説明

制電性アクリル系樹脂組成物

【課題】塗料、粘着剤等に使用可能な制電性アクリル系樹脂組成物であって、架橋剤で架橋した後にもイオン電導性が低下せず、特に、液晶ディスプレイの製造に用いられる偏光板等の光学部材の表面保護フィルム用の粘着層として好適な、透明な、剥離時の静電気の発生が少ない制電性アクリル系樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】水酸基及びアルキレンオキサイド鎖を有するアクリル系樹脂(A)、水酸基と反応し得る官能基を有する化合物(B)及びイオン化合物(C)を含有する制電性アクリル系樹脂組成物であって、
前記アクリル系樹脂(A)が、アクリル系樹脂(A1)の、エポキシ基と反応可能な官能基と、エポキシ基及びアルキレンオキサイド鎖を有する化合物(A2)のエポキシ基とを反応させてなることを特徴とする制電性アクリル系樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制電性アクリル系樹脂組成物に関する。より詳しくは、電子、光学部品の包装材に用いる透明性に優れた制電性アクリル系樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ICチップに代表される電子部品や光学部品の包装材については、静電気対策が求められている。特許文献1(特開2003−261774号公報)には、イオン化合物としてのリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを含む制電性樹脂組成物が、高い静電気消散機能を有し、持続性、成形加工性に優れた、着色しない制電性樹脂組成物として開示されている。しかし、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドが高価な材料であるため、成形品全体を当該制電性樹脂組成物で作製した場合にはコスト高を招き、高付加価値の特殊用途にしか使用できない。
そこで、特許文献2(特開2003−41194号公報)には、成形品の表面に、制電性樹脂組成物の塗膜を形成する経済性に優れた制電性塗料が開示されている。
【0003】
一方で、包装材自体の形態が、従来のコンテナ等の容器から、キャリアテープや光学部品用途の保護フィルムに代表されるように、テープ化やフィルム化が進んでいる。
特に、保護フィルムは、液晶ディスプレイの普及に伴って伸長著しく、使用例としては、液晶ディスプレイに用いられる偏光板やそれに準ずる積層体等の光学部品等に、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン等からなる透明なフィルムが粘着層を介して積層されて使用される。
保護フィルムは、液晶ディスプレイ等に組み込みが完了した後に光学部品等から剥離除去されるが、剥離する際に生じる静電気により液晶や電子回路が破壊されるトラブルの発生が問題となっている。保護フィルム表面に制電性樹脂を塗工するだけでは、剥離時に発生する静電気の抑制には十分な効果が得られていない。
【0004】
そこで、保護フィルムの粘着層を形成するための、粘着性を有する制電性樹脂組成物が求められ、特許文献3(特開2005−206776号公報)には、過塩素酸リチウムとアルキレンオキサイド鎖を有するモノマーを含むアクリル樹脂系粘着剤が開示されている。しかし、合成時の反応開始剤の影響でアルキレンオキサイド鎖の一部が分解する為に、不均一なアルキレンオキサイド鎖を有するアクリル樹脂が生成され、更に、剥離性を付与する為に、架橋剤で硬化するとイオン電導性も低下する。その結果、近年の液晶テレビの大画面化に伴い、保護フィルム自体も大面積化し、かつ、剥離速度も速くなる為に、剥離時に生じる静電気を防止する効果が十分得られていない。
【特許文献1】特開2003−261774号公報
【特許文献2】特開2003−41194号公報
【特許文献3】特開2005−206776号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、塗料、粘着剤等に使用可能な制電性アクリル系樹脂組成物であって、架橋剤で架橋した後にもイオン電導性が低下せず、特に、液晶ディスプレイの製造に用いられる偏光板等の光学部材の表面保護フィルム用の粘着層として好適な、透明な、剥離時の静電気の発生が少ない制電性アクリル系樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は、水酸基及びアルキレンオキサイド鎖を有するアクリル系樹脂(A)、水酸基と反応し得る官能基を有する化合物(B)及びイオン化合物(C)を含有する制電性アクリル系樹脂組成物であって、
前記アクリル系樹脂(A)が、アクリル系樹脂(A1)の、エポキシ基と反応可能な官能基と、エポキシ基及びアルキレンオキサイド鎖を有する化合物(A2)のエポキシ基とを反応させてなることを特徴とする制電性アクリル系樹脂組成物に関する。
【0007】
また、本発明は、アクリル系樹脂(A1)の、エポキシ基と反応可能な官能基が、カルボキシル基、アミノ基及びアミド基からなる群より選ばれるいずれかであることを特徴とする上記発明の制電性アクリル系樹脂組成物に関する。
【0008】
また、本発明は、イオン化合物(C)が、アルカリ金属の有機塩及び/又は有機カチオン−アニオン塩であることを特徴とする上記いずれかの発明の制電性アクリル系樹脂組成物に関する。
【0009】
また、本発明は、有機カチオン−アニオン塩が、下記一般式[1]で表される化合物(C1)もしくは下記一般式[2]で表される化合物(C2)であることを特徴とする上記発明に記載の制電性アクリル系樹脂組成物に関する。
【0010】
【化1】

【0011】
【化2】

【0012】
(一般式(1)及び一般式(2)において、RからRは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアリール基、または、置換基を有してもよい複素環基を表し、RからRは、隣り合う置換基同士で環を形成してもよく、
一般式(2)中、Aは、アルカリ金属イオンを表す。)
【0013】
そして、上記発明において、R〜Rは、それぞれ独立に、置換基を有してもよいアルキル基、または、置換基を有してもよいアリール基であることが好ましく、それぞれ独立に、置換基を有してもよいアリール基であることがより好ましい。
【0014】
また、記発明において、R〜Rは、それぞれ独立に、置換基を有してもよいアルキル基であることが好ましい。
【0015】
また、本発明は、水酸基及びアルキレンオキサイド鎖を有するアクリル系樹脂(A)100重量部に対して、イオン化合物(C)を0.01〜10重量部含むことを特徴とする上記いずれかの発明の制電性アクリル系樹脂組成物に関する。
【0016】
また、本発明は、水酸基及びアルキレンオキサイド鎖を有するアクリル系樹脂(A)のアルキレンオキサイド鎖の付加モル数が、4〜16であることを特徴とする上記いずれかの発明の制電性アクリル系樹脂組成物に関する。
【0017】
また、本発明は、水酸基及びアルキレンオキサイド鎖を有するアクリル系樹脂(A)のアルキレンオキサイド鎖がエチレンオキサイド鎖であることを特徴とする上記いずれかの発明の制電性アクリル系樹脂組成物に関する。
【0018】
また、本発明は、水酸基と反応し得る官能基を有する化合物(B)が、3官能イソシアネート化合物であることを特徴とする上記いずれかの発明の制電性アクリル系樹脂組成物に関する。
【0019】
また、本発明は、プラスチックフィルム基材の少なくとも片面に上記いずれかの発明の制電性アクリル系樹脂組成物から形成される粘着層が積層されてなることを特徴とする光学部材用保護フィルムに関する。
【0020】
さらに、本発明は、水酸基を有するアクリル系モノマー(a1)、及び水酸基以外の、エポキシ基と反応可能な官能基を有するエチレン性不飽和モノマー(a2)を含むモノマーを共重合し、次いで、前記水酸基以外の、エポキシ基と反応可能な官能基と、エポキシ基及びアルキレンオキサイド鎖を有する化合物(A2)のエポキシ基とを反応させることを特徴とする、水酸基及びアルキレンオキサイド鎖を有するアクリル系樹脂の製造方法に関する。
【0021】
さらにまた、本発明は、水酸基以外の、エポキシ基と反応可能な官能基が、カルボキシル基、アミノ基及びアミド基からなる群より選ばれるいずれかであることを特徴とする上記発明の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、塗料、粘着剤等に使用可能な制電性アクリル系樹脂組成物であって、架橋剤で架橋した後にもイオン電導性が低下せず、特に、液晶ディスプレイの偏光板等の光学部材の表面保護フィルム用の粘着層として好適な、剥離時の静電気の発生が少ない制電性アクリル系樹脂組成物が得られるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明に用いられるアクリル系樹脂(A1)は、水酸基を有するアクリル系モノマー(a1)と、水酸基以外の、エポキシ基と反応可能な官能基を有するエチレン性不飽和モノマー(a2)と必要に応じてこれらと共重合可能な他のアクリル系モノマー(a3)から合成することができる。
本発明に水酸基を有するアクリル系モノマー(a1)を使用する目的は、被着体に対する粘着力を確保しつつ剥離性を確保するためである。さらに詳しく説明すると、粘着層を形成する際に使用する後述の水酸基と反応し得る官能基を有する化合物(B)と、水酸基及びアルキレンオキサイド鎖を有するアクリル系樹脂(A)〔以下、単に「アクリル系樹脂(A)」と表記することもある〕中の水酸基との反応を利用して架橋構造を形成するが、アクリル系樹脂(A)の分子量を含めて制御することにより、粘着性と剥離性とのバランスをとることができる。よって、アクリル系樹脂(A)の前駆体であるアクリル系樹脂(A1)を構成するモノマーの合計を100重量%とした場合、水酸基を有するアクリル系モノマー(a1)は0.5〜30重量%であることが好ましい。さらに好ましくは、1〜20重量%である。
水酸基を有するアクリル系モノマー(a1)が0.5重量%未満の場合、粘着層としての凝集力が不足し、剥離性が低下して好ましくない。30重量%を超えると、架橋度が高くなりすぎて粘着性、制電性が乏しくなるので好ましくない。
【0024】
本発明に用いられる、水酸基を有するアクリル系モノマー(a1)〔以下、単に「アクリル系モノマー(a1)」と表記することもある〕としては、一級の水酸基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを好ましく用いることができる。一級の水酸基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのアルキル鎖の炭素数は20以下であることが好ましく、2〜20であることがより好ましく、4〜12であることがさらに好ましい。
一級の水酸基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのアルキル鎖の炭素数が20より多い場合は、硬化剤を増やしても粘着層としての凝集力が不足し、剥離性が低下して好ましくない。また、4〜12の場合には、硬化剤として使用する、水酸基と反応し得る官能基を有する化合物(B)で架橋後にアルキレンオキサイド鎖の分子運動を阻害しにくいため、特に好ましい。
【0025】
一級の水酸基を有し、アルキル鎖の炭素数が20以下であるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとして、具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチルや(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(メタ)アクリル酸18−ヒドロキシステアリル等が挙げられる。
上記化合物のうち、本発明では4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチルや(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリルが好ましい。
また、水酸基を有するアクリル系モノマー(a1)として、二級もしくは三級の水酸基を有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類や、アルキル鎖の炭素数が20を超えるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類を使用してもよい。
【0026】
本発明において、水酸基以外の、エポキシ基と反応可能な官能基を有するエチレン性不飽和モノマー(a2)〔以下、単に「エチレン性不飽和モノマー(a2)」と表記することもある〕を使用する目的は、アクリル系モノマー(a1)、エチレン性不飽和モノマー(a2)、及び必要に応じて用いられるその他のアクリル系モノマー(a3)とからなるアクリル系樹脂(A1)と、エポキシ基及びアルキレンオキサイド鎖を有する化合物(A2)のエポキシ基とを反応させることにより、アクリル系樹脂(A1)に側鎖としてアルキレンオキサイド鎖を導入するためである。このような工程を経ることにより、水酸基及びアルキレンオキサイド鎖を有するアクリル系樹脂(A)を得ることができる。
水酸基及びアルキレンオキサイド鎖を有するアクリル系樹脂(A)中のアルキレンオキサイド鎖と、イオン化合物(C)とで錯体を形成させ、導電性を発現させることができる。アルキレンオキサイド鎖の役割は非常に大きく、単に錯体形成の場を与えるだけでなく、イオン化合物(C)の移動媒体としての働きも同時に担っている。言い換えると、本発明における制電性は、イオン化合物(C)の量と、アルキレンオキサイド鎖を得るために必要なエチレン性不飽和モノマー(a2)の含有量に依存する。
【0027】
よって、アクリル系樹脂(A1)を構成するモノマーの合計を100重量%とした場合、エチレン性不飽和モノマー(a2)は、0.1〜20重量%であることが好ましく、1〜10重量%であることがより好ましい。
エチレン性不飽和モノマー(a2)が0.1重量%未満の場合、制電性を得るのが困難になり、一方、20重量%を超える場合、重合時に高粘度化するために生産性が低下し好ましくない。
【0028】
本発明に用いられる、水酸基以外の、エポキシ基と反応可能なエチレン性不飽和モノマー(a2)はカルボキシル基、アミノ基、あるいはアミド基のいずれかを有するモノマーである。
カルボキシル基含有モノマーとしてはアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸、マレイン酸、フマール酸、シトラコン酸、グルタコン酸、イタコン酸等の多価カルボン酸及びこれらの無水物を挙げることが出来る。
アミノ基含有モノマーとしてはアクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等を挙げることが出来る。
アミド基含有モノマーとしてはアクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N−tert−ブチルアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、アクリロイルピペリジン、ジエチルアクリルアミド、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等を挙げることが出来る。
【0029】
なお、水酸基もエポキシ基と反応し得るのであるが、両者の反応は高温、長時間を要するため、製造の不安定性及びコスト高につながる。そのため、エポキシ基及びアルキレンオキサイド鎖を有する化合物(A2)のエポキシ基と反応させる官能基としては、水酸基のみでは不都合であり、エポキシ基との反応性に富む、上記いずれかの官能基を有するモノマーを使用することが重要である。
【0030】
本発明に用いられる、上記の水酸基を有するアクリル系モノマー(a1)及びエポキシ基と反応可能な官能基を有するエチレン性不飽和モノマー(a2)と共重合可能なアクリル系モノマー(a3)としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、イコシル(メタ)アクリレート、ヘンイコシル(メタ)アクリレート、ドコシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸等を挙げることができる。本発明においては、粘着性を確保するという点で、アルキル鎖の炭素数が4〜24のアルキル(メタ)アクリレートを共重合に供することが好ましい。さらに好ましくは、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートである。
これらのモノマー(a3)は、制電性アクリル系樹脂組成物としての望ましい物性を得る目的のため、適宜選択して単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。特に、粘着力を付与する為に、得られるアクリル系樹脂(A1)のガラス転移温度(以下、「Tg」ともいう)が0℃以下となるようにモノマー(a3)の種類を選択することが好ましい。
【0031】
上述の水酸基を有するアクリル系モノマー(a1)、水酸基以外の、エポキシ基と反応可能な官能基を有するエチレン性不飽和モノマー(a2)及びその他のモノマー(a3)を共重合してなるアクリル系樹脂(A1)の重量平均分子量(Mw)は20万〜100万であることが好ましく、30万〜70万であることがより好ましい。
20万未満では、必要な剥離性が得られにくく、100万を超えると、合成時の粘度が高くなり過ぎ、生産性が低下しやすいため好ましくない。
【0032】
本発明に用いられる、エポキシ基及びアルキレンオキサイド鎖を有する化合物(A2)〔以下、単に「化合物(A2)」と表記することもある〕としては、下記一般式(3)で示されるアルキル−、アルケニル−、アリール−又はアルキルアリール−ポリエチレングリコールグリシジルエーテル類を挙げることができる。
【0033】
【化3】

【0034】
(但し、nは0〜25の整数、Rは炭素数1〜20のアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアルキルアリール基を表す。)
【0035】
式(1)で示される化合物のうち、代表的なものとしては、Rが例えばメチル基、エチル基、ブチル基等の直鎖アルキル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等の分枝アルキル基、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、1,3−ブタジエニル基等のアルケニル基、フェニル基、ノニルフェニル基、トリル基、ベンジル基等のアリール又はアルキルアリール基等のものを挙げることができ、中でもnが1〜16、Rの炭素数が1〜12であるものが好ましく、特にnが4〜16でRの炭素数が1〜6であるものがより好ましい。nが16より大きくなると、得られる水酸基及びアルキレンオキサイド鎖を有するアクリル系樹脂(A)の結晶性が高くなり、粘着性が低下してしまい好ましくない。一方、Rの炭素数が12より大きくなると、制電性を得るのが困難になり好ましくない。
【0036】
本発明に用いられるアクリル系樹脂(A)は、前記アクリル系樹脂(A1)と化合物(A2)のエポキシ基とを反応させて得る。アクリル系樹脂(A1)を構成するエチレン性不飽和モノマー(a2)1モルに対する化合物(A2)の付加モル数は、0.5〜2.0モルが好ましく、1.0〜1.5モルがより好ましい。0.5モル未満では、反応後に残存するエチレン性不飽和モノマー(a2)由来の官能基に含まれる活性水素の触媒作用により、水酸基と反応し得る官能基を有する化合物(B)の反応性が高まり、得られる樹脂組成物のポットライフが低下し好ましくない。また、2.0モルを超える場合は、未反応の化合物(A2)が残りやすく、被着体表面を汚染しやすいため好ましくない。
【0037】
アクリル系樹脂(A1)と化合物(A2)との反応に使用できる触媒としては、ソジウムメチラート、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸リチウム等の塩基性触媒、ボロントリフルオライドのような酸性触媒、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、トリスジメチルアミノメチルフェノール、トリエチレンジアミン、トリブチルアミン、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド等のアミン系触媒、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール類、及びトリフェニルフォスフィン、トリフェニルアンチモン、酢酸亜鉛等の有機酸の金属化合物等が挙げられる。尚、触媒の使用量は任意である。
【0038】
ところで、光学部材の中には非常に薄く、壊れやすいものがある一方、比較的丈夫なものもあり、保護フィルムをどのような被着体に貼着するかによって、保護フィルムの粘着層に要求される剥離力の大きさは異なる。
即ち、壊れやすい光学部材を被着体とする場合には、貼着後保護フィルムを剥離する際に被着体を損傷しないようにするために、剥離力は200g/25mm以下であることが好ましく、さらに好ましくは100g/25mm以下である。
一方、比較的強靭な光学部材を被着体とする場合には、剥離力は1000g/25mm程度まで許容され得る。
尚、剥離時に制電性アクリル系樹脂組成物が被着体に残らないことは被着体がどのようなものであっても常に要求される。
制電性アクリル系樹脂組成物を用いてなる保護フィルムの剥離力は、主成分であるアクリル樹脂自体の有する凝集力及び、該主成分と、後述する硬化剤として機能する、水酸基と反応し得る官能基を有する化合物(B)との架橋の状況によって大きく影響を受ける。一般に主成分に対して硬化剤を多量に用いることによって、剥離力を低下することができる。
また、一般に主成分の分子量を大きくすることによって、主成分自体の凝集力を大きくすることができる。
【0039】
次に、イオン化合物(C)について説明する。
【0040】
本発明に用いるイオン化合物(C)としては、アルカリ金属の有機塩及び/または有機カチオン−アニオン塩を好ましく用いることができる。これらは単独でまたは複数を併用することができる。更に、イオン化合物(C)として、その他に過塩素酸リチウム、塩化アンモニウム、塩化アルミニウム、塩化銅、塩化第一鉄、塩化第二鉄、ヨウ化リチウム、硫酸アンモニウム等の無機塩が挙げられる。これらは単独でまたは複数を併用することができる。
なお、本発明でいう「有機カチオン−アニオン塩」とは、有機塩であって、そのカチオン部が有機物で構成されているものを示し、アニオン部は有機物であっても良いし、無機物であっても良い。
【0041】
本発明に用いられるアルカリ金属の有機塩を構成するアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウムがあげられる。
【0042】
アルカリ金属の有機塩としては、具体的には、酢酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、リグニンスルホン酸ナトリウム、トルエンスルホン酸ナトリウム、LiCFSO、Li(CFSON、Li(CFSO)IN、Li(CSON、Li(CSO)IN、Li(CFSOC、KOS(CFSOK、LiOS(CFSOK等が挙げられ、これらのうちLiCFSO、Li(CFSON、Li(CFSO)IN、Li(CSON、Li(CSO)IN、Li(CFSOC等が好ましく、Li(CFSON、Li(CFSO)IN、Li(CSON、Li(CSO)IN等のフッ素含有リチウムイミド塩がより好ましく、特に(ペルフルオロアルキルスルホニル)イミドリチウム塩が好ましい。
【0043】
本発明で用いられる有機カチオン−アニオン塩は、カチオン成分とアニオン成分とから構成されており、前記カチオン成分は有機物からなるものである。
【0044】
カチオン成分として、具体的には、ピリジニウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピロリン骨格を有するカチオン、ピロール骨格を有するカチオン、イミダゾリウムカチオン、テトラヒドロピリミジニウムカチオン、ジヒドロピリミジニウムカチオン、ピラゾリウムカチオン、ピラゾリニウムカチオン、テトラアルキルアンモニウムカチオン、トリアルキルスルホニウムカチオン、テトラアルキルホスホニウムカチオンなどがあげられる。
【0045】
アニオン成分としては、たとえば、Cl、Br、I、AlCl、AlCl、BF、PF、ClO、NO、CHCOO、CFCOO、CHSO、CFSO、(CFSO、(CFSO、AsF、SbF、NbF、TaF、(CN)、CSO、(CSO、CCOO、CFSOCFCO)NS(CFSOなどが用いられる。なかでも特に、フッ素原子を含むアニオン成分は、イオン解離性の良いイオン化合物が得られることから好ましく用いられる。
【0046】
本発明に用いられる有機カチオン−アニオン塩の具体例としては、上記カチオン成分とアニオン成分との組み合わせからなる化合物が適宜選択して用いられ、例えば、1−ブチルピリジニウムテトラフルオロボレート、1−ブチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1−ブチル−3−メチルピリジニウムテトラフルオロボレート、1−ブチル−3−メチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−ブチル−3−メチルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ブチル−3−メチルピリジニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1−へキシルピリジニウムテトラフルオロボレート、2−メチル−1−ピロリンテトラフルオロボレート、1−エチル−2−フェニルインドールテトラフルオロボレート、1,2−ジメチルインドールテトラフルオロボレート、1−エチルカルバゾールテトラフルオロボレート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロアセテート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムヘプタフルオロブチレート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムペルフルオロブタンスルホネート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジシアナミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロアセテート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘプタフルオロブチレート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムペルフルオロブタンスルホネート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムブロミド、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−へキシル−2,3−ジメチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−メチルピラゾリウムテトラフルオロボレート、3−メチルピラゾリウムテトラフルオロボレート、テトラヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ジアリルジメチルアンモニウムテトラフルオロボレート、ジアリルジメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジアリルジメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ジアリルジメチルアンモニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムテトラフルオロボレート、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムトリフルオロメタンスルホネート、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、グリシジルトリメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート、グリシジルトリメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、グリシジルトリメチルアンモニウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、1−ブチルピリジニウム(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、1−ブチル−3−メチルピリジニウム(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウム(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、ジアリルジメチルアンモニウム(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、グリシジルトリメチルアンモニウム(トリフルオロメタンスルホニル)トリフルオロアセトアミド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−プロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ブチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−へキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ノニルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N,N−ジプロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ブチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−ブチル−N−ヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−ブチル−N−ヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N−ペンチル−N−ヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジメチル−N,N−ジヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリメチルヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−プロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−ヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジエチル−N−プロピル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリエチルプロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリエチルペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリエチルヘプチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジプロピル−N−メチル−N−エチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジプロピル−N−メチル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジプロピル−N−ブチル−N−へキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジプロピル−N,N−ジヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジブチル−N−メチル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N,N−ジブチル−N−メチル−N−ヘキシルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリオクチルメチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、N−メチル−N−エチル−N−プロピル−N−ペンチルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1−ブチル−3メチルピリジン−1−イウムトリフルオロメタンスルホナートなどがあげられる。
【0047】
これらの市販品として、例えば、「CIL−314」(日本カーリット社製)、「ILA2−1」(広栄化学社製)などが使用可能である。
【0048】
本発明においては有機カチオン−アニオン塩として、下記一般式[1]で表されるアンモニウム塩系のボロン系化合物(C1)か、もしくは下記一般式[2]で表されるアルカリ金属塩系のボロン系化合物(C2)を使うことができる。
【0049】
【化4】

【0050】
【化5】

【0051】
(一般式(1)及び一般式(2)において、RからRは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアリール基、または、置換基を有してもよい複素環基を表し、RからRは、隣り合う置換基同士で環を形成してもよく、
一般式(2)中、Aは、アルカリ金属イオンを表す。)
【0052】
アンモニウム塩系の化合物(C1)は、カチオン部がNであり、アニオン部も含め、構成部がすべて有機物となることから、上記アクリル系樹脂(A)や溶剤への相溶性が高いという特徴を持つ。また、アンモニウム塩系の化合物(C1)を用いた場合、帯電防止性能が環境湿度の影響を受けにくい。
また、化合物(C1)は、カチオン部がアルカリ金属イオンであるので、製造工程が短縮でき安価で製造することができるといった特徴を持つ。
しかし、アルカリ金属塩系の化合物(C2)を用いた場合、電子部品、例えば、内装回路、トランジスタ、IC、CPUを汚染する可能性があり、これらが汚染されると動作異常の発生が懸念される。また、アルカリ金属塩系の化合物(C2)を用いた場合、被着体がアルミニウム等であると、高温多湿の環境で浮きが発生し易い。さらに、アルカリ金属塩系の化合物(C2)を用いた場合、帯電防止性能が環境湿度の影響を受けやすい。
よって、本発明においては、イオン性化合物(C)のうち、有機カチオン−アニオン塩としてとして一般式[1]で表されるアンモニウム塩系の化合物(C1)を用いることが好ましい。
【0053】
置換基を有してもよいアルキル基としては、炭素数1〜30のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、オクダデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、1−エチルペンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、トリフルオロメチル基、2−エチルヘキシル基、フェナシル基、1−ナフトイルメチル基、2−ナフトイルメチル基、4−メチルスルファニルフェナシル基、4−フェニルスルファニルフェナシル基、4−ジメチルアミノフェナシル基、4−シアノフェナシル基4−メチルフェナシル基、2−メチルフェナシル基、3−フルオロフェナシル基、3−トリフルオロメチルフェナシル基、3−ニトロフェナシル基等が挙げられる。
【0054】
置換基を有してもよいアルケニル基としては、炭素数2〜10のアルケニル基が好ましく、例えば、ビニル基、アリル基、スチリル基等が挙げられる。
【0055】
置換基を有してもよいアルキニル基としては、炭素数2〜10のアルキニル基が好ましく、例えば、エチニル基、プロピニル基、プロパルギル基等が挙げられる。
【0056】
置換基を有してもよいアリール基としては、炭素数6〜30のアリール基が好ましく、フェニル基、ビフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−アンスリル基、9−フェナントリル基、1−ピレニル基、5−ナフタセニル基、1−インデニル基、2−アズレニル基、9−フルオレニル基、ターフェニル基、クオーターフェニル基、o−、m−、およびp−トリル基、キシリル基、o−、m−、およびp−クメニル基、メシチル基、ペンタレニル基、ビナフタレニル基、ターナフタレニル基、クオーターナフタレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、インダセニル基、フルオランテニル基、アセナフチレニル基、アセアントリレニル基、フェナレニル基、フルオレニル基、アントリル基、ビアントラセニル基、ターアントラセニル基、クオーターアントラセニル基、アントラキノリル基、フェナントリル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基、プレイアデニル基、ピセニル基、ペリレニル基、ペンタフェニル基、ペンタセニル基、テトラフェニレニル基、ヘキサフェニル基、ヘキサセニル基、ルビセニル基、コロネニル基、トリナフチレニル基、ヘプタフェニル基、ヘプタセニル基、ピラントレニル基、オバレニル基等が挙げられる。
【0057】
置換基を有してもよい複素環基としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子を含む、芳香族あるいは脂肪族の複素環が好ましい。例えば、チエニル基、ベンゾ[b]チエニル基、ナフト[2,3−b]チエニル基、チアントレニル基、フリル基、ピラニル基、イソベンゾフラニル基、クロメニル基、キサンテニル基、フェノキサチイニル基、2H−ピロリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、インドリジニル基、イソインドリル基、3H−インドリル基、インドリル基、1H−インダゾリル基、プリニル基、4H−キノリジニル基、イソキノリル基、キノリル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、キノキサニリル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、プテリジニル基、4aH−カルバゾリル基、カルバゾリル基、β−カルボリニル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、ペリミジニル基、フェナントロリニル基、フェナジニル基、フェナルサジニル基、イソチアゾリル基、フェノチアジニル基、イソキサゾリル基、フラザニル基、フェノキサジニル基、イソクロマニル基、クロマニル基、ピロリジニル基、ピロリニル基、イミダゾリジニル基、イミダゾリニル基、ピラゾリジニル基、ピラゾリニル基、ピペリジル基、ピペラジニル基、インドリニル基、イソインドリニル基、キヌクリジニル基、モルホリニル基、チオキサントリル基等が挙げられる。
【0058】
さらに、前述した置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアリール基および置換基を有してもよい複素環基の水素原子はさらに他の置換基で置換されていても良い。
【0059】
そのような置換基としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン基、メトキシ基、エトキシ基、tert−ブトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基、p−トリルオキシ基等のアリールオキシ基、メトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、ビニルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等のアシルオキシ基、アセチル基、ベンゾイル基、イソブチリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、メトキサリル基等のアシル基、メチルスルファニル基、tert−ブチルスルファニル基等のアルキルスルファニル基、フェニルスルファニル基、p−トリルスルファニル基等のアリールスルファニル基、メチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基等のアルキルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、モルホリノ基、ピペリジノ基等のジアルキルアミノ基、フェニルアミノ基、p−トリルアミノ基等のアリールアミノ基、メチル基、エチル基、tert−ブチル基、ドデシル基等のアルキル基、フェニル基、p−トリル基、キシリル基、クメニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナントリル基等のアリール基等の他、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホンアミド基、ホルミル基、メルカプト基、スルホ基、メシル基、p−トルエンスルホニル基、アミノ基、ニトロ基、ニトロソ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、トリメチルシリル基、ホスフィニコ基、ホスホノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、トリアルキルアンモニウム基、ジメチルスルホニウミル基、トリフェニルフェナシルホスホニウミル基等が挙げられる。
【0060】
このような置換基のうち、好ましい置換基として電子求引性の置換基が挙げられる。電子求引性の置換基が置換することにより、一般的にイオン性化合物は解離しやすくなり、帯電防止能は高くなる。
【0061】
このような、電子求引性の置換基とは、共鳴効果や誘起効果によって相手から電子をひきつける置換基の総称であり、その多くは、ハメット側において、置換基定数σが正の値で示される。これらの置換基としては、特に制限はないが、具体的には、Chemical Review Vol.91、第165−195項 1991年発行に記載のσpが0より大きなものが挙げられ、より具体的には、ハロゲン基、シアノ基、カルボキシル基、ニトロ基、ニトロソ基、アシル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、トリアルキルアンモニウム基、アミド基、ペルフルオロアルキル基、ペルフルオロアルキルチオ基、ペルフルオロアルキルカルボニル基、スルホンアミド基、4−シアノフェニル基等があげられる。
【0062】
からRは、化合物の安定性面から考慮して、好ましくは置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基であり、より好ましくは、置換基を有してもよいアリール基である。
【0063】
からRは、化合物の安定性面から考慮して、置換基を有してもよいアルキル基が好ましい。
【0064】
本発明において帯電防止付与剤(C)として用いられる、一般式[1]で表されるボロン系のアンモニウム塩系化合物(C1)の代表例を、例示化合物(C1−1)〜(C1−15)として以下の表1に、また、一般式[2]で表されるボロン系のアルカリ金属塩系化合物(C2)の代表例を、例示化合物(C2−1)〜(C2−4)として以下の表2にそれぞれ具体的に例示するが、これらに限られるものではない。
なお、例示化合物中のMeはメチル基、Etはエチル基、Buはノルマルブチル基、c−Hexはシクロヘキシル基、Phはフェニル基を示す。
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】

【0067】
本発明においては、イオン化合物(C)として界面活性剤を使用することもできる。
イオン化合物(C)として用い得る界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤、及びアニオン性界面活性剤が挙げられる。
【0068】
カチオン性界面活性剤としては、たとえば、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アシロイルアミドプロピルトリメチルアンモニウムメトサルフェート、アルキルベンジルメチルアンモニウム塩、アシル塩化コリン、ジメチルアミノエチルメタクレート4級化物などの4級アンモニウム基を有する(メタ)アクリレート共重合体、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライドなどの4級アンモニウム基を有するスチレン共重合体、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドなどの4級アンモニウム基を有するジアリルアミン共重合体などがあげられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0069】
アニオン性界面活性剤としては、たとえば、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエトキシ硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩、スルホン酸基含有スチレン共重合体等があげられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの市販品として、例えば、「KS−1158」(花王社製)などが使用可能である。
【0070】
また、イオン化合物(C)の含有量は、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して0.01〜10重量部であることが好ましい。さらに好ましくは0.05〜5重量部である。0.01重量部未満では十分なイオン導電性が得られず、10重量部よりも多くイオン化合物(C)を含有しても導電性向上の効果がほとんど期待できなくなり、さらに粘着性が低下し好ましくない。
【0071】
本発明の制電性アクリル系樹脂組成物においては、凝集力及び架橋度を上げるために、硬化剤として、水酸基と反応し得る官能基を有する化合物(B)〔以下、単に「化合物(B)」と表記することもある〕を使用することが重要である。
本発明に用いる化合物(B)としては、アクリル系樹脂(A)中に含まれる水酸基と反応し得る官能基を好ましくは1分子中に2個以上有するものが好ましい。例えば、公知の3官能イソシアネート化合物、公知の多官能エポキシ化合物を好適に使用することができる。これらは併用することもできる。
【0072】
公知の3官能イソシアネート化合物としては、公知のジイソシアネート化合物を3官能ポリオール成分で変性したいわゆるアダクト体、ジイソシアネート化合物が水と反応したビュレット体、ジイソシアネート化合物3分子から形成されるイソシアヌレート環を有する3量体(イソシアヌレート体)を使用することができる。
【0073】
公知のジイソシアネート化合物としては、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート等が挙げられる。
【0074】
芳香族ジイソシアネートとしては、1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート等を挙げることができる。
【0075】
脂肪族ジイソシアネートとしては、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0076】
芳香脂肪族ジイソシアネートとしては、ω,ω’−ジイソシアネート−1,3−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0077】
脂環族ジイソシアネートとしては、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等を挙げることができる。
【0078】
本発明に用いられる3官能イソシアネート化合物を形成するジイソシアネート化合物としては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(「イソホロンジイソシアネート」とも言う)を使用することが好ましい。
【0079】
上述の化合物(B)については、単独で、もしくは2種以上を組み合わせて使用することができる。柔軟性を重視する用途で使用する場合は、3官能イソシアネート化合物を使用することが好ましい。
【0080】
ところで、光学部材の中には表面に特殊なコーティングをしたものもあり、面が平滑でなく、凹凸のあるものも多い。このような部材に保護フィルムを張り合わせる場合であっても、粘着層は、空気を巻き込むことなく、吸い付くように滑らかに凹凸に追従する必要がある。3官能イソシアネート化合物の中でも、ヘキサメチレンジイソシアネートの3官能イソシアネート化合物は上記の追従性に優れている。このため、ヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト体、ビュレット体、イソシアヌレート体を使用することがより好ましく、単独で、もしくは2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0081】
上記したように200g/25mm以下、好ましくは100g/25mm以下の低剥離力が求められる場合には、アクリル系樹脂(A)100重量部に対して化合物(B)を1〜30重量部用いることが好ましく、2〜20重量部用いることがより好ましく、3〜15重量部用いることがさらに好ましい。
尚、低剥離力発現の観点からは硬化剤は多い方が好ましい。しかし、多すぎると架橋が過度になり、制電性が低下するので、好ましくない。
【0082】
本発明の制電性アクリル系樹脂組成物には、アルキレンオキサイド鎖を有する化合物を配合することもできる。アルキレンオキサイド鎖を有する化合物としては、例えば、分子内にエチレンオキサイド鎖及び/またはプロピレンオキサイド鎖を有する化合物を使用することができる。特に、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンンブロック構造部を持つことが好ましく、化合物(B)中に占めるエチレンオキサイド鎖の含有率は10〜80重量%であることが好ましく、20〜50重量%であることがより好ましい。
また、化合物(B)の重量平均分子量は1000〜10000であることが好ましく、1000〜5000であることがより好ましい。
アルキレンオキサイド鎖を有する化合物(B)としては、具体的には例えば、商品名エパン420、450、720、750(第一工業製薬社製)等が使用できる。
【0083】
なお、アルキレンオキサイド鎖を有する化合物におけるエチレンオキサイド鎖の含有率が10重量%未満では、十分なイオン電導性が得られにくく、80重量%よりも大きくなったり、重量平均分子量が10000を越えると、結晶性が高くなるためにイオン電導性が低下して好ましくない。
また、重量平均分子量が1000未満では、粘着層の表面にブリードしやすく、被着体表面を汚染しやすいため、好ましくない。
アルキレンオキサイド鎖を有する化合物は、アクリル系樹脂(A)100重量部に対し、1〜40重量部、好ましくは5〜30重量部を配合する。アルキレンオキサイド鎖を有する化合物の配合量が1重量部未満の場合、十分な制電性が得られにくいことがあり、一方、40重量部を越える場合、粘着性が著しく低下してしまい好ましくない。
【0084】
本発明の制電性アクリル系樹脂組成物には、さらに必要に応じて、他の樹脂、例えばアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂を併用することもできる。また、用途に応じて、粘着付与剤、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン等の充填剤、着色剤、紫外線吸収剤、消泡剤、光安定剤、酸化防止剤等の添加剤を配合しても良い。
【0085】
本発明の制電性アクリル系樹脂組成物を用いて形成される粘着層と、プラスチックフィルム、紙、布、発泡体等の基材とが積層された粘着シートを得ることができ、粘着層の表面を剥離シートで被覆しておくことができる。
粘着シートは、各種基材に制電性アクリル系樹脂組成物を塗布したり含浸したりし、これを乾燥・硬化することによって得ることができる。あるいは、剥離シート上に制電性アクリル系樹脂組成物を塗布し、これを乾燥し、形成されつつある粘着層表面に各種基材を積層し、アクリル系樹脂(A)中の水酸基と化合物(B)中のイソシアネート基、あるいはアクリル系樹脂(A)中のカルボキシル基と化合物(B)中のエポキシ基との反応を進行させることによっても得ることができる。
【0086】
本発明の制電性アクリル系樹脂組成物は、基材として好ましくは透明なプラスチックフィルムに適用することによって、光学部材用の表面保護粘着フィルムを好適に得ることができる。
プラスチックフィルムとしては、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリウレタンフィルム、ナイロンフィルム、処理ポリオレフィンフィルム、未処理ポリオレフィンフィルム等が挙げられる。
本発明の制電性アクリル系樹脂組成物は、乾燥・硬化した際に2〜200μm程度の厚みになるように基材等に塗布することが好ましい。2μm未満であるとイオン導電性が乏しくなり、200μmを越えると粘着シートの製造、取り扱いが難しくなる。
【0087】
本発明の制電性アクリル系樹脂組成物を用い、その用途、要求性能等を考慮した上で、種々の態様の制電粘着フィルムを得ることができる。
例えば、偏光板の保護フィルム用の制電粘着フィルムについて、図面に基づいて説明する。
図1は、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム基材1とその一方の表面上に担持された粘着層2とからなる本発明による制電粘着フィルムを、粘着層2によって偏光板3に貼付した状態を示す模式的断面図である。
図2は、PETフィルム基材1の両面に粘着層2を設けてなる本発明による制電粘着フィルムを、一方の粘着層2によって偏光板3に貼付した状態を示す模式的断面図である。
図3は、PETフィルム基材1の一方の表面に制電コーティング剤層4を設け、さらにその上に粘着層2を担持させてなる本発明による制電粘着フィルムを、前記粘着層2によって偏光板3に貼付した状態を示す模式的断面図である。
図4は、PETフィルム基材1の一方の表面に粘着層2を設け、その反対側表面に制電コーティング剤層4を設けてなる本発明による制電粘着フィルムを、前記粘着層2によって偏光板3に貼付した状態を示す模式的断面図である。
【0088】
光学部材、電子部材の表面保護用のフィルムに本発明の樹脂組成物を用いる場合、剥離帯電量をさらに低減するために、図3および図4に示すように、制電コーティング剤層を設けることも可能である。また、プラスチックフィルムに機能性を持たせる様な用途では、図2に示すように、基材フィルムの両面に粘着層を設け、一方の粘着層に、機能性フィルム(例えば、位相差フィルム、光学補償フィルム、光拡散フィルム、電磁波シールドフィルム等)をさらに貼り合わせることもできる。作業性及び製作コスト等を考慮すると、図1の態様が最も好ましい。
図3および図4に示すように粘着層とプラスチックフィルム基材との間、またはプラスチックフィルム基材の粘着層側でない反対側に粘着性を有しない制電コーティング剤層を設ける場合には、金属フィラー、4級アンモニウム塩誘導体、界面活性剤、導電性樹脂等を用いることができる。
金属フィラーとしては、酸化錫、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化アンチモン等の金属酸化物、カーボン、銀、銅等の金属等が挙げられる。コーティング膜の透明性を考慮すると、酸化錫、酸化アンチモン等が好ましい。
4級アンモニウム塩誘導体としては、4級アンモニウム基を有する(メタ)アクリレートモノマーの重合体、もしくは他の(メタ)アクリレートモノマーとの共重合体を使用することができる。また、本発明の制電性アクリル系樹脂組成物のTgを調整することで、制電コーティング剤層に用いることも可能である。
制電コーティング剤層は、塗膜として0.01μm〜10μmの厚さが好ましく、さらに好ましくは0.1μm〜5μmである。0.01μm未満では、静電気を防止する効果が十分に発揮できず、5μmを超えると、コスト、塗工性等に問題がある。
【実施例】
【0089】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、例中、「部」とは「重量部」を、「%」とは「重量%」をそれぞれ示すものとする。
(合成例1)
表3に示す組成比(重量比)のモノマーから構成されるアクリル系樹脂を以下の要領で得た。
即ち、撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下ロートを備えた4口フラスコを用い、反応釜に2EHAの50重量%〔表1に記載の「73」重量%の内の50重量%の意味;以下同様〕、BAの50重量%、2HEAの50重量%、溶剤として酢酸エチル、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを適量仕込み、
残りのモノマーの全量に、酢酸エチル、アゾビスイソブチロニトリルを適量添加して混合した溶液を約1時間かけて滴下し、窒素雰囲気下約80℃にて5時間重合させた。反応終了後、冷却し、酢酸エチルで希釈した。この反応溶液は、固形分41%、Mw(重量平均分子量)400,000であった。
【0090】
(合成例2)
表3に示す組成比(重量比)のモノマーから構成されるアクリル系樹脂を以下の要領で得た。
即ち、撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下ロートを備えた4口フラスコを用い、反応釜に2EHAの50重量%、BAの50重量%、2HEAの50重量%、溶剤として酢酸エチル、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを適量仕込み、
残りのモノマーの全量に、酢酸エチル、アゾビスイソブチロニトリルを適量添加して混合した溶液を約1時間かけて滴下し、窒素雰囲気下約80℃にて5時間重合させた。反応終了後、冷却し、酢酸エチルで希釈した。この反応溶液は、固形分41%、Mw(重量平均分子量)500,000であった。
【0091】
(合成例3)
表3に示す組成比(重量比)のモノマーから構成されるアクリル系樹脂を以下の要領で得た。
即ち、撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下ロートを備えた4口フラスコを用い、反応釜に2EHAの50重量%、BAの50重量%、2HEAの50重量%、溶剤として酢酸エチル、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを適量仕込み、
残りのモノマーの全量に、酢酸エチル、アゾビスイソブチロニトリルを適量添加して混合した溶液を約1時間かけて滴下し、窒素雰囲気下約80℃にて5時間重合させた。反応終了後、冷却し、酢酸エチルで希釈した。この反応溶液は、固形分41%、Mw(重量平均分子量)600,000であった。
【0092】
(合成例4)
表3に示す組成比(重量比)のモノマーから構成されるアクリル系樹脂を以下の要領で得た。
即ち、撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下ロートを備えた4口フラスコを用い、反応釜に2EHAの50重量%、BAの50重量%、2HEAの50重量%、溶剤として酢酸エチル、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを適量仕込み、
残りのモノマーの全量に、酢酸エチル、アゾビスイソブチロニトリルを適量添加して混合した溶液を約1時間かけて滴下し、窒素雰囲気下約80℃にて5時間重合させた。反応終了後、冷却し、酢酸エチルで希釈した。この反応溶液は、固形分41%、Mw(重量平均分子量)450,000であった。
【0093】
(合成例5)
表3に示す組成比(重量比)のモノマーから構成されるアクリル系樹脂を以下の要領で得た。
即ち、撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下ロートを備えた4口フラスコを用い、反応釜に2EHAの50重量%、BAの50重量%、4HBAの50重量%、溶剤として酢酸エチル、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを適量仕込み、残りのモノマーの全量に、酢酸エチル、アゾビスイソブチロニトリルを適量添加して混合した溶液を約1時間かけて滴下し、窒素雰囲気下約80℃にて5時間重合させた。反応終了後、冷却し、酢酸エチルで希釈した。この反応溶液は、固形分41%、Mw(重量平均分子量)550,000であった。
【0094】
(合成例6)
表3に示す組成比(重量比)のモノマーから構成されるアクリル系樹脂を以下の要領で得た。
即ち、撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下ロートを備えた4口フラスコを用い、反応釜に2EHAの50重量%、BAの50重量%、アクリル酸6−ヒドロキシへキシルの75重量%、溶剤として酢酸エチル、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを適量仕込み、残りのモノマーの全量に、酢酸エチル、アゾビスイソブチロニトリルを適量添加して混合した溶液を約1時間かけて滴下し、窒素雰囲気下約80℃にて5時間重合させた。反応終了後、冷却し、酢酸エチルで希釈した。この反応溶液は、固形分41%、Mw(重量平均分子量)500,000であった。
【0095】
(合成例7)
表3に示す組成比(重量比)のモノマーから構成されるアクリル系樹脂を以下の要領で得た。
即ち、撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下ロートを備えた4口フラスコを用い、反応釜に2EHAの50重量%、BAの50重量%、2EHAの50重量%、溶剤として酢酸エチル、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを適量仕込み、
残りのモノマーの全量に、酢酸エチル、アゾビスイソブチロニトリルを適量添加して混合した溶液を約1時間かけて滴下し、窒素雰囲気下約80℃にて5時間重合させた。反応終了後、冷却し、酢酸エチルで希釈した。この反応溶液は、固形分41%、Mw(重量平均分子量)400,000であった。
【0096】
(合成例8)
表3に示す組成比(重量比)のモノマーから構成されるアクリル系樹脂を以下の要領で得た。
即ち、撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下ロートを備えた4口フラスコを用い、反応釜に2EHAの50重量%、BAの50重量%、溶剤として酢酸エチル、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを適量仕込み、
残りのモノマーの全量に、酢酸エチル、アゾビスイソブチロニトリルを適量添加して混合した溶液を約1時間かけて滴下し、窒素雰囲気下約80℃にて5時間重合させた。反応終了後、冷却し、酢酸エチルで希釈した。この反応溶液は、固形分41%、Mw(重量平均分子量)400,000であった。
【0097】
【表3】

【0098】
<イオン化合物(C):ボロン系の有機カチオン−アニオン塩の製造>
<合成例9> アンモニウム塩系の化合物(C1−1)の合成
ナトリウムテトラフェニルボレート 342gを、イオン交換水5Lに溶解させた。そこに、テトラブチルアンモニウムブロマイド 322gをイオン交換水5Lに溶解させたものを徐々に添加した。5時間攪拌した後、析出物をろ取することにより、下記式にて示される化合物(C1−1)を 373g得た。元素分析(組成式:C4056BN 計算値(%):C, 85.53; H, 10.05; N, 2.49 実測値(%):C, 85.55; H, 10.52; N, 2.66)により確認した。
【0099】
【化6】

【0100】
<合成例10〜22> 化合物(C1−2)、化合物(C1−4)〜(C1−15)の合成
ナトリウムテトラフェニルボレートの代わりに表5に示すボレートを、テトラブチルアンモニウムブロマイドの代わりに表4に示すアンモニウム塩を用いた他は合成例9と同様にして化合物(C1−2)、化合物(C1−4)から化合物(C1−15)を合成した。元素分析の測定結果を表5に示す
【0101】
【表4】

【0102】

【0103】
【表5】

【0104】
[実施例1]
合成例1で得られたアクリル系樹脂溶液の固形分40部に対して、メチルドデカエチレングリコールグリシジルエーテル〔式(1)において、n=12、R:メチル基である化合物〕4.29部にベンジルジメチルアミン0.1部を加えて50℃で反応を開始した。なお、反応はサンプリングをしてFT−IRでアクリル酸由来のカルボキシル基のピークが消えるまで継続した。
反応終了後、リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド 1.0部、トリレンジイソシアネートトリメチロールプロパンアダクト体の37%酢酸エチル溶液 10部を配合し粘着剤を得た。
得られた粘着剤を剥離紙に乾燥塗膜の厚さが20μmになるように塗工し、100℃で2分間乾燥させた後、形成されつつある粘着剤層にポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ38μm)を積層し、この状態で室温で2日間経過させ、試験用粘着シートを得た。
該粘着シートを用いて、以下に示す方法に従って、粘着力、剥離帯電、再剥離性、透明性の評価を行った。
【0105】
<粘着力>
試験用粘着テープを25mm幅に裁断し、剥離紙を剥がし、露出した粘着剤層を厚さ2mmのガラス板に23℃−50%RHにて貼着し、JIS Z−0237に準じてロール圧着した。圧着から24時間経過後、ショッパー型剥離試験器にて剥離強度(180度ピール、引っ張り速度300mm/分、単位;g/25mm)を測定した。
【0106】
<剥離帯電>
A4サイズの試験用粘着シートの剥離紙を剥がし、露出した粘着剤層を偏光板に23℃−50%RHにて貼着し、ハンドロールで圧着した。圧着から24時間経過後、ガラス板上で、試験用粘着シートを偏光板から剥離して、偏光板表面の静電気を静電気測定器(シシド静電気株式会社製「STATION DZ3」)で10箇所測定して絶対値が最大の値を剥離帯電とした。
【0107】
<再剥離性>
試験用粘着テープの剥離紙を剥がし、露出した粘着剤層をガラス板に貼着した後、60℃−95%RHの条件下に24時間に亘って放置し、23℃−50%RHに冷却した後、ガラス板から剥離し、ガラス板への糊移行性を目視で評価した。具体的には、剥離後の状態を以下の4段階で評価した。
ガラス板への糊移行の全くないもの ◎
ごくわずかにあるもの ○
部分的にあるもの △
完全に移行しているもの ×
【0108】
<透明性>
試験用粘着テープの剥離紙を剥がし、露出した粘着剤層をガラス板に貼着した後、60℃−95%RHの条件下に24時間に亘って放置し、23℃−50%RHに冷却した後、目視で評価した。
無色透明なもの ◎
ごく僅か曇っているもの ○
白濁、凝集物が見られるもの △
全面に白濁、凝集物が見られるもの ×
以上の評価結果を表2に示す。
【0109】
<追従性>
A4サイズの試験用粘着シートの剥離紙を剥がし、露出した粘着剤層を偏光板に23℃−50%RHにて、長辺センター部を1cm幅で線状に部分貼着した後に、両端を放し、端部までの全面が空気を巻き込むことなく自重で速やかに且つ滑らかに貼着するまでの時間を測定して評価した。
30秒以下 ◎
30〜60秒 ○
60秒以上 △
【0110】
[実施例2]
合成例2で得られたアクリル系樹脂溶液の固形分40部に対して、メチルトリエチレングリコールグリシジルエーテル〔式(1)において、n=3、R:メチル基である化合物〕7.67部にベンジルジメチルアミン0.1部を加えて50℃で反応を開始した。なお、反応はサンプリングをしてFT−IRでアクリル酸由来のカルボキシル基のピークが消えるまで継続した。
反応終了後、リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド 1.0部、トリレンジイソシアネートトリメチロールプロパンアダクト体の37%酢酸エチル溶液 10部を配合し粘着剤を得た。
得られた粘着剤を用いて、実施例1と同様に評価した。
【0111】
[実施例3]
合成例2で得られたアクリル系樹脂溶液の固形分40部に対して、メチルヘキサエチレングリコールグリシジルエーテル〔式(1)において、n=6、R:メチル基である化合物〕12.27部にベンジルジメチルアミン0.1部を加えて50℃で反応を開始した。なお、反応はサンプリングをしてFT−IRでアクリル酸由来のカルボキシル基のピークが消えるまで継続した。
反応終了後、リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド 1.0部、トリレンジイソシアネートトリメチロールプロパンアダクト体の37%酢酸エチル溶液 10部を配合し粘着剤を得た。
得られた粘着剤を用いて、実施例1と同様に評価した。
【0112】
[実施例4]
合成例3で得られたアクリル系樹脂溶液の固形分40部に対して、メチルヘキサエチレングリコールグリシジルエーテル〔式(1)において、n=6、R:メチル基である化合物〕12.44部に2−メチルイミダゾール0.1部を加えて50℃で反応を開始した。なお、反応はサンプリングをしてFT−IRでアクリルアミド由来のアミド基のピークが消えるまで継続した。
反応終了後、リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド 1.0部、トリレンジイソシアネートトリメチロールプロパンアダクト体の37%酢酸エチル溶液 10部を配合し粘着剤を得た。
得られた粘着剤を用いて、実施例1と同様に評価した。
【0113】
[実施例5]
合成例4で得られたアクリル系樹脂溶液の固形分40部に対して、メチルヘキサエチレングリコールグリシジルエーテル〔式(1)において、n=6、R:メチル基である化合物〕6.18部に2−メチルイミダゾール0.1部を加えて50℃で反応を開始した。なお、反応はサンプリングをしてFT−IRでアクリル酸2−ジメチルアミノエチル由来のアミノ基のピークが消えるまで継続した。
反応終了後、リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド 1.0部、トリレンジイソシアネートトリメチロールプロパンアダクト体の37%酢酸エチル溶液 10部を配合し粘着剤を得た。
得られた粘着剤を用いて、実施例1と同様に評価した。
【0114】
[実施例6、7]
合成例5、6で得られたアクリル系樹脂溶液をそれぞれ用いて実施例3と同様にして粘着剤を得て評価した。
【0115】
[実施例8]
合成例2で得られたアクリル系樹脂溶液の固形分40部に対して、メチルヘキサエチレングリコールグリシジルエーテル〔式(1)において、n=6、R:メチル基である化合物〕20.45部にベンジルジメチルアミン0.1部を加えて50℃で反応を開始した。なお、反応はサンプリングをしてFT−IRでアクリル酸由来のカルボキシル基のピークが消えるまで継続した。
反応終了後、リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド 1.0部、トリレンジイソシアネートトリメチロールプロパンアダクト体の37%酢酸エチル溶液 10部を配合し粘着剤を得た。
得られた粘着剤を用いて、実施例1と同様に評価した。
【0116】
[実施例9]
合成例1で得られたアクリル系樹脂溶液の固形分40部に対して、メチルヘキサエチレングリコールグリシジルエーテル〔式(1)において、n=6、R:メチル基である化合物〕2.04部にベンジルジメチルアミン0.1部を加えて50℃で反応を開始した。なお、反応はサンプリングをしてFT−IRでアクリル酸由来のカルボキシル基のピークが消えるまで継続した。
反応終了後、リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド 1.0部、トリレンジイソシアネートトリメチロールプロパンアダクト体の37%酢酸エチル溶液 10部を配合し粘着剤を得た。
得られた粘着剤を用いて、実施例1と同様に評価した。
【0117】
[実施例10]
実施例5で用いたリチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドの量を3部に変更したこと以外は、実施例5と同様にして粘着剤を得て評価した。
【0118】
[実施例11]
実施例6において、リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド1.0部の代わりに、「CIL−314」(日本カーリット社製:1−ブチル−3メチルピリジン−1−イウムトリフルオロメタンスルホナート)1.0部を用いたこと以外は、実施例6と同様にして粘着剤を得て評価した。
【0119】
[実施例12]
実施例6において、リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド1.0部の代わりに、「KOS(CFSOK」1.0部を用いたこと以外は、実施例6と同様にして粘着剤を得て評価した。
【0120】
[実施例13]
実施例6において、リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド1.0部の代わりに、「KS−1158」(花王社製:リン酸エステルカリウム塩)1.0部を用いたこと以外は、実施例6と同様に粘着剤を得て評価した。
【0121】
[実施例14]
実施例6において、リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド1.0部の代わりに、「ILA2−1」(広栄化学社製:脂肪族アミン系固体状イオン性化合物)1部を用いたこと以外は、実施例6と同様に粘着剤を得て評価した。
【0122】
[実施例15]
実施例6において、リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド1.0部の代わりに、過塩素酸リチウム1.0部を用いたこと以外は、実施例6と同様にして粘着剤を得た。
得られた粘着剤を、酸化アンチモンによって制電コーティング処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ38μm)の未処理面に乾燥塗膜20μmになるように塗工し、100℃で2分間乾燥させた後、形成されつつある粘着剤層に剥離紙を積層し、この状態で室温で2日間経過させ、試験用粘着シートを得、実施例1と同様に評価した。
【0123】
[実施例16]
実施例6において、リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド1.0部の代わりに、ヨウ化リチウム1.0部を用いたこと以外は、実施例6と同様に粘着剤を得、実施例6と同様に評価した。
【0124】
[実施例17]
実施例6で得られた粘着剤の固形分40部に対して、エチレンオキサイド鎖を有する化合物として「エパン750」(第一工業製社製:重量平均分子量4000、エチレンオキサイド鎖の含有率50%) 4.0部を配合し粘着剤を得、実施例6と同様に評価した。
【0125】
[実施例18]〜[実施例34]
実施例6において、リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド1.0部の代わりに、化合物(C1−1)〜化合物(C1−15)及び化合物(C2−1)、化合物(C2−4)を1.0部で用いたこと以外は実施例6と同様にして粘着剤を得て評価した。
【0126】
[実施例35]
トリレンジイソシアネートトリメチロールプロパンアダクト体の37%酢酸エチル溶液 10部の代わりに、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体の37%酢酸エチル溶液6部を用いたこと以外は、実施例25と同様にして粘着剤を得て評価した。
【0127】
[実施例36]
トリレンジイソシアネートトリメチロールプロパンアダクト体の37%酢酸エチル溶液 10部の代わりに、ヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット体の37%酢酸エチル溶液6部を用いたこと以外は、実施例25と同様にして粘着剤を得て評価した。
【0128】
[比較例1]
実施例3において、合成例2で得られたアクリル系樹脂溶液の代わりに合成例7で得られたアクリル系樹脂溶液を用い、メチルヘキサエチレングリコールグリシジルエーテルとの反応を、50℃で、実施例3と同じ時間おこなった。
その後リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド 1.0部、トリレンジイソシアネートトリメチロールプロパンアダクト体の37%酢酸エチル溶液 10部を配合し粘着剤を得て、実施例1と同様に評価した。
【0129】
[比較例2]
合成例8で得られたアクリル系樹脂溶液を用いたこと以外は、実施例3と同様にして粘着剤を得て、実施例1と同様に評価した。
【0130】
[比較例3]
合成例3で得られたアクリル系樹脂溶液を用い、「トリレンジイソシアネートトリメチロールプロパンアダクト体の37%酢酸エチル溶液」を用いないこと以外は実施例3と同様にして粘着剤を得て評価した。
【0131】
[比較例4]
合成例3で得られたアクリル系樹脂溶液を用い、「リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド」を用いないこと以外は実施例1と同様にして粘着剤を得て評価した。
【0132】
【表6】

【0133】
以上のように本発明の制電性アクリル系樹脂組成物は、液晶ディスプレイの偏光板等の光学部材の表面保護フィルム用の粘着層として用いた場合に、剥離時の静電気の発生が少なく、透明性、再剥離性、追従性に優れているが分かる。
これに対して、比較例1に示したアクリル系樹脂組成物は、必要なアルキレンオキサイド鎖を有しないアクリル系樹脂のため、剥離帯電、再剥離性、透明性が不良となっている。比較例2に示したアクリル系樹脂組成物は、水酸基を有しないアクリル系樹脂のため、粘着力が高く、再剥離性が不良であった。比較例3に示したアクリル系樹脂組成物は、水酸基と反応し得る官能基を有する化合物(B)が含まれていないため粘着力が高く、再剥離性が不良であった。比較例4に示したアクリル系樹脂組成物は、イオン化合物(C)を含有していないため、イオン電導性が低く、剥離帯電が不良となった。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明の制電性アクリル系樹脂組成物は、塗料、粘着剤等に使用可能な制電性アクリル系樹脂組成物であって、架橋剤で架橋した後にもイオン電導性が低下せず、且つ、透明性に優れるので、被着体表面を所定の期間、機械的及び電気的に保護するための表面保護フィルムとして好適であり、例えば、液晶パネル、プラズマディスプレイ、偏光板、CRT(ブラウン管)等の光学部品の表面保護用粘着フィルム形成に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】PETフィルム基材とその一方の表面上に担持された粘着層とからなる本発明による制電粘着フィルムを、粘着層によって偏光板に貼付した状態を示す模式的断面図である。
【図2】PETフィルム基材の両面に粘着層を設けてなる本発明による制電粘着フィルムを、一方の粘着層によって偏光板に貼付した状態を示す模式的断面図である。
【図3】PETフィルム基材の一方の表面に制電コーティング剤層を設け、さらにその上に粘着層を担持させてなる本発明による制電粘着フィルムを、前記粘着層によって偏光板に貼付した状態を示す模式的断面図である。
【図4】PETフィルム基材の一方の表面に粘着層を設け、その反対側表面に制電コーティング剤層を設けてなる本発明による制電粘着フィルムを、前記粘着層によって偏光板に貼付した状態を示す模式的断面図である。
【符号の説明】
【0136】
1:PETフィルム基材
2:粘着層
3:偏光板
4:制電コーティング剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基及びアルキレンオキサイド鎖を有するアクリル系樹脂(A)、水酸基と反応し得る官能基を有する化合物(B)及びイオン化合物(C)を含有する制電性アクリル系樹脂組成物であって、
前記アクリル系樹脂(A)が、アクリル系樹脂(A1)の、エポキシ基と反応可能な官能基と、エポキシ基及びアルキレンオキサイド鎖を有する化合物(A2)のエポキシ基とを反応させてなることを特徴とする制電性アクリル系樹脂組成物。
【請求項2】
アクリル系樹脂(A1)の、エポキシ基と反応可能な官能基が、カルボキシル基、アミノ基及びアミド基からなる群より選ばれるいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の制電性アクリル系樹脂組成物。
【請求項3】
イオン化合物(C)が、アルカリ金属の有機塩及び/又は有機カチオン−アニオン塩であることを特徴とする請求項1又は2記載の制電性アクリル系樹脂組成物。
【請求項4】
有機カチオン−アニオン塩が、下記一般式[1]で表される化合物(C1)もしくは下記一般式[2]で表される化合物(C2)であることを特徴とする請求項3に記載の制電性アクリル系樹脂組成物。
【化1】

【化2】

(一般式(1)及び一般式(2)において、RからRは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアリール基、または、置換基を有してもよい複素環基を表し、RからRは、隣り合う置換基同士で環を形成してもよく、
一般式(2)中、Aは、アルカリ金属イオンを表す。)
【請求項5】
〜Rが、それぞれ独立に、置換基を有してもよいアルキル基、または、置換基を有してもよいアリール基である請求項4記載の制電性アクリル系樹脂組成物。
【請求項6】
〜Rが、それぞれ独立に、置換基を有してもよいアリール基である請求項4または5記載の制電性アクリル系樹脂組成物。
【請求項7】
〜Rが、それぞれ独立に、置換基を有してもよいアルキル基である請求項4ないし6いずれか記載の制電性アクリル系樹脂組成物。
【請求項8】
水酸基及びアルキレンオキサイド鎖を有するアクリル系樹脂(A)100重量部に対して、イオン化合物(C)を0.01〜10重量部含むことを特徴とする請求項1ないし7いずれかに記載の制電性アクリル系樹脂組成物。
【請求項9】
水酸基及びアルキレンオキサイド鎖を有するアクリル系樹脂(A)のアルキレンオキサイド鎖の付加モル数が、4〜16であることを特徴とする請求項1ないし8いずれかに記載の制電性アクリル系樹脂組成物。
【請求項10】
水酸基及びアルキレンオキサイド鎖を有するアクリル系樹脂(A)のアルキレンオキサイド鎖がエチレンオキサイド鎖であることを特徴とする請求項1ないし9いずれかに記載の制電性アクリル系樹脂組成物。
【請求項11】
水酸基と反応し得る官能基を有する化合物(B)が、3官能イソシアネート化合物であることを特徴とする請求項1ないし10いずれかに記載の制電性アクリル系樹脂組成物。
【請求項12】
プラスチックフィルム基材の少なくとも片面に請求項1ないし11いずれかに記載の制電性アクリル系樹脂組成物から形成される粘着層が積層されてなることを特徴とする光学部材用保護フィルム。
【請求項13】
水酸基を有するアクリル系モノマー(a1)、及び水酸基以外の、エポキシ基と反応可能な官能基を有するエチレン性不飽和モノマー(a2)を含むモノマーを共重合し、次いで、前記水酸基以外の、エポキシ基と反応可能な官能基と、エポキシ基及びアルキレンオキサイド鎖を有する化合物(A2)のエポキシ基とを反応させることを特徴とする、水酸基及びアルキレンオキサイド鎖を有するアクリル系樹脂の製造方法。
【請求項14】
水酸基以外の、エポキシ基と反応可能な官能基が、カルボキシル基、アミノ基及びアミド基からなる群より選ばれるいずれかであることを特徴とする請求項9に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−174739(P2008−174739A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−326645(P2007−326645)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】