前駆体を含有するナノ粒子を用いた金属のパターニング方法
【課題】単一の低温プロセスで一次元または二次元パターンへのナノメータースケールの金属パターンの製造のためのプロセスを提供する。
【解決手段】金属ナノ粒子、金属塩、ポリーマーマトリックスから形成したフィルムにパターンをレーザー描画することにより連続的な、導電金属パターンを形成することができる。このパターンは一次元、二次元または三次元で、高い解像度であり、ミクロンからナノメーターのオーダーの特徴サイズをもたらす。
【解決手段】金属ナノ粒子、金属塩、ポリーマーマトリックスから形成したフィルムにパターンをレーザー描画することにより連続的な、導電金属パターンを形成することができる。このパターンは一次元、二次元または三次元で、高い解像度であり、ミクロンからナノメーターのオーダーの特徴サイズをもたらす。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ナノ粒子含有材料を用いこれを放射線に露光して金属の特徴形状(feature)をパターニングすることに関する。
【背景技術】
【0002】
現在利用可能な、金属パターンのマイクロ製造(micro fabrication)のための技術は以下のものを含む。
【0003】
1)マスクを使用し、成膜またはエッチングにより金属のパターンを規定する(Shacham-Diamand, Y., Inberg, A., Sverdlov, Y. & Croitoru, N., マイクロエレクトロニクスおよびマイクロエレクトロメカニカルシステム用途のための無電解銀および銀タングステン薄膜。 Journal of the Electrochemical Society, 147, 3345-3349 (2000));
2)金属フィルムをレーザーアブレーションしてパターンを形成する;
3)蒸気、溶液または固体前駆体からの金属の熱分解成膜を基にしたレーザー直接描画(Auerbach, A., レーザーによる溶液からの導体の成膜について, Journal of the Electrochemical Society, 132,130-132 (1985); Auerbach, A., ポリマーホストに錯化された金属塩を還元することによる光記録, Applied Physics Letters, 45, 939, 941 (1984); Auerbach, A., ホストポリマー中の銅(I)錯体の還元による銅導体, Applied Physics Letters, 47, 669-671 (1985); Auerbach, A., レーザーによるポリマーホスト中に錯化された金属塩を還元する方法, Journal of the Electrochemical Society, 132, 1437-1440 (1985));および
4)ハロゲン化銀系写真フィルムの露光と現像、それに続く無電解および電解めっき(Madou, M. & Florkey, J., マイクロバイオメディカルデバイスのバッチ製造から連続製造まで。 Chemical Reviews, 100, 2679-2691 (2000); M. Madou., マイクロファブリケーションの基礎 (CRC出版, BocaRaton, 1997); Madou, M., Otagawa, T., Tiemey, M. J., Joseph, J. & Oh, S. J., 薄膜および厚膜技術により製造された多層イオンデバイス。 Solid State lonics, 53-6,47-57 (1992))。
【0004】
現在利用可能な方法は、たとえば、以下の刊行物に記載されている。
【0005】
Southward, R. E. et al. ポリイミドマトリックス中の(4,4,4-トリフルオロ-l-(2-チエニル)-l,3-ブタンジオナト)銀(I)のインシテュ還元による表面メタライズされたポリマーフィルムの合成。Journal of Materials Research, 14, 2897-2904 (1999);
Southward, R. E. & Thompson, D. W. 逆CVD。メタライズされたポリマーフィルムへの新規な合成アプローチ。Advanced Materials, 11, 1043-1047 (1999);
Gu, S., Atanasova, P., Hampden-Smith, M. J. & Kodas, T. T., 銅−コバルト二元フィルムの化学気相成長。Thin Solid Films, 340, 45-52 (1999);
Jain, S., Gu, S., Hampden-Smifh, M. & Kodas, T. T., 複合材フィルムの合成。Chemical Vapor Deposition, 4, 253-257 (1998);
Gu, S., Yao, X. B., Hampden-Smith, M. J. & Kodas, T. T., 銅−コバルトフィルムの化学気相成長中のCu(hfac)(2)とCo-2(CO)(8)の反応。Chemistry of Materials, 10, 2145-2151 (1998);
Calvert, P. & Rieke, P., ポリマー中およびポリマー中での生物模倣ミネラリゼーション。Chemistry of Materials, 8, 1715-1727 (1996);
Hampden-Smith, M. J. & Kodas, T. T., 金属の化学気相成長。2. 金属の選択CVDの概要。Chemical Vapor Deposition, 1, 39-48 (1995);
Hampden-Smith, M. J. & Kodas, T. T., 金属の化学気相成長。1. CVDプロセスの概要。Chemical Vapor Deposition, 1, 8-23 (1995);
Xu, C. Y., Hampden-Smith, M. J. & Kodas, T. T., 二元合金(Ag(x)Pd(l)-X, Cu(x)Pd(l)-X, Ag(x)Cu(l)-X)フィルムのエアロゾルアシステッド化学気相成長(AACVD)とそれらの組成変化の研究。Chemistry of Materials, 7, 1539-1546 (1995);および
Naik, M. B., Gill. W. N., Wentorf, R. H. & Reeves, R. R., 銅(r)および銅(n)ベータジケトネートを用いた銅のCVD。Thin Solid Films, 262, 60-66 (1995)。
【0006】
上述した方法は二次元パターンの直接生成に限られ、三次元パターンは多層または多工程プロセスを用いて構築しなければならない。金属ラインのレーザー直接描画は、単工程の一次元または二次元マイクロ製造を可能にするが、主にレーザーエネルギーの吸収によって生成する高温での金属前駆体の熱分解を含んでいる。レーザー描画により金属ラインを形成するための、および三次元金属パターンを直接描画するための常温プロセスに大いに関心がもたれている。
【0007】
Swainson et al. は、一連の特許において(U.S. 4,466,080; U.S. 4,333,165; U.S. 4,238,840; and U.S. 4,288,861)、銀の光還元試薬として通常の色素たとえばメチレンブルーその他を溶液状態で用いることによる銀の光還元を記載している。このような銀イオンおよび色素溶液の光励起に続く表面の銀コーティングを記載している。「ある種の還元/キレート化試薬たとえばo-フェナントリロン」の存在が、系の重要な成分として記載されている。Swainsonは同様の方法に従うことによって固体マトリックス内部で連続的な金属相を描画することはできないとも記載している。事実、金属の光還元を含む節の序論では、過去には一般に好まれていた安定化したまたは固体媒質はあるレベル以上の物質的な複雑性をもつ生成物の製造には適していないと記載している。したがって、彼らの例は気体または液体の物理系を用いており、Swainsonによれば、それらの輸送能力のおかげで生成物の高い複雑性を可能にしている。固体状態において、本発明者らは実際にSwainsonの方法では連続的な金属の形成をもたらすことがないことを見出している。
【0008】
Whitesides et al. は、導電性金属の特徴形状(feature)の生成のための多段方法を、論文: Deng T., Arias, F., Ismagilov, R. F., Kenis, P. J. A. & Whitesides, G. M., 露光・現像したハロゲン化銀系写真フィルムを用いた金属マイクロ構造体の製造。Analytical Chemistry, 72, 645-651 (2000);およびU.S. 5,951,881の両方に記載している。Whitesides et al. によって記載された系と本発明の系との間の重要な違いは、彼らゼラチン中において金属ナノ粒子を光化学的に生成させ、次の工程において彼らは銀触媒上での銀の無電解めっきを用いてそれを現像し(Braun, E., Eichen, Y., Sivan, U. & Ben-Yoseph, G., 導電性銀ワイヤのDNA鋳型によるアセンブリおよび電極接続。Nature, 391, 775-778 (1998))、こうして連続的な金属構造体を形成している。さらに、実際の3Dパターンを得るためには、彼らはデバイスの多段構築を実施しなければならない。Whitesides et al. によって記載されているラインの最小寸法(30μm)は、本発明に従った方法によって達成できるそれよりもはるかに大きい。
【0009】
Reetz et al. は、論文および特許(発明の名称:「表面上でのナノ構造体の製造のための可溶なまたは安定化した金属または二金属クラスターを用いたリソグラフィープロセス」)において、界面活性剤で安定化した金属ナノ粒子から出発する、電子ビーム照射を経由した連続的な金属の特徴形状の製造を記載している(Reetz, M. T., Winter, M., Dumpich, G., Lohau, J. & Priedrichowski, S. 界面活性剤で安定化したPdおよびPd/Ptクラスターの電子ビーム誘起メタライゼーションによる金属および二金属ナノ構造体の製造。Journal of the American Chemical Society 119, 4539-4540 (1997); Dumpich. G., Lohau, J., Wassermann, E. F., Winter, M. & Reetz, M. T. 薄膜のトレンドおよび新規な応用413-415 (Transtec出版社, Zurich-Uetikon, 1998)。Bedson et al. は、保護した金クラスター、すなわちアルキルチオールでキャップした金ナノ粒子から出発する、金属ナノ構造体の電子ビーム描画を記載している。Bedson T.R., Nellist P.D., Palmer R.E., Wilcoxon J.P 保護した金クラスターを用いた金属ナノ構造体の直接電子ビーム描画。Microelectronic Engineering 53, 187-190 (2000))。
【0010】
これらに記載されたものと本発明との違いは以下のとおりである:
1) Reetz et al およびBedson et al のプロセスは、励起時の金属原子の生成に基づくナノ粒子の成長よりもむしろ、ナノ粒子の融合を含む;
2) 彼らの出発物質は単に安定化したナノ粒子からなるが、一方で我々は安定化したナノ粒子が成分の1つにすぎない複合材料の使用を教示している;
3) 彼らの照射方法は単なる電子ビーム照射であるが、一方で我々は好適な還元剤を用いれば我々の複合材料が広範な種々の励起放射線(電子ビームはそれらの1つにすぎない)に関して良好な前駆体になり得ることを教示している;および
4) 彼らのナノ粒子は安定化可溶化特性を与えるにすぎないリガンドでコートされているが、一方で金属の電子ビームパターニングのための組成物はナノ粒子、金属塩、および励起色素還元剤(これはナノ粒子上のリガンドに対する共有結合によって含まれていてもよい)をベースとする複合材である。 強い多光子吸収特性をもつ色素の組成物および励起方法は、Marder and Perry, U.S.特許6,267,913 「二光子またはより高次の吸収性光学材料および使用方法」によって開示されている。
【0011】
銀粒子の光生成を含む反応種の多光子生成に関して、いくつかの組成物および方法が、B.H. Cumpston, M. Lipson, S.R. Marder, J.W. Perry 「反応種の生成のための、二光子およびより高次の吸収性光学材料」U.S.特許出願60/082,128によって開示されている。U.S.特許出願60/082,128において開示されている方法は、この従来技術の出願が前駆体としての金属ナノ粒子の使用に言及していないため、本発明の方法と異なる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、1)単一プロセス工程での、金属の一次元、二次元または三次元マイクロ構造体の直接製造、および2)やはり単一プロセス工程での、一次元または二次元パターンへのナノメータースケールの金属パターンの製造のためのプロセスを提供することである。具体的には、本発明の目的は、レーザー描画により金属ラインを形成するための、および三次元パターンを直接描画するための低温プロセスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
これらのおよび他の目的は本発明によって達成され、第1の実施形態は、予備核形成した金属ナノ粒子の成長方法であって、
前記予備核形成した金属ナノ粒子を複合材にして準備し;
放射線への露光により金属イオンを還元することによって金属原子を生成し;
前記金属原子を前記予備核形成した金属ナノ粒子と反応させ、それによって金属ナノ粒子を成長させる
ことを具備した方法を含む。
【0014】
本発明の他の実施形態は、予備核形成した金属ナノ粒子の成長方法であって、
前記予備核形成した金属ナノ粒子、金属塩、色素およびポリマーマトリックスからフィルムを形成し;
放射線への露光により前記金属塩の金属イオンを還元することによって金属原子を生成し;
前記金属原子を前記予備核形成した金属ナノ粒子と反応させ、それによって金属ナノ粒子を成長させる
ことを具備した方法を含む。
【0015】
本発明のさらに他の実施形態は、
リガンドでコートした金属ナノ粒子;
色素;
金属塩;および
オプションで犠牲ドナー
を具備した金属ナノ粒子含有組成物を含む。
【0016】
本発明の他の実施形態は、
リガンドでコートした金属ナノ粒子;
色素;
金属塩;および
マトリックス
を具備した金属ナノ粒子含有組成物を含む。
【0017】
本発明のさらなる実施形態は、
上記の金属ナノ粒子含有組成物を放射線にさらし、それによって前記ナノ粒子の成長をもたらし;そして
連続的なまたは半連続的な金属相を形成する
ことを具備した方法を含む。
【0018】
本発明は、さらに、
金属ナノ粒子、金属塩、色素およびポリマーマトリックスからフィルムを形成し;そして
前記フィルムを放射線に露光し、それによって導電性金属のパターンを製造する
ことを具備した方法を含む。
【発明の効果】
【0019】
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、金属ナノ粒子含有フィルムを放射線への露光と関連させて使用し、このような粒子の成長および融合を活性化して、連続的な導電性金属パターンを形成することに関する。この方法では、1次元、2次元、または3次元の連続的な導電性金属ワイヤまたは他のパターンを形成することができる。
【0021】
新規な金属ナノ粒子系、ならびに三次元でのおよびミクロンからナノメーターのオーダーで高い解像度を伴う金属の露光方法は前例がない。ある種のナノ粒子含有組成物を種々の形態の励起にさらすことによって、これらの粒子の成長を生じさせることができ、最終的には連続的な(または半連続的な)金属相の形成をもたらす。パターン化した励起が対応する金属パターンをもたらす。2種の組成物に基づき、かつ自由空間光学露光、近接場光学露光またはイオン化放射線(たとえば走査プローブ顕微鏡の導電性チップからの電子)による露光を含む方法を、本明細書に記載している。
【0022】
本発明のプロセスにおいて、異なるソースからの放射線は異なる解像度をもたらす。たとえば、青色レーザーおよび一光子励起を用いて300nmまで縮小した特徴サイズ(feature size)を達成できる。近接場光源および一光子励起を用いてlOOnmまで縮小した、好ましくは5Onmまで縮小した特徴サイズを達成できる。二光子励起を用いた場合、特徴サイズをlOOnmまで、好ましくは5Onmまで縮小できる。電子ビームは、lOnm〜300mnの解像度を可能にする。集束イオンビームは、5nm〜10mnまで縮小した特徴サイズを可能にする。走査プローブ顕微鏡のチップを用いて5nmまで縮小した非常に小さい特徴サイズを達成できる。
【0023】
本発明による方法において用いるナノ粒子は、主に有機リガンドでコートしたものである。リガンドによって、我々は金属原子またはイオンに結合することができる孤立電子対をもつ少なくとも1つの原子をもつあらゆる分子またはイオンを意味する。リガンドによって、我々は金属原子またはイオンに結合することができる不飽和分子またはイオンも意味する。不飽和分子またはイオンは少なくとも1つのπ結合(これは隣接原子のp-原子軌道の横並びの重なりによって形成される結合である)を有する。銀、金、または銅ナノ粒子の有機リガンドの一例は、n-アルキルチオールリガンドであり、これは好ましくは4〜30炭素数のアルキル鎖長を有する。ナノ粒子のコーティングは、それらを普通の有機溶媒に可溶にし、溶液加工法による加工を可能にする。これらのコーティングは、粒子の金属コアの凝集および/または合体に対してナノ粒子を安定化させることもできる。この開示のいたるところで、リガンドでコートしたナノ粒子(ligand coated nanoparticle)という用語を用いてこのような安定化した粒子を記述する。さらに、本発明によれば、2またはそれ以上の異なる種類のリガンド、たとえば異なる長さの2つのアルキルチオールリガンドをもつナノ粒子は、1種類のアルキルチオールリガンドでコートしたナノ粒子(これらは嵌合(interdigitated)リガンドを伴う凝集物を形成することが知られている)と比較して、有機溶媒およびポリマーマトリックスたとえばポリ(ビニルカルバゾール)への高い溶解性とリガンドの嵌合(interdigitation)によって生じる凝集物の形成へと向かう傾向が低いことを示している。Voicu, R., Badia, A., Morin, F., Lennox, R.B. & Ellis, T. H., DSC, PTIR, およびC-13 NMRスペクトル観測によってモニターした自己組織化銀n-ドデカンチオレート層状物質の熱的挙動。Chemistry of Materials, 12, 2646-2652 (2000); Sandhyarani, N., Pradeep, T., Chakrabarti, J., Yousuf, M. & Sahu, H. K. 金属−クラスター超格子固体中における明瞭な液相。Physical Review B, 62, 8739-8742 (2000); Sandhyarani, N. & Pradeep, T., 合金クラスターの結晶固体。Chemistry of Materials, 12, 1755-1761 (2000); Badia, A. et al., 金ナノ粒子上での自己組織化単分子層。Chemistry-a European Journal, 1, 359-363 (1996))。金属ナノ粒子/ポリマーの複合材を形成するために、2またはそれ以上の種類のリガンドをもつナノ粒子を使用することは有利である。これは、より高濃度の粒子を達成することができ、凝集物の減少は単一種のアルキルチオールリガンドをもつナノ粒子を含む複合剤と比較して低い光学散乱をもたらすので複合材の光学品質がより高くなるためである。リガンドでコートしたナノ粒子は、容易に、スピンコートでき、有機フィルム中のドーパントとしてキャストまたはインサートでき、またはゾル−ゲル化学物質により調製された無機ガラス中に拡散できる。ここでは、2つのクラスの組成物を記述している。これらはマトリックスの性質において以下のように異なる:
クラスIは、リガンドでコートしたナノ粒子自身がマトリックスである組成物である。
【0024】
クラスIIは、ポリマー、ガラスまたは非常に粘稠な液体がマトリックスであり、ナノ粒子がドーパントである組成物である。
【0025】
適切な色素分子による金属イオンたとえば銀イオン(Ag+)の光化学還元は、Ag0原子の生成と微小なナノメーターサイズのAg0粒子の核形成をもたらすことが知られている。しかし、光化学的に連続的な導電性金属パターンを描画するという過去の試みに伴う重要な問題は、前駆体材料における金属イオンの供給が限られていること、および核形成中心を与えるために高い励起度が要求されることが連続的な金属の成長を非常に困難にすることである。形成された粒子は一般的には相互接続されておらず、導電パスを形成しない。この種の生成物に対しては、粒子を「現像」して導電ラインを形成するために、追加の湿式化学処理工程を行わなければならない。しかし、本発明によれば、前駆体物質中にリガンドでコートしたナノ粒子を組み込むことにより、金属の成長のための初期核形成サイトとともに金属のある程度の出発体積分率を与えることによって、この問題を克服する。十分に成長すると、ナノ粒子上のリガンドの表面被覆率は不十分になって他の隣接している成長中の粒子と融合してより大きな金属相を形成するのを防ぐことができなくなる。ナノ粒子上のリガンドの表面被覆率は不十分になって他の隣接している成長中の粒子と融合してより大きな金属相を形成するのを防ぐことができなくなる。したがって、十分に成長すると、ナノ粒子は高度に相互結合して良好な導電性の経路を形成する。ここで開示した方法は、導電性金属のマイクロ構造体の直接かつ簡単な光化学製造を、低温たとえば雰囲気の室温(21℃)で可能にする。
【0026】
本発明による方法において有効な1タイプの組成物は、a)金属ナノ粒子、b)金属塩およびc)色素(金属イオンの励起状態還元が可能で適当な光優秀特性を有する)、ならびにd)ポリマーホスト材料を含有する複合材を含む。この複合材の組成物に関しては多くの変形例が可能であり、1)金属ナノ粒子の種類、2)金属イオンの種類、3)金属塩の対イオン、4)色素の構造、5)ポリマーホストを使用するか否か、および6)使用した場合にポリマーホストの種類、を含む。色素という用語によって、我々は300nm〜1.5μmの範囲の波長で格子を吸収する分子またはイオンを意味する。組成物によっては、金属ナノ粒子/ポリマーのナノ複合材で良好な透過特性と、数百マイクロメーターまで、好ましくは500マイクロメーターまで、より好ましくは700マイクロメーターまで、最も好ましくは900マイクロメーターまでの大きな厚さをもつものを調製することができる。本発明による方法においては、このような複合材は、マスクを用いるかまたは高度に拘束した放射線のビームを適切に走査することによって、光学放射線またはイオン化放射ビームによってパターン化した仕方で露光し、導電性金属のパターンを製造することができる。
【0027】
本発明によれば、1 × 10-50 cm4 photon-1 sec-1に等しいかそれより大きい二光子吸収断面積を有し、金属イオンの励起状態還元が可能な色素分子を組み込んだ組成物を用いて導電性金属の三次元パターンを作ることができる。大きな二光子吸収断面積をもつ色素の例はU.S. 6,267,913に記載されており、参照により本明細書に含まれる。本発明の実施形態において、色素の二光子吸収帯に調整した、きちんと合焦した高強度のレーザービームを用いて、金属の光活性化成長を小さな体積に局在化する。高い3D空間解像度を達成する能力は、二光子の同時吸収の可能性が入射レーザー光の強度に二次関数的に(quadratically)依存するという事実によって生じる。厳密に合焦したビームを用いると、強度は焦点において最高で、焦点面からの距離(z)とともに二次関数的に(quadratically)減少する(距離がレイリー(Rayleigh)長より長い場合)。したがって、分子が励起する割合は、焦点からの距離とともに急激に(z-4に比例して)減少し、励起は焦点の周囲の小さい体積(λ3のオーダー、ここでλは入射ビームの波長)に閉じ込められる。試料または集束ビーム(focused beam)を走査し、強度を制御して露光の三次元パターンを精密にマップして、連続的な金属からなる3D構造体を製造することができる。
【0028】
好適な実施形態においては、Agナノ粒子(リガンドコーティングあり)を、AgBF4塩および電子の不足した二光子吸収色素と、ポリビニルカルバゾール中で組み合わせて、複合材を作る。金属パターンの描画のための放射線による露光の例では、730 nmの波長で100 fsのレーザーパルスをフィルム上に合焦することによって、露光点で反射性かつ導電性のAg金属の形成が生じた。好ましくは、レーザー波長は、一光子励起の場合には157nm〜1.5μmの範囲で、二光子励起の場合には300nm〜3.0μmの範囲である。レーザーのパルス幅は、二光子励起の場合には好ましくは≦1μsからlOfsである。フィルム内で焦点を移動させることによって、Ag金属の任意のパターンを描画することができる。マイクロスケールのライン、四角形および種々の3Dパターンの金属ラインの描画がこの方法によって達成された。材料特性の放射線誘起変化の分野における当業者に知られているように、放射線による露光の工程において多くの変形例が可能である。たとえば、電子ビーム、走査プローブチップからの電流、集束イオンビーム、γ線、x線、UV線、VUV線、中性子ビーム、および中性原子ビームを、本発明の方法において用いることができる。
【0029】
金属ナノ粒子の形成と成長
アルキルチオレートでコートした金属ナノ粒子の形成は核形成成長メカニズムを経由して進行することが知られている(Hostetler, M. J. et al., 1.5から5.2nmのコア径をもつアルキルチオレート金クラスター分子:コアサイズの関数としてのコアおよび単分子層の特性。Langmuir, 14, 17-30 (1998))。このメカニズムはAgについて下記に示すように第1の工程として層状のストイキオメトリックな化合物の形成を含み:
nAg+ + nRSH → (AgSR)n + H+
成長を含む第2の工程が続く。第2の工程は銀ゼロ原子の存在に帰すことができる:
(AgSR)n + mAg0 → Agn,(SR)n
ここでn'=n+m
または層状化合物自身の金属イオンを還元する試薬の存在に帰すことができる:
(AgSR)n → Agn(SR)m + m'RSSR
ここで2m'=n-m。
【0030】
いったん生成すると、これらのナノ粒子は標準的な方法によって処理できる可溶な物質である。特に、それらの有機溶媒への溶解性は、それに基づいてナノ粒子のフィルムまたは取り込んだナノ粒子をもつ固体マトリックスを作ることができる多様な処理法を可能にする。我々は、このようなナノ粒子フィルムまたは複合材によって、ナノ粒子の成長を駆動し、それらのサイズが増加し、かつ他のナノ粒子と接触して融合するようになるであろうことを教示している。このプロセスが十分な程度まで起こった場合、連続的な金属の特徴形状(単結晶または多結晶)が形成されるであろう。
【0031】
本発明の1つの重要な寄与は、本発明が予備核形成した金属ナノ粒子の固体状態での成長を可能にする材料および露光条件を教示していることである。予備核形成した金属ナノ粒子という用語によって、我々は前の合成プロセスで核形成させ成長させた金属ナノ粒子を意味する。これらの条件は、ナノ粒子を、それらがくずれて連続的な金属の特徴形状になる点まで成長することを可能にする。
【0032】
いくつかの成長プロセスを開示しており、金属原子(ゼロ酸化数)がそのイオンから生成する方法が変化する。
【0033】
第1のケース(ケース1)は、電子ビームを用いて金属イオンからの金属原子の生成を利用する。電子ビームは直接銀イオンを還元できるか、金属イオンを還元するラジカルアニオンを生成できるか、または分子をイオン化しその後に電子が金属イオンを還元することができる。
【0034】
ケース1の利点は達成できる金属ライン解像度の汎用性であり、それは数ミクロン(マスクと大きな電子ビームの使用による)から数ナノメーター(たとえば、導電性走査プローブチップの使用による)までの範囲にわたる。図1はケース1の成長プロセスの概略図である。上の図においては、注入した電子が金属イオンを還元し;下の部分においては、注入した電子がラジカルアニオンを生成し、続いてそれが金属イオンを還元する。特に、導電チップによる原子間力顕微鏡(顕微鏡のチップがタッピングモードでフィルムに接近する)を電子のソースとして用いることができる。チップをナノ粒子の表面から数ナノメートル以内に配置すると、チップはナノ粒子フィルムに電子を注入して厚さがわずかに数ナノメーターである金属ラインを生成する。
【0035】
第2のケース(ケース2)は、温度の局所的な上昇により金属イオンが還元されてゼロ酸化数になる場合であり、温度の局所的な上昇は色素分子による光エネルギー(好ましくはレーザービーム)の吸収と吸収したエネルギーの熱への転移によってもたらされる。材料の非線形局所加熱のための材料および方法はU.S. 6,322,931に記載されており、これは参照により本明細書に取り込まれる。
【0036】
第3のケース(ケース3)は、分子を光励起して励起状態を作り、分子の還元ポテンシャルを、金属イオンを還元できるのに十分な量まで高めることである(基底状態ではできない)。このプロセスにおいては、色素が酸化されるので、多くの場合、それを再生するために犠牲ドナーが必要とされるであろう。図2は、増感金属イオン還元の場合のエネルギーレベル図を示している。第1の工程(黒)において、電子は色素の最高被占分子軌道(HOMO)レベルからその励起状態の1つへ上がる。電子はこのレベルから、直接に金属イオン(赤)へ向かうか、または最初に電子輸送材料(青)の最低空軌道(LUMO)へ向かい、その後に金属イオンへ向かう。続いて、電子が犠牲ドナーのHOMOから色素のHOMOへ移動(緑)し、それによって中性色素を再生することもある。犠牲ドナーと電子輸送材料は必ずしも必要ではない。
【0037】
このケースにおいて達成できる特徴サイズ解像度は、光励起の種類に依存する。特徴サイズに関する下限は、一光子(ケース3a)照射の場合には数ミクロンになることがあって回折限界であり、多光子照射の場合にはしきい値効果(ケース3b)によって潜在的により小さく、近接場照射(ケース3c)の場合には数十ナノメーターのオーダーである。このケースでは、限界は近接場ソースの寸法とフィルムに対するその位置によって決定される。
【0038】
図3は、ナノ粒子複合材における金属の特徴形状の描画を示す。赤のコーンはレーザービームを示し、その末端のより暗いスポットはビームの焦点を示す。灰色の四角形はその中に色素と塩を含む複合フィルムであり、青い円はナノ粒子を示す。露光、成長および合体によって、金属パターンが形成される。上部の(a)において、ビームの焦点中に金属原子が形成され、それらはナノ粒子へ向かって移動し、その後(b)ナノ粒子が成長し始め、最後に(c)連続的な金属の特徴形状が形成される。このスキームは、ケース2および3の方法にも当てはまる。
【0039】
好ましい実施形態
好ましい例を以下の節で示し、金属の製造方法を説明する。これらの例は決して網羅的なものではなく、当業者にとっては本明細書に開示された発明の基本原理に基づいて他の手法を使用できることは明らかであろう。2つの異なるクラスの組成物を用いて金属の特徴形状を生成することができる。第1のクラスにおいては金属ナノ粒子はそれら自身のマトリックスとして働き、第2のクラスにおいては金属ナノ粒子はホストマトリックス中のドーパントである。
【0040】
クラスI
第1の実施形態では、材料は下記のものからなる。
【0041】
i)1またはそれ以上の種類の有機リガンドでコートした、リガンドでコートした金属ナノ粒子。ある場合には、上述したように有機リガンドの混合物を用いるのが有利である。加えて、(ii)(下記)に記載した材料を、粒子に結合している1またはそれ以上の種類の有機リガンドに結合させてもよい。
【0042】
ii)分子軌道エネルギーレベルが対応する金属塩の光還元に適しているか、または線形もしくは非線形の光吸収によって十分な熱を発生して金属塩の還元を起こす分子(色素)。この成分は、ナノ粒子マトリックス中に溶解するか、またはリガンドの1つとしてもしくは唯一のリガンドとしてナノ粒子に共有結合することができる;
iii)金属塩;および
iv)犠牲ドナー、すなわち、分子軌道レベルが上記(ii)に記載された色素のカチオン(金属イオンの光還元によりまたは電子ビーム露光により生成する)を還元するのに適切なエネルギーである分子。このようにして、最初の色素は再生可能で再び金属の還元剤として働くことができる。この成分はホストマトリックス構造体の一部であってもよい。ある場合には、この成分は必ずしも必要ないであろう。
【0043】
クラスI系の各々の成分の好ましい濃度(組成物の総重量を基礎として重量パーセント)は以下のとおりであり加えて合計100%になるように選ばれる。
【0044】
成分(i):55〜100%,全ての値およびそれらの間のサブ値を含み,特に60,65,70,75,80,85,90および95%を含む;
成分(ii):0〜15%,全ての値およびそれらの間のサブ値を含み,特に2,4,6,8,10,12および14%を含む(0はナノ粒子がそれらの外側シェルに色素終端リガンドを持つ場合に当たる);
成分(iii):0〜15%,全ての値およびそれらの間のサブ値を含み,特に2,4,6,8,10,12および14%を含む;
成分(iv):O〜10%,全ての値およびそれらの間のサブ値を含み,特に2,4,6,および8%を含む。
【0045】
クラスII
第2の実施形態においては、ある材料がホストマトリックスとして働き、その中に他の成分i)-iv)が分散しているか溶解している:
v)全ての他の成分を溶解するマトリックス。このマトリックスは以下のものでありうる:
a)ポリマー;
b)ガラス;
c)高粘稠の液体;
d)液晶材料もしくはポリマー、またはメゾスコピック相; および
e)多孔質の結晶またはアモルファスの固体。
【0046】
成分の(v)の(a)の場合、追加の成分(vi)を添加することが特に有利な状況がありうる:
vi)可塑剤、すなわちポリマーのガラス転移点を下げることができ、それによってその機械的性質を用途により好適にする分子。
【0047】
両方のケースにおいて、照射源が電子ビームである場合には、成分(ii)は必要ではない。
【0048】
クラスII系の各成分の好ましい濃度(組成物の総重量に基づく重量パーセントで)は以下のとおりであり、加えて合計が100%になるように選択される:
成分(i):0.05%〜25%,全ての値およびそれらの間のサブ値を含み,特に0.1,0.2,0.5,1,2,3,4,5,10,15および20%を含む;
成分(ii):O〜15%,全ての値およびそれらの間のサブ値を含み,特に2,4,6,8,10,12および14%(0はナノ粒子が外側シェルに色素終端リガンドを有するか、またはホストもしくは可塑剤がサブユニットとして好適な色素を有する);
成分(iii):0〜25%,全ての値およびそれらの間のサブ値を含み,特に5,10,15および20%を含む;
成分(iv):0〜60%,好ましくは20%〜60%,全ての値およびそれらの間のサブ値を含み,特に10,20,30,40および50%を含む;
成分(v):0.5〜99.5%,全ての値およびそれらの間のサブ値を含み,特に10,20,30,40,50,60,70および80%を含む;ならびに
成分(vi):0〜70%,全ての値およびそれらの間のサブ値を含み,特に10,20,30,40,50および60%を含む。
【0049】
成分の説明
成分(i):金属ナノ粒子
成分(i)の好ましい例は以下のとおりである:
i1)有機リガンドで被覆された、1〜200nm(径)の寸法を有する金属(たとえば、銀、金、銅、およびイリジウム)ナノ粒子(Kang, S. Y. & Kim, K., 一相系および二相系において調製されたドデカンチオール誘導銀ナノ粒子の比較研究。Langmuir, 14, 226-230 (1998); Brust, M., Fink, J., Bethell, D., Schiffrin, D. J. & Kiely, C., 官能基化された金ナノ粒子の合成と反応。Journal of the Chemical Society-Chemical Communications, 1655-1656 (1995); Brust, M., Walker, M., Bethell, D., Schiffrin, D. J. & Whyman, R., 二相液液系におけるチオール誘導金ナノ粒子の合成。Journal of the Chemical Society-Chemical Communications, 801 -802 (1994));
i2)有機リガンドで被覆された金属の合金からなるナノ粒子(Link, S., Burda, C., Wang, Z. L. & El-Sayed, M. A., 金および金−銀合金ナノ粒子の電子動力学:非平衡電子分布の影響および電子-フォトン緩和のサイズ依存性。Journal of Chemical Physics, 111, 1255-1264 (1999); Link, S., Wang, Z. L. & El-Sayed, M. A., 金−銀ナノ粒子の生成およびそれらの組成に関するプラズモン吸収の依存性。Journal of Physical Chemistry B, 103, 3529-3533 (1999));
i3)被覆されていない金属ナノ粒子(第2の実施形態の場合) (Heilmann, A. & Kreibig, U., 低温における埋め込み金属ナノ粒子の光学的性質。European Physical Journal-Applied Physics, 10, 193-202 (2000));および
i4)コアが半導体、金属酸化物、シリケート、ポリマー、またはバイオポリマーのナノ粒子であり、外側シェルが金属である金属ナノシェル(金属部は有機コーティングありまたはなし(第2の実施形態の場合))(Wiggins, J., Carpenter, E. E. & O'Connor, C. J., Au:Fe:Auナノオニオンの現象学的磁気モールディング。Journal of Applied Physics, 87, 5651-5653 (2000); Carpenter, E. E. et al., 金−鉄−金ナノ複合材の合成および磁気特性。Materials Science and Engineering a-Structural Materials Properties Microstructure and Processing, 286, 81-86 (2000))。
【0050】
成分il,i2,i3は有機リガンドによってコートされていてもよいナノ粒子からなる。これらのリガンドは本質的に、以下の式:A-B-Cにおける3つの部分からなる分子である。
【0051】
部分Aは、金属ナノ粒子表面に結合することができる孤立電子対を有する少なくとも1つの原子をもつ分子またはイオンのフラグメントであるか、または金属ナノ粒子表面に結合することができる不飽和の分子またはイオンのフラグメントであり、かつフラグメントをBに結合する接続点を含む。例として以下のものを含む: -S-, -O-, -O2C-, -S-S-R, -O3S-, -S2C-NR-, -O2C-NR-, P(R1R2)-, N(R1R2)-, O(R1)-, P(OR1)(OR2)O-, およびS2(R)-, ここでR, R1, およびR2は独立して-H, 1〜50の炭素原子を含む直鎖または枝分かれアルキル鎖、フェニルもしくは他のアリール基、およびヘテロ芳香族基からなる群より選択することができる。
【0052】
部分Bは、1つは部分Aと結合するため、および1つは部分Cと結合するための、2つの接続点をもつ有機フラグメントである。このフラグメントは、ナノ粒子の周りに嵩高さを与えて、そのナノ粒子を他のナノ粒子と融合することに対して安定化させるのを助ける作用を有する。部分Bは、無(単結合)でもよいし、独立して1〜50の炭素原子をもつメチレン鎖、1〜20のフェニルをもつフェニレン鎖、1〜20のチオフェニレンをもつチオフェニレン鎖、1〜20のフェニルビニレンをもつフェニレンビニレン鎖、2つの接続点をもつ枝分かれ炭化水素鎖、1〜20のエチレンオキシドをもつエチレンオキシド鎖、1〜20のビニルカルバゾール単位と鎖の各末端に接続点をもつオリゴ(ビニルカルバゾール)鎖からなる群より選択してもよい。
【0053】
部分Cは、フラグメントBに結合する接続点をもつ分子フラグメントである。この基を用いて、リガンドでコートしたナノ粒子の外面に特定の機能、たとえばマトリックスとの相溶性、光還元性、二光子吸収性、自己組織化特性、化学接続特性を付与することができる。部分Cは、独立して-H、フェニル、ナフチル、アントリル、他のアリール基、N-カルバゾイル、α-フルオレニル、-SiOR3,-SiCl3,可能性のある部分Aフラグメントとして記載したあらゆる基、光還元色素、二光子吸収発色団、多光子吸収発色団メチレンブルー、オリゴヌクレオチドストランド、ペプチド鎖、または可能性のある部分Bフラグメントとして記載したものであって、接続点の1つが水素で置換されたあらゆる基からなる群より選択することができる。
【0054】
本発明の好ましいナノ粒子は、2またはそれ以上の種類のリガンドであって、各々はそれ自身の特性基と機能をもつものの混合物を含んでいてもよい。
【0055】
明確化のために、クラス(il)に用いられたリガンドの具体例を以下に言及する。
【化1】
【化2】
【0056】
好ましい金属とリガンドとの組み合わせの例は以下のとおりである。
【表1】
【0057】
成分(ii)光還元色素
成分(ii)の好ましい例は以下のとおりである。
【0058】
クラス1:中心対称ビス(アルデヒド)−ビス(スチリル)ベンゼン
【化3】
【0059】
クラス2:非中心対称ビス(アルデヒド)−ビス(スチリル)ベンゼン
【化4】
【0060】
クラス3:中心対称アクセプタ終端ビス(スチリル)ベンゼン
【化5】
【0061】
クラス4:非中心対称アクセプタ終端ビス(スチリル)ベンゼン
【化6】
【0062】
クラス5:他の色素
【化7】
【0063】
色素は、U.S. 5,804,101; U.S.6,090,332; U.S 5,670,090; U.S. 5,670,091およびU.S. 5,500,156(これらは参照により本明細書に含まれる)に記載されているようなドナー−アクセプタ色素でありうる。
【0064】
成分(iii:)金属塩
成分(iii)の好ましい例は、あらゆる金属(I)可溶塩であり、銀テトラフルオロボレート(AgBF4); 銀ヘキサフルオロアンチモネート(AgSbF6); 銀ジエチルジチオカルバメート(C3H10NS2Ag); 硝酸銀(AgNO3); 亜リン酸トリメチルヨウ化第一銅(ICuP(CH3)3); および亜リン酸クロロトリメチル金(ClAuP(OCH3)3)を含む。
【0065】
成分iv):マトリックス
この成分の主要な要求は、全ての他の成分を溶解し、均質な複合材を形成する能力をもつことである。
【0066】
成分(v)の好ましい例は、
a)ポリマーa1:ポリ(9-ビニルカルバゾール)
【化8】
【0067】
以下に示した例の多くにおいて、実際に使用したポリマーは第2標準(Aldrich chemicals)であり、Mn=69,000であった;
ポリマーa2: ポリ(2-{[11-(9H-カルバゾール-9-イル)ウンデカノイル]オキシ}エチル-2-メチルアクリレート)PCUEMA
【化9】
【0068】
ポリマーa3: ポリ(4-クロロスチレン);および
ポリマーa4: ポリ(メチルメタクリレート) PMMA;
b)SiOx、有機的に修飾されたSiOx材料、TiOx、(SiOx)n(TiOx)m
c)粘稠な液体ホスト
【化10】
【0069】
他の成分
成分(iv)および成分(vi)の好ましい例は、ポリビニルカルバゾールの良好な可塑剤であり、犠牲ドナーであるエチルカルバゾールと;
【化11】
【0070】
良好な可塑剤および犠牲ドナーである末端ジ(9-カルバゾイル)アルカンと;
【化12】
【0071】
および犠牲ドナーである下記の分子である。
【化13】
【0072】
本発明の用途は以下のものを含む:集積光学系における光路に適した金属線回折格子の描画、電気化学または生物学における応用に適したマイクロ電極アレイのパターニング、たとえばチップ上のセキュリティコードのハード配線におけるおよびチップ修復における集積回路の相互接続に適した金属配線のパターニング。さらなる用途は以下のものを含む:ナノエレクトロニクス用途に適した、ナノメーターサイズの金属配線、単一電子トランジスタ、および他の部品の製造;多層集積回路における電子部品の3D相互接続;マイクロサージカル用途に適した金属デバイスの製造;テラヘルツ放射線に適したアンテナおよびそのアレイ、薄膜金属フォトニック結晶およびフォトニック結晶導波路内の異なる入射角をもつミラーの形成、および金属マイクロセンサー、金属マイクロ共振器、およびマイクロエレクトロメカニカル構造体。本発明は、ナノスケールで単一分子系の電子デバイスの配線に用いることができる。
【0073】
さらに、本発明は現在利用できる技術に対して以下の利点を提供する:
i)連続的な金属ラインを、パターンの形状に関してほとんど制限なしにマイクロスケールまたはナノスケールの解像度で、三次元パターンに形成することができる。
【0074】
ii)このプロセスは熱分解プロセスにおいて必要とされるような高温の発生を必要とせず、このためナノスケールのデバイスの集積または熱的に損傷しやすい基板に利用できる。
【0075】
iii)金属パターンまたは構造体を、広い種類の基板上に製造できる。好ましい基板は、シリコン、ガラスまたはプラスチック基板であり、これらの全てはたとえばインジウム錫酸化物(ITO)で被覆してもよい。さらに、好ましい基板はAu, Ag, Cu, Al, SiOx, ITO, ヒドロゲルまたは生体適合性ポリマーである。
【0076】
iv)この材料系は、化学気相成長において一般に用いられるような高い毒性の気相有機金属前駆体と対照的に、処理するのが容易で取り扱うのが簡単である。
【0077】
v)不活性雰囲気を必要としない。
【0078】
vi)高真空設備を必要としない。
【0079】
vii)このプロセスはしきい値があるという事実は、試料を周囲の照明および熱条件下で取り扱うことを可能にし、このため試料に並外れた長期安定性(たとえば暗所での8か月の貯蔵寿命)を与える。
【0080】
しかし、本発明のプロセスは周囲温度に限定されない。クラスIの組成物を用いる場合、-270から200℃までの温度範囲が好ましい。クラスIIの組成物を用いる場合、-250から150℃の温度範囲が好ましい。
【0081】
したがって、本発明は、下記の例20および21に記載したような低エネルギーおよび上述したような低温を必要とする材料において三次元金属パターンを直接的に描画するのに適した新規なプロセスに関する。使用される金属ナノ粒子の種類および色素の種類に関する組成物の汎用性は、特定用途に適した材料の設計に多くの可能性を提供する。
【0082】
本発明に基づいて具体化できる多くの可能な用途がある。
【0083】
1つの組の用途は分散したナノ粒子(1-100nm)、分散した微小金属アイランド(100nm-100μm)、擬連続(浸出)金属または連続金属ラインの存在によって生成したマトリックスにおける物性の大きな変化を引き起こす能力を必要とする。これらの変形は光学特性たとえば固体マトリックスの屈折率を変化させ、このような特性の変化は、光学データ記憶に、回折光学デバイスの作製に、または集積光学系に適した導波領域の画定に、または集積光学系における光波のための金属ライン回折格子の描画に有用である。
【0084】
本発明は多くのフォーマットの光学データ記憶に用いることができる。二光子励起を用いて金属ナノ粒子または金属アイランドを含む領域からなるビットを書き込み、情報を3Dで記憶することができる。
【0085】
光学データ記憶の他の例は、感光性金属ナノ粒子複合材を書き込み可能コンパクトディスク類似の用途に適した光学記録層として用いる場合である。
【0086】
非常に魅力的な用途は、近接場光源を用いて非常に微小なビット(〜100mnまたはそれ以下)を書き込む、超高密度2D光学データ記憶のためのものである。
【0087】
他の光学用途は、反射偏光子、スイッチャブル光子、およびマイクロミラーを含む。
【0088】
本発明の第2の組の用途は導電性金属の特徴形状の直接パターニングを用いる。それらは以下のものを含む:電気化学または生物学における用途に適したマイクロ電極アレイのパターニング、たとえばチップ上のセキュリティコードのハード配線およびチップ修復における集積回路相互接続に適した金属配線のパターニング。さらなる用途は以下のものを含む:ナノエレクトロニクス用途に適した、ナノメーターサイズの金属配線、単一電子トランジスタ、および他の部品の製造;多層集積回路における電子部品の3D相互接続;柔軟材料たとえば有機発光ダイオードまたは有機電界効果トランジスタ上のコンタクトの描画;マイクロサージカル用途に適した金属デバイスたとえばニードルおよびステントの製造(McAllister, D. V., Alien, M. G. & Prausnitz, M. R., マイクロ製造された遺伝子・ドラッグデリバリーのためのマイクロニードル。Annual Review of Biomedical Engineering, 2, 289-313 (2000); Polla, D. L. et al., 医療におけるマイクロデバイス。Annual Review of Biomedical Engineering. 2, 551-576 (2000); Santini, J. T., Richards, A. C., Scheldt, R., Cima, M. J. & Langer, R., 制御されたドラッグデリバリーデバイスとしてのマイクロチップ。Angewandte Chemie-International Edition, 39, 2397-2407 (2000); Rymuza, Z., MEMS表面のトライボロジー特性および機械的特性を制御する。パート1:批評的な総説。Microsystem Technologies, 5, 173-180 (1999));ならびにマイクロエレクトロメカニカル構造体(Walker, J. A., テレコミュニケーションネットワークにおけるMEMSの未来。Journal of Micromechanics and Microengineering, 10, R1-R7 (2000); Spearing, S. M., マイクロメカニカルシステム(MEMS)における材料の問題。Acta Materialia, 48, 179-196 (2000); Lofdahl, L. & Gad-el-Hak, M., 乱流および流れの制御におけるMEMS応用。Progress in Aerospace Sciences, 35, 101-203 (1999))。本発明の材料および方法は、ナノスケールで単一分子系の電子デバイスの描画に用いることができる(Quake, S. R. & Scherer, A., 柔軟材料を用いたマイクロ製造からナノ製造まで。Science, 290, 1536-1540 (2000))。
【0089】
さらに他の用途は、電気的および光学的な特性の両方が利用される電気光学用途における描画された金属の特徴形状の使用を含みうる。例としては、回折格子(これは、その配列が印加電場によって制御される液晶材料によって埋め戻される)として作用するように成形された電極アレイがありうる。液晶の配列は回折格子の光学特性を制御するであろう。
【0090】
また、導電性金属の特徴形状の描画は、マイクロ流体素子における応用に有利である。たとえば、流体流れを制御するため、電気泳動的分離を駆動するため、電気化学反応を駆動するため、またはチャネルの内容物の誘電特性をモニターするための、電極形成されたチャネルの製造においてである。
【0091】
本発明の他の用途は、鋳型のパターニングまたは製造である(Ostuni, E., Yan, L. & Whitesides, G. M., たんぱく質および細胞と、金および銀上のアルカノチオレートの自己組織化単分子層との相互作用。Colloids and Surfaces B-Biointel faces, 15, 3-30 (1999))。この鋳型は他の材料または化合物の堆積、自己組織化、または鋳型成長に用いることができる。たとえば、パターン化された金属表面は、自己組織化分子たとえばチオール、カルボン酸または他の官能基化された化合物のパターン化アレイの生成に用いることができる。気相、液相または固相の反応物を用いて金属表面で反応を駆動することができる。また、パターン化された表面を、化学反応のパターン化された触媒に利用することができる。
【0092】
自由な形態で金属の特徴形状を描画できるという能力のさらに他の用途は、ニューロンまたは他の種類の細胞の成長および相互接続を指示するために用いることができる電極パターンを形成することである。
【0093】
本発明を一般的に説明してきたが、さらなる理解は具体的な例を参照することによって得られる。これらの例は、説明のみの目的で本明細書に示されており、別に明示しない限り限定的であることを意図していない。
【0094】
実施例
実施例の議論
以下の議論はいくつかの重要な実験に関する一連の例を含み、実施例の欄の理解を助けることを意図している。
【0095】
この議論は主に多光子照射(クラスII、ケース3)によって3D金属パターンを描画する可能性に焦点を合わせている。これは上述した全てのクラスおよびケースについてのよいテストになる。事実、本発明に含まれる多くの工程は記載されている全ての種々のケースに共通している。すなわちそれらは、
1.高度に可溶性のナノ粒子の合成、
2.均一で光学品質のマトリックスの調製、および
3.描画後の加工およびキャラクタリゼーションである。
【0096】
これらの工程は全ての様々な種類の描画プロセスに共通である。これらの部分に含まれる問題の解決法が、本発明の大部分を構成する。
【0097】
良好な光学品質をもつ均質なマトリックスを生成するためには、(i)全ての成分を溶解することができる溶媒または溶媒混合物および(ii)全ての成分を固体状態で溶解することができるマトリックス(ポリマー)を見つけることが必要である。好ましい溶媒はクロロホルム、ジクロロメタン、アセトニトリル、アセトン、水、ヘキサン、ヘプタン、ペンタン、トルエン、ジクロロベンゼン、ジクロロエタンおよびこれらの混合物である。体積でクロロホルム/アセトニトリル20/1の溶液はこの目的にために最も良好なものであることがわかっており、ポリマーa1およびa4は広い種々の銀塩を効果的に溶解し、一方でPMMAは銅塩を溶解する能力を示す。より複雑な問題は、有機溶媒および固体マトリックスの両方へのナノ粒子の溶解性である。
【0098】
ナノ粒子に結合することができる広い種類のリガンドがあるにもかかわらず、ナノ粒子の溶解性は限定されていることがわかっている。この問題を克服するためには、リガンドの混合物をもつナノ粒子を用いることが重要である。好適なリガンドの例は上に示した。リガンドの混合物を使用することは、系にエントロピーを加え、貧溶解性の主な原因であるリガンド間の嵌合を主に制限する(Voicu, R., Badia, A., Morin, F., Lennox, R. B. & Ellis, T. H., DSC, PTIR, およびC-13 NMRスペクトル観測によってモニターした自己組織化銀n-ドデカンチオレート層状物質の熱的挙動。Chemistly of Materials, 12, 2646-2652 (2000); Sandhyarani, N., Pradeep, T., Chakrabarti, J., Yousuf, M. & Sahu, H. KL., 金属−クラスター超格子固体中における明瞭な液相。Physical Review B, 62, 8739-8742 (2000); Sandhyarani, N. & Pradeep, T., 合金クラスターの結晶固体。Chemistly of Materials, 12, 1755-1761 (2000); Badia, A. et al., 金ナノ粒子上での自己組織化単分子層。Chemistry-a European Journal, 2, 359-363 (1996))。加えて、特定の基を用いて、粒子をそのホストにより可溶にする、たとえばリガンドの1つとしてカルバゾール終端アルカンチオールを用いて粒子をポリビニルカルバゾールに可溶にする。
【0099】
これらのナノ粒子を合成する最もよい方法は、エタノール中での一相反応を用いることであり(例1)、異なるリガンドを異なる割合で単純に加えることが、それらの外側シェルに異なるリガンドをもつ粒子を極めて低い溶融エンタルピーで得るのに有効である(例2)。
【0100】
粒子が十分に可溶である場合、フィルムのキャスティングが比較的容易になり、溶媒の蒸発(例8)またはスピンコーティング(例17)によって行うことができる。第1のケースにおいては、達成できる厚さの範囲は、数ミクロン(例13)から200μmまでである。ポリマーa1において達成できる最大の銀塩充填比は銀テトラフルオロボレートの場合で15%(重量基準);同じポリマー中において色素1dの場合で5%が最大であり、nAg6の場合で3%が最大である(例9)。充填費の最大値は、スピンコーティング法の場合にはわずかに高い。
【0101】
金属ナノ粒子の固相成長を、マトリックス中の銀イオンの光化学還元を含む一連の実験により探求し証明した。カルバゾール基は犠牲アノードの役割も果たし、したがって銀を少量の光還元色素でドープする可能性を与える。
【0102】
ポリビニルカルアゾールは約200℃のTgを有するので、可塑剤を用いてガラス転移点を低下させて室温に近づける。このポリマーに適したよく知られた可塑剤であるエチルカルバゾールを用いている。最もよく用いたフィルムの組成範囲は(全て重量パーセントで)30-50%の可塑剤、3-5%の色素1d、10-15%のAgBF4、0.2-3%のnAg6である。可塑剤の量は全ての値およびそれらの間のサブ値、特に重量で33,36,39,42,45および48%を含む。色素の量は全ての値およびそれらの間のサブ値、特に重量で3.2; 3.4; 3.6; 3.8; 4.0; 4.2; 4.4; 4.6および4.8%を含む。AgBF4の量は全ての値およびそれらの間のサブ値、特に重量で10.5; 11; 11.5; 12, 12.5; 13; 13.5; 14および14.5%を含む。nAg6の量は全ての値およびそれらの間のサブ値、特に重量で0.4; 0.6; 0.8; 1.0; 1.2; 1.4; 1.6; 1.8; 2.0; 2.2; 2.4; 2.6および2.8%を含む。
【0103】
同じ組成をもつがナノ粒子をもたない参照フィルムも作製した。このようにして作製した全てのフィルムは、良好な光学品質を有し、目視検査によれば完全に均質であるが、いくつかの欠陥を観察でき、顕微鏡下(60倍拡大)ではどれも完全ではなかった。
【0104】
全てのフィルムをきちんと合焦した赤外光源(700から800nmまでlOOfsパルス長)で照射し、銀ライン(例22)およびまたはアイランド(特に四角形)を生成したが、対応する参照フィルムは目に見える特徴形状を何ら生成しなかった。光学スペクトル観測またはTEM顕微鏡観測を用いて参照フィルムをさらに検査したところ、サイズの分散が大きい微小なナノ粒子が生成しているという結論に至った。金属ナノ粒子を含むポリマーフィルム中に生成した特徴形状は、適当な溶媒混合物中でマトリックスを溶解することによってマトリックスから分離した後、XPS(例10)およびSEM法(例9)によって調べることができた。
【0105】
XPSの結果は、生成した特徴形状が主にゼロ価(金属)にある銀からなることを示している。後者の方法は三次元の特徴形状を形成することができ、生成したラインがミクロンレベルまで連続的であることを示している。
【0106】
より複雑な実験を行い、われわれのプロセスをTEM顕微鏡で調べた:3つの同じフィルムは銅グリッドのキャストであり(例11)、それらの2つをナノ秒レーザー(532 nm)による照射にさらし、第1のものを1回のレーザーショット(125 mJ)だけ照射し、第2のものは3回のショットだけ照射した。
【0107】
結果は、1回のレーザーショット後に粒子の平均半径が2倍になったが、単位面積あたりのその数は同じままであるというものであり、全ては提案したメカニズムに一致した(図9)。
【0108】
近接場励起を含む多くの変形が可能である。この変形の実施可能性を調べるために、描画に要するしきい値パワーを調べ、一光子励起の場合に約108 W/m2(例20)であり二光子励起の場合に約109 W/m2(例21)であることがわかった。パワーのしきい値は近接場描画の場合に得られる値に一致している。
【0109】
実験の項は、異なる種類のポリマー(例15)またはマトリックス、色素(例14)、塩またはナノ粒子(例12)を用いて調製された、多くの異なる種類のフィルムを含んでいる。
【0110】
現像工程における重要な問題が解決された。構造体と基板との間に化学結合を与えるために、基板を官能基化する二段階法を開発した。第1の工程において、チオール終端分子の単分子層をガラス基板に形成する。この単分子層はトリメトキシシラン基を介して基板に結合している。第2の工程において、ナノ粒子の単分子層を第1の単分子層上に導入し、粒子をチオールに化学的に結合する。この種の官能基化された基板は、接着性と現像工程における成功が非常に改善された。図8はリガンドでキャップした金属ナノ粒子のチオール官能基化されたガラス基板への付着の模式図である。
【0111】
前駆体中の銀ナノ粒子の存在の重要性を調べるために、我々はUVチャンバー中において1時間以上フィルムF1を照射し(例13)光吸収スペクトル中にナノ粒子の特性吸収が生じるかどうかまたは金属の特徴形状が現れるかどうかを見た。色素の吸収帯の退色のみが観察され、極度な照射条件でも、連続的な銀金属またはナノ粒子の形成(光吸収によって証明される)の証拠は全く観察されなかった。
【0112】
連続的な金属の特徴形状の製造に適した官能基化された金属ナノ粒子
銀ナノ粒子を、種々の有機リガンドのコーティングにより合成した。リガンドのいくつかは、励起状態から、銀イオンを中性原子へ還元することができる基を有していた。これらのリガンドの構造を下の模式図に示す。3つの色素リガンドを用いて電子活性および光活性のナノ粒子を合成している。いくつかの実験で用いた粒子の名称とリガンドシェル組成を下の凡例にリストする。
【化14】
【表2】
【0113】
リガンドでコートした粒子の合成は位置交換反応であった(Hostetler, M. J., Templeton, A. C. & Murray, R. W. 単分子膜で保護された金クラスター分子上の位置交換反応の動力学。Langmuir 15, 3782-3789 (1999))。nAg7の溶液と所望のリガンドから出発してその外側シェルに色素分子をもつ粒子を合成することができた。別の合成を用いて色素結合リガンドによって完全にコートされたナノ粒子を得た(例29)。この場合、銀イオンをリガンドI9の存在下でNaBH4によって還元した。
【0114】
これらの粒子と銀塩との混合物は、溶液中および固体状態の両方において、励起(光または電子ビーム)すると、より大きな粒子(連続になる限界まで)を生じさせた。いくつかの例(これらの粒子の全潜在能力を代表しているわけではないが)を以下において議論する。これらの材料系の主要な利点は、これらの粒子のフィルムが連続的な金属の特徴形状の電子ビームおよび光誘起成長に適した前駆体であることにある。
【0115】
色素でコートした粒子を含む複合材料の反応性を調べるために、一連を実験を4つのフィルムの組に関して行った:
リガンドシェル上に還元性色素をもつナノ粒子(nAg11)と2% wt.の銀塩(AgBF4)を含むフィルム。(F14, F18)
リガンドシェル上に還元性色素をもつナノ粒子(nAg11)で銀塩のないフィルム。(F15, F19)
リガンドシェル上に還元性色素のないナノ粒子(nAg7)と2% wt.の銀塩(AgBF4)のフィルム。(F16, F20)
リガンドシェル上に還元性色素のないナノ粒子(nAg7)で銀塩のないフィルム。(F17, F21)
約20nmの厚さをもつフィルムの反応性を操作電子顕微鏡(SEM)で調べた。フィルム(i)は、連続的な金属の特徴形状に適した効率的な前駆体であることを示した。事実、四角形とラインの組み合わせを、顕微鏡の電子ビームを用いて描画することができた。未反応のフィルムをパターニング後にジクロロメタンで洗い流して、残っている金属のパターンをあらわにすることができた。洗浄前後の構造を図16に示す。図16の左の像はF14に関してSEMを用いて描画およびイメージ化した四角形とラインの例を示す。右の像は未露光のフィルムを除去した後にSEMによりイメージ化した四角形とラインの一部の例を示す。示した全ての他のフィルムは電子ビームパターニングに関して不活性であった。
【0116】
ガラス基板上にキャストした同じフィルムをレーザービームで励起して、金属パターニングに対するそれらの光化学反応性を調べた。フィルム(i)上に、可視光(488nm, 50mW, 一光子励起)および赤外光(730nm, 250mW, 二光子励起)の両方を用いて、一連のラインを描画した。洗浄により未反応のナノ粒子を除去する前後に描画したパターンをイメージ化した。フィルム(i)は再び、金属パターンを形成するにあたって光化学的に活性であることを示した。フィルム(ii)も同様に活性であることを示したが、より高い入射レーザーパワー(一光子励起および二光子励起に対して、それぞれ80 および 400 mW)においてのみであった。全てのラインは2μm/sの速度で描画した。フィルムiiiおよびivは金属をパターニングする際に光化学的に活性ではなかった。
【0117】
フィルムに関する同様の実験を、透過型電子顕微鏡(TEM)の電子ビームを用い、支持用Si3N4グリッド上にキャストしたフィルムで行った。フィルムのキャスティングのための溶液は、SEM試験のために用いたものと同じであったが、単分子膜以下のフィルムを調製するために10倍に希釈した。これらのフィルムのいくつかの部分において、粒子の稠密な領域を見出すことができ、他の部分において分離されたナノ粒子が観察された。4つのフィルムの全てにおいて、隣接する粒子のない孤立したナノ粒子は、電子ビーム露光の間に意味のある形態上の変化を示さなかった。フィルム(iii)および(iv)は粒子がより稠密な領域でさえ、形態上の変化を示さなかった。フィルム(i)および(ii)は、それらの稠密な領域において、銀粒子が成長し、それらが合体して、半連続的な領域を形成することを示した。フィルム(i)は電子照射したで速やかに反応することを示した。フィルム(ii)では反応はより遅かった。
【0118】
光化学反応性を、4つの別々のグリッド上にキャストした同じ組のフィルムに関して調べた。全てのフィルムを最初にTEMですばやくイメージ化して初期参照像を得た後、それらを488 nmの光で240分間、1.5 W/cm2の強度で照射した。その後、フィルムをTEMで再びイメージ化した。フィルム(i)のみが形態上の変化を示した。図17は電子ビーム誘起および光誘起の成長後のフィルム (i) の平均的な変化を示している。図17はナノ粒子/塩複合材における、レーザービーム誘起および電子ビーム誘起の銀ナノ粒子成長を示している。aはレーザー露光前の複合材のTEM像であり、6 nmの平均半径をもつ規則的なナノ粒子のドメインを示している。bは488nmで240分間、1.5W/cm2の強度での一光子励起 (銀塩の消耗を確実にするため)後の像であり、粒子の成長を示している。cは電子ビーム露光前の複合材の像であり、aと同じ平均半径を持つ規則的なナノ粒子のドメインを示している。dはTEM装置での15分間の電子ビーム照射後の複合材の像であり、粒子の成長とほとんど合体した金属ドメインの形成を示している。スケールバーは50nmである。
【0119】
同じ組の試験を、nAg1O, nAg12およびnAg13金属粒子をベースとするフィルムで繰り返したところ、結果は上で説明したのと同一であった。
【0120】
nAg12と銀塩を含む厚いポリビニルカルバゾール(PVK)フィルム(F22)をキャストして、このような官能基化したナノ粒子をベースとする複合材料が連続的な金属の特徴形状の成長に適した前駆体として機能するかどうかを調べた。フィルムをマイクロ製造ステージ上に搭載し、730nmの光(80mW)で照射した。銀のラインを描画できることがわかり、このラインを光学顕微鏡でイメージ化した(図18)。図18はAgBF4およびnAg12でドープしたPVKフィルム(F22)に描画したラインの透過光学顕微鏡像を示している。スケールバーは30μmである。
【0121】
ポリマーマトリックス中における反射性および導電性の金属アイランドおよびワイヤの成長
例39および40に説明した組成物によるフィルムを、二光子マイクロ製造のためにガラススライド上にキャストした。銀の四角形パターンを、ラスター式のレーザー走査を用いて描画した。これらの四角形の反射率を、He-Neレーザー(632.8nm)で試験した。入射パワーは2mWであり、入射角は約30°であった。描画した銀の四角形は25%の反射率を示したが、未露光のポリマー複合材は3%の反射率を示した。四角形の反射像を、共焦点顕微鏡(514.5nm)および514.5nmの干渉フィルター(走査ヘッドと顕微鏡との間に設置し、蛍光を阻止して反射光を検出器へと通過させる)を用いて撮影し、図19に示す。これは、ポリマーナノ複合材中に埋め込まれた銀の四角形(右)の反射像を示している。
【0122】
表面に導電性パッドのアレイをもつガラス基板上に描画した銀ラインのコンダクタンスを測定した。一連の平行な銀のパッドを、標準的なリソグラフィー法を用いて、ガラス基板上に堆積した。スライドの半分をマスクし、次にパッドへ接続させた。一連の5つの平行ライン(200μm長さで1μm2の断面積をもつ)を基板表面でパッドに垂直に作り、描画ラインとパッドとの間を電気的に接続した。ラインの抵抗を、様々な距離だけ離れたパッド間で測定した。また、描画ラインによって接続されていない対照例のパッド間で測定を行った。バイアス電圧を-2Vから+2Vまで傾斜させ、マイクロ製造されたラインで接続されていないパッド間の測定電流は装置のノイズレベル(0.1pA)であり、巨大な抵抗を示していた。マイクロ製造したライン(32μm間隔)によって接続された2つの隣接パッド間で測定された平均抵抗は370Ωであった。マイクロ製造したラインの抵抗率(ρ)を測定し、接触抵抗についての補正なしで、約10-3Ωcmであった(図20)。図20は成長ラインの導電率を測定するために用いたスライド/ポリマー/マイクロ製造ライン構造の模式図である。
【0123】
二光子励起による銅および金のマイクロ構造体のマイクロ製造。
【0124】
例41で説明したように銅ナノ粒子、銅塩および色素1dを充填したフィルムをキャストし、銅ワイヤのパターンを、二光子励起を用いてマイクロ製造した。同じパターンを、例41で説明した金ナノ粒子複合材でマイクロ製造した。3Dの「丸太の積み重ね」構造体を両方の複合材でうまくマイクロ製造でき、本明細書で説明した方法が一般的で様々な金属に適用できることを証明している。両方の構造体を測定I(V)曲線のプロットである図21(373Ωの抵抗を示している)に示す。
【0125】
銀ナノ粒子の光誘起成長によるホログラフィックデータ記憶。
【0126】
ホログラフィックデータ記憶に適した複合材料を含む金属ナノ粒子の使用を、例43で説明したフィルムを用いて証明している。90°で交差している2本のレーザービーム(光学装置構成について図22を参照のこと)をフォログラフィック露光に用いた。ビームの1つ(像)を広げて解像度試験マスクに通し、他のビームを平面波参照光とした。フォログラフィック露光を、Ar+イオンレーザー(514.5nm)を用いて200mWの全パワーで実施した。露光後に、8%の回折効率で像を再構築し、再構築した像をデジタルカメラを用いてキャプチャーした(図23を参照のこと)。
【0127】
図22は二光子走査レーザー露光によりナノ複合材中に製造した金属構造体を示す。aは二光子レーザー露光によって製造した別のポリマーナノ複合材中の銅マイクロ構造体のTOM像である。bは二光子レーザー露光によって製造した金マイクロ構造体のTOM像である。スケールバーは25μmである。
【0128】
図23は左にホログラムの書き込みのための光学装置構成を示す。右にホログラムの読み出しのための光学装置構成を示す。青色の楕円体は焦点レンズを示し、一方で灰色の長方形はミラーを示す。かすかな灰色の長方形は50/50ビームスプリッターを示す。右の黒色の長方形はビームストップである。
【0129】
合成
全ての試薬はAldrichから購入し、受け入れたまま使用した。使用した全ての溶媒は明示しなければ試薬グレードである。
【0130】
銀ナノ粒子
1種のリガンドでキャップした銀ナノ粒子(nAg1-4)
全ての合成は、下記の手法を用いて行った。
【0131】
340mgのAgN03(2mmol)を100mlの無水エタノールに0℃において激しい撹拌下で溶解した。ある量(2/9ミリモルから2/3ミリモルまで変化する)の選択したリガンドを少量のエタノールに溶解して添加した。NaBH4の飽和エタノール(200ml)溶液を調製し、リガンドの添加から30分後に、非常にゆっくりと(2時間かけて)添加した。この溶液は直ちに黄色になった後、ゆっくりと非常に濃くなった。溶液をさらに2時間撹拌しておいた後、冷蔵庫に入れて凝結させた。
【0132】
次の日、溶液を、ポア径が1μmである定量ペーパーフィルター(VWR)を用いて真空ろ過し、ろ過した粉末をエタノールで2回、アセトンで多数回洗浄した。収量は49%から81%まで変化した。
【0133】
例1
ドデカンチオールでコートした銀ナノ粒子(nAg1)の合成
330mgのAgNO3(約2mmol)を200mlの無水エタノールに0℃において激しい撹拌下で溶解した。58mlのドデカンチオール(2/6mmol)を10mlのエタノールに溶解し、最初の溶液に加えた。NaBH4の飽和エタノール(200ml)溶液を調製し、リガンドの添加から30分後に、非常にゆっくりと(2時間)添加した。この溶液は直ちに黄色になった後、ゆっくりと非常に濃くなった。溶液をさらに2時間撹拌しておいた後、冷蔵庫に入れて凝結させた。
【0134】
次の日、溶液を、ポア径が1μmである定量ペーパーフィルター(VWR)を用いて真空下でろ過し、ろ過粉末をエタノールで2回、アセトンで多数回洗浄した。
【0135】
190.65mgの黒色粉末を回収し、収率は71%であった。
【0136】
2種または3種のリガンドでコートした銀ナノ粒子
合成は2つの異なる手法のうち1つを用いて行った。第1の手法a)はナノ粒子を複数のリガンドの存在中で合成する一段反応を含み、第2の手法b)はナノ粒子がリガンド交換反応を受けて第2の種類のリガンドを導入する二段反応を含む。
【0137】
a)第1の手法の場合、下記の方法を用いた。
【0138】
340mgのAgNO3(2mmol)を100mlの無水アルコールに0℃において激しい撹拌下で溶解した。10mlの所望のリガンド混合物の溶液を調製した。リガンドのモル比(ηligandA/ηligandB)は1と0.25の間であり、合計量はリガンドのモル数と銀のモル数との間の比が2/9から2/3の間になるように選んだ。リガンドの添加から30分後、NaBH4の飽和エタノール(200ml)溶液を調製し、非常にゆっくりと(2時間かけて)添加した。この溶液は直ちに黄色になった後、ゆっくりと非常に濃くなった。溶液をさらに2時間撹拌しておいた後、冷蔵庫に入れて凝結させた。
【0139】
次の日、溶液を、ポア径が1μmである定量ペーパーフィルター(VWR)を用いて真空下でろ過し、ろ過粉末をエタノールで2回、アセトンで多数回洗浄した。
【0140】
いくつかの種類のナノ粒子は冷却しても凝結せず、これらの場合には溶媒を真空下で蒸発させた後、15分間の超音波処理により残渣を水に懸濁させた。この水をフード内に2時間放置して凝結させた後、標準的な手法に従ってろ過した。
【0141】
収量は30%から75%まで変化した。
【0142】
例2:
オクタンチオール−チオールでコートした銀ナノ粒子(nAg6)の合成。
【0143】
340mgのAgN03(2mmol)を200mlの無水エタノールに0℃において激しい撹拌下で溶解した。24mlのオクタンチオール(1/6mmol)を10mlのエタノールに156mgのI4(1/2mmol)とともに溶解し、最初の溶液に加えた。NaBH4の飽和エタノール(200ml)溶液を調製し、リガンドの添加から30分後に、非常にゆっくりと(2時間)添加した。この溶液は直ちに黄色になった後、ゆっくりと非常に濃くなった。溶液をさらに2時間撹拌しておいた後、冷蔵庫に入れて凝結させた。
【0144】
次の日、溶液を、ポア径が1μmである定量ペーパーフィルター(VWR)を用いて真空下でろ過し、ろ過粉末をエタノールで2回、アセトンで多数回洗浄した。
【0145】
収量:273mgの黒緑色粉末。
【0146】
b)第2の手法は交換反応であった。
【0147】
この種の反応は既知の方法に従って行われる(Hostetler, M. J., Templeton, A. C. & Murray, R. W. 単分子膜で保護された金クラスター分子上の位置交換反応の動力学。Langmuir 15, 3782-3789 (1999))。
【0148】
例3:
オクタンチオール−isでコートした銀ナノ粒子(nAg9)。
【0149】
銀ナノ粒子nAg1上でのリガンド交換反応:オクタンチオールでコートした銀ナノ粒子nAg1(85.4mg)をCH2Cl2中で一晩撹拌することにより溶解した。次に、リガンドI8(14.2mg, 0.024mmol)を添加し、濃茶色の溶液を5日間、光のない状態で撹拌した。CH2Cl2を真空中で除去し、茶色の残渣をEtOH中に分配した。粒子を一晩沈降させると、定量ろ紙でろ過することができ、アセトンで数回洗浄した。
【0150】
収量:17mg。 元素分析: nAg9: C: 26.30, H: 4.31, S: 7.38, Ag: 53.99
nAg1: C: 22.85, H: 4.62, S: 7.23, Ag: 62.50
オクタンチオール: C: 66.19, H: 11.79, S: 22.07
I8: C: 70.66, H: 6.48, S: 9.81。
【0151】
元素分析に基づく計算によりリガンドの重量比が約85オクタンチオールおよび15% TMF-I-48であることを示した。計算によるモル比は以下のとおりであった:
nI8/nOctanethiol = 0.043
nAg/nOctanethiol+nI8 = 1.78 in nAg9
nAg/nOctanethiol = 2.25 in nAg1
1H NMR(CDCl3): 1H NMR はリガンドI8のスペクトルを示している。
【0152】
金ナノ粒子の調製
金ナノ粒子を、Brustの手法に従って調製した(Brust, M., Walker, M., Bethell, D., Schiffrin, D. J. & Whyman, R. 二相液液系におけるチオール誘導金ナノ粒子の合成。Journal of the Chemical Society-Chemical Communications, 801-802 (1994))。
【0153】
例4:
ドデカンチオールでコートされた金ナノ粒子(nAu1)の合成。
【0154】
352.8mgのHAuC4*3H2O(0.9mmol)を30mlの脱イオン水に溶解し、2.188gのテトラオクチルアンモニウムブロマイド(4mmol)を80mlのトルエンに溶解した。二相を混合し、1時間撹拌した。170mgのドデカンチオール(0.84mmol)を10mlのトルエンに溶解して添加した。10分後、380mgのNaBH4を25mlの水に溶解し、全てを一度に添加した。すぐに有機層は黒色になった。2時間後、有機層を分離し、3回洗浄した。トルエンを真空下で10mlまで減少させ、直ちにエタノールで500mlに希釈し、溶液を冷蔵庫中に一晩入れた。次の日、溶液を定量ろ紙でろ過し、トルエンで複数回洗浄した。
【0155】
10mgの黒色粉末を収集した。
【0156】
銅ナノ粒子
1種のリガンドでコートした銅ナノ粒子
237mgのCuBF4*H20(1mmol)を100mlの無水エタノール(少なくとも1時間アルゴンバブリングによって脱気した)に0℃において激しい撹拌下でアルゴン雰囲気において溶解した。ある量(2/9ミリモルから2/3ミリモルまで変化する)の選択したリガンドを少量のエタノールに溶解して添加した。溶液は直ちに明るい黄色になった。2時間後、飽和した(100ml)NaBH4の脱気エタノール溶液を調製し、非常にゆっくりと(3時間かけて)添加した。溶液は直ちに濃黄色になった後、ゆっくりと非常に濃くなった。溶液をさらに2時間撹拌しておいた後、冷蔵庫に入れて凝結させた。
【0157】
次の日、溶液を、ポア径が1μmである定量ペーパーフィルター(VWR)を用いて真空下でろ過し、ろ過粉末をエタノールで2回、アセトンで多数回洗浄した。全反応を、管理した雰囲気中で行った。
【0158】
例5:
ドデカンチオールでコートした銅ナノ粒子(nCu1)。
【0159】
228mgのCuBF4*H20(0.96mmol)を100mlの無水エタノール(少なくとも2時間アルゴンバブリングによって脱気した)に0℃において激しい撹拌下でアルゴン雰囲気において溶解した。51mgのオクタンチオール(〜1/3mmol)を少量のエタノールに溶解して添加した。溶液は直ちに明るい黄色になった。2時間後、飽和した(100ml)NaBH4の脱気エタノール溶液を調製し、非常にゆっくりと(3時間)添加した。溶液は直ちに濃黄色になった後、ゆっくりと非常に濃くなった。溶液をさらに2時間撹拌しておいた後、冷蔵庫に入れて凝結させた。
【0160】
次の日、溶液を、ポア径が1μmである定量ペーパーフィルター(VWR)を用いて真空下でろ過し、ろ過粉末をエタノールで2回、アセトンで多数回洗浄した。全反応を、管理した雰囲気中で行った。
【0161】
収量は40mgの黒色粉末であった。
【0162】
2またはそれ以上の種類のリガンドでコートした銅ナノ粒子。
【0163】
237mgのCuBF4*H20(1mmol) を100mlの無水エタノール(少なくとも1時間アルゴンバブリングによって脱気した)に0℃において激しい撹拌下でアルゴン雰囲気において溶解した。10mlの所望のリガンド混合物の溶液を調製して添加した。
【0164】
リガンドのモル比(ηligandA/ηligandB)は1と0.25の間であり、合計量はリガンドのモル数と銀のモル数との間の比が2/9から2/3の間になるように選んだ。2時間後、飽和した(100ml)NaBH4の脱気エタノール溶液を調製し、非常にゆっくりと(3時間かけて)添加した。溶液は直ちに黄色になった後、ゆっくりと非常に濃くなった。溶液をさらに2時間撹拌しておいた後、冷蔵庫に入れて凝結させた。
【0165】
次の日、溶液を、ポア径が1μmである定量ペーパーフィルター(VWR)を用いて真空下でろ過し、ろ過粉末をエタノールで2回、アセトンで多数回洗浄した。全反応を、管理した雰囲気中で行った。
【0166】
例6:
オクタンチオール-カルバゾールチオールでコートした銅ナノ粒子(nCu3)の合成。
【0167】
240mgのCuBF4*H20(0.974mmol) を100mlの無水エタノール(少なくとも2時間アルゴンバブリングによって脱気した)に0℃において激しい撹拌下でアルゴン雰囲気において溶解した。76mgのオクタンチオール(〜1/2mmol)および35mgのドデカンチオール(〜1/6mmol)を少量のエタノールに溶解して添加した。溶液は直ちに明るい黄色になった。2時間後、飽和した(100ml)NaBH4の脱気エタノール溶液を調製し、非常にゆっくりと(3時間)添加した。溶液は直ちに黄色になった後、ゆっくりと非常に濃くなった。溶液をさらに2時間撹拌しておいた後、冷蔵庫に入れて凝結させた。
【0168】
次の日、溶液を、ポア径が1μmである定量ペーパーフィルター(VWR)を用いて真空下でろ過し、ろ過粉末をエタノールで2回、アセトンで多数回洗浄した。全反応を、管理した雰囲気中で行った。
【0169】
収量は45mgの黒色粉末であった。
【0170】
色素およびリガンドの合成
例において用いたほとんどの分子およびポリマーを文献の方法に従って調製したが、新規な分子の合成をここで説明する。
【化15】
【0171】
4-{2-[4-[2-(4-ホルミルフェニル)ビニル]-2-(3-ヒドロキシプロポキシ)フェニル]ビニル}ベンズアルデヒド(TMF-I-39):モノ(ジエチル)アセタールテレフタルアルデヒド(1.75ml, 8.8mmol)およびジエチル 2-(3-{[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}-プロポキシ)-4-[(ジエトキシフォスフォリル)メチル]ベンジル フォスフォネート(2.49g, 4.4mmol)のテトラヒドロフラン(THF)(100ml)溶液をアイスバスで0℃まで冷却した。K2CO3(10mlの1M溶液THF中, 10mmol))をシリンジからゆっくりと添加し、反応を室温まで暖めた。一晩撹拌した後、水、次いで1M HC1(50ml)を添加し、反応混合物をさらに1時間撹拌した。生成物をCH2Cl2で抽出して、シリカ上でクロマトグラフした。CH2Cl2とともに溶出した最初のフラクションを排除した後、溶媒としてエチルアセテートを用いて生成物を収集した。CH2Cl2からの結晶化により、純粋な生成物を黄色の固体として得た(663g)。
【0172】
1H NMR (CDCl3): 10.01 (1H, s), 10.00 (1H, s), 7.88 (4H, t, J = 7.5 Hz), 7.67 (4H, t, J = 7.5 Hz), 7.60 - 7.64 (3H, m), 7.12 - 7.24 (4H, m), 4.30 (2H, t, J = 6.0 Hz), 3.97 (2H, t, J = 6.0 Hz), 2.20 (2H, tt, J = 6.0, 6.0 Hz), 1.61 (1H, br s) ppm; 元素分析: 計算 C: 78.62 H: 5.86, 検出 C: 78.36 H: 5.67。
【化16】
【0173】
3-{2,5-ビス[(E)-2(4-ホルミルフェニル)エテニル]フェノキシ}-プロピル-5-(1,2-ジチオラン-3-イル)ペンタノエート
4-{2-[4-[2-(4-ホルミルフェニル)ビニル]-2-(3-ヒドロキシプロポキシ)フェニル]ビニル}-ベンズアルデヒド(上記)(200mg, 0.49mmol),リポ酸(100mg, 0.49mmol)およびp-トルエンスルホン酸(20mg, 0.10mmol)の溶液を、一晩、発色団を溶解するのに必要な最小量のCH2Cl2(約2Oml)中で還流した。反応混合物をカラム(Al2O3/CH2Cl2)上に注ぎ、CH2Cl2:エチルアセテート/10:1でフラッシュクロマトグラフした。出発材料を、エチルアルコール(EtOH)を用いて回収した。収量: 90mg(31%)の黄色の固体。
【0174】
1H NMR (CDCl3): 9.974 (1H, s, CHO), 9.969 (1H, s, CHO), 7.86 (2H, d, J = 8.5 Hz), 7.85 (2H, d, J = 8.5 Hz), 7.65 (4H, d, J = 8.0 Hz), 7.57 - 7.62 (2H, m), 7.04 - 7.24 (5H, m), 4.36 (2H, t, J = 6.5 Hz), 4.19 (2H, t, J = 6.0 Hz), 3.49 (1H, m), 3.12 (1H, m), 3.05 (1H, m), 2.39 (1H, m), 2.31 (2H, t, J = 7.0 Hz), 2.25 (2H, m), 1.84 (1H, m), 1.57 -1.69 (4H, m), 1.35 -1.48 (2H, m) ppm。13C NMR (CDC31): 191.86 (CHO), 191.77 (CHO), 173.65, 156.78, 144.08, 143.28, 138.09, 135.60, 135.38, 131.86, 130.47, 128.27, 128.00, 127.36, 127.16, 126.52, 126.30, 120.16, 110.30, 65.19, 61.33, 56.52, 40.42, 38.66, 34.76, 34.21, 29.89, 28.94, 24.85 ppm。
【0175】
ポリマー合成(a2)
【化17】
【0176】
カルバゾールモノマーcmの合成:
カルバゾール酸(5.0g, 14.23mmol)と2 ヒドロキシエチルメタクリレート(2.0g, 15.37mmol)と4-ジメチルアミオピリジン(0.2g)のTHF (30ml)溶液を、DCC(3.7g, 17.96mmol)に、室温で添加した。反応をこの温度で10時間行った。固体をろ過により除去した。THFを除去した後、粗生成物を、ヘキサン/エチルアセテート(9:1)を溶出液として用いてシリカゲルカラムによって精製した。無色のオイルとしての純粋な生成物を4.2g (63.6%)の量で得た。
【0177】
1H NMR (CDCl3, TMS, 500 MHZ): δ = 8.12 (d, 2Harom, J = 7.5 Hz), 7.47 9m, 2Harom), 7.42(d, 2Harom, J = 7.5 Hz), 7.24 (m, 2Harom), 6.13 (s, 1H, C=C-H), 5.60 (s, 1H, C=C-H), 4.35(m, 4H, 2 x OCH2), 4.30 (t, 2 H, NCH2, J = 7.5 Hz), 2.33 (t, 2H, COCH2, J = 7.0 Hz), 1.95(s, 3H, CH3), 1.88 (m, 2H, CH2), 1.61 (m, 2H, CH2), 1.24 (m, 12H, 6 x CH2) ppm。13C NMR(CDCl3, 126 MHZ): δ = 173.58, 167.07, 140.34, 135.87, 126.02, 125.51, 122.73, 120.29, 118.63. 108.59, 62.42, 61.82, 43.01, 34.09, 29.38, 29.35, 29.30, 29.14, 29.00, 28.92, 27.26, 24.84, 18.25 ppm。
【0178】
C29H37N04 (463.61)についての元素分析: 計算: C, 75.13; H, 8.04; N, 3.02。検出: C, 75.08; H, 7.83; N, 3.28。
【0179】
カルバゾールポリマーPCUEMAの合成:
カルバゾールモノマー(2.7g, 5.82mmol)およびAIBN(14.3mg, 0.087mmol)を、窒素下で乾燥ベンゼン(5.0ml)に溶解した。反応混合物を液体窒素で冷却した。1回の冷凍−解凍−ポンプのサイクルの後、反応を60℃まで加熱し60時間行った。ポリマーをメタノール中に沈殿させ、ろ過により収集した。ポリマーをTHF溶液として溶解し、メタノール中に沈殿させた。溶解/沈殿/ろ過の順序を2回繰り返した。乾燥後、白色のポリマーを2.65g (98.1%)の収量で得た。
【0180】
1H NMR (CDCl3, TMS, 500 MHZ): δ = 7.97 (d, 2Harom, J = 8.0 Hz), 7.31 (m, 2Harom), 7.24 (d, 2Harom, J = 8.0 Hz), 7.09 (m, 2Harom), 4.07 (m, 4H, 2 x OCH2), 4.01 (s, br, 2H, NCH2), 2.17 (s, br, 2H, COCH2), 1.68 (m, 2H, CH2), 1.45 (s, br, 2H, CH2), 1.07 (m, 12 H, 6 x CH2), 0.93 (s, br, 2H, CH2), 0.80 (s, br, 3H, CH3) ppm。13C NMR(CDCl3, 126 MHZ): δ = 173.25, 140.30, 128.30, 125.48, 122.70, 120.26, 118.63, 108.56, 62.65, 61.16, 44.82, 42.89, 33.78, 29.44, 29.35, 29.28, 29.08, 28.90, 27.22, 24.74 ppm。
【0181】
I4およびI5
【化18】
【0182】
例7:
リガンドI4の合成
3.57gの9-カルバゾール-イル-オクタン-l-チオール(〜10mmol)を20mlのジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、1.52mgのチオ尿素(〜20mmol)を添加し、溶液を激しく撹拌した。2日後、濃NaOH水溶液を滴下して加えた。すぐに赤色の沈殿が形成され、添加の間に沈殿物は再溶解して溶液が赤色になった。pHが11(pH紙を用いて検査)に達した時点で添加を停止した。次に、溶液を、HCl(濃水溶液)を滴下して加えて中和すると、ゆっくりと黄色に変わった。次に、有機物をジエチルエーテル(Et2O)で抽出し、水で3回洗浄した。有機溶媒を真空下で乾燥し、残渣を収集した。
【0183】
試料の調製
この項では、ナノ複合材試料の処理および調製のいくつかの例を示す。以下に報告した全てのフィルムを試験し、全てのケースにおいて放射線を用いて金属銀ラインをうまく描画できた。
【0184】
試料を溶媒キャスティングまたはスピンコーティングにより調製した。多くの試料を空気雰囲気でキャストし、いくつかのケースではアルゴン雰囲気で処理を行った。
【0185】
全てのガラス顕微鏡スライドを以下の手法で清浄化した:
a)水およびせっけん中での1時間の超音波処理およびDI水による広範囲にわたるリンス
b)スペクトロスコピック級のメタノール中での超音波処理および無水エタノールまたはイソプロパノールによるリンス。
【0186】
ナノ粒子の単分子層コーティングをもつガラススライドを、以下のように、清浄化した後に処理した(以下、単分子層つきスライドという):
a)KOHの飽和イソプロパノール(試薬)溶液に10分間浸した後、DI水でリンスし、窒素流を用いて乾燥した。
【0187】
b)75mlのトルエン, 0.5mlのイソプロピルアミドおよび2mlの2-メルカプトプロピルトリメチルシロキサンの溶液を調製し、60℃に1時間保持した。
【0188】
c)スライドをこの溶液中に60℃で1時間浸した後、ヘキサン(スペクトロフォトメトリック級)でリンスした。
【0189】
d)試料をヘキサン中に一晩浸漬した。
【0190】
e)CH2Cl2溶液(2mg/mlのナノ粒子nAg6)を、スライド上での溶媒蒸発により、溶媒キャストした。
【0191】
f)試料をヘキサン中に一晩浸漬した。
【0192】
ITO(インジウム錫酸化物)スライドは、単純に、それらに接触させたエタノール中でそれらをリンスすることによって洗浄化した。
【0193】
溶媒蒸発によるナノ複合材フィルムのキャスティング
溶媒蒸発によるキャスティングのために試料を保持するための取り付け具を作製し、全てのこのようなキャスティングに水平位置に固定したこのプレートつき基板を用い、雰囲気の管理を考慮に入れた。キャスティングに先立って、各々のスライドの下に3mlの試薬級のクロロホルムを配置し、キャスティング液の導入時の溶媒蒸気による雰囲気の飽和を最初に維持した。時計皿を用いて各々のスライドのコンパートメントを閉じた結果、各々のスライドがキャストされる空気の体積は約15cm3であった。
【0194】
冷凍−解凍−ポンプのサイクルによって溶媒を脱気した。
【0195】
例8:
F1標準100μmフィルム
188.86mgのポリマーa1(ポリ9-ビニルカルバゾール), 89.6mgのエチルカルバゾール, 2.59mgのnAg6, および8.77mgの色素1dを、アルゴン雰囲気下で6ml脱気クロロホルムに溶解し、一晩撹拌しておいた。
【0196】
次の日、22mgのAgBF4を0.02mlの脱気アセトニトリルに溶解し、クロロホルム溶液に混合した。30分後、溶液をメンブランフィルター(1μmポアサイズ)でろ過した。0.6mlのろ過した溶液を、25 X 25mmのITOスライド上にキャストした。
【0197】
例9:
F2標準100μmフィルム
660mgのポリマーa1(ポリ9-ビニルカルバゾール), 329mgのエチルカルバゾール, 2.8mgのnAg6, および28mgの色素1dを、アルゴン雰囲気下で6ml脱気クロロホルムに溶解し、一晩撹拌しておいた。
【0198】
次の日、110mgのAgBF4を0.33mlの脱気アセトニトリルに溶解し、その0.3mlをクロロホルム溶液に加えた。10分後、溶液をメンブランフィルター(1μmポアサイズ)でろ過した。2mlのろ過した溶液を、75 X 25mmのガラススライド上にキャストした。
【0199】
例10:
高充填のナノ粒子をもつF3 20μmフィルム
92mgのポリマーa1(ポリ9-ビニルカルバゾール)を5mlのジクロロメタン(DCM)に溶解し, 12mgのAgBF4を5mlのDCMおよび1mlのアセトニトリルに溶解し, 5mgの色素1dを5mlのDCMに溶解し, 5.5mgのnAg1を2mlのクロロホルムに溶解した。全ての溶液を2時間撹拌した後、いっしょに混合した。2mlの溶液を75 X 25mmのガラススライド上にキャストした。
【0200】
例11:
TEM用のF4フィルム
11.5mgのポリマーa1(ポリ9-ビニルカルバゾール), 2.4mgのAgBF4, 2.8mgの色素1d, 1mgのnAg1を10mlのDCMに溶解し;溶液を10倍希釈し、2μlのこの溶液をカーボンでコートした銅グリッド上にキャストした。3つの同じフィルムをこのようにして作った。
【0201】
図9はnsパルスレーザーからの1つまたは3つのレーザーパルスへの露光による複合材フィルム中での金属ナノ粒子の成長を示すTEM像を示す。上のTEM像は1つのレーザーショット後の系を示し、下は3つのレーザーショット後である。上限において平均半径は4.9nmになったが、未照射試料では2.9であった。下の像において平均径はより大きく、大きな金属アイランドが見られた。
【0202】
例12:
異なる種類のナノ粒子をもつFS標準100μmフィルム
648mgのポリマーa1(ポリ9-ビニルカルバゾール), 316mgのエチルカルバゾール, 2.75mgのnAg7, および20.7mgの色素1dを、アルゴン雰囲気下で6ml脱気クロロホルムに溶解し、一晩撹拌しておいた。
【0203】
次の日、219mgのAgBF4を0.6mlの脱気アセトニトリルに溶解し、0.2mlをクロロホルム溶液に混合した。30分後、溶液をメンブランフィルター(1μmポアサイズ)でろ過した。0.4mlのろ過した溶液を、25 X 25mmのITOスライド上にキャストした。
【0204】
例13:
F6標準10μmフィルム
64.5mgのポリマーa1(ポリ9-ビニルカルバゾール), 38.1mgのエチルカルバゾール, 1.21mgのnAg6, および3.31mgの色素1dを、、アルゴン雰囲気下で6ml脱気クロロホルムに溶解し、一晩撹拌しておいた。
【0205】
次の日、20.4mgのAgBF4を0.3mlの脱気アセトニトリルに溶解し、0.1mlをクロロホルム溶液に混合した。30分後、溶液をメンブランフィルター(1μmポアサイズ)でろ過した。0.4mlのろ過した溶液を、75 X 25mmのガラススライド上にキャストした。
【0206】
例14:
異なる色素をもつF7標準100μmフィルム
411.16mgのポリマーa1(ポリ9-ビニルカルバゾール), 206.48mgのエチルカルバゾール, 2.28mgのnAg6, および19.72mgの色素2bを、アルゴン雰囲気下で6ml脱気クロロホルムに溶解し、一晩撹拌しておいた。
【0207】
次の日、50.8mgのAgBF4を0.3mlの脱気アセトニトリルに溶解し、クロロホルム溶液に混合した。30分後、溶液をメンブランフィルター(1μmポアサイズ)でろ過した。0.6mlのろ過した溶液を、75 X 25mmの単分子膜つきガラススライド上にキャストした。
【0208】
例15:
異なるポリマーをもつF8標準100μmフィルム
95.1mgのポリマーa2(PCUEMA), 0.71mgのnAg6, および1.8mgの色素1dを、アルゴン雰囲気下で1ml脱気クロロホルムに溶解し、一晩撹拌しておいた。
【0209】
次の日、9.5mgのAgBF4を0.05mlの脱気アセトニトリルに溶解し、クロロホルム溶液に混合した。30分後、溶液をメンブランフィルター(1μmポアサイズ)でろ過した。0.6mlのろ過した溶液を、25 X 25mmの単分子膜つきガラススライド上にキャストした。
【0210】
例16:
銅生成のためのF9標準100μmフィルム
66.6mgのポリマーa4(ポリメチルメタクリレート), 1.1mgのnCu1, および3.08mgの色素1dを、アルゴン雰囲気下で0.6ml脱気クロロホルムに溶解し、一晩撹拌しておいた。
【0211】
次の日、5mgのICuP(CH3)3を0.05mlの脱気アセトニトリルに溶解し、クロロホルム溶液に混合した。30分後、溶液を、25 X 25mmのガラススライド上にキャストした。
【0212】
スピンコートしたフィルム
例17:
F10標準スピンコーテッドフィルム
100mgのポリマーa1(ポリ9-ビニルカルバゾール), 6mgのエチルカルバゾール, 3mgのnAg4, および4.5mgの色素1dを、アルゴン雰囲気下で1ml脱気クロロホルムに溶解し、一晩撹拌しておいた。
【0213】
次の日、100mgのAgBF4を1mlのアセトニトリルに溶解し、0.1mlをクロロホルム溶液に加えた。30分後、25 X 25mmのガラススライド上に、2000RPMで20秒間、スピンコートした。得られた厚さは、プリズムカプラー測定によって検査したところ、〜8μmであった。
【0214】
粘稠液体を含むナノ粒子
例18:
F11標準粘稠液体マトリックスフィルム
ある量のホストc1を、ヒートガンを用いて加熱し、自由に流動するようななるとすぐに、バイアル中にピペットで取り、固定量を秤量した。226mgのホストc1, 2mgのnAg6, および5.77mgの色素1dを、2mlのクロロホルムに溶解し、一晩撹拌しておいた。
【0215】
次の日、11mgのAgBF4を0.1mlのアセトニトリルに溶解し、クロロホルム溶液に加えた。30分後、溶液を75 X 25mmのガラススライド上にキャストした。
【0216】
クラスIフィルム
例19:
F12標準クラスIフィルム
5.23mgのnAg1, および0.5mgの色素1d, および0.5mgのAgBF4を2mlのクロロホルムに溶解し、一晩撹拌しておいた。
【0217】
次の日、溶液を75 X 25mmのガラススライド上にキャストした。
【0218】
図10は二光子照射(800nm, 120fs)により描画した銀リボンを示す(例19)。
【0219】
一光子または二光子励起を用いたナノ粒子複合材中の金属描画
全ての描画実験をフェムト秒モードロックTi:サファイアレーザーを用いて行った。具体的には、Millenia(ダイオードでポンプされたYAGレーザー)によってポンプされたTsunami(Ti:サファイアレーザー)からなるスペクトル物理系を用いた。平均パルス長は120fsで、バンド幅は〜20nmであった。別に明示しない限り、使用した波長は760nmである。
【0220】
試料をマイクロポジショナー(Sutter MP-285)に搭載した。レーザービームを、倒立顕微鏡(Nikon)を用いて試料上に合焦した。コンピュータによってマイクロポジショナーおよびシャッター(Newport 846HP)の両方を制御した。マイクロポジショナーの動きとシャッターの開・閉サイクルの組み合わせにより、パターン化露光と試料中に描画されるべき金属構造体を可能にする。
【0221】
ビームの焦点を試料中に位置づけるために、二光子顕微鏡構成を用い、ビームをBiorad MRC-1024スキャンヘッドを通過させた。
【0222】
単一光子励起を用いる描画
単一光子励起を用いて描画する場合、LBOダブリング結晶を用いてレーザー出力光を2倍の周波数にし、結晶偏光子と赤外短波長パス誘電体フィルターの組み合わせを用いて残りの基本光をフィルターにかけた。
【0223】
その他の構成は、上述した二光子描画プロセスと同一である。合焦プロセスを共焦点法でスキャンヘッドを用いて行った。
【0224】
例20:
銀の一光子描画についてのしきい値測定
フィルムFl(例8)を、標準的な仕方で、マイクロポジショナーに搭載した。レーザー出力波長を860nm(420mW)に設定し、実験中に変化させなかった。フィルターホイールを装置構成中に配置し、レーザーの平均パワーの連続的かつ制御可能に変化できるようにした。ステージの移動速度を10μm/sに設定した。60倍の対物レンズ(NA 1.4)を用いてビームを試料に合焦した。フィルムのどこにでもラインを描画することができ、挙動はほとんどの場合に一様であった。そこで、二光子実験との比較のために、しきい値をガラス/フィルム界面で計算した。パワーを徐々に減少させ、描画プロセスの成功を光学顕微鏡観測により決定した。描画しきい値は0.09mWであることがわかった。1μmの径をもつ円形ビームスポットを仮定すると、120fsパルスについてしきい値強度はおおよそ108 W/m2であることがわかる。
【0225】
5μmの間隔で描画したラインのパターンの場合、光学像を用いてその幅の上限を設定することができ、その上限は500nmであった。
【0226】
図11は一光子励起(430 nm)を用いて描画した銀ラインを示し、ラインがはっきりと見える。暗いスポットは、最適なクオリティではないフィルム中の欠陥である。
【0227】
二光子励起を用いた描画
本明細書において二光子励起可能な光還元試薬として用いた色素は、適度に大きい二光子断面をもち、このため効率的な二光子励起を可能にすることが知られている。これは、高NA合焦系との組み合わせで、マトリックス中に、高解像度ラインを三次元パターンで描画するのを可能にする。
【0228】
例21:
銀の二光子描画についてのしきい値測定
フィルムFl(例8)を、標準的な仕方で、マイクロポジショナーに搭載した。レーザー出力波長を760nm(620mW)に設定し、実験中に変化させなかった。フィルターホイールを装置構成中に配置し、レーザーの平均パワーの連続的かつ制御可能に変化できるようにした。ステージの移動速度を10μm/sに設定した。60倍の対物レンズ(NA 1.4)を用いてビームを試料に合焦した。フィルムのどこにでもラインを描画することができ、挙動はほとんどの場合に一様であったので、構造体をさらに現像する可能性を示すために、しきい値をガラス/フィルム界面で計算した。パワーを徐々に減少させ、描画プロセスの成功を光学顕微鏡観測により決定した。描画しきい値は1.55mWであることがわかった。1μmの径をもつ円形ビームスポットを仮定すると、強度しきい値はおおよそ1.5 109 W/m2であることがわかる。
【0229】
5μmの間隔で描画したラインのパターンの場合、光学像を用いてその幅の上限を設定することができ、その上限は1μmであった。
【0230】
例22:
多光子描画と現像
フィルムF3(例10)を、標準的な仕方で、マイクロポジショナーに搭載した。レーザー出力波長を800nm(400mW)に設定し、実験中に変化させなかった。描画速度を100gm/sに設定した。用いた顕微鏡の対物レンズは10倍であった。ラインをガラス/フィルム界面に描画した。各々5ラインを含む6組の規則パターンを描画した。各々の組を前のものから30μm離して配置し、ラインは互いに10mm離した;全てのラインは500μm長さであった。描画後にフィルムをDCM入りビーカーに入れ、そこに3日間放置した。これらを行っている間にポリマーは洗い流されラインは基板上にとどまった。
【0231】
例23:
多光子描画と現像
フィルムF2(例9)を、標準的な仕方で、マイクロポジショナーに搭載した。レーザー出力波長を760nm(620mW)に設定し、実験中に変化させなかった。ステージの移動速度を10μm/sに設定した。60倍の対物レンズ(NA 1.4)および液浸油を用いてビームを試料に合焦した。フィルムのどこにでもラインを描画することができ、挙動はほとんどの場合に一様であった。多くの種々のパターンを描画し、最も重要なものは、「かご状」構造であり、13層のラインの組をもち、各々の層は前のものよりも5μm高く、各々の層は20ライン100μm長さで5μm離れており、各々の層は前の層のラインに対して垂直なラインからなる。
【0232】
描画プロセスを行った後、フィルムをマイクロポジショナーから取り外し、ペーパーティシューを用いて液浸油を取り除いてきれいにした後、DCMおよびアセトニトリル(10:1)の溶液に入れた。ポリマーが溶解して基板上の構造体が残った。
【0233】
図4はポリマーa1マトリックス中に描画した3D構造体(200x200x65μm)の光学透過像(平面図)を示している。描画プロセスは二光子励起(760nm, 120fs)を用いて行った。
【0234】
図5は図4に示したのと同じ構造体の光学像をより大きなスケールで示しており、マトリックスの光学品質は明らかに極めて良好である。
【0235】
図6は複合材フィルム中に二光子描画によって形成された3D金属銀マイクロ構造体のSEM像であり、洗浄によって表面上に自立構造体を生じることが明らかになった。
【0236】
例24:
銅構造体の多光子描画
フィルムF9(例16)を、標準的な仕方で、マイクロポジショナーに搭載した。レーザー出力波長を760nm(620mW)に設定し、実験中に変化させなかった。10倍のレンズを用いて銅の四角形を描画した。結果を光学イメージングにより調べた。
【0237】
図12は二光子励起によって描画した銅の四角形(200X200μm)の光学顕微鏡写真を示す。
【0238】
例25:
対照実験, F13
10mgのPVKを10mlのジクロロメタンに溶解し、1mgのAgBF4を同じ溶液に溶解した後、1mgの色素1を加えた。この溶液を75x25mmのガラススライド上にキャストした。
【0239】
このフィルムをUVチャンバーに入れ、15のランプ(各5W)を用い419nmで照射した。光学吸収を追った結果を図13にまとめる。ナノ粒子吸収帯の退色のみが観測された。
【0240】
図13は、色素および金属塩を含むが金属ナノ粒子の初期濃度なしのフィルムにおいて金属ナノ粒子の形成がないことを示す対照実験による試料のスペクトルを示す。露光後に金属ナノ粒子の吸収帯がないことに注意されたい。実線はフィルム13のスペクトルを示し、300nm付近の吸収帯はポリマー自身によるものであり、一方426の吸収帯は色素1に特有のものである。破線は30分間照射した同じフィルムを示し、点線は60分間のものである。
【0241】
キャラクタリゼーション
XPS
上記(例22)の手法に従って描画した金属銀ラインを、XPSスペクトル観測を用いて分析し、オージェパラメータを測定したところ726.2meVであり、Ag0について作表されている値に完全に一致した。描画したラインの像を、イメージングモードのスペクトロメータで記録できた。
【0242】
図7は1組のラインのXPSスペクトル(上)および像(下)を示す。スペクトルから得たオージェパラメータは726.2であり、ゼロ価の銀について作表されている値と同じである。
【0243】
SEM
SEMイメージングのために、構造体を非常に薄い金属層(Au/Ir合金)でコートした。図14は二光子励起を用いて描画した3D金属銀構造体のカマーのSEM写真を示す。描画された多層が明らかである。
【0244】
金属ナノ粒子成長のTEMキャラクタリゼーション
以下の実験のために、ナノ秒YAGレーザー(20Hz)の倍波光(532nm)を、単一ショット方式で用いた。アモルファスカーボンでコートした、複合材フィルムつき(推定厚さ50nm)の銅グリッドの1つは用いずに参照例として残し、第2のもので1つのレーザーパルスを受け、第3のもので3つのレーザーパルスを受けた。各パルスの平均エネルギーは120μJであった。参照グリッド中の粒子の平均半径は2.95nmであることがわかり;第2のグリッドでは4.95nmであり、第3のグリッドでは約9.5nmであった。さらに、単位面積あたりのナノ粒子数は増加していないことがわかった。
【0245】
図15は複合材中の前駆体として用いた、化学的に合成したナノ粒子(nAg1)のTEM像を示す。ナノ粒子試料をアセトン中で1分間超音波処理した後、1滴の溶液をアモルファスカーボンでコートした銅グリッド上で乾燥した。使用した顕微鏡はHitachi 8100であった。
【0246】
銀ラインの導電率
銀ラインが電気伝導性であることを示す試験を行った。1つの試験では、ボルト−オームメーターのプローブを銀の描画パッド上に接触させ、200mmの距離を隔てて〜80MΩのインピーダンスを測定した。良好な電気的なコンタクトが保証されなかったので、これはこの長さのラインのインピーダンスに関する上限を示す。
【0247】
チオール官能基化した色素をもつnAg7上での交換反応。一般的手法:
銀ナノ粒子をCH2Cl2に溶解して2時間撹拌し、完全溶解を確実にした。色素を加えてアルミホイルでカバーした。4日間撹拌した後、35℃に穏やかに加熱しながら真空中で溶媒を除去した。アセトンを加え、沈殿したナノ粒子を定量ろ紙上に収集し、溶媒が紫外光で蛍光の徴候がなくなるまでアセトンで洗浄した。ナノ粒子を空気中で乾燥し、元素分析によって分析した。
【0248】
例26:
111官能基化ナノ粒子(nAg12):
オクチルチオール/ドデシルチオールで保護した銀ナノ粒子(nAg7)(250mg), 4-((E)-2-{4-[(E)-2-(4-ホルミルフェニル)エテニル]-2-[(11-メルカプトウンデシル)オキシ]-5-メトキシフェニル}エテニル)ベンズアルデヒド(111)(14.1mg, 0.025mmol), CH2Cl2(500ml)。nAg12についての分析値(%)(二重分析): C: 11.78 (11.70), H: 2.07 (2.01), S: 2.76 (2.86), Ag: 76.62 (76.13)。
【0249】
例27
110官能基化ナノ粒子(nAg11):
オクチルチオール/ドデシルチオールで保護した銀ナノ粒子(nAg7)(150mg), 11-(2,5-ビス{(E)-2-[4-(ジエチルアミノ)フェニル]エテニル}-4-メトキシフェノキシ)ウンデカン-l-チオール(110)(50mg, 0.076mmol), CH2Cl2(300ml)。単離収量: 80.5mg。nAg11についての分析値(%)(二重分析): C: 19.41 (19.45), H: 2.85 (2.76), N: 0.62 (0.62), S: 3.06 (3.24), Ag: 71.10(71.06)。
【0250】
例28:
19官能基化ナノ粒子(nAg10):
オクチルチオール/ドデシルチオールで保護した銀ナノ粒子(nAg7)(150mg), 11-{4-メトキシ -2,5-ビス[(E)-2-(4-ニトロフェニル)エテニル]フェノキシ}-l-ウンデカンチオール(19)(46mg, 0.076mmol), CH2Cl2(300ml)。nAg10についての分析値(%)(二重分析): C: 20.38 (20.40), H: 2.41 (2.26), N: 0.99 (0.96), S: 2.98 (2.86), Ag: 63.92 (63.97)。
【0251】
例29:
19のみ官能基化ナノ粒子(nAg13):
116.5mgの硝酸銀を、0℃で〜75mlのエタノールに溶解した。138mgの19を〜100mlのアセトンと5mlのジクロロメタンに溶解した。色素溶液を硝酸銀溶液に加え、45分間撹拌した。75mlの飽和ホウ化水素ナトリウムのエタノール溶液を4時間かけて滴下して加えた。溶液をさらに3時間撹拌した。溶液を一晩冷蔵庫に貯蔵し、デカントした。沈殿をろ過し、水、アセトン、およびジクロロメタンで洗浄した。146.3mgの黒色粉末を収集した。nAg13についての分析値(%): C :41.00, H :4.10%, N: 2.88%, S: 3.57%, Ag: 37.51%。
【0252】
ナノ粒子のフィルムの組成および調製
例30:
F14色素結合ナノ粒子クラス(i)のフィルム。20nm厚さ
1mgのnAg12を20ccのクロロホルムに溶解し、2日間撹拌しておいた。2mgのAgBF4を10ccのアセトニトリルに溶解し、この溶液の0.1ccをナノ粒子溶液に加えた。0.5ccの混合溶液を25X25mmのITOコートしたガラススライド上にキャストした。
【0253】
例31:
F15色素結合ナノ粒子クラス(ii)のフィルム。20nm厚さ
1mgのnAg12を20ccのクロロホルムに溶解し、2日間撹拌しておいた。
【0254】
0.5ccの溶液を25X25mmのITOコートしたガラススライド上にキャストしてフィルムを形成した。
【0255】
例32:
F16色素結合ナノ粒子クラス(iii)のフィルム。20nm厚さ
1mgのnAg7を20ccのクロロホルムに溶解し、2日間撹拌しておいた。2mgのAgBF4を10ccのアセトニトリルに溶解し、この溶液の0.1ccをナノ粒子溶液に加えた。0.5ccの混合溶液を25X25mmのITOコートしたガラススライド上にキャストした。
【0256】
例33:
F17色素結合ナノ粒子クラス(vi)のフィルム。20nm厚さ
1mgのnAg7を20ccのクロロホルムに溶解し、2日間撹拌しておいた。0.5ccの溶液を25X25mmのITOコートしたガラススライド上にキャストしてフィルムを形成した。
【0257】
例34:
F18色素結合ナノ粒子クラス(i)のフィルム。サブ単分子膜
1mgのnAg12を20ccのクロロホルムに溶解し、2日間撹拌しておいた。2mgのAgBF4を10ccのアセトニトリルに溶解し、この溶液の0.1ccをナノ粒子溶液に加えた。2ccの混合溶液をクロロホルムで10倍に希釈し、2μlをSi3N4コートしたSi基板(1mm2)上に成膜した。
【0258】
例35:
F19色素結合ナノ粒子クラス(ii)のフィルム。サブ単分子膜
1mgのnAg12を20ccのクロロホルムに溶解し、2日間撹拌しておいた。2ccの溶液をクロロホルムで10倍に希釈し、2μlをSi3N4コートしたSi基板(1mm2)上に成膜した。
【0259】
例36:
F20色素結合ナノ粒子クラス(iii)のフィルム。サブ単分子膜
1mgのnAg7を20ccのクロロホルムに溶解し、2日間撹拌しておいた。2mgのAgBF4を10ccのアセトニトリルに溶解し、この溶液の0.1ccをナノ粒子溶液に加えた。2ccの混合溶液をクロロホルムで10倍に希釈し、2μlをSi3N4コートしたSi基板(1mm2)上に成膜した。
【0260】
例37:
F21色素結合ナノ粒子クラス(iv)のフィルム。サブ単分子膜
1mgのnAg7を20ccのクロロホルムに溶解し、2日間撹拌しておいた。2ccの溶液をクロロホルムで10倍に希釈し、2μlをSi3N4コートしたSi基板(1mm2)上に成膜した。
【0261】
例38:
F22ナノ粒子成長のためのポリマー系フィルム
1mgのnAg12を20ccのクロロホルムに溶解し、2日間撹拌しておいた。200.6mgのPVKおよび89mgのエチルカルバゾールを2ccのナノ粒子溶液に溶解し、1日間撹拌しておいた。210mgのAgBF4を1ccのアセトニトリルに溶解し、この溶液の0.1ccをナノ粒子/ポリマー溶液に加えた。全溶液を25X75mmのガラススライド上にキャストした。
【0262】
例39:
F23反射率のためのフィルム
271mgのPCUEMA, 20.5mgのエチルカルバゾール, 1.67mgのnAg6, および7.16mgの1dを6ccのクロロホルムに溶解し、一晩撹拌しておいた。27mgのAgBF4を0.2ccのアセトニトリルに溶解し、溶液に加えた。この混合溶液を1μmポアフィルターでろ過し、2ccのろ液を25X75mmのガラススライド上にキャストした。
【0263】
例40:
F24導電率のためのフィルム
2mgのnAg6を5ccのクロロホルムに溶解し、1日撹拌しておいた。この混合溶液を1mmポアフィルターでろ過した。21mgのPVK, 9mgのエチルカルバゾール,および1.3mgの1dを0.3ccのナノ粒子溶液に溶解して2時間撹拌しておいた。20mgのAgBF4を0.5ccのアセトニトリルに溶解し、この溶液の0.05ccをポリマーナノ粒子溶液に加えた。この溶液をテーラーメードガラススライド(25X25mm)の半分にキャストし、他の半分をテフロン(登録商標)テープでカバーした。
【0264】
このスライドは、その上に40の平行な銀ライン(150μm幅、15mm長さおよび50nm高さ)のパターンを有していた。ラインは32μm離れており、標準的な電子ビームリソグラフィ法を用いて製造した。
【0265】
例41:
F25銅マイクロ製造フィルム
66mgのポリ(メチルメタクリレート)PMMA, 1.1mgのリガンドでコートした銅ナノ粒子nCu1, 5mgのCuP(CH3)3I,および3mgの色素1dを0.6mlの脱気CHCl3に溶解し、アルゴン雰囲気下で25X25mmのガラススライド上にキャストすることにより、フィルムを形成した。
【0266】
例42:
F26銅マイクロ製造フィルム
66mgのPMMA, 1.1mgのリガンドでコートした金ナノ粒子nAu1, 5mgのAuP(CH3)3Br,および3mgの色素1dを0.6mlの脱気CHCl3に溶解し、アルゴン雰囲気下で25X25mmのガラススライド上にキャストすることにより、フィルムを形成した。
【0267】
例43:
F27ホログラフィーのためのフィルム
271mgのPVK, 20.5mgのエチルカルバゾール, 1.67mgのnAg6,および0.8mgの1dを6ccのクロロホルムに溶解し、一晩撹拌しておいた。27mgのAgBF4を0.2ccのアセトニトリルに溶解し、溶液に加えた。この混合溶液を1μmポアフィルターでろ過し、2ccのろ液を25X75mmのガラススライド上にキャストした。
【0268】
米国仮特許出願60/256,148(2000年12月15日出願)、および詳細な説明において引用した特許および文献は参照により本明細書に取り込まれる。
【0269】
上記の教示を考慮すれば、明らかに本発明の多くの修正および変更が可能である。したがって、添付した特許請求の範囲の範囲内において、本発明は本明細書に具体的に記載したのとは違ったやり方で実施することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0270】
【図面の簡単な説明】
【0271】
【図1】ケース1の成長プロセスの模式図。
【図2】露光金属イオンの還元についてのエネルギーレベル図。
【図3】ナノ粒子複合材における金属の特徴形状の描画の説明図。
【図4】ポリマーマトリックス中に描画した3D構造体(200×200×65μm)の光学透過像(平面図)。
【図5】図4に示したのと同じ構造体の拡大スケールでの光学像。
【図6】複合材フィルムに二光子描画によって形成した3D金属銀マイクロ構造体のSEM像。
【図7】1組の銀ラインのXPSスペクトルおよび像。
【図8】チオールで官能化したガラス基板に対する、リガンドでキャップした金属ナノ粒子の付着の模式図。
【図9】nsパルスレーザーからの1つまたは3つのレーザーパルスに露光したときの複合材フィルムにおける金属ナノ粒子の成長を示すTEM像。
【図10】二光子照射によって描画した銀リボン。
【図11】一光子励起を用いて描画した銀ライン。
【図12】二光子励起によって描画した銅の四角形の光学顕微鏡写真。
【図13】対照実験による試料のスペクトル。
【図14】二光子励起を用いて描画した3D金属銀構造体のカマーのSEM写真。
【図15】複合材中の前駆体として用いた、化学的に合成したナノ粒子のTEM像。
【図16】SEMを用いて描画してイメージ化した四角形およびラインの例。
【図17】ナノ粒子/塩複合材における銀ナノ粒子のレーザーおよび電子線誘起成長。
【図18】AgBF4およびnAg12でドープしたPVKフィルムに描画したラインの透過光学顕微鏡観察。
【図19】ポリマーナノ複合材中に埋め込んだ銀の四角形の反射像。
【図20】成長ワイヤの導電率を測定するために用いた、スライド/ポリマー/マイクロ製造ラインの構成の模式図。
【図21】I(V)曲線のプロット。
【図22】二光子走査レーザー露光によってナノ複合材中に製造した金属構造体。
【図23】ホログラムの書き込みおよび読み出しのための光学的な装置構成。
【図24】再現したホログラム像。
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ナノ粒子含有材料を用いこれを放射線に露光して金属の特徴形状(feature)をパターニングすることに関する。
【背景技術】
【0002】
現在利用可能な、金属パターンのマイクロ製造(micro fabrication)のための技術は以下のものを含む。
【0003】
1)マスクを使用し、成膜またはエッチングにより金属のパターンを規定する(Shacham-Diamand, Y., Inberg, A., Sverdlov, Y. & Croitoru, N., マイクロエレクトロニクスおよびマイクロエレクトロメカニカルシステム用途のための無電解銀および銀タングステン薄膜。 Journal of the Electrochemical Society, 147, 3345-3349 (2000));
2)金属フィルムをレーザーアブレーションしてパターンを形成する;
3)蒸気、溶液または固体前駆体からの金属の熱分解成膜を基にしたレーザー直接描画(Auerbach, A., レーザーによる溶液からの導体の成膜について, Journal of the Electrochemical Society, 132,130-132 (1985); Auerbach, A., ポリマーホストに錯化された金属塩を還元することによる光記録, Applied Physics Letters, 45, 939, 941 (1984); Auerbach, A., ホストポリマー中の銅(I)錯体の還元による銅導体, Applied Physics Letters, 47, 669-671 (1985); Auerbach, A., レーザーによるポリマーホスト中に錯化された金属塩を還元する方法, Journal of the Electrochemical Society, 132, 1437-1440 (1985));および
4)ハロゲン化銀系写真フィルムの露光と現像、それに続く無電解および電解めっき(Madou, M. & Florkey, J., マイクロバイオメディカルデバイスのバッチ製造から連続製造まで。 Chemical Reviews, 100, 2679-2691 (2000); M. Madou., マイクロファブリケーションの基礎 (CRC出版, BocaRaton, 1997); Madou, M., Otagawa, T., Tiemey, M. J., Joseph, J. & Oh, S. J., 薄膜および厚膜技術により製造された多層イオンデバイス。 Solid State lonics, 53-6,47-57 (1992))。
【0004】
現在利用可能な方法は、たとえば、以下の刊行物に記載されている。
【0005】
Southward, R. E. et al. ポリイミドマトリックス中の(4,4,4-トリフルオロ-l-(2-チエニル)-l,3-ブタンジオナト)銀(I)のインシテュ還元による表面メタライズされたポリマーフィルムの合成。Journal of Materials Research, 14, 2897-2904 (1999);
Southward, R. E. & Thompson, D. W. 逆CVD。メタライズされたポリマーフィルムへの新規な合成アプローチ。Advanced Materials, 11, 1043-1047 (1999);
Gu, S., Atanasova, P., Hampden-Smith, M. J. & Kodas, T. T., 銅−コバルト二元フィルムの化学気相成長。Thin Solid Films, 340, 45-52 (1999);
Jain, S., Gu, S., Hampden-Smifh, M. & Kodas, T. T., 複合材フィルムの合成。Chemical Vapor Deposition, 4, 253-257 (1998);
Gu, S., Yao, X. B., Hampden-Smith, M. J. & Kodas, T. T., 銅−コバルトフィルムの化学気相成長中のCu(hfac)(2)とCo-2(CO)(8)の反応。Chemistry of Materials, 10, 2145-2151 (1998);
Calvert, P. & Rieke, P., ポリマー中およびポリマー中での生物模倣ミネラリゼーション。Chemistry of Materials, 8, 1715-1727 (1996);
Hampden-Smith, M. J. & Kodas, T. T., 金属の化学気相成長。2. 金属の選択CVDの概要。Chemical Vapor Deposition, 1, 39-48 (1995);
Hampden-Smith, M. J. & Kodas, T. T., 金属の化学気相成長。1. CVDプロセスの概要。Chemical Vapor Deposition, 1, 8-23 (1995);
Xu, C. Y., Hampden-Smith, M. J. & Kodas, T. T., 二元合金(Ag(x)Pd(l)-X, Cu(x)Pd(l)-X, Ag(x)Cu(l)-X)フィルムのエアロゾルアシステッド化学気相成長(AACVD)とそれらの組成変化の研究。Chemistry of Materials, 7, 1539-1546 (1995);および
Naik, M. B., Gill. W. N., Wentorf, R. H. & Reeves, R. R., 銅(r)および銅(n)ベータジケトネートを用いた銅のCVD。Thin Solid Films, 262, 60-66 (1995)。
【0006】
上述した方法は二次元パターンの直接生成に限られ、三次元パターンは多層または多工程プロセスを用いて構築しなければならない。金属ラインのレーザー直接描画は、単工程の一次元または二次元マイクロ製造を可能にするが、主にレーザーエネルギーの吸収によって生成する高温での金属前駆体の熱分解を含んでいる。レーザー描画により金属ラインを形成するための、および三次元金属パターンを直接描画するための常温プロセスに大いに関心がもたれている。
【0007】
Swainson et al. は、一連の特許において(U.S. 4,466,080; U.S. 4,333,165; U.S. 4,238,840; and U.S. 4,288,861)、銀の光還元試薬として通常の色素たとえばメチレンブルーその他を溶液状態で用いることによる銀の光還元を記載している。このような銀イオンおよび色素溶液の光励起に続く表面の銀コーティングを記載している。「ある種の還元/キレート化試薬たとえばo-フェナントリロン」の存在が、系の重要な成分として記載されている。Swainsonは同様の方法に従うことによって固体マトリックス内部で連続的な金属相を描画することはできないとも記載している。事実、金属の光還元を含む節の序論では、過去には一般に好まれていた安定化したまたは固体媒質はあるレベル以上の物質的な複雑性をもつ生成物の製造には適していないと記載している。したがって、彼らの例は気体または液体の物理系を用いており、Swainsonによれば、それらの輸送能力のおかげで生成物の高い複雑性を可能にしている。固体状態において、本発明者らは実際にSwainsonの方法では連続的な金属の形成をもたらすことがないことを見出している。
【0008】
Whitesides et al. は、導電性金属の特徴形状(feature)の生成のための多段方法を、論文: Deng T., Arias, F., Ismagilov, R. F., Kenis, P. J. A. & Whitesides, G. M., 露光・現像したハロゲン化銀系写真フィルムを用いた金属マイクロ構造体の製造。Analytical Chemistry, 72, 645-651 (2000);およびU.S. 5,951,881の両方に記載している。Whitesides et al. によって記載された系と本発明の系との間の重要な違いは、彼らゼラチン中において金属ナノ粒子を光化学的に生成させ、次の工程において彼らは銀触媒上での銀の無電解めっきを用いてそれを現像し(Braun, E., Eichen, Y., Sivan, U. & Ben-Yoseph, G., 導電性銀ワイヤのDNA鋳型によるアセンブリおよび電極接続。Nature, 391, 775-778 (1998))、こうして連続的な金属構造体を形成している。さらに、実際の3Dパターンを得るためには、彼らはデバイスの多段構築を実施しなければならない。Whitesides et al. によって記載されているラインの最小寸法(30μm)は、本発明に従った方法によって達成できるそれよりもはるかに大きい。
【0009】
Reetz et al. は、論文および特許(発明の名称:「表面上でのナノ構造体の製造のための可溶なまたは安定化した金属または二金属クラスターを用いたリソグラフィープロセス」)において、界面活性剤で安定化した金属ナノ粒子から出発する、電子ビーム照射を経由した連続的な金属の特徴形状の製造を記載している(Reetz, M. T., Winter, M., Dumpich, G., Lohau, J. & Priedrichowski, S. 界面活性剤で安定化したPdおよびPd/Ptクラスターの電子ビーム誘起メタライゼーションによる金属および二金属ナノ構造体の製造。Journal of the American Chemical Society 119, 4539-4540 (1997); Dumpich. G., Lohau, J., Wassermann, E. F., Winter, M. & Reetz, M. T. 薄膜のトレンドおよび新規な応用413-415 (Transtec出版社, Zurich-Uetikon, 1998)。Bedson et al. は、保護した金クラスター、すなわちアルキルチオールでキャップした金ナノ粒子から出発する、金属ナノ構造体の電子ビーム描画を記載している。Bedson T.R., Nellist P.D., Palmer R.E., Wilcoxon J.P 保護した金クラスターを用いた金属ナノ構造体の直接電子ビーム描画。Microelectronic Engineering 53, 187-190 (2000))。
【0010】
これらに記載されたものと本発明との違いは以下のとおりである:
1) Reetz et al およびBedson et al のプロセスは、励起時の金属原子の生成に基づくナノ粒子の成長よりもむしろ、ナノ粒子の融合を含む;
2) 彼らの出発物質は単に安定化したナノ粒子からなるが、一方で我々は安定化したナノ粒子が成分の1つにすぎない複合材料の使用を教示している;
3) 彼らの照射方法は単なる電子ビーム照射であるが、一方で我々は好適な還元剤を用いれば我々の複合材料が広範な種々の励起放射線(電子ビームはそれらの1つにすぎない)に関して良好な前駆体になり得ることを教示している;および
4) 彼らのナノ粒子は安定化可溶化特性を与えるにすぎないリガンドでコートされているが、一方で金属の電子ビームパターニングのための組成物はナノ粒子、金属塩、および励起色素還元剤(これはナノ粒子上のリガンドに対する共有結合によって含まれていてもよい)をベースとする複合材である。 強い多光子吸収特性をもつ色素の組成物および励起方法は、Marder and Perry, U.S.特許6,267,913 「二光子またはより高次の吸収性光学材料および使用方法」によって開示されている。
【0011】
銀粒子の光生成を含む反応種の多光子生成に関して、いくつかの組成物および方法が、B.H. Cumpston, M. Lipson, S.R. Marder, J.W. Perry 「反応種の生成のための、二光子およびより高次の吸収性光学材料」U.S.特許出願60/082,128によって開示されている。U.S.特許出願60/082,128において開示されている方法は、この従来技術の出願が前駆体としての金属ナノ粒子の使用に言及していないため、本発明の方法と異なる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、1)単一プロセス工程での、金属の一次元、二次元または三次元マイクロ構造体の直接製造、および2)やはり単一プロセス工程での、一次元または二次元パターンへのナノメータースケールの金属パターンの製造のためのプロセスを提供することである。具体的には、本発明の目的は、レーザー描画により金属ラインを形成するための、および三次元パターンを直接描画するための低温プロセスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
これらのおよび他の目的は本発明によって達成され、第1の実施形態は、予備核形成した金属ナノ粒子の成長方法であって、
前記予備核形成した金属ナノ粒子を複合材にして準備し;
放射線への露光により金属イオンを還元することによって金属原子を生成し;
前記金属原子を前記予備核形成した金属ナノ粒子と反応させ、それによって金属ナノ粒子を成長させる
ことを具備した方法を含む。
【0014】
本発明の他の実施形態は、予備核形成した金属ナノ粒子の成長方法であって、
前記予備核形成した金属ナノ粒子、金属塩、色素およびポリマーマトリックスからフィルムを形成し;
放射線への露光により前記金属塩の金属イオンを還元することによって金属原子を生成し;
前記金属原子を前記予備核形成した金属ナノ粒子と反応させ、それによって金属ナノ粒子を成長させる
ことを具備した方法を含む。
【0015】
本発明のさらに他の実施形態は、
リガンドでコートした金属ナノ粒子;
色素;
金属塩;および
オプションで犠牲ドナー
を具備した金属ナノ粒子含有組成物を含む。
【0016】
本発明の他の実施形態は、
リガンドでコートした金属ナノ粒子;
色素;
金属塩;および
マトリックス
を具備した金属ナノ粒子含有組成物を含む。
【0017】
本発明のさらなる実施形態は、
上記の金属ナノ粒子含有組成物を放射線にさらし、それによって前記ナノ粒子の成長をもたらし;そして
連続的なまたは半連続的な金属相を形成する
ことを具備した方法を含む。
【0018】
本発明は、さらに、
金属ナノ粒子、金属塩、色素およびポリマーマトリックスからフィルムを形成し;そして
前記フィルムを放射線に露光し、それによって導電性金属のパターンを製造する
ことを具備した方法を含む。
【発明の効果】
【0019】
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、金属ナノ粒子含有フィルムを放射線への露光と関連させて使用し、このような粒子の成長および融合を活性化して、連続的な導電性金属パターンを形成することに関する。この方法では、1次元、2次元、または3次元の連続的な導電性金属ワイヤまたは他のパターンを形成することができる。
【0021】
新規な金属ナノ粒子系、ならびに三次元でのおよびミクロンからナノメーターのオーダーで高い解像度を伴う金属の露光方法は前例がない。ある種のナノ粒子含有組成物を種々の形態の励起にさらすことによって、これらの粒子の成長を生じさせることができ、最終的には連続的な(または半連続的な)金属相の形成をもたらす。パターン化した励起が対応する金属パターンをもたらす。2種の組成物に基づき、かつ自由空間光学露光、近接場光学露光またはイオン化放射線(たとえば走査プローブ顕微鏡の導電性チップからの電子)による露光を含む方法を、本明細書に記載している。
【0022】
本発明のプロセスにおいて、異なるソースからの放射線は異なる解像度をもたらす。たとえば、青色レーザーおよび一光子励起を用いて300nmまで縮小した特徴サイズ(feature size)を達成できる。近接場光源および一光子励起を用いてlOOnmまで縮小した、好ましくは5Onmまで縮小した特徴サイズを達成できる。二光子励起を用いた場合、特徴サイズをlOOnmまで、好ましくは5Onmまで縮小できる。電子ビームは、lOnm〜300mnの解像度を可能にする。集束イオンビームは、5nm〜10mnまで縮小した特徴サイズを可能にする。走査プローブ顕微鏡のチップを用いて5nmまで縮小した非常に小さい特徴サイズを達成できる。
【0023】
本発明による方法において用いるナノ粒子は、主に有機リガンドでコートしたものである。リガンドによって、我々は金属原子またはイオンに結合することができる孤立電子対をもつ少なくとも1つの原子をもつあらゆる分子またはイオンを意味する。リガンドによって、我々は金属原子またはイオンに結合することができる不飽和分子またはイオンも意味する。不飽和分子またはイオンは少なくとも1つのπ結合(これは隣接原子のp-原子軌道の横並びの重なりによって形成される結合である)を有する。銀、金、または銅ナノ粒子の有機リガンドの一例は、n-アルキルチオールリガンドであり、これは好ましくは4〜30炭素数のアルキル鎖長を有する。ナノ粒子のコーティングは、それらを普通の有機溶媒に可溶にし、溶液加工法による加工を可能にする。これらのコーティングは、粒子の金属コアの凝集および/または合体に対してナノ粒子を安定化させることもできる。この開示のいたるところで、リガンドでコートしたナノ粒子(ligand coated nanoparticle)という用語を用いてこのような安定化した粒子を記述する。さらに、本発明によれば、2またはそれ以上の異なる種類のリガンド、たとえば異なる長さの2つのアルキルチオールリガンドをもつナノ粒子は、1種類のアルキルチオールリガンドでコートしたナノ粒子(これらは嵌合(interdigitated)リガンドを伴う凝集物を形成することが知られている)と比較して、有機溶媒およびポリマーマトリックスたとえばポリ(ビニルカルバゾール)への高い溶解性とリガンドの嵌合(interdigitation)によって生じる凝集物の形成へと向かう傾向が低いことを示している。Voicu, R., Badia, A., Morin, F., Lennox, R.B. & Ellis, T. H., DSC, PTIR, およびC-13 NMRスペクトル観測によってモニターした自己組織化銀n-ドデカンチオレート層状物質の熱的挙動。Chemistry of Materials, 12, 2646-2652 (2000); Sandhyarani, N., Pradeep, T., Chakrabarti, J., Yousuf, M. & Sahu, H. K. 金属−クラスター超格子固体中における明瞭な液相。Physical Review B, 62, 8739-8742 (2000); Sandhyarani, N. & Pradeep, T., 合金クラスターの結晶固体。Chemistry of Materials, 12, 1755-1761 (2000); Badia, A. et al., 金ナノ粒子上での自己組織化単分子層。Chemistry-a European Journal, 1, 359-363 (1996))。金属ナノ粒子/ポリマーの複合材を形成するために、2またはそれ以上の種類のリガンドをもつナノ粒子を使用することは有利である。これは、より高濃度の粒子を達成することができ、凝集物の減少は単一種のアルキルチオールリガンドをもつナノ粒子を含む複合剤と比較して低い光学散乱をもたらすので複合材の光学品質がより高くなるためである。リガンドでコートしたナノ粒子は、容易に、スピンコートでき、有機フィルム中のドーパントとしてキャストまたはインサートでき、またはゾル−ゲル化学物質により調製された無機ガラス中に拡散できる。ここでは、2つのクラスの組成物を記述している。これらはマトリックスの性質において以下のように異なる:
クラスIは、リガンドでコートしたナノ粒子自身がマトリックスである組成物である。
【0024】
クラスIIは、ポリマー、ガラスまたは非常に粘稠な液体がマトリックスであり、ナノ粒子がドーパントである組成物である。
【0025】
適切な色素分子による金属イオンたとえば銀イオン(Ag+)の光化学還元は、Ag0原子の生成と微小なナノメーターサイズのAg0粒子の核形成をもたらすことが知られている。しかし、光化学的に連続的な導電性金属パターンを描画するという過去の試みに伴う重要な問題は、前駆体材料における金属イオンの供給が限られていること、および核形成中心を与えるために高い励起度が要求されることが連続的な金属の成長を非常に困難にすることである。形成された粒子は一般的には相互接続されておらず、導電パスを形成しない。この種の生成物に対しては、粒子を「現像」して導電ラインを形成するために、追加の湿式化学処理工程を行わなければならない。しかし、本発明によれば、前駆体物質中にリガンドでコートしたナノ粒子を組み込むことにより、金属の成長のための初期核形成サイトとともに金属のある程度の出発体積分率を与えることによって、この問題を克服する。十分に成長すると、ナノ粒子上のリガンドの表面被覆率は不十分になって他の隣接している成長中の粒子と融合してより大きな金属相を形成するのを防ぐことができなくなる。ナノ粒子上のリガンドの表面被覆率は不十分になって他の隣接している成長中の粒子と融合してより大きな金属相を形成するのを防ぐことができなくなる。したがって、十分に成長すると、ナノ粒子は高度に相互結合して良好な導電性の経路を形成する。ここで開示した方法は、導電性金属のマイクロ構造体の直接かつ簡単な光化学製造を、低温たとえば雰囲気の室温(21℃)で可能にする。
【0026】
本発明による方法において有効な1タイプの組成物は、a)金属ナノ粒子、b)金属塩およびc)色素(金属イオンの励起状態還元が可能で適当な光優秀特性を有する)、ならびにd)ポリマーホスト材料を含有する複合材を含む。この複合材の組成物に関しては多くの変形例が可能であり、1)金属ナノ粒子の種類、2)金属イオンの種類、3)金属塩の対イオン、4)色素の構造、5)ポリマーホストを使用するか否か、および6)使用した場合にポリマーホストの種類、を含む。色素という用語によって、我々は300nm〜1.5μmの範囲の波長で格子を吸収する分子またはイオンを意味する。組成物によっては、金属ナノ粒子/ポリマーのナノ複合材で良好な透過特性と、数百マイクロメーターまで、好ましくは500マイクロメーターまで、より好ましくは700マイクロメーターまで、最も好ましくは900マイクロメーターまでの大きな厚さをもつものを調製することができる。本発明による方法においては、このような複合材は、マスクを用いるかまたは高度に拘束した放射線のビームを適切に走査することによって、光学放射線またはイオン化放射ビームによってパターン化した仕方で露光し、導電性金属のパターンを製造することができる。
【0027】
本発明によれば、1 × 10-50 cm4 photon-1 sec-1に等しいかそれより大きい二光子吸収断面積を有し、金属イオンの励起状態還元が可能な色素分子を組み込んだ組成物を用いて導電性金属の三次元パターンを作ることができる。大きな二光子吸収断面積をもつ色素の例はU.S. 6,267,913に記載されており、参照により本明細書に含まれる。本発明の実施形態において、色素の二光子吸収帯に調整した、きちんと合焦した高強度のレーザービームを用いて、金属の光活性化成長を小さな体積に局在化する。高い3D空間解像度を達成する能力は、二光子の同時吸収の可能性が入射レーザー光の強度に二次関数的に(quadratically)依存するという事実によって生じる。厳密に合焦したビームを用いると、強度は焦点において最高で、焦点面からの距離(z)とともに二次関数的に(quadratically)減少する(距離がレイリー(Rayleigh)長より長い場合)。したがって、分子が励起する割合は、焦点からの距離とともに急激に(z-4に比例して)減少し、励起は焦点の周囲の小さい体積(λ3のオーダー、ここでλは入射ビームの波長)に閉じ込められる。試料または集束ビーム(focused beam)を走査し、強度を制御して露光の三次元パターンを精密にマップして、連続的な金属からなる3D構造体を製造することができる。
【0028】
好適な実施形態においては、Agナノ粒子(リガンドコーティングあり)を、AgBF4塩および電子の不足した二光子吸収色素と、ポリビニルカルバゾール中で組み合わせて、複合材を作る。金属パターンの描画のための放射線による露光の例では、730 nmの波長で100 fsのレーザーパルスをフィルム上に合焦することによって、露光点で反射性かつ導電性のAg金属の形成が生じた。好ましくは、レーザー波長は、一光子励起の場合には157nm〜1.5μmの範囲で、二光子励起の場合には300nm〜3.0μmの範囲である。レーザーのパルス幅は、二光子励起の場合には好ましくは≦1μsからlOfsである。フィルム内で焦点を移動させることによって、Ag金属の任意のパターンを描画することができる。マイクロスケールのライン、四角形および種々の3Dパターンの金属ラインの描画がこの方法によって達成された。材料特性の放射線誘起変化の分野における当業者に知られているように、放射線による露光の工程において多くの変形例が可能である。たとえば、電子ビーム、走査プローブチップからの電流、集束イオンビーム、γ線、x線、UV線、VUV線、中性子ビーム、および中性原子ビームを、本発明の方法において用いることができる。
【0029】
金属ナノ粒子の形成と成長
アルキルチオレートでコートした金属ナノ粒子の形成は核形成成長メカニズムを経由して進行することが知られている(Hostetler, M. J. et al., 1.5から5.2nmのコア径をもつアルキルチオレート金クラスター分子:コアサイズの関数としてのコアおよび単分子層の特性。Langmuir, 14, 17-30 (1998))。このメカニズムはAgについて下記に示すように第1の工程として層状のストイキオメトリックな化合物の形成を含み:
nAg+ + nRSH → (AgSR)n + H+
成長を含む第2の工程が続く。第2の工程は銀ゼロ原子の存在に帰すことができる:
(AgSR)n + mAg0 → Agn,(SR)n
ここでn'=n+m
または層状化合物自身の金属イオンを還元する試薬の存在に帰すことができる:
(AgSR)n → Agn(SR)m + m'RSSR
ここで2m'=n-m。
【0030】
いったん生成すると、これらのナノ粒子は標準的な方法によって処理できる可溶な物質である。特に、それらの有機溶媒への溶解性は、それに基づいてナノ粒子のフィルムまたは取り込んだナノ粒子をもつ固体マトリックスを作ることができる多様な処理法を可能にする。我々は、このようなナノ粒子フィルムまたは複合材によって、ナノ粒子の成長を駆動し、それらのサイズが増加し、かつ他のナノ粒子と接触して融合するようになるであろうことを教示している。このプロセスが十分な程度まで起こった場合、連続的な金属の特徴形状(単結晶または多結晶)が形成されるであろう。
【0031】
本発明の1つの重要な寄与は、本発明が予備核形成した金属ナノ粒子の固体状態での成長を可能にする材料および露光条件を教示していることである。予備核形成した金属ナノ粒子という用語によって、我々は前の合成プロセスで核形成させ成長させた金属ナノ粒子を意味する。これらの条件は、ナノ粒子を、それらがくずれて連続的な金属の特徴形状になる点まで成長することを可能にする。
【0032】
いくつかの成長プロセスを開示しており、金属原子(ゼロ酸化数)がそのイオンから生成する方法が変化する。
【0033】
第1のケース(ケース1)は、電子ビームを用いて金属イオンからの金属原子の生成を利用する。電子ビームは直接銀イオンを還元できるか、金属イオンを還元するラジカルアニオンを生成できるか、または分子をイオン化しその後に電子が金属イオンを還元することができる。
【0034】
ケース1の利点は達成できる金属ライン解像度の汎用性であり、それは数ミクロン(マスクと大きな電子ビームの使用による)から数ナノメーター(たとえば、導電性走査プローブチップの使用による)までの範囲にわたる。図1はケース1の成長プロセスの概略図である。上の図においては、注入した電子が金属イオンを還元し;下の部分においては、注入した電子がラジカルアニオンを生成し、続いてそれが金属イオンを還元する。特に、導電チップによる原子間力顕微鏡(顕微鏡のチップがタッピングモードでフィルムに接近する)を電子のソースとして用いることができる。チップをナノ粒子の表面から数ナノメートル以内に配置すると、チップはナノ粒子フィルムに電子を注入して厚さがわずかに数ナノメーターである金属ラインを生成する。
【0035】
第2のケース(ケース2)は、温度の局所的な上昇により金属イオンが還元されてゼロ酸化数になる場合であり、温度の局所的な上昇は色素分子による光エネルギー(好ましくはレーザービーム)の吸収と吸収したエネルギーの熱への転移によってもたらされる。材料の非線形局所加熱のための材料および方法はU.S. 6,322,931に記載されており、これは参照により本明細書に取り込まれる。
【0036】
第3のケース(ケース3)は、分子を光励起して励起状態を作り、分子の還元ポテンシャルを、金属イオンを還元できるのに十分な量まで高めることである(基底状態ではできない)。このプロセスにおいては、色素が酸化されるので、多くの場合、それを再生するために犠牲ドナーが必要とされるであろう。図2は、増感金属イオン還元の場合のエネルギーレベル図を示している。第1の工程(黒)において、電子は色素の最高被占分子軌道(HOMO)レベルからその励起状態の1つへ上がる。電子はこのレベルから、直接に金属イオン(赤)へ向かうか、または最初に電子輸送材料(青)の最低空軌道(LUMO)へ向かい、その後に金属イオンへ向かう。続いて、電子が犠牲ドナーのHOMOから色素のHOMOへ移動(緑)し、それによって中性色素を再生することもある。犠牲ドナーと電子輸送材料は必ずしも必要ではない。
【0037】
このケースにおいて達成できる特徴サイズ解像度は、光励起の種類に依存する。特徴サイズに関する下限は、一光子(ケース3a)照射の場合には数ミクロンになることがあって回折限界であり、多光子照射の場合にはしきい値効果(ケース3b)によって潜在的により小さく、近接場照射(ケース3c)の場合には数十ナノメーターのオーダーである。このケースでは、限界は近接場ソースの寸法とフィルムに対するその位置によって決定される。
【0038】
図3は、ナノ粒子複合材における金属の特徴形状の描画を示す。赤のコーンはレーザービームを示し、その末端のより暗いスポットはビームの焦点を示す。灰色の四角形はその中に色素と塩を含む複合フィルムであり、青い円はナノ粒子を示す。露光、成長および合体によって、金属パターンが形成される。上部の(a)において、ビームの焦点中に金属原子が形成され、それらはナノ粒子へ向かって移動し、その後(b)ナノ粒子が成長し始め、最後に(c)連続的な金属の特徴形状が形成される。このスキームは、ケース2および3の方法にも当てはまる。
【0039】
好ましい実施形態
好ましい例を以下の節で示し、金属の製造方法を説明する。これらの例は決して網羅的なものではなく、当業者にとっては本明細書に開示された発明の基本原理に基づいて他の手法を使用できることは明らかであろう。2つの異なるクラスの組成物を用いて金属の特徴形状を生成することができる。第1のクラスにおいては金属ナノ粒子はそれら自身のマトリックスとして働き、第2のクラスにおいては金属ナノ粒子はホストマトリックス中のドーパントである。
【0040】
クラスI
第1の実施形態では、材料は下記のものからなる。
【0041】
i)1またはそれ以上の種類の有機リガンドでコートした、リガンドでコートした金属ナノ粒子。ある場合には、上述したように有機リガンドの混合物を用いるのが有利である。加えて、(ii)(下記)に記載した材料を、粒子に結合している1またはそれ以上の種類の有機リガンドに結合させてもよい。
【0042】
ii)分子軌道エネルギーレベルが対応する金属塩の光還元に適しているか、または線形もしくは非線形の光吸収によって十分な熱を発生して金属塩の還元を起こす分子(色素)。この成分は、ナノ粒子マトリックス中に溶解するか、またはリガンドの1つとしてもしくは唯一のリガンドとしてナノ粒子に共有結合することができる;
iii)金属塩;および
iv)犠牲ドナー、すなわち、分子軌道レベルが上記(ii)に記載された色素のカチオン(金属イオンの光還元によりまたは電子ビーム露光により生成する)を還元するのに適切なエネルギーである分子。このようにして、最初の色素は再生可能で再び金属の還元剤として働くことができる。この成分はホストマトリックス構造体の一部であってもよい。ある場合には、この成分は必ずしも必要ないであろう。
【0043】
クラスI系の各々の成分の好ましい濃度(組成物の総重量を基礎として重量パーセント)は以下のとおりであり加えて合計100%になるように選ばれる。
【0044】
成分(i):55〜100%,全ての値およびそれらの間のサブ値を含み,特に60,65,70,75,80,85,90および95%を含む;
成分(ii):0〜15%,全ての値およびそれらの間のサブ値を含み,特に2,4,6,8,10,12および14%を含む(0はナノ粒子がそれらの外側シェルに色素終端リガンドを持つ場合に当たる);
成分(iii):0〜15%,全ての値およびそれらの間のサブ値を含み,特に2,4,6,8,10,12および14%を含む;
成分(iv):O〜10%,全ての値およびそれらの間のサブ値を含み,特に2,4,6,および8%を含む。
【0045】
クラスII
第2の実施形態においては、ある材料がホストマトリックスとして働き、その中に他の成分i)-iv)が分散しているか溶解している:
v)全ての他の成分を溶解するマトリックス。このマトリックスは以下のものでありうる:
a)ポリマー;
b)ガラス;
c)高粘稠の液体;
d)液晶材料もしくはポリマー、またはメゾスコピック相; および
e)多孔質の結晶またはアモルファスの固体。
【0046】
成分の(v)の(a)の場合、追加の成分(vi)を添加することが特に有利な状況がありうる:
vi)可塑剤、すなわちポリマーのガラス転移点を下げることができ、それによってその機械的性質を用途により好適にする分子。
【0047】
両方のケースにおいて、照射源が電子ビームである場合には、成分(ii)は必要ではない。
【0048】
クラスII系の各成分の好ましい濃度(組成物の総重量に基づく重量パーセントで)は以下のとおりであり、加えて合計が100%になるように選択される:
成分(i):0.05%〜25%,全ての値およびそれらの間のサブ値を含み,特に0.1,0.2,0.5,1,2,3,4,5,10,15および20%を含む;
成分(ii):O〜15%,全ての値およびそれらの間のサブ値を含み,特に2,4,6,8,10,12および14%(0はナノ粒子が外側シェルに色素終端リガンドを有するか、またはホストもしくは可塑剤がサブユニットとして好適な色素を有する);
成分(iii):0〜25%,全ての値およびそれらの間のサブ値を含み,特に5,10,15および20%を含む;
成分(iv):0〜60%,好ましくは20%〜60%,全ての値およびそれらの間のサブ値を含み,特に10,20,30,40および50%を含む;
成分(v):0.5〜99.5%,全ての値およびそれらの間のサブ値を含み,特に10,20,30,40,50,60,70および80%を含む;ならびに
成分(vi):0〜70%,全ての値およびそれらの間のサブ値を含み,特に10,20,30,40,50および60%を含む。
【0049】
成分の説明
成分(i):金属ナノ粒子
成分(i)の好ましい例は以下のとおりである:
i1)有機リガンドで被覆された、1〜200nm(径)の寸法を有する金属(たとえば、銀、金、銅、およびイリジウム)ナノ粒子(Kang, S. Y. & Kim, K., 一相系および二相系において調製されたドデカンチオール誘導銀ナノ粒子の比較研究。Langmuir, 14, 226-230 (1998); Brust, M., Fink, J., Bethell, D., Schiffrin, D. J. & Kiely, C., 官能基化された金ナノ粒子の合成と反応。Journal of the Chemical Society-Chemical Communications, 1655-1656 (1995); Brust, M., Walker, M., Bethell, D., Schiffrin, D. J. & Whyman, R., 二相液液系におけるチオール誘導金ナノ粒子の合成。Journal of the Chemical Society-Chemical Communications, 801 -802 (1994));
i2)有機リガンドで被覆された金属の合金からなるナノ粒子(Link, S., Burda, C., Wang, Z. L. & El-Sayed, M. A., 金および金−銀合金ナノ粒子の電子動力学:非平衡電子分布の影響および電子-フォトン緩和のサイズ依存性。Journal of Chemical Physics, 111, 1255-1264 (1999); Link, S., Wang, Z. L. & El-Sayed, M. A., 金−銀ナノ粒子の生成およびそれらの組成に関するプラズモン吸収の依存性。Journal of Physical Chemistry B, 103, 3529-3533 (1999));
i3)被覆されていない金属ナノ粒子(第2の実施形態の場合) (Heilmann, A. & Kreibig, U., 低温における埋め込み金属ナノ粒子の光学的性質。European Physical Journal-Applied Physics, 10, 193-202 (2000));および
i4)コアが半導体、金属酸化物、シリケート、ポリマー、またはバイオポリマーのナノ粒子であり、外側シェルが金属である金属ナノシェル(金属部は有機コーティングありまたはなし(第2の実施形態の場合))(Wiggins, J., Carpenter, E. E. & O'Connor, C. J., Au:Fe:Auナノオニオンの現象学的磁気モールディング。Journal of Applied Physics, 87, 5651-5653 (2000); Carpenter, E. E. et al., 金−鉄−金ナノ複合材の合成および磁気特性。Materials Science and Engineering a-Structural Materials Properties Microstructure and Processing, 286, 81-86 (2000))。
【0050】
成分il,i2,i3は有機リガンドによってコートされていてもよいナノ粒子からなる。これらのリガンドは本質的に、以下の式:A-B-Cにおける3つの部分からなる分子である。
【0051】
部分Aは、金属ナノ粒子表面に結合することができる孤立電子対を有する少なくとも1つの原子をもつ分子またはイオンのフラグメントであるか、または金属ナノ粒子表面に結合することができる不飽和の分子またはイオンのフラグメントであり、かつフラグメントをBに結合する接続点を含む。例として以下のものを含む: -S-, -O-, -O2C-, -S-S-R, -O3S-, -S2C-NR-, -O2C-NR-, P(R1R2)-, N(R1R2)-, O(R1)-, P(OR1)(OR2)O-, およびS2(R)-, ここでR, R1, およびR2は独立して-H, 1〜50の炭素原子を含む直鎖または枝分かれアルキル鎖、フェニルもしくは他のアリール基、およびヘテロ芳香族基からなる群より選択することができる。
【0052】
部分Bは、1つは部分Aと結合するため、および1つは部分Cと結合するための、2つの接続点をもつ有機フラグメントである。このフラグメントは、ナノ粒子の周りに嵩高さを与えて、そのナノ粒子を他のナノ粒子と融合することに対して安定化させるのを助ける作用を有する。部分Bは、無(単結合)でもよいし、独立して1〜50の炭素原子をもつメチレン鎖、1〜20のフェニルをもつフェニレン鎖、1〜20のチオフェニレンをもつチオフェニレン鎖、1〜20のフェニルビニレンをもつフェニレンビニレン鎖、2つの接続点をもつ枝分かれ炭化水素鎖、1〜20のエチレンオキシドをもつエチレンオキシド鎖、1〜20のビニルカルバゾール単位と鎖の各末端に接続点をもつオリゴ(ビニルカルバゾール)鎖からなる群より選択してもよい。
【0053】
部分Cは、フラグメントBに結合する接続点をもつ分子フラグメントである。この基を用いて、リガンドでコートしたナノ粒子の外面に特定の機能、たとえばマトリックスとの相溶性、光還元性、二光子吸収性、自己組織化特性、化学接続特性を付与することができる。部分Cは、独立して-H、フェニル、ナフチル、アントリル、他のアリール基、N-カルバゾイル、α-フルオレニル、-SiOR3,-SiCl3,可能性のある部分Aフラグメントとして記載したあらゆる基、光還元色素、二光子吸収発色団、多光子吸収発色団メチレンブルー、オリゴヌクレオチドストランド、ペプチド鎖、または可能性のある部分Bフラグメントとして記載したものであって、接続点の1つが水素で置換されたあらゆる基からなる群より選択することができる。
【0054】
本発明の好ましいナノ粒子は、2またはそれ以上の種類のリガンドであって、各々はそれ自身の特性基と機能をもつものの混合物を含んでいてもよい。
【0055】
明確化のために、クラス(il)に用いられたリガンドの具体例を以下に言及する。
【化1】
【化2】
【0056】
好ましい金属とリガンドとの組み合わせの例は以下のとおりである。
【表1】
【0057】
成分(ii)光還元色素
成分(ii)の好ましい例は以下のとおりである。
【0058】
クラス1:中心対称ビス(アルデヒド)−ビス(スチリル)ベンゼン
【化3】
【0059】
クラス2:非中心対称ビス(アルデヒド)−ビス(スチリル)ベンゼン
【化4】
【0060】
クラス3:中心対称アクセプタ終端ビス(スチリル)ベンゼン
【化5】
【0061】
クラス4:非中心対称アクセプタ終端ビス(スチリル)ベンゼン
【化6】
【0062】
クラス5:他の色素
【化7】
【0063】
色素は、U.S. 5,804,101; U.S.6,090,332; U.S 5,670,090; U.S. 5,670,091およびU.S. 5,500,156(これらは参照により本明細書に含まれる)に記載されているようなドナー−アクセプタ色素でありうる。
【0064】
成分(iii:)金属塩
成分(iii)の好ましい例は、あらゆる金属(I)可溶塩であり、銀テトラフルオロボレート(AgBF4); 銀ヘキサフルオロアンチモネート(AgSbF6); 銀ジエチルジチオカルバメート(C3H10NS2Ag); 硝酸銀(AgNO3); 亜リン酸トリメチルヨウ化第一銅(ICuP(CH3)3); および亜リン酸クロロトリメチル金(ClAuP(OCH3)3)を含む。
【0065】
成分iv):マトリックス
この成分の主要な要求は、全ての他の成分を溶解し、均質な複合材を形成する能力をもつことである。
【0066】
成分(v)の好ましい例は、
a)ポリマーa1:ポリ(9-ビニルカルバゾール)
【化8】
【0067】
以下に示した例の多くにおいて、実際に使用したポリマーは第2標準(Aldrich chemicals)であり、Mn=69,000であった;
ポリマーa2: ポリ(2-{[11-(9H-カルバゾール-9-イル)ウンデカノイル]オキシ}エチル-2-メチルアクリレート)PCUEMA
【化9】
【0068】
ポリマーa3: ポリ(4-クロロスチレン);および
ポリマーa4: ポリ(メチルメタクリレート) PMMA;
b)SiOx、有機的に修飾されたSiOx材料、TiOx、(SiOx)n(TiOx)m
c)粘稠な液体ホスト
【化10】
【0069】
他の成分
成分(iv)および成分(vi)の好ましい例は、ポリビニルカルバゾールの良好な可塑剤であり、犠牲ドナーであるエチルカルバゾールと;
【化11】
【0070】
良好な可塑剤および犠牲ドナーである末端ジ(9-カルバゾイル)アルカンと;
【化12】
【0071】
および犠牲ドナーである下記の分子である。
【化13】
【0072】
本発明の用途は以下のものを含む:集積光学系における光路に適した金属線回折格子の描画、電気化学または生物学における応用に適したマイクロ電極アレイのパターニング、たとえばチップ上のセキュリティコードのハード配線におけるおよびチップ修復における集積回路の相互接続に適した金属配線のパターニング。さらなる用途は以下のものを含む:ナノエレクトロニクス用途に適した、ナノメーターサイズの金属配線、単一電子トランジスタ、および他の部品の製造;多層集積回路における電子部品の3D相互接続;マイクロサージカル用途に適した金属デバイスの製造;テラヘルツ放射線に適したアンテナおよびそのアレイ、薄膜金属フォトニック結晶およびフォトニック結晶導波路内の異なる入射角をもつミラーの形成、および金属マイクロセンサー、金属マイクロ共振器、およびマイクロエレクトロメカニカル構造体。本発明は、ナノスケールで単一分子系の電子デバイスの配線に用いることができる。
【0073】
さらに、本発明は現在利用できる技術に対して以下の利点を提供する:
i)連続的な金属ラインを、パターンの形状に関してほとんど制限なしにマイクロスケールまたはナノスケールの解像度で、三次元パターンに形成することができる。
【0074】
ii)このプロセスは熱分解プロセスにおいて必要とされるような高温の発生を必要とせず、このためナノスケールのデバイスの集積または熱的に損傷しやすい基板に利用できる。
【0075】
iii)金属パターンまたは構造体を、広い種類の基板上に製造できる。好ましい基板は、シリコン、ガラスまたはプラスチック基板であり、これらの全てはたとえばインジウム錫酸化物(ITO)で被覆してもよい。さらに、好ましい基板はAu, Ag, Cu, Al, SiOx, ITO, ヒドロゲルまたは生体適合性ポリマーである。
【0076】
iv)この材料系は、化学気相成長において一般に用いられるような高い毒性の気相有機金属前駆体と対照的に、処理するのが容易で取り扱うのが簡単である。
【0077】
v)不活性雰囲気を必要としない。
【0078】
vi)高真空設備を必要としない。
【0079】
vii)このプロセスはしきい値があるという事実は、試料を周囲の照明および熱条件下で取り扱うことを可能にし、このため試料に並外れた長期安定性(たとえば暗所での8か月の貯蔵寿命)を与える。
【0080】
しかし、本発明のプロセスは周囲温度に限定されない。クラスIの組成物を用いる場合、-270から200℃までの温度範囲が好ましい。クラスIIの組成物を用いる場合、-250から150℃の温度範囲が好ましい。
【0081】
したがって、本発明は、下記の例20および21に記載したような低エネルギーおよび上述したような低温を必要とする材料において三次元金属パターンを直接的に描画するのに適した新規なプロセスに関する。使用される金属ナノ粒子の種類および色素の種類に関する組成物の汎用性は、特定用途に適した材料の設計に多くの可能性を提供する。
【0082】
本発明に基づいて具体化できる多くの可能な用途がある。
【0083】
1つの組の用途は分散したナノ粒子(1-100nm)、分散した微小金属アイランド(100nm-100μm)、擬連続(浸出)金属または連続金属ラインの存在によって生成したマトリックスにおける物性の大きな変化を引き起こす能力を必要とする。これらの変形は光学特性たとえば固体マトリックスの屈折率を変化させ、このような特性の変化は、光学データ記憶に、回折光学デバイスの作製に、または集積光学系に適した導波領域の画定に、または集積光学系における光波のための金属ライン回折格子の描画に有用である。
【0084】
本発明は多くのフォーマットの光学データ記憶に用いることができる。二光子励起を用いて金属ナノ粒子または金属アイランドを含む領域からなるビットを書き込み、情報を3Dで記憶することができる。
【0085】
光学データ記憶の他の例は、感光性金属ナノ粒子複合材を書き込み可能コンパクトディスク類似の用途に適した光学記録層として用いる場合である。
【0086】
非常に魅力的な用途は、近接場光源を用いて非常に微小なビット(〜100mnまたはそれ以下)を書き込む、超高密度2D光学データ記憶のためのものである。
【0087】
他の光学用途は、反射偏光子、スイッチャブル光子、およびマイクロミラーを含む。
【0088】
本発明の第2の組の用途は導電性金属の特徴形状の直接パターニングを用いる。それらは以下のものを含む:電気化学または生物学における用途に適したマイクロ電極アレイのパターニング、たとえばチップ上のセキュリティコードのハード配線およびチップ修復における集積回路相互接続に適した金属配線のパターニング。さらなる用途は以下のものを含む:ナノエレクトロニクス用途に適した、ナノメーターサイズの金属配線、単一電子トランジスタ、および他の部品の製造;多層集積回路における電子部品の3D相互接続;柔軟材料たとえば有機発光ダイオードまたは有機電界効果トランジスタ上のコンタクトの描画;マイクロサージカル用途に適した金属デバイスたとえばニードルおよびステントの製造(McAllister, D. V., Alien, M. G. & Prausnitz, M. R., マイクロ製造された遺伝子・ドラッグデリバリーのためのマイクロニードル。Annual Review of Biomedical Engineering, 2, 289-313 (2000); Polla, D. L. et al., 医療におけるマイクロデバイス。Annual Review of Biomedical Engineering. 2, 551-576 (2000); Santini, J. T., Richards, A. C., Scheldt, R., Cima, M. J. & Langer, R., 制御されたドラッグデリバリーデバイスとしてのマイクロチップ。Angewandte Chemie-International Edition, 39, 2397-2407 (2000); Rymuza, Z., MEMS表面のトライボロジー特性および機械的特性を制御する。パート1:批評的な総説。Microsystem Technologies, 5, 173-180 (1999));ならびにマイクロエレクトロメカニカル構造体(Walker, J. A., テレコミュニケーションネットワークにおけるMEMSの未来。Journal of Micromechanics and Microengineering, 10, R1-R7 (2000); Spearing, S. M., マイクロメカニカルシステム(MEMS)における材料の問題。Acta Materialia, 48, 179-196 (2000); Lofdahl, L. & Gad-el-Hak, M., 乱流および流れの制御におけるMEMS応用。Progress in Aerospace Sciences, 35, 101-203 (1999))。本発明の材料および方法は、ナノスケールで単一分子系の電子デバイスの描画に用いることができる(Quake, S. R. & Scherer, A., 柔軟材料を用いたマイクロ製造からナノ製造まで。Science, 290, 1536-1540 (2000))。
【0089】
さらに他の用途は、電気的および光学的な特性の両方が利用される電気光学用途における描画された金属の特徴形状の使用を含みうる。例としては、回折格子(これは、その配列が印加電場によって制御される液晶材料によって埋め戻される)として作用するように成形された電極アレイがありうる。液晶の配列は回折格子の光学特性を制御するであろう。
【0090】
また、導電性金属の特徴形状の描画は、マイクロ流体素子における応用に有利である。たとえば、流体流れを制御するため、電気泳動的分離を駆動するため、電気化学反応を駆動するため、またはチャネルの内容物の誘電特性をモニターするための、電極形成されたチャネルの製造においてである。
【0091】
本発明の他の用途は、鋳型のパターニングまたは製造である(Ostuni, E., Yan, L. & Whitesides, G. M., たんぱく質および細胞と、金および銀上のアルカノチオレートの自己組織化単分子層との相互作用。Colloids and Surfaces B-Biointel faces, 15, 3-30 (1999))。この鋳型は他の材料または化合物の堆積、自己組織化、または鋳型成長に用いることができる。たとえば、パターン化された金属表面は、自己組織化分子たとえばチオール、カルボン酸または他の官能基化された化合物のパターン化アレイの生成に用いることができる。気相、液相または固相の反応物を用いて金属表面で反応を駆動することができる。また、パターン化された表面を、化学反応のパターン化された触媒に利用することができる。
【0092】
自由な形態で金属の特徴形状を描画できるという能力のさらに他の用途は、ニューロンまたは他の種類の細胞の成長および相互接続を指示するために用いることができる電極パターンを形成することである。
【0093】
本発明を一般的に説明してきたが、さらなる理解は具体的な例を参照することによって得られる。これらの例は、説明のみの目的で本明細書に示されており、別に明示しない限り限定的であることを意図していない。
【0094】
実施例
実施例の議論
以下の議論はいくつかの重要な実験に関する一連の例を含み、実施例の欄の理解を助けることを意図している。
【0095】
この議論は主に多光子照射(クラスII、ケース3)によって3D金属パターンを描画する可能性に焦点を合わせている。これは上述した全てのクラスおよびケースについてのよいテストになる。事実、本発明に含まれる多くの工程は記載されている全ての種々のケースに共通している。すなわちそれらは、
1.高度に可溶性のナノ粒子の合成、
2.均一で光学品質のマトリックスの調製、および
3.描画後の加工およびキャラクタリゼーションである。
【0096】
これらの工程は全ての様々な種類の描画プロセスに共通である。これらの部分に含まれる問題の解決法が、本発明の大部分を構成する。
【0097】
良好な光学品質をもつ均質なマトリックスを生成するためには、(i)全ての成分を溶解することができる溶媒または溶媒混合物および(ii)全ての成分を固体状態で溶解することができるマトリックス(ポリマー)を見つけることが必要である。好ましい溶媒はクロロホルム、ジクロロメタン、アセトニトリル、アセトン、水、ヘキサン、ヘプタン、ペンタン、トルエン、ジクロロベンゼン、ジクロロエタンおよびこれらの混合物である。体積でクロロホルム/アセトニトリル20/1の溶液はこの目的にために最も良好なものであることがわかっており、ポリマーa1およびa4は広い種々の銀塩を効果的に溶解し、一方でPMMAは銅塩を溶解する能力を示す。より複雑な問題は、有機溶媒および固体マトリックスの両方へのナノ粒子の溶解性である。
【0098】
ナノ粒子に結合することができる広い種類のリガンドがあるにもかかわらず、ナノ粒子の溶解性は限定されていることがわかっている。この問題を克服するためには、リガンドの混合物をもつナノ粒子を用いることが重要である。好適なリガンドの例は上に示した。リガンドの混合物を使用することは、系にエントロピーを加え、貧溶解性の主な原因であるリガンド間の嵌合を主に制限する(Voicu, R., Badia, A., Morin, F., Lennox, R. B. & Ellis, T. H., DSC, PTIR, およびC-13 NMRスペクトル観測によってモニターした自己組織化銀n-ドデカンチオレート層状物質の熱的挙動。Chemistly of Materials, 12, 2646-2652 (2000); Sandhyarani, N., Pradeep, T., Chakrabarti, J., Yousuf, M. & Sahu, H. KL., 金属−クラスター超格子固体中における明瞭な液相。Physical Review B, 62, 8739-8742 (2000); Sandhyarani, N. & Pradeep, T., 合金クラスターの結晶固体。Chemistly of Materials, 12, 1755-1761 (2000); Badia, A. et al., 金ナノ粒子上での自己組織化単分子層。Chemistry-a European Journal, 2, 359-363 (1996))。加えて、特定の基を用いて、粒子をそのホストにより可溶にする、たとえばリガンドの1つとしてカルバゾール終端アルカンチオールを用いて粒子をポリビニルカルバゾールに可溶にする。
【0099】
これらのナノ粒子を合成する最もよい方法は、エタノール中での一相反応を用いることであり(例1)、異なるリガンドを異なる割合で単純に加えることが、それらの外側シェルに異なるリガンドをもつ粒子を極めて低い溶融エンタルピーで得るのに有効である(例2)。
【0100】
粒子が十分に可溶である場合、フィルムのキャスティングが比較的容易になり、溶媒の蒸発(例8)またはスピンコーティング(例17)によって行うことができる。第1のケースにおいては、達成できる厚さの範囲は、数ミクロン(例13)から200μmまでである。ポリマーa1において達成できる最大の銀塩充填比は銀テトラフルオロボレートの場合で15%(重量基準);同じポリマー中において色素1dの場合で5%が最大であり、nAg6の場合で3%が最大である(例9)。充填費の最大値は、スピンコーティング法の場合にはわずかに高い。
【0101】
金属ナノ粒子の固相成長を、マトリックス中の銀イオンの光化学還元を含む一連の実験により探求し証明した。カルバゾール基は犠牲アノードの役割も果たし、したがって銀を少量の光還元色素でドープする可能性を与える。
【0102】
ポリビニルカルアゾールは約200℃のTgを有するので、可塑剤を用いてガラス転移点を低下させて室温に近づける。このポリマーに適したよく知られた可塑剤であるエチルカルバゾールを用いている。最もよく用いたフィルムの組成範囲は(全て重量パーセントで)30-50%の可塑剤、3-5%の色素1d、10-15%のAgBF4、0.2-3%のnAg6である。可塑剤の量は全ての値およびそれらの間のサブ値、特に重量で33,36,39,42,45および48%を含む。色素の量は全ての値およびそれらの間のサブ値、特に重量で3.2; 3.4; 3.6; 3.8; 4.0; 4.2; 4.4; 4.6および4.8%を含む。AgBF4の量は全ての値およびそれらの間のサブ値、特に重量で10.5; 11; 11.5; 12, 12.5; 13; 13.5; 14および14.5%を含む。nAg6の量は全ての値およびそれらの間のサブ値、特に重量で0.4; 0.6; 0.8; 1.0; 1.2; 1.4; 1.6; 1.8; 2.0; 2.2; 2.4; 2.6および2.8%を含む。
【0103】
同じ組成をもつがナノ粒子をもたない参照フィルムも作製した。このようにして作製した全てのフィルムは、良好な光学品質を有し、目視検査によれば完全に均質であるが、いくつかの欠陥を観察でき、顕微鏡下(60倍拡大)ではどれも完全ではなかった。
【0104】
全てのフィルムをきちんと合焦した赤外光源(700から800nmまでlOOfsパルス長)で照射し、銀ライン(例22)およびまたはアイランド(特に四角形)を生成したが、対応する参照フィルムは目に見える特徴形状を何ら生成しなかった。光学スペクトル観測またはTEM顕微鏡観測を用いて参照フィルムをさらに検査したところ、サイズの分散が大きい微小なナノ粒子が生成しているという結論に至った。金属ナノ粒子を含むポリマーフィルム中に生成した特徴形状は、適当な溶媒混合物中でマトリックスを溶解することによってマトリックスから分離した後、XPS(例10)およびSEM法(例9)によって調べることができた。
【0105】
XPSの結果は、生成した特徴形状が主にゼロ価(金属)にある銀からなることを示している。後者の方法は三次元の特徴形状を形成することができ、生成したラインがミクロンレベルまで連続的であることを示している。
【0106】
より複雑な実験を行い、われわれのプロセスをTEM顕微鏡で調べた:3つの同じフィルムは銅グリッドのキャストであり(例11)、それらの2つをナノ秒レーザー(532 nm)による照射にさらし、第1のものを1回のレーザーショット(125 mJ)だけ照射し、第2のものは3回のショットだけ照射した。
【0107】
結果は、1回のレーザーショット後に粒子の平均半径が2倍になったが、単位面積あたりのその数は同じままであるというものであり、全ては提案したメカニズムに一致した(図9)。
【0108】
近接場励起を含む多くの変形が可能である。この変形の実施可能性を調べるために、描画に要するしきい値パワーを調べ、一光子励起の場合に約108 W/m2(例20)であり二光子励起の場合に約109 W/m2(例21)であることがわかった。パワーのしきい値は近接場描画の場合に得られる値に一致している。
【0109】
実験の項は、異なる種類のポリマー(例15)またはマトリックス、色素(例14)、塩またはナノ粒子(例12)を用いて調製された、多くの異なる種類のフィルムを含んでいる。
【0110】
現像工程における重要な問題が解決された。構造体と基板との間に化学結合を与えるために、基板を官能基化する二段階法を開発した。第1の工程において、チオール終端分子の単分子層をガラス基板に形成する。この単分子層はトリメトキシシラン基を介して基板に結合している。第2の工程において、ナノ粒子の単分子層を第1の単分子層上に導入し、粒子をチオールに化学的に結合する。この種の官能基化された基板は、接着性と現像工程における成功が非常に改善された。図8はリガンドでキャップした金属ナノ粒子のチオール官能基化されたガラス基板への付着の模式図である。
【0111】
前駆体中の銀ナノ粒子の存在の重要性を調べるために、我々はUVチャンバー中において1時間以上フィルムF1を照射し(例13)光吸収スペクトル中にナノ粒子の特性吸収が生じるかどうかまたは金属の特徴形状が現れるかどうかを見た。色素の吸収帯の退色のみが観察され、極度な照射条件でも、連続的な銀金属またはナノ粒子の形成(光吸収によって証明される)の証拠は全く観察されなかった。
【0112】
連続的な金属の特徴形状の製造に適した官能基化された金属ナノ粒子
銀ナノ粒子を、種々の有機リガンドのコーティングにより合成した。リガンドのいくつかは、励起状態から、銀イオンを中性原子へ還元することができる基を有していた。これらのリガンドの構造を下の模式図に示す。3つの色素リガンドを用いて電子活性および光活性のナノ粒子を合成している。いくつかの実験で用いた粒子の名称とリガンドシェル組成を下の凡例にリストする。
【化14】
【表2】
【0113】
リガンドでコートした粒子の合成は位置交換反応であった(Hostetler, M. J., Templeton, A. C. & Murray, R. W. 単分子膜で保護された金クラスター分子上の位置交換反応の動力学。Langmuir 15, 3782-3789 (1999))。nAg7の溶液と所望のリガンドから出発してその外側シェルに色素分子をもつ粒子を合成することができた。別の合成を用いて色素結合リガンドによって完全にコートされたナノ粒子を得た(例29)。この場合、銀イオンをリガンドI9の存在下でNaBH4によって還元した。
【0114】
これらの粒子と銀塩との混合物は、溶液中および固体状態の両方において、励起(光または電子ビーム)すると、より大きな粒子(連続になる限界まで)を生じさせた。いくつかの例(これらの粒子の全潜在能力を代表しているわけではないが)を以下において議論する。これらの材料系の主要な利点は、これらの粒子のフィルムが連続的な金属の特徴形状の電子ビームおよび光誘起成長に適した前駆体であることにある。
【0115】
色素でコートした粒子を含む複合材料の反応性を調べるために、一連を実験を4つのフィルムの組に関して行った:
リガンドシェル上に還元性色素をもつナノ粒子(nAg11)と2% wt.の銀塩(AgBF4)を含むフィルム。(F14, F18)
リガンドシェル上に還元性色素をもつナノ粒子(nAg11)で銀塩のないフィルム。(F15, F19)
リガンドシェル上に還元性色素のないナノ粒子(nAg7)と2% wt.の銀塩(AgBF4)のフィルム。(F16, F20)
リガンドシェル上に還元性色素のないナノ粒子(nAg7)で銀塩のないフィルム。(F17, F21)
約20nmの厚さをもつフィルムの反応性を操作電子顕微鏡(SEM)で調べた。フィルム(i)は、連続的な金属の特徴形状に適した効率的な前駆体であることを示した。事実、四角形とラインの組み合わせを、顕微鏡の電子ビームを用いて描画することができた。未反応のフィルムをパターニング後にジクロロメタンで洗い流して、残っている金属のパターンをあらわにすることができた。洗浄前後の構造を図16に示す。図16の左の像はF14に関してSEMを用いて描画およびイメージ化した四角形とラインの例を示す。右の像は未露光のフィルムを除去した後にSEMによりイメージ化した四角形とラインの一部の例を示す。示した全ての他のフィルムは電子ビームパターニングに関して不活性であった。
【0116】
ガラス基板上にキャストした同じフィルムをレーザービームで励起して、金属パターニングに対するそれらの光化学反応性を調べた。フィルム(i)上に、可視光(488nm, 50mW, 一光子励起)および赤外光(730nm, 250mW, 二光子励起)の両方を用いて、一連のラインを描画した。洗浄により未反応のナノ粒子を除去する前後に描画したパターンをイメージ化した。フィルム(i)は再び、金属パターンを形成するにあたって光化学的に活性であることを示した。フィルム(ii)も同様に活性であることを示したが、より高い入射レーザーパワー(一光子励起および二光子励起に対して、それぞれ80 および 400 mW)においてのみであった。全てのラインは2μm/sの速度で描画した。フィルムiiiおよびivは金属をパターニングする際に光化学的に活性ではなかった。
【0117】
フィルムに関する同様の実験を、透過型電子顕微鏡(TEM)の電子ビームを用い、支持用Si3N4グリッド上にキャストしたフィルムで行った。フィルムのキャスティングのための溶液は、SEM試験のために用いたものと同じであったが、単分子膜以下のフィルムを調製するために10倍に希釈した。これらのフィルムのいくつかの部分において、粒子の稠密な領域を見出すことができ、他の部分において分離されたナノ粒子が観察された。4つのフィルムの全てにおいて、隣接する粒子のない孤立したナノ粒子は、電子ビーム露光の間に意味のある形態上の変化を示さなかった。フィルム(iii)および(iv)は粒子がより稠密な領域でさえ、形態上の変化を示さなかった。フィルム(i)および(ii)は、それらの稠密な領域において、銀粒子が成長し、それらが合体して、半連続的な領域を形成することを示した。フィルム(i)は電子照射したで速やかに反応することを示した。フィルム(ii)では反応はより遅かった。
【0118】
光化学反応性を、4つの別々のグリッド上にキャストした同じ組のフィルムに関して調べた。全てのフィルムを最初にTEMですばやくイメージ化して初期参照像を得た後、それらを488 nmの光で240分間、1.5 W/cm2の強度で照射した。その後、フィルムをTEMで再びイメージ化した。フィルム(i)のみが形態上の変化を示した。図17は電子ビーム誘起および光誘起の成長後のフィルム (i) の平均的な変化を示している。図17はナノ粒子/塩複合材における、レーザービーム誘起および電子ビーム誘起の銀ナノ粒子成長を示している。aはレーザー露光前の複合材のTEM像であり、6 nmの平均半径をもつ規則的なナノ粒子のドメインを示している。bは488nmで240分間、1.5W/cm2の強度での一光子励起 (銀塩の消耗を確実にするため)後の像であり、粒子の成長を示している。cは電子ビーム露光前の複合材の像であり、aと同じ平均半径を持つ規則的なナノ粒子のドメインを示している。dはTEM装置での15分間の電子ビーム照射後の複合材の像であり、粒子の成長とほとんど合体した金属ドメインの形成を示している。スケールバーは50nmである。
【0119】
同じ組の試験を、nAg1O, nAg12およびnAg13金属粒子をベースとするフィルムで繰り返したところ、結果は上で説明したのと同一であった。
【0120】
nAg12と銀塩を含む厚いポリビニルカルバゾール(PVK)フィルム(F22)をキャストして、このような官能基化したナノ粒子をベースとする複合材料が連続的な金属の特徴形状の成長に適した前駆体として機能するかどうかを調べた。フィルムをマイクロ製造ステージ上に搭載し、730nmの光(80mW)で照射した。銀のラインを描画できることがわかり、このラインを光学顕微鏡でイメージ化した(図18)。図18はAgBF4およびnAg12でドープしたPVKフィルム(F22)に描画したラインの透過光学顕微鏡像を示している。スケールバーは30μmである。
【0121】
ポリマーマトリックス中における反射性および導電性の金属アイランドおよびワイヤの成長
例39および40に説明した組成物によるフィルムを、二光子マイクロ製造のためにガラススライド上にキャストした。銀の四角形パターンを、ラスター式のレーザー走査を用いて描画した。これらの四角形の反射率を、He-Neレーザー(632.8nm)で試験した。入射パワーは2mWであり、入射角は約30°であった。描画した銀の四角形は25%の反射率を示したが、未露光のポリマー複合材は3%の反射率を示した。四角形の反射像を、共焦点顕微鏡(514.5nm)および514.5nmの干渉フィルター(走査ヘッドと顕微鏡との間に設置し、蛍光を阻止して反射光を検出器へと通過させる)を用いて撮影し、図19に示す。これは、ポリマーナノ複合材中に埋め込まれた銀の四角形(右)の反射像を示している。
【0122】
表面に導電性パッドのアレイをもつガラス基板上に描画した銀ラインのコンダクタンスを測定した。一連の平行な銀のパッドを、標準的なリソグラフィー法を用いて、ガラス基板上に堆積した。スライドの半分をマスクし、次にパッドへ接続させた。一連の5つの平行ライン(200μm長さで1μm2の断面積をもつ)を基板表面でパッドに垂直に作り、描画ラインとパッドとの間を電気的に接続した。ラインの抵抗を、様々な距離だけ離れたパッド間で測定した。また、描画ラインによって接続されていない対照例のパッド間で測定を行った。バイアス電圧を-2Vから+2Vまで傾斜させ、マイクロ製造されたラインで接続されていないパッド間の測定電流は装置のノイズレベル(0.1pA)であり、巨大な抵抗を示していた。マイクロ製造したライン(32μm間隔)によって接続された2つの隣接パッド間で測定された平均抵抗は370Ωであった。マイクロ製造したラインの抵抗率(ρ)を測定し、接触抵抗についての補正なしで、約10-3Ωcmであった(図20)。図20は成長ラインの導電率を測定するために用いたスライド/ポリマー/マイクロ製造ライン構造の模式図である。
【0123】
二光子励起による銅および金のマイクロ構造体のマイクロ製造。
【0124】
例41で説明したように銅ナノ粒子、銅塩および色素1dを充填したフィルムをキャストし、銅ワイヤのパターンを、二光子励起を用いてマイクロ製造した。同じパターンを、例41で説明した金ナノ粒子複合材でマイクロ製造した。3Dの「丸太の積み重ね」構造体を両方の複合材でうまくマイクロ製造でき、本明細書で説明した方法が一般的で様々な金属に適用できることを証明している。両方の構造体を測定I(V)曲線のプロットである図21(373Ωの抵抗を示している)に示す。
【0125】
銀ナノ粒子の光誘起成長によるホログラフィックデータ記憶。
【0126】
ホログラフィックデータ記憶に適した複合材料を含む金属ナノ粒子の使用を、例43で説明したフィルムを用いて証明している。90°で交差している2本のレーザービーム(光学装置構成について図22を参照のこと)をフォログラフィック露光に用いた。ビームの1つ(像)を広げて解像度試験マスクに通し、他のビームを平面波参照光とした。フォログラフィック露光を、Ar+イオンレーザー(514.5nm)を用いて200mWの全パワーで実施した。露光後に、8%の回折効率で像を再構築し、再構築した像をデジタルカメラを用いてキャプチャーした(図23を参照のこと)。
【0127】
図22は二光子走査レーザー露光によりナノ複合材中に製造した金属構造体を示す。aは二光子レーザー露光によって製造した別のポリマーナノ複合材中の銅マイクロ構造体のTOM像である。bは二光子レーザー露光によって製造した金マイクロ構造体のTOM像である。スケールバーは25μmである。
【0128】
図23は左にホログラムの書き込みのための光学装置構成を示す。右にホログラムの読み出しのための光学装置構成を示す。青色の楕円体は焦点レンズを示し、一方で灰色の長方形はミラーを示す。かすかな灰色の長方形は50/50ビームスプリッターを示す。右の黒色の長方形はビームストップである。
【0129】
合成
全ての試薬はAldrichから購入し、受け入れたまま使用した。使用した全ての溶媒は明示しなければ試薬グレードである。
【0130】
銀ナノ粒子
1種のリガンドでキャップした銀ナノ粒子(nAg1-4)
全ての合成は、下記の手法を用いて行った。
【0131】
340mgのAgN03(2mmol)を100mlの無水エタノールに0℃において激しい撹拌下で溶解した。ある量(2/9ミリモルから2/3ミリモルまで変化する)の選択したリガンドを少量のエタノールに溶解して添加した。NaBH4の飽和エタノール(200ml)溶液を調製し、リガンドの添加から30分後に、非常にゆっくりと(2時間かけて)添加した。この溶液は直ちに黄色になった後、ゆっくりと非常に濃くなった。溶液をさらに2時間撹拌しておいた後、冷蔵庫に入れて凝結させた。
【0132】
次の日、溶液を、ポア径が1μmである定量ペーパーフィルター(VWR)を用いて真空ろ過し、ろ過した粉末をエタノールで2回、アセトンで多数回洗浄した。収量は49%から81%まで変化した。
【0133】
例1
ドデカンチオールでコートした銀ナノ粒子(nAg1)の合成
330mgのAgNO3(約2mmol)を200mlの無水エタノールに0℃において激しい撹拌下で溶解した。58mlのドデカンチオール(2/6mmol)を10mlのエタノールに溶解し、最初の溶液に加えた。NaBH4の飽和エタノール(200ml)溶液を調製し、リガンドの添加から30分後に、非常にゆっくりと(2時間)添加した。この溶液は直ちに黄色になった後、ゆっくりと非常に濃くなった。溶液をさらに2時間撹拌しておいた後、冷蔵庫に入れて凝結させた。
【0134】
次の日、溶液を、ポア径が1μmである定量ペーパーフィルター(VWR)を用いて真空下でろ過し、ろ過粉末をエタノールで2回、アセトンで多数回洗浄した。
【0135】
190.65mgの黒色粉末を回収し、収率は71%であった。
【0136】
2種または3種のリガンドでコートした銀ナノ粒子
合成は2つの異なる手法のうち1つを用いて行った。第1の手法a)はナノ粒子を複数のリガンドの存在中で合成する一段反応を含み、第2の手法b)はナノ粒子がリガンド交換反応を受けて第2の種類のリガンドを導入する二段反応を含む。
【0137】
a)第1の手法の場合、下記の方法を用いた。
【0138】
340mgのAgNO3(2mmol)を100mlの無水アルコールに0℃において激しい撹拌下で溶解した。10mlの所望のリガンド混合物の溶液を調製した。リガンドのモル比(ηligandA/ηligandB)は1と0.25の間であり、合計量はリガンドのモル数と銀のモル数との間の比が2/9から2/3の間になるように選んだ。リガンドの添加から30分後、NaBH4の飽和エタノール(200ml)溶液を調製し、非常にゆっくりと(2時間かけて)添加した。この溶液は直ちに黄色になった後、ゆっくりと非常に濃くなった。溶液をさらに2時間撹拌しておいた後、冷蔵庫に入れて凝結させた。
【0139】
次の日、溶液を、ポア径が1μmである定量ペーパーフィルター(VWR)を用いて真空下でろ過し、ろ過粉末をエタノールで2回、アセトンで多数回洗浄した。
【0140】
いくつかの種類のナノ粒子は冷却しても凝結せず、これらの場合には溶媒を真空下で蒸発させた後、15分間の超音波処理により残渣を水に懸濁させた。この水をフード内に2時間放置して凝結させた後、標準的な手法に従ってろ過した。
【0141】
収量は30%から75%まで変化した。
【0142】
例2:
オクタンチオール−チオールでコートした銀ナノ粒子(nAg6)の合成。
【0143】
340mgのAgN03(2mmol)を200mlの無水エタノールに0℃において激しい撹拌下で溶解した。24mlのオクタンチオール(1/6mmol)を10mlのエタノールに156mgのI4(1/2mmol)とともに溶解し、最初の溶液に加えた。NaBH4の飽和エタノール(200ml)溶液を調製し、リガンドの添加から30分後に、非常にゆっくりと(2時間)添加した。この溶液は直ちに黄色になった後、ゆっくりと非常に濃くなった。溶液をさらに2時間撹拌しておいた後、冷蔵庫に入れて凝結させた。
【0144】
次の日、溶液を、ポア径が1μmである定量ペーパーフィルター(VWR)を用いて真空下でろ過し、ろ過粉末をエタノールで2回、アセトンで多数回洗浄した。
【0145】
収量:273mgの黒緑色粉末。
【0146】
b)第2の手法は交換反応であった。
【0147】
この種の反応は既知の方法に従って行われる(Hostetler, M. J., Templeton, A. C. & Murray, R. W. 単分子膜で保護された金クラスター分子上の位置交換反応の動力学。Langmuir 15, 3782-3789 (1999))。
【0148】
例3:
オクタンチオール−isでコートした銀ナノ粒子(nAg9)。
【0149】
銀ナノ粒子nAg1上でのリガンド交換反応:オクタンチオールでコートした銀ナノ粒子nAg1(85.4mg)をCH2Cl2中で一晩撹拌することにより溶解した。次に、リガンドI8(14.2mg, 0.024mmol)を添加し、濃茶色の溶液を5日間、光のない状態で撹拌した。CH2Cl2を真空中で除去し、茶色の残渣をEtOH中に分配した。粒子を一晩沈降させると、定量ろ紙でろ過することができ、アセトンで数回洗浄した。
【0150】
収量:17mg。 元素分析: nAg9: C: 26.30, H: 4.31, S: 7.38, Ag: 53.99
nAg1: C: 22.85, H: 4.62, S: 7.23, Ag: 62.50
オクタンチオール: C: 66.19, H: 11.79, S: 22.07
I8: C: 70.66, H: 6.48, S: 9.81。
【0151】
元素分析に基づく計算によりリガンドの重量比が約85オクタンチオールおよび15% TMF-I-48であることを示した。計算によるモル比は以下のとおりであった:
nI8/nOctanethiol = 0.043
nAg/nOctanethiol+nI8 = 1.78 in nAg9
nAg/nOctanethiol = 2.25 in nAg1
1H NMR(CDCl3): 1H NMR はリガンドI8のスペクトルを示している。
【0152】
金ナノ粒子の調製
金ナノ粒子を、Brustの手法に従って調製した(Brust, M., Walker, M., Bethell, D., Schiffrin, D. J. & Whyman, R. 二相液液系におけるチオール誘導金ナノ粒子の合成。Journal of the Chemical Society-Chemical Communications, 801-802 (1994))。
【0153】
例4:
ドデカンチオールでコートされた金ナノ粒子(nAu1)の合成。
【0154】
352.8mgのHAuC4*3H2O(0.9mmol)を30mlの脱イオン水に溶解し、2.188gのテトラオクチルアンモニウムブロマイド(4mmol)を80mlのトルエンに溶解した。二相を混合し、1時間撹拌した。170mgのドデカンチオール(0.84mmol)を10mlのトルエンに溶解して添加した。10分後、380mgのNaBH4を25mlの水に溶解し、全てを一度に添加した。すぐに有機層は黒色になった。2時間後、有機層を分離し、3回洗浄した。トルエンを真空下で10mlまで減少させ、直ちにエタノールで500mlに希釈し、溶液を冷蔵庫中に一晩入れた。次の日、溶液を定量ろ紙でろ過し、トルエンで複数回洗浄した。
【0155】
10mgの黒色粉末を収集した。
【0156】
銅ナノ粒子
1種のリガンドでコートした銅ナノ粒子
237mgのCuBF4*H20(1mmol)を100mlの無水エタノール(少なくとも1時間アルゴンバブリングによって脱気した)に0℃において激しい撹拌下でアルゴン雰囲気において溶解した。ある量(2/9ミリモルから2/3ミリモルまで変化する)の選択したリガンドを少量のエタノールに溶解して添加した。溶液は直ちに明るい黄色になった。2時間後、飽和した(100ml)NaBH4の脱気エタノール溶液を調製し、非常にゆっくりと(3時間かけて)添加した。溶液は直ちに濃黄色になった後、ゆっくりと非常に濃くなった。溶液をさらに2時間撹拌しておいた後、冷蔵庫に入れて凝結させた。
【0157】
次の日、溶液を、ポア径が1μmである定量ペーパーフィルター(VWR)を用いて真空下でろ過し、ろ過粉末をエタノールで2回、アセトンで多数回洗浄した。全反応を、管理した雰囲気中で行った。
【0158】
例5:
ドデカンチオールでコートした銅ナノ粒子(nCu1)。
【0159】
228mgのCuBF4*H20(0.96mmol)を100mlの無水エタノール(少なくとも2時間アルゴンバブリングによって脱気した)に0℃において激しい撹拌下でアルゴン雰囲気において溶解した。51mgのオクタンチオール(〜1/3mmol)を少量のエタノールに溶解して添加した。溶液は直ちに明るい黄色になった。2時間後、飽和した(100ml)NaBH4の脱気エタノール溶液を調製し、非常にゆっくりと(3時間)添加した。溶液は直ちに濃黄色になった後、ゆっくりと非常に濃くなった。溶液をさらに2時間撹拌しておいた後、冷蔵庫に入れて凝結させた。
【0160】
次の日、溶液を、ポア径が1μmである定量ペーパーフィルター(VWR)を用いて真空下でろ過し、ろ過粉末をエタノールで2回、アセトンで多数回洗浄した。全反応を、管理した雰囲気中で行った。
【0161】
収量は40mgの黒色粉末であった。
【0162】
2またはそれ以上の種類のリガンドでコートした銅ナノ粒子。
【0163】
237mgのCuBF4*H20(1mmol) を100mlの無水エタノール(少なくとも1時間アルゴンバブリングによって脱気した)に0℃において激しい撹拌下でアルゴン雰囲気において溶解した。10mlの所望のリガンド混合物の溶液を調製して添加した。
【0164】
リガンドのモル比(ηligandA/ηligandB)は1と0.25の間であり、合計量はリガンドのモル数と銀のモル数との間の比が2/9から2/3の間になるように選んだ。2時間後、飽和した(100ml)NaBH4の脱気エタノール溶液を調製し、非常にゆっくりと(3時間かけて)添加した。溶液は直ちに黄色になった後、ゆっくりと非常に濃くなった。溶液をさらに2時間撹拌しておいた後、冷蔵庫に入れて凝結させた。
【0165】
次の日、溶液を、ポア径が1μmである定量ペーパーフィルター(VWR)を用いて真空下でろ過し、ろ過粉末をエタノールで2回、アセトンで多数回洗浄した。全反応を、管理した雰囲気中で行った。
【0166】
例6:
オクタンチオール-カルバゾールチオールでコートした銅ナノ粒子(nCu3)の合成。
【0167】
240mgのCuBF4*H20(0.974mmol) を100mlの無水エタノール(少なくとも2時間アルゴンバブリングによって脱気した)に0℃において激しい撹拌下でアルゴン雰囲気において溶解した。76mgのオクタンチオール(〜1/2mmol)および35mgのドデカンチオール(〜1/6mmol)を少量のエタノールに溶解して添加した。溶液は直ちに明るい黄色になった。2時間後、飽和した(100ml)NaBH4の脱気エタノール溶液を調製し、非常にゆっくりと(3時間)添加した。溶液は直ちに黄色になった後、ゆっくりと非常に濃くなった。溶液をさらに2時間撹拌しておいた後、冷蔵庫に入れて凝結させた。
【0168】
次の日、溶液を、ポア径が1μmである定量ペーパーフィルター(VWR)を用いて真空下でろ過し、ろ過粉末をエタノールで2回、アセトンで多数回洗浄した。全反応を、管理した雰囲気中で行った。
【0169】
収量は45mgの黒色粉末であった。
【0170】
色素およびリガンドの合成
例において用いたほとんどの分子およびポリマーを文献の方法に従って調製したが、新規な分子の合成をここで説明する。
【化15】
【0171】
4-{2-[4-[2-(4-ホルミルフェニル)ビニル]-2-(3-ヒドロキシプロポキシ)フェニル]ビニル}ベンズアルデヒド(TMF-I-39):モノ(ジエチル)アセタールテレフタルアルデヒド(1.75ml, 8.8mmol)およびジエチル 2-(3-{[tert-ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}-プロポキシ)-4-[(ジエトキシフォスフォリル)メチル]ベンジル フォスフォネート(2.49g, 4.4mmol)のテトラヒドロフラン(THF)(100ml)溶液をアイスバスで0℃まで冷却した。K2CO3(10mlの1M溶液THF中, 10mmol))をシリンジからゆっくりと添加し、反応を室温まで暖めた。一晩撹拌した後、水、次いで1M HC1(50ml)を添加し、反応混合物をさらに1時間撹拌した。生成物をCH2Cl2で抽出して、シリカ上でクロマトグラフした。CH2Cl2とともに溶出した最初のフラクションを排除した後、溶媒としてエチルアセテートを用いて生成物を収集した。CH2Cl2からの結晶化により、純粋な生成物を黄色の固体として得た(663g)。
【0172】
1H NMR (CDCl3): 10.01 (1H, s), 10.00 (1H, s), 7.88 (4H, t, J = 7.5 Hz), 7.67 (4H, t, J = 7.5 Hz), 7.60 - 7.64 (3H, m), 7.12 - 7.24 (4H, m), 4.30 (2H, t, J = 6.0 Hz), 3.97 (2H, t, J = 6.0 Hz), 2.20 (2H, tt, J = 6.0, 6.0 Hz), 1.61 (1H, br s) ppm; 元素分析: 計算 C: 78.62 H: 5.86, 検出 C: 78.36 H: 5.67。
【化16】
【0173】
3-{2,5-ビス[(E)-2(4-ホルミルフェニル)エテニル]フェノキシ}-プロピル-5-(1,2-ジチオラン-3-イル)ペンタノエート
4-{2-[4-[2-(4-ホルミルフェニル)ビニル]-2-(3-ヒドロキシプロポキシ)フェニル]ビニル}-ベンズアルデヒド(上記)(200mg, 0.49mmol),リポ酸(100mg, 0.49mmol)およびp-トルエンスルホン酸(20mg, 0.10mmol)の溶液を、一晩、発色団を溶解するのに必要な最小量のCH2Cl2(約2Oml)中で還流した。反応混合物をカラム(Al2O3/CH2Cl2)上に注ぎ、CH2Cl2:エチルアセテート/10:1でフラッシュクロマトグラフした。出発材料を、エチルアルコール(EtOH)を用いて回収した。収量: 90mg(31%)の黄色の固体。
【0174】
1H NMR (CDCl3): 9.974 (1H, s, CHO), 9.969 (1H, s, CHO), 7.86 (2H, d, J = 8.5 Hz), 7.85 (2H, d, J = 8.5 Hz), 7.65 (4H, d, J = 8.0 Hz), 7.57 - 7.62 (2H, m), 7.04 - 7.24 (5H, m), 4.36 (2H, t, J = 6.5 Hz), 4.19 (2H, t, J = 6.0 Hz), 3.49 (1H, m), 3.12 (1H, m), 3.05 (1H, m), 2.39 (1H, m), 2.31 (2H, t, J = 7.0 Hz), 2.25 (2H, m), 1.84 (1H, m), 1.57 -1.69 (4H, m), 1.35 -1.48 (2H, m) ppm。13C NMR (CDC31): 191.86 (CHO), 191.77 (CHO), 173.65, 156.78, 144.08, 143.28, 138.09, 135.60, 135.38, 131.86, 130.47, 128.27, 128.00, 127.36, 127.16, 126.52, 126.30, 120.16, 110.30, 65.19, 61.33, 56.52, 40.42, 38.66, 34.76, 34.21, 29.89, 28.94, 24.85 ppm。
【0175】
ポリマー合成(a2)
【化17】
【0176】
カルバゾールモノマーcmの合成:
カルバゾール酸(5.0g, 14.23mmol)と2 ヒドロキシエチルメタクリレート(2.0g, 15.37mmol)と4-ジメチルアミオピリジン(0.2g)のTHF (30ml)溶液を、DCC(3.7g, 17.96mmol)に、室温で添加した。反応をこの温度で10時間行った。固体をろ過により除去した。THFを除去した後、粗生成物を、ヘキサン/エチルアセテート(9:1)を溶出液として用いてシリカゲルカラムによって精製した。無色のオイルとしての純粋な生成物を4.2g (63.6%)の量で得た。
【0177】
1H NMR (CDCl3, TMS, 500 MHZ): δ = 8.12 (d, 2Harom, J = 7.5 Hz), 7.47 9m, 2Harom), 7.42(d, 2Harom, J = 7.5 Hz), 7.24 (m, 2Harom), 6.13 (s, 1H, C=C-H), 5.60 (s, 1H, C=C-H), 4.35(m, 4H, 2 x OCH2), 4.30 (t, 2 H, NCH2, J = 7.5 Hz), 2.33 (t, 2H, COCH2, J = 7.0 Hz), 1.95(s, 3H, CH3), 1.88 (m, 2H, CH2), 1.61 (m, 2H, CH2), 1.24 (m, 12H, 6 x CH2) ppm。13C NMR(CDCl3, 126 MHZ): δ = 173.58, 167.07, 140.34, 135.87, 126.02, 125.51, 122.73, 120.29, 118.63. 108.59, 62.42, 61.82, 43.01, 34.09, 29.38, 29.35, 29.30, 29.14, 29.00, 28.92, 27.26, 24.84, 18.25 ppm。
【0178】
C29H37N04 (463.61)についての元素分析: 計算: C, 75.13; H, 8.04; N, 3.02。検出: C, 75.08; H, 7.83; N, 3.28。
【0179】
カルバゾールポリマーPCUEMAの合成:
カルバゾールモノマー(2.7g, 5.82mmol)およびAIBN(14.3mg, 0.087mmol)を、窒素下で乾燥ベンゼン(5.0ml)に溶解した。反応混合物を液体窒素で冷却した。1回の冷凍−解凍−ポンプのサイクルの後、反応を60℃まで加熱し60時間行った。ポリマーをメタノール中に沈殿させ、ろ過により収集した。ポリマーをTHF溶液として溶解し、メタノール中に沈殿させた。溶解/沈殿/ろ過の順序を2回繰り返した。乾燥後、白色のポリマーを2.65g (98.1%)の収量で得た。
【0180】
1H NMR (CDCl3, TMS, 500 MHZ): δ = 7.97 (d, 2Harom, J = 8.0 Hz), 7.31 (m, 2Harom), 7.24 (d, 2Harom, J = 8.0 Hz), 7.09 (m, 2Harom), 4.07 (m, 4H, 2 x OCH2), 4.01 (s, br, 2H, NCH2), 2.17 (s, br, 2H, COCH2), 1.68 (m, 2H, CH2), 1.45 (s, br, 2H, CH2), 1.07 (m, 12 H, 6 x CH2), 0.93 (s, br, 2H, CH2), 0.80 (s, br, 3H, CH3) ppm。13C NMR(CDCl3, 126 MHZ): δ = 173.25, 140.30, 128.30, 125.48, 122.70, 120.26, 118.63, 108.56, 62.65, 61.16, 44.82, 42.89, 33.78, 29.44, 29.35, 29.28, 29.08, 28.90, 27.22, 24.74 ppm。
【0181】
I4およびI5
【化18】
【0182】
例7:
リガンドI4の合成
3.57gの9-カルバゾール-イル-オクタン-l-チオール(〜10mmol)を20mlのジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、1.52mgのチオ尿素(〜20mmol)を添加し、溶液を激しく撹拌した。2日後、濃NaOH水溶液を滴下して加えた。すぐに赤色の沈殿が形成され、添加の間に沈殿物は再溶解して溶液が赤色になった。pHが11(pH紙を用いて検査)に達した時点で添加を停止した。次に、溶液を、HCl(濃水溶液)を滴下して加えて中和すると、ゆっくりと黄色に変わった。次に、有機物をジエチルエーテル(Et2O)で抽出し、水で3回洗浄した。有機溶媒を真空下で乾燥し、残渣を収集した。
【0183】
試料の調製
この項では、ナノ複合材試料の処理および調製のいくつかの例を示す。以下に報告した全てのフィルムを試験し、全てのケースにおいて放射線を用いて金属銀ラインをうまく描画できた。
【0184】
試料を溶媒キャスティングまたはスピンコーティングにより調製した。多くの試料を空気雰囲気でキャストし、いくつかのケースではアルゴン雰囲気で処理を行った。
【0185】
全てのガラス顕微鏡スライドを以下の手法で清浄化した:
a)水およびせっけん中での1時間の超音波処理およびDI水による広範囲にわたるリンス
b)スペクトロスコピック級のメタノール中での超音波処理および無水エタノールまたはイソプロパノールによるリンス。
【0186】
ナノ粒子の単分子層コーティングをもつガラススライドを、以下のように、清浄化した後に処理した(以下、単分子層つきスライドという):
a)KOHの飽和イソプロパノール(試薬)溶液に10分間浸した後、DI水でリンスし、窒素流を用いて乾燥した。
【0187】
b)75mlのトルエン, 0.5mlのイソプロピルアミドおよび2mlの2-メルカプトプロピルトリメチルシロキサンの溶液を調製し、60℃に1時間保持した。
【0188】
c)スライドをこの溶液中に60℃で1時間浸した後、ヘキサン(スペクトロフォトメトリック級)でリンスした。
【0189】
d)試料をヘキサン中に一晩浸漬した。
【0190】
e)CH2Cl2溶液(2mg/mlのナノ粒子nAg6)を、スライド上での溶媒蒸発により、溶媒キャストした。
【0191】
f)試料をヘキサン中に一晩浸漬した。
【0192】
ITO(インジウム錫酸化物)スライドは、単純に、それらに接触させたエタノール中でそれらをリンスすることによって洗浄化した。
【0193】
溶媒蒸発によるナノ複合材フィルムのキャスティング
溶媒蒸発によるキャスティングのために試料を保持するための取り付け具を作製し、全てのこのようなキャスティングに水平位置に固定したこのプレートつき基板を用い、雰囲気の管理を考慮に入れた。キャスティングに先立って、各々のスライドの下に3mlの試薬級のクロロホルムを配置し、キャスティング液の導入時の溶媒蒸気による雰囲気の飽和を最初に維持した。時計皿を用いて各々のスライドのコンパートメントを閉じた結果、各々のスライドがキャストされる空気の体積は約15cm3であった。
【0194】
冷凍−解凍−ポンプのサイクルによって溶媒を脱気した。
【0195】
例8:
F1標準100μmフィルム
188.86mgのポリマーa1(ポリ9-ビニルカルバゾール), 89.6mgのエチルカルバゾール, 2.59mgのnAg6, および8.77mgの色素1dを、アルゴン雰囲気下で6ml脱気クロロホルムに溶解し、一晩撹拌しておいた。
【0196】
次の日、22mgのAgBF4を0.02mlの脱気アセトニトリルに溶解し、クロロホルム溶液に混合した。30分後、溶液をメンブランフィルター(1μmポアサイズ)でろ過した。0.6mlのろ過した溶液を、25 X 25mmのITOスライド上にキャストした。
【0197】
例9:
F2標準100μmフィルム
660mgのポリマーa1(ポリ9-ビニルカルバゾール), 329mgのエチルカルバゾール, 2.8mgのnAg6, および28mgの色素1dを、アルゴン雰囲気下で6ml脱気クロロホルムに溶解し、一晩撹拌しておいた。
【0198】
次の日、110mgのAgBF4を0.33mlの脱気アセトニトリルに溶解し、その0.3mlをクロロホルム溶液に加えた。10分後、溶液をメンブランフィルター(1μmポアサイズ)でろ過した。2mlのろ過した溶液を、75 X 25mmのガラススライド上にキャストした。
【0199】
例10:
高充填のナノ粒子をもつF3 20μmフィルム
92mgのポリマーa1(ポリ9-ビニルカルバゾール)を5mlのジクロロメタン(DCM)に溶解し, 12mgのAgBF4を5mlのDCMおよび1mlのアセトニトリルに溶解し, 5mgの色素1dを5mlのDCMに溶解し, 5.5mgのnAg1を2mlのクロロホルムに溶解した。全ての溶液を2時間撹拌した後、いっしょに混合した。2mlの溶液を75 X 25mmのガラススライド上にキャストした。
【0200】
例11:
TEM用のF4フィルム
11.5mgのポリマーa1(ポリ9-ビニルカルバゾール), 2.4mgのAgBF4, 2.8mgの色素1d, 1mgのnAg1を10mlのDCMに溶解し;溶液を10倍希釈し、2μlのこの溶液をカーボンでコートした銅グリッド上にキャストした。3つの同じフィルムをこのようにして作った。
【0201】
図9はnsパルスレーザーからの1つまたは3つのレーザーパルスへの露光による複合材フィルム中での金属ナノ粒子の成長を示すTEM像を示す。上のTEM像は1つのレーザーショット後の系を示し、下は3つのレーザーショット後である。上限において平均半径は4.9nmになったが、未照射試料では2.9であった。下の像において平均径はより大きく、大きな金属アイランドが見られた。
【0202】
例12:
異なる種類のナノ粒子をもつFS標準100μmフィルム
648mgのポリマーa1(ポリ9-ビニルカルバゾール), 316mgのエチルカルバゾール, 2.75mgのnAg7, および20.7mgの色素1dを、アルゴン雰囲気下で6ml脱気クロロホルムに溶解し、一晩撹拌しておいた。
【0203】
次の日、219mgのAgBF4を0.6mlの脱気アセトニトリルに溶解し、0.2mlをクロロホルム溶液に混合した。30分後、溶液をメンブランフィルター(1μmポアサイズ)でろ過した。0.4mlのろ過した溶液を、25 X 25mmのITOスライド上にキャストした。
【0204】
例13:
F6標準10μmフィルム
64.5mgのポリマーa1(ポリ9-ビニルカルバゾール), 38.1mgのエチルカルバゾール, 1.21mgのnAg6, および3.31mgの色素1dを、、アルゴン雰囲気下で6ml脱気クロロホルムに溶解し、一晩撹拌しておいた。
【0205】
次の日、20.4mgのAgBF4を0.3mlの脱気アセトニトリルに溶解し、0.1mlをクロロホルム溶液に混合した。30分後、溶液をメンブランフィルター(1μmポアサイズ)でろ過した。0.4mlのろ過した溶液を、75 X 25mmのガラススライド上にキャストした。
【0206】
例14:
異なる色素をもつF7標準100μmフィルム
411.16mgのポリマーa1(ポリ9-ビニルカルバゾール), 206.48mgのエチルカルバゾール, 2.28mgのnAg6, および19.72mgの色素2bを、アルゴン雰囲気下で6ml脱気クロロホルムに溶解し、一晩撹拌しておいた。
【0207】
次の日、50.8mgのAgBF4を0.3mlの脱気アセトニトリルに溶解し、クロロホルム溶液に混合した。30分後、溶液をメンブランフィルター(1μmポアサイズ)でろ過した。0.6mlのろ過した溶液を、75 X 25mmの単分子膜つきガラススライド上にキャストした。
【0208】
例15:
異なるポリマーをもつF8標準100μmフィルム
95.1mgのポリマーa2(PCUEMA), 0.71mgのnAg6, および1.8mgの色素1dを、アルゴン雰囲気下で1ml脱気クロロホルムに溶解し、一晩撹拌しておいた。
【0209】
次の日、9.5mgのAgBF4を0.05mlの脱気アセトニトリルに溶解し、クロロホルム溶液に混合した。30分後、溶液をメンブランフィルター(1μmポアサイズ)でろ過した。0.6mlのろ過した溶液を、25 X 25mmの単分子膜つきガラススライド上にキャストした。
【0210】
例16:
銅生成のためのF9標準100μmフィルム
66.6mgのポリマーa4(ポリメチルメタクリレート), 1.1mgのnCu1, および3.08mgの色素1dを、アルゴン雰囲気下で0.6ml脱気クロロホルムに溶解し、一晩撹拌しておいた。
【0211】
次の日、5mgのICuP(CH3)3を0.05mlの脱気アセトニトリルに溶解し、クロロホルム溶液に混合した。30分後、溶液を、25 X 25mmのガラススライド上にキャストした。
【0212】
スピンコートしたフィルム
例17:
F10標準スピンコーテッドフィルム
100mgのポリマーa1(ポリ9-ビニルカルバゾール), 6mgのエチルカルバゾール, 3mgのnAg4, および4.5mgの色素1dを、アルゴン雰囲気下で1ml脱気クロロホルムに溶解し、一晩撹拌しておいた。
【0213】
次の日、100mgのAgBF4を1mlのアセトニトリルに溶解し、0.1mlをクロロホルム溶液に加えた。30分後、25 X 25mmのガラススライド上に、2000RPMで20秒間、スピンコートした。得られた厚さは、プリズムカプラー測定によって検査したところ、〜8μmであった。
【0214】
粘稠液体を含むナノ粒子
例18:
F11標準粘稠液体マトリックスフィルム
ある量のホストc1を、ヒートガンを用いて加熱し、自由に流動するようななるとすぐに、バイアル中にピペットで取り、固定量を秤量した。226mgのホストc1, 2mgのnAg6, および5.77mgの色素1dを、2mlのクロロホルムに溶解し、一晩撹拌しておいた。
【0215】
次の日、11mgのAgBF4を0.1mlのアセトニトリルに溶解し、クロロホルム溶液に加えた。30分後、溶液を75 X 25mmのガラススライド上にキャストした。
【0216】
クラスIフィルム
例19:
F12標準クラスIフィルム
5.23mgのnAg1, および0.5mgの色素1d, および0.5mgのAgBF4を2mlのクロロホルムに溶解し、一晩撹拌しておいた。
【0217】
次の日、溶液を75 X 25mmのガラススライド上にキャストした。
【0218】
図10は二光子照射(800nm, 120fs)により描画した銀リボンを示す(例19)。
【0219】
一光子または二光子励起を用いたナノ粒子複合材中の金属描画
全ての描画実験をフェムト秒モードロックTi:サファイアレーザーを用いて行った。具体的には、Millenia(ダイオードでポンプされたYAGレーザー)によってポンプされたTsunami(Ti:サファイアレーザー)からなるスペクトル物理系を用いた。平均パルス長は120fsで、バンド幅は〜20nmであった。別に明示しない限り、使用した波長は760nmである。
【0220】
試料をマイクロポジショナー(Sutter MP-285)に搭載した。レーザービームを、倒立顕微鏡(Nikon)を用いて試料上に合焦した。コンピュータによってマイクロポジショナーおよびシャッター(Newport 846HP)の両方を制御した。マイクロポジショナーの動きとシャッターの開・閉サイクルの組み合わせにより、パターン化露光と試料中に描画されるべき金属構造体を可能にする。
【0221】
ビームの焦点を試料中に位置づけるために、二光子顕微鏡構成を用い、ビームをBiorad MRC-1024スキャンヘッドを通過させた。
【0222】
単一光子励起を用いる描画
単一光子励起を用いて描画する場合、LBOダブリング結晶を用いてレーザー出力光を2倍の周波数にし、結晶偏光子と赤外短波長パス誘電体フィルターの組み合わせを用いて残りの基本光をフィルターにかけた。
【0223】
その他の構成は、上述した二光子描画プロセスと同一である。合焦プロセスを共焦点法でスキャンヘッドを用いて行った。
【0224】
例20:
銀の一光子描画についてのしきい値測定
フィルムFl(例8)を、標準的な仕方で、マイクロポジショナーに搭載した。レーザー出力波長を860nm(420mW)に設定し、実験中に変化させなかった。フィルターホイールを装置構成中に配置し、レーザーの平均パワーの連続的かつ制御可能に変化できるようにした。ステージの移動速度を10μm/sに設定した。60倍の対物レンズ(NA 1.4)を用いてビームを試料に合焦した。フィルムのどこにでもラインを描画することができ、挙動はほとんどの場合に一様であった。そこで、二光子実験との比較のために、しきい値をガラス/フィルム界面で計算した。パワーを徐々に減少させ、描画プロセスの成功を光学顕微鏡観測により決定した。描画しきい値は0.09mWであることがわかった。1μmの径をもつ円形ビームスポットを仮定すると、120fsパルスについてしきい値強度はおおよそ108 W/m2であることがわかる。
【0225】
5μmの間隔で描画したラインのパターンの場合、光学像を用いてその幅の上限を設定することができ、その上限は500nmであった。
【0226】
図11は一光子励起(430 nm)を用いて描画した銀ラインを示し、ラインがはっきりと見える。暗いスポットは、最適なクオリティではないフィルム中の欠陥である。
【0227】
二光子励起を用いた描画
本明細書において二光子励起可能な光還元試薬として用いた色素は、適度に大きい二光子断面をもち、このため効率的な二光子励起を可能にすることが知られている。これは、高NA合焦系との組み合わせで、マトリックス中に、高解像度ラインを三次元パターンで描画するのを可能にする。
【0228】
例21:
銀の二光子描画についてのしきい値測定
フィルムFl(例8)を、標準的な仕方で、マイクロポジショナーに搭載した。レーザー出力波長を760nm(620mW)に設定し、実験中に変化させなかった。フィルターホイールを装置構成中に配置し、レーザーの平均パワーの連続的かつ制御可能に変化できるようにした。ステージの移動速度を10μm/sに設定した。60倍の対物レンズ(NA 1.4)を用いてビームを試料に合焦した。フィルムのどこにでもラインを描画することができ、挙動はほとんどの場合に一様であったので、構造体をさらに現像する可能性を示すために、しきい値をガラス/フィルム界面で計算した。パワーを徐々に減少させ、描画プロセスの成功を光学顕微鏡観測により決定した。描画しきい値は1.55mWであることがわかった。1μmの径をもつ円形ビームスポットを仮定すると、強度しきい値はおおよそ1.5 109 W/m2であることがわかる。
【0229】
5μmの間隔で描画したラインのパターンの場合、光学像を用いてその幅の上限を設定することができ、その上限は1μmであった。
【0230】
例22:
多光子描画と現像
フィルムF3(例10)を、標準的な仕方で、マイクロポジショナーに搭載した。レーザー出力波長を800nm(400mW)に設定し、実験中に変化させなかった。描画速度を100gm/sに設定した。用いた顕微鏡の対物レンズは10倍であった。ラインをガラス/フィルム界面に描画した。各々5ラインを含む6組の規則パターンを描画した。各々の組を前のものから30μm離して配置し、ラインは互いに10mm離した;全てのラインは500μm長さであった。描画後にフィルムをDCM入りビーカーに入れ、そこに3日間放置した。これらを行っている間にポリマーは洗い流されラインは基板上にとどまった。
【0231】
例23:
多光子描画と現像
フィルムF2(例9)を、標準的な仕方で、マイクロポジショナーに搭載した。レーザー出力波長を760nm(620mW)に設定し、実験中に変化させなかった。ステージの移動速度を10μm/sに設定した。60倍の対物レンズ(NA 1.4)および液浸油を用いてビームを試料に合焦した。フィルムのどこにでもラインを描画することができ、挙動はほとんどの場合に一様であった。多くの種々のパターンを描画し、最も重要なものは、「かご状」構造であり、13層のラインの組をもち、各々の層は前のものよりも5μm高く、各々の層は20ライン100μm長さで5μm離れており、各々の層は前の層のラインに対して垂直なラインからなる。
【0232】
描画プロセスを行った後、フィルムをマイクロポジショナーから取り外し、ペーパーティシューを用いて液浸油を取り除いてきれいにした後、DCMおよびアセトニトリル(10:1)の溶液に入れた。ポリマーが溶解して基板上の構造体が残った。
【0233】
図4はポリマーa1マトリックス中に描画した3D構造体(200x200x65μm)の光学透過像(平面図)を示している。描画プロセスは二光子励起(760nm, 120fs)を用いて行った。
【0234】
図5は図4に示したのと同じ構造体の光学像をより大きなスケールで示しており、マトリックスの光学品質は明らかに極めて良好である。
【0235】
図6は複合材フィルム中に二光子描画によって形成された3D金属銀マイクロ構造体のSEM像であり、洗浄によって表面上に自立構造体を生じることが明らかになった。
【0236】
例24:
銅構造体の多光子描画
フィルムF9(例16)を、標準的な仕方で、マイクロポジショナーに搭載した。レーザー出力波長を760nm(620mW)に設定し、実験中に変化させなかった。10倍のレンズを用いて銅の四角形を描画した。結果を光学イメージングにより調べた。
【0237】
図12は二光子励起によって描画した銅の四角形(200X200μm)の光学顕微鏡写真を示す。
【0238】
例25:
対照実験, F13
10mgのPVKを10mlのジクロロメタンに溶解し、1mgのAgBF4を同じ溶液に溶解した後、1mgの色素1を加えた。この溶液を75x25mmのガラススライド上にキャストした。
【0239】
このフィルムをUVチャンバーに入れ、15のランプ(各5W)を用い419nmで照射した。光学吸収を追った結果を図13にまとめる。ナノ粒子吸収帯の退色のみが観測された。
【0240】
図13は、色素および金属塩を含むが金属ナノ粒子の初期濃度なしのフィルムにおいて金属ナノ粒子の形成がないことを示す対照実験による試料のスペクトルを示す。露光後に金属ナノ粒子の吸収帯がないことに注意されたい。実線はフィルム13のスペクトルを示し、300nm付近の吸収帯はポリマー自身によるものであり、一方426の吸収帯は色素1に特有のものである。破線は30分間照射した同じフィルムを示し、点線は60分間のものである。
【0241】
キャラクタリゼーション
XPS
上記(例22)の手法に従って描画した金属銀ラインを、XPSスペクトル観測を用いて分析し、オージェパラメータを測定したところ726.2meVであり、Ag0について作表されている値に完全に一致した。描画したラインの像を、イメージングモードのスペクトロメータで記録できた。
【0242】
図7は1組のラインのXPSスペクトル(上)および像(下)を示す。スペクトルから得たオージェパラメータは726.2であり、ゼロ価の銀について作表されている値と同じである。
【0243】
SEM
SEMイメージングのために、構造体を非常に薄い金属層(Au/Ir合金)でコートした。図14は二光子励起を用いて描画した3D金属銀構造体のカマーのSEM写真を示す。描画された多層が明らかである。
【0244】
金属ナノ粒子成長のTEMキャラクタリゼーション
以下の実験のために、ナノ秒YAGレーザー(20Hz)の倍波光(532nm)を、単一ショット方式で用いた。アモルファスカーボンでコートした、複合材フィルムつき(推定厚さ50nm)の銅グリッドの1つは用いずに参照例として残し、第2のもので1つのレーザーパルスを受け、第3のもので3つのレーザーパルスを受けた。各パルスの平均エネルギーは120μJであった。参照グリッド中の粒子の平均半径は2.95nmであることがわかり;第2のグリッドでは4.95nmであり、第3のグリッドでは約9.5nmであった。さらに、単位面積あたりのナノ粒子数は増加していないことがわかった。
【0245】
図15は複合材中の前駆体として用いた、化学的に合成したナノ粒子(nAg1)のTEM像を示す。ナノ粒子試料をアセトン中で1分間超音波処理した後、1滴の溶液をアモルファスカーボンでコートした銅グリッド上で乾燥した。使用した顕微鏡はHitachi 8100であった。
【0246】
銀ラインの導電率
銀ラインが電気伝導性であることを示す試験を行った。1つの試験では、ボルト−オームメーターのプローブを銀の描画パッド上に接触させ、200mmの距離を隔てて〜80MΩのインピーダンスを測定した。良好な電気的なコンタクトが保証されなかったので、これはこの長さのラインのインピーダンスに関する上限を示す。
【0247】
チオール官能基化した色素をもつnAg7上での交換反応。一般的手法:
銀ナノ粒子をCH2Cl2に溶解して2時間撹拌し、完全溶解を確実にした。色素を加えてアルミホイルでカバーした。4日間撹拌した後、35℃に穏やかに加熱しながら真空中で溶媒を除去した。アセトンを加え、沈殿したナノ粒子を定量ろ紙上に収集し、溶媒が紫外光で蛍光の徴候がなくなるまでアセトンで洗浄した。ナノ粒子を空気中で乾燥し、元素分析によって分析した。
【0248】
例26:
111官能基化ナノ粒子(nAg12):
オクチルチオール/ドデシルチオールで保護した銀ナノ粒子(nAg7)(250mg), 4-((E)-2-{4-[(E)-2-(4-ホルミルフェニル)エテニル]-2-[(11-メルカプトウンデシル)オキシ]-5-メトキシフェニル}エテニル)ベンズアルデヒド(111)(14.1mg, 0.025mmol), CH2Cl2(500ml)。nAg12についての分析値(%)(二重分析): C: 11.78 (11.70), H: 2.07 (2.01), S: 2.76 (2.86), Ag: 76.62 (76.13)。
【0249】
例27
110官能基化ナノ粒子(nAg11):
オクチルチオール/ドデシルチオールで保護した銀ナノ粒子(nAg7)(150mg), 11-(2,5-ビス{(E)-2-[4-(ジエチルアミノ)フェニル]エテニル}-4-メトキシフェノキシ)ウンデカン-l-チオール(110)(50mg, 0.076mmol), CH2Cl2(300ml)。単離収量: 80.5mg。nAg11についての分析値(%)(二重分析): C: 19.41 (19.45), H: 2.85 (2.76), N: 0.62 (0.62), S: 3.06 (3.24), Ag: 71.10(71.06)。
【0250】
例28:
19官能基化ナノ粒子(nAg10):
オクチルチオール/ドデシルチオールで保護した銀ナノ粒子(nAg7)(150mg), 11-{4-メトキシ -2,5-ビス[(E)-2-(4-ニトロフェニル)エテニル]フェノキシ}-l-ウンデカンチオール(19)(46mg, 0.076mmol), CH2Cl2(300ml)。nAg10についての分析値(%)(二重分析): C: 20.38 (20.40), H: 2.41 (2.26), N: 0.99 (0.96), S: 2.98 (2.86), Ag: 63.92 (63.97)。
【0251】
例29:
19のみ官能基化ナノ粒子(nAg13):
116.5mgの硝酸銀を、0℃で〜75mlのエタノールに溶解した。138mgの19を〜100mlのアセトンと5mlのジクロロメタンに溶解した。色素溶液を硝酸銀溶液に加え、45分間撹拌した。75mlの飽和ホウ化水素ナトリウムのエタノール溶液を4時間かけて滴下して加えた。溶液をさらに3時間撹拌した。溶液を一晩冷蔵庫に貯蔵し、デカントした。沈殿をろ過し、水、アセトン、およびジクロロメタンで洗浄した。146.3mgの黒色粉末を収集した。nAg13についての分析値(%): C :41.00, H :4.10%, N: 2.88%, S: 3.57%, Ag: 37.51%。
【0252】
ナノ粒子のフィルムの組成および調製
例30:
F14色素結合ナノ粒子クラス(i)のフィルム。20nm厚さ
1mgのnAg12を20ccのクロロホルムに溶解し、2日間撹拌しておいた。2mgのAgBF4を10ccのアセトニトリルに溶解し、この溶液の0.1ccをナノ粒子溶液に加えた。0.5ccの混合溶液を25X25mmのITOコートしたガラススライド上にキャストした。
【0253】
例31:
F15色素結合ナノ粒子クラス(ii)のフィルム。20nm厚さ
1mgのnAg12を20ccのクロロホルムに溶解し、2日間撹拌しておいた。
【0254】
0.5ccの溶液を25X25mmのITOコートしたガラススライド上にキャストしてフィルムを形成した。
【0255】
例32:
F16色素結合ナノ粒子クラス(iii)のフィルム。20nm厚さ
1mgのnAg7を20ccのクロロホルムに溶解し、2日間撹拌しておいた。2mgのAgBF4を10ccのアセトニトリルに溶解し、この溶液の0.1ccをナノ粒子溶液に加えた。0.5ccの混合溶液を25X25mmのITOコートしたガラススライド上にキャストした。
【0256】
例33:
F17色素結合ナノ粒子クラス(vi)のフィルム。20nm厚さ
1mgのnAg7を20ccのクロロホルムに溶解し、2日間撹拌しておいた。0.5ccの溶液を25X25mmのITOコートしたガラススライド上にキャストしてフィルムを形成した。
【0257】
例34:
F18色素結合ナノ粒子クラス(i)のフィルム。サブ単分子膜
1mgのnAg12を20ccのクロロホルムに溶解し、2日間撹拌しておいた。2mgのAgBF4を10ccのアセトニトリルに溶解し、この溶液の0.1ccをナノ粒子溶液に加えた。2ccの混合溶液をクロロホルムで10倍に希釈し、2μlをSi3N4コートしたSi基板(1mm2)上に成膜した。
【0258】
例35:
F19色素結合ナノ粒子クラス(ii)のフィルム。サブ単分子膜
1mgのnAg12を20ccのクロロホルムに溶解し、2日間撹拌しておいた。2ccの溶液をクロロホルムで10倍に希釈し、2μlをSi3N4コートしたSi基板(1mm2)上に成膜した。
【0259】
例36:
F20色素結合ナノ粒子クラス(iii)のフィルム。サブ単分子膜
1mgのnAg7を20ccのクロロホルムに溶解し、2日間撹拌しておいた。2mgのAgBF4を10ccのアセトニトリルに溶解し、この溶液の0.1ccをナノ粒子溶液に加えた。2ccの混合溶液をクロロホルムで10倍に希釈し、2μlをSi3N4コートしたSi基板(1mm2)上に成膜した。
【0260】
例37:
F21色素結合ナノ粒子クラス(iv)のフィルム。サブ単分子膜
1mgのnAg7を20ccのクロロホルムに溶解し、2日間撹拌しておいた。2ccの溶液をクロロホルムで10倍に希釈し、2μlをSi3N4コートしたSi基板(1mm2)上に成膜した。
【0261】
例38:
F22ナノ粒子成長のためのポリマー系フィルム
1mgのnAg12を20ccのクロロホルムに溶解し、2日間撹拌しておいた。200.6mgのPVKおよび89mgのエチルカルバゾールを2ccのナノ粒子溶液に溶解し、1日間撹拌しておいた。210mgのAgBF4を1ccのアセトニトリルに溶解し、この溶液の0.1ccをナノ粒子/ポリマー溶液に加えた。全溶液を25X75mmのガラススライド上にキャストした。
【0262】
例39:
F23反射率のためのフィルム
271mgのPCUEMA, 20.5mgのエチルカルバゾール, 1.67mgのnAg6, および7.16mgの1dを6ccのクロロホルムに溶解し、一晩撹拌しておいた。27mgのAgBF4を0.2ccのアセトニトリルに溶解し、溶液に加えた。この混合溶液を1μmポアフィルターでろ過し、2ccのろ液を25X75mmのガラススライド上にキャストした。
【0263】
例40:
F24導電率のためのフィルム
2mgのnAg6を5ccのクロロホルムに溶解し、1日撹拌しておいた。この混合溶液を1mmポアフィルターでろ過した。21mgのPVK, 9mgのエチルカルバゾール,および1.3mgの1dを0.3ccのナノ粒子溶液に溶解して2時間撹拌しておいた。20mgのAgBF4を0.5ccのアセトニトリルに溶解し、この溶液の0.05ccをポリマーナノ粒子溶液に加えた。この溶液をテーラーメードガラススライド(25X25mm)の半分にキャストし、他の半分をテフロン(登録商標)テープでカバーした。
【0264】
このスライドは、その上に40の平行な銀ライン(150μm幅、15mm長さおよび50nm高さ)のパターンを有していた。ラインは32μm離れており、標準的な電子ビームリソグラフィ法を用いて製造した。
【0265】
例41:
F25銅マイクロ製造フィルム
66mgのポリ(メチルメタクリレート)PMMA, 1.1mgのリガンドでコートした銅ナノ粒子nCu1, 5mgのCuP(CH3)3I,および3mgの色素1dを0.6mlの脱気CHCl3に溶解し、アルゴン雰囲気下で25X25mmのガラススライド上にキャストすることにより、フィルムを形成した。
【0266】
例42:
F26銅マイクロ製造フィルム
66mgのPMMA, 1.1mgのリガンドでコートした金ナノ粒子nAu1, 5mgのAuP(CH3)3Br,および3mgの色素1dを0.6mlの脱気CHCl3に溶解し、アルゴン雰囲気下で25X25mmのガラススライド上にキャストすることにより、フィルムを形成した。
【0267】
例43:
F27ホログラフィーのためのフィルム
271mgのPVK, 20.5mgのエチルカルバゾール, 1.67mgのnAg6,および0.8mgの1dを6ccのクロロホルムに溶解し、一晩撹拌しておいた。27mgのAgBF4を0.2ccのアセトニトリルに溶解し、溶液に加えた。この混合溶液を1μmポアフィルターでろ過し、2ccのろ液を25X75mmのガラススライド上にキャストした。
【0268】
米国仮特許出願60/256,148(2000年12月15日出願)、および詳細な説明において引用した特許および文献は参照により本明細書に取り込まれる。
【0269】
上記の教示を考慮すれば、明らかに本発明の多くの修正および変更が可能である。したがって、添付した特許請求の範囲の範囲内において、本発明は本明細書に具体的に記載したのとは違ったやり方で実施することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0270】
【図面の簡単な説明】
【0271】
【図1】ケース1の成長プロセスの模式図。
【図2】露光金属イオンの還元についてのエネルギーレベル図。
【図3】ナノ粒子複合材における金属の特徴形状の描画の説明図。
【図4】ポリマーマトリックス中に描画した3D構造体(200×200×65μm)の光学透過像(平面図)。
【図5】図4に示したのと同じ構造体の拡大スケールでの光学像。
【図6】複合材フィルムに二光子描画によって形成した3D金属銀マイクロ構造体のSEM像。
【図7】1組の銀ラインのXPSスペクトルおよび像。
【図8】チオールで官能化したガラス基板に対する、リガンドでキャップした金属ナノ粒子の付着の模式図。
【図9】nsパルスレーザーからの1つまたは3つのレーザーパルスに露光したときの複合材フィルムにおける金属ナノ粒子の成長を示すTEM像。
【図10】二光子照射によって描画した銀リボン。
【図11】一光子励起を用いて描画した銀ライン。
【図12】二光子励起によって描画した銅の四角形の光学顕微鏡写真。
【図13】対照実験による試料のスペクトル。
【図14】二光子励起を用いて描画した3D金属銀構造体のカマーのSEM写真。
【図15】複合材中の前駆体として用いた、化学的に合成したナノ粒子のTEM像。
【図16】SEMを用いて描画してイメージ化した四角形およびラインの例。
【図17】ナノ粒子/塩複合材における銀ナノ粒子のレーザーおよび電子線誘起成長。
【図18】AgBF4およびnAg12でドープしたPVKフィルムに描画したラインの透過光学顕微鏡観察。
【図19】ポリマーナノ複合材中に埋め込んだ銀の四角形の反射像。
【図20】成長ワイヤの導電率を測定するために用いた、スライド/ポリマー/マイクロ製造ラインの構成の模式図。
【図21】I(V)曲線のプロット。
【図22】二光子走査レーザー露光によってナノ複合材中に製造した金属構造体。
【図23】ホログラムの書き込みおよび読み出しのための光学的な装置構成。
【図24】再現したホログラム像。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ナノ粒子、金属塩、色素およびポリマーマトリックスからフィルムを形成し、
前記フィルムを放射線で露光し、それによって導電性金属のパターンを生成する
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ナノ粒子は、式A-B-Cをもつリガンドの混合物をもつ銀のナノ粒子であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Aは、金属ナノ粒子表面に結合できる孤立電子対をもつ少なくとも1つの原子をもつ分子もしくはイオンのフラグメントであるか、または金属ナノ粒子表面に結合できる不飽和の分子もしくはイオンのフラグメントであり、フラグメントをBと結合するための接続点を含むことを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
AおよびCは、各々独立して、-S-, -O-, -O2C-, -S-S-R, -O3S-, -S2C-NR-, -O2C-NR-, P(R1R2)-, N(R1R2)-, O(R1)-, P(OR1)(OR2)O-, およびS2(R)- からなる群より選択され、
R, R1, およびR2は独立して-H, 1〜50の炭素原子を含む直鎖または枝分かれアルキル鎖、フェニル基、フェニル基以外のアリール基、およびヘテロ芳香族基からなる群より選択され、
各々のAおよびCは独立してBとの1つの接続点をもつ
ことを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
Bは2つの接続点をもつ有機フラグメントであり、1つが部分Aと結合し、1つが部分Cと結合することを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
Bは単結合であることを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項7】
BおよびCは、各々独立して、1ないし50の炭素原子をもつメチレン鎖、1ないし20のフェニルをもつフェニレン鎖、1ないし20のチオフェニレンをもつチオフェニレン鎖、1ないし20のフェニルビニレンをもつフェニレンビニレン鎖、枝分れ炭化水素鎖、1ないし20のエチレンオキシドをもつエチレンオキシド鎖、1ないし20のビニルカルバゾール単位をもつオリゴ(ビニルカルバゾール)鎖からなる群より選択され、
Bは2つの接続点をもち、
Cは1つの接続点をもつ
ことを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項8】
CはフラグメントBと結合する1つの接続点をもつ分子フラグメントであることを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項9】
Cは-H,アリール基、N-カルバゾイル、α-フルオレニル、-SiOR3、-SiCl3、色素、ドナー-アクセプタ色素、光還元色素、多光子吸収発光団、メチレンブルー、オリゴヌクレオチドストランド、ペプチド鎖からなる群より選択されることを特徴とする請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
Cはカルバゾール、ビス−スチリルベンゼン、シアニンおよびチオフェンからなる群より選択されることを特徴とする請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
前記リガンドA-B-Cは、オクタンチオール、ドデカンチオール、ヘプタンチオール、8-(9H-カルバゾール-9-イル)オクタン-1-チオール、8-(9H-カルバゾール-9-イル)ドデカン-1-チオール、3-メルカプトプロピオン酸、ビス[2-(ジメチルアミノ)エチル]2-メルカプトペンタジオエート、3{2,5-ビス[(E)-2-(4-ホルミル-(フェニル)エテニル]フェノキシ}プロピル-4-(1,2-ジチオラン-3-イル)ブタノエートおよびこれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする請求項8に記載の組成物。
【請求項12】
前記金属塩はAgBF4であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記色素が多光子吸収色素であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
二光子断面が1×10-50 cm4 photon-1 sec-1を超えることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項1】
金属ナノ粒子、金属塩、色素およびポリマーマトリックスからフィルムを形成し、
前記フィルムを放射線で露光し、それによって導電性金属のパターンを生成する
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ナノ粒子は、式A-B-Cをもつリガンドの混合物をもつ銀のナノ粒子であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Aは、金属ナノ粒子表面に結合できる孤立電子対をもつ少なくとも1つの原子をもつ分子もしくはイオンのフラグメントであるか、または金属ナノ粒子表面に結合できる不飽和の分子もしくはイオンのフラグメントであり、フラグメントをBと結合するための接続点を含むことを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
AおよびCは、各々独立して、-S-, -O-, -O2C-, -S-S-R, -O3S-, -S2C-NR-, -O2C-NR-, P(R1R2)-, N(R1R2)-, O(R1)-, P(OR1)(OR2)O-, およびS2(R)- からなる群より選択され、
R, R1, およびR2は独立して-H, 1〜50の炭素原子を含む直鎖または枝分かれアルキル鎖、フェニル基、フェニル基以外のアリール基、およびヘテロ芳香族基からなる群より選択され、
各々のAおよびCは独立してBとの1つの接続点をもつ
ことを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
Bは2つの接続点をもつ有機フラグメントであり、1つが部分Aと結合し、1つが部分Cと結合することを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
Bは単結合であることを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項7】
BおよびCは、各々独立して、1ないし50の炭素原子をもつメチレン鎖、1ないし20のフェニルをもつフェニレン鎖、1ないし20のチオフェニレンをもつチオフェニレン鎖、1ないし20のフェニルビニレンをもつフェニレンビニレン鎖、枝分れ炭化水素鎖、1ないし20のエチレンオキシドをもつエチレンオキシド鎖、1ないし20のビニルカルバゾール単位をもつオリゴ(ビニルカルバゾール)鎖からなる群より選択され、
Bは2つの接続点をもち、
Cは1つの接続点をもつ
ことを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項8】
CはフラグメントBと結合する1つの接続点をもつ分子フラグメントであることを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項9】
Cは-H,アリール基、N-カルバゾイル、α-フルオレニル、-SiOR3、-SiCl3、色素、ドナー-アクセプタ色素、光還元色素、多光子吸収発光団、メチレンブルー、オリゴヌクレオチドストランド、ペプチド鎖からなる群より選択されることを特徴とする請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
Cはカルバゾール、ビス−スチリルベンゼン、シアニンおよびチオフェンからなる群より選択されることを特徴とする請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
前記リガンドA-B-Cは、オクタンチオール、ドデカンチオール、ヘプタンチオール、8-(9H-カルバゾール-9-イル)オクタン-1-チオール、8-(9H-カルバゾール-9-イル)ドデカン-1-チオール、3-メルカプトプロピオン酸、ビス[2-(ジメチルアミノ)エチル]2-メルカプトペンタジオエート、3{2,5-ビス[(E)-2-(4-ホルミル-(フェニル)エテニル]フェノキシ}プロピル-4-(1,2-ジチオラン-3-イル)ブタノエートおよびこれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする請求項8に記載の組成物。
【請求項12】
前記金属塩はAgBF4であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記色素が多光子吸収色素であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
二光子断面が1×10-50 cm4 photon-1 sec-1を超えることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2008−147168(P2008−147168A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−270125(P2007−270125)
【出願日】平成19年10月17日(2007.10.17)
【分割の表示】特願2002−550143(P2002−550143)の分割
【原出願日】平成13年12月17日(2001.12.17)
【出願人】(503217037)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月17日(2007.10.17)
【分割の表示】特願2002−550143(P2002−550143)の分割
【原出願日】平成13年12月17日(2001.12.17)
【出願人】(503217037)
【Fターム(参考)】
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