「トルク」と同義で用いている。
また、「解放状態」は、対象となる係合装置によって係合される2つの係合部材間で回転及び駆動力が伝達されない状態を意味する。「スリップ係合状態」は、2つの係合部材が回転速度差を有する状態で駆動力を伝達可能に係合されている状態を意味する。なお、「直結係合状態」は、2つの係合部材が一体回転する状態で係合されている状態を意味する。「係合状態」は、これらスリップ係合状態及び直結係合状態の双方を含む概念として用いている。
【0009】
また、「第一判定閾値」は、主監視対象量に含まれる物理量に応じて異なる値を取り得る。つまり、主監視対象量が第一係合装置の温度である場合には、第一判定閾値はそれに応じた値となり、主監視対象量が第一係合装置の発熱量である場合には、第一判定閾値はそれに応じた値となる。なお、主監視対象量が第一係合装置の温度及び発熱量の双方である場合には、第一判定閾値はそれぞれに応じた2つの値を包括するものであるとする。「第二判定閾値」及び「第三判定閾値」に関しても同様である。
【0010】
上記の特徴構成によれば、低出力回転状態において入力換算速度が入力部材の実回転速度よりも低い場合であっても、係合制御部が第一係合装置をスリップ係合状態とすることで、入力部材の回転速度を状況に応じて必要とされる回転速度以上に維持させながら車両を走行させることができる。例えば、車輪の駆動力源として少なくとも内燃機関を備える車両において、入力部材の回転速度を、内燃機関が自立運転を継続するために必要とされる回転速度に維持させながら当該車両を走行させることができる。或いは、車輪の駆動力源として内燃機関及び回転電機の双方を備える車両において、入力部材の回転速度を、回転電機が所望の発電量を確保するために必要とされる回転速度以上に維持させながら当該車両を走行させることができる。
第一係合装置のスリップ係合状態では、当該第一係合装置は発熱してその温度が上昇する。この場合であっても、対象量取得部により取得される主監視対象量と第一判定閾値との大小関係に基づいて、第一係合装置が過熱しつつあることを検知することができる。そして、主監視対象量が第一判定閾値以上となった場合には、変速制御部が変速段移行制御を実行してスリップ係合状態とされる係合装置を第一係合装置から第二係合装置へと切り替える。これにより、第一係合装置の更なる発熱及び温度上昇を抑制して、第一係合装置の温度が予め定められた上限温度以上となることを抑制することができる。
このとき、上記の特徴構成では、変速段移行制御において第一係合装置をスリップ係合状態から解放状態へと移行させると共に第二係合装置をスリップ係合状態へと移行させる。第一係合装置は解放状態とされ、変速段移行制御の実行後の第2の変速段の形成のためには寄与しない。よって、比較的単純な処理内容で駆動力変動を抑えつつ、変速段移行制御を実行することができる。その際、第一係合装置の状態移行と第二係合装置の状態移行とを同時に実行することができるので、第一係合装置を迅速に解放状態へと移行させることができる。また、第一係合装置を解放状態することで、例えば直結係合状態とする場合と比較して放熱量を相対的に大きくすることが容易となる。従って、第一係合装置の温度上昇を有効且つ迅速に抑制することができる。
【0011】
ここで、前記変速機構は、第三係合装置を更に有し、少なくとも前記第一係合装置及び前記第三係合装置の双方の係合状態であって前記第二係合装置の解放状態で前記第1の変速段を形成し、少なくとも前記第二係合装置及び前記第三係合装置の双方の係合状態であって前記第一係合装置の解放状態で前記第2の変速段を形成し、前記変速制御部は、前記第三係合装置を直結係合状態に維持したままで前記変速段移行制御を実行する構成とすると好適である。
【0012】
この構成のように、変速段移行制御の実行に際して、第三係合装置を直結係合状態に維持したまま、第一係合装置を解放させつつ第二係合装置をスリップ係合状態とする形態の変速段移行制御は、変速機構で形成された変速段を切り替えるための制御(変速制御)に対応する。よって、新たな制御ロジックを別途追加することなく、変速制御で通常用いられる制御ロジックを流用して変速段移行制御を実行することができる。従って、演算処理を特に複雑化させることなく第一係合装置の温度上昇を有効に抑制することができる。
【0013】
また、前記変速制御部は、前記第二係合装置のスリップ係合状態で前記主監視対象量が前記第一判定閾値よりも小さい値に予め設定された第二判定閾値未満となった場合には、前記第二係合装置を解放状態へと移行させると共に前記第一係合装置をスリップ係合状態へと移行させて前記第2の変速段から前記第1の変速段へ変速段を移行させる構成とすると好適である。
【0014】
変速段移行制御の実行により第一係合装置が解放状態とされると、当該第一係合装置の放熱が進行してその温度が徐々に低下する。この構成によれば、主監視対象量と第二判定閾値との大小関係に基づいて、ある程度の余裕を持って過熱を回避できる程度に第一係合装置が冷却されたことを検知することができる。そして、主監視対象量が第二判定閾値未満となった場合には、変速制御部は、スリップ係合状態とされる係合装置を第二係合装置から再度第一係合装置へと切り替える。これにより、第一係合装置の温度を所定温度域内に抑えつつ、低出力回転状態において第一係合装置のスリップ係合状態で車両を適切に走行させることができる。
なお、このような構成は、第二係合装置に比べて第一係合装置の方が耐熱性能や放熱性能に優れた特性を有している場合に、特に有効に適用することができる。
【0015】
また、少なくとも前記第二係合装置を係合状態とし前記第一係合装置を解放状態として形成される前記第2の変速段には、前記第1の変速段よりも小さい変速比が設定され、前記変速制御部は、前記第二係合装置のスリップ係合状態で前記入力換算速度が前記入力部材の実回転速度相当となった場合には、前記第二係合装置を解放状態へと移行させると共に前記第一係合装置を直結係合状態へと移行させて前記第2の変速段から前記第1の変速段へ変速段を移行させる構成とすると好適である。
【0016】
入力換算速度が入力部材の実回転速度相当となり、低出力回転状態ではなくなる(或いは、実質的に低出力回転状態ではないとみなせる状態となる)と、第一係合装置の直結係合状態で第1の変速段を形成しても問題なく車両を走行させることができる。また、第一係合装置を直結係合状態とすれば発熱しないので、当該第一係合装置の温度上昇が問題となることもない。そこで、上記の構成とすることで、第一係合装置の温度上昇を抑制しながら車両を適切に走行させつつ、第二係合装置の発熱を抑制して当該第二係合装置の温度上昇も抑制することができる。
【0017】
また、前記対象量取得部は、前記第二係合装置の温度及び発熱量の少なくとも一方を副監視対象量として更に取得し、前記変速制御部は、前記第二係合装置のスリップ係合状態で前記副監視対象量が予め設定された第三判定閾値以上となった場合には、前記第二係合装置を解放状態へと移行させると共に前記第一係合装置をスリップ係合状態へと移行させて前記第2の変速段から前記第1の変速段へ変速段を移行させる構成とすると好適である。
【0018】
第二係合装置のスリップ係合状態では、当該第二係合装置は発熱してその温度が上昇する。この場合であっても、対象量取得部により更に取得される副監視対象量と第三判定閾値との大小関係に基づいて、第二係合装置が過熱しつつあることを検知することができる。そして、副監視対象量が第三判定閾値以上となった場合には、変速制御部がスリップ係合状態とされる係合装置を第二係合装置から再度第一係合装置へと切り替える。これにより、第二係合装置の更なる発熱及び温度上昇を抑制して、第二係合装置の過熱を抑制することができる。このとき、第二係合装置の状態移行と第一係合装置の状態移行とを同時に実行することができるので、第二係合装置を迅速に解放状態へと移行させることができる。また、第二係合装置を解放状態することで、例えば直結係合状態とする場合と比較して放熱量を相対的に大きくすることが容易となり、第二係合装置の温度上昇を有効且つ迅速に抑制することができる。
【0019】
また、前記内燃機関に駆動連結される連結部材と、前記入力部材に駆動連結される前記回転電機と、前記連結部材と前記入力部材とを選択的に駆動連結する第四係合装置と、を備えた前記車両用駆動装置を制御対象とし、前記低出力回転状態で、前記第一係合装置に加えて前記第四係合装置もスリップ係合状態としつつ前記回転電機に発電させるスリップ発電制御部を更に備え、前記変速機構は、第三係合装置を更に有し、少なくとも前記第一係合装置及び前記第三係合装置の双方の係合状態であって前記第二係合装置の解放状態で前記第1の変速段を形成し、少なくとも前記第二係合装置及び前記第三係合装置の双方の係合状態であって前記第一係合装置の解放状態で前記第2の変速段を形成し、前記対象量取得部は、前記第二係合装置の温度及び発熱量の少なくとも一方を副監視対象量として更に取得し、前記変速制御部は、前記第三係合装置を直結係合状態に維持したままで前記変速段移行制御を実行すると共に、前記第二係合装置のスリップ係合状態で前記主監視対象量が前記第一判定閾値以上であり且つ前記副監視対象量が予め設定された第三判定閾値以上となった場合には、前記第二係合装置を解放状態に移行させて前記第一係合装置及び前記第三係合装置の双方を直結係合状態として前記第2の変速段から前記第1の変速段へ変速段を移行させると共に、前記回転電機の回転速度を低下させて前記第四係合装置のスリップ量を増加させる構成とすると好適である。
【0020】
この構成によれば、車輪の駆動力源として内燃機関及び回転電機の双方を備える車両において、入力部材の回転速度を状況に応じて必要とされる回転速度以上に維持させつつ回転電機に発電させながら車両を走行させることができる。
変速段移行制御の実行の前後では、第一係合装置又は第二係合装置のいずれかがスリップ係合状態となり、これらは発熱してその温度が上昇する。ここで、各係合装置の温度上昇はそれぞれの発熱に対してある程度の遅れをもって生じることから、第一係合装置の温度が比較的高いままで第二係合装置の温度も上昇する場合がある。上記の構成によれば、対象量取得部により取得される主監視対象量及び副監視対象量と、第一判定閾値及び第三判定閾値とのそれぞれの大小関係に基づいて、第一係合装置第及び二係合装置が過熱しつつあることを検知することができる。そしてそのような場合に、変速制御部が第二係合装置を解放状態に移行させると共に第一係合装置を直結係合状態とすることで、第一係合装置及び第二係合装置の双方の温度上昇を有効に抑制することができる。その際、回転電機の回転速度を低下させて第四係合装置のスリップ量を増加させることで、第一係合装置及び第三係合装置の双方を直結係合状態とすることによって入力部材の実回転速度が低下して入力換算速度に近づく分を吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施形態に係る車両用駆動装置及びその制御装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】変速機構の内部構成を示す模式図である。
【図3】変速機構の作動表である。
【図4】スリップ発電制御を実行する際の各部の動作状態の一例を示すタイムチャートである。
【図5】スリップ発電制御を実行する際の各部の動作状態の一例を示すタイムチャートである。
【図6】スリップ発電制御を実行する際の各部の動作状態の一例を示すタイムチャートである。
【図7】スリップ発電制御の全体の処理手順を示すフローチャートである。
【図8】変速段移行制御の詳細な処理手順を示すフローチャートである。
【図9】スリップ発電制御を実行する際の各部の動作状態の他の一例を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係る制御装置の実施形態について、図面を参照して説明する。図1に示すように、本実施形態に係る制御装置4は、駆動装置1を制御対象とする駆動装置用制御装置である。ここで、本実施形態に係る駆動装置1は、車輪15の駆動力源10として内燃機関11及び回転電機12の少なくとも一方を有する車両6を駆動するための車両用駆動装置である。以下、本実施形態に係る制御装置4について、詳細に説明する。
【0023】
なお、以下の説明では、「係合圧」は、例えば油圧サーボ機構等により当該係合装置によって係合される2つの係合部材を相互に押し付け合う圧力を表す。「解放圧」は、当該係合装置が定常的に解放状態となる圧を表す。「解放境界圧」は、当該係合装置が解放状態とスリップ係合状態との境界のスリップ境界状態となる圧(解放側スリップ境界圧)を表す。「係合境界圧」は、当該係合装置がスリップ係合状態と直結係合状態との境界のスリップ境界状態となる圧(係合側スリップ境界圧)を表す。「完全係合圧」は、当該係合装置が定常的に直結係合状態となる圧を表す。
【0024】
1.駆動装置の構成
図1に示すように、本実施形態に係る制御装置4による制御対象となる駆動装置1は、車輪15の駆動力源10として内燃機関11及び回転電機12の双方を備えたハイブリッド車両(本例では1モータパラレル方式のハイブリッド車両)用の駆動装置として構成されている。この駆動装置1は、駆動力源10に駆動連結される入力軸Iと、車輪15に駆動連結される出力軸Oと、入力軸Iの回転速度を変速して出力軸Oに伝達する変速機構13とを備えている。本実施形態では、駆動装置1は、内燃機関11に駆動連結される連結軸Eと、入力軸Iに駆動連結される回転電機12と、連結軸Eと入力軸Iとを選択的に駆動連結する切離クラッチCLdとを備えている。これにより、駆動力源10としての回転電機12は入力軸Iと一体回転するように連結され、もう1つの駆動力源10としての内燃機関11は切離クラッチCLdを介して選択的に入力軸Iに連結される。
【0025】
切離クラッチCLd、回転電機12、変速機構13、及び出力軸Oは、内燃機関11と車輪15とを結ぶ動力伝達経路に、内燃機関11の側から記載の順に設けられている。これらは、ケース(駆動装置ケース)内に収容されている。本実施形態では、入力軸Iが本発明における「入力部材」に相当し、出力軸Oが本発明における「出力部材」に相当する。
【0026】
内燃機関11は、機関内部における燃料の燃焼により駆動されて動力を取り出す原動機である。内燃機関11としては、例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等を用いることができる。本例では、内燃機関11のクランクシャフト等の内燃機関出力軸が連結軸Eと一体回転するように駆動連結されている。
【0027】
切離クラッチCLdは、内燃機関11と回転電機12との間の駆動連結を解除可能に設けられている。切離クラッチCLdは、連結軸Eと入力軸I及び出力軸Oとを選択的に駆動連結する(内燃機関11と回転電機12及び車輪15とを選択的に駆動連結する)摩擦係合装置であり、解放状態で車輪15から内燃機関11を切り離す、内燃機関切離用係合装置として機能する。切離クラッチCLdとしては、湿式多板クラッチや乾式単板クラッチ等を用いることができる。本実施形態では、切離クラッチCLdが本発明における「第四係合装置」に相当する。
【0028】
回転電機12は、ロータとステータとを有して構成され(図示せず)、モータ(電動機)としての機能とジェネレータ(発電機)としての機能とを果たすことが可能とされている。回転電機12のロータは入力軸Iと一体回転するように駆動連結されている。また、回転電機12は、インバータ装置27を介して蓄電装置28に電気的に接続されている。蓄電装置28としては、バッテリやキャパシタ等を用いることができる。回転電機12は、蓄電装置28から電力の供給を受けて力行し、或いは、内燃機関11の出力トルク(内燃機関トルクTe)や車両6の慣性力により発電した電力を蓄電装置28に供給して蓄電する。回転電機12のロータの出力軸(ロータ出力軸)としての入力軸Iは、変速機構13に駆動連結されている。すなわち、入力軸Iは、変速機構13の入力軸(変速入力軸)となっている。
【0029】
変速機構13は、変速比の異なる複数の変速段を切替可能に有する自動有段変速機構である。図2に示すように変速機構13は、これら複数の変速段を形成するため、遊星歯車機構等の歯車機構と、この歯車機構の回転要素の係合又は解放を行う複数の変速用係合装置(本例では摩擦係合装置)とを備えている。これら複数の変速用係合装置としては、湿式多板クラッチ等を用いることができる。なお、「クラッチ」は「ブレーキ」を含む概念として用いている。図2及び図3に示すように、複数の変速用係合装置には、第一クラッチCL1(本例ではB2ブレーキ)、第二クラッチCL2(本例ではB1ブレーキ)、及び第三クラッチCL3(本例ではC1クラッチ)が含まれている。本実施形態では、第一クラッチCL1が本発明における「第一係合装置」に相当し、第二クラッチCL2が本発明における「第二係合装置」に相当し、第三クラッチCL3が本発明における「第三係合装置」に相当する。
【0030】
図3に示すように、変速機構13は、複数の変速用係合装置の状態に応じて複数(本例では、第1速段〜第6速段の6つ)の変速段を形成する。本例では、第1速段から第6速段に向かうに従って次第に小さくなるように、各変速段の変速比が設定されている。変速機構13は、各変速についてそれぞれ設定された変速比に基づいて、入力軸Iの回転速度を変速すると共にトルクを変換して、変速機構13の出力軸(変速出力軸)としての出力軸Oに伝達する。なお、「変速比」は、出力軸O(変速出力軸)の回転速度に対する入力軸I(変速入力軸)の回転速度の比である。変速機構13から出力軸Oに伝達されたトルクは、出力用差動歯車装置14を介して左右2つの車輪15に分配されて伝達される。これにより、駆動装置1は、内燃機関11及び回転電機12の一方又は双方のトルクを車輪15に伝達して車両6を走行させることができる。
【0031】
本実施形態では、駆動装置1は、入力軸Iに駆動連結されたオイルポンプ(図示せず)を備えている。オイルポンプは、回転電機12及び内燃機関11の一方又は双方の駆動力により駆動されて作動し、油圧を発生させる。オイルポンプからの油は、油圧制御装置25により所定油圧に調整されてから、切離クラッチCLdや第一クラッチCL1等に供給される。これとは別に、専用の駆動モータを有するオイルポンプを備えた構成としても良い。
【0032】
図1に示すように、車両6の各部には、複数のセンサSe1〜Se5が備えられている。連結軸回転速度センサSe1は、連結軸Eの回転速度を検出するセンサである。連結軸回転速度センサSe1により検出される連結軸Eの回転速度は、内燃機関11の回転速度に等しい。入力軸回転速度センサSe2は、入力軸Iの回転速度を検出するセンサである。入力軸回転速度センサSe2により検出される入力軸Iの回転速度は、回転電機12のロータの回転速度に等しい。出力軸回転速度センサSe3は、出力軸Oの回転速度を検出するセンサである。制御装置4は、出力軸回転速度センサSe3により検出される出力軸Oの回転速度に基づいて、車両6の走行速度である車速を導出することもできる。
【0033】
アクセル開度検出センサSe4は、アクセルペダル17の操作量を検出することによりアクセル開度を検出するセンサである。充電状態検出センサSe5は、SOC(state of charge:充電状態)を検出するセンサである。制御装置4は、充電状態検出センサSe5により検出されるSOCに基づいて蓄電装置28の蓄電量を導出することもできる。これらの各センサSe1〜Se5による検出結果を示す情報は、制御装置4へ出力される。
【0034】
2.制御装置の構成
本実施形態に係る制御装置4の構成について説明する。図1に示すように、本実施形態に係る制御装置4は、駆動装置制御ユニット40により構成されている。駆動装置制御ユニット40は、主に回転電機12、切離クラッチCLd、及び変速機構13を制御する。また、車両6には、駆動装置制御ユニット40とは別に、主に内燃機関11を制御する内燃機関制御ユニット30が備えられている。
【0035】
内燃機関制御ユニット30と駆動装置制御ユニット40とは、互いに情報の受け渡しを行うことができるように構成されている。また、内燃機関制御ユニット30及び駆動装置制御ユニット40に備えられる各機能部も、互いに情報の受け渡しを行うことができるように構成されている。また、内燃機関制御ユニット30及び駆動装置制御ユニット40は、各センサSe1〜Se5による検出結果の情報を取得可能に構成されている。
【0036】
内燃機関制御ユニット30は、内燃機関制御部31を備えている。
内燃機関制御部31は、内燃機関11の動作制御を行う機能部である。内燃機関制御部31は、内燃機関トルクTe及び回転速度の制御目標としての目標トルク及び目標回転速度を決定し、この制御目標に応じて内燃機関11を動作させる。本実施形態では、内燃機関制御部31は、車両6の走行状態に応じて内燃機関11のトルク制御と回転速度制御とを切り替えることが可能である。トルク制御は、内燃機関11に目標トルクを指令し、内燃機関トルクTeをその目標トルクに追従させる(一致するように近づける)制御である。回転速度制御は、内燃機関11に目標回転速度を指令し、内燃機関11の回転速度をその目標回転速度に追従させるように目標トルクを決定する制御である。
【0037】
駆動装置制御ユニット40は、走行モード決定部41、要求駆動力決定部42、回転電機制御部43、切離クラッチ動作制御部44、変速機構動作制御部45、係合制御部46、及びスリップ発電制御部47を備えている。
【0038】
走行モード決定部41は、車両6の走行モードを決定する機能部である。走行モード決定部41は、例えば車速やアクセル開度、蓄電装置28の蓄電量等に基づいて、所定のマップ(モード選択マップ)を参照する等して駆動装置1が実現すべき走行モードを決定する。本例では、走行モード決定部41が選択可能な走行モードには、パラレル走行モード、スリップ走行モード(第一スリップ走行モードと第二スリップ走行モードとを含む)、及び停車発電モードが含まれる。
【0039】
パラレル走行モードでは、切離クラッチCLd及びその時点での変速段の形成のために係合される変速用係合装置の全てが直結係合状態とされ、少なくとも内燃機関トルクTeにより車両6を走行させる。スリップ走行モードでは、複数の変速用係合装置のうちの1つ(本例では第一クラッチCL1)がスリップ係合状態とされ、少なくとも内燃機関トルクTeが車輪15に伝達されている状態で車両6を走行させる。このとき切離クラッチCLdは、第一スリップ走行モードではスリップ係合状態とされ、第二スリップ走行モードでは直結係合状態とされる。停車発電モードでは、切離クラッチCLdが直結係合状態、複数の変速用係合装置のうちの少なくとも1つ(本例では第一クラッチCL1)が解放状態とされ、内燃機関トルクTeにより回転電機12が発電する。
【0040】
要求駆動力決定部42は、車両6を走行させるべく車輪15を駆動するために必要とされる要求駆動力を決定する機能部である。要求駆動力決定部42は、車速とアクセル開度とに基づいて、所定のマップ(要求駆動力決定マップ)を参照する等して要求駆動力を決定する。決定された要求駆動力は、内燃機関制御部31及び回転電機制御部43等に出力される。
【0041】
回転電機制御部43は、回転電機12の動作制御を行う機能部である。回転電機制御部43は、回転電機12の出力トルク(回転電機トルクTm)及び回転速度の制御目標としての目標トルク及び目標回転速度を決定し、この制御目標に応じて回転電機12を動作させる。本実施形態では、回転電機制御部43は、車両6の走行状態に応じて回転電機12のトルク制御と回転速度制御とを切り替えることが可能である。ここで、トルク制御は、回転電機12に目標トルクを指令し、回転電機トルクTmをその目標トルクに追従させる制御である。また、回転速度制御は、回転電機12に目標回転速度を指令し、回転電機12の回転速度をその目標回転速度に追従させるように目標トルクを決定する制御である。
【0042】
切離クラッチ動作制御部44は、切離クラッチCLdの動作制御を行う機能部である。切離クラッチ動作制御部44は、油圧制御装置25を介して切離クラッチCLdに供給される油圧を制御し、切離クラッチCLdの係合圧を制御することにより、当該切離クラッチCLdの動作制御を行う。例えば、切離クラッチ動作制御部44は、切離クラッチCLdに対する油圧指令を出力し、その油圧指令に応じて切離クラッチCLdへの供給油圧を解放圧とすることにより、切離クラッチCLdを定常的に解放状態とする。また、切離クラッチ動作制御部44は、切離クラッチCLdへの供給油圧を完全係合圧とすることにより、切離クラッチCLdを定常的に直結係合状態とする。また、切離クラッチ動作制御部44は、切離クラッチCLdへの供給油圧を解放境界圧以上係合境界圧未満のスリップ係合圧とすることにより、切離クラッチCLdをスリップ係合状態とする。
【0043】
切離クラッチCLdのスリップ係合状態では、連結軸Eと入力軸Iとが相対回転する状態で、回転速度が高い方の回転軸から低い方の回転軸に向かって駆動力が伝達される。なお、切離クラッチCLdの直結係合状態又はスリップ係合状態で伝達可能なトルクの大きさは、切離クラッチCLdのその時点での係合圧に応じて決まる。このときのトルクの大きさが、切離クラッチCLdの「伝達トルク容量」である。本実施形態では、切離クラッチCLdに対する油圧指令に応じて、比例ソレノイド等で切離クラッチCLdへの供給油量及び供給油圧の大きさを連続的に制御することにより、係合圧及び伝達トルク容量の増減が連続的に制御可能である。
【0044】
また、切離クラッチ動作制御部44は、車両6の走行状態に応じて切離クラッチCLdのトルク制御と回転速度制御とを切り替えることが可能である。ここで、トルク制御は、切離クラッチCLdに目標伝達トルク容量を指令し、切離クラッチCLdの伝達トルク(伝達トルク容量)をその目標伝達トルク容量に追従させる制御である。また、回転速度制御は、切離クラッチCLdにより係合される2つの係合部材のうちの一方に連結された回転部材(ここでは、入力軸I)の回転速度と他方に連結された回転部材(ここでは、連結軸E)の回転速度との間の差回転速度(以下、単に「切離クラッチCLdの差回転速度」と称する;他の係合装置についても同様)を所定の目標差回転速度に追従させるように、切離クラッチCLdへの油圧指令又は切離クラッチCLdの目標伝達トルク容量を決定する制御である。なお、切離クラッチCLdの回転速度制御では、入力軸I(回転電機12)の回転速度が定まれば、上記差回転速度が目標差回転速度に一致することで連結軸E(内燃機関11)の回転速度も定まる。そのため、切離クラッチCLdの回転速度制御は、内燃機関11の目標回転速度を指令し、内燃機関11の回転速度をその目標回転速度に追従させるように切離クラッチCLdへの油圧指令又は切離クラッチCLdの目標伝達トルク容量を決定する制御であるとも言える。
【0045】
変速機構動作制御部45は、変速機構13の動作制御を行う機能部である。変速機構動作制御部45は、アクセル開度及び車速に基づいて、所定のマップ(変速マップ)を参照する等して目標変速段を決定する。そして、変速機構動作制御部45は、決定された目標変速段に基づいて、変速機構13内の複数の係合装置への供給油圧を制御して目標変速段を形成する。
【0046】
図3に示すように、本実施形態では第一クラッチCL1(B2ブレーキ)及び第三クラッチCL3(C1クラッチ)の双方の係合状態であって第二クラッチCL2(B1ブレーキ)の解放状態で第1速段(「1st」と表示)が形成される。また、第二クラッチCL2及び第三クラッチCL3の双方の係合状態であって第一クラッチCL1の解放状態で第2速段(「2nd」と表示)が形成される。本実施形態では、第1速段が本発明における「第1の変速段」に相当し、第2速段が本発明における「第2の変速段」に相当する。
【0047】
変速機構動作制御部45のうち、各クラッチCL1〜CL3の動作制御を行う機能部を、ここでは特に第一クラッチ動作制御部45a〜第三クラッチ動作制御部45cとする。第一クラッチ動作制御部45aは、油圧制御装置25を介して第一クラッチCL1に供給される油圧を制御し、第一クラッチCL1の係合圧を制御することにより、当該第一クラッチCL1の動作制御を行う。第一クラッチ動作制御部45aによる第一クラッチCL1の動作制御に関しては、制御対象及びそれに付随する事項が一部異なるだけで、切離クラッチ動作制御部44による切離クラッチCLdの動作制御と基本的には同様である。第二クラッチ動作制御部45b及び第三クラッチ動作制御部45cの機能に関しても同様である。
【0048】
係合制御部46は、低出力回転状態で第一クラッチCL1をスリップ係合状態とする機能部である。ここで「低出力回転状態」は、第一クラッチCL1及び第三クラッチCL3を係合状態(ここでは、直結係合状態)とし第二クラッチCL2を解放状態とする第1速段が形成されている状態において、入力換算速度Noc(図4等を参照)が入力軸Iの実回転速度よりも低い状態である。また、「入力換算速度Noc」は、第1速段の変速比に応じて出力軸Oの回転速度を入力軸Iに伝達された場合の回転速度に換算して得られる仮想の回転速度である。図4等においては、この入力換算速度Nocを「1st同期線」として表示している。第一クラッチ動作制御部45aは、車両6が低出力回転状態で走行している場合に、係合制御部46からの指令に基づいて第一クラッチCL1への供給油圧を解放境界圧以上係合境界圧未満のスリップ係合圧とすることにより、第一クラッチCL1をスリップ係合状態とする。
【0049】
スリップ発電制御部47は、低出力回転状態で、第一クラッチCL1に加えて切離クラッチCLdもスリップ係合状態として回転電機12に発電させる機能部である。連結軸Eと一体回転するように駆動連結された内燃機関11は、所定の内燃機関トルクTeを出力して自立運転を継続するためには一定速度以上で回転する必要がある。また、こもり音や振動の発生を抑制する点からも、内燃機関11は一定速度以上で回転する必要がある。また、入力軸Iと一体回転するように駆動連結された回転電機12は、出力可能なトルク(負トルクを含む)の範囲内で所定の目標発電量を確保可能とするためには、一定速度以上で回転する必要がある。そこで、これらの点を考慮して、内燃機関11の回転速度及び回転電機12の回転速度をそれぞれ必要とされる回転速度以上に維持させながら車両6を走行させるため、切離クラッチCLd及び第一クラッチCL1の双方がスリップ係合状態とされる。切離クラッチ動作制御部44は、第一クラッチCL1のスリップ係合状態で、スリップ発電制御部47からの指令に基づいて切離クラッチCLdへの供給油圧を解放境界圧以上係合境界圧未満のスリップ係合圧とすることにより、切離クラッチCLdもスリップ係合状態とする。
【0050】
スリップ発電制御では、第一クラッチ動作制御部45aは、スリップ発電制御部47からの指令に従い、要求駆動力が車輪15に伝達されるように、入力軸Iと出力軸Oとを結ぶ動力伝達経路における第一クラッチCL1の位置に応じたトルクを目標伝達トルク容量として、第一クラッチCL1のトルク制御を行う。回転電機制御部43は、スリップ発電制御部47からの指令に従い、回転電機12の目標回転速度を設定して当該回転電機12の回転速度制御を行う。内燃機関制御部31は、スリップ発電制御部47からの指令に従い、要求駆動力に応じたトルクと回転電機12に発電させるためのトルクとを加算して得られるトルクを目標トルクとして、内燃機関11のトルク制御を行う。ここで、要求駆動力に応じたトルクは、要求駆動力を第1速段の変速比で除算して得られる。回転電機12に発電させるためのトルクは、目標発電量を回転電機12の目標回転速度で除算して得られる。切離クラッチ動作制御部44は、スリップ発電制御部47からの指令に従い、内燃機関11の目標回転速度を設定して切離クラッチCLdの回転速度制御を行う。
【0051】
回転電機12には、内燃機関トルクTeと入力軸Iに伝達されるトルクとの差分に相当するトルク(上記の「回転電機12に発電させるためのトルク」)が作用し、回転電機制御部43は、このトルクと大きさが等しい負トルクを出力しつつ所定の目標回転速度で回転し、回転電機12に目標発電量に一致する電力を発電させる。なお、目標発電量は、車両6に備えられる補機類であって電力を用いて駆動されるもの(例えば、車載用エアコンディショナーのコンプレッサ、灯火類等)の定格消費電力や実消費電力等に基づき、必要に応じて蓄電装置28の蓄電量等にも基づいて決定される。これにより、回転電機12が発電した電力によって補機類の駆動に必要な電力を賄いながら車両6を走行させることができる。このように、第一スリップ走行モード中に回転電機12が発電を行う走行モードを、ここでは特に「第一スリップ発電モード」と称する。
【0052】
ところで、切離クラッチCLd及び第一クラッチCL1の双方のスリップ係合状態では、各クラッチCLd,CL1はそれぞれ発熱してその温度が上昇する。各クラッチCLd,CL1の温度がある程度高くなると、過熱によりこれらの耐久性が低下する可能性がある。変速機構13内の第一クラッチCL1は、切離クラッチCLdと比較して、元来長時間に亘ってスリップ係合状態に維持されることを想定して設計されていない。そのため、第一クラッチCL1は特に熱に弱く問題となり易い。そこで本実施形態に係る制御装置4は、第一クラッチCL1の温度上昇を有効に抑制するべく、本願特有の変速段移行制御を実行可能に構成されている。
【0053】
3.変速段移行制御の内容
変速段移行制御は、第一クラッチCL1が過熱しつつあることが検知された場合に、変速機構13で形成される変速段を移行させる制御である。このような変速段移行制御を実行可能とするべく、本実施形態に係る制御装置4は、対象量取得部51と変速制御部52とを更に備えている。
【0054】
対象量取得部51は、係合装置の発熱状態に関する物理量であって監視対象とされる監視対象量を取得する機能部である。具体的には、対象量取得部51は、第一クラッチCL1の温度及び発熱量の少なくとも一方を主監視対象量M1として取得する。対象量取得部51は、例えば温度センサ(図示せず)の検出結果に基づいて第一クラッチCL1の温度を取得する。また、対象量取得部51は、スリップ係合状態での第一クラッチCL1の差回転速度と伝達トルク容量とに基づいて、当該第一クラッチCL1の発熱量を取得する。なお、対象量取得部51が、第一クラッチCL1の発熱量の積算値に基づいて当該第一クラッチCL1の温度を取得する構成としても良い。
【0055】
本実施形態では、対象量取得部51は、第二クラッチCL2の温度及び発熱量の少なくとも一方を副監視対象量M2として更に取得する。対象量取得部51は、第二クラッチCL2の温度や発熱量についても、上記と同様にして取得することができる。
【0056】
対象量取得部51により取得される主監視対象量M1は、所定の判定閾値(判定しきい値)との間で、大小関係の判定を行うために提供される。本実施形態では、主監視対象量M1は、予め設定された第一判定閾値Th1と、この第一判定閾値Th1よりも小さい値に予め設定された第二判定閾値Th2との間で、大小関係の判定が行われる。なお、主監視対象量M1として第一クラッチCL1の温度が設定されている場合には、その第一クラッチCL1の温度が、温度について設定された第一判定閾値Th1及び第二判定閾値Th2と比較される。また、主監視対象量M1として第一クラッチCL1の発熱量が設定されている場合には、その第一クラッチCL1の発熱量が、発熱量について設定された第一判定閾値Th1及び第二判定閾値Th2と比較される。
【0057】
本実施形態では、第一判定閾値Th1及び第二判定閾値Th2は、第一クラッチCL1の耐熱性能や冷却性能等に基づいて設定されている。第一判定閾値Th1は、例えば第一クラッチCL1の耐熱温度の上限付近に設定され、それ以上発熱して更に温度上昇した場合には当該第一クラッチCL1の耐久性に影響が及ぶ可能性があることを判定可能な値に設定されている。第二判定閾値Th2は、例えば第一クラッチCL1の耐熱温度の上限までには比較的十分な余裕があり、それ以上発熱して更に温度上昇しても当該第一クラッチCL1の耐久性に影響が及ぶ可能性が少ないことを判定可能な値に設定されている。
【0058】
対象量取得部51により取得される副監視対象量M2は、所定の判定閾値(判定しきい値)との間で、大小関係の判定を行うために提供される。本実施形態では、副監視対象量M2は、予め設定された第三判定閾値Th3との間で大小関係の判定が行われる。なお、副監視対象量M2として第二クラッチCL2の温度が設定されている場合には、その第二クラッチCL2の温度が、温度について設定された第三判定閾値Th3と比較される。また、副監視対象量M2として第二クラッチCL2の発熱量が設定されている場合には、その第二クラッチCL2の発熱量が、発熱量について設定された第三判定閾値Th3と比較される。本実施形態では、第三判定閾値Th3は、第二クラッチCL2の耐熱性能や冷却性能等に基づいて設定されている。第三判定閾値Th3は、例えば第二クラッチCL2の耐熱温度の上限付近に設定され、それ以上発熱して更に温度上昇した場合には当該第二クラッチCL2の耐久性に影響が及ぶ可能性があることを判定可能な値に設定されている。
【0059】
変速制御部52は、主監視対象量M1が第一判定閾値Th1以上となった場合に、第1速段から当該第1速段とは異なる他の変速段へ変速段を移行させる変速段移行制御を実行する機能部である。本実施形態では、変速制御部52は、変速段移行制御の実行により、第1速段から当該第1速段に隣接する変速段である第2速へ変速段を移行させる。変速制御部52は、この変速段移行制御に際して、第一クラッチCL1をスリップ係合状態から解放状態へと移行させると共に、第二クラッチCL2を解放状態からスリップ係合状態へと移行させる。また、変速制御部52は、変速段移行制御の実行中、第三クラッチCL3を直結係合状態に維持させる。なお、この変速段移行制御は、アクセル開度及び車速と変速マップとに基づかずにこれらとは無関係に実行される点で、通常の変速制御とは異なっている。第一クラッチ動作制御部45a〜第三クラッチ動作制御部45cは、変速制御部52からの指令に基づいて、それぞれ第一クラッチCL1〜第三クラッチCL3の動作制御を行う。
【0060】
図4等に示すように、第三クラッチ動作制御部45cは、変速段移行制御の実行の前後で第三クラッチCL3への供給油圧を係合境界圧より大きい圧(本例では完全係合圧)に維持することにより、第三クラッチCL3を直結係合状態に維持させる。第二クラッチ動作制御部45bは、第二クラッチCL2への供給油圧を解放境界圧未満の圧(本例では解放圧)として当該第二クラッチCL2を解放状態としている状態で、主監視対象量M1が徐々に上昇して第一判定閾値Th1以上となると、第二クラッチCL2への供給油圧を解放境界圧以上係合境界圧未満のスリップ係合圧として、当該第二クラッチCL2をスリップ係合状態へと移行させる。第一クラッチ動作制御部45aは、スリップ発電制御において第一クラッチCL1への供給油圧を解放境界圧以上係合境界圧未満のスリップ係合圧として当該第一クラッチCL1をスリップ係合状態としている状態で、主監視対象量M1が第一判定閾値Th1以上となると、第一クラッチCL1への供給油圧を解放境界圧未満の圧(本例では解放圧)として、当該第一クラッチCL1を解放状態へと移行させる。
【0061】
主監視対象量M1が第一判定閾値Th1以上になったという事象に基づいて、第一クラッチCL1が過熱しつつあることを検知することができる。そして、主監視対象量M1が第一判定閾値Th1以上になった場合には、変速制御部52が変速段移行制御を実行して、スリップ係合状態とされる係合装置を第一クラッチCL1から第二クラッチCL2へと切り替える。これにより、第一クラッチCL1の更なる発熱及び温度上昇を抑制して、第一クラッチCL1の温度が予め定められた上限温度以上となることを抑制することができる。
【0062】
このとき、本実施形態では、変速段移行制御の実行に際して、第三クラッチCL3を直結係合状態に維持したまま、第一クラッチCL1を解放させつつ第二クラッチCL2をスリップ係合状態とする。このような形態の変速段移行制御は、変速機構動作制御部45による通常の変速制御(アクセル開度及び車速と変速マップとに基づいて実行される変速段の切替制御)とは、開始条件が異なるものの、最終的に第二クラッチCL2が直結係合状態とまではされない点を除いては制御内容が同一である。そのため、新たな制御ロジックを別途追加することなく、通常の変速制御で用いられる制御ロジックを流用して変速段移行制御を実行することができる。よって、演算処理を特に複雑化させることなく第一クラッチCL1の温度上昇を有効に抑制することができる。
【0063】
また、このような通常の変速制御では、第一クラッチCL1の状態移行と第二クラッチCL2の状態移行とを同時に実行することができるので、第一クラッチCL1を迅速に解放状態へと移行させることができる。そして、第一クラッチCL1の解放状態では、例えば直結係合状態の場合と比較して、係合部材間のパッククリアランスが確保される分だけ冷却用の冷媒(例えば、空気や油等)を流通しやすくして放熱量を相対的に大きくすることができる。従って、第一クラッチCL1の温度上昇を有効且つ迅速に抑制することができる。
【0064】
ところで、変速段移行制御の実行により第1速段から第2速段へと強制的に変速段が移行されると、その前後で出力軸O(車輪15)に伝達されるトルクが変化する。そのため、場合によっては要求駆動力が適切に満足されなくなる可能性がある。そこで本実施形態に係る制御装置4は、変速入力軸としての入力軸Iに伝達されるトルクを補正するトルク補正制御部53を更に備えている。トルク補正制御部53は、変速段移行制御の実行の前後で出力軸Oに伝達されるトルクを所定値に維持させるように、入力軸Iに伝達されるトルクを補正する。
【0065】
内燃機関制御部31は、トルク補正制御部53からの指令に基づいて内燃機関11の動作制御を行う。本実施形態では、内燃機関制御部31は、第1速段の変速比(ここでは「λ1」とする)と第2速段の変速比(ここでは「λ2」とする)とに基づいて内燃機関トルクTeを増大させる。より具体的には、内燃機関制御部31は、変速段移行制御の実行前の内燃機関トルクTeに対して、第2速段の変速比に対する第1速段の変速比の比(λ1/λ2)を乗算して得られる値を、変速段移行後の(補正後の)内燃機関トルクTe’とする。なお、切離クラッチ動作制御部44の回転速度制御では、補正後の内燃機関トルクTe’はそのまま入力軸I側へ伝達される。このようなトルク補正を行うことで、変速段移行制御の実行により強制的に変速段が移行された場合であっても、要求駆動力を適切に満足させながら車両6を走行させることができる。
【0066】
変速制御部52は、変速段移行制御の実行により強制的に第1速段から第2速段へと変速段を移行させた後、第二クラッチCL2のスリップ係合状態で所定の復帰条件が成立した場合には、第2速段から第1速段へと変速段を再度移行させる(復帰させる)。このとき変速制御部52は、第一クラッチCL1を解放状態から係合状態(スリップ係合状態又は直結係合状態)へと移行させると共に、第二クラッチCL2をスリップ係合状態から解放状態へと移行させる。その際、変速制御部52は、第三クラッチCL3を直結係合状態に維持させる。
【0067】
本実施形態では、上記復帰条件には、(A)主監視対象量M1が第二判定閾値Th2未満となったこと、(B)入力換算速度Nocが入力軸Iの実回転速度相当となったこと、(C)副監視対象量M2が第三判定閾値Th3以上となったこと、の3つの条件が設定されている。変速制御部52は、上記(A)〜(C)の各条件のそれぞれについて判定を行い、これらのうちのいずれか1つが成立した場合に、復帰条件が成立したと判定して第2速段から第1速段へと変速段を移行させる。
【0068】
変速段移行制御の実行により変速段が第2速段へと移行され、第一クラッチCL1が解放状態とされると、当該第一クラッチCL1の放熱が進行してその温度が徐々に低下する。そして、主監視対象量M1が第二判定閾値Th2未満となった場合には、ある程度の余裕を持って過熱を回避できる程度に第一クラッチCL1が冷却された(或いは、既に再度温度上昇する可能性が低い)とみなすことができる。そこで、この点を考慮して、条件(A)が復帰条件の1つとして設定されている。
【0069】
また、入力換算速度Nocが入力軸Iの実回転速度相当となると、第一クラッチCL1の直結係合状態で第1速段を形成しても、回転電機12に要求される最低回転速度等の制約によらずに問題なく車両6を走行させることができる。また、第一クラッチCL1を直結係合状態とすれば発熱しないので、当該第一クラッチCL1の温度上昇が問題となることもない。そこで、この点を考慮して、条件(B)が復帰条件の1つとして設定されている。
【0070】
また、変速段移行制御の実行により変速段が第2速段へと移行され、第二クラッチCL2がスリップ係合状態とされると、当該第二クラッチCL2は発熱してその温度が徐々に上昇する。第二クラッチCL2の温度がある程度高くなると、過熱によりその耐久性が低下する可能性がある。そのため、第一クラッチCL1の温度上昇だけでなく第二クラッチCL2の温度上昇も有効に抑制することが望まれる。そこで、この点を考慮して、条件(C)が復帰条件の1つとして設定されている。
【0071】
図4等に示すように、第三クラッチ動作制御部45cは、変速段の復帰に際しても、第三クラッチCL3への供給油圧を係合境界圧より大きい圧(本例では完全係合圧)に維持することにより、第三クラッチCL3を直結係合状態に維持させる。第一クラッチ動作制御部45aは、第一クラッチCL1への供給油圧を解放圧として当該第一クラッチCL1を解放状態としている状態で復帰条件が成立すると、第一クラッチCL1への供給油圧を解放境界圧以上の圧として、当該第一クラッチCL1を係合状態へと移行させる。第二クラッチ動作制御部45bは、第二クラッチCL2への供給油圧を解放境界圧以上係合境界圧未満のスリップ係合圧として当該第二クラッチCL2をスリップ係合状態としている状態で復帰条件が成立すると、第二クラッチCL2への供給油圧を解放境界圧未満の圧(本例では解放圧)として、当該第二クラッチCL2を再度解放状態へと移行させる。
【0072】
このとき、本実施形態では、第三クラッチCL3を直結係合状態に維持したまま、第二クラッチCL2を解放させつつ第一クラッチCL1をスリップ係合状態とする。このような形態の変速段の移行についても、通常の変速制御で用いられる制御ロジックを流用することができる。また、この場合にも第一クラッチCL1の状態移行と第二クラッチCL2の状態移行とを同時に実行することができるので、第二クラッチCL2を迅速に解放状態へと移行させることができる。従って、第二クラッチCL2の温度上昇を有効且つ迅速に抑制することができる。
【0073】
4.具体例
以下、図4〜図6のタイムチャート並びに図7及び図8のフローチャートを参照して、スリップ発電制御及びそれに伴う変速段移行制御の具体例について説明する。なお、本例では、車両6の停止中に回転電機12が発電を行っている状態(本例では、停車発電モードが実現されている状態)から第一スリップ発電モードで車両6を発進させる場合に変速段移行制御等を実行することを想定しているが、車両6が走行中の状態からスリップ発電制御及びそれに伴う変速段移行制御を実行する構成としても良い。なお、図4のタイムチャートは上記条件(A)が成立する場合に対応しており、図5のタイムチャートは上記条件(B)が成立する場合に対応しており、図6のタイムチャートは上記条件(C)が成立する場合に対応している。各図について共通の事項に関しては、特に明記している場合を除き、図4についての説明で代表するものとする。
【0074】
本例では、初期状態において停車発電モードが実現され、内燃機関トルクTeにより回転電機12が発電している(時刻T01以前)。停車発電モードでは、切離クラッチCLdは直結係合状態とされ、各クラッチCL1,CL2は解放状態とされる。なお、本例では第三クラッチCL3は直結係合状態に維持されている。
【0075】
車両6の発進後しばらくの間は低出力回転状態にあるので(ステップ#01;Yes)、スリップ発電制御が実行され(ステップ#02)、第一スリップ発電モードで車両6が発進する(時刻T01〜T07)。第一スリップ発電モードの開始時には、切離クラッチCLd及び第一クラッチCL1がスリップ係合状態とされ、第二クラッチCL2が解放状態とされ、第三クラッチCL3が直結係合状態とされる。第一スリップ発電モードでの走行中、対象量取得部51は主監視対象量M1(本例では第一クラッチCL1の温度)を監視している(ステップ#03)。そして、主監視対象量M1が上昇してやがて時刻T02において第一判定閾値Th1以上となると(ステップ#04;Yes)、変速段移行制御が実行される(ステップ#05)。
【0076】
変速段移行制御では、第1速段から第2速段へ変速段が強制的に移行される(ステップ#11)。この変速段移行制御の実行により、時刻T02から第二クラッチCL2への供給油圧が上昇され、時刻T02〜T03の間の所定時期において第二クラッチCL2がスリップ係合状態に移行される。また、それと同時に第一クラッチCL1への供給油圧が低下され、時刻T03において第一クラッチCL1が解放状態に移行される。これにより、第1速段から第2速段への変速段の移行が完了する。ここで、移行後の第2速段は、第三クラッチCL3の直結係合状態且つ第二クラッチCL2のスリップ係合状態で形成されている。なお、図4等においては、移行後の第2速段の変速比に応じて出力軸Oの回転速度を入力軸Iに伝達された場合の回転速度に換算して得られる仮想の回転速度を、「2nd同期線」として表示している。なお、変速段移行制御の結果としての、切離クラッチCLd及び第二クラッチCL2の双方のスリップ係合状態で回転電機12に発電させる制御(走行モード)も、スリップ発電制御(第一スリップ発電モード)の一態様であるとする。
【0077】
対象量取得部51は、主監視対象量M1に加えて副監視対象量M2(本例では第二クラッチCL2の温度)も監視する(ステップ#12)。そして、車速(入力換算速度Noc)が上昇すると共に、主監視対象量M1が次第に低下しつつ副監視対象量M2が次第に上昇する状態で、所定の復帰条件が成立したか否かが判定される(ステップ#13〜#15)。主監視対象量M1が第二判定閾値Th2未満となって条件(A)が成立すると(図4の時刻T04,ステップ#13;Yes)、第2速段から再度第1速段へ変速段が強制的に移行される(ステップ#17)。図4の例では、時刻T04から第一クラッチCL1への供給油圧が上昇され、時刻T04〜T05の間の所定時期において第一クラッチCL1がスリップ係合状態に移行される。また、それと同時に第二クラッチCL2への供給油圧が低下され、時刻T05において第二クラッチCL2が解放状態に移行される。これにより、第2速段から第1速段への変速段の移行が完了する。ここで、移行後の第1速段は、第三クラッチCL3の直結係合状態且つ第一クラッチCL1のスリップ係合状態で形成されている。
【0078】
図4の例では、再度通常の第一スリップ発電モードで車両6が走行を継続する。そして、車速の上昇に伴い、やがて時刻T06において入力軸I(回転電機12)の回転速度と入力換算速度Nocとの差回転速度が第一同期判定閾値X1以下となると、第一クラッチCL1への供給油圧が上昇され、時刻T07において当該第一クラッチCL1が直結係合状態に移行される。これにより、第一スリップ発電モードから第二スリップ発電モード(第二スリップ走行モード中に回転電機12が発電を行う走行モード)へのモード移行が完了する。
【0079】
本例のように主監視対象量M1が第二判定閾値Th2未満となった場合に2速段から第1速段へと変速段を移行させることで、第一クラッチCL1の温度を所定温度域内に抑えながら、車速が比較的低い状態において最大変速比が設定された第1速段を形成しつつ第一クラッチCL1のスリップ係合状態で車両6を適切に走行させることができる。
【0080】
条件(A)が未成立であっても(ステップ#13;No)、入力換算速度Nocが入力軸I(回転電機12)の実回転速度相当になって条件(B)が成立すると(図5の時刻T14,ステップ#14;Yes)、第2速段から再度第1速段へ変速段が強制的に移行される(ステップ#17)。ここで、「入力換算速度Nocが入力軸Iの実回転速度相当になる」とは、入力換算速度Nocが入力軸Iの実回転速度にほぼ一致するとみなせる状態になることを意味する。具体的には、入力換算速度Nocと入力軸Iの実回転速度との差回転速度が第一同期判定閾値X1以下となることを意味する。図5の例では、時刻T14から第一クラッチCL1への供給油圧が上昇され、その後時刻T15において第一クラッチCL1が直結係合状態に移行される。また、時刻T14〜T15の間の所定時期から第二クラッチCL2への供給油圧が低下され、時刻T15において第二クラッチCL2が解放状態に移行される。これにより、第2速段から第1速段への変速段の移行が完了すると共に、第一スリップ発電モードから第二スリップ発電モードへのモード移行が完了する。
【0081】
本例のように入力換算速度Nocが入力軸Iの実回転速度相当となった場合に2速段から第1速段へと変速段を移行させることで、車速が比較的低い状態において最大変速比が設定された第1速段を形成して車両6を適切に走行させることができる。その際、第一クラッチCL1をスリップ係合状態ではなく直結係合状態とすると共に第二クラッチCL2を解放状態とするので、第一クラッチCL1及び第二クラッチCL2の双方の発熱を抑制して、これらの温度上昇を抑制することができる。
【0082】
条件(A)及び条件(B)の双方が未成立であっても(ステップ#13;No,ステップ#14;No)、副監視対象量M2が第三判定閾値Th3以上となって条件(C)が成立すると(図6の時刻T24,ステップ#15;Yes)、基本的には(ステップ#16;No)、条件(A)や条件(B)の成立時と同様に第2速段から再度第1速段へ変速段が強制的に移行される(ステップ#17)。この場合、第一クラッチCL1がスリップ係合状態に移行されると共に第二クラッチCL2が解放状態に移行され、第一スリップ発電モードで車両6が走行を継続することになる。
【0083】
但し、図6に示す例のように副監視対象量M2が第三判定閾値Th3以上となった時点(時刻T24)において主監視対象量M1が未だ第一判定閾値Th1以上である場合がある。これは、各係合装置の温度上昇はそれぞれの発熱に対してある程度の遅れをもって生じることに起因する。このような場合には(ステップ#16;Yes)、第2速段から再度第1速段へ変速段が強制的に移行されると共に、第一スリップ発電モードから第二スリップ発電モードへ走行モードも強制的に移行される。具体的には、図6に示す例では、時刻T24から回転電機12の回転速度が次第に低下されて、入力軸I(回転電機12)の回転速度が入力換算速度Noc相当となって第一クラッチCL1の差回転速度(スリップ量)がほぼゼロとなると共に、これと相補的に、切離クラッチCLdの差回転速度(スリップ量;図6において「ΔNd」と表示)が増加する(ステップ#18)。一方、時刻T24から第一クラッチCL1への供給油圧が上昇され、その後時刻T25において第一クラッチCL1が直結係合状態に移行される。また、時刻T24〜T25の間の所定時期から第二クラッチCL2への供給油圧が低下され、時刻T25において第二クラッチCL2が解放状態に移行される(ステップ#18)。これにより、第2速段から第1速段への変速段の移行と、第一スリップ発電モードから第二スリップ発電モードへの走行モードの移行とが完了する。なお、図6に示す例では、回転電機トルクTm(回生トルク)は、回転電機12の回転速度を変化させるためのイナーシャトルク分以外には特に補正されてはおらず、回転電機12の回転速度の低下に伴って発電量が低下している。
【0084】
本例のように副監視対象量M2が第三判定閾値Th3以上となった場合に2速段から第1速段へと変速段を移行させることで、第二クラッチCL2を解放状態へと移行させ、第二クラッチCL2の更なる発熱及び温度上昇を抑制して、第二クラッチCL2の温度上昇を抑制することができる。その際、主監視対象量M1が第一判定閾値Th1以上である場合には第二クラッチCL2を解放状態に移行させると共に第一クラッチCL1をスリップ係合状態ではなく直結係合状態へと移行させることで、第一クラッチCL1及び第二クラッチCL2の双方の温度上昇を有効に抑制することができる。また、回転電機12の回転速度を低下させて切離クラッチCLdの差回転速度(スリップ量ΔNd)を増加させることで、第一クラッチCL1及び第三クラッチCL3の双方の直結係合状態で第1速段を形成することによって入力軸Iの回転速度が低下して入力換算速度Nocに近づく分を、切離クラッチCLdの差回転速度の増大によって吸収することができる。
【0085】
なお、条件(A)〜(C)の全てが未成立の間は(ステップ#13;No,ステップ#14;No,ステップ#15;No)、ステップ#12〜ステップ#15の処理を繰り返して実行する。また、条件(A)〜(C)のいずれかが成立した場合には、いずれの場合にも上記のとおり第2速段から第1速段へ変速段が移行され、変速段移行制御が終了する。
【0086】
図4等に戻って、第二スリップ発電モードでの走行中、車速の上昇に伴い、やがて時刻T08において内燃機関11の回転速度と回転電機12の回転速度との差回転速度が第二同期判定閾値X2以下となると、切離クラッチCLdへの供給油圧が上昇され、時刻T09において当該切離クラッチCLdが直結係合状態に移行される。これにより、第二スリップ発電モードからパラレル走行モードへのモード移行が完了する。その後、車両6は、パラレル走行モードにて回転電機12が発電を行いながら走行を継続する。
【0087】
5.その他の実施形態
最後に、本発明に係る制御装置の、その他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0088】
(1)上記の実施形態では、主監視対象量M1として第一クラッチCL1の温度のみが取得されると共に、副監視対象量M2として第二クラッチCL2の温度のみが取得される構成を、具体的な例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、主監視対象量M1として第一クラッチCL1の発熱量のみが取得される構成としても良い。また、主監視対象量M1として第一クラッチCL1の温度及び発熱量の双方が取得される構成としても良い。この場合には、第一クラッチCL1の温度及び発熱量の双方がそれぞれについての第一判定閾値Th1以上となった場合に、変速段移行制御が実行される構成としても良いし、第一クラッチCL1の温度及び発熱量のいずれか一方がそれぞれについての第一判定閾値Th1以上となった場合に、変速段移行制御が実行される構成としても良い。主監視対象量M1と第二判定閾値Th2との関係に関しても同様である。また、副監視対象量M2に関しても同様である。
【0089】
(2)上記の実施形態では、各判定閾値Th1〜Th3が、固定値に予め設定されている構成を想定して説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、これらが予め想定された範囲内で可変とされた構成としても良い。例えば、主監視対象量M1として第一クラッチCL1の温度及び発熱量の双方が取得され、それぞれについての第一判定閾値Th1との大小関係が比較される構成において、第一クラッチCL1の発熱量が当該発熱量についての第一判定閾値Th1以上となった場合には、温度についての第一判定閾値Th1を変更前に比べて小さくする構成等としても良い。第二判定閾値Th2や第三判定閾値Th3に関しても同様である。
【0090】
(3)上記の実施形態では、3つの条件(A)〜(C)が復帰条件として設定され、これらのうちのいずれか1つが成立した場合に、復帰条件が成立したと判定される構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、これらのうちの1つ又は2つが復帰条件として設定された構成としても良い。また、これら以外の他の条件が復帰条件として更に設定された構成としても良い。
【0091】
(4)上記の実施形態では、変速段移行制御において復帰条件が設定され、復帰条件が成立した場合に第2速段から第1速段へと変速段が移行される構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、例えば変速段移行制御の実行により第1速段から第2速段へ変速段が移行された後、復帰条件についての判定を行うことなく車両6が第2速段を形成したまま走行を継続する構成としても良い。
【0092】
(5)上記の実施形態では、変速段移行制御において第1速段と第2速段との間で変速段の移行が行われる構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、例えば変速段移行制御において第1速段と第3速段との間で変速段の移行が行われる構成や、第2速段と第3速段との間で変速段の移行が行われる構成等としても良い。これらの場合、それぞれ移行前後の変速段に応じて、本発明における「第一係合装置」、「第二係合装置」、及び「第三係合装置」がそれぞれ定まる。
【0093】
(6)上記の実施形態では、スリップ発電制御の実行中(第一スリップ発電モードでの走行中)に変速段移行制御が実行される構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、変速段移行制御が実行される状況としては、少なくとも低出力回転状態における第一クラッチCL1のスリップ係合状態での走行中であれば良く、例えば回転電機12が発電を行うことは必須ではない。同様に、切離クラッチCLdをスリップ係合状態とすることも必須ではない。
【0094】
(7)上記の実施形態では、変速段移行制御の実行の前後で出力軸Oに伝達されるトルクを所定値に維持させるように、入力軸Iに伝達されるトルクを補正するトルク補正制御部53を備える構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、そのようなトルク補正制御部53を備えることなく、変速段移行制御の前後で出力軸O(車輪15)に伝達されるトルクが変化することを許容する構成としても良い。
【0095】
(8)上記の実施形態では、本発明の特徴を明確化するべく、制御装置4が変速制御部52を備えている構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、変速制御部52の構成はあくまで仮想的なものであって、この変速制御部52の機能を変速機構動作制御部45に備えさせても良い。係合制御部46、スリップ発電制御部47、及びトルク補正制御部53等に関しても同様である。
【0096】
(9)上記の実施形態では、変速機構13内の複数の係合装置のうちの所定の2つのみが係合状態とされることで各変速段が形成される構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、各変速段の形成時に、3つ以上の係合装置が係合状態とされる構成としても良い。
【0097】
(10)上記の実施形態では、制御装置4が、車輪15の駆動力源10として内燃機関11及び回転電機12の双方を備えた車両6用の駆動装置1を制御対象とする構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、制御装置4による制御対象はこれに限られず、車輪15の駆動力源10として内燃機関11のみを備えた車両(いわゆるエンジン車両)や、車輪15の駆動力源10として回転電機12のみを備えた車両(いわゆる電動車両)用の駆動装置を制御対象としても良い。なお、図9には一例として、後者の場合における適用例(タイムチャート)を示している。これらの場合にも、上述した変速段移行制御を実行する構成とすることで、上記の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0098】
(11)上記の実施形態では、切離クラッチCLdや変速用の各クラッチCL1〜CL3等が、供給油圧に応じて係合圧が制御される油圧駆動式の係合装置とされた構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、これらは係合圧の増減に応じて伝達トルク容量を調整可能であれば良く、例えばこれらのうちの一方又は双方を、電磁力に応じて係合圧が制御される電磁式の係合装置としても良い。
【0099】
(12)上記の実施形態では、主に内燃機関11を制御するための内燃機関制御ユニット30と、主に回転電機12、切離クラッチCLd、及び変速機構13を制御するための駆動装置制御ユニット40(制御装置4)とが個別に備えられている構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、例えば単一の制御装置4が内燃機関11、回転電機12、切離クラッチCLd、及び変速機構13等の全てを制御する構成としても良い。或いは、制御装置4が、回転電機12を制御するための制御ユニットと、それ以外の各種構成を制御するための制御ユニットとを更に個別に備える構成としても良い。
【0100】
(13)その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、本願の特許請求の範囲に記載されていない構成に関しては、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明は、内燃機関及び回転電機の少なくとも一方と変速機構とを備えた車両用駆動装置を制御対象とする制御装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0102】
1 駆動装置(車両用駆動装置)
4 制御装置
6 車両
10 駆動力源
11 内燃機関
12 回転電機
13 変速機構
15 車輪
40 駆動装置制御ユニット
46 係合制御部
47 スリップ発電制御部
51 対象量取得部
52 変速制御部
E 連結軸(連結部材)
I 入力軸(入力部材)
O 出力軸(出力部材)
CLd 切離クラッチ(第四係合装置)
CL1 第一クラッチ(第一係合装置)
CL2 第二クラッチ(第二係合装置)
CL3 第三クラッチ(第三係合装置)
Noc 入力換算速度
Th1 第一判定閾値
Th2 第二判定閾値
Th3 第三判定閾値
M1 主監視対象量
M2 副監視対象量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪の駆動力源として内燃機関及び回転電機の少なくとも一方を有する車両の前記駆動力源に駆動連結される入力部材と、前記車輪に駆動連結される出力部材と、第一係合装置及び第二係合装置を含む複数の係合装置の状態に応じて複数の変速段が形成され、前記入力部材の回転速度を各変速段の変速比で変速して前記出力部材に伝達する変速機構と、を備えた車両用駆動装置を制御対象とする制御装置であって、
少なくとも前記第一係合装置を係合状態とし前記第二係合装置を解放状態とする第1の変速段が形成されている状態において、当該第1の変速段の変速比に応じて前記出力部材の回転速度を前記入力部材に伝達された場合の回転速度に換算して得られる入力換算速度が、前記入力部材の実回転速度よりも低い低出力回転状態で、前記第一係合装置をスリップ係合状態とする係合制御部と、
前記第一係合装置の温度及び発熱量の少なくとも一方を主監視対象量として取得する対象量取得部と、
前記主監視対象量が予め設定された第一判定閾値以上となった場合に、前記第一係合装置をスリップ係合状態から解放状態へと移行させると共に前記第二係合装置をスリップ係合状態へと移行させて前記第1の変速段から第2の変速段へ変速段を移行させる変速段移行制御を実行する変速制御部と、
を備える制御装置。
【請求項2】
前記変速機構は、第三係合装置を更に有し、少なくとも前記第一係合装置及び前記第三係合装置の双方の係合状態であって前記第二係合装置の解放状態で前記第1の変速段を形成し、少なくとも前記第二係合装置及び前記第三係合装置の双方の係合状態であって前記第一係合装置の解放状態で前記第2の変速段を形成し、
前記変速制御部は、前記第三係合装置を直結係合状態に維持したままで前記変速段移行制御を実行する請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記変速制御部は、前記第二係合装置のスリップ係合状態で前記主監視対象量が前記第一判定閾値よりも小さい値に予め設定された第二判定閾値未満となった場合には、前記第二係合装置を解放状態へと移行させると共に前記第一係合装置をスリップ係合状態へと移行させて前記第2の変速段から前記第1の変速段へ変速段を移行させる請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
少なくとも前記第二係合装置を係合状態とし前記第一係合装置を解放状態として形成される前記第2の変速段には、前記第1の変速段よりも小さい変速比が設定され、
前記変速制御部は、前記第二係合装置のスリップ係合状態で前記入力換算速度が前記入力部材の実回転速度相当となった場合には、前記第二係合装置を解放状態へと移行させると共に前記第一係合装置を直結係合状態へと移行させて前記第2の変速段から前記第1の変速段へ変速段を移行させる請求項1から3のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記対象量取得部は、前記第二係合装置の温度及び発熱量の少なくとも一方を副監視対象量として更に取得し、
前記変速制御部は、前記第二係合装置のスリップ係合状態で前記副監視対象量が予め設定された第三判定閾値以上となった場合には、前記第二係合装置を解放状態へと移行させると共に前記第一係合装置をスリップ係合状態へと移行させて前記第2の変速段から前記第1の変速段へ変速段を移行させる請求項1から4のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項6】
前記内燃機関に駆動連結される連結部材と、前記入力部材に駆動連結される前記回転電機と、前記連結部材と前記入力部材とを選択的に駆動連結する第四係合装置と、を備えた前記車両用駆動装置を制御対象とし、
前記低出力回転状態で、前記第一係合装置に加えて前記第四係合装置もスリップ係合状態としつつ前記回転電機に発電させるスリップ発電制御部を更に備え、
前記変速機構は、第三係合装置を更に有し、少なくとも前記第一係合装置及び前記第三係合装置の双方の係合状態であって前記第二係合装置の解放状態で前記第1の変速段を形成し、少なくとも前記第二係合装置及び前記第三係合装置の双方の係合状態であって前記第一係合装置の解放状態で前記第2の変速段を形成し、
前記対象量取得部は、前記第二係合装置の温度及び発熱量の少なくとも一方を副監視対象量として更に取得し、
前記変速制御部は、前記第三係合装置を直結係合状態に維持したままで前記変速段移行制御を実行すると共に、前記第二係合装置のスリップ係合状態で前記主監視対象量が前記第一判定閾値以上であり且つ前記副監視対象量が予め設定された第三判定閾値以上となった場合には、前記第二係合装置を解放状態に移行させて前記第一係合装置及び前記第三係合装置の双方を直結係合状態として前記第2の変速段から前記第1の変速段へ変速段を移行させると共に、前記回転電機の回転速度を低下させて前記第四係合装置のスリップ量を増加させる請求項1から5のいずれか一項に記載の制御装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−35415(P2013−35415A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173215(P2011−173215)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】