説明

加工用ステージ及び集束ビーム加工装置並びに集束ビーム加工方法

【課題】 被加工物を外部に出さずに、容易に移し変えて効率良く加工を行うこと。
【解決手段】 予め決められた範囲の観察領域W内で被加工物D、Lを観察しながら集束ビームBを照射して被加工物D、Lを加工する際に用いられるものであって、被加工物D、Lを上面2a、3aにそれぞれ載置可能な載置台2、3を複数有するテーブル10と、載置台2、3をそれぞれ上面2a、3aに垂直なZ軸回りに回転させると共に、上面2a、3aを任意の角度に傾斜させる回転傾斜手段11とを備え、テーブル10が、観察領域W内に、複数の載置台2、3をそれぞれ配置させるように移動可能とされている加工用ステージ4を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予め決められた範囲の観察領域内で被加工物を観察しながら集束ビームを照射して、該被加工物を加工する際に用いる加工用ステージ及び該加工用ステージを有する集束ビーム加工装置、並びに、集束ビーム加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体の高集積化等に伴い、ナノ(nm)領域における技術開発が求められている。その1つとして、半導体やバイオチップ、マイクロマシン(MEMS)等の試作や解析のため、ウエハ等の試料を切片化して極微細な切片試料(被加工物)にし、該切片試料を観察分解能が高い透過型電子顕微鏡(TEM)により観察する技術が知られている。
このTEMで観察するための切片試料、即ち、TEM用試料は、様々な方法により作製されるが、最近では集束イオンビーム(FIB)を利用したFIB装置により作製する方法が一般的になっている。そして、FIB装置により作製された切片試料は、TEM装置のステージ上に移し変えされた後、高分解能観察がされている。
【0003】
ところが、上述したように切片試料を観察するためには、FIB装置により作製した切片試料をTEM装置のステージに移し変える必要がある。よって、切片試料の作製からTEM観察に至るまでに、作業が煩雑で時間を要するものであった。特に、観察した後、さらに切片試料を再加工しようとすると、再度の移し変えが必要であり手間のかかるものであった。また、切片試料の移し変えを行う際に、該切片試料の紛失等が生じないように神経を使うものであった。
【0004】
このような問題を解消するため、切片試料の作製から観察までの作業が簡便で、切片試料の作製が1つの装置内で行えると共に、作製した切片試料を分析装置に容易に受け渡す(移し変える)ことができる試料作製装置が知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。
この試料作製装置は、内部が真空状態に調整可能な試料室に取り付けられた試料ステージ微動手段と、該試料ステージ微動手段を介して試料室内に挿入可能とされ、試料片を載置可能な第1ステージ及び試料片の一部から作製された摘出試料(切片試料)を載置可能な第2ステージと、試料室内で摘出試料を第1ステージから第2ステージに移し変える移送手段と、試料室内で試料片から切片試料を作製したり、デポジション膜を形成したりする等の各種構成品とを備えている。
また、上記第2ステージは、摘出試料を載置した状態で、他の解析装置、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型電子顕微鏡(SEM)や二次イオン質量分析装置(SIMS)等のステージ導入口に挿入することができるようになっている。
【0005】
この試料作製装置においては、まず、第1ステージを、試料ステージ微動手段を介して試料室内に挿入し、載置されている試料片から摘出試料を作製する。そして、作製した摘出試料を移送手段により把持した後、第1ステージを試料室内から引き抜くと共に、第2のステージを挿入する。なお、この際、試料室内の真空状態は維持されるようになっている。第2ステージの挿入後、移送手段は、把持していた摘出試料を第2ステージ上に載置する。なお、デポジション膜を利用して、摘出試料の把持や第2ステージ上への載置を行う。そして、第2ステージに摘出試料が載置された後、第2ステージを引き抜いて、他の分析装置、例えば、TEM装置のステージ挿入口に挿入することで、摘出試料を容易に移し変えることができ、作業の手間や時間の短縮を図ることができる。また、試料片を第1ステージに載置した後、試料片を直接人手で触る必要がないので、紛失等をなくすことができる。
【特許文献1】特開2004−301853号公報
【特許文献2】特開2004−309499号公報
【非特許文献1】「MEMS・MEMS技術の最新動向」、東レリサーチセンター、2004年5月刊行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の方法では、以下の課題が残されている。
即ち、特許文献1及び2記載の試料作製装置は、被加工物である摘出試料の移し変えを短時間で行うことができるが、第1ステージと第2ステージとを差し変えて交換する必要がある。そのため摘出試料を作製するたびに、ステージの交換が必要であり、複数個連続加工する場合には、交換に時間がかかってしまい効率の良い加工を行うことができなかった。
【0007】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、被加工物を外部に出さずに、容易に移し変えて効率良く加工を行うことができる加工用ステージ及び集束ビーム加工装置、並びに、集束ビーム加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するために以下の手段を提供する。
即ち、本発明の加工用ステージは、予め決められた範囲の観察領域内で被加工物を観察しながら集束ビームを照射して被加工物を加工する際に用いられる加工用ステージあって、前記被加工物を上面にそれぞれ載置可能な載置台を複数有するテーブルと、前記載置台をそれぞれ前記上面に垂直なZ軸回りに回転させると共に、上面を任意の角度に傾斜させる回転傾斜手段とを備え、前記テーブルが、前記観察領域内に、複数の前記載置台をそれぞれ配置させるように移動可能とされていることを特徴とするものである。
【0009】
この発明に係る加工用ステージにおいては、テーブルが移動可能とされているので、各載置台の上面に載置された被加工物を、それぞれ観察領域内に速やかに位置させることができる。これにより、各載置台に載置された被加工物を効率良く観察しながら加工することができ、作業効率を向上させることができる。
また、被加工物を別の載置台に容易に移し変えることも可能である。例えば、1つの載置台に載置された被加工物を観察領域内で加工した後、マニュピレータ等で被加工物を保持して載置台から離間させる。そして、この状態でテーブルを移動させて別の載置台を観察領域内に配置させることで、被加工物を別の載置台上に容易に移し変えることができる。
【0010】
このように、テーブルの移動だけで、観察領域内に各載置台をそれぞれ配置させることができるので、従来時間を要していた被加工物の連続加工等も容易に行うことができ、加工時間の短縮及び加工にかかる製造コストの低減化を図ることができる。
また、回転傾斜手段を備えているので、各載置台をZ軸回りに回転させたり、任意の角度に傾斜させたりすることができる。そのため、観察領域内で被加工物を加工する際、あらゆる角度から集束ビームを照射して加工が行え、加工作業の確実性が高まると共に使い易さが向上して利便性が良い。
【0011】
また、本発明の加工用ステージは、上記本発明の加工用ステージにおいて、前記テーブルが、一方向に延びた上面視長方形状に形成され、前記複数の載置台が、前記一方向に沿って一列に並ぶように配されていることを特徴とするものである。
【0012】
この発明に係る加工用ステージにおいては、複数の載置台がテーブル上に一列に並んで配されているので、テーブルを一方向に移動させるだけで各載置台を観察領域内に配置させることができる。よって、構成の簡略化を図ることができると共に操作し易くなる。
【0013】
また、本発明の加工用ステージは、上記本発明の加工用ステージにおいて、前記観察領域内で前記被加工物を保持して少なくとも前記載置台の上面から離間させる保持手段を備えていることを特徴とするものである。
【0014】
この発明に係る加工用ステージにおいては、保持手段を備えているので、被加工物を1つの載置台から他の載置台へ容易に移し変えを行うことができる。即ち、観察領域内で加工が終了した被加工物を保持すると共に上面から離間させる。この状態で、テーブルを移動させて別の載置台を観察領域内に位置させる。そして、保持していた被加工物を別の載置台の上面に載置することで、移し変えを容易に行うことができる。
これにより、1つの載置台上に載置されていた被加工物を、他の載置台上に載置されている被加工物に組み合わせ加工することも可能である。よって、加工作業の幅が広がり、利便性がより向上する。
【0015】
また、本発明の加工用ステージは、上記本発明の加工用ステージにおいて、前記テーブルを任意の角度に傾斜させる傾斜手段を備え、前記保持手段が、前記テーブルと共に傾斜可能とされていることを特徴とするものである。
【0016】
この発明に係る加工用ステージにおいては、テーブルと保持手段とが、互いの相対関係が維持された状態で傾斜手段により共に傾斜する。よって、保持手段により被加工物を移し変えて他の載置台に載置されている被加工物に接触させ、該接触箇所を、集束ビームを利用して仮接合する際にあらゆる角度から集束ビームを照射することができる。よって、仮接合を正確に行うことができ、加工精度をより向上することができる。
【0017】
また、本発明の集束ビーム加工装置は、上記本発明のいずれかの加工用ステージと、前記観察領域内に配置された被加工物を観察する観察手段と、前記観察領域内に配置された前記被加工物に、前記集束ビームを照射する照射手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0018】
この発明に係る集束ビーム加工装置においては、観察手段により観察領域内に配置された被加工物を観察しながら、照射手段により集束ビームを被加工物に照射して該被加工物の加工を行うことができる。特に、移動可能なテーブルを有する加工用ステージにより、各載置台をそれぞれ観察領域内に容易に配置させることができるので、被加工物の連続加工等を容易に行える。従って、加工時間の短縮及び加工にかかるコストの低減化を図ることができる。また、加工を行う際、回転傾斜手段により載置台をZ軸回りに回転及び傾斜できるので、あらゆる角度から集束ビームを照射して被加工物を加工できる。よって、高精度の加工を行うことができ、加工作業の確実性が高まる。また、使い易く、利便性に優れている。
【0019】
また、本発明の集束ビーム加工方法は、予め決められた範囲の観察領域内に、被加工物を上面に載置する複数の載置台のいずれか1つを配置した状態で被加工物に集束ビームを照射し、該被加工物を加工する集束ビーム加工方法であって、前記載置台を複数有するテーブルを移動させて、前記観察領域内にいずれか1つの載置台を配置させる配置工程と、該配置工程後、前記被加工物を観察しながら前記集束ビームを照射して、被加工物を粗加工する粗加工工程と、該粗加工工程後、粗加工された前記被加工物を保持手段で保持して前記載置台の上面から離間させる離間工程と、該離間工程後、前記テーブルを移動させて、前記観察領域内に他の載置台を配置させる移動工程と、該移動工程後、離間させた前記被加工物を他の載置台に向けて接近させ、上面に載置されている前記他の被加工物に接触させる接触工程と、該接触工程後、前記被加工物と前記他の被加工物との接触部分に前記集束ビームを照射して両者を結合すると共に、粗加工された前記被加工物を微細加工する微細加工工程とを備え、前記粗加工工程及び前記微細加工工程の際に、前記載置台を前記上面に垂直なZ軸回りに回転させると共に任意の角度に傾斜させることを特徴とするものである。
【0020】
この発明に係る集束ビーム加工方法においては、載置台上に載置された被加工物、例えば、ダイヤモンド砥粒を、他の載置台上に載置されている他の被加工物、例えば、カンチレバー側に容易に移し変えて、該カンチレバーの先端に、例えば、デポジション膜を利用して取り付けることできる。
即ち、まず、配置工程によりテーブルを移動させてダイヤモンド砥粒が載置されている載置台を観察領域内に配置する。次いで、粗加工工程により、ダイヤモンド砥粒の観察を行って、針先に適した(サイズ、外形形状等)ものを選択すると共に、選択したダイヤモンド砥粒に集束ビームを照射して針先に適する形に粗加工する。この際、載置台を回転させたり、任意の角度に傾斜させたりすることができるので、あらゆる角度から集束ビームを照射でき、粗加工を確実に行うことができる。
【0021】
次いで、離間工程により、粗加工したダイヤモンド砥粒をマニュピレータ等の保持手段で保持すると共に、持ち上げて載置台の上面から離間させる。離間後、移動工程によりテーブルを移動させて、観察領域内にカンチレバーが載置されている他の載置台を配置させる。テーブルの移動後、観察しながらダイヤモンド砥粒を接近させ、カンチレバー先端の所定位置に接触させる接触工程を行う。
次いで、微細加工工程により、集束ビームを照射してカンチレバーとダイヤモンド砥粒とを、例えば、デポジション膜により結合すると共に、ダイヤモンド砥粒が針先となるよう微細加工する。この際、上述した粗加工工程と同様に、載置台の回転及び傾斜が可能であるので、あらゆる角度から集束ビームを照射でき、確実にダイヤモンド砥粒の周囲にデポジション膜を形成して接合を確実なものにすることができる。
【0022】
このように、被加工物をテーブルの移動だけで容易に移し変えて加工することができ、効率の良い加工作業を行うことができる。特に、テーブルの移動だけで、観察領域内に各載置台を配置することができるので、従来時間を要していた被加工物の連続加工も容易に行うことができ、加工時間の短縮及び加工にかかるコストの低減化を図ることができる。
【0023】
また、本発明の集束ビーム加工方法は、予め決められた範囲の観察領域内に、被加工物を上面に載置する複数の載置台のいずれか1つを配置した状態で被加工物に集束ビームを照射し、該被加工物を加工する集束ビーム加工方法であって、前記載置台を複数有するテーブルを移動させて、前記観察領域内にいずれか1つの載置台を配置させる配置工程と、該配置工程後、前記被加工物を観察しながら前記集束ビームを照射して、被加工物から被加工物小片を作製する作製工程と、該作製工程後、前記被加工物小片を保持手段で保持して前記載置台の上面から離間させる離間工程と、該離間工程後、前記テーブルを移動させて、前記観察領域内に他の載置台を配置させる移動工程と、該移動工程後、離間させた前記被加工物小片を前記他の載置台に向けて接近させ、上面に載置されている他の被加工物に接触させる接触工程と、該接触工程後、前記被加工物小片と前記他の被加工物との接触部分に前記集束ビームを照射して両者を結合させる結合工程とを備え、前記作製工程及び前記結合工程の際に、前記載置台を前記上面に垂直なZ軸回りに回転させると共に任意の角度に傾斜させることを特徴とするものである。
【0024】
この発明に係る集束ビーム加工方法においては、載置台上に載置された被加工物、例えば、試料から被加工物小片である試料片を作製し、該試料片を他の載置台上に載置されている他の被加工物、例えば、試料ホルダに容易に移し変えると共にデポジション膜を利用して取り付け、TEM観察試料を製造することができる。
即ち、まず、配置工程によりテーブルを移動させて試料が載置されている載置台を観察領域内に配置する。次いで、作製工程により、試料を観察しながら所定位置に集束ビームを照射して切削加工し、試料片を作製する。この際、載置台を回転させたり、任意の角度に傾斜させたりすることができるので、あらゆる角度から集束ビームを照射でき、任意の形状の試料片を確実に作製することができる。
【0025】
次いで、離間工程により、作製した試料片をマニュピレータ等の保持手段で保持すると共に、持ち上げて載置台の上面から離間させる。離間後、移動工程によりテーブルを移動させて、観察領域内に試料ホルダが載置されている他の載置台を配置させる。テーブルの移動後、観察しながら試料片を試料ホルダに接近させ、該試料ホルダの所定位置に接触させる接触工程を行う。
次いで、結合工程により、集束ビームを照射して試料片と試料ホルダとを、例えば、デポジション膜により結合することで、TEM観察試料を製造することができる。この際、上述した作製工程と同様に、載置台の回転及び傾斜が可能であるので、あらゆる角度から集束ビームを照射でき、確実に試料片の周囲にデポジション膜を形成して接合を確実なものにすることができる。
【0026】
このように、被加工物をテーブルの移動だけで容易に移し変えて加工することができ、効率の良い加工作業を行うことができる。特に、テーブルの移動だけで、観察領域内に各載置台を配置することができるので、従来時間を要していた被加工物の連続加工も容易に行うことができ、加工時間の短縮及び加工にかかるコストの低減化を図ることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る加工用ステージによれば、テーブルの移動だけで観察領域内に各載置台をそれぞれ位置させることができるので、従来時間を要していた被加工物の連続加工等も容易に行うことができ、加工時間の短縮及び加工にかかる製造コストの低減化を図ることができる。
また、本発明に係る集束ビーム加工装置によれば、観察手段により観察領域内に位置された被加工物を観察しながら、照射手段から集束ビームを被加工物に照射して該被加工物の加工を行うことができる。特に、移動可能なテーブルを有する加工用ステージにより、各載置台をそれぞれ観察領域内に容易に位置させることができるので、被加工物の連続加工等を容易に行え、加工時間の短縮及び加工にかかるコストの低減化を図ることができる。
【0028】
また、本発明に係る集束ビーム加工方法によれば、被加工物をテーブルの移動だけで容易に移し変えて加工することができ、効率の良い加工作業を行うことができる。特に、テーブルの移動だけで、観察領域内に各載置台を配置することができるので、従来時間を要していた被加工物の連続加工も容易に行うことができ、加工時間の短縮及び加工にかかるコストの低減化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明に係る加工用ステージ及び集束ビーム加工装置、並びに、集束ビーム加工方法の一実施形態を、図1から図4を参照して説明する。
なお、本実施形態では、被加工物を、ダイヤモンド砥粒及びカンチレバーとし、ダイヤモンド砥粒をカンチレバーの先端に取り付ける場合を例にして説明する。
本実施形態の集束ビーム加工装置1は、図1及び図2に示すように、ダイヤモンド砥粒Dを上面2aに載置する第1試料ポート(載置台)2と、カンチレバーLを上面3aに載置する第2試料ポート(載置台)3とを有する加工用ステージ4と、観察領域W内に配置されたダイヤモンド砥粒D又はカンチレバーLを観察する図示しない観察手段と、観察領域W内に配置されたダイヤモンド砥粒D又はカンチレバーLにFIB等の集束ビームBを照射する照射部(照射手段)6と、観察領域W内にデポジション膜を形成する原料ガスGを供給するガス供給源7とを備えている。
【0030】
上記加工用ステージ4は、予め決められた範囲の観察領域W内でダイヤモンド砥粒D又はカンチレバーLを観察しながら集束ビームBを照射して加工する際に用いられるものであって、上記第1試料ポート2及び上記第2試料ポート3を有するテーブル10と、上記第1試料ポート2及び第2試料ポート3をそれぞれ上面2a、3aに垂直なZ軸回りに回転させると共に、上面2a、3aを任意の角度に傾斜させる回転傾斜手段11と、観察領域W内でダイヤモンド砥粒D又はカンチレバーLを保持して、少なくとも第1試料ポート2の上面2a又は第2試料ポート3の上面3aから離間させる保持手段12と、上記テーブル10を任意の角度に傾斜させるチルト機構(傾斜手段)13とを備えている。
【0031】
上記第1試料ポート2及び第2試料ポート3は、例えば、直径10mm、高さ10mmの円柱(断面円形)状に形成されている。また、第1試料ポート2及び第2試料ポート3は、円板状に形成された第1回転台15及び第2回転台16にそれぞれ中心を合わせた状態で傾斜自在に取り付けられている。即ち、第1試料ポート2及び第2試料ポート3は、第1回転台15及び第2回転台16の内部に設けられた図示しないチルト機構に下面側が球面支持されて、任意の角度、例えば、0°〜90°の範囲内で傾斜(チルト)するようになっている。
【0032】
上記テーブル10は、一方向Sに延びた上面視略長方形状に形成されている。そして、上記第1回転台15及び第2回転台16は、一方向Sに沿って所定間隔を空けた状態でテーブル10上に回転可能に取り付けられている。即ち、第1試料ポート2及び第2試料ポート3は、テーブル10の一方向Sに沿って一列に並ぶように配されている。
また、テーブル10には、図示しないモータによって回転駆動されるモータ軸17が取り付けられている。このモータ軸17は、第1回転台15及び第2回転台16の回転中心を結ぶ軸線A上に回転中心が一致するよう、第2回転台16に隣接して取り付けられている。そして、回転ベルト18が、モータ軸17、第1回転台15及び第2回転台16の外周面にそれぞれ当接するように巻回されている。これにより、モータ軸17が回転すると、第1回転台15及び第2回転台16がZ軸回りで同一方向に向けて共に回転するようになっている。また、この第1回転台15及び第2回転台16の回転動作に伴って、上記第1試料ポート2及び第2試料ポート3も同様に回転するようになっている。
即ち、上記チルト機構、モータ軸17、回転ベルト18、第1回転台15及び第2回転台16は、上記回転傾斜手段11を構成している。
【0033】
また、テーブル10は、箱状に形成された取付架台20に移動可能に取り付けられている。この移動方向としては、上記軸線A方向に沿う方向とされている。これにより、テーブル10は、上記観察領域W内に第1試料ポート2及び第2試料ポート3をそれぞれ配置させることができるようになっている。
また、取付架台20には、先端に移植用針プローバ21を有するプローバ22が取り付けられている。このプローバ22は、上記Z軸方向及び該Z軸に垂直なXY軸方向に向けて3次元的に移動自在とされており、移植用針プローバ21の先端が上記観察領域W内に入るように調整することができるようになっている。そして、デポジション膜を利用して移植用針プローバ21の先端にダイヤモンド砥粒DやカンチレバーLを固定して保持できるようになっている。即ち、これら移植用針プローバ21及びプローバ22は、上記保持手段12を構成している。
【0034】
また、取付架台20は、XY軸方向に向けて伸縮可能なアーム25の先端に、上記軸線A回りに回転可能に取り付けられている。具体的には、上記チルト機構13を介してアーム25の先端に取り付けられており、例えば、±60度の範囲内で傾斜(チルト)できるようになっている。
このチルト機構13により、上記テーブル10と保持手段12とが、互いの相対関係を維持した状態で共に傾斜するようになっている。
また、アーム25の基端側は、前面フランジ26に固定された基台27に、Z軸方向に向けて移動可能に取り付けられている。つまり、取付架台20は、アーム25を介してXYZ軸の3方向に向けて移動できるようになっている。
【0035】
このように構成された集束ビーム加工装置1により、第1試料ポート2上に載置されているダイヤモンド砥粒Dを第2試料ポート3側に移し変えて、カンチレバーLの先端に固定する集束ビーム加工方法について説明する。
本実施形態の集束ビーム加工方法は、上記テーブル10を移動させて、観察領域W内にダイヤモンド砥粒Dが載置されている第1試料ポート2を配置させる配置工程と、該配置工程後、ダイヤモンド砥粒Dを観察しながら集束ビームBを照射して、該ダイヤモンド砥粒Dを粗加工する粗加工工程と、該粗加工工程後、粗加工されたダイヤモンド砥粒Dを保持手段12で保持して第1試料ポート2の上面2aから離間させる離間工程と、該離間工程後、テーブル10を移動させて観察領域W内に第2試料ポート3を配置させる移動工程と、該移動工程後、離間させたダイヤモンド砥粒Dを第2試料ポート3(他の載置台)に向けて接近させ、上面3aに載置されているカンチレバーL(他の被加工物)に接触させる接触工程と、該接触工程後、ダイヤモンド砥粒DとカンチレバーLとの接触部分に集束ビームBを照射して両者を結合すると共に、粗加工されたダイヤモンド砥粒Dを微細加工する微細加工工程とを備え、上記粗加工工程及び上記微細加工工程の際に、第1試料ポート2及び第2試料ポート3をZ軸回りに回転させると共に、任意の角度に傾斜させるものである。
これら各工程について、以下に詳細に説明する。
【0036】
まず、第1試料ポート2の上面2aに複数のダイヤモンド砥粒Dを載置すると共に、第2試料ポート3の上面3aに複数のカンチレバーLを載置する。次いで、アーム25を介して取付架台20を3方向に粗動移動させた後、テーブル10を移動させてダイヤモンド砥粒Dが載置されている第1試料ポート2を観察領域W内に配置する上記配置工程を行う。これにより、観察手段によって第1試料ポート2の上面2aに載置された複数のダイヤモンド砥粒Dの観察を行える。そして、この観察により、複数のダイヤモンド砥粒Dの中から針先に適したもの(例えば、サイズや外形形状等が最適なもの)を選択する。
【0037】
そして、選択したダイヤモンド砥粒Dに、照射部6から集束ビームBを照射して該ダイヤモンド砥粒Dの形状が所望の形状となるように粗加工する。この粗加工工程の際、回転傾斜手段11により第1試料ポート2をZ軸回りに回転させたり、上面2aが任意の角度になるようにチルトさせたりすることができるので、ダイヤモンド砥粒Dを所望の形状に確実に粗加工することができる。また、観察手段によりダイヤモンド砥粒Dの加工状況を観察できることからも、ダイヤモンド砥粒Dの粗加工を確実に行える。
【0038】
上記粗加工後、プローバ22により移植用針プローバ21を3次元的に移動させて、移植用針プローバ21の先端を粗加工後のダイヤモンド砥粒Dに接触させる。そして、ガス供給源7より原料ガスGを供給すると共に集束ビームBを照射することで、デポジション膜を形成し、移植用針プローバ21の先端とダイヤモンド砥粒Dとを固定(保持)する。固体後、プローバ22を移動させて、ダイヤモンド砥粒Dを第1試料ポート2の上面2aから離間させる上記離間工程を行う。
離間後、図3及び図4に示すように、テーブル10を、一方向S、即ち、軸線A方向に移動させて、観察領域W内にカンチレバーLが載置されている第2試料ポート3を配置させる上記移動工程を行う。そして、観察手段で観察しながらプローバ22を作動させて、移植用プローバ22の先端に固定されたダイヤモンド砥粒DをカンチレバーLの先端に接触させる上記接触工程を行う。
【0039】
そして、この状態で、再度デポジション膜を形成してカンチレバーLとダイヤモンド砥粒Dを仮固定する。特に、この際、テーブル10と保持手段12とが互いの位置関係が維持された状態で、チルト機構13により軸線A回りに傾斜可能なので、移植用針プローバ21の影響を受けずにデポジション膜を所望する位置に着け易い。よって、位置ずれ等がなく、確実に仮固定を行うことができ、加工精度の向上に繋がる。
【0040】
上記仮固定が終了した後、集束ビームBを照射して移植用針プローバ21とダイヤモンド砥粒Dとを固定していたデポジション膜をエッチングして、保持手段12による保持を解く。保持を解いた後、再度原料ガスGの供給及び集束ビームBの照射により、カンチレバーLの先端にダイヤモンド砥粒Dを完全に取り付けて両者を結合すると共に、粗加工したダイヤモンド砥粒Dが完全に針先となるよう微細加工する上記微細加工工程を行う。
特に、この微細加工工程の際、上記粗加工工程時と同様に、回転傾斜手段11により、第2試料ポート3の回転や傾斜が自在であるので、デポジション膜をダイヤモンド砥粒Dの周囲に完全に形成して、接合を確実なものにすることができると共に微細加工を確実に行える。
これら各工程を行うことで、先端に針先となるダイヤモンド砥粒Dを有するカンチレバーLを製造することができる。
【0041】
上述したように、本実施形態の集束ビーム加工装置1及び集束ビーム加工方法によれば、観察手段により観察領域W内に配置されたダイヤモンド砥粒D又はカンチレバーLを観察しながら、照射部6より集束ビームBを照射して加工を行うことができる。特に、移動可能なテーブル10を有する加工用ステージ4を備えているので、ダイヤモンド砥粒D及びカンチレバーLを装置外部に一度も出すことなく、テーブル10の移動だけで観察領域W内に第1試料ポート2及び第2試料ポート3をそれぞれ配置させてダイヤモンド砥粒Dの移し変えを容易に行うことができ、効率の良い加工作業を行うことができる。また、従来時間を要していた連続加工も容易に行うことができ、加工時間の短縮及び加工にかかる製造コストの低減化を図ることができる。
また、第1試料ポート2及び第2試料ポート3は、テーブル10上に一列に並んで配されているので、テーブル10を一方向Sに移動させるだけで第1試料ポート2及び第2試料ポート3を観察領域W内に配置させることができる。よって、構成の簡略化を図ることができると共に操作し易くなる。
【0042】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0043】
例えば、テーブル10上に2つの載置台、即ち、第1試料ポート2及び第2試料ポート3を設けた構成にしたが、これに限られず、例えば、3つ以上の載置台を設けても構わない。
また、被加工物として、ダイヤモンド砥粒D及びカンチレバーLを採用し、カンチレバーLにダイヤモンド砥粒Dを取り付ける例を示したが、この場合に限定されるものではない。例えば、被加工物として、試料及び試料ホルダを採用し、試料から試料片を集束ビームBにより作製し、該試料片を移し変えて試料ホルダに固定してTEM用観察試料を作製しても構わない。
【0044】
この場合の集束ビーム加工方法は、テーブル10を移動させて観察領域W内に、試料を上面2aに載置する第1試料ポート2を配置させる配置工程と、該配置工程後、試料を観察しながら集束ビームBを照射して試料から試料片(被加工物小片)を作製する作製工程と、該作製工程後、試料片を保持手段12で保持して第1試料ポート2の上面2aから離間させる離間工程と、該離間工程後、テーブル10を移動させて、観察領域W内に第2試料ポート3を配置させる移動工程と、該移動工程後、離間させた試料片を第2試料ポート3に向けて接近させ、上面3aに載置されている試料ホルダに接触させる接触工程と、該接触工程後、試料片と試料ホルダとの接触部分に集束ビームBを照射して両者を結合させる結合工程とを備え、上記作製工程及び結合工程の際に、第1試料ポート2及び第2試料ポート3をZ軸回りに回転させると共に任意の角度に傾斜させれば良い。
【0045】
より詳細に説明すると、まず、配置工程によりテーブル10を移動させて試料が載置されている第1試料ポート2を観察領域W内に配置する。次いで、作製工程により、試料を観察しながら所定位置に集束ビームBを照射して切削加工し、試料片を作製する。この際、第1試料ポート2を回転させたり、任意の角度に傾斜させたりすることができるので、あらゆる角度から集束ビームBを照射でき、任意の形状の試料片を確実に作製することができる。
次いで、離間工程により、作製した試料片を保持手段12で保持すると共に、持ち上げて第1試料ポート2の上面2aから離間させる。離間後、移動工程によりテーブル10を移動させて、観察領域W内に試料ホルダが載置されている第2試料ポート3を配置させる。テーブル10の移動後、観察しながら試料片を試料ホルダに接近させ、該試料ホルダの所定位置に接触させる接触工程を行う。
【0046】
次いで、結合工程により、集束ビームBを照射して試料片と試料ホルダとを、例えば、デポジション膜により結合することで、TEM用観察試料を製造することができる。
この際、上述した作製工程と同様に、第2試料ポート3の回転及び傾斜が可能であるので、あらゆる角度から集束ビームBを照射でき、確実に試料片の周囲にデポジション膜を形成して接合を確実なものにすることができる。
【0047】
この場合もダイヤモンド砥粒Dの加工時と同様に、テーブル10の移動だけで試料片を容易に移し変えて加工することができるので、効率の良い加工作業を行うことができる。また、従来時間を要していた被加工物の連続加工も容易に行うことができ、加工時間の短縮及び加工にかかるコストの低減化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係る加工用ステージを有する集束ビーム加工装置の一実施形態を示す上面図であって、観察領域内に第1試料ポートの上面が位置している状態を示す図である。
【図2】図1に示す状態の側面図である。
【図3】図1に示す集束ビーム加工装置のテーブルが移動し、観察領域内に第2試料ポートの上面が位置している状態を示す上面図である。
【図4】図3に示す状態の側面図である。
【符号の説明】
【0049】
B 集束ビーム
D ダイヤモンド砥粒(被加工物)
L カンチレバー(他の被加工物)
S 一方向
W 観察領域
1 集束ビーム加工装置
2 第1試料ポート(載置台)
2a 第1試料ポートの上面
3 第2試料ポート(他の載置台)
3a 第2試料ポートの上面
4 加工用ステージ
6 照射部(照射手段)
10 テーブル
11 回転傾斜手段
12 保持手段
13 チルト機構(傾斜手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め決められた範囲の観察領域内で被加工物を観察しながら集束ビームを照射して被加工物を加工する際に用いられる加工用ステージあって、
前記被加工物を上面にそれぞれ載置可能な載置台を複数有するテーブルと、
前記載置台をそれぞれ前記上面に垂直なZ軸回りに回転させると共に、上面を任意の角度に傾斜させる回転傾斜手段とを備え、
前記テーブルは、前記観察領域内に、複数の前記載置台をそれぞれ配置させるように移動可能とされていることを特徴とする加工用ステージ。
【請求項2】
請求項1記載の加工用ステージにおいて、
前記テーブルは、一方向に延びた上面視長方形状に形成され、
前記複数の載置台は、前記一方向に沿って一列に並ぶように配されていることを特徴とする加工用ステージ。
【請求項3】
請求項1又は2記載の加工用ステージにおいて、
前記観察領域内で前記被加工物を保持して少なくとも前記載置台の上面から離間させる保持手段を備えていることを特徴とする加工用ステージ。
【請求項4】
請求項3記載の加工用ステージにおいて、
前記テーブルを任意の角度に傾斜させる傾斜手段を備え、
前記保持手段が、前記テーブルと共に傾斜可能とされていることを特徴とする加工用ステージ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の加工用ステージと、
前記観察領域内に配置された被加工物を観察する観察手段と、
前記観察領域内に配置された前記被加工物に、前記集束ビームを照射する照射手段とを備えていることを特徴とする集束ビーム加工装置。
【請求項6】
予め決められた範囲の観察領域内に、被加工物を上面に載置する複数の載置台のいずれか1つを配置した状態で被加工物に集束ビームを照射し、該被加工物を加工する集束ビーム加工方法であって、
前記載置台を複数有するテーブルを移動させて、前記観察領域内にいずれか1つの載置台を配置させる配置工程と、
該配置工程後、前記被加工物を観察しながら前記集束ビームを照射して、被加工物を粗加工する粗加工工程と、
該粗加工工程後、粗加工された前記被加工物を保持手段で保持して前記載置台の上面から離間させる離間工程と、
該離間工程後、前記テーブルを移動させて、前記観察領域内に他の載置台を配置させる移動工程と、
該移動工程後、離間させた前記被加工物を前記他の載置台に向けて接近させ、上面に載置されている他の被加工物に接触させる接触工程と、
該接触工程後、前記被加工物と前記他の被加工物との接触部分に前記集束ビームを照射して両者を結合すると共に、粗加工された前記被加工物を微細加工する微細加工工程とを備え、
前記粗加工工程及び前記微細加工工程の際に、前記載置台を前記上面に垂直なZ軸回りに回転させると共に任意の角度に傾斜させることを特徴とする集束ビーム加工方法。
【請求項7】
予め決められた範囲の観察領域内に、被加工物を上面に載置する複数の載置台のいずれか1つを配置した状態で被加工物に集束ビームを照射し、該被加工物を加工する集束ビーム加工方法であって、
前記載置台を複数有するテーブルを移動させて、前記観察領域内にいずれか1つの載置台を配置させる配置工程と、
該配置工程後、前記被加工物を観察しながら前記集束ビームを照射して、被加工物から被加工物小片を作製する作製工程と、
該作製工程後、前記被加工物小片を保持手段で保持して前記載置台の上面から離間させる離間工程と、
該離間工程後、前記テーブルを移動させて、前記観察領域内に他の載置台を配置させる移動工程と、
該移動工程後、離間させた前記被加工物小片を前記他の載置台に向けて接近させ、上面に載置されている他の被加工物に接触させる接触工程と、
該接触工程後、前記被加工物小片と前記他の被加工物との接触部分に前記集束ビームを照射して両者を結合させる結合工程とを備え、
前記作製工程及び前記結合工程の際に、前記載置台を前記上面に垂直なZ軸回りに回転させると共に任意の角度に傾斜させることを特徴とする集束ビーム加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−242796(P2006−242796A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−60110(P2005−60110)
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【出願人】(503460323)エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社 (330)
【Fターム(参考)】