説明

副作用を減少させる、TGF−ベータ刺激因子及び追加の剤

本発明は、TGF−ベータ刺激剤の、特に医薬剤のトリフェニルエチレン類の構成要素の使用であって、循環器系疾患、自己免疫疾患又は神経変性の症状の防止、予防、処置又は回復のための使用に関する。特に、トリフェニルエチレンの副作用を軽減するため、1又は複数の追加の活性医薬剤と組み合わせたトリフェニルエチレン剤からなる、改善された組成物を記載すると共に請求する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TGF−ベータ刺激剤の、特に医薬剤のトリフェニルエチレン類の構成要素の使用であって、循環器系疾患、自己免疫疾患又は神経変性の症状の防止、予防、処置又は回復のための使用に関する。特に、トリフェニルエチレンの副作用を軽減するため、1又は複数の追加の活性医薬剤と組み合わせたトリフェニルエチレン剤からなる、改善された組成物を記載すると共に請求する。
【背景技術】
【0002】
中年及び老年の多くの一般的疾患には、胎児及び出生後初期の発達の間に構築した、健康な組織構造の緩やかな衰退がある。例えば、血管壁の同心状の3層構造が、コレステロール、平滑筋細胞、カルシウム、細胞外マトリクス及び免疫系の細胞を含有する、アテローム斑の緩やかな成長により破壊される。自己免疫状態において、自己抗原に対して方向付けられた抗体の作用は、組織構造の慢性的破壊を媒介する。同様に、神経変性状態、例えばアルツハイマー病は、不溶性細胞外マトリクスタンパク質の凝集及び活性化免疫細胞の動員の結果である。
【0003】
10年以上前、我々は、広範な成体組織の健康な構造の維持は、活発なプロセスであり、増殖因子ベータ型(TGF−ベータ)スーパーファミリーの形質転換においてサイトカインはこの活発な維持の中で重要な媒体であることを提案した(例えば、Biochem Soc Trans. 1995 May;23(2):403-6; Biol Rev Camb Philos Soc. 1995 Nov;70(4):571-96を参照)。この提案は、保護サイトカイン予測と呼ばれ、当初は議論の余地があったが、その後多様な実験データにより支持された(例えば、Arterioscler Thromb Vase Biol. 2004 Mar;24(3):399-404及びその中の参考文献を参照)。例えば、マウスを部分的にTGF−ベータ欠損にさせた場合(tgfbl遺伝子のヘテロ接合欠損によるか、又は中和抗体もしくは可溶性受容体の投与による)、アテロームに対する感受性が顕著に増加した(J Cell Sci. 2000 Jul;113(13):2355-61 ; Arterioscler Thromb Vase Biol. 2002 Jun l;22(6):975-82; Circ Res. 2001 Nov 9;89(10):930-4; Blood. 2003 Dec l;102(12):4052-8)。同様に、遺伝的改変動物におけるTGF−ベータレベルの減少によっても、ガン(例えば、Nat Med. 1998 Jul;4(7):802-7)及び自己免疫疾患(J Autoimmun. 2000 Feb;14(l):23-42)の素因の増加が示された。
【0004】
TGF−ベータレベルの減少が、成体組織構造の緩やかな衰退に関連する個々の疾患、例えば、アテローム、自己免疫疾患及び神経変性疾患の素因となる場合、TGF−ベータレベルを上昇させる剤が、結果として保護剤になるはずである(例えば、Nat Med. 1996 Apr;2(4):381-5; Curr Alzheimer Res. 2005 Apr;2(2): 183-6を参照)。
【0005】
ただし残念ながら、過剰なTGF−ベータレベルは、減少したレベルと同様に障害となり得る。サイトカインのTGF−ベータファミリーの構成要素は、既知の細胞外マトリスク形成の最も強力な誘導因子の一つである。その結果、TGF−ベータのレベルが高くなり過ぎると、組織構造がマトリスクタンパク質、例えばコラーゲン又はフィブロネクチンの過増殖産物を介して、組織を構成する細胞間の配列関係を最終的に破壊する(例えば、Proc Natl Acad Sci USA. 1993 Nov 15;90(22): 10759-63 for the effects of excessive TGF-beta on blood vessel wall architectureを参照)。
【0006】
結果として、成体組織構造の衰退に関連する疾患の予防のために最適な本発明は、最適範囲でのTGF−ベータのレベルを維持できる、1又は複数の剤の投与であろうことはすぐに明らかになった。
【0007】
TGF−ベータタンパク質の直接投与はこの基準を満たさない可能性がある。多くのタンパク質と同様に、TGF−ベータは不良な薬物動態を示すので(投与後数分以内に血液から除去される)(J Clin Invest. 1991 Jan;87(l):39-44)、継続投与は、タンパク質の組織濃度が所望の最適レベル範囲外となる、最高値と最低値を阻止することが必要となるだろうことは確かである。
【0008】
一方で、TGF−ベータの細胞産物の刺激は、(通常の環境下で)この繊維形成サイトカインの過剰活性が増強することを阻止する天然調節系を活用する。
【0009】
TGF−ベータは、既知の生物活性がない潜伏前駆体として産生される。この前駆体は、成熟サイトカインとLAP(又は潜伏期関連ペプチド(Latency-Associated Peptide))との間のタンパク質分解性切断を経験した各単量体であるTGF−ベータ遺伝子産物の、ジスルフィド結合二量体からなる。ただし、二量化LAPは成熟サイトカインに非共有的に結びつき、この錯体は従来のTGF−ベータ受容体に結合できない。細胞外環境に放出されると(共有的又は非共有的相互作用を介して、様々な異なるTGF−ベータ結合タンパク質結びつく可能性があり)、潜伏前駆体が活性化ステップに置かれる。少なくともインビトロ(in vitro)では、広範な条件(例えば加熱、極端なpH、カオトロピック剤、プロテアーゼ及び特定のタンパク質:タンパク質相互作用、例えばインテグリンとの相互作用)で非共有錯体を解体する、LAP内でのコンフォメーション変化がもたらされる。このプロセスは図1で説明する。
【0010】
この活性化プロセスがしっかりと調節され、多数の重要な機能を提供する。(1)TGF−ベータを、ある細胞型から産生させ、その後近傍細胞にその影響を及ぼすために続いて活性化される遠隔部位で、細胞外マトリクス中に局在化させる。(2)遺伝子転写、翻訳及び排出が調節されれば可能であるような、TGF−ベータ活性のレベルの動的な制御を様々な因子にさせる。(3)フィードバック制御により、危険なほど高レベルのTGF−ベータ活性が増強することを阻止する。
【0011】
このような正のフィードバックループはプロテアーゼ阻害剤プラスミノーゲン活性化阻害因子−1(PAI−1)によって媒介される。PAI−1レベルは、従来のTGF−ベータ細胞表面受容体を経由するTGF−ベータ活性により、ほとんどの細胞内において転写レベルで著しく調節される(J Biol Chem. 1991 Jan 15;266(2):1092-100)。その結果、TGF−ベータレベルが上昇し、PAI−1産生レベルも同様に上昇する。PAI−1はTGF−ベータ活性化の阻害剤として作用することがよく知られている(Cell Biol. 1990 Aug;l l l(2):757-6))が、その阻害が媒介される正確な分子機構はいくらか議論の余地がある。PAI−1は、潜伏TGF−ベータ前駆体の最初の産生の際に、LAPと成熟サイトカインとの間の細胞内切断に関与するプロテアーゼの作用を阻害するか、あるいはLAPを切断し活性サイトカインを放出する酵素(プロテアーゼに対するものの可能性が最も高い)を阻害している可能性が高い(Bioessays. 2006 Jun;28(6):629-41 for a discussion of these issuesを参照)。
【0012】
PAI−1産生はTGF−ベータ活性により刺激され、且つそれ自身TGF−ベータ活性を阻害するため、特定組織においてTGF−ベータ活性のレベルが高くなり過ぎることを阻止する強力なフィードバックループを形成する。ただし、TGF−ベータは他のプロテアーゼ阻害剤の産生を刺激し(例えば、メタロプロテインアーゼの組織−阻害剤(Tissue-inhibitors of Metalloproteinases; TIMPs))、潜在前駆体の過剰産生に対する十分な保護を共に提供する、多数の並列なフィードバックループが存在する可能性がある。
【0013】
残念ながら、活性TGF−ベータタンパク質の直接投与(薬理学的投与による投与でも、サイトカイン自発的活性異形をコードする変化したTGF−ベータ遺伝子を用いる遺伝操作による投与でもよい)は、この調節プロセスを回避してTGF−ベータ活性のレベルを過剰に上昇させる。このような研究においては通常、組織構造の急速な崩壊を伴う、組織繊維化の蔓延が観察される。
【0014】
一方で、潜在TGF−ベータ前駆体の産生を刺激する剤の投与は、過剰な活性の危険性及び繊維形成の発生がなく、そのレベルが準最適であるいずれかの組織においてTGF−ベータ活性を上昇させることができる。このため、我々はTGF−ベータ産生刺激因子が、成体組織構造の衰退に関連する疾患、例えば限定するものではないが、循環器系疾患、自己免疫疾患、及び神経変性疾患(例えば、2006年8月1日に発行された米国特許第US7,084.171号、2002年6月25日に発行された米国特許第6,410,587号を参照)の処置のための治療剤の、有用な新規クラスであると仮定した。
【0015】
TGF−ベータ産生刺激因子の前記クラスは、トリフェニルエチレン(TPE)誘導体であり、例えばタモキシフェン(TMX)がある。当初は、エストロゲン受容体調整因子として開発されたので、クラスとしてのTPEは多様な薬理活性を有する。2つのエストロゲン受容体タンパク質(ERα及びERβ)への結合に加え、種々のTPEが、ATP結合カセット送達タンパク質(Biochem Biophys Res Commun. 1997 Jun 27;235(3):669-74)、酵素捨てロールΔ7,8イソメラーゼ(J Clin Oncol. 1995 Dec;13(12):2900-5)及びP−糖タンパク質トランスポーター(Biopharm Drug Dispos. 2004 Oct;25(7):283-9)の阻害剤として作用し、並びに抗酸化剤(Biochem Soc Symp. 1995;61 :209-19)として作用することが報告されている。ただし、加えて、多数のTPE、特に具体的にはタモキシフェンは、多様な細胞型において、インビトロ(Am J Clin Oncol. 1991;14 Suppl 2:S15-20; Biochem J. 1993 Aug 15;294(l):109-12)においてもインビボ(in vivo)(J Steroid Biochem MoI Biol. 1993 Dec;47(l-6):137- 42; Nat Med. 1995 Oct; 1(10): 1067-73)においても、TGF−βの産生を刺激することが報告されている。
【0016】
この活性は、正常成体組織構造の衰退に関連する疾患、例えば循環器系疾患(例えば冠動脈疾患及び再狭窄)、並びに自己免疫疾患及び神経変性障害(例えば、米国特許第7,084,171号及び関連特許)の防止のため、TPE、例えばタモキシフェンの使用を請求させる、TGF−ベータ産生刺激因子としての活性である。
【0017】
過去10年の間、多様な臨床データが集められ、これはTPE、特にタモキシフェンを、正常成体組織構造の衰退に関連する当該疾患を防止するために、特に、冠動脈疾患に続発する心筋梗塞による死を防止するために使用できるという、我々の認可された請求(例えば、米国特許第5,472,985号、米国特許第5,595,722号、米国特許第5,599,844号、米国特許第5,770,609号、米国特許第5,773,479号、米国特許第5,847,007号、米国特許第5,945,456号、米国特許第6,117,911号、米国特許第6,166,090号、米国特許第6,197,789号、米国特許第6,251,920号、米国特許第6,262,079号、米国特許第6,395,494号、米国特許第6,410,587号、米国特許第7,084,171号、各々本明細書に参照により組み込まれる)を支持するものである。例えば、Braithwaiteとその共同研究者等は、乳ガンを防止するためのタモキシフェンで処理された27,000人以上の女性のメタ分析の結果を示し、慢性的なタモキシフェン使用者においては心筋梗塞が死因となる相対危険性は0.67であることがわかった(J Gen Intern Med. 2003 Nov;18(l l):937-47)。これは、危険性に言い換えると33%の低下であり、より危険性の高い群、例えば男性において再現する場合、英国の1年だけでも心筋梗塞による死亡が少なくとも10,000人少なくなるであろう。同様に、Clarkeとその共同研究者等は、タモキシフェン処置が、アテローム疾患の負担の代理マーカーである内皮機能を改善したことを実証した(Circulation. 2001 Mar 20;103(l l): 1497-502)。これらの結果はわれわれの最近の概説に要約されている(Grainger & Schofield, Circulation (2005) 112:3018-24、本明細書に参照により組み込まれる)。
【0018】
残念ながら、正常成体組織構造の衰退に関連する少なくとも1の疾患における有効性についてのこのような肯定的な実証にもかかわらず、タモキシフェンはER陽性乳ガンの処置及び防止以外の使用には未だ広く採用されていない(エストロゲン受容体調整因子としての、その代替的な薬理的機能に主に依存する)。
【0019】
熱意欠如の明白な理由は、タモキシフェンの使用に伴う煩わしい副作用である。タモキシフェンが、体液過剰のために、タモキシフェン、及びTPE分類の他の構成要素について報告された薬理学的及び分子的相互作用の様々な影響(有益なものもあれば、そうでないものもある)を有するのは当然のことである。今日、使用している低分子医薬剤は、その意図する標的に真に特異的であり、副作用は他の有効な医薬の応用をしばしば制限する。
【0020】
薬物の設計及び開発の際に、副作用の影響を制限するために採用できる一般的手法が多数ある。ある手法は、原剤の意図する有益な影響を保持するが、より特異的で分子相互作用及び薬理的影響の多様性が少ない、完全に新規な組成物を設計又は同定するものである。ただし、この手法は複数の主要な欠点がある。第一に、当該組成物を同定するための一般的な成功率の高い方法は存在しないとともに、それは副作用を有する原剤ですら、同定することが困難で、時間を浪費し且つコストがかかる可能性がある。第二に、一部又は全ての副作用が、標的の有益な影響に寄与する同じ分子の(1又は複数の)相互作用の、直接又は間接の結果であり得る。これらの例においては、副作用から独立した有益な影響のプロファイルを保持することはほとんど不可能であろう。
【0021】
以前から他でうまく使用されている第二の手法は、単一組成物中に複数の活性成分を組み合わせるものであり、この組み合わせは単独で投与される構成成分、又は同じ個体ではあるが異なる時に投与される同じ2つの成分のいずれよりも優れた特性を有する。
【0022】
2つの異なる概念が、組み合わせ手法の成功の基礎となる。
1つのシナリオによると、同じ影響を及ぼすが異なる分子作用機構を有する2つの薬物が組み合わされ、当該2つの成分が標的因子に相乗的影響を示すようにする。相乗的に作用する2つの成分の使用により、同じ有益な効果に到達するため、各成分を顕著により低い用量で投与することが可能になる。副作用はまた、相乗的増強を示さないならば(副作用が標的の影響とは異なる分子相互作用に依存するならば、相当する増強はないであろう)、煩わしい副作用が低下した状態で同じ有益な効果を与える可能性がある。確かに、たとえ2つの剤が相加的な(相乗的とは反対の)効果を示しても、組み合わせ組成物はなお有益な効果と同じ度合いで副作用の低下を示すであろう(2つの別々の処置としてよりも、単一の組成物としてこれらを投与することの利益はほとんど重要でないだろう)。単一の調製物中に、2つの活性成分を組み込む組成物の例は多数存在する。例えば、Plachetka 等 (1999年2月16日付の米国特許第5,872,145号)は、鎮痛剤、具体的にはNSAIDと5−HT受容体アゴニストとの組み合わせを、片頭痛の処置のために発明した。この組み合わせが、各々が最低限の有効用量超の用量では不所望の副作用を伴う単一の剤を、より高用量で投与することと、より一般的に関連する有効性レベルに到達するように、両活性成分を、各剤を別々に最低限の有効用量として通常考えられる用量未満で投与した。
【0023】
第二のシナリオによれば、組み合わせが同時に有効且つ安全であるように、組成物中の第二活性成分は第一活性成分の副作用に対抗させる意図がある。当該組成物は一般的ではないが、特許権を有する例は特定の応用において大いに成功している。例えば、エストロゲンのみでのホルモン補充治療は不所望の子宮肥大をもたらす。エストロゲンとプロゲストゲンとの組み合わせは、子宮に損傷のない女性が安全に使用できる組み合わせ錠剤をもたらし、一方子宮を摘出した女性における使用の場合は、無対抗のエストロゲンが同等に有効である(この場合、副作用それ自体は現れない)。この例によれば、副作用がかなり重篤、且つ生命を脅かし得るものですらあり(子宮内膜ガンの場合)、単一の組み合わせ組成物は1の活性成分を他の成分なしで患者が服用する可能性を排除するため、2つの活性成分を単一の組成物中で組み合わせることは、かなり臨床的に有益であることは明白である。
【0024】
TPE、例えばタモキシフェンは、TGF−ベータ産生刺激因子として良好な活性を有するが、より広い応用を制限する多数の副作用が確認されている。最も重要なことには、最も一般的に使用される用量(20 mg/日)でのタモキシフェンの慢性使用が、時に致命的になり得る血栓塞栓事象の、わずかではあるが重大な増加をもたらす。タモキシフェン慢性使用者におけるこの凝血原の増加傾向はまた、タモキシフェン使用者における致命的な脳血管性事故(脳卒中)の上昇の基礎となっており(J Gen Intern Med. 2003 Nov;18(l l):937-47)、その約90%は虚血性である(もともとは出血性と反対)。これらの凝血原性副作用は、患者が処置開始前に既に凝血原の傾向を示す可能性もあるため、TPEを冠動脈疾患の防止又は処置用として想定する場合、循環器系環境で具体的な懸念である。さらに、冠動脈疾患の危険性が上昇した患者はまた、虚血性脳卒中の危険性が上昇する可能性がある。他の副作用、例えば子宮内膜ガンの危険性の上昇も懸念となる。具体的には、女性に一般的な疾患、例えば自己免疫疾患(例えばリウマチ様関節炎)の処置のためにTPEを使用する場合がある。より少数の副作用も存在し、例えば顔面紅潮及びTPEのホルモン活性のその他の結果がある。これらのより少数の副作用は、患者の生活の質に重大な影響を及ぼし、重篤又は生命を脅かすような症状(例えば正常な成体組織構造の衰退に関連する疾患、例えば循環器系疾患、自己免疫疾患及び神経変性)の処置のためのこれらの剤の使用を排除する必要はないが、処置がより重篤な疾患のためであっても同様に当該医療の有効性を脅かすという、患者コンプライアンスの問題を引き起こす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
ここで、我々は正常成体組織構造の衰退に関連する疾患(例えば、循環器系疾患、自己免疫疾患、及び神経変性状態)の防止又は処置のためのTGF−ベータ産生刺激因子として有用な最初の組成物で、この広範な指示において以前に報告されたTGF−ベータ産生刺激因子の応用を制限する他の副作用を低減又は回避する組成物を報告する。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明は、少なくとも2つの活性成分(及びいずれかの賦形剤又は担体)を含んでなり、当該活性成分の少なくとも1つがTGF−ベータ産生刺激因子である場合、別の活性成分が第一活性成分の投与に関連する副作用を低減できる組成物及び治療剤の使用を提供する。
【0027】
さらに具体的には、本発明は、少なくとも2つの活性成分を含んでなり、当該活性成分の少なくとも1つが以下の式(I)の化合物である場合、別の活性成分が第一活性成分の投与に関連する副作用を低減又は無効にできる組成物及び治療剤の使用を提供する。
【0028】
【化1】

(式中、
1は、1、2又は3つのVにより任意に置換される(C1〜C6)アルキル、又はアリールであり、
2は、1、2又は3つのVにより任意に置換されるフェニルであり、又はR2は、(C1〜C12)アルキル、ハロ(C1〜C12)アルキル、(C3〜C6)シクロアルキル、(C1〜C6)アルキルシクロ(C3〜C6)アルキル、(C5〜C6)シクロアルケニル、又は(C1〜C6)アルキル(C5〜C6)シクロアルケニルであり、
3は、2−位においてRjで任意に置換され、さらに1、2又は3つのVにより任意に置換される水素又はフェニルであり、
4は、水素、ニトロ、ハロ、アリール、ヘテロアリール、アリール(C1〜C3)アルキル、ヘテロアリール(C1〜C3)アルキル、ハロ(C1〜C12)アルキル、シアノ(C1〜C12)アルキル、(C1〜C4)アルコキシカルボニル(C1〜C12)アルキル、(C1〜C12)アルキル、(C3〜C6)シクロアルキル、(C1〜C6)アルキルシクロ(C3〜C6)アルキル、(C5〜C6)シクロアルケニル、又は(C1〜C6)アルキル(C5〜C6)シクロアルケニルであり、ここでいずれかのアリール又はヘテロアリールは1、2又は3つのVにより任意に置換されてもよく、又は
5及びRjは共に、−CH2−CH2−、−S−、−O−(NH)−、N[(C1〜C6)アルキル]−、−OCH2−、O−C[(C1〜C6)アルキル]2−又は−CH=CH−であり、
-------は、単結合又は−C(B)(D)−であり、ここでB及びDは各々独立に水素、(C1〜C6)アルキル又はハロであり、
Vは、OPO32、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、メルカプト、(C1〜C4)アルキルチオ、ハロ、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、ニトロ、N(Rn)(R0)、シアノ、トリフルオロメトキシ、ペンタフルオロエトキシ、ベンゾイル、ヒドロキシ、アルキル、ベンジル、−OSO2(CH20-4CH3、U(CH21-4COORp、−(CH20-4COORp、−U(CH22-4ORp、−(CH20-4ORp、−U(CH21-4C(=O)Rk、−(CH20-4C(=O)Rk、−U(CH21-4k、−(CH20-4k、又は−U(CH22-4OC(=O)Rpであり、ここでUはO、N(Rm)、又はSであり、
Zは、−(CH21-3−、O、−OCH2−、−CH2O−、−C(=O)O−、N(Rq)−、C=O、又は共有結合であり、
kは、1又は2の(C1〜C6)アルキルで任意に置換されるアミノ、又は1又は2のさらなるN(RZ)、S又は非過酸化物Oを任意に含むN−へテロシクロ環であり、ここでRZは、H、(C1〜C6)アルキル、フェニル又はベンジルであり、
n及びR0は独立に、水素、(C1〜C6)アルキル、フェニル、ベンジル、又は(C1〜C6)アルコキシであるか、又はRn及びR0はそれが結合する窒素と共に、3、4、5又は6−員のヘテロシクロ環であり、
pは、H又は(C1〜C6)アルキルであり、及び
m及びRqは独立に、水素、(C1〜C6)アルキル、フェニル、ベンジル又は(C1〜C6)アルコキシである)
の化合物、又は当該化合物が、1−(4−[2−(ジエチルアミノ)エトキシ]フェニル)−2−(4−メトキシフェニル)−1−フェニルエタン−1−オール(MER25)、
又は医薬的に許容可能なその塩。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、TGF−ベータの調節及び活性化に関連する経路を示す。略図はTGF−ベータ1に対して特異的なデータに基づくが、非常に類似する経路がTGF−ベータ2及びTGF−ベータ3を操作する。本明細書で定義されるTGF−ベータ産生刺激因子は、1又は複数の「活性化」印を付されたステップを利用可能な、局所性潜在TGF−ベータの量を増加させるため、任意の当該(又はここに示されない他の)プロセスに作用できる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
「約」なる用語は、考えられる値の周囲の区間を言う。本特許出願で使用される場合「約X」は、X−Xの10%〜X+Xの10%の区間、好ましくはX−Xの5%〜X+Xの5%の区間を意味する。
【0031】
本記載中での数値域の使用は、当該値域内の全ての個々の整数、及び所与の値域の最も広い範囲内の上限及び下限の数の全ての組み合わせを、本発明の範囲内に含むことを明確に意図している。それ故例えば、(とりわけ)式Iについて特定された1〜6の値域の炭素原子は、明確な例示の有無にかかわらず、1と6の間の全整数、及び上限及び下限の各組み合わせの全ての準値域を含むことを意図する。
【0032】
本明細書で使用される場合、「含んでなる」なる語は、構成成分が製造プロセスの一部として共に混合されるように、規定された剤の固定された用量組み合わせが、本質的に均一な混合物を形成する、本発明の組成物を含んでなることを意味すると解釈されるべきである。誤解を避けるため、本発明の組成物を含んでなる2つの剤の共投与は、同時であっても、本明細書で定義される「混合物」を構成しない。ただし、上記の通り、当該混合物(例えば塩)を含んでなる構成成分の化学的結合が想定され、本定義に従う混合物(又は3以上の構成成分の混合物における2つの構成成分)を構成する。
【0033】
本明細書で使用される場合、「TGF−ベータ産生刺激因子」はサイトカイン、TGF−ベータの細胞産生を上昇させる剤を記載するために使用する。剤がTGF−ベータ産生刺激因子であるかを決定するための方法は、当業者に周知である(例えば、米国特許第6,410,587号を参照、これは本明細書に参照により組み込まれる)。例えば、培養細胞をインビトロで候補剤に晒してもよく、一定期間経過後にTGF−ベータ又はmRNAの量を周知の方法(例えば定量PCR又はELISA)で評価する。任意の媒体単独で処理した細胞と比較して、候補剤で処理した細胞においてTGF−ベータmRNA又はタンパク質の量が増加し、且つ当該差異が、当業者に周知の方法(例えばスチューデントt検定)で評価され統計的に有意である場合、当該剤はTGF−ベータ産生刺激因子であると判明する。あるいは、動物をインビボで候補剤に晒してもよく、一定期間経過後に、様々な標的組織において、TGF−ベータ又はmRNAの量を周知の方法(例えば定量PCR、免疫組織染色及びELISA)を用いて評価する。候補剤で処理した動物からの1又は複数の組織では、任意の媒体単独で処理した動物からの同じ組織と比較して、TGF−ベータmRNA又はタンパク質の量が増加し、且つ当該差異が統計的に有意である場合、当該剤はTGF−ベータ産生刺激因子であると判明する。TGF−ベータ産生刺激因子を定義するための、多数の確かな検査が当業界で報告されていること、及び様々な因子により、1又は複数の試験において偽陰性の結果、つまり剤がTGF−ベータ産生刺激因子である可能性を排除しない試験において陰性の結果がもたらされ得ることに留意せよ。結果として、1つの試験で剤がTGF−ベータを増加させることの、確かで再現性のある実証は、それだけで候補剤がTGF−ベータ産生刺激因子であることを確定的に証明するのに十分である。
【0034】
本明細書で使用される「TGF−ベータ」なる語は、TGF−ベータ産生刺激因子の任意の哺乳類のアイソフォーム、例えばTGF−ベータ1、TGF−ベータ2及びTGF−ベータ3、並びにそのヘテロ二量化産物、TGF−ベータ1.2、TGF−ベータ1.3及びTGF−ベータ2.3を意味するために使用される。
【0035】
本明細書で使用される「アスピリナート」なる語は、塩を形成できるカルボキシル基を含有するアスピリン様化合物の一般的分類を指すために使用され、ここには、アスピリンの塩(アセチルサリチル酸)及びサリチル酸と共にカルボン酸塩を形成できる、構造IIIの化合物の分類の構成要素が含まれる。本明細書で使用されるアスピリナートなる語は、その塩形態での化合物のことを指す(つまり、アセチルサリチル酸ナトリウムは、この指示によるアスピリナートであるが、アセチルサリチル酸自身は該当しない)。正に帯電したアスピリナートの対イオンには、限定するものではないが、ナトリウム、カリウム、銅又は有機塩基(例えばタモキシフェン)由来の正に帯電したイオンがある。
【0036】
断りのない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する分野の通常の知識を有する専門家により普通に理解されるのと同じ意味を有する。同様に、本明細書で述べられる全ての刊行物、特許出願、全ての特許及び全ての他の参考文献は、(法的に許可される場合)参照の手段により組み込まれる。
【0037】
好ましくは、一般式(I)の化合物が、式(II)
【化2】

(式中、
Zは、C=O又は共有結合であり、
Yは、H又はO(C1〜C4アルキル)であり、
10及びR11は、独立に(C1〜C4)アルキルであるか、それが結合するNと共に飽和へテロシクロ環を形成し、
12は、エチル又はシクロエチルであり、
13は、H、又はR12と共に−CH2−CH2−又は−S−であり、
14及びR15は、独立にH、I、O(C1〜C4)アルキルから選択される)
又は医薬的に許容可能なその塩、
のトリフェニルエチレン構造である。
【0038】
より好ましくは、化合物(II)はタモキシフェン、ドロロキシフェン又はトレミフェンである。
【0039】
組成物における第二活性成分は、1又は2のカテゴリーから選択されてもよい。
第一には、第一活性成分を本発明の組み合わせ組成物の一部としてではなく、単独で投与した場合よりも、第一活性成分をより低用量で投与できるよう、カテゴリーは第一活性成分(TGF−ベータ産生刺激因子)に相乗的態様で作用する化合物である。
【0040】
例えば、本発明の組成物が冠動脈疾患の処置又は防止を意図する場合、第一カテゴリーにおいて好適な活性成分は、スタチン(例えばアトルバスタチン)、フィブラート(例えばフェノフィブラート)、又はその他の脂質低下剤(例えばナイアシン)、PPARアゴニスト(例えばロシグリタゾン)、ベータブロッカー(例えばアテノロール)、又はACE阻害剤(例えばカプトプリル)がある。各々の場合において、疾患の発症又は進行を低減させる剤の、同じ目的で投与されるTGF−ベータ産生刺激因子との共投与は、より低用量のTGF−ベータ産生刺激因子の投与を可能にする。その結果、TGF−ベータ産生刺激因子の投与に関連する副作用を低減又は除去し、2つの活性成分のいずれかを単独で投与することと比較して、患者のリスク:利益プロファイルの改善をもたらす。
【0041】
言い換えると、相乗的に作用する2つの剤の組み合わせにより、一方又は両方の剤が、2つの活性成分のいずれかを単独で投与した場合よりも低用量で投与することが可能になる。より低用量の使用は、有効性レベルは同じで、副作用が低減されたことと関連するだろう。
【0042】
好ましくは、第二活性成分はこの第一のカテゴリーから選択され、第二活性成分はスタチンであり、より好ましくは第二活性成分はシンバスタチン又はアトルバスタチンであるだろう。
【0043】
重要なことには、本発明の組み合わせ組成物中の第二活性成分は、第一のカテゴリーから選択され、組み合わせ組成物中の第一活性成分の用量は、本発明の組み合わせ組成物の一部としてではなく、別々に投与された場合の同じ活性成分の最適用量より低用量であることが必要である。好ましくは第一活性成分は、単独で投与される場合の最適用量の1〜80%で、より好ましくは単独で投与される場合の最適用量の10〜50%で、組み合わせ組成物中において使用されるだろう。
【0044】
第二には、本発明の組み合わせ組成物中の第二活性成分として使用に適した剤のカテゴリーには、第一活性成分、TGF−ベータ産生刺激因子の包含に起因する、1又は複数の特定の副作用を、防止、低減又は無効化する化合物がある。
【0045】
例えば、本発明の組成物が、TGF−ベータ産生刺激因子としての構造Iのトリフェニルエチレンを含む場合、トリフェニルエチレンの凝血原性副作用を低減又は無効化するために、抗凝血活性を有する剤が選択されるであろう。従って、第二カテゴリー中の剤には、限定するものではないが以下のものがある。抗血小板剤(例えば、アスピリン、アスピリナート、クロピドグレル、チロフィバン、RGD−含有ペプチド、アデノシン及び関連する剤、及びプロスタサイクリン及び長命類似体)、経口抗凝固剤(例えば、ワルファリン、クマリノイド(coumarinoids)、ヘパリン、例えば低分子量ヘパリン、直接トロンビン阻害剤、例えばキシメラガトラン、及び因子Xa阻害剤、例えばヒルジン)、並びに同様の抗凝固活性を有するその他の剤がある。
【0046】
好ましくは、第二活性成分が第二カテゴリーから選択される場合、第二活性成分は抗血小板剤であり、好ましくは第二活性成分は構造(III)の化合物であり、好ましくは第二活性成分はアスピリン又はクロピドグレルである。
【0047】
【化3】

(式中、
5は、水素、ハロ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、CF3、−NRcd、−C(=O)ORe、−OC(=O)ORe、−C(=N)ORe、(C1〜C6)アルキル又は(C1〜C6)アルコキシであり、
6は、水素又は−XRaであり、
7は、−C(=O)YRbであり、
8は、(=O)nであるか、又はR8は、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ又は(C1〜C6)アルカノイルオキシであるとともに、チオフェン硫黄でスルホニウム塩を形成し、ここで関連する対イオンは、医薬的に許容可能なアニオンであり、
9は、水素、−C(=O)Rh又は−C(=O)SRhであり、
n=0、1又は2であり、
Xは、酸素又は硫黄であり、
Yは、酸素又は硫黄であり、
aは、(C1〜C6)アルカノイルであり、
bは、水素又は(C1〜C3)アルキルであり、
c及びRdは、各々独立に、水素、(C1〜C4)アルキル、フェニル、C(=O)OH、C(=O)O(C1〜C4)アルキル、CH2C(=O)OH、CH2C(=O)O(C1〜C4)アルキル、又は(C1〜C4)アルコキシであるか、又はRc及びRdは、結合する窒素と共に、3、4、5又は6員のヘテロシクロ環であり、及び
e〜Rjは、独立に水素又は(C1〜C6)アルキルである)
の化合物、又は医薬的に許容可能なその塩であり、
6及びR7が、それが結合する環の隣接位置上に、又は当該環の2−及び5−位置上にある場合、及びさらにR6が水素の場合、R7はそれが結合する環の2−又は5−位置上にあるとともに、R4は(C1〜C4)アルカノイルオキシである。
【0048】
アスピリンとサリチル酸を伴う構造IIIの当該活性成分は、本明細書でアスピリナートと呼ばれる。アスピリナートがカルボン酸部分を(サリチル酸中で)含有する場合、定義にはまた塩状態(例えばナトリウムアスピリナート)を含む。好ましくは、本発明による組成物において、対イオンはナトリウム、カリウム又は銅である。
【0049】
重要なことには、本発明の組成物中の第二活性成分が第二カテゴリーから選択される場合、用量は、第一活性成分の使用に関連する副作用を十分低減又は無効化するように選択される。第一カテゴリーから選択された剤で使用された用量とは異なり、第二カテゴリーから選択された剤は、当該剤が第一化合物の医原性副作用に類似する疾患の処置を意図する場合に使用される用量に類似する用量で使用する。例えば、本発明の組成物中で、第一活性成分がタモキシフェンである場合、タモキシフェンの使用に関連する主要な副作用は、薬物の凝血原性影響の結果である虚血性脳梗塞である。従ってこの例によれば、本発明の組成物は、第二活性成分として副作用を低減又は無効化する抗凝血剤を含み、一方でタモキシフェン(TGF−ベータ産生刺激因子)に疾患の防止又は処置をさせる。従って当該組成物は、タモキシフェンを、TGF−ベータ産物を最大限に刺激する用量で(例えば1日当たり20mg)含むとともに、例えばクロピドグレル等の抗凝固剤を、凝血原状態に関連する疾患を処置するのに典型的に使用される用量で(例えば1日当たり75mg)含む。例えば、第二成分の用量は第一成分の用量の2〜4倍の間であってもよい。
【0050】
いくつかの剤は両方のカテゴリーの構成要素であり得ることが想定される(例えば、本発明の組成物中の第二活性成分が、標的にされる疾患の処置において相乗的な利益をそれ自身が提供し、同時に第一活性成分の副作用を低減するよう作用してもよい)。
【0051】
本発明の組成物は、少なくとも1つがTGF−ベータ産生刺激因子である、複数の活性成分の固定された用量の組み合わせである可能性がさらに想定される。典型的には、当該組成物は2又は3つの活性成分を有してもよい。典型的には、当該組成物はTGF−ベータ産生刺激因子に加えて、第一又は第二のいずれかのカテゴリーから選択される1つのさらなる活性成分か、又は他の2つの活性成分(一方が2つのカテゴリーの各々から選択される場合、又は両方が同じカテゴリーから選択される場合がある)のいずれかを含有する。好ましくは、組成物が3つの活性成分を含有する場合、TGF−ベータ産生刺激因子はタモキシフェンであり、第二活性成分はアスピリンであり、且つ第三活性成分はクロピドグレルである。
【0052】
重要なことには、本発明の組成物は混合物として患者に投与される必要がある。2つの活性成分の別々の投与と比較した本発明の組成物の主要な利点は、安全性である。TGF−ベータ産生刺激因子、例えばトリフェニルエチレンの副作用は、特定の環境において重篤化し、致命的にすらなり得る。結果として、2つの剤の投与を別々にさせることは、不必要なリスクであり、患者が(偶然に又は故意に)一方の活性成分の投与が継続され、他方の活性成分は投与されないこともあり得る。このような環境では、患者が相当な害を被る可能性がある。第二活性成分が第一カテゴリーから選択された場合、その後の最適用量未満での単一の活性成分の継続投与は、おそらく医療の有効性の低下、又は単一の活性成分の用量増加を必要とし、個々の重大な副作用のリスクが上昇する。第二活性成分を第二カテゴリーから選択した場合、第一活性成分の継続投与は、副作用リスクの上昇に不必要に晒すことになるだろう。
【0053】
例えば、選択されたTGF−ベータ産生刺激因子がタモキシフェンであり、選択された第二活性成分がクロピドグレルである場合、本発明の組成物は、患者に対し、タモキシフェン又はクロピドグレルいずれかを単独で投与すること、及び2つの物質を別々に投与することよりも、患者に対して顕著な利益をもたらす。最も具体的には、2つの物質の別々の投与は、患者が(偶然に又は故意に)タモキシフェンを受け続け、且つクロピドグレルを中止する可能性がある。このような環境では、タモキシフェンが症状及び疾患の進行を回復させ続けても、患者にとっては、タモキシフェンの凝血原の影響による脳卒中になるリスクが上昇している。タモキシフェンの凝血原の影響が抗凝血剤、例えばクロピドグレルにより妨害されない場合、個々における当該リスクがより高くなる。
【0054】
言い換えると、2つの医薬剤の単一の医薬品(錠剤、カプセル、ゲル又はその他の投薬形態)としての提供は、2つの構成成分の所望の影響がともに、別々に投与された場合のいずれかの剤の影響とも異なる場合、2つの医薬剤の別々の投与よりも相当な有益性を提供する。原理上は、別々の医薬品として(例えば、錠剤、カプセル又はゲル)ではなく、同時に化合物を投与することにより達成可能であるかもしれないが、それにもかかわらず、単独で投与されるいずれの化合物にも類似する、異なる(及びそれほど望ましくない)影響に到達するリスクは、この2つが単一の医薬品として投与される場合よりも大きい。2つの医薬剤の組み合わせと、単独で投与されるもののいずれかとの間の効果プロファイルにおける差異が顕著である場合、その上昇したリスクは許容し難い。
【0055】
本発明はまた、少なくとも2つの活性成分を混合物として含んでなる医薬組成物を提供し、これは、TGF−ベータ産生刺激因子である化合物、好ましくは式(I)の化合物、より好ましくは式(II)の化合物、又は医薬的に許容可能なその塩を、第一化合物の投与に関連する副作用を低減する化合物と共に含むとともに、少なくとも1の医薬的に許容可能な賦形剤及び/又は担体を含む。本明細書の目的に応じて「混合物」なる用語は、本発明による2つの剤から構成される化学的結合、例えば塩を任意に含んでもよい。あるいは、化学的組み合わせは、エステル、又はアミド又は、両構成成分に完全な医薬活性を保持させる任意の類似する共有化学結合でもよい。本発明による当該組成物の例は、タモキシフェンアスピリナート塩(タモキシフェンがTGF−ベータ産生刺激因子として作用する場合、アスピリナート対イオンはTGF−ベータ産生刺激因子の相乗的刺激因子である。以下実勢例1を参照)及びタモキシフェンの凝血原性副作用を低減する抗血小板剤である。「二重作用」塩は、タモキシフェンアスピリナート及びクロピドグレルの混合物から構成される組成物が本発明の範囲に入るよう、本発明によるその他の剤とさらに組み合わせてもよい。
【0056】
医薬的に許容可能な塩は、無機酸、例えば塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素、硫酸、リン酸、二リン酸及び硝酸の塩付加、又は有機酸、例えば酢酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、コハク酸、クエン酸、乳酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、パモ酸及びステアリン酸の付加塩を意味する。また例えば水酸化ナトリウム又はカリウム等の塩基から形成される塩を使用できる場合は、本発明の範囲内である。他の医薬的に許容可能な塩の例として、"Salt selection for basic drugs", Int. J. Pharm. (1986), 33, 201-217を参照できる。
【0057】
医薬組成物は、固体の形態、例えば粉末、顆粒、錠剤、ゼラチンカプセル、リポソーム又は坐剤があり得る。適切な支持固体は、例えばリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、乳糖、デキストリン、スターチ、ゼラチン、セルロース、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリジン及びワックスがある。他の適切な医薬的に許容可能な賦形剤及び/又は担体は当業者に周知であるだろう。
【0058】
本発明による医薬組成物はまた、液体形態として調製することができ、例えば溶液、エマルション、懸濁物又はシロップがある。適切な支持液体には、例えば水、有機溶媒、例えばグリセロール又はグリコール、並びに様々な比率で水中のその混合物があり得る。
【0059】
具体的には、本発明による好ましい組成物が以下の、
タモキシフェン及びアスピリン、ドロロキシフェン及びアスピリン又はトレミフェン及びアスピリン、
タモキシフェン及びクロピドグレル、ドロロキシフェン及びクロピドグレル又はトレミフェン及びクロピドグレル
タモキシフェン及びアスピリン及びクロピドグレル
タモキシフェン及びアトルバスタチン又はタモキシフェン及びシンバスタチン
タモキシフェンアスピリナート、ドロロキシフェンアスピリナート又はトレミフェンアスピリナート
タモキシフェンアスピリナート及びクロピドグレル又はタモキシフェンアスピリナート及びアトルバスタチン、
タモキシフェン及びナプロキセン又はタモキシフェンアスピリナート及びナプロキセン、
タモキシフェン及びガランタミン又はタモキシフェンアスピリナート及びガランタミン
及び(特定塩が既に指定されている場合)、任意の医薬的に許容可能なその塩、から選択される。
【0060】
本発明には化合物、組成物及び定義されたその使用が含まれ、ここで当該化合物は水和状態又は溶媒和状態である。
【0061】
本発明による好ましい組成物は、50mgのアスピリン又は50mgのクロピドグレル、又は50mgのアスピリン及びクロピドグレルそれぞれと複合した15mgのタモキシフェン(クエン酸塩としてもアスピリナート塩にしてもよい)からなり、当該組成物は錠剤形態にある(適切な医薬的担体又は賦形剤を伴う)。当該組成物の好ましい錠剤は、各日2回(又はそれ以上)で患者に投与されるであろう。このように一日用量を分割することの主な利点は、24時間にわたり最大の抗血小板活性を維持することである(1日当たり1回の投与と比較した場合、使用される抗血小板剤の薬物動態のため、次の投与がなされる前に活性は減衰する)。
【0062】
本発明によれば、本発明の組成物、又は医薬的に許容可能なその塩又はそれらを活性成分として含有する医薬組成物もしくは医薬品により防止又は処置されることが意図される障害には、特に以下のものがある。
自己免疫疾患、例えば多発性硬化症、リウマチ様関節炎、クローン病、グレーブス病、重症筋無力症、紅斑性エリテマトーデス、強皮症、シェーグレン症候群、自己免疫性糖尿病1型、
血管障害、例えば脳卒中、冠動脈疾患、心筋梗塞、不安定狭心症、アテローム又は脈管炎、例えば、ベーチェット症候群、巨細胞動脈炎、リウマチ性多発性筋痛、ヴェーゲナー肉芽腫症、脈管性チャーグ−ストラウス症候群、ヘーノホ−シェーンライン紫斑、及び川崎病、
喘息、アレルギー性鼻炎又は慢性肺動脈閉塞症(COPD)、
骨粗鬆症(低骨塩密度)、
腫瘍増殖、
器官移植拒絶及び/又は遅延移植又は臓器機能、例えば腎臓移植患者において、
乾癬、
アレルギー、
アルツハイマー病、及び神経変性による他の特発性認知症
パーキンソン病
ハンチントン病、
外傷性脳損傷(例えば、交通事故による頭部損傷)、及び急性外傷性損傷による慢性的後遺症。
【0063】
法的に許される場合、本発明はまた、本明細書に請求した組成物又は医薬品の治療有効量を患者に投与することにより、正常成体組織構造の減衰を含む疾患の症状の、処置、回復又は予防のための方法を提供する。
【0064】
本発明による医薬品の投与は、局所、経口、非経口の経路により、筋肉内注入等により実施できる。
【0065】
本発明による医薬品のための想定される投与用量は、使用される活性化合物の種類に応じて、0.1mg〜10gの間で含まれる。
【0066】
好ましくは、本発明の組成物の投与により、回復、処置又は防止される疾患は、以下のリストから選択される。
心臓血管疾患、例えばアテローム、及びアテロームの臨床的後遺症、例えば心筋梗塞、狭心症、不安定狭心症、脳卒中、一過性虚血性発作及び抹消閉塞性動脈疾患、
自己免疫疾患、例えばリウマチ様関節炎及び多発性硬化症
神経変性疾患、例えばアルツハイマー病及びパーキンソン病
【0067】
本発明の組成物は当業者に周知の方法を用いて容易に製造される。特に、個々の医薬活性成分は、当業者に周知の方法により合成され、多くは市販されている。2以上の活性成分が化学的に結合される場合を除き、本発明の組成物を構成する2以上の医薬的活性成分を、好ましくは均一な混合を達成するために微粉で、共に混合し、その後当業者に周知の技術を用いて適切な医薬的担体及び/又は賦形剤に添加する。その後、混合物は、いずれかの担体及び賦形剤と共に、ヒトへの投与に適する形態に、例えば錠剤、カプセル、液体懸濁物又は坐剤として、当業界で十分確立された方法を用いて調製される。
【0068】
本発明の組成物が、化学的に結合した、例えば塩のような2以上の医薬的活性成分を含む場合、その組み合わせは当業界で周知の方法を用いて調製される。例えば、タモキシフェンアスピリナート等の塩を調製するため、適切な溶媒(例えばDMSO又はエタノール)中でタモキシフェン遊離塩基の溶液を、等モル濃度のサリチル酸で処理する。この酸と塩基はその後共に反応し、塩(加えて水)を形成する。適切な時間経過(例えば一晩)後、例えば真空ポンプの使用により溶媒を除去し、固体塩を本発明の組成物として使用できる。他の対イオン交換方法は、当業界で周知であり、代わりの出発物質、例えばクエン酸タモキシフェン及びナトリウムアスピリナートから、タモキシフェンアスピリナートを調製するために同様に使用できる。
【0069】
本発明の組成物が、化学的に結合した、単一の共有的に連結した化合物である、2以上の医薬活性成分(例えば、4−ヒドロキシタモキシフェンとサリチル酸のエステル)を含む場合、当該エステルは当業者に周知の方法で調製される。例えば、適切な溶媒(例えばトルエン)中の4−ヒドロキシタモキシフェンとサリチル酸の混合物は、その構成成分の安定性に応じて、酸性触媒又は塩基性触媒のいずれかで、エステルの形成を誘導してもよい。あるいは、酸性の構成成分の活性化形態(例えば酸塩化物又は酸無水物)は、触媒の必要性のないヒドロキシル化構成成分と直接反応するため、最初に調製できる。当該活性化酸中間体の調製のための一般的方法、及びそれに続くエステル形成の使用は、当業者に周知である。
【0070】
以下の実施例は上記方法を説明するために提示され、本発明の範囲を限定すると考えるべきではない。
【実施例1】
【0071】
細胞培養物中でのタモキシフェン及びアスピリンの予期せぬ相乗効果
本発明による好ましい組成物は、第一活性成分としてのタモキシフェン(周知のTGF−ベータ産生刺激因子、例えば米国特許第6,262,079号及び米国特許第6,410,587号を参照)及びタモキシフェンの使用に関連する凝血原性副作用を低減するために選択された第二活性成分としてのアスピリンから構成される混合物である。
【0072】
本発明の組成物の有効性の主要態様である、TGF−ベータ産生の刺激に対する当該成分の組み合わせの影響を試験するために、我々は細胞培養物モデルおけるTGF−ベータmRNA及びタンパク質産物を刺激する、組み合わせ組成物の能力を比較するとともに、別々に投与された2つの剤と当該組み合わせを比較した。
【0073】
方法
我々は、本実験の標的細胞型として、体外移植組織由来のヒト大動脈管平滑筋細胞(Clonetics社)を選択した。これは当該細胞がタモキシフェンに応答してTGF−ベータ産生を刺激することが以前に示されているからである(例えばKirschenlohr et al. (1995) Cardiovasc. Res. 29:848-55を参照)。細胞をDMEM+20%ウシ胎仔血清(FCS)中で培養し(37℃、5%CO2)、0.02%トリプシン/EDTA(Gibco)を用いて1:2希釈で5日毎に継代培養した。
【0074】
実験のために、細胞を、1×105細胞/cm2で、12ウェルクラスタープレートに継代培養し24時間増殖させた。この時点で(「0時間」と示される)、培養培地中での媒体濃度が0.1%を超えないように試験剤を10%エタノール媒体中の細胞に添加する。その後細胞を実験に応じて24時間又は72時間のいずれかの時間インキュベートした。全処理条件は三重に確認した。
【0075】
tgfb1、tgfb2及びtgfb3のmRNAレベルは定量PCRで推定した。培地を除去し、製造業者の指示書に従い、Ambion RNAqueous 4PCR キット(Ambion 1914番)を用いてRNAを慎重に調製した。RNAの純度及び量は分光測定法で評価した。RNA完全性(integrity)の評価は、サンプルの小分割量(200 ng RNA)を、RNA6000ナノアッセイを用いるアジレントバイオアナライザー(Agilent Bioanalyzer)2100で測定することにより評価した。この分析は、ゲル様の画像と電気泳動データの両方を結果として得る。RNA分解の指標は、(a)リボソームバンドの比率の減少、(b)リボソームバンド未満の追加のピーク、(c)全体的なRNAシグナルの減少、(d)より短い断片へのシフト、である。明細書に示した実験において使用した全てのmRNAサンプルは、このRNAの品質制御段階を通過した。次に、ABI High−Capacity cDNA Archive Kitを用い製造業者の指示書に従って、RNAをcDNAに変換した。その後qPCRアッセイを以下の通りに設定した。cDNAサンプルを、分子等級(Molecular grade)水を用いて総容積180μlに希釈した。完全な混合を確保するため、サンプルをボルテックスした。cDNAを、多チャネルピペットを用いてABI384ウェルプレートに分注し、各ウェルに4.5μlのサンプルを注入した。サンプルを三重にアッセイにかけた(つまり、3つの同型培養の各々で3つの別々のアッセイを行ったため、各条件について全部で9の定量を行った)。アッセイ混合物及びUniversal Master Mixを調製し、単一チャネルピペットを使用して384ウェルプレート全体に、各ウェルに5.5μlで分注した。各反応の最終組成物(10μl)は、プライマー/プローブアッセイ混合物(×20)=0.5ul、Universal Master Mix=5ul、cDNA=4.5ulである。その後プレートを、強力なプラスチックヒートシールであるAbgeneクリアシールを用いてヒートシールし、ABI 9700HTを用いて、以下の条件でサイクルとスキャンを行った。95℃ 10分間でAmpliTaq GOLDを活性化させ、その後に40サイクルの、95℃ 15秒間(変性)と60℃ 60秒間(アニーリング/伸長)を行った。ABI SDS 2.1ソフトウェアを用いて分析した。
【0076】
定量PCRを複数のプライマー/プローブセットを用いて実施した。各々の場合において、プライマー対は当業者に周知の方法を用いて設計され、標識されたプローブ配列が相補的となる、10〜12bpの小単位複製配列を封入した。我々は、ABIデータベースで両方とも利用可能なセットのtgfb1及びtgfb2、並びに片方が利用可能なtgfb3を用いて、両者とも市販のプライマー/プローブセット(ABI Taqman pre-validated assays)を使用した。加えて、各々tgfb1、tgfb2及びtgfb3用に、我々自身によるマニュアル設計のプローブ/プライマーセットを使用した。規格化のために、ABI Taqman 予備検証済み(pre-varidated)プローブ/プライマーセットを用いて、確認用代替としてGAPDHを有する主要な規格化基準として、TATA結合タンパク質(TBP)を使用した。規格化コントロールの選択は必須である。ベータアクチンは、当該実験において他のものによってしばしば使用されるが、全てのアクチンアイソタイプ発現がTGF−ベータにより調節されるために不適切である。TGF−ベータ産生の増加剤は、偽陰性の結果という重大なリスクを伴って(tgfb1 mRNAレベルの上昇は、ベータアクチンmRNAレベルの上昇に対する比率で、ほぼ1の比率をもたらす)ベータアクチンmRNAを(少なくともいくつかの細胞型において)増加させる。TBPもGAPDH mRNAレベルも、TGF−ベータに影響されないために同等に好適であるが、ほとんどの細胞型におけるmRNAの絶対的レベルがTGF−ベータアイソフォームのそれと類似するため、TBPは主要な規格化基準として選択され、比率計算の誤差を低くすることができ、且つ実験力を向上させる。
【0077】
全ての定量PCR実験において、複数の追加の制御に以下のものがある。第一に、各サンプルのための制御は、mRNAサンプルがゲノムDNAで汚染されないことが確実な逆転写なしで実施する(マニュアル設計のプローブ/プライマーセットは全て、エキソン/エキソン結合を横断するよう選択されたが、検出可能な単位複製配列がゲノムDNA鋳型から産生されないことを確実にする)。第二に、制御反応は標準cDNA調製物(市販のIMAGEクローンから調製)の段階的2倍希釈物を用いて実施される。この制御は、未知サンプルの結果が増幅プロセスの線形的範囲で得られるため、真に定量的であることが確実である。いずれの制御を失敗しても、実験全体を繰り返すことになる。典型的には、20〜30の増幅サイクルの後に、最大シグナルの半分が得られる。
【0078】
各条件のため、最大シグナルの半分になるサイクル時間(Ct)を、以下の式を用いてmRNAの相対量(Rt)に変換した。
【化4】

式中、Kは定数であり、Cnは主要な規格化基準TBPの最大シグナルの半分になるサイクル時間である。様々な剤で処理された細胞における各TGF−ベータに対するmRNAの相対量は、媒体単独で処理された細胞における同じアイソフォームに対するmRNAの相対量の割合として、研究条件下での剤の効果の統計的有意性を決定するため、三重に試験したウェル間の標準偏差を用いて提供する(スチューデントの不対t検定を用い、p<0.05で統計的有意な結果を意味する)。
【0079】
培地中のTGF−ベータ1タンパク質レベルは、培地を、2.7M 10Mウレアを同容量添加することにより予備活性化し、その後1M HEPES 2M NaOHを同容量添加することにより中性にした点以外は、製造業者の指示書に従い、Quantikine ELISA kit (R&D Systems)を用いて測定した。この活性化方法(1M HClを用いる推奨の方法ではない)は、錯体を含有する全TGF−ベータ1の完全な活性化を確実にし、「総」TGF−ベータの測定を表すと一般的に考えられる(例えば、Grainger et al. Cytokine Growth Factor Rev. (2000) 11:133-45における検討を参照)。TGF−ベータタンパク質は多くの異なるマトリクスタンパク質及び細胞表面タンパク質、例えばプロテオグリカン、低親和性III型受容体、フィブロネクチン及びコラーゲンとの相互作用がよく知られており、結果として培地におけるTGF−ベータタンパク質の量は細胞により合成される総量を表さなくてもよく、TGF−ベータタンパク質のためのアッセイにおける陰性の結果は、偽陰性を表す可能性がある。
【0080】
最終的に、TGF−ベータ活性はアッセイにおける平滑筋細胞増殖への直接の影響により推定された。この実験のために、TGF−ベータの中和抗体(AB-100-NA(R&D Systems)を10μg/mlの濃度で用いた。これは、少なくとも25ng/mlの組み換え活性TGF−ベータ1(R&D Systems)を中和できる)の存在下及び不存在下の両方で、細胞に対し試験剤を、三回添加した。72時間インキュベーション後、細胞を洗浄し、その後0.02% トリプシン/EDTA (Gibco)を、37℃で10分間用いることで完全に剥離させ、その後血球計算器を用いて手作業でカウントした。重要なことに、0時間での細胞数も決定付ける必要がある(目的に応じて同じカウント方法を用いて)。各処理条件で、TGF−ベータ依存性の増殖阻害は、中和抗体の存在下の累積群倍加時間と比較して、中和抗体の不存在下の累積群倍加時間は倍の増加を表す。制御として6つの追加ウェルセットを、10ng/mlの組み換え活性化TGF−ベータ1(R&D Systems)で処理した。その結果、累積群倍加時間の倍増が、少なくとも1.5倍となった。同様に、媒体のみ存在下での累積群倍加時間の倍増は、1.1倍未満でなければならない。いずれの制御を失敗しても、実験を繰り返すことになる。
【0081】
結果
別々に、又は本発明による混合物としてのいずれかで投与され、24時間処理した後の、様々な濃度のタモキシフェン(T)及びアスピリン(A)の、tgfb1、tgfb2及びtgfb3のmRNAレベルに対する影響を、記載の通りに及び表1に示した通りに決定した。
【0082】
タモキシフェンは、10μM超の用量で、tgfb1mRNA及びtgfb3mRNAを顕著に増加させるが、tgfb2mRNAは増加させない。タモキシフェンは33μM超の濃度で細胞に対して毒性である(おそらく分子の洗剤特性に起因する、20%ウシ胎仔血清の存在下、およそ50μMの臨界ミセル濃度である)。TMXは33μMでtgfb1mRNAのレベルをおよそ1.4倍上昇させた。
【0083】
アスピリンは、任意の試験濃度で(最大100μM)、TGF−ベータの3つのアイソフォームのいずれかのmRNAレベルに対して、統計的に有意な影響を与えなかった。
【0084】
予期せぬことに、タモキシフェン及びアスピリンの混合物としての投与は、TGF−ベータmRNAレベルに対する著しく相乗的な影響を示した。試験されたアスピリンの全用量において、tgfb1mRNAレベルの統計的有意な上昇を達成するために要するタモキシフェン濃度は著しく減少した。加えて、アスピリンの存在下、tgfb1レベルに対するタモキシフェンの最大限の影響(タモキシフェン濃度が10μM超で)は、アスピリン不存在下で到達した値のほぼ2倍であった。
【0085】
【表1】

表1:qPCRで推定されたmRNAレベル。
TBPに規格化されたmRNAのレベルを媒体単独で処理した細胞と比較した倍の変化値として報告する。値は三重に試験したウェルの平均であり、エラーバーは標準偏差である。* 媒体のみに対してp<0.05であって、尾部切断の(tailed)2つのスチューデントのt検定は等分散(homoscedacity)とみなす。† スチューデントのt検定による、アスピリン不存在下での同濃度のタモキシフェン対してp<0.05。N.d.=未検出。
【0086】
分散分析法は、タモキシフェン(T)とアスピリン(A)との間の顕著な相互作用を、tgfb1については実証しているが(p=0.006)、tgfb3に対しては実証していない(p=0.09)。
【0087】
別々に、又は本発明による混合物としてのいずれかで投与された、様々な濃度のタモキシフェン(T)及びアスピリン(A)を、24時間又は72時間で条件付けした、倍地中の平滑筋上のTGF−ベータタンパク質レベルに対する影響を記載の通りに決定した。
【0088】
タモキシフェンは、最大33μMまでの任意の用量で、24時間又は72時間のいずれかで条件付けした培地中で、総TGF−ベータ1タンパク質レベルに対する統計的有意な影響はなかった。TMX用量が33μM超では24時間後の細胞に対して毒性であり、用量10μM超では72時間後の細胞に対して毒性であった。
【0089】
アスピリンは、任意の試験用量で(最大100μM)、24時間又は72時間のいずれかで条件付けした倍地中で、総TGF−ベータ1タンパク質レベルに対する統計的有意な影響はなかった。
【0090】
一方で、タモキシフェン(10μM)及びアスピリン(100μM)の混合物の使用は、24時間及び72時間の両方で条件付けした培地中で、総TGF−ベータ1タンパク質レベルを顕著に上昇させた。上昇程度は穏やか(24時間で+14%、p<0.05、72時間で+19%、p<0.05)だが、この観察は組み合わせ組成物に対する応答における、tgfb1mRNA産物の大幅且つ予期せぬ上昇と一致する。
【0091】
別々に、又は本発明による混合物としてのいずれかで投与された、様々な濃度のタモキシフェン及びアスピリンの、TGF-ベータ活性への影響は、上記の中和抗体の存在下及び不存在下での細胞の増殖の測定によって間接的に決定した。これを表2に示す。
【0092】
タモキシフェンは、10μMでの細胞の累積群倍加(CPD)時間を再現性よく上昇させる(中和抗体の不存在下でのCPD=中和抗体存在下でのCPDより1.4倍高い)。これはTGF−ベータ活性の顕著な増加と一致する。低用量のタモキシフェンは、CPD及びTGF−ベータ活性の高さに統計的有意な影響を与えない。
【0093】
アスピリンはまた、100μMでの細胞の累積群倍加(CPD)時間を再現性よく上昇させる(中和抗体の不存在下でのCPD=中和抗体存在下でのCPDより1.25倍高い)。これはTGF−ベータ活性の増加と一致するが、規模は10μMタモキシフェンで観察されたものより小さい。低用量のアスピリンは、CPD及びTGF−ベータ活性の高さに統計的有意な影響を与えなかった。
【0094】
ここでも、タモキシフェン及びアスピリンの混合物の使用は、顕著且つ予期せぬ相乗効果を示した。アスピリン100μM存在下で、タモキシフェンは、1μMまで下げた用量でTGF−ベータ活性を統計的有意に上昇させた(細胞増殖への影響から推定すると、TGF−ベータ活性の顕著な上昇を達成するのに要するタモキシフェンの濃度が10倍減少することを表す)。
【0095】
【表2】

表2:SMC増殖への影響により測定された、タモキシフェン(T)及びアスピリン(A)のTGF−ベータ活性への影響。
中和抗TGF−ベータ抗体の存在下及び不存在下での、各条件下の増殖速度を、三回の決定付けによる平均値±SDとして与えた。* 抗体存在下のCPDと抗体不存在下のCPDの比較でp <0.05であり、顕著なTGF−ベータ活性存在を裏付ける。このアッセイにおいて、10ng/ml 組み換え活性TGF−ベータ1(R&D Systems)はCPDをおよそ1.6倍上昇させた。分散分析法は、タモキシフェン(T)とアスピリン(A)との間の顕著な相互作用を実証している(p=0.016)。
【0096】
結論
総括すると、上記実験は、タモキシフェン及びアスピリンが予期せぬ相乗効果を示し、組み合わせが、TGF−ベータ産生刺激因子として、別々に投与された化合物より相当有力及び強力であるとともに、その影響の単純な加法的組み合わせから想定されるよりも、実際にはより強力及び有力であることを示した。
【実施例2】
【0097】
apoE欠損マウスのタモキシフェン及びアスピリンでの処置
タモキシフェンの凝血原効果、及び(タモキシフェンのTGF−ベータ産生刺激因子活性全体を通して、少なくとも一部に介在する)抗アテローム特性に対するタモキシフェン及びアスピリンを混合物として組み合わせることの影響を試験するため、脈管脂質病変を発症したマウス腹臥を、タモキシフェン、アスピリン及び本発明による2つの剤の混合物で処理した。
【0098】
apoE欠損マウスを選択したのは、げっ歯類でアテロームのモデルとして最も一般的に使用されるためである。さらに、本モデルのタモキシフェンの影響は、以前からよく特徴付けられている(Circulation. 1997 Mar 18;95(6): 1542-8)。中性脂質の集積を染色することにより判明する大動脈根での脈管脂質病変形成の範囲を、治療有効性の指標として使用し、定量的な免疫蛍光により測定される血管壁でのTGF−ベータ1タンパク質のレベルを、インビボでのTGF−ベータ産生刺激因子の実証に使用した。最終的に、再び定量的な免疫蛍光により測定された血管壁へのフィブリン(フィブリノーゲン)の堆積の範囲は、血栓による合併症のリスクの凝血原の状態及び高さの指標として使用した。
【0099】
方法
成体雄のapoE欠損マウスは、少なくとも5世代、C57B16バックグラウンドに戻し交配したもので、12週齢の8の動物群を各群の平均体重が同じになるよう無作為化した。各群に、タモキシフェン(1 mg/kg/日)又はアスピリン(30mg/kg/日)又は両方の化合物を同時に、標準マウス飼料(SDS)に配合して与え、又はコントロール群として通常のマウス飼料のみを与えた。両方の化合物を与えられたマウスは、成分の均一混合物が配合された食物ペレットを与えられたのであって、2つの活性成分の1つを各々含有する食物ペレットの混合物を与えられたのではないことに留意せよ。各マウスの摂食食物量及び体重を、最初の1週間は毎日、その後は1週間に1回モニターした。処置から12週後、マウスをCO2窒息で犠牲にし、心臓及び肺の塊を切除し、固定せずにCryo-M-bed(Bright Instruments, UK)に埋め込み、及び液体窒素中で急速凍結した。
【0100】
その後、Paigen戦略により大動脈根から切片を調製した(動物間で再現性ある比較が可能な一連の確定した切断切片。例えば、Grainger et al. (1995) Nature Med. 1:1067-72 及びその中の参考文献を参照)。4μmの凍結切片をmotordriven cryotome (Bright Instruments)を用いて切断し、ポリLリジンで被覆したガラスの顕微鏡スライド上に採取し、その後氷冷アセトンで90秒間固定化し、風乾させ、分析まで−20℃で保存した。
【0101】
脈管脂質病変の範囲を、ファストグリーン(Fast Green)で対比染色する、オイルレッドO染色により評価した。これは当業界で周知の組織染色手法である。簡単に言うと、各動物由来の(Paigen戦略により選択された)5つの切片を、等級アルコール溶液に通し、その後オイルレッドで12分間染色し、数回洗浄した。その後ファストグリーンに5〜10秒間浸漬させ対比染色し、その後清浄水を数回変化させることで浸漬物を洗浄した。風乾後、適切な包埋剤を塗布し(この作業には、単純なグリセロールを基材とした包埋剤が最も適している)、その後、カバーグラス周囲のアクリルを消失させたカバーグラスの所定の位置にこれを保持させた。その後、大動脈壁全体の画像を撮るデジタルカメラを装備した単純な倒立顕微鏡を用いてスライドを分析した(位相コントラストなし;10×対物レンズ;Olympus AXシリーズ)。続いてこの画像を、動物の処置状態に影響を受けない、Apple Macintosh(登録商標)コンピュータで実行するOpenlab画像解析ソフトウェア(Improvision, UK)を用いて処理した。各画像上で、使用者が、脈管壁の弾性板外部、弾性板内部及び弾性表面を描き、ソフトウェアが総内膜面積、内膜:内部面積比率、総中性脂質面積及び内膜脂質面積を報告した。各画像から得られた値を集計し(平均化された内膜:内部面積比率は除く)、その後各スライドから得られた値を集計し(又は上記の通り平均化し)、各動物の各パラメータの値を得た。その後、群間の統計的有意な差異の決定に適するスチューデントの不対t検定又は分散分析を用いて、同条件で処置した動物群の中での平均値及び標準誤差を報告した。
【0102】
血管壁に存在するTGF−ベータ1タンパク質量を、以前から広く報告されている定量的免疫蛍光により決定した(Mosedale et al. (1996) J. Histochem. Cytochem. 44:1043-50を参照、定量的免疫蛍光実験の設計における重要要因の比較検討;この中の全提案は本明細書で提示された実験の際に厳格に適用される)。簡単に言うと、5つのスライドをPaigen戦略により各動物から選択し、各々はスライド上に隣接する2つの4μm切片を有する。各切片を水耐性障壁で囲み(PAPペン;Agar Scientific, UKを用いる)、囲まれた面積が全スライド上でおよそ等しくなるようにする。その後非特異的な抗体結合を、リン酸緩衝食塩水(PBS)(pH7.4)中の3% IgG未含有ウシ胎仔血清(BSA;Sigma Chemical Company)、室温で2時間用いてブロックした。その後ブロッキング溶液を穏やかに除去し、ブロッキングバッファ(PBS+3%BSA)中の一次抗体(ニワトリ抗TGF−ベータ1;AB-101-NA; R&D Systems)50μlで置き換え、密閉した加湿チャンバー中室温で一晩インキュベートした。コントロールとして、各動物からの5つのスライドのうちの2つは、一次抗体溶液の代わりにブロッキングバッファのみを与えた(定量的免疫蛍光における非一次抗体コントロールの妥当性の完全な議論として、Mosedale et al. (1996) J. Histochem. Cytochem. 44:1043-50参照)。このインキュベーションの最後に、各スライドを、PBS中で3×3分間洗浄した。各洗浄液を、次の添加前に穏やかに除去することに注意しながら行う。大量の実験の場合(例えば8動物6群で行う場合)は、240スライドの全てを洗浄する必要があり、正確な3分の洗浄実感を維持するために、スライドを20スライドの無作為なバッチで洗浄した。最後の洗浄後すぐに、二次抗体(ロバ抗ニワトリIgG最小交差反応性、FITC標識、ブロッキングバッファ中50μg/ml;Jackson Immunoresearch)100μlを各スライドに添加した(一次抗体の代わりにブロッキングバッファを受けたものも含む)。その後スライドを、暗所、加湿チャンバー中でさらに6時間室温でインキュベートした。次に3×3分間の洗浄工程を繰り返し、その後MilliQで一回リンスし、その後スライドを暗所で風乾させた。適切な包埋剤(例えば、抗fadant含有のCitifluor AF-I)を添加し、境界周囲のアクリル消失を用いて適所にカバーグラスを保持した。分析するまでスライドを、暗所−20℃中に、最大で18時間まで保存した。
【0103】
各スライド(一次抗体を受けなかったコントロールを含む)からの、大動脈壁の4つの画像を、暗視野モードで画像を撮影した点以外はオイルレッドO解析用と同じ顕微鏡及び画像解析系を用いて、435nmでフルオロフォアを励起する10nm帯域(bandpass)フィルタを有する水銀バーナー、及び460nmカットオフ鏡と495nmでの10nm帯域発光フィルタ(Olympus NIBA フィルタセット)を備える二色セットを用いて撮影した。明るさ、露光時間、及びその他の系のパラメータは、同一の画像撮影相を維持し、全画像は、動物の処置状態を知らない単一の操作者が単一の期間で撮影された。単一の画像を顕微鏡上のスライドなしで撮影し、全ての他の画像からさらなる解析の前にデジタル処理により減算した。光源の明るさ及び露光時間は、コントロールスライド(一次抗体を受けていないもの)が、注目の領域で測定限界の偏差のおよそ10%の平均のグレーレベルを有し、一次抗体を受けたスライドの最も明るい染色が、測定限界の偏差のおよそ60〜80%の平均のグレーレベルをもたらし、注目の領域で10%未満の画素が測定限界の偏差のおよそ95%であるように選択されたことに留意せよ。画像撮影後、使用者が手作業で、弾性板外部及び弾性表面を描き、注目の領域での平均のグレーレベルを報告した。各動物について、一次抗体を受けた3つのスライドを平均した、注目の領域での平均のグレーレベルから、一次抗体を受けない2つのスライドを平均した、注目の領域での平均のグレーレベルを引いて単一の値を計算した。その後(任意の単位における)平均及び標準誤差を、8動物の各群について報告し、スチューデントの不対t検定又は分散分析のいずれかを、適切な群間の統計的に有意な差異を評価するために使用した。
【0104】
また脈管壁に堆積したフィブリン又はフィブリノーゲンのレベルを、一次抗体がヒツジ抗フィブリン(フィブリノーゲン)(Chemicon;2μg/ml)であり、二次抗体がFITC標識(Jackson Immunoresearch)された最小交差反応性ロバ抗羊IgGであること以外は、既報のTGF−ベータ1定量的免疫蛍光法に従って推定した。
【0105】
結果
【0106】
タモキシフェン(1 mg/kg/日、経口)は、脈管脂質病変面積を72%減少させ、これはTGF−ベータ産生刺激因子としての既知の活性と一致する。一方で、アスピリン(30mg/kg/日、経口)は、脂質病変面積を6%しか減少させず、この変化は統計的に有意でなかった。この両薬物での内膜脂質病変面積の変化は、総脂質病変面積における変化と類似した(表3)。ただし、本発明に従う混合物として投与されたタモキシフェン及びアスピリンの組み合わせは、総脂質病変面積及び内膜脂質病変面積の両方を、タモキシフェン単独よりも顕著に減少させ、2つの剤の間の予期せぬ相乗作用を実証した。インビボにおけるこの相乗作用は、インビボでの組み合わせとして観察されたTGF−ベータ産生刺激因子活性の顕著な増加の直接的な結果の可能性がある(実施例1を参照)。
【0107】
【表3】

表3:apoEマウスにおける脈管脂質病変発症に対するタモキシフェン及びアスピリンの影響。
脈管脂質病変発症の様々な測定を示す(平均値±SD、1群当たりn=8)。* スチューデントのt検定又は各データセットの規定度に依存するマンホイットニーのU検定のいずれかにより、コントロールに対してp < 0.05。† 同じ統計試験で、YMX単独に対してp < 0.05。
【0108】
興味深いことに、タモキシフェンは、総内膜面積、又は内膜:内部面積比率に影響を与えず(表3)、これはTGF−ベータ産生刺激因子での従来の観察と一致する(例えば、Circulation 1997 Mar 18;95(6): 1542-8 or J Biol Chem. 1996 Dec 6;271(49):31367-71)。これは、脂質含量が少ないがマトリックス組成物が多い、安定な血小板表現型に対する血小板組成を変える、TGF−ベータの主要な作用機構を反映する可能性がある。アスピリンは内膜面積又は内膜:内部面積比率に影響を与えず、且つ2つの剤の組み合わせは内膜:内部面積比率に影響を与えないが、内膜面積は統計的に有意に9%減少させ(表3)、本発明に従う組み合わせを用いる場合に観察される多数の有益な測定での相乗作用の根拠となる。
【0109】
タモキシフェンは血管壁のTGF−ベータ1レベルを上昇させるが、アスピリンは効果がなかった(表4)。インビトロでのデータと同じで(実施例1を参照)、血管壁中のTGF−ベータ1レベルはタモキシフェン及びアスピリンの組み合わせでは、タモキシフェン単独と比較して非常に大きくなった(これらの条件下でも、アスピリン単独はTGF−ベータ産生刺激因子のような活性を全く持たない)。
【0110】
【表4】

表4:apoEマウスにおけるTGF−b及び脈管内フィブリノーゲン堆積に対するタモキシフェン及びアスピリンの影響。
脈管脂質病変発症の様々な測定を示す(平均値±SD、1群当たりn=8)。* スチューデントt検定によるコントロールに対してp < 0.05。† スチューデントt検定によりTMX単独に対してp < 0.05。
【0111】
タモキシフェン及びアスピリンは、TGF−ベータ1レベルを増加させるため、脈管脂質病変形成の重症度を低減させ、及び血小板安定性を支持する血小板組成物を変更させる、相乗的活性を示したが、それにもかかわらず、2つの剤は脈管壁へのフィブリン(フィブリノーゲン)に対して反対の影響を及ぼした。タモキシフェンは、フィブリン(フィブリノーゲン)堆積を23%上昇させ、これはトリフェニルエチレンの既知の凝血原効果と一致する(表4)。アスピリンは、フィブリン(フィブリノーゲン)の堆積を43%減少させ、これは薬物の抗血小板活性と一致する(表4)。興味深いことに、本発明に従って剤の組み合わせを投与した場合、タモキシフェンの凝血原活性よりも、アスピリンの抗凝血活性が優勢になる。結果として、血管壁へのフィブリン(フィブリノーゲン)堆積は、組み合わせを投与した動物において32%低減され、これはアスピリン単独を受けた動物とは異なった。
【0112】
結論
総括すると、これらの実験は、タモキシフェン及びアスピリンが予期せぬ相乗効果を示し、その組み合わせが、別々に投与されたいずれかの化合物よりも、インビボでより有力且つ強力なTGF−ベータ産生刺激因子と考えられることを示しており、実際、その影響の単純な加法的組み合わせから予測され得るものよりも、より有力且つ強力であった。同様に、タモキシフェン及びアスピリンは、脂質病変サイズ及び組成物パラメータの数に相乗的影響を及ぼす。
【0113】
さらに、これらの結果はアスピリンの共投与がタモキシフェンの凝血原活性を破壊し、予期せぬことにアスピリンの抗凝血性活性がタモキシフェンの凝血原影響より十分に優勢であることを実証する。結果として、アスピリンの共投与は、その凝血原活性の結果であるタモキシフェン使用の任意の副作用を低減又は破壊することが期待されるだろう。
【実施例3】
【0114】
魚油及びアスピリンでの、apoE欠損マウスの処置
TGF−ベータ産生刺激因子とアスピリンとの間の組み合わせにおいて示される相乗作用の一般性を実証するため、我々は別のTGF−ベータ産生刺激因子で、タモキシフェンと、既知の機構的又は構造的類似性を共有しない、魚油中のオメガ−3脂肪酸の混合物を選択した。apoE欠損マウスを、魚油(100mg/kg/日、経口)、アスピリン(30mg/kg/日、経口)、又は混合物として投与される2つの組み合わせで処置した。
【0115】
魚油での食事補給が顕著な副作用に関連することはこれまで報告されていないので(タモキシフェンとは異なる)、実施例3それ自体は本発明による方法ではないことは明らかである(TGF−ベータ産生刺激因子の投与による副作用を無効化するか、低減させるか又は回復させる用途である)。それにもかかわらず、実施例3は本発明の原理の一般性を説明する。
【0116】
方法
8群の成体雄apoE欠損マウスを、厳密に実施例2での記載の通りに、魚油(Seven Seas, UK)、アスピリン又は両方の剤で同時に、12週齢〜24週齢まで処置した。
マウスを犠牲にし、心臓及び肺塊を調製し、厳密に実施例2での記載の通りに処理した。切片を、実施例2の通りにPaigen戦略に従って調製した。脂質病変形成の程度を、厳密に実施例2に記載の通りに、ファストグリーンの対比染色を伴うオイルレッドO染色で評価した。
脈管壁でのTGF−ベータ1及びフィブリン(フィブリノーゲン)のレベルを、厳密に実施例2に記載の通りに、定量免疫蛍光により決定した。
【0117】
結果
オメガ−3脂肪酸が豊富な魚油(100mg/kg/日、経口)、及びアスピリン(30mg/kg/日、経口)の両方は、別々に投与した場合、脈管脂質病変面積又は血小板サイズの測定で、いずれも統計的有意な影響は全くなかった(表5)。しかし、本発明に従う混合物として投与した魚油及びアスピリンの組み合わせは、総脂質病変面積及び内膜脂質病変面積を、それぞれ27%と33%低減させ、実施例2でアスピリンとタモキシフェンとの間で観察されたものと同様に、アスピリンと魚油との間の同様な相乗作用を実証した。魚油及びアスピリンの組み合わせは、内膜面積、又は内膜:内部面比率には影響を及ぼさなかった。
【0118】
【表5】

表5:apoEマウスにおける脈管脂質病変発症に対する魚油及びアスピリンの影響。
脂質病変発症の様々な測定を示す(平均値±SD、1群当たりn=8)。* スチューデントt検定又は各データセットの規格度に依存するマンホイットニーU検定によるコントロールに対してp < 0.05。† 同じ検定により魚油単独に対してp < 0.05。
【0119】
魚油は、血管壁でのTGF−ベータ1のレベルを17%上昇させ(表6)、タモキシフェンよりも有力性及び強力性が弱いが、TGF−ベータ産生刺激因子としてのその状態と一致した。一方でアスピリンは影響がなかった。予期せぬことに、脈管壁中のTGF−ベータ1のレベルは、魚油単独での処置よりも、魚油とアスピリンの組み合わせでの処置で大幅に上昇した(これらの条件下で、アスピリン単独ではTGF−ベータ産生刺激因子として全く活性がないにもかかわらず)。実際、魚油及びアスピリンの組み合わせは、タモキシフェンが単独で使用される場合と同程度有効なTGF−ベータ産生刺激因子であった(血管壁中で)。
【0120】
【表6】

表6:apoEマウスでの、TGF−bレベル及び脈管内フィブリノーゲン堆積に対する、魚油及びアスピリンの影響。
脈管脂質病変発症の様々な測定を示す(平均値±SD、1群当たりn=8)。* スチューデントt検定によるコントロールに対してp < 0.05。† スチューデントt検定によりTMX単独に対してp < 0.05。
【0121】
魚油単独では、血管壁中へのフィブリン(フィブリノーゲン)の堆積に対して影響がなかった(凝血原活性が、トリフェニルエチレン構造ファミリーのTGF−ベータ産生刺激因子と特に関連するという我々の発見と一致する)。アスピリンは血管壁へのフィブリン(フィブリノーゲン)の堆積を顕著に低減させ、これは既知の抗血小板活性と一致し、単独で投与されても、魚油との組み合わせで投与されても関係ない。
【0122】
結論
アスピリンは、タモキシフェンと必ずしも関係のあるわけではないTGF−ベータ産生刺激因子と共に、予期せぬ相乗的活性を示す。我々は、TGF−ベータ産生刺激因子とアスピリンとの組み合わせは、2つの剤の影響の単純な付加から予想され得るよりも大きな予期せぬ相乗的利益を有すると結論づける。
【実施例4】
【0123】
タモキシフェン及びアスピリンでの、ネズミ科コラーゲン誘導性関節炎の処置
リウマチ様関節炎は、正常成体組織構造の減衰と関連する別の疾患であり、結果的にTGF−ベータ産生刺激因子により有効に処置されることが知られている。マウスのコラーゲン誘導性関節炎モデルはヒト疾患の動物も出るとして広く使われている(Nature 1980; 283:666-668)。このモデルでは、マウスを免疫系アジュバント(通常、完全フロイントアジュバント(CFA))の存在下で2型コラーゲンの体系的注入で感作させ、コラーゲン抗原への第二暴露の後、全四肢において、3週間の重症度進行と自発的な解消という重度の関節痛が進行する。正確なマイクロメーターを用いて測定される足蹠厚みが、炎症及び局所浮腫両方の指標、同様に関節損傷及び疾患進行の代替指標として有用である。
【0124】
コラーゲン誘導性関節炎を発症するマウスを、タモキシフェン単独又は本発明に従う混合物としてのタモキシフェン及びアスピリンの組み合わせのいずれかで処置した。
【0125】
方法
既報の記載に従って、コラーゲン誘導性関節炎を、成体雄マウスDBA/1マウスに誘導した(Courtenay et al. (1980) Nature 283:666-8)。成体(12週齢)雄DBA/1マウスを6匹の群に分けた。マウスに、1マウス当たり100μgのフロイント完全アジュバント(FCA)中のウシ2型コラーゲン(Sigma)を皮下経路により与え、一方コントロール群にはFCA中の1型コラーゲンを同じ注入により与えた。21日後、マウスの全群に、前記に従うが、アジュバント不存在下で、同じコラーゲン型を1マウス当たり100μg含有する追加の腹腔内注入を与えた。その後タモキシフェン(1 mg/kg/日、経口);タモキシフェン(1 mg/kg/日、経口)及びアスピリン(30mg/kg/日、経口)を混合物として;又は通常のマウス飼料(RM-1 ; SDS Ltd)のいずれかをマウスの様々な群に投与した。足蹠厚みを、デジタルキャリパーEC1507(Moore & Wright)を用いて、0.01mm単位で正確に毎日決定づけた。各足蹠の厚みは、毎日3回マウスの処置条件を知らない単一の操作者により決定され、各マウスの毎日の足蹠厚みを全四足の3回測定の平均として報告した。誤差は各群における6匹中の平均の標準誤差で表す。
【0126】
抗コラーゲン2型抗体の直接ELISAは、自己免疫応答の代替評価として使用した。Maxisorp 96ウェルELISAプレートウェル(Nunc)上に、ウシ2型コラーゲンを、50μl中1μg/ウェルで、50mM 炭酸ナトリウム pH9.0の中、2時間4℃で被覆した。ウェルを、リン酸緩衝食塩水中、5% Tween−20/5%スクロースを室温で1時間用いて、ブロックした。様々な希釈のマウス血清をコラーゲン被覆ウェルと共に、2時間室温でインキュベートした。Tris−緩衝食塩水+0.05% Tween−20での、3回の素早い洗浄の後、結合したマウス抗体を様々な抗マウスIgGペルオキシダーゼ接合体(Pan-IgG A-9174 Sigma Chemical Co; IgA A-4789 Sigma Chemical Company; IgGl, G2a, G2b 及び G3 Southern Biotechnology)を、tris緩衝食塩水+0.05% Tween-20での1:5000希釈物を、室温で1時間用いて検出した。3回のさらなる洗浄の後、結合したペルオキシダーゼ標識をK−BLUE色素物質(Skybio, Ltd.)を用い、20分間室温で処理して可視化した。血清中マウス抗コラーゲンIgGの濃度は、マウスモノクローナル抗コラーゲン2型IgG、CIICI(NIH Developmental Studies Hybridoma Bank)の既知の濃度を用いて作成された標準曲線を内挿することにより定量化した。
【0127】
結果
追加注入の後96時間以内に(25日目までに)、2型コラーゲンだが通常マウス飼料(「疾患」群)を受けた群における顕著な足蹠膨張があった。膨張は劇的に増大し、29日目までに、疾患群のマウスの平均足蹠厚みはベースラインと比較して25%±2%増大した(p < 0.0001;ウィルコクソン符号順位検定)。この群における全6匹中の全4つの足蹠厚みは、研究の31日までにベースラインと比較して顕著に増加した。足蹠膨張が最も重度な場所で(4の異なるマウスの各々から1の足で、ベースラインでの足蹠厚みのおよそ2倍)、顕著な紅斑が見られた。疾患群においては、足蹠膨張が数日一定に維持され、その後33日〜39日の間で減少し始めた。39日目までには、平均足蹠厚みはベースラインに戻った。一方で、1型コラーゲン注入を受けたコントロール群のマウスは足蹠厚みの増大は非常に小さいものでしかなく(<5%)、最大が30日目であったが、この変化は任意の時点で統計的有意には到達しなかった。
【0128】
処置群のマウスは、疾患群におけるマウスと同一の2型コラーゲン注入を受けたが、そこでは足蹠厚みの顕著な増大はなかった。追加注入時からずっとタモキシフェン単独での処置は、DBA/1マウスにおける、コラーゲン−II誘導性の足蹠最大膨張を36%低減させた(p < 0.01;マンホイットニーU検定)。本発明による混合物としてのタモキシフェン及びアスピリンでの処理は、コラーゲン−II誘導性の足蹠最大膨張を62%低減させた(p<0.001;マンホイットニーU検定)。さらに、シェッフェ事後比較検定を伴う分散分析で、タモキシフェン及びアスピリンの組み合わせでの達成した足蹠膨張の減少が、タモキシフェン単独でのものより顕著に大きいことを確認した。
【0129】
いずれの群におけるいずれのマウスも実験期間中を通して体重の変化はなかった。さらに、処置剤含有の飼料を受けたマウスは、通常マウス飼料のみを受けたマウスと同量の食物を消費した。
【0130】
実験の最後に(39日目)、血清中に存在するウシコラーゲン−IIに対して配向したIgG類免疫グロブリンの量も測定した。1μg/ml未満の抗コラーゲン−II IgGを、コラーゲン−II抗原に晒していないコントロール群中の全6匹のマウス由来の血清中で配向させた。一方で、抗コラーゲン−II IgGの、高いが非常に変動性のあるレベルが、疾患群のマウス由来の血清中で検出された。個々のマウスは、抗コラーゲン−II IgGレベルがおよそ50μg/ml〜5mg/ml以上で変動し、中央値が708μg/mlである。タモキシフェン単独で処置されたマウス由来の血清は、抗原に対して同じ暴露をしたにもかかわらず、疾患群のマウス由来の血清と比較して、抗コラーゲンII IgGの含有量が顕著に少なかった(中央値181μg/ml;p < 0.05 マンホイットニーU検定)。結合した抗体が、ペルオキシダーゼと接合したF(ab')断片を用いて検出されるので、これらの観察は血清中のリウマチ様因子による緩衝のためではない可能性がある。我々は、追加注入の時点からのTMXでの処置は、注入された抗原への抗体応答の発生を、顕著に阻害し、又は遅延させるとともに、このモデルにおいてアスピリンでの組み合わせ治療はタモキシフェンとの予期せぬ相乗効果を示すと結論付ける。
【0131】
直接ELISAアッセイにおいて異なる検出抗体を用いることにより、ウシコラーゲンIIに対する抗体のクラス分布を調べた。疾患群由来の血清中に、少量だが検出可能量のIgG1、G2a及びG3サブクラスを伴った、大量の抗コラーゲンII IgG抗体があった。抗コラーゲンII IgAは検出されなかった。タモキシフェンのみで処置した群においては、IgG2b及びG3だけが統計的に有意であるが、全IgGサブクラスのレベルの減少があり、クラススイッチの優勢なIgG2bプロファイルにおいて変化(alternation)の証拠は全くない。低いが検出可能である、抗コラーゲンII IgAレベルは、TMXで処置されたマウスの血清中で発見された。タモキシフェン及びアスピリンで処置した群においては、IgG2b及びIgG3レベルの減少、並びにIgAレベルの増加がより顕著であり、IgAレベルの変化は統計的に有意であった。TGF−ベータがIgAへのクラススイッチを方向付けることに寄与しているため、抗コラーゲンII抗体のプールのアイソタイプ分布における変化は(より小さいにもかかわらず)インビボでのTGF−ベータ活性の代理測定として使用できる。
【0132】
【表7】

表7:抗体クラススイッチに対する、TMX処置(±アスピリン)の影響。
各場合において、直接ELISAにおいてウシコラーゲンIIに結合する免疫グロブリンを示す。Pan−IgGを、ヒツジ抗マウスIgGのF(ab')2断片を用いることで検出し、血清中の中間濃度をマウスの各群について示す。IgG1、G2a、G2b、G3及びAについて、未処理の(neat)血清を用いる直接ELISAからの中間吸収を示す。* 疾患(未処理)に対してp<0.05(マンホイットニーU検定);† タモキシフェン(TMX)のみで処置した疾患に対してp<0.05(マンホイットニーU検定)。
【0133】
結論
追加の注入の時点からのTMXでの処置は、本モデルにおける関節炎の発症、並びに注入抗原への抗体応答の発生を顕著に阻害し又は遅延させた。アスピリンとの組み合わせ治療は、本モデルにおけるタモキシフェンとの予期せぬ相乗効果を示した。アスピリンは、本モデルにおいて有益な影響を生み出すと予測される分子作用を持たないため、この多数の終点で観察された相乗的利益は、インビトロ(実施例1を参照)及びアテローム発生のマウスモデルにおけるインビボ(実施例2を参照)で観察されたTGF−ベータ産生の、同じ相乗的刺激の結果の可能性がある。実際、ここで検出された自己抗体の中のIgAへのクラススイッチは、様々な処置への応答で上昇したTGF−ベータ産生が、観察された有益な影響に対して、少なくとも主に寄与していることに関する初の直接的証拠を提供する。
【実施例5】
【0134】
ヒトにおけるタモキシフェン/アスピリンの共投与の影響
タモキシフェンの凝血原効果に対する、並びに免疫系調節と比較したTGF−ベータ活性レベルに対する、混合物としてのタモキシフェン及びアスピリンを組み合わせることの影響を試験するため、我々は、冠状動脈性心臓疾患のヒトをタモキシフェン(1日1回20mg、経口)で3週間、アスピリン(1日1回75mg、経口)の共投与の存在下、又は不存在下で処置をした。
【0135】
プロトロンビン時間(PTT)を個々の凝血状態の測定として計った。抗炭水化物抗体のクラススイッチ(冠状動脈疾患に関連することが知られている;Mosedale et al (2006) J. Immunol. Meth. 309:182-91を参照)及び個々の機能性サイトカインプロファイルの反映(実施例4との比較)を、処置のTGF−ベータ産生刺激因子活性の指標として、結果として組成物の有効性の代替として選択した。
【0136】
方法
血管造影で規定された冠状動脈疾患に罹患する(3つの主要な冠状動脈のうちの1つに少なくとも50%の狭窄)ヒトを研究のためにリクルートし、現在の医療投薬計画にアスピリンが含まれていない場合はタモキシフェン単独(1日1回20mg、経口)か、又はそうでなければタモキシフェン(1日1回20mg、経口)及びアスピリン(1日1回75mg、経口)のいずれかを与えた。患者は、全ての他の医薬品(スタチン、ACE阻害剤、ベータブロッカー、カルシウムチャネルブロッカー、利尿剤等)を継続したが、ワルファリン又はチロフィバンを服用している者はいなかった。8人の患者にタモキシフェンのみを投与し、12人の患者にはタモキシフェンにアスピリンを加えたものを投与した。
【0137】
個々の凝血状態は、プロトロンビン時間(PTT、臨床的に測定、Hinchinbrooke Hospital, UK)を用いて評価した。PTTは研究開始前に1週間の間隔を置いて2回測定し、その後、処置の90日後に測定した。各々の場合において、各患者は自身の制御に従って行動し、PTTへの処置の影響は2つのベースライン決定値の平均と、90日目のPTTの比較を、対をなすスチューデントのt検定を用いて評価した。
【0138】
血液サンプルをベースラインで、薬物処置開始直前に採取し、90日後も同様に採取した。血液を肘前の窩から、19−ゲージ翼状針を用いて引き、ポリプロピレンチューブに分注した。ここでこれを2〜3時間の室温に置き凝固させた。凝塊を除去し、サンプルを回転させ(450×g;4分間)、血清上澄みを除去し、分割量を分析するまで−80℃で凍結保存した。
【0139】
抗炭水化物抗体のレベルは、以前報告された直接ELISAにより測定した(Mosedale et al (2006) J. Immunol. Meth. 309:182-91)。簡単に言うと、Maxisop 96ウェルプレートを、200μlの炭酸ナトリウム pH9.0中のBSA−アルファ−Gal(Glycorex)1μg/ウェルで、4℃で一晩被覆した。PBSで3回素早く洗浄した後、非特異結合を、PBS中3%BSAを室温で1時間用いることによりブロックした。血清を3回さらに洗浄した後、希釈なしからPBSでの1:100希釈まで様々な希釈幅で添加し、その後2時間室温で振とうさせながらインキュベートした。その後血清を廃棄し、血小板をPBS+0.1%Tween−20でさらに5回洗浄し、複製ストリップ(各々は同じ血清サンプルの希釈全範囲を含有する)を各アイソタイプに高特異的モノクローナル抗体、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA、IgE及びIgD等の、ブロッキングバッファ中の1μg/mlに晒した。さらに1時間強室温で振とうさせた後、抗体を廃棄し、血小板をPBS/Tweenでさらに3回洗浄し、その後最小交差反応性のロバ抗マウスIgGに晒し、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(Jackson Immunoresearch)をブロッキングバッファ中1μg/mlで、さらに1時間室温で振とうさせながら結合させた。PBS/Tween中で最後に3回洗浄しPBSで1回洗浄した後、200μlのK−blue発色基質(chromogenic substrate)を各ウェルに添加した。全てのウェルを等しく慎重に制御した正確に5秒経過後、50μlの2M HClの添加により反応を停止させ、450nmでの呈色を判断した。結果は各アイソタイプで平均力価(つまり、最大シグナルの50%をもたらす血清の希釈)、及びその力価での平均シグナル(多くの場合最大吸収は測定限界偏差よりかなり低かった)として報告した。
【0140】
結果
タモキシフェン単独で3ヶ月の処置は、プロトロンビン時間をわずかではあるが統計的に有意に上昇させる結果となり(+17%;不対のスチューデントのt検定でp<0.05)、これは他の環境における既知のトリフェニルエチレン薬物の凝血原性副作用と一致し、マウスで観察されたフィブリン(フィブリノーゲン)堆積の上昇を伴う(実施例2参照)。一方で、タモキシフェン及びアスピリンの両方での処置は、プロトロンビン時間に影響を与えず(−3%;n.s.)、この組み合わせの投与がタモキシフェンの使用に関連する副作用を、有効に低減させるか又は除去せることを実証した。
【0141】
抗炭水化物抗体プロファイルは複雑で、以前の報告と一致して、重篤な心臓疾患を伴うヒトの間で期待されるIgDアイソタイプにより支配される。続く3ヶ月のタモキシフェン単独での処置により、抗炭水化物IgDの力価及び吸収が顕著に減少し(表8)、一方IgG2アイソタイプの力価及びIgAアイソタイプの吸収は顕著に増加した。これらの変化はTGF−ベータ産物の刺激、及び機能的サイトカインプロファイルにおける抗アテロームシフトと一致する。予期せぬことに、IgG2アイソタイプの力価の上昇はタモキシフェン及びアスピリンの両方を投与された個体で顕著に大きくなり、IgG2アイソタイプの吸収も増大した。差異は現在のパイロット実験では統計的有意に達しなかったが、IgAアイソタイプの力価及び吸収における変化はまた、タモキシフェン単独を投与された者におけるものよりも大きかった。またIgMアイソタイプの力価は、タモキシフェン及びアスピリンを投与された者において顕著に減少したが、タモキシフェン単独を投与された者においては減少しなかった。
【0142】
【表8】

表8:タモキシフェンのみ(20mg、1日1回)か、又はタモキシフェン(20mg、1日1回)及びアスピリン(75mg、1日1回)で3ヶ月間処置した心臓疾患を罹患するヒトにおける抗炭水化物抗体プロファイルの変化。
平均値±SDで報告する吸収及び力価における変化は、ベースラインに対して計算する。吸収の変化は未処理の血清に対するものである。力価は最大半量の吸収への到達に必要な血清希釈物から計算した(制限された個相抗原への抗体結合との競合があるため、最大吸収は最高血清濃度で発生しなくてもよい。この実験における力価の解釈の完全な議論については、J. Immunol. Meth. 309:182-91を参照)。* スチューデント対t検定を用いベースラインに対してp<0.05。† スチューデントの不対t検定を用い、タモキシフェンのみに対してp<0.05。
【0143】
結論
これらの結果は、ヒトにおいて、マウスと同様に(実施例2を参照)、アスピリン及びタモキシフェンの組み合わせは、タモキシフェン単独よりも、顕著により強力且つ有力なTGF−ベータ産生刺激因子であり、この場合、天然抗炭水化物抗体プールのアイソタイプスイッチの様式において反映される、機能的サイトカインプロファイルにおける代替により特徴付けられる。さらに、タモキシフェンを伴うアスピリンの共投与は、トリフェニルエチレンの凝血原副作用を無効にし、これは動物の研究において(実施例2)観察されたアスピリンの抗血小板活性の優勢な影響と一致する。
【0144】
従ってタモキシフェン及びアスピリンの組み合わせは、心臓疾患、正常成体組織構成の衰退に関連する障害の処置において非常に用途が大きく、従って、TGF−ベータ産生刺激因子を用いる処置は、別々に投与した場合の化合物の影響の単純な加法的評価から想定されるよりも、処置の影響が出やすいことが知られている。タモキシフェンの凝血原効果がアスピリンの抗凝血効果を上回るのか、そうでないのかはこれまで知られていなかった。タモキシフェン及びアスピリンがTGF−ベータ産生刺激因子としての相乗的活性を示すかはこれまで知られていなかった。我々はマウス、及び現在はヒトにおいても両方の利点を観察したため、組み合わせは、いずれかの医療を別々に使用することの顕著な利点を有すると結論付ける。
【実施例6】
【0145】
ヒトにおけるタモキシフェン/クロピドグレル共投与の影響
タモキシフェンを抗凝血性医薬品と複合することが、関連する凝血原副作用を低減させ、又は無効にさせることの一般性を実証するため、アスピリンと構造的に関連せず、異なる分子作用機構を有する抗血小板剤であるクロピドグレル(75mg 1日1回、経口)共投与の存在下又は不存在下で、3ヶ月間タモキシフェン(20mg 1日1回、経口)で冠状心臓疾患を有するヒトを処置した。
【0146】
実施例5に従い、プロトロンビン時間(PTT)を個々の凝血状態の測定として計り、抗炭水化物抗体のクラススイッチを、処置のTGF−ベータ産生刺激因子活性の指標として、つまり組成物の有効性の代替として選択した。
【0147】
方法
血管造影で規定された冠状動脈疾患に罹患する(3つの主要な冠状動脈のうちの1つに少なくとも50%の狭窄)ヒトを研究のためにリクルートし、現在の医療投薬計画にクロピドグレルが含まれていない場合はタモキシフェン単独(1日1回20mg、経口)か、又はそうでなければタモキシフェン(1日1回20mg、経口)及びクロピドグレル(1日1回75mg、経口)のいずれかを与えた。患者は、全ての他の医薬品(スタチン、ACE阻害剤、ベータブロッカー、カルシウムチャネルブロッカー、利尿剤等)を継続したが、ワルファリン又はチロフィバンを服用している者はいなかった。7人の患者にタモキシフェンのみを投与し、8人の患者にはタモキシフェンにクロピドグレルを加えたものを投与した。
【0148】
個々の凝血状態は、プロトロンビン時間(PTT、臨床的に測定、Hinchinbrooke Hospital, UK)を用いて評価した。PTTは研究開始前に1週間の間隔を置いて2回測定し、その後、処置の90日後に測定した。各々の場合において、各患者は自身の制御に従って行動し、PTTへの処置の影響は2つのベースライン決定値の平均と、90日目のPTTの比較を、対をなすスチューデントのt検定を用いて評価した。
【0149】
血液サンプルをベースラインで、薬物処置開始直前に採取し、90日後も同様に採取した。血清を実施例5の記載に従って厳密に調製した。その後抗炭水化物抗体のレベルを、実施例5で示した手法を用いる直接ELISAにより測定した。
【0150】
結果
実施例5に従い、タモキシフェン単独で3ヶ月の処置は、プロトロンビン時間をわずかではあるが統計的に有意に上昇させる結果となった(+19%;不対のスチューデントのt検定でp<0.05)。一方で、タモキシフェン及びクロピドグレルの両方での処置は、プロトロンビン時間に影響を与えず(−1%;n.s.)、これは以前タモキシフェン及びアスピリンの組み合わせで観察されたのと同様に、この組み合わせの投与がタモキシフェンの使用に関連する副作用を、有効に低減させるか又は除去することを実証した。
【0151】
ただし、タモキシフェン及びアスピリンの間の組み合わせとは異なり、クロピドグレルのタモキシフェンとの組み合わせは、抗炭水化物抗体のアイソタイププロファイルに対する、タモキシフェンの影響を調節しない。IgDクラス抗炭水化物抗体の力価は、両方の処置群において統計的有意に減少したが、一方でIgG2クラスの力価及びIgAクラスの吸収は、両方の処置群において両方とも同程度統計的有意に上昇した。
【0152】
結論
クロピドグレルのタモキシフェンとの組み合わせは、トリフェニルエチレンの凝血原副作用を無効化した。
従ってタモキシフェン及びクロピドグレルの組み合わせは、タモキシフェン単独の使用よりも、凝血原副作用減少するため、心臓疾患の処置において非常に用途が広い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正常成体組織構造の衰退に関連する障害の処置又は防止を意図する医薬の製造のための、少なくとも2つの活性成分、又は医薬的に許容可能なその塩の混合物を含んでなる組成物の使用であって、ここで、
(a)第一活性成分は、TGF−ベータ産生刺激因子であり、及び
(b)第二の及びさらなる任意の活性成分は、第一活性成分の投与に関連する副作用を低減するように選択される、
組成物の使用。
【請求項2】
正常成体組織構造の衰退に関連する障害の処置又は防止を意図する医薬としての使用のための、少なくとも2つの活性成分、又は医薬的に許容可能なその塩の混合物を含んでなる医薬組成物であって、ここで、
(a)第一活性成分は、TGF−ベータ産生刺激因子であり、及び
(b)第二の及びさらなる任意の活性成分は、第一活性成分の投与に関連する副作用を低減するように選択される、
医薬組成物。
【請求項3】
少なくとも2つの活性成分、又は医薬的に許容可能なその塩の混合物が、本質的に均一な混合物である、請求項1に記載の医薬組成物の使用。
【請求項4】
少なくとも2つの活性成分、又は医薬的に許容可能なその塩の混合物が、本質的に均一な混合物である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
第二活性成分が、第一活性成分と同じ障害の回復、処置又は防止用として知られ、両活性成分が、別々に投与する場合のいずれか一方の活性成分の最適用量と比較して、より低い用量で混合物中に存在するような、請求項1に記載の医薬組成物の使用。
【請求項6】
第二活性成分が、第一活性成分と同じ障害の回復、処置又は防止用として知られ、両活性成分が、別々に投与する場合のいずれか一方の活性成分の最適用量と比較して、より低い用量で混合物中に存在するような、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項7】
TGF−ベータ産生刺激因子が、式(I)
【化1】

(式中、
1は、1、2又は3つのVにより任意に置換される(C1〜C6)アルキル、又はアリールであり、
2は、1、2又は3つのVにより任意に置換されるフェニルであり、又はR2は、(C1〜C12)アルキル、ハロ(C1〜C12)アルキル、(C3〜C6)シクロアルキル、(C1〜C6)アルキルシクロ(C3〜C6)アルキル、(C5〜C6)シクロアルケニル、又は(C1〜C6)アルキル(C5〜C6)シクロアルケニルであり、
3は、2−位においてRjで任意に置換され、さらに1、2又は3つのVにより任意に置換される水素又はフェニルであり、
4は、水素、ニトロ、ハロ、アリール、ヘテロアリール、アリール(C1〜C3)アルキル、ヘテロアリール(C1〜C3)アルキル、ハロ(C1〜C12)アルキル、シアノ(C1〜C12)アルキル、(C1〜C4)アルコキシカルボニル(C1〜C12)アルキル、(C1〜C12)アルキル、(C3〜C6)シクロアルキル、(C1〜C6)アルキルシクロ(C3〜C6)アルキル、(C5〜C6)シクロアルケニル、又は(C1〜C6)アルキル(C5〜C6)シクロアルケニルであり、ここでいずれかのアリール又はヘテロアリールは1、2又は3つのVにより任意に置換されてもよく、又は
5及びRjは共に、−CH2−CH2−、−S−、−O−(NH)−、N[(C1〜C6)アルキル]−、−OCH2−、O−C[(C1〜C6)アルキル]2−又は−CH=CH−であり、
-------は、単結合又は−C(B)(D)−であり、ここでB及びDは各々独立に水素、(C1〜C6)アルキル又はハロであり、
Vは、OPO32、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、メルカプト、(C1〜C4)アルキルチオ、ハロ、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、ニトロ、N(Rn)(R0)、シアノ、トリフルオロメトキシ、ペンタフルオロエトキシ、ベンゾイル、ヒドロキシ、アルキル、ベンジル、−OSO2(CH20-4CH3、U(CH21-4COORp、−(CH20-4COORp、−U(CH22-4ORp、−(CH20-4ORp、−U(CH21-4C(=O)Rk、−(CH20-4C(=O)Rk、−U(CH21-4k、−(CH20-4k、又は−U(CH22-4OC(=O)Rpであり、ここでUはO、N(Rm)、又はSであり、
Zは、−(CH21-3−、O、−OCH2−、−CH2O−、−C(=O)O−、N(Rq)−、C=O、又は共有結合であり、
kは、1又は2個の(C1〜C6)アルキルで任意に置換されるアミノ、又は1又は2個のさらなるN(RZ)、S又は非過酸化物Oを任意に含むN−へテロシクロ環であり、ここでRZは、H、(C1〜C6)アルキル、フェニル又はベンジルであり、
n及びR0は独立に、水素、(C1〜C6)アルキル、フェニル、ベンジル、又は(C1〜C6)アルカノイルであるか、又はRn及びR0はそれが結合する窒素と共に、3、4、5又は6−員のヘテロシクロ環であり、
pは、H又は(C1〜C6)アルキルであり、及び
m及びRqは独立に、水素、(C1〜C6)アルキル、フェニル、ベンジル又は(C1〜C6)アルカノイルである)
の化合物、又は化合物がMER25であるか、又は医薬的に許容可能なその塩である、請求項1又は5に記載の医薬組成物の使用。
【請求項8】
TGF−ベータ産生刺激因子が、式(I)
【化2】

(式中、
1は、1、2又は3つのVにより任意に置換される(C1〜C6)アルキル、又はアリールであり、
2は、1、2又は3つのVにより任意に置換されるフェニルであり、又はR2は、(C1〜C12)アルキル、ハロ(C1〜C12)アルキル、(C3〜C6)シクロアルキル、(C1〜C6)アルキルシクロ(C3〜C6)アルキル、(C5〜C6)シクロアルケニル、又は(C1〜C6)アルキル(C5〜C6)シクロアルケニルであり、
3は、2−位においてRjで任意に置換され、さらに1、2又は3つのVにより任意に置換される水素又はフェニルであり、
4は、水素、ニトロ、ハロ、アリール、ヘテロアリール、アリール(C1〜C3)アルキル、ヘテロアリール(C1〜C3)アルキル、ハロ(C1〜C12)アルキル、シアノ(C1〜C12)アルキル、(C1〜C4)アルコキシカルボニル(C1〜C12)アルキル、(C1〜C12)アルキル、(C3〜C6)シクロアルキル、(C1〜C6)アルキルシクロ(C3〜C6)アルキル、(C5〜C6)シクロアルケニル、又は(C1〜C6)アルキル(C5〜C6)シクロアルケニルであり、ここでいずれかのアリール又はヘテロアリールは1、2又は3つのVにより任意に置換されてもよく、又は
5及びRjは共に、−CH2−CH2−、−S−、−O−(NH)−、N[(C1〜C6)アルキル]−、−OCH2−、O−C[(C1〜C6)アルキル]2−又は−CH=CH−であり、
-------は、単結合又は−C(B)(D)−であり、ここでB及びDは各々独立に水素、(C1〜C6)アルキル又はハロであり、
Vは、OPO32、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ、メルカプト、(C1〜C4)アルキルチオ、ハロ、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、ニトロ、N(Rn)(R0)、シアノ、トリフルオロメトキシ、ペンタフルオロエトキシ、ベンゾイル、ヒドロキシ、アルキル、ベンジル、−OSO2(CH20-4CH3、U(CH21-4COORp、−(CH20-4COORp、−U(CH22-4ORp、−(CH20-4ORp、−U(CH21-4C(=O)Rk、−(CH20-4C(=O)Rk、−U(CH21-4k、−(CH20-4k、又は−U(CH22-4OC(=O)Rpであり、ここでUはO、N(Rm)、又はSであり、
Zは、−(CH21-3−、O、−OCH2−、−CH2O−、−C(=O)O−、N(Rq)−、C=O、又は共有結合であり、
kは、1又は2個の(C1〜C6)アルキルで任意に置換されるアミノ、又は1又は2個のさらなるN(RZ)、S又は非過酸化物Oを任意に含むN−へテロシクロ環であり、ここでRZは、H、(C1〜C6)アルキル、フェニル又はベンジルであり、
n及びR0は独立に、水素、(C1〜C6)アルキル、フェニル、ベンジル、又は(C1〜C6)アルカノイルであるか、又はRn及びR0はそれが結合する窒素と共に、3、4、5又は6−員のヘテロシクロ環であり、
pは、H又は(C1〜C6)アルキルであり、及び
m及びRqは独立に、水素、(C1〜C6)アルキル、フェニル、ベンジル又は(C1〜C6)アルカノイルである)
の化合物、又は化合物がMER25であるか、又は医薬的に許容可能なその塩である、請求項2又は6に記載の医薬組成物。
【請求項9】
式Iの化合物が、式II
【化3】

(式中、
Zは、C=O又は共有結合であり、
Yは、H又はO(C1〜C4アルキル)であり、
10及びR11は、独立に(C1〜C4)アルキルであるか、それが結合するNと共に飽和へテロシクロ環を形成し、
12は、エチル又はシクロエチルであり、
13は、H、又はR12と共に−CH2−CH2−又は−S−であり、
14及びR15は、独立にH、I、O(C1〜C4)アルキルから選択される)
又は医薬的に許容可能なその塩、
の構造を有する、請求項7に記載の医薬組成物の使用。
【請求項10】
式Iの化合物が、式II
【化4】

(式中、
Zは、C=O又は共有結合であり、
Yは、H又はO(C1〜C4アルキル)であり、
10及びR11は、独立に(C1〜C4)アルキルであるか、それが結合するNと共に飽和へテロシクロ環を形成し、
12は、エチル又はシクロエチルであり、
13は、H、又はR12と共に−CH2−CH2−又は−S−であり、
14及びR15は、独立にH、I、O(C1〜C4)アルキルから選択される)
又は医薬的に許容可能なその塩、
の構造を有する、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記構造IIの化合物が、タモキシフェン、トレミフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン又はイドキシフェン、又は医薬的に許容可能なその塩である、請求項9に記載の医薬組成物の使用。
【請求項12】
前記構造IIの化合物が、タモキシフェン、トレミフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン又はイドキシフェン、又は医薬的に許容可能なその塩である、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記第二活性成分が脂質低下剤である、請求項1、5、9又は11のいずれか1項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項14】
前記第二活性成分が脂質低下剤である、請求項2、6、10又は12のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記脂質低下剤がスタチンである、請求項13に記載の医薬組成物の使用。
【請求項16】
前記脂質低下剤がスタチンである、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記スタチンが、シンバスタチン、プラバスタチン、ロバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン又はレスバスタチン(resuvastatin)である、請求項15に記載の医薬組成物の使用。
【請求項18】
前記スタチンが、シンバスタチン、プラバスタチン、ロバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン又はレスバスタチンである、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記第二活性成分がベータブロッカー、利尿剤、ACE阻害剤又はカルシウムチャネルブロッカーである、請求項1、5、9又は11のいずれか1項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項20】
前記第二活性成分がベータブロッカー、利尿剤、ACE阻害剤又はカルシウムチャネルブロッカーである、請求項2、6、10又は12のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記第二活性成分が抗凝血剤である、請求項1、7、9又は11のいずれか1項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項22】
前記第二活性成分が抗凝血剤である、請求項2、8、10又は12のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記抗凝血剤が抗血小板剤である、請求項21に記載の医薬組成物の使用。
【請求項24】
前記抗凝血剤が抗血小板剤である、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記抗凝血剤が、式(III)
【化5】

(式中、
5は、水素、ハロ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、CF3、−NRcd、−C(=O)ORe、−OC(=O)ORe、−C(=N)ORe、(C1〜C6)アルキル又は(C1〜C6)アルコキシであり、
6は、水素又は−XRaであり、
7は、−C(=O)YRbであり、
8は、(=O)nであるか、又はR8は、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ又は(C1〜C6)アルカノイルオキシであるとともに、チオフェン硫黄でスルホニウム塩を形成し、ここで関連する対イオンは、医薬的に許容可能なアニオンであり、
9は、水素、−C(=O)Rh又は−C(=O)SRhであり、
n=0、1又は2であり、
Xは、酸素又は硫黄であり、
Yは、酸素又は硫黄であり、
aは、(C1〜C6)アルカノイルであり、
bは、水素又は(C1〜C3)アルキルであり、
c及びRdは、各々独立に、水素、(C1〜C4)アルキル、フェニル、C(=O)OH、C(=O)O(C1〜C4)アルキル、CH2C(=O)OH、CH2C(=O)O(C1〜C4)アルキル、又は(C1〜C4)アルコキシであるか、又はRc及びRdは、結合する窒素と共に、3、4、5又は6員のヘテロシクロ環であり、及び
e〜Rjは、独立に水素又は(C1〜C6)アルキルである)
の化合物、又は医薬的に許容可能なその塩であり、
6及びR7が、それが結合する環の隣接位置上に、又は当該環の2−及び5−位上にある場合、及びさらにR6が水素の場合、R7はそれが結合する環の2−又は5−位上にあるとともに、R4は(C1〜C4)アルカノイルオキシである、
請求項23に記載の医薬組成物の使用。
【請求項26】
前記抗凝血剤が、式(III)
【化6】

(式中、
5は、水素、ハロ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、CF3、−NRcd、−C(=O)ORe、−OC(=O)ORe、−C(=N)ORe、(C1〜C6)アルキル又は(C1〜C6)アルコキシであり、
6は、水素又は−XRaであり、
7は、−C(=O)YRbであり、
8は、(=O)nであるか、又はR8は、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)アルコキシ又は(C1〜C6)アルカノイルオキシであるとともに、チオフェン硫黄でスルホニウム塩を形成し、ここで関連する対イオンは、医薬的に許容可能なアニオンであり、
9は、水素、−C(=O)Rh又は−C(=O)SRhであり、
n=0、1又は2であり、
Xは、酸素又は硫黄であり、
Yは、酸素又は硫黄であり、
aは、(C1〜C6)アルカノイルであり、
bは、水素又は(C1〜C3)アルキルであり、
c及びRdは、各々独立に、水素、(C1〜C4)アルキル、フェニル、C(=O)OH、C(=O)O(C1〜C4)アルキル、CH2C(=O)OH、CH2C(=O)O(C1〜C4)アルキル、又は(C1〜C4)アルコキシであるか、又はRc及びRdは、結合する窒素と共に、3、4、5又は6員のヘテロシクロ環であり、及び
e〜Rjは、独立に水素又は(C1〜C6)アルキルである)
の化合物、又は医薬的に許容可能なその塩であり、
6及びR7が、それが結合する環の隣接位置上に、又は当該環の2−及び5−位上にある場合、及びさらにR6が水素の場合、R7はそれが結合する環の2−又は5−位上にあるとともに、R4は(C1〜C4)アルカノイルオキシである、
請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記抗血小板剤が、アスピリン又は銅アスピリナート(aspirinate)である、請求項23に記載の医薬組成物の使用。
【請求項28】
前記抗血小板剤が、アスピリン又は銅アスピリナートである、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項29】
前記抗血小板剤が、クロピドグレル、チロフィバン、低分子量ヘパリン、アデノシン、プロスタサイクリン又はイロプロストである、請求項23に記載の医薬組成物の使用。
【請求項30】
前記抗血小板剤が、クロピドグレル、チロフィバン、低分子量ヘパリン、アデノシン、プロスタサイクリン又はイロプロストである、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項31】
前記活性成分が、タモキシフェン及びアスピリナート、例えばアスピリンである、請求項1〜30のいずれか1項に記載の医薬組成物又はその使用。
【請求項32】
前記活性成分が、タモキシフェン及びクロピドグレルである、請求項1〜30のいずれか1項に記載の医薬組成物又はその使用。
【請求項33】
前記活性成分が、タモキシフェン、アスピリン及びクロピドグレルである、請求項1〜30のいずれか1項に記載の医薬組成物又はその使用。
【請求項34】
前記クロピドグレル及び/又はアスピリン(存在する場合)の各錠剤中の用量が、タモキシフェンの用量の2〜4倍である、請求項31〜33のいずれか1項に記載の医薬組成物又はその使用。
【請求項35】
前記タモキシフェンが、各錠剤中15mgである、請求項34に記載の医薬組成物又はその使用。
【請求項36】
前記活性成分が、タモキシフェン及びスタチン、例えばシンバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチン、レスバスタチン及びアトルバスタチンである、請求項1〜30のいずれか1項に記載の医薬組成物又はその使用。
【請求項37】
前記活性成分が、タモキシフェン及びNSAIDである、請求項1〜30のいずれか1項に記載の医薬組成物又はその使用。
【請求項38】
前記活性成分が、タモキシフェン及びナプロキセンである、請求項36に記載の医薬組成物又はその使用。
【請求項39】
前記活性成分が、タモキシフェン及びアセチルコリンエステラーゼ阻害剤である、請求項1〜30のいずれか1項に記載の医薬組成物又はその使用。
【請求項40】
前記活性成分が、タモキシフェン及びガランタミン又はリボスチグミン(rivostigmine)である、請求項39に記載の医薬組成物又はその使用。
【請求項41】
前記2つの構成成分の一方又は両方の作用機構を共有する、1又は複数のさらなる活性成分を添加する、請求項1〜40のいずれか1項に記載の医薬組成物又はその使用。
【請求項42】
前記活性成分が、いずれかの賦形剤及び/又は担体とともに、単一の錠剤として製剤化される、請求項1〜41のいずれか1項に記載の医薬組成物又はその使用。
【請求項43】
2つの活性成分が、単離される場合に両方が各々所有する活性を維持するように化学的に結合する、請求項1〜42のいずれか1項に記載の医薬組成物又はその使用。
【請求項44】
2以上の活性成分が共に塩を形成する、請求項43に記載の医薬組成物又はその使用。
【請求項45】
前記活性成分が共に、塩タモキシフェンアスピリナートを形成する、請求項44に記載の医薬組成物又はその使用。
【請求項46】
前記正常成体組織構造の衰退に関連する障害が、自己免疫疾患、脈管障害、骨粗鬆症(低骨塩密度)、腫瘍増殖、リウマチ様関節炎、多発性硬化症、器官移植拒絶及び/又は遅延移植又は臓器機能、乾癬、アルツハイマー病、特発性認知症、パーキンソン病、ハンチトン病又は外傷性脳損傷及び臨床的に有意な慢性的後遺症から選択される、請求項1、5、7、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29及び31〜45のいずれか1項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項47】
前記脈管障害が、アテローム、不安定狭心症、心筋梗塞又は脳卒中である、請求項46に記載の医薬組成物の使用。
【請求項48】
請求項2、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28及び30〜45のいずれか1項に記載の組成物の治療有効量を投与することを含んでなる、正常組織構造の衰退に関与する疾患の症状の、処置、回復又は予防の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2010−518154(P2010−518154A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549466(P2009−549466)
【出願日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際出願番号】PCT/GB2008/000451
【国際公開番号】WO2008/099144
【国際公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(508049824)ティーシーピー イノベーションズ リミティド (3)
【Fターム(参考)】